説明

力学量検出センサ及びその製造方法

【課題】相対的に大きな力学量が加わっても、破損することなく被検知対象である傾斜を検知することができる力学量検出センサ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の力学量検出センサである傾斜センサは、基材上に立設された導電性の固定接点柱11bと、前記基材上であって固定接点柱11bの外側に設けられた枠体11aと、前記枠体11aに対して梁11dを介して設けられ、前記枠体11aと前記固定接点柱11bとの間で揺動可能である導電性の可動部材11cと、を具備し、前記枠体11a及び前記可動部材11cは、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁11dが設けられており、前記第1層が前記梁11dの下方に部分的に延在部11eを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力学量検出センサ及びその製造方法に関し、例えば力学量は傾斜などに関わる。
【背景技術】
【0002】
従来より、アンカー部に梁を介して揺動可能に支持された錘を用いて力学量を検出する力学量検出センサが開発されている。このような力学量検出センサとして、例えば、特許文献1に開示された加速度センサがある。また、アンカー部に梁を介して揺動可能に支持された錘を用いて傾斜や振動を検出するセンサも開示されている(特許文献1)。このセンサは、図7に示すように、基材1の開口部1a内に螺旋状の支持アーム2を介して振動部(可動電極)3が揺動可能に支持されており、振動部3の中央の開口部3aに感知部4(固定電極)が設けられている。このような構成のセンサが傾斜すると、螺旋状の支持アーム2に保持された振動部(可動電極)3が変位し、振動部3が感知部4に接触して通電状態となり、これにより傾斜を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1340020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成においては、基本的に、振動部3は平面方向(図7における紙面向かって左右上下方向)に揺動するが、相対的に大きな力学量が加わると、鉛直方向(図7において紙面手前側−奥側方向)にも揺動すると考えられる。この場合において、支持アーム2の下側(図7において紙面奥側)には何も部材が存在しないために、支持アーム2が鉛直方向に大きく揺動した際に破損してしまう恐れがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、相対的に大きな力学量が加わっても、破損することなく被検知対象である力学量を検出することができる力学量検出センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の力学量検出センサは、基材上に枠体と、前記枠体に対して梁を介して設けられ、前記枠体に対して揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在していることを特徴とする。
【0007】
本発明の力学量検出センサは、基材上に立設された立設部材と、前記基材上であって前記立設部材の外側に設けられた枠体と、前記枠体に対して梁を介して設けられ、前記枠体と前記立設部材との間で揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とから構成されており、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在していることを特徴とする。
【0008】
本発明の力学量検出センサは、基材上に立設された複数の立設部材と、前記基材上であって前記立設部材の外側に設けられた枠体と、前記立設部材を受ける凹部を外周面に有しており、前記凹部に前記立設部材が位置するように配置された状態で揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在していることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、梁の下方に第1層が延在しているので、相対的に大きな力学量が加わって、鉛直方向にも揺動しても、延在した部分が梁の鉛直方向の移動のストッパの役割を果たして、梁が鉛直方向に大きく揺動することを防止する。これにより、梁の破損を防止することができる。
【0010】
本発明の力学量検出センサにおいては、前記枠体及び前記可動部材は、前記第1層であるベース層と、前記第2層である活性層と、前記ベース層及び前記活性層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板で構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の力学量検出センサの製造方法は、第1シリコン層と、第2シリコン層と、前記第1シリコン層及び前記第2シリコン層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板の前記第1シリコン層をエッチングして立設部材領域、可動部材領域及び枠体領域を設ける工程と、前記SOI基板の前記立設部材領域及び前記枠体領域にシリコン基板を接合する工程と、前記第2シリコン層をエッチングして立設部材領域、可動部材領域、梁領域及び枠体領域を設ける工程と、前記絶縁層をエッチングして、枠体、立設部材及び前記枠体と前記立設部材との間で梁を介して揺動可能である可動部材を形成する工程と、前記枠体及び前記立設部材にガラス−シリコン複合材で構成された基板を接合する工程と、を具備し、前記第1シリコン層は、前記梁の下方に部分的に延在するようにエッチングされることを特徴とする。
【0012】
本発明の力学量検出センサの製造方法は、第1シリコン層と、第2シリコン層と、前記第1シリコン層及び前記第2シリコン層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板の前記第2シリコン層をエッチングして前記第2シリコン層側の立設部材領域、可動部材領域、梁領域及び枠体領域を設ける工程と、前記枠体領域及び前記立設部材領域にガラス−シリコン複合材で構成された基板を接合する工程と、前記SOI基板の前記第1シリコン層をエッチングして前記第1シリコン層側の立設部材領域、可動部材領域及び枠体領域を設ける工程と、前記絶縁層をエッチングして、枠体、立設部材及び前記枠体と前記立設部材との間で梁を介して揺動可能である可動部材を形成する工程と、前記第1シリコン層の前記立設部材及び前記枠体にシリコン基板を接合する工程と、を具備し、前記第1シリコン層は、前記梁の下方に部分的に延在するようにエッチングされることを特徴とする。
【0013】
これらの方法によれば、絶縁層をエッチングするまでは、梁は絶縁層によって第1シリコン層に固定されている。これにより、SOI基板の加工中に梁が可動して破損することを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の力学量検出センサは、基材上に枠体と、前記枠体に対して梁を介して設けられ、前記枠体に対して揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在している、あるいは、基材上に立設された立設部材と、前記基材上であって前記立設部材の外側に設けられた枠体と、前記枠体に対して梁を介して設けられ、前記枠体と前記立設部材との間で揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在している、あるいは、基材上に立設された複数の立設部材と、前記基材上であって前記立設部材の外側に設けられた枠体と、前記立設部材を受ける凹部を外周面に有しており、前記凹部に前記立設部材が位置するように配置された状態で揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在しているので、相対的に大きな力学量が加わっても、破損することなく被検知対象である力学量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る力学量検出センサを示す平面図であり、(b)は、(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明に係る力学量検出センサの製造方法の一例を説明するための図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明に係る力学量検出センサの製造方法の一例を説明するための図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明に係る力学量検出センサの製造方法の他の例を説明するための図である。
【図5】(a),(b)は、本発明に係る力学量検出センサの製造方法の他の例を説明するための図である。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態に係る力学量検出センサの他の例を示す平面図であり、(b)は、(a)におけるVIB−VIB線に沿う断面図である。
【図7】従来の力学量検出センサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態においては、力学量検出センサが傾斜センサである場合について説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る傾斜センサを示す平面図である。図1(b)は、図1(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。なお、図1(a)については、構成を説明するために、第3基板を透視して第1基板を図示している。
【0017】
図1に示す傾斜センサは、枠体11aと、接点部材である固定接点柱11bと、可動部材11cと、枠体11aに対して可動部材11cを揺動可能に支持する梁11dとを有する第1基板11を備えている。ここでは、第1基板11として、導電性を持つシリコンを使ったSOI(Silicon On Insulator)基板を用いている。図1(a)に示すように、可動部材11cは、梁11dを介して枠体11aに支持されている。このように梁11dがあることにより、傾斜がないときに、可動部材11cを基準位置(いずれの固定接点柱11bにも接触しない位置)に戻すことができる。ここでは、固定接点柱11b、可動部材11c及び梁11dは、枠体11aの内側に位置しており、梁11dが可動部材11cを囲繞するように設けられている。このように梁11dを可動部材11cの外側に位置するように設けることにより、梁11dの長さを長くして揺動による可動部材11cの変位量を大きくすることができる。
【0018】
図1(b)に示すように、第1基板11の一方の主面の枠体領域及び固定接点柱領域には、第2基板12が接合されている。ここでは、第2基板12として、シリコン基板を用いている。これにより、固定接点柱11bは、第2基板12を基材として、この基材上に立設されるように設けられている。第2基板12において、第1基板11の枠体11aの内側の領域であって固定接点柱11bを立設する領域以外の領域には、凹部12aが設けられており、可動部材11cが揺動した際に、可動部材11cが第2基板12に接触しないようになっている。なお、本実施の形態においては、第2基板12に凹部12aを形成した構成について説明しているが、これに限定されず、可動部材11cの厚さを薄くして、可動部材11cが第2基板12に接触しないように構成しても良い。
【0019】
図1(b)に示すように、第1基板11の他方の主面の枠体領域及び固定接点柱領域には、第3基板13が接合されている。ここでは、第3基板13として、ガラス−シリコン複合材で構成された基板を用いている。このガラス−シリコン複合材で構成された基板は、まず、シリコン基板をエッチングして固定接点柱領域に突出部を形成し、その突出部をガラス基板に当接して加熱加圧して突出部をガラス基板に押し込み、ガラス基板の両主面を研磨してガラス基板の両主面でシリコン製部材(突出部に相当する部分)を露出させ、第1基板11の接合領域に金属層を形成することにより作製することができる。
【0020】
第3基板における第1基板11の接合領域には、金属層13dが形成されており、一方、第1基板11における第3基板13の接合領域(枠体領域、固定接点柱領域)にも、金属層11fが形成されている。そして、金属層11f,13d同士を当接して接合する。第3基板13において、第1基板11の枠体11aの内側の領域であって固定接点柱11bを立設する領域以外の領域には、凹部13bが設けられており、可動部材11cが揺動した際に、可動部材11cが第3基板13に接触しないようになっている。なお、本実施の形態においては、第3基板13に凹部13bを形成した構成について説明しているが、これに限定されず、可動部材11cの厚さを薄くして、可動部材11cが第3基板13に接触しないように構成しても良い。
【0021】
また、可動部材11c上にも金属層11fが形成されている。これにより、可動部材11cが固定接点柱11bに接触した際に、可動部材11c上の金属層11fと固定接点柱11b上の金属層とが接触することとなり、可動部材11cと固定接点柱11bとの間の導通の信頼性を向上させることができる。
【0022】
第3基板13には、導電性部材(シリコン製部材)13aが埋設されており、第3基板13の両主面で露出している。第3基板13の第1基板11側の主面において、導電性部材13aと電気的に接続するように金属層13cが形成されている。この金属層13cは、固定接点柱11bと電気的に接続されている。また、第3基板13の第1基板11側の主面の反対側の主面(外界側の主面)において、導電性部材13aと電気的に接続するように金属層13dが形成されている。
【0023】
このような構成においては、図1(a)に示すように、固定接点柱11bの外側に枠体11aが位置し、この枠体11aに対して梁11dを介して枠体11aと固定接点柱11bとの間(空隙14)で揺動可能に可動部材11cが設けられている。
【0024】
枠体11a及び可動部材11cは、基材側の第1層(後述するベース層21)と第1層よりも上層の第2層(後述する活性層22)とを含み、第2層に梁11dが設けられており、第1層が梁11dの下方に部分的に延在する延在部11eを有する。この延在部11eは、図1(b)に示すように、枠体11a側から延在しても良く、可動部材11c側から延在しても良い。このように、梁11dの下方に延在部11eが存在することにより、相対的に大きな力学量が加わって、鉛直方向(図1(b)において紙面上げ方向)にも揺動しても、延在部11eが梁11dの鉛直方向の移動のストッパの役割を果たして、梁11dが鉛直方向に大きく揺動することを防止する。これにより、梁11dの破損を防止することができる。
【0025】
このような構成を有する傾斜センサが傾斜すると、可動部材11cが揺動して可動部材11cが固定接点柱11bに接触した際に傾斜を検出する。この検出は、制御部(図示せず)で行う。すなわち、この傾斜センサは、可動部材11c及び固定接点柱11bが導電性であり、固定接点柱11bが金属層を介して制御部に電気的に接続されている。傾斜センサがある方向に傾斜すると、可動部材11cが揺動して可動部材11cが固定接点柱11bに接触する。このとき、可動部材11cに接触した固定接点柱11bが可動部材11cを介して導通状態となる。制御部において、この導通状態を検出することにより、傾斜を検知する。なお、制御部における導通状態の検出方法(検出回路)については特に制限はない。
【0026】
次に、本発明に係る傾斜センサの製造方法の一例について説明する。
図2(a)〜(e)及び図3(a)〜(c)は、本発明に係る傾斜センサの製造方法の一例を説明するための図である。
【0027】
この方法においては、第1シリコン層と、第2シリコン層と、前記第1シリコン層及び前記第2シリコン層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板(第1基板11)の前記第1シリコン層をエッチングして固定接点柱領域、可動部材領域及び枠体領域を設け、前記SOI基板の前記固定接点柱領域及び前記枠体領域にシリコン基板(第2基板12)を接合し、前記第2シリコン層をエッチングして固定接点柱領域、可動部材領域、梁領域及び枠体領域を設け、前記絶縁層をエッチングして、枠体、固定接点柱及び前記枠体と前記固定接点柱との間で梁を介して揺動可能である可動部材を形成し、前記枠体及び前記固定接点柱にガラス−シリコン複合材で構成された基板(第3基板13)を接合する。この場合において、第1シリコン層は、前記梁の下方に部分的に延在するようにエッチングされる。
【0028】
まず、第1基板11を作製する工程について説明する。まず、第1シリコン層であるベース層21と、第2シリコン層である活性層22と、前記ベース層21及び前記活性層22に挟持された絶縁層23と、を有するSOI(Silicon On Insulator)基板を準備する。次いで、図2(a)に示すように、このSOI基板のベース層21をフォトリソグラフィ及びエッチングにより加工して固定接点柱領域21b、可動部材領域21c及び枠体領域21aを設ける。このとき、エッチングとしては、deepRIE(反応性イオンエッチング)などを用いる。
【0029】
次いで、図2(b)に示すように、第2基板12としてシリコン基板を準備し、可動部材11cなどの接触を防止するために、シリコン基板を加工して凹部12aを形成する。次いで、図2(c)に示すように、このシリコン基板12を、凹部12aがベース層21aと対向するようにして、第1基板11に接合する。次いで、図2(d)に示すように、活性層22に固定接点柱領域22b、可動部材領域22c、梁領域22d及び枠体領域22aを設けるために、活性層22をフォトリソグラフィ及びエッチングにより加工する。このとき、エッチングとしては、deepRIE(反応性イオンエッチング)などを用いる。次いで、図2(e)に示すように、絶縁層23をエッチングして、枠体11a、固定接点柱11b及び枠体11aと固定接点柱11bとの間で梁11dを介して揺動可能である可動部材11cを形成する。この方法においては、絶縁層23をエッチングするまでは、梁11dは絶縁層23によってベース層21に固定されている。これにより、SOI基板の加工中に梁11dが可動して破損することを防止できる。
【0030】
次いで、図3(a)に示すように、活性層22の第3基板13との接合領域(枠体11,固定接点柱11b)及び可動部材11cの領域に金属層11fを形成する。具体的には、活性層22上にスパッタリングにより金属材料を被着し、フォトリソグラフィ及びエッチングによりパターニングする。次いで、図3(b)に示すように、ガラス−シリコン複合材で構成された第3基板13を準備する。この第3基板13は、例えば、シリコン基板の一方の主面にフォトリソグラフィ及びドライエッチングにより導電性部材となる突出部を形成し、シリコン基板の突出部上にガラス基板を載せ、加熱しながら押圧してガラス基板に突出部を埋め込むようにして両基板を接合する。その後、得られた複合体の両主面を研磨して、導電性部材を両主面で露出させ、一方の主面側に、可動部材11cなどの接触を防止するために、複合体を加工して凹部13bを形成し、複合体の両主面に金属層13d,13cを形成する。このとき、金属層13cは、外側の主面に露出した導電性部材13a上に設け、金属層13dは、凹部13b側の主面に露出した導電性部材13a上及び第1基板11との接合領域上に設ける。具体的には、金属層13c,13dは、複合体の一方の主面上にスパッタリングにより金属材料を被着し、フォトリソグラフィ及びエッチングによりパターニングすることにより形成する。
【0031】
最後に、図3(c)に示すように、第1基板11と第3基板13とを接合する。この場合、金属層13dが第1基板11に対向するようにして第1基板11と第3基板13とを接合する。このとき、陽極接合あるいは拡散接合により接合することが好ましい。このようにして、図1(a),(b)に示す傾斜センサを得ることができる。
【0032】
図4(a)〜(d)及び図5(a),(b)は、本発明に係る傾斜センサの製造方法の他の例を説明するための図である。
【0033】
この方法においては、第1シリコン層と、第2シリコン層と、前記第1シリコン層及び前記第2シリコン層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板(第1基板11)の前記第2シリコン層をエッチングして前記第2シリコン層側の固定接点柱領域、可動部材領域、梁領域及び枠体領域を設け、前記枠体領域及び前記固定接点柱領域にガラス−シリコン複合材で構成された基板(第3基板13)を接合し、前記SOI基板の前記第1シリコン層をエッチングして前記第1シリコン層側の固定接点柱領域、可動部材領域及び枠体領域を設け、前記絶縁層をエッチングして、枠体、固定接点柱及び前記枠体と前記固定接点柱との間で梁を介して揺動可能である可動部材を形成し、前記第1シリコン層の前記固定接点柱及び前記枠体にシリコン基板(第2基板12)を接合する。この場合において、第1シリコン層は、前記梁の下方に部分的に延在するようにエッチングされる。
【0034】
まず、第1基板11を作製する工程について説明する。まず、第1シリコン層であるベース層21と、第2シリコン層である活性層22と、前記ベース層21及び前記活性層22に挟持された絶縁層23と、を有するSOI基板を準備する。次いで、図4(a)に示すように、このSOI基板の活性層22をフォトリソグラフィ及びエッチングにより加工して固定接点柱領域22b、可動部材領域22c、梁領域22d及び枠体領域22aを設ける。このとき、エッチングとしては、deepRIE(反応性イオンエッチング)などを用いる。次いで、図4(a)に示すように、活性層22の第3基板13との接合領域(枠体領域22a,固定接点柱領域22b)及び可動部材11cの領域に金属層11fを形成する。具体的には、活性層22上にスパッタリングにより金属材料を被着し、フォトリソグラフィ及びエッチングによりパターニングする。
【0035】
次いで、図4(a)に示すように、ガラス−シリコン複合材で構成された第3基板13を準備する。この第3基板13は、例えば、シリコン基板の一方の主面にフォトリソグラフィ及びドライエッチングにより導電性部材となる突出部を形成し、シリコン基板の突出部上にガラス基板を載せ、加熱しながら押圧してガラス基板に突出部を埋め込むようにして両基板を接合する。その後、得られた複合体の両主面を研磨して、導電性部材を両主面で露出させ、一方の主面側に、可動部材11cなどの接触を防止するために、複合体を加工して凹部13bを形成し、複合体の両主面に金属層13d,13cを形成する。このとき、金属層13cは、外側の主面に露出した導電性部材13a上に設け、金属層13dは、凹部13b側の主面に露出した導電性部材13a上及び第1基板11との接合領域上に設ける。具体的には、金属層13c,13dは、複合体の一方の主面上にスパッタリングにより金属材料を被着し、フォトリソグラフィ及びエッチングによりパターニングすることにより形成する。
【0036】
次いで、図4(b)に示すように、第1基板11と第3基板13とを接合する。この場合、金属層13dが第1基板11に対向するようにして第1基板11と第3基板13とを接合する。このとき、陽極接合あるいは拡散接合により接合することが好ましい。
【0037】
次いで、図4(c)に示すように、ベース層21に固定接点柱領域21b、可動部材領域21c及び枠体領域21aを設けるために、ベース層21をフォトリソグラフィ及びエッチングにより加工する。このとき、エッチングとしては、deepRIE(反応性イオンエッチング)などを用いる。次いで、図4(d)に示すように、絶縁層23をエッチングして、枠体11a、固定接点柱11b及び枠体11aと固定接点柱11bとの間で梁11dを介して揺動可能である可動部材11cを形成する。この方法においては、絶縁層23をエッチングするまでは、梁11dは絶縁層23によってベース層21に固定されている。これにより、SOI基板の加工中に梁11dが可動して破損することを防止できる。
【0038】
次いで、図5(a)に示すように、第2基板12としてシリコン基板を準備し、可動部材11cなどの接触を防止するために、シリコン基板を加工して凹部12aを形成する。次いで、図5(b)に示すように、このシリコン基板12を、凹部12aがベース層21aと対向するようにして、第1基板11に接合する。このようにして、図1(a),(b)に示す傾斜センサを得ることができる。
【0039】
図6(a)は、本発明の実施の形態に係る傾斜センサの他の例を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)におけるVIB−VIB線に沿う断面図である。本発明は、図6に示す構成を有する傾斜センサ、すなわち、基材上に立設された導電性の複数の固定接点柱と、前記基材上であって前記固定接点柱の外側に設けられた枠体と、前記固定接点柱を受ける凹部を外周面に有しており、前記凹部に前記固定接点柱が位置するように配置された状態で揺動可能である導電性の可動部材と、を具備する構成にも適用することができる。
【0040】
図6(a)に示す傾斜センサにおいて、可動部材11cは、固定接点柱11bを受ける凹部11gをその外周面に有している。その凹部11gには、固定接点柱11bが位置するようになっている。すなわち、固定接点柱11b間に可動部材11cが延在している。可動部材11cは、この状態で揺動可能である。したがって、このような配置構成においては、傾斜センサが傾斜して可動部材11cが揺動したときに、固定接点柱11bが可動部材11cの凹部11gに嵌り込むようにして可動部材11cが2つの固定接点柱11bで受けられる。このため、可動部材11cの凹部11gで固定接点柱11bを確実に受けることができ、可動部材11cを固定接点柱11bで確実に保持することができる。このように、可動部材11cを固定接点柱11bで確実に保持して、可動部材11cが2つの固定接点柱11bに接触した際に傾斜を検出するので、被検知対象とならないセンサ内での動き(チャタリング)では傾斜を検知せず、安定して被検知対象である傾斜を検知することができる。
【0041】
この場合においても、第1層が梁11dの下方に部分的に延在する延在部11eを有する。この延在部11eは、枠体11a側から延在しても良く、可動部材11c側から延在しても良い。このように、梁11dの下方に延在部11eが存在することにより、相対的に大きな力学量が加わって、鉛直方向(図6(b)において紙面上げ方向)にも揺動しても、延在部11eが梁11dの鉛直方向の移動のストッパの役割を果たして、梁11dが鉛直方向に大きく揺動することを防止する。これにより、梁11dの破損を防止することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、凹部11gの外周が平面視で円弧であり、固定接点柱11bの外周が平面視で円である場合について説明しているが、凹部11gの外周の平面視形状や固定接点柱11bの外周の平面視形状はこれに限定されない。また、図6(a)においては、固定接点柱11bが等間隔で正方形状に配置された場合について説明している。この場合には、90度毎の傾斜方向を検出することが可能となる。本発明はこれに限定されず、固定接点柱11bの配置間隔、配置形状、配置本数を変えることにより、それに応じて種々の傾斜方向を検出することができる。
【0043】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。上記実施の形態においては、力学量検出センサが傾斜センサである場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、力学量検出センサが加速度センサや振動センサである場合にも適用することができる。また、上記実施の形態においては、ガラス基板とシリコン基板を用いた場合について説明しているが、本発明においては、ガラス基板やシリコン基板以外の基板を用いても良い。また、センサにおける電極や各層の材質については本発明の効果を逸脱しない範囲で適宜設定することができる。また、上記実施の形態で説明したプロセスについてはこれに限定されず、工程間の適宜順序を変えて実施しても良い。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、携帯端末などの小型デバイスに搭載可能な傾斜センサに有用である。
【符号の説明】
【0045】
11 第1基板
11a 枠体
11b 固定接点柱
11c 可動部材
11d 梁
11e 延在部
11f,13c,13d 金属層
11g,12a,13b 凹部
12 第2基板
13 第3基板
13a 導電性部材
14 空隙
21 ベース層
22 活性層
23 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に枠体と、前記枠体に対して梁を介して設けられ、前記枠体に対して揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在していることを特徴とする力学量検出センサ。
【請求項2】
基材上に立設された立設部材と、前記基材上であって前記立設部材の外側に設けられた枠体と、前記枠体に対して梁を介して設けられ、前記枠体と前記立設部材との間で揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在していることを特徴とする力学量検出センサ。
【請求項3】
基材上に立設された複数の立設部材と、前記基材上であって前記立設部材の外側に設けられた枠体と、前記立設部材を受ける凹部を外周面に有しており、前記凹部に前記立設部材が位置するように配置された状態で揺動可能である可動部材と、を具備し、前記枠体及び前記可動部材は、前記基材側の第1層と前記第1層よりも上層の第2層とを含み、前記第2層に前記梁が設けられており、前記第1層が前記梁の下方に部分的に延在していることを特徴とする力学量検出センサ。
【請求項4】
前記枠体及び前記可動部材は、前記第1層であるベース層と、前記第2層である活性層と、前記ベース層及び前記活性層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の力学量検出センサ。
【請求項5】
第1シリコン層と、第2シリコン層と、前記第1シリコン層及び前記第2シリコン層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板の前記第1シリコン層をエッチングして立設部材領域、可動部材領域及び枠体領域を設ける工程と、前記SOI基板の前記立設部材領域及び前記枠体領域にシリコン基板を接合する工程と、前記第2シリコン層をエッチングして立設部材領域、可動部材領域、梁領域及び枠体領域を設ける工程と、前記絶縁層をエッチングして、枠体、立設部材及び前記枠体と前記立設部材との間で梁を介して揺動可能である可動部材を形成する工程と、前記枠体及び前記立設部材にガラス−シリコン複合材で構成された基板を接合する工程と、を具備し、前記第1シリコン層は、前記梁の下方に部分的に延在するようにエッチングされることを特徴とする力学量検出センサの製造方法。
【請求項6】
第1シリコン層と、第2シリコン層と、前記第1シリコン層及び前記第2シリコン層に挟持された絶縁層と、を有するSOI基板の前記第2シリコン層をエッチングして前記第2シリコン層側の立設部材領域、可動部材領域、梁領域及び枠体領域を設ける工程と、前記枠体領域及び前記立設部材領域にガラス−シリコン複合材で構成された基板を接合する工程と、前記SOI基板の前記第1シリコン層をエッチングして前記第1シリコン層側の立設部材領域、可動部材領域及び枠体領域を設ける工程と、前記絶縁層をエッチングして、枠体、立設部材及び前記枠体と前記立設部材との間で梁を介して揺動可能である可動部材を形成する工程と、前記第1シリコン層の前記立設部材及び前記枠体にシリコン基板を接合する工程と、を具備し、前記第1シリコン層は、前記梁の下方に部分的に延在するようにエッチングされることを特徴とする力学量検出センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−186592(P2010−186592A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28670(P2009−28670)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】