説明

切削工具又は穴開け工具に使用するための部材であって、バインダ相内に分散された硬質粒子を構成要素とする稠密材料の少なくとも1つのブロックを含む部材の製造方法

【課題】従来の工具よりも長寿命を有する稠密なサーメットを基材とする材料ブロックを満足すべき工業条件下で製造することを可能にする手段の提供。
【解決手段】稠密材料は湿潤材料2による湿潤によって局部的にバインダ相に富むようにすることができ、少なくとも湿潤領域4は自由なままとしつつブロック1の全体3,5,6又は一部分に保護材料が付着せしめられ、当該保護材料は、当該保護材料が付着された壁を介する前記湿潤材料の浸透を阻止し、前記ブロック内への前記バインダ相の動力学を変え、前記ブロックの表面の少なくとも1つの湿潤領域が、前記ブロックを前記バインダ相で局部的に富化させることができる湿潤材料と接触状態とし、前記湿潤材料と接触しているブロックが、適切な熱サイクルを受けて、前記湿潤材料及び前記ブロックのバインダ相を部分的に又は完全に液体状態として、前記バインダ相の富化が前記湿潤領域を介してのみ起こるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延性のバインダ相内に分散された硬質粒子を構成要素とする少なくとも1つのブロックを含んでいる部材の製造に関し、膨潤によって稠密材料がバインダ相を局部的に富化されることを可能にする。
【0002】
本発明は、より特別には、同じくサーメットとして知られているセラミック/金属複合物によって作られた工具、更に特別には、石油掘削及び/又は鉱山掘削のための工具に関する。
【背景技術】
【0003】
膨潤は、少なくとも固相が液体の吸収によって効果的にその形体に適合して系をより安定化させることができる粒子形体である完全に稠密な固/液系の液体による富化として理解されるべきである。液体による富化は、このような系内に存在している移動圧力によって生じる駆動力の作用によってなされる。
【0004】
穴開け工具は、岩石を切削し又は研磨するためのカッターが載置されるヘッドを構成要素とする。工具の動作部分であるカッターは、殆どの場合に、カーバイド、すなわち極めて硬度が高いが脆い材料を基体としている。この脆さは、特に、このような工具が種々の硬度の岩によって構成された地層を掘削するために使用されるときに不利である。このことは、このような不均一性がカッターに亀裂を生じさせてカッターの剥離又は破壊によるカッターの摩耗につながる衝撃を惹き起こす可能性がある。
【0005】
カッターの早すぎる摩耗又は破壊の危険性を低くするために、岩に直接接触する外面よりもコアが脆いサーメットによって作られたカッターを形成することが考えられて来た。従って、カッターのコア(バインダ相が富化された領域)は、良好な切削能力(岩と接触するバインダ相が低い領域)を維持しつつ衝撃に対してより抵抗性があるであろう。
【0006】
組成勾配又は特性勾配と呼ばれる機能等級材料(Functionally Graded Material:FGM)を有する切削工具として知られているこのような切削工具を作るためには、サーメットのコア領域の延性を改良するために、気孔率勾配を有する非稠密サーメットを形成するか又は非稠密サーメットをバインダ相で湿潤させることが提案されて来た。しかしながら、この方法は、特にWC−Co系には向いていない。なぜならば、この方法は、含浸前に存在する炭化物の骨格の部分的な破壊につながり、従って、切削工具の所望の特性が得られないからである。
【0007】
含浸は、毛管圧とも称される毛細管によってもたらされる駆動力のみによる不完全稠密な固/液系の液体による富化である。含浸は、前記2つの凝縮相(固体/液体)に加えて第三の相と称される非凝縮相(気相)を含んでいる。
【0008】
各々の層が異なる組成を有している多層要素内の固相内に、(外圧を適用しない)自然焼結によって硬度が高い外面と脆いコアとを有する複合勾配を備えたサーメットを形成することも提案されて来た。しかしながら、この方法は、材料が完全に稠密化されるのを可能にせず且つ続いて費用のかかる熱間静圧圧密処理を行わなければならない。更に、組成勾配を有するサーメットの調製は複雑である。なぜならば、これは、各々の層が異なる組成を有する互いに嵌合した一連の基本的な層の形成を必要とするからである。最後に、複雑で且つ極めて費用のかかるこの方法は、連続的な組成勾配を得ることができない。従って、このようにして得られたサーメットは、実質的に異なる硬度及び膨張係数を有する連続した層を含み、これは、2つの連続する層の境界部の層間剥離の虞につながる。
【0009】
固相焼結の欠点を除くために、完全に稠密な勾配構造を有する材料が極めて迅速に且つ単一のステップによって得られるのを可能にする材料を作ることが提案されて来た。しかしながら、この方法は、厚みが薄い層間に液体を浸透させることによって、組成勾配が全く弱められるという欠点を有している。更に且つ全く意外にも、組成勾配は、液体状態に留まる時間が臨界時間以下のままであるときには不連続なままである。この臨界時間を超えるとサーメットの完全な均質化が示される。
【0010】
これらの種々の理由により、提案されて来たこれら3つの方法は、満足すべき使用特性、すなわち、表面の摩擦特性とコアの延性又は靱性との両方を有する穴開け工具の工業的生産には適していない。
【0011】
更に、切削工具の作動寿命を改良するために、サーメットの表面に、窒化物、炭化物、酸化物又はホウ化物の硬度が高いコーティングを付着させることが提案されて来た。このような方法は、例えば、米国特許第4,548,786号又は第4,610,931号に記載されている。しかしながら、これらの方法は、研磨によってサーメットの耐摩擦性を改良するだけであり、ほんの薄い厚み(数ミクロン)に亘ってのみ改良がなされるだけであるという欠点を有している。更に、コーティングの性質がカッターの性質と異なるので、カッターの熱化学的応力に続く層間剥離又は層剥離が起こるかも知れない。
【0012】
炭素に関して化学量論的であるサーメットを炭素に富む気相(メタン)と接触させることによって、WC−Coタイプのサーメットの表面の耐摩擦性と耐衝撃性との両方を改良することも提案されて来た。温度の作用により、気相からの炭素が化学量論的なサーメット内に拡散し且つ化学反応2C+COC(η相)→3WC+3COに従ってη相と反応してコバルトの解放をもたらし、このコバルトは、コバルトの量が少ない領域に向かって移動する。しかしながら、例えば米国特許第4,743,515号に記載されている方法は、1又は2ミリメートルに亘るコバルトに富むバインダ相勾配をもたらし、一方、サーメットのコアは、η相によって構成されており且つ繰り返される衝撃中に容易に亀裂が入り得るので、脆いままであるという欠点を有している。
【0013】
最後に、良好な耐摩耗性と良好な靱性とを組み合わせた利点を有する特別な構造、特にハニカム構造を有する切削工具を作ることが提案されて来た。機能的微細構造を有するこのようなサーメットは、興味のある延性/靱性に関する歩み寄りを示すけれども、意図した用途に対しては不適切なままである。この複合材料は米国特許第5,880,382号の主題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来の工具と比較して改良された寿命を有するために、表面の極めて良好な耐摩耗性とコアの良好な靱性との両方を有する切削工具又は穴開け工具が意図されている稠密なサーメットを基材とする材料ブロックを満足すべき工業条件下で製造することを可能にする手段を提案することによって上記の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、バインダ相内に分散せしめられた硬質粒子を構成要素とする稠密材料の少なくとも1つのブロックを含む部材の製造方法に関し、この方法は、稠密材料が膨潤材料の湿潤によってバインダ相が局部的に且つミリメートル単位の長さで富化されることを可能にする。
【0016】
当該方法によれば、保護材料が、少なくとも膨潤領域は自由な状態のままで残しつつ、ブロックの表面全体又は一部分に付着せしめられる。当該保護材料は、保護材料が付着せしめられた壁を通って膨潤材料が移動するのを阻止し、おそらくは、ブロック内へのバインダ相の移動動力学を変え、次いで、膨潤領域が、ブロックを局部的にバインダ相に富むようにすることができる膨潤材料と接触状態となり、次いで、膨潤材料と接触状態となったブロックは、加熱、加熱温度維持及び冷却によって構成される適切な熱サイクルを受け、膨潤材料を部分的に又は完全に液体状態としてバインダ相の富化が膨潤領域のみにおいて生じるようにすることができる。
【0017】
この熱サイクルは、稠密材料と膨潤材料とによって構成されたアセンブリ内に温度勾配を形成して、ブロックと膨潤材料との間の境界部において最少の膨潤温度が達成されるようにし且つブロック内では温度が最低の膨潤温度よりも高く、膨潤材料内では少なくとも境界部の近くで温度が最低の膨潤温度よりも低くなるようになされる。
【0018】
熱サイクルはまた、液体状態に維持される時間及び保持温度が所望の富化のために全く十分な量の膨潤材料を発生するようにして行うことができる。
【0019】
膨潤材料は、負荷がかけられた状態で低い温度で凝集される粉末の圧密体によって作られ且つ一つの面が稠密材料のブロックの面と接触状態にあるパレットによって構成される。
【0020】
膨潤材料はまた、ブラシによって稠密材料のブロックの表面上に付着されたペースト(粉末と水性セメントとの混合物)の形体とすることもでき又はプラズマ若しくはレーザー射出コーティングの形態とすることもできる。膨潤材料のこのような形態の利点は、全てのブロックの幾何学的構造に適合させることができることである。
【0021】
膨潤材料と接触している稠密材料のブロックは、当該膨潤材料に対して化学的に不活性な耐熱材料例えば酸化アルミニウムによって作られた坩堝内に配置され、制御された雰囲気下又は減圧下の炉内で加熱されるのが好ましい。
【0022】
当該ブロックを構成している相は、少なくとも1以上の金属炭化物の硬質粒子と、金属炭化物と共にある温度で共晶を形成するのが好ましい延性の金属バインダ相とを含んでいる。当該ブロックは更に、ダイヤモンド粒子のような他の硬質粒子によって構成することができる。
【0023】
膨潤材料は、稠密材料のバインダ相に類似した組成を有しているのが好ましい。特に、膨潤温度の下では、膨潤材料の組成は、ほぼ稠密材料内のブロックのバインダ相の組成である。例えば、この湿潤材料は、ブロックの金属炭化物と金属バインダ相との間に形成された少なくとも85重量% の共晶によって構成されており、当該湿潤材料の融点は、ブロックのバインダ相の融点より低いか又は等しか又は若干高く、当該湿潤材料の金属バインダ相は、Co、Fe、Niから選択された1以上の金属元素と、Cu、Si、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hfから選択された1以上の金属元素15重量%以下と、不純物の残余とによって構成されている。
【0024】
湿潤温度は、ほぼ湿潤材料の湿潤点Teであり且つ一般的にはブロックのバインダ相の融点に対応している。
【0025】
熱サイクルは、湿潤材料の共晶温度Teより高いか又は等しい保持温度Tm(好ましくはTe+200℃未満であるのが好ましく、Te+100℃未満であるのがより好ましい)まで温度を上昇させることと、好ましくはそれに続いて温度Tmに短時間保持することと、次いで、Teより低い温度まで急速に(約50℃/分)冷却することと、最後に、雰囲気温度まで更にゆっくりと冷却すること(10〜5℃/分)を含んでいる。
【0026】
稠密材料のブロックを構成している材料は、任意にダイヤモンドの粒子が添加されているWC−Co又はWC−[Co及び/又はNi及び/又はFe]型のサーメットとすることができ、湿潤材料は、WC−M型の共晶(MはCo、Ni及びFeから選択される1以上の金属からなる)である。
【0027】
稠密材料のブロックを構成しているサーメットは、特に、WC−Co型とすることができ且つ35重量%以下のコバルトを含むことができ、湿潤材料は、特に、65重量%以下のコバルトを含んでいるWC−Co型の共晶とすることができる。保護層が稠密材料のブロックの表面に付着される場合には、この保護層は特に窒化ホウ素によって構成することができるが、任意にグラファイト又は酸化アルミニウムによって構成することもできる。
【0028】
稠密材料のブロックは、例えば、穴開け工具用のカッターであり、湿潤処理の後にはPDC(多結晶ダイヤモンドの圧密体)型又はTSP(熱安定性の多結晶ダイヤモンド)型のダイヤモンド添加チップをブロックの一つの面に適用することができる。
【0029】
ダイヤモンド添加チップは、HPHT(高圧−高温)プロセスによって、湿潤によって既に処理された稠密材料のブロックに直に適用することができる。ダイヤモンド添加チップを異なる均質なサーメット支持ブロックに適用することもでき、このブロックは、続いて、湿潤によって処理された最初のブロックに、続いて湿潤によって適用される。
【0030】
本発明はまた、穴開けビット、採鉱ピック、トリコーンビット、含浸工具のような岩石を切削し且つ/又は研磨するための穴開け工具のためのカッターに関し、これは、特に、WC−Co型のバインダ相内に分散された硬質粒子(任意に、ダイヤモンドが添加されている)によって構成され、バインダ相に富む靱性の高いコアと、高い硬度を有するバインダ相が少ない表面とを得るために、0.5mmを超える長さに亘って、工具の機能によって規定される形態の連続する組成勾配を含んでいる。
【0031】
当該カッターは、更に、ブロックの一つの面にPDC又はTSP型のダイヤモンドを添加チップを取り付けることができる。
【0032】
最後に、本発明は、本発明による少なくとも1つのカッター又はブレードを含んでいる削岩機に関し、この工具は、例えば、石油掘削工具又は採鉱掘削工具又は土木工具又は地面若しくは地盤掘削具である。
【0033】
最後に、本発明は、本発明による少なくとも1つのカッターを含んでいる削岩機及び/又は石切機に関する。
【発明の最良の実施形態】
【0034】
一般的に、穴開け工具、より一般的には、切削工具のためのカッターは、概して、平行六面体又は円筒形のブロックを含んでおり、当該ブロックは、粉末冶金によって得られ、一方では、金属炭化物、特に、タングステン炭化物のような硬質粒子によって構成され、他方においては、前記炭化物に接触する金属又は金属合金によって構成されたバインダ相によって構成され、ある温度で、炭化物の融点及び金属又は金属合金の融点の両方よりも低い融点を有する共晶を形成することができる。当該金属又は金属合金は、例えば、コバルトであるが、鉄又はニッケル又はこれらの金属の混合物としても良い。更に、バインダ相は、その含有量の合計が15重量%に達することができるが、通常は、1重量%を超えない合金を含むことができる。当該合金は、導電性を改良するための銅又はシリコンとすることができ、その効果は、炭化物及びバインダ相によって構成された系に対して表面張力を低くすることができ又は混合された炭化物若しくはタングステン炭化物以外のM型の炭化物とすることができる。これらの種々の元素は、特に、マンガン、クロム、モリブデン、バナジウム、ニオビウム、タンタル、チタン、ジルコニウム及びハフニウムである。
【0035】
これらの基本元素に加えて、バインダ相の組成は、このような物質内に一般的に見出され且つ硬質粒子の形状を変え且つ/又は当該硬質粒子の成長を妨げる合金元素を含むことができる。当業者は、このような元素がわかる。最後に、これらの材料の化学組成は、製造過程によって生じる不可避不純物を含んでいる。当業者はこのような不純物がわかる。
【0036】
幾つかの用途のためには、カッターの耐摩耗性を増すためにダイヤモンド粒子が添加される。このようなダイヤモンド粒子は、焼結によってブロックを製造するために使用される粉末混合物に添加される。
【0037】
一般的には、焼結の後に、ブロックは稠密であり且つバインダ相内に分散せしめられた硬質粒子によって構成されている。このようにして、当該ブロックは稠密材料によって作られる。
【0038】
WC−Co系の場合には、ある温度で形成する共晶の組成は、約65重量%のコバルト含有量を有している。もちろん、このようにして得られるブロックの使用特性は、特に、炭化物及び金属若しくは金属合金の相対的割合に依存する。穴開け材料の場合には、当該穴開け材料のバインダ相含有量は、一般的に、共晶の含有量よりも遙かに低く、ほぼ35重量%未満でさえある。実際には、バインダ相含有量が少なくなればなるほど、硬度は益々高くなり、従って、材料の耐摩耗性が高くなる。しかしながら、バインダ相含有量が少なくなればなるほど、サーメットの靱性は益々低くなる。これらの材料、すなわち“サーメット”のこれらの特性は、当業者に知られている。
【0039】
更に、サーメットの特性はまた、炭化物粒子の大きさ及び形状にも依存する。
【0040】
本発明によるブロックの特性を改良するために、ブロックの一部をバインダ相によって富化させ且つ任意にその組成を好ましくは均質な組成を有する稠密な焼結されたサーメットから湿潤によって変える方法が使用される。
【0041】
湿潤現象は、ある種の条件を満たす二相系(硬質粒子−バインダ相)において可能である。従って、湿潤温度(T≧Te)においては、液体であるバインダ相は、硬質粒子を湿潤させなければならず、これらの同じ硬質粒子は、液体バインダ相内に部分的に溶解されなければならず、当該系は、必ずしも溶解− 再沈殿現象によって粒子の大きさを増大させることなく、硬質粒子の形状の変形によってオストワルド成熟を呈しなければならない。
【0042】
湿潤を行うためには、臨界含有量(WC−Co系の場合には35重量%)未満のバインダ相の含有量のサーメットを適切な湿潤材料と接触状態とし且つ全体を湿潤材料及びバインダ相が液体であるか又は少なくとも部分的に液体であるような温度にすることが必要である。これらの条件に合っているときに、サーメット内部へのバインダ相の移動が起こり、従って、サーメットはバインダ相に富むようになる。一般的に、湿潤材料の組成は、問題となっているサーメットの共晶の組成に等しいか又は類似しているのが好ましい。この場合には、湿潤は、材料の化学組成を変えることなく、サーメット内のバインダ相の含有量を増大させる。この現象は、サーメットがバインダ相によって飽和するまで続くことができる。同じ特性の湿潤材料を有するタングステン炭化物/コバルト型のサーメットに対しては、サーメット内の約35重量%のコバルト含有量に対して飽和が得られる。
【0043】
湿潤材料は、稠密サーメットのバインダ相の組成と異なる組成を有することができる。この場合には、サーメットは、バインダ相に富むばかりでなく、その化学組成及び任意に炭化物相の化学組成も変わる。
【0044】
湿潤現象は、熱的に活性化され、従って、その動力学は、温度に関連付けられているが、サーメット内のバインダ相の初期含有量のみならず硬質粒子の大きさ及び形状にも関連付けられている。
【0045】
湿潤は、一般的に、問題となっているサーメットの共晶組成を有する液体内にサーメットブロックの一方の端部を浸漬することによって稠密なサーメットブロックがバインダ相に富むようにするために使用される。この方法の欠点は、湿潤材料が液体となって接触領域ばかりでなく接触領域に隣接した面を介してサーメット内へ広がって勾配の形状を制御し難くさせるという点である。
【0046】
従って、浸漬によって一般的に得られる結果と逆の所望の結果を得るために、本発明者らは、以下に説明する方法を想到した。
【0047】
図1に示されているように、処理されるべきブロック1が存在する。ブロック1は、ある温度から、湿潤によってブロック1の内部へと広がることができる湿潤材料によって構成されたペレット2と接触するバインダ相内に埋設された硬質粒子を構成要素とする材料によって作られる。ブロック1は、一般的に、形状が円筒形又は平行六面体であり、下面3、1以上の側面5及び上面6を備えている。湿潤材料のペレット2はブロック1の下面3と接触しており、湿潤材料のペレット2とブロック1との間の接触領域4(湿潤領域とも称される)は、ブロック1の下面の表面積よりも実質的に小さい。勾配の形状は、特に、サーメットの下面3に対する湿潤領域の位置決め及び湿潤領域の広さによって決まる。ブロック1の横面5と上面6とは、保護材料の層7によって覆われている。窒化ホウ素である保護材料は、例えば、一方では保護層を介する湿潤材料の移動を阻止し、他方ではブロック内へのバインダ相の移動の動力学を変えることを意図している。ブロック1によって構成され、保護層7を備え、湿潤材料のペレット2によって構成されているアセンブリは、坩堝内に配置される。当該坩堝は、熱処理温度において化学的に不活性であり、例えば酸化アルミニウム8によって作られ、制御された雰囲気下の炉9内に配置される。炉9は、真空炉又は窒素若しくはアルゴン雰囲気下の炉とすることができる。炉は、湿潤材料及びブロックのバインダ相は、例えば1350℃又はWC−Coのブロックの場合には1320℃でさえある温度で部分的に又は全体的に液体状態にあるように十分高い温度に到達することができなければならない。高い加熱及び冷却速度によれば、当該アセンブリが処理される系の共晶温度(湿潤が起こる温度より高く、WO−Co型のサーメットの場合には1300℃程度である)より高い温度にある時間を制御し特に最短にすることができる。炉は、抵抗炉、誘導炉、マイクロ波炉又はSPS(放電焼結)設備とすることができる。
【0048】
次いで、ブロックは熱サイクルを受ける。当該熱サイクルは、まず最初に、少なくとも湿潤材料のペレット2とブロック1の下面3との間の接触領域が液体状態へと移る温度より高い温度又は等しい温度まで加熱することを含む。加熱は、ブロック内の温度がブロックの共晶の融点Teよりも高い状態で行われる。
【0049】
ペレット2の少なくとも一部分内の温度が湿潤材料の融点より低いままであるようにして加熱が行われるように、炉の自然な温度勾配が使用されるのが好ましい。
【0050】
このようにして処理することにより、湿潤材料は、移動によって、湿潤材料のペレットとブロックの下面との間の接触領域において稠密材料のブロックの内部へと浸透する。一方、湿潤材料はブロックの外壁5又は上壁6からは浸透しない。従って、稠密材料のブロックの湿潤材料による富化は、実質的には、下方の壁3が開口し且つブロックの内側に向かって延びている内側領域で起こる。
【0051】
より正確には、熱処理は、図2に示されているように、共晶の融点Teまで加熱する段階15、次いで、ブロックが温度Teよりも高い保持温度Tmまで維持され且つ保持時間tに亘って当該保持温度Tmに維持される段階16、次いで、ブロックが温度Te以下の温度まで極めて急速に冷却される段階17、及び最後に雰囲気温度までゆっくり冷却される段階18を含んでいる。
【0052】
加熱段階中において、Teより低い温度では、前記湿潤材料は凝固し且つ収縮を受ける。Teより高い温度では、共晶液が接触面に形成される。
【0053】
閾値温度は、温度Teと大きく異なってはならないが、十分な液体を生成し且つ湿潤されるために稠密サーメットと化学平衡状態にある液体の湿潤及び浸透を許容するためには十分に異なったものでなければならない。この温度差は、例えば、200℃以下であり、100℃以下であるのがより好ましく、50℃未満であるのが好ましい。
【0054】
最低の湿潤温度Teより高い温度にある時間の合計時間t(一般的には15分未満)のみならず、保持温度Tm及び保持時間tは、ブロック内での湿潤材料の適切な分布を確保するように選択される。当業者は、これらのパラメータを選択する方法を知っている。
【0055】
閾値温度と共晶湿潤温度との間の冷却は、湿潤材料の制御されない移動を避けるために迅速に行われる。
【0056】
この目的のためには、急速な冷却速度は、40℃/分より速いのが望ましく、50℃/分より速いのがより好ましく、60℃/分より速いのがより好ましい。しかしながら、稠密材料のブロック内に過剰な応力が生じるのを避けるためには、当該冷却速度は100℃/分より遅い速度に維持されることが好ましい。
【0057】
共晶温度以下では、湿潤材料の移動が阻止されるので、冷却は、稠密材料のブロック内に過剰な残留応力が発生するのを避けるために実質的により遅い速度で行われる。
【0058】
このような方法で処理することにより、バインダ相の含有量が多いコア20と、バインダ相の含有量が少ない外側領域21とを含む図3に断面で示されているもののようなブロックが得られる。バインダ相の含有量が少ないことにより、外側領域21は極めて高い硬度従って高い耐摩耗性を有するが、靱性は低い。これと対照的に、バインダ相の高い含有量により、内側領域20は極めて良好な靱性を有する。
【0059】
上記し且つサーメット内のバインダ相が次第に富化されることに対応する湿潤プロセスにより、バインダ相の含有量の変化が連続的に起こり且つブロックのコアから作動面に向かって減少させる。このことは、図3におけるバインダ相の等含有量線22a,22b,22c,22d及び図4における稠密なサーメットの下面から上面への高さに沿ったバインダの再分配の概要図によって図式的に示されている。
【0060】
稠密なブロックがタングステン炭化物型であるときには、35重量%より少ないコバルト含有量を有しなければならない。この含有量を超えると、湿潤プロセスは不可能である。このようなブロックをそれ自体のバインダで富化させるためには、当該ブロックは、コバルト含有量が35重量%から65重量%まで変化し得るタングステン炭化物/コバルト混合物を構成要素とする湿潤材料と接触状態とされる。好ましくは、WC−Co系に対しては、この混合物は、65重量%のコバルトに対応する共晶組成を有している。タングステン炭化物/コバルト混合物は、例えば、好ましくは撹拌機内で数時間、乾湿法によって均質化される。この混合物は、次いで、例えば単動型内で低温で圧密化されるか又は水性セメントと混合される。湿潤材料が低温で圧密化されるときには、当該湿潤材料は、処理されるべきブロックと接触状態とされるペレットの形態である。湿潤材料が水性セメントと混合された粉末によって構成されているときには、当該湿潤材料は、ブロック上の如何なる形状ともすることができる区画領域にブラシによって付着させることができる。当該湿潤材料は、プラズマ噴射又はレーザー噴射型の技術によって付着させることもできる。ブラシ又は噴射による付着技術は、湿潤材料を、形状が平行六面体又は円筒形の形状よりも複雑であり得るブロックの如何なる領域にも付着させることができるという利点を有する。
【0061】
処理されるべき各ブロックのための湿潤領域の大きさ及び形状は、ブロックの内部で発生されるべき勾配の形状に適合されなければならないことは注目されるであろう。当業者は、このような適合方法を知っている。
【0062】
他の点において、本発明者らは、全く突然に、稠密材料のブロックの外面に保護層が存在することは、ブロックの内部での湿潤材料の移動に対して著しい効果を有することを発見した。特に、本発明者らは、保護層が、バインダ相の勾配及び結果的には保護材料がないときに得ることができるものよりも遙かに大きい硬度の勾配を得ることを可能にすることを発見した。更に、当該バインダ相の勾配は、ドーム形状を有することができる。
【0063】
この効果は、以下の2つの例によって示される。これら2つの例は、両方とも、処理前のコバルト含有量が13重量%であるタングステン炭化物/コバルトの稠密なブロックの処理に関し、前記湿潤材料は、約65重量%のコバルトを含んでいる共晶組成を有する所謂タングステン炭化物/コバルトのペレットを構成要素としている。WC粒子の大きさは例えば約1μmの大きさであり、これは1230HVの初期硬度に対応する。これら両方の場合に、アセンブリは、電気炉内の酸化アルミニウムの坩堝内に配置され、1350℃の温度(試料温度)で3分間加熱される。
【0064】
第一の例においては、湿潤材料と接触状態とならなかったブロックの外壁は、窒化ホウ素を構成要素とする保護材料によって覆われていた。処理後のブロックの外面近くの硬度は1370HV程度であり、一方、ブロックのコア内の最低硬度はほんの890HVであった。すなわち、480HV程度の硬度の差があり、この硬度の差は、5mm程度の距離に亘って得ることができる。
【0065】
比較例として提供されている第二の例においては、ブロックの外壁は、保護層によって覆われていなかった。観察された最大硬度はブロックの外面上で1200HVであり、ブロックのコアにおける最小硬度は1010HVであり、これは、ほんの190HVの差に相当する。
【0066】
これら2つの結果の間の差に対しては種々の説明がある。特に、保護材料は、バインダ相と炭化物相との間の界面エネルギを増し、従って、ブロックの内部へのバインダ相の移動に対して作用を有すると考えることができる。
【0067】
上記した工具のカッターを構成するためのブロックの製造を可能にする方法は、外側部分は硬度が高く、内側部分は靱性が高いブロックが得られるようにするという利点を有する。このような硬度の変化はミリメートル単位の長さで起こる。特に、硬度の変化は、0.5mmより長い長さ、好ましくは1mmよりも長い長さ、3mmよりも長い長さでさえなされるが、30mm未満の長さが好ましく、8mm未満の長さが好ましく、5mm未満でも良い。
【0068】
更に、本発明者らは、ブロックの湿潤の後に、湿潤処理によって得られた勾配を部分的に維持しつつ、合成ダイヤモンドチップをブロックの上面に付着させることができる。比較的厚いダイヤモンドの層、好ましくは0.5mmより厚いダイヤモンドの層を、HPHT(高圧−高温)プロセスによってグラファイト粉末を加圧成形させることによって定位置に配置させることができる。次いで、図5に断面で示されているビットが得られる。このビットは、コア41はより靱性を高くするために湿潤によってバインダ相が富化されているサーメットの支持ブロック40と、当該支持ブロックの面43に適用されたダイヤモンドチップ42とによって構成されている。
【0069】
上記したように保護層によって処理されたブロックにダイヤモンドチップが適用されると、支持ブロックの内側の硬度の勾配の大きさは、480HVではなくほんの350HVであるが、サンプルの外周の最大硬度は1370HVではなく1550HVとなり、ブロックの底部における最小硬度は890HVではなく1200HVであり、すなわち、HPHT処理前に同じ処理がされたブロックと比較して、コアは、表面はより硬度が高くなるが、コアは若干靱性が小さくなる。
【0070】
この硬度の変化は、ダイヤモンドの加圧成形によってもたらされ、このダイヤモンド加圧動作は、コバルトの勾配、従って、ダイヤモンドの支持部の硬度に作用する。
【0071】
サーメット支持ブロックにダイヤモンドの層を付着さるためには、図6に示された第二の方法に従って処理することも可能である。
【0072】
第二の方法に従って、バインダ相の含有量を増すことによって靱性が改良されたコアを付与するために、上記した一つの又はその他の湿潤方法によって処理されたサーメットブロック50が使用される。当該サーメットには、表面55を介する湿潤によって、予めダイヤモンドチップ54が加圧された均質な稠密サーメットの支持ブロックを構成要素とするカッター52が適用される。
【0073】
ブロック53及び50の組成は、これらのブロックが共晶温度よりも高いか又は等しい温度と接触状態とされるか又はこの温度にされると、一つのブロックの完全なアセンブリが確保されるように選択される。この結果を得るためには、移動圧力が異なるように硬質粒子の組成及び/又は大きさ及び/又は形状を有するサーメットをブロック53及び50として選択することが便利である。これらの移動圧力は、特に、炭化物粒子の大きさ及び形状並びにバインダ相の含有量に依存する。当業者は、このようなサーメット構造を選択する方法を知っている。
【0074】
上記した方法は、トリコーンドリル、PDC若しくはTSPカッター、石油掘削のための含浸工具又は採鉱分野における削岩機の若しくは岩砕工具のための若しくは爆破穴の穴開けカッター、土木工具又は材料加工工具のような穴開け工具のヘッドのためのカッターの製造を可能にする。
【0075】
このようなカッターは、本発明による方法によって得られる稠密材料の少なくとも1つのブロックを含み且つこのようなブロックを構成要素とする部材である。このようなブロックは、意図された工具に適用される極めて異なる形状を有することができる。これらのカッターは相当するようにブレードを構成することができる。
【0076】
このようなカッターは、石油掘削又は採鉱掘削又は土木分野特に地面又は地盤掘削機に適合させることができる。これらの用途は、特に選択すると、“局部的な掘削”型又は“連続採鉱”型又は“採炭機”型の掘削機又は軟らかい岩に坑道を掘るための機械に使用される。このような適用はまた、特に、掘進機又は道路穿孔機又は回転穴開けカッター又はターボ撃発穴開けカッターのようなフルセクションの機械において使用されるホイールとすることもできる。
【0077】
この方法はまた、靱性がより高い本体上に極めて硬度が高い作動面を得ることが望ましい金属加工工具のための部材を製造するために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、硬度が高い外面と靱性の高いコアとを有する稠密なサーメットブロックの湿潤による製造方法を示している図である。
【図2】図2は、硬度が高い外面と靱性の高いコアとを有する稠密なサーメットブロックの熱による湿潤サイクルを示している図である。
【図3】図3は、コアが湿潤によってより靱性が高くされた稠密なサーメットの高さに沿った断面図である。
【図4】図4は、図3に示されたコアが湿潤によってより靱性が高くされた稠密なサーメットの下面から上面までの高さhに沿ったバインダ相の再分布曲線である。
【図5】図5は、コアがより靱性が高くされ、ダイヤモンドチップが適用された稠密なサーメットブロックによって構成された穴開け工具のためのビットの断面図である。
【図6】図6は、コアがより靱性が高くされ、湿潤によってダイヤモンドチップが付加された稠密な材料の第二のブロックが適用された第一のサーメットブロックを含んでいる穴開け工具のためのビットの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダ相内に分散せしめられた同じ特性か又は異なる特性の硬質粒子を構成要素とする稠密材料の少なくとも1つのブロック(1,40,50)を含む部材の製造方法であり、前記稠密材料は、湿潤材料による湿潤によって局部的にバインダ相に富むようにすることができ、少なくとも湿潤領域は自由なままとしつつ前記ブロックの表面全体又は一部分に保護材料が付着せしめられ、当該保護材料は、当該保護材料が付着された壁を介する前記湿潤材料の浸透を阻止し、おそらくは、前記ブロック内への前記バインダ相の動力学を変え、次いで、前記ブロック(1)の表面(3)の少なくとも1つの湿潤領域(4)が、前記ブロックを前記バインダ相で局部的に富化させることができる湿潤材料(2)と接触状態とされ、次いで、前記湿潤材料と接触しているブロックが、加熱、温度保持及び冷却からなる適切な熱サイクルを受けて、前記湿潤材料及び前記ブロックのバインダ相を部分的に又は完全に液体状態として、前記バインダ相の富化が前記湿潤領域を介してのみ起こるようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、
前記熱サイクルが、前記ブロックと前記湿潤材料とを構成要素とするアセンブリにおいて、前記ブロックと前記湿潤材料との間の境界部で最低の湿潤温度が達成され、前記ブロック内では少なくとも前記境界部の近くの温度が前記最低の湿潤温度より高い温度に達し、前記湿潤材料内では少なくとも前記境界部の近くの温度が前記最低の湿潤温度より低くなるような温度勾配が形成され、又は、前記熱サイクルが、前記液体状態に維持される時間及び保持温度が、所望の富化に対して全く十分である前記湿潤材料の液体量を発生するように行われることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1乃至2のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記湿潤材料が、凝集された粉末混合物によって構成されたペレット(2)であり、当該ペレットの一つの面が前記ブロックの表面に接触していることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至2のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記湿潤材料が、例えば、ブラシ、プラズマ噴射又はレーザー噴射によって前記付着せしめられたブロックの表面上の被覆の形態であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記湿潤材料(2)と接触している前記ブロック(1)が、制御された雰囲気下の炉内で又は真空内で加熱されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記ブロックの材料を構成している固体粒子が、少なくとも硬質の金属炭化物粒子を含んでおり、前記バインダ相が金属の特性を有していることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であり、
前記ブロックが、直径が1mm未満の大きさの天然の又は人工のダイヤモンド粒子を更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法であり、
前記湿潤材料がバインダ相内に分散せしめられた硬質粒子を構成要素とし、前記バインダ相は、前記ブロックと同じ特性か又は異なる特性であり且つ前記ブロックと同じ割合であっても異なる割合であり、系が共晶である場合には共晶組成に対応する割合で含まれていることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記湿潤材料の化学組成が、前記ブロックの金属炭化物と金属バインダ相との間に形成された少なくとも85重量%の共晶によって構成されて、前記湿潤材料のバインダ相と前記ブロックのバインダ相との融点の差が200℃未満であり且つ15重量%以下のCu、Si、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hfから選択された1以上の金属元素と残余量の不純物とによって構成されていることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法であり、
前記湿潤温度が、前記湿潤材料の共晶の融点Teであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、
前記湿潤材料と接触している前記ブロックが受ける熱サイクルが、前記ブロックの幾何学的構造の関数及び所望の勾配の幾何学的構造として定められる保持時間t(0〜15分)の間に、ある範囲[湿潤材料の共晶温度Te;Te+100℃]の保持温度Tmまで温度を上昇させることと、それに次ぐTeより低い温度までの第一の急速な冷却(40℃/分より大きい)と、周囲温度への最後のゆっくりとした冷却(10℃/分より小さい)とを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項6乃至11のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
前記ブロックを構成している材料が、任意にダイヤモンド粒子が添加されたWC−Co型又はWC−[Co及び/又はNi及び/又はFe]型のサーメットであり、前記湿潤材料がWC−M型(Mは、Co、Ni及びFeから選択される1以上の金属によって構成される)であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記ブロックを構成しているサーメットがWC−Co型であり且つ35重量%以下のコバルトを含んでおり、前記湿潤材料が35〜65重量%のコバルト成分を有していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項6乃至13のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
前記保護層が、窒化ホウ素、グラファイト又は酸化アルミニウムを構成要素とすることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のうちのいずれか一項に記載の方法であって、
前記ブロック(40,50)が穴開け工具のためのカッターであり、前記ブロックの湿潤処理の後に、PDC(多結晶ダイヤモンド圧密体)又はTSP(熱的安定性の多結晶ダイヤモンド)型のダイヤモンド添加チップ(42,54)が前記ブロックの一つの面(43)に付着せしめられていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記ダイヤモンド添加チップ(43)が、HPHTによって前記ブロック(40)に直に適用されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、
前記ダイヤモンド添加チップ(54)が、湿潤によって前記ブロック(50)に適用されたサーメット(53)によって担持されていることを特徴とする方法。
【請求項18】
特に、任意にダイヤモンド粒子を添加されたWC−Co型のバインダ相内に分散せしめられた硬質粒子を構成要素とするブロックのような削岩機のためのカッターであり、バインダ相に富む靱性の高いコアと、バインダ相含有量が少ない高い硬度の表面とを得るために、0.5mmを超える長さに亘って工具の機能によって規定される形状のバインダ相の連続する組成勾配を有していることを特徴とするカッター。
【請求項19】
請求項18に記載のカッターであって、
PDC又はTSP型のダイヤモンド添加チップが付加されていることを特徴とするカッター。
【請求項20】
請求項18又は19による少なくとも1つのカッター又はブレードを備えている削岩工具であり、特に、石油掘削工具又は採鉱掘削工具又は土木工具又は地面若しくは地盤掘削工具のための削岩工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−30157(P2009−30157A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−81117(P2008−81117)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(508092750)
【Fターム(参考)】