説明

制御方法、温度制御方法、補正装置、温度調節器、およびプログラム

【課題】操作量が飽和するのを回避して、被処理物を、所望の状態で処理するための調整作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】目標温度SPを変化させたときの操作量MV、ウェハの温度WAF、および、熱板の検出温度PVの各変化に基づいて、目標温度SPと操作量MVとの関係を示す第1の行列、および、ウェハの温度WAFと目標温度SPとの関係を示す第2の行列を取得し、第1,第2の行列を用いて、操作量MVを制限した範囲内で、ウェハの面内の温度のばらつきを最小化する目標温度SPの補正値を求めるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の温度や圧力などの物理状態を制御する制御方法、制御対象の温度を制御する温度制御方法、この温度制御方法に好適な補正装置、温度調節器およびプログラムに関し、特に、多入出力干渉系の制御対象の温度などの物理状態のばらつきを抑制するのに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、半導体装置の製造プロセスにおいては、半導体ウェハの熱処理に温度調節器が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる製造プロセスにおいて、例えば、半導体ウェハを、熱板に載置して加熱処理するような場合には、温度調節器は、熱板に配設された温度センサからの検出温度に基づいて、熱板の温度が、設定温度(目標温度)に一致するように、操作量を出力し、この操作量によってSSR等を介して熱板に配設されているヒータの通電を制御するように構成されている。
【0004】
かかる半導体ウェハの熱処理では、半導体ウェハの温度が所望の均一な温度で熱処理されるように熱板の温度を制御する必要があるが、そのためには、半導体ウェハと熱板との温度差やウェハ面内での位置による温度のばらつきなどを補正した温度制御を行なう必要がある。
【0005】
このため、予め温度センサを取り付けた半導体ウェハを試験用ウェハとし、この試験用ウェハを熱板で熱処理し、この熱処理における試験用ウェハの温度分布を温度センサで計測しながら熱板の設定温度または温度調節器に入力される熱板の検出温度(入力温度)を、試験用ウェハの温度が所望の均一な温度になるように補正する調整作業が必要となる。
【0006】
しかしながら、複数の温度センサおよび複数のヒータが配設されて、各温度センサの検出温度に基づいて、各ヒータの通電が個別に制御されるような複数チャンネルの熱板では、チャンネル間の相互干渉によって、上述の設定温度または入力温度を補正する調整作業が容易でなく、作業者の経験に依存し、試行錯誤的に行わねばならず、調整工数が多大になるといった課題がある。
【0007】
そこで、本件出願人は、かかる調整作業を容易に行なえるようにした温度制御方法を既に提案している(特許文献2参照)。
【0008】
この温度制御方法は、例えば、半導体ウェハを熱処理する熱板の目標温度を変化させたときの半導体ウェハの温度分布を予め計測し、これに基づいて、半導体ウェハの温度を均一にするための目標温度(設定温度)の補正値を求め、この補正値で目標温度を補正して半導体ウェハの温度の均一化を図るものである。
【0009】
以下、この温度制御方法の概要について説明する。
【0010】
図7は、この温度制御方法を用いた温度調節器を備える熱処理装置の概略構成図である。
【0011】
熱処理装置は、半導体ウェハ1を熱板2で熱処理するものであり、温度調節器3−1は、図示しない上位機器や設定部から設定された設定温度(目標温度)と、熱板2に配設された3つの温度センサ4a〜4cからの検出温度との偏差に基づいて、熱板2に配設された3つのヒータ5a,5b,5cの通電を制御して熱板2の温度を設定温度になるように制御する。すなわち、この例では、3チャンネルの例を示しており、各チャンネル毎に温度制御される。
【0012】
先に提案している温度制御方法は、図8に示すように、各チャンネルの設定温度を順番に変化させたときの半導体ウェハ1の温度を複数の計測点でそれぞれ計測して、各計測点における干渉の度合いを予め計測し(S1)、計測した干渉の度合いに基づいて、半導体ウェハ1の温度を均一にするための設定温度の補正値を算出し(S2)、実運用においては、算出した補正値を用いて設定温度を補正する(S3)ものである。
【0013】
図9は、干渉の度合いを計測して補正値を算出するための構成の一例を示す図であり、図7に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0014】
この図3において、1は計測点に温度センサ6a〜6cが取り付けられた半導体ウェハである試験用ウェハであり、7は試験用ウェハ1の温度を計測する温度ロガーであり、8−1は温度ロガー7および温度調節器3−1に接続されたPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)やパソコンなどの上位装置である。この上位装置8−1は、温度ロガー7および温度調節器3−1との通信などによって、温度調節器3−1の設定温度を変更できるとともに、この設定温度と試験用ウェハ1の計測点の温度とを同期して計測することができる。
【0015】
試験用ウェハ1の計測点は、熱板2の各チャンネルのヒータ5a〜5cおよび温度センサ4a〜4cに対応するよう配置されている。
【0016】
この温度制御方法では、半導体ウェハ1における各チャンネル間の熱的な干渉、すなわち、設定温度を変化させたときに、半導体ウェハ1の各計測点の温度が受ける影響を、計測するために次のようにしている。
【0017】
すなわち、3チャンネルの内の第1のチャンネルの設定温度を、図10(a)に示すように、ステップ状に、例えば、Δa1変化させ、同図(b)に示すように、そのときの試験用ウェハ1の各計測点の温度変化を各温度センサ6a〜6cで計測する。同様にして、第2のチャンネルの設定温度を、ステップ状に、例えば、Δa2変化させ、そのときの試験用ウェハ1の各計測点の温度変化を計測し、さらに、第3のチャンネルの設定温度を、ステップ状に、例えば、Δa3変化させ、そのときの試験用ウェハ1の各計測点の温度変化を計測する。
【0018】
以上のようにして計測されたデータに基いて、設定温度を変化させた時点から任意の時間が経過した時点における干渉の度合いを、干渉行列として求めることができる。
【0019】
すなわち、図10に示すように、第1のチャンネルの設定温度を、ステップ状にΔa1変化させた時点から所定時間t経過後の試験用ウェハ1の3つの計測点の各温度変化を、c11,c12,c13とし、同様に、第2のチャンネルの設定温度を、ステップ状にΔa2変化させた時点から所定時間t経過後の試験用ウェハ1の3つの計測点の各温度変化を、c21,c22,c23とし、第3のチャンネルの設定温度を、ステップ状にΔa3変化させた時点から所定時間t経過後の試験用ウェハ1の3つの計測点の各温度変化を、c31,c32,c33とすると、所定時間tに対応する下記の干渉行列が求まる。
【0020】
【数12】

【0021】
そして、熱板2の各チャンネルの設定温度の変化を、Δa1〜Δa3とし、所定時間t経過後の半導体ウェハ1の計測点の温度変化を、Δb1〜Δb3とすると、以下の関係式が成立する。
【0022】
【数13】

【0023】
上記所定時間tの選択によって、半導体ウェハ1の温度が安定した後の定常状態の関係式を得ることができ、定常状態の干渉特性を求めることができる。例えば、半導体ウェハ1を熱板2に載置して半導体ウェハ1の温度が上昇して整定した定常状態における、半導体ウェハ1の温度のばらつきを抑制して面内温度の均一化を図るための補正値を次のようにして算出することができる。
【0024】
先ず、熱板2で試験用ウェハ1を処理して試験用ウェハ1の温度が整定したときの各計測点の温度を計測し、所望の温度からの差を算出し、この算出値を、Δb1〜Δb3とする。例えば、半導体ウェハ1を、所望の温度100℃で均一にしたい場合に、熱板2を、設定温度100℃に整定させた状態で、試験用ウェハ1を載置してその温度が整定した状態の各計測点の温度を計測し、各温度が、例えば、97℃,98℃,99℃とすると、Δb1=3,Δb2=2,Δb3=1となる。
【0025】
面内温度の均一化を図るには、所望の温度からの温度差である算出値Δb1〜Δb3を、小さくするように、各チャンネルの熱板2の設定温度または温度調節器3に入力される熱板2の検出温度(入力温度)の補正値Δa1〜Δa3を求めればよい。
【0026】
この補正値Δa1〜Δa3は、上述の干渉行列の逆行列を用いて次式で算出することができる。
【0027】
【数14】

【0028】
ここで、上記(20)式に使用する干渉行列は、上述の所定時間tを、設定温度を変化させた時点から各計測点の温度が整定した後の時点までの時間、例えば、図10(a)に示すt1となるような時間に選択し、この所定時間t1に対応して得られた干渉行列、すなわち、定常状態に対応する干渉行列である。
【0029】
上記(20)式を解くことにより、従来試行錯誤的に調整していた補正値を、算出できることになる。
【0030】
この算出された補正値を、熱板2の設定温度を加算して補正することにより、半導体ウェハ1の温度ばらつきを抑制することができる。
【特許文献1】特開平6−188462号公報
【特許文献2】特開2006−113724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
上述の温度制御方法では、予め求めた補正値によって目標温度(設定温度)を補正するものであり、温度制御システムの構成などによっては、補正された目標温度では、操作量が飽和してしまい、半導体ウェハの温度のばらつきを十分に抑制できない場合がある。
【0032】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、操作量が飽和するのを回避して、被処理物を、所望の状態で処理するための調整作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
(1)本発明の制御方法は、被処理物を処理する処理手段の物理状態を複数の検出点で検出した各検出情報と複数の各目標情報とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて、前記処理手段の物理状態を制御する制御方法であって、前記目標情報と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の物理状態と前記操作量との関係または前記被処理物の物理状態と前記目標情報との関係を示す第2の関係情報を、取得する第1のステップと、前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の物理状態になるように、前記目標情報および前記検出情報の少なくともいずれか一方を補正する補正値を求める第2のステップとを含むものである。
【0034】
ここで、被処理物とは、処理手段で処理される物、例えば、加熱、冷却、加圧などの処理が施される物などをいう。
【0035】
処理手段とは、熱板や加熱炉などの加熱装置、冷却装置、成形装置、反応装置など被処理物に対して処理を施すものをいう。
【0036】
物理状態とは、温度、圧力、流量、速度あるいは液位などの様々な物理量の状態をいう。
【0037】
検出情報とは、検出された物理状態の情報をいい、例えば、検出温度、検出圧力、検出流量などをいう。
【0038】
目標情報とは、物理状態の制御目標の情報をいい、例えば、目標温度、目標圧力、目標流量などをいう。
【0039】
所望の状態とは、例えば、被処理物の物理状態が均一な状態、あるいは、物理状態が望ましい分布となっている状態などをいい、少なくとも目標情報の補正前よりも望ましい状態をいう。
【0040】
操作量を制限する範囲は、出力可能な操作量の範囲とするのが好ましい。
【0041】
本発明の制御方法によると、目標情報と操作量との関係を示す第1の関係情報、および、被処理物の物理状態と操作量との関係または被処理物の物理状態と目標情報との関係を示す第2の関係情報を取得し、これら関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、被処理物が所望の物理状態になるように補正値を求めるので、この補正値を用いて目標温度や検出温度を補正することにより、作業者が経験を生かして試行錯誤的に行っていた調整作業が不要になるとともに、操作量を制限した範囲内で補正値を求めるので、操作量が飽和して補正できないといったことがない。
【0042】
(2)本発明の温度制御方法は、被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御する温度制御方法であって、前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を、取得する第1のステップと、前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する補正値を求める第2のステップとを含むものである。
【0043】
本発明の温度制御方法によると、目標温度と操作量との関係を示す第1の関係情報、および、被処理物の温度と操作量との関係または被処理物の温度と目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得し、これら関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、被処理物が所望の温度状態になるように補正値を求めるので、この補正値を用いて目標温度や検出温度を補正することにより、作業者が経験を生かして試行錯誤的に行っていた調整作業が不要になるとともに、操作量を制限した範囲内で補正値を求めるので、操作量が飽和して補正できないといったことがない。
【0044】
(3)本発明の温度制御方法の他の実施形態では、前記第1,第2の関係情報が、定常状態における前記関係をそれぞれ示すものであって、前記第2の関係情報が、前記被処理物の温度と前記操作量との関係を示すものである。
【0045】
この実施形態によると、定常状態であるので、目標温度と検出温度とが略等しいものとして、補正値を求めることが可能となる。
【0046】
(4)本発明の温度制御方法の一つの実施形態では、前記補正値によって、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正するものである。
【0047】
この実施形態によると、得られた補正値によって、目標温度や検出温度を補正するので、被処理物を、所望の温度状態になるように制御することができる。
【0048】
(5)本発明の温度制御方法の他の実施形態では、前記第1のステップでは、前記目標温度を変化させたときの前記操作量、前記被処理物の温度、および、前記処理手段の検出温度の各変化に基づいて、前記第1,第2の関係情報を取得するものでる。
【0049】
この実施形態によると、目標温度を変化させたときに、操作量、被処理物の温度、および、処理手段の検出温度がどのように変化するかに基づいて、目標温度と操作量との関係を示す第1の関係情報、および、被処理物の温度と操作量との関係または被処理物の温度と目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得することができる。
【0050】
(6)本発明の温度制御方法の一つの実施形態では、前記第2のステップでは、前記第1,第2の関係情報、前記補正値による補正を行なう前の前記被処理物の温度、および、前記補正を行なう前の前記操作量に基づいて、前記補正値を求めるものである。
【0051】
この実施形態によると、補正前の被処理物の温度から所望の温度状態、例えば、均一な温度状態からの温度のずれが分かるので、この温度のずれを解消するように目標温度や検出温度を補正するための補正値を求めることができる。
【0052】
(7)本発明の温度制御方法の他の実施形態では、前記第1の関係情報が、前記目標温度と前記操作量との関係を示す行列であり、前記第2の関係情報が、前記被処理物の温度と前記操作量との関係を示す行列または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す行列である。
【0053】
この実施形態によると、目標温度と操作量との関係を示す行列、および、被処理物の温度と操作量との関係を示す行列または被処理物の温度と目標温度との関係を示す行列を用いて補正値を算出することができる。
【0054】
(8)本発明の補正装置は、被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御するとともに、補正値によって、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する温度調節器の前記補正値を求める補正装置であって、前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得し、前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記補正値を求める演算手段を備えている。
【0055】
本発明の補正装置によると、目標温度と操作量との関係を示す第1の関係情報、および、被処理物の温度と操作量との関係または被処理物の温度と目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得し、これら関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、被処理物が所望の温度状態になるように補正値を求めるので、この補正値を用いて目標温度や検出温度を補正することにより、作業者が経験を生かして試行錯誤的に行っていた調整作業が不要になるとともに、操作量を制限した範囲内で補正値を求めるので、操作量が飽和して補正できないといったことがない。
【0056】
(9)本発明の補正装置の一つの実施形態では、前記演算手段は、前記目標温度を変化させたときの前記操作量、前記被処理物の温度、および、前記処理手段の検出温度の各変化に基づいて、前記第1,第2の関係情報を取得するものである。
【0057】
この実施形態によると、目標温度を変化させたときに、操作量、被処理物の温度、および、処理手段の検出温度がどのように変化するかに基づいて、目標温度と操作量との関係を示す第1の関係情報、および、被処理物の温度と操作量との関係または被処理物の温度と目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得することができる。
【0058】
(10)本発明の補正装置の他の実施形態では、前記演算手段は、前記第1,第2の関係情報、前記補正値による補正を行なう前の前記被処理物の温度、および、前記補正を行なう前の前記操作量に基づいて、前記補正値を求めるものである。
【0059】
この実施形態によると、補正前の被処理物の温度から所望の温度状態、例えば、均一な温度状態からの温度のずれが分かるので、この温度のずれを解消するように目標温度や検出温度を補正するための補正値を求めることができる。
【0060】
(11)本発明の温度調節器は、被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御する温度調節器であって、上記(8)〜(10)のいずれか補正装置によって求められた補正値に応じて、目標温度および検出温度の少なくともいずれか一方を補正するものである。
【0061】
本発明の温度調節器によると、補正装置からの補正値に応じて、目標温度および検出温度の少なくともいずれか一方を補正するので、被処理物を、所望の温度状態で処理するための目標温度や検出温度を補正するための調整作業が不要になるとともに、操作量を制限した範囲内で補正値を求めるので、操作量が飽和して補正できないといったことがない。
【0062】
(12)本発明の温度調節器は、被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御するとともに、補正値によって、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する温度調節器であって、前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得し、前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記補正値を求める演算手段を備えている。
【0063】
本発明の温度調節器によると、目標温度と操作量との関係を示す第1の関係情報、および、被処理物の温度と操作量との関係または被処理物の温度と目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得し、これら関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、被処理物が所望の温度状態になるように補正値を求めるので、この補正値を用いて目標温度や検出温度を補正することにより、作業者が経験を生かして試行錯誤的に行っていた調整作業が不要になるとともに、操作量を制限した範囲内で補正値を求めるので、操作量が飽和して補正できないといったことがない。
【0064】
(13)本発明のプログラムは、被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御する温度制御に用いられるプログラムであって、前記目標温度を変化させたときの、前記操作量、前記被処理物の温度、および、前記処理手段の検出温度の各変化に基づいて、前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を、取得する第1のステップと、前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する補正値を求める第2のステップとをコンピュータに実行させるものである。
【0065】
本発明のプログラムによると、当該プログラムを、コンピュータに実行させることにより、被処理物を、所望の温度状態で処理するための目標温度や検出温度を補正するための補正値を得ることができ、しかも、操作量を制限した範囲内で補正値を求めるので、操作量が飽和して補正できないといったことがない。
【発明の効果】
【0066】
以上のように本発明によれば、目標情報と操作量との関係を示す第1の関係情報、および、被処理物の物理状態と操作量との関係または被処理物の物理状態と目標情報との関係を示す第2の関係情報を取得し、これら関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、被処理物が所望の物理状態になるように補正値を求めるので、この補正値を用いて目標温度や検出温度を補正することにより、作業者が経験を生かして試行錯誤的に行っていた調整作業が不要になるとともに、操作量を制限した範囲内で補正値を求めるので、操作量が飽和して補正できないといったことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0068】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る温度調節器を備える熱処理装置の概略構成図である。
【0069】
この実施の形態の熱処理装置は、被処理物としての半導体ウェハ1を、処理手段としての熱板2で熱処理するものであり、温度調節器3は、図示しない上位機器や設定部から設定された設定温度(目標温度)と、熱板2に配設された3つの温度センサ4a〜4cからの検出温度との偏差に基づいて、熱板2に配設された3つのヒータ5a〜5cの通電を制御して熱板2の温度を設定温度になるように制御するものであり、3チャンネルのチャンネル毎に温度制御される。
【0070】
熱板2で熱処理される半導体ウェハ1は、図示しない搬送供給手段によって自動的に熱板2に載置されて順番に熱処理されるものである。
【0071】
かかる半導体ウェハ1の熱処理では、半導体ウェハ1の温度が所望の均一な温度で熱処理されるように熱板2の温度を制御する必要があり、このため、半導体ウェハ1と熱板2との温度差やウェハ面内での位置による温度のばらつきなどを補正した温度制御を行なう必要がある。
【0072】
この実施の形態では、かかる補正のための調整作業を、作業者の経験に依存して試行錯誤的に行うのではなく、しかも、操作量の飽和を回避しつつ、容易に行えるようにするものである。
【0073】
図2は、ウェハ面内の温度のばらつきを補正するための補正値を求めるための構成例を示す図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0074】
この図2において、1は計測点に温度センサ6a〜6eが取り付けられた半導体ウェハである試験用ウェハであり、7は試験用ウェハ1の温度を計測する温度ロガーであり、8は温度ロガー7および温度調節器3に接続されたPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)やパソコンなどの上位装置である。この上位装置8は、温度ロガー7および温度調節器3との通信などによって、温度調節器3の設定温度の変更および操作量の取得ができるとともに、この設定温度と試験用ウェハ1の計測点の温度とを同期して計測することができる。
【0075】
また、この実施の形態では、上位装置8は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータのROMに格納されている本発明に係るプログラムを実行することにより、補正装置としとて機能して、補正値を後述のようにして算出し、算出した補正値を温度調節器3に設定格納する。
【0076】
図3は、この実施形態の温度制御方法の処理手順を説明するためのフローチャートであり、図4は、第1のチャンネルの設定温度を変化させたときの各チャンネルの操作量MV、熱板2の検出温度PVおよび試験用ウェハの計測温度WAFの変化を代表的に示す図である。
【0077】
この実施の形態の温度制御方法は、先ず、一つのチャンネル、例えば、第1のチャンネルの設定温度SP1を、図4(a)に示すように、ステップ状にΔSP1変化させ(ステップn1)、操作量MV、検出温度PVおよび試験用ウェハ1の計測温度WAFが整定するまで待機する(ステップn2)。
【0078】
操作量MVは、図5に示す温度制御ループにおける温度調節器3のPIDコントローラ9の後段のリミッタ10の出力としている。なお、図5は、図2の温度調節器3を含む温度制御ループを代表的に示すものである。
【0079】
次に、操作量MV、検出温度PVおよび試験用ウェハ1の計測温度WAFが整定した状態において、図4(b)に示すように、設定温度SP1の変化ΔSP1に対する各チャンネルの操作量MVの変化量ΔMV11,ΔMV12,ΔMV13を算出するとともに、各チャンネルに対応する熱板2の検出温度PVの変化量ΔPV11,ΔPV12,ΔPV13を算出し、更に、試験用ウェハの5つの各計測点の計測温度WAFの変化量ΔWAF11,ΔWAF12,ΔWAF13,ΔWAF14,ΔWAF15を算出する(ステップn3)。
【0080】
以上の処理は、操作量MVが飽和していない状態において、操作量MVが飽和しないように行う。したがって、操作量が飽和する虞がある場合には、飽和が生じない温度域を利用して行う。また、例えば、操作量MVが上限(100%)であるチャンネルについては、マイナスのステップ入力としてもよい。
【0081】
第1のチャンネルと同様の処理を、第2,第3のチャンネルについても行う。すなわち、第2のチャンネルの設定温度SP2を、ステップ状にΔSP2変化させ、整定した後の操作量MVの変化量ΔMV21,ΔMV22,ΔMV23、検出温度PVの変化量ΔPV21,ΔPV22,ΔPV23および試験用ウェハ1の計測温度WAFの変化量ΔWAF21,ΔWAF22,ΔWAF23,ΔWAF24,ΔWAF25を算出する。
【0082】
更に、第3のチャンネルの設定温度SP3を、ステップ状にΔSP3変化させ、整定した後の操作量MVの変化量ΔMV31,ΔMV32,ΔMV33、検出温度PVの変化量ΔPV31,ΔPV32,ΔPV33および試験用ウェハ1の計測温度WAFの変化量ΔWAF31,ΔWAF32,ΔWAF33,ΔWAF34,ΔWAF35を算出する。
【0083】
次に、設定温度SPの変化に対して、試験用ウェハ1の各計測点WAFの計測温度がどのように変化するか、すなわち、どのように干渉するかを示す行列である次式の干渉行列Mを求める(ステップn4)。
【0084】
【数1】

【0085】
この干渉行列Mは、図5において、各チャンネルの設定温度SPと半導体ウェハ1の各計測点の温度WAFとの間の熱伝達を表す行列である。
【0086】
かかる干渉行列Mを用いて、各チャンネルの設定温度SP1〜SP3の変化ΔSP1〜ΔSP3に対する半導体ウェハ1の5つの計測点の温度WAF1〜WAF5の温度変化ΔWAF1〜ΔWAF5は、次式で表すことができる。
【0087】
【数2】

【0088】
この(2)式は、各チャンネルの設定温度の変化ΔSP1〜ΔSP3に対する半導体ウェハ1の各計測点の温度の変化ΔWAF1〜ΔWAF5を求めることができる関係式であり、かかる関係式は、上述の先に提案している温度制御方法における上記(19)式と基本的に同様である。
【0089】
この実施形態では、更に、操作量MVの変化ΔMVに対して、熱板2の検出温度PVがどのように変化するか、すなわち、どのように干渉するかを示す行列である干渉行列M_hを、次のようにして求める(ステップn4)。
【0090】
この干渉行列M_hは、図5において、各チャンネルの操作量MVと熱板2の検出温度PVとの間の熱伝達を表す行列である。
【0091】
上記(2)式と同様に、熱板2の検出温度PVの変化量ΔPVは、この干渉行列M_hと、操作量MVの変化量ΔMVとを用いて次のように表すことができる。
【0092】
ΔPV=M_h×ΔMV …(3)
したがって、干渉行列M_hは、
M_h=ΔPV×ΔMV−1
として求めることができる。
【0093】
上述の計測によって、操作量MVの変化量ΔMVおよび検出温度PVの変化量ΔPVは、次式のように求められている。
【0094】
【数3】

【0095】
【数4】

【0096】
したがって、干渉行列M_hは、次のようになる。
【0097】
【数5】

【0098】
また、上記(3)式から
ΔMV=M_h−1×ΔPV …(7)
となる。
【0099】
ここで、定常状態であるので、ΔPVは、近似的にΔSPと置き換えることができ、設定温度SPの変化ΔSPに対する操作量MVの変化ΔMVは、干渉行列M_hを用いて次式で表すことができる。
【0100】
ΔMV=M_h−1×ΔSP …(8)
また、上述のように、設定温度SPの変化ΔSPに対する半導体ウェハ1の温度の変化ΔWAFは、干渉行列Mを用いて次式で示される。
【0101】
ΔWAF=M×ΔSP …(9)
この(9)式に、設定温度SPを変化させる前の定常状態における初期値を加算すると、次のように表される。
【0102】
【数6】

【0103】
なお、この(10)式では、設定温度SPを変化させる前のウェハの温度をWAF_bef、設定温度SPを変化させた後のウェハの温度をWAF_aftとしている。
【0104】
また、設定温度SPの変化ΔSPに対する操作量MVの変化ΔMVを示す上記(8)式に、同様に初期値を加算するとともに、干渉行列M_h−1を、ΔPVおよびΔMVで置き換えると、次のように表される。
【0105】
【数7】

【0106】
なお、設定温度SPを変化させる前の操作量をMV_befとし、設定温度SPを変化させた後の操作量をMV_aftとしている。
【0107】
次に、上述の図3のステップn5に示すように、上記(10)式および(11)式を用いて、操作量MVを制限した範囲内で、各チャンネルの設定温度SP1〜SP3の補正値ΔSP1〜ΔSP3を求める。
【0108】
すなわち、上記(10),(11)式の半導体ウエハの5点における温度WAF1_aft〜WAF5_aftの最大値と最小値との差、すなわち、温度のばらつきを評価関数として、この評価関数が最も小さくなる補正値ΔSP1〜ΔSP3を求める。
【0109】
このとき、(11)式の操作量MV1_aft〜MV3_aftが、出力可能範囲、例えば、0%以上100%以下の範囲にあることを拘束条件として補正値ΔSP1〜ΔSP3を求める。
【0110】
具体的には、計算時間を短縮するために、最適化計算、例えば、GA(遺伝的アルゴリズム)、SA(シミュレーテッドアニール法)、PSO(Particle Swarm Optimization)、モンテカルロ法、山登り法などの公知の手法を用いて最適な補正値ΔSP1〜ΔSP3の値を求める。
【0111】
この実施形態では、補正値を次のようにして求める。
【0112】
すなわち、補正値ΔSP1〜ΔSP3の候補を、上記(10),(11)式に代入してウエハの温度WAF1_aft〜WAF5_aftに基づく評価関数および補正後の操作量MV1_aft〜MV3_aftをそれぞれ算出し、操作量MVの拘束条件を満足し、かつ、評価関数を最小にする補正値ΔSP1〜ΔSP3を最適な補正値とするものである。
【0113】
以上のようにして求めた補正値ΔSP1〜ΔSP3を、上述の図3のステップn6に示すように、各チャンネルの設定温度SP1〜SP3の補正値として、温度調節器3に対して設定するものである。
【0114】
これによって、温度調節器3では、図6に示すように、設定温度補正部20に補正値ΔSP1〜ΔSP3が格納され、この補正値によって、各チャンネルの設定温度を補正する。
【0115】
以上のようにして補正値によって設定温度を補正するので、作業者の経験に依存し、試行錯誤的に行わねばならなかった設定温度の補正のための調整作業が不要となり、自動化を図ることが可能となる。
【0116】
しかも、補正値は、操作量MVが飽和しない拘束条件の下で算出されるので、操作量が飽和して補正できず、半導体ウェハの温度のばらつきを抑制できないといったことがない。
【0117】
(実施形態2)
上述の実施形態では、設定温度SPとウェハの温度WAFとの干渉行列Mを用いたけれども、この実施形態では、操作量MVと半導体ウェハの温度WAFとの間の干渉行列Mpを用いるものである。
【0118】
上述の実施形態と同様にして、設定温度SPをステップ状に変化させて操作量MV、検出温度PVおよび半導体ウェハの温度WAFを計測する。
【0119】
干渉行列Mpは、半導体ウエハの温度WAFの変化量ΔWAFおよび操作量MVの変化量ΔMVを用いて次式で表される。
【0120】
Mp=ΔWAF×ΔMV−1 …(12)
操作量MVの変化量ΔMVに対する半導体ウエハの温度WAFの変化量ΔWAFは、この干渉行列Mpを用いて次式で表される。
【0121】
ΔWAF=Mp×ΔMV …(13)
ここで、ΔWAFおよびΔMVは、次のように表される。
【0122】
【数8】

【0123】
【数9】

【0124】
したがって、上記(13)式は、上述の実施形態と同様に、初期値を加算して次式で示される。
【0125】
【数10】

【0126】
更に、操作量MVについて、
【0127】
【数11】

【0128】
上述の実施形態と同様に、上記(16)式のウエハの5点における温度WAF1_aft〜WAF5_aftの最大値と最小値との差、すなわち、温度のばらつきを評価関数として、この評価関数が最も小さくなるΔMV1〜ΔMV3を求める。
【0129】
このとき、(17)式の操作量MVが、出力可能範囲、例えば、0%以上100%以下の範囲にあることを拘束条件としてΔMV1〜ΔMV3を求める。
【0130】
具体的には、上述の実施形態と同様に、最適化計算によって最適なΔMV1〜ΔMV3の値を求める。
【0131】
最後に、求めたΔMV1〜ΔMV3を、上記(8)式を用いてΔSP1〜ΔSP3に変換し、補正値とする。
【0132】
この実施形態によれば、設定温度SPとウェハの温度WAFとの干渉行列Mを用いることなく、設定温度SPの補正値ΔSP1〜ΔSP3を求めることができる。
【0133】
(その他の実施の形態)
本発明の更に他の実施形態として、熱板2の検出温度PVとウェハの温度WAFとの干渉行列M_wを用いた関係式ΔWAF=M_w×ΔPVと、上述の操作量MVと目標温度SPとの関係式ΔMV=M_h−1×ΔSPとを用いて補正値を求めるようにしてもよい。
【0134】
上述の実施の形態では、補正装置としての上位装置8において、補正値を算出したけれども、本発明の他の実施の形態として、温度調節器で試験用ウェハの温度を計測できるようにし、温度調節器で補正値を算出するようにしてもよい。
【0135】
上述の実施の形態では、処理手段として、熱板の温度制御に適用して説明したけれども、本発明は、熱板に限らず、拡散炉、CVD装置、包装機、成形機のシリンダ部やその他の温度制御に適用してもよい。
【0136】
上述の実施の形態では、ヒータを用いた加熱処理に適用して説明したけれども、ペルチェ素子や冷却器などを用いた冷却処理に適用してもよく、更に、加熱と冷却とを併用する温度制御に適用してもよい。
【0137】
また、本発明は、温度制御に限らず、圧力、流量、速度あるいは液位などの他の物理状態の制御に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、ウェハの熱処理などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の実施形態に係る熱処理装置の構成図である。
【図2】補正値を求めるための計測の構成を示す図である。
【図3】動作説明に供するフローチャートである。
【図4】設定温度を変化させたときの波形図である。
【図5】実施形態の温度制御ループを示す図である。
【図6】温度調節器による設定温度の補正のための構成を示す図である。
【図7】従来例の構成図である。
【図8】従来例のフローチャートである。
【図9】従来例の計測の構成を示す図である。
【図10】従来例の波形図である。
【符号の説明】
【0140】
1 半導体ウェハ
2 熱板
3 温度調節器
8 上位装置(補正装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理する処理手段の物理状態を複数の検出点で検出した各検出情報と複数の各目標情報とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて、前記処理手段の物理状態を制御する制御方法であって、
前記目標情報と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の物理状態と前記操作量との関係または前記被処理物の物理状態と前記目標情報との関係を示す第2の関係情報を、取得する第1のステップと、
前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の物理状態になるように、前記目標情報および前記検出情報の少なくともいずれか一方を補正する補正値を求める第2のステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御する温度制御方法であって、
前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を、取得する第1のステップと、
前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する補正値を求める第2のステップと、
を含むことを特徴とする温度制御方法。
【請求項3】
前記第1,第2の関係情報が、定常状態における前記関係をそれぞれ示すものであって、前記第2の関係情報が、前記被処理物の温度と前記操作量との関係を示すものである請求項2に記載の温度制御方法。
【請求項4】
前記補正値によって、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する第3のステップを更に含む請求項2または3に記載の温度制御方法。
【請求項5】
前記第1のステップでは、前記目標温度を変化させたときの前記操作量、前記被処理物の温度、および、前記処理手段の検出温度の各変化に基づいて、前記第1,第2の関係情報を取得する請求項2〜4のいずれか一項に記載の温度制御方法。
【請求項6】
前記第2のステップでは、前記第1,第2の関係情報、前記補正値による補正を行なう前の前記被処理物の温度、および、前記補正を行なう前の前記操作量に基づいて、前記補正値を求める請求項2〜5のいずれか一項に記載の温度制御方法。
【請求項7】
前記第1の関係情報が、前記目標温度と前記操作量との関係を示す行列であり、前記第2の関係情報が、前記被処理物の温度と前記操作量との関係を示す行列または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す行列である請求項2〜6のいずれか一項に記載の温度制御方法。
【請求項8】
被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御するとともに、補正値によって、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する温度調節器の前記補正値を求める補正装置であって、
前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得し、前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記補正値を求める演算手段を備えることを特徴とする補正装置。
【請求項9】
前記演算手段は、前記目標温度を変化させたときの前記操作量、前記被処理物の温度、および、前記処理手段の検出温度の各変化に基づいて、前記第1,第2の関係情報を取得する請求項8に記載の補正装置。
【請求項10】
前記演算手段は、前記第1,第2の関係情報、前記補正値による補正を行なう前の前記被処理物の温度、および、前記補正を行なう前の前記操作量に基づいて、前記補正値を求める請求項8または9に記載の補正装置。
【請求項11】
被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御する温度調節器であって、
前記請求項8〜10のいずれか一項に記載の補正装置によって求められた前記補正値に応じて、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正することを特徴とする温度調節器。
【請求項12】
被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御するとともに、補正値によって、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する温度調節器であって、
前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を取得し、前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記補正値を求める演算手段を備えることを特徴とする温度調節器。
【請求項13】
被処理物を処理する処理手段の温度を複数の検出点で検出した各検出温度と複数の各目標温度とに基づいて、操作量を生成し、該操作量に応じて前記処理手段の温度を制御する温度制御に用いられるプログラムであって、
前記目標温度を変化させたときの、前記操作量、前記被処理物の温度、および、前記処理手段の検出温度の各変化に基づいて、前記目標温度と前記操作量との関係を示す第1の関係情報、および、前記被処理物の温度と前記操作量との関係または前記被処理物の温度と前記目標温度との関係を示す第2の関係情報を、取得する第1のステップと、
前記第1,第2の関係情報を用いて、前記操作量を制限した範囲内で、前記被処理物が所望の温度状態になるように、前記目標温度および前記検出温度の少なくともいずれか一方を補正する補正値を求める第2のステップとを、
コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−299697(P2008−299697A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146564(P2007−146564)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】