説明

加工装置およびイオン化エア供給プログラム

【課題】カセットに対するウェーハ(ワーク)の搬入/搬出時にイオン化エアを十分に吹き付けることができ、搬入/搬出時に発生する静電気を確実に除去する。
【解決手段】カセット9にウェーハ付きフレーム6を搬入/搬出する第1搬送手段30のフレーム4を保持するクランプ33が設けられたブロック36に、エアを噴出する上下一対のブローノズル37A,37Bを取り付け、ブロック36内に、イオン化エア生成手段73を配設する。ブローノズル37A,37Bからウェーハ1の上下の面にイオン化エアを吹き付けて除電しながらウェーハ1を搬入したり搬出したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセットに収納した半導体ウェーハ等の板状のワークを加工手段まで搬送して加工し、加工後のワークをカセットに戻す動作をとる加工装置に係り、特に、カセットに対するワークの搬入/搬出手段に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハの表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理をしてから、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、樹脂封止によりパッケージングされて、携帯電話やPC(パーソナル・コンピュータ)等の各種電気・電子機器に広く用いられている。
【0003】
半導体ウェーハをダイシングする装置としては、チャックテーブルに吸着して保持した半導体ウェーハに対して、高速回転させた円板状の薄い切削ブレードを切り込ませていくブレード式の切削装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
このような切削装置、あるいは研削を行う研削装置等の加工装置では、チャックテーブル上に保持した半導体ウェーハに所定の加工水を噴出しながらワークを加工し、さらに加工後のワークに洗浄水を噴出して洗浄している。ところで、ワークの加工時および洗浄時には静電気が発生して帯電し、この静電気が原因となってワークに形成された電子回路にダメージを与えて品質を低下させるといった問題が生じる。そこで、この問題を解消するために、半導体ウェーハの搬送手段やチャックテーブルの移動経路にイオン化されたエアを噴出するノズルを配設し、このノズルから、搬送中または移動中の半導体ウェーハにイオン化されたエアを吹き付けて半導体ウェーハに帯電した静電気を除去する技術が提案された(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−25209号公報
【特許文献2】特開2002−66865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示された技術によれば、加工後または洗浄後の半導体ウェーハにイオン化されたエアを十分供給することによって、加工時または洗浄時に帯電した静電気を除去することができる。しかしながら、上記特許文献2のようにワークの上面からのみイオン化エアを吹き付ける形態では、静電気の除去が不十分となる。したがって、カセットに対するワークの搬入/搬出時における有効な静電気除去手段の開発が求められていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、カセットに対するワークの搬入/搬出時においてイオン化エアを十分に吹き付けることができ、その結果、静電気を確実に除去することができる加工装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、板状のワークが収納されたカセットが載置されるカセットステージと、該カセットステージに載置されたカセットにワークを搬入したり、該カセットに収納されたワークを該カセットから搬出したりする搬送手段と、ワークを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワークを加工する加工手段と、を具備する加工装置であって、搬送手段は、ワークの一面における少なくとも一部、および該ワークの他面における少なくとも一部が露出する状態に該ワークを保持する保持部を有しており、該搬送手段には、ワークの一面にイオン化エアを吹き出す第1のブローノズルと、ワークの他面にイオン化エアを吹き出す第2のブローノズルとを有することを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、ワークを収納するカセットに対してワークを搬入/搬出する搬送手段の、ワークを保持する保持部を有する搬送手段に、ワークにイオン化エアを吹き出すブローノズルを有するため、カセットに対するワークの搬入/搬出時において、ワークへ常にイオン化エアを吹き付けることができる。ブローノズルは、ワークの一面および他面のそれぞれにイオン化エアを吹き出す第1のブローノズルおよび第2のブローノズルを備えているため、板状のワークの両面にイオン化エアを十分に行き渡らせることができる。これらの結果、カセットに対するワークの搬入/搬出時に発生する静電気を確実に除去することができる。
【0010】
本発明は、上記ワークが、環状のフレームの開口部に配置され、該フレームに粘着テープを介して保持されており、上記カセットステージに載置されたカセットの、ワーク搬入/搬出口の前方には、ワークの下面を受けて該前方方向に延びるフレームガイドレールが設けられており、上記搬送手段の保持部は、該フレームを挟持する挟持部と、該フレームに突き当て可能な突き当て部とを有し、該挟持部によってフレームを挟持して引っ張ることにより、該フレームをカセットからフレームガイドレール上に搬出し、突き当て部をフレームに突き当てて押すことにより、該フレームをフレームガイドレール上からカセットに搬入する形態を含む。
【0011】
また、上記カセットと上記搬送手段とを、該カセットに収納されたワークの厚さ方向に相対的に移動させる移動手段を有し、第1のブローノズルおよび第2のブローノズルから吹き出されるイオン化エアの吹き出し方向がカセットに向かう方向である形態を含む。この形態では、カセットに収納されているワークに本発明のブローノズルからイオン化エアを吹き付けることができ、除電手段を別途設けることなくカセットに収納されているワークの除電を行うことができる。
【0012】
このようにカセットに収納されているワークにイオン化エアを吹き付けるには、上記搬送手段を上記カセットに近接させるステップと、上記移動手段によって、カセットと搬送手段とを該カセットに収納されたワークの厚さ方向に相対的に移動させて、ワークを第1のブローノズルおよび第2のブローノズルに位置付けるステップと、該ワークに向けて第1のブローノズルおよび第2のブローノズルからイオン化エアを噴出するステップとを備える制御用のイオン化エア供給プログラムが好適に用いられる。
【0013】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ等の上記半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラスあるいはシリコン系の基板、さらには、ミクロンオーダーの精度が要求される各種板状加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークを収納するカセットに対するワークの搬入/搬出時においてイオン化エアを十分に吹き付けることができ、その結果、静電気を確実に除去することができる加工装置を提供することができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は一実施形態の切削加工装置10の全体を示している。この切削加工装置10は、図2に示す半導体ウェーハ(以下、ウェーハと略称)1を、図示せぬ切削ブレードにより自動制御で切削してダイシングするダイシング装置である。当該切削加工装置10の動作の制御は、図1に示す制御手段10Aによりなされる。
【0016】
(1)ウェーハ
図2により先にウェーハ1を説明すると、このウェーハ1はシリコン等の単結晶材料からなる円板状のもので、厚さが例えば100〜700μm程度であり、外周部の一部に、結晶方位を示すマークとしてオリエンテーションフラット1aが形成されている。ウェーハ1の表面には、格子状に形成された分割予定ライン2により多数の矩形状のチップ3が区画されている。各チップ3の表面には、図示せぬICやLSI等の電子回路が形成されている。ウェーハ1は、切削加工装置10により全ての分割予定ライン2が切削加工されて個々のチップ3にダイシングされる。
【0017】
ウェーハ1は単体では取り扱いが困難なため、切削加工装置10に供給される際には、図2に示すように環状のフレーム4の内側の開口部4aに同心状に配設され、粘着テープ5を介してフレーム4に一体に支持された状態とされる。粘着テープ5は片面が粘着面とされたもので、その粘着面にフレーム4とウェーハ1が貼着される。フレーム4は、金属等の板材からなる剛性を有するものであり、このフレーム4を支持することにより、ウェーハ1を損傷することなく安全に搬送することができる。
【0018】
粘着テープ5を介してウェーハ1を支持したフレーム4(以下、ウェーハ付きフレーム6と称する)は、図1に示すウェーハ収納用のカセット9内に、ウェーハ1を上側にした状態で収納される。カセット9の内部には、フレーム4が載置される左右一対のトレー部が上下方向に多数設けられており、多数のウェーハ付きフレーム6が水平、かつ、隙間が空いた状態で上下方向に積層して収納される。
【0019】
(2)切削加工装置
(2−1)全体構成および基本動作
次に、切削加工装置10の全体構成を、基本動作と併せながら説明する。
図1の符号11はキャビネットである。このキャビネット11の内部には、切削ブレードによってウェーハ1をダイシングする切削加工手段(図示略)が配設されている。キャビネット11のY方向一端側(図1で手前側)には、タッチパネル式の操作表示盤12が設けられており、切削加工の自動運転に係わる各種設定などは、この操作表示盤12を利用して行われる。また、操作表示盤12には、内部の運転状況を表示する機能なども付加されている。操作表示盤12の上方の、キャビネット11の天板には、運転状態を表示したり警告を発したりする表示灯13が取り付けられている。
【0020】
キャビネット11の側面11a側には、基台14が併設されている。この基台14上の中央が、円板状のチャックテーブル(保持手段)20に対してウェーハ1を着脱するウェーハ着脱位置に設定されている。チャックテーブル20は、基台14上のウェーハ着脱位置と、キャビネット11内の上記切削加工手段による加工位置との間をX方向に往復移動させられる。ウェーハ着脱位置の、図1においてY方向手前側にはカセットステージ15が配設され、反対側のY方向奥側にはスピンナ式の洗浄装置60が配設されている。
【0021】
多数のウェーハ付きフレーム6が収納された上記カセット9は、カセットステージ15にセットされる。カセットステージ15は、図5に示す移動手段16によって昇降させられる。移動手段16は、カセットステージ15に貫通して螺合する上下方向(図1でのZ方向)に延びるボールねじ16aと、ボールねじ16aを回転させるモータ16bとを備えるもので、モータ16bによりボールねじ16aが回転させられると、その回転方向に応じてカセットステージ15が上昇したり下降したりするようになっている。
【0022】
カセットステージ15にセットされたカセット9内のウェーハ付きフレーム6は、カセットステージ15が上昇または下降して所定の高さに位置付けられた後、カセット9の上記ウェーハ着脱位置側に開口する搬入/搬出口からチャックテーブル20に移されて保持される。チャックテーブル20は一般周知の負圧吸着式のもので、矩形状のベーステーブル21にZ方向(上下方向)を回転軸として回転自在に支持されており、ベーステーブル21内に配設された図示せぬ回転駆動機構によって一方向または両方向に回転させられる。
【0023】
基台14上のウェーハ着脱位置から、キャビネット11内の上記切削加工手段による加工位置にわたっては、X方向に延びる矩形状の凹所17がベーステーブル21の移動スペースとして設けられている。ベーステーブル21は、凹所17の底面に設けられた図示せぬ往復移動手段によってX方向に往復移動させられるようになっており、したがってチャックテーブル20はベーステーブル21とともにX方向に往復移動させられる。ベーステーブル21のX方向の両端部には、蛇腹状のカバー18がそれぞれ取り付けられている。これらカバー18は、凹所17内に切削屑等が落下することを防ぐもので、ベーステーブル21の移動に追従して伸縮するようになっている。
【0024】
チャックテーブル20には図示せぬ空気吸引手段が接続されており、この空気吸引手段が運転されると、チャックテーブル20の上方の空気が吸引されて負圧となり、ウェーハ1がチャックテーブル20の上面に吸着されて保持されるようになっている。チャックテーブル20の外径はウェーハ1とほぼ同等であり、ウェーハ1の全体がチャックテーブル20の上面に粘着テープ5を介して同心状に保持される。また、ウェーハ1の周囲のフレーム4は、チャックテーブル20の外周面に取り付けられた複数のクランプ22で保持される。
【0025】
洗浄装置60は、ウェーハ付きフレーム6が保持されるスピンナテーブル61と、フレーム4を保持するクランプ62を有している。スピンナテーブル61はチャックテーブル20と同様の負圧吸着式のもので、ウェーハ付きフレーム6を上面に吸着して保持する。図1のスピンナテーブル61はウェーハ受け渡し位置に位置付けられており、この位置から基台14内のウェーハ洗浄位置に下降するようになっている。洗浄装置60によると、ウェーハ1を保持したスピンナテーブル61がウェーハ洗浄位置において回転し、回転するウェーハ1に図示せぬ洗浄水ノズルから洗浄水が噴出されてウェーハ1が洗浄される。
【0026】
次に、図1によりウェーハ付きフレーム6を搬送する搬送系とともに、本装置10による切削加工の工程を説明する。
【0027】
上記カセット9内に収納された1枚のウェーハ付きフレーム6は、第1搬送手段30によってY方向奥側に水平に搬出され、カセットステージ15の前方(Y方向奥側)、かつ、ウェーハ着脱位置の上方に配設された一対のY方向に延びるフレームガイドレール34で受けられる。第1搬送手段30は、キャビネット11の側面11aに設けられたリニアガイド31によってY方向に往復移動させられるアーム32の先端に、フレーム4を把持するクランプ(挟持部)33が設けられたものである。一対のフレームガイドレール34は、X方向に同期して互いに近付いたり離れたりするように作動し、両者の中間位置が常にチャックテーブル20の中心に一致するようになされている。
【0028】
ウェーハ付きフレーム6は、第1搬送手段30のクランプ33によって把持され、ウェーハ1はその状態で上下の面の全面が露出する。クランプ33によって把持されたウェーハ付きフレーム6は、アーム32の移動によって2つのフレームガイドレール34に架け渡される状態に載置される。そしてフレームガイドレール34が互いに近付いてフレーム4の外周縁に接触することによりウェーハ付きフレーム6のX方向の位置決めがなされる。なお、Y方向の位置決めはアーム32の移動によってなされる。これによりウェーハ1は、チャックテーブル20と同心状にセンタリング(X・Y方向の位置決め)される。第1搬送手段30は本発明に係るものであり、後で詳述する。
【0029】
次に、フレームガイドレール34に載置されているフレーム4が、上方の第2搬送手段40によって保持され、この後、フレームガイドレール34は離間し、ウェーハ付きフレーム6は第2搬送手段40のみで保持される。第2搬送手段40は、キャビネット11の側面11aに設けられたリニアガイド41に沿ってY方向に往復移動させられる伸縮アーム42の先端に、フレーム4の上面に吸着してフレーム4を保持する複数の負圧吸着式の吸着パッド43が設けられたものである。
【0030】
第2搬送手段40の伸縮アーム42はZ方向に伸縮するように作動し、伸縮アーム42が下方に伸び、吸着パッド43の吸着が解除されることにより、ウェーハ1は、ウェーハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブル20上に載置される。
【0031】
次いで、ウェーハ1へのダイシング工程に移る。それにはまず、ウェーハ付きフレーム6を吸着、保持したチャックテーブル20が、ベーステーブル21が移動することによりキャビネット11内の加工位置に移動させられる。そしてこの加工位置で、上記切削加工手段によりウェーハ1の分割予定ライン2に切削ブレードが切り込んで切削加工が施され、ウェーハ1がダイシングされる。
【0032】
ウェーハ1のダイシングは、例えば、チャックテーブル20をX方向に加工送りしながら切削ブレードを分割予定ライン2に切り込む動作と、切削ブレードがY方向に移動して切削位置を分割予定ライン2に合わせる割り出し送りとが交互に繰り返されるといった動作によって遂行される。また、分割予定ライン2の延びる方向を切削方向に合わせるにはチャックテーブル20を回転させることによりなされる。全ての分割予定ライン2に切削加工が施されてウェーハ1のダイシングが完了したら、チャックテーブル20がウェーハ着脱位置に戻り、次いで、ウェーハ1は第2搬送手段40によって洗浄装置60に搬送され、洗浄工程に移される。
【0033】
まず、チャックテーブル20上のウェーハ1は、第2搬送手段40の伸縮アーム42が下方に伸びて吸着パッド43がフレーム6に吸着し、チャックテーブル20の負圧吸着の運転が解除されることにより、吸着パッド43に保持される。そして、伸縮アーム42が縮小してウェーハ1を上昇させてからY方向奥側に移動し、再び伸縮アーム42が下方に伸びて吸着パッド43の吸着が解除されることにより、ウェーハ付きフレーム6は、スピンナ装置60のウェーハ受け渡しに位置付けられたスピンナテーブル61に同心状に載置される。
【0034】
スピンナテーブル61は予め負圧吸着の運転がなされており、ウェーハ付きフレーム6はスピンナテーブル61に吸着、保持される。続いて、スピンナテーブル61がウェーハ洗浄位置に下降して回転し、さらにクランプ62によってフレーム4が保持される。次いで、回転するウェーハ1に上記洗浄水ノズルから洗浄水が噴出されて、ウェーハ1が洗浄される。洗浄後、ウェーハ1は乾燥空気が吹き付けられるなどの乾燥処理がなされる。
【0035】
ウェーハ1の洗浄・乾燥が終わったら、スピンナテーブル61がウェーハ受け渡し位置に上昇し、スピンナテーブル61上のウェーハ付きフレーム6が、第3搬送手段50によってフレームガイドレール34に戻される。第3搬送手段50は第2搬送手段40と同様の構成であって、キャビネット11の側面11aのリニアガイド41の下側に設けられたリニアガイド51に沿ってY方向に往復移動させられる伸縮アーム52の先端に、フレーム4の上面に吸着して該フレーム4を保持する複数の負圧吸着式の吸着パッド53が設けられたものである。
【0036】
洗浄工程を終えた後は、第3搬送手段50の伸縮アーム52が下方に伸びて吸着パッド53がフレーム4に吸着し、スピンナテーブル61の負圧吸着の運転が解除されることにより、吸着パッド53に保持される。そして、伸縮アーム52が縮小してからY方向手前側に移動し、再び伸縮アーム52が伸びて吸着パッド53の吸着が解除されることにより、ウェーハ付きフレーム6は一対のフレームガイドレール34に載置される。フレームガイドレール34に載置されたウェーハ付きフレーム6は第1搬送手段30によってフレーム4が保持され、アーム32がY方向手前側に移動することによりカセット9内に搬入される。
【0037】
以上のように、ウェーハ1はカセット9から搬出されてダイシング工程と洗浄工程がなされ、カセット9に戻される。続いて、カセット9に収納されているウェーハ1をカセット9から搬出したり、ウェーハ1をカセット9に搬入したりする上記第1搬送手段30について詳述する。
【0038】
(2−2)第1搬送手段の構成
図3(a)に示すように、上記アーム32の先端には、ウェーハ付きフレーム6を保持する保持部35が設けられている。この保持部35は、アーム32の先端に固定された直方体状のブロック36と、ブロック36に取り付けられた上下一対のブローノズル37A,37Bとを備えている。
【0039】
ブロック36は、図1におけるX方向の位置が、上記フレームガイドレール34の間であってカセットステージ15に載置されるカセット9のX方向の中央に対応する位置に配されており、カセット9への対向面36aの下方に、ウェーハ付きフレーム6のフレームを把持する上記クランプ33が配設されている。ブロック36のカセット9への対向面36aは、ウェーハ付きフレーム6をカセット9に搬入する時にフレーム4を押す突き当て部として構成されている。
【0040】
上下のブローノズル37A,37Bはパイプからなるもので、上側ブローノズル(第1のブローノズル)37Aはブロック36の上面への固定部から上方に延びた後、Y方向手前側に向かって屈曲し、下りながら傾斜した形状をなしている。また、下側ブローノズル(第2のブローノズル)37Bはブロック36の下面への固定部から下方に延びた後、Y方向手前側に向かって屈曲し、上がりながら傾斜した形状をなしている。これらブローノズル37A,37Bの先端は、ブロック36の突き当て部36aからカセット9側に突出しない長さとされている。
【0041】
図4に示すように、各ブローノズル37A,37Bは、エア配管71を介してエアポンプ等のエア供給手段72に連通されており、ブローノズル37A,37Bからはエアが噴出するようになっている。エア配管71は、アーム32の内部からキャビネット11の内部を経てエア供給手段72に接続されている。上側ブローノズル37Aから噴出するエアは、クランプ33で把持されたウェーハ付きフレーム6のウェーハ1の上面(表面)全面に吹き付けられるようになっている。また、下側ブローノズル37Bから噴出するエアは、クランプ33で把持されたウェーハ付きフレーム6のウェーハ1の下面(ウェーハ1の裏面、この場合、厳密にはウェーハ1の裏面に貼着されている粘着テープ5の裏面)全面に吹き付けられるようになっている。
【0042】
また、上記ブロック36内には、エア配管71から上下のブローノズル37A,37Bに送られるエアをイオン化するイオン化エア生成手段73が設けられている。イオン化エア生成手段73としては、例えば、針状の電極に電圧をかけてコロナ放電を起こし、該電極周辺を通過するエアをイオン化するものなどが好適に用いられる。このようなイオン化エア生成手段73にあっては、印加する電圧をコントロールすることにより、プラスイオンとマイナスイオンとを適宜に発生させることができる。このイオン化エア生成手段73を作動させながらエア供給手段72からブローノズル37A,37Bにエアを供給すると、クランプ33に把持されたウェーハ付きフレーム6のウェーハ1の上下の面には、ブローノズル37A,37Bからイオン化されたエアが吹き付けられる。
【0043】
(2−3)第1搬送手段の動作ならびに作用効果
上記第1搬送手段30は、前述のように、切削加工前のウェーハ1を備えたウェーハ付きフレーム6をカセット9から搬出したり、切削加工および洗浄処理されたウェーハ1を備えたウェーハ付きフレーム6をカセット9に搬入したりする。
【0044】
ウェーハ付きフレーム6のカセット9からの搬出は、図5(a)〜(b)に示すように、フレームガイドレール34よりも洗浄装置60側(図5で右側)に位置している保持部35がカセット9方向に前進し、ウェーハ付きフレーム6のフレーム4をクランプ33で把持し、次いで、図5(c)に示すように保持部35が後退することにより、ウェーハ付きフレーム6をフレームガイドレール34上に引き出す。そして、クランプ33による把持を解除して、ウェーハ付きフレーム6がフレームガイドレール34上に載置される。保持部35のカセット9に対する前進・後退はアーム32のY方向への移動による。
【0045】
ここで、少なくともクランプ33でウェーハ付きフレーム6を把持してからフレームガイドレール34上にウェーハ付きフレーム6を載置するまでの間においては、イオン化エア生成手段73を作動させながらエア供給手段72よりエアを上下のブローノズル37A,37Bに供給する。これにより上下のブローノズル37A,37Bからウェーハ付きフレーム6のウェーハ1の上下の面にイオン化エアが吹き付けられる。
【0046】
一方、洗浄処理されてフレームガイドレール34上に載置されたウェーハ付きフレーム6のカセット9への搬入は、図6(a)〜(c)に示すように、保持部35のブロック36の突き当て部36aをフレーム4に突き当て、保持部35をカセット9方向に前進させる。これにより、ウェーハ付きフレーム6はブロック36に押されてカセット9に搬入される。この搬入時においても、イオン化エア生成手段73を作動させながらエア供給手段72よりエアを上下のブローノズル37A,37Bに供給し、これらブローノズル37A,37Bからウェーハ1の上下の面にイオン化エアを吹き付けることを行う。
【0047】
本実施形態では、フレームガイドレール34からカセット9にウェーハ1を搬入する動作の間、およびカセット9からウェーハ1を搬出してフレームガイドレール34上にウェーハ1を載置する動作の間においては、常にイオン化エアをウェーハ1に吹き付けることができる。これは、ウェーハ1に近接する保持部35にブローノズル37A,37Bを設けているために可能となっている。そして、イオン化エアをウェーハ1に吹き付けるブローノズル37A,37Bは、それぞれウェーハ1の上面および下面にイオン化エアを吹き付けるため、ウェーハ1の両面にイオン化エアを十分に行き渡らせることができる。その結果、カセット9に対する搬入/搬出時においてウェーハ1に発生する静電気を確実に除去することができる。
【0048】
(2−4)カセット内のウェーハの除電
本実施形態によれば、カセット9に対するウェーハ1の搬入/搬出時の他に、カセット9に収納されている多数のウェーハ1にイオン化エアを吹き付けて静電気を除去することができる。図7はその動作例を示しており、保持部35をカセット9に近接させて上下のブローノズル37A,37Bからイオン化エアを噴出しながら、移動手段16によってカセット9を断続的に昇降させることにより、カセット9に積層状態で収納されている各ウェーハ1の上下の面にイオン化エアを吹き付けることができる。このように保持部35のブローノズル37A,37Bからカセット9内にイオン化エアを吹き付けることにより、除電手段を別途設けることなくカセット9内のウェーハ1の除電を行うことができる。
【0049】
ここで、カセット9内のウェーハ1へのイオン化エアの吹き付けは、上記制御手段10Aが有する図8に示すイオン化エア供給プログラムによって実行される。すなわち、該プログラムによるウェーハ1へのイオン化エアの吹き付けは、保持部35をカセット9方向に前進させて近接させ(ステップS1)、次いで、移動手段16によってカセット9を昇降させてカセット9内のウェーハ1を上下のブローノズル37A,37Bに位置付け(ステップS2)、ウェーハ1に向けてブローノズル37A,37Bからイオン化エアを噴出する(ステップS3)ことによってなされる。
【0050】
また、カセット9内のウェーハ1にイオン化エアを吹き付けるタイミングは任意であり、例えば、ウェーハ1を収納したカセット9をカセットステージ15に載置した直後に未加工のウェーハ1全てに行うか、カセット9から搬出されたウェーハ1が切削加工されていたり洗浄されていたりする最中に行うといったタイミングが考えられる。あるいは、全てのウェーハ1を加工してカセット9に収納した後に行ってもよい。
【0051】
(3)保持部の他の実施形態
図9は、第1搬送手段30における保持部35の他の実施形態を示している。この保持部35は、図2に示したように粘着テープ5を介してフレーム4で支持したウェーハ1ではなく、ウェーハ1単体を、アーム32の先端に形成された水平なトレー38により直接保持するものである。そして、カセット9にはウェーハ1が単体の状態で収納される。また、この場合にはフレームガイドレール34は用いられない。トレー38のカセットステージ15側には、U字状の切欠き38aが形成され、かつ、切欠き38aの両側に受け部38bが形成されている。左右一対の受け部38bの上面には、ウェーハ1の外周部の裏面に負圧の作用で吸着する吸着部39が設けられている。この保持部35によれば、トレー38の受け部38bの上にウェーハ1を受け、吸着部39でウェーハ1の外周部を吸着することによってウェーハ1を保持する。受け部38bで保持されたウェーハ1においては、上面は全面が露出しており、下面はトレー38で覆われる外周部以外の大部分が露出した状態となる。
【0052】
トレー38の、洗浄装置60側の端部には、上記と同様のブロック36および上下のブローノズル37A,37Bが設けられている。ブロック36はトレー38を貫通する状態で固定され、トレー38の上下面に突出しており、ブロック36の上面に上側ブローノズル37Aが取り付けられ、下面に下側ブローノズル37Bが取り付けられている。この保持部35によれば、ウェーハ1がトレー38上で受けられ左右の吸着部39に吸着した状態で、上記イオン化エア生成手段73を作動させながら上記エア供給手段72よりブローノズル37A,37Bにエアが供給されると、ウェーハ1の上下の面にブローノズル37A,37Bからイオン化されたエアが吹き付けられるようになっている。
【0053】
この保持部35によるウェーハ1のカセット9からの搬出は、図10(a)〜(b)に示すように、カセット9から洗浄装置60側(図10で右側)で待機している保持部35がカセット9方向に前進し、トレー38が1枚のウェーハ1の下面に沿ってカセット9内に進入する。そして負圧による吸着作用を発生させた吸着部39にウェーハ1を吸着し、この後、図10(c)に示すように保持部35が後退することにより、ウェーハ1を水平に引き出す。この後、吸着部39による吸着が解除されると同時に、上記第2搬送手段40、あるいは他の搬送手段でトレー38上のウェーハ1が保持され、ウェーハ1はダイシング工程に移される。また、洗浄工程を終えたウェーハ1は、第2搬送手段40、あるいは他の搬送手段でトレー38上に載置され、吸着部39により吸着、保持されてから、図10(a)〜(c)の逆の動作を行うことによりカセット9へ搬入される。
【0054】
この保持部35では、トレー38によってウェーハ1を受けてから搬送している間、および搬出時において吸着部39による吸着を解除してトレー38からウェーハ1が離反するまでの間において、イオン化エア生成手段73を作動させながらエア供給手段72よりエアを上下のブローノズル37A,37Bに供給する。これにより上下のブローノズル37A,37Bからウェーハ1の上下の面にイオン化エアが吹き付けられ、カセット9に対する搬入/搬出時においてウェーハ1に発生する静電気が確実に除去される。また、トレー38からウェーハ1が離反する時には剥離帯電が起こりやすいが、離反時にもイオン化エアを吹き付けていることにより、剥離帯電を確実に除去することができる。
【0055】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明は上記切削加工装置に限られず、レーザ光照射によるダイシング、レーザ光を用いた孔あけ加工、研削加工、研磨加工、エキスパンド分割加工を行う装置など、種々の加工装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る切削加工装置を示す斜視図である。
【図2】同装置で切削加工される半導体ウェーハが粘着テープを介してフレームに支持されている状態を示す斜視図である。
【図3】同装置に適用された一実施形態の保持部を示す(a)斜視図、(b)側面図である。
【図4】保持部のブローノズルとエア供給手段の接続状態を模式的に示す図である。
【図5】一実施形態の第1搬送手段の保持部によりウェーハをカセットから搬出する動作を模式的に示す側面図である。
【図6】一実施形態の第1搬送手段の保持部によりウェーハをカセットに搬入する動作を模式的に示す側面図である。
【図7】一実施形態の第1搬送手段の保持部によりカセット内のウェーハにイオン化エアを吹き付ける動作を模式的に示す側面図である。
【図8】制御手段が有するカセット内へのイオン化エア供給プログラムのフローチャートである。
【図9】第1搬送手段における保持部の他の実施形態を示す(a)斜視図、(b)側面図である。
【図10】他の実施形態の第1搬送手段の保持部によりウェーハをカセットから搬出する動作を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…半導体ウェーハ(ワーク)、4…フレーム、4a…フレームの開口部、5…粘着テープ、9…カセット、10…切削加工装置、10A…制御手段、 15…カセットステージ、16…移動手段、20…チャックテーブル(保持手段)、30…第1搬送手段、33…クランプ(挟持部)、34…フレームガイドレール、35…保持部、36a…突き当て部、37A…上側ブローノズル(第1のブローノズル)、37B…下側ブローノズル(第2のブローノズル)、72…エア供給手段、73…イオン化エア生成手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークが収納されたカセットが載置されるカセットステージと、
該カセットステージに載置された前記カセットにワークを搬入したり、該カセットに収納されたワークを該カセットから搬出したりする搬送手段と、
ワークを保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワークを加工する加工手段と、を具備する加工装置であって、
前記搬送手段は、ワークの一面における少なくとも一部、および該ワークの他面における少なくとも一部が露出する状態に該ワークを保持する保持部を有しており、該搬送手段には、前記一面にイオン化エアを吹き出す第1のブローノズルと、前記他面にイオン化エアを吹き出す第2のブローノズルとを有することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記ワークは、環状のフレームの開口部に配置され、該フレームに粘着テープを介して保持されており、
前記カセットステージに載置された前記カセットの、ワーク搬入/搬出口の前方には、ワークの下面を受けて該前方方向に延びるフレームガイドレールが設けられており、
前記搬送手段の前記保持部は、該フレームを挟持する挟持部と、該フレームに突き当て可能な突き当て部とを有し、該挟持部によって前記フレームを挟持して引っ張ることにより、該フレームを前記カセットから前記フレームガイドレール上に搬出し、前記突き当て部を前記フレームに突き当てて押すことにより、該フレームを前記フレームガイドレール上から前記カセットに搬入することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記カセットと前記搬送手段とを、該カセットに収納されたワークの厚さ方向に相対的に移動させる移動手段を有し、
前記第1のブローノズルおよび前記第2のブローノズルから吹き出される前記イオン化エアの吹き出し方向がカセットに向かう方向であることを特徴とする請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の加工装置に適用される制御用のイオン化エア供給プログラムであって、
前記搬送手段を前記カセットに近接させるステップと、
前記移動手段によって、前記カセットと前記搬送手段とを該カセットに収納されたワークの厚さ方向に相対的に移動させて、ワークを前記第1のブローノズルおよび前記第2のブローノズルに位置付けるステップと、
該ワークに向けて、前記第1のブローノズルおよび前記第2のブローノズルからイオン化エアを噴出するステップと、を備えることを特徴とするイオン化エア供給プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−129776(P2010−129776A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302884(P2008−302884)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】