説明

制御装置

【課題】同時使用することのない複数の電磁比例弁の同時駆動を防止し、信頼性を向上させると共に、コストを低下させることができる制御装置を提供する。
【解決手段】同時作動しない複数のアクチュエータにそれぞれ連通する複数の電磁比例弁72、76を備え、これら電磁比例弁72、76を制御部66からの信号に基づきドライバ80を介して制御するようにした制御装置65において、前記ドライバ80からの信号を前記複数の電磁比例弁72、76のいずれか1つに通電するように切換えるリレー73を配置し、1個の前記ドライバ80により前記複数の電磁比例弁72、76を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンバイン等の作業用車輌の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等の作業用車輌における旋回操作には、比較的回転半径が大きくなる緩旋回操作と、その場で作業車輌の向きを変える急旋回操作がある。このため、作業用車輌においては、旋回用クラッチ装置に、電磁比例弁と連通する緩旋回用クラッチと、他の電磁比例弁と連通する急旋回用クラッチが配置され、制御部からに指令により緩旋回用クラッチと急旋回用クラッチの何れか一方を選択して作動させ、作業用車輌の旋回を行うようにした制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−119328号公報(第5−6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記制御装置においては、同時に作動させることのない緩旋回用クラッチの電磁比例弁と急旋回用クラッチの電磁比例弁とを、それぞれ独立した専用の駆動回路で駆動しているため、何らかの原因で、緩旋回用クラッチと急旋回用クラッチが同時に駆動され、トランスミッション内で内部ロックが発生し、エンジンが停止するなど旋回性能が低下し、制御装置の信頼性を低下させていた。また、複数の駆動回路が必要になり、製作時には、各駆動回路のトリマー調整が必要なため、作業性が低下するだけでなく、制御装置のコストアップの要因となっている。
【0005】
前記の事情にかんがみ、本発明は、信頼性を向上させると共に、コストを低下させることができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、同時作動しない複数のアクチュエータ(96、97)にそれぞれ連通する複数の電磁比例弁(72、76)を備え、これら電磁比例弁(72、76)を制御部(66)からの信号に基づきドライバ(80)を介して制御してなる、制御装置(65)において、
前記ドライバ(80)からの信号を前記複数の電磁比例弁(72、76)のいずれか1つに通電するように切換えるリレー(73)を配置し、
1個の前記ドライバ(80)により前記複数の電磁比例弁(72、76)を駆動するように構成した、
ことを特徴とする制御装置にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、左右のサイドクラッチ(47L、47R)と、
左右の走行装置(2L、2R)と、
前記左右のサイドクラッチ(47L、47R)の上流側から分岐された回転を、複数のクラッチ(52、53)の切換えにより異なる回転数として1個の合流回転要素(61c)に出力する伝動経路と、
前記左走行装置(2L)に連結する第1の回転要素(61a)、前記右走行装置(2R)に連結する第2の回転要素(61b)及び前記合流回転要素(61c)に連結する第3の回転要素(61d)を有し、前記第3の回転要素(61d)と、第1の回転要素(61a)又は第2の回転要素(61b)の何れか一方の回転を合成して、第1の回転要素(61a)又は第2の回転要素(61b)の何れか他方に伝達する遊星歯車装置(60)と、
を有するトランスミッション(35)を備え、
前記複数のアクチュエータ(96、97)は、前記複数のクラッチ(52、53)を操作してなる、
請求項1記載の制御装置にある。
【0008】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によると、作業用車輌の制御装置は、ドライバからの信号を複数の電磁比例弁のいずれか1つに通電するように切換えるリレーを配置し、1個の前記ドライバにより前記複数の電磁比例弁を駆動するように構成したので、複数の電磁比例弁の同時駆動を防止することができ、制御装置の信頼性を向上させることができる。また、駆動回路を一式削減すると共に、駆動回路に対応する制御部のポートを減らすことができ、さらにトリマー調整等の作業をなくすことができるので、制御装置のコストを低下させることができる。
【0010】
請求項2に係る本発明によると、左右のサイドクラッチと、左右の走行装置と、前記左右のサイドクラッチの上流側から分岐された回転を、複数のクラッチの切換えにより異なる回転数として1個の合流回転要素に出力する伝動経路と、前記左走行装置に連結する第1の回転要素、前記右走行装置に連結する第2の回転要素及び前記合流回転要素に連結する第3の回転要素を有し、前記第3の回転要素と、第1の回転要素又は第2の回転要素の何れか一方の回転を合成して、第1の回転要素又は第2の回転要素の何れか他方に伝達する遊星歯車装置とを有するトランスミッションを備え、前記複数のアクチュエータにより前記複数のクラッチを別個に操作するようにしたので、簡単な構成で、複数の電磁比例弁の同時駆動を防止することができ、制御装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1乃至図10は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、コンバインの側面図、図2は、コンバインの運転席を示す平面図、図3は、動力の伝動系統図、図4は、トランスミッションの斜視図、図5は、トランスミッションの右側面図、図6は、トランスミッションの左側面図、図7は、制御系統を示すブロック線図、図8は、ドライバの詳細を示すブロック線図、図9は、作業用車輌の旋回操作系を含む油圧回路図、図10は、旋回操作時における制御チャート図である。
【0013】
図1に示すように、作業用車輌であるコンバイン1は、左右一対の走行装置(クローラ走行装置)2R(2L)に支持された機体3を有している。前記機体3の上部には、走行方向右側前部にエンジン室5が配置され、該エンジン室5の内部にエンジン6(図3参照)が配置されている。前記エンジン室5の後部には、穀稈から脱穀された穀粒を一時的に貯留するためのグレンタンク7が配置され、該グレンタンク7の後部には、グレンタンク7に貯留された穀粒を運搬車輌等へ搬出するためのオーガ8が連結されている。
【0014】
前記機体3の前記グレンタンク7の左側には、穀稈から穀粒を脱穀するための脱穀装置(図示せず)が搭載され、該脱穀装置は、扱ぎ室、選別装置及び搬送装置等を備え、前記扱ぎ室に配置された扱胴で脱穀された穀粒及び切れ藁等の中から、前記選別装置で選別された穀粒を前記搬送装置で前記グレンタンク7に搬入するようになっている。また、前記機体3の後部には、前記脱穀装置で穀粒が脱穀された排藁を結束もしくは所定の長さに裁断する排藁処理装置10が配置されている。
【0015】
前記機体3の前部には、前処理部11が昇降自在に支持されている。前記前処理部11は、その先端部に配置され穀稈の分草を行うデバイダ12と、該デバイダ12で分草された穀稈を引起す引起し装置(図示せず)を覆う引起しカバー13と、該引起し装置で引起された穀稈の株元側を切断する刈刃装置と、穀稈を掻き込む掻き込み装置15と、刈取られた穀稈を前記脱穀装置へ搬入するためのフィードチェーン(図示せず)に向けて搬送する間に、該脱穀装置に搬入される穀稈の穂先位置を調整するこぎ深さ搬送装置17等を備えている。前記グレンタンク7と前記前処理部11の間に位置するように前記コンバイン1を操作する運転席21が配置されている。
【0016】
図1、図2に示すように、前記運転席21には、前記エンジン室5の上方の前部に座席22が固定され、該運転席22の前方には、前面操作盤23が配置され、該座席の左側には、側面操作盤25が配置されている。
【0017】
前記前面操作盤23には、複数の電装品と共に、前記コンバイン1の走行方向を操作するマルチステアリングレバー(操作手段)26が配置されている。また、前記側面操作盤25には、前記コンバイン1の前記各作業部を操作する各種レバーや複数の電装品と共に、該側面操作盤25に形成されたガイド溝27に沿って操作可能に支持された主変速レバー28と、前記側面操作盤25に形成されたガイド溝30に沿って操作可能に支持された副変速レバー31が配置されている。
【0018】
図3に示すように、前記エンジン6の出力を前記走行装置2L、2Rに伝達するトランスミッション35は、前記機体3の下部に、前記走行装置2L、2Rの間に位置するように配置されている。前記トランスミッション35は、主変速装置を構成する走行HST(油圧式無段変速装置)36と、副変速装置40、サイドクラッチ装置45、旋回用クラッチ装置50と、遊星歯車装置60とを備えている。
【0019】
前記走行HST36の入力軸36aに固定されたプーリ36bと前記エンジン6の出力軸6aに固定されたプーリ6bとは、ベルト37で連結され、前記エンジン6の動力が前記走行HST36に伝達される。前記走行HST36の出力軸36cは、前記副変速装置40の入力軸を兼ねており、その一端には、歯車36dが固定されている。中間軸38には、前記歯車36dと噛合う歯車38aが固定されている。
【0020】
前記副変速装置40の第1変速軸41には、前記歯車38aと噛合う入力歯車41aが固定されている。また、前記第1変速軸41には、歯数の異なる2個の変速歯車41b、41cが所定の間隔で回転自在に支持されている。前記変速歯車41bと変速歯車41cの間には、前記副変速レバー31の操作により前記変速歯車41b、41cの何れかを選択して、前記第1変速軸41に結合させる結合クラッチ41dが摺動自在に配置されている。
【0021】
前記変速装置40の第2変速軸42には、前記変速歯車41b、41cと常時歯合する歯車42a、42bが固定されている。前記歯車42bは、入力された動力を下流側へ伝達する第1の出力歯車を兼ねている。また、前記第2変速軸42には、入力された動力を下流側へ伝達する第2の出力歯車42cが固定されている。さらに、前記第2変速軸42の一端には、直進回転を検出する回転センサ(第1の回転検出手段)43が結合されている。
【0022】
前記サイドクラッチ装置45は、サイドクラッチ軸46を有し、該サイドクラッチ軸46には、その中央部に前記出力歯車42cと常時噛合うセンタ歯車46aが固定され、両端部には、歯車46b、46cを回転及び摺動自在に支持している。前記センタ歯車46aと前記歯車46bとの対向面には、左サイドクラッチ47Lが配置され、前記センタ歯車46aと前記歯車46cとの対向面には、右サイドクラッチ47Rが配置されている。
【0023】
左右一対の駆動軸48L、48Rには、それぞれ前記歯車46b又は歯車46cと噛合う駆動軸歯車48a、48bが固定されている。前記駆動軸48L、48Rは前記左右の走行装置2L、2Rに連結されている。従って、前記左右一対のサイドクラッチ47L、47Rを接合状態にすると、前記駆動軸48L、48Rは同方向に同速度で回転し、前記走行装置2L、2Rを駆動するので、前記コンバイン1は直進走行することになる。
【0024】
即ち、前記副変速装置40の前記第2変速軸42、歯車42c、前記サイドクラッチ装置45のセンタ歯車46a、左右のサイドクラッチ47L、47R、歯車46b、46cは、前記駆動軸歯車48a、48b及び前記駆動軸48L、48Rを介して前記左走行装置2L、右走行装置2Rに動力を伝達する直進用伝動経路を形成している。
【0025】
前記旋回用クラッチ装置50は、クラッチ軸51を有している。前記クラッチ軸51の中央部には、前記歯車42bと噛合う歯車51aが固定されている。また、前記クラッチ軸51の一端には、緩旋回用クラッチ52が配置されている。前記緩旋回用クラッチ52のクラッチケース52aは、前記クラッチ軸51に回転自在に遊嵌し、前記クラッチ軸51に回転自在に遊嵌するクラッチ歯車52bと一体に結合されている。また、前記クラッチ軸51の他端には、急旋回用クラッチ53が配置されている。前記急旋回用クラッチ53のクラッチケース53aは、前記クラッチ軸51に回転自在に遊嵌し、前記クラッチ軸51に回転自在に遊嵌するクラッチ歯車53bと一体に結合されている。なお、前記クラッチ軸51の一端には、駐車ブレーキ操作アーム58が配置されている。
【0026】
中間軸55には、前記クラッチ歯車52bと噛合う歯車55aと、前記クラッチ歯車53bと噛合う歯車55b及び歯車55cが固定されている。また、前記中間軸55の一端には、前記中間軸55の回転を検出する回転センサ(第2の回転数検出手段)56が結合されている。
【0027】
前記遊星歯車装置60は、それぞれ傘歯車からなる左右のサイドギヤ及びセンタギヤを有する差動歯車装置からなり、遊星歯車軸61と、該遊星歯車軸61に回転自在に支持され、前記駆動軸48Lの前記駆動歯車48aと噛合い前記左走行装置2Lに連結される歯車(第1の回転要素)61aと、前記遊星歯車軸61に回転自在に支持され、前記駆動軸48Rの前記駆動歯車48bと噛合い前記右走行装置2Rに連結される歯車(第2の回転要素)61bと、前記歯車61aと前記歯車61bとを連結するように配置されたプラネタリピニオンギヤ(センタギヤ;合流回転要素)61cに固定され前記中間軸55の歯車55cと噛合う歯車(第3の回転要素)61dを備えている。
【0028】
従って、前記サイドクラッチ装置45の左サイドクラッチ47L(もしくは右サイドクラッチ47Rの何れか一方)を接合し他方を切離した状態で、前記旋回用クラッチ装置50の緩旋回用クラッチ52(もしくは急旋回用クラッチ53の何れか一方)を接合すると、前記副変速装置40の第2変速軸42の歯車42bと噛合う歯車51aによって回転している前記クラッチ軸51と歯車52b(もしくは歯車53b)が一体となって回転し、前記歯車55a(もしくは歯車55b)、前記中間軸55、歯車55c及び歯車61dを介して前記遊星歯車装置60のプラネタリピニオンギヤ61cを回転駆動させる。
【0029】
前記遊星歯車装置60では、前記左サイドクラッチ47L(もしくは右サイドクラッチ47R)から前記歯車46b(もしくは歯車46c)及び前記駆動歯車48a(もしくは駆動歯車48b)を介して前記歯車61a(もしくは歯車61b)に伝達された回転と、前記クラッチ装置50のクラッチ歯車52b(もしくはクラッチ歯車53b)から前記歯車55a(もしくは歯車55b)、前記中間軸55、歯車55c、及び歯車61dを介して前記プラネタリピニオンギヤ61cに伝達された回転を合成して、前記歯車61b(もしくは歯車61a)を回転させる。
【0030】
前記歯車61b(もしくは歯車61a)の回転は、前記駆動歯車48b(もしくは駆動歯車48a)を介して前記駆動軸48R(もしくは駆動軸48L)に伝達され、前記右走行装置2R(もしくは左走行装置2L)を前記左走行装置2L(もしくは右走行装置2R)と異なる速度で同方向(もしくは逆方向)へ駆動して、前記コンバイン1の旋回を行う。
【0031】
即ち、前記副変速装置40の前記第2変速軸42、歯車42b、歯車42c、前記サイドクラッチ装置45、前記旋回用クラッチ装置50、前記中間軸55、歯車55a、歯車55b、歯車55c及び前記遊星歯車装置60は、旋回用伝動経路を形成している。
【0032】
図4、図5及び図6に示すように、前記トランスミッション35の上部には、前記走行HST36が固定され、その入力軸36aに一端に固定されたプーリ36bを介して前記エンジン6の動力が入力される。また、前記トランスミッション35には、前記出力軸36cと、前記中間軸38と、前記第1変速軸41及び第2変速軸42が配置され、該第2変速軸42に前記回転センサ43が連結されている。
【0033】
また、前記トランスミッション35には、前記サイドクラッチ軸46と、前記クラッチ軸51と、前記中間軸55と、前記遊星歯車軸61と、前記左右の駆動軸48L、48Rが配置され、前記中間軸55に前記回転センサ56が連結されている。
【0034】
図7に示すように、制御装置65は、マイコン(マイクロコンピュータ)で構成される制御部66を備え、その入力側には、前記マルチステアリングレバー26に付設され、その操作方向と操作量を検出するポテンショメータ(操作量検出手段)67と、前記コンバイン1の急旋回を行うための急旋回スイッチ68と、前記回転センサ43及び前記回転センサ56が接続されている。上記急旋回スイッチ68は、副変速レバー31の操作ノブに設けられた押ボタンスイッチである。なお、前記回転センサ43、回転センサ56及び制御部66により、前記直進用伝動経路の回転数と前記旋回用伝動経路の回転数との比を検出する旋回比検出手段を構成している。
【0035】
前記制御部66の出力側には、前記急旋回スイッチ68の操作により前記コンバイン1が急旋回モードになったことを表示する急旋回ランプ70と、前記サイドクラッチ装置45の左右のサイドクラッチ47L、47Rの接続、切離しを行うサイドクラッチ電磁弁93(図9参照)を駆動するソレノイド71L、71Rが接続されている。
【0036】
また、前記制御部66の出力側には、前記制御部66からの切換え信号により、前記緩旋回用クラッチ52を作動させるための電磁比例弁(調圧バルブ)72と前記急旋回用クラッチ53を作動させるための電磁比例弁76のいずれかを選択するリレー73と、該リレー73を介して前記電磁比例弁72(もしくは電磁比例弁76)に印加する電流を制御するドライバ80が接続されている。
【0037】
図8に示すように、前記制御部66と前記リレー73の間に配置された前記ドライバ80は、D/A変換器81、増幅器82、三角波発振器83、比較器85、ブースタ86、短絡検出器87、電流検出器88及び増幅器89を備え、前記制御部66から印加されるコマンド信号に基づき、前記リレー73により選択された前記電磁比例弁72(もしくは電磁比例弁76)に電流を印加するように構成されている。また、前記ドライバ80は、前記短絡検出器87、電流検出器88により、前記電磁比例弁72、電磁比例弁76の短絡又は断線を検出して前記制御部66に入力するように構成されている。
【0038】
図9に示すように、フィルタ91を通してオイルタンク90内の油を汲み上げる油ポンプ92には、前記ソレノイド71L、71Rを有するサイドクラッチ電磁弁93を介して前記サイドクラッチ装置45を作動させる油圧アクチュエータ95が接続されている。また、前記油ポンプ92には、前記電磁比例弁72を介して前記緩旋回用クラッチ52を作動させる油圧アクチュエータ96が接続され、前記電磁比例弁76を介して前記急旋回用クラッチ53を作動させる油圧アクチュエータ97が接続されている。
【0039】
前記の構成において、前記コンバイン1の走行時に操作される前記マルチステアリングレバー26の操作角度が、図10に示す0からAまでの間では、前記サイドクラッチ電磁弁93の前記ソレノイド71L、71RはOFFの状態で、前記左右のサイドクラッチ47L、47Rが共に接続された状態にあり、前記左右の走行装置2L、2Rが等速で同方向に駆動され、前記コンバイン1は直進走行する。
【0040】
前記マルチステアリングレバー26の操作角度が、図10に示すAを越えると、前記サイドクラッチ電磁弁93の前記ソレノイド71L(もしくはソレノイド71R)がOFFからONになり、前記サイドクラッチ電磁弁93のポートが切換えられる。すると、前記油圧アクチュエータ95が作動して、前記コンバイン1の旋回内側となる側の前記サイドクラッチ47L(もしくはサイドクラッチ47R)が切離され、旋回内側となる前記左走行装置2L(もしくは右走行装置2R)は空転する。このとき、前記コンバイン1は、その慣性により直進方向に走行する。また、前記リレー73は、前記制御部66からの指令により前記電磁比例弁72を選択するように設定される。
【0041】
前記マルチステアリングレバー26の操作量が、図10に示すBを越えると、前記ドライバ80から前記リレー73を通して前記電磁比例弁72に電流が印加され、該電磁比例弁72を作動させて、前記油圧アクチュエータ96を作動させる。この際、前記緩旋回用クラッチ52は、図10のB〜Cの間では、電磁比例弁72の出力に基づき、その伝達トルク容量が徐々に増加し、緩旋回用クラッチ52の歯車52bの回転を徐々に変速する。前記歯車52bの回転は、前記歯車55a、前記中間軸55、歯車55c及び前記歯車61dを介して前記遊星歯車装置60のプラネタリピニオンギヤ61cに伝達される。
【0042】
この時、前記制御部66は、前記回転センサ43から印加される直進回転の回転数と、前記回転センサ56から印加される旋回回転の回転数に基づいて、左右の走行装置2L,2Rの回転数の比である旋回比を検出し、前記ドライバ80に出力する。前記ドライバ80は、前記回転センサ43の出力と前記制御部66で検出した旋回比から、前記旋回比が前記マルチステアリングレバー26の操作位置に対応するように前記電磁比例弁72を駆動する。従って、前記マルチステアリングレバー26の操作量に対する前記旋回比のバラツキを無くし、旋回操作時における操作フィーリングを向上させることができる。
【0043】
前記遊星歯車装置60は、前記クラッチ装置45の右サイドクラッチ47R(もしくは左サイドクラッチ47L)から歯車61b(もしくは歯車61a)に伝達される動力で回転しており、該回転と前記歯車61dから前記プラネタリピニオンギヤ61cに伝達された回転を合成した回転を前記歯車61a(もしくは歯車61b)から前記駆動歯車48L(もしくは駆動歯車48R)を介して前記左駆動軸48L(もしくは右駆動軸48R)へ出力し、前記左走行装置2L(もしくは右走行装置2R)を駆動する。
【0044】
図10のC(前記マルチステアリングレバー26のデテント位置)の手前で前記緩旋回用クラッチ52が完全に接続されると、旋回内側の前記左走行装置2L(もしくは右走行装置2R)はさらに減速されるが、前記左走行装置2L(もしくは右走行装置2R)が停止することはない。
【0045】
なお、上述した実施の形態は、緩旋回用クラッチ及び急旋回用クラッチ制御する電磁比例弁に適用して説明したが、これに限らず、複数のクラッチを用いた他の操向制御装置でもよく、更に操向制御装置以外に用いられる電磁比例弁に適用してもよく、要は、ドライバ80からの信号を複数の電磁比例弁72、電磁比例弁76のいずれか1つに通電するように切換えるリレー73を配置し、1個の前記ドライバ80により前記複数の電磁比例弁72、電磁比例弁76を駆動するように構成したものに適用して、複数の電磁比例弁72、電磁比例弁76の同時駆動を防止することができ、簡単な構成で、制御装置65の信頼性を向上させることができる。また、駆動回路を一式削減すると共に、駆動回路に対応する制御部66のポートを減らすことができ、さらにトリマー調整等の作業をなくすことができるので、制御装置65のコストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの運転席を示す平面図である。
【図3】動力の伝動系統図である。
【図4】トランスミッションの斜視図である。
【図5】トランスミッションの右側面図である。
【図6】トランスミッションの左側面図である。
【図7】制御系統を示すブロック線図である。
【図8】ドライバの詳細を示すブロック線図である。
【図9】作業用車輌の旋回操作系を含む油圧回路図である。
【図10】旋回操作時における制御チャート図である。
【符号の説明】
【0047】
2L 左走行装置
2R 右走行装置
6 エンジン
35 トランスミッション
47L サイドクラッチ(左サイドクラッチ)
47R サイドクラッチ(右サイドクラッチ)
52 クラッチ(緩旋回用クラッチ)
53 クラッチ(急旋回用クラッチ)
60 遊星歯車装置
61a 第1の回転要素(歯車)
61b 第2の回転要素(歯車)
61c 合流回転要素(プラネタリピニオンギヤ;センタギヤ)
61d 第3の回転要素(歯車)
65 制御装置
66 制御部
72 電磁比例弁
73 リレー
76 電磁比例弁
80 ドライバ
96 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
97 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時作動しない複数のアクチュエータにそれぞれ連通する複数の電磁比例弁を備え、これら電磁比例弁を制御部からの信号に基づきドライバを介して制御してなる、制御装置において、
前記ドライバからの信号を前記複数の電磁比例弁のいずれか1つに通電するように切換えるリレーを配置し、
1個の前記ドライバにより前記複数の電磁比例弁を駆動するように構成した、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
左右のサイドクラッチと、
左右の走行装置と、
前記左右のサイドクラッチの上流側から分岐された回転を、複数のクラッチの切換えにより異なる回転数として1個の合流回転要素に出力する伝動経路と、
前記左走行装置に連結する第1の回転要素、前記右走行装置に連結する第2の回転要素及び前記合流回転要素に連結する第3の回転要素を有し、前記第3の回転要素と、第1の回転要素又は第2の回転要素の何れか一方の回転を合成して、第1の回転要素又は第2の回転要素の何れか他方に伝達する遊星歯車装置と、
を有するトランスミッションを備え、
前記複数のアクチュエータは、前記複数のクラッチを操作してなる、
請求項1記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−175375(P2008−175375A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12027(P2007−12027)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】