説明

別個の材料が相互に貫通し合う網目構造の形成方法およびそのデバイス

電気または電子光学デバイス(100)は、第1の組成を有する第1の層(110)を含む。第1の組成は、電気的に接続された複数の粒子を含む。第2の層(130)は第2の組成を有し、第2の組成は電気的に接続された複数の粒子を含む。第1の層および第2の層の間に、複合層(120)が配置される。複合層は、第3の組成および第4の組成が相互に貫通し合う網目構造であり、第3の組成は、第4の組成と異なるものである。電気的に相互接続された第1の網目構造は、複合層(120)の厚み全体にわたって、第1の層(110)中の第1の組成から第3の組成まで延伸し、かつ電気的に相互接続された第2の網目構造が、複合層の厚み全体にわたって、第2の層(130)中の第2の組成から第4の組成まで延伸する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、別個の材料が相互に貫通し合う網目構造を形成する方法およびそのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
第1および第2の材料間の接触域は、種々の電気および電気電子光学デバイスの性能に著しく影響を及ぼすことが知られている。作製は容易であるが、従来の実質的に平面のコンタクトでは、一般に、接触域が最小限に抑えられる。例えば、太陽電池の場合、有用電力の発生を担う電荷分離は、わずかな入射光が、2つの別個の材料(例えば、ホモ接合ではn型およびp型の半導体、またはヘテロ接合では別個の半導体)の間の界面付近で、ビルトインポテンシャルの領域に吸収される場合にのみ起こる。接触表面積が増大すると、吸収された光が有用電力を発生する体積が増大し、ひいては、入射放射がより効率的に利用される。発光ダイオードの場合、光放出は、典型的に、一方側から入射した電子と、他方側からの正孔とが放射的に結合する2つの別個の材料間の接合部で生じる。このようにして、接触表面積が増大すると、デバイスからより多くの光出力を生じ得る。
【0003】
電荷の注入または抽出を目的として、半導体に電気接触が確立されなければならない場合、半導体と、電気接触を確立するために使用する導電体との間に、接触障壁が起こることが多い。接触表面積を単純に増大すると、注入/抽出された電流の正味量も増大してしまいかねない。したがって、半導電性接合部を備えたデバイスを含む、高接触域界面を形成する方法が、非常に望まれている。
【0004】
本発明および本発明の特徴および恩典のさらなる理解は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な記載から得られる。
【発明の開示】
【0005】
概要
電気または電子光学デバイスは、第1の組成を含んだ第1の層を含む。第1の組成は、電気的に接続された複数の粒子を含む。第2の層は、第2の組成を含み、電気的に接続された複数の粒子を含む。第1の層および第2の層の間に、複合層が配置される。複合層は、第3の組成および第4の組成が相互に貫通し合う網目構造を含み、第3の組成は、第4の組成と異なる。電気的に相互接続された第1の網目構造が、複合層の厚み全体にわたって、第1の層中の第1の組成から第3の組成まで延伸し、かつ電気的に相互接続された第2の網目構造が、複合層の厚み全体にわたって、第2の層中の第2の組成から第4の組成まで延伸する。
【0006】
1つの態様において、これらの組成の内の少なくとも1つが、ナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子を含む。この態様において、第1の層、第2の層、および複合層は、ナノワイヤを含み、ナノワイヤは、一平面に沿って概して置かれるように優先的に配向される。
【0007】
第1の層、第2の層、および複合層の少なくとも1つは、多孔質層である。この態様において、高分子連続相は、多孔質層に浸透し得る。
【0008】
複合層における第3の組成および第4の組成の濃度は、段階的に変化し得る。第2の組成は、第1の組成とは異なるものであり得る。別の態様において、第1の組成および第3の組成は、同じものであり得、第2の組成および第4の組成は、同じものであり得る。別の態様において、第3の組成および第4の組成の一方は、p型半導体を含み、他方は、n型半導体を含み得る。
【0009】
このデバイスは、太陽電池または発光ダイオード(LED)を含み得る。このデバイスは、多成分ヘテロ接合構造を含み得、第1の層、第2の層、および複合層は、異なる組成を含む。多成分ヘテロ接合の態様において、複合層は、光起電力用途のために電荷を分離するためのビルトインポテンシャルを発生させるか、または発光デバイスを含むかのいずれかであり得る。
【0010】
電子または電子光学デバイス用の積層体(layer stack)を形成する方法は、
(a)多孔質膜を設ける工程、
(b)第1の組成の、複数のナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子を、溶液に分散させる工程、
(c)この溶液を膜に適用する工程、および
(d)溶液を除去する工程を含み、該多孔質膜の表面に、ナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子は押しつけられ、該膜上に配置された、第1の組成含有層を形成する。
【0011】
第2の組成および第3の組成の、複数のナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子を用いて、工程(b)〜(d)が繰り返され、第2の組成および第3の組成が相互に貫通し合う網目構造を含む複合層が、第1の組成含有層上に形成される。次いで、第4の組成の、複数のナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子を用いて、工程(b)〜(d)が繰り返され、複合層上に形成された第4の組成を含む薄膜層を形成する。
【0012】
第2の組成および第3の組成の一方は、p型半導体を含むものであり得、第2の組成および第3の組成の他方は、n型半導体を含み得る。このデバイスは、基板を含むものであり得、この方法は、基板上に積層体を配置する工程、膜を選択的に除去する工程をさらに含み得る。第1の層、第2の層、および複合層は全て、多孔質層であり得る。この方法は、該多孔質層の少なくとも1つに高分子材料を浸透させる工程をさらに含み得る。
【0013】
詳細な説明
電気または電子光学デバイスは、第1の組成を含んだ第1の層を含む。第1の組成は、電気的に接続された複数の粒子を含む。第2の層は、第2の組成を含み、電気的に接続された複数の粒子を含む。第1の層および第2の層の間に、複合層が配置される。複合層は、第3の組成および第4の組成が相互に貫通し合う網目構造を含み、第3の組成は、第4の組成と異なる。電気的に相互接続された第1の網目構造は、複合層の厚み全体にわたって、第1の層中の第1の組成から第3の組成まで延伸し、かつ電気的に相互接続された第2の網目構造は、複合層の厚み全体にわたって、第2の層中の第2の組成から第4の組成まで延伸する。
【0014】
組成の内少なくとも1つが、一般に、ナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子を含む。これらの組成は、有機物または無機物、有機物と無機物との混合物を含むものであり得、高分子を含んでもよい。これらの組成は、金属特性または半導電性の特性を備えるものであってもよい。
【0015】
ナノワイヤとは、およそ0.5〜数百ナノメートル(10-9メートル)の直径であるが、典型的に、1ミクロン未満の直径を有するワイヤである。あるいは、ナノワイヤは、横方向のサイズが数百ナノメートル以下に制約され、長手方向のサイズが制約されていない構造として規定され得る。金属性(例えば、Ni、Pt、Au)、半導電性(例えば、InP、Si、GaN)を含む種々のナノワイヤが存在する。典型的なナノワイヤのアスペクト比(長さと幅の比)は、10〜1,000(以上)を示す。
【0016】
相互に貫通し合う複合層は、例えば、従来の平面コンタクトと比較すると、第3の組成および第4の組成のそれぞれの間に大きな接触表面積を提供する。組成は、本明細書において使用する場合、化学物質、結晶型、および/またはドーピングの違いに応じて異なると考えられる。このようにして、例えば、n型シリコンは、本明細書において、p型シリコンと比較すると異なる組成であると考えられる。
【0017】
異種材料の「相互に貫通し合う網目構造」は、本明細書において使用する場合、この章において記載する2つの別個の材料AおよびBを含む構造体を考慮することによって規定され得る。材料Aは、点から点へ電気的に連続しているが、孔も連続している多孔質形態のものである(連続気泡フォームの孔など)。これらの孔には、同様に点から点へ電気的に連続する材料Bが充填される。このようにして、材料AおよびBは、異種材料が相互に貫通し合う網目構造を構成する。
【0018】
最も一般には、第1、第2、第3、および第4の材料は全て、異なる組成である。著しい特徴として、第1の組成および第3の組成、ならびに第2の組成および第4の組成は、十分に電子的に結合することが挙げられる。1つの態様において、第1の組成および第3の組成は同じものであり、第2の組成および第4の組成も同様に同じものである。この態様において、第1の組成を含む第1の実質的に相互接続された網目構造は、複合層の厚み全体にわたって第1の層から延伸し、第2の組成を含む第2の実質的に相互接続された網目構造は、該複合層の厚み全体にわたって第2の層から延伸する。
【0019】
図1は、本発明の1つの態様による例示的な高効率ダイオード100の略図的断面図である。nドープされた半導電性ナノワイヤ材料などの第1の組成を含む第1の層110が設けられる。金属として含んでもよいコンタクト層115によって、第1の層110に電気接触が与えられる。低抵抗の接触が要求されることもあるコンタクト135に隣接した第2の層130中のn+領域は図示されていない。nナノワイヤはそれぞれ、細い実線として示される。第2の層130は、第1の層110の上方に配置されるpドープされた半導電性材料などの第2の(異なる)組成を含む。pナノワイヤは、「+」の符号で示される。金属として含んでもよいコンタクト層135によって、第2の層130に電気接触が与えられる。
【0020】
第1の層110と第2の層130との間に、複合層120が介在する。複合層120は、n型およびp型材料のそれぞれの間に大きな接触表面積を与える第1の組成および第2の組成の混合物を含む。n型材料を含む第1の実質的に相互接続された網目構造が、複合層120の厚み全体にわたって第1の層110から延伸し、かつp型材料を含む第2の実質的に相互接続された網目構造が、複合層120の厚み全体にわたって第2の層130から延伸しているのが図から分かる。
【0021】
別個の材料間の大きい接触表面積を有する別個の材料が相互に貫通し合う網目構造を作製するための一般方法についても、本明細書において記載されている。このような相互に貫通し合う網目構造材料には、光起電力デバイスおよび光電子放出デバイス用などの広範囲の用途がある。
【0022】
本発明において、「Transparent electrodes from single wall carbon nanotubes」という発明の名称の本出願と同一の発明者であるRinzler et alの米国特許出願公開第20040197546(’546)に開示された方法を利用することが好ましい。’546には、実質的に光学的に透明であり、導電性の単層ナノチューブ(SWNT)薄膜を形成する低温方法が開示されている。’546には、一般に安定化剤(例えば、界面活性剤)を用いて溶液中に単層ナノチューブ(SWNT)を均一に懸濁させた後、非常に小さいためにSWNTの大部分が通過できない高密度の孔がある多孔質ろ過膜の表面にナノチューブを堆積させることが開示されている。ナノチューブ薄膜は、液体がろ過されて取り除かれると、膜表面上に概して置かれたSWNTがあり、膜表面とほぼ平行である相互接続された均一の層として形を成す。
【0023】
一般にナノチューブに適用されるが、’546に記載された方法は、1)材料組成物が溶液中で均一に懸濁され得、2)液体が、選択されたろ過膜材料と反応しないが、この膜材料を通過し、3)材料成分が、薄膜の形態の膜表面上に保持され、かつ4)ろ過膜が、薄膜が所望の薄膜または薄膜が転写される基板を溶解しない溶媒中で溶解され得る限り、ナノチューブ以外の材料の堆積まで及び得る。例えば、この方法はまた、ナノチューブ、ナノ粒子、および薄膜を含むナノワイヤを作製し得る。
【0024】
’546に開示された1つの態様において、溶液は、真空ろ過され、残りのSWNT薄膜が、ろ過膜表面上に形成される。任意の残りの表面安定化剤が、引き続き洗い流され、次いで、薄膜の乾燥が始まる。有意に、ナノチューブの懸濁に使用した安定化剤を洗い流すと、ナノチューブは、SWNT薄膜の本体全体にわたって互いに密に接触する(凝固する)。このようにして形成されたナノチューブ薄膜は、一方側がろ過膜に密に付着し、他方側がコーティングされていないものとなる。薄膜を利用するために、一般に、薄膜は、所望の基板に転写され、膜を除去する必要がある。これを達成するために、まず、ナノチューブ薄膜が無い側を、例えば、圧力などで、クリーンな状態の所望の基板に接着させた後、膜が可溶性である溶媒にろ過膜を溶解する。
【0025】
このようにして、膜材料の選択は慎重に行われなければならない。膜は、ナノチューブが最初に懸濁される液体に耐性のものでなければならないが、理想的には、SWNT薄膜が付着される基板と化学的に反応しない、除去される溶媒に可溶性のものでなければならない。この溶媒に膜が溶解すると、基板の表面に付着したナノチューブ薄膜が残る。
【0026】
本発明を明確にするために、1つの実施例が提供される。流体におけるpドープおよびnドープされたシリコンナノワイヤの2つの別々の懸濁液であって、これらの2つの懸濁液が同濃度のナノワイヤを含有する場合について考慮する。2つの型のナノワイヤの50/50混合物からなる懸濁液を得るために、最初の2つの懸濁液を同量混合したものからなる第3の懸濁液を作る。相互に貫通し合う網目構造を作製するために、流体は貫入できるが、膜の表面上に薄膜としてナノワイヤを保持するろ過膜の表面に、純粋なp型ナノワイヤを最初に配置する。次いで、薄膜を乾燥するか、または乾燥できるようにすることで、ナノワイヤを凝固させ、薄膜中の他のナノワイヤと物理的に密な接触状態にナノワイヤを置く。この後、純粋なp型層の上部に50/50混合物を堆積し、同様に、乾燥できるようにする。最後に、純粋なn型層が、同様の方法で堆積される。このようにして作られた3層構造は、(底部から上部の順に)p型シリコン、p型およびn型シリコンの両方を含む相互に貫通し合う網目構造、および最後に上部にn型シリコンを含む。n型ナノワイヤは、純粋なn層から複合層内へと、複合層全体にわたって延伸する電気的に接続された網目構造を構成することに留意されたい。p型ナノワイヤは、純粋なp層から混合複合層内へと、混合複合層全体にわたって延伸する電気的に接続された網目構造を同様に構成する。このように、結果的に得られる構造は、互いに密な電気接触状態にある、2つの別個の材料が2つの密に混合された相互に貫通し合う網目構造である。中央層におけるp型とn型のシリコンナノワイヤ間の接触表面積が大きいため、これは、典型的に界面が平らなデバイスの単一の平面界面で予想される入射放射の多くを吸収可能である、高効率の太陽電池の基礎を成す。
【0027】
図2は、ガリウムヒ素太陽電池210を含む本発明の1つの例示的な態様を示す。太陽電池210を形成する1つの例示的な方法については、以下の段落27に記載する(「結晶または多結晶ウェハ上にデバイスを形成するために」で始まる段落)。p型ガリウムヒ素の層216が、最底層である。層216の電気的特徴および厚みは、太陽電池210の光学性能を与えるように選択される。p型ガリウムヒ素の厚みは、約0.5マイクロメートル以下であることが好ましい。n型およびp型ガリウムヒ素を含む相互に貫通し合う層218が、p型ガリウムヒ素の層216の上部にある。層218の電気的特徴および厚みは、太陽電池の性能を最適化するように選択される。n型ガリウムヒ素の層218の厚みは、約10〜20マイクロメートルであることが好ましい。n型ガリウムヒ素の層219は、相互に貫通し合う層218の上部にある。層219の上面には、透明カバー220が取り付けられる。透明カバー220の組成および厚みは、太陽電池210の電気性能を最適化するように選択される。透明カバー220は、数百マイクロメートルの厚みを有するシリカガラスであることが好ましい。透明カバー220は、いくつかの機能を果たす。第1に、カバー220は、層216、218、および219へと光を通過させることができる。第2に、カバー220は、太陽電池210の残りの要素を支持する。第3に、カバー220は、物理的損傷から残りの要素を保護する。また、層216および219への外部コンタクトも設けられる(図2には図示せず)。
【0028】
このようなデバイスはまた、高出力密度ダイオードの基礎を成し得るものであり、太陽電池210に対して記載した層218などを含む相互に貫通し合う層p-n接合部によって与えられる界面が大きいことで、デバイスに対して有害な熱結果を与えることなく、より大きな体積全体にわたって、より多くの電力を放散できるようになる。
【0029】
本発明はまた、直接バンドギャップ半導体ナノワイヤ(例えば、GaAsまたはGaN)から形成されたデバイスにも適用される。本発明によるホモ接合LEDは、pドープGaAsとnドープGaAsとの間に相互に貫通し合うpおよびnドープGaAs層を配置することによって実現され得る。このようなLEDは、典型的に界面が平面のデバイスの場合に予想されるものより多くの光を(より高い注入電流で)放出する。複合層を形成する組成物の基本的な半導体材料は、同じものである必要はなく、その場合も、ヘテロ接合デバイスを作製できる。
【0030】
上述したように、複合層(例えば、混合半導電性ナノワイヤ、ナノ粒子、またはナノワイヤ/ナノ粒子の組み合わせ)は、複合層を挟む第1の層および第2の層中の組成と同じものである必要はない。半導電性である代わりに、複合層の1つの成分も金属性であり得る(例えば、ナノチューブ)。
【0031】
さらに、混合されていない純粋な層自体は、ナノワイヤまたはナノ粒子である必要はない。例えば、光起電力または光電子放出デバイスの場合、一方側は、複合層のナノワイヤ/ナノ粒子成分の第1のものに電子的に十分に結合するように適切にドープされるが、複合成分の第2のものへの結合は(電子的に)不十分である単一または多結晶ウェハとなり得る。この場合の電気的結合とは、異種材料間の接合部で天然の電気輸送に対する障壁を指す。十分な結合とは、接合部での電気輸送可能なほど十分に低い障壁を意味する(デバイス性能に対して十分な程度まで)。不十分な結合とは、接合部での電気輸送に対して十分に高い障壁があるため、このルートを経由した輸送が事実上妨害されることを意味する(デバイス性能に対して十分な程度まで)。
【0032】
結晶または多結晶ウェハ上にデバイスを形成するために、ろ過膜上に形成された複合層がこのウェハに転写された後(膜は溶解され除去される)、(デバイス型に応じて)電荷の注入または抽出用の電極として混合複合層の上部に、インジウム錫酸化物(ITO)の層が堆積され得る。この場合、ITOは、第1の組成物(B)との結合は不十分であるが、第2の組成物(C)に電気的に十分結合しなければならない。あるいは、最終的に上部となるITO上部電極の代わりに、透明電極コンタクトは、最初にろ過膜上に堆積される薄いナノチューブ層であり得る。次いで、混合された複合層は、同じろ過プロセスによってナノチューブフィルムの上部に堆積される。これらが、混合複合層を基板に接触させた状態で単一または多結晶基板に転写され、膜が溶解されて除去されると、ナノチューブ層は、電荷注入/抽出用の光学的に透明な上部電極となる。
【0033】
中間層に単一の50/50混合物を作る代わりにこのようなデバイスを作製する場合、最初の懸濁液の各々からの液量の比は、(同じ総量を維持しながら)いくつかの混合物ごとに変動し、一連の懸濁液において、2つの型のナノワイヤの濃度が、一方の型の高濃度な状態から他方の型の高濃度な状態へと任意の工程数で段階的に進む。次いで、n型の網目構造濃度は、デバイスの厚み全体にわたって進むにつれてp型の濃度を犠牲にしながら、段階的に変化し得る。多数の工程数を用いることによって、濃度の変化は、実際上、連続的なものにされ得る。
【0034】
本発明の方法は、p-n接合部にも、3つの型の材料層にも限定されるものではない。例えば、本発明によるデバイスを構築するために、同一のろ過膜への連続した堆積物が用いられ得る。例えば、第1の材料が金属性のナノワイヤ(またはカーボンナノチューブ)からなれば、この後に、金属性および半導電性のナノワイヤの混合物、その後に、純粋な半導電性ナノワイヤが続き得る。このような構造により、電気接触表面積が大きいことで、半導電性ナノワイヤ層との間での電荷の高出力密度結合が可能になる。多層デバイスは、1)純粋なカーボンナノチューブ層、2)混合ナノチューブ/p型ナノワイヤ層、3)純粋なp型ナノワイヤ層、4)混合p型/n型ナノワイヤ層、5)純粋なn型ナノワイヤ層、6)混合n型ナノワイヤ/カーボンナノチューブ層、または7)純粋なカーボンナノチューブ層を含み得る。
【0035】
ナノワイヤ薄膜の形態が多孔質のものであることが、共通の金属堆積プロセスによって簡単に金属層への高接触な表面積をさらに可能とする。例えば、堆積された金属層を本発明によるフィルムに接触させるために、熱または電子ビーム蒸着、スパッタリング、または電着も使用できる。
【0036】
この作製法は、ナノワイヤの使用に限定されているものではなく、ナノ粒子とナノ粒子またはナノワイヤとナノ粒子との傾斜界面を設けるようにナノ粒子と共に用いられ得る。このようにして得られた層は、一般に、多孔質のものであり、整列されていない。ナノワイヤ間またはナノ粒子間の結合が弱い場合、デバイスに、高分子を用いて浸透させることによって、構造上の完全性を与えることができる。乾燥すると生じる層の凝固後に、このような浸透が行われれば、ナノワイヤ/ナノ粒子間の密な電気接触は破壊されない。
【0037】
薄膜のこのような高分子浸透は、構造上の完全性を高めるためだけではなく、デバイスの他の機能を果たすために必要とされる。例えば、高分子自体は、太陽光発電用に、n型半導電性ナノワイヤと共にビルトインポテンシャルを形成するp型半導体であってもよい。
【0038】
相互に貫通し合う網目構造を形成するための対象となる材料が、ナノワイヤまたはナノ粒子として存在しないが、他のナノワイヤ(またはナノ粒子)にコーティング可能であれば、作製時に、材料でコーティングされたナノワイヤを使用することもできる。
【0039】
用途によっては、堆積されたフィルム構造は、層が堆積されたろ過膜以外の基板に転写されることが必要な場合が多い。これは、’546に開示されている転写方法によって達成され得る。
【0040】
前述した実施例では、’546に開示された方法を参照しながら、層の堆積(純粋または混合)およびそれらの転写について記載してきた。しかしながら、本発明は、デバイスを形成するために、’546に開示されたもの以外の方法を含む。例えば、材料「A」のナノワイヤは、材料に電気接触を与える条件を有する表面上に吹き付けコーティングされてもよく(例えば、表面上の金属層または表面全体にわたって金属電極を介して)、溶媒は、蒸発させる。次に、材料「A」と材料「B」との混合ナノワイヤの層が、相互に貫通し合う網目構造を含む第1の材料層に吹き付けコーティングされ、その層からの溶媒は、蒸発させる。その後、材料「B」のナノワイヤの純粋な層が、混合層に吹き付けコーティングされ、その溶媒は、蒸発させる。最後に、上部電極層を堆積することによって、上部層に電気接触が確立され得る。
【0041】
好ましい特定の態様と共に本発明について記載してきたが、前述した記載および実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明に該当する当業者であれば、本発明の範囲内にある他の態様、利点、および修正は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の1つの態様による、第1の組成を含む第1の層材料と第2の組成を含む第2の層材料との間に介在する複合層を含む、例示的な高効率ダイオードの略図的断面図である。複合層は、それぞれの材料の間に大きな接触表面積を与える第1の組成および第2の組成の混合物を含む。
【図2】本発明の1つの態様による例示的なガリウムヒ素太陽電池の断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に接続された複数の粒子を含んだ第1の組成を含む第1の層と、
電気的に接続された複数の粒子を含んだ第2の組成を含む第2の層と、
第3の組成および第4の組成が相互に貫通し合う網目構造を含み、該第3の組成は該第4の組成と異なる、該第1の層と該第2の層との間に配置される、複合層、
を含み、
電気的に相互接続された第1の網目構造が、複合層の厚み全体にわたって、該第1の層中の該第1の組成から該第3の組成へ延伸し、かつ電気的に相互接続された第2の網目構造が、複合層の厚み全体にわたって、該第2の層中の該第2の組成から該第4の組成へと延伸する、
電気または電子光学デバイス。
【請求項2】
組成の少なくとも1つが、ナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子を含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
第1の層、第2の層、および複合層がナノワイヤを含み、該ナノワイヤが一平面に沿って概して置かれるように優先的に配向される、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
第1の層、第2の層、および複合層の少なくとも1つが、多孔質層である、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
多孔質層に浸透する高分子連続相をさらに含む、請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
複合層中の第3の組成および第4の組成の濃度が、段階的に変化する、請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
第2の組成が第1の組成と異なる、請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
第1の組成および第3の組成が同じであり、かつ第2の組成および第4の組成が同じである、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
第3の組成および第4の組成の一方がp型半導体を含み、かつ該第3の組成および第4の組成の他方がn型半導体を含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
太陽電池を含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
発光ダイオード(LED)を含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
デバイスが、多成分ヘテロ接合構造を含み、
第1の層、第2の層、および複合層が、異なる組成を含む、
請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
複合層が、光起電力用途のために電荷を分離するためのビルトインポテンシャルを生じるか、または発光デバイスを含む、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
(a)多孔質膜を設ける工程、
(b)第1の組成の、複数のナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子を、溶液に分散する工程、
(c)該溶液を該膜に適用する工程、および
(d)該溶液を除去する工程
を含み、該多孔質膜の表面に該ナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子が押しつけられ、該膜上に配置される第1の組成含有層を形成し、
第2の組成および第3の組成の、ナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子の複数を用いて工程(b)〜(d)を繰り返し、第2の組成および第3の組成が相互に貫通し合う網目構造を含む複合層が、該第1の組成含有層上に形成され、かつ
第4の組成のナノチューブ、ナノワイヤ、またはナノ粒子の複数を用いて、工程(b)〜(d)を繰り返し、該複合層上に形成された薄膜層を含む第4の組成を形成する、
電子または電子光学デバイス用の積層体(layer stack)を形成する方法。
【請求項15】
第2の組成および第3の組成の一方がp型半導体を含み、かつ該第2の組成および第3の組成の他方がn型半導体を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
基板上に積層体を置く工程、および膜を選択的に除去する工程をさらに含む、請求項14記載の方法であって、
前記デバイスが該基板を含む、方法。
【請求項17】
第1の層、第2の層、および複合層が、全て多孔質層である、請求項14記載の方法。
【請求項18】
多孔質層の少なくとも1つに高分子材料を浸透させる工程をさらに含む、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−516915(P2009−516915A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541427(P2008−541427)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045118
【国際公開番号】WO2007/062072
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【Fターム(参考)】