説明

切換弁

【課題】四方切換弁や三方切換弁のように弁座に3つのポートを有する切換弁において、各ポートに接続される配管の干渉を避けて各ポートの開口を接近させ、弁体のストローク及び受圧面積を小さくする。
【解決手段】弁座1において、ポート11の中心軸L1に対して、切換ポート12の中心軸L2と切換ポート13の中心軸L3を同じ方向に傾斜させ、各ポート11,12,13を互い違いに傾斜させる。配管接続孔に接続した配管111,121,131が互いに干渉しないようにする。これにより、各ポート11,12,13の開口部を接近させる。ポート14及び配管141を無くした三方切換弁としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式の冷凍サイクル等の冷媒の流路を切り換える四方切換弁や三方切換弁等の流体の流路を切り換える切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四方切換弁として、例えば、特開2006−200654号公報(特許文献1)及び特開2005−113990号公報(特許文献2)に開示されたものがある。これらの四方切換弁は、弁座に形成されて弁室に開口する3つのポートと、弁座以外で弁室に開口する1つのポートと、弁座上を摺動する凹部(連通用凹所)を有する弁体とを備え、弁体を移動することにより、弁座の中央のポートとその両脇の各々のポートとの間を凹部によって択一的に導通するものである。
【0003】
図6は特許文献1において従来例として説明している弁座と弁体の構造を示す図、図7は特許文献1の発明における弁座と弁体の構造を示す図、図8は特許文献2の発明における弁座と弁体の構造を示す図である。
【0004】
図6のものは、弁座61の3つのポート61a,61b,61cが直線的に並んでおり、弁体62及び凹部62aは長円形状になっている。また、配管接続孔61d,61e,61fはポート61a,61b,61cから芯がずれている。図7のものは、弁座71の3つのポート71a,71b,71cを千鳥(三角)に配置したものであり、弁体72及び凹部72aは瓢箪型になっている。また、配管接続孔71d,71e,71fはポート71a,71b,71cから芯がずれている。図8のものは、弁座81の3つのポート81a,81b,81cが直線から離れて配置したものであり、弁体82及び凹部82aは矩形状になっている。また、配管接続孔81d,81e,81fはポート81a,81b,81cから芯がずれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200654号公報
【特許文献2】特開2005−113990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6のものは、弁座61の3つのポート61a,61b,61cが直線的に並んでいるので、各ポートに接続する配管(キャピラリ)が互いに緩衝するのを避けるために、3つのポートの間隔を長くする必要がある。これに伴い、弁体を駆動(移動)するプランジャの移動ストロークが大きくなるため、プランジャを駆動する電磁コイルの吸引力を大きくする必要があった。このため、駆動部が大きくなるとともに消費電力が大きくなるという問題があった。
【0007】
図7及び図8のものは、図6のものよりはプランジャの移動ストロークが小さくなる。しかしながら、この場合には、弁体72,82の凹部72a,82aの形状が大きくなり、弁体72,82に加わる流体の差圧が大きくなる。すなわち、この構造では、受圧面積が大きくなっているので摺動抵抗が大きく、移動ストロークを小さくしたメリットは少なく、改良の余地がある。
【0008】
本発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたものであり、弁体及びプランジャの移動ストロークを小さくしながら、弁体の受圧面積を小さくした切換弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の切換弁は、弁室内に第1のポートと第2のポートと第3のポートとを開口する弁座と、前記第1乃至第3のポートにそれぞれ接続される配管と、前記弁座上を摺動する凹部を有する弁体と、前記弁体を直線的に移動するプランジャを有する駆動部とを備え、前記弁体を移動することにより、前記弁座の1つのポートとその両脇の各々のポートとの間を前記凹部によって択一的に導通する切換弁において、
前記第1のポートの開口部を中心にして前記第2のポートの開口部と前記第3のポートとの開口部とが直線的に配置され、前記第1のポートの中心軸に対して、前記第2のポートの中心軸と前記第3のポートの中心軸とを同じ方向に傾斜させたことを特徴とする切換弁。
【0010】
請求項2の切換弁は、請求項1に記載の切換弁であって、前記第1乃至第3のポートの前記中心軸に直交する断面の形状が矩形であることを特徴とする切換弁。
【0011】
請求項3の切換弁は、請求項1に記載の切換弁であって、前記第1乃至第3のポートの前記中心軸に直交する断面の形状が円形であることを特徴とする切換弁。
【0012】
請求項4の切換弁は、請求項1に記載の切換弁であって、前記弁室に第4のポートが開口され、前記弁体の移動により前記第1ポートに対して非導通となる第2のポートまたは第3のポートを前記弁室を介して前記第4のポートに導通する四方切換弁であることを特徴とする切換弁。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の切換弁によれば、第2のポートと第3のポートは第1のポートの両側に配置され、第1のポートの中心軸に対して第2のポートの中心軸と第3のポートの中心軸が同じ方向に傾斜しているので、これらのポートの開口部を極力接近させても、これらのポートに接続される配管同士が緩衝することがない。したがって、各ポートの開口部が並ぶ方向の弁体の移動ストロークを小さくできるとともに、弁体の凹部を直線的に配置された開口部の2つの開口部を覆う最小の面積にすることができ、弁体の受圧面積を小さくすることができる。
【0014】
請求項2の切換弁によれば、請求項1の効果に加えて、ポートの断面形状が矩形であるので、円形と同面積にした場合でも、開口部(中心)をさらに接近させることができ、弁体の移動ストロークをさらに小さくできる。
【0015】
請求項3の切換弁によれば、請求項1の効果に加えて、ポートの断面形状が円形であるので、弁座の切削加工によりポートを形成することができ、製造が容易になる。
【0016】
請求項4の切換弁によれば、第1のポートを流体の低圧側、第4のポートを流体の高圧側に接続した場合、弁体の凹部と弁室との差圧が作用するが、弁体の受圧面積が小さいので弁体の移動が容易となり、確実な切換を行える四方切換弁となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の切換弁としての四方切換弁の弁座と弁体の部分の要部拡大縦断面図である。
【図2】同四方切換弁の上面図及び縦断面図である。
【図3】同四方切換弁の弁座と弁体の関係を示す図である。
【図4】同四方切換弁の弁体とプランジャの斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態における弁座と弁体の関係を示す図である。
【図6】特許文献1において従来例として説明している弁座と弁体の構造を示す図である。
【図7】特許文献1の発明における従来の弁座と弁体の構造を示す図である。
【図8】特許文献2の発明における従来の弁座と弁体の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の切換弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の切換弁としての四方切換弁の弁座1と弁体2の部分の要部拡大縦断面図、図2は同四方切換弁の上面図及び縦断面図、図3は同四方切換弁の弁座1と弁体2の関係を示す図、図4は同四方切換弁の弁体2とプランジャ3の斜視図である。この実施形態の四方切換弁は、端部に弁室10aを形成する非磁性体製の円筒のプランジャチューブ10と、このプランジャチューブ10に取り付けられた駆動部20とを有している。
【0019】
プランジャチューブ10内には、弁座1、弁体2、プランジャ3が配設されるとともに、このプランジャチューブ10の端部には下蓋4が溶接等により固着されている。この下蓋4の中央には配管141が取付られている。弁座1には、「第1のポート」としてのSポート11、「第2のポート」としてのC切換ポート12及び「第3のポート」としてのE切換ポート13が、それぞれ形成されている。Sポート11には配管111が接続され、C切換ポート12には配管121が接続され、E切換ポート13には配管131が接続されている。この四方切換弁は図示しない冷凍サイクルに用いられ、配管111(Sポート11)は圧縮機の冷媒の吸入側(低圧側)に連通され、配管121(C切換ポート12)及び配管131(E切換ポート13)はそれぞれ熱交換器側に連通される。また、配管141は弁室10a側の端部が「第4のポート」としてのDポート14となっており、この配管141(Dポート14)は圧縮機の冷媒の吐出側に連通される。
【0020】
弁体2は、弁座1側に凹部21を有している。図4に示すように、プランジャ3はプランジャチューブ10の内面に整合する円柱部31と、この円柱部31の端部に形成された保持部32を有しており、この保持部32には弁体取付孔33が形成されている。そして、弁体2は板バネ部材5を介してプランジャ3の弁体取付孔33内に嵌合されている。これにより、弁体2はプランジャ3の移動により弁座1に対して摺動可能となっている。
なお、板バネ部材5は両端に爪部51,52を有し、この爪部51,52を弁体取付孔33の周囲に係合することにより固定され、この板バネ部材5の中央の突起部53が弁体2の背面に当接される。
【0021】
駆動部20は、プランジャチューブ10の回りに嵌合された電磁コイル20aと、外函20bと、プランジャチューブ10の端部に嵌合された吸引子20cと、吸引子20cとプランジャ3との間に配設されたコイルバネ20dとを有している。そして、電磁コイル20aに通電されると、プランジャ3は磁力によりコイルバネ20dの付勢力に抗して吸引子20cに吸着され、弁体2は凹部21をSポート11とC切換ポート12とを覆う位置に移動する。この状態で、Sポート11とC切換ポート12が凹部21により導通するとともに、Dポート14が弁室10aを介してE切換ポート13に導通する。また、電磁コイル20aへの通電を遮断するとプランジャ3はコイルバネ20dの付勢力により吸引子20cから離間する。この状態で、Sポート11とE切換ポート13が凹部21により導通するとともに、Dポート14が弁室10aを介してC切換ポート13に導通する。
【0022】
図3に示すように、Sポート11(第1のポート)とC切換ポート12(第2のポート)とE切換ポート13(第3のポート)は、各ポートの中心軸L1,L2,L3に直交する断面の形状が矩形となっている。なお、この第1実施形態のように断面が矩形のポートを有する弁座1は、金属射出成型(MIM:Metal Injection Modeling)により形成することができる。また、弁座1において、Sポート11の開口部11aを中心にしてC切換ポート12の開口部12aとE切換ポート13の開口部13aとが直線的に配置されている。この直線的な配置は弁体2の摺動方向に一致している。また、C切換ポート12の中心軸L2とE切換ポート13の中心軸L3は、Sポート11の中心軸L1に対して同じ方向に傾斜している。すなわち、Sポート11、C切換ポート12及びE切換ポート13は、互い違いに斜めに形成されている。さらに、弁体2の凹部21の弁座1の摺動面と平行な断面の形状は、Sポート11とC切換ポート12のみを覆うか、または、Sポート11とE切換ポート13のみを覆うような長方形になっている。
【0023】
さらに、弁座1には、Sポート11、C切換ポート12及びE切換ポート13のそれぞれに連通する、配管接続孔11b,12b,13bが形成されている。これら配管接続孔11b,12b,13bの中心軸L1,L2,L3に直交する断面の形状は円形であり、その径は、Sポート11、C切換ポート12及びE切換ポート13の矩形の断面形状より大きくなっている。そして、この配管接続孔11b,12b,13bに前記配管111,121,131が接続される。
【0024】
以上の構成により、Sポート11、C切換ポート12及びE切換ポート13が傾斜しているので、配管接続孔11b,12b,13bに接続した配管111,121,131が互いに干渉することなく、各開口部11a,12a,13aを接近させることができ、そのようにされた弁座1及び弁体2はコンパクトになっている。
【0025】
以上の第1実施形態のSポート11、C切換ポート12及びE切換ポート13はその中心軸L1,L2,L3に直交する断面が矩形となっているが、図5に示す第2実施形態の弁座1′においては、Sポート11′、C切換ポート12′及びE切換ポート13′はその中心軸L1′,L2′,L3′に直交する断面が円形となっている。このように各ポートの断面が円形の場合、切削加工により容易に製造することができる。また、弁体2′は、弁座1側に凹部21′を有しており、この凹部21′の弁座1の摺動面と平行な断面の形状は、Sポート11′とC切換ポート12′のみを覆うか、または、Sポート11′とE切換ポート13′のみを覆うような長円形になっている。
【0026】
この第2実施形態においても、弁座1′において、Sポート11′の開口部11a′を中心にしてC切換ポート12′の開口部12a′とE切換ポート13′の開口部13a′とが直線的に配置されている。また、C切換ポート12′の中心軸L2′とE切換ポート13′の中心軸L3′は、Sポート11′の中心軸L1′に対して同じ方向に傾斜している。すなわち、Sポート11′、C切換ポート12′及びE切換ポート13′は、互い違いに斜めに形成されている。
【0027】
さらに、弁座1′には、Sポート11′、C切換ポート12′及びE切換ポート13′のそれぞれに連通する、配管接続孔11b′,12b′,13b′が形成されている。これら配管接続孔11b′,12b′,13b′の中心軸L1′,L2′,L3′に直交する断面の形状は円形であり、その径は、Sポート11′、C切換ポート12′及びE切換ポート13′の径より大きくなっている。そして、この配管接続孔11b′,12b′,13b′に前記配管111,121,131と同様な配管が接続される。
【0028】
この第2実施形態でも、Sポート11′、C切換ポート12′及びE切換ポート13′が傾斜しているので、配管接続孔11b′,12b′,13b′に接続した配管が互いに干渉することなく、各開口部11a′,12a′,13a′を接近させることができ、そのようにされた弁座1′及び弁体2′はコンパクトになっている。
【0029】
以上のように、何れの実施形態でも各ポートを接近させることができるので、弁体1,1′の移動ストロークを小さくすることができ、駆動部20を小さくするとともに、消費電力を小さくできる。
【0030】
次表1は、図6の従来例(従来1)のストローク及び受圧面積をそれぞれ“1”とし、これと比較して、図7の従来例(従来2)、図8の従来例(従来3)、本発明の第1実施例及び第2実施例のストローク及び受圧面積の比率を示すものである。
【0031】
【表1】

【0032】
この表1からわかるように、本発明の第1実施例のストローク以外は、第1実施例及び第2実施例では、従来例に比べてストロークも受圧面積も小さくなっていることがわかる。
【0033】
以上の実施形態では、第4のポート14を有する四方切換弁を例に説明したが、この第4のポート14が無く、Sポート11と同様な第1のポートとC切換ポート12と同様な第2のポートとを連通した状態と、第1のポートとE切換ポート13と同様な第3のポートとを連通した状態とを、弁体の移動により択一的に切り換えるような3方切換弁にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1,1′ 弁座
2,2′ 弁体
21,21′ 凹部
3 プランジャ
10a 弁室
10 プランジャチューブ
20 駆動部
11,11′ Sポート(第1のポート)
12,12′ C切換ポート(第2のポート)
13,13′ E切換ポート(第3のポート)
14 Dポート(第4のポート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室内に第1のポートと第2のポートと第3のポートとを開口する弁座と、前記第1乃至第3のポートにそれぞれ接続される配管と、前記弁座上を摺動する凹部を有する弁体と、前記弁体を直線的に移動するプランジャを有する駆動部とを備え、前記弁体を移動することにより、前記弁座の1つのポートとその両脇の各々のポートとの間を前記凹部によって択一的に導通する切換弁において、
前記第1のポートの開口部を中心にして前記第2のポートの開口部と前記第3のポートとの開口部とが直線的に配置され、前記第1のポートの中心軸に対して、前記第2のポートの中心軸と前記第3のポートの中心軸とを同じ方向に傾斜させたことを特徴とする切換弁。
【請求項2】
請求項1に記載の切換弁であって、前記第1乃至第3のポートの前記中心軸に直交する断面の形状が矩形であることを特徴とする切換弁。
【請求項3】
請求項1に記載の切換弁であって、前記第1乃至第3のポートの前記中心軸に直交する断面の形状が円形であることを特徴とする切換弁。
【請求項4】
請求項1に記載の切換弁であって、前記弁室に第4のポートが開口され、前記弁体の移動により前記第1ポートに対して非導通となる第2のポートまたは第3のポートを前記弁室を介して前記第4のポートに導通する四方切換弁であることを特徴とする切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−117528(P2011−117528A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275238(P2009−275238)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】