説明

制御性T細胞ならびに同製造および使用方法

制御性T細胞、制御性T細胞の培養物への分化を刺激または増加させる方法、および免疫反応、炎症、または炎症反応を低下または減少させる方法が提供される。方法は、特に、血液細胞もしくはT細胞を、制御性T細胞への分化を刺激または増加させるために十分な量のTGF−βもしくはTGF−β類似体およびレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に、接触させるステップを含む。制御性T細胞の培養物は、例えば、培養物中の全細胞数の30%以上に相当する培養物等、制御性T細胞と関連したマーカーを発現するT細胞を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本研究は、国立衛生研究所助成金番号RO1 AI050265−06からの助成金によって一部支援された。政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本願は、2007年6月13日出願の米国特許出願第60/943,829号、2007年8月13日出願の米国特許出願第60/955,585号、および2008年3月3日出願の米国特許出願第61/033,282号の優先権の利益を主張し、それらは、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本発明は、制御性T細胞、制御性T細胞の培養、ならびに免疫反応、炎症、または炎症反応を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止する方法、特に、抗原、細胞、組織、または臓器に対する免疫反応を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止する方法に関する。本発明はまた、制御性T細胞、樹状細胞、制御性T細胞の培養物、樹状細胞の培養物、ならびに制御性T細胞および樹状細胞(例えば、レチノイン酸を産生する樹状細胞)を産生または増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
導入
ヘルパーT細胞は、明確なサイトカインプロファイルの産生を通して免疫系において重要な機能を果たす。Tヘルパー−1(Th−1)およびTh−2細胞に加えて、IL−17および他のサイトカインによって特徴付けられ、現在TH−17細胞と呼ばれる、極性エフェクターT細胞の第3のサブセットは、いくつかの自己免疫状態の病因と関連する。サイトカイン、形質転換増殖因子−β(TGF−β)は、未処理T細胞を、自己免疫および炎症を阻害することができる制御性T(Treg)細胞に変換する。TGF−βは、Th−1およびTh−2細胞分化のサプレッサーであり、T細胞の、制御性表現型を有するT細胞、いわゆるTreg細胞への変換を駆動する。Th−1およびTh−2細胞の抑制と対照的に、樹状細胞(DC)およびTGF−βによる未処理T細胞の試験管内活性化は、IL−6を含む炎症性サイトカインと共に、TH−17細胞の分化をもたらす。これらの観察は、TGF−βの存在下でのDCによるT細胞のプライミングが、反対の免疫結果をもたらす可能性があることを示す。
【0005】
ビタミンA代謝産物、レチノイン酸(RA)は、Foxp3Treg生成を促進する一方で、TH−17分化を抑制することができる、TGF−βで促進される免疫偏向の主要な調節因子である。RAを生成するためにビタミンAを分解するそれらの能力が独特である粘膜樹状細胞(DC)は、TGF−βの存在下で、脾臓DCよりもはるかに高い頻度でFoxp3T細胞を誘発することができる。反対に、IL−6およびTGF−βの両方の存在下で、脾臓DCが、T細胞を産生する高いレベルのIL−17を誘発した一方で、粘膜DCは、これらの細胞を誘発するには非効率的であった。RA受容体拮抗薬および外因性RAを使用すると、Treg対TH−17細胞を誘発する粘膜DCの分化能力は、それらのRA−産生に依存していた。
【0006】
レチノイン酸の2つの生理学的アイソフォーム(オールトランスおよび9−シス)は、生物学的機能の観点から最も良好に特徴付けられるが、レチノールおよびレチナール(RAL)の両方は、非効率的にではあるが、腸管ホーミング分子を誘発することができると報告されている。RALはまた、TH−17分化を阻害し、同時に、TGF−β媒介性Foxp3誘発を増強することができる。RAと同様に、RALもまた、TH−17−細胞分化に関与する、レチノイン酸オーファン受容体RORg−tを直接的に(無APC系)阻害した。同様ではあるが、RALの機能は、それをRAと区別するいくつかの特性を有するように思われる。DC/T細胞共培養物に添加される時、RALが、MLN DC(MDC)あるいは脾臓DC(SDC)で培養されたCD4細胞からのIL−17 産生を抑制する一方で、RALによるFoxp3の誘発の増加が、主にMDC培養物において観察された。これらの結果は、この系において、Foxp3誘発が、我々が前駆体を添加した時のRA産生の増加に起因した可能性があることを示す。この考えと一致して、RAR拮抗薬LE135の添加は、Foxp3誘発を逆にしたが、IL−17産生は逆にしなかった。
【0007】
RAは、RAR−RARホモ二量体およびRAR−RXRヘテロ二量体の両方と結合することができるが、RALは、RARと結合しない。代わりに、RALは、RXR、および興味深いことに核内受容体PPAR−γ(ペルオキシソーム増殖活性化受容体γに対する)の両方と結合することが示されている。核内受容体のこのファミリーは、免疫系において多くの役割を果たすと考えられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ビタミンA代謝産物、レチノイン酸(RA)は、炎症性TH−17細胞のIL−6で促進された誘発を阻害し、抗炎症性Treg分化を促進することができる、TGF−β依存性免疫反応の主要な調節因子である。したがって、一般的な代謝産物は、炎症性免疫と抗炎症性免疫との間のバランスを調節することができる。
【0009】
本発明に従って、試験管内、生体外、および生体内で御性T細胞への分化を刺激または増加させる方法が提供される。一実施形態では、方法は、血液細胞またはT細胞を、制御性T細胞への分化を刺激または増加させるのに十分な量のTGF−βもしくはTGF−β類似体およびレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。別の実施形態では、方法は、任意選択で、精製、単離、または増殖によって制御性T細胞数が増加することなく、培養物中に存在する全細胞数の約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%超に相当するように、血液細胞またはT細胞を、制御性T細胞数を増加させるのに十分な量のTGF−βもしくはTGF−β類似体およびレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。特定の態様では、T制御性細胞は、マーカー(例えば、Foxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、またはCTLA4)を発現する。さらなる特定の態様では、接触されるT細胞は、未処理T細胞または活性化T細胞を含む。
【0010】
本発明に従って、単離または精製された集団または複数の制御性T細胞が提供され、ここで、制御性T細胞は、制御性T細胞と関連したマーカーを発現する(例えば、Foxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、またはCTLA4)。一実施形態では、制御性T細胞は、未処理、活性化、またはエフェクターT細胞におけるマーカーの発現と比較して、制御性T細胞と関連したマーカー(例えば、CD44)の発現の増加を示す。
【0011】
本発明に従って、制御性T細胞と関連したマーカー(例えば、Foxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、またはCTLA4)を発現する制御性T細胞の培養物(例えば、試験管内および生体外)がさらに提供される。一実施形態では、制御性T細胞は、レチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を用いずに、血液細胞をTGF−βまたはTGF−β類似体と接触させた後の培養物中に存在する制御性T細胞の量を上回る量で培養物中に存在する。別の実施形態では、制御性T細胞は、レチノイン酸受容体作動薬を用いずに、血液細胞をTGF−βまたはTGF−β類似体と接触させた後の培養物中の制御性T細胞の量を上回る量で培養物中に存在する。さらなる実施形態では、制御性T細胞の培養物中で、制御性T細胞は、精製、単離、または増殖によって培養物中の制御性T細胞数が増加することなく、培養物中に存在する全細胞数の約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%超に相当する。特定の態様では、制御性T細胞の少なくとも一部は、対象への導入または投与後の一定期間(例えば、少なくとも約8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間以上、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30日間以上、または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30週間以上)、制御性T細胞と関連したマーカー(例えば、Foxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、またはCTLA4)を発現するか、制御性T細胞と関連した機能を有するか、分化状態を維持するか、または生存するか、もしくは増殖する。
【0012】
本発明に従って、試験管内、生体外、および生体内で制御性T細胞を産生するか、または制御性T細胞数を増加させる方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、血液細胞またはT細胞を、制御性T細胞を産生するか、または制御性T細胞数を増加させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップ、および抗原(例えば、自己抗原)または抗CD3抗体に血液細胞またはT細胞を接触させるステップを含む。別の実施形態では、方法は、血液細胞またはT細胞を、制御性T細胞を産生するか、または制御性T細胞数を増加させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。
【0013】
本発明に従って、活性化またはエフェクターT細胞への分化を阻害または減少させる方法、およびTH−17+エフェクター細胞数を減少させる方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、T細胞を、活性化またはエフェクターT細胞への分化を阻害または減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。一実施形態では、方法は、TH−17+エフェクター細胞を、TH−17+エフェクター細胞数を減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。
【0014】
本発明に従って、試験管内、生体外、および生体内でレチノイン酸を産生する樹状細胞を産生する方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、樹状細胞を、接触した樹状細胞によるレチノイン酸の産生を増加させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。特定の態様では、樹状細胞には、脾臓樹状細胞、粘膜樹状細胞、血液、末梢血液細胞、骨髄単球由来樹状細胞、または誘導性樹状細胞(例えば、CD34+前駆細胞派生樹状細胞)、CD8−樹状細胞、もしくはCD4−/CD8−樹状細胞が含まれる。
【0015】
本発明に従って、樹状細胞の培養物(例えば、試験管内および生体外)がさらに提供される。一実施形態では、樹状細胞は、制御性樹状細胞への分化を刺激するかまたは増加させる、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬で処理されている。別の実施形態では、樹状細胞は、制御性樹状細胞への分化を刺激するかまたは増加させる、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬、および抗原で処理されている。特定の態様では、樹状細胞には、脾臓樹状細胞、粘膜樹状細胞、血液、末梢血液細胞、骨髄単球由来樹状細胞、または誘導性樹状細胞(例えば、CD34+前駆細胞派生樹状細胞)、CD8−樹状細胞、もしくはCD4−/CD8−樹状細胞が含まれる。
【0016】
本発明に従って、医薬製剤およびキットがさらに提供される。種々の実施形態では、医薬製剤には、薬学的または生物学的に許容される担体または賦形剤における制御性T細胞、単離および精製された制御性T細胞、集団または複数の制御性T細胞、制御性T細胞の培養物、樹状細胞、ならびにレチノイン酸を産生する樹状細胞が含まれる。種々の実施形態では、キットには、制御性T細胞、単離および精製された制御性T細胞、集団または複数の制御性T細胞、および制御性T細胞の培養物が含まれる。
【0017】
本発明に従って、制御性T細胞または樹状細胞(生体外および生体内)を必要とする対象を治療する方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、制御性T細胞、単離および精製された制御性T細胞、集団または複数の制御性T細胞、制御性T細胞の培養物、樹状細胞、またはレチノイン酸を産生する樹状細胞を対象に投与するステップを含む。特定の態様では、細胞は、同一または異なる対象の細胞から採取または抽出されるか、あるいは、同一または異なる対象から採取または抽出された細胞から産生される。さらなる特定の態様では、対象は、望ましくない、異常な、または病的な(急性または慢性)免疫反応(例えば、適応免疫反応)、炎症反応、炎症、および自己免疫疾患を有しているか、またはその危険性があるか、あるいは移植もしくは移植片拒絶反応、または移植片対宿主病を有しているか、またはその危険性がある。
【0018】
本発明に従って、対象における急性または慢性のいずれかの免疫反応(例えば、適応免疫反応)、炎症、または炎症反応を低下または減少させる方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、対象における免疫反応、炎症、または炎症反応を低下または減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を対象に投与するステップを含む。
【0019】
本発明に従って、対象における抗原(自己抗原または非自己抗原)、細胞、組織、または臓器に対する免疫反応を低下または抑制する方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、対象における抗原(自己抗原または非自己抗原)、細胞、組織、または臓器に対する免疫反応を低下または抑制する量の制御性T細胞、制御性T細胞の培養物、樹状細胞、樹状細胞の培養物を対象に投与するステップを含む。
【0020】
本発明に従って、試験管内、生体外、および生体内で、細胞内のIL−17発現または産生を低下または抑制する方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、細胞を、細胞内のIL−17発現または産生を低下または抑制する量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させる方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1A〜1E:A)OT−II TCR遺伝子導入マウスからの開口型TCR Vβ5CD4脾臓細胞のIL−17およびIFN−γ染色を示す。CD4CD25細胞は、OVApおよびMLNまたは脾臓(SPL)DCで、ならびに示された場合は、外因性サイトカインおよびLE135またはオールトランス−レチノイン酸(RA)で刺激された。B)1Aからの、および9−シス−レチノイン酸(9−シス)での培養上清のIL−17 ELISAを示す(平均±SD)。C)開口型TCRβCD8細胞の細胞内IL−17およびIFN−γ染色を示す。全CD8脾臓T細胞は、α−CD3εおよび脾臓APC、ならびに示されたサイトカインおよびRAで刺激された。D)α−CD3εおよびα−CD28で刺激されたCD4 T細胞におけるPCRによって数回分析されたRORγt mRNAを示す。示された場合、サイトカインを含むIL−17(IL−17条件)(黒)、またはこれらのサイトカイン+RA(白)が含まれた(平均±SD)。4つの研究からの代表的なデータ。E)リステリア菌の経口感染の5日後の小腸固有層からのCD4T細胞の細胞内IL−17およびIFN−γ染色を示す。データは1群当たり3〜4匹のマウスを代表する。
【図2】図2A〜2D:A)可溶性α−CD3、照射脾臓細胞、ならびに示されるように添加されたサイトカインおよびRAで刺激された、多クローン性CD4CD25脾臓T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色を示す。B)関連OVAp、ソート脾臓CD11cDC、ならびに示されるように添加されたサイトカインおよび9−シスRA(100nM)で刺激され、TCR Vβ5CD4細胞に開口したOT−II TCRCD4CD25脾臓T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色を示す。C)関連OVApおよび脾臓CD11cDCで、ならびに示されたサイトカインを用いて、もしくは用いずに(なし)、RAを用いて、もしくは用いずに刺激されたOT−I TCRCD8T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色を示す。D)抗CD3/CD28ビーズで、ならびに外因性サイトカインを用いずに(なし)、または示されたサイトカイン(IL−17条件:TGF−β、IL−6、IL−1β、TNF−α)で、およびRAを用いて、もしくは用いずに刺激され、TCRβCD4細胞に開口した多クローン性CD4CD25脾臓T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色を示す。3つの研究からの代表的なデータ。
【図3】図3A〜3E:A)OT−II TCR遺伝子導入マウスからの開口型TCR Vβ5CD4細胞のFoxp3および表面CD103に対する細胞内染色を示す。CD4CD25T細胞は、OVApおよびMLNまたはSPL DC、ならびに示されるように、TGF−β1およびLE135またはRAで刺激された。B)DCの代わりに脾臓APCであることを除いて、上記のように刺激されたOT−II TCR CD4CD25T細胞の細胞内Foxp3およびCTLA−4染色を示す。C)OT−I TCR遺伝子導入マウスからのCD8T細胞が、OVApおよび脾臓DCで、ならびにTGF−β1およびRAで刺激されたことを示す。Foxp3に対する開口型TCRβ細胞の細胞内染色が示される。D)CD103、αβ、およびCCR9に対する開口型TCRβCD4細胞の細胞表面染色を示す。CD4CD25T細胞は、可溶性α−CD3εおよび脾臓APC、さらに、TGF−β1、RA、またはTGF−β1およびRAで刺激された。イソタイプ対照は、単灰色ヒストグラムで示される。3つの研究からの代表的なデータ。E)リステリア菌の経口感染の5日後の小腸固有層からのCD4TCRβリンパ球(左のパネル)、または未処理対照(右のパネル)におけるFoxp3CD4細胞の割合を示す。*P<0.05(Student T検定)。
【図4】図4A〜4D:A)種々の組織から単離されたTCRβ+開口型T細胞によるFoxp3およびCD4発現の細胞内染色を示す。sLPLおよびlLPLは、小腸および大腸固有層リンパ球をそれぞれ示し、PLNは、末梢リンパ節を示す。数値は、CD4+T細胞集団におけるFoxp3T細胞の割合の平均±SEMを表す。B)開口型TCRβCD4T細胞のCD25またはCD103に対する細胞内Foxp3染色および表面染色を示す。下のパネルにおいて、数値は、Foxp3集団におけるCD103細胞の割合を示す。5匹のマウスが各研究のために分析された。C)3日間、関連OVApおよび照射脾臓APCで、ならびに示されたサイトカインを用いずに(なし)、および用いて、およびRAを用いずに、および用いて刺激されたOT−I TCRCD8T細胞のFoxp3およびCTLA−4に対する細胞内染色、ならびにCD25に対する表面染色を示す。比較のために、同一条件下で刺激されたOT−II CD4CD25細胞も示される。D)ヒストグラムは、TCRβCD8細胞に開口し、3、4、および5日間(C)に記載される条件下で刺激されたOT−I CD8細胞の染色を表す。単灰色−なし、灰色線−RA、点線−TGF−β、黒線−TGF−b+RA。2つの研究からの代表的なデータ。
【図5】図5A〜5D:A)関連OVAp、ソート脾臓CD11cDCで、ならびに外因性サイトカインを用いずに(なし)、または示されたサイトカインを用いて、およびRAまたは9−シスRA(両方100nMで)を用いずに、および用いて刺激されたOT−II TCRCD4CD25脾臓T細胞のFoxp3およびCD103に対する細胞内染色を示す。TCR Vβ5+CD4+細胞に開口する。4つの研究からの代表的なデータ。B)可溶性α−CD3ε、照射脾臓細胞で、および外因性サイトカインを用いずに(なし)、またはTGF−β2もしくはTGF−β3で、およびRAを用いずに、または用いて刺激された未処理多クローン性CD4CD25脾臓T細胞のFoxp3およびCD4染色の細胞内染色を示す。2つの研究からの代表的なデータ。C)リステリア菌の経口感染の5日後のマウスの脾臓から単離された全CD4TCRβT細胞におけるFoxp3CD4リンパ球の割合を示す。各群は、賦形剤、RA、またはLE540の2回の腹腔内注射(0および2日目)を受けた。賦形剤、RA、またはLE540での2週間の強制投与を受けた未処理マウスのデータが右側に示される(平均±SD)。D)5Aに記載されるものと同一の条件下で刺激されたOT−II CD4 T細胞のFoxp3に対する細胞内染色を示す。2つの研究の代表的なデータ。
【図6】図6A〜6E:A)α−CD3ε単体(なし)またはTGF−β1およびRAで、試験管内で刺激された2.5x10個のCD4T細胞と5x10個のCD4CD45RBhi細胞の共移植の6〜7週間後のRAG−1-/-マウスの遠位結腸のヘマトキシリンおよびエオシン染色を示す。原倍率40X。各群における4匹のマウスからの代表的なデータ。B)添加なし(四角)、TGF−β1(三角)、またはTGF−β1およびRA(菱形)を用いて、2.5x10個のα−CD3εで刺激されたCD4T細胞と5x10個のCD4CD45RBhi細胞の移植後のRAG−1-/-マウスの体重を示す。1群当たり4匹の動物の平均±SD重量が示される。データは3つの研究を代表する。C)6Bにおける群の組織学的スコアを示す。D)示されたサイトカインを用いて、可溶性α−CD3εおよび脾臓APCで初期に刺激された未処理TCRβCD4のFoxp3細胞内染色を示す。細胞は、IL−2を用いて2日間そのまま置かれ、分析前に外因性サイトカインの非存在下で再刺激された。E)6Dに記載されるように、しかしTGF−βおよびIL−6の存在下で初期に刺激され、そのまま置かれ、示された条件下で再刺激された未処理CD4T細胞のIL−17に対する細胞内染色を示す。開口型TCRβCD4細胞におけるIL−17細胞の割合が図示される。3つの研究からの代表的なデータ。
【図7】図7:α−CD3ε単体またはTGF−β1またはTGF−β1およびRAと合わせて、試験管内で刺激された2.5x105個のCD4T細胞(Ly5.1)と合わせた5x105個のLy5.2+(Ly5.1)CD4CD45RBhi細胞の移植の6〜7週間後の、RAG−/−レシピエントマウスから単離された大腸からのIELのIL−17およびIFN−γに対する細胞内染色を示す。CD4リンパ球に開口する。1群当たり3〜4匹のマウスを用いた2つの研究からの代表的なデータ。
【図8】図8A〜8E:A)CFSE標識未処理CD4T細胞が、α−CD3ε、脾臓APC、示されたサイトカイン、および示されるように、RAで刺激されたことを示す。IL−17分化を駆動するために、TNF−α、IL−1−β、TGF−β、およびIL−6を使用した。Foxp3およびIL−17に対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色が図示される。B)示された条件下で、可溶性α−CD3εおよび脾臓APCで刺激されたCD8T細胞のFoxp3およびIL−17に対する細胞内染色を示す。C)およびD)B7.1/2−/−IL−2+/+またはB7.1/2−/−IL−2−/−マウスからの未処理CD4T細胞のCD103(C)、ならびに細胞内IL−17およびIFN−γ(D)に対するFoxp3および表面染色に対する細胞内染色を示す。細胞は、可溶性α−CD3ε、脾臓APC、ならびに示されたサイトカイン、RA、および/またはIL−2に対する遮断抗体(20μg/ml)で刺激され、TCRβCD4細胞に開口した。E)8Cおよび8Dにおける培養上清におけるIL−17に対するELISAを示す(平均±SD)。2つの研究の代表的なデータ。
【図9】図9A〜9C:A)可溶性α−CD3ε、照射脾臓APC、およびTGF−β(5ng/ml)で、またはそれらと合わせて示された濃度のIL−6およびRAで刺激され、TCRβCD4細胞に開口した多クローン性CD4CD25T細胞のFoxp3およびIL−17に対する細胞内染色を示す。B)可溶性α−CD3ε、照射脾臓APCで、および示されたサイトカインおよび/またはRA(100nM)および/または遮断抗IL−2抗体(20μg/ml)を用いずに(なし)、または用いて刺激されたC57BL/6マウスからの全CD8T細胞のIL−17およびIFN−γに対する細胞内染色を示す。C)示された条件を有する9Bに記載されるように設定された培養上清におけるIL−17に対するELISAを示す。2つの研究の代表的なデータ。
【図10】図10A〜10B:ソート全脾臓CD11c+DC(A)、またはCD4、CD8、もしくは形質細胞様DCを発現する小集団においてソートされたCD11c+DC(B)による、RALDH酵素アイソフォーム1、2、および3(A)、RALDH2のみ(B)に対する、qPCRによって測定されるようなmRNAの発現を示す。
【図11】図11:レチナールが、Treg分化を増強することを示す。
【図12】図12:レチナールが、TH−17分化のサプレッサーであることを示す。
【図13】図13:シトラールによるRALDH活性の阻害が、TH−17分化に対するRAL効果を逆にしないことを示す。
【図14】図14:示された条件下でのIL−17レベルを示す。
【図15】図15:示された条件下でのFoxpおよびRORγの相対的発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、特に、試験管内、生体外、または生体内で、制御性T細胞への分化を活性化する、刺激する、増加させる、誘発する、増強する、または促進する方法を提供する。一実施形態では、方法は、血液細胞またはT細胞を、制御性T細胞への分化を活性化する、刺激する、増加させる、誘発する、増強する、または促進するのに十分な量のTGF−β(またはTGF−βアイソフォーム、誘導体、もしくは類似体)およびレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させる方法を含む。
【0023】
本発明はまた、特に、制御性T細胞を産生するか、または制御性T細胞数を増加させる方法を提供する。一実施形態では、方法は、血液細胞またはT細胞を、制御性T細胞を産生するか、または制御性T細胞数を増加させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。特定の態様では、細胞は、抗原(例えば、自己抗原)または抗CD3抗体に接触させられる。さらなる特定の態様では、細胞は、IL−2にさらに接触させられるか、IL−2に接触させられない。
【0024】
抗原の非存在下または存在下で産生される制御性T細胞は、対象に抗原に対する寛容性を提供するために使用することができる。したがって、自己抗原等の抗原に対する望ましくない、または異常な免疫反応を起こしているか、またはその危険性がある対象は、対象に抗原寛容性を提供するために、制御性T細胞を投与することができる。
【0025】
制御性T細胞(「Treg」と略され、またサプレッサーT細胞としても知られる)は、免疫ホメオスタシスおよび自己抗原に対する寛容性を維持するために、免疫系のある特定の 炎症性成分の活性化を抑制する。制御性T細胞内の遺伝子の欠損は、種々の自己免疫疾患をもたらす。
【0026】
制御性T細胞は、ある特定のマーカーのより多いまたは少ない発現によって特徴付けることができる。例えば、制御性T細胞は、他のT細胞型(例えば、未処理、活性化、またはエフェクターT細胞)と比較して、ある特定のマーカー(例えば、CD45)をより少なく発現する一方で、ある特定のマーカー(例えば、Foxp3(フォークヘッドボックスp3)、CD4、CD25、CD44、CD103、CCR9、α4β7、IL−2受容体、CTLA−4(細胞毒性T−リンパ球関連分子−4)、CD8等)を発現する。
【0027】
T細胞は、例えば、未処理、活性化エフェクター(細胞毒性、ヘルパー)、または記憶T細胞、およびNK T細胞をさらに含む。未処理、活性化、およびエフェクター(細胞毒性、ヘルパー)、または記憶T細胞およびNK T細胞は、ある特定の細胞マーカーのより多いまたは少ない発現によって特徴付けることができる。例えば、活性化エフェクターT細胞は、Foxp3を検出可能な程度に発現しない。
【0028】
T細胞はまた、混合集団または複数の細胞、あるいはT細胞を含む細胞のある特定のサブタイプをその中で豊富にする細胞を含む。したがって、T細胞は、1つ以上の異なるT細胞型(例えば、制御性、未処理、活性化エフェクター(細胞毒性、ヘルパー)、記憶T細胞、NK細胞等)、B細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、赤血球等を含むことができる。
【0029】
未処理T細胞または活性化エフェクターT細胞は、試験管内、生体外、または生体内でのレチノイン酸受容体作動薬との接触、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬との接触によって、制御性T細胞に変換することができる。したがって、本発明の方法は、活性化またはエフェクターT細胞(例えば、TH−17+細胞)を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止するステップ、ならびに試験管内、生体外、および生体内で活性化またはエフェクターT細胞(例えば、TH−17+細胞)数を減少させる、または低下させるステップを含む。
【0030】
本発明に従って、特に、活性化またはエフェクターT細胞への分化を阻害または減少させる方法、エフェクターT細胞(例えば、TH−17+細胞)数を低下させる方法がさらに提供される。一実施形態では、方法は、T細胞を、活性化またはエフェクターT細胞への分化を阻害または減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。別の実施形態では、方法は、エフェクターT細胞(例えば、TH−17+細胞)を、エフェクターT細胞(例えば、TH−17+細胞)数を低下させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。さらなる特定の態様では、細胞は、IL−2にさらに接触させられるか、IL−2に接触させられない。
【0031】
TGF−β、ならびにTGF−βアイソフォーム、誘導体、および類似体は、本発明に従って有用である。TGF−βアイソフォームの限定されない例には、例えば、TGF−β2、TGF−β1,2、TGF−β3、TGF−β2,3、TGF−β4、およびTGF−β5が含まれる。TGF−β誘導体の限定されない例は、例えば。TGF−β類似体の限定されない例は、例えば。さらなるTGF−βアイソフォーム、誘導体、および類似体は、当業者には既知であろう。
【0032】
TGFβ受容体は、TGF−β受容体I(53kDa)およびTGF−β受容体II(70/80kDa)を含む。したがって、TGF−βは、TGF−β受容体作動薬と呼ばれる、TGF−β受容体と結合し、TGF−βと同様の作動薬活性を有する分子で置換することができる。
【0033】
「調節する」という用語は、例えば、活性または発現を刺激する、増加させる、誘発する、増強する、もしくは促進するための、または活性、機能、もしくは発現を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止するための、活性、機能、または発現の任意の変化を意味する。
【0034】
作動薬とは、試験管内、生体外、または生体内で活性または発現を刺激する、増加させる、誘発する、増強する、もしくは促進するものをいう。拮抗薬は、試験管内、生体外、または生体内で、活性、機能、または発現を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止するものをいう。
【0035】
レチノイン酸受容体作動薬は、試験管内、生体外、または生体内で、レチノイン酸受容体の活性または機能を活性化する、刺激する、誘発する、増強する、または促進する任意の分子を含む。組成物および方法に適用できるレチノイン酸受容体作動薬の限定されない例には、ビタミンA、ならびにビタミンA誘導体、類似体、および代謝産物が含まれる。ビタミンA代謝産物の限定されない例には、レチノイン酸、ならびにレチノイン酸誘導体、類似体、および異性体が含まれる。レチノイン酸受容体誘導体の限定されない例には、フェンレチニドおよびレチンアルデヒド等のエステルおよびアミドが含まれる。レチノイン酸受容体類似体の限定されない例には、9−シス−レチノイン酸、13−シス−レチノイン酸、およびオールトランス−レチノイン酸が含まれる。レチノイン酸受容体異性体の限定されない例には、アダパレンおよびタザロテン等のアロチノイドが含まれる。
【0036】
レチノイドX受容体(RXR)およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬は、試験管内、生体外、または生体内で、レチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)の活性または機能を活性化する、刺激する、誘発する、増強する、増加させる、または促進する任意の分子を含む。組成物および方法に適合できるレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の限定されない例は、レチナール、ならびにレチナール誘導体、立体異性体、類似体、および代謝産物である。レチナール誘導体、立体異性体、類似体、および代謝産物の限定されない例は、オールトランス、13−シス、11−シス、9−シス、7−シス、11,13−シス、9,13−シス−ビタミンAアルデヒド、ならびに水和物、ヘミアセタール、およびアセタール体である。レチナール誘導体の限定されない例には、立体異性体、類似体、および代謝産物、例えば、レチナール水和物、レチナールメチルヘミアセタール、レチナールエチルヘミアセタール、レチナールプロピルヘミアセタール、レチナールイソプロピルヘミアセタール、レチナールブチルヘミアセタール、レチナールペンチルヘミアセタール、レチナールオクチルヘミアセタール、レチナールベンジルヘミアセタール、レチナールジメチルアセタール、レチナールジエチルアセタール、レチナールジプロピルアセタール、レチナールジイソプロピルアセタール、レチナールジブチルアセタール、レチナールジペンチルアセタール、レチナールジオクチルアセタール、レチナールジベンジルアセタール、レチナールプロピレングリコールヘミアセタールもしくはアセタール、レチナール1,2−O−イソプロピリデングリセリルヘミアセタールもしくはアセタール、レチナール3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールヘミアセタールもしくはアセタール、レチナールフィチルヘミアセタール、レチナールジフィチルアセタール、レチナールドデシルヘミアセタール、およびレチナールジドデシルアセタール等が含まれる。レチナール誘導体のさらなる限定されない例は、5,6−ジオキソ−5,6−セコ−レチナール、5,6−ジヒドロ−5,6−エポキシ−レチナール、および4−オキソレチナールである。
【0037】
「接触する」または「接触」という用語は、1つの物質(例えば、血液細胞またはT細胞または樹状細胞)ともう1つの物質(例えば、TGF−β、レチノイン酸受容体作動薬、レチノイドX受容体(RXR)作動薬、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬)との間の直接的物理的接触もしくは相互作用、または間接的接触もしくは相互作用を意味する。間接的接触または相互作用の一実施例は、中間物との結合であり、それは次に、参照された物質と結合する。したがって、例えば、TGF−βまたはレチノイン酸は、次に細胞(例えば、TGF−βまたはレチノイン酸受容体作動薬を介して)と接触または相互作用する物質と接触または相互作用(例えば、結合)する。したがって、血液細胞またはT細胞と接触する分子は、細胞と物理的に接触または相互作用する場合もあれば、しない場合もあるが、次に細胞と接触または相互作用する中間分子と結合する場合がある。
【0038】
血液細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、全血、または血液細胞内に1つ以上の細胞型を含む細胞のサブセットもしくは集団を含む。サブセットは、例えば、リンパ球(例えば、T細胞、ナチュラルキラー、またはNK細胞)、および単球(例えば、マクロファージ、樹状細胞)を含む。
【0039】
血液細胞は、哺乳類細胞等の動物細胞であってもよい。哺乳類細胞には、霊長類細胞(例えば、ヒト、類人猿、テナガザル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカク等)、飼育動物細胞(イヌおよびネコ)、家畜動物細胞(ニワトリ、アヒル、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、ならびに実験動物細胞(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)が含まれる。
【0040】
血液細胞およびT細胞は、対象から直接採取されるか、または例えば、対象から採取された親細胞の1つ以上の細胞倍加からの子孫細胞等、対象から採取された細胞から抽出されてもよい。したがって、例えば、血液またはT細胞は、保存または冷凍された細胞から抽出されても、または細胞の培養物から抽出されてもよい。対象からの血液細胞またはT細胞は、発明の方法に従って処理することができ、必要に応じてさらに操作、増殖、または保存(例えば、冷凍)することができる。処理された細胞および細胞培養物は、例えば、本明細書に記載されるような処理方法を達成するために、同一対象(自己移植)または異なる対象(同種からの対象、すなわち、同種移植、または異種、すなわち異種移植等)に任意選択で再導入し戻すことができる。
【0041】
本発明はまた、特に、T細胞の試験管内および生体外培養物を提供する。一実施形態では、制御性T細胞と関連したマーカー(例えば、Foxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、CTLA4等のうちの1つ以上)を発現する制御性T細胞の培養物が提供される。別の実施形態では、制御性T細胞の培養物中で、制御性T細胞は、培養物中に存在する全細胞数の約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%超に相当する。特定の態様では、制御性T細胞は、レチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を用いずに(すなわち、外因性の非存在下で)血液細胞のTGF−βとの接触後の培養物中の制御性T細胞の量を上回る量で培養物中に存在する。別の特定の態様では、制御性T細胞は、レチノイン酸受容体作動薬を用いずに、血液細胞のTGF−βとの接触後の培養物中の制御性T細胞の量を上回る量で培養物中に存在する。さらなる特定の態様では、制御性T細胞の培養物中で、制御性T細胞は、精製、単離、または増殖によって培養物中の制御性T細胞数が増加することなく、培養物中に存在する全細胞数の約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%超に相当する。さらなる特定の態様では、制御性T細胞の培養物中で、制御性T細胞は、未処理または活性化T細胞の分化(例えば、エフェクターTヘルパー細胞の制御性T細胞への変換)によって制御性T細胞数を増加させることによって、培養物中に存在する全細胞数の約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%超に相当する。そのような細胞は、本発明の方法に従って産生することができる。
【0042】
T細胞の試験管内および生体外培養物は、制御性T細胞の少なくとも一部が、ある一定の期間、または対象への導入または投与後に生体内で、分化状態を維持するか、または生存するか、もしくは増殖する、T細胞を含む。T細胞の試験管内および生体外培養物はまた、制御性T細胞の少なくとも一部が、ある一定の期間、または対象への導入または投与後に生体内で、制御性T細胞と関連したマーカー(例えば、Foxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、CTLA4等)を発現するか、生存するか、もしくは増殖する、T細胞を含む。T細胞の試験管内および生体外培養物は、制御性T細胞の少なくとも一部が、ある一定の期間、または生体内での対象への導入または投与後に、制御性T細胞と関連した機能を有する(例えば、免疫反応、炎症、または炎症反応、特定の組織または臓器等に対する向性を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止する)、T細胞をさらに含む。特定の態様では、T細胞の試験管内または生体外培養物は、少なくとも約8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間以上、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30日以上、もしくは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30週間以上にわたって、または対象への導入または投与後に生体内で少なくとも約8時間、12,時間、16時間、24時間、48時間、72時間以上、もしくは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30日以上、もしくは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30週間以上にわたって、分化状態を維持するか、制御性T細胞と関連したマーカーを発現するか、または制御性T細胞と関連した機能を有するT細胞の少なくとも一部を含む。
【0043】
そのような制御性T細胞の培養物は、望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止することができる。したがって、種々の実施形態では、制御性T細胞は、特に、そのような制御性T細胞の非存在下と比べて、ある一定の期間(例えば、8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30日以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30週間以上)、対象における免疫反応、炎症、または炎症反応の、増加した、または上回る、阻害、低下、または抑制を提供する。さらなる種々の実施形態では、制御性T細胞はまた、特に、レチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の非存在下でのTGF−βとの血液細胞の接触によって産生される制御性T細胞と比べて、対象への導入または投与後、ある一定の期間(例えば、8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30日以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30週間以上)、上回る制御性T細胞機能、またはレチノイン酸受容体作動薬の非存在下でのTGF−βとの血液細胞の接触によって産生される制御性T細胞と比べて、対象への導入または投与後、ある一定の期間(例えば、8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30日以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30週間以上)、上回る制御性T細胞機能を提供することができる。
【0044】
本発明は、特に、樹状細胞の培養物をさらに提供する。一実施形態では、樹状細胞の培養物(例えば、CD8−またはCD4−/CD8−)は、制御性樹状細胞への分化を刺激または増加させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬で処理される。別の実施形態では、樹状細胞の培養物(例えば、CD8−またはCD4−/CD8−)は、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬、および抗原で処理される。特定の態様では、樹状細胞の培養物は、さらに接触されるか、または抗原で処理される。
【0045】
本発明は、特に、レチノイン酸を産生する樹状細胞を産生する方法をさらに提供する。一実施形態では、方法は、樹状細胞を、接触している樹状細胞によってレチノイン酸の産生が増加する量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。
【0046】
樹状細胞には、脾臓樹状細胞、粘膜樹状細胞、血液、末梢血液細胞、骨髄樹状細胞、単球由来樹状細胞、または例えば、CD34+前駆細胞派生樹状細胞を含む、誘導性樹状細胞が含まれる。樹状細胞には、CD8−樹状細胞およびCD4−/CD8−樹状細胞が含まれる。接触した樹状細胞は、外因性レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬と接触していない樹状細胞と比較して、増加した、または刺激されたレチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ(RALDH2)の発現を示し得る。
【0047】
樹状細胞は、対象から採取するか、または例えば、対象から採取された親細胞の1つ以上の細胞倍加の子孫細胞等、対象から採取された細胞から抽出することができる。したがって、例えば、樹状細胞は、保存または冷凍された細胞からであってもよく、または細胞の培養物から抽出されてもよい。樹状細胞は、誘導多能性幹細胞(iPS)細胞(例えば、Yamanaka et al., WO 2007/069666)から誘導することができる。本発明に従って処理された樹状細胞は、必要に応じてさらに操作、増殖、または保存(例えば、冷凍)することができる。処理された細胞および細胞培養物は、例えば、本明細書に記載されるような処理方法を達成するために、同一対象(自己移植)または異なる対象(同種からの対象、すなわち、同種移植、または異種、すなわち異種移植等)に任意選択で再導入し戻すことができる。
【0048】
ここで使用される接触および処理は、溶液中、固相内、培養物中、試験管内、生体外、細胞、臓器、または組織内、および生体内での接触および処理を含む。生体内での接触および処理は、投与(administering)、投与(administration)、または送達と呼ぶことができる。したがって、方法の実施形態は、試験管内(溶液中、固相内、または培養物中)、生体外、および生体内での接触、処理、投与、および送達の方法を含む。
【0049】
方法は、特に、例えば、T細胞増殖、分化、もしくは発生、またはT細胞機能もしくは活性を調節することができる。本発明に従って調節することができるT細胞機能および活性には、例えば、T細胞の細胞毒性、特定の組織または臓器に対するT細胞向性、T細胞サイトカイン、ケモカインもしくはマーカー発現もしくは分泌、またはT細胞サイトカインもしくはケモカイン受容体発現もしくは分泌が含まれる。
【0050】
例えば、処理方法を含む、方法の実施形態は、生体外または生体内での制御性T細胞、TGF−β(またはTGF−βアイソフォーム、誘導体、もしくは類似体)、レチノイン酸受容体作動薬、レチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬、または樹状細胞の投与またはそれらへの接触による処理に潜在的に適している、任意の生理学的条件、疾患、病気、疾病、およびそれらの症状または病状の処理に適用できる。したがって、方法の実施形態は、概して、制御性T細胞、TGF−β、レチノイン酸受容体作動薬、レチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を必要とするか、またはそれらから恩恵を受け得る対象、および望ましくない、および異常な免疫反応(例えば、急性または慢性炎症、炎症反応、および自己免疫疾患)等、特定の生理学的条件、疾患、病気、疾病、ならびにそれらの症状および病状を有する対象の処理を含む。
【0051】
したがって、本発明は、特に、制御性T細胞または制御性T細胞の培養物に反応し得る、T制御性細胞分化もしくは産生、樹状細胞の培養、樹状細胞分化もしくは産生の増加、刺激、誘発、増強、または促進に反応し得る、または生体外または生体内で、TGF−β(またはTGF−βアイソフォーム、誘導体、もしくは類似体)、レチノイン酸受容体作動薬、レチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に反応し得る、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状を治療するための組成物および方法をさらに提供する。一実施形態では、方法は、対象を治療するのに十分な量のTGF−β(またはTGF−βアイソフォーム、誘導体、もしくは類似体)およびレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を投与するステップを含む。別の実施形態では、方法は、対象を治療するのに十分な量の制御性T細胞を投与するステップを含む。さらなる実施形態では、方法は、対象を治療するのに十分な量の樹状細胞を投与するステップを含む。
【0052】
方法の実施形態は、生理学的条件、疾患、病気、および疾病によって引き起こされる、またはそれらと関連した生理学的条件、疾患、病気、疾病、および症状または病状を治療するステップを含む。特定の実施形態では、方法は、例えば、制御性T細胞、樹状細胞、TGF−β(またはTGF−βアイソフォーム、類似体、もしくは誘導体)、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子受容体γ(PPAR−γ)作動薬を投与するか、または生体外または生体内でそれらに接触させるステップを含む。したがって、例えば、制御性T細胞、樹状細胞、TGF−β(またはTGF−βアイソフォーム、類似体、もしくは誘導体)、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子受容体γ(PPAR−γ)作動薬を投与するか、またはそれらに接触させることによって対象を治療するステップもまた含まれる。
【0053】
「治療」という用語は、対象への接触または投与を指す。治療に関連して使用される「治療的(therapeutic)」という用語は、治療が、生理学的条件、疾患、病気、または疾病を有しているかまたはその危険性がある、あるいは、有益な効果が提供されることが望ましい生理学的条件、疾患、病気、または疾病と関連した、またはそれらによって引き起こされる1つ以上の症状または病状を示す対象に対して行われることを意味する。したがって、治療的処置方法は、客観的または主観的(自覚)効果または利益、例えば、生理学的条件、疾患、病気、または疾病と関連した、またはそれらによって引き起こされる1つ以上の症状または病状の改善を提供することを目的とする。
【0054】
「予防法」およびその文法上の変化形は、既知の、または罹患した生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状に先立つ、対象への接触、投与、または生体内送達を指す。予防状態は、対象が、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状を有しているかわからない状態を含む。そのような方法において、制御性T細胞、樹状細胞、レチノイン酸受容体作動薬、TGF−β(またはTGF−βアイソフォーム、誘導体、もしくは類似体)、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子受容体γ(PPAR−γ)作動薬との接触、それらの投与、生体外または生体内送達の効果は、生理学的条件、疾患、病気、または疾病によって引き起こされるか、またはそれらと関連した生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状もしくは病状の発症の可能性または感受性を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止することであり得る。
【0055】
いかなる治療または療法に対しても典型的であるように、異なる対象は、治療に対して異なる反応を示し、一部は、特定の治療方法に対して反応しないか、または所望よりも小さく反応する場合がある。例えば、反応性の変動性によって、全ての対象が、与えられた治療または治療方法に反応するとは限らない。
【0056】
限定されない生理学的条件、疾患、病気、疾病、および症状または病状は、制御性T細胞または樹状細胞(抗原特異的または抗原非特異的)の不十分な、不足した、減少した、または低下した数、活性、または分化によって引き起こされるか、またはそれらと関連し得る。したがって、方法の実施形態は、概して、制御性T細胞または樹状細胞を必要とする対象、および不十分な数、活性、もしくは分化、不足した、減少した、または低下した数、活性、もしくは分化、または制御性T細胞もしくは樹状細胞の損失によって引き起こされるか、またはそれらをもたらす、任意の生理学的条件、疾患、病気、疾病、それらの症状もしくは病状の治療を含む。
【0057】
さらなる限定されない例には、活性化もしくはエフェクターT細胞または樹状細胞(抗原特異的または抗原非特異的)の望ましくない数または活性によって引き起こされる、生理学的条件、疾患、病気、疾病、およびそれらの症状および病状が含まれる。したがって、方法の実施形態は、概して、減少した、低下した、阻害された、抑制された、遅延した、停止された、制限された、制御された、排除された、除去された、遮断された、または防止された活性化もしくはエフェクターT細胞または樹状細胞を必要とするか、またはそれらから恩恵を受け得る対象、ならびに活性化もしくはエフェクターT細胞または樹状細胞の望ましくない数または活性、あるいは増加した、増強された、刺激された、促進された、または誘発された数または活性によって引き起こされるか、またはそれらをもたらす、任意の生理学的条件、疾患、病気、疾病、その症状または病状の治療を含む。
【0058】
本発明は、特に、対象における免疫反応、炎症、または炎症反応を低下または減少させる方法をさらに提供する。一実施形態では、方法は、対象における免疫反応、炎症、または炎症反応を低下または減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を、対象に接触させる、または投与するステップを含む。
【0059】
方法の実施形態は、望ましくない、および異常な免疫反応、炎症、炎症反応、免疫障害、および免疫病によって引き起こされるか、またはそれらと関連した生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状もしくは病状の治療を含む。種々の実施形態では、方法は、望ましくない、または異常な炎症反応および炎症免疫障害および免疫病の慢性および急性型を治療するステップと、制御性、エフェクター、または活性化T細胞等の、リンパ球の望ましくない、または異常な増殖、生存、分化、死、または活性の慢性および急性型を治療するステップを含む。例示的な方法では、対象は、T制御性細胞、樹状細胞、TGF−β(TGF β受容体作動薬)、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬のうちの1つ以上に接触させられるか、それらを投与される。
【0060】
ここで使用される「免疫反応、炎症、または炎症反応」は、任意の免疫反応、炎症、もしくは炎症反応、または活性もしくは機能を指す。望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応は、所望よりも大きいもしくは小さいか、または生理学的に正常である。望ましくない免疫反応、炎症、または炎症反応は、望ましくない、または不適切である正常な反応、機能、または活性であり得る。したがって、異常でないとしても、望ましくない、または不適切であると見なされる正常な免疫反応、炎症、および炎症反応は、これらの用語の意味の中に含まれる。望ましくない免疫反応、炎症、または炎症反応はまた、異常な反応、機能、または活性であり得る。異常な免疫反応、炎症、または炎症反応は非正常である。望ましくない、不適切な、異常な、または非正常な免疫反応、炎症、および炎症反応は、慢性または急性のいずれかの体液性、細胞性、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0061】
望ましくない、異常な、または非正常な免疫反応の限定されない例は、例えば、自己免疫状態、疾患、病気、または疾病の場合に、免疫反応が過敏性である場合である。望ましくない、異常な、または非正常な免疫反応の別の例は、免疫反応が、任意の組織または臓器において、全身的に、局部的に、または局所的に、急性または慢性免疫反応、炎症、または炎症反応をもたらす場合である。望ましくない、異常な、または非正常な免疫反応のさらに別の例は、免疫反応が、移植拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)の場合に細胞、組織、または臓器移植等に見られるような、細胞、組織、または臓器の破壊をもたらす場合である。望ましくない、異常な、または非正常な免疫反応のさらに別の例は、免疫反応が、抗原に対する反応が所望よりも大きいか、または異常である、自己もしくは非自己抗原、細胞、臓器、または組織に対する場合である。
【0062】
「免疫障害」および「免疫病」という用語は、所望よりも大きい(例えば、自己免疫)、もしくは小さい(例えば、免疫不全)、あるいは非正常である免疫機能または活性を意味する。免疫障害および免疫病は、疾患または疾病に応じて、異なる生理学的症状または異常によって特徴付けることができる。
【0063】
方法の実施形態が適用される免疫障害および免疫病の特定の限定されない例には、自己免疫疾患および免疫不全が含まれる。したがって、自己免疫状態、疾患、病気、疾病、または症状を治療するための方法の実施形態が提供される。
【0064】
自己免疫疾患は、概して、免疫系の望ましくない、異常な、または異常に増加した、または不適切な反応、活性、または機能として特徴付けられる。本発明に従って治療可能な、限定されない例示的自己免疫疾患には、多発性硬化症(MS)、1型もしくは2型糖尿病、関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、アトピー性皮膚炎、湿疹様皮膚炎、乾癬、シェーグレン症候群、腸炎、消化管の炎症性疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、セリアック病、および他の消化管炎症性疾患)、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ぜんそく、アレルギー性ぜんそく、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、多発性筋炎、ウェゲナー肉芽腫症、肝炎、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、橋本甲状腺炎、多腺性自己免疫症候群、免疫介在性不妊症、自己免疫性アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、自己免疫性脱毛症、白斑、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、ギランバレー症候群、スティフマン症候群、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群、全身性壊死性血管炎、原発性胆汁性肝硬変、および骨髄異形成症候群が含まれる。
【0065】
方法が適用される免疫条件、疾患、病気、疾病、および症状のさらなる例には、慢性および急性炎症および炎症反応が含まれる。炎症および炎症反応は、概して、望ましくない、異常な、もしくは異常に増加した、もしくは不適切な炎症反応、または炎症を引き起こすか、または炎症と関連した免疫系の活性または機能として特徴付けられる。
【0066】
本発明に従って治療可能な例示的な炎症反応および炎症には、T細胞(例えば、活性化エフェクターT細胞または制御性T細胞)抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)またはB細胞の増殖、生存、分化、死、または活性によって引き起こされる、またはそれらと関連した炎症反応および炎症が含まれる。方法(例えば、治療)は、免疫反応、炎症、もしくは炎症反応の症状または特徴の発生、進行、重症度、頻度、もしくは持続時間を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止するステップを含む。全身、局部的、または局所的レベルにおいて、免疫反応、炎症、または炎症反応は、概して、腫れ、痛み、頭痛、熱、吐き気、骨格関節の硬直もしくは運動性の欠乏、発疹、発赤もしくは他の変色、または組織もしくは細胞損傷によって特徴づけられる。細胞レベルにおいて、免疫反応、炎症、または炎症反応は、領域の細胞湿潤、抗体の産生(たとえば、自己抗体)の産生、炎症性サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、インターフェロン、もしくはインターロイキンの産生、細胞成長および成熟因子(例えば、分化因子)、細胞増殖、細胞分化、細胞蓄積もしくは移動、ならびに細胞、組織、または臓器損傷のうちの1つ以上によって特徴付けられる。方法の実施形態は、全身、局部的、または局所的レベル、ならびに細胞レベルでの治療を含む。
【0067】
細胞性または体液性免疫によって仲介される、望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応は、複数の細胞、組織、または臓器、あるいは特に1つの細胞型、組織型、または臓器のいずれかに対して、直接的または間接的に細胞、組織または臓器損傷を引き起こし得る。損傷を示し得る例示的な組織および臓器には、表皮もしくは粘膜組織、腸管、腸(小腸および大腸)、膵臓、胸腺、肝臓、腎臓、脾臓、皮膚、または骨格関節(例えば、膝、足首、腰、肩、手首、指、足指、または肘)が含まれる。治療は、細胞、組織、または臓器損傷の進行または悪化の減少、低下、阻害、制限、抑制、遅延、停止、制限、制御、排除、除去、遮断、または防止をもたらし得る。
【0068】
限定されない生理学的条件は、移植および移植片をさらに含む。「移植」または「移植片」およびそれらの文法上の変化形は、体の一部から同一対象の同一または異なる部分(自己)への、または一個人または動物から別の個人または動物(同種のヒトまたは動物)への細胞、組織、または臓器のグラフト、インプラント、または移植を意味する。したがって、移植された細胞、組織、または臓器は、自己、同種移植片、または異種移植片であってもよい。例示的な移植細胞には、神経系細胞、成体幹細胞および胚幹細胞、ならびに骨髄が含まれる。例示的な移植組織には、皮膚、血管、筋肉、眼が含まれる。例示的な移植臓器には、心臓、肺、肝臓、および腎臓が含まれる。用語はまた、例えば、形質転換細胞、組織、および臓器が、対象(例えば、ヒトまたは動物)から採取または抽出され、次いで、同一(自己)または異なる対象(例えば、同種のヒトまたは動物)に再導入される、生体外遺伝子治療によって、遺伝子操作された細胞、組織、および臓器を含む。
【0069】
したがって、本発明の方法は、対象における移植もしくは移植片拒絶反応および移植片対宿主病(GVHD)を低下させる、減少させる、阻害する、制限する、抑制する、制御する、防止する、または遮断するステップを含む。例えば、治療は、移植された、もしくはグラフトされた細胞、組織、もしくは臓器、またはGVHDにあるような対象の細胞、組織、もしくは臓器への損傷の低下、減少、阻害、制限、抑制、制御、防止、または遮断をもたらすことができる。そのような治療方法は、対象における細胞、組織、または臓器の移植またはグラフトの前、それと同時、その直後、またはその後に実行することができる。
【0070】
方法の実施形態はまた、抗原、細胞、臓器、または組織に対する寛容性を増加させる、刺激する、増強する、促進する、および誘発するための治療を含む。そのような治療方法は、抗原、細胞、臓器、または組織、例えば、急性または慢性炎症反応、炎症、または自己免疫状態または自己免疫病をもたらすか、それらに寄与する自己抗原、細胞、臓器、または組織等に対する、望ましくない、または異常な免疫反応を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止するために実行することができる。そのような治療方法はまた、抗原、例えば、非自己抗原、細胞、臓器、または組織(例えば、同種異系移植片、細胞、組織、または臓器移植)等に対する望ましくない、または異常な免疫反応を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止するために実行することができる。
【0071】
したがって、本発明は、特に、対象における抗原、細胞、組織、または臓器に対する免疫反応を低下または抑制する方法をさらに提供する。一実施形態では、方法は、対象における抗原、細胞、組織、または臓器に対する免疫反応を低下または抑制する量の制御性T細胞または樹状細胞を、対象に投与するステップを含む。特定の態様では、方法は、望ましくない、異常な、または病的な適応免疫反応、急性もしくは慢性免疫反応、急性もしくは慢性炎症反応もしくは炎症、自己免疫状態もしくは自己免疫病、移植片もしくは移植拒絶反応(例えば、幹細胞移植、骨髄移植、または臓器もしくは組織移植)、または移植片対宿主病を有しているか、またはその危険性がある対象を治療する。
【0072】
方法の実施形態は、細胞(例えば、CD4+T細胞等のT細胞)内のIL−17発現または産生を低下または抑制するステップをさらに含む。一実施形態では、方法は、細胞を、細胞内のIL−17発現または産生を低下または抑制する量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む。特定の態様では、細胞(例えば、CD4+T細胞等のT細胞)は、試験管内または生体内で接触させられる。
【0073】
ここで使用されるように、生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状との間の関係、および生理学的条件、疾患、病気、疾病、症状の効果または結果に関連して使用される場合の「と関連した」という用語は、効果または結果が、生理学的条件、疾患、病気、疾病によって引き起こされるか、または生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状の二次的効果または結果であることを意味する。したがって、対象において存在する症状は、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状の直接的な結果であり得るか、またはそれらによって引き起こされ得るか、あるいは生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状の間接的な結果であり得る。例えば、発生するある特定の生理学的条件、疾患、病気、疾病、ならびに症状および病状は、対象における望ましくない、または異常な 免疫反応、炎症、または炎症反応の間接的な効果であり得る。
【0074】
本発明の方法は、生理学的条件、疾患、病気、疾病、症状の1つ以上の症状、病状、もしくは副作用、あるいは生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状の効果または結果を含む。対象において存在する症状、病状、または副作用は、生理学的条件、疾患、病気、または疾病の直接的な結果であり得る、またはそれらによって引き起こされ得るか、あるいは少なくとも部分的に、生理学的条件、疾患、病気、または疾病に反応または応答する対象(例えば、免疫学的反応)等、二次的または後続効果に起因し得る。そのような二次的効果は、条件、疾患、病気、疾病、または症状と関連していると考えられる。
【0075】
方法の実施形態は、対象の生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状における有益な効果または改善を生み出すか、またはもたらすことができる。したがって、方法の実施形態は、特に、対象に対して有益な効果をもたらす治療方法を含む。有益な効果または改善の一実施例は、制御性T細胞の数、制御性T細胞への分化、制御性T細胞の増殖または活性を刺激する、増加させる、誘発する、増強する、または促進するステップである。有益な効果または改善の別の実施例は、活性化またはエフェクターT細胞の数、活性化またはエフェクターT細胞への分化、活性化またはエフェクターT細胞の増殖または活性を低下させる、減少させる、阻害する、制限する、抑制する、制御する、遅延させる、排除する、防止する、または遮断するステップである。有益な効果または改善のさらなる実施例は、レチノイン酸産生樹状細胞等の樹状細胞の数、樹状細胞への分化、樹状細胞の増殖または活性を刺激する、増加させる、誘発する、増強する、または促進するステップである。有益な効果または改善のさらなる実施例は、細胞によるIL−17発現または産生を低下させる、減少させる、阻害する、制限する、抑制する、制御する、遅延させる、排除する、防止する、または遮断するステップである。さらなる有益な効果は、対象における望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応の発症、進行、重症度、持続時間、頻度、または可能性を低下させる、減少させる、阻害する、制限する、抑制する、制御する、遅延させる、排除する、緩和する、防止する、または遮断するステップを含む。
【0076】
有益な効果または改善のさらなる限定されない実施例は、そのように治療された対象が、生理学的条件、疾患、病気、または疾病の1つ以上の症状または有害作用を示す可能性、感受性、または確率を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止するステップを含む。種々の生理学的条件、疾患、病気、および疾病(例えば、望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応、自己免疫疾患または障害)によって引き起こされるか、またはそれらと関連した症状が本明細書に記載され、当業者には既知であり得、したがって、いかなる有害症状、病状、または生理学的もしくは心理学的反応における改善も、種々の治療実施形態に含まれる。
【0077】
治療実施形態はまた、治療のために使用される別の薬物または薬剤等の、別の治療の必要性、投与量、または頻度を低下させる、または除去することを含む。例えば、望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応を有しているか、またはその可能性がある対象は、望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応のための別の治療をもはや必要としないか、またはそれほど必要としない場合がある。
【0078】
有益な効果または改善を提供する治療方法または療法は、望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応、あるいは任意の特定の生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状の完全除去をもたらす必要はない。むしろ、有益な効果または改善は、治療された対象の生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状における、任意の客観的な測定可能または検出可能な効果、あるいは任意の主観的な利益または改善であってもよい。したがって、有益な効果または改善は、生理学的条件、疾患、病気、疾病、もしくはそれらの症状の根本原因もしくは結果、または生理学的条件、疾患、病気、疾病、もしくはそれらの症状の逆転を含む、生理学的条件、疾患、病気、疾病、もしくはそれらの症状の発生、頻度、重症度、進行、または持続期間の主観的または客観的な低下を含む。有益な効果または改善を提供する治療は、「緩和する」が同義語として使用され、したがって、生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状と関連した任意の、または全ての有害症状または合併症の完全除去である必要はないが、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状において、客観的または主観的に測定可能または検出可能な任意の効果、利益、または改善である。したがって、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状の、進行または悪化を低下させる、阻害する、減少させる、除去する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、防止する、または遮断することは、満足のいく転帰である。
【0079】
したがって、対象における望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応を安定させることは、有益な効果と考えられる。例えば、制御性T細胞は、望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応を安定させ得る。樹状細胞は、腫瘍または癌等の過剰増殖性症状または疾患を安定させ得る。したがって、治療は、短い、または長い持続期間(時間、日、週、月、年、または回復するまで)にわたって、対象の状態の漸進的な改善、あるいは生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの有害症状もしくは病状の部分的低下もしくは安定化がある場合に達成される。
【0080】
方法の実施形態では、さらなる組成物または方法ステップが含まれ得る。一実施形態では、方法は、試験管内、生体外、または生体内で制御性T細胞または 樹状細胞を増殖または拡張させるステップをさらに含む。別の実施形態では、方法は、試験管内、生体外、または生体内で、血液細胞またはT細胞をTGF−β作動薬に接触させるステップをさらに含む。さらなる実施形態では、方法は、試験管内、生体外、または生体内で、血液細胞またはT細胞をインターロイキン−2(IL−2)に接触させるステップを含むか、または血液細胞またはT細胞をIL−2に接触させるステップを除外する。別の実施形態では、方法は、対象に、制御性T細胞、樹状細胞、TGF−β(またはTGF−β受容体作動薬)、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を投与するステップをさらに含む。
【0081】
所望の転帰がある方法、例えば、対象に対して有益な効果または改善を提供する治療方法または療法の実施形態では、組成物、例えば、制御性T細胞、樹状細胞、TGF−β(またはTGF−β受容体作動薬)、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬等は、十分な量または有効な量で投与することができる。ここで使用される「十分な量(sufficient amount)」もしくは「有効な量(effective amount)」、または「十分な量(amount sufficient)」もしくは「有効な量(amount effective)」は、単回または複数回投与で、単独で、または1つ以上の他の化合物、治療、薬剤(例えば、薬物)、または治療計画と組み合わせて、任意の程度の、または任意の期間または持続期間(例えば、分、時間、日、月、年、または回復するまで)にわたる長期間または短期間の、検出可能な、測定可能な、または所望の主観的または客観的転帰を、所与の対象に提供する量を指す。
【0082】
したがって、「十分な量」または「有効な量」は、発症を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止すること、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの有害症状もしくは病状の進行または悪化を減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、遅延させる、停止させる、制限する、制御する、排除する、除去する、遮断する、または防止すること、または生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状の重症度、頻度、持続期間、感受性、または可能性を低下させる、軽減する、緩和する、または和らげることを含む。加えて、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状からの対象の回復を早めることは、十分な量または有効な量と考えられる。種々の有益な効果ならびに治療および予防効果の兆候が本明細書に記載され、当業者には既知であろう。
【0083】
同様に十分かつ有効であると考えられる量、頻度、または持続期間は、別の化合物、薬剤、治療、または治療計画の量、頻度、または持続期間の除去または低下をもたらすものである。例えば、治療方法は、生体内での接触、投与、または送達が、生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状を治療するために、別の化合物、薬剤、治療、または治療計画の使用の量、頻度、または持続期間をより少なくする場合、有益な効果または治療効果を有すると考えられる。
【0084】
十分な量または有効な量は、単回投与で提供することができるが、そうしなくてもよく、単独で(すなわち、第2の薬物、薬剤、治療、または治療計画を用いず)、または別の化合物、薬剤、治療、または治療計画と組み合わせて投与することができるが、そうしなくてもよい。加えて、十分な量または有効な量は、そのような用量に加えた投与のさらなる用量、量、頻度、または持続期間、あるいはさらなる化合物、薬剤、治療、または治療計画が、所与の対象において有効または十分となるように含まれ得るため、第2の化合物、薬剤、治療、または治療計画を用いずに単回投与または複数回投与で与えられる場合に、十分または有効である必要はない。
【0085】
十分な量または有効な量は、あらゆる対象、およびまた所与の群または集団における対象の大部分において有効である必要はない。したがって、十分な量または有効な量は、群または一般集団ではなく、特定の対象における十分性または有効性を意味する。そのような方法に対して典型的であるように、一部の対象は、他の対象と比較して、方法の実施形態に対してより大きいまたは小さい反応を示す。
【0086】
治療または療法に関して典型的であるように、異なる対象は、治療に対して異なる反応を示し、一部は、特定の治療プロトコル、計画、プロセスに対して全く反応しない場合があるか、または所望よりも小さく反応する場合がある。したがって、十分な量または有効な量は、治療される疾患(例えば、疾病、疾患、病気、または症状もしくは病状の種類または重症度)、望ましい治療効果、ならびに個々の対象(例えば、対象、性別、年齢等におけるバイオアベイラビリティ)、および遺伝的可変性および後成的可変性に基づく、治療に対する対象の反応(例えば、薬理ゲノム学)に少なくとも部分的に依存する。
【0087】
望ましい、有益な、付加的な、相乗的な、または補完的な活性または効果を有するいかなる化合物、薬剤、治療、または他の治療計画も、方法の実施形態と組み合わせて、または方法の実施形態に加えて製剤化または使用することができる。したがって、方法の実施形態は、いかなる他の組成物、治療、プロトコル、または治療計画を含む、さらなる治療、プロトコル、および療法を含む。種々の態様では、化合物、薬剤、治療、または治療計画は、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状に対する予防、それらの治療、それらに対する感受性の減少、それらによって引き起こされるか、またはそれらと関連した関連疾患の治療を対象に提供することが目的である。
【0088】
したがって、組成物ならびに試験管内、生体外、および生体内の方法の実施形態は、他の薬剤または治療または方法ステップと組み合わせることができる。種々の実施形態では、薬剤または治療は、抗炎症薬もしくは治療、または免疫抑制剤もしくは治療を含む。
【0089】
方法の実施形態に有用な抗炎症薬は、サイトカインおよびケモカインを含む。特定のサイトカインの限定されない例には、IL−4およびIL−10等の抗炎症性サイトカインが含まれる。抗サイトカインおよび抗ケモカイン、例えば、炎症性サイトカイン、TNFα、IFNγ、IL−1、IL−2、IL−5、IL−6、IL−9、IL−13、IL−16、増殖因子、例えば、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子等と結合する抗体等を採用することができる。炎症の治療に有用な薬剤のさらなる限定されない例には、抗体、例えば、抗IgE(例えば、rhuMAb−E25オマリズマブ)、−IgAおよび−IgG抗体、受容体、ならびに受容体リガンド等が含まれる。
【0090】
方法の実施形態に含まれる薬剤および治療のさらなる限定されない例には、免疫抑制剤、例えば、コルチコステロイド(ステロイド受容体作動薬)、例えば、ブデソニド、プレドニゾン、フルニソリド、フルニソリドハイドロフルオロアルカン、エストロゲン、プロゲステロン、デキサメタゾン、およびロテプレドノール等、β−作動薬(例えば、短時間または長時間作用型)、例えば、バンブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、アルブテロール等、抗コリン作用薬、例えば、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、クロモリン、およびカルシウムチャネル遮断薬等、抗ヒスタミン剤、例えば、テルフェナジン、アステミゾール、ヒドロキシジン、クロルフェニラミン、トリペレナミン、セチリジン、デスロラタジン、ミゾラスチン、フェキソフェナジン、塩酸オロパタジン、ノルアステミゾール、レボセチリジン、レボカバスチン、アゼラスチン、エバスチン、およびロラタジン等、抗ロイコトリエン(例えば、抗システイニルロイコトリエン(CysLTs))、例えば、オキサトミド、モンテルカスト、ザフィルルカスト、およびジロートン等、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、PDE4サブタイプ)、例えば、イブジラスト、シロミラスト、BAY19−8004、テオフィリン(例えば、持続放出)、および他のキサンチン誘導体(例えば、ドキソフィリン)等、トロンボキサン拮抗薬、例えば、セラトロダスト、塩酸オザグレル、およびラマトロバン等、プロスタグランジン拮抗薬、例えば、COX−1およびCOX−2阻害剤(例えば、セレコキシブおよびロフェコキシブ)、アスピリン等、ならびにカリウムチャネル開口薬が含まれる。
【0091】
「対象」および「患者」という用語は、本明細書で同じ意味で使用され、動物、典型的には哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカク、テナガザル)、飼育動物(イヌおよびネコ)、家畜および牧場動物(ニワトリ、アヒル、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、研究および実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)およびヒト等を指す。動物モデルには、例えば、生体内有効性を研究するための疾患モデル動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、および非ヒト霊長類等)が含まれる。特定の限定されない例には、マウス結腸炎モデル(例えば、実施例9を参照)、狼瘡に対する自己免疫(BXSB)のマウスモデル、多発性硬化症に対する実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、関節リウマチ、および炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病に対するNODマウス、関節リウマチ等に対するコラーゲン誘導関節炎(CIA)、免疫抑制(ヌードマウス)が含まれる。対象には、自然発生的または非自然発生的な突然変異、または非ヒト遺伝子操作(例えば、遺伝子導入またはノックアウト)動物が含まれる。
【0092】
対象は、いかなる年齢であってもよい。ヒト対象には、例えば、1から5歳、5歳から10歳、および10歳から18歳の間の新生児、乳児、小児、十代のような子供、18歳から60歳の間の成人、ならびに例えば、60歳から65歳、65歳から70歳、および70歳から100歳の間の高齢者が含まれる。
【0093】
対象には、治療を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)が含まれ、すなわち、彼らは客観的または主観的に治療(例えば、制御性T細胞治療)からの恩恵を受ける可能性が高いと思われる。そのような対象には、例えば、慢性または急性の望ましくない、または異常な免疫反応(例えば、病的な適応免疫反応)、炎症、または炎症反応(例えば、自己免疫状態または自己免疫病)を有する動物が含まれる。対象には、慢性または急性の望ましくない、または異常な免疫反応(例えば、病的な適応免疫反応)、炎症、または炎症反応(例えば、自己免疫状態または自己免疫病)を有する危険性がある対象も含まれる。種々の方法の実施形態によって対象に提供される種々の利益または改善は、種々の生理学的条件、疾患、病気、疾病、ならびにそれらの症状および病状に関して、本明細書に記載されるか、あるいは当業者に既知であろう。
【0094】
限定されない候補対象には、多発性硬化症(MS)、1型もしくは2型糖尿病、関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、アトピー性皮膚炎、湿疹様皮膚炎、乾癬、シェーグレン症候群、腸炎、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ぜんそく、アレルギー性ぜんそく、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、多発性筋炎、ウェゲナー肉芽腫症、肝炎、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、橋本甲状腺炎、多腺性自己免疫症候群、免疫介在性不妊症、自己免疫性アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、自己免疫性脱毛症、白斑、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、ギランバレー症候群、スティフマン症候群、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群、全身性壊死性血管炎、原発性胆汁性肝硬変、および骨髄異形成症候群を有しているか、またはその危険性がある対象が含まれる。
【0095】
対象には、細胞移植(例えば、成体幹細胞もしくは胚幹細胞、または骨髄)、組織または臓器移植(例えば、肝臓、腎臓、心臓、肺、静脈または動脈、隔膜)、または移植片(例えば、皮膚または筋肉)を受ける対象または候補がさらに含まれる。そのような対象は、移植拒絶反応または移植片対宿主疾病(GVHD)にあるように、移植細胞、組織、または臓器の破壊をもたらす望ましくない、または異常な免疫反応を示す可能性がある。方法の実施形態に従ったそのような対象の治療は、移植細胞、組織、もしくは臓器の損傷もしくは拒絶反応、またはGVHDの、減少、低下、阻害、抑制、遅延、停止、制限、制御、排除、除去、遮断、または防止をもたらすことができる。
【0096】
「危険性がある」対象には、危険因子を原因とする望ましくない、または異常な免疫反応、炎症、または炎症反応と関連した、危険因子を有する対象が含まれる。危険因子には、性別、生活スタイル(食生活、喫煙)、職業、環境因子(アレルゲン暴露)、家族歴(自己免疫疾患または障害、MS、糖尿病等)、遺伝的素因等が含まれる。したがって、危険性がある対象は、生活スタイル、職業、環境因子、家族歴、および遺伝子検査によって同定することができる。自己免疫疾患に対する感受性は、MHC遺伝子型と関連している場合が多い。例えば、糖尿病においては、HLA−DR3およびHLA−DR4との関連がある。
【0097】
実施形態は、投与、生体内送達、または接触に有用な医薬組成物または製剤を含む。医薬組成物および製剤には、対象への投与のための担体または賦形剤が含まれる。
【0098】
ここで使用される「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」という用語は、1つ以上の投与経路、生体内送達、または接触に好適な、生物学的に適合した製剤、気体、液体、もしくは固体、またはそれらの混合物を意味する。製剤は、その中の活性成分の活性を破壊しない、またはいかなる予防または治療効果または利益をはるかに上回る有害副作用を誘発しないという点で適合性を有する。
【0099】
そのような製剤には、薬剤投与または生体内接触もしくは送達に適合する溶媒(水性または非水性)、溶液(水性または非水性)、エマルジョン(例えば、水中油または油中水)、懸濁液、シロップ、エリキシル、分散および 懸濁媒体、コーティング、等張剤および吸収促進または遅延剤が含まれる。 水性または非水性溶媒、溶液、および懸濁液には、懸濁化剤および増粘剤が含まれる。そのような薬学的に許容される担体には、錠剤(コーティングされている、またはコーティングされていない)、カプセル(硬または軟)、マイクロビーズ、粉末、顆粒、および結晶が含まれる。補助活性化合物(例えば、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、および抗真菌薬)もまた、組成物に組み込むことができる。
【0100】
製剤は、便宜上、単位剤形として調製または提供されてもよい。調製技術は、活性成分と医薬担体または賦形剤との結合を含む。概して、製剤は、活性成分を液体担体、もしくは微粉化された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に結合させ、次いで、必要な場合、生成物を成形することによって調製される。例えば、錠剤は、圧縮または鋳型成形によって製造されてもよい。圧縮錠剤は、任意選択で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤、または分散剤と混合される、粉末または顆粒等の自由流動形態の阻害剤(例えば、拮抗薬)または活性剤(例えば、作動薬)等の、活性成分発現または活性を好適な機械で圧縮することによって調製されてもよい。鋳型成形された錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末化合物の混合物を好適な器具で鋳型成形することによって生成されてもよい。錠剤は、任意選択でコーティングまたは分割されてもよく、その中の活性成分の持続放出または制御放出を提供するように製剤化されてもよい。
【0101】
共溶媒およびアジュバントが製剤に添加されてもよい。共溶媒の限定されない例には、ヒドロキシル基または他の極性基、例えば、アルコール、例えば、イソプロピルアルコール等、グリコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル等、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。アジュバントには、例えば、界面活性剤、例えば、大豆レシチン、およびオレイン酸等、ソルビタンエステル、例えば、ソルビタントリオレアート等、ならびにポリビニルピロリドンが含まれる。
【0102】
補助活性化合物(例えば、抗菌剤、抗ウイルス薬、および抗真菌等のバイオサイドおよびバイオスタットを含む、防腐剤、酸化防止剤、抗細菌薬)もまた、組成物に組み込むことができる。防腐剤および他の添加剤には、 例えば、抗細菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス(例えば、窒素)が含まれる。したがって、医薬組成物は、防腐剤、抗細菌薬、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスを含んでもよい。
【0103】
防腐剤は、細菌増殖を阻害するために、または活性成分の安定性を増加させ、それによって医薬製剤の保存期限を延長するために使用することができる。好適な防腐剤は当技術分野で既知であり、例えば、EDTA、EGTA、塩化ベンザルコニウム、または安息香酸、または安息香酸塩、例えば、安息香酸ナトリウム等が含まれる。酸化防止剤には、例えば、アスコルビン酸、ビタミンA、ビタミンE、トコフェロール、および同様のビタミンまたはプロビタミンが含まれる。
【0104】
抗細菌薬または化合物は、病原性または非病原性微生物による汚染、またはそれらの成長、感染性、複製、増殖、再生を直接的または間接的に阻害する、減少させる、遅延させる、停止させる、除去する、阻止する、抑制する、または防止する。抗細菌剤のクラスには、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および抗寄生虫剤が含まれる。抗細菌剤には、微生物による汚染、またはそれらの成長、感染性、複製、増殖、再生を殺滅または破壊するか(殺菌性)、あるいは阻害する(静菌性)薬剤および化合物が含まれる。
【0105】
例示的な抗菌剤(抗生物質)には、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、アンピシリン、メチシリン、オキサシリン、およびアモキシシリン)、セファロスポリン(例えば、セファドロキシル、セフォラニド、セフォタキシム、およびセフトリアキソン)、テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン、クロルテトラサイクリン、ミノサイクリン、およびテトラサイクリン)、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ネチルミシン、パロモマイシン、およびトブラマイシン)、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、およびエリスロマイシン)、フルオロキノロン(例えば、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、およびノルフロキサシン)、ならびにクロラムフェニコール、クリンダマイシン、サイクロセリン、イソニアジド、リファンピン、バンコマイシン、アズトレオナム、クラブラン酸、イミペネム、ポリミキシン、バシトラシン、アンフォテリシン、およびナイスタチンを含む他の抗生物質が含まれる。
【0106】
抗ウイルス剤の特定の限定されないクラスには、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、チミジンキナーゼ阻害剤、糖または糖タンパク合成阻害剤、構造タンパク質合成阻害剤、ヌクレオシド類似体、およびウイルス成熟阻害剤が含まれる。特定の抗ウイルス剤の限定されない例には、上記に記載されるもの、ならびにネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ジドブジン(AZT)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)、ディダノシン(DDI)、ザルシタビン(ddC)、アバカビル、アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、1,−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3 カルボキサミド、9−>2−ヒドロキシ−エトキシメチルグアニン、アダマンタンアミン、5−ヨード−2′−デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン、およびアデニンアラビノシドが含まれる。
【0107】
例示的な抗真菌剤には、安息香酸、ウンデシレンアルカノールアミド、シクロピロクスオラミン、ポリエン、イミダゾール、アリルアミン、チカルバメート、アンフォテリシンB、ブチルパラベン、クリンダマイシン、エコナキソール(econaxole)、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、ケトコナゾール、エルビオール、エコナゾール、エコナキソール(econaxole)、イトラコナゾール、イソコナゾール、ミコナゾール、スルコナゾール、クロトリマゾール、エニルコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、テルコナゾール、ブトコナゾール、チアベンダゾール、ボリコナゾール、サペルコナゾール、セルタコナゾール、フェンチコナゾール、ポサコナゾール、ビホナゾール、フルコナゾール、フルトリマゾール、ナイスタチン、ピマリシン、アンフォテリシンB、フルシトシン、ナタマイシン、トルナフタート、マフェニド、ダプソン、カスポファンギン、アクトフニコン、グリセオフルビン、ヨウ化カリウム、ゲンチアナバイオレット、シクロピロクス、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、ケトコナゾール、ウンデシレナート、スルファジアジン銀、ウンデシレン酸、ウンデシレンアルカノールアミド、および石炭酸フクシン等の薬剤が含まれる。
【0108】
医薬組成物は、特定の投与経路に適合するように任意選択で製剤化することができる。したがって、医薬組成物には、生体外または生体内で局所的に、局部的に、または全身的に、種々の経路により投与および送達するのに好適な担体(賦形剤、希釈剤、賦形剤、または充填剤)が含まれる。
【0109】
接触または生体外もしくは生体内送達のための例示的な投与経路には、吸入、呼吸、挿管、肺内滴下、経口(頬、舌下、粘膜)、肺内、直腸、膣内、子宮内、皮内、局所、皮膚、非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、眼内、気管内、および硬膜外)、鼻内、髄腔内、関節内、腔内,経皮、イオントフォレーシス、点眼、眼(例えば、角膜)、腺内、臓器内、リンパ管内が含まれる。
【0110】
非経口投与に好適な製剤には、化合物の水性または非水性溶液、懸濁液、またはエマルションが含まれ、それは懸濁化剤および増粘剤を含んでもよく、その調製は、典型的に無菌であり、対象とする受容者の血液と等張であり得る。水性担体の限定されない例示的な実施例には、水、生理食塩水(塩化ナトリウム溶液)、デキストロース(例えば、リンゲルデキストロース)、乳酸リンゲル、フルクトース、エタノール、動物油、植物油、または合成油が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油等、および注入可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。静脈内賦形剤には、流体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルデキストロースに基づくもの等)が含まれる。
【0111】
経粘膜投与に対して、浸透剤を医薬組成物に含むことができる。浸透剤は、当技術分野で既知であり、例えば、経粘膜投与に対して、洗浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。
【0112】
本発明の組成物および方法に適した医薬製剤および送達システムは、当技術分野で既知である(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(2003)20th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA、The Merck Index(1996)12th ed., Merck Publishing Group, Whitehouse, NJ、Pharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993), Technonic Publishing Co., Inc., Lancaster, Pa.、Ansel and Stoklosa, Pharmaceutical Calculations(2001)11th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD、およびPoznansky et al., Drug Delivery Systems(1980), R. L. Juliano, ed., Oxford, N.Y., pp. 253−315を参照)。
【0113】
医薬製剤を含む実施形態は、投与の簡略化および投与量の均一性のために単位剤形で包装することができる。ここで使用される「単位剤形」は、治療または投与のための単一の投与量として好適な物理的に別個の単位を意味する。各単位は、任意選択で医薬担体(賦形剤、希釈剤、賦形剤、または充填剤)と共に所定量の化合物を含有し、1つ以上の用量で投与される場合、所望の効果を生み出すように計算される(例えば、所望の効果または利益)。単位剤形は、投与された化合物(例えば、作動薬)または細胞(例えば、制御性T細胞)の1日用量もしくは単位、1日サブ用量、またはそれらの適切な一部を含有することができる。単位剤形はまた、例えば、フリーズドライまたは凍結乾燥状態の組成物を含み得るカプセル、トローチ、カシェ剤、ドロップ、錠剤、アンプル、およびバイアルを含む。例えば、滅菌液体担体は、投与または生体内送達の前に添加することができる。単位剤形は、例えば、その中に液体組成物が配置されたアンプルおよびバイアルをさらに含む。個々の単位剤形は、複数用量キット又は容器内に含むことができる。医薬製剤は、投与の簡略化および投与量の均一性のために単位剤形で包装することができる。
【0114】
方法の実施形態は、単回ボーラスまたは複数回投与としていかなる頻度、例えば、1時間、1日、1週間、1ヵ月、もしくは1年に、または1から10日間の間、1から10週間の間、1から10ヵ月の間に、あるいは適切な期間に、1、2、3、4、5回、またはそれ以上の試験管内、生体外、および生体内での接触または投与を含む。例示的な頻度は、典型的に、1日、1週間、または1ヶ月に1〜7回、1〜5回、1〜3回、1〜2回、または1回である。接触、投与、生体外または生体内送達の時間は、治療される生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状によって決定することができる。例えば、ある特定の量は、慢性または急性の望ましくない、異常な、または病的な免疫反応(例えば、適応)例えば、炎症もしくは自己免疫疾患、または移植拒絶反応の症状または病状の発症と実質的に同時に、またはその約1〜60分、1〜60時間、1〜60日間以内に対象に投与することができる。
【0115】
方法は、試験管内、生体外、または生体内での接触または投与を含む。方法の実施形態は、いかなる経路による全身、局部的、または局所的投与を介して実行されてもよい。方法の実施形態は、罹患細胞、または罹患組織もしくは臓器への投与を含む。特定の態様では、投与は、骨格関節または消化管に対する。
【0116】
対象は、単回投与(例えば、ボーラス)または複数回投与(例えば、分割量/定量で)で投与されてもよく、それは、本明細書に記載され、当技術分野で既知の種々の考慮事項に従って、より多くまたはより少なくなるように調節することができる。用量は、治療される生理学的条件、疾患、病気、疾病または症状、治療が行われる生理学的条件、疾患、病気、疾病または症状の発症、進行、重症度、頻度、持続期間、可能性、または感受性、所望の臨床的エンドポイント、前治療、同時治療、または後続治療、対象の全般的健康、年齢、性別、または人種、バイオアベイラビリティ、考えられる有害な全身的、局部的、または局所的副作用、対象における他の疾患または疾病の存在、および当業者によって理解される他の要因(例えば、病歴または家族歴)に応じて変化してもよい。投与量、頻度、または持続期間は、所望の臨床転帰または有益な効果、生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状の状態、治療または療法の任意の有害副作用等によって示されるように、増加または減少してもよい。例えば、一度制御または特定のエンドポイントが達成されると、例えば、投与量、頻度、または持続期間は減少させることができる。当業者は、治療に対して十分または有効な量を提供するために必要とされる用量、頻度、および時間に影響を及ぼし得る要因を十分に理解するであろう。
【0117】
治療的処置に対して、方法は、対象が生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状を示してすぐ、実質上典型的には、0〜72時間後または0〜72日後以内に実行される。予防的治療に対して、方法は、生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状もしくは病状の予想された、または考えられる兆候の直前、あるいは0〜72時間もしくは0〜72日前、または0〜4週間前、例えば、1〜3日もしくは1〜3時間前に実行される。
【0118】
用量は、現在既存の治療プロトコル、または生理学的範囲内、もしくは範囲に近いが範囲外の量に基づくことができる。例えば、レチノイン酸、レチノイドX受容体(RXR)、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬は、対象において生理学的(例えば、血清中)量(例えば、レチノイン酸)、またはほぼその量になるように投与することができる。特定の実施形態では、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の量は、レチノイン酸の生理学的量と近似的に等しい。さらなる特定の実施形態では、投与されるレチノイン酸受容体作動薬、レチノイドX受容体(RXR)、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の量は、対象における量が、約1x10−9Mから約5x10−5Mになるような量である。さらなる特定の実施形態では、投与されるレチノイン酸受容体作動薬、レチノイドX受容体(RXR)作動薬、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の量は、対象における量が、約1x10−9M未満になるような量である。
【0119】
用量は、例えば、動物疾病モデルを使用するか、任意選択でヒト臨床研究において実験的であることができる。初期研究用量は、霊長類等の動物研究、および予防または治療効果または利益を達成するために投与される化合物の量に基づくことができる。
【0120】
用量は、対象集団に応じて調節することができ、概して、1時間、1日、1週間、1ヵ月、または1年に2、3、4回、またはそれ以上で、対象体重の約25〜250、250〜500、500〜1000、1000〜2500または2500〜5000、5000〜25,000、5000〜50,000、50,000〜100,000pg/kgの範囲内、約0.1〜1ug/kg、1〜10ug/kg、10〜25ug/kg、25〜50ug/kg、50〜100ug/kg,100〜500ug/kg、500〜1,000ug/kg、1〜5mg/kg、5〜10mg/kg、10〜20mg/kg、20〜50mg/kg、50〜100mg/kg、100〜250mg/kg、250〜500mg/kg、またはそれ以上の範囲内である。当然、用量は、必要に応じて、例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上の時間、日、週、月、年等、所与の期間にわたって、例えば、対象体重の0.00001mg/kgから対象体重の約10,000.0mg/kg、対象体重の約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、または約0.1mg/kg〜約1mg/kg等、より多くまたはより少なくすることができる。投与されるレチノイン酸受容体作動薬、レチノイドX受容体(RXR)作動薬、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の例示的な用量は、約10mg〜1200mg、または約50mg〜500mgの範囲内である。
【0121】
細胞に基づいた治療方法に対して、用量は、約100,000〜約10億個の細胞に及ぶことができる。例示的な用量は、約500,000〜約5億個の細胞、または約1〜1億個の間の細胞、または約1〜1千万個の間の細胞に及ぶ細胞量であることができる。
【0122】
本発明は、特に、好適な包装材料に包装される、制御性T細胞、制御性T細胞の培養物、樹状細胞、樹状細胞の培養物、それらの混合組成物、およびそれらの医薬組成物/製剤を含むキットを提供する。一実施形態では、キットは、包装材料、制御性T細胞、制御性T細胞の培養物、樹状細胞、または樹状細胞の培養物、および使用説明書を含む。種々の態様では、使用説明書は、本明細書に記載されるような試験管内、生体外、または生体内での方法に関する。
【0123】
「包装材料」という用語は、キットの1つ以上の構成要素を収納する物理的構造を指す。包装材料は、構成要素を無菌に維持することができ、そのような目的で一般的に使用される材料で構成されることができる(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、フォイル、アンプル、バイアル、チューブ等)。キットは、複数の構成要素、例えば、2つ以上の制御性T細胞培養物を含有することができる。
【0124】
キットは、任意選択で、構成要素の説明(種類、量、用量等)、試験管内、生体内、または生体外での使用に関する使用説明書、およびその中のいかなる他の構成要素を含む、ラベルまたは挿入物を含む。ラベルまたは挿入物は、「印刷物」、例えば、紙もしくはボール紙、または構成要素とは別に、もしくはそれに貼り付けられたキットまたはパッキング材料(例えば、箱)、またはアンプルに取り付けられた、キット構成要素を含有するチューブまたはバイアルを含む。ラベルまたは挿入物は、コンピュータ可読媒体、例えば、ディスク(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、ZIPディスク)、光ディスク、例えば、CD−もしくはDVD−ROM/RAM、DVD、MP3、磁気テープ、または電気記憶媒体、例えば、RAMおよびROM、もしくはこれらのハイブリッド、例えば、磁気/光学式記憶媒体、FLASH媒体、またはメモリ式カード等をさらに含むことができる。
【0125】
ラベルまたは挿入物は、その中の1つ以上の構成要素、用量、作用機構を含む活性成分の臨床薬理学、薬物動態、および薬力学の識別情報を含むことができる。ラベルまたは挿入物は、製造者、ロット番号、製造場所および日付、使用期限を識別する情報を含むことができる。
【0126】
ラベルまたは挿入物は、細胞の生存を維持するための情報、キットの構成要素が使用され得る生理学的条件、疾患、病気、疾病、または症状に関する情報を含むことができる。ラベルまたは挿入物は、臨床医または対象が、本明細書に記載されるように、試験管内、生体外、または生体内での方法(例えば、治療)にキットの構成要素のうちの1つ以上を使用するための使用説明書を含むことができる。使用説明書は、投与の量、頻度、または持続期間、および本明細書に記載される方法、治療プロトコル、または予防もしくは治療計画のいずれかを実行するための使用説明書を含むことができる。
【0127】
ラベルまたは挿入物はまた、予防または治療効果または利益等、キットの構成要素が提供し得る、任意の所望の効果もしくは利益、または有害副作用に関する情報をも含むことができる。例えば、ラベルまたは挿入物は、生理学的条件、疾患、病気、疾病、またはそれらの症状もしくは病状の発症、重症度、持続期間、進行、頻度、または可能性の減少、低下、阻害、抑制、遅延、停止、制限、制御、排除、除去、遮断、または防止に関する説明を提供し得る。
【0128】
ラベルまたは挿入物は、考えられる有害副作用に関する情報をさらに含むことができる。ラベルまたは挿入物は、対象が、特定のキットの構成要素の使用を停止する、または減らすべき状態または条件に関する、臨床医または対象への警告をさらに含むことができる。有害副作用はまた、対象が、治療と不適合であり得る1つ以上の他の薬を服用していた、これから服用する、または現在服用している場合、あるいは、対象が、治療と不適合であり得る別の治療プロトコルまたは治療計画を受けていた、これから受ける、または現在受けている場合にも起こり得るため、ラベルまたは挿入物は、そのような副作用または不適合性に関する情報を含み得る。
【0129】
発明キットは、本発明の化合物を含有する医薬製剤において緩衝剤、または防腐剤もしくは安定化剤をさらに含むことができる。キットの各構成要素は、個々の容器に封入することができ、種々の容器の全てを1つのパッケージ内に入れることができる。発明キットは、冷蔵用に設計することができる。
【0130】
発明キットは、本発明の方法を実行するための、または生体外または生体内で、対象に制御性T細胞または樹状細胞を投与するためのデバイス等の構成要素をさらに含むことができる。デバイスは、注射器、IVバッグもしくはボトル、または体外もしくは埋め込み型デバイス等の送達デバイスであることができる。
【0131】
別段の定めがない限り、本明細書に使用される全ての専門用語および科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実践または検査に使用することができるが、好適な方法および材料は、本明細書に記載される。
【0132】
本明細書に挙げられる全ての出版物、特許、および他の参考文献は、参照することによってその全体が組み込まれる。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0133】
ここで使用されるように、単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示さない限り複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「制御性T細胞」または「制御性T細胞培養物」への言及は、複数の制御性T細胞および培養物を含み、「症状」または「病状」への言及は、複数の症状または病状(例えば、有害または望ましくない)をふくむ。当然、これは、適切な用語を使用して、本発明のある特定の実施形態を、特定の症状または病状、特定の条件、疾患、疾病、または病気、特定の対象、治療方法等に制限することを除外する。
【0134】
本発明は、概して、多数の実施形態を説明するために、肯定的な用語を使用して本明細書に開示される。本発明はまた、物質もしくは材料、方法ステップおよび条件、プロトコル、手順、アッセイ、または分析等、特定の内容が全体的にもしくは部分的に除外される実施形態を含む。したがって、本発明は、概して、本発明が含まないものの観点からは本明細書で表現されていないが、本発明に明示的に含まれない態様が、明示的または本質的に本明細書に開示される。
【0135】
本発明の多くの実施形態が記載されてきた。それにもかかわらず、種々の修正が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われてもよいことが理解されるであろう。したがって、以下の実施例は、請求項に記載される発明の範囲を制限するのではなく、例示することを目的とする。
【実施例】
【0136】
実施例1
本実施例は、種々の材料および方法の説明を含む。
【0137】
マウス
C57BL/6 CD45.1(Ly5.1)およびCD45.2(Ly5.2)、OT−I TCR−遺伝子導入(C57BL/6背景)、RAG1−/−(C57BL/6背景)、B7.1/2ダブルノックアウト(C57BL/6背景)、ならびにIL−2−/−(C57BL/6背景)マウスをThe Jackson Laboratories(USA)から購入した。B7.1/2−IL−2トリプルノックアウトマウスを得るために、B7.1/2−/−およびIL−2−/−マウスを我々の動物施設で交配した。OT−II CD90.1 TCR遺伝子導入マウス(C57BL/6背景)。マウスを特定病原体未感染条件下で維持し、RAG1−/−マウスコロニーからの歩哨マウスをヘリコバクター種およびシトロバクターローデンチウムに対して陰性であるか試験した。7〜12週齢のマウスを使用した。動物の世話および実験は、NIHガイドラインと一致し、La Jolla Institute for Allergy and ImmunologyのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。
【0138】
抗体
FITC、PE、PE−Cy5、PerCP−Cy5.5、またはAPCと共役するような、以下のマウス抗体をBD−Biosciences(USA)から購入した。αβ(LPAM−1)、CD4(L3T4)、CD8(53−6.7)、CD11b(MI/70)、CD11c(HL3)、CD25(PC61)、CD45R(RA3−6B2)、CD45RB(16A)、CD45.1またはLy5.1(A20)、CD45.2またはLy5.2(104)、IL−17、IFN−γ(XMG1.2)、NK1.1(PK136)、TCRα2(B20.1)、TCRβ5(MR9−4)、TCRβ鎖(H57−597)、TER−119、およびイソタイプ対照。抗マウスIL−2(JES6−1A12)、CD103またはαβ(2E7)、CCR9(CW199)、CTLA−4(UC10)、およびFoxp3(FJK−16S)を、eBioscience(USA)から購入した。Fc受容体遮断に使用する抗マウスCD16/32を、我々の研究所において単離および精製した。
【0139】
T細胞、抗原提示細胞(APC)、および樹状細胞(DC)単離
CD4CD25T細胞単離のために、脾臓を取り出し、細胞単一懸濁液中に裂き、70μmの細胞濾過器(Fisher Scientific, USA)を通して濾過した。1/200希釈での特異的ビオチン−共役mAb(抗CD8、CD11b、CD11c、CD25、CD45R(B220)、NK1.1、およびTER119)および抗ビオチン電磁マイクロビーズ(1脾臓当たり25〜40μl)(Miltenyi Biotec, USA)との混合物を用いたインキュベーション後の陰性選択によって、CD4 CD25T細胞を単離した。
【0140】
CD8T細胞単離のために、脾臓細胞を除去し、製造者のプロトコル(Miltenyi Biotec, USA)に従って、CD8T細胞単離キットを使用して単離した。T細胞を枯渇させるために、CD90.2(Thy1.2)電磁マイクロビーズを使用した陰性選択によって、C57BL/6マウスの脾臓からAPCを単離した(Miltenyi Biotec)。RBC溶解バッファ(Sigma, USA)を使用して、脾臓細胞懸濁液中の赤血球(RBC)を除去し、細胞を3000ラドで照射した。
【0141】
樹状細胞単離のために、脾臓およびMLNを切り刻み、室温で30分間、D型コラゲナーゼ(Roche,USA)によって消化した。消化された組織を、さらに5分間、5mMのEDTAで処理し、70μmの細胞濾過器を通して濾した。続いて、製造者のプロトコル(Miltenyi Biotec, USA)に従って、抗CD11cマイクロビーズを使用した陽性選択によって、CD11c細胞を濃縮した。濃縮集団をCD45−APC、CD11c−PE、I−A−FITC、およびTCR βで染色し、FACS−DIVAセルソーター(USA)を使用して、フローサイトメトリによって、TCRβCD45CD11cI−Abに対して分類した。
【0142】
試験管内T細胞刺激
樹状細胞−T細胞培養物に使用される培地は、10%加熱不活性化FCS、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および5mMのβ−メルカプトエタノール(全てSigma, USA)が補充されたイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Gibco, USA)であった。残りの培養物において、IMDMと同一の方法で補充されたRMPI(Gibco, USA)を使用した。樹状細胞−T細胞培養物に対して、2x10個の樹状細胞および1x10個のT細胞を200μlの体積(96ウェルプレート)で培養した。照射APC−T細胞培養物に対して、5x10個のAPCおよび1x10個のT細胞を96ウェルプレートにおいて200μlの体積で培養した(48ウェルプレートにおいて1ウェル当たり2x10個のAPCおよび0.5x10個のT細胞)。多クローン性CD4またはCD8T細胞を、1μg/mlの可溶性抗CD3ε(45−2C11)、固定化抗CD3ε(5μg/ml)、および2μg/mlの抗CD28(BD−Biosciences, USA)(図1D)、または製造者のプロトコル(Invitrogen, USA)に従って、マウスCD3/CD28 T細胞エクスパンダビーズで刺激した(図2D)。図4Aに示される研究については、未処理CD4細胞(CD25CD44lowCD62L)の分類後、細胞をPBS+0.1%BSA中で2回洗浄し、数を数え、PBS−0.1%BSA中1ml当たり5−10x10個の細胞の濃度で、2μMのCFSE(カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル)(Molecular Probes, USA)で標識した。図3DおよびEに記載される研究については、上述のように刺激された培養物において3日半後に、細胞を洗浄し、rmIL−2(100u/ml)を用いて2日間置き、洗浄し、分析前にさらに3日間にわたって、1μg/mlの可溶性抗CD3εおよび特定のサイトカインで再刺激した。
【0143】
使用した外因性サイトカインは、IL−2(200u/ml)、IL−6(20ng/ml)、TGF−β1(5ng/ml)、5ng/mlのTGF−β2またはTGF−β3(R&D Systems, USA)、IL−1β(10ng/ml)、およびTNF−α(10ng/ml)(Peprotech Inc., USA)であった。OT−IおよびOT−II TCR−遺伝子導入T細胞によってそれぞれ認識された、MHC−I(OVA257−264)およびMHC−II(OVA323−339)制限OVAペプチドを、Abgent Inc.(USA)によって合成し、1nM(OT−I OVAp)または1μM(OT−II OVAp)で使用した。
【0144】
オールトランス−レチノイン酸(RA)および9−シス−レチノイン酸(9−シスRA)をSigma(USA)から購入し、DMSO(10mM)に溶解し、−20℃で保管し、遮光し、100nMの濃度で使用した。レチノイド酸受容体拮抗薬LE135をエタノール(10mM)に溶解し、1μMの濃度で培養物に添加した。レチノイド酸受容体拮抗薬LE540(Wako, Japan)をDMSO(1mM)に溶解し、1μMの濃度で培養物に添加した。
【0145】
リステリア菌感染
リステリア菌(株 WT LMOVA)を使用した。マウスを5x10CFUのリステリアモノサイトゲネスに経口感染(強制)させた。マウスは、感染の同日および2日後に賦形剤、RA、またはLE540の腹腔内注射を受けた。分析のために、感染の5日後にマウスを屠殺した。
【0146】
オールトランス−レチノイン酸(RA)をSigma(USA)から購入し、1:1のDMSO+大豆油(腹腔内注射に対して3mg/ml)または大豆油のみ(強制経口投与に対して6mg/ml)に溶解し、−20℃で保管し、遮光し、300μg/マウスで使用した。レチノイド酸受容体拮抗薬LE540(Wako, Japan)を1:1のDMSO+大豆油(0.5mg/ml)に溶解し、−20℃で保管し、遮光し、100μg/マウスで使用した。1日おきに、2週間の間隔で、未処理マウスは、賦形剤、RA、またはLE540のいずれかの強制経口投与を受けた。
【0147】
実験的結腸炎モデル
脾臓を供与マウス(C57BL/6)から取り出し、HBSS培地(Invitrogen, USA)中の細胞単一懸濁液に裂いた。細胞懸濁液を70μmの細胞濾過器を通して濾過し、続いて、製造者のプロトコル(Miltenyi Biotec, USA)に従って、抗CD4(L3T4)電磁マイクロビーズを使用した陽性選択によって、CD4細胞を濃縮した。CD4−濃縮細胞を2回洗浄し、PE−Cy5−共役抗CD4およびPE−共役抗CD45RB抗体で染色した。染色後、細胞を洗浄し、FACS−DIVAセルソーターを使用して、フローサイトメトリによって、CD4CD45RBhighT細胞集団を分類した。精製CD4CD45RBhigh未処理T細胞を2回洗浄し、PBS中に再懸濁し、RAG−/−レシピエントマウスに注入した。受容者に、200μlのPBS中の5x10個の細胞を静脈内注射した。共移植研究(図6および7)のために、C57BL/6 Ly5.1マウスからの0.5x10個のソートCD4CD45RBhigh細胞、およびC57BL/6マウスからの2x10個の照射脾臓APCを含有する48ウェルプレートを使用して、CD4 T細胞の試験管内状態調整を行った。これらの細胞を上述のように刺激し、3.5日後、CD4電磁マイクロビーズを使用して、CD4T細胞を単離した。RAG−/−受容者に、200μlのPBS中の、C57BL/6 Ly5.1から新鮮な状態で単離した5x10個のCD4CD45RBhigh細胞、および2.5x10個の試験管内状態に調整されたCD4T細胞を静脈内注射した。体重減少、猫背の様子、毛の立毛、および下痢を含む疾病の兆候に関して、移植マウスを定期的に監視した。
【0148】
移植後の対応する時点において、組織学的分析のために、罹患動物を屠殺した。大腸の遠位部および近位部から採取した3〜5mmの組織サンプルを4%のホルマリンで固定した。後に、固定した組織をパラフィンに埋め込み、3μmの断面を準備し、ヘマトキシリン−エオシンで染色した。重症度の評価をするために、以前に記載されたスコアリングシステム[Aranda et al., J Immunol 158, 3464(1997)]を使用して、盲検法で、病理学者が炎症サンプルをコード化およびスコアリングした。疾病の重症度を表すために、スコアを平均化した。より高いスコア(最大で14)は、より大きい病状を示す。
【0149】
肝臓、上皮内、および固有層リンパ球の調製
以前に記載されたように[Y. Kinjo et al., Nat Immunol 7, 978(2006)]、37.5%の等張パーコール(GE Healthcare, USA)を使用して、肝臓リンパ球を単離した。以前に記載されたように[Aranda et al., J Immunol 158, 3464(1997)]、腸リンパ球を単離および調製した。簡潔に、小腸および大腸を除去し、5%のFCSを含有する冷却HBSS培地中に置いた。腸間膜から腸を慎重に取り除き、糞便内容物から洗い流した。腸を縦方向に切開し、次いで、1cmの大きさに切った。2%FCSおよび1mMのDTT(Sigma, USA)で補充された、25mlの予熱したHBSSを含有する250mlの三角フラスコに、腸組織を移し、37℃で40分間、200rpmで振盪した。組織懸濁液をステンレス製のふるいを通して50mlの円錐管に移し、4℃で10分間、1200rpmの遠心分離によって、細胞を沈降させた。細胞ペレットを完全HBSS中に再懸濁し、不連続の40/70%のパーコール勾配上で層状に重ね、30分間2000rpmで遠心分離した。40/70%の界面からの細胞を採取し、洗浄し、完全RPMI培地中に再懸濁した。これらの精製細胞は、上皮内リンパ球(IEL)集団を構成した。固有層リンパ球(LPL)を単離するために、ステンレス製のふるいにある残りの腸組織を細かく刻み、円錐管に移した。細かく刻まれた片を、1mg/mlのコラゲナーゼ(Sigma, USA)を含有する20mlの完全RPMI中に再懸濁し、37℃で40分間、200rpmで振盪した。組織懸濁液を採取し、70μmの細胞濾過器を通過させ、1200rpmの遠心分離によって、細胞を沈降させた。次いで、細胞を再懸濁し、40/70%パーコール勾配上に層状に重ね、IEL調製に関して上記に記載されるように処理した。
【0150】
フローサイトメトリ分析および細胞内サイトカイン染色
脾臓、末梢リンパ節(PLN)、およびMLNを除去し、次いで、0μmの細胞濾過器を通して濾し、RBC溶解バッファを使用して、細胞懸濁液中のRBCを除去した。肝臓単核細胞、IEL、およびLPLを上記に記載されるように単離した。染色前に、細胞を洗浄し、1xPBS、2%のBSA、10mMのEDTA、および0.01%NaN3を含有する染色緩衝液中に再懸濁した。非特異的染色を阻止するために、2.4G2抗CD16/32抗体を添加した。細胞表面マーカーに対する抗体を添加し、細胞を氷上で25分間インキュベートした。染色後に、細胞を2回洗浄し、FACS−Calibur(BD−Bioscience, USA)で同日に分析するか、または1%のパラホルムアルデヒドおよび0.01%のNaN3を含有するPBS中に固定し、後に分析した。細胞内サイトカイン染色のために、試験管内培養物から採取した細胞または単離IELを、37℃で、組織培養インキュベータにおいて、50ng/ml PMA、750ng/mlのイオノマイシン(両方とも、Sigma, USA)、および10μg/mlのブレフェルジンA(Invitrogen, USA)で、4〜5時間インキュベートした。蛍光標識抗体の対応するカクテルで、25分間、表面染色を実行した。表面染色後、Fixation/Permeabilization溶液(BD Cytofix/Cytopermキット−BD PharMingen, USA)中に細胞を再懸濁し、製造者のプロトコルに従って、細胞内サイトカイン染色を実行した。
【0151】
Foxp3染色のために、図8Bおよび9Aを除いて、PMA/イオノマイシンでの刺激を実行しなかった。これらの場合において、PMA/Ionでのインキュベーションの時間は、3.5時間に減少した。eBioscienceのFoxp3−染色キットプロトコルの通り、細胞内Foxp3染色を実行した。
ELISAによるサイトカインの検出
細胞の試験管内刺激の後、培養上清中のIFN−γおよびIL−17をELISAによって定量化した。IFN−γおよびIL−17のELISAのためのIFN−γおよびIL−17、ならびに組み換えサイトカイン標準に対する捕捉および検出抗体を、BD−Biosciences(USA)から購入した。
【0152】
RNA単離およびリアルタイムRT−PCR
RORγ−T mRNA発現の分析のために、基本的に、Ivanov et al. [Ivanov, II et al., 細胞 126, 1121(2006)]によって記載されるように、未処理CD4T細胞を精製した。簡潔に、抗CD4電磁マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)およびMACSカラムを使用して、C57BL/6マウスの脾臓からCD4+T細胞を精製した。CD4T細胞を抗CD25−PE、抗CD4−PECy5、抗CD62L−FITC、および抗CD44APCで染色した。FACS−DIVAセルソーターを使用して、フローサイトメトリによって、CD4CD25CD44lowCD62LT細胞集団を分類した(>99%純度)。上述のように分類されたCD4CD45RBhighT細胞集団を使用して、いくつかの研究も実行した。
【0153】
異なる時点において、細胞を採取し、滅菌PBSで洗浄し、TRIZol(Invitrogen, USA)中に再懸濁した。次いで、サンプルを冷凍し、後の利用のために−80℃で保存した。RNA単離のために、全組織を均質化し、クロロホルムでの沈殿およびイソプロパノールでの抽出によって、RNAをDNAおよびタンパク質から分離した。製造者によって提供された使用説明書に従って、スーパースクリプトIIシステム(Invitrogen, USA)を使用して、全RNAからcDNAを合成した。続いて、SYBRグリーン(Bio−Rad Laboratories, USA)および以下のマウスプライマを使用して、cDNAをリアルタイムPCRの対象にさせた。RORγt順方向:5’−CCGCTGAGAGGGCTTCAC−3’、RORγt逆方向:5’−TGCAGGAGTAGGCCACATTACA−3’、L32順方向、5’−GAAACTGGCGGAAACCCA−3’、およびL32逆方向、5’GGATCTGGCCCTTGAACCTT−3’。遺伝子発現をL32に標準化した。データを収集し、iCycler Bio−Rad(Hercules, USA)で分析した。
【0154】
実施例2
本実施例は、Th−17分化の駆動における消化管関連樹状細胞および末梢樹状細胞の能力を比較する研究を含む。
【0155】
図1Aに示されるように、OT−II TCR遺伝子導入マウスからの開口型TCR Vβ5CD4脾臓細胞のIL−17およびIFN−γ染色を実行した。OVApおよびMLNまたは脾臓(SPL)樹状細胞、ならびに示された場合は、外因性サイトカインおよびLE135またはオールトランス−レチノイン酸(RA)で、CD4CD25細胞を刺激した。図2Aに示されるように、照射脾臓細胞、ならびに添加されたサイトカインおよびRAで、可溶性α−CD3で刺激された多クローン性CD4CD25脾臓T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色を実行した。OVAペプチド(OVAp)特異的、OT−II TCR遺伝子導入CD4 T細胞(図1A)、またはα−CD3刺激多クローン性CD4 T細胞(図2A)を刺激するために、腸間膜リンパ節(MLN)樹状細胞および脾臓樹状細胞を使用した。IL−6およびTGF−βの存在下で、MLN樹状細胞は、Th−17分化を誘発する能力が、脾臓のそれらの能力と比較して低下することを示した。
【0156】
実施例3
本実施例は、RAがTH−17細胞の分化を抑制することを示す研究を含む。
【0157】
Th−17分化を駆動するためのMLN樹状細胞能力の低下が、RAによっても制御され得るかどうかを研究するために、Th−17分化を促進する条件下で、T細胞の試験管内活性化の間、RA受容体(RAR)拮抗薬、LE135[Hashimoto, et. al., J Biol Chem 274, 15360(1999)]を含んだ。
【0158】
図1Aおよび2A(上述)に表される研究に加えて、関連OVAp、ソート脾臓CD11c+樹状細胞、ならびに示されたように、添加されたサイトカインおよび9−シスRA(100nM)で刺激されたOT−II TCRCD4CD25脾臓T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色も実行し、TCR Vβ5CD4細胞に開口した(図2B)。これらの研究において、Th−17分化を媒介するMLN樹状細胞の相対的非効率性は逆になり、それらが、脾臓樹状細胞と同様のレベルでT細胞を感作するようになった。比較すると、培養物へのオールトランスRAの添加は、脾臓樹状細胞によるTh−17分化を阻害し(図1A、1B、および図2A中)、ビタミンA代謝産物、9−シスRAの培養物への添加もまた、脾臓樹状細胞によるTh−17分化を阻害したことがわかった(図2B)。
【0159】
関連OVApおよび脾臓CD11c樹状細胞で、ならびに示されたサイトカインを用いずに(なし)、または用いて、RAを用いずに、または用いて刺激されたOT−I TCRCD8T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色を実行した(図2C)。抗CD3/CD28ビーズで、ならびに外因性サイトカインを用いずに(なし)、または示されたサイトカインを用いて(IL−17条件:TGF−β、IL−6、IL−1β、TNF−α)、およびRAを用いて、または用いずに刺激された多クローン性CD4CD25脾臓T細胞のIL−17およびIFN−γに対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色も実行し、TCRβ+CD4+細胞に開口した(図2D)。
【0160】
図1Cに示されるように、開口型TCRβCD8細胞の細胞内IL−17およびIFN−γ染色を実行した。α−CD3εおよび脾臓APCで、示されたサイトカインで、全CD8脾臓T細胞を刺激した(なし、TGF−βIL−6、ならびにTGF−βIL−6およびRA)。CD4TH−17細胞に加えて、TGF−βおよびIL−6の存在下で活性化されたWT(図1C)またはOT−I TCR(図2C中で上述)細胞毒性CD8Tリンパ球もまた、IL−17T細胞を生成し、またRAが、この場合もやはり、これを阻害することができたことが観察された。本研究は、T細胞が、それらのエフェクター表現型にかかわらず、IL−17細胞になることができ、またRAがIL−17発現を特に抑制することを示した。
【0161】
TH−17細胞は、IL−1およびTNF−α等のさらなるサイトカインが培養条件に含まれる場合、樹状細胞の非存在下でも生成することができる。そのようなAPCフリー条件下で、RAは、IL−17T細胞の生成も阻害し、RAが、T細胞を直接標的にすることを明示する(図2D中で上述)。RORγtは、TH−17細胞の遺伝子転写に関与してきたオーファン核内受容体である[Ivanov et al., Cell 126, 1121(2006)]。RAがRORγtを制御するかどうかを決定するために、CD4 T細胞をTh−17培養条件下で、RAを用いて、または用いずに活性化した。
【0162】
図1Dに示されるように、α−CD3εおよびα−CD28で刺激されたCD4 T細胞において、PCRによってRORγt mRNAを数回分析した。示された所では、サイトカインを含むIL−17(黒で示されるIL−17条件)、またはこれらのサイトカイン+RA(白で示される)が含まれた(平均±SD)。結果は、炎症性サイトカインの存在下で、TGF−βは高レベルのRORγtを誘発し、一方で、添加されたRAは、その発現を大幅に低下させたことを示す(図1D)。
【0163】
生体内研究
生体内でのTh−17発生に対するRAの明らかな抑制効果を研究するために、マウスにリステリア菌(Lm)を経口感染させ、RAまたはRAR阻害剤(LE540)で処理した。図1Eに示されるように、リステリア菌の経口感染の5日後に、小腸固有層からのCD4T細胞の細胞内IL−17およびIFN−γ染色を実行した。データは、1群当たり3〜4匹のマウスを代表する。RAを受容した動物において、Th−17粘膜T細胞の測定可能な低下が見られ、一方で、RAR阻害剤で処理されたマウスは、対照と比較して何の明らかな差も示さなかった(図1E)。集合的に、これらの研究は、RAが、試験管内および生体内でのTh−17発生に拮抗するように作用し、またこれは、RORγtの低下を介してT細胞に直接作用するように思われることを示唆する。
【0164】
実施例4
本実施例は、RAが、TGF−β依存性TregおよびTH−17細胞の相互分化を調節することを示す研究を含む。
【0165】
MLN樹状細胞のTh−17分化促進の非効率性、およびTH−17細胞またはTregのいずれかへの相互TGF−β依存的変換は、粘膜樹状細胞が、増強したTGF−β依存性Treg分化を駆動し得るかどうかを決定するための研究をもたらした。TGF−β依存性Tregは、フォークヘッド−ウィングドヘリックス転写因子、Foxp3の発現によって同定されることが報告されており[(Fontenot, et al. Nat Immunol 4, 330(2003); Hori, et al, Science 299, 1057(2003); Khattri, et al., Nat Immunol 4, 337(2003); Mucida et al., J Clin Invest 115, 1923(2005)]、TGF−βおよびOVApの存在下で脾臓またはMLN樹状細胞で培養されたOT−II CD4細胞におけるFoxp3誘発が研究された。図3Aに示されるように、OT−II TCR遺伝子導入マウスからの開口型TCR Vβ5CD4細胞のFoxp3および表面CD103に対する細胞内染色を実行した。加えて、OVApおよびMLNまたはSPL樹状細胞、ならびに示されるように、TGF−β1およびLE135またはRAで、CD4CD25T細胞を刺激した。脾臓樹状細胞で見られるTh−17分化とは対照的に、MLN樹状細胞は、より高い頻度でFoxp3細胞を誘発することができた(図3A)。RAR阻害剤の存在下で、MLN樹状細胞によるTGF−β依存性Foxp3誘発は低下したが、RAの添加によって増強された(図3A)。
【0166】
加えて、異なる組織から単離された全CD4 T細胞におけるFoxp3 CD4 T細胞の頻度を分析した。図4Aに示されるように、種々の組織から単離されたTCRβ開口型T細胞によるFoxp3およびCD4発現の細胞内染色を実行した。sLPLおよびlLPLは、小腸および大腸固有層リンパ球をそれぞれ示し、PLNは、末梢リンパ節を示す。数値は、CD4T細胞集団におけるFoxp3T細胞の割合の平均±SEMを表す。図4Bに示されるように、開口型TCRβCD4T細胞のCD25またはCD103に対して、細胞内Foxp3染色および表面染色を実行した。下のパネルにおいて、数値は、Foxp3集団におけるCD103細胞の割合を示す。各研究に対して5匹のマウスを分析した。この分析は、他のCD4T細胞サブセットと比較して、小腸および大腸CD4固有層リンパ球(LPL)が、より多くのFoxp3細胞を一貫して有したことを示した(図4A)。組織にかかわらず、大部分のFoxp3CD4細胞は、IL−2受容体(IL−2R)α鎖、CD25(図4B)も発現したが、腸組織におけるFoxp3CD25CD4細胞の大部分は、多くの粘膜T細胞によって発現されたαEインテグリンサブユニット、CD103も共発現した(図3B)。LP Tリンパ球におけるFoxp3細胞の頻度の増加は、粘膜樹状細胞によるプライミングが、Foxp3Tregの末梢分化を支持し得ることを示唆した。
【0167】
Foxp3の発現に加えて、末梢に生成されたTregは、それらの機能分化の一部としてCTLA−4も誘発する。外因性RAおよびTGF−βの相乗効果が、CTLA−4の発現も制御するかどうかを検査するために、RAおよび/またはTGF−βの存在下で刺激された未処理OT−II CD4T細胞の試験管内培養の間の異なる時点で、CTLA−4発現を分析した。これを研究するために、樹状細胞の代わりに脾臓APCであることを除いて(図3B)、図3Aにあるように刺激されたOT−II TCR CD4CD25T細胞(上述)の細胞内Foxp3およびCTLA−4染色を実行した。
【0168】
図3Bに示されるように、Foxp3およびFoxp3活性化細胞に対するCTLA−4の誘発は、TGF−βおよびRAの存在下で遅延した(図3B)。後の時点において、TGF−βおよびRAで培養された細胞の大部分は、CTLA−4およびFoxp3の両方であった(図3B)。これらの研究は、TGF−βおよびRAの相乗効果が、エフェクター細胞上の早期CTLA−4発現を阻害するが、代わりに、Foxp3系列に関与した細胞によるCTLA−4の後期発現を可能にすることを示す。
【0169】
考察されるように、RAは、ほとんどのTGF−β生成Foxp3細胞上にTregによって典型的に発現される細胞表面受容体、CTLA−4の発現を促進した(図3B)。OVApおよび脾臓樹状細胞で、ならびにTGF−β1およびRAで、OT−I TCR遺伝子導入マウスからのCD8T細胞を刺激し、Foxp3に対する開口型TCRβ細胞の細胞内染色を実行した(図3C)。3日間、関連OVApおよび照射脾臓APCで、ならびに示されたサイトカインを用いずに(なし)、および用いて、およびRAを用いずに、および用いて刺激されたOT−I TCRCD8T細胞のFoxp3およびCTLA−4に対する細胞内染色、ならびにCD25に対する表面染色を実行した(図4C)。比較のために、同一条件下で刺激されたOT−II CD4CD25細胞も図4Cに示される。ヒストグラムは、TCRβCD8細胞に開口し、3、4、および5日間、図面の簡単な説明(図4D)において上記に記載されるように刺激されたOT−I CD8細胞の染色を表す。単灰色−なし、灰色線−RA、点線−TGF−β、黒線−TGF−b+RA。TGF−b依存性Foxp3T細胞分化に対するRAの相乗効果もまた、CD8T細胞で明らかであり(図3C)、Foxp3T細胞分化のRA媒介増加が、CD25CD4Tregに限定されない可能性があることを示した(図4Cおよび4D)。これらの研究は、CD4 T細胞ではなく、RAで処理されたCD8 T細胞が、TGF−βおよびRAの存在下で試験管内活性化によるCD25発現を下方制御することを示す。
【0170】
一方で、TGF−βおよびRAは、CD4 T細胞に関して記載されるのと同様に、CD8細胞上のCD103発現を上方制御するために相乗作用を与える。CD25の下方制御は、ほぼ例外なく、Foxp3陰性細胞(活性化CD8 T細胞の大部分)上で起こる。しかしながら、Foxp3CD8細胞(多クローン性またはTCR−遺伝子導入)は、高レベルのCD25およびCTLA−4を発現する。CD25CD8 T細胞が、CD8IELの生体内でのIL−15依存と同様に、IL−2の代わりにIL−15に依存するようになることが考えられる。全体的に、これらのデータは、RAがTGF−β依存性TregおよびTH−17細胞の相互分化を制御することを示す。
【0171】
実施例5
本実施例は、RAおよびTGF−βの組み合わせが、異なるホーミング能力を有する細胞集団をもたらすことを示す研究を含む。
【0172】
粘膜樹状細胞由来のRAもまた、[Iwata et al., Immunity 21, 527(2004)]に報告されるように小腸へのホーミングに特異的な、インテグリンαβおよびCCR9を含む、腸ホーミング受容体の誘発を媒介することが報告されており、一方で、TGF−βは、αβインテグリンのαサブユニット、CD103の誘発を促進することが報告されている[Hadley, J Immunol 159, 3748(1997)]。TGF−βおよびRAが、これらの受容体を誘発するために相乗作用を与え得るかどうかを決定するために、研究を実行した。
【0173】
CD103、αβ、およびCCR9に対する開口型TCRβCD4細胞の細胞表面染色を実行した。可溶性α−CD3εおよび脾臓APC、さらにTGF−β1、RA、またはTGF−β1およびRAで、CD4CD25T細胞を刺激した。イソタイプ対照は、単灰色ヒストグラムで示され、3つの研究からの代表的なデータが、図3Dに示される。相乗作用と一致して、RAは、TGF−β媒介CD103発現を大幅に増強したが、対照的に、TGF−βは、RA誘発性CCR9に部分的に拮抗した(図3D)。これらの結果は、RAおよびTGF−βの組み合わせが、異なるホーミング能力を有する小腸およびCCR9Foxp3細胞に対する向性を示すCCR9Tregをもたらすことを示す。
【0174】
実施例6
本実施例は、生体内でのRAの影響を決定するための研究からのデータを含む。
【0175】
リステリア菌(Lm)感染マウスをRAまたはRAR阻害剤で処理した。図3Eは、リステリア菌の経口感染の5日後の小腸固有層からのCD4TCRβリンパ球におけるFoxp3CD4細胞の割合(左のパネル)、または未処理対照(右のパネル)を示す。P<0.05(Student T検定)。RA単体では、生体内でFoxp3Tregの分化を測定可能な程度に増強することが認められなかったが、RARの阻害は、Lm接種マウスにおける粘膜Foxp3Treg細胞数を著しく減少させた(図3E)。
【0176】
図5Cは、リステリア菌の経口感染の5日後のマウスの脾臓から単離された全CD4TCRβT細胞中のFoxp3CD4リンパ球の割合を示す。各群は、賦形剤、RA、またはLE540の腹腔内注射を2回(0および2日目)受けた。賦形剤、RA、またはLE540の強制経口投与処理を2週間受けた未処理マウスのデータは、右側に示される(平均±SD)。(図5C)に示されるように、脾臓Foxp3CD4細胞に対するRAまたはRARの効果は観察されなかった。単体ではなくTGF−βと組み合わせたRAが、試験管内でのFoxp3T細胞の分化を駆動することができるという発見(図2A)は、TGF−βが、生体内での外因性RAによって誘発されるTreg分化の欠如における制限因子であり得ることを示す(図5D)。
【0177】
実施例7
本実施例は、レチノイン酸が、TGF−β媒介Foxp3誘発を増強することを示す研究を含む。
【0178】
細胞内染色を以下のように実行した。(図5A)関連OVAp、ソート脾臓CD11c樹状細胞で、ならびに外因性サイトカインを用いずに(なし)、または示されたサイトカインを用いて、およびRAまたは9−シスRA(両方100nMで)を用いずに、または用いて刺激されたOT−II TCRCD4CD25脾臓T細胞のFoxp3およびCD103に対する細胞内染色。TCR Vβ5+CD4+細胞に開口する。(図5B)可溶性α−CD3ε、照射脾臓細胞で、および外因性サイトカインを用いずに(なし)、またはTGF−β2もしくはTGF−β3で、およびRAを用いずに、または用いて刺激された未処理多クローン性CD4CD25脾臓T細胞のFoxp3およびCD4染色の細胞内染色。このデータは、他の関連ビタミンA誘導体、9−シスRAが、試験管内で生成されたFoxp3Tregに対して同様の増加作用を有し(図5A)、RAが、増強したFoxp3T細胞分化を誘発するために、TGF−β1、TGF−β2、またはTGF−β3アイソフォームと同等に相乗作用を与えたことを示した(図5B)。
【0179】
加えて、図5Aに関して記載されるものと同一条件で刺激されたOT−II CD4 T細胞のFoxp3に対する細胞内染色を実行し、代表的なデータが図5Dに示される。少量のTGF−β(0.5ng/ml、または通常の濃度よりも10倍少ない)の存在下で、RAは、TCR−遺伝子導入CD4細胞におけるTGF−β依存性Foxp3誘発をなお増強するが、全体のFoxp3誘発は、大幅に減少し、TGF−βがこのTreg分化における決定的および制限因子であることを確認した(5D)。
【0180】
実施例8
本実施例は、TGF−β+RA試験管内分化Tregが、生体内で調節する共移植研究を含む。
【0181】
試験管内で生成されたFoxp3CD4 T細胞が、生体内でエフェクターT細胞を抑制する働きをし得るかどうかを検査するために、異なる条件下ですでに培養されたCD4 T細胞と組み合わせて、免疫不全マウスにおける結腸炎を誘発する未処理CD45RBhiCD4 T細胞を使用して、共移植研究を実行した[Izcue, et al., Immunol Rev 212, 256(2006)]。図6(A〜E)に示されるように、(A)α−CD3ε単体(なし)またはTGF−β1およびRAで、試験管内で刺激された2.5x10個のCD4T細胞と5x10個のCD4CD45RBhi細胞の共移植の6〜7週間後のRAG−1-/-マウスの遠位結腸のヘマトキシリンおよびエオシン染色を、原倍率40Xで実行し、代表的なデータは、各群における4匹のマウスからである。(B)添加なし(四角)、TGF−β1(三角)、またはTGF−β1およびRA(菱形)を用いて、2.5x10個のα−CD3εで刺激されたCD4T細胞と5x10個のCD4CD45RBhi細胞の移植後のRAG−1-/-マウスの体重。1群当たり4匹の動物の平均±SD重量が示される。データは3つの研究を代表する。(C)(B)に示される群の組織学的スコア。(D)可溶性α−CD3εおよび脾臓APCで、および示されたサイトカインで、初期に刺激された未処理TCRβCD4のFoxp3細胞内染色。細胞は、IL−2を用いて2日間そのまま置かれ、分析前に外因性サイトカインの非存在下で再刺激された。(E)(D)に記載されるように、しかしTGF−βおよびIL−6の存在下で初期に刺激され、そのまま置かれ、示された条件下で再刺激された未処理CD4T細胞のIL−17に対する細胞内染色。開口型TCRβCD4細胞におけるIL−17細胞の割合が図示される。
【0182】
未処理CD45RBhiCD4細胞と組み合わせた、サイトカイン状態調整なしで活性化されたCD4 T細胞を受けたマウスは、重度の結腸炎を発症した(図6)。対照的に、TGF−βの存在下で活性化されたCD4 T細胞を共移植された受容者は、部分的に疾病から守られ、TGF−βおよびRAの両方の存在下で試験管内において活性化された未処理T細胞およびCD4 T細胞を共移植されたマウスは、疾病の明らかな兆候を示さなかった(図6)。
【0183】
加えて、α−CD3ε単体またはTGF−β1またはTGF−β1およびRAと合わせて、試験管内で刺激された2.5x10個のCD4T細胞(Ly5.1)と合わせた5x10個のLy5.2+(Ly5.1)CD4CD45RBhi細胞の移植の6〜7週間後の、RAG−/−レシピエントマウスから単離された大腸からのIELのIL−17およびIFN−γに対して、細胞内染色を実行した。CD4リンパ球に開口する。IL−17およびIFN−γを産生したこれらの動物から単離された粘膜CD4 T細胞はより少なかった(図7)。これらの結果は、RAおよびTGF−βで試験管内において生成されたFoxp3T細胞が、測定可能な 制御能力を有し、生体内での移植による炎症を制御することができることを示唆する。加えて、TGF−β単体によって試験管内で生成されたTregが、再刺激によってFoxp3発現を失う一方で、RA+TGF−β分化Foxp3T細胞の大部分は、再刺激後もFoxp3を残し、RAが、安定したTreg系列の分化を駆動することを示す(図6Dに示されるように)。反対に、RAおよびTGF−βがまた、二次培養物中の関与したTH−17細胞を抑制した一方で、TGF−β単体は抑制しなかった(図6E)。
【0184】
実施例9
本実施例は、IL−6およびRAによる相互TGF−β依存性T細胞分化の研究を含む。
【0185】
RAが、IL−6の活性を妨げるかどうかを確認するために、IL−6と合わせたRAの存在下でのTGF−β依存性T細胞分化を分析した。図8Aは、CFSE標識未処理CD4T細胞が、α−CD3ε、脾臓APC、示されたサイトカイン、および示されるように、RAで刺激されたことを示す。IL−17分化を駆動するために、TNF−α、IL−1−β、TGF−β、およびIL−6を使用した。Foxp3およびIL−17に対する開口型TCRβCD4細胞の細胞内染色が図示される。図8Bは、示された条件下で、可溶性α−CD3εおよび脾臓APCで刺激されたCD8T細胞のFoxp3およびIL−17に対する細胞内染色を示す。そうでなければTGF−β依存性Th−17分化を促進する条件下で、RAで培養されたCD4(図8A)またはCD8(図8B)T細胞は、Th−17分化の減少を伴ってFoxp3細胞に変換された。
【0186】
加えて、可溶性α−CD3ε、照射脾臓APC、およびTGF−β(5ng/ml)で刺激された多クローン性CD4CD25T細胞のFoxp3およびIL−17に対する細胞内染色を、示された濃度のIL−6およびRAなしで、またはそれらと合わせて実行した。TCRβCD4細胞に開口した(図9A)。結果は、IL−6に対するRAの拮抗作用が、用量依存的であったことを示し(図9A)、生理学的条件下で、RAで駆動されたTGF−β依存性Treg分化が、IL−6で促進されたTGF−β依存性Th−17生成に優先し得ることを示す。
【0187】
実施例10
本実施例は、IL−2の非存在下での試験管内におけるT細胞分化に対するRA媒介効果の研究を含む。
【0188】
IL−2は、TGF−β依存性Foxp3Treg細胞の産生に必要である[Davidson et al., J Immunol 178, 4022(2007)]。近年、外から添加されたIL−2もまた、Th−17分化を抑制することが報告された[Laurence et al., Immunity 26, 371(2007)]。T細胞極性化のRA媒介調節が、IL−2シグナリングを必要としたかどうかを決定するために、抗IL−2またはIL−2−/−T細胞を使用して、IL−2の非存在下で、試験管内でのT細胞分化に対するRA媒介効果を検査した。
【0189】
図8Cおよび8Dに示されるように、以下を実行した。B7.1/2−/−IL−2+/+またはB7.1/2−/−IL−2−/−マウスからの未処理CD4T細胞のCD103(C)、または細胞内IL−17およびIFN−γ(D)に対するFoxp3および表面染色に対する細胞内染色。細胞は、可溶性α−CD3ε、脾臓APC、ならびに示されたサイトカイン、RA、および/またはIL−2に対する遮断抗体(20μg/ml)で刺激され、TCRβCD4細胞に開口した。図8Eに示されるように、(C)および(D)の培養上清におけるIL−17に対するELISA(平均±SD)を実行した。
【0190】
図9Bおよび9Cに示されるように、以下も実行した。(B)可溶性α−CD3ε、照射脾臓APCで、および示されたサイトカインsおよび/またはRA(100nM)および/または遮断抗IL−2抗体(20μg/ml)を用いずに(なし)、または用いて刺激されたC57BL/6マウスからの全CD8T細胞のIL−17およびIFN−γに対する細胞内染色。(C)図9Bに記載されるように示された条件で設定された培養上清におけるIL−17に対するELISA。
【0191】
これらの研究において、Foxp3細胞の分化を駆動するためのRAの効果の増大、およびTGF−β依存性Th−17分化に対するRAの阻害効果は、大部分IL−2に依存していた(図8C、8D、8E、ならびに9Bおよび9C)。RA媒介性調節は、RAおよび外因性IL−2と合わせて添加された時に、TGF−β依存性T細胞分化の相互調節を駆動するために相乗作用を与えたが、外から添加されたIL−2を必要としなかった(図8)。しかしながら、RAおよび外因性IL−2で制御された分化は、IL−2で駆動されたFoxp3Tregの大部分がCD103であったのに対して、RA媒介TGF−β依存性Foxp3分化が、主にCD103Tregを生成したという点で、はっきりと異なるように思われた(図8C)。反対に、RAが、L−17サイトカイン 分泌を測定可能な程度に減少させ、一方で、外因性IL−2が減少させなかったことから、TH−17細胞を抑制するRAおよびIL−2の機構は、いくつかの違いを有するようにも思われた(図8E)。これらの研究は、集合的に、外因性IL−2およびRAの両方が、それらの制御機能、TGF−βとの協調、およびさらなる下流機構に対して初期IL−2シグナリングを必要とするが、それらは、非常に異なる場合があることを示す。
【0192】
転写因子、STAT5およびSTAT3/RORγtは、Foxp3およびIL−17の転写にそれぞれ関与することが報告されている[(Ivanov, II et al., Cell 126, 1121(2006); X. O. Yang et al., J Biol Chem(2007); A. Laurence et al., Immunity 26, 371(2007)]。RORγtは、RARとの強い相同性、ならびに転写活性化因子およびレプレッサとの関連で両方の機能を示す(Winoto, et al., Cell 109(2002))。STAT3/RORγtと同様に、STAT5およびRARもまた関連しており、それらは、物理的に相互作用し、協調的転写活性を促進するために、重複DNA結合部位と結合することができる[(Si., et al., Blood 100, 4401(2002)]。加えて、RARおよびSTAT5は、RAによって放出することができる同一リプレッサ、SMRTと結合する[(Nakajima et. al., Embo 20, 6836(2001)]。さらに、RAはまた、TGF−β受容体シグナリングの下流で作用するSmadと、および/またはCD103誘発に関与し、TGF−β媒介性シグナリングにおいて協調するために、Smadと物理的に相互作用する転写因子Runx3と相乗作用を与え得る[(Woolf, et. al., Dev Biol(2006)]。
【0193】
Foxp3Treg分化を促進する一方で、TGF−β依存性Th−17生成を阻害するRAの相互活性は、TGF−βが、炎症性および抗炎症性免疫の両方を調節するための自己調整機構を提供し得る。この制御能力は、腸に対して特定の関連性を有し、そこでは、効率的な免疫防御が、粘膜関門の完全性の維持と同時に起こらなければならない。
【0194】
ビタミンA欠乏は、免疫機能障害および死亡率の増加を引き起こす[A. Sommer, J Infect Dis 167, 1003(1993)]。本研究は、RA媒介効果が、生体内で重要であり得るという証拠を提供してきた。副生理学的レベルのRAの免疫病理特徴が、抗炎症性Tregを犠牲にして、炎症性TH−17細胞を支持する不均衡なTGF−β機能に部分的に起因し得ることが考えられる。
【0195】
実施例11
本実施例は、RALDHアイソフォーム発現の研究を含む。
【0196】
図10に示されるように、ソート全脾臓CD11c樹状細胞(10A)、またはCD4、CD8、もしくは形質細胞様樹状細胞を発現する小集団において分類されたCD11c樹状細胞(10B)による、RALDH酵素アイソフォーム1、2、および3(10A)、またはRALDH2のみ(10B)に対して、qPCRによってmRNAの発現を測定した。分類後、培地のみ(なし)、異なるサイトカイン(TGF−β、mix=IL−1IL−6TNF−α、Tmix=TGF−βmix、TR=TGF−β+RAまたはレチノイン酸(RA))の存在下で18時間インキュベートし、mRNAを抽出し、cDNAを生成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御性T細胞への分化を刺激または増加させる方法であって、血液細胞もしくはT細胞を、制御性T細胞への分化を刺激または増加させるために十分な量のTGF−βもしくはTGF−β類似体およびレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記レチノイン酸受容体作動薬は、ビタミンA、またはビタミンA誘導体、類似体、もしくは代謝産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビタミンA代謝産物は、レチノイン酸、またはレチノイン酸誘導体、類似体、もしくは異性体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レチノイン酸誘導体は、エステルまたはアミドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記レチノイン酸誘導体は、フェンレチニドまたはレチンアルデヒドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記レチノイン酸類似体は、9−シス−レチノイン酸、13−シス−レチノイン酸、またはオールトランス−レチノイン酸を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記レチノイン酸異性体は、アロチノイドを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記アロチノイドは、アダパレンまたはタザロテンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レチノイドX受容体(RXR)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬は、レチナール、またはレチナール誘導体、立体異性体、類似体、または代謝産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記レチナール誘導体、立体異性体、類似体、または代謝産物は、オールトランス、13−シス、11−シス、9−シス、7−シス、11,13−シス、もしくは9,13−シス−ビタミンAアルデヒド、または水和物、ヘミアセタール、もしくはアセタール体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レチナール誘導体、立体異性体、類似体、または代謝産物は、レチナール水和物、レチナールメチルヘミアセタール、レチナールエチルヘミアセタール、レチナールプロピルヘミアセタール、レチナールイソプロピルヘミアセタール、レチナールブチルヘミアセタール、レチナールペンチルヘミアセタール、レチナールオクチルヘミアセタール、レチナールベンジルヘミアセタール、レチナールジメチルアセタール、レチナールジエチルアセタール、レチナールジプロピルアセタール、レチナールジイソプロピルアセタール、レチナールジブチルアセタール、レチナールジペンチルアセタール、レチナールジオクチルアセタール、レチナールジベンジルアセタール、レチナールプロピレングリコールヘミアセタールもしくはアセタール、レチナール1,2−O−イソプロピリデングリセリルヘミアセタールもしくはアセタール、レチナール3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールヘミアセタールもしくはアセタール、レチナールフィチルヘミアセタール、レチナールジフィチルアセタール、レチナールドデシルヘミアセタール、またはレチナールジドデシルアセタールである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記レチナール誘導体は、5,6−ジオキソ−5,6−セコ−レチナール、5,6−ジヒドロ−5,6−エポキシ−レチナール、または4−オキソレチナールである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記血液細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
T細胞は、前記血液細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記血液細胞または前記T細胞は、哺乳類の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記血液細胞または前記T細胞は、ヒトの細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記血液細胞または前記T細胞は、試験管内または生体内で接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
試験管内、生体外、または生体内で制御性T細胞を増殖または拡張させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
TGF−β作動薬に前記血液細胞または前記T細胞を接触させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
IL−2に前記血液細胞または前記T細胞を接触させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記T細胞は、未処理T細胞または活性化T細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記活性化T細胞は、未処理T細胞と比較して、CD44の発現の増加およびCD45の発現の低下を示すと特徴付けられるT細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
単離または精製された集団または複数の制御性T細胞であって、制御性T細胞と関連したマーカーを発現する、制御性T細胞。
【請求項24】
制御性T細胞と関連した前記マーカーの発現の増加は、未処理、活性化、またはエフェクターT細胞内のマーカーの発現よりも大きい、請求項23に記載の制御性T細胞。
【請求項25】
制御性T細胞と関連したマーカーを発現する制御性T細胞の試験管内培養物であって、前記制御性T細胞は、レチノイドX受容体(RXR)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を用いずに、血液細胞のTGF−βまたはTGF−β類似体との接触後の培養物中の制御性T細胞の量を上回る量で前記培養物中に存在するか、または前記制御性T細胞は、レチノイン酸受容体作動薬を用いずに、血液細胞のTGF−βまたはTGF−β類似体との接触後の培養物中の制御性T細胞の量を上回る量で前記培養物中に存在する、制御性T細胞と関連したマーカーを発現する制御性T細胞の試験管内培養物。
【請求項26】
制御性T細胞と関連したマーカーを発現する制御性T細胞の試験管内培養物であって、前記制御性T細胞は、精製、単離、または増殖によって前記培養物中の制御性T細胞数が増加することなく、前記培養物中に存在する全細胞数の約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%超に相当する、制御性T細胞と関連したマーカーを発現する制御性T細胞の試験管内培養物。
【請求項27】
前記培養物中の前記制御性T細胞数は、精製、単離、または増殖によって増加していない、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項28】
前記制御性T細胞は、血液細胞またはT細胞のTGF−βまたはTGF−β類似体およびレチノイン酸受容体作動薬との接触によって、あるいは、血液細胞またはT細胞のTGF−βまたはTGF−β類似体およびレチノイドX受容体(RXR)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬との接触によって産生される、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項29】
制御性T細胞と関連した前記マーカーは、Foxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、またはCTLA4のうちの1つ以上である、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項30】
制御性T細胞と関連した前記マーカーは、Foxp3、CCR9、およびα4β7を含む、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項31】
制御性T細胞と関連した前記マーカーは、Foxp3、CD103、CCR9、およびα4β7を含む、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項32】
前記制御性T細胞の少なくとも一部は、対象への導入または投与後に分化状態を維持するか、または生存するか、もしくは増殖する、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項33】
前記制御性T細胞の少なくとも一部は、対象への導入または投与後に制御性T細胞と関連したマーカーを発現するか、生存するか、もしくは増殖する、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項34】
前記制御性T細胞の少なくとも一部は、対象への導入または投与後にFoxp3、CD103、CCR9、α4β7、CD25、またはCTLA4マーカーの発現を維持するか、生存するか、もしくは増殖する、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項35】
前記T細胞の少なくとも一部は、対象への導入または投与後に、少なくとも約8時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間以上、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30日間以上、または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、21、24、27、30週間以上、分化状態を維持するか、または制御性T細胞と関連したマーカーを発現する、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項36】
前記T細胞の少なくとも一部は、対象への導入または投与後に、制御性T細胞と関連した機能を有する、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項37】
制御性T細胞と関連した前記機能は、免疫反応、炎症、または炎症反応の阻害または抑制である、請求項36に記載の制御性T細胞。
【請求項38】
前記制御性T細胞は、レチノイドX受容体(RXR)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を用いずに、TGF−βまたはTGF−β類似体との血液細胞の接触によって産生される制御性T細胞よりも、対象への導入または投与後に大きい制御性T細胞機能を提供するか、またはレチノイン酸受容体作動薬を用いずに、TGF−βまたはTGF−β類似体との血液細胞の接触によって産生される制御性T細胞よりも、対象への導入または投与後に大きい制御性T細胞機能を提供する、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物。
【請求項39】
制御性T細胞機能は、対象における免疫反応、炎症、または炎症反応の、より大きい阻害または抑制を含む、請求項38に記載の複数の制御性T細胞。
【請求項40】
請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物を含む医薬製剤、および薬学的または生物学的に許容される担体または賦形剤。
【請求項41】
請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物を含むキットであって、細胞の生存の維持に関する、または対象への導入または投与に関する使用説明書を含む、キット。
【請求項42】
制御性T細胞を産生するか、または制御性T細胞数を増加させる方法であって、血液細胞またはT細胞を、制御性T細胞を産生するか、または制御性T細胞数を増加させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む、方法。
【請求項43】
細胞を抗原または抗CD3抗体に接触させるステップをさらに含む、請求項1または42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗原は、自己抗原である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
活性化またはエフェクターT細胞への分化を阻害または減少させる方法であって、T細胞を、活性化またはエフェクターT細胞への分化を阻害または減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む、方法。
【請求項46】
TH−17+エフェクター細胞数を減少させる方法であって、TH−17+エフェクター細胞を、TH−17+エフェクター細胞数を減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む、方法。
【請求項47】
前記レチノイン酸受容体作動薬は、ビタミンA、またはビタミンA誘導体、類似体、もしくは代謝産物である、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記レチノイドX受容体(RXR)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬は、レチナール、またはレチナール誘導体、立体異性体、類似体、もしくは代謝産物である、請求項45または46に記載の方法。
【請求項49】
制御性T細胞を必要とする対象を治療する方法であって、請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項50】
前記制御性T細胞は、同一または異なる対象の細胞から採取または抽出されたか、あるいは同一または異なる対象から採取または抽出された細胞から産生された、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象は、望ましくない、異常な、または病的な適応免疫反応を有しているか、またはその危険性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記対象は、望ましくない、異常な、または病的な急性または慢性免疫反応を有しているか、またはその危険性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記対象は、急性もしくは慢性炎症反応、急性もしくは慢性炎症、または自己免疫疾患を有しているか、またはその危険性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記対象は、移植拒絶反応または移植片対宿主病を有しているか、またはその危険性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記対象は、同種幹細胞移植、骨髄移植、または臓器もしくは組織移植を受けるか、またはその可能性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記対象は、多発性硬化症(MS)、1型もしくは2型糖尿病、関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、アトピー性皮膚炎、湿疹様皮膚炎、乾癬、シェーグレン症候群、腸炎、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ぜんそく、アレルギー性ぜんそく、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、多発性筋炎、ウェゲナー肉芽腫症、肝炎、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、橋本甲状腺炎、多腺性自己免疫症候群、免疫介在性不妊症、自己免疫性アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、自己免疫性脱毛症、白斑、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、ギランバレー症候群、スティフマン症候群、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群、全身性壊死性血管炎、原発性胆汁性肝硬変、または骨髄異形成症候群を有しているか、またはその危険性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記対象は、哺乳動物である、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記対象は、ヒトである、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
対象における免疫反応、炎症、または炎症反応を低下または減少させる方法であって、前記対象における前記免疫反応、炎症、または炎症反応を低下または減少させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項60】
前記レチノイン酸受容体作動薬は、ビタミンA、またはビタミンA誘導体、類似体、もしくは代謝産物である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ビタミンA代謝産物は、レチノイン酸、またはレチノイン酸誘導体、類似体、もしくは異性体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記レチノイン酸誘導体は、エステルまたはアミドを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記レチノイン酸誘導体は、フェンレチニドまたはレチンアルデヒドを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記レチノイン酸類似体は、9−シス−レチノイン酸、13−シス−レチノイン酸、またはオールトランス−レチノイン酸を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記レチノイン酸異性体は、アロチノイドを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記アロチノイドは、アダパレンまたはタザロテンを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記作動薬は、レチナール、またはレチナール誘導体、立体異性体、類似体、もしくは代謝産物である、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
前記レチナール誘導体、立体異性体、類似体、もしくは代謝産物は、オールトランス、13−シス、11−シス、9−シス、7−シス、11,13−シス、もしくは9,13−シス−ビタミンAアルデヒド、または水和物、ヘミアセタール、もしくはアセタール体である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記レチナール誘導体、立体異性体、類似体、もしくは代謝産物は、レチナール水和物、レチナールメチルヘミアセタール、レチナールエチルヘミアセタール、レチナールプロピルヘミアセタール、レチナールイソプロピルヘミアセタール、レチナールブチルヘミアセタール、レチナールペンチルヘミアセタール、レチナールオクチルヘミアセタール、レチナールベンジルヘミアセタール、レチナールジメチルアセタール、レチナールジエチルアセタール、レチナールジプロピルアセタール、レチナールジイソプロピルアセタール、レチナールジブチルアセタール、レチナールジペンチルアセタール、レチナールジオクチルアセタール、レチナールジベンジルアセタール、レチナールプロピレングリコールヘミアセタールもしくはアセタール、レチナール1,2−O−イソプロピリデングリセリルヘミアセタールもしくはアセタール、レチナール3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールヘミアセタールもしくはアセタール、レチナールフィチルヘミアセタール、レチナールジフィチルアセタール、レチナールドデシルヘミアセタール、またはレチナールジドデシルアセタールである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記レチナール誘導体は、5,6−ジオキソ−5,6−セコ−レチナール、5,6−ジヒドロ−5,6−エポキシ−レチナール、または4−オキソレチナールである、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記対象は、骨格関節または消化管における免疫反応、炎症、または炎症反応の治療を受ける、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記対象に対して、前記レチノイン酸受容体作動薬は、骨格関節または消化管に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記対象は、多発性硬化症(MS)、1型もしくは2型糖尿病、関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、アトピー性皮膚炎、湿疹様皮膚炎、乾癬、シェーグレン症候群、腸炎、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ぜんそく、アレルギー性ぜんそく、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、多発性筋炎、ウェゲナー肉芽腫症、肝炎、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、橋本甲状腺炎、多腺性自己免疫症候群、免疫介在性不妊症、自己免疫性アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、自己免疫性脱毛症、白斑、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、ギランバレー症候群、スティフマン症候群、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群、全身性壊死性血管炎、原発性胆汁性肝硬変、または骨髄異形成症候群を有しているか、またはその危険性がある、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
請求項23に記載の制御性T細胞、または請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の量は、レチノイン酸の生理学的量と近似的に等しい、請求項59に記載の方法。
【請求項76】
前記対象におけるレチノイン酸受容体作動薬またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の血清濃度は、約1x10−9M〜約5x10−5Mである、請求項59に記載の方法。
【請求項77】
前記対象におけるレチノイン酸受容体作動薬またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の血清濃度は、約1x10−9Mより少ない、請求項59に記載の方法。
【請求項78】
投与されるレチノイン酸受容体作動薬またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の量は、約10mg〜1200mgの範囲である、請求項59に記載の方法。
【請求項79】
投与されるレチノイン酸受容体作動薬またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬の量は、約50mg〜500mgの範囲である、請求項59に記載の方法。
【請求項80】
樹状細胞の培養物であって、前記樹状細胞は、制御性樹状細胞への分化を刺激または増加させるレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬で処理される、樹状細胞の培養物。
【請求項81】
樹状細胞の培養物であって、前記樹状細胞は、レチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬、および抗原で処理される、樹状細胞の培養物。
【請求項82】
前記樹状細胞は、脾臓樹状細胞、粘膜樹状細胞、血液、末梢血液細胞、骨髄単球由来樹状細胞、または誘導性樹状細胞を含む、請求項80または81に記載の培養物。
【請求項83】
前記誘導性樹状細胞は、CD34+前駆細胞派生樹状細胞を含む、請求項82に記載の培養物。
【請求項84】
前記樹状細胞は、CD8−樹状細胞またはCD4−/CD8−樹状細胞を含む、請求項80または81に記載の培養物。
【請求項85】
レチノイン酸を産生する樹状細胞を産生する方法であって、樹状細胞を、接触した樹状細胞によってレチノイン酸の産生を増加させる量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む、方法。
【請求項86】
前記樹状細胞は、脾臓樹状細胞、粘膜樹状細胞、血液、末梢血液細胞、骨髄単球由来樹状細胞、または誘導性樹状細胞を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記誘導性樹状細胞は、CD34+前駆細胞派生樹状細胞を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記樹状細胞は、CD8−樹状細胞またはCD4−/CD8−樹状細胞を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
前記接触した樹状細胞は、レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ(RALDH2)の発現の増加を示す、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
前記樹状細胞は、試験管内または生体内で接触させられる、請求項83に記載の方法。
【請求項91】
対象における抗原に対する免疫反応を低下または抑制する方法であって、前記抗原に対する前記免疫反応を低下または抑制する量の請求項23に記載の制御性T細胞、請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物、または請求項80もしくは81に記載の培養物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項92】
前記細胞または細胞培養物は、前記細胞または細胞培養物が投与される前記対象と同一の対象から採取または抽出された、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記対象は、望ましくない、異常な、または病的な適応免疫反応を有しているか、またはその危険性がある、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記対象は、望ましくない、異常な、または病的な急性または慢性免疫反応を有しているか、またはその危険性がある、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記対象は、急性または慢性炎症反応を有しているか、またはその危険性がある、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記対象は、急性または慢性炎症を有しているか、またはその危険性がある、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
前記対象は、自己免疫疾患を有しているか、またはその危険性がある、請求項91に記載の方法。
【請求項98】
前記対象は、移植拒絶反応または移植片対宿主病を有しているか、またはその危険性がある、請求項91に記載の方法。
【請求項99】
前記対象は、同種幹細胞移植、骨髄移植、または臓器もしくは組織移植を受けるか、またはその可能性がある、請求項91に記載の方法。
【請求項100】
前記抗原は、自己抗原を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項101】
前記抗原は、免疫反応が望ましくない非自己抗原を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項102】
対象における細胞、組織、または臓器に対する免疫反応を低下または抑制する方法であって、前記細胞、組織、または臓器に対する前記免疫反応を低下または抑制する量の請求項23に記載の制御性T細胞、請求項25もしくは26に記載の制御性T細胞の培養物、または請求項80もしくは81に記載の培養物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項103】
前記細胞、組織、または臓器は、前記細胞または細胞培養物が投与される前記対象とは異なる、ドナー対象からの移植である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記細胞または細胞培養物は、前記培養物が投与される対象に対して自己である、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
細胞内のIL−17発現または産生を低下または抑制する方法であって、細胞を、前記細胞内のIL−17発現または産生を低下または抑制する量のレチノイン酸受容体作動薬、またはレチノイドX受容体(RXR)もしくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)作動薬に接触させるステップを含む、方法。
【請求項106】
前記作動薬は、レチナール、またはレチナール誘導体、立体異性体、類似体、もしくは代謝産物である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記細胞は、CD4+T細胞である、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記細胞は、試験管内または生体内で接触させられる、請求項105に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−531138(P2010−531138A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512396(P2010−512396)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066974
【国際公開番号】WO2008/157394
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(506400948)ラ ホヤ インスティテュート フォア アラージー アンド イムノロジー (4)
【Fターム(参考)】