説明

制電性熱可塑性樹脂組成物および成形品

【課題】
安定した持続型制電性を有すると共に、環境にも配慮した優れた難燃性を有し、成形加工性に優れ、表面外観および機械的物性にも優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物と、それからなる成形品を提供する。
【解決手段】
本発明は、スチレン系樹脂3〜94重量部、ポリカーボネート樹脂3〜94重量部およびポリエーテルエステルアミド3〜45重量部からなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、有機イオン導電剤0.01〜20重量部、リン酸エステル系難燃剤1〜30重量部、シリコーン系化合物0.1〜5重量部配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物、およびそれからなる成形品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエステルアミド(ポリアミドエラストマーとも言う。)、有機イオン導電剤、リン酸エステル系難燃剤及びシリコーン系化合物を配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物、および、その制電性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、熱可塑性樹脂成形品は、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野において使用されている。しかしながら、熱可塑性樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂の多くは電気絶縁性であり、精密な電気・電子制御製品を備えた各種機器において、発生する静電気の帯電により制御装置の誤作動が起こるという問題があった。これらの帯電による問題を解決する方法として、熱可塑性樹脂にアミン系帯電防止剤を配合する方法が知られている。また、熱可塑性樹脂に持続的に制電性を付与する方法として、熱可塑性樹脂にポリエーテルエステルアミドをはじめとするポリアミドエラストマーを配合する方法が知られている。しかしながら、これらの方法で制電性能が付与された熱可塑性樹脂は、製品の用途によっては制電性が必ずしも十分ではなく、要求される性能を満足することができない場合があった。
【0003】
また、熱可塑性樹脂に制電性を付与する別の方法として、導電性充填材としてカーボンブラックを熱可塑性樹脂に配合する方法が知られている。しかしながら、カーボンブラックを配合した熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂成形品が黒色に限定されるという問題があり、また安定した帯電領域の抵抗値を得るには比較的多くのカーボンブラックを配合する必要があるため、熱可塑性樹脂成形品の機械的物性が低下するという問題があった。
【0004】
更に、熱可塑性樹脂に制電性を付与する別の方法として、導電性充填材として炭素繊維、金属繊維または金属粉末を熱可塑性樹脂に配合する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法で得られた熱可塑性樹脂成形品は、製品の外観が悪く、かつ機械的物性が低下するという問題があった。
【0005】
これらの従来の方法で制電性を付与した熱可塑性樹脂の問題を解決する方法として、最近、熱可塑性樹脂に非ポリマーの窒素オニウムカチオンと弱配位性含フッ素有機アニオンからなるイオン塩を配合する方法(特許文献1参照。)、熱可塑性樹脂にパーフルオロアルキルスルホン酸塩を配合する方法(特許文献2参照。)、および熱可塑性樹脂に環状アミジンまたはピリジンのオニウム塩を高分子化合物に複合する方法(特許文献3参照。)などが提案されている。しかしながら、これらの提案は、特に、電子・電気機器部品等の分野において要求される高度な制電性を満足するものではなかった。また、スチレン系熱可塑性樹脂への適用については具体的な開示がなく、その適用可能性は不明であった。
【0006】
また、これらの制電性を付与した熱可塑性樹脂の難燃化についてはハロゲン系難燃剤によるものが一般的であったが昨今の環境問題への配慮から非ハロゲン系での難燃化が望まれていた。これまでは非ハロゲン系で難燃性を付与しようとすると制電性レベルを落とす必要があったり、制電性レベルを上げようとすると自己消火性といった高度な難燃性を付与できないなど両立が困難であった。
【0007】
また特許文献4には、スチレン系樹脂とアルキレンオキシド単位を構成成分として含有する共重合体および有機イオン導電剤を組み合わせることによる制電性熱可塑性樹脂組成物が開示されており、該樹脂組成物にはリン酸エステル系難燃剤を組み合わせてもよいとされているものの、難燃性と制電性を併せ持つ詳細な処方については開示されておらず、新規な制電性熱可塑性樹脂組成物が求められていた。
【特許文献1】特表2003−511505号公報
【特許文献2】特表2003−507510号公報
【特許文献3】特開平10−265673号公報
【特許文献4】WO2007/094195
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】

本発明の目的は、上記のような従来の技術的課題を解決するものであり、従来より優れた制電性、すなわち表面固有抵抗値が低く、安定した持続型制電性を有すると共に、環境へも配慮した優れた難燃性と成形加工性に優れ、表面外観および機械的物性にも優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物と、それからなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリエーテルエステルアミドとからなる熱可塑性樹脂組成物に、特定量の有機イオン導電剤、リン酸エステル系難燃剤と特定量のシリコーン系化合物を配合することにより、上記目的が効率的に達成されることを見出し本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)3〜94重量部、ポリカーボネート樹脂(B)3〜94重量部およびポリエーテルエステルアミド(C)3〜45重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、有機イオン導電剤(D)0.01〜20重量部、リン酸エステル系難燃剤(E)1〜30重量部及びシリコーン系化合物(F)0.1〜5重量部を配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の有機イオン導電剤(D)は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩またはホスホニウム塩である。
【0012】
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の有機イオン導電剤(D)は、次の一般式(1)または(2)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、アニオン成分[X]を構成するXは(CFSON、(CSON、(CFSOCまたはCFSOを表す。)で示されるいずれかの化合物である。
【0015】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリエーテルエステルアミド(C)は、数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび数平均分子量が1,000〜3,000である次の一般式(I)〜(III)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R、Rはそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基を示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CFまたはNHを示し、X〜X12はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、SOHまたはその金属塩を示す。)で示されるジオール化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物を構成成分として含有するものである。
【0018】
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリエーテルエステルアミド(C)は、数平均分子量200〜6000のポリエチレンオキシドグリコールを構成成分として含有するものである。
【0019】
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリエーテルエステルアミド(C)は、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくは炭素原子数6以上のラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸との反応物を構成成分として含有するものである。
【0020】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のスチレン系樹脂(A)は、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体とが共重合したビニル系共重合体を含有するものである。また、前記のスチレン系樹脂(A)は、ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体を含有しているものである。さらに、前記のスチレン系樹脂(A)は、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体とが共重合したビニル系共重合体、並びにゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をゴム質重合体にグラフト重合して得られたグラフト共重合体を含有しているものである。
【0021】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリカーボネート樹脂(B)は、ビスフェノールA骨格を含有してなるものである。
【0022】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のリン酸エステル系難燃剤(E)は次の一般式(i)
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、R13〜R20は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、相互に同一または相異なっていても良い。Yは直接結合、O、S、SO、C(CH、CHまたはCHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。Ar〜Arはフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基のいずれかを表し、相互に同一または相異なっていても良い。また、rは0以上の整数、p、qはそれぞれ0以上2以下で、かつp+qが0以上2以下となる整数である。さらに、上記式は異なるrの混合物でもよい。)で表される1種または2種以上含有するものである。
【0025】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のシリコーン系化合物(F)は2種以上の併用であり、その内の少なくとも1種にシリコーンオイル(25℃における粘度が100〜100000CS)を含有するものである
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記態様にさらにフッ素系ノンドリップ剤(G)0.05〜3重量部を含有するものである。
【0026】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、それを成形し、任意形状の成形品に成形することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、表面固有抵抗値が低く安定した持続型制電性を有すると共に、環境へも配慮した優れた難燃性と成形加工性に優れ、製品外観および機械的物性に優れた成形品を与える制電性熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、これらの優れた特性の成形品が得られる。本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、従来達し得なかった優れた表面固有抵抗値と環境対応型の難燃性を有することから、本発明によって、特に、金属塩類を嫌うIC搬送ケースやICトレイ、また静電気を嫌う電子・電気機器部品、プリンター、複写機といったOA機器の給排紙部品、ATM等の紙幣識別機関連部品として好適な優れた制電性及び環境対応型難燃性を有する熱可塑性樹脂成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)3〜94重量部、ポリカーボネート樹脂(B)3〜94重量部およびポリエーテルエステルアミド(C)3〜45重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、有機イオン導電剤(D)0.01〜20重量部、リン酸エステル系難燃剤(E)1〜30重量部及びシリコーン系化合物(F)0.1〜5重量部配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物である。
【0029】
本発明で使用されるスチレン系樹脂(A)とは、芳香族ビニル系単量体がその成分として含まれる重合体からなるものである。この芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレンなどが挙げられるが、中でもスチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。芳香族ビニル系単量体は、1種の使用でもよくまたは2種以上を併用しても良い。
【0030】
また、スチレン系樹脂(A)は、耐薬品性や耐熱性などの特性を付与する目的で、芳香族ビニル系単量体およびその芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を共重合したビニル系共重合体を含有していても良い。これらの他のビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミニプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、および2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられる。これらの中でも、特にアクリロニトリルとメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0031】
スチレン系樹脂(A)に含有される芳香族ビニル系単量体の割合は、成形加工性の観点から10〜100重量部が好ましく、より好ましくは20〜90重量部である。
【0032】
スチレン系樹脂(A)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、物性バランスを維持する上で、5万〜30万であることが好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)による一般的に公知な手法で測定することができる。
【0033】
スチレン系樹脂(A)の製造方法には特に制限はなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法および塊状−懸濁重合法など通常の製造方法を用いることができる。また、これらのいずれかの方法で得られた1種または2種以上のスチレン系樹脂を溶融混練して製造しても良い。
【0034】
スチレン系樹脂(A)の耐衝撃性などの特性を飛躍的に向上させることを目的とする場合には、スチレン系樹脂として、芳香族ビニル系(共)重合体からなるマトリックス中に、ゴム質重合体が分散したゴム変性スチレン系樹脂を用いることが好ましい。すなわち、スチレン系樹脂として、ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体を含有しているゴム変性スチレン系樹脂を好ましく用いることができる。また、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体とが共重合したビニル系共重合体、並びにゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体を含有しているゴム変性スチレン系樹脂も好ましく用いることができる。
【0035】
本発明において、上記のように(共)重合体と表示するときは、重合体および/または共重合体を意味している。
【0036】
ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリイソプレン、およびエチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられるが、中でもポリブタジエンとブタジエン共重合体が好ましく用いられる。
【0037】
ゴム質重合体は、耐衝撃性に優れるという観点から、平均粒子径が0.15〜0.60μmの範囲のゴム粒子が好ましく、平均粒子径が0.2〜0.55μmの範囲のゴム粒子がより好ましい。中でも、耐衝撃性および薄肉成形品の落錘衝撃が著しく優れていることから、平均粒子径が0.20〜0.25μmの範囲のゴム粒子と、0.50〜0.65μmの範囲のゴム粒子との重量比が、90:10〜60:40であるゴム質重合体が特に好ましい。
【0038】
ここで、ゴム粒子の平均重量粒子径は、「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt,P.H.Biddison」に記載の、アルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
【0039】
スチレン系樹脂(A)として、上記のゴム変性スチレン系樹脂を用いる場合には、ゴム質重合体とマトリックスであるスチレン系樹脂とは非相溶であるため、ゴム質重合体にマトリックスと相溶する成分をグラフト重合させると、耐衝撃性をより一層向上させることができる。すなわち、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体または単量体混合物をグラフト重合したグラフト共重合体を用いることが好ましい。グラフト重合に用いられる単量体としては、上記のマトリックスである芳香族ビニル系(共)重合体中の単量体成分と同様の単量体成分を同様の割合で使用することが好ましい。
【0040】
組成とグラフト量については、ゴム質重合体の分散性を損なわないような組成とグラフト量に調整することが好ましい。グラフト率は5〜200%が好ましく、より好ましくは20〜100%である。ここでいうグラフト率とは、次の(式1)により算出される値である。
【0041】
【数1】

【0042】
グラフト重合していない(共)重合体の特性については、優れた耐衝撃性を有する樹脂組成物が得られるという観点から、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)が、好ましくは0.25〜0.60dl/gの範囲であり、さらに好ましくは0.25〜0.50dl/gの範囲である。
【0043】
ゴム変性スチレン系樹脂の製造方法としては、具体的には、ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体を含有する単量体または単量体混合物をグラフト重合して得られるグラフト共重合体と、芳香族ビニル系単量体を含有する単量体または単量体混合物を重合して得られるスチレン系(共)重合体とを溶融混練してゴム変性スチレン系樹脂を製造する方法が、工業的および経済的に好適である。
【0044】
上記のゴム変性スチレン系樹脂に含まれるグラフト共重合体は、乳化重合や塊状重合などの公知の重合法により得ることができる。中でも、ゴム質重合体ラテックスの存在下に、単量体または単量体混合物、ラジカル発生剤および連鎖移動剤の混合物を、連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法が、操業上好適である。
【0045】
本発明で用いられるスチレン系樹脂(A)の具体例としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ABS樹脂、MAS樹脂、MS樹脂、MABS樹脂およびMBS樹脂等があり、またこれらの樹脂と他の樹脂とのアロイなど挙げられる。
【0046】
本発明で用いられるスチレン系樹脂(A)の配合割合は、スチレン系樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびポリエーテルエステルアミド(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、3〜94重量部である。スチレン系樹脂(A)が3重量部未満では、ポリカーボネート樹脂(B)の割合が多くなり流動性に劣る傾向がある。また、電気的特性が発現しにくくなる傾向がある。スチレン系樹脂(A)が94重量部を越えると、ポリカーボネート樹脂(B)の割合が少なくなり耐衝撃性が劣る傾向がある。
【0047】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂(B)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂および脂肪族−芳香族ポリカーボネート樹脂などを好適に使用することでき、これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。機械的特性などのバランスに優れた芳香族ポリカーボネート樹脂が特に好ましく用いられる。
【0048】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、下記のビスフェノールA骨格のものの他、ビスフェノールS骨格のものなどが挙げられる。
【0049】
ポリカーボネート樹脂(B)の市販品としては、帝人化成(株)製ポリカーボネート樹脂“パンライト”(登録商標)1250WPや、出光興産(株)製ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)A2200、FN2200、A1900などが挙げられる。
【0050】
ポリカーボネート樹脂(B)の製造方法については、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)のポリカーボネートの製造には、ジオキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いて、苛性アルカリ水溶液および溶剤存在下にホスゲンを吹き込んで製造するホスゲン法などを利用することができる。
【0051】
ポリカーボネート樹脂(B)は、その粘度平均分子量が10000〜40000の範囲のもの、特に15000〜30000の範囲のものが好ましく用いられる。粘度平均分子量が10000未満では機械的特性が低下する傾向にあり、また粘度平均分子量が40000を超えると成形性が悪くなる傾向にある。
【0052】
本発明で使用されるポリエーテルエステルアミド(C)は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールやアルキレンオキシドが付加されたジオール化合物および炭素原子数6以上のラクタム等により構成され、これらがブロック結合またはグラフト結合等した共重合体である。
【0053】
ポリエーテルエステルアミド(C)は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび次の一般式(I)〜(III)
【0054】
【化4】

【0055】
(ここで、一般式(I)〜(III)中、R、Rはそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基を表し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CFまたはNHを表し、X〜X12はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、SOHまたはその金属塩(SONa、SOK等)を表す。)で示されるジオール化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物を構成成分として含有する共重合体であることが好ましい。
【0056】
上記の一般式(I)〜(III)中のm、nは、それぞれ「−(RO)−」と「−(RO)−」の重合度を表す。その和である(m+n)は、使用される一般式(I)〜(III)のジオール化合物に依存するが、8〜65の範囲となることが好ましい。(m+n)の平均値は、一般式(I)〜(III)のジオール化合物の構造(単量体の分子量)と数平均分子量から計算により求めることができるものである。
【0057】
本発明において、数平均分子量は、試料1gを過剰なアセチル化剤、例えば、無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をG、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をHとしたときに、次の(式2)によって計算することができる。
【0058】
【数2】

【0059】
本発明で用いられるポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1、2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体などが挙げられ、中でも、ポリエチレンオキシドグリコールが好ましく用いられる。
【0060】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、好ましくは200〜6000の範囲であり、より好ましくは300〜4000の範囲である。また、必要に応じてポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の両末端は、アミノ化またはカルボキシル化されていてもよい。
【0061】
上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物としては、R、Rがそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基であって、Yが炭素数2〜6のアルキリデン基、X〜X12がそれぞれ独立に水素または炭素数1〜6のアルキル基であるジオール化合物が好ましく、これらの中でも特にX〜X12が水素であるジオール化合物が好ましい。
【0062】
具体的なジオール化合物としては、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル−3,3’−スルホン酸ナトリウム)プロパン、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびジヒドロキシナフタレン等のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物またはそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0063】
これらの中でさらに好ましいジオール化合物は、ヒドロキノンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物、およびそれらブロック共重合体である。特に、重合性と経済性の点で、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物またはそのブロック共重合体が好ましく用いられる。
【0064】
上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるこれらジオール化合物の数平均分子量は、1,000〜3,000であることが好ましい。数平均分子量がこの範囲にある場合には、得られるポリエーテルエステルアミドの帯電防止性のいっそうの向上および重合時間の短縮を図ることができる。
【0065】
ポリエーテルエステルアミド(C)としては、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸、炭素原子数6以上のラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物と、上記のポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物を構成成分として含むグラフト共重合体またはブロック共重合体が好ましい。
【0066】
ポリエーテルエステルアミド(C)を構成する炭素数が6以上のアミノカルボン酸としては、炭素数が6以上20以下のアミノカルボン酸が好ましく、具体的には、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、および12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸が挙げられる。また、炭素数が6以上のラクタムとしては、炭素数が6以上20以下のラクタムが好ましく、具体的には、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、およびラウロラクタムなどが挙げられる。
【0067】
また、炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物としては、炭素原子数6以上20以下のジアミンと炭素原子数6以上20以下のジカルボン酸との反応物が好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、およびヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩などのジアミンとジカルボン酸との塩(ナイロン塩)の反応物が挙げられる。
【0068】
ポリエーテルエステルアミド(C)において、炭素数が6以上のアミノカルボン酸、炭素数が6以上のラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物と、上記ジオール化合物との結合は、エステル結合またはアミド結合であることが好ましい。
【0069】
また、ポリエーテルエステルアミド(C)は、ジカルボン酸やジアミンなどの第三成分を反応成分としてさらに含有していてもよい。この場合のジカルボン酸成分としては、重合性、色調および物性の点から、炭素数4〜20のカルボン酸が好ましく、その例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。一方、ジアミン成分としては、芳香族、脂環族または脂肪族のジアミンが用いられ、中でも脂肪族ジアミンであるヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。
【0070】
ポリエーテルエステルアミド(C)の含有量は、スチレン系樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびポリエーテルエステルアミド(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部中の3〜45重量部であり、好ましくは5〜40重量部である。熱可塑性樹脂組成物中のポリエーテルエステルアミド(C)の含有量が3重量部未満、すなわちスチレン系樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の配合量の合計が97重量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の制電特性が低くなる。また、熱可塑性樹脂組成物中のポリエーテルエステルアミド(C)の配合量が45重量部を超える、すなわちスチレン系樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の配合量の合計が55重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物の曲げ弾性率が低下する。
【0071】
本発明で使用されるポリエーテルエステルアミド(C)の製造方法については、特に限定されず、公知の製造方法を利用することができる。例えば、ポリエーテルエステルアミドの場合、アミノカルボン酸、ラクタムまたは炭素数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との塩と、上記の第三成分として含有可能なジカルボン酸とを反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、このプレポリマーにポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物を、真空下に反応させる方法を適用することができる。
【0072】
また、アミノカルボン酸、ラクタムまたは炭素数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との塩、上記の第三成分として含有可能なジカルボン酸、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物の3つの化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または不存在下に、高温で加熱反応させることによりカルボン酸末端のポリアミドエラストマーを生成させ、その後、常圧または減圧下で重合を進める方法も適用することができる。さらに、これら3つの化合物を同時に反応槽に仕込み、溶融重合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法も適用できる。
【0073】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも一種の官能基を含有する変性ビニル系(共)重合体(以下、変性ビニル系重合体と略称することがある。)を含有することもできる。この変性ビニル系重合体としては、一種または二種以上のビニル系単量体と、上記の官能基(カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも一種の官能基)を導入するためのビニル系単量体とを重合または共重合して得られる重合体を用いることができる。変性ビニル系重合体中におけるこれらの官能基を有する化合物の含有量は、変性ビニル系重合体100重量%当たり0.01〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0074】
変性ビニル系重合体の製造で用いられる上記のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレン、およびo,p−ジクロロスチレンなどの芳香族ビニル系単量体が挙げられる。また、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を併用することも可能である。上記の他のビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミニプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、および2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることもできる。
【0075】
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてカルボキシル基を導入するためのビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸、およびイタコン酸などの不飽和結合を有するカルボン酸またはカルボン酸無水物を用いることができる。
【0076】
また、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α´−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸、および過酸化サクシン酸などのカルボキシル基を有する重合発生剤および/またはチオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸、および2,3または4−メルカプト安息香酸などのカルボキシル基を有する重合度調節剤を用いて、これらに上記のビニル系単量体を(共)重合する方法も用いることができる。さらに、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体と芳香族ビニル系単量体の共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体の共重合体を、アルカリによってケン化する方法も用いることができる。
【0077】
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてヒドロキシル基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、および4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体を用いることができる。
【0078】
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてエポキシ基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、およびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体を用いることができる。
【0079】
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてアミノ基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、およびp−アミノスチレンなどのアミノ基またはアミド基を有するビニル系単量体を用いることができる。
【0080】
また、変性ビニル系重合体に、上記官能基としてオキサゾリン基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、および2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体を用いることができる。
【0081】
変性ビニル系重合体としては、メチルエチルケトン溶媒中、30℃の温度で測定した極限粘度[η]が0.20〜0.65dl/gの範囲のものが好ましく、0.35〜0.60dl/gの範囲のものがより好ましい。また、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、30℃の温度で測定した場合には、極限粘度[η]が0.30〜0.90dl/gの範囲のものが好ましく、0.40〜0.75dl/gの範囲のものがより好ましい。これら範囲の極限粘度を有する変性ビニル系重合体を用いることにより、より優れた耐衝撃性および成形加工性を有する本発明の熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0082】
本発明で使用される有機イオン導電剤(D)とは、有機物でありながらイオン的な特性を有する有機化合物塩であり、融点が低くて常温で液体であるイオン性液体またはイオン液体とも呼ばれている有機化合物塩を含む。このような有機化合物塩としては、イミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム、ホスホニウムなどの陽イオンと、フッ化物イオンやトリフラートなどのフッ素を含む陰イオンからなるものなどが挙げられる。
【0083】
本発明で使用される有機イオン導電剤(D)としては、常温で液体のイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩またはホスホニウム塩等のイオン性液体といわれている有機化合物塩が好ましい。
【0084】
具体的には、有機イオン導電剤としては、次の一般式(3)〜(6)
【0085】
【化5】

【0086】
(ここで、一般式(3)〜(6)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはトリデカフルオロオクチル基を表し、Rは水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、R10はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R11、R12はそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基を表す。また、これらのアニオン成分[X]を構成するXは、(CFSON、(CSON、(CFSOC、CFSO、I、Br、Cl、PF、BF、NO、CHSO、p−CHSO(トシル)、CHO(CO)SO、C17SO、SCN、CHSO、CH(CHCO、N(CN)、CF(CFSO、CF(CFSO、[(CHCCHCH(CH)CH]POまたはAlClを表す。)で示される有機化合物塩が好ましい。
【0087】
より具体的には、イミダゾリウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウム・メチルスルファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロエチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・クロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ニトラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・トシラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・クロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・2−(2−メトキシエトキシ)エチルスルファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・メチルスルファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム・クロリド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム・クロリド、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1,2−ジメチル−3−プロピルオクチルイミダゾリウム・トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・クロリド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、および1−ブチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0088】
ピリジニウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、3−メチル−1−プロピルピリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−プロピル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・ブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・クロリド、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・ヘキサフルオロホスファート、および1−ブチル−4−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート等が挙げられる。
【0089】
アンモニウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、テトラブチルアンモニウム・ヘプタデカフルオロオクタンスルホナート、テトラブチルアンモニウム・ノナフルオロブタンスルホナート、テトラペンチルアンモニウム・メタンスルホナート、テトラペンチルアンモニウム・チオシアナート、およびメチル−トリ−n−ブチルアンモニウム・メチルスルファート等が挙げられる。
【0090】
ホスホニウム塩である有機イオン導電剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウム・メタンスルホナート、テトラブチルホスホニウム・p−トルエンスルホナート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ビス(トリフルオロエチルスルホニル)イミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィナート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・クロリド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・デカノアート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ヘキサフルオロホスフィナート、トリエチルテトラデシルホスホニウム・テトラフルオロボラート、およびトリブチルメチルホスホニウム・トシラートが挙げられる。
【0091】
このような有機イオン導電剤の中でも、イミダゾリウム塩とピリジニウム塩が好適であり、中でも、下記の一般式(1)または(2)
【0092】
【化6】

【0093】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Xは(CFSON、(CSON、(CFSOCまたはCFSOを表す。)のいずれかで示されるイミダゾリウム塩またはピリジニウム塩が好ましく用いられる。
【0094】
上記の一般式(1)または(2)において、アニオン成分を構成するXとしては、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の熱安定性の面から、フルオロ基を有するものが好ましく、XがCFSO(トリフルオロメタンスルホナート)または(CFSON[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド]のものが好ましく用いられる。
【0095】
上記の有機イオン導電剤(D)の配合量は、スチレン系樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびポリエーテルエステルアミド(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0.01〜20重量部である。有機イオン導電剤(D)の好ましい配合量は0.05〜10重量部であり、より好ましくは0.1〜5重量部である。有機イオン導電剤(D)の添加量が0.01重量部未満の場合には、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の制電特性が低くなり、含有量が20重量部を超える場合は、耐熱性が低下する。コストの面からも、上記の配合量の範囲が好ましい。
【0096】
本発明では、有機イオン導電剤(D)は、商業的に入手可能なものをそのまま使用することができる。市販品として、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製)や1−ブチル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0097】
また、公知の方法、例えば、第三級アミンをハロゲン化アルキルで四級化した後、目的のアニオン成分を有する塩を用いてアニオン交換反応を行う方法等を利用することにより製造した有機イオン導電剤を用いることができる。
【0098】
本発明で使用されるリン酸エステル系難燃剤(E)としては、下記の一般式(i)
【0099】
【化7】

【0100】
で表されるものが好ましい。上記式(i)において、R13〜R20は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、相互に同一または相異なっていても良い。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などが挙げられるが、特に水素、メチル基及びエチル基が好ましくとりわけ水素が好ましい。また、Yは直接結合、O、S、SO、C(CH、CHまたはCHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。さらに、Ar〜Arはフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基のいずれかを表し、相互に同一または相異なっていても良い。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基およびアントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基およびナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基およびキシリル基が好ましい。また、上記式(i)において、rは0以上の整数、p、qはそれぞれ0以上2以下で、かつp+qが0以上2以下となる整数であるが、好ましくはp、qはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはp、qはそれぞれ1である。また、異なるrの混合物を用いてもよい。
【0101】
本発明で使用されるリン酸エステル系難燃剤(E)の配合量は、スチレン系樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびポリエーテルエステルアミド(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して1〜30重量部であり、好ましくは2〜25重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。リン酸エステル系難燃剤(E)の配合量が1重量部未満では十分な難燃性が得られず、30重量部を越えると得られる成形品の機械的特性や耐熱性が損なわれる傾向にあり、場合によっては溶融混練ができないこともある。なお、リン酸エステル系難燃剤(E)は1種または2種以上を併用しても良い。
【0102】
本発明で使用されるシリコーン系化合物(F)としてはポリカーボネート樹脂の難燃剤および難燃助剤として公知のものが使用でき、ポリオルガノシロキサン樹脂状重合体または共重合体が好適である。またこれらは分子中あるいは分子末端に反応性の官能基として、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、フェニル基およびN−β−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル−γ−アミノアルキルヒドロクロリド基を含有したものを使用することが出来る。また、シリカ充填剤を配合したものを使用することもできる。シリカ充填剤の混合方法としては、公知の方法を適用することができ、さらにこれら配合組成物には、アルコキシシランカップリング剤を配合することも出来る。このようなシランカップリング剤としては、分子中に炭素原子が1〜4のアルコキシ基を少なくとも一つ、さらにはエポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、フェニル基およびN−β−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル−γ−アミノアルキルヒドロクロリド基およびヒドロキシル基などのいずれかを含有したシランカップリング剤を使用することができるが、なかでもエポキシ基、(メタ)アクリロキシ基のいずれかを含有したシランカップリング剤を好ましく使用することができる。
【0103】
本発明で使用されるシリコーン系化合物(F)の配合量は、スチレン系樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびポリエーテルエステルアミド(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2.5重量部である。シリコーン系化合物(F)の配合量が0.1重量部未満では、難燃性に劣る傾向があり、5重量部を越えると制電性を悪化させる傾向があるとともに、得られる成形品の機械的特性が劣る傾向にある。
【0104】
前記シリコーン系化合物(F)は1種または2種以上を併用しても良く、特に併用する場合に25℃での動粘度が100〜100000mm/秒であるシリコーンオイルを用いることが好ましい。ここでいう動粘度はJIS Z 8803(1991年)に準じた動粘度の測定方法によって測定される数値である。上記粘度範囲にあると得られる成形品表面の滑り性向上と成形加工時のブリード物による金型汚染性低減効果のバランスが良好になる。シリコーンオイルの組成としては、ポリジメチルシロキサンやポリフェニルメチルシロキサンまたはジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンの共重合物やこれらの混合物が具体例として挙げられ、ポリジメチルシロキサンが好ましい。さらには、接点不良問題等の懸念を排除するため低分子量物を除去したものが好ましく用いられる。
【0105】
さらに本発明において難燃性の向上を目的にフッ素系ノンドリップ剤(G)を配合することができる。本発明で使用されるフッ素系ノンドリップ剤(G)は、燃焼時に溶融した樹脂のドリップを抑える目的で使用されるものであり、公知のものが使用できる。好ましくはポリテトラフルオロエチレンまたはそれを主成分としたランダム共重合体やグラフト共重合体または混合物であり、その形態も固体状態のものや分散性向上を目的に水系ディスパージョンのものなどが使用できる。本発明で使用されるフッ素系ノンドリップ剤(G)の配合量は、スチレン系樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)およびポリエーテルエステルアミド(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましく、さらには0.1〜2重量部が好ましい。フッ素系ノンドリップ剤(G)の配合量が0.05重量部未満ではノンドリップ効果があまり発現しない傾向にあり、3重量部を越えると耐衝撃性などの機械的特性が低下するとともに制電性が悪化する傾向にあり、得られる成形品の表面外観も悪くなる傾向にある。
【0106】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、例えば、バンバリミキサー、ロール、エクストルーダーおよびニーダー等で溶融混練することによって製造することができるが、配合成分の分散性の観点から二軸押出機を用いることが好ましい。また、溶融混練時の温度は、配合成分にもよるが通常180〜260℃程度である。
【0107】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、表面固有抵抗値、帯電圧および帯電圧減衰半減期が低く制電性を有すると共に優れた難燃性を有している。
【0108】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の熱可塑性樹脂を配合してもよい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン6,6等のポリアミド樹脂、変性PPE樹脂、ポリアセタール樹脂、またはこれらの変性物やポリ乳酸等の植物性由来樹脂やエラストマー類を配合することにより、成形用樹脂組成物として性能をさらに改良することができる。
【0109】
また、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系または含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系またはサリシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系やヒンダードアミン系などの光安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類やリン酸エステル類などの可塑剤、各種難燃剤、三酸化アンチモンや五酸化アンチモンなどの難燃助剤、アルキルカルボン酸やアルキルスルホン酸の金属塩、カーボンブラック、顔料、および染料などを添加することができる。また、各種強化材、充填材、各成分が酸・塩基性であった場合の中和剤などを添加することができる。
【0110】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形およびガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の成形方法によって成形体とすることができる。
【0111】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、表面固有抵抗値が低く、安定した持続型制電性を有するとともに、環境へも配慮した優れた難燃性と成形加工性、表面外観および機械的物性に優れている。かかる特性を活かして、本発明の成形品は、電子・電気機器部品やその搬送用部品、ディスプレイ関連部品やその搬送用部品およびOA機器関連の給排紙部品、紙幣識別機関連の紙幣通過部品として好適に使用することができる。
【0112】
電子・電気機器部品としては、例えば、精密な電気・電子制御装置を備えた各種機器の部品を指し、例えば、カーナビゲーションシステムやカーオーディオシステム、また電気自動車に搭載される燃料電池周辺機器などの自動車用電装部品、ICが搭載された業務用または家庭用電子玩具などのIC周辺部品または筐体、業務用または家庭用デジタル電子機器部品、スロットマシン、およびパチンコまたは電子ゲーム装置などの業務用遊技・娯楽機器部品などが挙げられる。電子・電気機器部品の搬送用部品としては、例えば、ICチップトレイ、IC搬送トレイ、シリコーンウェハー搬送ボックスなどが挙げられる。ディスプレイ関連部品としては例えば液晶パネルやプラズマディスプレイ、有機ELパネル等を搭載した薄型テレビ筐体やその他部材などが挙げられる。ディスプレイ関連部品の搬送用部品としては、例えば、キャリアリール、TABテープリール、COFテープリールや液晶ディスプレイ搬送トレイ、およびプラズマディスプレイ搬送トレイなどが挙げられる。
【0113】
OA機器関連部品としては、例えばプリンターのプラテン部品、プリンター、複写機、複合機等の給紙部部品、排紙部部品、ソート部部品などの給排紙部品が挙げられる。
【0114】
紙幣識別機関連部品としては、ATMやCD、改札機や偽札探知機などの紙幣識別機内の紙幣通過部部品などが挙げられる。
【実施例】
【0115】
本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物をさらに具体的に説明するために、以下、実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。下記の実施例および比較例中、特にことわりのない限り「部」および「%」で表示したものは、それぞれ重量部および重量%を表す。まず、制電性熱可塑性樹脂組成物の各種物性の評価方法を下記する。
【0116】
(1)シャルピー衝撃強さ(KJ/m
ISO 179の規定(1993年)に準拠し、80×10×4mm、タイプAノッチ、23℃の温度の条件でシャルピー衝撃強さを測定した。試験片数は5個とした。
【0117】
(2)曲げ弾性率(MPa)
ISO 178の規定(1993年)に準拠し、曲げ弾性率を評価した。試験片数は5個とした。
【0118】
(3)荷重たわみ温度(℃)
ISO 75の規定(1993年)に準拠し、A法にて荷重たわみ温度を評価した。試験片数は3個とした。
【0119】
(4)表面固有抵抗値(Ω)
シリンダー設定温度250℃、金型温度60℃に設定した日精樹脂工業(株)製PS60E成形機で、射出成形により得た40×50×3mm厚みの角板成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した後、ASTM D257(1990年)に準拠して表面固有抵抗値を測定した。印加電圧500V、1分後の表面固有抵抗値を読みとった。試験片数は3個とした。
【0120】
(5)帯電圧(V)および帯電圧減衰半減期(静電気消散性能)(秒)
上記(4)で得られた角板成形品について、スタティックオネストメーター(宍戸製)で帯電圧および帯電圧減衰半減期を測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。試験片数は3個とした。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど静電気消散性能に優れるといえる。なお、上記機器で測定可能な帯電圧の最大値は2900Vである。
【0121】
(6)難燃性(−)
シリンダー設定温度250℃、金型温度60℃に設定した日精樹脂工業(株)製PS60E成形機で、射出成形により得た12.7×127×1.5mm厚みの角板成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で48時間放置した後アンダーライターズラボラトリーUL94規格に準拠して難燃性を評価した。自己消火性と認知されているV−0またはV−1であれば優れた難燃性であると言える。
【0122】
(7)表面滑り性(紙との静摩擦係数)
シリンダー設定温度250℃、金型温度60℃に設定した住友ネスタールS480/150成形機で、射出成形により得た240×210×3mm厚みの角板成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置し、反り無きことを確認した後、210mm側の一辺を固定端として定盤に固定した。次いで角板の210mm側のもう一方の辺を可動端として、万能試験機を用いることにより角板と定盤のなす角を0〜90°の範囲で任意に変えられるものとした。その後、A5サイズPPC60枚の紙束を用意し角板の定位置に乗せて、角度0°から徐々に角度を大きくし、紙束が崩れることなく滑り落ちる時の角板と定盤のなす角度を摩擦角(θ)として、そのtanθを静摩擦係数とした。なお、紙束が崩れるまで滑り出さない場合(摩擦角が大きく、表面滑り性に劣る)は測定不可能とし表中では*印で表した。
【0123】
[参考例1]スチレン系樹脂(A)の調製
各グラフト共重合体のグラフト率は、次の方法で求めた。グラフト共重合体の所定量(m)に、アセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×10m/s))の回転で30分遠心分離した後、不溶分を濾過した。この不溶分を、70℃の温度で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、次式で求めた。
・グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
(式中、Lはグラフト共重合体のゴム含有率である。)。
【0124】
グラフト共重合体(A−1)の調製
ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)60部(固形分換算)に、スチレン70%とアクリロニトリル30%からなる単量体混合物40部を加えて乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固した後、水酸化ナトリウムで中和し、洗浄、濾過、乾燥することにより、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
【0125】
得られたグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は36%であった。このグラフト共重合体(A−1)は、スチレン構造単位70%およびアクリロニトリル構造単位30%からなる非グラフト性の共重合体を18.1%含有するものであった。また、N,N−ジメチルホルムアミド可溶分の極限粘度は、0.48dl/gであった。
【0126】
ビニル系共重合体(A−2)の調製
スチレン75%とアクリロニトリル25%からなる単量体混合物を懸濁重合して、ビニル系共重合体(A−2)を得た。得られたビニル系共重合体(A−2)のN,N−ジメチルホルムアミド可溶分の極限粘度は、0.73であった。
【0127】
変性ビニル系共重合体(A−3)
スチレン70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合体(A−3)を得た。
【0128】
[参考例2]ポリカーボネート樹脂(B−1)
出光興産(株)製ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)FN2200を使用した。
【0129】
[参考例3]ポリエーテルエステルアミド(C)の調製
ε−カプロラクタム45部、数平均分子量1,800のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部、数平均分子量が1,800のポリエチレングリコール5部、テレフタル酸5.2部、および“イルガノックス”(登録商標)1098(酸化防止剤)0.2部を反応容器に仕込み、窒素パージして260℃の温度で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、2時間反応させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリエーテルエステルアミド(C−1)を得た。
【0130】
[参考例4]有機イオン導電剤(D)
有機イオン導電剤(D−1)
1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製)を使用した。
【0131】
有機イオン導電剤(D−2)
1−ブチル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート(日本カーリット社製)を使用した。
【0132】
[参考例5]リン酸エステル系難燃剤(E)
リン酸エステル系難燃剤(E−1)
大八化学工業(株)製PX200を使用した。
【0133】
リン酸エステル系難燃剤(E−2)
大八化学工業(株)製CR733Sを使用した。
【0134】
[参考例6]シリコーン系化合物(F)
シリコーン系化合物(F−1)
東レ・ダウコーニング(株)製DOW CORNING(R) 4−7081 RESIN MODIFIERを使用した。
【0135】
シリコーン系化合物(F−2)
東レ・ダウコーニング(株)製DOW CORNING SH200 30000CSを使用した。25℃での動粘度は30000mm/秒。
【0136】
[参考例7]フッ素系ノンドリップ剤(G−1)
三菱レイヨン(株)製“メタブレン”(登録商標)A−3800を使用した。
【0137】
[実施例1〜8、比較例1〜10]
上記の参考例1〜7に示したスチレン系樹脂(A−1)〜(A−3)、ポリカーボネート樹脂(B−1)、ポリエーテルエステルアミド(C−1)、有機イオン導電剤(D−1)と(D−2)、リン酸エステル系難燃剤(E−1)と(E−2)、シリコーン系化合物(F−1)と(F−2)およびフッ素系ノンドリップ剤(G−1)をそれぞれ表1に示した配合比で配合し、ベント付30mmφ2軸押出機((株)池貝製PCM−30)を使用して溶融混練(バレル設定温度250℃)し、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。次いで、射出成形機を用い、シリンダー温度250℃、金型温度60℃で射出成形し、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる試験片を成形した。試験片について、上記の条件で物性を測定し、結果を表1、表2に併せて示した。
【0138】
【表1】

【0139】
【表2】

【0140】
表1に示すように、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜8)は、いずれも表面固有抵抗値、帯電圧および帯電圧減衰半減期が優れていると共に難燃性もV−1もしくはV−0と優れ、機械的物性および成形加工性にも優れていた。
【0141】
一方、表2に示すように、有機イオン導電剤が0.01重量部未満(含まない)の熱可塑性樹脂組成物(比較例1)は、表面固有抵抗値が高く、帯電圧および帯電圧減衰半減期は測定可能領域を超え測定できなかった。(表2において*印で示した)また、有機イオン導電剤が20重量部を超える熱可塑性樹脂組成物(比較例5)は、押出性に問題があり造粒することができなかった。また、ポリエーテルエステルアミドが3重量部以下(含まない)の熱可塑性樹脂組成物(比較例2と4)は、表面固有抵抗値や帯電圧および帯電圧減衰半減期が測定可能領域を超え測定することができなかった(表2において*印で示した)。また、リン酸エステル系難燃剤が、1重量部未満の熱可塑性樹脂組成物(比較例6)は、垂直燃焼性試験において燃え続けてしまい難燃性に劣り、30重量部を越える熱可塑性樹脂組成物(比較例3)は、押出し時に安定した加工が出来ず造粒することができなかった。また、シリコーン系化合物が0.1重量部未満(含まない)の熱可塑性樹脂組成物(比較例7)は、難燃性に劣り、5重量部を越える熱可塑性樹脂組成物(比較例10)は、耐衝撃性が劣る傾向にあることと得られた成形品の表面外観が悪くなった。また、スチレン系樹脂が3重量部未満(含まない)の熱可塑性樹脂組成物(比較例8)は、難燃性に劣り、ポリカーボネート樹脂が3重量部未満の熱可塑性樹脂組成物(比較例9)は、難燃性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、表面固有抵抗値が低く安定した持続型制電性を有するとともに、環境にも配慮した優れた難燃性を有し、成形加工性、表面外観および機械的物性に優れている。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来は得られなかった優れた表面固有抵抗値を有するという特性を活かして、電子・電気機器部品、電子・電気機器部品の搬送用部品、ディスプレイ関連部品やその搬送用部品等の成形品として、特に金属塩類を嫌うIC搬送ケースやICトレイ、静電気を嫌う電子・電気機器部品、プリンター、複写機といったOA機器の給排紙部品、ATM等の紙幣識別機関連部品等の成形品として、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂(A)3〜94重量部、ポリカーボネート樹脂(B)3〜94重量部およびポリエーテルエステルアミド(C)3〜45重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、有機イオン導電剤(D)0.01〜20重量部、リン酸エステル系難燃剤(E)1〜30重量部及びシリコーン系化合物(F)0.1〜5重量部配合してなる制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
有機イオン導電剤(D)が、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩またはホスホニウム塩である請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
有機イオン導電剤(D)が、次の一般式(1)または(2)
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Xは(CFSON、(CSON、(CFSOCまたはCFSOを表す。)で示される化合物である請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
有機イオン導電剤(D)が、一般式(1)または(2)において、XがCFSOまたは(CFSONである請求項3記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
有機イオン導電剤(D)が、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナートまたは1−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエーテルエステルアミド(C)が、数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび数平均分子量が1,000〜3,000である次の一般式(I)〜(III)
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基を表し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CFまたはNHを表し、X〜X12はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、SOHまたはその金属塩を表し、mおよびnは重合度を表す。)で示されるジオール化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物を構成成分として含有する請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
ポリエーテルエステルアミド(C)が、数平均分子量200〜6000のポリエチレンオキシドグリコールを構成成分として含有する請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
ポリエーテルエステルアミド(C)が、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸、炭素原子数6以上のラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物を構成成分として含有する請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
スチレン系樹脂(A)が、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体とが共重合したビニル系共重合体を含有してなる請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
スチレン系樹脂(A)が、ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体を含有してなる請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
スチレン系樹脂(A)が、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体とが共重合したビニル系共重合体、並びにゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体および該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体とを含有してなる請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
ポリカーボネート樹脂(B)が、ビスフェノールA骨格を含有してなる請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
リン酸エステル系難燃剤(E)が次の一般式(i)で表される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【化3】

(式中、R13〜R20は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、相互に同一または相異なっていても良い。Yは直接結合、O、S、SO、C(CH、CHまたはCHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。Ar〜Arはフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基のいずれかを表し、相互に同一または相異なっていても良い。また、rは0以上の整数、p、qはそれぞれ0以上2以下で、かつp+qが0以上2以下となる整数である。さらに、上記式は異なるrの混合物でもよい。)
【請求項14】
シリコーン系化合物(F)が2種以上の併用であり、その内の少なくとも1種がシリコーンオイル(25℃における粘度が100〜100000CS)であることを特徴とする請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
さらにフッ素系ノンドリップ剤(G)0.05〜3重量部を含有する請求項1〜14のいずれか1項に記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の制電性熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2010−65185(P2010−65185A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234760(P2008−234760)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】