説明

加熱調理器

【課題】調理庫の温度検知精度が向上した加熱調理器を提供する。
【解決手段】本体2と、本体2内に配置された冷却ファン60と、本体2内に配置され前面が開口した調理庫26と、調理庫26に固定部材84で固定する固定片83と調理庫26の温度を検出する検知素子を内封する管80aとリード線80bから成る温度センサ80と、調理庫26の外側に固定した温度センサ80を覆う断熱材52と、を備え、温度センサ80の固定片83を固定する固定部材84の取付け位置は、前記検知素子の位置に対して冷却ファン60から発生する冷却風の風下側に設け、断熱材52に設け温度センサ80のリード線80bを通す通し穴52aと通し穴52aから断熱材52の端面の間に設けた切込み52bの位置は、温度センサ80の位置に対して冷却ファン60から発生する冷却風の風下側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器として、グリル庫の奥面に上・下加熱ヒータの口元部を設け、該口元部に囲まれた範囲の中に、グリル庫奥面の外側から内側に臨ませて温度センサ部を設け、前記上・下加熱ヒータの口元部の外側に、上・下加熱ヒータの給電部と前記温度センサの信号線を通すようにして保護カバーをグリル庫周囲のしゃ熱板に取付け、温度センサ部が冷却風の影響を受けずに正確に温度を検出するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−140803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、グリル庫での自動調理に対応した加熱調理器が普及している。この自動調理は、グリル庫内に設けられた温度センサ部の出力に基づいてヒータを制御し、食材の量に応じた調理を自動的に行うものである。
【0005】
特許文献1の加熱調理器では、加熱コイル等を冷却するための冷却風が温度センサ部に直接当たり、温度センサ部に影響を与えるのを抑制するため、温度センサ部を取り付けた調理庫の外側に保護カバーを設け、温度センサ部に冷却風が直接当たらないようにしている。この保護カバーは、次のような非常に煩雑な手順で取り付けられると考えられる。
【0006】
まず、グリル庫に固定された温度センサの信号線にエッジ保護部材を通す。次に、温度センサ部の信号線を保護カバーの信号線用の穴に通す。更に、グリル庫に固定された加熱ヒータを保護カバーの加熱ヒータ用の穴に通す。そして、エッジ保護部材を保護カバーの信号専用の穴に固定した後、保護カバーをグリル庫に固定する。その後、温度センサ部の信号線を引き出すとともに、加熱ヒータの端部に給電線を取り付ける。
【0007】
しかしながら、これだけの作業をしている間に、エッジ保護部材が外れてしまう場合もあり、その場合、冷却風が保護カバーの信号線用の穴を通って保護カバーの内側に供給され、それによって温度センサ部が影響され、グリル庫内の温度を正確に測定できなくなる場合も考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本体と、該本体内に配置された冷却ファンと、前記本体内に配置され前面が開口した調理庫と、該調理庫に固定部材で固定する固定片と前記調理庫の温度を検出する検知素子を内封する管とリード線から成る温度センサと、前記調理庫の外側に固定した該温度センサを覆う断熱材と、を備え、前記温度センサの固定片を固定する固定部材の取付け位置は、前記検知素子の位置に対して前記冷却ファンから発生する冷却風の風下側に設け、前記断熱材に設け前記温度センサのリード線を通す通し穴と該通し穴から前記断熱材の端面の間に設けた切込みの位置は、前記温度センサの位置に対して前記冷却ファンから発生する冷却風の風下側に設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度センサ部の断熱部材の取り付けを容易なものとでき、更に、断熱部材を脱落しにくい構成で保持したので、断熱部材の脱落により冷却風が温度センサ部に直接当たるような状況を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施例の加熱調理器をシステムキッチンに収納した状態の斜視図である。
【図2】一実施例の加熱調理器の分解図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】一実施例の調理庫内の温度センサ部の説明図である。
【図5】温度センサ取付部の断熱材取付け部の分解図である。
【図6】温度センサ取付部の断熱材取付け部の説明図である。
【図7】一実施例の加熱調理器の調理庫周囲上面の冷却風の流れ説明図である。
【図8】一実施例の加熱調理器の調理庫周囲側面の冷却風の流れ説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図1から図8に従って説明する。なお、以下では、システムキッチンに嵌め込むビルトイン型の加熱調理器を例に説明を行うが、キッチンに載置する据置型の加熱調理器であっても差し支えない。
【0012】
図1において、加熱調理器の本体2は、システムキッチン1の天板1aの上面から落とし込んで設置され、設置後はグリル庫4と操作部パネル5がシステムキッチン1の前面部に表れるようになっている。
【0013】
調理を行う際の調理鍋(図示せず)は、本体2の上面に配置された耐熱ガラス等からなるプレート3上に載置され、プレート3の周囲端面は、プレート枠14によって保護されている。プレート3には載置部6が描かれており、該載置部6に調理鍋を載置することにより調理可能となる。載置部6は、プレート3の上面手前の右に載置部右6a、左に載置部左6bが配置され、これら両載置部6a,6b間の奥(中央後部)に載置部中央6cが配置されている。そして、プレート3を挟んで各載置部6の下に位置するように、本体2内の上部に調理鍋を加熱するための加熱コイルユニット25(図2)が設置されている。プレート3の手前には載置部6での調理に使用する上面操作部9が設置され、奥側に上面操作部9の内容などを上面表示部10で表示する。
【0014】
本体2の後部上面には、後記の冷却ファン60(図2)の駆動によって外気を吸引する吸気口7と、発熱部品である加熱コイルユニット25や基板70(図2)を冷却した後の廃熱を本体2外に排出する排気口8が設けられている。なお、排気口8からは、オーブン4の廃熱も同時に排出される。
【0015】
グリル庫4は、魚や肉,ピザ等の被加熱物を焼くためのもので、本体2の前面部の左側若しくは右側に配置されている(本実施例では、本体2の左側に配置されている。)。なお、グリル庫は、オーブン或いはロースターと称されることもある。
【0016】
図2は本体2からプレート3と加熱コイルユニット25を分解した説明図である。図2において、本体2の内部には、加熱コイルユニット25や、電子部品で回路を構成する基板70が配置され、これらの加熱コイルユニット25と基板70が発熱部品であるため、ダクト71内に冷却ファン60を配置して冷却する。プレート3の後部プレート枠14には着脱式の吸排気カバー7aが設けられている。
【0017】
図3は、図1のAA断面で切断したグリル庫4の説明図であり、これを用いて、グリル庫4の詳細について説明する。調理庫26は、横板26b,上板26c,底板26dで構成された箱型のもので、前面には、前面開口部26aが設けられている。なお、ここでは、一枚の板をコの字状に曲げることで横板26bと底板26dを構成した例を示すが、横板,上板,底板を持つのであれば、どのように調理庫26を構成しても良い。調理庫26の前端部は前カバー28に当接して構成される。調理庫26の上部と下部にはシーズヒータ等の発熱体よりなる上・下ヒータ27(上ヒータ27a,下ヒータ27b)が設置されている。上ヒータ27aは、調理庫26の前後方向又は横幅方向に沿って適宜蛇行しながら配置されている。下ヒータ27bは、調理庫26の前後方向に沿って蛇行しながら配置され、後述するドア32の裏側に近い前面部にまで設けている。上ヒータ27a,下ヒータ27bを制御する制御部45は、グリル庫4の上面で、グリル庫4からの熱の影響を受けない場所に配置されており、操作部パネル5や上面操作部9とも連なっている。また、調理庫26の前面開口部26aは、ドア32によって塞がれており、該ドア32の表側にハンドル11が取り付けられ、裏側に受け皿支持部31aの前面に着脱自在に連結されて、受け皿支持部31aの上面に着脱自在に受け皿31が載置されている。
【0018】
調理庫26の後方上部には、排気出口29が設けられ、該排気出口29は排気通路35を介して本体2の後部上面に開口した排気口8に連通している。また、排気出口29の入り口側には調理庫26内で発生する煙や臭いを浄化する空気浄化用の触媒34と、触媒34を加熱するための触媒ヒータ37が配置され、途中には煙や臭いを強制的に排気口8を通して本体2外に排出するための排気手段36が設けられている。なお、排気手段36は、排気ファン36aと排気モータ36bとで構成されている。触媒ヒータ37と排気モータ36bは制御部45に接続されている。調理庫26の前面側下部とドア32との間には空気取入口43が設けられ、前記排気手段36が駆動すると、空気取入口43から調理庫26内に外気が流入し、受け皿31の下面を冷却しながら排気通路35側に流れる。受け皿31は、調理庫26内にその前面開口部から出し入れ自在に収納されており、中に焼き網33が載置され、その上に魚等の被加熱物30を載せる。
【0019】
温度センサ80は、調理庫26の内部の温度を検出するためのもので、調理庫26の側面の開口部26a側に設けられ、制御部45に接続されている。なお、ここでは、温度センサ80として、ステンレス製の薄板による管80a内に温度検知素子を設け、硝子などで封止したものを例示するが、グリル庫4の温度を測定できるのであれば、任意の温度センサを用いても良い。
【0020】
図4を用いて温度センサ80を詳細に説明する。ここに示すように、温度センサ80は、調理庫26の横板26bに、上・下ヒータ27の先端より前カバー28寄りに取り付けられている。また、温度センサ80の管80aを横板26bの穴26fに外側から内側に貫通して臨ませている。管80aの水平方向同一線上で管80aよりも前側の位置にネジ81で固定片83(図5)をナット82(図5)で固定する。
【0021】
図5は、温度センサ80を固定した横板26bを裏側から見た分解図であり、横板26bに固定されるレール支え金具51と、断熱材52の構成を示す。また、図6は、図5で説明した部品を調理庫26に取付けた状態の説明図である。
【0022】
温度センサ80からは信号を出力するためのリード線80bが出ている。レール支え金具51は、受け皿支持部31aを調理庫26に出し入れするレール50を固定するものである。レール支え金具51の前側には、フランジで構成される保持部51aを備える。断熱材52は、耐熱性,柔軟性の高いグラスウール製のものであり、本実施例では、高さ×幅×厚さを約110×62×5mmとした。保持部51aを断熱材52と略等しい寸法としたので、保持部51aと横板26bで断熱材52を保持することができる。
【0023】
次に、温度センサ80を横板26bに固定する方法を説明する。温度センサ80の根元には、固定片83がカシメで固定される。この固定片83を、ネジ81とナット82で構成される固定部材84で横板26bに固定する。この結果、温度センサ80と同じ高さにネジ81の先端とナット82が並ぶ配置となる。
【0024】
温度センサ80を調理庫26に固定した後に断熱材52を取り付けることができるように、断熱材52の切込み52bの先端に、約φ5mmの通し穴52aを設けた。ここで、切込み52bはリード線80bを通すためのものであり、通し穴52aはリード線80bを保持するためのものである。前述したように、断熱材52は柔軟性の高いグラスウール製のものであるので、本実施例の加熱調理器を製造するときの、リード線80bを切り込み52bに通す作業や、断熱材52を保持部51aに保持させる作業は容易に行うことができる。それと同時に、正常に取り付けられた断熱材52が保持部51aから脱落する可能性は少なく、温度センサ80に冷却風が直接吹き付けられることもない。なお、本実施例では、切り込み52bを前面側から水平に設けるものとし、通し穴52aを前端より約1/3の位置に設けるものとする。後記するように、切込み52bが設けられる方向は温度センサ80の風下に該当するので、切込み52bから侵入した冷却風が温度センサ80に与える影響を少なくすることができる。
【0025】
本実施例は、以上の構成からなり、次に動作について被加熱物30として秋刀魚を焼く場合を例にとって説明する。
【0026】
秋刀魚5匹を焼き網33に並べ、操作部パネル5で調理メニューの魚丸焼きを選択して調理開始操作をする。すると本体2の冷却ファン60が動作して本体2内部を冷却する冷却風が送られる。調理庫は上・下ヒータ27が制御部45に予め組込まれた複数の加熱工程動作により加熱を開始する。自動調理の魚丸焼きは、工程中に被調理物の量を判定する制御がなされて調理時間の調整を行うものである。開始数分後に温度センサ80で検知する温度を制御部45に取り込み、その後所定時間後再び温度を測定して取り込み、所定時間中の温度上昇により被加熱物30の量を判定するものである。
【0027】
秋刀魚3匹の調理を標準として予め組込まれた温度上昇値よりも実測した温度上昇値が大きければ、量は少ないと判定し、実測した温度上昇値が小さければ量は多いと判定する。
【0028】
量が少ないと判定された場合は予め組込まれた各工程の夫々の調理時間を、量の少ない度合いによって、等倍して短くして調理を完成する。逆にここで示した5匹の場合のように、大量と判定された場合は予め組込まれた各工程の夫々の調理時間を、量の多い度合いによって、等倍して長くして調理を完成する。断熱材52により温度センサ80の検知する温度は、冷却風により冷却されないので、調理庫26内の温度を正確に測定できるので量の判定が正しく行える。やがて、加熱の全工程が終了すると調理を終了する。焼き網33から焼きあがった秋刀魚を取出す。
【0029】
ここで、調理中に動作している冷却ファン60の冷却風の流れについて図7,図8で説明する。図7は調理庫周囲上面、図8は調理庫周囲側面の冷却風の流れ説明図である。図7,図8において矢印は、風の流れを示し、破線は部品の内部や下部を流れるものを示している。
【0030】
吸気口7から冷却ファン60で吸気し、基板70を囲むダクト71の内部を通過し、開口部71aより上方に出る。開口部71a上方に配置される載置部右6aの加熱コイルユニット25(ここでは図示せず)と、同時に、調理庫26を上から囲みダクト71と断熱する仕切り板15の上に配置される載置部左6b、載置部中央6cに配置する加熱コイルユニット25(ここでは図示せず)を冷却する。そして、排気口8より排気される。以上は、図7,図8で特に符号の無い矢印で示す風の流れについて示した。
【0031】
しかし、調理庫26の周囲は、載置部左6bと載置部中央6cの間にある仕切り板15の上面を流れる冷却風が通気穴15aから本体2下部へ流れる風aがある。すると下面から仕切り板15の基板側板15aへ流れる風bとなる。そして横板26bの後部と基板側板15bの間を流れる風cとなる。そして、横板26bの前側部と基板側板15bの間を流れる風dとなる。ここで、風dは断熱材52と基板側板15bの間を流れる。本体2の後側が風上のため、前カバー28と横板28bの横の隙間28aから漏れて出る風eとなる。また、前カバー28の下のスキマから漏れて出る風fとなる。最後に、レール支え金具51の端部に当たり上へ流れ調理庫26の上板26cの上を流れる風gとなる。そして、調理庫26の左側上から漏れて出る風hとして流れるのである。
【0032】
そのため、前記した風dにおいて横板26bと基板側板15bの間を風が流れるが、温度センサ80の固定片83を固定した周囲の横板26bには直接風が当たらず、全て断熱材52と基板側板15bの間を流れていく。そのため、温度センサ80の周囲の横板26bの温度は低下しない。
【0033】
そのため横板26bに固定した固定片83の温度が下がらないので、固定片83にカシメで固定される管80aに内蔵した温度検知素子の感熱温度は、正しく調理庫26の温度を検知することができる。
【0034】
更に、断熱材52の切込み52bは風下側に設けているので、切込み52bから風が流入して固定片83を冷却しない。また、リード線80bを通し穴52aから出し、切込み52bで固定部材84に馴染んで、保持部51aと横板26bに断熱材52をフィットさせている。
【0035】
以上の実施例によれば、作業のバラツキによって断熱材52に設けた切込み52bが開くことが無く、切込み52bは風下を向いているため固定片83に向けて風が吹き込むことは無い。
【0036】
また、断熱材52を取付けた状態の温度センサ80のリード線80bも目視確認できるので作業性が良いため、品質が安定し、温度センサ80で調理庫26の温度を正確に測定できる。
【符号の説明】
【0037】
2 本体
4 グリル庫
26 調理庫
26a 前面開口部
26b 横板
26f 穴
27 上・下ヒータ
32 ドア
45 制御部
51a 保持部
52 断熱材
52a 通し穴
52b 切込み
60 冷却ファン
70 基板
80 温度センサ
80a 管
80b リード線
83 固定片
84 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体内に配置された冷却ファンと、前記本体内に配置され前面が開口した調理庫と、該調理庫に固定部材で固定する固定片と前記調理庫の温度を検出する検知素子を内封する管とリード線から成る温度センサと、前記調理庫の外側に固定した該温度センサを覆う断熱材と、を備え、
前記温度センサの固定片を固定する固定部材の取付け位置は、前記検知素子の位置に対して前記冷却ファンから発生する冷却風の風下側に設け、前記断熱材に設け前記温度センサのリード線を通す通し穴と該通し穴から前記断熱材の端面の間に設けた切込みの位置は、前記温度センサの位置に対して前記冷却ファンから発生する冷却風の風下側に設けたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−22906(P2012−22906A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160195(P2010−160195)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】