制御装置
【課題】消費電力が小さく、且つ耐久性及び信頼性が確保される制御装置を提供する。
【解決手段】電源電圧を各軸(緩衝器)の指令電流値の変動に応じて変化させたので、従来の制御装置による制御と比較して、軸(緩衝器)の総電力損失、言い換えると、各ソレノイド駆動回路18〜21が放出する熱を大幅に削減することができる。これにより、サスペンションシステムの消費電力を大幅に削減することができる。また、ソレノイド駆動回路18〜21から放出される熱が大幅に削減されることで、基板のはんだ部の耐久性及び信頼性、延いては、サスペンションシステムの耐久性及び信頼性をも向上させることができる。
【解決手段】電源電圧を各軸(緩衝器)の指令電流値の変動に応じて変化させたので、従来の制御装置による制御と比較して、軸(緩衝器)の総電力損失、言い換えると、各ソレノイド駆動回路18〜21が放出する熱を大幅に削減することができる。これにより、サスペンションシステムの消費電力を大幅に削減することができる。また、ソレノイド駆動回路18〜21から放出される熱が大幅に削減されることで、基板のはんだ部の耐久性及び信頼性、延いては、サスペンションシステムの耐久性及び信頼性をも向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道車両のサスペンションシステムに適用される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両のセミアクティブサスペンションシステムにおいては、ドロッパー方式を適用したソレノイド駆動回路を含む制御装置が採用されている(例えば、特許文献1参照)。この制御装置では、CPUから出力された指令電流に応じてソレノイド制御用トランジスタ(例えば、電界効果トランジスタ(FET))のオン/オフが制御され、このトランジスタのオン/オフの制御に応じてソレノイドに電流(駆動電流)が流される。そして、駆動電流の大きさに応じてソレノイドバルブのバルブが駆動されることにより、緩衝器は、駆動電流に応じた減衰力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−111375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した制御装置では、トランジスタの抵抗値は、駆動電流(駆動回路に流れる電流値)の変化に応じて可変抵抗であるかのように変動することが知られている。そして、このような制御装置では、トランジスタの抵抗による発熱によって損失が発生することが知られている。この損失は、ソレノイド1個当りの損失が数ワット(W)であったとしても、鉄道車両のセミアクティブサスペンションシステムでは、4〜8個のソレノイドに電流が流されるため、一車両当りにおける総損失が数十ワット(W)に上る場合があり、システム全体では消費電力が増大される。
【0005】
そこで本発明は、消費電力が小さい制御装置を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の制御装置は、台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で各アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、前記電流値決定部によって決定された各電流値を比較して最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、前記最大電流値選択部によって選択された電流値を得るために要求される電圧値に前記電源電圧を変化させる電源電圧可変部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の制御装置は、台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で複数個の前記アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、前記電流値決定部によって決定された各電流値の時系列データの波形を作成する電流値波形作成部と、前記電流値波形作成部によって作成された各波形を比較して傾向が近似する予め決められた数のグループに分類する電流値分類部と、前記電流値決定部によって決定された各電流値を各グループ内で比較して各グループで最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、前記最大電流選択部によって選択された各電流値を得るために要求される各電圧値に各グループの電源電圧を変化させる、各グループに対応して設けられる電源電圧可変部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力が小さい制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の説明図であり、1両の鉄道車両に構築されたセミアクティブサスペンションシステムの概略を示す図である。
【図2】第1実施形態の制御装置の概略構造を示す図である。
【図3】第1実施形態の制御装置による制御のフローチャートを示す図である。
【図4】第1実施形態の制御装置による制御によって得られた各軸(緩衝器)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部の出力電圧を時系列で表した図である。
【図5】従来の制御装置による制御によって得られた各軸(緩衝器)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部の出力電圧を時系列で表した図である。
【図6】図4に対応する軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【図7】図5に対応する軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【図8】第2実施形態の制御装置の概略構造を示す図である。
【図9】第2実施形態の制御装置の概略構造を示す図である。
【図10】第2実施形態の説明図であり、電流値波形作成部によって作成された各指令電流値の時系列データの波形を示す図である。
【図11】第2実施形態の説明図であり、指令電流値のグループ分けを行った場合の軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【図12】第2実施形態の説明図であり、指令電流値のグループ分けを行っていない場合の軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に、1両の鉄道車両に構築されたセミアクティブサスペンションシステムの概略を示す。本システムは、車体1の1位側(図1における左側)端部に設けられて車体1の左右方向の加速度を検出する加速度センサ2と、車体1の2位側(図1における右側)端部に設けられて車体1の左右方向の加速度を検出する加速度センサ3と、車体1と1位側台車4との間に設けられて減衰力切替機能を有する一対の緩衝器6及び7と、車体1と2位側台車5との間に設けられて減衰力切替機能を有する一対の緩衝器8及び9と、加速度センサ2及び3の検出信号に基づいて各緩衝器6〜9の減衰力を制御する制御装置10と、を含む。
【0011】
図2に示されるように、制御装置10(制御手段)は、DA変換器を備えてアナログ電圧を出力可能なCPU11と、車両1の電源装置12に接続されてCPU11からの出力信号によって操作される電源電圧可変部13と、各緩衝器6〜9に内蔵された各ソレノイドバルブに対応して設けられるソレノイド14〜17(アクチュエータ)と、各ソレノイド14〜17を駆動するソレノイド駆動回路18〜21と、を含む。なお、各ソレノイド駆動回路18〜21は同一の構成及び作用を有する。したがって、図2において、ソレノイド15〜17に対応する各ソレノイド駆動回路19〜21を簡略化して示す。また、ソレノイド14を駆動するソレノイド駆動回路18のみを詳細に説明する。
【0012】
ソレノイド駆動回路18は、ソース−ドレイン間にソレノイド14を駆動する駆動電流(駆動電圧)を通電可能な電流容量を有してゲート電圧の変化に応じて抵抗値を変化させるトランジスタ22と、ソレノイド14に流れる電流(実電流)を電圧として出力するための電流検出抵抗23(シャント抵抗)と、オペアンプによって構成されて電流検出抵抗23の電圧を所定の電圧に増幅するための電流検出回路24と、オペアンプによって構成されてCPU11から出力された指令電流値(指令電圧値)と電流検出回路24によって検出された実電流値(実電圧値)との差分を増幅して出力するゲート駆動回路25と、を含む。なお、第1実施形態におけるトランジスタ22は、金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
【0013】
ソレノイド14は、一端が電源電圧可変部13に接続されている。トランジスタ22は、コレクタがソレノイド14の他端に接続され、エミッタが電流検出抵抗23の一端に接続されている。また、トランジスタ22は、ベースがゲート駆動回路25を介してCPU11に接続されており、CPU11から出力された指令電流値が入力されるように構成されている。電流検出回路24は、一方の入力端子が電流検出抵抗23の一端に接続され、他方の入力端子が電流検出抵抗23の他端に接続され、出力端子がCPU11に接続されている。そして、電流検出回路24は、電流検出抵抗23に流れる電流(電圧)、延いてはソレノイド14に流れる実電流(実電圧)を検出し、この実電流値(実電圧値)をCPU11へ出力するように構成されている。
なお、トランジスタ22、ソレノイド14、電流検出抵抗23の並ぶ順序はいかなる組み合わせであってもよい。
【0014】
CPU11には、加速度センサ2及び3からの出力信号が入力される。CPU11は、加速度センサ2及び3からの出力信号と指令電流値(指令電圧値)との対応関係が書き込まれたマップが格納されており、このマップに基づいて加速度センサ2及び3から受け取った出力信号に対応した駆動電流(駆動電圧)、延いては減衰力を得るための指令電流値(指令電圧値)をゲート駆動回路25を介してトランジスタ22へ出力するように構成されている。そして、制御装置10は、CPU11から出力された指令電流値(指令電圧値)に応じてトランジスタ22のベース電圧を制御し、これにより、ソレノイド14に駆動電流(駆動電圧)が流れる。その結果、駆動電流(駆動電圧)に基づいてソレノイド14が駆動され、対応する緩衝器6が駆動電流(駆動電圧)に応じた大きさの減衰力を発生するように構成されている。
【0015】
また、制御装置10は、加速度センサ2及び3から受け取った出力信号に応じて各緩衝器6〜9に要求される減衰特性を判断する論理回路(減衰特性判断部)と、この論理回路(減衰特性判断部)によって判断された各減衰特性に基づき各ソレノイド14〜17に対応する指令電流値を決定する論理回路(電流値決定部)と、この論理回路(電流値決定部)によって決定された各指令電流値を比較して最も大きい指令電流値を選択する論理回路(最大電流値選択部)と、電源電圧可変部13を操作して電源電圧を論理回路(最大電流値選択部)によって選択された指令電流値を得るために要求される電圧値に変化させる論理回路(電源電圧可変部)と、を含む集積回路(IC)(制御手段)を有する。
【0016】
次に、第1実施形態における制御装置10(制御手段)の制御フローを図3に基づき説明する。
まず、CPU11に各加速度センサ2及び3からの出力信号(加速度信号)が取り込まれる(ステップ1)。CPU11に取り込まれたデータには、ノイズ成分を除去するためのLPF処理、ドリフト成分及び定常偏差成分を除去するためのHPF処理を含むフィルタ処理が実行される(ステップ2)。次に、加速度信号が予め設定された領域内であるか否かの判断、並びに各加速度信号を比較する等して異常があるか否かを判定する(ステップ3)。次に、減衰特性判断部において、各加速度信号に各種のゲイン等が乗じられて車体1の振動を低減させるために各緩衝器6〜9に要求される減衰特性が演算され、この演算結果に基づき、電流値決定部により、各緩衝器6〜9の減衰力指令、すなわち各ソレノイド14〜17の指令電流値が決定される(ステップ4)。
【0017】
ここで、制御装置10は、ソレノイド駆動電力の積算値、外気温度、及びソレノイド14〜17(アクチュエータ)への電流の流し難さ等の条件から、各ソレノイド14〜17の抵抗値を推定する(ステップ5)。次に、制御装置10は、各ソレノイド14の抵抗値(推定値)及び前述したステップ4において決定された指令電流値に基づいてソレノイド14〜17を駆動するために要求される電圧を演算し、電源電圧可変部13から出力される電圧を調整する(ステップ6)。そして、前述したステップ4において決定された指令電流値をCPU11のDA変換器によって処理した後、この指令電流値を各ソレノイド駆動回路18〜21のゲート駆動回路25に出力し、各ソレノイド14〜17を駆動する(ステップ7)。
【0018】
なお、ソレノイド14〜17を駆動するために要求される電圧を演算するに際し、ソレノイド14〜17の抵抗値として固定値を使用する場合、ステップ5の処理を省略することができる。
【0019】
次に、ステップ6で実行されるサブルーチンを説明する。まず、最大電流値選択部において、電流値決定部によって決定された各指令電流値を比較して最も大きい指令電流値が選択される(ステップ8)。次に、ステップ5で推定された各ソレノイド14〜17の抵抗値のうちの最大値及びステップ8で選択された指令電流値を用いて電源電圧可変部13の出力電圧が演算される(ステップ9)。そして、ステップ9の演算結果に基づいて電源電圧可変部13が操作され、電源電圧可変部13から出力される電圧が調整される(ステップ10)。
【0020】
なお、ステップ8及び9は、ソレノイド14〜17毎に要求される電源電圧を算出し、この算出結果のうちの最大値を選定する処理に置き換えることができる。
【0021】
ここで、図4に、第1実施形態の制御装置10による制御によって得られた各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部13の出力電圧を時系列で表した図を示す。また、図5は、比較対象としての従来の制御装置による制御によって得られた各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部13の出力電圧を時系列で表した図である。さらに、図6は、図4に対応する軸(緩衝器6〜9)の総電力損失を時系列で表した図であり、図7は、図5に対応する軸(緩衝器6〜9)の総電力損失を時系列で表した図である。
【0022】
図5に示されるように、従来の制御装置による制御では、電源電圧が固定値、すなわち、ソレノイド駆動回路18〜21によって要求される電源電圧のうち最も高い電圧値に固定されていたため、図7に示されるように、軸(緩衝器6〜9)の総電力損失(図7におけるグレースケール部分の面積に相当)は、比較的大きくなる。これに対し、図4に示されるように、第1実施形態の制御装置10による制御では、電源電圧が各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変動に応じて変化される。これにより、図6に示されるように、第1実施形態の制御装置10は、従来の制御装置による制御と比較して、軸(緩衝器6〜9)の総電力損失(図6におけるグレースケール部分の面積に相当)が大幅に削減される。
【0023】
第1実施形態によれば、電源電圧を各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変動に応じて変化させたので、従来の制御装置による制御と比較して、軸(緩衝器6〜9)の総電力損失、言い換えると、各ソレノイド駆動回路18〜21が放出する熱を大幅に削減することができる。
これにより、各ソレノイド駆動回路18〜21の放熱フィンを小型化することができ、延いては、制御装置10を小型化することができる。加えて、送風ファンも小型化或いは不用とすることができるので、制御装置10、延いては、サスペンションシステムのさらなる小型化並びにコストダウンが可能になる。
また、ソレノイド駆動回路18〜21から放出される熱が大幅に削減されることで、基板のはんだ部の耐久性及び信頼性、延いては、サスペンションシステムの耐久性及び信頼性をも向上させることができる。
さらに、サスペンションシステムのメンテナンスの頻度を減らすことができるので、ランニングコストを削減することができる。
【0024】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を添付した図に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と同一又は相当の構成には、同一の名称及び符号を付与する。また、説明を簡潔にすることを目的に、第1実施形態と重複する説明を省く。
【0025】
図8に、第2実施形態のセミアクティブサスペンションシステムの概略を示す。本システムは、軸ばね28に並列に設けられた各緩衝器26の減衰力を調整することにより車体1の上下方向への振動を低減させる上下動セミアクティブサスペンションシステムである。なお、図8には、1両の鉄道車両の1位側(図8における右側)のみが示されている。また、図8には、緩衝器26が2個のみ示されているが、緩衝器26は各車輪27に対応させて設けられており、1位側台車4及び2位側台車5には各々4個の車輪27が設けられているので、1両の鉄道車両に合計8個の緩衝器26が設けられている。
【0026】
本システムは、1位側台車4の枠上に設けられた加速度センサ29を含む。加速度センサ29は、1位側台車4の前後(図8における左右)に配置されており、各加速度センサ29によって車体1の上下方向の加速度が検出される。なお、本システムでは、1位側台車4同様、図示が省略された2位側台車(5)にも前後に配置された2個の加速度センサ29が設けられており、1両の鉄道車両に合計4個の加速度センサ29が設けられている。そして、本システムは、各加速度センサ29の検出信号に基づいて各緩衝器26の減衰力を制御する制御装置30を有している。
【0027】
図9に示されるように、制御装置30(制御手段)は、各緩衝器26に内蔵された各ソレノイドバルブに対応して設けられるソレノイド31〜38(アクチュエータ)と、各ソレノイド31〜38を駆動するソレノイド駆動回路39〜46と、を含む。なお、第2実施形態の制御装置30は、第1実施形態に対する緩衝器(ソレノイドバルブ)の増加に伴い、ソレノイド及びソレノイド駆動回路を追加したものであり、第1実施形態の制御装置30と基本構造は同一である。第1実施形態との顕著な差異は、制御装置30は、2つの電源電圧可変部13が並列に配置されている点である。そして、制御装置30では、ソレノイド31〜34の一端が一方の電源電圧可変部13(図9における左側の電源電圧可変部13)に接続されており、ソレノイド35〜38の一端が他方の電源電圧可変部13(図9における右側の電源電圧可変部13)に接続されている。
【0028】
そして、制御装置30は、加速度センサ29から受け取った出力信号に応じて各緩衝器26に要求される減衰特性を判断する論理回路(減衰特性判断部)と、この論理回路(減衰特性判断部)によって判断された各減衰特性に基づき各ソレノイド31〜38に対応する指令電流値を決定する論理回路(電流値決定部)と、この論理回路(電流値決定部)によって決定された各指令電流値の時系列データの波形を作成する論理回路(電流値波形作成部)と、この論理回路(電流値波形作成部)によって作成された各指令電流値の波形を比較して傾向が近似する2つ(電源電圧可変部13の数に一致する予め決められた数)のグループに分類する論理回路(電流値分類部)と、論理回路(電流値決定部)によって決定された各指令電流値を各グループ内で比較して、各グループで最も大きい指令電流値を選択する論理回路(最大電流値選択部)と、この論理回路(最大電流選択部)によって選択された各指令電流値を得るために要求される各電圧値に、各電源電圧可変部13の電源電圧、延いては、各グループの電源電圧を変化させる論理回路(電源電圧可変部)と、を含む集積回路(IC)(制御手段)を有する。
なお、指令電流値が似たような傾向で変化する2つのグループに、予め、電源電圧可変部を接続しておくことで、電流値分類部と電源選択部を省略してもよい。
【0029】
ここで、第2実施形態における制御装置30(制御手段)特有の処理を説明する。
まず、電流値決定部によって各ソレノイド31〜38に対応する各指令電流値が決定されると、図10に示されるように、電流値波形作成部によって各指令電流値の時系列データの波形が作成される。次に、電流値分類部によって各指令電流値の波形を比較して傾向が近似する2つのグループに分類する。なお、図10に示される一例においては、図10のA部に特徴的なピークが表れるAグループと図10のB部に特徴的なピークが表れるBグループとに分類される。また、便宜上、ソレノイド31〜34の指令電流値波形がAグループ、ソレノイド35〜38の指令電流値波形がBグループに分類されたものとする。さらに、第2実施形態では、制御軸が8軸(緩衝器26の数量が8個)であるため、8つの指令電流値波形が作成されるが、図の煩雑化を防ぐ(視認性を確保する)ため、図10には、6つの指令電流波形のみを示す。
【0030】
次に、最大電流値選択部において、各グループ内の指令電流値が比較されて各グループで最も大きい指令電流値が選択される。次に、Aグループの各ソレノイド31〜34の抵抗値のうちの最大値及び最大電流値選択部で選択されたAグループの指令電流値を用いて一方の電源電圧可変部13の出力電圧が演算される。同時に、Bグループの各ソレノイド35〜38の抵抗値のうちの最大値及び最大電流値選択部で選択されたBグループの指令電流値を用いて他方の電源電圧可変部13の出力電圧が演算される。そして、各演算結果に基づいて、対応する電源電圧可変部13が操作され、各電源電圧可変部13から出力される電圧が調整される。
【0031】
ここで、図11は、第2実施形態の制御装置30による制御、すなわち、指令電流値のグループ分けを行った場合の軸(緩衝器26)の総電力損失を時系列で表した図であり、図12は、指令電流値のグループ分けを行っていない場合の軸(緩衝器26)の総電力損失を時系列で表した図である。
【0032】
図11と図12とを比較して理解できるように、指令電流値のグループ分けを行った場合(図11)の制御では、指令電流値のグループ分けを行っていない場合(図12)の制御と比較して、軸(緩衝器26)の総電力損失(図11及び図12におけるグレースケール部分の面積に相当)を低減することができる。
【0033】
第2実施形態によれば、指令電流値のグループ分けを行うことで、第1実施形態によって得られる効果をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 車体、2,3 加速度センサ、4 1位側台車、5 2位側台車、6〜9 緩衝器、10 制御装置、11 CPU、12 電源電圧、13 電源電圧可変部、14〜17 ソレノイド、18〜21 ソレノイド駆動回路、22 トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道車両のサスペンションシステムに適用される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両のセミアクティブサスペンションシステムにおいては、ドロッパー方式を適用したソレノイド駆動回路を含む制御装置が採用されている(例えば、特許文献1参照)。この制御装置では、CPUから出力された指令電流に応じてソレノイド制御用トランジスタ(例えば、電界効果トランジスタ(FET))のオン/オフが制御され、このトランジスタのオン/オフの制御に応じてソレノイドに電流(駆動電流)が流される。そして、駆動電流の大きさに応じてソレノイドバルブのバルブが駆動されることにより、緩衝器は、駆動電流に応じた減衰力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−111375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した制御装置では、トランジスタの抵抗値は、駆動電流(駆動回路に流れる電流値)の変化に応じて可変抵抗であるかのように変動することが知られている。そして、このような制御装置では、トランジスタの抵抗による発熱によって損失が発生することが知られている。この損失は、ソレノイド1個当りの損失が数ワット(W)であったとしても、鉄道車両のセミアクティブサスペンションシステムでは、4〜8個のソレノイドに電流が流されるため、一車両当りにおける総損失が数十ワット(W)に上る場合があり、システム全体では消費電力が増大される。
【0005】
そこで本発明は、消費電力が小さい制御装置を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の制御装置は、台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で各アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、前記電流値決定部によって決定された各電流値を比較して最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、前記最大電流値選択部によって選択された電流値を得るために要求される電圧値に前記電源電圧を変化させる電源電圧可変部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の制御装置は、台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で複数個の前記アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、前記電流値決定部によって決定された各電流値の時系列データの波形を作成する電流値波形作成部と、前記電流値波形作成部によって作成された各波形を比較して傾向が近似する予め決められた数のグループに分類する電流値分類部と、前記電流値決定部によって決定された各電流値を各グループ内で比較して各グループで最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、前記最大電流選択部によって選択された各電流値を得るために要求される各電圧値に各グループの電源電圧を変化させる、各グループに対応して設けられる電源電圧可変部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力が小さい制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の説明図であり、1両の鉄道車両に構築されたセミアクティブサスペンションシステムの概略を示す図である。
【図2】第1実施形態の制御装置の概略構造を示す図である。
【図3】第1実施形態の制御装置による制御のフローチャートを示す図である。
【図4】第1実施形態の制御装置による制御によって得られた各軸(緩衝器)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部の出力電圧を時系列で表した図である。
【図5】従来の制御装置による制御によって得られた各軸(緩衝器)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部の出力電圧を時系列で表した図である。
【図6】図4に対応する軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【図7】図5に対応する軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【図8】第2実施形態の制御装置の概略構造を示す図である。
【図9】第2実施形態の制御装置の概略構造を示す図である。
【図10】第2実施形態の説明図であり、電流値波形作成部によって作成された各指令電流値の時系列データの波形を示す図である。
【図11】第2実施形態の説明図であり、指令電流値のグループ分けを行った場合の軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【図12】第2実施形態の説明図であり、指令電流値のグループ分けを行っていない場合の軸(緩衝器)の総電力損失を時系列で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に、1両の鉄道車両に構築されたセミアクティブサスペンションシステムの概略を示す。本システムは、車体1の1位側(図1における左側)端部に設けられて車体1の左右方向の加速度を検出する加速度センサ2と、車体1の2位側(図1における右側)端部に設けられて車体1の左右方向の加速度を検出する加速度センサ3と、車体1と1位側台車4との間に設けられて減衰力切替機能を有する一対の緩衝器6及び7と、車体1と2位側台車5との間に設けられて減衰力切替機能を有する一対の緩衝器8及び9と、加速度センサ2及び3の検出信号に基づいて各緩衝器6〜9の減衰力を制御する制御装置10と、を含む。
【0011】
図2に示されるように、制御装置10(制御手段)は、DA変換器を備えてアナログ電圧を出力可能なCPU11と、車両1の電源装置12に接続されてCPU11からの出力信号によって操作される電源電圧可変部13と、各緩衝器6〜9に内蔵された各ソレノイドバルブに対応して設けられるソレノイド14〜17(アクチュエータ)と、各ソレノイド14〜17を駆動するソレノイド駆動回路18〜21と、を含む。なお、各ソレノイド駆動回路18〜21は同一の構成及び作用を有する。したがって、図2において、ソレノイド15〜17に対応する各ソレノイド駆動回路19〜21を簡略化して示す。また、ソレノイド14を駆動するソレノイド駆動回路18のみを詳細に説明する。
【0012】
ソレノイド駆動回路18は、ソース−ドレイン間にソレノイド14を駆動する駆動電流(駆動電圧)を通電可能な電流容量を有してゲート電圧の変化に応じて抵抗値を変化させるトランジスタ22と、ソレノイド14に流れる電流(実電流)を電圧として出力するための電流検出抵抗23(シャント抵抗)と、オペアンプによって構成されて電流検出抵抗23の電圧を所定の電圧に増幅するための電流検出回路24と、オペアンプによって構成されてCPU11から出力された指令電流値(指令電圧値)と電流検出回路24によって検出された実電流値(実電圧値)との差分を増幅して出力するゲート駆動回路25と、を含む。なお、第1実施形態におけるトランジスタ22は、金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
【0013】
ソレノイド14は、一端が電源電圧可変部13に接続されている。トランジスタ22は、コレクタがソレノイド14の他端に接続され、エミッタが電流検出抵抗23の一端に接続されている。また、トランジスタ22は、ベースがゲート駆動回路25を介してCPU11に接続されており、CPU11から出力された指令電流値が入力されるように構成されている。電流検出回路24は、一方の入力端子が電流検出抵抗23の一端に接続され、他方の入力端子が電流検出抵抗23の他端に接続され、出力端子がCPU11に接続されている。そして、電流検出回路24は、電流検出抵抗23に流れる電流(電圧)、延いてはソレノイド14に流れる実電流(実電圧)を検出し、この実電流値(実電圧値)をCPU11へ出力するように構成されている。
なお、トランジスタ22、ソレノイド14、電流検出抵抗23の並ぶ順序はいかなる組み合わせであってもよい。
【0014】
CPU11には、加速度センサ2及び3からの出力信号が入力される。CPU11は、加速度センサ2及び3からの出力信号と指令電流値(指令電圧値)との対応関係が書き込まれたマップが格納されており、このマップに基づいて加速度センサ2及び3から受け取った出力信号に対応した駆動電流(駆動電圧)、延いては減衰力を得るための指令電流値(指令電圧値)をゲート駆動回路25を介してトランジスタ22へ出力するように構成されている。そして、制御装置10は、CPU11から出力された指令電流値(指令電圧値)に応じてトランジスタ22のベース電圧を制御し、これにより、ソレノイド14に駆動電流(駆動電圧)が流れる。その結果、駆動電流(駆動電圧)に基づいてソレノイド14が駆動され、対応する緩衝器6が駆動電流(駆動電圧)に応じた大きさの減衰力を発生するように構成されている。
【0015】
また、制御装置10は、加速度センサ2及び3から受け取った出力信号に応じて各緩衝器6〜9に要求される減衰特性を判断する論理回路(減衰特性判断部)と、この論理回路(減衰特性判断部)によって判断された各減衰特性に基づき各ソレノイド14〜17に対応する指令電流値を決定する論理回路(電流値決定部)と、この論理回路(電流値決定部)によって決定された各指令電流値を比較して最も大きい指令電流値を選択する論理回路(最大電流値選択部)と、電源電圧可変部13を操作して電源電圧を論理回路(最大電流値選択部)によって選択された指令電流値を得るために要求される電圧値に変化させる論理回路(電源電圧可変部)と、を含む集積回路(IC)(制御手段)を有する。
【0016】
次に、第1実施形態における制御装置10(制御手段)の制御フローを図3に基づき説明する。
まず、CPU11に各加速度センサ2及び3からの出力信号(加速度信号)が取り込まれる(ステップ1)。CPU11に取り込まれたデータには、ノイズ成分を除去するためのLPF処理、ドリフト成分及び定常偏差成分を除去するためのHPF処理を含むフィルタ処理が実行される(ステップ2)。次に、加速度信号が予め設定された領域内であるか否かの判断、並びに各加速度信号を比較する等して異常があるか否かを判定する(ステップ3)。次に、減衰特性判断部において、各加速度信号に各種のゲイン等が乗じられて車体1の振動を低減させるために各緩衝器6〜9に要求される減衰特性が演算され、この演算結果に基づき、電流値決定部により、各緩衝器6〜9の減衰力指令、すなわち各ソレノイド14〜17の指令電流値が決定される(ステップ4)。
【0017】
ここで、制御装置10は、ソレノイド駆動電力の積算値、外気温度、及びソレノイド14〜17(アクチュエータ)への電流の流し難さ等の条件から、各ソレノイド14〜17の抵抗値を推定する(ステップ5)。次に、制御装置10は、各ソレノイド14の抵抗値(推定値)及び前述したステップ4において決定された指令電流値に基づいてソレノイド14〜17を駆動するために要求される電圧を演算し、電源電圧可変部13から出力される電圧を調整する(ステップ6)。そして、前述したステップ4において決定された指令電流値をCPU11のDA変換器によって処理した後、この指令電流値を各ソレノイド駆動回路18〜21のゲート駆動回路25に出力し、各ソレノイド14〜17を駆動する(ステップ7)。
【0018】
なお、ソレノイド14〜17を駆動するために要求される電圧を演算するに際し、ソレノイド14〜17の抵抗値として固定値を使用する場合、ステップ5の処理を省略することができる。
【0019】
次に、ステップ6で実行されるサブルーチンを説明する。まず、最大電流値選択部において、電流値決定部によって決定された各指令電流値を比較して最も大きい指令電流値が選択される(ステップ8)。次に、ステップ5で推定された各ソレノイド14〜17の抵抗値のうちの最大値及びステップ8で選択された指令電流値を用いて電源電圧可変部13の出力電圧が演算される(ステップ9)。そして、ステップ9の演算結果に基づいて電源電圧可変部13が操作され、電源電圧可変部13から出力される電圧が調整される(ステップ10)。
【0020】
なお、ステップ8及び9は、ソレノイド14〜17毎に要求される電源電圧を算出し、この算出結果のうちの最大値を選定する処理に置き換えることができる。
【0021】
ここで、図4に、第1実施形態の制御装置10による制御によって得られた各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部13の出力電圧を時系列で表した図を示す。また、図5は、比較対象としての従来の制御装置による制御によって得られた各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変化及び電源電圧可変部13の出力電圧を時系列で表した図である。さらに、図6は、図4に対応する軸(緩衝器6〜9)の総電力損失を時系列で表した図であり、図7は、図5に対応する軸(緩衝器6〜9)の総電力損失を時系列で表した図である。
【0022】
図5に示されるように、従来の制御装置による制御では、電源電圧が固定値、すなわち、ソレノイド駆動回路18〜21によって要求される電源電圧のうち最も高い電圧値に固定されていたため、図7に示されるように、軸(緩衝器6〜9)の総電力損失(図7におけるグレースケール部分の面積に相当)は、比較的大きくなる。これに対し、図4に示されるように、第1実施形態の制御装置10による制御では、電源電圧が各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変動に応じて変化される。これにより、図6に示されるように、第1実施形態の制御装置10は、従来の制御装置による制御と比較して、軸(緩衝器6〜9)の総電力損失(図6におけるグレースケール部分の面積に相当)が大幅に削減される。
【0023】
第1実施形態によれば、電源電圧を各軸(緩衝器6〜9)の指令電流値の変動に応じて変化させたので、従来の制御装置による制御と比較して、軸(緩衝器6〜9)の総電力損失、言い換えると、各ソレノイド駆動回路18〜21が放出する熱を大幅に削減することができる。
これにより、各ソレノイド駆動回路18〜21の放熱フィンを小型化することができ、延いては、制御装置10を小型化することができる。加えて、送風ファンも小型化或いは不用とすることができるので、制御装置10、延いては、サスペンションシステムのさらなる小型化並びにコストダウンが可能になる。
また、ソレノイド駆動回路18〜21から放出される熱が大幅に削減されることで、基板のはんだ部の耐久性及び信頼性、延いては、サスペンションシステムの耐久性及び信頼性をも向上させることができる。
さらに、サスペンションシステムのメンテナンスの頻度を減らすことができるので、ランニングコストを削減することができる。
【0024】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を添付した図に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と同一又は相当の構成には、同一の名称及び符号を付与する。また、説明を簡潔にすることを目的に、第1実施形態と重複する説明を省く。
【0025】
図8に、第2実施形態のセミアクティブサスペンションシステムの概略を示す。本システムは、軸ばね28に並列に設けられた各緩衝器26の減衰力を調整することにより車体1の上下方向への振動を低減させる上下動セミアクティブサスペンションシステムである。なお、図8には、1両の鉄道車両の1位側(図8における右側)のみが示されている。また、図8には、緩衝器26が2個のみ示されているが、緩衝器26は各車輪27に対応させて設けられており、1位側台車4及び2位側台車5には各々4個の車輪27が設けられているので、1両の鉄道車両に合計8個の緩衝器26が設けられている。
【0026】
本システムは、1位側台車4の枠上に設けられた加速度センサ29を含む。加速度センサ29は、1位側台車4の前後(図8における左右)に配置されており、各加速度センサ29によって車体1の上下方向の加速度が検出される。なお、本システムでは、1位側台車4同様、図示が省略された2位側台車(5)にも前後に配置された2個の加速度センサ29が設けられており、1両の鉄道車両に合計4個の加速度センサ29が設けられている。そして、本システムは、各加速度センサ29の検出信号に基づいて各緩衝器26の減衰力を制御する制御装置30を有している。
【0027】
図9に示されるように、制御装置30(制御手段)は、各緩衝器26に内蔵された各ソレノイドバルブに対応して設けられるソレノイド31〜38(アクチュエータ)と、各ソレノイド31〜38を駆動するソレノイド駆動回路39〜46と、を含む。なお、第2実施形態の制御装置30は、第1実施形態に対する緩衝器(ソレノイドバルブ)の増加に伴い、ソレノイド及びソレノイド駆動回路を追加したものであり、第1実施形態の制御装置30と基本構造は同一である。第1実施形態との顕著な差異は、制御装置30は、2つの電源電圧可変部13が並列に配置されている点である。そして、制御装置30では、ソレノイド31〜34の一端が一方の電源電圧可変部13(図9における左側の電源電圧可変部13)に接続されており、ソレノイド35〜38の一端が他方の電源電圧可変部13(図9における右側の電源電圧可変部13)に接続されている。
【0028】
そして、制御装置30は、加速度センサ29から受け取った出力信号に応じて各緩衝器26に要求される減衰特性を判断する論理回路(減衰特性判断部)と、この論理回路(減衰特性判断部)によって判断された各減衰特性に基づき各ソレノイド31〜38に対応する指令電流値を決定する論理回路(電流値決定部)と、この論理回路(電流値決定部)によって決定された各指令電流値の時系列データの波形を作成する論理回路(電流値波形作成部)と、この論理回路(電流値波形作成部)によって作成された各指令電流値の波形を比較して傾向が近似する2つ(電源電圧可変部13の数に一致する予め決められた数)のグループに分類する論理回路(電流値分類部)と、論理回路(電流値決定部)によって決定された各指令電流値を各グループ内で比較して、各グループで最も大きい指令電流値を選択する論理回路(最大電流値選択部)と、この論理回路(最大電流選択部)によって選択された各指令電流値を得るために要求される各電圧値に、各電源電圧可変部13の電源電圧、延いては、各グループの電源電圧を変化させる論理回路(電源電圧可変部)と、を含む集積回路(IC)(制御手段)を有する。
なお、指令電流値が似たような傾向で変化する2つのグループに、予め、電源電圧可変部を接続しておくことで、電流値分類部と電源選択部を省略してもよい。
【0029】
ここで、第2実施形態における制御装置30(制御手段)特有の処理を説明する。
まず、電流値決定部によって各ソレノイド31〜38に対応する各指令電流値が決定されると、図10に示されるように、電流値波形作成部によって各指令電流値の時系列データの波形が作成される。次に、電流値分類部によって各指令電流値の波形を比較して傾向が近似する2つのグループに分類する。なお、図10に示される一例においては、図10のA部に特徴的なピークが表れるAグループと図10のB部に特徴的なピークが表れるBグループとに分類される。また、便宜上、ソレノイド31〜34の指令電流値波形がAグループ、ソレノイド35〜38の指令電流値波形がBグループに分類されたものとする。さらに、第2実施形態では、制御軸が8軸(緩衝器26の数量が8個)であるため、8つの指令電流値波形が作成されるが、図の煩雑化を防ぐ(視認性を確保する)ため、図10には、6つの指令電流波形のみを示す。
【0030】
次に、最大電流値選択部において、各グループ内の指令電流値が比較されて各グループで最も大きい指令電流値が選択される。次に、Aグループの各ソレノイド31〜34の抵抗値のうちの最大値及び最大電流値選択部で選択されたAグループの指令電流値を用いて一方の電源電圧可変部13の出力電圧が演算される。同時に、Bグループの各ソレノイド35〜38の抵抗値のうちの最大値及び最大電流値選択部で選択されたBグループの指令電流値を用いて他方の電源電圧可変部13の出力電圧が演算される。そして、各演算結果に基づいて、対応する電源電圧可変部13が操作され、各電源電圧可変部13から出力される電圧が調整される。
【0031】
ここで、図11は、第2実施形態の制御装置30による制御、すなわち、指令電流値のグループ分けを行った場合の軸(緩衝器26)の総電力損失を時系列で表した図であり、図12は、指令電流値のグループ分けを行っていない場合の軸(緩衝器26)の総電力損失を時系列で表した図である。
【0032】
図11と図12とを比較して理解できるように、指令電流値のグループ分けを行った場合(図11)の制御では、指令電流値のグループ分けを行っていない場合(図12)の制御と比較して、軸(緩衝器26)の総電力損失(図11及び図12におけるグレースケール部分の面積に相当)を低減することができる。
【0033】
第2実施形態によれば、指令電流値のグループ分けを行うことで、第1実施形態によって得られる効果をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 車体、2,3 加速度センサ、4 1位側台車、5 2位側台車、6〜9 緩衝器、10 制御装置、11 CPU、12 電源電圧、13 電源電圧可変部、14〜17 ソレノイド、18〜21 ソレノイド駆動回路、22 トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で各アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、
前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、
前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、
前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、
前記電流値決定部によって決定された各電流値を比較して最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、
前記最大電流値選択部によって選択された電流値を得るために要求される電圧値に前記電源電圧を変化させる電源電圧可変部と、
を含むことを特徴とする鉄道車両用緩衝器の制御装置。
【請求項2】
台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で複数個の前記アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、
前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、
前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、
前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、
前記電流値決定部によって決定された各電流値の時系列データの波形を作成する電流値波形作成部と、
前記電流値波形作成部によって作成された各波形を比較して傾向が近似する予め決められた数のグループに分類する電流値分類部と、
前記電流値決定部によって決定された各電流値を各グループ内で比較して各グループで最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、
前記最大電流選択部によって選択された各電流値を得るために要求される各電圧値に各グループの電源電圧を変化させる、各グループに対応して設けられる電源電圧可変部と、
を含むことを特徴とする鉄道車両用緩衝器の制御装置。
【請求項1】
台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で各アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、
前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、
前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、
前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、
前記電流値決定部によって決定された各電流値を比較して最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、
前記最大電流値選択部によって選択された電流値を得るために要求される電圧値に前記電源電圧を変化させる電源電圧可変部と、
を含むことを特徴とする鉄道車両用緩衝器の制御装置。
【請求項2】
台車と車両との間に複数個の緩衝器が備えられ、各緩衝器の各々にアクチュエータが備えられ、1つの電源電圧で複数個の前記アクチュエータを制御する制御手段を備えた鉄道車両用緩衝器の制御装置であって、
前記アクチュエータは、ソレノイドと、前記制御手段によって設定された電流値の変化に応じて抵抗値が可変である可変抵抗器とを有し、
前記制御手段は、前記台車又は前記車両に伝達される振動に応じて各緩衝器に要求される減衰特性を判断する減衰特性判断部と、
前記減衰特性判断部によって判断された各減衰特性に基づき各アクチュエータに通電させる電流値を決定する電流値決定部と、
前記電流値決定部によって決定された各電流値の時系列データの波形を作成する電流値波形作成部と、
前記電流値波形作成部によって作成された各波形を比較して傾向が近似する予め決められた数のグループに分類する電流値分類部と、
前記電流値決定部によって決定された各電流値を各グループ内で比較して各グループで最も大きい電流値を選択する最大電流値選択部と、
前記最大電流選択部によって選択された各電流値を得るために要求される各電圧値に各グループの電源電圧を変化させる、各グループに対応して設けられる電源電圧可変部と、
を含むことを特徴とする鉄道車両用緩衝器の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−214063(P2012−214063A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78998(P2011−78998)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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