説明

加熱調理器

【課題】ヒータを加熱庫から容易に着脱および交換できるように構成して、加熱庫を清掃しやすくするとともに、ヒータが加熱庫の内部に適正に装着されていないことを検知してユーザに知らせることにより、安全性および信頼性の高い加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱庫10の内部に着脱自在に装着された電気的に閉じた導電体からなるヒータ20a、20bと、加熱庫10の外部に配置されたコイル30a,30b、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、駆動周波数を有する高周波電流を共振回路部に供給するインバータ回路と、ヒータと鎖交するように配置された磁性体と、共振回路部の両端に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧検出部と、共振回路部に流れる駆動電流を検出する駆動電流検出部と、検出された駆動電圧および駆動電流に基づいて、ヒータの負荷状態を判定する負荷状態判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は加熱調理器に関し、とりわけグリル、ロースタ、オーブンなどの加熱庫において誘導電流式ヒータを熱源に用いた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるIHクッキングヒータ(Induction Heating:電磁誘導加熱式調理器)の多くは、焼き魚などを調理するための加熱庫を有する。加熱庫は、一般にはグリル、ロースタあるいはオーブンとも呼ばれる。焼き魚(特に秋刀魚の塩焼きなど)は、高温の加熱源からの輻射熱により表面をこんがりと焼き、高温の空気により魚の内部まで十分に加熱して調理されたものが美味しいとされている。
【0003】
また、特に秋刀魚の塩焼きなどの調理中に、魚から多くの脂(可燃性油分)が出るが、これを受ける脂受け皿が必要であり、さらに脂受け皿で受けた魚の脂が発火しないように、脂受け皿および脂を発火温度より低い温度に維持しなければならない。なお、これは焼き魚の調理に限らず、肉類を調理する場合も同様である。このような加熱庫内での調理はグリル調理ともいう。
【0004】
IHクッキングヒータの加熱庫は、一般に、加熱庫内の上方と下方にシーズヒータやラジエントヒータなどの電気ヒータ(抵抗体に電流が流れたときのジュール熱により発熱するので「抵抗式ヒータ」ともいう。)が設けられ、電気ヒータの給電端子は加熱庫の外部に設けられた電源と電気的に接続され、電源から電気ヒータに電力が供給されて電気ヒータは加熱される。そして電気ヒータに供給された電力は、電気ヒータで熱エネルギに変換され、その熱エネルギにより加熱庫の内部の食品が直接的に、高温に加熱された空気を介して食品が加熱調理される。このような構成の加熱調理器は、IHクッキングヒータに限らず、オーブントースタやオーブンレンジなども同様の構成をしていることが多い。
このような電気ヒータを用いた加熱調理器の構成は簡便ではあるが、電気ヒータが加熱庫内に固定されているため、調理後の清掃を困難にし、清掃性に改善の余地があった。すなわちIHクッキングヒータに限らずオーブンレンジなどの他の任意の形態の加熱調理器においても、清掃性の改善に対する要求は高い。これは食品を扱う調理器にとっては本質的な要求である。
そこで食品の加熱源となる金属を非接触式に誘導加熱するオーブンあるいはオーブンレンジがこれまでにも提案されており、加熱源が加熱庫に対して着脱可能なものも知られている。
【0005】
たとえば特許文献1において、誘導加熱技術を利用した従来のオーブンは、磁性体で構成される庫の上面および下面に対向して配置された加熱コイルを有し、加熱コイルに高周波電流を流すことによって加熱庫が加熱する。庫は着脱可能となっているため、これにより清掃性を向上させることができる。
【0006】
また特許文献2によれば、誘導加熱技術を利用した別の従来式オーブンレンジが提案されている。このオーブンレンジにおいては、耐熱ガラス等の絶縁性耐熱板からなる仕切板を用いて、加熱室の内部と機械的および電気的に遮断された誘導加熱コイルが、加熱室の底部に設けられ、仕切板の上には誘導加熱コイルに対向して金属製の発熱体が配置されている。発熱体は閉ループを形成する帯状の金属体として構成されているので、誘導電流を効率的に発生させるとともに、金属体の放熱面積を自由に設定することができる。なお、特許文献2に記載の発熱体も同様に、加熱室内において着脱自在に配置されている。
【0007】
さらに特許文献3に記載された誘導加熱技術を利用したさらに別の従来式のオーブンレンジは、取り出し自在に構成されたオーブン皿の外周部分を左右2ヶ所から誘導加熱するための誘導加熱手段が設けられている。オーブン皿は、少なくともその被加熱部分にホーロー(琺瑯)被膜を施した鉄板などの磁性体を有する。また誘導加熱手段は、裁縫ミシン等で用いられるボビンのように巻かれたコイルと、コイルの発生する磁束をオーブン皿に効率的に供給するコアとから構成されている。コアは、たとえばU字型であり、磁束がコアおよびオーブン皿の外周部分により閉磁路を形成し、高周波磁束が他の部分に漏れないように構成されている。オーブン皿は、その下面側が磁性ステンレス等の磁性材料で構成され、その上面側がアルミまたは銅等の高熱伝導材料で構成されている。コイルおよびコアで発生する磁束により磁性材料が誘導加熱され、この発生熱は、高熱伝導材料からなるオーブン皿全体に伝達される。
【0008】
さらに特許文献4に記載された誘導加熱と高周波加熱を併用した加熱調理器は、加熱庫(調理庫)の底面部に誘導加熱コイルが埋め込まれ、その上に薄いマイカシートなどからなる絶縁板、グラスウールからなる断熱材、ステンレス製(SUS304)のパンチング板、ステンレス製(SUS304)主底板、および低損失の誘電体材料からなる載置台が順次重ねて構成されており、インバータ回路により誘導加熱コイルに高周波電流を流して載置台に置かれた容器を誘導加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−282221号公報
【特許文献2】特開平8−138864号公報
【特許文献3】特開平6−18044号公報
【特許文献4】特開2006−207874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来から知られている誘導加熱技術を用いた加熱庫を、IHクッキングヒータなどのグリル調理を行う加熱庫に使用する場合、以下の問題点があった。
特許文献1に記載された従来の加熱調理器では、加熱庫の内側にコ字状の磁性体を挿入し、上面と下面にコイルを設けて、コ字状の磁性体の上面と下面を誘導加熱するので、魚などの食材から出る脂が発火しないようにするためには、下面を発火温度(約250℃)以下にする必要があり、下面の磁性体を十分に高温にすることができず、輻射を利用したグリル調理に適さないという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2に記載された従来の加熱調理器では、誘導加熱によって加熱される帯状金属が閉ループを構成するため、効率良く誘導加熱され、また高温に加熱することができるが、グリル調理を行うために帯状金属からの輻射熱を利用しようとすると、帯状金属から放射される赤外線が食材に照射されるようにするために、脂受け用の皿を帯状金属とコイルの間に設ける必要がある。この場合、帯状金属には磁束が到達して誘導加熱されるが、脂受け皿は誘導加熱されないようにする必要がある。そのためには脂受け皿をセラミックスなどの絶縁物で構成する必要があった。セラミックス皿は強度の観点から厚くする必要があり、また脂受け皿上の脂が発火しないようにするために脂受け皿の温度を脂の発火点以下に抑える必要があり、帯状金属と脂受け皿の距離を大きくしなければならない。そのためコイルと帯状金属の距離が大きくなり帯状金属を効率良く誘導加熱することができないという問題点があった。
【0012】
また特許文献2に記載の加熱調理器において、金属製の発熱体は着脱自在であり、庫内の清掃時にユーザにより取り外すことができるが、ユーザによる着脱に際して、発熱体が適正に装着されない場合や、発熱体以外の異物が仕切板と発熱体との間または発熱体と載置台の間に介在する場合、発熱体が損傷し、劣化した場合には、発熱体による所期の加熱効果を実現することができず、加熱調理器の安全性および信頼性が損なわれるという問題点があった。
【0013】
また、特許文献3に記載された従来の加熱調理器では、オーブン皿を加熱してフライパン調理を行うため、グリル調理には適さないが、オーブン皿を高温に加熱してそこからの輻射熱を利用してグリル調理を行おうと試みることも可能である。しかし、特許文献3に記載された従来の加熱調理器ではオーブン皿の側面に設けたコイルによって、オーブン皿の側壁面が加熱されるに過ぎず、オーブン皿の中央部は高熱伝導材料であるアルミや銅によって側面からの伝熱により加熱されるため、十分に高温にするためには高熱伝導材料の厚みを極めて厚くしなければならず、その結果、加熱庫内の有効体積が減少し、またオーブン皿の熱容量が大きくなるため温度上昇に時間がかかるといった問題点があった。
【0014】
また、特許文献2と同様、オーブン皿は、ユーザにより着脱自在であるが、調理時や庫内の清掃時において装着する際、コイルに対して適正な位置に装着されない場合や、コイルとの間に異物が介在した状態で装着された場合、オーブン皿が変形し、損傷し、劣化した場合には、オーブン皿からの予定した発熱を実現することができず、加熱調理器の安全性および信頼性が損なわれるという問題点があった。
【0015】
また、特許文献4に記載された加熱調理器は、加熱庫内の載置台上に載置された容器を誘導加熱するものであり、秋刀魚の塩焼きなどのグリル調理には適さず、加熱庫内の庫内温度を制御するオーブン調理にも適さない。さらに被加熱容器の形状および材質、ならびに被加熱容器の載置位置により、誘導加熱コイルに給電インバータ回路のインピーダンス(被加熱容器の見かけ上のインピーダンスを含む)が変化するため、被加熱容器による加熱を調理方法または調理食材に応じて自在に制御することは困難であった。
【0016】
そこで本願発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、加熱庫内に装着された電気的に閉じた導電体からなるヒータに、加熱庫の外部に配置されたコイルを用いて誘導加熱することにより、ヒータを加熱庫から容易に着脱および交換できるように構成して、加熱庫を清掃しやすくし、調理時に食材から生じる脂の受け皿を低温に維持して脂の発火を防止しつつ、加熱庫内の全領域に渡って食材を十分に高温加熱できる加熱調理器を実現するものである。とりわけユーザによるヒータの装着に際して、ヒータが加熱庫内に適正に装着されていない場合(未装着および不完全装着を含む)、ヒータが異物を介在した状態で装着されている場合、またはヒータが劣化している場合等には、これを検知してユーザに知らせることにより、安全性および信頼性の高い加熱調理器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明に係る加熱調理器は、箱状の加熱庫と、前記加熱庫の内部に装着された電気的に閉じた導電体からなるヒータと、前記加熱庫の外部に配置されたコイル、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、駆動周波数を有する高周波電流を共振回路部に供給するインバータ回路と、前記コイルから発生する高周波磁束が前記ヒータと鎖交するように配置された磁性体と、前記共振回路部の両端に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧検出部と、前記共振回路部に流れる駆動電流を検出する駆動電流検出部と、検出された駆動電圧および駆動電流に基づいて、前記コイルと電磁気的に結合する前記ヒータの負荷状態を判定する負荷状態判定部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、ヒータを加熱庫から容易に着脱および交換できるように構成して、加熱庫を清掃しやすくするとともに、ヒータが加熱庫内に適正に装着されていない場合(未装着および不完全装着を含む)やヒータの劣化状態を判別し、これを検知してユーザに知らせることにより、安全性および信頼性の高い加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係る実施の形態1の加熱調理器を示す断面図である。
【図2】図1の主要な構成部品を概略的に示す斜視図である。
【図3】実施の形態1による加熱調理器の断熱部材を示す斜視図である。
【図4】図2のコイルに流れるコイル電流と、ヒータに流れる誘導電流の流れる方向を示す概略斜視図である。
【図5】実施の形態1による誘導加熱手段の部分的な拡大垂直断面である。
【図6】実施の形態1による加熱調理器のヒータを示す平面図であって、(a)および(b)はそれぞれ、ヒータを構造的および機能的に示すものである。
【図7】図6(a)に示す各温度測定位置において、実験で測定されたヒータの温度上昇をプロットしたグラフである。
【図8】実施の形態1の変形例による加熱調理器の主要部を示す斜視図である。
【図9】実施の形態1に係る電源回路の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図10】コイルの駆動周波数の1周期における駆動電圧および駆動電流の波形図である。
【図11】実施の形態2に係る電源回路の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図12】実施の形態3に係る電源回路の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図13】実施の形態4に係る電源回路の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図14】実施の形態5に係る電源回路の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図15】実施の形態6に係る電源回路の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図16】実施の形態7に係る加熱調理器を内蔵した誘導加熱調理器の全体構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本願発明に係る加熱調理器の実施の形態を説明する。各実施の形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(たとえば、「上」、「下」、「右」、および「左」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものでない。また以下の添付図面において、同様の構成部品については同様の符号を用いて参照する。
【0021】
実施の形態1.
図1は、本願発明に係る実施の形態1の加熱調理器を示す断面図である。図2は、加熱調理器の主要な構成部品を概略的に示す斜視図である。なお、本願発明の各実施の形態に示す加熱調理器1は、IHクッキングヒータ等に好適に用いられ、とりわけグリル調理を行う加熱庫として有用であるが、オーブンレンジやオーブントースタなどの他の形態を有する加熱調理器として採用することができ、グリル調理の他、オーブン調理などのさまざまな加熱調理に利用することができる。
【0022】
本願発明に係る実施の形態1の加熱調理器1は、図1に示すように加熱庫(箱状筐体)10を有する。加熱庫10は、上壁12a、下壁12b、垂直方向に延びる左右の側壁14a,14b、および前壁および後壁(図示せず)を有する。図1および図2に示すように加熱調理器1は、加熱庫10の内部の上方および下方において電気的な閉ループ(閉回路)を構成する金属体からなる着脱可能なヒータ20a,20bと、左右の側壁14a,14bに沿って配設されたコイル30a,30bと、各コイル30a,30bに隣接して配置された磁性材料からなるフェライトコアなどの磁性体32とを有する。
【0023】
コイル30a,30bは、たとえば直径が0.3mmの銅線を樹脂などで被覆したものを19本撚り線にしたいわゆるリッツ線を、側壁14a,14bに平行な平面上にほぼ長方形状(各角部が湾曲した長方形状またはほぼ楕円形状も含む)に、たとえば複数回(25回)捲回して形成されたものである。これらの複数のリッツ線は、長方形の各辺に沿って捲回され、同一方向の電流(磁束)を形成する。一方、磁性体32は、図2において電流が同一方向に流れるように配置された複数のリッツ線をコ字状(C字状や略O字状であってもよい)に包囲するように配設される。同様に図示のように、2つの磁性体32が、上方および下方に配置されたヒータ20a,20bに対して平行に対向配置されている。
【0024】
磁性体32は、たとえば一般的なIHクッキングヒータの加熱コイルの周囲に広く用いられるフェライトコアと同等の磁性材料を用いて形成することができる。またコ字状の磁性体32の内側には、コ字状の断熱部材34が設けられている。すなわちコイル30a,30bは、ヒータ20a,20bに対向する部分において、図1および図2に示すように磁性体32と断熱部材34によって挟まれた構造を有する。
なお断熱部材34は、図3に示すように、ガラスウールやセラミックウールなどの断熱材34aとセラミックス34bの二層構造を有し、加熱庫10の側壁14a,14bの一部についてはセラミックス34bで構成してもよいし、鉄またはステンレス等の金属で構成してもよい。
【0025】
このように構成された断熱部材34により、コイル30a,30bおよび磁性体32は、加熱庫10の内部の高温の空気から断熱される。なお断熱材34aは、上記の他、空気層であってもよいし、空気流であってもよい。このように構成されたコイル30a,30b、磁性体32、断熱部材34が図1に示すように加熱庫10の側壁14a,14bの一部となるように配置される。一方、加熱庫10の残りの壁面(上壁12aおよび下壁12bなどを含む)は、鉄またはステンレス等の金属、あるいはセラミックスまたはガラスなどの絶縁材料など耐熱性材料を用いて構成される。さらに図示しない加熱庫10の前壁および後壁により閉じられる。すなわち加熱庫10は、耐熱性材料からなる上壁12a、下壁12b、側壁14a,14b、前壁および後壁によって閉じられた筐体を構成する。なお、加熱庫10の前壁は、食品等の出し入れなどのために開閉自在の前扉(ここでは図示せず)を有する。
【0026】
またヒータ20a,20bは、図示のように、断熱部材34の水平方向に延びる溝部(開口部)36内に挿入されて支持される。このときヒータ20a,20bは、断熱部材34の溝部36上に載置されているに過ぎず、開閉自在な前壁から着脱可能である。同様に、加熱庫10の内部には食材を載せるための焼き網37、および食材から出る脂を受けるための脂受け皿38が前壁を介して配置される。焼き網37および脂受け皿38の構造および材質は、従来式のIHクッキングヒータの加熱庫に用いられる構造および材質と同等のものを使用することができる。同様に、加熱庫10の側壁14a,14b等の内面には、防汚効果および遠赤外線効果を目的とした各種コーティングを施しておくことが好ましい。
【0027】
次に動作について説明する。コイル30a,30bに図示しない電源回路から20〜100kHzの高周波電流が供給されると、コイル30a,30bの周囲に高周波磁束が発生する。磁性体32で包囲されたコイル30a,30bから生じた高周波磁束は、コ字状の磁性体32と、ヒータ20a,20bおよび溝部(開口部)36とを通る磁気回路を形成するとともに、ヒータ20a,20bに鎖交する。このとき、電気的な閉じた(閉ループを構成する)ヒータ20a,20bに、鎖交した高周波磁束による誘導電流が発生し、誘導電流によるジュール熱がヒータ20a,20b全体に均一に発生する。このようにヒータ20a,20bの全体が均一に加熱されるため、加熱庫10に収容された食品をむらなく加熱することができる。電源回路からコイル30a,30bに十分な電力(たとえば合わせて2kW)を供給すると、ヒータ20a,20bは800℃以上に加熱され、放射赤外線により食品を直接的に加熱することができる。
またヒータ20a,20bは、その周囲の空気を加熱し、対流により加熱庫10の内部の空気が一様に高温になるので、高温空気により食品を間接的に加熱することができる。
このように加熱庫10に収容された食品は、ヒータ20a,20bからの輻射熱および高温の空気により加熱され、グリル調理される。
【0028】
加熱により食材から生じる脂は、下側ヒータ20bより下方に設置された脂受け皿38によって受容される。本願発明の加熱調理器1は、下側ヒータ20bに誘導電流を流してジュール熱により加熱するものであり、前掲特許文献1および2に記載された従来式の加熱調理器のように誘導加熱を加熱原理とするものではない。したがって、脂受け皿9を金属材料で形成しても下側ヒータ20bにより直接的に加熱されることはなく、下側ヒータ20bと脂受け皿38の間に実質的な距離を設けることにより、脂受け皿38の温度を脂の発火温度より低く抑えることができる。
【0029】
なお、本願発明で採用する誘導電流で生じるジュール熱による加熱は、一般のIHクッキングヒータのトッププレート上に載置された鍋に対する誘導加熱とは原理的に異なり、「誘導加熱」と呼べないかも知れないが、電磁誘導によって流れる「誘導電流」で生じるジュール熱による加熱であるため、本願では敢えて誘導加熱として扱うこととする。そして電磁誘導により、ヒータ20a,20bに誘導電流を流すためのコイル30a,30bおよび磁性体32を、ここでは「誘導加熱手段」と呼ぶこととする。なお、上述のヒータ20a,20bの入力電力および温度は一例であり、ヒータ20a,20bの温度は入力電力およびヒータの放熱面積(表面積)等をパラメータとして決まるものである。
【0030】
図4はコイル30a,30bに流れるコイル電流の方向と、コイル電流によって発生する磁束の方向と、電磁誘導によってヒータ20a,20bに流れる誘導電流の方向を示したものである。図を解りやすくするために、コイル30a,30bおよびヒータ20a,20b以外の構成要素を省略して示す。図4において、コイル電流および誘導電流は、コイル30a,30bおよびヒータ20a,20bに上書きして図示する。コイル電流および誘導電流の流れる方向は駆動周波数で変化するが、図4ではある瞬間のものを示す。コイル30a,30bに図4に示す方向にコイル電流が流れると、コイル30a,30bの周囲に磁束が発生する。この磁束は電気的な閉ループを構成するヒータ20a,20bと鎖交するのでヒータ20a,20bには電磁誘導により起電力が発生し、誘導電流がヒータ20a,20bそれぞれの閉ループを流れる。すなわち、これは変圧器と同じ原理であり、コイル30a,30bが変圧器の一次側コイルであり、ヒータ20a,20bが変圧器の二次側コイルであると考えることもできる。以上のような原理によりヒータ20a,20bは加熱されるので、図1および図2のように、並列あるいは直列に接続された2つのコイル30a,30bを1つの電源回路50(後述)で駆動する場合、各コイル30a,30bは、コイル電流が図4に示すような方向に流れるように接続する必要がある。一方、個別の電源回路50を用いて各コイル30a,30bを独立して駆動する場合、図4のようにコイル電流の位相(方向)を設定すると最大のヒータ加熱を実現することができ、位相(方向)を互いにずらすことにより任意の(調節可能な)ヒータ加熱を実現することができる。
【0031】
図5は、コイル30と磁性体32(断熱部材34およびヒータ20を含む)からなる誘導加熱手段の部分的な拡大垂直断面であって、図1に示す加熱調理器1の4つのうち1つの誘導加熱手段を示すものである。図5のヒータ20は、磁束と鎖交する部分のみ図示されている。
コイル30に高周波電流を流すと、コイル30の周囲に高周波磁束が発生する。高周波磁束はコ字状の磁性体32とコ字の開口部からなる磁気回路を通る。ここで「コ字状の磁性体32」とは、コイル30に沿って延びる基部40と、基部40の両端から垂直に延びる一対の側部42a,42bとを有し、側部42a,42bの間には開口部36を形成するものをいう。
【0032】
コ字状の磁性体32の開口部36を通る磁束は、図5に示すように、ヒータ20を通過しない磁束φ1とヒータ20を通過する磁束φ2とを含む。磁束φ1は、電気的に閉じたヒータ20に誘導電流を流すために極めて有効な磁束である。一方、磁束φ2は、ヒータ20に誘導電流を流すことにも寄与するが、ヒータ20の一部に渦電流を発生させるので、ヒータ20は、誘導電流に加えて、渦電流によるジュール熱により加熱される。したがって、ヒータ20が閉ループの延びる方向に沿って均一な材質および形状を有する場合には、ヒータ20の温度はコイル30a,30bに隣接する磁束と鎖交する部分においてより高くなり、それ以外の部分においてより低くなる。コイル30a,30bに隣接するヒータ20の部分も加熱調理器1の加熱庫10の内部の空気を温めるのに役立つのでエネルギ損失にはならないが、コイル30を保護するために断熱部材34の断熱層を厚くするか、あるいはコイル30(および磁性体32)とヒータ20との間に空気層を設けて風を流すなどにより断熱性を高める必要がある。
【0033】
図6(a)および図6(b)は実施の形態1の加熱調理器1に好適なヒータ20を示す平面図である。図6(a)はヒータ20を構造的に示し、図6(b)は機能的に示す。ヒータ20は、導電体を1ターンの閉回路状(ループ状)に形成したものである。なお、本願発明の加熱調理器1に使用されるヒータ20は、図6(a)および図6(b)に示すものに限定されることはなく、電気的な閉ループを構成するヒータであれば任意の形状、構造、材質を有するものであってもよい。図6(a)に示すように、好適なヒータ20は構造的に2種類の部分に分かれる。すなわちヒータ20は、その両端部(すなわちコイル30a,30bに隣接する部分)に電気抵抗の小さな低抵抗部22を有し、ヒータ20の中央部は電気抵抗の大きな高抵抗部26を有する。ここでいう電気抵抗の高低は、低抵抗部22と高抵抗部26の単位長さあたりの電気抵抗の相対的な高低である。
たとえば、同一金属で作製する場合は、低抵抗部22を中身の詰まった棒(中実棒)で作製し、高抵抗部26をパイプ(中空棒)で作製し、これらを溶接などの方法で接続してもよい。また、異種の金属で作製する場合は、低抵抗部22を銅等の電気抵抗のより低い金属で作製し、高抵抗部26をステンレスなどの電気抵抗のより高い金属で作製してもよい。
また構造および材質の両方が互いに異なる高抵抗部26と低抵抗部22を作製してもよい。具体的には、低抵抗部22を外径6mmの銅あるいは銅合金からなる中実棒で作製し、高抵抗部26を外径6mm、半径方向の厚み0.3〜1mmのステンレスパイプ(中空棒)で作製し、これらを溶接あるいはロウ付けにより接続してヒータ20を作製してもよい。
なお、ここで「電気抵抗」とは、ヒータ20に流れる誘導電流の所定周波数に対するヒータの電気抵抗であるので、表皮効果の影響により、中実棒より中空棒で作製した方がより小さい電気抵抗を実現する場合には、パイプ(中空棒)を用いて低抵抗部22を形成してもよい。
【0034】
図6に示すようなヒータ20の外形形状、たとえば曲げ回数は任意であるが、シーズヒータ等とは異なり、ヒータ20内部に電熱線などの構造部品を含まないため、折り曲げ加工等による破損の虞が極めて少なく、任意の所望形状を有するヒータ20を安価で作製することができる。また、このように作製したヒータ20は、防汚効果あるいは保護効果などを目的として、その表面に各種コーティングを行ってもよい。
【0035】
次に、ヒータ20を機能的な側面から説明する。図6(a)の低抵抗部22は、図6(b)に示すように給電部24と冷却部25とからなる。また図6(a)の高抵抗部26はヒータ部26ともいう。
【0036】
次に動作について説明する。ヒータ20は、上述のように、ともに中実銅棒の給電部24および冷却部25からなる低抵抗部22と、ステンレスパイプからなる高抵抗部26(ヒータ部)とを有するものとする。ヒータ20は、図1および図2に示すように、その給電部24を断熱部材34の溝部(開口部)36内に挿入することにより加熱庫10に装着される。
電源回路からコイル30に高周波電流が供給されると、コイル30の周囲に高周波磁束が形成され、給電部24が磁束と鎖交してヒータ20内に誘導電流を形成する。このとき給電部24は、誘導電流および渦電流により生じるジュール熱で加熱されるが、電気抵抗が小さいため誘導電流により生じるジュール熱は比較的に小さい。また渦電流による加熱も電気抵抗が小さい材質であれば小さく、非磁性体である銅であれば渦電流による加熱を十分に小さくすることができる。
【0037】
なお給電部24は、断熱部材34の溝部36に載置(断熱部材34に包囲)されているため、冷却部25に比べ放熱性が劣る。また冷却部25は、給電部24と同じ構造および材質を有するが、周囲が空気で包囲されているため放熱性が良好である。また冷却部25は、電気抵抗が小さくなるように構成されているので、誘導電流のジュール熱による発熱も小さく、比較的に低い温度に維持される。
【0038】
一方、ヒータ部26は全体的に空気に露出しているので、周辺空気による放熱性は冷却部25と同じであるが、その電気抵抗が相対的に大きいので、誘導電流のジュール熱による発熱は冷却部25より大きくなる。したがって食材は、ヒータ部26からの輻射熱によって効率的にグリル調理される。また、高温となるヒータ部26に比して、冷却部25は、自らの発熱も小さく、ヒータ部26から伝わる熱を周辺空気に効率的に放熱するので、ヒータ部26から冷却部25を介して給電部24に伝わる熱を極力抑え、給電部24が高温になることを防ぐことができる。
【0039】
図7は、図2のように構成した加熱庫10において、電源回路に1kWの電力を入力したときのヒータ20の図6(a)に示す各温度測定位置での温度変化を示したものである。すなわちヒータ20の温度測定は、上側のヒータ20aについては図6(a)のA,B,C,Dの測定点における温度を測定し、下側のヒータ20bについては図6(a)のA,B,Cの測定点における温度を測定した。図7で「給電部」と示したものは測定点A,Bの上昇温度であり、「ヒータ部」と示したものは測定点C,Dの上昇温度である。上側および下側ヒータ20a,20bの給電部24およびヒータ部26の各測定点における温度はほぼ同じであるので、図7のグラフにおいては上側ヒータ20aまたは下側ヒータ20bを区別することなくプロットした。
【0040】
図7から明らかなように、図2に示す加熱調理器1のヒータ20により加熱調理することができる。ヒータ部26の温度が各測定点C,Dとも同じ温度であることから、ヒータ部26がヒータ20にループ状に流れる誘導電流によるジュール熱で発熱していることが分かる。ヒータ部26の温度上昇は急峻である。これはヒータ部26がステンレスパイプで構成されているため熱容量が小さいことも一因である。加熱開始後、たとえば加熱開始2分後の時点において、ヒータ部26の温度は給電部24の温度より実質的に高く、ヒータ部26は、明らかに自らの発熱によるものであり、給電部24からの伝熱によるものではない。
【0041】
このことからも前掲特許文献3と本願発明は、同様に磁性体のコアを使用し、側面から高周波磁束を供給している点で共通するが、明らかに異なる技術に基づくものであることが理解できる。すなわち特許文献3ではヒータとなるオーブン皿の壁面を積極的に磁気回路の一部として誘導加熱しているのに対し、本願発明はヒータ20の給電部24を積極的には磁気回路の一部とはせず、ヒータ20の閉ループを磁束すなわち磁気回路と鎖交するようにしている。
【0042】
なお、給電部24はその温度上昇が緩やかではあるが、最終的にはヒータ部26の温度より高くなっている。なお、図7の実験結果で示したヒータ部26の温度はグリル調理を行うには低いが、加熱庫10の上壁12aおよび前壁も塞いで加熱庫10内の空気温度が高くなるようにして、入力電力をさらに大きくすればグリル調理に適した温度にすることができることは言うまでもない。
【0043】
なお、図1および図2に示す加熱調理器1の加熱庫10において、その側壁14a,14bが鉄板などの金属で構成されているとき、コイル30a,30bの磁性体32が設けられていない部分で発生する磁束により、側壁14a,14bに渦電流が形成され、側壁自体が誘導加熱されるが、こうして生じた熱により、加熱庫10の内部の空気温度を効率良く上昇させることができる。
【0044】
以上のように、本願発明の加熱調理器1によれば、加熱庫10の側壁14a,14bに誘導加熱手段を設け、電気的な閉ループを形成するヒータ20a,20bを加熱庫10の内部に着脱可能に配置し、側壁14a,14bから高周波磁束を供給してヒータ20a,20bに誘導電流を流し、誘導電流によりヒータ20a,20bの全体を加熱するようにしたので、加熱庫10の清掃性が向上するとともに、下側ヒータ20bの下方に金属製の脂受け皿38を、下側ヒータ20bから十分離して配置することができる。
【0045】
なお、必ずしも2つの上側および下側のヒータ20a,20bを加熱庫10内に配設する必要はなく、用途に応じて上側ヒータ20aまたは下側ヒータ20bのいずれか一方だけを配置してもよい。その場合、本実施の形態に係る平面状に捲回されたコイル30であっても、上側ヒータ20aまたは下側ヒータ20bに隣接するように単一の誘導加熱手段を設ければよい。また図1および図2に示す加熱調理器1は、加熱庫10の左右の側壁14a,14bに沿って一対のコイル30a,30bを有するものとして説明したが、左右の側壁14a,14bのいずれか一方または後壁に沿って単一のコイル30を設けてもよい。択一的には、図8に示すように、加熱調理器1は、磁性体32の基部40の周りにリッツ線を螺旋状に捲回した形成された1つまたはそれ以上のコイルを有するものであってもよい。
【0046】
次に、図9を参照して、コイル30に高周波電流を供給するための電源回路50について以下説明する。図9は、実施の形態1に係る電源回路50の回路構成を示す回路ブロック図である。この電源回路50は、概略、商用電源52から供給される交流電圧を直流電圧に整流するダイオードブリッジなどで構成される整流回路54と、整流回路54からの直流電圧を高周波電流に変換して、コイル30に供給するインバータ回路56と、インバータ回路56に制御信号を出力して、スイッチング制御する制御回路58とを有する。図9の回路ブロック図において、コイル30は、インダクタンスLと負荷抵抗Rの等価回路として図示され、共振コンデンサ60に直列に接続されている。すなわちコイル30および共振コンデンサ60は、協働して共振回路部70を構成するものであり、共振回路部70を構成するものであれば、コイル30および共振コンデンサ60を並列に接続してもよい。なおインバータ回路56として、IHクッキングヒータなど一般的な誘導加熱装置で広く用いられているハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路などを用いてもよいし、共振コンデンサとコイルを並列に接続した上で一石共振回路を用いてもよい。
【0047】
また、一対のコイル30a,30bに対し、一対の電源回路50(図示せず)を用いて個別に高周波電流を供給してもよいし、一対のコイル30a,30bを並列または直列に接続して、単一の電源回路50を用いて高周波電流を供給してもよい。ただし、一対のコイル30a,30bを並列または直列に接続する場合には、誘導電流が図4に示すように流れるように各コイル30a,30bを接続する必要がある。
【0048】
本発明に係る加熱調理器1によれば、コイル30はヒータ20と電磁結合するものであり、コイル30による高周波磁界によりヒータ20内に流れる「誘導電流」により生じるジュール熱を利用して、加熱庫10内の食材を加熱するものである。すなわち共振回路部70(コイル30)の負荷抵抗Rはヒータ20の有無、装着状態(適正な位置に装着されているか否か)、劣化状態、またはヒータ20の形状および材質に依存して変動する。さらに換言すると、共振回路部70の負荷抵抗Rは、コイル30自体の線抵抗Rに、装着されたヒータ20の見かけ上の負荷抵抗Rを加えたものに相当する(R=R+R)。
【0049】
また本発明に係る電源回路50は、共振回路部70の両端に印加される駆動電圧Vを検出する駆動電圧検出部62と、共振回路部70に流れる駆動電流Iを検出する駆動電流検出部64とを有する。駆動電圧検出部62は、抵抗分圧された駆動電圧Vを検出するものであってもよく、実施の形態1に係る駆動電流検出部64はカレントトランスやシャント抵抗などを用いたものであってもよい。図10は、コイル30の駆動周波数の1周期における駆動電圧Vおよび駆動電流Iの波形を示すものである。なお、コイル30の駆動周波数は、通常約30kHzであるから、コイル30の駆動1周期は約33マイクロ秒に相当する。
【0050】
本発明に係る電源回路50は、駆動電圧検出部62および駆動電流検出部64に接続された負荷状態判定部80を有する。上述のように、ヒータ20の見かけ上の負荷抵抗Rにより変化し、たとえば負荷抵抗Rはヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態(適正な位置に装着されているか否か)、またはヒータ20の形状および材質に依存して変動する。より一般的には、負荷抵抗Rのみならず、駆動電圧Vおよび駆動電流Iが、ヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、劣化状態、ヒータ20の形状および材質に応じて変化する。本願発明において、検出された駆動電圧Vおよび駆動電流I(または負荷抵抗R)に対応するヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、劣化状態、ヒータ20の形状および材質を総称して、ヒータ20の「負荷状態」という。
【0051】
すなわち、本発明に係る負荷状態判定部80は、駆動電圧検出部62および駆動電流検出部64で検出された共振回路部70の駆動電圧Vおよび駆動電流Iに基づいて、ヒータ20の負荷状態を判定するものである。具体的には、負荷状態判定部80は、さまざまな「基準となる負荷状態」にあるヒータ20を「誘導加熱」したときの共振回路部70の複数の基準駆動電圧Vおよび基準駆動電流Iを事前に検出し、図示しないメモリに記憶しておく。そして、負荷状態判定部80は、実際に加熱調理器1を使用する際に検出された共振回路部70の駆動電圧Vおよび駆動電流Iと、基準駆動電圧Vおよび基準駆動電流Iを比較することにより、使用中のヒータ20の負荷状態を判定する。
【0052】
「基準となる負荷状態」は、これに限定するものではないが、ヒータ20が加熱庫10内の適正な位置に装着された状態、加熱庫10内に適正に装着されていない状態(完全に取り外された状態および不完全に装着されている状態を含む)、および加熱庫10内の溝部36(図1参照)またはヒータ20の表面自体に異物(焦げ等)が付着したまま装着されている状態等が含まれる。
【0053】
このように負荷状態判定部80は、これらの基準負荷状態における基準駆動電圧Vおよび基準駆動電流I(i=1,2,・・・)を予め記憶しておき、実際の使用に際して、極めて短い時間(コイル30の駆動1周期が約33マイクロ秒に相当)の駆動電圧Vおよび駆動電流Iを検出して比較することにより、使用時のヒータ20の負荷状態を直ちに判定することができる。
【0054】
また負荷状態判定部80は、材質および形状の異なる複数のヒータ20のそれぞれについて、同様に共振回路部70の基準駆動電圧Vijおよび基準駆動電流Iij(たとえばjは、鉄製ヒータ、ステンレス製ヒータ、銅製ヒータ、幅広ヒータ、幅狭ヒータなどに対応する。)を予め記憶しておき、実際に駆動電圧Vおよび駆動電流Iを検出することにより、ヒータ20の異なる材質および形状を同様に判定するように構成してもよい。
【0055】
より具体的には、コイル30と電磁的に結合するヒータ20の負荷状態を判定するために、制御回路58は、インバータ回路56が予め決められた駆動条件(駆動周波数、駆動パルス)で駆動するように制御する。そして駆動電圧検出部62および駆動電流検出部64は、共振回路部70の駆動電圧Vおよび駆動電流Iを検出し、負荷状態判定部80は、同一条件で予め検出された基準駆動電圧Vijおよび基準駆動電流Iijと比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定する。こうした負荷判定は、極めて短い時間で行うことができるので、原則的には、実際に加熱調理を行う前に行うことが好ましいが、加熱調理を行っている間に周期的に行ってもよい。また負荷判定のための駆動条件(駆動周波数、駆動パルス)は、判定の精度を上げるために複数の条件で行なってもよい。
【0056】
また図10に示すように、検出された駆動電圧Vおよび駆動電流Iと、基準駆動電圧Vijおよび基準駆動電流Iijとの比較のために、基準駆動電圧Vijおよび基準駆動電流Iijの波形全体を記憶して比較することが好ましいが、莫大なメモリ容量を要する。よって波形全体を比較する代わりに、基準駆動電圧Vijおよび基準駆動電流Iijのピークホールド値を記憶し、駆動電圧Vおよび駆動電流Iのピークホールド値を比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。なお、ヒータ20の負荷状態は、図10に示すコイル駆動周期において、駆動電圧Vおよび駆動電流Iのピークホールド値が現れる位相にも影響を与えるので、より正確に負荷状態を判定するために、ピークホールド値の他、その位相を基準値と比較するようにしてもよい。
【0057】
また整流回路54は、商用電源52からの交流電圧を直流電圧Vに整流するものであるが、完全に平坦な直流電圧に整流することは困難である。一方、駆動電圧Vは、整流回路54の両端の電圧Vとともに変動する。よって駆動電圧Vは、商用電源の1周期における位相とともに変動し得る。ただし商用電源52の交流電圧は、ピーク値を有する位相の近傍において比較的に時間増減率が小さく、コイル駆動1周期の短い期間において、ほぼ一定とみなせる。したがって、より安定した駆動電圧Vおよび駆動電流Iを得るたるめに、商用電源52の交流電圧がピーク値に達する位相で、駆動電圧Vおよび駆動電流Iを検出することが好ましい。
【0058】
択一的には、変動する駆動電圧Vおよび駆動電流Iを平均化するために、駆動電圧検出部62および駆動電流検出部64は、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの実効値を検出し、負荷状態判定部80は、同一条件で予め検出された基準駆動電圧Vijおよび基準駆動電流Iijの実効値と比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。
【0059】
たとえば負荷状態判定部80は、ヒータ20が加熱庫10の内部に装着されていないときの共振回路部70の基準駆動電圧Vij(未装着時駆動電圧)および基準駆動電流Iij(未装着時駆動電流)を予め記憶し、これらと使用の際に検出された駆動電圧Vおよび駆動電流Iとが実質的に同じであるとき、ヒータ20が加熱庫10から完全に取り外された負荷状態にあると判定することができる。あるいは、負荷状態判定部80は、検出された駆動電圧Vが未装着時駆動電圧を含む所定の電圧範囲に含まれるとき、または検出された駆動電流Iが未装着時駆動電流を含む所定の電流範囲に含まれるとき、ヒータ20が加熱庫10内に装着されていないと判定してもよい。
【0060】
また負荷状態判定部80は、ヒータ20が加熱庫10の内部に適正に装着されているときの共振回路部70の基準駆動電圧Vij(適正駆動電圧)および基準駆動電流Iij(適正駆動電流)を予め記憶し、検出された駆動電圧Vが適正駆動電圧を含む所定の電圧範囲を越えるとき、または検出された駆動電流Iが適正駆動電流を含む所定の電流範囲を越えるとき、ヒータ20が加熱庫10内に不完全に装着されているか、ヒータ20の表面自体に異物(焦げ等)が付着したまま装着されておらず、ヒータ20が適正に加熱庫10内に装着されていない負荷状態にあると判定することができる。
【0061】
さらに負荷状態判定部80は、ヒータ20が加熱庫10から完全に取り外された状態、ヒータ20加熱庫10内に不完全に装着されている状態、ヒータ20が劣化している状態、ヒータ20の表面自体に異物(焦げ等)が付着したまま装着されている状態、または特定の形状および材質を有するヒータ20が装着されている状態にあると判定したとき、その旨の情報を制御回路58に提供することができる。これを受けた制御回路58は、後述するように、ユーザに視覚的にまたは聴覚的に報知して、ヒータ20の再装着またはヒータ20の交換等をユーザに促す。こうして本願発明により着脱可能に構成されたヒータ20を常に適正に装着した状態で使用できるので、高い安全性および信頼性が担保された加熱調理器1を実現することができる。また、調理に応じたヒータを選択可能とし、ヒータの種類に応じた調理性能の向上といった従来にない顕著な効果を得ることができる。
【0062】
実施の形態2.
図11を参照しながら、本願発明に係る加熱調理器の実施の形態2について以下に説明する。実施の形態2による電源回路50は、カレントトランスを用いた駆動電流検出部64の代わりに、共振コンデンサ60の両端のコンデンサ電圧Vを検出するコンデンサ電圧検出部66を有する点を除いて、実施の形態1と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
【0063】
図11は、実施の形態2に係る電源回路50の回路構成を示す回路ブロック図である。実施の形態1に係る電源回路50は、比較的に高価なカレントトランスを用いた駆動電流検出部64により、共振回路部70に流れる駆動電流Iを検出するものであったが、図11に示す電源回路50は、コンデンサ電圧検出部66を用いて、たとえば共振コンデンサ60のコンデンサ電圧を抵抗分圧してコンデンサ電圧Vを検出するものである。
【0064】
駆動電圧Vおよびコンデンサ電圧Vは、ヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、ヒータ20の形状および材質に応じて変化する。したがって実施の形態2によれば、駆動電流検出部64およびコンデンサ電圧検出部66がそれぞれ駆動電圧Vおよびコンデンサ電圧Vを検出し、負荷状態判定部80が同一条件(駆動周波数、駆動パルス)で予め検出した基準駆動電圧Vijおよび基準コンデンサ電圧VCijと比較することにより、実施の形態1と同様、ヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、ヒータ20の形状および材質などのヒータ20の負荷状態を判定することができる。すなわち、ヒータ20の負荷状態を判定するという文脈において、共振コンデンサ60のコンデンサ電圧Vを検出することと、共振回路部70の駆動電流Iを検出することとは、等価的な意味合いを有する。
【0065】
なお、基準駆動電圧Vijおよび基準コンデンサ電圧VCijは、その波形全体を記憶して、駆動電圧Vおよびコンデンサ電圧Vと比較してもよいが、それぞれのピークホールド値を比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。また実施の形態1で説明したように、より安定した駆動電圧Vおよびコンデンサ電圧Vを得るたるめに、商用電源52の交流電圧がピーク値に達するタイミングで、駆動電圧Vおよびコンデンサ電圧Vを検出することが好ましい。さらに、変動する駆動電圧Vおよびコンデンサ電圧Vを平均化するために、駆動電圧検出部62およびコンデンサ電圧検出部66は、駆動電圧Vおよびコンデンサ電圧Vの実効値を検出し、負荷状態判定部80は、同一条件で予め検出された基準駆動電圧Vijおよび基準コンデンサ電圧VCijの実効値と比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。
【0066】
上述のように、実施の形態2に係るコンデンサ電圧検出部66は、比較的に高価なカレントトランスを用いることなく、より安価な構成で、実施の形態1と同様の効果を実現することができる。したがって実施の形態2によれば、実施の形態1に比して低コスト化を図ることができる。
【0067】
実施の形態3.
図12を参照しながら、本願発明に係る加熱調理器の実施の形態3について以下に説明する。実施の形態3による電源回路50は、駆動電圧検出部62を用いて共振回路部70の両端に印加される駆動電圧Vを検出する代わりに、入力電流検出部68を用いて整流回路54に入力される入力電流を検出する点を除いて、実施の形態1と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
【0068】
図12は、実施の形態3に係る電源回路50の回路構成を示す回路ブロック図である。図12に示す電源回路50は、入力電流検出部68を用いて、整流回路54に入力される入力電流Iを検出するものである。
入力電流Iおよび駆動電流Iは、ヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、ヒータ20の形状および材質に応じて変化する。したがって実施の形態3によれば、入力電流検出部68および駆動電流検出部64がそれぞれ入力電流Iおよび駆動電流Iを検出し、負荷状態判定部80が同一条件(駆動周波数、駆動パルス)で予め検出された基準入力電流IRijおよび基準駆動電流Iijと比較することにより、実施の形態1と同様、ヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、ヒータ20の形状および材質などのヒータ20の負荷状態を判定することができる。
【0069】
入力電流Iおよび駆動電流Iとの比較のために、基準入力電流IRijおよび基準駆動電流Iijの波形全体を記憶することが好ましいが、より簡便には、波形全体を比較する代わりに、基準入力電流IRijおよび基準駆動電流Iijのピークホールド値を記憶し、検出された入力電流Iおよび駆動電流Iのピークホールド値を比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。
また実施の形態1で説明したように、より安定した駆動電流Iを得るたるめに、商用電源52の交流電圧がピーク値に達するタイミングで、駆動電流Iを検出することが好ましい。さらに、変動する駆動電流Iを平均化するために、駆動電流検出部64は、駆動電流Iの実効値を検出し、負荷状態判定部80は、同一条件で予め検出された基準入力電流IRijおよび基準駆動電流Iijの実効値と比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。
【0070】
実施の形態4.
図13を参照しながら、本願発明に係る加熱調理器の実施の形態4について以下に説明する。実施の形態4による電源回路50は、駆動電圧検出部62を用いて共振回路部70の両端に印加される駆動電圧Vを検出する代わりに、入力電流検出部68を用いて整流回路54に入力される入力電流を検出する点を除いて、実施の形態2と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
【0071】
図13は、実施の形態4に係る電源回路50の回路構成を示す回路ブロック図である。図13に示す電源回路50は、入力電流検出部68を用いて、整流回路54に入力される入力電流Iを検出するものである。
入力電流Iおよびコンデンサ電圧Vは、ヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、ヒータ20の形状および材質に応じて変化する。したがって実施の形態4によれば、入力電流検出部68およびコンデンサ電圧検出部66がそれぞれ入力電流Iおよびコンデンサ電圧Vを検出し、負荷状態判定部80が同一条件(駆動周波数、駆動パルス)で予め検出された基準入力電流IRijおよび基準コンデンサ電圧VCijと比較することにより、実施の形態2と同様、ヒータ20の有無、ヒータ20の装着状態、ヒータ20の形状および材質などのヒータ20の負荷状態を判定することができる。
【0072】
入力電流Iおよびコンデンサ電圧Vとの比較のために、基準入力電流IRijおよび基準コンデンサ電圧VCijの波形全体を記憶することが好ましいが、より簡便には、波形全体を比較する代わりに、基準入力電流IRijおよび基準コンデンサ電圧VCijのピークホールド値を記憶し、検出された入力電流Iおよびコンデンサ電圧Vのピークホールド値を比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。
また実施の形態1で説明したように、より安定したコンデンサ電圧Vを得るたるめに、商用電源52の交流電圧がピーク値に達するタイミングで、コンデンサ電圧Vを検出することが好ましい。さらに、変動するコンデンサ電圧Vを平均化するために、コンデンサ電圧検出部66は、コンデンサ電圧Vの実効値を検出し、負荷状態判定部80は、同一条件で予め検出された基準入力電流IRijおよび基準コンデンサ電圧VCijの実効値と比較することにより、ヒータ20の負荷状態を判定してもよい。
【0073】
実施の形態5.
図14を参照しながら、本願発明に係る加熱調理器の実施の形態5について以下に説明する。実施の形態5による電源回路50は、駆動電圧検出部62および駆動電流検出部64で検出された高周波変調された駆動電圧Vおよび駆動電流Iから、駆動周波数と同一の周波数を有する1次成分だけを抽出する1次成分抽出部90を有する点を除いて、実施の形態1と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
【0074】
図14は、実施の形態5に係る電源回路50の回路構成を示す回路ブロック図である。図14に示す電源回路50は、駆動電圧検出部62および駆動電流検出部64に接続された1次成分抽出部90を有する。ただし、1次成分抽出部90は、負荷状態判定部80に内蔵されるものであってもよく、分かりやすく説明するために、別個の構成部品として以下説明する。
【0075】
駆動電圧検出部62および駆動電流検出部64で検出された駆動電圧Vおよび駆動電流I(図10)は、一般に、駆動周波数の整数倍の複数の高次周波数成分を含む合成波形として表される。そして実施の形態5に係る1次成分抽出部90は、図10に示す駆動電圧Vおよび駆動電流Iを、たとえば駆動周波数の整数倍のサンプリング周波数で時分割してサンプリングしたデータを離散フーリエ変換することにより、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分(すなわち駆動周波数と同一の周波数を有する成分)だけを抽出するものである。なお、1次成分抽出部90において、複数の高次周波数成分を有する信号から1次成分のみを抽出する手法およびアルゴリズムとしては任意のものを利用することができ、一般に市販されたソフトウェアを用いて駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分だけを抽出することができる。
【0076】
このとき、本願発明に係る1次成分抽出部90は、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分として次式のように複素表示することができる。
【数1】

ここでV,Iは駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分を示し、V1Re,I1ReはV,Iの実部、V1Im,I1ImはV,Iの虚部、そしてjは虚数単位を示す。
【0077】
コイル30と電磁的に結合するヒータ20の負荷状態を判定するために、制御回路50は、インバータ回路54が予め決められた駆動条件(駆動周波数、駆動パルス)で駆動するように制御し、1次成分抽出部90が駆動周波数と同一の周波数を有する駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分を抽出する。そして負荷状態判定部80が、これらのピーク値を予め記憶された基準値と比較することにより、上記実施の形態と同様、ヒータ20の負荷状態を判定する。
【0078】
択一的には、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分のピーク値の代わりに、負荷状態判定部80は、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分に基づいて共振回路部70の負荷抵抗Rおよび共振周波数Fr(またはインダクタンスL)を算出することにより、ヒータ20の負荷状態を判断することができる。
【0079】
上述のように複素表示した駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分は、時間により高周波変調(駆動周波数で振動)するものであるため、A/D変換器などを用いてサンプリングするタイミングにおいて検出される「ピーク値」には誤差が生じやすい。そこで負荷状態判定部80は、算出する方法については詳細後述するように、時間に依存しない負荷抵抗Rを、ヒータ20の負荷状態を示すパラメータとして用いることにより、より正確にヒータ20の負荷状態を判断することができる。
またヒータ20は複数の材質から構成されるが、共振回路部70の共振周波数Fr(またはインダクタンスL)は、ヒータ20の構成材質に大きく依存する。そこで負荷状態判定部80は、共振回路部70の共振周波数Fr(またはインダクタンスL)を後述のように算出することにより、正確にヒータ20の構成材質を特定することができる。
【0080】
次に、共振回路部70の負荷抵抗Rおよび共振周波数Fr(またはインダクタンスL)の算出方法について説明する。
共振回路部70のインピーダンスZと、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの間の位相(駆動電流Iに対する駆動電圧Vの位相またはインピーダンスZの位相)θは次式で表される。
【数2】

ここでIm(Z)およびRe(Z)はそれぞれインピーダンスZの虚部および実部を意味する。なお、駆動電圧Vと駆動電流Iの間の位相θは、90度付近ではそのarctanが発散し、誤差を多く含み得るので、arctanの代わりにarcsinまたはarccosを用いて算出することが好ましい場合がある。
【0081】
さらに本願発明に係る負荷状態判定部80は、[数2]より1次成分抽出部90が抽出した複素表示の1次成分の駆動電圧Vおよび駆動電流Iから、共振回路部70のインピーダンスZおよび駆動電圧Vおよび駆動電流Iの位相(偏角)θを算出し、これに基づいてインバータ回路54に適当な駆動信号(ゲート信号)を供給するものである。
【0082】
同様に、本願発明に係る負荷状態判定部80は、共振回路部70の有効電力値Wおよび電流実効値Iを次式により算出することができる。
【数3】

ここでIはIの複素共役を示す。
以上のように、本願発明に係る負荷状態判定部80は、1次成分の駆動電圧Vおよび駆動電流Iから、共振回路部70のインピーダンスZ、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの位相(駆動電流Iに対する駆動電圧Vの位相またはインピーダンスZの位相)θ、有効電力値Wおよび電流実効値Iを算出することができる。
【0083】
一方、共振回路部70などの一般のLCR共振回路において、負荷抵抗R、インピーダンスZ、コイル30のインダクタンスLおよび共振周波数Frは次式で表される。
【数4】

ここでωは1次成分の周波数f(定義より駆動周波数と同一、ω=2πfで表される)であり、Cは共振コンデンサ60の静電容量であって、ともに既知である。したがって本願発明に係る負荷状態判定部80は、[数2]で算出したθを用いて、[数4]から共振周波数Frと負荷抵抗R(=R+R)を求めることができる。
【0084】
ヒータ20が加熱庫10内の溝部36内に挿入されて支持されるとき、すなわちヒータ20が加熱庫10内の適正な位置にあって、最も効率的に「誘導加熱」されているとき、負荷抵抗Rは最も大きくなる。逆に、ヒータ20が加熱庫10から完全に取り外されているとき、ヒータ20の見かけ上の負荷抵抗Rが現れず、コイル30のみの負荷抵抗Rだけが検出され、負荷抵抗Rは最も小さくなる。
【0085】
したがって、負荷状態判定部80は、ヒータ20が加熱庫10内の適正な位置に装着された負荷状態およびヒータ20が加熱庫10から完全に取り外された負荷状態にそれぞれ対応する基準負荷抵抗RMAXおよびRMINを記憶し、実際の加熱中に検出された駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分に基づいて算出された負荷抵抗Rと比較することにより、使用中のヒータ20の負荷状態を判定することができる。すなわち負荷状態判定部80は、検出された負荷抵抗Rが基準負荷抵抗RMAXと等しいとき、ヒータ20が加熱庫10内の適正な位置に装着された負荷状態にあると判定し、算出された負荷抵抗Rが基準負荷抵抗RMINと等しいとき、ヒータ20が加熱庫10から完全に取り外された負荷状態にあると判定することができる。
【0086】
また負荷状態判定部80は、算出された負荷抵抗Rが基準負荷抵抗RMAX,RMINの間の所定範囲にあるとき、たとえば負荷抵抗Rが{(RMAX+RMIN)/2}より大きく、RMAXより小さいとき、ヒータ20が加熱庫10内に不完全に装着されているか、あるいは加熱庫10内の溝部36に異物が挿入されていると判定することができる。同様に、ヒータ20の表面上に導電性の異物(焦げ等)が付着すると、ヒータ20の見かけ上の負荷抵抗Rが小さくなるので、負荷状態判定部80は、算出された負荷抵抗Rが基準負荷抵抗RMAX,RMINの間の所定範囲にあるときに、ヒータ20の表面上に異物が付着していると判定することができる。
【0087】
さらにヒータ20の表面が摩耗したり、ヒータ20の構成材質が酸化して比抵抗が増大すると、ヒータ20の見かけ上の負荷抵抗Rが大きくなり、算出された負荷抵抗Rが基準負荷抵抗RMAXを越える場合がある。この場合には、負荷状態判定部80は、ヒータ20が劣化したと判定することができる。
【0088】
加えて、共振回路部70の共振周波数Frは、ヒータ20の構成材質自体に大きく依存する。たとえば、同一の形状および寸法を有するヒータ20を電磁誘導したときの共振回路部70の共振周波数Frは、アルミニウム、非磁性ステンレス、鉄、磁性ステンレスの順で大きく、逆に、コイル30のインダクタンスLは、この順序で小さくなる。したがって負荷状態判定部80は、加熱調理器1に用いられるさまざまな構成材質からなる複数のヒータ20について、所定の条件で予め算出された基準となる共振周波数Fr(またはインダクタンスL)と、実際に使用した際に算出された共振周波数Fr(またはインダクタンスL)とを比較することにより、使用しているヒータ20の材質を瞬時に特定することができる。より具体的には、負荷状態判定部80は、さまざまな材質からなる複数のヒータ20の基準となる共振周波数Fr(またはインダクタンスL)の中で、算出された共振周波数Fr(またはインダクタンスL)が最も近似するものに対応するヒータ20の材質を、使用しているヒータ20の材質として特定することができる。こうして、調理に応じたヒータ20を選択可能とし、ヒータ20の種類に応じた調理性能の向上といった従来にない顕著な効果を得ることができる。
【0089】
なお、ヒータ20の共振周波数Frを有する高周波電流を供給したとき、ヒータ20を最も効率よく誘導加熱することができる。すなわち、本願発明によれば、ヒータ20の共振周波数Fr、すなわちヒータ20の構成材質を特定することができるので、制御回路58は、共振回路部70に供給する高周波電流の駆動周波数として、装着されたヒータ20の構成材質の共振周波数Frを選択するようにインバータ回路56を制御することにより、ヒータ20による加熱効率を最適化することができる。
【0090】
実施の形態6.
図15を参照しながら、本願発明に係る加熱調理器の実施の形態6について以下に説明する。実施の形態6による電源回路50は、実施の形態2と同様、共振コンデンサ60の両端の電圧を検出するコンデンサ電圧検出部66を用いて、共振回路部70に流れる駆動電流Iを検出する点を除いて、実施の形態5と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
【0091】
実施の形態6に係る電源回路50は、共振コンデンサ60の両端のコンデンサ電圧Vを検出するコンデンサ電圧検出部66有し、コンデンサ電圧検出部66は1次成分抽出部90に電気的に接続されている。コンデンサ電圧Vは、駆動電圧Vと同様、駆動周波数の整数倍の高次周波数成分を含み、1次成分抽出部90を用いて離散フーリエ変換することにより、コンデンサ電圧Vの1次成分VC1(駆動周波数と同一の周波数を有する成分)だけを抽出し、複素表示することができる。なお、コンデンサ電圧Vの1次成分VC1と駆動電流Iは次の関係式を満たす。
【数5】

ここでωは1次成分の周波数f(定義より駆動周波数と同一、ω=2πf)であり、Cは共振コンデンサ60の静電容量であって、ともに既知である。
上式より、駆動電流Iはコンデンサ電圧VC1に対して位相がπ/4(90度)だけ進んでいることが明らかである。そして本願発明によれば、コンデンサ電圧VC1を複素表示するので、次式より極めて簡便な計算により駆動電流Iを求めることができる。
【数6】

【0092】
こうして求められた駆動電流Iに基づいて、実施の形態5で説明したように、負荷状態判定部80は、共振回路部70の負荷抵抗Rおよび共振周波数Fr(またはインダクタンスL)を検出することができる。したがって実施の形態6に係る負荷状態判定部80は、実施の形態5と同様、共振回路部70の負荷抵抗Rおよび共振周波数Fr(またはインダクタンスL)の算出値をこれらの基準値と比較することにより、ヒータ20の加熱庫10に対する装着状態、ヒータ20上の異物の付着の有無、ヒータ20の劣化、ヒータ20の構成材質を含むヒータ20の負荷状態を瞬時に判定することができる。
また実施の形態2と同様、比較的に高価なカレントトランスを用いることなく、電源回路50を実施の形態5に比してより安価に製造することができる。
【0093】
実施の形態7.
図16を参照しながら、本願発明に係る加熱調理器の実施の形態7について以下に説明する。実施の形態7に係る電源回路50は、上記実施の形態に係る負荷状態判定部80により、ヒータ20の負荷状態を判定した後、これをユーザに報知する手段を有する点を除いて、実施の形態1〜6と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
【0094】
図16は、実施の形態7に係る加熱調理器を内蔵したIHクッキングヒータなどの誘導加熱調理器101の全体構成を示す概略斜視図である。
図16において、誘導加熱調理器101は、概略、本体筐体103と、その上側表面のほぼ全体を覆うガラスなどで形成されたトッププレート104と、左右に配置された第1および第2のIH加熱部110,120と、ラジエント加熱部105とを有する。本願発明に係る加熱調理器1は、誘導加熱調理器101のグリル部106として組み込まれている。
【0095】
また誘導加熱調理器101は、ユーザがIH加熱部110,120、ラジエント加熱部105およびグリル部106である加熱調理器1の火力等を操作するために用いられる火力調整ダイヤル107a、107b、および操作パネル107c、これらの制御状態を表示するための液晶表示部108、ならびに本体筐体103の後方に設けられた吸気窓109aおよび排気窓109bを備える。
【0096】
ユーザが操作パネル107cを用いて、グリル部106を選択し、作動させようとしたとき、まず負荷状態判定部80がヒータ20の負荷状態を判定する。負荷状態判定部80は、検出された基準駆動電圧Vおよび基準駆動電流I等を、内蔵されたメモリ(図示せず)に予め記憶しておいた各負荷状態に対する基準駆動電圧Vおよび基準駆動電流I等と比較して、ヒータ20が加熱庫10内の適正な位置に装着されていると判定したとき、これを制御回路58に情報伝達し、制御回路58は、グリル部106、すなわち本願発明に係る加熱調理器1に対する通電を開始するように、インバータ回路56を制御する。
【0097】
一方、負荷状態判定部80は、ユーザがたとえばヒータ20a,20bのうちの少なくとも一方を加熱庫10内に装着し忘れた場合、検出された基準駆動電圧Vおよび基準駆動電流I等が予め記憶しておいた無負荷状態の基準駆動電圧Vおよび基準駆動電流I等と合致すると判定して、無負荷状態を示す信号を制御回路58に送信する。そして無負荷状態を示す信号を受けた制御回路58は、ユーザに視覚的に報知するため、液晶表示部108にたとえば「ヒータを取り付けて下さい。」などのメッセージを表示させ、聴覚的に通知するため、図示しないスピーカを用いて、音声により「ヒータを取り付けて下さい。」などのメッセージを発する。また、ヒータ20が加熱庫10内に不完全に装着されていると、負荷状態判定部80により判定された場合、制御回路58は、「ヒータを装着し直して下さい。」などと視覚的におよび聴覚的にユーザに警告する。同様に、負荷状態判定部80によりヒータ20に劣化等の異常があると判定された場合には、制御回路58は「ヒータ異常です。サービスマンに連絡をお願いします。」などと、液晶表示部108および音声によりユーザに警告する。
したがって、本願発明によれば、ヒータ20の装着異常およびヒータ20に劣化等を瞬時に識別することにより、より安全で信頼性の高い加熱調理器、ならびにこれを採用した誘導加熱調理器(IHクッキングヒータ)101を提供することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…加熱調理器、10…加熱庫(箱状筐体)、12a…上壁、12b…下壁、14…側壁、20…ヒータ、22…低抵抗部、24…給電部、25…冷却部、26…高抵抗部、30…コイル、32…磁性体、34…断熱部材、36…断熱部材の溝部(開口部)、37…焼き網、38…脂受け皿、40…コイルの基部、42…コイルの側部、φ1,φ2…磁束、50…電源回路、52…商用電源、54…整流回路、56…インバータ回路、58…制御回路、60…共振コンデンサ、62…駆動電圧検出部、64…駆動電流検出部、66…コンデンサ電圧検出部、68…入力電流検出部、70…共振回路部、80…負荷状態判定部、90…1次成分抽出部、101…誘導加熱調理器、103…本体筐体、104…トッププレート、105…ラジエント加熱部、106…グリル部(加熱調理器)、107…火力調整ダイヤル、108…液晶表示部、109a…吸気窓、109b…排気窓、110,120…IH加熱部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の加熱庫と、
前記加熱庫の内部に装着された電気的に閉じた導電体からなるヒータと、
前記加熱庫の外部に配置されたコイル、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、
駆動周波数を有する高周波電流を前記共振回路部に供給するインバータ回路と、
前記コイルから発生する高周波磁束が前記ヒータと鎖交するように配置された磁性体と、
前記共振回路部の両端に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧検出部と、
前記共振回路部に流れる駆動電流を検出する駆動電流検出部と、
検出された駆動電圧および駆動電流に基づいて、前記コイルと電磁気的に結合する前記ヒータの負荷状態を判定する負荷状態判定部とを備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
箱状の加熱庫と、
前記加熱庫の内部に装着された電気的に閉じた導電体からなるヒータと、
前記加熱庫の外部に配置されたコイル、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、
駆動周波数を有する高周波電流を前記共振回路部に供給するインバータ回路と、
前記コイルから発生する高周波磁束が前記ヒータと鎖交するように配置された磁性体と、
前記共振回路部の両端に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧検出部と、
前記共振コンデンサの両端に印加されるコンデンサ電圧を検出するコンデンサ電圧検出部と、
検出された駆動電圧およびコンデンサ電圧に基づいて、前記コイルと電磁気的に結合する前記ヒータの負荷状態を判定する負荷状態判定部とを備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
箱状の加熱庫と、
前記加熱庫の内部に装着された電気的に閉じた導電体からなるヒータと、
前記加熱庫の外部に配置されたコイル、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、
駆動周波数を有する高周波電流を前記共振回路部に供給するインバータ回路と、
交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流して、前記インバータ回路に直流電圧を供給する整流回路と、
前記コイルから発生する高周波磁束が前記ヒータと鎖交するように配置された磁性体と、
前記共振回路部の両端に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧検出部と、
前記整流回路に供給される入力電流を検出する入力電流検出部と、
検出された駆動電圧および入力電流に基づいて、前記コイルと電磁気的に結合する前記ヒータの負荷状態を判定する負荷状態判定部とを備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
箱状の加熱庫と、
前記加熱庫の内部に装着された電気的に閉じた導電体からなるヒータと、
前記加熱庫の外部に配置されたコイル、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、
駆動周波数を有する高周波電流を前記共振回路部に供給するインバータ回路と、
交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流して、前記インバータ回路に直流電圧を供給する整流回路と、
前記コイルから発生する高周波磁束がヒータと鎖交するように配置された磁性体と、
前記整流回路に供給される入力電流を検出する入力電流検出部と、
前記共振コンデンサの両端に印加されるコンデンサ電圧を検出するコンデンサ電圧検出部と、
検出された入力電流およびコンデンサ電圧に基づいて、前記コイルと電磁気的に結合する前記ヒータの負荷状態を判定する負荷状態判定部とを備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
検出された駆動電圧および駆動電流から、駆動周波数と同一の周波数を有する1次成分を含む1次駆動電圧および1次駆動電流を抽出する1次成分抽出部をさらに有し、
負荷状態判定部は、前記1次駆動電圧および前記1次駆動電流に基づいて、コイルと電磁気的に結合するヒータの負荷状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項6】
検出された駆動電圧およびコンデンサ電圧から、駆動周波数と同一の周波数を有する1次成分を含む1次駆動電圧および1次コンデンサ電圧を抽出するとともに、1次コンデンサ電圧から1次駆動電流を求める1次成分抽出部をさらに有し、
負荷状態判定部は、前記1次駆動電圧および前記1次駆動電流に基づいて、コイルと電磁気的に結合するヒータの負荷状態を判定することを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項7】
負荷状態判定部は、抽出された1次駆動電圧および1次駆動電流から、共振回路部の負荷抵抗または共振周波数を算出するとともに、算出された負荷抵抗または共振周波数に基づいて、ヒータの負荷状態を判定することを特徴とする請求項5または6に加熱調理器。
【請求項8】
ヒータは加熱庫の内部において着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の加熱調理器。
【請求項9】
負荷状態判定部は、ヒータが加熱庫の内部に適正に装着されているときの共振回路部の負荷状態を予め記憶し、これと、使用の際に判定されたヒータの負荷状態とを比較することにより、判定されたヒータの負荷状態に異常があるか否かについて判定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の加熱調理器。
【請求項10】
負荷状態判定部は、ヒータが加熱庫の内部に装着されていないときの共振回路部の未装着時駆動電圧および未装着時駆動電流を予め記憶し、未装着時駆動電圧および未装着時駆動電流と、使用の際に検出された駆動電圧および駆動電流とが実質的に同じであるとき、前記ヒータが前記加熱庫の内部に装着されていないことをユーザに視覚的にまたは聴覚的に報知する手段を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の加熱調理器。
【請求項11】
負荷状態判定部は、形状の異なる複数のヒータのそれぞれが加熱庫の内部に適正に装着されているときのヒータの負荷状態を予め記憶し、判定されたヒータの負荷状態により、装着されたヒータの形状を判定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の加熱調理器。
【請求項12】
負荷状態判定部により判定された負荷状態に異常があるとき、ユーザに対し視覚的にまたは聴覚的に報知する手段を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1に記載の加熱調理器。
【請求項13】
箱状の加熱庫と、
前記加熱庫の内部に着脱可能に装着される電気的に閉じた導電体からなるヒータと、
前記加熱庫の外部に配置されたコイル、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、
駆動周波数を有する高周波電流を前記共振回路部に供給するインバータ回路と、
前記コイルから発生する高周波磁束が前記ヒータと鎖交するように配置された磁性体と、
前記共振回路部の両端に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧検出部と、
前記共振回路部に流れる駆動電流を検出する駆動電流検出部と、
検出された駆動電圧および駆動電流から、駆動周波数と同一の周波数を有する1次成分を含む1次駆動電圧および1次駆動電流を抽出する1次成分抽出部と、
前記1次駆動電圧および前記1次駆動電流に基づいて、前記共振回路部の負荷抵抗を算出する負荷状態判定部と、
前記負荷状態判定部に接続され、インバータ回路を制御する制御回路とを備え、
前記負荷状態判定部は、基準となるヒータの負荷状態に対応する共振回路部の基準負荷抵抗を予め算出して記憶しておき、使用時に算出された共振回路部の負荷抵抗を基準負荷抵抗と比較することにより、装着されたヒータの負荷状態を判定し、
前記制御回路は、判定されたヒータの負荷状態が異常であるとき、視覚的にまたは聴覚的にユーザに報知することを特徴とする加熱調理器。
【請求項14】
負荷状態判定部は、ヒータが加熱庫から完全に取り外された状態であるか、前記ヒータが前記加熱庫の内部に不完全に装着されている状態にあるか、または前記ヒータの表面に異物が付着したまま前記加熱庫の内部に装着されている状態にあるとき、前記ヒータの負荷状態が異常であると判定することを特徴とする請求項13に記載の加熱調理器。
【請求項15】
負荷状態判定部は、1次駆動電圧および1次駆動電流に基づいて、共振回路部の共振周波数またはインダクタンスを算出するとともに、基準となるヒータの負荷状態に対応する共振回路部の基準共振周波数または基準インダクタンスを予め算出して記憶しておき、使用時に算出された前記共振回路部の算出された共振周波数またはインダクタンスを、基準共振周波数または基準インダクタンスと比較することにより、装着された前記ヒータの構成材質を判定し、
制御回路は、前記共振回路部に供給する高周波電流の駆動周波数として、装着された前記ヒータの構成材質の共振周波数を選択するようにインバータ回路を制御することを特徴とする請求項13または14に記載の加熱調理器。
【請求項16】
前記箱状の加熱庫が誘導加熱調理器のグリル部であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1に記載の加熱調理器。
【請求項17】
箱状の加熱庫と、前記加熱庫の内部に着脱可能に装着される電気的に閉じた導電体からなるヒータと、前記加熱庫の外部に配置されたコイル、およびこれに接続された共振コンデンサからなる共振回路部と、駆動周波数を有する高周波電流を前記共振回路部に供給するインバータ回路と、前記コイルから発生する高周波磁束が前記ヒータと鎖交するように配置された磁性体と、前記共振回路部の両端に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧検出部と、前記共振回路部に流れる駆動電流を検出する駆動電流検出部と、前記インバータ回路を制御する制御回路とを備えた加熱調理器の制御方法であって、
検出された駆動電圧および駆動電流から、前記駆動周波数と同一の周波数を有する1次成分を含む1次駆動電圧および1次駆動電流を抽出するステップと、
前記1次駆動電圧および前記1次駆動電流に基づいて、前記共振回路部の負荷抵抗を算出するステップと、
基準となるヒータの負荷状態に対応する前記共振回路部の基準負荷抵抗を予め算出して記憶するステップと、
使用時に算出された前記共振回路部の負荷抵抗を基準負荷抵抗と比較することにより、装着された前記ヒータの負荷状態を判定ステップと、
判定された前記ヒータの負荷状態が異常であるとき、視覚的にまたは聴覚的にユーザに報知するステップとを有することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−167835(P2012−167835A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27308(P2011−27308)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】