説明

制御装置及びこれを備えた電子機器、認証処理装置

【課題】 制御データの安定性を担保して、安定的な動作制御の実現を可能にした制御装置を提供する。
【解決手段】 設定レジスタ13は、ドライバ4,5に対して行われる制御内容に対応したオリジナル制御データ7AをROM7から取得し、設定済制御データとして登録する。誤り検出検査符号作成回路15は、設定済制御データに基づき所定の規則に従って設定済誤り検出検査符号を作成する。比較回路16は、ノイズ検出回路14において設定レジスタ13の電源用電圧が所定の許可条件を逸脱する変動をした場合には、オリジナル制御データ7Aに基づいて前記所定の規則に従って作成されたオリジナル誤り検出検査符号7BをROM7から読み出し、前記設定済誤り検出検査符号との比較を行う。設定レジスタ13は、前記両符号に齟齬が存在すればオリジナル制御データ7Aを改めてROM7から取得して設定済制御データとして再登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置に関し、特に制御対象となる被制御装置に対する制御内容の変更が可能な制御装置に関する。また、本発明は、認証処理を行う認証処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話器やPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯用電子機器の表示装置として、複数の表示画素がマトリックス状に2次元配列されたドットマトリックス型液晶パネルが一般に用いられている。そして、電子機器内部には、この液晶パネルの表示制御を行なう半導体集積回路化された表示用の制御装置(液晶コントローラIC)や液晶パネルを駆動するドライバ回路が搭載されている。
【0003】
ところで、液晶表示装置は、使用する液晶の種類や駆動方式によって、ガンマ特性(画像の明るさの変化に対する電圧換算値の変化の比)や駆動電圧、動作クロックの周波数等の仕様が異なっている。また、製造時のバラツキにより、同種の装置間においてもその特性に変動が生じる場合が見られる。
【0004】
そこで、液晶表示用の制御装置を提供するメーカーは、仕様の異なる液晶表示装置や製造バラツキのある液晶表示装置に対しても適用できるように制御装置を構成することでその汎用性を高め、製造コストを下げる工夫を行っている。
【0005】
図8は、従来の液晶表示装置の構成を示す概念的ブロック図である。液晶表示装置91は、表示画素をマトリックス状に配列してなる液晶パネル3と、各表示画素に対する電圧印加制御を行うゲートドライバ4及びソースドライバ5と、これらのドライバに対する制御を行う制御装置(液晶コントローラ)92を備える。制御装置92は、表示RAM11,タイミングコントローラ12,及び設定レジスタ13を備える。
【0006】
制御装置92は、設定レジスタ13に登録されている制御データによりタイミングコントローラ12の動作を決定し、液晶パネル3に適するようにゲートドライバ4及びソースドライバ5に対して制御信号を送信する。また、表示RAM11は、液晶パネル3に表示する対象となる表示データを格納している。表示データは、タイミングコントローラ12からの制御によりソースドライバ5に対して送信される。
【0007】
液晶表示装置91は、MPU6(マイコン)により制御されており、MPU6から表示データやタイミングコントローラ12の制御クロック等が与えられる。また、液晶表示装置91は、システム起動時にROM7に記録された制御データ7Aを読み出して設定レジスタ13に登録し、タイミングコントローラ12の動作内容の設定を行う。
【0008】
ここで、ROM7に記録された制御データ7Aを設定レジスタ13に登録するに際し、誤った内容のデータが登録されることのないよう、受信データの確認・検証処理が行われる。この確認・検証処理の方法としては、これまでにも種々の方法が開発されている(下記特許文献1,2参照)。
【0009】
特許文献1には、送信データと誤り検出検査符号(CRC:Cyclic Redundancy Check)を併せて送信する一方、受信した前記送信データからCRCを作成して、受信したCRCと比較することで受信データの転送エラーを確認する方法が記載されている。このように、CRCを用いて正しく受信データが受信されたことを確認した後、設定レジスタ13に登録することで、誤ったデータがレジスタ13に登録されるのを防ぐことができる。
【0010】
特許文献2には、EEPROMにデータと共にCRCを格納しておき、データを読み出したときに当該読み出されたデータからCRCを作成して、格納されているCRCと比較することで、データが破壊されていないかの検証を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭58−31430号公報
【特許文献2】特表2004−501466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ROM7から設定レジスタ13に対してデータ登録を行うに際し、上記従来技術に記載された方法を用いて誤り検出を行うことにより、データに誤りがあればそれを検知することができるため、誤ったデータが設定レジスタ13に登録されるのを回避できる。
【0013】
しかし、設定レジスタ13は揮発性メモリであるRAMで構成されているため、ノイズ等の発生によって電源電圧が大きく変化した場合に、この影響を受けて登録済のデータ内容が変化することが起こり得る。設定レジスタ13に登録されている制御データが変更されれば、タイミングコントローラ12は誤ったデータを読み出すこととなり、その結果各ドライバ4,5に対して正しい制御が行えず、正しく液晶表示がなされなくなるという不具合を招く。
【0014】
このような場合、設定レジスタ13が再度ROM7から正しい制御データ7Aを読み出して登録することで、タイミングコントローラ12は正しくドライバ4,5を制御することが可能となる。しかし、図8の構成の場合、設定レジスタ13に登録されている制御データが変化したことを検出する手段がないため、ROM7から正しい制御データ7Aを再読み出しするための自動制御が行われない。つまり、設定レジスタ13に対してROM7から制御データを読み出すための指示を外部から与えない限り、設定レジスタ13内の登録データが書き換えられることはなく、このことは、設定レジスタ13内の登録データに誤りが生じても、この誤りを自動的に解消できないことを表わしている。
【0015】
本発明は上記の問題点に鑑み、装置外部に記録されているデータを読み出して内部の記憶領域に登録し、この登録されたデータに基づいて決定される制御内容に従って動作制御を実行する制御装置に対し、当該データの安定性を担保することで安定的な動作制御の実現を可能にすることを目的とするものであり、ひいては、当該制御装置によって制御されるシステム全体の安定性を向上させることを目的とする。
【0016】
また、本発明の制御装置を認証処理装置として機能させることで、システム全体の安定性を向上させる処理システムを実現することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の制御装置は、
被制御装置に対して行われる制御内容に対応したオリジナル制御データを外部から取得し、設定済制御データとして登録する設定レジスタと、
前記設定済制御データに基づき所定の規則に従って設定済誤り検出検査符号を作成する誤り検出検査符号作成回路と、
前記オリジナル制御データに基づき前記所定の規則に従って作成されたオリジナル誤り検出検査符号を外部から取得し、前記設定済誤り検出検査符号と比較を行う比較回路と、を備え、
前記比較回路は、所定のタイミング下で自動的に前記オリジナル誤り検出検査符号と前記設定済誤り検出検査符号を比較し、前記両符号に齟齬が存在すれば前記設定レジスタが前記オリジナル制御データを改めて外部から取得して前記設定済制御データとして再登録することを特徴とする。
【0018】
上記構成とすることで、何らかの要因によって万一設定レジスタに登録されている設定済制御データの内容が書き換わったとしても、所定のタイミング下において自動的に登録済の誤り検出検査符号とオリジナルの誤り検出検査符号の比較処理が行われる。そして、当該比較処理によって両誤り検出検査符号に齟齬が生じていることが確認されれば、改めてオリジナルの制御データが読み出されて設定コードレジスタに登録される。よって、設定コードレジスタに登録される制御データは、自動的に正しいデータに復元され、エラー状態が自動的に解消する。
【0019】
そして、実際の制御データ同士を比較するのではなく、制御データよりもビット数の少ない誤り検出検査符号同士を比較する構成であるため、検査時間の短縮化が図れる。
【0020】
ここで、上記構成に加えて、前記設定レジスタに供給される電源用電圧の変動を検出するノイズ検出回路を備え、前記比較回路は、前記ノイズ検出回路が前記電源用電圧の許可条件からの逸脱を検知する毎に前記所定のタイミングが到来したと判断する構成とすることが可能である。
【0021】
このような構成とすることで、外部からのノイズ流入により電圧変動が生じた場合に、この電圧変動に起因して万一設定レジスタに登録されている設定済制御データの内容が書き換わったとしても、この電圧変動が生じたタイミングで登録済の誤り検出検査符号とオリジナルの誤り検出検査符号の比較処理が行われ、当該比較処理によって両誤り検出検査符号に齟齬が生じていることが確認されれば、改めてオリジナルの制御データが読み出されて設定コードレジスタに登録される。よって、設定コードレジスタに登録される制御データは、自動的に正しいデータに復元され、エラー状態が自動的に解消する。
【0022】
また、一定時間が経過する毎に比較回路が登録済の誤り検出検査符号とオリジナルの誤り検出検査符号の比較処理を行う構成とすることもできる。
【0023】
更に、上記制御装置の構成を認証処理装置に応用することで、通信エラーによる認証の不具合が生じた場合に自動的にエラーの解消が図られる認証処理装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ノイズ流入等の何らかの理由によりレジスタに登録されていたデータ(或いはコード)が書き換わっていた場合においても、電圧変動の検知或いは経過時間に応じた所定のタイミングに基づいて、現時点で登録されているデータに基づいて作成された誤り検出検査符号とオリジナルの誤り検出検査符号の比較が行われる。そして、この比較結果に齟齬があれば、改めて外部からオリジナルのデータが読み出され、レジスタに再登録されるため、データが書き換わっていた場合においても自動的に正しいデータに復元することができる。
【0025】
これにより、本発明を、レジスタに登録されたデータに基づいて被制御装置に対する制御を行う制御装置として利用した場合、登録されたデータに対応する制御内容が存在せずに正しい制御が行われないといった制御エラーが生じるのを自動的に防止することができる。また、データよりもビット数の少ない誤り検出検査符号の比較によって実現されるため、比較処理に要する時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態の制御装置を含む液晶表示装置の概要を示すブロック図
【図2】ノイズ検出回路の構成例
【図3】本発明の第1実施形態の制御装置を含む液晶表示装置の概要を示す別のブロック図
【図4】本発明の第2実施形態の制御装置を含むオーディオシステムの概要を示すブロック図
【図5】設定レジスタにおいて登録される制御データの構成例
【図6】登録されている制御データから誤り検出検査符号を作成する方法を説明するための図
【図7】本発明の第3実施形態の認証処理装置を含む認証システムの概要を示すブロック図
【図8】従来の液晶表示装置の概要を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の制御装置は、装置外部に記録されているデータを読み出して内部の記憶領域に登録し、この登録されたデータに基づいて決定される制御内容に従って、制御対象たる被制御装置に対して動作制御を実行するものである。本発明が制御対象とする装置は、図8を参照して説明した液晶表示装置に限られず、種々の装置(電子機器)に適用することが可能である。以下では、制御対象毎に実施形態を変えて説明する。
【0028】
なお、以下の実施形態で説明する各制御対象(被制御装置)についても、あくまで一例であり、本発明に係る制御装置はこれらの制御対象に対する制御用途に限定されるものではない。また、本発明の制御装置の機能を認証処理に応用した場合、第3実施形態で後述するような認証処理装置が実現される。
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態では、図8の場合と同様に、被制御装置として液晶表示装置を想定する。
【0030】
図1は、本実施形態の制御装置を含む液晶表示装置の構成を示す概念的ブロック図である。図1に示す液晶表示装置1は、図8に示す制御装置92に代えて本発明の制御装置2を備えている。なお、図1において、図8と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を簡略化する。
【0031】
本発明の制御装置2は、表示RAM11,タイミングコントローラ12,設定レジスタ13に加えて、ノイズ検出回路14,誤り検出検査符号作成回路15,及び比較回路16を備えている。また、ROM7は、設定レジスタ13に登録するための制御データ7Aに加えて、同制御データ7Aから作成された誤り検出検査符号7Bを、7Aとは別の領域に格納している。なお、設定レジスタ13に登録されている制御データによりタイミングコントローラ12の動作を決定し、液晶パネル3に適するようにゲートドライバ4及びソースドライバ5に対して制御信号を送信する点については、制御装置92と同じである。
【0032】
以下において、設定レジスタ13に登録されている制御データを「設定済制御データ」、ROM7に格納されている制御データ7Aを「オリジナル制御データ」とそれぞれ称し、明細書内ではこれらを区別して記載する。この表現を用いて記載すれば、設定レジスタ13は、ROM7に格納されている「オリジナル制御データ」7Aを読み出して、「設定済制御データ」として登録する。そして、タイミングコントローラ12は、設定レジスタ13に登録されている「設定済制御データ」に基づいて決定される動作内容に従って、ゲートドライバ4及びソースドライバ5に対して制御信号を送信する。そして、何らかの原因により、「オリジナル制御データ」と「設定済制御データ」の間に齟齬が生じた場合、タイミングコントローラ12は各ドライバ4,5を正しく制御することができなくなる。
【0033】
ノイズ検出回路14は、制御装置2の電源電圧を検出しており、予め定められた閾値以下の電圧値になったことを検知すると、誤り検出検査符号作成回路15に対して設定レジスタ13に登録されているオリジナル制御データに誤りがないかどうかの確認を行うように指示信号を発生する。
【0034】
誤り検出検査符号作成回路15は、ノイズ検出回路14からの指示信号を受信すると、設定レジスタ13に登録されている設定済制御データから誤り検出検査符号を作成し、比較回路16に出力する。設定レジスタ13が複数個あれば、レジスタ毎に誤り検出検査符号を作成しても良いし、複数のレジスタに登録されている設定済制御データから一の誤り検出検査符号を作成しても良い。
【0035】
比較回路16は、直近に設定レジスタ13によって読み出されたオリジナル制御データ7Aに対応する誤り検出検査符号7Bが格納されているアドレスを指定して、同符号をROM7から読み出し、誤り検出検査符号作成回路15から出力された誤り検出検査符号との間で比較を行う。なお、以下では、設定済制御データに基づいて誤り検出検査符号作成回路15によって作成された誤り検出検査符号を「設定済誤り検出検査符号」、ROM7に格納されているオリジナル制御データに対応する誤り検出検査符号を「オリジナル誤り検出検査符号」とそれぞれ称して、これらを区別する。かかる表現を用いて記載すれば、比較回路16は、オリジナル誤り検出検査符号7Bと誤り検出検査符号作成回路15から出力された設定済誤り検出検査符号の比較を行う。
【0036】
比較回路16が前記2つの誤り検出検査符号の比較を行った結果、いずれの符号も同一の値を示していることが確認されれば、設定済制御データとオリジナル制御データの間に齟齬がなく、エラーは生じていないことを認識する。一方、両符号が異なる値を示すことが確認されれば、設定済制御データとオリジナル制御データの間に齟齬が生じており、エラーが発生していることを認識する。この場合、その旨の信号を設定レジスタ13に与え、設定レジスタ13は、同信号を受信すると、ROM7から対応するオリジナル制御データ7Aを改めて読み出して再登録する。これにより、設定レジスタ13に登録される設定済制御データは、オリジナル制御データ7Aと一致し、エラーが解消する。
【0037】
かかる構成としたことで、設定レジスタ13に登録されている設定済制御データが、ノイズによって変動した場合であっても、正しいデータ内容に自動的に復元することができる。
【0038】
図2に、ノイズ検出回路14の構成例を示す。図2におけるV0,V_RAMは、共に制御装置2の駆動用電源電圧であるが、このうち、V0は電源端子から低インピーダンスで供給される安定電圧であり、V_RAMは設定レジスタ13の電源に接続されておりV0よりも高インピーダンスで供給される電圧である。表示装置1に対してノイズが流入した場合、V0については当該ノイズの影響を受けることなく安定した電圧値が維持される一方、V_RAMについては当該ノイズの影響を受けて電圧降下が生じやすくなっている。CMPはコンパレータであり、この反転入力端子に電圧V_RAMが印加され、非反転入力端子に電圧V0を抵抗分割した分圧VAが入力される。
【0039】
ノイズが流入していない通常運転時においては、V0=V_RAM>VAを満足する。このとき、コンパレータCMPの出力信号CCKは「L」である。この出力信号CCKは、D−フリップフロップFFのクロック端子CKに入力される。D−フリップフロップFFは、電源投入時にリセットされ、端子Qからの出力信号OUTは「L」を示す。
【0040】
表示装置1に対してノイズが流入した場合、前述したように電圧V0は安定している(即ちVAは安定している)が、V_RAMは瞬時電圧降下を発生することがある。このとき、V_RAMの値がVAを下回ると、コンパレータCMPの出力信号CCKは反転して「H」となり、D−フリップフロップFFの出力信号OUTも「H」に反転する。誤り検出検査符号作成回路15は、出力信号OUTが「H」になったことを検知すると、設定レジスタ13に登録されている設定済制御データから設定済誤り検出検査符号を作成し、比較回路16がこの設定済誤り検出検査符号とオリジナル誤り検出検査符号7Bの比較を行う。この比較処理並びに、エラー時における設定レジスタ13への制御データの再登録処理が完了すると、D−フリップフロップFFをリセットし、出力信号OUTを再び「L」に戻す。
【0041】
なお、上記構成では、オリジナル制御データがROM7に格納されており、このデータが設定レジスタ13によって読み出されることで、設定済制御データとして同レジスタに登録されるものとしたが、MPU6が設定レジスタ13に対して制御データの設定を行う構成とすることも可能である(図3参照)。
【0042】
通常運転時においては、MPU6で作成されたオリジナル制御データが設定レジスタ13に登録され、この登録された設定済制御データに基づいてタイミングコントローラ12が各ドライバ4,5の制御を行う。
【0043】
一方、ノイズが検出された場合、ノイズ検出回路14がその旨の信号を誤り検出検査符号作成回路15に出力し、誤り検出検査符号作成回路15は、現時点で設定レジスタ13に登録されている設定済制御データに基づいて誤り検出検査符号(設定済誤り検出検査符号)を作成し、これをMPU6に出力する。MPU6は、オリジナル制御データに対応する誤り検出検査符号(オリジナル誤り検出検査符号)と、誤り検出検査符号作成回路15から送信された設定済誤り検出検査符号を比較し、比較結果に齟齬があれば、オリジナル制御データを設定レジスタ13に再送信する。設定レジスタ13は、この改めて送信されたオリジナル制御データを設定済制御データとして再登録し、これによって正しい制御データが設定レジスタ13に登録される。
【0044】
なお、制御データから誤り検出検査符号を作成する方法については、種々の方法を利用することが可能である。一例としては第2実施形態で後述する巡回冗長検査(CRC:Cyclic Redundancy Check)を用いる方法を利用することができる。
【0045】
また、図2に示すノイズ検出回路14は、あくまで一例であり、必ずしもこのような回路に限定されるものではない。図2の回路によれば、入力電圧V_RAMがVAを下回ったことが検出されれば誤り検出検査符号の比較処理が行われる構成であったが、許可される入力電圧に上限が設定されており、この上限値を超えた時点で前記比較処理が行われるものとしても良い。また、上限と下限の両者が設定されていても良い。
【0046】
[第2実施形態]
第2実施形態では、被制御装置としてオーディオシステムを想定する。
【0047】
図4は、本実施形態の制御装置を含むオーディオシステムの構成を示す概念的ブロック図である。オーディオシステム1Aは、本実施形態の制御装置2A、実際に制御対象となる構成装置30を備える。構成装置30としては、一例としてアンプ31,チューナー32,イコライザ33,CDプレイヤー34,及びMDプレイヤー35を備えている。
【0048】
本実施形態の制御装置2Aは、第1実施形態の制御装置2と同様に、設定レジスタ13,誤り検出検査符号作成回路15,及び比較回路16を備える。また設定レジスタ13に登録された設定済制御データに基づいてオーディオシステムに対する制御信号を生成するための制御回路21を備える。制御回路21にはオーディオシステムに対する所定の制御プログラムを記録した制御ROM22を有する。制御回路21で生成された制御信号は、構成装置30内の各ユニット(31〜35)に対して各別に送信される。
【0049】
制御装置2Aに電源が投入されると、設定レジスタ13は、ROM7に格納されたオリジナル制御データ7Aを読み出して、設定済制御データとして登録する。そして、制御回路21は、設定レジスタ13に登録された設定済制御データに従って、制御ROM22から対応する制御プログラムを選択し、構成装置30内の各ユニット(31〜35)に対して各別に送信する。
【0050】
なお、構成装置30内の構成ユニットが異なるオーディオシステムに対しては、ROM7を付け替えることで、本制御装置2Aによる制御が可能となる。
【0051】
設定レジスタ13において登録される制御データの構成例を図5に示す。図5(a)に示す本実施形態の例では、設定レジスタ13は3ビットで構成されており、アドレス「000」にアンプの設定、アドレス「001」にチューナーの設定、アドレス「010」にイコライザの設定、アドレス「011」にCDプレイヤーの設定、アドレス「100」にMDプレイヤーの設定、アドレス「101」にカセットテープデッキの設定、アドレス「110」にディジタルオーディオプレイヤーの設定がそれぞれなされる。また、アドレス「111」は予備のアドレスである。
【0052】
図5(b)は、設定レジスタ13の各アドレスに登録されるデータの内容を示す対応表である。データ「000」の場合、該当の装置が接続されていないことを示す。また、データ「001」〜「111」までは、該当装置の仕様が異なるtype Aからtype Gまでの装置が設定できることを示す。
【0053】
図4に示す例では、アンプ31はtype Aであるため、アンプ設定用のアドレス「000」には、type Aを示すデータ「001」が登録されている(図5(a)参照)。以下、同様に、チューナー32はtype Cであるため、チューナー設定用のアドレス「001」にはtype Cを示すデータ「011」が登録され、イコライザ33はtype Bであるため、イコライザ設定用のアドレス「010」にはtype Bを示すデータ「010」が登録され、CDプレイヤー34はtype Aであるため、CDプレイヤー設定用のアドレス「011」にはtype Aを示すデータ「001」が登録され、MDプレイヤー35はtype Eであるため、MDプレイヤー設定用のアドレス「100」にはtype Eを示すデータ「101」が登録されている。
【0054】
また、カセットテープデッキ、ディジタルオーディオプレイヤーについては接続されていないため、アドレス「101」,「110」には、接続されていない旨を示すデータ「000」が登録されている。予備用アドレス「111」にも接続されていない旨を示すデータ「000」が登録されている。
【0055】
以上に説明したように、設定レジスタ13の各アドレス「000」〜「111」には、図5(a)に示す各データが設定済制御データとして登録されている。
【0056】
誤り検出検査符号作成回路15は、設定レジスタ13に登録されている上記設定済制御データに基づいて誤り検出検査符号(設定済誤り検出検査符号)を作成する。比較回路16は、この設定済誤り検出検査符号と、ROM7から読み出した誤り検出検査符号(オリジナル誤り検出検査符号)7Bを比較し、ROM7に格納されているオリジナル制御データ7Aが設定レジスタ13に正しく登録されているかどうかの検証処理を行う。
【0057】
本実施形態の制御装置2Aにおいては、電源投入後、所定の時間間隔で自動的に当該検証処理を行うものとする。この場合、必ずしもノイズ検出回路14を備えなくとも、設定レジスタ13にはオリジナル制御データと同一の制御データが登録されることとなる。無論、第1実施形態においても、本実施形態と同様に所定の時間間隔で自動的に検証処理を行うものとしても良い。逆に、本実施形態において、第1実施形態と同様にノイズ検出回路14を備え、ノイズによる電圧変動が検出された場合にのみこの検証処理を行う構成とすることも可能である。
【0058】
図6は、登録されている制御データから誤り検出検査符号を作成する一方法を説明するための図である。あくまでこの方法は一例であるが、誤り検出検査符号作成回路15が設定済制御データから設定済誤り検出検査符号を作成する方法と、ROM7内におけるオリジナル制御データからオリジナル誤り検出検査符号を作成する方法は一致させておく必要がある。
【0059】
図6において説明する方法は、巡回冗長検査(CRC)を用いて誤り検出検査符号を作成する方法である。図6(a)に示すデータ列「001011010001101000000000」は、図5(a)に示すアドレス「000」〜「111」に登録されている各データをつなげて24bitのデータとしたものである。
【0060】
このデータ列を多項式f(X)として記載すると、f(X)=X21+X19+X18+X16+X12+X11+X9と表わされる。この多項式f(X)に対し、CRCの除数をX3+X+1(「1011」)として、「modulo 2」演算を実行して剰余を算出する(図6(b)参照)。当然に、得られる剰余はCRCの除数よりも少ないビット数の値となる。本実施例では、除数が4ビット値であるため、剰余は3ビットの値として得られる。本実施例では、「001」が剰余として算出される。
【0061】
従って、予めROM7内において、3ビット値としてのオリジナル誤り検出検査符号7Bを格納しておくと共に、誤り検出検査符号作成回路15において、設定レジスタ13に登録されている設定済制御データから上記方法によって3ビット値の設定済誤り検出検査符号を作成し、これら両誤り検出検査符号を比較回路16で比較することで、誤り(エラー)が発生しているかどうかの検証を行うことができる。特に、本実施形態の構成によれば、3ビット分のデータの値を確認するのみでエラーの発生/不発生を確認できるので、短時間での検証処理が実現できる。
【0062】
なお、図6(b)では、「modulo 2」演算の実行時にあたかも剰余と商の両者を求める必要があるかのように記載しているが、これは説明のために記載したものであり、実際はXOR演算と演算対象桁のシフトを繰り返し行うことで剰余のみを算出すれば良い。また、誤り検出検査符号を3ビットである場合につき説明したが、このビット数は3に限られるものではない。
【0063】
[第3実施形態]
第3実施形態では、被制御装置としてICカードを使用したカード処理システムを想定する。この場合、本発明の制御装置は「認証処理装置」として機能する。
【0064】
図7は、本実施形態の認証処理装置を含むカード処理システムの構成を示す概念的ブロック図である。ICカード処理システム1Bは、本実施形態の認証処理装置2B、認証対象となるICカード9、及びデータ処理装置42を備える。
【0065】
本実施形態における認証処理装置2Bは、第1及び第2実施形態における制御装置と同様に、誤り検出検査符号作成回路15及び比較回路16を備える。また、認証処理装置2Bは、認証コードレジスタ13A及びデータ通信回路41を備える。
【0066】
認証コードレジスタ13Aは、第1及び第2実施形態における設定レジスタ13に対応する構成要素である。設定レジスタ13は、制御内容に対応する制御データが登録される構成であったが、本実施形態では、認証処理を行う際の認証コードが登録される点が異なる。データ通信回路41は、認証処理装置2Bとデータ処理装置42の間で送受信処理を行う際に必要な信号変換処理等を行う。
【0067】
ICカード9のROM7には、処理データ7Aの他に認証コード7Cが格納され、この認証コード7Cに基づいて作成された誤り検出検査符号7Bが別の領域に格納されている。なお、ここでは「ROM7」と記載しているが、外部から書き換え可能な記憶手段であっても良い。
【0068】
認証処理装置2Bは、接触若しくは非接触によってICカード9との間で通信可能な状態になると、ICカード9のROM7に格納された認証コード7Cを認証コードレジスタ13Aに登録する。そして、誤り検出検査符号作成回路15は、認証コードレジスタ13Aに登録された認証コード(設定済認証コード)に基づいて誤り検出検査符号を作成する。比較回路16は、ICカード9のROM7に格納された誤り検出検査符号7B(オリジナル誤り検出検査符号)を読み出し、誤り検出検査符号作成回路15が作成した誤り検出検査符号(設定済誤り検出検査符号)と比較する。
【0069】
比較結果が一致すれば、認証処理装置2BはICカード9との間でデータ通信が可能であると判断し、設定済認証コードをデータ通信回路41を介してデータ処理装置42に送信する。データ処理装置42は、送信された設定済認証コードに基づいてICカード9の特定を行い、これに基づいて必要な処理内容を決定する。その後は、例えばICカード9内の処理データ7A或いは認証処理装置2Bに対して外部から入力されたデータ等をデータ処理装置42に対して送信することで、所定の処理を実行する。
【0070】
そして、処理の実行中においても、第2実施形態と同様に、一定時間間隔の下で前記の認証処理を実行する。これにより、処理の実行中に何らかのトラブルが発生して設定レジスタ13に登録された認証コードにエラーが生じた場合においても、自動的に当該エラーを解消することができる。
【0071】
一方、比較結果に齟齬があれば、認証処理装置2BはICカード9との間で正しくデータ通信が行えないと判断し、再度ICカード9に対してオリジナル認証コード7Cの取得を行う。そして、改めて取得されたオリジナル認証コード7Cを設定済認証コードとして認証コードレジスタ13Aに再登録し、誤り検出検査符号作成回路15がこの設定済認証コードに基づいて再度設定済誤り検出検査符号を作成する。更に、比較回路16によって、改めてROM7からオリジナル誤り検出検査符号を読み出し、設定済誤り検出検査符号との比較が行われる。これにより、例えば接続不具合等により正しくデータ受信が行えなかった場合においても、再度の検証が実行される。なおこのとき、所定の回数繰り返し実行した結果、それでも比較回路16における比較結果に齟齬が生じる場合には、その旨の信号を出力すると共に、ICカード9と認証処理装置2Bの間のデータの送受信を停止するものとしても良い。
【0072】
本実施形態においても、第2実施形態と同様の方法により誤り検出検査符号を作成するものとすれば、認証コードより少ないビット列のデータの比較により認証が可能であり、その処理時間の短縮化が図れる。
【0073】
また、本実施形態においては、比較結果が一致する限り、少ないビット列の誤り検出検査符号のみが通信されることで、認証コードそのものの通信が行われない。これにより、通信されるデータが漏洩しても認証コードそのものが漏洩することはなく、誤り検出検査符号が漏洩するに留まる。そして、この誤り検出検査符号から認証コードを復元することはできないため、認証コードの漏洩を防止することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 : 液晶表示装置
1A: オーディオシステム
1B: ICカード処理システム
2,2A : 本発明の制御装置
2B : 本発明の認証処理装置
3 : 液晶パネル
4 : ゲートドライバ
5 : ソースドライバ
6 : MPU(マイコン)
7 : ROM
7A: 制御データ,処理データ
7B: 誤り検出検査符号
7C: 認証コード
9 : ICカード
11 : 表示RAM
12 : タイミングコントローラ
13 : 設定レジスタ
13A: 認証コードレジスタ
14 : ノイズ検出回路
15 : 誤り検出検査符号作成回路
16 : 比較回路
21 : 制御回路
22 : 制御ROM
30 : 構成装置
31 : アンプ
32 : チューナー
33 : イコライザ
34 : CDプレイヤー
35 : MDプレイヤー
41 : データ通信回路
42 : データ処理装置
91 : 液晶表示装置
92 : 制御装置(液晶コントローラ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御装置に対して行われる制御内容に対応したオリジナル制御データを外部から取得し、設定済制御データとして登録する設定レジスタと、
前記設定済制御データに基づき、所定の規則に従って、前記設定済制御データよりもビット数の少ない設定済誤り検出検査符号を作成する誤り検出検査符号作成回路と、
前記オリジナル制御データに基づき前記所定の規則に従って作成された、前記オリジナル制御データよりもビット数の少ないオリジナル誤り検出検査符号を外部から取得し、前記設定済誤り検出検査符号と比較を行う比較回路と、を備え、
前記比較回路は、所定のタイミング下で自動的に前記オリジナル誤り検出検査符号と前記設定済誤り検出検査符号を比較し、前記両符号に齟齬が存在すれば前記設定レジスタが前記オリジナル制御データを改めて外部から取得して前記設定済制御データとして再登録することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記設定レジスタに供給される電源用電圧の変動を検出するノイズ検出回路を備え、
前記比較回路は、前記ノイズ検出回路が前記電源用電圧の許可条件からの逸脱を検知する毎に前記所定のタイミングが到来したと判断することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は集積回路であって、
前記ノイズ検出回路は、第1及び第2入力端子と出力端子を有するコンパレータを有し、
前記コンパレータは、前記第1入力端子には低インピーダンス電源から前記集積回路の電源入力端子に供給される電源電圧の分圧が、前記第2入力端子には前記電源入力端子から前記設定レジスタに供給される電圧がそれぞれ入力され、両入力端子への入力電圧の大小関係が反転したら前記許可条件から逸脱したと検知して前記出力端子からその旨の信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記比較回路は、一定時間が経過する毎に前記所定のタイミングが到来したと判断することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の制御装置と、
マトリックス状に複数の画素が配置された液晶パネルと、
前記複数の画素それぞれに対する電圧印加制御を行うドライバ回路と、
前記設定レジスタから読み出した前記設定済制御データに基づいて前記ドライバ回路に対する制御を行うタイミングコントローラと、を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の制御装置と、
前記被制御装置と、
複数の制御プログラムが格納されている制御ROMと、
前記設定レジスタから読み出した前記設定済制御データに基づき、前記制御ROMに格納された前記複数の制御プログラムの中から一の制御プログラムを特定し、前記被制御装置に送信する制御回路と、を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
ICカード内に格納されているオリジナル認証コードを前記ICカードから取得し、設定済認証コードとして登録する認証コードレジスタと、
前記設定済認証コードに基づき所定の規則に従って、前記設定済認証コードよりもビット数の少ない設定済誤り検出検査符号を作成する誤り検出検査符号作成回路と、
前記オリジナル認証コードに基づき、前記所定の規則に従って作成された前記オリジナル認証コードよりもビット数の少ないオリジナル誤り検出検査符号を前記ICカードから取得し、前記設定済誤り検出検査符号と比較を行う比較回路と、を備え、
前記ICカードと通信可能な状態の下において、前記比較回路は所定のタイミング下で自動的に前記オリジナル誤り検出検査符号と前記設定済誤り検出検査符号の比較を行い、前記両符号に齟齬が存在すれば前記認証コードレジスタが前記オリジナル認証コードを改めて前記ICカードから取得して前記設定済認証コードとして再登録することを特徴とする認証処理装置。
【請求項8】
前記認証コードレジスタに供給される電源用電圧の変動を検出するノイズ検出回路を備え、
前記比較回路は、前記ノイズ検出回路が前記電源用電圧の許可条件からの逸脱を検知する毎に前記所定のタイミングが到来したと判断することを特徴とする請求項7に記載の認証処理装置。
【請求項9】
前記比較回路は、一定時間が経過する毎に前記所定のタイミングが到来したと判断することを特徴とする請求項7に記載の認証処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−164708(P2011−164708A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23488(P2010−23488)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】