説明

分散物の製造法及びその使用

本発明は、水不溶性である安定化コロイドで安定化された水性分散物を製造する方法に関する。この方法は、最初の工程において水中で水不溶性の安定化コロイドを製造する。該安定化コロイドの製造は、a1) 場合によってプロトン化されていてもよい、少なくともひとつのスルフェート基及び/又はスルホネート基を含む、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、a2) 20℃での水への溶解度が50g/lより小さい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、及びa3) 約50重量%までの、20℃での水への溶解度が50g/lより大きい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマーのラジカル重合を水中で行ない、次いで、b) 少なくともひとつの他のオレフィン系不飽和モノマー及び少なくともひとつの開始剤を加えることによりなされる。該追加のオレフィン系不飽和モノマーのラジカル重合により水性分散物を得る。その際、c) 場合によっては、残存モノマーの減少を、残存モノマーの重合により、及び/又は水蒸気及び/又はガスを導入して残存モノマー及び場合によっては他の揮発性有機成分を物理的に除去することにより行う。 この方法により得られる分散物は乾燥することにより水に再分散可能なポリマー粉末に変換することができる。本発明は、水不溶性の安定化コロイドの、分散物及び水に再分散可能なポリマー粉末への使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性である安定化コロイドで安定化された水性分散物を製造する方法、それから得られる水に再分散可能なポリマー粉末、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水性分散物は、特に引続き水に再分散可能なポリマー粉末に加工される場合には、しばしば保護コロイドで安定化されている。このような保護コロイドは、一般に水溶性であり、且つしばしば非イオン性でもある。このような保護コロイドの典型的な代表例は、部分的に加水分解されたポリビニルアルコールである。 確かにそれは分散物又は再分散物から製造されるポリマー膜の耐水性に悪く影響するという欠点を有する。このような理由から、すでにこれに代わるものについて種々の提案がなされていた。
【0003】
欧州特許出願公開第1098916号及び欧州特許出願公開第1109838号は、例えば、カチオン性モノマーにより製造され、引続き水性分散物を安定化させる、水不溶性の安定化コロイドを記載する。このようにして製造された水性分散物は、簡単な方法で分散物粉末にすることができる。この製品はしばしばアニオン性化合物が加えられる組成物に使用されるので、 カチオン性ラテックスとアニオン性化合物との間で望ましくない相互作用を起こしてしまうことがある。確かに安定化系、特に例えばセメントモルタルのようにカルシウムイオンリッチな系において、カルシウム錯体化のためにカルボキシル基の少しの量をすでに示す分散物は、非常に強く、望ましくない粘度上昇を起す傾向にある。従って、スルホネート基及び/又はスルホン酸基を持つモノマーとで共重合させることが始められていた。
【0004】
欧州特許出願公開第725092号及び独国特許出願公開第19506331号は、アクリレートの群から選ばれたモノマー80〜100重量%とエチレン性不飽和スルホン酸化合物0〜20重量%とからなる核重合物及び、アクリレートの群から選ばれたモノマー60〜95重量%とエチレン性不飽和スルホン酸化合物5〜40重量%とからなる外殻重合物からなる再分散可能な粉末状の核-外殻ポリマーを開示する。この製造は、第一に核ポリマー、ついで外殻ポリマーが製造され、そしてモノマーが、エマルジョン化により安定化された前駆エマルジョン(Voremulsion)に加えられる、古典的な核‐殻‐エマルジョン重合に従って行なわれる。ガラス転移温度Tgは、好ましくは核重合物では約‐65〜+30℃であり、且つ外殻重合物では+60℃より上である。エチレン性不飽和スルホン酸化合物は、それぞれのモノマー相を持つ別のモノマーと混合され、通常プロトン化された形で加えられる。この分散物は乳化剤により安定化されるので、再分散化の低減、又は外殻ポリマーのガラス転移温度が高く設定された場合には再分散化の後の膜形成性の悪化の恐れがある。
【0005】
国際公開第98/49205号は、重合が典型的な水溶性保護コロイドの存在下に行なわれ、スルホン酸-又はスルホネート基-含有のモノマー単位5〜95重量%、非架橋性の水溶性モノマー単位5〜95重量%、及び疎水性の水不溶性モノマー単位0〜5重量%を含む、保護コロイドで安定化された水性のポリマー分散物の製造方法を開示する。国際公開第97/32904号には、スルホン酸‐またはスルフェート基‐含有のモノマー単位20〜95重量%、N‐メチロール‐又はN‐アルコキシメチル基‐含有のモノマー単位4〜80重量%、及び水不溶性モノマー及び開始剤残留分あるいは通常の分子の疎水性末端基の群から選ばれた疎水性モノマー単位0.1〜20重量%を含む、水溶性の架橋性保護コロイドが開示されている。どちらの場合も水溶性の保護コロイドは、反応後留去されるアセトンの存在下で製造される。得られた重合体から残量アセトンを完全に取り除くにはかなりの経費を掛けなければならない。さらに、加えられるモノマーの必須成分は、(メタ)アクリルアミドであり、これはアルカリpH領域でアミン及び/又はアンモニアを容易に分裂しうるが、これはそのあとの最終用途において望ましくない効果を持つ。さらに、そのようにして製造された保護コロイドは、次に製造される分散物の不足した安定化作用を有しており、これは特に乾燥した、水に再分散可能な分散物粉末の不足した保存安定性をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように水性分散物のための安定化系を提供するという、技術水準の欠点が広く妨げていた課題が存在する。特にそれにより安定化された分散物及び水に再分散可能なポリマー粉末が、他の原料との良い相溶性を示さなければならない。さらに、フレキシブルな製造法により簡単に核‐殻‐形態(Morphologie) を達成し、並びにそれぞれのマトリックス内で達成される性質を簡単に制御することができなければならない。また、得られる分散物及びポリマー粉末は種々に適用可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、水に再分散可能なポリマー粉末に簡単に導かれる水性分散物の製造方法に伴う欠点は、水不溶性の安定化コロイドで水性分散物を安定化させることで解決されることが見出された。すなわち、
a) 最初の工程で、安定化コロイドの製造のために用いられるモノマー量に関して
a1) 約1〜90重量%の、場合によってプロトン化されていてもよい、少なくともひとつのスルフェート基及び/又はスルホネート基を含む少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、
a2) 約5〜99重量%の、20℃での水への溶解度が50g/lより小さい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、及び
a3) 約50重量%までの、20℃での水への溶解度が50g/lより大きい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー
のラジカル重合により、水不溶性の安定化コロイドを水中で製造し、次いで、
b) 少なくともひとつの他のオレフィン系不飽和モノマー及び少なくともひとつの開始剤を加え、該追加のオレフィン系不飽和モノマーのラジカル重合により水性分散物を得る、その際
c) 場合によっては、残存モノマーの減少を、残存モノマーの重合により、及び/又は水蒸気及び/又はガスを導入して残存モノマー及び場合によっては他の揮発性有機成分を物理的に除去することにより行なう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】モルタルの硬化曲線
【発明を実施するための形態】
【0009】
水不溶性の安定化コロイドの製造のために、安定化コロイドの製造のために用いられるモノマー量に関して、好ましくは約3〜50重量%、特に約5〜30重量%の、少なくともひとつのスルフェート基及び/又はスルホネート基を含む、場合によってプロトン化されていてもよい、上記a1)の少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマーが加えられる。それに加えて、好ましくは約20〜97重量%、特に約50〜95重量%の、20℃での水への溶解度が50g/lより小さい、上記a2)の少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー及び好ましくは約30重量%まで、特に約20重量%までの、20℃での水への溶解度が50g/lより大きい、上記a3)の少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマーが水中でラジカル重合により転化される。上記a3)のオレフィン系不飽和モノマーは、必ずしも加えられなくてもよい。
【0010】
a1)グループの好適なモノマー単位は、場合によってプロトン化されていてもよい、少なくともひとつのスルフェート基及び/又はスルホネート基を含むオレフィン系不飽和モノマーである。限定しない例は、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スチレンスルホン酸、特にそれぞれC-〜C6-アルキルエステルである、(メタ)アクリル酸‐スルホアルキルエステル、イタコン酸‐スルホアルキルエステル、ビニルスルホン酸及びそのアルカリ‐、アルカリ土類‐及び/又はアンモニウム塩である。(メタ)アクリレート‐、(メタ)アクリルアミド‐及び/又はビニル基を含むモノマー、特に2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スチレンスルホン酸、アクリル酸スルホプロピルエステル、イタコン酸スルホプロピルエステル、ビニルスルホン酸並びにそれぞれのアンモニウム‐、ナトリウム‐、カリウム‐、及び/又はカルシウム塩が好ましい。
【0011】
a2)グループの好適なモノマー単位は、20℃での水への溶解度が50g/lより小さい、オレフィン系不飽和モノマーである。好ましくは、直鎖又は分枝のC-〜C20-ビニルエステル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸及びその直鎖又は分枝のC-〜C20-アルキルエステル、スチレン、スチレン誘導体及び/又は例えば1,3‐ブタジエンのようなジエンである。ビニルエステルは特に好ましくは、直鎖又は分枝のC-〜C12-ビニルエステルであり、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、2‐エチルヘキサン酸ビニル及び/又はC-、C10-及び/又はC11-ベルサチン酸ビニルである。アクリル酸エステルは特に好ましくは、メチルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルメタクリレート、iso‐ブチルメタクリレート及び2‐エチルヘキシルメタクリレートである。
【0012】
a3)グループの好適なモノマー単位は、20℃での水への溶解度が50g/lより大きい、オレフィン系不飽和モノマーである。好ましくは、アミド‐、アミン‐及び/又はヒドロキシ‐基を有するモノマーである。特に好ましくは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート及び/又はヒドロキシブチルアクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ‐)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド及び/又は(メタ‐)アクリル酸エステル及びポリアルキレンオキシド‐及び/又はポリアルキレングリコール基を有するN‐置換(メタ‐)アクリルアミドである。
【0013】
さらに、水不溶性の安定化コロイドの製造の際には、他の反応基を有する少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマーを共重合させることもできる。そのようなモノマーの好ましい反応基は、エポキシ‐、エピハロヒドリン‐、アミン‐、アンモニウム‐、ヒドロキシル‐、アルデヒド‐、ケトン‐、酸無水物‐、アセト酢酸‐、カルボキシル‐、チオール‐、アルコキシシラン‐、シラノール‐、グリシジル‐、N‐メチロール‐、スルホン酸‐、アミド‐、アミジン‐、イミン‐、エステル‐及び/又はカルボニル基であり、特に好ましくは、アルコキシシラン‐、エポキシ‐、エピハロヒドリン‐及び/又はアミン基である。特定の実施態様では、該他の反応基は同様にオレフィン系不飽和であり、他のオレフィン系不飽和モノマーとラジカル重合により反応することができる。該他の反応基が第一の反応基よりも小さな反応性を示すことがそのようなモノマーにおいて好ましい。例えば、そのようなモノマーは、アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、メタクリル酸アリル又はシアヌル酸トリアリル、安息香酸ジビニル、ブタンジオール‐1,4‐ジメチルアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートである。
【0014】
反応性基を有するモノマーの重量割合は、安定化コロイドの製造に使用されるモノマーの総量に対して、約0.01〜50重量%、好ましくは約0.1〜30重量%、特に約0.5〜20重量%であるである。このモノマーの水への溶解度は重要ではなく、20℃において50g/lより多くても少なくてもよい。
【0015】
他の反応基を有するオレフィン系不飽和モノマーとして好ましいのは、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシシラン‐、グリシジル‐、エピハロヒドリン‐、カルボキシル‐、アミン‐、ヒドロキシ‐、アンモニウム基を有する官能性のビニル‐及び/又は(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-メチロールアリル‐カルバメート、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル、N-メチロール(メタ‐)アクリルアミド、アクリルアミドグリコール酸、グリシジル(メタ‐)アクリレート、アルコキシ基として好ましくはメトキシ‐、エトキシ‐及び/又はiso‐プロポキシ基が用いられる(メタ‐)アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシラン、アセチルアセトキシエチル(メタ‐)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、メチルアクリルアミドグリコール酸及びそのアルキルエステル、N-メチロール(メタ‐)アクリルアミド、N-メチロールアリルカルバメート、N-メチロール(メタ‐)アクリルアミド及びN-メチロールアリルカルバメートのエステル、N-〔3‐(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミド、N-〔3‐(ジメチルアミノ)エチル〕メタクリレート、N-〔3‐(トリメチルアンモニウム)プロピル〕メタクリルアミド‐クロライド及び/又はN,N‐〔3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピル)‐3‐ジメチル‐アンモニウム‐プロピル〕(メタ‐)アクリルアミド‐クロライド、ここで特にカチオン性モノマーについては、例え凝集を起こすようなアニオン性モノマーとのネガティブな相互作用がないような量が選択される。
【0016】
最初の工程で形成された水不溶性の安定化コロイドは、少なくともひとつの他のオレフィン性不飽和モノマー及び少なくとも一つの開始剤の添加の間及び後に水性分散物の安定化に役立つ。その際、水中でのラジカル重合によって該他のオレフィン系不飽和モノマーが結合される。水不溶性の安定化コロイドの生成及び粒子成長に応じて、該他のオレフィン系不飽和モノマーを添加し、ラジカル性のエマルジョン‐、懸濁‐及び/又はミクロエマルジョン‐重合へと導く。これは、連続的なモノマー供給‐及び/又はバッチ方式で行なわれ、その際モノマー供給方式におけるモノマーは前駆エマルジョン(Voremulsion)の形で配量されてもよい。この方法により単独‐並びに共重合体が安定化されうる。
【0017】
該他のモノマーは、50g/lよりも小さい20℃における水への溶解度を持っていることが好ましい。しかしながら、場合によっては、モノマーのより少ない部分はより高い水への溶解度を示すことも可能である。
【0018】
この単独‐並びに共重合体の製造に好適なモノマー及びモノマー類は、例えば直鎖又は分枝のC-〜C20-ビニルエステル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸及びその直鎖又は分枝のC-〜C20-アルキルエステル、(メタ‐)アクリルアミド及びN-置換された直鎖又は分枝のC-〜C20-アルキル基を有する(メタ‐)アクリルアミド、アクリルニトリル、スチレン、α‐メチルスチレン、オルソ‐塩化スチレン又はビニルトルエンのようなスチレン誘導体及び/又は例えば1,3-ブタジエン及びイソプレンのようなジエンである。好ましいビニルエステルは、例えば酢酸ビニル、ステアリン酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ラウリン酸ビニル、2‐エチルヘキサン酸ビニル、1‐メチル酢酸ビニルのような直鎖又は分枝のC-〜C12-ビニルエステル及び/又はC‐、C10‐及び/又はC11‐ベルサチン酸ビニル、ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド並びに安息香酸及びp‐tert‐ブチル安息香酸のビニルエステルであり、特に酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル及び/又はベルサチン酸ビニルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル及びN-置換された(メタ‐)アクリルアミドのC-〜C12-アルキル基は、好ましくはメチル‐、エチル‐、プロピル‐、n‐ブチル‐、i‐ブチル‐、t‐ブチル、ヘキシル‐、シクロヘキシル‐、2‐エチルヘキシル‐、ラウリル‐、ステアリル‐、ノルボルニル‐、ポリアルキルキレンオキシド‐及び/又はポリアルキレングリコール基、特にメチル‐、ブチル‐、2‐エチルヘキシル基である。特に、メチルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルメタクリレート及び2‐エチルヘキシルメタクリレートが好ましい。
【0019】
さらに、他のモノマー、特に官能基を有するモノマーは、単独重合させることができる。例えば、無水マレイン酸、不飽和のジカルボン酸及びその分枝又は直鎖のC-〜C20-エステル、特にイタコン酸、マレイン酸及び/又はフマル酸並びにそれらのエステル、多価エチレン性不飽和コモノマー、例えばアジピン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、メタクリル酸アリル又はシアヌル酸トリアリル、安息香酸ジビニル、1,4‐ジメタクリル酸ブタンジオール、トリエチレンングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシシラン‐、グリシジル‐、エピハロヒドリン‐、カルボキシル‐、アミン‐、ヒドロキシ‐、アンモニウム‐及び/又はスルホン酸基を有する、官能性のビニル‐及び/又は(メタ‐)アクリレートモノマーは共重合されることができる。官能性のモノマーは、好ましくはヒドロキシプロピル(メタ‐)アクリレート、N-メチロールアリルカルバメート、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル、N-メチロール(メタ‐)アクリルアミド、ビニルスルホン酸、アクリルアミドグリコール酸、グリシジル(メタ‐)アクリレート、2‐アクリルアミド‐2‐メチル‐プロパンスルホン酸、アルコキシ基として好ましくはメトキシ‐、エトキシ‐及び/又はiso‐プロポキシ基が用いられる、(メタ‐)アクリロキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシラン、アセチルアセトキシエチル(メタ‐)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドグリコール酸、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル、アルキルエーテル、N-メチロール(メタ‐)アクリルアミド、N-メチロールアリルカルバメート、N‐メチロール(メタ‐)アクリルアミド及びN‐メチロールアリルカルバメートのエステル、N-〔3‐(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミド、N-〔3‐(ジメチルアミノ)エチル〕メタクリレートである。これらのコモノマーの割合は特に、全モノマー成分に対して、好ましくは約0〜30重量%、特に約0〜20重量%、そして特に好ましくは約0.1〜10重量%であり、ここで遊離のカルボキシル基の割合が約10重量%、特に5重量%、そして特に好ましくは約3重量%より多くないことが考慮されるべきである。
【0020】
この方法により水性の分散物が製造されるが、酢酸ビニルを基礎とする好ましい重合体又は共重合体は、エチレン‐酢酸ビニル、エチレン‐酢酸ビニル‐ベルサチン酸ビニル、エチレン‐酢酸ビニル‐塩化ビニル、エチレン‐塩化ビニル、酢酸ビニル‐ベルサチン酸ビニル、エチレン‐酢酸ビニル‐(メタ‐)アクリレート、酢酸ビニル‐ベルサチン酸ビニル(メタ‐)アクリレート、(メタ‐)アクリレート、酢酸ビニル‐マレイン酸及び酢酸ビニル‐マレイン酸エステル、酢酸ビニル‐ベルサチン酸ビニル‐マレイン酸及び酢酸ビニル‐ベルサチン酸ビニル‐マレイン酸エステル、酢酸ビニル‐(メタ‐)アクリレート‐マレイン酸及び酢酸ビニル‐(メタ‐)アクリレート‐マレイン酸エステル、スチレン‐アクリレート及び/又はスチレン‐ブタジエンを含み、ベルサチン酸ビニルはC-〜C12-ビニルエステルである。
【0021】
重合に必要な開始剤系に関する選択には、水不溶性の安定化コロイドの製造にも水性分散物の製造にも本質的に制限はない。前記の重合の種類において知られたあらゆる開始剤系を使用することができる。しかし、反応条件の下でラジカルを形成する開始剤が好ましく用いられる。適当なのは、例えば、カリウム‐、ナトリウム‐又はアンモニウム過硫酸塩である過硫酸塩のような熱的開始剤系、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸並びに2,2‘‐アゾビス(2‐メチルプロピオン‐アミジン)ジヒドロクロライドのような水‐、モノマー溶解性のアゾ開始剤、過酸化水素、t‐ブチルヒドロパーオキサイド、t‐ブチルパーオキサイド、イソプロピルベンゼンモノヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t‐ブチルパーオキソピヴァレート、ジベンゾイルパーオキサイド、ビシクロヘキシルパーオキシジカルボネート及びジアセチルパーオキシジカルボネートのような酸化剤及び例えば、ナトリウム‐、カリウム‐、アンモニウム‐亜硫酸‐及び亜硫酸水素‐、ナトリウム‐、カリウム‐及び亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレート並びにアスコルビン酸のような還元剤からなるレドックス開始剤系であり、場合によっては熱分解により遊離のラジカルを形成することができる酸化剤は単独でも用いることができ、並びに例えばH/Fe+2/Hの系のような触媒性開始剤系である。開始剤の割合は、モノマー成分に対して好ましくは約0.01〜5重量%、特に約0.1〜3重量%である。
【0022】
水不溶性の安定化コロイドの製造の際には、これにより安定化される分散物と同様に乳化剤が加えられないか、あるいはこれらに対して水に再分散可能な分散物粉末のモノマー割合に対して約3重量%より少ない、好ましくは約2重量%より少ない、特に約1重量%より少ない量の乳化剤が加えられることが好ましい。
【0023】
好適な乳化剤は、非イオン、アニオン性、カチオン性及び/又は両性の性質を有するものが用いられるが、特にカチオン性乳化剤はあまり好ましくない。例えば、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、ヒドロキシアルカノール類のスルフェート、アルキル‐及びアルキルアリールジスルフェート、スルホン化された脂肪酸、ポリエトキシ化されたアルカノール類及びアルキルフェノール類のスルフェート及びホスフェート並びにスルホコハク酸のエステル、例えば直鎖及び/又は分枝のC‐〜C22‐のアルカノール1モルに対して5〜50モルのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキシドの付加体であるポリアルコキシレートのような多付加物、アルキルフェノール類、脂肪酸、脂肪酸アミン、一級及び/又は二級のアルキル‐アミンが用いられ、上記それぞれのアルキル基は、好ましくは直鎖及び/又は分枝のC‐〜C22‐のアルキル基である。
【0024】
水不溶性の安定化コロイド及び/又は水性分散物の重合の際には、製品の性能を最適化するために連鎖調整剤を用いることができる。一般にこれはすでに安定化コロイドの合成の際に加えられていることが好ましい。最適の使用量は、所期の分子量に従い、とりわけ使用される連鎖調整剤に基づいて決められ、安定化コロイドのモノマーに対して、もしくは水性分散物の形成のために加えられる他のモノマーに対して、約0.01〜5重量%、特に約0.05〜2.5重量%である。最適な連鎖調整剤は、単独又は組み合わせて用いられ、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n‐ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドのような2〜8の炭素原子を持つケトン及びドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタン、チオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸及びチオグリセロールである。好ましい連鎖調整剤は、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタンである。さらに、それぞれのポリマー相の分子量は、開始剤‐濃度及び/又は反応条件、たとえば温度及び/又はモノマー‐添加速度のような別のパラメーターによって調節することも可能である。
【0025】
水不溶性の安定化コロイド並びに引続いて製造される水性の分散物は、製法パラメーターに関して本質的な制限はない。従って、温度は約20〜110℃、好ましくは約50〜100℃、特に約60〜95℃でありうる。それぞれの反応圧力は本質的に、重合されるモノマーによる。これらが反応温度において液状であれば、一般にわずかに減圧であるか、又は常圧で充分である。例えば、エチレンのような気体状のモノマーを共重合するのであれば、100バールまで又はそれより大きくすることができる。
【0026】
分散物の製造は一般に2‐又は多段階重合で行なわれ、その最初の段階が水不溶性の安定化コロイドの製造である。好適なプロセス制御及び引き続いて導入されるモノマーの対応する選択により、水性分散物の不均一化が任意的に行なわれる。
【0027】
最初の段階で製造される水不溶性の安定化コロイド割合は、得られる分散物の固形分に対して、一般に約2〜50重量%、好ましくは約5〜40重量%、特に約10〜30重量%である。
【0028】
一般に、得られる水性分散物は、水に不溶性の安定化コロイドと同様に、さらに分離して使用される場合には、有機揮発性成分(VOC)の小さい割合を有することが好ましい。これは、常圧において250℃よりも低い沸点を持つ有機成分と理解される。これには例えば、未反応モノマー及びモノマー中に含まれる非重合性の不純物や重合の副生成物が含まれる。このVOCの量は、水性分散物もしくは水不溶性の安定化コロイドの固形分に対して、適切には約2000ppmよりも少なく、好ましくは約1000ppmより少なく、特に約500ppmより少なく、非常に好ましくは約250ppmより少ない。
【0029】
理想的には、水性分散物及び/又は水不溶性の安定化コロイドの製造のための反応実施は、さらなる残留モノマーの低減を行なわなくてもよいようにしなければならない。しかし、残留モノマーの引続いての重合により及び/又は残留モノマー及び場合によっては揮発性の有機成分を、水蒸気及び/又はガスの導入によってより物理的に除去することにより行なうことが必要となることもある。
【0030】
水不溶性の安定化コロイドの粒径は、約50〜2000nm、好ましくは約80〜1000nm、特に約100〜500nmであり、得られる分散物は約0.1〜5μm、好ましくは約0.2〜2μm、特に約0.25〜1.5μmである。ここで、粒径は光散乱法で測定され容積平均として示される。
【0031】
水不溶性の安定化コロイド及び水性分散物の界面動電位は強調される必要はない。従って、界面動電位は一般に、電場で測定して、約−2.5mV又はそれより小さく、好ましくは約−5mV又はそれより小さく、特に約−7.5mV又はそれより小さくても充分である。
【0032】
水不溶性の安定化コロイドの固形分は一般に、約15〜75重量%、好ましくは約30〜70重量%、特に約40〜65重量%であり、そして水性分散物のそれは、約30〜75重量%、好ましくは約40〜70重量%、特に約45〜65重量%である。
【0033】
用いられるモノマーから、製造された共重合体及び従ってエマルジョン重合体のガラス転移温度は各々、経験的に計算され、また実験的に求めることができる。公知のフォックスの式(テー.ゲー.フォックス、Bull. Am. Phy. Sci.(serll) 1, 123 (1956)及びウルマン技術化学百科事典19巻、4版、Verlag Chemie、 Weinheim、1980、17/18頁)により、経験的に計算される: 1/ T9 = xA/ TgA + xB/ TgB+ ... + xn/ Tgn、ここでxA、 xB ...は用いられるモノマーA、B、...の量的分数(重量%で)であり、そしてTgA、 TgB、...は、各々のホモ重合体の絶対温度でのガラス転移温度である。これらは、例えばウルマン工業化学百科事典、VCH、 Weinheim、A21(1992)巻、169頁に掲載されている。共重合体のガラス転移温度Tgを決めるその他の可能性は、実験的な決定であり、例えばDSCであり、ここでは中点温度が用いられる(ASTM D3418−82に従う中点温度)。
【0034】
本発明を有利に実施するには、分散物の安定化のために使われる水不溶性の安定化コロイドの、ASTM D3418−82に従う中点温度として測定されたガラス転移温度Tgが約0と80℃の間、好ましくは約5と70℃の間、特に約10と60℃の間であることが望ましく、引き続いて製造される水性分散物のホモ‐又は共重合体のガラス転移温度Tgは、約−50と+80℃の間、好ましくは約−40と+50℃の間、特に約−20と+30℃の間であり、水不溶性の安定化コロイドのガラス転移温度が引き続いて製造される重合体のそれよりも高い方がしばしば有利である。
【0035】
しばしば、使用にあたり分散物が膜を形成することが好ましい。この場合、DIN53787に従って測定した50%の水性分散物組成物の最低膜形成温度(MFT)は、合目的的には約+30℃より低く、好ましくは約+20℃より低く、特に約+10℃より低くすべきである。最低膜形成温度が高すぎる場合、分散物の固形分に対して約5重量%まで、特に約2重量%までの量の膜形成助剤を加えることもできる。
【0036】
本発明の水性分散物は、驚くべきことに水に再分散可能なポリマー粉末の製造に適している。そのためには非イオン、アニオン性、カチオン性及び/又は両性イオンの性質を有するひとつ又はそれより多くの水溶性ポリマー、好ましくは非イオン性及びアニオン性のポリマー、が水性分散物に添加されることがしばしば役に立つ。このポリマーの量は一般に分散物の固形分に対して約1〜15重量%であるが、必要によりそれより多くてもあるいは少なくても良い。しばしば、約3〜8重量%の量が好ましい。
【0037】
好適な水溶性ポリマーは例えば、ひとつ又はそれより多くの、分子量2000〜400000のポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルアセテート、好ましくは約70〜100モル%、特に約80〜98モル%の加水分解率及び4%水性溶液中でのヘプラー粘度が好ましくは1〜100mPas,特に約3〜50mPas(DIN53015に従い20℃で測定)を有する全部‐又は部分的に加水分解された及び/又は変性された全部‐又は部分的に加水分解されたポリビニルアルコール、並びにメラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタレンホルムアルデヒドスルホネート、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドのブロック共重合体、スチレン‐マレイン酸‐及び/又はビニルエーテル‐マレイン酸‐共重合体である。
【0038】
引き続いての乾燥は、好ましくは噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥及び/又は急速乾燥により行なわれる。噴霧乾燥が特に好ましく、多くの場合、約120と180℃の間の入口温度及び約50と100℃の間の出口温度が望ましい。
【0039】
水性分散物及び/又は水に再分散可能なポリマー粉末には、乾燥の前、間及び/又は後にその他の添加剤が添加されることができる。その他の添加剤は、ポリマー分散物、疎水化剤、特に脂肪酸並びにその塩及びエステル、シラン及び/又はシロキサン、気孔形成剤、湿潤剤、消泡剤、膜形成助剤、硬化‐及び固化促進剤、硬化遅延剤、増粘剤、殺生物剤、消泡剤、分散助剤、セメント液化剤、ポリカルボキシレート、ポリカルボキシレートエーテル、ポリアクリルアミド、保水剤、セルロース繊維及びセルロースエーテル、デンプンエーテル、グアーエーテル、ブルーミング、沈降及び/又は浮遊の低減のための添加剤、ひとつ又はそれより多くの、分子量2000〜400000のポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルアセテート、好ましくは約70〜100モル%、特に約80〜98モル%の加水分解率及び4%水性溶液中でのヘプラー粘度(Hoepplerviskositaet)が好ましくは1〜100mPas,特に約3〜50mPas(DIN53015に従い20℃で測定)を有する全‐又は部分鹸化の及び/又は変性された全‐又は部分鹸化のポリビニルアルコールのような粉末状の水溶性ポリマー、充填剤、顔料並びに例えば水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム並びに水酸化アルミニウムのような、例えばアルカリ‐及び/又はアルカリ土類塩の酸化物及び/又は水酸化物のような、水とアルカリ性に反応する粉末、及び/又は粉末塊化低減のための添加剤である。液状の成分は好ましくは乾燥の前又は間に添加され、しかし後から粉末上に噴霧することもできる。粉末状の成分は、好ましくは噴霧乾燥の間又は後に添加することができるが、液状分散物は乾燥工程の前に加えることもできる。
【0040】
シラン、シランエステル、シリコーン及び/又はシロキサンとしては、原則として全ての有機珪素化合物が用いられる。しかしながら、必須ではないが、使用される有機珪素化合物の常圧における沸点があまり低くない、好ましくは約100℃又はそれより高いことが有利である。有機珪素化合物は、水に可溶性、不溶性又は部分的にのみ可溶性であることができる。ここで化合物は、全く水溶性を持たないか又は限定的に水溶性を有することが好ましい。これらは、式Si(OR‘)を有する珪酸エステル、式Si(OR’)4−n、但しn=1〜3、を有するオルガノシロキサン、式RSi(SiRSiR、但しn=0〜500で、好ましくはn=0〜8、を有するポリシラン、一般式RSi(OR’)(OH)(4−c−d−e−f)/2の単位からのジ‐、オリゴ‐及びポリシロキサンであり、ここでc=0〜3、d=0〜2、e=0〜3、f=0〜3及び各単位の合計c+d+e+fが高々3.5であり、R‘は同一の又は異なる、1〜4のC‐原子を持つアルキル残基又はアルコキシアルキレン残基であり、好ましくはメチル又はエチルを意味し、及びRは同一の又は異なる、分枝又は非分枝の1〜22のC‐原子を持つアルキル残基、3〜10のC‐原子を持つシクロアルキル残基、2〜4のC‐原子を持つアルキレン残基、6〜18のC‐原子を持つアリール‐、アラルキル‐、アルキルアリール残基を意味し、ここで前記Rは、フッ素又は塩素のようなハロゲンで、エーテル‐、チオエーテル‐、エステル‐、アミド‐、ニトリル‐、ヒドロキシル‐、アミン‐、カルボキシル‐、スルホン酸‐、無水カルボン酸‐及びカルボニル基で置換されていることができ、ポリシランの場合、RはOR’の意味も持つことができる。
【0041】
特別な実施態様は官能基を持つ少なくともひとつの他の有機成分の添加である。この成分は液状であれば、好ましくは水性分散物又は水に再分散可能なポリマー粉末にそれらの製造の間に加えられるか、粉末状に変換される。これが粉末状であれば、水に再分散可能なポリマー粉末に乾燥の間又は後に混合することができ、又は溶解又は分散状態で水性分散物と混合することができる。官能基を有するこの有機成分は、好ましくはアルカリ媒体中でそれ自身及び/又は別の化合物と反応する。例えばそのような化合物は、 場合によってはポリオールのようなヒドロキシ化合物と一緒に加えることができる、エポキシド、エポキシ樹脂、オリゴ‐及び/又はポリアミン、少なくとも3つの炭素原子を有する、マスクされた二官能性アルデヒド、シラン、シロキサン、イソシアネ―トのような架橋剤であり、ホウ酸及び/又はホウ砂及び/又はカルボジイミド‐、カルボキシル‐及び/又はエピクロロヒドリン基を有する化合物のような架橋剤である。
【0042】
特別に好ましくは、他の添加物は多糖エーテル、特にセルロース‐及び/又はデンプンエーテル、シラン、シランエステルのような疎水化剤、脂肪酸並びにその塩及びエステル、特に天然樹脂、セルロース繊維に基づくブルーミング低減のための剤、消泡剤及び/又は顔料である。
【0043】
他の添加物の割合は、分散物の固形分に対してもしくはポリマー粉末に対して、例えば界面活性物質については非常に少なく、そして約0.01重量%又はそれより大、特に約0.1重量%又はそれより大であるが、一般に約10重量%、特に5重量%を超えない。他方では、例えば混合される顔料の割合はより高く、100重量%を超えることさえある。
【0044】
本発明に従う水不溶性の安定化コロイドは、水性の、ラジカル重合によって製造される分散物の安定化にのみ使用できるのではない。場合によってはそれは、その他にも用いられ、例えばシラン‐及び/又はシロキサン分散物、樹脂酸分散物、ロジン−及びロジンエステル分散物の安定化のため、噴霧助剤として、及び/又は他の有機及び/又は無機化合物、特に疎水性及び/又は水不溶性の物質のカプセル封入のために用いられる。
【0045】
本発明に従う水性分散物及び水に再分散可能なポリマー粉末は、鉱物性硬化系、特に水硬性、潜在水硬性及び非水硬性の硬化系における有機ポリマー結合剤としての使用が好ましく見出されており、ここで後者は非鉱物性硬化系、特にセメントを含まない漆喰、分散着色剤、印刷インク及び/又はインクジェット着色剤のような着色剤、織物、接着剤において、木材、不織布、紙ための及びこれらの製造のための結合剤として、及び/又はプレス加工品及び成形体の結合剤として空気及び水の影響下で反応する。
【0046】
本発明に従う水性分散物及び/又は水に再分散可能なポリマー粉末を含む鉱物性硬化系は、好ましくはタイル接着剤、耐熱性モルタル、レベリング剤、修理用モルタル、石コウ‐及び/又は石灰‐及び/又はセメント‐漆喰、継目モルタル、密閉剤、充填剤、壁紙ペースト、寄せ木接着剤、粉末着色剤、粘着補強用、下塗り用モルタルとして、及び/又は石油‐、天然ガス‐、及び/又は地熱‐ボーリング坑用のセメントを基礎とする材料として用いられる。
【実施例】
【0047】
本発明は、以下に記載される実施例によってさらに詳しく説明されるが、そこでは次の略語が用いられる。
【0048】
AMPS 2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のナトリウム塩(ルブリゾール(Lubrizol)モノマーAMPS2403)の50重量%水溶液
MMA メチルメタクリレート
BA ブチルアクリレート
ALMA アリルメタクリレート
DT 1‐ドデカンチオール
APS アンモニウムパースルフェート
TBHP-70 tert‐ブチルヒドロパーオキサイドの70重量%水溶液
SFS ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート
PVOH 加水分解率88モル%及び4%水溶液中でのヘプラー粘度4mPasを有する、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール
【実施例1】
【0049】
A) 水不溶性の安定化コロイドSK-1及び引き続いての分散物Disp-1の製造
2.0のAMPS、0.3gのDT及び350gの水が機械的攪拌機の付いた2‐リッター重合反応器に入れられ、85℃に加熱された。6.2gの水に溶解させた0.12gのAPS溶液が添加された1分後、42gのAMPSと、80gのMMA、40gのBA及び2.4gのDTからなる混合物並びに6.2gの水に溶解させた0.12gのAPSの溶液の並行的な導入が開始され、1時間で連続的に加えられた。その後、さらに半時間反応温度にて反応が行なわれた。得られた水不溶性の安定化コロイドは白色の低粘度の分散物として生じた。
【0050】
反応温度はその後75℃に調整された。3gのTBHP−70及び、20gの水に溶解させた0.2gのSFSの溶液が別々に直ちに添加され後、260gのMMA、340gのBA及び0.6gのALMAからなるモノマー混合物を2時間で、及び60gの水に溶解させた1.8gのSFSの溶液が2.5時間で連続的に導入された。該モノマー配量の終了後に、0.57gTBHP−70が加えられた。SFS導入の終了後及び発熱反応がもはや観察されなくなった後、12gのMMA、0.37gのTBHP−70並びに5gの水に溶解させた0.26gのSFSの導入が行なわれ、その際同時に温度が90℃に高められた。さらにこの温度での30分間後、室温に冷却された。固形分63重量%、23℃でのブルックフィールド粘度1700mPas、pH値2.1及びラテックス部分の粒径(容積平均)0.85μmを有する白色の分散物が得られた。
【0051】
B) 水に再分散可能なポリマー粉末PP-1の製造
457.1gの分散物Disp-1及びPVOH25重量%水溶液49.2gが混合され、水で固形分25重量%まで希釈された。この混合物は、120℃の入口温度で通常の噴霧乾燥により、白色で非流動性の、水中で良好に再分散する粉末に乾燥された。この時噴霧塔に重大な汚染は確認されず、収量は標準の範囲内であった。得られた粉末は、次いで18重量%の市販のカーボネ−トと混合された。50重量%の水性再分散物でその後製造された粉末の膜は、引き続いて行なわれた引張り‐延伸測定で良好な値を示した。これは、一方では良好な再分散性を、そして他方では引き続いての良好な膜形成性に起因している。
【実施例2】
【0052】
A) 水不溶性の安定化コロイドSK-2の製造
12gのAMPS、1.8gのDT及び685gの水が機械的攪拌機の付いた2‐リッター重合反応器に入れられ、85℃に加熱された。30gの水に溶解させた7gのAPS溶液が添加された1分後、252gのAMPSと、480gのMMA、240gのBA及び14.4gのDTからなる混合物並びに30gの水に溶解させた7gのAPSの溶液の並行的な導入が開始され、1時間で連続的に加えられた。その後、さらに半時間反応温度にて反応が行なわれた。固形分50重量%、安定化コロイド部分の粒径(容積平均)0.36μm及び100rpmでスピンドルNo. 2で23℃において測定したブルックフィールド粘度190mPasを有する白色の低粘度の分散物の形で、水不溶性の安定化コロイドが得られた。
【0053】
B) 分散物Disp-2の製造
275gの水不溶性の安定化コロイドSK-2及び240gの水が機械的攪拌機の付いた2‐リッター重合反応器に入れられ、75℃に加熱された。5gのTBHP-70及び、20gの水に溶解させた0.2gのSFSの導入の後、260gのMMA、340gのBA及び0.6gのALMAからなるモノマー混合物を2時間にわたり、及び180gの水に溶解させた1.8gのSFSを2.5時間にわたり、別々に導入された。モノマー導入の終了後、さらに0.57gのTBHP-70が加えられた。SFS導入の終了後及び発熱反応がもはや観察されなくなった後、12gのMMA、0.37gのTBHP-70並びに、5gの水に溶解させた0.26gのSFSの導入が行なわれた。同時に温度が90℃に高められた。さらにこの温度で30分後、室温に冷却され、反応器から取り出された。固形分57.0重量%、ラテックス部分の粒径(容積平均)0.40μm及び100rpmのスピンドルNo. 3で23℃において測定したブルックフィールド粘度330mPasを有する白色の低粘度の分散物が得られた。
【0054】
C) 水に再分散可能なポリマー粉末PP-2の製造
225gの分散物Disp-2及びPVOH25重量%水溶液58gが混合され、水で固形分35重量%まで希釈された。この混合物は、実施例1B)と同様にして噴霧され、充填剤と混合された。白色で自由流動性の、水に良好に再分散する粉末が得られ、この時噴霧塔に重大な汚染は確認されず、収量は標準の範囲内であった。
【0055】
比較例1
ドイツ公開特許公報19506331号の実施例1が繰り返された。この分散物435.8gがPVOH25重量%水溶液82.6gと混合され、水で固形分25重量%まで希釈され、そして実施例1B)と同様にして噴霧された。粒子が粗く、自由流動性でない、水中で強く攪拌しても再分散しない粉末が20%という非常に低い収量で得られた。再分散物から粉末フィルムを作ることは出来ない。
【実施例3】
【0056】
カゼインを含まない自己溶解性のレベリング剤における応用技術的テスト
乾燥モルタルに対して21重量%の水を入れてかき混ぜて、表1に従う乾燥モルタル組成物が製造された。次いで100gの乾燥モルタル組成物が、60mmのプロペラ撹拌機で、950rpmの速度で60秒間撹拌された。その際、対応する量の混合水が撹拌下に加えられた。3分間の成熟時間の後、モルタルが測定前にもう一度15秒間撹拌機で混合された。EN12706に従い拡がりが測定され、そして6mmノズルを有するフォード粘着計中でDIN53211によりモルタルの通過時間が測定された。
【0057】
[表1] 用いられたレベリング剤の乾燥モルタル組成
PZアンネリーゼミルケ(Anneliese Milke)52.5Rプレミアム 23.00重量%
HACフォンジュラファルゲ(Fondu Lafarge) 12.00重量%
石灰水和物 1.00重量%
硬石膏No.1 4.10重量%
珪砂 0.1-0.3mm 42.20重量%
炭酸カルシウム オムヤカルプ(Omyacarb)10BG 15.00重量%
硬化遅延剤 0.18重量%
粉末‐消泡剤 0.12重量%
セルロースエーテル 0.08重量%
炭酸リチウム 0.20重量%
ポリカルボキシレート‐液化剤 0.15重量%
ポリマー粉末 2.00重量%
【0058】
[表2] EN12706に従う拡がり及び6mmノズルを有するフォード粘着計中でDIN53211により表1に従うレベリング剤の通過粘度の測定


a) リングが撹拌プロセス開始後それぞれ5、10分後に取り除かれた。
b) 参照ポリマー粉末Ref‐1は、ポリビニルアルコールで安定化されたエチレン-酢酸ビニル-共重合体に基づく、この応用に普通である、商業的に入手可能なポリマー粉末である。
【0059】
検査された物質のレオロジー的挙動は、一方では本発明の粉末PP-1の拡がりが商業的に用いられている粉末と比較可能な値となることを示している。他方では、PP-1の使用によりレベリング剤のいわゆる「蜂蜜状の」粘さが得られ、これは完全にカゼイン含有のレベリング剤と比較しうる。特に適用物質の表面が自己平坦化する(カゼインを含まない物質ではほとんど得られない)ので、これは加工者にとって最大の望ましい性質である。
【実施例4】
【0060】
セメントを含まない合成樹脂漆喰における応用技術的テスト
良好に加工された粘さまで水とともに攪拌された、表3に従う乾燥モルタル組成物が製造された。これは、厚さ1mm、幅6.8cm及び長さ30cmの層として繊維セメント板の上に塗りつけられ、2日間、23℃及び50%相対湿度で放置された。
【0061】
[表3] 用いられたセメントを含まない合成樹脂漆喰の乾燥モルタル組成。分散物に用いられた量は分散物の固形分に対するものである。
デュルカル(Durcal)65 30.0重量%
珪砂 0.1-0.5mm 51.7重量%
クロノス(Kronos)2055 3.0重量%
粉末‐消泡剤 0.1重量%
セルロースエーテル 0.2重量%
分散物/ポリマー粉末 15.0重量%
【0062】
ナイロン毛ブラシ及び0.25重量%ナトリウムドデシルサルフェート水溶液を用いてDIN53778に関して湿潤摩擦耐性が試験された。摩擦回数2000の後、検体は乾燥され、6(破片なし; 極めて良好)から1(下地を除いて破片; 極めて劣悪)までの尺度で評価がなされた。
【0063】
[表4] 表3に従う乾燥モルタル組成物に対して使われた混合水量及び種々のポリマーと一緒に適用された合成樹脂漆喰の測定された湿潤摩擦耐性

a) 混合水量は重量%で表示され、分散物中に含まれる水分を含む、全部の加えられた水分含量に関する。
b) 評価尺度は、6“破片なし; 極めて良好”から1(下地を除いて破片; 極めて劣悪)までである。
c) 参照ポリマー粉末Ref‐2は、ポリビニルアルコールで安定化された酢酸ビニル-ベルサチン酸ビニル共重合体に基づく、この応用に用いられる、商業的に入手可能なポリマー粉末である。
【実施例5】
【0064】
セメントスラリー中の硬化反応の応用技術的テスト
API (米国石油協会)クラスGのセメントが97.2重量%、水に再分散しうるポリマー粉末2.2重量%、ヒドロキシエチルセルロースH100000YP2が0.15重量%及びメラミン-ベースのスルホン化された重縮合生成物が0.5重量%が、互いに混合されて、乾燥モルタル組成物が製造された。
【0065】
この組成物が950rpmの速度の60mmプロペラ撹拌機で水と60秒間撹拌され、その際混合水が撹拌下加えられた。水の量は、水-セメント比w/z 0.44となるように選択された。3分間放置された後、モルタルは常法により短時間手で攪拌され、次いで、DIN1164によるビカー‐ナーデル(Vicat‐Nadel)装置を用い、23℃及び50%相対湿度での硬化反応が測定された。
【0066】
図1には硬化曲線が書かれており、水に再分散可能なポリマー粉末PP‐1について上方の曲線が得られた。硬化開始は約10時間後で、かつ硬化終了は約11 1/4時間後であった。下方の曲線は、地中ボーリング孔に挿入される市販のスチレン-ブタジエン‐分散物について測定された。硬化開始は約17時間後で、かつ硬化終了は約20時間後であった。比較として、ポリビニルアルコールで安定化された水性のスチレン‐アクリレート‐分散物を基礎として製造されたポリマー粉末である、水に再分散可能なポリマー粉末Ref-3について測定され、硬化開始は約13時間後で、かつ硬化終了は約14 1/2時間後であった。
【0067】
硬化開始後のモルタルの急速な硬化は、種々の応用において都合が良く、例えば、レべリング剤では、長い加工時間ならびに早急な硬化及びそれにより早く所期の効果が得られる。本発明の分散物もしくは本発明のポリマー粉末を添加することにより、乾燥セメント組成物が加えられうる経費の掛る制御助剤による方法で行なわなくても、このような性質が得られる。さらに、この性質は地中ボーリング‐セメント固化、特に石油‐、ガス‐及び/又は地熱‐ボーリング孔における応用を見出す。驚くべきことに、本発明の分散物および本発明のポリマー粉末は、ポリマー粉末Ref-3の場合にそうであるように、使用される分散物又は使用されるポリマー粉末がゼリー状になることなしに、高められた温度、例えば90℃及び130℃で、同様の、特に直角で硬化反応を示すということも見出された。それ故、これは、高められた温度及び圧力での問題のない添加をも可能にする。
【0068】
実施例に示された応用の他に、本発明の水不溶性の安定化コロイド、分散物及び水に再分散可能なポリマー粉末は、他にも例えば修理用モルタル、タイル接着剤、耐熱性モルタル、漆喰‐及び/又は石灰‐及び/又はセメント‐漆喰、継目モルタル及び/又は密閉剤に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 最初の工程で、安定化コロイドの製造のために用いられるモノマー量に関して
a1) 約1〜90重量%の、場合によってプロトン化されていてもよい、少なくともひとつのスルフェート基及び/又はスルホネート基を含む少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、
a2) 約5〜99重量%の、20℃での水への溶解度が50g/lより小さい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、及び
a3) 約50重量%までの、20℃での水への溶解度が50g/lより大きい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー
のラジカル重合により、水不溶性の安定化コロイドを水中で製造し、次いで、
b) 少なくともひとつの他のオレフィン系不飽和モノマー及び少なくともひとつの開始剤を加え、該追加のオレフィン系不飽和モノマーのラジカル重合により水性分散物を得る、その際
c) 場合によっては、残存モノマーの減少を、残存モノマーの重合により、及び/又は水蒸気及び/又はガスを導入して残存モノマー及び場合によっては他の揮発性有機成分を物理的に除去することにより行なうことを特徴とする、
水不溶性の安定化コロイドで安定化された水性分散物の製造法。
【請求項2】
安定化コロイドの製造のために用いられるモノマー量に関して
a1) 約3〜50重量%、特に約5〜30重量%の、場合によってプロトン化されていてもよい、少なくともひとつのスルフェート基及び/又はスルホネート基を含む、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、
a2) 約20〜97重量%、特に約50〜95重量%の、20℃での水への溶解度が50g/lより小さい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー、及び
a3) 約30重量%まで、特に約20重量%までの、20℃での水への溶解度が50g/lより大きい、少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマー
のラジカル重合により、水不溶性の安定化コロイドを製造することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水不溶性の安定化コロイドの粒子の大きさが、光散乱法で測定した容積平均で、約50〜2000nm、特に約80〜1000nmであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくともひとつのスルフェート基及び/又はスルホネート基を含む少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマーが、(メタ)アクリレート‐、(メタ)アクリルアミド‐及び/又はビニル‐モノマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
(メタ)アクリレート‐モノマーが(メタ)アクリル酸‐スルホアルキルエーテルであり、(メタ)アクリルアミド‐モノマーが2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパン‐スルホン酸であり、及びビニル‐モノマーがスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及び/又はアリルスルホン酸であり、及び/又はそれらのアルカリ‐、アルカリ土類‐及び/又はアンモニウム塩であることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
安定化コロイドの製造のために、他の反応基を有する少なくともひとつのオレフィン系不飽和モノマーを共重合させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
他の反応基を有するモノマーの反応基が、エポキシ‐、エピハロヒドリン‐、アミン‐、アンモニウム‐、ヒドロキシル‐、アルデヒド‐、ケトン‐、酸無水物‐、アセト酢酸‐、カルボキシル‐、チオール‐、アルコキシシラン‐、シラノール‐、グリシジル‐、N‐メチロール‐、スルホン酸‐、アミド‐、アミジン‐、イミン‐、エステル‐及び/又はカルボニル基であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
他のオレフィン系不飽和モノマーが水不溶性の安定化コロイドの存在下に、ラジカル性のエマルジョン‐、懸濁‐、ミクロエマルジョン‐重合により連続的なモノマー供給‐及び/又はバッチ方式で、単独‐又は共重合体に転化され、その際モノマー供給方式におけるモノマーは前駆エマルジョンの形でも配量されてよいことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の分散物の製造法。
【請求項9】
他のオレフィン系不飽和モノマーは、ビニルエステル、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミド、マレイン酸及びそのエステル、スチレン及びスチレン誘導体及び/又はブタジエンが用いられることを特徴とする、請求項1又は8記載の方法。
【請求項10】
分散物の製造にあたり、得られる分散物の固形分に対して約2〜50重量%、特に約5〜40重量%の水不溶性の安定化コロイドが用いられることを特徴とする、請求項1、8及び9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
得られる分散物の粒子の大きさが、光散乱法で測定した容積平均で、約0.1〜5μm、特に約0.2〜2μmであることを特徴とする、請求項1及び8〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
分散物の安定化のために使用される水不溶性の安定化コロイドのガラス転移温度Tgが、ASTM D3418−82に従う中点温度として測定して、約0〜80℃、特に約5〜70℃であり、かつ次に製造される単独‐又は共重合体のガラス転移温度Tgが約−50〜+80℃、特に約−40〜+50℃であることを特徴とする、請求項1及び8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
分散物の固形分が約30〜75重量%、特に約40〜70重量%であることを特徴とする、請求項1及び8〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1及び8〜13のいずれか1項に従い得られた分散物を、場合によっては水溶性であるポリマー及び/又は他の添加剤と共に、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥又は急速乾燥により乾燥させることを特徴とする、水に再分散可能なポリマー粉末の製造法。
【請求項15】
水溶性ポリマーが部分的に加水分解されたポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドンであり、かつ他の添加剤がポリマー分散物、疎水化剤、脂肪酸並びにその塩及びエステル、シラン及び/又はシロキサン、気孔形成剤、湿潤剤、消泡剤、膜形成助剤、硬化‐及び固化促進剤、硬化反応剤、増粘剤、分散助剤、セメント液化剤、ポリカルボキシレート、ポリカルボキシレートエーテル、ポリアクリルアミド、保水剤、セルロース繊維及びセルロースエーテル、デンプンエーテル、グアーエーテル、ブルーミング、沈降及び/又は浮遊の低減のための添加剤、充填剤、及び/又は粉末塊化低減のための添加剤であり、乾燥の前、間及び/又は後に添加されることを特徴とする、請求項14項記載の方法。
【請求項16】
請求項1の工程a)〜請求項8のいずれか1項記載の方法で得られる、水不溶性の安定化コロイド。
【請求項17】
水不溶性の安定化コロイドが請求項2に従い製造される、請求項16記載の水不溶性の安定化コロイド。
【請求項18】
請求項1及び8〜13のいずれか1項記載の方法で得られる分散物。
【請求項19】
水不溶性の安定化コロイドが請求項2に従い製造される、請求項18記載の分散物。
【請求項20】
請求項14〜15のいずれか1項記載の方法で得られる、水に再分散可能なポリマー粉末。
【請求項21】
水不溶性の安定化コロイドが請求項2に従い製造される、請求項20記載の水に再分散可能なポリマー粉末。
【請求項22】
請求項16又は17 に従い製造される水不溶性の安定化コロイドを、ポリマー分散物、シラン‐及び/又はシロキサン分散物、樹脂酸分散物、ロジン‐及び/又はロジンエステル分散物の安定化のために、噴霧助剤として及び/又は有機及び/又は無機化合物のカプセル形成のために使用する方法。
【請求項23】
請求項18又は19に従う分散物及び請求項20又は21に従う水に再分散可能なポリマー粉末を、鉱物性硬化系、特に水硬性、潜在水硬性及び非水硬性の硬化系における有機ポリマー結合剤として使用する方法であって、後者は、非鉱物性硬化系、特にセメントを含まない漆喰、分散着色剤、印刷インク及び/又はインクジェット着色剤のような着色剤、織物、接着剤において、空気及び水の影響下で木材、不織布、紙のための結合剤として及びこれらの製造のための結合剤として、及び/又はプレス品及び成形体の結合剤として反応することを特徴とする方法。
【請求項24】
鉱物性硬化系がタイル接着剤、耐熱性モルタル、レベリング剤、修理用モルタル、石コウ‐及び/又は石灰‐及び/又はセメント‐漆喰、継目モルタル、密閉剤、充填剤、壁紙ペースト、寄せ木接着剤、粉末着色剤、及び/又は石油‐、天然ガス‐、及び/又は地熱‐ボーリング孔用のセメントを基礎とする材料であることを特徴とする、請求項23項記載の使用方法。


【図1】
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【公表番号】特表2010−510342(P2010−510342A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536737(P2009−536737)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062423
【国際公開番号】WO2008/059034
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】