説明

切断機

【課題】 排気室の排気口近傍に排煙を到達させられるだけの風量を排気室に送り込むことができるようにする。
【解決手段】 切断機は、テーブル(12)内部を仕切って並設された複数の排気室(34A−34F)と、各排気室の一端側に設けられた送風口(126A−126F)と、各排気室の他端側に設けられた排気口(136A−136F)と、テーブルの外側に移動しながら、少なくとも一つの排気室にその排気室の送風口から風を送る、移動方向に並べられた複数のファン(151A−151F)とを備える。複数のファンは、一つの排気室の送風口に二以上のファンが対向するような間隔で並べられており、それら二以上のファンにより同時に一つの排気室に風を送るようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル上の作業領域に載置された板材を切断する切断機に関わり、特に、切断機が備えるテーブル内の排気室の排気のための技術に関わる。
【背景技術】
【0002】
この種の切断機の代表例として、切断ヘッドとしてプラズマトーチを用いるプラズマ切断機、レーザトーチを用いるレーザ切断機、及びガスバーナを用いるガス切断機などの熱切断機がある。この種の切断機を用いて、テーブルに載置された板材を切断すると、板材の裏面からテーブル内にヒュームや高圧ガス等(以下、便宜上「排煙」と総称する)が生じる。そのため、一般に、この種の切断機は、テーブル内に排気室を有し、その排気室内に生じた排煙を排気室外へ排出するようになっている。排煙を排気室外へ排出するための技術として、例えば、特許文献1〜2に開示されている技術が知られている。
【0003】
特許文献1(特公昭60−43231号公報)には、プラズマトーチを搭載したキャリッジの移動方向に対し直角方向に仕切られて設けられた切断テーブル内の煙道と、該キャリッジに載置し、切断テーブル内の煙道にそれぞれ対面させた、一対の吸引フードおよび噴出フードと、キャリッジ上に搭載した集塵機とを設けたプラズマ切断機の技術が記載されている。吸引フード及び噴出フードは、それぞれ、ダクトを介して集塵機に接続されており、集塵機が、ダクトを介して吸引フードから吸気することと、ダクトを介して噴出フードから送風することとの両方を行う。つまり、集塵機が、煙道内の空気を取り込む吸気源と、煙道内へ風を送る送風源とを兼ねている。
【0004】
特許文献2(特開2003−136248号公報)には、テーブル内に複数の排気室を設け、各排気室をダンパ付の排気口を通じて集塵機に接続し、切断ヘッドの移動に伴って開かれるダンパを遷移させていくことにより、切断時にテーブル内に出るヒュームを効率的に排出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−43231号公報
【特許文献2】特開2003−136248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によればすなわち、集塵機が、煙道で発生した排煙を取り込んで浄化し、浄化された排煙を、テーブル内の煙道へ送り込む。一般に、プラズマ切断における排煙は、温度が高い。このため、集塵機によって浄化されたとはいえ、その排煙をテーブル内に送風すると、比重が軽いことによる上昇気流が発生し、テーブル内の排煙が舞上がってテーブル上から切断機外へ漏れ出てしまう。
【0007】
また、特許文献1によれば、テーブル煙道への送風源である集塵機は、その煙道から離れた場所に存在する。そのため、噴出フードを介して煙道内に送られる風量は、排煙を吸引フード近傍に到達させられるだけの十分な量にはならない。
【0008】
更に、特許文献1によれば、移動するキャリッジに、噴出フードと吸引フードの両方を設けている為、キャリッジを高速で送るような切断を行うと、テーブルの区画内にヒュームが残っているような状況で、噴出フードや吸引フードが次の区画に移ることとなり、その残ったヒュームが機外へ漏れ出てくる不具合が発生する。
【0009】
特許文献2によれば、テーブル内の各排気室の送風口付近に、電動ファン等の送風源がテーブルに固定される構成となっている。この構成によれば、排気室の数が多くなればなるほど(例えば、排気室の配列方向へテーブルが長くなればなるほど)、テーブルに搭載する送風源の数が多くなってしまう。
【0010】
従って、本発明の目的は、排気室の排気口近傍に排煙を到達させられるだけの風量を排気室に送り込むことができるようにすることにある。
【0011】
本発明の別の目的は、排煙がなるべく切断機外へ漏れ出ないようにすることにある。
【0012】
本発明のまた別の目的は、排気室の数が多くても送風源を多くしなくて済むようにすることにある。
【0013】
本発明の他の目的は、後の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この欄の記述において、カッコ内の符号は、添付の図面に記載の要素との対応関係を例示するものであるが、これは、単なる説明のための例示にすぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0015】
本発明の第一の側面に従う切断機は、板材(14)を載置するためのテーブル(12)と、前記テーブル上に載置された板材を切断するための切断ヘッド(24)と、前記切断ヘッドを移動させるヘッド移動装置(16、18、20、22)と、前記テーブル(12)内部を仕切って並設された複数の排気室(34A−34F)と、各排気室の一端側に設けられた送風口(126A−126F)と、前記各排気室の他端側に設けられた排気口(136A−136F)と、前記テーブルの外側に移動しながら、少なくとも一つの排気室にその排気室の前記送風口から風を送る、移動方向に並べられた複数のファン(151A−151F)とを備える。前記複数のファンは、二以上のファンが一つの排気室の送風口に対面するような間隔で並べられており、前記二以上のファンにより同時に一つの排気室に風を送るようになっている。
【0016】
この切断機によれば、複数のファンがテーブルの外側を移動することにより複数の排気室をカバーするので、排気室の数が多くてもファンの数を多くしなくて済む。また、この切断機によれば、複数のファンが、一つの排気室の送風口に二以上のファンが対向するような間隔で並べられており、二以上のファンにより同時に一つの排気室に風を送るようになっているので、排気室の排気を行うための風量を得られ易い。
【0017】
この切断機の一つの実施態様では、前記各排気室の各送風口の幅は、実質的に、各排気室の幅全体にわたっており、前記二以上のファンにより前記少なくとも一つの排気室の幅全体にわたり風を送るようになっていてもよい。これにより、排気室の排気を行うための風量を得られ易い。
【0018】
この切断機の一つの実施態様では、前記複数のファンは、相互間に一つのファンの幅よりも狭い間隔をおいて並んでいてもよい。具体的には、例えば、前記複数のファンは、実質的に相互間に間隔をおくことなく並んでいてもよい。このような構成により、一つの排気室に対してその排気室の送風口から流すことのできる風の量をより多くすることができる。
【0019】
本発明の第二の側面に従う切断機は、板材(14)を載置するためのテーブル(12)と、前記テーブル上に載置された板材を切断するための切断ヘッド(24)と、前記切断ヘッドを移動させるヘッド移動装置(16、18、20、22)と、前記テーブル(12)内部を仕切って並設された複数の排気室(34A−34F)と、各排気室の一端側に設けられた送風口(126A−126F)と、前記各排気室の他端側に設けられた排気口(136A−136F)と、前記テーブルの外側に移動しながら、少なくとも一つの排気室にその排気室の前記送風口から風を送る、移動方向に並べられた複数のファン(251A−251H)とを備える。前記複数のファンは、少なくとも3つの排気室の幅以上の距離にわたって配列されていて、前記少なくとも3つの排気室に同時に風を流すことができるようになっている。
【0020】
この切断機によれば、複数のファンがテーブルの外側を移動することにより複数の排気室をカバーするので、排気室の数が多くてもファンの数を多くしなくて済む。また、この切断機によれば、複数のファンは、少なくとも3つの排気室の幅以上の距離にわたって配列されていて、それら少なくとも3つの排気室に同時に風を流すことができるようになっているので、一つの排気室(例えば、切断中の真下に位置する排気室)だけにしか風を流せないことに比べて、排煙が切断機外へ漏れ出ないようにすることが期待できる。
【0021】
この切断機の一つの実施態様では、前記各排気室の各送風口の幅は、実質的に、各排気室の幅全体にわたっており、前記二以上のファンにより前記少なくとも一つの排気室の幅全体にわたり風を送るようになっていてもよい。これにより、排気室の排気を行うための風量を得られ易い。
【0022】
この切断機の一つの実施態様では、前記複数のファンは、相互間に一つのファンの幅よりも狭い間隔をおいて並んでいてもよい。具体的には、例えば、前記複数のファンは、実質的に相互間に間隔をおくことなく並んでいてもよい。このような構成により、一つの排気室に対してその排気室の送風口から流すことのできる風の量をより多くすることができる。
【0023】
なお、上述した第一と第二の側面に従う切断機のうちの少なくとも一つにおいて、以下のような実施態様があっても良い。
【0024】
すなわち、一つの実施態様では、テーブルは、板材(14)を載置するための長方形の作業領域(13)を有した箱状のテーブルであってもよい。また、ヘッド移動装置は、前記作業領域上の板材に対し、前記作業領域の長辺に沿ったX軸と短辺に沿ったY軸の方向に前記切断ヘッドを移動させてもよい。複数の排気室は、前記X軸を横切る方向(例えばY軸と平行)に前記テーブル内部を仕切って並設されていてもよい。また、複数のファンは、各送風口の近傍を前記X軸方向に沿って移動してもよい。
【0025】
また、一つの実施態様では、切断機は、前記排気口を介して前記複数の排気室内の空気を強制的に排気する第1の排気源(30)を更に備えてもよい。第1の排気源の位置は、例えば固定であってもよい。また、第1の排気源は、各排気口から排出された排煙を取り込む集塵装置であっても良い。また、排気口はダクト(28、38)等の接続部材を介して第1の排気源に接続されていて、第1の排気源は、前記排気口及び前記接続部材を介して前記複数の排気室内の空気を強制的に排気しても良い。さらに、この実施態様では、2以上の排気口の組を複数組定め、各組毎に第1の排気源を設けても良い。
【0026】
一つの実施態様では、切断機は、前記排気室内の空気を強制的に排気する、各排気口毎にその近傍に設置された第2の排気源(81A−81F)を更に備えてもよい。ここで、第2の排気源の位置は、例えば固定であってもよい。また、第2の排気源は、ファンであっても良い。
【0027】
一つの実施態様では、前記ヘッド移動装置は、前記切断ヘッドと共に前記Y軸方向に移動するY軸移動装置(20、22)と、前記切断ヘッドと共に前記X軸方向に移動するX軸移動装置(16、18)とを備えてもよい。そして、複数のファンが、前記X軸移動装置に備えられていてもよい。
【0028】
一つの実施態様では、前記複数のファンが、前記複数の排気室のうち少なくとも、切断加工中の前記切断ヘッドの真下に位置するターゲット排気室に風を送ってもよい。
【0029】
一つの実施態様では、切断機は、前記X軸移動装置のX軸軌道(16)を更に備えてもよい。前記X軸方向に移動可能な前記複数のファンが、前記テーブルと前記X軸軌道との間に配置されていてもよい。
【0030】
一つの実施態様では、前記複数のファンは、少なくとも隣接する2つの排気室口を常にカバーする長さを前記X軸方向に有していてもよい。ここで、「カバーする」とは、完全にカバーすることと、一部をカバーすることとの両方を含む意味であっても良い。
【0031】
一つの実施態様では、各排気口は、開閉する排気ダンパ(96A−96F)を有してもよい。切断機は、各排気ダンパの開閉を制御する排気ダンパ開閉制御部(40)を更に備えてもよい。前記排気ダンパ開閉制御部は、前記ターゲット排気室が第1排気室からその隣の第2排気室に移動した場合、前記第2排気室の排気ダンパを、開いた状態にし、前記第1排気室の排気ダンパを、前記ターゲット排気室の移動が行われてから所定時間経過した場合に、開いた状態から閉じた状態にし、前記第1及び第2排気室以外の全ての排気室の排気ダンパを、閉じた状態にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に従う切断機10の全体構成を示す斜視図。
【図2】テーブル12の内部構造と、プッシュプル集塵の仕組みとを説明するための図。
【図3】コントローラ40の構成と機能を示すブロック図。
【図4】切断ヘッド位置とダンパの開閉状態との関係を示す。
【図5】送風制御のフローチャートを示す。
【図6】ダンパ制御のフローチャートを示す。
【図7】図7Aは、本発明の一実施形態の一変形例に係るテーブルの内部構成を示し、図7Bは、図7Aのテーブルにおけるコントローラの制御対象を示す。
【図8】本発明の第一の別の実施形態の一つの説明図である。
【図9】本発明の第一の別の実施形態における、送風ファンと送風口との位置関係を示す図である。
【図10】図10Aは、送風口の高さの一例を示す。図10Bは、送風口の高さの別の一例を示す。図10Cは、送風口の一変形例を示す。
【図11】本発明の第二の別の実施形態における、送風ファンと送風口との位置関係を示す図である。
【図12】本発明の第二の別の実施形態の一変形例の説明図。
【図13】本発明の第二の別の実施形態の一変形例における、送風ファンと送風口との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る切断機の全体構成を示す斜視図である。
【0034】
図1に示すように、切断機10は、床に設置された箱状のテーブル12を有する。このテーブル12の上面には作業領域13があり、この作業領域13上に、被切断材である板材14が載置される。一般に、板材14の平面サイズには、例えば1.5m×3mや2.4m×6mというような長方形の標準サイズがある。そして、テーブル12の作業領域13も、板材の特定の標準サイズに適合した長方形のサイズになっており、テーブルの平面サイズも、作業領域13の周囲に後述する排気ダクトやその他の付加的部分を加えた長方形のサイズになっている。
【0035】
板材14の切断位置を制御するための数値演算処理上、X-Y-Z 直交座標系が定義される。このX-Y-Z 直交座標系のX軸は作業領域13の例えば長辺に平行であり、Y軸は作業領域13の例えば短辺に平行であり、Z軸は作業領域13の平面に垂直である。
【0036】
テーブル12の脇の床上に、作業領域13の長辺(X軸)と平行にX軸軌道16が設置される。テーブル12とX軸軌道16との間には、X軸方向に長い空きスペース4ができている。X軸軌道16上に、移動台車18が設置され、これは、X軸軌道16に沿ってX軸方向に移動可能である。移動台車18には、Y軸軌道20が固定され、これは、作業領域13の上方で作業領域13の短辺(Y軸)の方向へ直線的に伸びている。移動台車18がX軸方向へ移動すると、Y軸軌道20も一緒にX軸方向へ移動する。図示の例では、Y軸軌道20は、その一端のみで移動台車18に支持された片持ちアームであるが、これは単なる例示であり、両端にて支持された両持ちアームであっても良い。
【0037】
Y軸軌道20上に、キャリッジ22が搭載され、これは、Y軸軌道20に沿ってY軸方向に移動可能である。キャリッジ22には、切断ヘッド24が搭載されている。キャリッジ22は、切断ヘッド24をZ軸方向に移動させることができる。切断ヘッド24は、例えば、プラズマ切断機の場合にはプラズマトーチ、レーザ切断機の場合にはレーザトーチ、ガス切断機の場合にはガスバーナ、また、複合型切断機の場合には上述した異なる種類のトーチ又はバーナのセットである。切断ヘッド24は、後述するコントローラ40によって駆動され制御される。
【0038】
上述したX軸軌道16、移動台車18、Y軸軌道20及びキャリッジ22により、切断ヘッド24をX,Y,Z軸方向へ移動させるためのヘッド移動装置が構成される。このヘッド移動装置は、切断ヘッド24を作業領域13の全域のどの位置へも送ることができる。
【0039】
コントローラ40は、人から運転指示従って、及び加工プログラムに従って、この切断機10を駆動し制御するものである。コントローラ40の機能については、後に説明する。
【0040】
テーブル12の内部空間(図示せず)は、接続ダクト28を通じて、集塵機30に接続される。集塵機30は、板材14の切断時にテーブル12の内部の空気を吸い込み、それに含まれるヒュームなどを除去する。
【0041】
ところで、本実施形態に係る切断機、テーブル12の内部空間に風を送り込むことと、テーブル12の内部空間の空気を吸い込むこととの両方による集塵、つまり、いわゆるプッシュプル集塵が行われる。以下、テーブル12の内部構造と、プッシュプル集塵の仕組みを説明する。
【0042】
図2は、テーブル12の内部構造と、プッシュプル集塵の仕組みとを説明するための図である。
【0043】
図2に示すように、テーブル12の内部の作業領域13の下方には、複数の排気室34A−34Fが、作業領域13の長辺方向(X軸方向)に並んで配置されている。複数の排気室34A−34Fは、例えば、テーブル12内部がX軸を横切る方向に仕切られる(例えばY軸方向に平行に仕切られる)ことによって並設されたものである。排気室34A−34Fは、仕切り板によって相互に分離されている。排気室34A−34Fの各々は、作業領域13の短辺方向(Y軸方向)に作業領域13の一端から他端まで伸びている。排気室34A−34Fは、それぞれ、その一端に、ダンパ付き送風口(以下、単に「送風口」と言う)26A−26Fを有し、他端に、ダンパ付き排気口(以下、単に「排気口」と言う)36A−36Fを有する。送風口26A−26Fには、送風ダンパ(図3参照)6A−6Fがそれぞれ設けられ(必ずしもダンパが付いていなくても良い)、排気口36A−36Fには、排気ダンパ(図3参照)96A−96Fがそれぞれ設けられる。排気ダンパ(図3参照)96A−96Fのうちの1以上のダンパを選択的に開くことで、排気室34A−34Fの中から、排気される1以上の排気室が選択される。排気口36A−36Fは、テーブル12内の排気ダクト38に通じる。排気ダクト38は、接続ダクト28を通じて、集塵機30の吸気口に繋がる。
【0044】
X軸軌道16とテーブル12の側面との間に設けられた空きスペース4に、送風源として、複数の(例えば6個の)送風ファン51A−51Fが備えられる。なお、送風源としては、送風ファンに限らず、例えば、エアコンプレッサ等の別種の送風源を採用することができる。
【0045】
複数の送風ファン51A−51Fの各々は、どのような大きさであっても良い。本実施形態では、各送風ファンのX軸方向のサイズは、1つの送風口のX軸方向のサイズの略半分である。換言すれば、各送風ファンのサイズは、2つの送風ファンで1つの送風口をカバーするようなサイズになっている。また、この実施形態では、送風ファンの数は、排気室の数よりも少ない。
【0046】
複数の送風ファン51A−51Fは、例えば、複数の送風ファン51A−51Fにそれぞれ対応した複数のファン駆動機構(図3参照)94A−94Fを有する送風ファン搭載部53に搭載され、その送風ファン搭載部53は、移動台車18に取り付けられている。これにより、複数の送風ファン51A−51Fは、移動台車18の移動、換言すれば、切断ヘッド24のX軸方向の移動に伴って、空きスペース4を移動することができる。
【0047】
また、複数の送風ファン51A−51Fは、X軸軌道16に対向したテーブル側面(換言すれば、送風口26A−26F)に向けて風を送るように搭載されている。換言すれば、複数の送風ファン51−51Fの送風面が、送風口26A−26Fを有するテーブル側面に対向している。これにより、複数の送風ファン51A−51Fの移動に伴って、1以上の排気室に風を送り込むことができる。
【0048】
複数の送風ファン51A−51Fは、X軸方向に配列されている。複数の送風ファン51A−51FによってカバーされるX軸方向の長さは、複数の排気室34A−34FのX軸方向長さよりも短い。しかし、上述したように、複数の送風ファン51A−51Fは、移動台車18の移動に伴ってX軸方向に移動するので、結果として、複数の排気室34A−34Fの全てをカバーすることができる。
【0049】
複数の送風ファン51A−51Fは、少なくとも、切断ヘッド24の真下に存在するターゲット排気室の送風口(図2の例では排気室34Cの送風口26C)を介してそのターゲット排気室に風を送り込むことができる位置に搭載されている。換言すれば、X軸方向に並んだ複数の送風ファン51A−51F(つまり、X軸方向に長い送風源)の中央又はその付近と、切断ヘッド24又はY軸軌道20とが、X軸方向において同じ位置になるように、複数の送風ファン51A−51Fが、送風ファン搭載部53を介して移動台車18に搭載されている。これにより、切断ヘッド24のX軸方向の移動に伴って、複数の送風ファン51A−51FがX軸方向に移動し、その際、複数の送風ファン51A−51Fの少なくとも中央又はその付近にある送風ファン(例えば51C及び51D)が駆動していれば、必ず、切断ヘッド24の真下にあるターゲット排気室に風を送り込むことができる。
【0050】
前述したように、複数の送風ファン51A−51Fのうち、中央又はその付近にある送風ファン51C及び51Dは、ターゲット排気室の送風口の付近且つ外側(例えば、送風口に対向した位置)に存在するように、移動台車18に搭載される。別の送風ファン51A及び51Bは、それらのうちの少なくとも1つ(又は1つの送風ファンの一部)が、ターゲット排気室(例えば34C)のX軸方向後方の隣の排気室(例えば34B)の送風口の付近且つ外側(例えば、送風口に対向した位置)に存在するように、移動台車18に搭載される。また別の送風ファン51E及び51Fは、それらのうちの少なくとも1つ(又は1つの送風ファンの一部)が、ターゲット排気室(例えば34C)のX軸方向前方の隣の排気室(例えば34D)の送風口の付近且つ外側(例えば、送風口に対向した位置)に存在するように、移動台車18に搭載される。以上の構成により、移動台車がX軸方向前方及び後方のいずれの方向に進んでも、ターゲット排気室だけでなく、切断ヘッド24が去っても未だ排煙が残っていると考えられる排気室にも風を送りこむことができる。また、これから切断ヘッド24が移動する排気室に、前もって風を送り込むことができ、それにより、次に、その排気室がターゲット排気室になった場合には、そこに初めて生じた排煙をスムーズに排気口側に送ることができる。
【0051】
後述するように、送風ファン51A−51Fの駆動と、送風ダンパ(図3参照)6A−6F及び排気ダンパ(図3参照)96A−96Fの開閉は、コントローラ40によって制御される。コントローラ40は、切断ヘッド24のX軸方向(長辺)方向の位置を検出し、検出された位置に応じて、排気される排気室として選択された排気室が切断ヘッド24のX軸方向(長辺)方向に移動に伴い遷移するように、排気ダンパ(図3参照)96A−96Fの開閉を制御する。これにより、集塵機30の能力を排気が必要な排気室に集中させることが可能になり、排気効率を向上させることができる。
【0052】
例えば、図2に点線で示すように、今、切断ヘッド24が一つの排気室34Cに対応するX軸位置に存在し、そのX軸に沿った移動方向が図中右から左である場合を想定する。この場合、切断ヘッド24の位置に対応する排気室(以下、便宜上、「現在のターゲット排気室」と言う)34Cが、排気される排気室として選択されて、この現在のターゲット排気室34Cの排気口36Cの排気ダンパが開かれる。加えて、この排気室34Cの隣の、切断ヘッド24が既に去った排気室(以下、便宜上、「過去のターゲット排気室」と言う)34Dも、切断ヘッド24が去ってから所定時間(まだ、ヒューム等の排煙が残っていると考えられる時間であり、例えば数秒間)が経過するまで、依然として、その排気口36Dの排気ダンパが開かれる。さらに、切断ヘッド24の位置に対応する排気室34Cの隣の、切断ヘッド24が次にそこへ移動するであろう排気室(以下、便宜上、「将来のターゲット排気室」と言う)34Bでは、排気口36Bの排気ダンパが閉じた状態とされるが、送風ファン51A及び51Bが駆動される。これにより、排気室34Bが選択されたときに排気を即座に開始できるようにするための準備として、排気室34B内に風が生成される(因みに、排気ダンパが閉じていても、排気室34Bの上面の板材14の隙間などから、空気は排出されるから、風が生じる)。他の選択されてない排気室34A、34E、34Fでは、排気は行われない。
【0053】
図3は、コントローラ40の構成と機能を示す。
【0054】
図3に示すように、コントローラ40は、演算処理装置42、記憶装置44、入力装置46及び表示装置48を有する。演算処理装置42は、この切断機10の各部の動作を制御するための種々の演算処理を行い、演算結果に応じた制御信号を各部に発する。記憶装置44には、演算処理装置42が用いるプログラムやデータ、例えば、加工プログラム50、切断条件データ52、ステータスデータ54及び早送り速度データ56などが記憶される。入力装置46は、人が加工開始指示を初めとする各種の運転指示や、上述した加工プログラム50、切断条件データ52及びステータスデータ54などを、コントローラ40に入力するものである。表示装置48は、コントローラ40のグラフィカルユーザインタフェースを提供するものである。
【0055】
加工プログラム50には、板材14から切り出されるべき複数の製品のネスティングの情報、すなわち、板材14からそれらの製品を切り出すときに切断ヘッド24をどのような製品配列パターンに従ってどの方向にどの経路に沿って移動させるかを指示するヘッド移動手順が記述されている。
【0056】
切断条件データ52には、使用可能な種々の切断条件、例えば、使用可能な種々の板材14の厚さと材質、及び使用可能な種々の切断ヘッド24の定格パワー(例えば、プラズマトーチの場合の定格プラズマ電流値やノズル径、レーザトーチの場合の定格レーザビームパワー値)などのデータが記述されている。入力装置46からの指示で、種々の切断条件の中から使用される切断条件が選択できる。
【0057】
ステータスデータ54には、使用可能な種々の切断条件にそれぞれ対応した種々の切断ステータスのデータが記述されている。ここで、切断ステータスとは、切断を行うときに制御される各種のステータスであり、例えば、切断速度(切断ラインに沿った方向での切断ヘッド24の移動速度)や切断ヘッド24の駆動ステータス(プラズマトーチの場合のプラズマ電流値やガス流量、レーザトーチの場合のレーザビームパワー値など)の複数項目のデータから構成される。
【0058】
演算処理装置42は、加工プログラム50、ステータスデータ54中の選択された切断条件に対応する切断ステータスのデータを読み込む。演算処理装置42は、加工プログラム50が指示する手順に従って、板材14から複数の製品を逐次に切り出すように切断ヘッド24の駆動と移動を制御する。この制御の過程において、演算処理装置42は、各製品の切断を行うときには、読み込んだ切断ステータスのデータにより指示される切断速度で切断ヘッド24を移動させる。また、上記制御の過程において、演算処理装置42は、各製品の切断を行うときには、読み込んだ切断ステータスのデータにより指示される駆動ステータスに従って切断ヘッド24を駆動する。さらに、上記制御の過程において、演算処理装置42は、切断ヘッド24のX軸方向の位置に応じて、テーブル12内の排気室(図2参照)34A−34Fからの集塵(排気)動作を制御する。
【0059】
上記のように切断ヘッド24の移動を制御するために、演算処理装置42は、移動台車18とキャリッジ22に対してそれぞれY軸方向の速度指令とX軸方向の速度指令を出力する。移動台車18では、X軸サーボアンプ60が、X軸方向の速度指令に従ってX軸駆動モータ62の回転速度を制御する。X軸駆動モータ62によりX軸駆動機構64(例えば、ラック&ピニオン機構、又はボールスクリュー機構)が駆動されて、移動台車18をX軸方向に移動させる。X軸変位センサ66(例えば、ピニオン軸又はボールスクリュー機構に結合されたロータリエンコーダ)が、移動台車18のX軸方向の変位を検出する。演算処理装置42は、X軸変位センサ66の検出信号をフィードバックし、これに基づいて、切断ヘッド24のX軸方向の位置を計算し、これを切断ヘッド24のX軸方向の位置制御計算に使用する。また、キャリッジ22では、Y軸サーボアンプ70が、Y軸方向の速度指令に従ってY軸駆動モータ72の回転速度を制御する。Y軸駆動モータ72によりY軸駆動機構74(例えば、ラック&ピニオン機構、又はボールスクリュー機構)が駆動されて、キャリッジ22をY軸方向に移動させる。Y軸変位センサ76(例えば、ピニオン軸又はボールスクリュー機構に結合されたロータリエンコーダ)が、キャリッジ22のY軸方向の変位を検出する。演算処理装置42は、Y軸変位センサ76の検出信号をフィードバックし、これに基づいて、切断ヘッド24のY軸方向の位置を計算し、これを切断ヘッド24のY軸方向の位置制御計算に使用する。
【0060】
上記のように切断ヘッド24の駆動を制御するために、演算処理装置42は、ヘッド駆動装置80(例えば、プラズマ切断機の場合のプラズマ電源装置とガス供給バルブ、レーザ切断機の場合のレーザ発振装置)にヘッド出力制御指令を出力する。ヘッド駆動装置80は、ヘッド出力制御指令に従って切断ヘッド24の出力パワーを制御する。
【0061】
上記のようにテーブル12内の排気室(図2参照)34A−34Fからの集塵(排気)動作を制御するために、演算処理装置42は、切断加工を開始することを意味する切断開始信号や、切断加工を終了することを意味する切断終了信号や、切断ヘッド24のX軸方向の位置を示すヘッド位置信号等を、排気制御回路90に出力する。排気制御回路90は、テーブル12内に搭載されていても良いし、コントローラ40に組み込まれていてもよい。
【0062】
排気制御回路90は、演算処理装置42から切断開始信号を受信した場合、送風ファン搭載部53に搭載されている全てのファン駆動機構94A−94Fを制御して、全ての送風ファン51A−51Fを駆動させる。また、排気制御回路90は、演算処理装置42から切断終了信号を受信した場合、送風ファン搭載部53に搭載されている全てのファン駆動機構94A−94Fを制御して、全ての送風ファン51A−51Fの駆動を停止させる。このように、排気制御回路90は、複数の送風ファン51A−51Fを一斉に駆動したり一斉に停止したりする(例えば、所定風速(一例として、1m/秒)を出すように制御したりする)。なお、排気制御回路90は、複数の送風ファン51A−51Fの駆動を個別に制御しても良い。例えば、排気制御回路90は、送風ファン51C及び51D、51A及び51B、51E及び51Fの回転速度を別々に制御して、現在のターゲット排気室、過去のターゲット排気室、及び将来のターゲット排気室に送り込む風量をそれぞれ違えても良い(具体的には、例えば、現在のターゲット排気室及び過去のターゲット排気室に送り込む風量は多くし、将来のターゲット排気室に送り込む風量は少なくしても良い)。
【0063】
排気制御回路90は、ヘッド位置信号に基づいて、複数の送風ダンパ6A−6Fの中から開くべき送風ダンパを選択し、且つ、複数の排気ダンパ96A−96Fの中から開くべき排気ダンパを選択する。そして、排気制御回路90が、送風ダンパ駆動機構(例えば、電磁バルブとエアシリンダのセット)1A−1F及び排気ダンパ駆動機構(例えば、電磁バルブとエアシリンダのセット)92A−92Fを制御して、選択された送風ダンパ及び排気ダンパだけを開く。以下、その具体例を説明する。
【0064】
図4は、切断ヘッド位置とダンパの開閉状態との関係を示す。
【0065】
図4は、切断ヘッド24がX軸方向に沿って移動した場合の図である。この図4において、点線は、切断ヘッド24、送風ファン搭載部53及び送風ファン51A−51Fの過去の位置を示す。また、図4において、実線は、切断ヘッド24、送風ファン搭載部53及び送風ファン51A−51Fの現在の位置を示す。また、図4において、一点鎖線は、送風口26A−26Eを示す。
【0066】
過去において、送風ファン51Aは、送風口26Aの近傍且つY軸方向前方に位置し、送風ファン51Bは、送風口26Aと26Bとの間の近傍且つY軸方向前方に位置し、送風ファン51C及び51Dは、送風口26B(送風口26AのX軸方向前方の隣の送風口)の近傍且つY軸方向前方に位置し、送風ファン51Eは、送風口26Bと26Cとの間の近傍且つY軸方向前方に位置し、送風ファン51Fは、送風口26Cの近傍且つY軸方向前方に位置していた。送風ファン51A−51Fと送風口26A−26Fとのこのような位置関係は、例えば、排気制御回路90が、演算処理装置42から受信したヘッド位置信号(演算処理装置42によって計算された、切断ヘッド24のX軸方向位置)に基づいて計算することができる。この場合、過去の或る時点において、排気制御回路90が、排気室34Aの送風口26A及び排気口36Aのダンパを閉じ、ターゲット排気室となっていた排気室34Bの送風口26B及び排気口36Bのダンパを開き、将来のターゲット排気室となる排気室34Cの送風口26Cのダンパを開くがそれの排気口36Cのダンパを閉じ(開いても良い)、他の排気室34D−34Fの送風口及び排気口のダンパを全て閉じていた。
【0067】
ここで、図4に示すように、移動台車18が、X軸方向前方に、送風ファン3個分移動したとする。これにより、切断ヘッド24のX軸方向位置が、排気室34Bの真上からそれの隣の排気室34Cの真上に移動する。また、送風ファン51A−51Fと送風口26A−26Fとの位置関係は、以下のように変わる。すなわち、送風ファン51Aは、送風口26Bの近傍且つY軸方向前方に位置し、送風ファン51Bは、送風口26Bと26Cとの間の近傍且つ前方に位置し、送風ファン51C及び51Dは、送風口26Cの近傍且つY軸方向前方に位置し、送風ファン51Eは、送風口26Cと26Dとの間の近傍且つY軸方向前方に位置し、送風ファン51Fは、送風口26Dの近傍且つY軸方向前方に位置する。このような位置関係の変化も、例えば、排気制御回路90が、演算処理装置42から受信したヘッド位置信号に基づいて計算することができる。この場合、排気制御回路90は、過去のターゲット排気室34Bの送風口26A及び排気口36Aのダンパを、上記の移動が行われてから所定時間が経過するまで開いた状態に維持し、その所定時間が過ぎてから閉じる。また、排気制御回路90は、現在のターゲット排気室34Cの送風口26Cのダンパを開いたままにし、それの排気口36Bのダンパを閉じた状態から開いた状態にする(又は開いたままにする)。また、排気制御回路90は、将来のターゲット排気室34Dの送風口26Dのダンパを閉じた状態から開いた状態にし、それの排気口36Dのダンパを閉じた状態に維持する(又は閉じた状態から開いた状態にする)。排気制御回路90は、その他の排気室34A及び34E−34Fの送風口及び排気口のダンパを、全て閉じた状態に維持する。
【0068】
なお、過去のターゲット排気室について、送風口及び排気口のダンパを開いた状態に維持する「所定時間」とは、前述したように、ヒューム等の排煙が残っていると考えられる時間長であり、例えば数秒間である。この所定時間は、例えば、送風ファンの風速及び風量の少なくとも1つと、排気室のY軸方向長さとに基づいて、コントローラ40の記憶装置44に予め記憶されていても良い。その場合、排気制御回路90は、その記憶装置44に記憶された所定時間データに基づいて、送風口及び排気口のダンパを開いた状態に維持するための所定時間を認識する。所定時間経過したか否かは、例えば、排気制御回路90が、タイマ等により検出することができる。
【0069】
図5は、送風制御のフローチャートを示す。
【0070】
コントローラ40の演算処理装置42は、切断加工作業の開始命令をユーザから受けて切断加工作業を開始する場合(ステップS1でYES)、加工プログラム50やヘッド位置信号等を入力して(S2)、ファン駆動機構94A−94Fの制御と、集塵装置30及びダンパ96A−96F、6A−6Fの制御とを開始する(S3及びS4)。S3の制御では、例えば、演算処理装置42が、切断開始信号を排気制御回路90に入力し、排気制御回路90が、ファン駆動機構94A−94Fを制御して、複数の送風ファン51A−51Fを駆動する。
【0071】
そして、コントローラ40の演算処理装置42は、切断加工作業の終了命令をユーザから受けて切断加工作業を終了する場合(ステップS5でYES)、ファン駆動機構94A−94Fの制御と、集塵装置30及びダンパ96A−96F、6A−6Fの制御とを終了する(S6及びS7)。S6の制御では、例えば、演算処理装置42が、切断終了信号を排気制御回路90に入力し、排気制御回路90が、ファン駆動機構94A−94Fを制御して、複数の送風ファン51A−51Fの駆動を停止する。
【0072】
図6は、ダンパ制御のフローチャートを示す。
【0073】
排気制御回路90は、加工プログラム50及びヘッド位置信号等を入力し(S11)、入力されたヘッド位置信号から、複数の排気室34A−34Fのうち現在のターゲット排気室がどこかを判断する(S12)。そして、排気制御回路90は、判断された現在のターゲット排気室の送風ダンパ及び排気ダンパを開いた状態にし、将来のターゲット排気室の送風ダンパを開き、それの排気ダンパを閉じた状態にし、且つ、その他の排気室の排気ダンパ及び送風ダンパについては、現在状態を維持する(S13)。
【0074】
排気制御回路90は、現在のターゲット排気室に移動してからの経過時間をカウントする(S14)。
【0075】
S14の結果、排気制御回路90は、カウントされた経過時間が所定時間経っていなければ、切断ヘッド24が別の排気室の真上に移動しない限り(S15でNO)、上記経過時間をカウントし続ける。もし、カウントされた経過時間が所定時間経たたないうちに、切断ヘッド24が別の排気室の真上に移動したならば(S15でYES)、S11以降の処理が行われる。
【0076】
また、S14の結果、排気制御回路90は、カウントされた経過時間が所定時間経ったならば、過去のターゲット排気室の排気ダンパ及び送風ダンパを閉じる(S16)。その後、排気制御回路90は、切断ヘッド24が別の排気室の真上に移動しない限り(S17でNO)、現在状態を維持する。切断ヘッド24が別の排気室の真上に移動したならば(S17でYES)、S11以降の処理が行われる。
【0077】
なお、以上の処理において、例えば、移動台車18が、X軸方向前方に進んだりX軸後方に戻ったりすることにより、過去のターゲット排気室の真上を切断ヘッド24が過ぎ去ってから所定時間経過する前に(つまり、その過去のターゲット排気室の排煙が十分に排出される前に)、過去のターゲット排気室が将来のターゲット排気室に切り替わる場合が有り得る。その場合、排気制御回路90は、その切り替わりを検出しても、上記所定時間が経過するまでは、今までの過去のターゲット排気室に対する制御を優先し、その将来のターゲット排気室に対して、過去のターゲット排気室に対する制御と同様の制御を継続しても良い。すなわち、排気制御回路90は、上記切り替わりを検出しても、その将来のターゲット排気室の排気ダンパを、切断ヘッド24が過ぎ去った最近の時点から所定時間が経過するまで、排気ダンパを開いた状態に維持し、所定時間が経過してから、将来のターゲット排気室に対する制御を行っても良い(例えば、開いていた排気ダンパを閉じても良い)。
【0078】
以上が、本実施形態についての説明である。なお、この実施形態に関する幾つかの変形例として、以下の変形例が考えられる。
【0079】
例えば、複数の送風ファン51A−51Fの各々には、その送風ファンからの風を案内するための送風ダクトが備えられても良い。この場合、移動台車18の移動に伴って、送風ファン51A−51Fとそれに備えられた送風ダクトが移動する。これにより、送風ファンが送風口のY軸方向前方に位置した場合には、その送風ファンによって作られた風がなるべく漏れなくその送風口を介して排気室に案内される。
【0080】
また、図7Aに示すように、各排気室34A−34Fの排気口36A−36F(又はその近傍)に、その排気室内の空気を排気室外へ排気することを助けるための吸気ファン81A−81Fが搭載されても良い。この場合、図7Bに示すように、排気制御回路90は、ファン駆動機構85A−85Fを制御して、吸気ファン83A−83Fの駆動を制御しても良い。また、その制御では、例えば、排気制御回路90は、排気ダンパが開かれた排気室の吸気ファンのみを駆動し、排気ダンパが閉じている排気室の吸気ファンを駆動しないように制御しても良い。なお、送風ファン51A−51Fが移動するのに対し、吸気ファン36A−36Fは固定であっても良い。
【0081】
以上が、幾つかの変形例の一例である。
【0082】
ところで、本発明について、幾つかの別の実施形態も考えられる(なお、それらの別の実施形態のうちの少なくとも一つには、上述した少なくとも一つの変形例が適用されてもよい)。以下、各別の実施形態について説明する。その際、上述した実施形態との相違点を主に説明し、上述した実施形態との共通点については説明を省略或いは簡略する。
【0083】
図8は、本発明の第一の別の実施形態の一つの説明図である。図9は、その第一の別の実施形態における、送風ファンと送風口との位置関係を示す図である。図9において実線で表した各送風ファン151A−151Dの位置は、図8に示した各送風ファン151A−151Dの位置に対応している。
【0084】
図8に示すように、この第一の別の実施形態では、各送風口126A−126Fの幅が、実質的に、各排気室34A−34Fの幅全体(例えば80%以上)にわたっている(なお、ここで言う「幅」とは、例えば、送風口が図示のようにX軸方向に長方形であれば、長辺とすることできるし、X軸方向に沿った長さが位置によって異なる場合には、所定の位置(例えば最も長くなる位置)における長さとすることができる)。別の言い方をすれば、例えば、各送風口126A−126Fと隣の送風口との間の距離は、テーブル12内部を仕切っている仕切り板の厚さと完全に又は実質的に同じである。各排気口136A−136Fの幅も、送風口と同様に、実質的に、各排気室34A−34Fの幅全体にわたっていてもよい。
【0085】
また、図8及び図9に示すように、この第一の別の実施形態では、複数の送風ファン151A−151Dは、一つの排気室の送風口に二以上の送風ファンが対向するような間隔で並べられており、それにより、切断位置がどの排気室34A−34Fの真上に位置しても、常に、二以上の送風ファンにより同時に一つの排気室に風を送ることができるようになっている。
【0086】
また、この第一の別の実施形態では、前述した実施形態と同様に、複数の送風ファン151A−151Dは、相互間に一つのファンの幅よりも狭い間隔をおいて並んでいる。具体的には、例えば、複数の送風ファン151−151Dは、実質的に相互間に間隔をおくことなく並んでいる。
【0087】
この第一の別の実施形態によれば、各送風口126A−126Fの幅が実質的に各排気室34A−34Fの幅全体にわたっているので、一つの排気室に流すことができる風の量をより増やすことができる。このことは、例えば、図8及び図9に示すように、各送風口126A−126Fの高さ(Z軸に沿った長さ)が、送風ファンから送られる風の全てを受け入れられる高さであれば、より好ましいと考えられる。また、そのことは、図10Aに例示するように、各送風口126A−126Fの高さが実質的に各排気室34A−34Fの高さ全体にわたっていれば、より好ましいと考えられる(図10Aは、送風口126Aと排気室34Aとを例示)。このことは、各排気口136A−136Fについても同様であっても良い。
【0088】
また、この第一の別の実施形態によれば、一つの排気室に対し二以上の送風ファンにより同時に風を流すようになっている。これにより、送風ファンが一つの場合に比べて多くの風を一つの排気室に対して流すことができる。
【0089】
また、この第一の別の実施形態によれば、複数の送風ファン151A−151Dは、相互間に一つのファンの幅よりも狭い間隔をおいて並んでいる。このため、所定距離における送風ファンを密にすることができるので、一つの排気室に送ることができる風の量を多くすることができる。
【0090】
以上が、第一の別の実施形態についての説明である。なお、この第一の別の実施形態では、例えば、図10Bに例示するように、送風口(例えば126C)の高さは、一つの送風ファンの高さより短くても良い。また、例えば、図10Cに例示するように、テーブル12内部を仕切るための仕切り板425により、各排気室34のみならず各排気室34の各送風口426(及び/又は各排気口)が形成されても良い。図10A乃至図10Cに例示したことは、他の実施形態に適用されても良い。
【0091】
次に、本発明の第二の別の実施形態について説明する。
【0092】
図11は、本発明の第二の別の実施形態における送風ファンと送風口との位置関係を示す。
【0093】
この第二の別の実施形態では、複数の送風ファン251A−251Hは、少なくとも3つの排気室の幅以上の距離にわたって配列されていて、例えば、切断位置がどの排気室34A−34Fの真上に位置しても、常に、少なくとも3つの排気室に同時に風を流すことができるようになっている。少なくとも3つの排気室とは、例えば、切断位置の真下にあるターゲット排気室と、その両隣の排気室とすることができる。
【0094】
この第二の別の実施形態において、他の事については、例えば、上述した実施形態及び第一の別の実施形態と同様にすることができる。
【0095】
この第二の別の実施形態によれば、ターゲット排気室だけでなく、切断ヘッド24が去っても未だ排煙が残っていると考えられる一方の隣の排気室や、これから切断ヘッド24が移動し得る他方の隣の排気室にも、風を送り込むことができる。
【0096】
なお、この第二の別の実施形態について、以下の変形例が考えられる。例えば、一つの変形例として、図12及び図13に示すように、少なくとも3つの排気室に同時に風を流すことができるようになっていれば、一つの排気室に風を流すことができる送風ファンの数は一つであっても良い。換言すれば、例えば、各排気室334A−334Lの幅が、実質的に、一つの送風ファン351の幅と同じであってもよい。また、それに伴って、各排気室334A−334Lの各送風口326A−326L及び/又は各排気口336A−336Lの幅は、実質的に、各排気室334A−334Lの幅全体にわたっていてもよい。
【0097】
以上、本発明の幾つかの実施形態及び幾つかの変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。例えば、送風口及び排気口の少なくとも一方には、ダンパ等の開閉部材は無くても良い。
【符号の説明】
【0098】
10…熱切断機 12…テーブル 13…作業領域 14…板材 16…X軸軌道 18…移動台車 20…Y軸軌道 22…キャリッジ 24…切断ヘッド 26A−26F、126A−126F、226A−226E…ダンパ付送風口 28…接続ダクト 30…集塵機 34A−34F…排気室 36A−36F、136A−136F…ダンパ付排気口 40…コントローラ 51A−51F、151A−151F、251A−251H…送風ファン 96A−96F…排気ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材(14)を載置するためのテーブル(12)と、
前記テーブル上に載置された板材を切断するための切断ヘッド(24)と、
前記切断ヘッドを移動させるヘッド移動装置(16、18、20、22)と、
前記テーブル(12)内部を仕切って並設された複数の排気室(34A−34F)と、
各排気室の一端側に設けられた送風口(126A−126F)と、
前記各排気室の他端側に設けられた排気口(136A−136F)と、
前記テーブルの外側に移動しながら、少なくとも一つの排気室にその排気室の前記送風口から風を送る、移動方向に並べられた複数のファン(151A−151F)と
を備え、
前記複数のファンは、二以上のファンが一つの排気室の送風口に対面するような間隔で並べられており、前記二以上のファンにより同時に一つの排気室に風を送るようになっている、
る切断機。
【請求項2】
前記各排気室の各送風口の幅は、実質的に、各排気室の幅全体にわたっており、前記二以上のファンにより前記少なくとも一つの排気室の幅全体にわたり風を送るようになっている、
請求項1記載の切断機。
【請求項3】
前記複数のファンは、相互間に一つのファンの幅よりも狭い間隔をおいて並んでいる、
請求項1記載の切断機。
【請求項4】
前記複数のファンは、実質的に相互間に間隔をおくことなく並んでいる、
請求項3記載の切断機。
【請求項5】
板材(14)を載置するためのテーブル(12)と、
前記テーブル上に載置された板材を切断するための切断ヘッド(24)と、
前記切断ヘッドを移動させるヘッド移動装置(16、18、20、22)と、
前記テーブル(12)内部を仕切って並設された複数の排気室(34A−34F)と、
各排気室の一端側に設けられた送風口(126A−126F)と、
前記各排気室の他端側に設けられた排気口(136A−136F)と、
前記テーブルの外側に移動しながら、少なくとも一つの排気室にその排気室の前記送風口から風を送る、移動方向に並べられた複数のファン(251A−251H)と
を備え、
前記複数のファンは、少なくとも3つの排気室の幅以上の距離にわたって配列されていて、前記少なくとも3つの排気室に同時に風を流すことができるようになっている、
切断機。
【請求項6】
前記各排気室の各送風口の幅は、実質的に、各排気室の幅全体にわたっており、前記二以上のファンにより前記少なくとも一つの排気室の幅全体にわたり風を送るようになっている、
請求項5記載の切断機。
【請求項7】
前記複数のファンは、相互間に一つのファンの幅よりも狭い間隔をおいて並んでいる、
請求項5記載の切断機。
【請求項8】
前記複数のファンは、実質的に相互間に間隔をおくことなく並んでいる、
請求項7記載の切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−240744(P2010−240744A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173828(P2010−173828)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2006−513938(P2006−513938)の分割
【原出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(394019082)コマツ産機株式会社 (103)
【Fターム(参考)】