説明

力覚提示装置、並びに、これを備えた表示装置及び携帯型装置

【課題】簡易な構成で力を効率よく発生させて提示能力を向上させ、低コスト化、小型化および軽量化を図るとともに、高い信頼性を得ることのできる力覚提示装置を提供することにある。
【解決手段】モータにより回転駆動される回転体13のカム摺動面13Pにリンクアーム14A、14Bを突き当てることで、回転体13、モータ、スライド部材16を一方向に沿って往復動させる。このとき、カム摺動面13Pのプロファイル形状に応じ、一方の側に回転体13、モータ、スライド部材16が変位するときと、他方の側に回転体13、モータ、スライド部材16が変位するときとで、加速度変化(躍動の度合い)を異ならせるようにした。これにより、この力覚提示装置を内蔵した携帯型情報端末を保持したユーザは、力覚提示装置によって提示される一方の側への力を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚を提示する力覚提示装置、並びに、これを備えた表示装置及び携帯型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展に伴い、情報提供装置として、視覚や聴覚だけでなく、手ごたえなどの力を知覚させることで情報伝達手段とする、力覚提示装置が開発されつつある(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術においては、モータにより錘を直線的に往復動させ、このときに、錘が発生する正方向における加速度の絶対値の最大値と、負方向における加速度の絶対値の最大値が異なるものとする。さらに錘が加速度を発生している時間が、加速度の絶対値の大きい方向が小さい方向より短くなるようにする。これにより、装置の外部や人体に固定することなく、あたかも加速度の絶対値の大きい方向に力が作用しているように力を伝達することができる。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の技術においては、このような錘の動作を実現するために、図7に示すように、モータによって回転駆動される円盤状の回転部材2の外周部と、レール3に沿って直線移動自在な錘4とを、リンク5を介して連結している。モータにより回転部材2が回転すると、回転部材2の外周部に連結されたリンク5の一端が円運動し、このリンク5の他端に連結された錘4が、レール3に沿って直線往復動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−65665号公報(図1、図4、図5、図7)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】雨宮智浩、安藤英由樹、前田太郎、「知覚の非線形性を利用した非設置型力覚惹起手法の提案と評価」、日本バーチャルリアリティー学会論文Vol11,No1,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術には、下記に示すような問題が存在する。
まず、第1の問題点は、力の提示能力が低いということである。なぜなら、図7、図8に示すように、錘4に連結されたリンク5の中間部のリンクジョイント部6は、力を提示したい方向とはほぼ垂直方向に変形した楕円運動をする。提示方向とほぼ垂直に移動するリンクジョイント部6は当然重量を持っており、錘4が加速度運動をするときには同時にリンクジョイント部6が反力を提示してしまい、本来提示したい加速度方向の力の方向と、リンクジョイント部6が意図せず提示してしまう力の方向とがほぼ直交してしまうことになる。すると、装置で提示する力の方向は、錘4の運動方向と、錘4の運動方向と直交する方向の成分を含むリンクジョイント部6の運動方向との合成方向となり、錘4の運動方向から逸れてしまうからである。
【0008】
第2の問題点は、力発生原理の効率の悪さである。錘4と連結したリンク5の端点の楕円運動の一方向の運動成分のみを取り出しているためであるが、錘4の移動距離よりも、錘4を移動させるリンク5のリンクジョイント部6における、錘4の運動方向に直交する方向への変位量の方が大きい。
【0009】
第3の問題点は、壊れやすいということである。なぜなら錘4に接続されるリンク5は変位量が錘4よりも大きいため、破損や脱落の危険性が増す。また例えば提示方向を正にとった場合、微小な加速度で正に速度を増加させ、その後、負の方向へ急激に加速を増加させることは、リンク5の連結軸部への負荷も同様に増加させてしまう。さらにその負荷とは一方向への負荷のみであるため、リンク5の連結軸部の偏摩耗等を招く。
【0010】
第4の問題点は、小型化、軽量化が困難ということである。第2の問題点および第3の問題点を解決するためには、錘4を増加させるかリンク5を長くすれば良いが、これでは小型化や軽量化には不向きであり、特に、本発明の主な適用対象としている携帯型モバイル機器には向かない。
【0011】
第5の問題点は、機器が複雑で高価になるということである。錘4を運動させるために、リンク5が2つの部材から構成され、部品点数が増えるとともにその組立の手間も増えるためである。
【0012】
そこでなされた本発明の目的は、簡易な構成で力を効率よく発生させて提示能力を向上させ、低コスト化、小型化および軽量化を図るとともに、高い信頼性を得ることのできる力覚提示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的のもとになされた本発明の力覚提示装置は、外周面にカム摺動面が形成された回転体と、回転体を回転させる駆動源と、駆動源により回転駆動される回転体のカム摺動面に押し当てられることで、回転体を一方向に沿って周期的に往復動させる往復機構と、を有し、前記回転体の前記カム摺動面の周方向の変化曲線は、前記往復機構によって変換される前記回転体の一方向に沿った周期的な往復動のうち、一方の側から他方の側へ向かう方向の運動の加速度の変化率が、前記他方の側から前記一方の側へ向かう方向の運動の加速度の変化率よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、往復機構によって回転体の回転に伴って、回転体自体がカム摺動面のプロファイルに応じて一方向に沿った往復動作する。
このとき、一方の側から他方の側へ向かう方向の運動の加速度の変化率が、他方の側から一方の側へ向かう方向の運動の加速度の変化率よりも大きくなるよう、カム摺動面のプロファイルを形成することで、一方の側から他方の側へ向かう方向の周期的な力を提示することができる。
このように、力を提示する回転体を1つとし、該回転体を往復動させてこの往復方向に沿って加速度の変化率の相違に応じて力を提示することができるので、提示する力を減少させる運動を抑え、提示能力を向上させることができる。また、上記のように回転体、回転体を回転させる駆動源、及び、回転体を往復動させる往復機構による単純な機構によって実現でき、それ故に低コスト化、小型化および軽量化を図るとともに、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかる力覚提示装置を内蔵した携帯型情報端末の一例を示す斜視図である。
【図2】力覚提示装置の内部構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の正断面図である。
【図3】回転体のカム摺動面の形状の一例を示す図である。
【図4】力覚提示装置が動作したときの回転体の回転角度と、錘の変位との関係を示す図である。
【図5】回転体が回転したときの、リンクアームの揺動およぎ回転体の変位の流れを示す図である。
【図6】(a)は、図4の変位を時間で微分したときの錘の移動の速度を示し、(b)は、(a)の速度を時間で微分した加速度を示し、(c)は(b)の加速度を時間で微分した躍動を示す図である。
【図7】従来の力覚提示装置の構造を示す図である。
【図8】図7に示した力覚提示装置を動作させたときの錘とリンク部材の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の力覚提示装置10を内蔵した携帯型情報端末100の外観を示す図である。力覚提示装置10は、携帯型装置である携帯型情報端末100のように可搬性を有する機器に内蔵される。
図2に示すように、力覚提示装置10は、ケース11内に、モータ12と、回転体13と、一対のリンクアーム(ガイド部材)14A、14Bと、を備える。
【0017】
ケース11は薄型箱状であるが、その機能は主に力覚提示装置10の各部品を支持することにある。したがって、ケース11の形状については何ら限定するものではなく、ケース11に代えて、携帯型情報端末100の他の部品や筐体等に力覚提示装置10の各部品を支持させる構成とすることも可能である。
【0018】
ケース11の内部には、力を提示する方向と対応した一方向に延びるスライドシャフト15が設けられている。スライドシャフト15には、ブロック状のスライド部材16が、スライドシャフト15の長さ方向にスライド移動自在に設けられている。
また、スライド部材16の両側の側面16a、16bとケース11の内周面11a、11bとの間には、一対の圧縮バネ(押圧部材)17A、17Bが圧縮状態で設けられ、スライド部材16をスライドシャフト15に沿った方向に両側から付勢している。
前記のモータ12は、このスライド部材16に一体に固定されている。
すなわち、スライド部材16、一対のリンクアーム14A、14B、一対の圧縮バネ17A、17Bにより、回転体を一方向に沿って周期的に往復動させる往復機構が構成され、該往復機構により、モータ12は、ケース11内で、スライドシャフト15の軸線に沿って往復移動可能とされている。
【0019】
モータ12は、その回転軸12aを、前記一方向と直交する方向で、ケース11の内方に突出させている。
回転体13は、所定の外周形状を有した板状であり、回転軸12aに一体に固定されている。
回転体13は、その外周面が、予め定められたプロファイル形状を有したカム摺動面13Pとされている。ここで、図3に示すように、本実施の形態において、そのカム摺動面13Pは、そのほぼ半周部分の区間S1が、回転軸12aの中心からほぼ等しい曲率半径を有した円弧状とされている。カム摺動面13Pの残るほぼ半周部分の区間S2は、回転軸12aの中心からカム摺動面13Pまでの距離r(すなわち径方向の寸法)が、図4に示すような分布となるよう形成されている。
【0020】
すなわち、カム摺動面13Pの区間S2は、回転軸12aの中心からの距離rが、区間S1に隣接する位置において急激に小さくなった後(区間S2−1)、最小値となる(区間S2−2)。その後、回転軸12aの中心からの距離rは再び急激に大きくなり(区間S2−3)、最大値となる(区間S2−4)。この後は、区間S2−1〜S2−4と逆のプロファイルで、回転軸12aの中心からの距離rが急激に小さくなった後(区間S2−5)、最小値となり(区間S2−6)、回転軸12aの中心からの距離rは再び急激に大きくなり(区間S2−7)、区間S1に連続する。
【0021】
一対のリンクアーム14A、14Bは、それぞれ、ケース11の内周面から突出する支持部材20の先端部に、回転軸21を介して回動自在に設けられ、回転体13が位置する面内で旋回可能とされている。このとき、回転軸21は、スライドシャフト15の中心軸に対し、側方に一定寸法オフセットした位置に設けられている。なお、回転体13のスライド方向の前後方向一方の側に位置するリンクアーム14Aと、他方の側に位置するリンクアーム14Bとでは、回転軸21は互いに異なる側にオフセットしている。
また、支持部材20には、回転軸21を中心として旋回するリンクアーム14A、14Bの回転角度を規制するストッパ部22が形成されている。ストッパ部22によりその回転角度が規制された状態で、リンクアーム14A、14Bは、スライドシャフト15と平行となる。このストッパ部22により、リンクアーム14Aと、リンクアーム14Bは、スライドシャフト15と平行な状態からは、互いに異なる側の範囲のみにおいて旋回可能となる。すなわち、図2の例においては、リンクアーム14Aは、スライドシャフト15と平行な状態から時計回りとなる範囲内のみで旋回し、リンクアーム14Bは、スライドシャフト15と平行な状態から反時計回りとなる範囲内のみで旋回する。
【0022】
リンクアーム14A、14Bの先端部とケース11の内周面との間には、それぞれ、スライドシャフト15と直交する方向に延在し、リンクアーム14A、14Bの基端部をストッパ部22に押し付ける方向に付勢する引張バネ23が設けられている。
この引張バネ23により、スライドシャフト15と平行な状態から旋回したリンクアーム14A、14Bを、基端部がストッパ部22に突き当たってスライドシャフト15と平行な状態となる方向に戻そうと付勢する。図2の例においては、引張バネ23は、リンクアーム14Aを反時計回りに付勢し、リンクアーム14Bを時計回りに付勢する。
ここで、この引張バネ23に代えて、リンクアーム14A、14Bを押圧ることで同様の方向に付勢する圧縮バネを設けたり、回転軸21の部分に、同様の付勢力を発揮するバネを設けても良い。
【0023】
このような構成の力覚提示装置10においては、モータ12を作動させると、回転体13が、モータ12の回転軸12aを中心として旋回する。すると、その回転方向に応じ、回転体13のカム摺動面13Pがリンクアーム14A、14Bのうちの一方に突き当たりながら摺動することで、回転体13、モータ12、スライド部材16が、スライドシャフト15に沿って変位する。
図5(a)〜(d)に、回転体13を回転させていったときのリンクアーム14A、14Bの旋回、回転体13の変位の流れを示す。
図5の例において、モータ12により回転体13を反時計回りに回転させると、回転体13の一方の側(図5において右側)に位置するリンクアーム14Bは、回転する回転体13のカム摺動面13Pが当たってもストッパ部22によりその旋回が規制され、スライドシャフト15に平行な状態を維持する。すると、このように固定状態のリンクアーム14Bと、回転する回転体13のカム摺動面13Pとの摺動により、回転体13、モータ12、スライド部材16が、カム摺動面13Pにおける回転軸12aの中心からの距離rの変動にともなって、スライドシャフト15に沿った方向において変位する。その変位の時間的な変化は、図4に示した、カム摺動面13Pの区間S2における回転軸12aの中心からの距離rの分布に対応したものとなる。
このとき、回転体13の他方の側(図5において左側)に位置するリンクアーム14Aは、回転する回転体13のカム摺動面13Pに摺動することで、回転軸21を中心として時計回りに旋回し、回転体13の変位に倣う。
【0024】
また、モータ12およびスライド部材16の変位に伴い、リンクアーム14Aが設けられている側の圧縮バネ17Aが圧縮し、その反発力によりモータ12およびスライド部材16をリンクアーム14B側に付勢する。これにより、回転体13をリンクアーム14Bに押し付けてカム摺動面13Pとリンクアーム14Bとが離れるのを防止する。
このとき、同時に、回転体13の回転および変位により旋回したリンクアーム14Aも、引張バネ23によりスライドシャフト15に沿った方向に位置するよう復元力が作用する。この復元力により、リンクアーム14Aが回転体13のカム摺動面13Pに押し付けられ、回転体13、モータ12、スライド部材16をリンクアーム14B側に押圧する作用を発揮する。
【0025】
上記のような回転体13の回転により、回転体13、モータ12、スライド部材16は、カム摺動面13Pの区間S2がリンクアーム14Bに摺動している間に、大きな加速度で他方の側(図5において左側)に向けて変位した後、大きな加速度で一方の側(図5において右側)に変位する。
そして、区間S2を経たのち、カム摺動面13Pの区間S1においては、カム摺動面13Pにおける回転軸12aの中心からの距離rが一定であるので、回転体13、モータ12、スライド部材16は変位しない。
【0026】
回転体13を連続回転させることにより、上記したような、他方の側と一方の側に加速度を発揮させる動作は、連続的なものとなる。さらに、区間S1の存在により、前記の動作は間欠的なものとなる。
【0027】
また、モータ12により回転体13を反対向き(図5の例では時計回り)に回転させれば、リンクアーム14Aが固定された状態となり、回転体13、モータ12、スライド部材16の変位方向は上記と逆になる。
【0028】
さて、上記したような回転体13、モータ12、スライド部材16の変位に注目する。
ここで、リンクアーム14の動作について検証する。
モータ12の回転軸12aを中心とした回転体13の回転角度[rad]と、回転体13、モータ12、スライド部材16の変位との関係を図4に示した。ここで、図5において、回転体13、モータ12、スライド部材16の左方向への変位を正方向、右方向への変位を負方向とする。
図6(a)は、図4の変位を時間で微分して移動するときの回転体13、モータ12、スライド部材16の速度を示し、図6(b)は、図6(a)の速度を時間で微分した加速度を示し、図6(c)は図6(b)の加速度を時間で微分した躍動を示している。
図6(b)に示すように、本発明の力覚提示装置10では、回転体13、モータ12、スライド部材16に生じる加速度は、正方向への変位と負方向への変位とでは、絶対値が同一である。また加速度の絶対値の最大値も同一であることを示している。
また、回転体13を反時計回りに回転した上記の場合において、図6(c)に示すように、右方向への躍動が、左方向への躍動よりも大きくなる。
【0029】
回転体13、モータ12、スライド部材16が上記のような運動を行うことにより、力覚提示装置10を内蔵した携帯型情報端末100を保持している利用者は、まず回転体13、モータ12、スライド部材16が正方向の加速度を生じているため、ケース11からその反力の負方向の力D1を受けるが、さらに時間が進むと回転体13、モータ12、スライド部材16には負方向の加速度が生じ、利用者は、ケース11からその反力の正方向への力D2を受け、この力D2の方が大きく感じる。したがって、感覚として、正方向への力感あるいは引っ張り感を強く感じることとなる。つまり図6(c)に示す−方向への躍動(加速度の時間変化率)を強く感じる。
例えば手のひらで力覚提示装置10を内蔵した携帯型情報端末100を把持している場合には正方向への力覚を提示することになる。
【0030】
上述したような力覚提示装置10においては、モータ12により回転駆動される回転体13により回転体13、モータ12、スライド部材16を一方向に沿って往復動させることによって、一方の側に回転体13、モータ12、スライド部材16が変位するときと、他方の側に回転体13、モータ12、スライド部材16が変位するときとで、加速度変化(躍動の度合い)を異ならせるようにした。これにより、この力覚提示装置10を内蔵した携帯型情報端末100を保持したユーザは、力覚提示装置10によって提示される一方の側への力D1を正しく認識することができる。
このような携帯型情報端末100は、ユーザが、手で持ったりポケット等に収納したり体の一部に装着したりできる可搬性を有するため、発生する力(力覚)を様々な用途に用いることが可能である。
【0031】
このような力覚提示装置10は、モータ12、回転体13、リンクアーム14A、14B、スライドシャフト15を備えることで実現でき、動作は、回転体13の回転と、これによる回転体13、モータ12、スライド部材16の変位、リンクアーム14A、14Bの揺動のみである。このように、回転体13、モータ12、スライド部材16の運動を、力を提示したい方向の運動のみとし、力を提示したい方向と直交する方向の運動を行わない構造としたため、効率の良い力の提示を行える。
なお、厳密に言えば、リンクアーム14A、14Bが旋回することで、力を提示したい方向と直交する方向の運動が生じているが、これは無視できるレベルであり、効率の良い力の提示を行える。
【0032】
また、力を発生するのに錘等を用いることなく回転体自体を質量部として用いる構成となっている。このことを含め、本発明においては、力覚提示装置10の構成部品が少なくて済むので、装置の低コスト化、小型化、軽量化を図ることができ、そのアセンブリやメンテナンスも容易かつ効率的に行え、携帯型情報端末100への搭載も容易である。
さらに、回転体13、モータ12、スライド部材16が正方向に変位するときと負方向に変位するときとで、加速度の絶対値は同じであるため、回転軸12a等にも偏りのない負荷となり、偏摩耗等も生じにくく、装置耐久性を向上させることができる。
【0033】
なお、上述した実施形態で示したケース11、回転軸12a、回転体13、リンクアーム14A、14B等をはじめとする力覚提示装置10の各構成部品の材料は、樹脂、金属等を利用できるが、一定の材料強度を有するものであれば特に限定はない。
モータ12は、現在モバイル端末機器に搭載されているバイブレーション用のモータを使用することができるが、特に限定しない。
また回転軸12a、21等には、摺動に強いメッキ膜を形成したり、グリス等の潤滑剤を塗布するのが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態では、回転体13を両方向に回転可能とし、一方の方向に回転体13を回転させたときと、他方の方向に回転体13を回転させたときとで、力を両方向に提示できる構成としたが、これに限るものではない。例えば一方の側のみに力を提示する用途においては、回転体13の両側にリンクアーム14A、14Bを備える必要はなく、一方の側に設ければ良いし、さらには、リンクアームを回動可能とする必要もない。
【0035】
本実施形態において、本発明の力覚提示装置10を携帯型情報端末100に内蔵するものとしたが、携帯型情報端末100としては、携帯型電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯型モバイル機器、携帯型ナビゲーション装置、ウェアラブルコンピュータ等をはじめとする各種の携帯機器がある。また、携帯型情報端末に限らず、携帯型ゲーム機、各種機器のコントローラ(有線/無線を問わず)等にも本発明の力覚提示装置10を備えることができる。
また、力覚提示装置10で発揮する力覚の用途や使用方法についても何ら限定する意図は無い。例えば、仮想的な物体の動作情報が記憶された制御部を備え、該動作情報と対応して駆動源を駆動させて、仮想的な物体の動作に応じた力を提示可能な構成としても良い。
また、前記力覚提示装置を、画像を表示するディスプレイと、該ディスプレイに表示する画像を生成する制御部とを備える表示装置に搭載し、ディスプレイに表示する画像と対応して駆動源を駆動させるものとしても良い。このような表示装置では、単にディスプレイに表示する物体が移動するのに応じて力を提示するのに限られず、例えばナビゲーション装置として、進路方向等を示すナビゲーション情報の一つとして、次に進むべき方向を力に提示することができる。また、作業手順を示す情報端末として用いる場合、行うべき作業における移動方向等を力により提示することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 力覚提示装置
11 ケース
12 モータ(駆動源)
12a 回転軸
13 回転体
13P カム摺動面
14A、14B リンクアーム(ガイド部材)
15 スライドシャフト
16 スライド部材
17A、17B 圧縮バネ(押圧部材)
21 回転軸
22 ストッパ部
23 引張バネ
100 携帯型情報端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にカム摺動面が形成された回転体と、
前記回転体を回転させる駆動源と、
前記駆動源により回転駆動される前記回転体の前記カム摺動面に押し当てられることで、前記回転体を、一方向に沿って周期的に往復動させる往復機構とを有し、
前記回転体の前記カム摺動面の周方向の変化曲線は、前記往復機構によって変換される前記回転体の一方向に沿った周期的な往復動のうち、一方の側から他方の側へ向かう方向の運動の加速度の変化率が、前記他方の側から前記一方の側へ向かう方向の運動の加速度の変化率よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする力覚提示装置。
【請求項2】
前記回転体の前記カム摺動面の周方向の変化曲線は、一方向に沿った周期的な往復動のうち、一方の側から他方の側へ向かう方向の運動の加速度の絶対値と、前記他方の側から前記一方の側へ向かう方向の運動の加速度の絶対値とが等しくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の力覚提示装置。
【請求項3】
前記往復機構は、
前記回転体を前記一方向に沿ってスライド移動自在とするスライド部材と、
前記回転体の前記カム摺動面に突き当たるガイド部材と、
前記回転体と前記ガイド部材とを互いに押し付ける押圧部材と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の力覚提示装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記スライド部材に沿った前記回転体の移動方向の両側にそれぞれ設けられ、
一方の側の前記ガイド部材は、前記回転体が第一の方向に回転したときのみ、前記回転体の前記カム摺動面に倣って前記回転体から離間した側の基端部を中心として回動し、前記回転体が前記第一の方向とは逆の第二の方向に回転したときには回動が規制されて固定状態とされ、
他方の側の前記ガイド部材は、前記回転体が前記第二の方向に回転したときのみ、前記回転体の前記カム摺動面に倣って前記回転体から離間した側の基端部を中心として回動し、前記回転体が前記第一の方向に回転したときには回動が規制されて固定状態とされていることを特徴とする請求項3に記載の力覚提示装置。
【請求項5】
前記駆動源は一方向または双方向に前記回転体を回転可能なモータであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の力覚提示装置。
【請求項6】
仮想的な物体の動作情報が記憶され、該動作情報と対応して前記駆動源を駆動させる制御部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の力覚提示装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の力覚提示装置と、
画像を表示するディスプレイと、
該ディスプレイに表示する画像を生成するとともに、該画像と対応して前記駆動源を駆動させる制御部を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記画像としてナビゲーション情報を前記ディスプレイに表示して、該ナビゲーション情報における進行方向または作業手順情報における方向と対応して前記駆動源を駆動させることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載の力学提示装置を備え、可搬性を有することを特徴とする携帯型装置。
【請求項10】
身体に装着するための装着部を備えることを特徴とする請求項9に記載の携帯型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−172805(P2010−172805A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16778(P2009−16778)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】