説明

切削ウォームのねじ山間隙にドレッシング工具をセンタリングするための装置ならびに方法

【課題】ドレッシング工具のセンタリングを自動的に行い大幅に時間短縮することを可能とする方法並びに装置を得る。
【解決手段】ドレッシング工具(27)を予備センタリングするために軸方向の移動を伴わずに放射方向の装入によって回転する切削ウォーム(11)の周囲部と接触させるとともに切削スピンドル(16)の音響センサの信号および回転角度センサ(18)を使用してねじ山間隙(36)の横断が開始または終止する切削ウォーム(11)の回転角度位置を検出する。次に、ねじ山間隙(36)内に装入されるドレッシング工具(27)を正確にセンタリングするために軸方向の移動によって左右のフランク(38,39)と接触させ、この際音響センサ信号によって予め設定可能な信号レベルを超過した際に軸方向の装入を停止するとともに、ここで到達したドレッシング工具(27)の接触位置から切削ウォームのねじ山間隙(36)の正確な中央を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切削ウォームのねじ山間隙にドレッシング工具をセンタリングするための装置ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車の回転切削は、その高い品質と生産性のため硬質加工方法のひとつに挙げられており、また歯車の大量生産として広く採用されている。いわゆる切削ウォームと呼ばれる切削工具は、シリンダ状の切削盤であり、これはその周囲においてラックに似た渦巻き状の形状を有し、切削に際して前処理された加工材の歯と回転噛合する。切削ウォームの輪郭形成は、硬質材結晶で被覆された回転するドレッシング盤によって実施され、これはドレッシングに際して切削ウォームのねじ山間隙に噛合し、それぞれ切削ウォームのねじ山のフランクの1つに、または両方に同時に接触して、その傾斜に応じて切削盤軸に平行に移動することができる。
【0003】
既に輪郭形成された切削ウォームを再度使用するか、または新しく予め歯形成された切削ウォームを使用する場合、後に行う自動ドレッシング処理の前提条件として、オペレータは、存在する切削ウォームのねじ山の軸方向位置を手動で検知して、その後ドレッシング工具の軸方向位置を調整する必要がある。この際、ねじ山の中心の検知は、ドレッシング工具を切削ウォームのねじ山間隙に装入して、その切削ウォームのフランクとの接触が視覚的または聴覚的に確認されるまで切削ウォーム軸に平行に移動させることによって達成される。この方法は、ドレッシング工具と切削ウォームとの間の接触が噛合部分のアクセスの悪さのため感知しにくい上に、特にCBN切削ウォーム(固体窒化ホウ素)を使用する際にドレッシング深度が小さいためドレッシング工具のセンタリングは非常に精密なものでなければならないことから、時間がかかるとともに熟練を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、ドレッシング工具のセンタリングを自動的に行い大幅に時間短縮することを可能とする方法ならびに装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題は、請求項に記載された特徴を組み合わせることによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】切削ウォームを有する切削スピンドルと本発明に係る方法を実施するためのドレッシング装置の構成を示す平面図である。
【図2】ドレッシング工具と切削ウォームとが接触する状態を示す説明図である。
【図3】切削ウォームと成形ローラセットとの間の接触を示したものであり、その回転軸が切削ウォーム軸に対して予備センタリングのためにわずかに傾斜した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明に係る種々のドレッシング工具の実施例におけるセンタリング動作について、添付図面を参照しながら説明する。
【0008】
図1には切削ウォーム11をドレッシングするためのドレッシング装置10が示されている。ドレッシング装置は、例えばドイツ特許第OS19706867.7号公報に従って構成することができる。ドレッシング装置は十字型スライドを備えており、ここで第1のスライド12は装置スタンド14のガイド13に沿って切削スピンドル16の軸15に垂直に移動することができる。切削ウォーム11はスピンドル16上に取り付けられており、これはモータ17によって駆動されるとともに回転角度センサ18に接続されている。スライド12上の軸15に平行なガイド19内には第2のスライド20が移動可能に配設されている。スライド12,20の移動は、それぞれモータ21,22および変位センサ23,24を使用して実施される。スライド20上にはドレッシングスピンドル26を駆動するドレッシングモータ25が取り付けられており、このドレッシングスピンドル上にはドレッシング工具27が装着されている。ドレッシングスピンドル26は、さらにガイド13,19の方向に対して垂直な軸28周りに回転可能とすることができる(ドイツ特許第OS19706867.7号参照)。
【0009】
スライド20上には、さらに音響センサ35が取り付けられている。全てのサーボモータ17,21,22、変位センサおよび回転角度センサ18,23,24、ならびにモータ25および音響センサ35は制御装置40に接続されている。
【0010】
図1に示されたものと異なって、切削ウォーム11とドレッシング工具27との間の相対移動のために、さらに切削スピンドル16を十字型スライド上に取り付け、このためにドレッシングスピンドル26をスタンドに固定的に取り付けることもできる。この変更例は、特に加工材料の切削に際して切削ウォーム11が軸15に平行および垂直に移動する際に効果的である。この場合、ドイツ特許第OS19625370.5号公報に示されているように、装置の同一のNC軸を切削およびドレッシングの両方に使用することができる。
【0011】
ドレッシング工具27の動作は2つのステップからなる。
【0012】
第1のステップは、ドレッシング工具を予備センタリングするよう作用する。このため、切削ウォーム11とドレッシング工具27が回転され、ドレッシング工具27は、スライド20が静止している際に、スライド20上に固定されている音響センサ35が切削ウォーム11の周囲との接触を感知するまで切削ウォーム11に対して放射方向に装入される。センサ35の信号に応答してスライド12が停止する。その後回転角度センサ18によって、切削盤ねじ山間隙36を越えることにより接触が終止または再開する切削ウォーム11の回転角度が測定される。この結果、制御装置40は、ドレッシング工具27が切削ウォーム11のねじ山間隙36の略中央に位置する切削スピンドルの回転角度を検出する。
【0013】
音響センサ35の信号を切削ウォームのねじ山間隙36の軸方向の位置に対して明確に対応させることを保持するため、ドレッシング工具27はその周囲部において、図1および図2(b)に示されるように、環形状、または切削ウォームのねじ山の基底部37が線接触でドレッシングされる場合は、図2(a)に示されるように、実質的にシリンダ形状であるが、わずかに中高に形成される。ドレッシング成形ローラ42の実質的にシリンダ形状の周囲部41は、その中心部が、周囲部41の両方の軸方向端部に比べて、わずかに、すなわち最大0.5mm大きくなる。
【0014】
予備センタリングの一例は、回転するドレッシング工具27を静止している切削ウォーム11の基底線と手動で接触させ、これに続いてドレッシング工具を切削ウォーム11の基底線に沿って移動する間に、ねじ山間隙36を軸方向に越える際にドレッシング工具27と切削ウォーム11との間の接触が中断される基底線部分の開始点と終局点とを音響センサ35によって検出する。
【0015】
精密センタリングを行う第2のステップにおいて、回転するドレッシング工具27は、ステップ1において検出された、同様に回転している切削ウォーム11のねじ山間隙36の中央の歯根の近くに装入され、この際スライド20は切削スピンドル16の回転角度に同期してy方向に移動する。このy移動に、音響センサ35によって切削ウォーム11の両方のフランク38,39の接触が前後して検出されるまで、y方向における正および負の装入移動が追加的に重ね合わされる。この際切削スピンドル16の回転角度と組み合わせて検出される追加的な移動の中間値が正確なねじ山間隙36の中央を感知させる。
【0016】
このようにして検出されたねじ山間隙36の中央を前提にして、ドレッシング工具27を切削ウォーム11のねじ山の最深部に装入した後ドレッシング処理を開始することができる。
【0017】
ドレッシング成形ローラ42(図2(a))または円曲成形ローラ43(図2(b))による切削ウォーム11の輪郭形成に際して、個々の工程は前述したものと同様に実施される。これに対して、輪郭形成に2つの個別のドレッシング工具47,48(図2(c))またはドレッシングスピンドル26上に同軸に取り付けられた複数のドレッシング工具45,46からなる、いわゆるローラセット44(図3)が使用される場合、予備センタリングを実施するために使用するドレッシング工具45,47は、わずかに拡大された外径を有し、これによってステップ1において切削ウォーム周囲部がこれらのドレッシング工具から明確に離間する。
【0018】
図3に示されるように、ローラセットのドレッシング工具45,46が同じ直径を有する場合、ステップ1を実施する前にドレッシングスピンドル26を、幾つかのドレッシング装置においては他の目的で使用され、移動方向xおよびyに対して垂直な回転軸28周りにわずかに回転させることによって同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0019】
10 ドレッシング装置
11 切削ウォーム
12,20 スライド
13,19 ガイド
14 装置スタンド
15,28 軸
16 切削スピンドル
17,21,22 モータ
18 回転角度センサ
23,24 変位センサ
25 ドレッシングモータ
26 ドレッシングスピンドル
27,45,46,47,48 ドレッシング工具
35 音響センサ
36 ねじ山間隙
37 基底部
38,39 フランク
40 制御装置
41 周囲部
42 ドレッシング成形ローラ
43 円曲成形ローラ
44 ローラセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削スピンドル(16)の上に取り付けられたシリンダ状の切削ウォーム(11)のねじ山間隙(36)内にドレッシング工具(27)をセンタリングする方法であって、
前記切削ウォーム(11)は周囲を備え、前記周囲において前記ねじ山間隙(36)を画定するねじ山が形成され、前記ねじ山間隙(36)は基底部(37)と、相対向する第1フランク(38)と第2フランク(39)とを有し、
前記切削スピンドル(16)は回転角度センサ(18)を備えて、前記回転角度センサ(18)によって前記切削ウォーム(11)の回転角度が測定され、
前記ドレッシング工具(27)はドレッシングスピンドル(26)の上に装着され、
音響センサ(35)は前記切削スピンドル(16)または前記ドレッシングスピンドル(26)の近傍に配置され、
前記方法は予備センタリング工程を含み、前記予備センタリング工程は精密センタリング工程に引き続いてなされ、
前記予備センタリング工程は、
前記切削ウォーム(11)を回転させる工程と、
前記ドレッシング工具(27)を、軸方向の移動を伴わずに回転させる工程と、
前記音響センサ(35)が前記回転する切削ウォーム(11)の周囲との接触を感知するまで、前記回転するドレッシング工具(27)を前記切削ウォーム(11)に対して放射方向に装入する工程と、
前記ドレッシング工具(27)が前記ねじ山間隙(36)を越えることにより前記接触が終止又は再開する前記切削ウォーム(11)の回転角度位置を測定する工程であって、前記測定は接触を感知する前記音響センサ(35)を介してまた前記回転角度センサ(18)を介して行われてなる工程と、
前記ドレッシング工具(27)が前記ねじ山間隙(36)の略中央に位置する際の前記切削スピンドル(16)の回転角度を前記回転角度位置から判定する工程とを含み、
前記精密センタリング工程は、
前記ドレッシング工具(27)を前記切削スピンドル(16)の回転角度に同期して移動させながら、前記回転するドレッシング工具(27)を前記回転する切削ウォーム(11)の前記ねじ山間隙(36)の略中心に装入する工程と、
前記ドレッシング工具(27)を前記第1フランク(38)と第2フランク(39)とに接触させるために、前記ドレッシング工具(27)の移動に追加的な軸方向の移動を重ね合わせる工程と、
前記音響センサ(35)が予め選択された信号レベルを上回る信号を発した場合に、前記追加的な軸方向の移動を停止する工程と、
前記ドレッシング工具(27)の接触位置から前記ねじ山間隙(36)の正確な中心を計算する工程とを含んでなる前記方法。
【請求項2】
切削スピンドル(16)の上に取り付けられたシリンダ状の切削ウォーム(11)のねじ山間隙(36)内にドレッシング工具(27)をセンタリングする方法であって、
前記切削ウォーム(11)は周囲を備え、前記周囲において前記ねじ山間隙(36)を画定するねじ山が形成され、前記ねじ山間隙(36)は基底部(37)と、相対向する第1フランク(38)と第2フランク(39)とを有し、
前記切削スピンドル(16)は回転角度センサ(18)を備えて、前記回転角度センサによって前記切削ウォーム(11)の回転角度が測定され、
前記ドレッシング工具(27)はドレッシングスピンドル(26)の上に装着され、
音響センサ(35)は前記切削スピンドル(16)または前記ドレッシングスピンドル(26)の近傍に配置され、
前記方法は予備センタリング工程を含み、前記予備センタリング工程は精密センタリング工程に引き続いてなされ、
前記予備センタリング工程は、
前記切削ウォーム(11)を静止させた状態で前記ドレッシング工具(27)を回転させる工程と、
前記回転するドレッシング工具(27)を前記静止した切削ウォーム(11)の基底線と接触させる工程と、
前記ドレッシング工具(27)を前記基底線に沿って、前記静止した切削ウォーム(11)に対して軸方向に移動させる工程と、
前記ドレッシング工具(27)が前記ねじ山間隙(36)を越えたことによって前記ドレッシング工具(27)と前記切削ウォーム(11)との間の接触が中断された場合、そして接触が再度生じた場合に、前記音響センサ(35)を用いて前記ドレッシング工具(27)の前記軸方向の位置を検出する工程と、
前記ドレッシング工具(27)と前記切削ウォーム(11)との間の接触が中断及び再度生じた際の前記軸方向の位置を測定する工程と、
前記測定の結果から、前記ドレッシング工具(27)が前記ねじ山間隙の略中心にある際の前記ドレッシング工具(27)の軸方向の位置を判定する工程とを含み、
前記精密センタリング工程は、
前記切削ウォーム(11)を回転させる工程と、
前記ドレッシング工具(27)を前記切削スピンドル(16)の回転角度に同期して移動させながら、前記回転するドレッシング工具(27)を前記回転する切削ウォーム(11)の前記ねじ山間隙(36)の略中心に装入する工程と、
前記ドレッシング工具(27)を前記第1フランク(38)と第2フランク(39)とに接触させるために、前記ドレッシング工具(27)の移動に追加的な軸方向の移動を重ね合わせる工程と、
前記音響センサ(35)が予め選択された信号レベルを上回る信号を発した場合に、前記追加的な軸方向の移動を停止する工程と、
前記ドレッシング工具(27)の接触位置から前記ねじ山間隙(36)の正確な中心を計算する工程とを含んでなる前記方法。
【請求項3】
前記予備センタリング工程と前記精密センタリング工程は制御装置(40)を用いて自動的に行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドレッシング工具(27)は2つの盤(45,46)からなるローラセット(44)であり、あるいは前記ドレッシング工具(27)は2つの個別の盤(47,48)を含み、前記2つの盤は相異なる外径を有し、前記予備センタリング工程は外径がより大きい方の前記盤(45;47)を用いて行われる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドレッシング工具(27)は2つの盤(45,46)からなるローラセット(44)であり、前記方法は、前記予備センタリング工程を実施する前に、前記ドレッシングスピンドル(26)を前記切削スピンドル(16)に対して回転させる工程を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
シリンダ状の切削ウォーム(11)のねじ山間隙(36)内にドレッシング工具(27)をセンタリングする装置であって、前記切削ウォーム(11)は周囲を備え、前記周囲において前記ねじ山間隙(36)を画定するねじ山が形成され、前記ねじ山間隙(36)は基底部(37)と、相対向する第1フランク(38)と第2フランク(39)とを有し、前記装置は、
第1の軸(15)を中心として回転可能であり、前記切削ウォーム(11)を取り付けるための切削スピンドル(16)であって、第1のモータ(17)と回転角度センサ(18)とに接続されてなる切削スピンドル(16)と、
ドレッシングスピンドル(26)であって、前記切削スピンドル(16)の前記第1の軸(15)に対して放射方向に装入でき、前記第1の軸(15)に対して平行に移動可能であり、第2の軸(28)を中心として回転可能であり、ドレッシング工具(27)の装入用に構成され、そして第2のモータ(25)によって駆動されるドレッシングスピンドル(26)と、
前記ドレッシングスピンドル(26)と前記切削スピンドル(16)との間の相対移動を実行するための第1及び第2のスライド(12;20)であって、それぞれ対応するサーボモータ(21;22)、そしてそれぞれ対応する第1または第2の回転角度センサ(23;24)に接続されている第1及び第2のスライド(12;20)と、
前記第1のモータ(17)及び第2のモータ(25)と前記2つのサーボモータ(21;22)とすべての前記回転角度センサ(18)に接続された制御装置(40)と、
前記制御装置(40)と接続されて前記切削スピンドル(16)または前記ドレッシングスピンドル(26)の近傍に配置された音響センサ(35)とを備え、
前記制御装置(40)は、前記切削ウォーム(11)が前記切削スピンドル(16)上に取り付けられた後、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法を自動的に実行するようにプログラムされている装置。
【請求項7】
前記ねじ山間隙(36)の基底部(37)をドレッシングするための略シリンダ状の外表面(41)を備えており、前記外表面(41)はわずかに中高に形成される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法を実施するための前記ドレッシング工具(27)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−770(P2012−770A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219576(P2011−219576)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2000−67860(P2000−67860)の分割
【原出願日】平成12年3月10日(2000.3.10)
【出願人】(591248278)ライスハウアー アクチェンゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】REISHAUER AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 36, CH−8304 Wallisellen, Switzerland
【Fターム(参考)】