制動力制御装置
【課題】緊急停止時に車両の移動を速やかに規制することが可能な制動力制御装置を提供する。
【解決手段】制動力制御装置12は、車両10の駐車時に車両10の移動を規制する移動規制手段22、62a〜62dを備える。移動規制手段22、62a〜62dは、緊急ブレーキ制御手段118が作動して車両10が停車したと判定したとき、運転者による駐車操作がなくても、車両10の移動を規制する。
【解決手段】制動力制御装置12は、車両10の駐車時に車両10の移動を規制する移動規制手段22、62a〜62dを備える。移動規制手段22、62a〜62dは、緊急ブレーキ制御手段118が作動して車両10が停車したと判定したとき、運転者による駐車操作がなくても、車両10の移動を規制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の移動を規制する、電動パーキングブレーキ等の制動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シフト位置を「P」(パーキング)にすることなどにより作動する電動パーキング装置が知られている(特許文献1)。特許文献1では、シフト位置が、「P」、「N」(ニュートラル)及び「R」(リバース)以外であるとき、フットブレーキが操作され、車速がゼロになると、電動パーキングブレーキを作動させる(要約)。これにより、電動パーキングブレーキの作動制御を自動的に行い、その停止判断を確実にすると共に、急発進による突発事故や坂道発進時の逆走等を防ぎ、安全性を向上させることを企図している([0007])。また、特許文献1では、シフト位置が「N」であるとき、ステアリングトルクが検知されない場合又は運転者が運転席にいない場合、電動パーキングブレーキを自動的に作動させる([0028])。
【0003】
また、走行中に車輪に対する制動力を制御する制動力制御装置が知られている。当該制動力制御装置の中には、車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステム(ABS)に関するものや(特許文献2〜4)、緊急時にブレーキ液圧を高める緊急ブレーキシステムに関するものがある(特許文献4)。
【0004】
特許文献2では、車体速度(VR0)と、所定の路面摩擦係数(μ)と、所定の定数(a)とに基づいて目標車輪速度(VWt)を算出する([0036]、[0037]、[0055])。そして、車輪速度が目標車輪速度になるように、各車輪のブレーキトルク(T)を制御する([0038]〜[0042]、[0056]〜[0060])。
【0005】
特許文献3では、アンチロックブレーキ制御と、トラクション制御と、方向性安定制御とを用いる技術が示されている(要約、請求項1)。特許文献3では、車両の方向安定性を保持するための基準となる目標車輪速度を演算し、当該目標車輪速度に基づいて車輪ブレーキの増圧速度又は減圧速度を定める(要約、請求項1)。また、特許文献3では、ヨーレートを考慮して目標車輪速度が設定される([0059])。
【0006】
特許文献4では、運転者のブレーキ操作による制動力を増大させるブレーキアシスト制御と、自動的に制動力を発生させる自動ブレーキ制御を用いる(要約、請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−027415号公報
【特許文献2】特開2009−274582号公報
【特許文献3】特開平11−059388号公報
【特許文献4】特開2008−307999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、特許文献1では、シフト位置が、「P」、「N」及び「R」以外であるとき、フットブレーキが操作され、車速がゼロになると、電動パーキングブレーキを作動させる。このことは、特許文献1では、主として、通常運転中において運転者の操作を補助することに焦点を当てていることを意味している。
【0009】
ところで、特許文献4のような緊急ブレーキ制御を行った場合、車速がゼロになった後、運転者の操作なしに車両が動き出すことを避けるため、車両の移動を速やかに規制することが好ましい状況があり得る。
【0010】
この点、特許文献1では、シフト位置が「N」であるとき、ステアリングトルクが検知されない場合又は運転者が運転席にいない場合、パーキングブレーキを自動的に作動させるものの([0028])、車両の移動規制の観点で未だ改善の余地がある。
【0011】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、緊急停止時に車両の移動を速やかに規制することが可能な制動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る制動力制御装置は、車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、前記車両周囲の障害物との接触可能性が高い緊急時に通常のブレーキ液圧よりも高いブレーキ液圧を発生させる緊急ブレーキ制御手段とを備えるものであって、さらに、前記車両の駐車時に前記車両の移動を規制する移動規制手段を備え、前記移動規制手段は、前記緊急ブレーキ手段が作動して前記車両が停車したと判定したとき、運転者による駐車操作がない場合であっても、前記車両の移動を規制することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、緊急ブレーキが作動して車両が停止した場合、運転者による駐車操作がないときでも、車両の移動を規制する。これにより、緊急ブレーキの作動後に運転者が駐車操作を行わずに車両の外部に出ても、例えば、(坂道の場合)車両の自重により又は外部からの力により車両が移動することを防止することが可能となる。
【0014】
前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制するためのアクチュエータを備え、前記アクチュエータの作動速度は、前記緊急ブレーキ制御手段が作動して前記車両が停止したときの方が、前記緊急ブレーキ制御手段が作動せずに前記車両が停止したときよりも大きくてもよい。これにより、緊急ブレーキ制御手段が作動しない通常停車時には、アクチュエータの騒音等を考慮してアクチュエータの作動速度を抑制しているとしても、緊急ブレーキ制御手段が作動した緊急停車時にはアクチュエータの作動速度を高くすることで、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【0015】
前記車体速度がゼロとなったときにおける前記障害物との距離が所定値以下であることを条件として、前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制してもよい。これにより、緊急停車時において特に移動規制をかける必要性が高い場合にのみ、運転者による駐車操作がなくても、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【0016】
前記緊急ブレーキ制御手段は、加圧手段により前記ブレーキ液圧を自動的に増加させる緊急自動ブレーキ手段と、運転者の操作に伴って発生する前記ブレーキ液圧を前記加圧手段により増加させる緊急ブレーキアシスト手段とを有し、前記緊急ブレーキアシスト手段は、前記緊急自動ブレーキ手段よりも、前記障害物に対する接触余裕度が大きいときに作動し、前記移動規制手段は、前記車両が停車状態を維持させるために設定された所定ブレーキ液圧となるように前記ブレーキ液圧を減少させる減圧手段と、前記減圧手段が作動した後に前記所定ブレーキ液圧を保持する制御弁とを備え、前記緊急ブレーキアシスト手段が作動したときの方が、前記緊急自動ブレーキ手段が作動したときよりも、前記減圧手段の作動量が大きくされてもよい。
【0017】
これにより、緊急ブレーキアシスト手段が作動した場合、ブレーキ液圧の減少が大きくなる。このため、緊急ブレーキアシスト手段が作動した後に減圧手段にかかるブレーキ液圧が低くなり、ブレーキ液圧の付加による減圧手段の損耗を回避することが可能となる。また、減圧手段として、例えば、電磁弁を用いる場合、電磁弁の開閉状態を保つために必要な消費電流を抑制することが可能となる。
【0018】
前記移動規制手段は、電動アクチュエータにより作動する電動パーキングブレーキであり、前記車両と前記障害物との距離が所定値以下であるとき、前記車両と前記障害物との距離が近いほど、前記電動アクチュエータの作動速度を大きくしてもよい。これにより、緊急ブレーキ制御手段が作動しない通常停車時には、電動アクチュエータの騒音等を考慮して電動アクチュエータの作動速度を抑制しているとしても、緊急ブレーキ制御手段が作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じて電動アクチュエータの作動速度を高くすることで、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【0019】
前記駐車制御手段は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に設けられた第2制御弁を開閉制御して、前記ブレーキ液圧を第2所定ブレーキ液圧に保持して前記車両の移動を規制し、前記車両と前記障害物との距離が第2所定値以下であり、且つ前記車両と前記障害物との距離が小さいほど前記第2制御弁の作動量又は作動速度を高くしてもよい。車両と前記障害物との距離が第2所定値以下であり、且つ車両と障害物との距離が小さいほど第2制御弁の作動量又は作動速度を大きくすることにより、緊急ブレーキ制御手段が作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じて第2制御弁の作動量又は作動速度を高くすることで、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、緊急ブレーキが作動して車両が停止した場合、運転者による駐車操作がないときでも、車両の移動を規制する。これにより、緊急ブレーキの作動後に運転者が駐車操作を行わずに車両の外部に出ても、例えば、(坂道の場合)車両の自重により又は外部からの力により車両が移動することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態に係る制動力制御装置を有する車両のブロック構成図である。
【図2】前記実施形態におけるブレーキ機械系の概略構成図である。
【図3】前記ブレーキ機械系を制御するフローチャートである。
【図4】前記実施形態におけるブレーキモードの選択に関する説明図である。
【図5】前記実施形態においてABS制御等に応じてINバルブ、OUTバルブ及びレギュレータバルブの開閉制御及びポンプのオンオフ制御を示す図である。
【図6】ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行して前記車両を停止させた後、電動パーキングブレーキを作動させることにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図7】前記ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行して前記車両を停止させた後、前記電動パーキングブレーキを作動させることにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図8】前記ABS制御及び前記自動ブレーキ制御を実行して前記車両を停止させた後、ホイールシリンダの圧力を制御することにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図9】前記ABS制御及び前記ブレーキアシスト制御を実行して前記車両を停止させた後、前記ホイールシリンダの圧力を制御することにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図10】前記ABS制御及び前記ブレーキアシスト制御を実行して前記車両を停止させた直後に障害物との相対距離に応じて前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.一実施形態
1.車両10の構成
(1)全体構成
図1は、この発明の一実施形態に係る制動力制御装置12を有する車両10(以下「自車10」ともいう。)のブロック構成図である。制動力制御装置12は、各種の検出を行うセンサ群14と、車輪18fl、18fr、18rl、18rr(以下「車輪18」と総称する。)に対して制動力Fbを付与するブレーキ機械系16と、警報装置20と、電動パーキングブレーキ22(以下「EPB22」という。)と、電動パーキングブレーキ設定スイッチ24(以下「EPB設定スイッチ24」又は「スイッチ24」という。)と、センサ群14の検出値に基づいてブレーキ機械系16を制御する電子制御装置26(以下「ECU26」という。)と、機械式パーキングブレーキ28とを有する。
【0023】
(2)センサ群14
図1に示すように、センサ群14には、レーダ30、ヨーレートセンサ32、舵角センサ34、トルクセンサ36、車体速度センサ38(車速センサ)、車輪速センサ40a〜40d、前後Gセンサ42、横Gセンサ44、第1操作量センサ46及び第2操作量センサ48を含む。
【0024】
レーダ30は、図示しないフロントグリル部等に設けられ、車両10の前方に向けてミリ波等の電磁波を送信波として送信し、その反射波に基づいて障害物(例えば、先行車等)のまでの距離(相対距離Dr)[m]、自車10からの方向及び当該障害物の大きさを検出し、ECU26に送信する。レーダ30の代わりに、例えば、画像センサを用いてもよい。ヨーレートセンサ32は、車両10に発生しているヨーレートYrを検出する。舵角センサ34は、操向ハンドル50(ステアリングホイール)の舵角θsを検出する。トルクセンサ36は、操向ハンドル50にかかるトルクTQを検出する。
【0025】
車体速度センサ38は、トランスミッションのカウンタシャフトの回転を検出する第1ホール素子(いずれも図示せず)と、当該第1ホール素子の出力に基づいて車体速度Vv[km/h]を演算する第1演算部(図示せず)とを備える。第1演算部は、ECU26に設けてもよい。
【0026】
車輪速センサ40a〜40dは、各車輪18の回転を検出する第2ホール素子(図示せず)と、当該第2ホール素子の出力に基づいて各車輪18fl、18fr、18rl、18rrの車輪速度Vw1、Vw2、Vw3、Vw4(以下「車輪速度Vw」と総称する。)[km/h]を演算する第2演算部(図示せず)とを備える。第2演算部は、ECU26に設けてもよい。
【0027】
前後Gセンサ42は、加速度センサであり車両10に発生している前後G(前後加速度)を検出する。横Gセンサ44は、加速度センサであり、車両10に発生している横G(横加速度)を検出する。第1操作量センサ46は、アクセルペダル52の操作量θaを検出する。第2操作量センサ48は、ブレーキペダル54の操作量θbを検出する。
【0028】
(3)ブレーキ機械系16
図2には、ブレーキ機械系16の概略構成図が示されている。図2に示すように、ブレーキ機械系16は、マスタシリンダ60、ホイールシリンダ62a〜62d、INバルブ64a〜64d、OUTバルブ66a〜66d、レギュレータバルブ68a、68b、サクションバルブ70a、70b、ポンプ72a、72b、ポンプモータ74、リザーバ76a、76b、ダンパ室78a、78b、チェック弁80a〜80d、82a、82b、84a、84b、86a、86b及び圧力計88を有する。
【0029】
INバルブ64a〜64d及びレギュレータバルブ68a、68bはノーマルオープン型の電磁弁であり、OUTバルブ66a〜66d及びサクションバルブ70a、70bはノーマルクローズ型の電磁弁である。各バルブ64a〜64d、66a〜66d、68a、68b、70a、70bは、ECU26からの指令に基づき開閉する(詳細は後述する。)。圧力計88は、配管90における圧力Piを検出する。
【0030】
(4)警報装置20
警報装置20は、図示しないスピーカを備え、ECU26からの指令の下、運転者に対する警告音を発する。
【0031】
(5)EPB22及びEPB設定スイッチ24
EPB22は、車輪18のうち駆動輪をロックし、車両10の移動を規制する。EPB22は、EPBモータ92(電動アクチュエータ)(図1)を備え、EPBモータ92の駆動に応じてEPB22をオン(規制状態)及びオフ(非規制状態)とで切り替えることができる。EPB22としては、例えば、特許文献1又は特開2008−174189号公報に記載のものを用いることができる。
【0032】
EPB設定スイッチ24は、EPB22の作動の可否を切り替えるものである。例えば、図示しないイグニションスイッチ(又は車両操作モード)がオンであり且つスイッチ24をオンにしているとき、EPB22を電源オンであり、車体速度Vv等に応じてEPBモータ92を作動させる。また、スイッチ24をオフにしているとき、EPB22は電源オフとなる。
【0033】
(6)ECU26
図1に示すように、ECU26は、ハードウェアとして、入出力部100、演算部102及び記憶部104を有する。本実施形態の演算部102は、記憶部104に記憶されているプログラムに基づきブレーキ機械系16を制御することにより、アンチロックブレーキシステム機能110(以下「ABS機能110」という。)、トラクション制御機能112、横滑り防止機能114、回避操作支援機能116及び緊急ブレーキ機能118を実現する。
【0034】
ABS機能110は、ブレーキ機械系16から車輪18に対して制動力Fbが加えられている際(ブレーキ操作時)に車輪18のロックを防止する機能である。トラクション制御機能112は、駆動輪である車輪18のうち非ブレーキ操作時に過剰スリップ状態に陥りそうな駆動輪に対応したホイールシリンダ62a〜62dのブレーキ液圧Pbを制御する機能である。トラクション制御機能112は、例えば、加速時等の車輪18の空転を防ぐために用いられる。横滑り防止機能114は、車両10がカーブ等を旋回する際の横滑りを防止する機能である。
【0035】
回避操作支援機能116は、運転者が自車10を障害物から回避させるために操向ハンドル50を操作する際、当該操作を補助する機能である。ここにいう補助とは、図示しない補助モータを用いて回避方向への操舵をアシストする機能や、操舵を行うべきではない操舵方向への操舵に前記補助モータを用いて抵抗を付与する機能を含む。
【0036】
緊急ブレーキ機能118は、さらに、ブレーキアシスト機能120と、自動ブレーキ機能122とを含む。ブレーキアシスト機能120は、運転者によるブレーキペダル54の操作によって発生したブレーキ液圧Pbを通常よりも大きくする機能である。自動ブレーキ機能122は、各ホイールシリンダ62a〜62dにおけるブレーキ液圧Pbを自動的に(運転者によるブレーキペダル54の操作なしに)増加させる機能である。ブレーキアシスト機能120及び自動ブレーキ機能122におけるブレーキ液圧Pbを増加させる手法としては、例えば、ポンプ72a、72bを用いたものや、マスタシリンダ60の液圧を増加させるアキュームレータやモータを用いたものを挙げることができる。
【0037】
2.ブレーキ機械系16の制御
(1)ブレーキ機械系16の制御の流れ
図3には、ブレーキ機械系16を制御するフローチャートが示されている。ステップS1において、ECU26は、センサ群14から検出値を取得する。この際、センサ群14における各種センサの値は、ECU26においてそのまま用いることができるものと、演算部102での演算処理により具体的な数値を演算する必要があるものとが存在する。このため、ステップS1では、後者については、検出値を取得するのみならず、演算処理を実行し、より具体的な数値を得る。
【0038】
ステップS2において、ECU26は、ステップS1で取得した検出値に基づいて、緊急ブレーキ制御(緊急ブレーキ機能118)用の制御パラメータを演算する。本実施形態における当該制御パラメータは、相対速度Vr及び接触余裕時間(TTC:Time To Collision)である。
【0039】
ECU26は、レーダ30からの相対距離Drに基づいて自車10と障害物との相対速度Vr[km/h]を演算する。相対速度Vrは、以下の式(1)に基づいて算出される。
Vr(x)={Dr(x)−Dr(x−1)/Tc} ・・・(1)
【0040】
上記式(1)において、Tcは演算周期[s](固定値)を示し、xは、今回の演算周期Tcにおける値を示し、x−1は、前回の演算周期Tcにおける値を示す。
【0041】
次いで、ECU26は、以下の式(2)を用いてTTCを求める。
TTC(x)=Dr(x)/Vr(x) ・・・(2)
【0042】
図3のステップS3において、ECU26は、車両状態を演算する。ここでの車両状態としては、ブレーキ機械系16から車輪18に対して制動力Fbを付与している制動状態と、車両10が加速している加速状態と、運転者が操向ハンドル50を操作して舵角θsが変化している操舵状態と、上記いずれの状態でもない通常状態とが含まれる。従って、ECU26は、車両状態が、制動状態、加速状態、操舵状態又は通常状態のいずれであるかを演算する。当該演算には、ステップS1で取得した検出値を用いる。
【0043】
ステップS4において、ECU26は、緊急ブレーキ機能118のモード(ブレーキモード)を選択する。ブレーキモードとしては、通常モード、警報モード、ブレーキアシストモード、第1自動ブレーキモード及び第2自動ブレーキモードが含まれる。なお、以下では、第1自動ブレーキモードと第2自動ブレーキモードを自動ブレーキモードと総称する。
【0044】
図4には、ブレーキモードの選択に関する説明図が示されている。図4からわかるように、本実施形態では、相対速度Vr及びTTCに基づいてブレーキモードを設定する。すなわち、自車10が障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せが緊急基準時間ラインを下回ると、ECU26は、通常モードから警報モードに切り替える。そして、ECU26は、警報装置20を介して運転者に警報を発する。警報は、1回のみの出力、断続的な出力又は連続的な出力のいずれでもよい。
【0045】
自車10がさらに障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せがブレーキアシスト基準時間ラインを下回ると、ECU26は、ブレーキアシストモードを選択する。そして、ブレーキアシストモードが選択されている状態で運転者がブレーキペダル54を操作すると、ECU26は、ブレーキペダル54の操作量θbに応じてブレーキ機械系16を制御してブレーキ液圧Pbを増大させる。なお、相対速度Vrが所定値Vr2(図4)以上である場合、警報基準時間ラインとブレーキアシスト基準時間ラインは一致し、警報モードとブレーキアシストモードとが同時に選択される。
【0046】
自車10がさらに障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せが自動ブレーキ1基準時間ラインを下回ると、ECU26は、第1自動ブレーキモードを選択する。そして、第1自動ブレーキモードが選択されている間、ECU26は、ブレーキペダル54の操作量θbから独立してブレーキ機械系16を制御してブレーキ液圧Pbを増大させる。
【0047】
自車10がさらに障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せが自動ブレーキ2基準時間ラインを下回ると、ECU26は、第2自動ブレーキモードを選択する。そして、第2自動ブレーキモードが選択されている間、ECU26は、ブレーキペダル54の操作量θbから独立してブレーキ機械系16を制御してブレーキ液圧Pbを増大させる。ここでの増大の度合いは、第1自動ブレーキモードの場合よりも大きくなる。なお、相対速度Vrが所定値Vr1(図4)以下である場合、自動ブレーキ1基準時間ラインと自動ブレーキ2基準時間ラインは一致し、第2自動ブレーキモードが優先して選択される。なお、以下では、第1自動ブレーキ制御と第2自動ブレーキ制御を合わせて「自動ブレーキ制御」と総称する。また、第1自動ブレーキ制御によるブレーキと第2自動ブレーキ制御によるブレーキを合わせて「自動ブレーキ」と総称する。
【0048】
相対速度VrとTTCの組合せが、緊急基準時間ラインを上回る場合、上記各モード(警報モード、ブレーキアシストモード、第1自動ブレーキモード及び第2自動ブレーキモード)のいずれも選択されず、通常モードが選択される。通常モードでは、通常のブレーキ液圧Pbが発生される。
【0049】
また、図4に伴う処理の更なる詳細については、特許文献3に記載のものを用いることができる(例えば、特許文献4の図4、段落[0031]〜[0045]参照)。
【0050】
なお、本実施形態では、緊急ブレーキ制御と並行してABS制御を実行することができる。上記のように、ABS制御では、ブレーキ機械系16から車輪18に対して制動力Fbが加えられている際(ブレーキ操作時)に車輪18のロックを防止する。
【0051】
ABS制御では、目標スリップ率St及び目標車輪速度Vwtに応じてバルブモードを選択する。本実施形態のバルブモードには、ホイールシリンダ62a〜62dにかかるブレーキ液圧Pbを増大させる増圧モードと、ホイールシリンダ62a〜62dにかかるブレーキ液圧Pbを減少させる減圧モードと、ホイールシリンダ62a〜62dにかかるブレーキ液圧Pbを保持させる保持モードとがある。
【0052】
目標スリップ率Stは、車輪18のスリップ率Sの目標値である。スリップ率Sは、車体速度Vvと車輪速度Vwの差を車体速度Vvで除したものである{S=(Vv−Vw)/Vv}。本実施形態において、目標スリップ率Stは固定値とされる。代わりに、車両10が走行している路面の種類(アスファルト、砂利道等)、路面状態(ドライ、ウェット等)、車体速度Vv等により可変とすることもできる。なお、前記路面の種類は、例えば、ナビゲーション装置(ナビゲーション装置の機能を有する携帯情報端末を含む。)により取得することができる。前記路面状態は、例えば、車輪18に対して瞬間的に制動力を自動的に働かせることにより算出される路面摩擦係数μにより推定することができる。
【0053】
目標車輪速度Vwtは、車体速度Vv及び目標スリップ率Stに応じて算出することができる。例えば、目標車輪速度Vwtが車体速度Vv以下となるように、目標車輪速度Vwtと車体速度Vvとの差を事前に設定しておき、当該差を用いて目標車輪速度Vwtを算出することができる。当該差は、目標スリップ率Stに応じて設定することができる。
【0054】
実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの差D1(=Vw−Vwt)が閾値TH_D1を下回ると、ECU26は、一時的に減圧モードを選択し、その後、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるまで保持モードを選択する。また、実際の車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回ると、ECU26は、増圧モードを選択し、その後、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるまで増圧モードを選択する。
【0055】
図3に戻り、ステップS5において、ECU26は、ステップS4で選択したブレーキモードに応じてブレーキ機械系16による制動力Fbを演算する。例えば、通常モード又は警報モードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキ機械系16による付加的な制動力Fbは発生させず、ブレーキペダル54の操作に応じた通常のブレーキ液圧Pbが発生するようにブレーキ機械系16による制動力Fbを制御する。
【0056】
また、ブレーキアシストモードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキペダル54の操作に伴って発生する通常のブレーキ液圧Pbに加える付加的なブレーキ液圧Pb(付加的な制動力Fb)を、ブレーキペダル54の操作量θb又は踏力に応じて演算する。
【0057】
さらに、第1自動ブレーキモードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキペダル54の操作にかかわらずブレーキ機械系16により発生させる付加的な制動力Fbを演算する。同様に、第2自動ブレーキモードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキペダル54の操作にかかわらずブレーキ機械系16により発生させる付加的な制動力Fbを演算する。上記のように、相対速度Vr及びTTCが等しい場合、第2自動ブレーキモードにおける付加的な制動力Fbは、第1自動ブレーキモードにおける付加的な制動力Fbよりも大きくなる。
【0058】
ステップS6において、ECU26は、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択された後、車両10が停止したか否かを判定する。ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択されたか否かは、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択された際、そのことを示すフラグ(ブレーキアシストフラグ又は自動ブレーキフラグ)を立てておくことで判定することができる。本実施形態では、ブレーキアシストフラグ又は自動ブレーキフラグが立つと、当該フラグは、車両10の停止後、所定時間が経過したときにリセットされる(詳細は後述する。)。このため、少なくとも車両10が停止するまではフラグがリセットされることはない。また、車両10が停止したか否かの判定は、車体速度Vvがゼロであるか否かにより判定する。
【0059】
ブレーキアシストモード若しくは自動ブレーキモードのいずれもが選択されていない又は車両10が停止していない場合(S6:NO)、ステップS9に進む。ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択された後、車両10が停止した場合(S6:YES)、ステップS7において、ECU26は、後述する停止制御で用いる制御パラメータを演算する。本実施形態における当該パラメータは、期間T1[s]である。後述するように、当該パラメータとして、相対距離Dr等を用いることもできる。
【0060】
ステップS8において、ECU26は、停止制御を実行する。停止制御では、EPB22のオンオフ制御と、EPBモータ92の作動速度Vmとを決定する。
【0061】
具体的には、EPB22のオンオフ制御に関し、ECU26は、車両10の停止からの経過時間T2が期間T1以上となったか否かを確認する。そして、経過時間T2が期間T1以上となった場合、ECU26は、EPB22をオンとし、車両10の移動を規制する。
【0062】
EPBモータ92の作動速度Vmは、EPBモータ92が動作を開始してから車輪18をロックするまでの時間に影響する。本実施形態では、ブレーキアシスト制御及び自動ブレーキ制御を行わないで停車した場合には、EPBモータ92の騒音等を考慮してEPBモータ92の作動速度Vmを抑制している。しかしながら、ブレーキアシスト制御又は自動ブレーキ制御を実行した後に停車した場合、障害物との接触の可能性を考慮してEPBモータ92の作動速度Vmを高くすることで、車両10の移動を素早く規制する。
【0063】
ステップS9において、ECU26は、ステップS5の結果(S6:NOの場合)又はステップS8の結果(S6:YESの場合)に応じて、各バルブ64a〜64d、66a〜66d、68a、68bを制御する。
【0064】
図5には、ABS制御等に応じてINバルブ64a〜64d、OUTバルブ66a〜66d、レギュレータバルブ68a、68bの開閉制御及びポンプ72a、72bのオンオフ制御を示す図である。図5に示すように、ABS制御を伴わない通常制御(パターン1)では、ノーマルオープン型のINバルブ64a〜64d及びレギュレータバルブ68a、68bはいずれも開(OFF)であり、ノーマルクローズ型のOUTバルブ66a〜66dは閉(OFF)である。また、ポンプ72a、72bはオフ(OFF)とする。
【0065】
ブレーキアシスト制御又は自動ブレーキ制御を伴わないABS制御(パターン2)では、レギュレータバルブ68a、68bは開(OFF)とされ、ポンプ72a、72bはオン(ON)にされた状態で、実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの関係に応じてINバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dが開閉(ON/OFF)される。すなわち、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回っている場合、INバルブ64a〜64dが開に、OUTバルブ66a〜66dが閉とされる。車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtの差D1が閾値TH_D1を下回っている場合、INバルブ64a〜64dが閉に、OUTバルブ66a〜66dが開とされる。車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しい場合、INバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dがいずれも閉とされる。
【0066】
ブレーキアシスト制御を伴うABS制御(パターン3)では、レギュレータバルブ68a、68bは、マスタシリンダ60側とホイールシリンダ62a〜62d側との差圧に応じて開閉制御される。他にも、レギュレータバルブ68a、68bを比較的少ない駆動電流Irvにより少し閉じ、ポンプ72a、72bをオンにした状態で、パターン2と同様、実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの関係に応じてINバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dを開閉する制御であってもよい。これにより、ブレーキペダル54の操作に伴うブレーキ液圧Pbによる制動を基本としつつ、ブレーキアシスト制御によるブレーキ液圧Pbを発生させてブレーキペダル54の操作を補助することが可能となる。
【0067】
自動ブレーキ制御を伴うABS制御(パターン4)では、レギュレータバルブ68a、68bは閉じられる。他にも、レギュレータバルブ68a、68bを比較的大きな駆動電流Irvにより大きく閉じ、ポンプ72a、72bをオンにした状態で、パターン2、3と同様、実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの関係に応じてINバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dを開閉する制御であってもよい。従って、パターン3と比較して、パターン4では、ポンプ72a、72bからホイールシリンダ62a〜62dに付加されるブレーキ液圧Pbが大きくなり、より大きな制動力Fbを生じさせることができる。これにより、自動ブレーキ制御により発生させたブレーキ液圧Pbによる制動を行うことが可能となる。
【0068】
(2)ブレーキ機械系16の制御の具体例
(a)ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行する場合
図6は、ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行する場合(上記パターン4)の一例を示すタイムチャートである。図6では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。すなわち、ECU26は、ブレーキ機械系16のバルブモードを増圧モード、減圧モード及び保持モードを切り替えながら、車輪速度Vwを目標車輪速度Vwtに近づける。なお、この際、自動ブレーキが作動しているため、自動ブレーキフラグが立っている(オンになっている)。また、ブレーキペダル54が踏まれていないため、マスタシリンダ60の圧力Pmcは、ゼロのままである。
【0069】
時点t1において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t2において、経過時間T2が期間T1以上になると、ECU26は、EPB22をオンにするとともに、自動ブレーキフラグを下げる(オフにする)。停止制御は、図示しないイグニションスイッチがオフにされるまで又はアクセルペダル52が踏み込まれて車両10が再度走行を開始するまで継続される。
【0070】
(b)ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行する場合
図7は、ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行する場合(上記パターン3)の一例を示すタイムチャートである。図6と同様、図7では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。なお、この際、ブレーキアシストが作動しているため、ブレーキアシストフラグが立っている(オンになっている)。また、アシストの作動に伴って、マスタシリンダ60の圧力Pmcが最大値となっている。
【0071】
時点t11において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t12において、経過時間T2が期間T1以上になると、ECU26は、EPB22をオンにするとともに、ブレーキアシストフラグを下げる(オフにする)。また、ECU26は、ブレーキアシストに伴って最大値としていたマスタシリンダ60の圧力Pmcをゼロまで徐々に低下させる。
【0072】
3.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、緊急ブレーキ(ブレーキアシスト又は自動ブレーキ)が作動して車両10が停止した場合、運転者による駐車操作がないときでも、車両10の移動を規制する。これにより、緊急ブレーキの作動後に運転者が駐車操作を行わずに車両10の外部に出ても、例えば、(坂道の場合)車両10の自重により又は外部からの力により車両10が移動することを防止することが可能となる。
【0073】
本実施形態において、EPB22のEPBモータ92の作動速度Vmは、緊急ブレーキが作動して車両10が停止したときの方が、緊急ブレーキが作動せずに車両10が停止したときよりも大きい。これにより、緊急ブレーキが作動しない通常停車時には、EPBモータ92の騒音等を考慮して作動速度Vmを抑制しているとしても、緊急ブレーキが作動した緊急停車時には作動速度Vmを高くすることで、車両10の移動を素早く規制することが可能となる。
【0074】
B.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0075】
1.車両10
上記実施形態では、車両10は四輪車であったが、これに限られず、例えば、二輪車、トラック、バス等であってもよい。
【0076】
2.相対距離Dr
上記実施形態では、自車10と障害物(先行車)との相対距離Drの判定をレーダ30の出力に基づいて行ったが、これに限られず、例えば、画像センサからの出力を用いて判定してもよい。
【0077】
3.停止制御
(1)停止制御を行う条件
上記実施形態では、停止制御を行う条件の一部として、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードの選択が行われたことを設定したが、これに限らない。例えば、ブレーキアシストモードの選択が行われた場合は停止制御を行わず、自動ブレーキモードの選択が行われた場合のみ停止制御を行ってもよい。
【0078】
(2)停止後の車両10の移動を規制する手段及び方法
上記実施形態では、停止後の車両10の移動を規制する手段及び方法として、EPB22を用いたが、これに限らない。例えば、以下に詳述するように、EPB22をオンにする代わりにホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを制御することもできる。或いは、EPB22をオンにすると共に、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcの制御を行ってもよい。
【0079】
(a)自動ブレーキモード作動後の停車時にEPB22の代わりにホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを用いる場合
図8は、ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行して(上記パターン4)車両10を停止させた後、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを制御することにより車両10の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【0080】
図6の例と同様、図8では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。なお、この際、自動ブレーキが作動しているため、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回ってから所定期間(時点t21〜t23)を除き、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcは最大値となる。加えて、自動ブレーキフラグが立っている(オンになっている)。また、ブレーキペダル54が操作されていないため、マスタシリンダ60の圧力Pmcは、ゼロのままである。
【0081】
時点t21において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t22において、経過時間T2が期間T1以上になると、ECU26は、自動ブレーキフラグを下げる(オフにする)と共に、ポンプ72a、72b及びポンプモータ74を制御して、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcが、車両10の移動を規制をするのに最低限必要な最低圧力Pwcminとなるようにする。例えば、車両10が停止した状態でホイールシリンダ62a〜62dをさせた状態で、車輪速度Vw又は車輪18の角度を監視しながら圧力Pwcを弱めていき、車輪18が動き出したことを検出したら、その直前の値を最低圧力Pwcminとすることができる。或いは、基準となる路面(例えば、平坦なアスファルト路、又は所定の勾配及び路面摩擦係数μを有する路面)において、車両10を停止させるのに必要な最低圧力Pwcminを事前に求め、記憶部104に記憶しておき、これを用いることができる。
【0082】
また、ECU26は、レギュレータバルブ68a、68bの圧力Prvが、圧力Pwcを最低圧力Pwcminに維持可能な最低圧力Prvminとなるように、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvを下げていく。時点t23において、駆動電流Irvが、最低圧力Prvminに対応する最低駆動電流Irvminとなり、圧力Prvが最低圧力Prvminになると、ECU26は、ポンプ72a、72bをオフにする。
【0083】
この際のレギュレータバルブ68a、68bの作動速度V1は、相対距離Drに応じて設定することができる。すなわち、相対距離Drが短い場合、作動速度V1を高くし、相対距離Drが長い場合、作動速度V1を低くする。作動速度V1は、レギュレータバルブ68a、68bが作動を開始してから最終的な目標開度に到達するまでの時間に対応する。本実施形態では、ブレーキアシストモード及び自動ブレーキ制御を行わないで停車した場合には、レギュレータバルブ68a、68bの消費電力等を考慮して作動速度V1を抑制している。しかしながら、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキ制御を実行した後に停車した場合、障害物との接触の可能性を考慮して作動速度V1を高くすることで、車両10の移動を素早く規制する。
【0084】
(b)ブレーキアシストモード作動後の停車時にEPB22の代わりにホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを用いる場合
図9は、ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行して(上記パターン3)車両10を停止させた後、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを制御することにより車両10の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【0085】
図7の例と同様、図9では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。なお、この際、ブレーキアシストが作動しているため、マスタシリンダ60の圧力Pmcは最大値を取ると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回ってから所定期間を除き、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcは最大値を取る。加えて、ブレーキアシストフラグが立っている(オンになっている)。
【0086】
時点t31において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t32において、経過時間T2が期間T1が以上になると、ECU26は、ブレーキアシストフラグを下げる(オフにする)と共に、ポンプ72a、72b及びポンプモータ74を制御して、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcが、上記最低圧力Pwcminとなるようにする。また、ECU26は、レギュレータバルブ68a、68bの圧力Prvが、上記最低圧力Prvminとなるように、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvを上げていく。時点t33において、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvが、最低圧力Prvminに対応する最低駆動電流Irvminとなり、圧力Prvが最低圧力Prvminになると、ECU26は、ポンプ72a、72bをオフにする。
【0087】
なお、図8及び図9の制御を組み合わせた場合、ブレーキアシストが作動したときの方が、自動ブレーキが作動したときよりも、レギュレータバルブ68a、68bの作動量Qvを大きくしてもよい。レギュレータバルブ68a、68bにかかるブレーキ液圧Pbは、自動ブレーキが作動したときよりもブレーキアシストが作動したときの方が高い。このため、ブレーキアシストが作動したときの作動量Qvを大きくすることにより、レギュレータバルブ68a、68bにかかるブレーキ液圧Pbが低くなり、ブレーキ液圧Pbの付加によるレギュレータバルブ68a、68bの損耗を回避することが可能となる。また、レギュレータバルブ68a、68bとして電磁弁を用いているため、電磁弁の開閉状態を保つために必要な消費電流(駆動電流Irv)を抑制することが可能となる。
【0088】
(3)停止後に車両10の移動を規制するタイミング
上記実施形態(図6及び図7)並びに上記変形例(図8及び図9)では、車両10の停止から期間T1の経過後に車両10の移動を規制したが、停止後に車両10の移動を規制するタイミングは、これに限らない。例えば、車両10が停止したこと(例えば、車体速度Vvがゼロになったこと)を検出すると即座に車両10の移動を規制することもできる。この際、自車10と障害物との相対距離Drが所定の閾値以下であることを移動規制の条件としてもよい。
【0089】
図10には、車両10の停止直後に車両10の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。図10の例では、自車10と障害物との相対距離Drが閾値TH_Dr以下であることを移動規制の条件としている。
【0090】
時点t41までは、ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行しながら、車両10を減速させる。時点t41において、車体速度Vvがゼロとなり車両10が停止すると、ECU26は、その時点におけるレーダ30からの相対距離Drが、閾値TH_Dr以下であるか否かを判定する。閾値TH_Drは、例えば、相対距離Drが短すぎるため、車両10の移動を規制する必要性が高い距離(例えば、1センチメートル〜2メートルのいずれかの値)に設定可能である。
【0091】
図10の例では、時点t41における相対距離Drが閾値TH_Dr以下であるため、ECU26は、ホイールシリンダ62a〜62dを用いて車両10の移動を規制する。具体的には、ECU26は、自動ブレーキフラグを下げる(オフにする)と共に、ポンプ72a、72b及びポンプモータ74を制御して、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcが、上記最低圧力Pwcminとなるようにする。また、ECU26は、レギュレータバルブ68a、68bの圧力Prvが、上記最低圧力Prvminとなるように、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvを上げていく。時点t42において、駆動電流Irvが上記最低駆動電流Irvminとなり、圧力Prvが上記最低圧力Prvminになると、ECU26は、ポンプ72a、72bをオフにする。これにより、緊急停車時において特に移動規制をかける必要性が高い場合にのみ、運転者による駐車操作がなくても、車両10の移動を素早く規制することが可能となる。
【0092】
また、図10の例では、相対距離Drが閾値TH_Dr以下であり、且つ相対距離Drが小さいほどレギュレータバルブ68a、68bの作動量Qv及び作動速度V1の少なくとも一方を高くすることができる。これにより、緊急ブレーキが作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じてレギュレータバルブ68a、68bの作動速度V1を大きくすることで、車両10の移動を素早く規制することが可能となり、また、作動量Qvを大きくすることで、車両10の移動をより確実に規制することができる。
【0093】
なお、図10では、車両10の移動を規制する直接的な手段として、ホイールシリンダ62a〜62dを用いたが、これに代えて又はこれと共に、EPB22を作動させることもできる。この場合、停止時の相対距離Drに応じてEPBモータ92の作動速度Vmを変化させることもできる。例えば、相対距離Drが短いほど、作動速度Vmを上げ、相対距離Drが長いほど、作動速度Vmを下げる。これにより、緊急ブレーキが作動しない通常停車時には、EPB22のEPBモータ92の騒音等を考慮してEPBモータ92の作動速度Vmを抑制しているとしても、緊急ブレーキが作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じて作動速度Vmを高くすることで、車両10の移動を素早く規制することが可能となる。
【0094】
また、レーダ30が検出した相対距離Drと共に又はこれに替えて、車両10に搭載したバックモニタ(図示せず)により検出した後方の障害物との相対距離を用いることもできる。
【符号の説明】
【0095】
10…車両(自車) 12…制動力制御装置
22…電動パーキングブレーキ(移動規制手段)
38…車体速度センサ(車体速度検出手段)
60…マスタシリンダ
62a〜62d…ホイールシリンダ(移動規制手段)
64a〜64d…INバルブ(減圧手段、第2制御弁)
66a〜66d…OUTバルブ(減圧手段)
68a、68b…レギュレータバルブ(制御弁、第2制御弁)
72a、72b…ポンプ(加圧手段、減圧手段)
74…ポンプモータ(加圧手段、減圧手段)
92…EPBモータ(アクチュエータ)
118…緊急ブレーキ機能(緊急ブレーキ制御手段)
120…ブレーキアシスト機能(緊急ブレーキアシスト手段)
122…自動ブレーキ機能(緊急自動ブレーキ手段)
Dr…相対距離 Pb…ブレーキ液圧
Qv…各バルブの作動量
TH_Dr…閾値(所定値、第2所定値)
TTC…接触余裕時間(接触可能性、接触余裕度)
Vm…EPBモータの作動速度 Vv…車体速度
V1…各バルブの作動速度
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の移動を規制する、電動パーキングブレーキ等の制動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シフト位置を「P」(パーキング)にすることなどにより作動する電動パーキング装置が知られている(特許文献1)。特許文献1では、シフト位置が、「P」、「N」(ニュートラル)及び「R」(リバース)以外であるとき、フットブレーキが操作され、車速がゼロになると、電動パーキングブレーキを作動させる(要約)。これにより、電動パーキングブレーキの作動制御を自動的に行い、その停止判断を確実にすると共に、急発進による突発事故や坂道発進時の逆走等を防ぎ、安全性を向上させることを企図している([0007])。また、特許文献1では、シフト位置が「N」であるとき、ステアリングトルクが検知されない場合又は運転者が運転席にいない場合、電動パーキングブレーキを自動的に作動させる([0028])。
【0003】
また、走行中に車輪に対する制動力を制御する制動力制御装置が知られている。当該制動力制御装置の中には、車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステム(ABS)に関するものや(特許文献2〜4)、緊急時にブレーキ液圧を高める緊急ブレーキシステムに関するものがある(特許文献4)。
【0004】
特許文献2では、車体速度(VR0)と、所定の路面摩擦係数(μ)と、所定の定数(a)とに基づいて目標車輪速度(VWt)を算出する([0036]、[0037]、[0055])。そして、車輪速度が目標車輪速度になるように、各車輪のブレーキトルク(T)を制御する([0038]〜[0042]、[0056]〜[0060])。
【0005】
特許文献3では、アンチロックブレーキ制御と、トラクション制御と、方向性安定制御とを用いる技術が示されている(要約、請求項1)。特許文献3では、車両の方向安定性を保持するための基準となる目標車輪速度を演算し、当該目標車輪速度に基づいて車輪ブレーキの増圧速度又は減圧速度を定める(要約、請求項1)。また、特許文献3では、ヨーレートを考慮して目標車輪速度が設定される([0059])。
【0006】
特許文献4では、運転者のブレーキ操作による制動力を増大させるブレーキアシスト制御と、自動的に制動力を発生させる自動ブレーキ制御を用いる(要約、請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−027415号公報
【特許文献2】特開2009−274582号公報
【特許文献3】特開平11−059388号公報
【特許文献4】特開2008−307999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、特許文献1では、シフト位置が、「P」、「N」及び「R」以外であるとき、フットブレーキが操作され、車速がゼロになると、電動パーキングブレーキを作動させる。このことは、特許文献1では、主として、通常運転中において運転者の操作を補助することに焦点を当てていることを意味している。
【0009】
ところで、特許文献4のような緊急ブレーキ制御を行った場合、車速がゼロになった後、運転者の操作なしに車両が動き出すことを避けるため、車両の移動を速やかに規制することが好ましい状況があり得る。
【0010】
この点、特許文献1では、シフト位置が「N」であるとき、ステアリングトルクが検知されない場合又は運転者が運転席にいない場合、パーキングブレーキを自動的に作動させるものの([0028])、車両の移動規制の観点で未だ改善の余地がある。
【0011】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、緊急停止時に車両の移動を速やかに規制することが可能な制動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る制動力制御装置は、車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、前記車両周囲の障害物との接触可能性が高い緊急時に通常のブレーキ液圧よりも高いブレーキ液圧を発生させる緊急ブレーキ制御手段とを備えるものであって、さらに、前記車両の駐車時に前記車両の移動を規制する移動規制手段を備え、前記移動規制手段は、前記緊急ブレーキ手段が作動して前記車両が停車したと判定したとき、運転者による駐車操作がない場合であっても、前記車両の移動を規制することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、緊急ブレーキが作動して車両が停止した場合、運転者による駐車操作がないときでも、車両の移動を規制する。これにより、緊急ブレーキの作動後に運転者が駐車操作を行わずに車両の外部に出ても、例えば、(坂道の場合)車両の自重により又は外部からの力により車両が移動することを防止することが可能となる。
【0014】
前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制するためのアクチュエータを備え、前記アクチュエータの作動速度は、前記緊急ブレーキ制御手段が作動して前記車両が停止したときの方が、前記緊急ブレーキ制御手段が作動せずに前記車両が停止したときよりも大きくてもよい。これにより、緊急ブレーキ制御手段が作動しない通常停車時には、アクチュエータの騒音等を考慮してアクチュエータの作動速度を抑制しているとしても、緊急ブレーキ制御手段が作動した緊急停車時にはアクチュエータの作動速度を高くすることで、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【0015】
前記車体速度がゼロとなったときにおける前記障害物との距離が所定値以下であることを条件として、前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制してもよい。これにより、緊急停車時において特に移動規制をかける必要性が高い場合にのみ、運転者による駐車操作がなくても、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【0016】
前記緊急ブレーキ制御手段は、加圧手段により前記ブレーキ液圧を自動的に増加させる緊急自動ブレーキ手段と、運転者の操作に伴って発生する前記ブレーキ液圧を前記加圧手段により増加させる緊急ブレーキアシスト手段とを有し、前記緊急ブレーキアシスト手段は、前記緊急自動ブレーキ手段よりも、前記障害物に対する接触余裕度が大きいときに作動し、前記移動規制手段は、前記車両が停車状態を維持させるために設定された所定ブレーキ液圧となるように前記ブレーキ液圧を減少させる減圧手段と、前記減圧手段が作動した後に前記所定ブレーキ液圧を保持する制御弁とを備え、前記緊急ブレーキアシスト手段が作動したときの方が、前記緊急自動ブレーキ手段が作動したときよりも、前記減圧手段の作動量が大きくされてもよい。
【0017】
これにより、緊急ブレーキアシスト手段が作動した場合、ブレーキ液圧の減少が大きくなる。このため、緊急ブレーキアシスト手段が作動した後に減圧手段にかかるブレーキ液圧が低くなり、ブレーキ液圧の付加による減圧手段の損耗を回避することが可能となる。また、減圧手段として、例えば、電磁弁を用いる場合、電磁弁の開閉状態を保つために必要な消費電流を抑制することが可能となる。
【0018】
前記移動規制手段は、電動アクチュエータにより作動する電動パーキングブレーキであり、前記車両と前記障害物との距離が所定値以下であるとき、前記車両と前記障害物との距離が近いほど、前記電動アクチュエータの作動速度を大きくしてもよい。これにより、緊急ブレーキ制御手段が作動しない通常停車時には、電動アクチュエータの騒音等を考慮して電動アクチュエータの作動速度を抑制しているとしても、緊急ブレーキ制御手段が作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じて電動アクチュエータの作動速度を高くすることで、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【0019】
前記駐車制御手段は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に設けられた第2制御弁を開閉制御して、前記ブレーキ液圧を第2所定ブレーキ液圧に保持して前記車両の移動を規制し、前記車両と前記障害物との距離が第2所定値以下であり、且つ前記車両と前記障害物との距離が小さいほど前記第2制御弁の作動量又は作動速度を高くしてもよい。車両と前記障害物との距離が第2所定値以下であり、且つ車両と障害物との距離が小さいほど第2制御弁の作動量又は作動速度を大きくすることにより、緊急ブレーキ制御手段が作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じて第2制御弁の作動量又は作動速度を高くすることで、車両の移動を素早く規制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、緊急ブレーキが作動して車両が停止した場合、運転者による駐車操作がないときでも、車両の移動を規制する。これにより、緊急ブレーキの作動後に運転者が駐車操作を行わずに車両の外部に出ても、例えば、(坂道の場合)車両の自重により又は外部からの力により車両が移動することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態に係る制動力制御装置を有する車両のブロック構成図である。
【図2】前記実施形態におけるブレーキ機械系の概略構成図である。
【図3】前記ブレーキ機械系を制御するフローチャートである。
【図4】前記実施形態におけるブレーキモードの選択に関する説明図である。
【図5】前記実施形態においてABS制御等に応じてINバルブ、OUTバルブ及びレギュレータバルブの開閉制御及びポンプのオンオフ制御を示す図である。
【図6】ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行して前記車両を停止させた後、電動パーキングブレーキを作動させることにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図7】前記ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行して前記車両を停止させた後、前記電動パーキングブレーキを作動させることにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図8】前記ABS制御及び前記自動ブレーキ制御を実行して前記車両を停止させた後、ホイールシリンダの圧力を制御することにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図9】前記ABS制御及び前記ブレーキアシスト制御を実行して前記車両を停止させた後、前記ホイールシリンダの圧力を制御することにより前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【図10】前記ABS制御及び前記ブレーキアシスト制御を実行して前記車両を停止させた直後に障害物との相対距離に応じて前記車両の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.一実施形態
1.車両10の構成
(1)全体構成
図1は、この発明の一実施形態に係る制動力制御装置12を有する車両10(以下「自車10」ともいう。)のブロック構成図である。制動力制御装置12は、各種の検出を行うセンサ群14と、車輪18fl、18fr、18rl、18rr(以下「車輪18」と総称する。)に対して制動力Fbを付与するブレーキ機械系16と、警報装置20と、電動パーキングブレーキ22(以下「EPB22」という。)と、電動パーキングブレーキ設定スイッチ24(以下「EPB設定スイッチ24」又は「スイッチ24」という。)と、センサ群14の検出値に基づいてブレーキ機械系16を制御する電子制御装置26(以下「ECU26」という。)と、機械式パーキングブレーキ28とを有する。
【0023】
(2)センサ群14
図1に示すように、センサ群14には、レーダ30、ヨーレートセンサ32、舵角センサ34、トルクセンサ36、車体速度センサ38(車速センサ)、車輪速センサ40a〜40d、前後Gセンサ42、横Gセンサ44、第1操作量センサ46及び第2操作量センサ48を含む。
【0024】
レーダ30は、図示しないフロントグリル部等に設けられ、車両10の前方に向けてミリ波等の電磁波を送信波として送信し、その反射波に基づいて障害物(例えば、先行車等)のまでの距離(相対距離Dr)[m]、自車10からの方向及び当該障害物の大きさを検出し、ECU26に送信する。レーダ30の代わりに、例えば、画像センサを用いてもよい。ヨーレートセンサ32は、車両10に発生しているヨーレートYrを検出する。舵角センサ34は、操向ハンドル50(ステアリングホイール)の舵角θsを検出する。トルクセンサ36は、操向ハンドル50にかかるトルクTQを検出する。
【0025】
車体速度センサ38は、トランスミッションのカウンタシャフトの回転を検出する第1ホール素子(いずれも図示せず)と、当該第1ホール素子の出力に基づいて車体速度Vv[km/h]を演算する第1演算部(図示せず)とを備える。第1演算部は、ECU26に設けてもよい。
【0026】
車輪速センサ40a〜40dは、各車輪18の回転を検出する第2ホール素子(図示せず)と、当該第2ホール素子の出力に基づいて各車輪18fl、18fr、18rl、18rrの車輪速度Vw1、Vw2、Vw3、Vw4(以下「車輪速度Vw」と総称する。)[km/h]を演算する第2演算部(図示せず)とを備える。第2演算部は、ECU26に設けてもよい。
【0027】
前後Gセンサ42は、加速度センサであり車両10に発生している前後G(前後加速度)を検出する。横Gセンサ44は、加速度センサであり、車両10に発生している横G(横加速度)を検出する。第1操作量センサ46は、アクセルペダル52の操作量θaを検出する。第2操作量センサ48は、ブレーキペダル54の操作量θbを検出する。
【0028】
(3)ブレーキ機械系16
図2には、ブレーキ機械系16の概略構成図が示されている。図2に示すように、ブレーキ機械系16は、マスタシリンダ60、ホイールシリンダ62a〜62d、INバルブ64a〜64d、OUTバルブ66a〜66d、レギュレータバルブ68a、68b、サクションバルブ70a、70b、ポンプ72a、72b、ポンプモータ74、リザーバ76a、76b、ダンパ室78a、78b、チェック弁80a〜80d、82a、82b、84a、84b、86a、86b及び圧力計88を有する。
【0029】
INバルブ64a〜64d及びレギュレータバルブ68a、68bはノーマルオープン型の電磁弁であり、OUTバルブ66a〜66d及びサクションバルブ70a、70bはノーマルクローズ型の電磁弁である。各バルブ64a〜64d、66a〜66d、68a、68b、70a、70bは、ECU26からの指令に基づき開閉する(詳細は後述する。)。圧力計88は、配管90における圧力Piを検出する。
【0030】
(4)警報装置20
警報装置20は、図示しないスピーカを備え、ECU26からの指令の下、運転者に対する警告音を発する。
【0031】
(5)EPB22及びEPB設定スイッチ24
EPB22は、車輪18のうち駆動輪をロックし、車両10の移動を規制する。EPB22は、EPBモータ92(電動アクチュエータ)(図1)を備え、EPBモータ92の駆動に応じてEPB22をオン(規制状態)及びオフ(非規制状態)とで切り替えることができる。EPB22としては、例えば、特許文献1又は特開2008−174189号公報に記載のものを用いることができる。
【0032】
EPB設定スイッチ24は、EPB22の作動の可否を切り替えるものである。例えば、図示しないイグニションスイッチ(又は車両操作モード)がオンであり且つスイッチ24をオンにしているとき、EPB22を電源オンであり、車体速度Vv等に応じてEPBモータ92を作動させる。また、スイッチ24をオフにしているとき、EPB22は電源オフとなる。
【0033】
(6)ECU26
図1に示すように、ECU26は、ハードウェアとして、入出力部100、演算部102及び記憶部104を有する。本実施形態の演算部102は、記憶部104に記憶されているプログラムに基づきブレーキ機械系16を制御することにより、アンチロックブレーキシステム機能110(以下「ABS機能110」という。)、トラクション制御機能112、横滑り防止機能114、回避操作支援機能116及び緊急ブレーキ機能118を実現する。
【0034】
ABS機能110は、ブレーキ機械系16から車輪18に対して制動力Fbが加えられている際(ブレーキ操作時)に車輪18のロックを防止する機能である。トラクション制御機能112は、駆動輪である車輪18のうち非ブレーキ操作時に過剰スリップ状態に陥りそうな駆動輪に対応したホイールシリンダ62a〜62dのブレーキ液圧Pbを制御する機能である。トラクション制御機能112は、例えば、加速時等の車輪18の空転を防ぐために用いられる。横滑り防止機能114は、車両10がカーブ等を旋回する際の横滑りを防止する機能である。
【0035】
回避操作支援機能116は、運転者が自車10を障害物から回避させるために操向ハンドル50を操作する際、当該操作を補助する機能である。ここにいう補助とは、図示しない補助モータを用いて回避方向への操舵をアシストする機能や、操舵を行うべきではない操舵方向への操舵に前記補助モータを用いて抵抗を付与する機能を含む。
【0036】
緊急ブレーキ機能118は、さらに、ブレーキアシスト機能120と、自動ブレーキ機能122とを含む。ブレーキアシスト機能120は、運転者によるブレーキペダル54の操作によって発生したブレーキ液圧Pbを通常よりも大きくする機能である。自動ブレーキ機能122は、各ホイールシリンダ62a〜62dにおけるブレーキ液圧Pbを自動的に(運転者によるブレーキペダル54の操作なしに)増加させる機能である。ブレーキアシスト機能120及び自動ブレーキ機能122におけるブレーキ液圧Pbを増加させる手法としては、例えば、ポンプ72a、72bを用いたものや、マスタシリンダ60の液圧を増加させるアキュームレータやモータを用いたものを挙げることができる。
【0037】
2.ブレーキ機械系16の制御
(1)ブレーキ機械系16の制御の流れ
図3には、ブレーキ機械系16を制御するフローチャートが示されている。ステップS1において、ECU26は、センサ群14から検出値を取得する。この際、センサ群14における各種センサの値は、ECU26においてそのまま用いることができるものと、演算部102での演算処理により具体的な数値を演算する必要があるものとが存在する。このため、ステップS1では、後者については、検出値を取得するのみならず、演算処理を実行し、より具体的な数値を得る。
【0038】
ステップS2において、ECU26は、ステップS1で取得した検出値に基づいて、緊急ブレーキ制御(緊急ブレーキ機能118)用の制御パラメータを演算する。本実施形態における当該制御パラメータは、相対速度Vr及び接触余裕時間(TTC:Time To Collision)である。
【0039】
ECU26は、レーダ30からの相対距離Drに基づいて自車10と障害物との相対速度Vr[km/h]を演算する。相対速度Vrは、以下の式(1)に基づいて算出される。
Vr(x)={Dr(x)−Dr(x−1)/Tc} ・・・(1)
【0040】
上記式(1)において、Tcは演算周期[s](固定値)を示し、xは、今回の演算周期Tcにおける値を示し、x−1は、前回の演算周期Tcにおける値を示す。
【0041】
次いで、ECU26は、以下の式(2)を用いてTTCを求める。
TTC(x)=Dr(x)/Vr(x) ・・・(2)
【0042】
図3のステップS3において、ECU26は、車両状態を演算する。ここでの車両状態としては、ブレーキ機械系16から車輪18に対して制動力Fbを付与している制動状態と、車両10が加速している加速状態と、運転者が操向ハンドル50を操作して舵角θsが変化している操舵状態と、上記いずれの状態でもない通常状態とが含まれる。従って、ECU26は、車両状態が、制動状態、加速状態、操舵状態又は通常状態のいずれであるかを演算する。当該演算には、ステップS1で取得した検出値を用いる。
【0043】
ステップS4において、ECU26は、緊急ブレーキ機能118のモード(ブレーキモード)を選択する。ブレーキモードとしては、通常モード、警報モード、ブレーキアシストモード、第1自動ブレーキモード及び第2自動ブレーキモードが含まれる。なお、以下では、第1自動ブレーキモードと第2自動ブレーキモードを自動ブレーキモードと総称する。
【0044】
図4には、ブレーキモードの選択に関する説明図が示されている。図4からわかるように、本実施形態では、相対速度Vr及びTTCに基づいてブレーキモードを設定する。すなわち、自車10が障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せが緊急基準時間ラインを下回ると、ECU26は、通常モードから警報モードに切り替える。そして、ECU26は、警報装置20を介して運転者に警報を発する。警報は、1回のみの出力、断続的な出力又は連続的な出力のいずれでもよい。
【0045】
自車10がさらに障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せがブレーキアシスト基準時間ラインを下回ると、ECU26は、ブレーキアシストモードを選択する。そして、ブレーキアシストモードが選択されている状態で運転者がブレーキペダル54を操作すると、ECU26は、ブレーキペダル54の操作量θbに応じてブレーキ機械系16を制御してブレーキ液圧Pbを増大させる。なお、相対速度Vrが所定値Vr2(図4)以上である場合、警報基準時間ラインとブレーキアシスト基準時間ラインは一致し、警報モードとブレーキアシストモードとが同時に選択される。
【0046】
自車10がさらに障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せが自動ブレーキ1基準時間ラインを下回ると、ECU26は、第1自動ブレーキモードを選択する。そして、第1自動ブレーキモードが選択されている間、ECU26は、ブレーキペダル54の操作量θbから独立してブレーキ機械系16を制御してブレーキ液圧Pbを増大させる。
【0047】
自車10がさらに障害物に接近することで、相対速度VrとTTCの組合せが自動ブレーキ2基準時間ラインを下回ると、ECU26は、第2自動ブレーキモードを選択する。そして、第2自動ブレーキモードが選択されている間、ECU26は、ブレーキペダル54の操作量θbから独立してブレーキ機械系16を制御してブレーキ液圧Pbを増大させる。ここでの増大の度合いは、第1自動ブレーキモードの場合よりも大きくなる。なお、相対速度Vrが所定値Vr1(図4)以下である場合、自動ブレーキ1基準時間ラインと自動ブレーキ2基準時間ラインは一致し、第2自動ブレーキモードが優先して選択される。なお、以下では、第1自動ブレーキ制御と第2自動ブレーキ制御を合わせて「自動ブレーキ制御」と総称する。また、第1自動ブレーキ制御によるブレーキと第2自動ブレーキ制御によるブレーキを合わせて「自動ブレーキ」と総称する。
【0048】
相対速度VrとTTCの組合せが、緊急基準時間ラインを上回る場合、上記各モード(警報モード、ブレーキアシストモード、第1自動ブレーキモード及び第2自動ブレーキモード)のいずれも選択されず、通常モードが選択される。通常モードでは、通常のブレーキ液圧Pbが発生される。
【0049】
また、図4に伴う処理の更なる詳細については、特許文献3に記載のものを用いることができる(例えば、特許文献4の図4、段落[0031]〜[0045]参照)。
【0050】
なお、本実施形態では、緊急ブレーキ制御と並行してABS制御を実行することができる。上記のように、ABS制御では、ブレーキ機械系16から車輪18に対して制動力Fbが加えられている際(ブレーキ操作時)に車輪18のロックを防止する。
【0051】
ABS制御では、目標スリップ率St及び目標車輪速度Vwtに応じてバルブモードを選択する。本実施形態のバルブモードには、ホイールシリンダ62a〜62dにかかるブレーキ液圧Pbを増大させる増圧モードと、ホイールシリンダ62a〜62dにかかるブレーキ液圧Pbを減少させる減圧モードと、ホイールシリンダ62a〜62dにかかるブレーキ液圧Pbを保持させる保持モードとがある。
【0052】
目標スリップ率Stは、車輪18のスリップ率Sの目標値である。スリップ率Sは、車体速度Vvと車輪速度Vwの差を車体速度Vvで除したものである{S=(Vv−Vw)/Vv}。本実施形態において、目標スリップ率Stは固定値とされる。代わりに、車両10が走行している路面の種類(アスファルト、砂利道等)、路面状態(ドライ、ウェット等)、車体速度Vv等により可変とすることもできる。なお、前記路面の種類は、例えば、ナビゲーション装置(ナビゲーション装置の機能を有する携帯情報端末を含む。)により取得することができる。前記路面状態は、例えば、車輪18に対して瞬間的に制動力を自動的に働かせることにより算出される路面摩擦係数μにより推定することができる。
【0053】
目標車輪速度Vwtは、車体速度Vv及び目標スリップ率Stに応じて算出することができる。例えば、目標車輪速度Vwtが車体速度Vv以下となるように、目標車輪速度Vwtと車体速度Vvとの差を事前に設定しておき、当該差を用いて目標車輪速度Vwtを算出することができる。当該差は、目標スリップ率Stに応じて設定することができる。
【0054】
実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの差D1(=Vw−Vwt)が閾値TH_D1を下回ると、ECU26は、一時的に減圧モードを選択し、その後、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるまで保持モードを選択する。また、実際の車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回ると、ECU26は、増圧モードを選択し、その後、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるまで増圧モードを選択する。
【0055】
図3に戻り、ステップS5において、ECU26は、ステップS4で選択したブレーキモードに応じてブレーキ機械系16による制動力Fbを演算する。例えば、通常モード又は警報モードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキ機械系16による付加的な制動力Fbは発生させず、ブレーキペダル54の操作に応じた通常のブレーキ液圧Pbが発生するようにブレーキ機械系16による制動力Fbを制御する。
【0056】
また、ブレーキアシストモードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキペダル54の操作に伴って発生する通常のブレーキ液圧Pbに加える付加的なブレーキ液圧Pb(付加的な制動力Fb)を、ブレーキペダル54の操作量θb又は踏力に応じて演算する。
【0057】
さらに、第1自動ブレーキモードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキペダル54の操作にかかわらずブレーキ機械系16により発生させる付加的な制動力Fbを演算する。同様に、第2自動ブレーキモードが選択されている場合、ECU26は、ブレーキペダル54の操作にかかわらずブレーキ機械系16により発生させる付加的な制動力Fbを演算する。上記のように、相対速度Vr及びTTCが等しい場合、第2自動ブレーキモードにおける付加的な制動力Fbは、第1自動ブレーキモードにおける付加的な制動力Fbよりも大きくなる。
【0058】
ステップS6において、ECU26は、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択された後、車両10が停止したか否かを判定する。ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択されたか否かは、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択された際、そのことを示すフラグ(ブレーキアシストフラグ又は自動ブレーキフラグ)を立てておくことで判定することができる。本実施形態では、ブレーキアシストフラグ又は自動ブレーキフラグが立つと、当該フラグは、車両10の停止後、所定時間が経過したときにリセットされる(詳細は後述する。)。このため、少なくとも車両10が停止するまではフラグがリセットされることはない。また、車両10が停止したか否かの判定は、車体速度Vvがゼロであるか否かにより判定する。
【0059】
ブレーキアシストモード若しくは自動ブレーキモードのいずれもが選択されていない又は車両10が停止していない場合(S6:NO)、ステップS9に進む。ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードが選択された後、車両10が停止した場合(S6:YES)、ステップS7において、ECU26は、後述する停止制御で用いる制御パラメータを演算する。本実施形態における当該パラメータは、期間T1[s]である。後述するように、当該パラメータとして、相対距離Dr等を用いることもできる。
【0060】
ステップS8において、ECU26は、停止制御を実行する。停止制御では、EPB22のオンオフ制御と、EPBモータ92の作動速度Vmとを決定する。
【0061】
具体的には、EPB22のオンオフ制御に関し、ECU26は、車両10の停止からの経過時間T2が期間T1以上となったか否かを確認する。そして、経過時間T2が期間T1以上となった場合、ECU26は、EPB22をオンとし、車両10の移動を規制する。
【0062】
EPBモータ92の作動速度Vmは、EPBモータ92が動作を開始してから車輪18をロックするまでの時間に影響する。本実施形態では、ブレーキアシスト制御及び自動ブレーキ制御を行わないで停車した場合には、EPBモータ92の騒音等を考慮してEPBモータ92の作動速度Vmを抑制している。しかしながら、ブレーキアシスト制御又は自動ブレーキ制御を実行した後に停車した場合、障害物との接触の可能性を考慮してEPBモータ92の作動速度Vmを高くすることで、車両10の移動を素早く規制する。
【0063】
ステップS9において、ECU26は、ステップS5の結果(S6:NOの場合)又はステップS8の結果(S6:YESの場合)に応じて、各バルブ64a〜64d、66a〜66d、68a、68bを制御する。
【0064】
図5には、ABS制御等に応じてINバルブ64a〜64d、OUTバルブ66a〜66d、レギュレータバルブ68a、68bの開閉制御及びポンプ72a、72bのオンオフ制御を示す図である。図5に示すように、ABS制御を伴わない通常制御(パターン1)では、ノーマルオープン型のINバルブ64a〜64d及びレギュレータバルブ68a、68bはいずれも開(OFF)であり、ノーマルクローズ型のOUTバルブ66a〜66dは閉(OFF)である。また、ポンプ72a、72bはオフ(OFF)とする。
【0065】
ブレーキアシスト制御又は自動ブレーキ制御を伴わないABS制御(パターン2)では、レギュレータバルブ68a、68bは開(OFF)とされ、ポンプ72a、72bはオン(ON)にされた状態で、実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの関係に応じてINバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dが開閉(ON/OFF)される。すなわち、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回っている場合、INバルブ64a〜64dが開に、OUTバルブ66a〜66dが閉とされる。車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtの差D1が閾値TH_D1を下回っている場合、INバルブ64a〜64dが閉に、OUTバルブ66a〜66dが開とされる。車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しい場合、INバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dがいずれも閉とされる。
【0066】
ブレーキアシスト制御を伴うABS制御(パターン3)では、レギュレータバルブ68a、68bは、マスタシリンダ60側とホイールシリンダ62a〜62d側との差圧に応じて開閉制御される。他にも、レギュレータバルブ68a、68bを比較的少ない駆動電流Irvにより少し閉じ、ポンプ72a、72bをオンにした状態で、パターン2と同様、実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの関係に応じてINバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dを開閉する制御であってもよい。これにより、ブレーキペダル54の操作に伴うブレーキ液圧Pbによる制動を基本としつつ、ブレーキアシスト制御によるブレーキ液圧Pbを発生させてブレーキペダル54の操作を補助することが可能となる。
【0067】
自動ブレーキ制御を伴うABS制御(パターン4)では、レギュレータバルブ68a、68bは閉じられる。他にも、レギュレータバルブ68a、68bを比較的大きな駆動電流Irvにより大きく閉じ、ポンプ72a、72bをオンにした状態で、パターン2、3と同様、実際の車輪速度Vwと目標車輪速度Vwtとの関係に応じてINバルブ64a〜64d及びOUTバルブ66a〜66dを開閉する制御であってもよい。従って、パターン3と比較して、パターン4では、ポンプ72a、72bからホイールシリンダ62a〜62dに付加されるブレーキ液圧Pbが大きくなり、より大きな制動力Fbを生じさせることができる。これにより、自動ブレーキ制御により発生させたブレーキ液圧Pbによる制動を行うことが可能となる。
【0068】
(2)ブレーキ機械系16の制御の具体例
(a)ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行する場合
図6は、ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行する場合(上記パターン4)の一例を示すタイムチャートである。図6では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。すなわち、ECU26は、ブレーキ機械系16のバルブモードを増圧モード、減圧モード及び保持モードを切り替えながら、車輪速度Vwを目標車輪速度Vwtに近づける。なお、この際、自動ブレーキが作動しているため、自動ブレーキフラグが立っている(オンになっている)。また、ブレーキペダル54が踏まれていないため、マスタシリンダ60の圧力Pmcは、ゼロのままである。
【0069】
時点t1において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t2において、経過時間T2が期間T1以上になると、ECU26は、EPB22をオンにするとともに、自動ブレーキフラグを下げる(オフにする)。停止制御は、図示しないイグニションスイッチがオフにされるまで又はアクセルペダル52が踏み込まれて車両10が再度走行を開始するまで継続される。
【0070】
(b)ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行する場合
図7は、ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行する場合(上記パターン3)の一例を示すタイムチャートである。図6と同様、図7では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。なお、この際、ブレーキアシストが作動しているため、ブレーキアシストフラグが立っている(オンになっている)。また、アシストの作動に伴って、マスタシリンダ60の圧力Pmcが最大値となっている。
【0071】
時点t11において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t12において、経過時間T2が期間T1以上になると、ECU26は、EPB22をオンにするとともに、ブレーキアシストフラグを下げる(オフにする)。また、ECU26は、ブレーキアシストに伴って最大値としていたマスタシリンダ60の圧力Pmcをゼロまで徐々に低下させる。
【0072】
3.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、緊急ブレーキ(ブレーキアシスト又は自動ブレーキ)が作動して車両10が停止した場合、運転者による駐車操作がないときでも、車両10の移動を規制する。これにより、緊急ブレーキの作動後に運転者が駐車操作を行わずに車両10の外部に出ても、例えば、(坂道の場合)車両10の自重により又は外部からの力により車両10が移動することを防止することが可能となる。
【0073】
本実施形態において、EPB22のEPBモータ92の作動速度Vmは、緊急ブレーキが作動して車両10が停止したときの方が、緊急ブレーキが作動せずに車両10が停止したときよりも大きい。これにより、緊急ブレーキが作動しない通常停車時には、EPBモータ92の騒音等を考慮して作動速度Vmを抑制しているとしても、緊急ブレーキが作動した緊急停車時には作動速度Vmを高くすることで、車両10の移動を素早く規制することが可能となる。
【0074】
B.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0075】
1.車両10
上記実施形態では、車両10は四輪車であったが、これに限られず、例えば、二輪車、トラック、バス等であってもよい。
【0076】
2.相対距離Dr
上記実施形態では、自車10と障害物(先行車)との相対距離Drの判定をレーダ30の出力に基づいて行ったが、これに限られず、例えば、画像センサからの出力を用いて判定してもよい。
【0077】
3.停止制御
(1)停止制御を行う条件
上記実施形態では、停止制御を行う条件の一部として、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキモードの選択が行われたことを設定したが、これに限らない。例えば、ブレーキアシストモードの選択が行われた場合は停止制御を行わず、自動ブレーキモードの選択が行われた場合のみ停止制御を行ってもよい。
【0078】
(2)停止後の車両10の移動を規制する手段及び方法
上記実施形態では、停止後の車両10の移動を規制する手段及び方法として、EPB22を用いたが、これに限らない。例えば、以下に詳述するように、EPB22をオンにする代わりにホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを制御することもできる。或いは、EPB22をオンにすると共に、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcの制御を行ってもよい。
【0079】
(a)自動ブレーキモード作動後の停車時にEPB22の代わりにホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを用いる場合
図8は、ABS制御及び自動ブレーキ制御を実行して(上記パターン4)車両10を停止させた後、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを制御することにより車両10の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【0080】
図6の例と同様、図8では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。なお、この際、自動ブレーキが作動しているため、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回ってから所定期間(時点t21〜t23)を除き、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcは最大値となる。加えて、自動ブレーキフラグが立っている(オンになっている)。また、ブレーキペダル54が操作されていないため、マスタシリンダ60の圧力Pmcは、ゼロのままである。
【0081】
時点t21において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t22において、経過時間T2が期間T1以上になると、ECU26は、自動ブレーキフラグを下げる(オフにする)と共に、ポンプ72a、72b及びポンプモータ74を制御して、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcが、車両10の移動を規制をするのに最低限必要な最低圧力Pwcminとなるようにする。例えば、車両10が停止した状態でホイールシリンダ62a〜62dをさせた状態で、車輪速度Vw又は車輪18の角度を監視しながら圧力Pwcを弱めていき、車輪18が動き出したことを検出したら、その直前の値を最低圧力Pwcminとすることができる。或いは、基準となる路面(例えば、平坦なアスファルト路、又は所定の勾配及び路面摩擦係数μを有する路面)において、車両10を停止させるのに必要な最低圧力Pwcminを事前に求め、記憶部104に記憶しておき、これを用いることができる。
【0082】
また、ECU26は、レギュレータバルブ68a、68bの圧力Prvが、圧力Pwcを最低圧力Pwcminに維持可能な最低圧力Prvminとなるように、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvを下げていく。時点t23において、駆動電流Irvが、最低圧力Prvminに対応する最低駆動電流Irvminとなり、圧力Prvが最低圧力Prvminになると、ECU26は、ポンプ72a、72bをオフにする。
【0083】
この際のレギュレータバルブ68a、68bの作動速度V1は、相対距離Drに応じて設定することができる。すなわち、相対距離Drが短い場合、作動速度V1を高くし、相対距離Drが長い場合、作動速度V1を低くする。作動速度V1は、レギュレータバルブ68a、68bが作動を開始してから最終的な目標開度に到達するまでの時間に対応する。本実施形態では、ブレーキアシストモード及び自動ブレーキ制御を行わないで停車した場合には、レギュレータバルブ68a、68bの消費電力等を考慮して作動速度V1を抑制している。しかしながら、ブレーキアシストモード又は自動ブレーキ制御を実行した後に停車した場合、障害物との接触の可能性を考慮して作動速度V1を高くすることで、車両10の移動を素早く規制する。
【0084】
(b)ブレーキアシストモード作動後の停車時にEPB22の代わりにホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを用いる場合
図9は、ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行して(上記パターン3)車両10を停止させた後、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcを制御することにより車両10の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。
【0085】
図7の例と同様、図9では、ABS制御において、ECU26は、目標車輪速度Vwtを設定すると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtと等しくなるようにブレーキ機械系16を制御する。なお、この際、ブレーキアシストが作動しているため、マスタシリンダ60の圧力Pmcは最大値を取ると共に、車輪速度Vwが目標車輪速度Vwtを上回ってから所定期間を除き、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcは最大値を取る。加えて、ブレーキアシストフラグが立っている(オンになっている)。
【0086】
時点t31において、車体速度Vvがゼロになると、ECU26は、経過時間T2のカウントを開始する。そして、時点t32において、経過時間T2が期間T1が以上になると、ECU26は、ブレーキアシストフラグを下げる(オフにする)と共に、ポンプ72a、72b及びポンプモータ74を制御して、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcが、上記最低圧力Pwcminとなるようにする。また、ECU26は、レギュレータバルブ68a、68bの圧力Prvが、上記最低圧力Prvminとなるように、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvを上げていく。時点t33において、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvが、最低圧力Prvminに対応する最低駆動電流Irvminとなり、圧力Prvが最低圧力Prvminになると、ECU26は、ポンプ72a、72bをオフにする。
【0087】
なお、図8及び図9の制御を組み合わせた場合、ブレーキアシストが作動したときの方が、自動ブレーキが作動したときよりも、レギュレータバルブ68a、68bの作動量Qvを大きくしてもよい。レギュレータバルブ68a、68bにかかるブレーキ液圧Pbは、自動ブレーキが作動したときよりもブレーキアシストが作動したときの方が高い。このため、ブレーキアシストが作動したときの作動量Qvを大きくすることにより、レギュレータバルブ68a、68bにかかるブレーキ液圧Pbが低くなり、ブレーキ液圧Pbの付加によるレギュレータバルブ68a、68bの損耗を回避することが可能となる。また、レギュレータバルブ68a、68bとして電磁弁を用いているため、電磁弁の開閉状態を保つために必要な消費電流(駆動電流Irv)を抑制することが可能となる。
【0088】
(3)停止後に車両10の移動を規制するタイミング
上記実施形態(図6及び図7)並びに上記変形例(図8及び図9)では、車両10の停止から期間T1の経過後に車両10の移動を規制したが、停止後に車両10の移動を規制するタイミングは、これに限らない。例えば、車両10が停止したこと(例えば、車体速度Vvがゼロになったこと)を検出すると即座に車両10の移動を規制することもできる。この際、自車10と障害物との相対距離Drが所定の閾値以下であることを移動規制の条件としてもよい。
【0089】
図10には、車両10の停止直後に車両10の移動を規制する場合の一例を示すタイムチャートである。図10の例では、自車10と障害物との相対距離Drが閾値TH_Dr以下であることを移動規制の条件としている。
【0090】
時点t41までは、ABS制御及びブレーキアシスト制御を実行しながら、車両10を減速させる。時点t41において、車体速度Vvがゼロとなり車両10が停止すると、ECU26は、その時点におけるレーダ30からの相対距離Drが、閾値TH_Dr以下であるか否かを判定する。閾値TH_Drは、例えば、相対距離Drが短すぎるため、車両10の移動を規制する必要性が高い距離(例えば、1センチメートル〜2メートルのいずれかの値)に設定可能である。
【0091】
図10の例では、時点t41における相対距離Drが閾値TH_Dr以下であるため、ECU26は、ホイールシリンダ62a〜62dを用いて車両10の移動を規制する。具体的には、ECU26は、自動ブレーキフラグを下げる(オフにする)と共に、ポンプ72a、72b及びポンプモータ74を制御して、ホイールシリンダ62a〜62dの圧力Pwcが、上記最低圧力Pwcminとなるようにする。また、ECU26は、レギュレータバルブ68a、68bの圧力Prvが、上記最低圧力Prvminとなるように、レギュレータバルブ68a、68bの駆動電流Irvを上げていく。時点t42において、駆動電流Irvが上記最低駆動電流Irvminとなり、圧力Prvが上記最低圧力Prvminになると、ECU26は、ポンプ72a、72bをオフにする。これにより、緊急停車時において特に移動規制をかける必要性が高い場合にのみ、運転者による駐車操作がなくても、車両10の移動を素早く規制することが可能となる。
【0092】
また、図10の例では、相対距離Drが閾値TH_Dr以下であり、且つ相対距離Drが小さいほどレギュレータバルブ68a、68bの作動量Qv及び作動速度V1の少なくとも一方を高くすることができる。これにより、緊急ブレーキが作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じてレギュレータバルブ68a、68bの作動速度V1を大きくすることで、車両10の移動を素早く規制することが可能となり、また、作動量Qvを大きくすることで、車両10の移動をより確実に規制することができる。
【0093】
なお、図10では、車両10の移動を規制する直接的な手段として、ホイールシリンダ62a〜62dを用いたが、これに代えて又はこれと共に、EPB22を作動させることもできる。この場合、停止時の相対距離Drに応じてEPBモータ92の作動速度Vmを変化させることもできる。例えば、相対距離Drが短いほど、作動速度Vmを上げ、相対距離Drが長いほど、作動速度Vmを下げる。これにより、緊急ブレーキが作動しない通常停車時には、EPB22のEPBモータ92の騒音等を考慮してEPBモータ92の作動速度Vmを抑制しているとしても、緊急ブレーキが作動した緊急停車時には障害物との接触の可能性に応じて作動速度Vmを高くすることで、車両10の移動を素早く規制することが可能となる。
【0094】
また、レーダ30が検出した相対距離Drと共に又はこれに替えて、車両10に搭載したバックモニタ(図示せず)により検出した後方の障害物との相対距離を用いることもできる。
【符号の説明】
【0095】
10…車両(自車) 12…制動力制御装置
22…電動パーキングブレーキ(移動規制手段)
38…車体速度センサ(車体速度検出手段)
60…マスタシリンダ
62a〜62d…ホイールシリンダ(移動規制手段)
64a〜64d…INバルブ(減圧手段、第2制御弁)
66a〜66d…OUTバルブ(減圧手段)
68a、68b…レギュレータバルブ(制御弁、第2制御弁)
72a、72b…ポンプ(加圧手段、減圧手段)
74…ポンプモータ(加圧手段、減圧手段)
92…EPBモータ(アクチュエータ)
118…緊急ブレーキ機能(緊急ブレーキ制御手段)
120…ブレーキアシスト機能(緊急ブレーキアシスト手段)
122…自動ブレーキ機能(緊急自動ブレーキ手段)
Dr…相対距離 Pb…ブレーキ液圧
Qv…各バルブの作動量
TH_Dr…閾値(所定値、第2所定値)
TTC…接触余裕時間(接触可能性、接触余裕度)
Vm…EPBモータの作動速度 Vv…車体速度
V1…各バルブの作動速度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、
前記車両周囲の障害物との接触可能性が高い緊急時に通常のブレーキ液圧よりも高いブレーキ液圧を発生させる緊急ブレーキ制御手段と
を備える制動力制御装置であって、
さらに、前記車両の駐車時に前記車両の移動を規制する移動規制手段を備え、
前記移動規制手段は、前記緊急ブレーキ手段が作動して前記車両が停車したと判定したとき、運転者による駐車操作がない場合であっても、前記車両の移動を規制する
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制動力制御装置において、
前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制するためのアクチュエータを備え、
前記アクチュエータの作動速度は、前記緊急ブレーキ制御手段が作動して前記車両が停止したときの方が、前記緊急ブレーキ制御手段が作動せずに前記車両が停止したときよりも大きい
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制動力制御装置において、
前記車体速度がゼロとなったときにおける前記障害物との距離が所定値以下であることを条件として、前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制する
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、
前記緊急ブレーキ制御手段は、
加圧手段により前記ブレーキ液圧を自動的に増加させる緊急自動ブレーキ手段と、
運転者の操作に伴って発生する前記ブレーキ液圧を前記加圧手段により増加させる緊急ブレーキアシスト手段と
を有し、
前記緊急ブレーキアシスト手段は、前記緊急自動ブレーキ手段よりも、前記障害物に対する接触余裕度が大きいときに作動し、
前記移動規制手段は、
前記車両が停車状態を維持させるために設定された所定ブレーキ液圧となるように前記ブレーキ液圧を減少させる減圧手段と、
前記減圧手段が作動した後に前記所定ブレーキ液圧を保持する制御弁と
を備え、
前記緊急ブレーキアシスト手段が作動したときの方が、前記緊急自動ブレーキ手段が作動したときよりも、前記減圧手段の作動量が大きくされる
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、
前記移動規制手段は、電動アクチュエータにより作動する電動パーキングブレーキであり、
前記車両と前記障害物との距離が所定値以下であるとき、前記車両と前記障害物との距離が近いほど、前記電動アクチュエータの作動速度を大きくする
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、
前記駐車制御手段は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に設けられた第2制御弁を開閉制御して、前記ブレーキ液圧を第2所定ブレーキ液圧に保持して前記車両の移動を規制し、
前記車両と前記障害物との距離が第2所定値以下であり、且つ前記車両と前記障害物との距離が小さいほど前記第2制御弁の作動量又は作動速度を高くする
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項1】
車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、
前記車両周囲の障害物との接触可能性が高い緊急時に通常のブレーキ液圧よりも高いブレーキ液圧を発生させる緊急ブレーキ制御手段と
を備える制動力制御装置であって、
さらに、前記車両の駐車時に前記車両の移動を規制する移動規制手段を備え、
前記移動規制手段は、前記緊急ブレーキ手段が作動して前記車両が停車したと判定したとき、運転者による駐車操作がない場合であっても、前記車両の移動を規制する
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制動力制御装置において、
前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制するためのアクチュエータを備え、
前記アクチュエータの作動速度は、前記緊急ブレーキ制御手段が作動して前記車両が停止したときの方が、前記緊急ブレーキ制御手段が作動せずに前記車両が停止したときよりも大きい
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制動力制御装置において、
前記車体速度がゼロとなったときにおける前記障害物との距離が所定値以下であることを条件として、前記移動規制手段は、前記車両の移動を規制する
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、
前記緊急ブレーキ制御手段は、
加圧手段により前記ブレーキ液圧を自動的に増加させる緊急自動ブレーキ手段と、
運転者の操作に伴って発生する前記ブレーキ液圧を前記加圧手段により増加させる緊急ブレーキアシスト手段と
を有し、
前記緊急ブレーキアシスト手段は、前記緊急自動ブレーキ手段よりも、前記障害物に対する接触余裕度が大きいときに作動し、
前記移動規制手段は、
前記車両が停車状態を維持させるために設定された所定ブレーキ液圧となるように前記ブレーキ液圧を減少させる減圧手段と、
前記減圧手段が作動した後に前記所定ブレーキ液圧を保持する制御弁と
を備え、
前記緊急ブレーキアシスト手段が作動したときの方が、前記緊急自動ブレーキ手段が作動したときよりも、前記減圧手段の作動量が大きくされる
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、
前記移動規制手段は、電動アクチュエータにより作動する電動パーキングブレーキであり、
前記車両と前記障害物との距離が所定値以下であるとき、前記車両と前記障害物との距離が近いほど、前記電動アクチュエータの作動速度を大きくする
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、
前記駐車制御手段は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に設けられた第2制御弁を開閉制御して、前記ブレーキ液圧を第2所定ブレーキ液圧に保持して前記車両の移動を規制し、
前記車両と前記障害物との距離が第2所定値以下であり、且つ前記車両と前記障害物との距離が小さいほど前記第2制御弁の作動量又は作動速度を高くする
ことを特徴とする制動力制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−214190(P2012−214190A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82293(P2011−82293)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]