説明

加熱部材、加熱部材離型層の作成方法、加熱装置、定着装置、定着方法、および画像形成装置

【課題】画像形成装置用の定着装置に用いられる加熱部材は、表面の温度変化によって、ホットオフセットや、コールドオフセットが発生し、画像品質を劣化させていた。これらは加熱装置の表面の、離型性の低下、熱伝導性の劣化等によって生ずる。
【解決手段】加熱部材は基材17と、該基材の上側に設けられた離型性を有する樹脂材料に熱伝導性を有する材料が混在した表層15とを有し、該表層は、熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料42と、熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料41とを含み、前記熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料42が前記熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料41を取り囲む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置や定着装置に用いられ、被加熱部材を加熱する加熱部材、その加熱部材の表層の作製方法、前記加熱部材からなりシート状の被加熱部材(記録材)の未定着画像を定着する定着部材、前記加熱部材を用いた加熱装置、前記定着部材を用いて未定着画像を記録材に定着する定着方法及び定着装置、前記加熱装置を用いて未定着画像を記録材に定着する定着方法及び定着装置に関するものであり、より詳しくは、未定着画像を形成するトナーとの離型性を要する表層の加熱効率の向上を図った加熱部材及び定着部材と、その加熱部材を用いた加熱装置、その定着部材や加熱装置を用いた定着方法及び定着装置に関する。
また、本発明は、複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、印刷装置などの、画像形成プロセスと転写プロセスを利用してシート状の記録材上に未定着画像を形成し、前記の定着方法や定着装置を用いて未定着画像を記録材に定着する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置の定着工程に関しては、種々の方法や装置が開発されているが、現在最も一般的な方法は熱ローラによる圧着加熱方式である。
加熱ローラ(定着ローラ)による圧着加熱方式の定着装置では、トナーに対し離型性を有する材料(主にフッ素樹脂)で表面を形成した定着ローラを用い、定着ローラの表面にシート状の被加熱部材(記録用紙、OHPシート、葉書等の記録材)のトナー像面を加圧下で接触しながら通過せしめることにより定着を行うものである。
このような定着装置において、トナーとの離型性を要する定着ローラの最表面の層の加熱効率の向上を図ったものが知られている。定着ローラの表面をフッ素樹脂の粒子を混入したニッケル被膜で構成し、熱導電性を良くすることが提案されている(例えば、特許文献1 参照。)。しかしこの方法はニッケル被膜にフッ素樹脂の粒子を混入させているだけなので、定着ローラ表面の離型性が悪く、オフセットが発生して画像を汚してしまう恐れがある。また、電磁誘導では、渦電流が流れる必要があるため絶縁体で分離された電気伝導体では、十分な発熱は期待できないため、本発明の目的に用いることはできない。
【0003】
フッ素樹脂に、このフッ素樹脂の焼成温度以下でかつローラ使用温度以上の融点を有する金属粉を体積比で0.5〜40%配合し非帯電性とすることが提案されている(例えば、特許文献2 参照。)。熱伝導性の向上に必要な金属の体積比は非帯電性に必要な体積比よりも多く、また溶融した金属はフッ素樹脂にはぬれにくいため熱伝導性の向上に必要な体積比で添加すると金属同士が凝集してしまい冷却後は粒径の大きな金属粒となってしまう。このため粒径の大きな金属粒が露出すると、その上にトナーが付着し易くなり、オフセットが発生してしまう恐れがある。
あるいは、ローラの表面層として金属粉末を分散含有する樹脂被覆層を設けることが提案されている(例えば、特許文献3 参照。)。金属粉末を単純に添加するだけではフッ素樹脂の断熱領域があるため十分な熱伝導性を得ようとすると配合量を多くする必要があり離型性を損なう。そのためオフセットが発生してしまう恐れがある。
【0004】
さらに、3次元のテトラポット状の導電性のウイスカを添加して分散させ、ウイスカによりローラ表面と各ローラのシャフトが電気的に導通してローラ表面の電荷を有効に除電することが提案されている(例えば、特許文献4 参照。)。単純に添加するだけではウイスカ間にフッ素樹脂の断熱領域があるため十分な熱伝導性を得ようとすると配合量を多くする必要があり離型性を損なう。オフセットが発生してしまう恐れがある。
この他に、本出願人により、金属ローラ表面に非粘着離型性樹脂層を被覆した定着ローラにおいて、前記樹脂層がフレーク状金属を含有するものが提案されている(特許文献5 参照。)。金属フレークを単純に添加するだけではフッ素樹脂の断熱領域があるため十分な熱伝導性を得ようとすると配合量を多くする必要があり離型性を損なう。同様にオフセットが発生してしまう恐れがある。
【0005】
電子写真方式の画像形成装置の定着工程において重要なことは、被加熱部材から定着ローラ等の定着部材へのトナー粒子のオフセットが通常の操作中に生じないことである。定着部材上へのトナー粒子のオフセットは、その後、装置の他の部分あるいは後のコピーサイクルでの被加熱部材(記録材)上に転写することがあり、かくして地汚れ(背景)を増大させるか、またはコピーする材料を干渉する。ここで、上記オフセットにはコールドオフセット、ホットオフセット、静電オフセットがある。
コールドオフセットとは、熱ローラ定着方式において、トナーと用紙との界面付近が充分溶かされない場合、定着ローラとの接着力や静電吸着力により、トナー画像の一部が取り去られることであり、低温オフセットとも言う。また、これが起こるときのローラの設定温度をコールドオフセット温度としている。
【0006】
ホットオフセットとは、熱ローラ定着方式において、トナーが過加熱されトナーの凝集力が定着ローラおよび用紙との接着力を下回った場合に、トナー層が分断して起こるオフセット現象をいい、高温オフセットとも言う。また、これが起こるときのローラの設定温度をホットオフセット温度としている。
ホットオフセットは、トナーの温度上昇により、トナー粒子が液状化し溶融トナーの分割が定着操作中に起こる温度まで上昇し、トナーの一部が定着部材に残った場合に生ずる。ホットオフセット温度またはホットオフセット温度の低下は定着ローラの剥離特性の尺度であり、従って、低表面エネルギーを有して必要な剥離を与える定着ローラ表面を提供することが望ましい。多くの材料は、連続使用において最初は良好な剥離特性を有して機能するけれども、トナーのホットオフセットの結果として、紙繊維、紙片およびトナーにより汚染されがちであり、そのため、定着ローラの表面エネルギーを増大させ剥離性能を落とす原因となる。しかも、一旦、定着ローラの表面が汚染されると、ホットオフセット温度は低下し始めて、トナー像を定着させるに必要な最低温度近く、またはそれ以下のレベルにまでなることがあり、そのため、トナー像の不完全定着及びトナー像の定着ローラへのオフセットの両方をもたらす。定着ローラが1度汚染され始めると、汚染物は、定着ローラに圧接する加圧ローラ(圧力ローラ)が一般に高表面エネルギー材料を有するために、加圧ローラ側に移行する。そして加圧ローラに汚染物が移行して付着すると、定着時に被加熱部材の裏面に汚染物が付着して裏汚れの原因となる。このように、定着ローラ表面の離型性は、ホットオフセットを防止するための重要な尺度となる。
また、定着ローラは、熱をトナーに渡す役目をしているため、発熱体からトナーまでの熱伝達障害を最少にするように設定されることが重要である。
【0007】
【特許文献1】実開平01−164463号公報
【特許文献2】特公平07−036097号公報
【特許文献3】特開平02−047671号公報
【特許文献4】特2002−091217号公報
【特許文献5】特04−067187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、表層の離型性を保ちながら熱伝導性の良好な加熱部材を提供することを目的とする。より詳しくは、離型性を損なわずに樹脂表層に熱伝導性を与え、加熱効率を向上した加熱部材を提供することを目的とする。
また、本発明は、離型性を損なわずに樹脂表層に熱伝導性を与えることができる加熱部材表層の作製方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記の加熱部材を用い、通常のヒータ加熱において加熱効率を向上した定着部材を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の加熱部材を用い、電磁誘導加熱での加熱効率を向上した定着部材を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記の加熱部材を用い、電磁誘導加熱での加熱効率を向上した回転体を備えた加熱装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記の定着部材または加熱装置を用いて、トナーとの離型性向上を計ることができ、ワックスや離型剤の離型性の限界以内で定着することができ、定着時の加熱効率も向上することができる定着方法及び定着装置を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記の定着方法または定着装置を用いて、高耐久、高画質、省エネの特性を持った画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明では、被加熱部材に接触し該被加熱部材を加熱する加熱部材であって、該加熱部材は基材と、該基材の上側に設けられた離型性を有する樹脂材料に熱伝導性を有する材料が混在した表層とを有し、該表層は、熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料と、熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料とを含み、前記熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料が前記熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料を取り囲むことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の加熱部材において、前記離型性を有する樹脂材料はフッ素樹脂であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の加熱部材において、前記フッ素樹脂は炭素系材料を含有していることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の水に対する接触角が80°以上であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料部分は、前記基材面に垂直な断面において厚さが50μm以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料部分は、前記基材面に平行な断面において最大幅部が30μm以下であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層に含まれる熱伝導性を有する材料は、前記被加熱部材を加熱する時の温度より高い融点を有することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の10点平均粗さ(Rz)による表面粗さを5μm以下にすることを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記基材はローラ状もしくは無端ベルト状に形成され、該基材の内側に発熱手段を有し、前記表層が熱伝導層として機能することを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の加熱部材において、前記発熱手段は外部からの作用により渦電流を発生させることができる導電層であることを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の加熱部材において、前記基材と、前記表層との間に弾性層もしくは断熱層を有することを特徴とする。
【0015】
請求項12に記載の発明では、請求項1ないし11のいずれか一つに記載の加熱部材の表層の作製方法において、フッ素樹脂微粒子を水溶液中に分散して作製した塗装液に、熱伝導性を有する材料および前記フッ素樹脂微粒子よりも粒径が大きいフッ素樹脂粒子を混合し、耐熱性基材に塗装した後、加熱して離型層とした加熱部材離型層の作製方法を特徴とする。
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の加熱部材離型層の作製方法において、前記フッ素樹脂の融点以上に加熱するを特徴とする。
【0016】
請求項14に記載の発明では、請求項10またはし11に記載の加熱部材と、励磁手段と、を有し、該励磁手段によって前記渦電流を発生させる加熱装置を特徴とする。
請求項15に記載の発明では、請求項9ないし11のいずれか一つに記載の加熱部材を有し、該加熱部材を被加熱部材であるシート状の記録材に接触して該記録材を加熱し、該記録材上の未定着画像を定着する定着装置を特徴とする。
【0017】
請求項16に記載の発明では、請求項14に記載の加熱装置を有し、前記加熱部材を被加熱部材であるシート状の記録材に接触して該記録材を加熱し、該記録材上の未定着画像を定着することを特徴とする。
請求項17に記載の発明では、請求項15または16に記載の定着装置において、前記加熱部材はローラ状に形成され、少なくとも1つの該加熱部材を含む2つのローラ状回転体をなす部材の圧接領域に前記シート状の記録材を加圧しながら通過させることを特徴とする。
【0018】
請求項18に記載の発明では、請求項15または16に記載の定着装置において、前記加熱部材に圧接される加圧部材を有し、該加圧部材が前記加熱部材に圧接される領域を前記シート状の記録材を加圧しながら通過させることを特徴とする。
請求項19に記載の発明では、請求項17または18に記載の定着装置において、前記シート状の記録材を通過させる領域における両部材の接触面の単位面積当たりの加圧力が0.5[kgf/cm]以上となるようにしたことを特徴とする。
【0019】
請求項20に記載の発明では、請求項15ないし19のいずれか1つに記載の定着装置において、前記シート状の記録材を加圧しながら通過させる部材の少なくとも前記発熱部材を有する部材に離型剤を塗布する手段を有することを特徴とする。
請求項21に記載の発明では、請求項15または16に記載の定着装置を用いる定着方法であって、前記加熱部材に圧接される加圧部材を有し、該加圧部材が前記加熱部材に圧接される領域を前記シート状の記録材を加圧しながら通過させる定着方法を特徴とする。
請求項22に記載の発明では、請求項21に記載の定着方法において、前記未定着画像はワックス含有のトナーからなることを特徴とする。
請求項23に記載の発明では、請求項21または22に記載の定着方法において、前記シート状の記録材を加圧しながら通過させる部材の少なくとも一方に離型剤を塗布することを特徴とする。
【0020】
請求項24に記載の発明では、請求項15ないし20のいずれか1つに記載の定着装置と、前記未定着画像を前記シート状の記録材上に形成する画像形成部とを有する画像形成装置を特徴とする。
請求項25に記載の発明では、請求項21ないし23のいずれか1つに記載の定着方法を用いた画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表層の離型性を保ちながら熱伝導性の良好な加熱部材を提供することができる。
通常のヒータ加熱や電磁誘導加熱において加熱効率を向上できる。
離型性を損なわずに樹脂表層に熱伝導性を与えることができる加熱部材表層の作製方法を提供することができる。
トナーとの離型性向上を計ることができる。
高耐久、高画質、省エネの特性を持った画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
同図において符号1は光導電性の感光体、2は帯電手段としての帯電ローラ、3は光走査装置、4は現像装置、5は転写ローラ、6は定着装置、7はクリーニング装置、8は除電装置、13は加圧ローラをそれぞれ示す。
画像形成装置は、周知の電子写真方式の画像形成プロセスと静電転写プロセスを実行することによって、シート状の被加熱部材(記録用紙、OHPシート、葉書等の記録材)に画像を得ることができるものであって、像担持体として円筒状に形成された光導電性の感光体1を有している。この感光体1の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ2、現像装置4、転写ローラ5、クリーニング装置7、除電装置8が配備されている。また、それらの他に、画像形成装置は、光走査装置3と定着装置6を備えている。尚、帯電手段としては、帯電ローラ2の他、コロナチャージャ等を用いることができる。また、転写手段としては、転写ローラ5の他、転写チャージャ、転写ベルト等を用いることができる。
【0023】
光走査装置3は、半導体レーザ(LD)等の光源と光偏向器と結像光学系などからなり、帯電ローラ2と現像装置4との間の感光体面で光走査による露光を行い、画像データに対応した静電潜像を形成する。また、光走査装置3に代えて、発光ダイオード(LED)アレイや、液晶シャッターアレイ等を利用した光書込み装置を用いても良い。
現像装置4は、トナーからなる一成分現像剤、あるいはトナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を用い、該現像剤中のトナーで感光体1上の静電潜像を現像する。
クリーニング装置7は、クリーニングブレードやクリーニングブラシ等で感光体1上の残留トナーや紙粉等を清掃する。
定着装置6は、発熱手段を有するローラ状の定着部材(定着ローラ)11と、その定着ローラ11Aに圧接するローラ状の加圧部材(加圧ローラ)13とからなり、定着ローラ11と加圧ローラ13との圧接部でシート状の被加熱部材Sを挟持搬送し、被加熱部材上の未定着画像を定着する。発熱手段としては、定着ローラ11の内部に配置されるハロゲンヒータや電気ヒータなどがあるが、この他、定着ローラ自体を発熱手段にして電磁誘導加熱方式で発熱させる方式がある。
【0024】
同図に示す画像形成装置で画像形成を実行する際は、感光体1が同図の時計回りに回転され、その表面が帯電ローラ2により均一に帯電される。そして、図示しない原稿読取部で読み取られた原稿の画像データ、あるいは図示しない外部機器(パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等)から入力される画像データ、あるいは通信回線を通して送信されて来た画像データに応じて、光走査装置3の駆動が制御され、光走査装置3の露光により感光体1の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置4のトナーにより反転現像され、感光体1の表面にトナー画像が形成される。このトナー画像は、感光体1のトナー画像が転写位置へ移動するのとタイミングを合わせて図示されない給紙機構により転写部へ送り込まれたシート状の被加熱部材(例えば記録用紙)Sと重ね合わされ、転写ローラ5の作用により、記録用紙Sへ静電転写される。トナー画像を転写された記録用紙Sは、定着装置6でトナー画像を定着された後、装置外部の図示しない排紙部へ排出される。また、トナー画像を記録用紙Sに転写した後の感光体1の表面は、クリーニング装置7により残留トナーや紙粉などが除去され、さらに除電装置8により除電される。
【0025】
図2は本発明に係る加熱部材を用いた定着装置の一実施形態を示す概略構成図である。
同図において符号11Aは定着部材としての定着ローラ、14は発熱手段としてのハロゲンヒータ、15は定着ローラ表層、16は温度検知素子、Sは被記録材をそれぞれ示す。
この定着装置6Aは、ローラ状の定着部材である定着ローラ11Aと、その定着ローラ11Aに圧接するローラ状の加圧部材である加圧ローラ13と、定着ローラ11Aの基材の内側に配設された発熱手段一例であるハロゲンヒータ14と、定着ローラ11Aの表面温度を検知する温度検知素子(例えばサーミスタ)16とを有している。加圧ローラ13と圧接する定着ローラ11Aは時計回りに回転し、定着されるべき未定着トナー画像TIを有するシート状の被記録材(例えば記録用紙)Sをこれら定着ローラ11Aと加圧ローラ13とで加圧しながら通過させて矢印方向に搬送するようになっている。ハロゲンヒータ14は定着ローラ内部から加熱しており、定着ローラ11Aの基材を介して表層15が加熱される。定着ローラ11Aの表面温度は温度検知素子16で検出され、その検出された温度が図示しない制御部にフィードバックされ、定着ローラの表面温度が制御される。
本実施形態では、定着ローラ11Aの表層15は、定着ローラ11Aの表面に形成されており、この表層15は、熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料(例えばフッ素樹脂)が熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料(例えばフッ素樹脂)を取り囲む構造を有している。尚、表層の構成については後述する。
【0026】
図3は本発明に係る定着装置の一実施形態を示す概略構成図である。
同図において符号11Bは定着ローラ、12は加熱手段としての磁束生成コイル、21は磁束生成コイルのコア、22、23はコアの突出部、30は磁束生成コイル12のリッツ線、31、32はコア21と定着ローラ外側表面の間の隙間をそれぞれ示す。磁束生成コイル12とコア21は図示しない電流供給手段と合わせて励磁手段を形成する。
また、同図では、2つのローラ状の回転体(例えば定着ローラ11Bと加圧ローラ13)と、加熱手段(磁束生成コイル)12との位置関係も示している。30は磁束生成コイル12のリッツ線、隙間31、32はコア21の突出部22、23と定着ローラ11Bの外側表面との隙間である。同図では、分かりやすいように各部の寸法を実際より誇張して示してある。また、リッツ線30の断面は、その多くを省略して8個の断面のみを描いてある。
磁束生成コイル30に所定の高周波電流を流すと、後述の導電層に電磁誘導による渦電流が発生し、導電層がジュール熱により発熱する。
【0027】
磁束生成コイル12は、定着ローラ11Bに対して同図に示したような位置に配設されている。すなわち、磁束生成コイル12は、そのコア21がニップ部以外の定着ローラ11B外周面のうち、ニップ部入口に近い側を覆うようにして、コア21の突出部22、23を定着ローラ11Bに向けて配設されている。また、コア21の突出部22、23と定着ローラ11B外側表面との間隔が一定になるように配設されている。コア21の突出部22、23が定着ローラ11Bの外側表面に接近しているほど効率よく定着ローラ11Bを電磁誘導加熱することができる。本実施形態では、このコア21の突出部22、23と定着ローラ11B外側表面との隙間の距離を1mmにした。なお、リッツ線30と定着ローラ11B外周面との隙間の距離が、コア21の突出部22、23と定着ローラ外側表面との隙間の距離よりも長くなるように、コア21の突出部22、23の高さを確保している。そのようにしておくと、コア21の突出部22、23と定着ローラ外側表面とに隙間を確保できているときは、リッツ線30が定着ローラ11Bの外周面に触れることがないから、定着ローラ11Bを傷つけることはない。したがって、磁束生成コイル12と定着ローラ11Bとの接触を防止することが容易になる。
【0028】
本実施形態では、定着ローラ11Bの表層15は、定着ローラ11Bの表面に形成されており、この表層15は、熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料(例えばフッ素樹脂)が熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料(例えばフッ素樹脂)を取り囲む熱伝導層と、該熱伝導層よりも基材側にあり渦電流を発生させて発熱しうる図示しない導電層を有しており、導電層が発熱手段として機能する。従って、磁束生成コイル12による電磁誘導により、定着ローラ11Bの導電層に渦電流を発生させて発熱させることができる。尚、表層の構成に付いては後述する。
同図の例では、加熱手段である磁束生成コイル12は、上側のローラ11Bに対してのみ設けられているが、下側のローラ13も定着ローラ11と同じく導電層を有する構成にして、加熱手段(磁束生成コイル)を設けることにより(すなわち、2つのローラに対してそれぞれ磁束生成コイルを設けることにより)、被加熱部材(記録用紙等)の両面から加熱することができる。
いずれの場合でも、上下のローラ状回転体の圧接領域にシート状の記録材を加圧しながら通過させることによって、記録材上の未定着画像を定着することができる。
【0029】
図4は両面加熱の例を説明するための図である。
同図において符号17は芯金、18は断熱層をそれぞれ示す。
2つの回転体11B,11Cの両方が加熱部材で構成された定着装置6Cであり、両方の回転体に電磁誘導加熱方式の加熱手段(磁束生成コイル)12を有している。すなわち、同図の構成では、2つの回転体11B,11Cは定着ローラ(定着部材)であり、定着ローラ11B,11Cの表層15は、定着ローラ11B,11Cの表面に形成されている。この表層15は、熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料(例えばフッ素樹脂)が熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料(例えばフッ素樹脂)を取り囲む熱伝導層と該熱伝導層よりも基材側にあり渦電流を発生させて発熱しうる導電層を有しており、導電層が発熱手段として機能する。従って、磁束生成コイル12による電磁誘導により、2つの定着ローラ11B,11Cの導電層に渦電流を発生させて発熱させることができ、記録用紙Sの両面に形成された未定着トナー像TIを効率良く加熱して定着することができる。また、同図に示す構成では、2つの定着ローラ11B,11Cは、芯金(基材)17と表層15の間にシリコンゴム等からなる断熱層(または弾性層)18が設けられており、表層15で発熱した熱が芯金(基材)17側に逃げないようになっている。従って、加熱時の立ち上がりが非常に早く、かつ加熱効率が大幅に向上されている。尚、表層や断熱層(または弾性層)の構造については後述する。
【0030】
図5は本発明に係る定着装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
同図において符号19は離形材用塗布手段としての塗布部材を示す。
同図は本発明に係る加熱部材を用いた電磁誘導加熱方式の加熱装置からなる定着装置を示す。この定着装置6Bの構成は図3と同様であるが、定着ローラ11Bと加圧ローラ13の表面にそれぞれ離型剤(例えばシリコンオイル)を塗布する塗布部材19A,19Bが設けられている。この定着装置では、塗布部材19A,19Bによりローラ表面に離型剤が塗布されるので、ローラ表面の離型性を向上することができる。
尚、図5では、定着ローラ11Bと加圧ローラ13の両方に離型剤塗布部材を設けているが、少なくとも定着ローラ11B側に設けられていれば良い。また、このような離型剤塗布部材は、図2に示した定着装置の定着ローラ11Aや、図4に示した定着装置の定着ローラ11B,11Cにも設けることが好ましい。
【0031】
図6は本発明に係る定着装置のさらに他の実施形態を示す概略構成図である。
同図において符号101は加熱ローラ、102は定着ローラ、103は定着ベルト、104は加圧ローラ、105はヒータ、106は入り口ガイド板、107はサーミスタ、110は加圧スプリング、111はベルト張架用スプリング、120はベルト定着装置をそれぞれしめす。
加熱ローラ101は、内部にヒータ105を有し、外周に定着ベルト103が巻き付けられている。定着ベルト103は定着ローラ102に掛け渡されており、定着ローラ102の回転により、定着ベルト103が移動し、加熱ローラ101を従動駆動させる。
加圧ローラ104も内部にヒータ105を有し、加圧スプリング110によって定着ベルト103を挟むように定着ローラ102側に押圧されている。
表面に未定着のトナー像が載せられた図示しないシート状の記録媒体が、入り口ガイド板106に案内されて定着ベルト103に沿うように挿入され、定着ローラ102と加圧ローラ104の加圧部に入り、両ローラによって挟持搬送されながら、熱および圧力によりトナー像が定着される。
以上、本発明に係る画像形成装置と、その画像形成装置に用いられる定着装置(加熱装置)の構成例について説明したが、本発明に係る定着装置の定着部材(加熱部材)としては図示のローラ形状に限らず、無端ベルト状の定着部材(定着ベルト)でも良い。尚、定着ベルトを用いる場合は、定着ベルトを支持するローラ等に発熱手段(ハロゲンヒータ等)を設ける方式や、定着ベルトの裏面(基材側の面)にサーマルヘッド等の発熱手段を接触させる方式、あるいは、定着ベルト自身を発熱手段として電磁誘導加熱で発熱させる方式などがある。
本発明は、以上に示したような定着装置(加熱装置)に用いられるローラ状または無端ベルト状の定着部材(加熱部材)の表層の構成に特徴を有するものであり、定着部材(加熱部材)の表層の離型性を保ちながら、熱伝導性を向上させて、加熱効率を向上するものである。
【0032】
図7は本発明に係る加熱部材の表層の構成例を示す図である。
図8は表層の垂直部分断面を示す図である。
両図において符号41はフッ素樹脂部、42は熱伝導性を有する材料が混在したフッ素樹脂をそれぞれ示す。
図7は表層15の一部の水平断面(機材表面に平行な断面)を示している。
この例では、熱伝導性を有する材料が混在しないフッ素樹脂部41の周りを熱伝導性を有する材料(金属粒子およびセラミック粒子など)が混在したフッ素樹脂42が取り囲んでいる状態を示しており、熱伝導性を有する材料が混在しないフッ素樹脂部41が面積的に大きく占め、離型性を確保している。熱伝導性を有する材料が混在したフッ素樹脂42は、面積的には15%程度であるが、熱伝導性の良好な領域が連続しているため熱伝導率への寄与が大きい。図8は表層15の基材表面に垂直な断面を示す。水平断面と同様に垂直方向も熱伝導性の良好な領域が、表面から基板(基材)17まで続いており、熱伝導率の向上に寄与している。
【0033】
本発明に係る定着部材(加熱部材)の表層15に用いられるフッ素樹脂としては、焼成による溶融成膜性のよい、比較的融点の低いものが好ましく選択される。具体的には、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフロオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の微粉末が挙げられる。より具体的には、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末は、ルブロン(登録商標)L−5、L−2(ダイキン工業社製)、MP1100、1200、1300、TLP−10F−1(三井デュポンフロロケミカル社製)が知られている。テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)粉末は、532−8000(デュポン社製)が知られている。テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)は、MP−10、MP102(三井デュポンフロロケミカル社製)が知られている。また、これらのフッ素樹脂に炭素系材料(例えばカーボン)を含有した樹脂を用いることもできる。
また、粉末の他にPFA微粒子を水溶液に分散した湿式塗料としてはEN700CL(三井デュポンフロロケミカル社製)などが知られている。
【0034】
金属粒子や金属フィラーとしては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)のいずれか1つ以上を含む金属、合金の粒子やフィラーが使用できる。また、非金属材料としてはケイ素や炭化ケイ素、酸化亜鉛等の半導体もしくはアルミナ、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、ダイヤモンド等の絶縁体が使用できる。
これらを球状、球殻、あるいは形状異方性を有するフィラーとして用いる。
【0035】
本発明における形状異方性を有するフィラーとしては、アスペクト比(平均長径/平均短径)が10以上で平均長径が表層の厚さ以下のフィラーを使用する。本発明の形状異方性を有するフィラーとしては、例えば
板状もしくは鱗片状のもの:マイカ、タルク、ガラスフレーク、金属フレーク等
繊維状のもの:ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、金属繊維、セラミック繊維等
針状のもの:金属ウィスカ、セラミックウィスカ
3次元の放射状形状のもの:テトラポット状酸化亜鉛ウィスカ
等、公知のものが使用できる。
その他の形状異方性を有するフィラーも適宜使用可能である。
これらは1種単独でも2種以上を併用しても用いることができる。
上記で作製した被覆粉体を単独、もしくは通常のフッ素樹脂で作製した粉体と機械的に混合した粉体を、金属部材等からなる基材17に静電塗装するか、または、上記粉体を水溶液に分散した湿式塗料にて基材17に塗布し、焼成することにより表層15を作製する。
金属粒子や金属フィラーは、少なくとも被加熱部材を加熱する時の温度より高い融点の物を使用する。
【0036】
図9は加熱部材に断熱層を設ける例を示す図である。
同図において符号43は導電層を示す。
本発明の加熱部材(定着部材)を図3〜5に示したような電磁誘導加熱方式の定着装置に用いる場合は、表層15の導電層43で発生した熱が基材17側に逃げないように、表層15と基材17の間に断熱層(または弾性層)18を設けると良い。同図はその一例を示しており、表層の一部の垂直断面を示す図である。同図の例は、基材17側の表面にシリコンゴムからなる断熱層(または弾性層)18を設け、その上に図6,7と同様の構成の表層15を形成したものである。
表層15に外部から高周波電磁界を印加すると、表層15の導電層43に渦電流が発生し発熱するが、このとき、表層15および導電層43はシリコンゴムからなる断熱層18で断熱されているため、素早い温度上昇を行うことができる。また、横方向は熱的にも連続しているため、一部の熱低下が発生しても素早く均一化される。従って、立ち上がりが早く、熱の均一化も良く、加熱効率の良い加熱部材(定着部材)を得ることができる。
【0037】
本発明の加熱部材(定着部材)においては、表層15の水に対する接触角が80°以上である。これにより、ワックス含有のトナーを用いる場合、トナー中から出て表層側に付着したワックスが、表層上ではじかれることがないため、直接トナーの樹脂等が表層に触れてオフセットしたり、ホットメルト接着剤のように機能して定着部材に記録材が巻きつくといったことが生じない。
この水に対する接触角が、80°未満になると濡れ過ぎるため、トナー樹脂自身の接着力が急激に増大してワックスによる付着防止効果を上回り、トナー全体が表層側に移行し、定着不良を生じる。尚、本発明における接触角の測定は、加熱部材(定着部材)の表層材料の平面状の試験片を形成し、協和界面科学社製のCA−X型で室温において液滴法によって測定した。
【0038】
加熱部材(定着部材)の表層15の水に対する接触角を、80°以上の範囲内に調整する方法としては、表層15の形成材料であるフッ素樹脂と金属との配合比を変化させ、水に対する接触角を制御する方法がある。この場合、フッ素樹脂と金属の種類、混合方法、加熱温度の組合せで水に対する接触角を制御することができる。
また、加熱部材(定着部材)の表層15の金属材料および非金属材料部分は、任意の断面において最大幅部が30μm以下である。
このように、表層の金属材料および非金属材料部分がその断面において最大幅部が30μm以下となるように表層を形成した場合、仮にフッ素樹脂よりも非粘着性に劣る金属材料および非金属材料部分が表面に露出したとしても、トナーが金属材料および非金属材料部分に直接接触する面積が小さくなるため、オフセット防止に対して有利な構造となる。
以下、本発明に係る加熱部材(定着部材)とその作製方法の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0039】
図2に示すような構成の定着装置6Aに用いられ、図6,7に示したような構成の表層15を有する加熱部材(定着部材)11Aの実施例について説明する。
[実施例1−1]
三井デュポンフロロケミカル社製の湿式フッ素塗料EN700CL(平均粒径1μm以下)に乾燥PFA重量に対し、Ni粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で89:11として混入して攪拌分散し、さらに三井デュポンフロロケミカル社製PFA粉(MP102、平均粒径φ20μm)を湿式フッ素塗料EN700CL(平均粒径1μm以下)の乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、アルミニウム基板にスプレー塗装を行い、フッ素樹脂の融点以上の380℃で焼成し、樹脂を溶融させた後に冷却し、基板より剥離し、サンプルを作製した。なおこのとき、全フッ素樹脂量に対するNi粉の体積比は93:7である。
また、別の実施例として前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、Ni粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、アルミニウム基板にスプレー塗装を行い、380℃で焼成し、樹脂を溶融させた後に冷却し、基板より剥離し、サンプルを作製した。なおこのとき、全フッ素樹脂量に対するNi粉の体積比は87:13である。
これらにより、100μm厚のシートを作製し、レーザフラッシュ法により熱拡散率を測定した。そして、別に測定した体積比熱とから、熱伝導率を計算し求めた。
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
さらに、比較例として、三井デュポンフロロケミカル社製の湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、Ni粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で93:7および87:13としてそれぞれ混入し、攪拌分散した後、アルミニウム基板にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、それぞれ同様にシートを作製した。
なお、熱伝導率の倍率は、上記の測定と計算で求めた熱伝導率を、PFAの熱伝導率で割ったものであり、PFAの何倍の熱伝導率かを示している。
【0042】
[実施例1−2]
実施例1−1と同様に、
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、Ni粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で89:11として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、
定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製し、定着ローラ11Aとした。表層の最終厚みは40μmである。このとき、全フッ素樹脂量に対するNi粉の体積比は93:7である。
【0043】
また、別の実施例として前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、Ni粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製し、定着ローラ11Aとした。表層の最終厚みは40μmである。このとき、全フッ素樹脂量に対するNi粉の体積比は87:13である。
これらのローラを(株)リコー製の画像形成装置MF4570の定着部に装着し、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成のテスト機(定着装置)に通して定着した。このMF4570のトナーは、ワックス入りのトナーである。このMF4570に10000枚の黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態および静電オフセット発生の有無を観察した。観察結果を下記の表2に示す。表2に示すように、特に大きな付着は観察されず。通常のものと何ら変わりがなかった。
【0044】
【表2】

【0045】
[比較例1−2]
上記の実施例1−2に対し、トナー付着が発生する比較例を以下に示す。
基材については、例えば直径φ40mmで、定着部の肉厚が1.5mmのアルミニウム製の定着ローラの芯金表面をブラスト処理し粗面化する。
その後、前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、Ni粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した所定の体積比でそれぞれ混入し、分散した後、アルミニウム製の定着ローラの芯金にスプレー塗装し、380℃で30分加熱し、加熱炉の外で強送風により急冷する。
尚、表面粗さを所定の大きさに揃える必要がある場合には、例えばテープ研磨装置にかけ研磨することで可能である。例えばコランダムの#800,#1500にてテープ研磨した場合、表面粗さをRzで2μm以下とできた。この定着ローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に装着し、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚の黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察したときのPFA:Ni(体積比)による比較例を下記の表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
[実施例1−3]
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で89:11として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、アルミニウム基板にスプレー塗装を行い、380℃で焼成し、樹脂を溶融させた後に冷却し、基板より剥離し、サンプルを作製した。なおこのとき、全フッ素樹脂量に対する銀粉(平均粒径0.5μm)の体積比は93:7である。
また、別の実施例として前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、アルミニウム基板にスプレー塗装を行い、380℃で焼成し、樹脂を溶融させた後に冷却し、基板より剥離し、サンプルを作製した。なおこのとき、全フッ素樹脂量に対する銀粉(平均粒径0.5μm)の体積比は87:13である。
【0048】
これらにより、100μm厚のシートを作製し、レーザフラッシュ法により熱拡散率を測定した。そして、別に測定した体積比熱とから、熱伝導率を計算し求めた。
結果を表4に示す。
さらに、比較例として、前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉を比重から計算した体積比で93:7および87:13としてそれぞれ混入し、攪拌分散した後、アルミニウム基板にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、それぞれ同様にシートを作製した。
なお、熱伝導率の倍率は、上記の測定と計算で求めた熱伝導率を、PFAの熱伝導率で割ったものであり、PFAの何倍の熱伝導率かを示している。
【0049】
【表4】

【0050】
[実施例1−4]
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で89:11として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、
定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製し、定着ローラ11Aとした。表層の最終厚みは40μmである。このとき、全フッ素樹脂量に対する銀粉の体積比は93:7である。
【0051】
また、別の実施例として前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製し、定着ローラ11Aとした。表層の最終厚みは40μmである。このとき、全フッ素樹脂量に対する銀粉の体積比は87:13である。
このローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に装着し、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚の黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態および静電オフセット発生の有無を観察したときの観察結果を下記の表5に示す。表5に示すように、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。
【0052】
【表5】

【0053】
また、下記の表6に示すように、トナーの定着できる温度範囲であるコールドオフセット温度とホットオフセット温度を求めると、コールドオフセット温度が下がり、定着温度幅が広くなっていることがわかった。これにより、高速通紙時での温度の低下が発生しても安定した定着が行えることがわかった。
なお、比較例として、前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀を比重から計算した体積比で87:13としてそれぞれ混入し、攪拌分散した後、アルミニウム管にスプレー塗装を行い、同様にローラを作製した。
【0054】
【表6】

【0055】
[実施例1−5]
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製し、定着ローラとした。表層の最終厚みは40μmである。このとき、全フッ素樹脂量に対する銀粉の体積比は87:13である。
【0056】
このローラを(株)リコー製の画像形成装置IMAGIO NEO 750の定着部に装着した。このIMAGIO NEO 750のトナーは離型性が不十分なため、定着ローラにシリコンオイルを塗布するシリコンオイル含侵されたオイル塗布部材を追加している。このIMAGIO NEO 750の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成のテスト機(定着装置)を用い、10000枚の黒ベタ画像を通して定着を繰返した後、ローラ表面のトナーの付着状態および静電オフセット発生の有無を観察した。観察の結果、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。
【0057】
[実施例1−6]
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、鱗片状のNi粉(厚さ平均0.8μm、直径平均50μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製し、定着ローラとした。表層の最終厚みは40μmである。このとき、全フッ素樹脂量に対する鱗片状のNi粉の体積比は87:13である。
このローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に装着し、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成のテスト機(定着装置)に通して定着した。このMF4570のトナーは、ワックス入りのトナーである。このMF4570に10000枚の黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した結果、1000枚程度でトナーの付着が発生した。観察によると研磨により、Niの粉が広く表面に現れたところにトナーが付着していた。同様の大きさのマイカ(雲母)についてもほぼ同様の結果であった。しかし、直径平均が30μm程度の鱗片状のNi粉では、10000枚まで行った結果では、トナーの付着は見られなかった。
【0058】
[実施例1−7]
実施例1−6と同様にローラを作製し、表面粗さをRzで2μmとしたものを作製した。このローラを前記画像形成装置MF4570の定着ユニットに用いた定着試験機を作製し、MF4570の未定着画像を加圧力を変えて通紙した。試験結果を下記の表7に示す。表7に示すように、単位面積当たりの加圧力が0.5(kgf/cm)以下では、定着性が非常に悪く、加圧力が4.0(kgf/cm)以上では、定着ローラへのトナー付着が見られた。定着性は、定着後のべた画像に綿の布を擦りつけ顕著に布にトナーが付いたものを定着不良とし、簡易判定した。
【0059】
【表7】

【0060】
[実施例1−8]
金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタン、の各金属粉(平均粒径各1.5μm)について
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製し、定着ローラとした。
各ローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に装着し、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成のテスト機(定着装置)に通して定着した。このMF4570のトナーは、ワックス入りのトナーである。このMF4570に10000枚の黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態および静電オフセット発生の有無を観察した。観察結果を下記の表8に示す。表8に示すように、特に大きな付着は観察されず。通常のものと何ら変わりがなかった。
【0061】
【表8】

【0062】
次に、トナーの定着できる温度範囲であるコールドオフセット温度とホットオフセット温度を求める、各金属による比較例を下記の表9に示す。表9からわかるように、コールドオフセット温度が下がり、定着温度幅が広くなっていることがわかった。これにより、高速通紙時での温度の低下が発生しても安定した定着が行えることがわかった。尚、表9には、比較例としてPFA粉(MP102(三井デュポンフロロケミカル社製)、平均粒径φ20μm)のみのものも示す。
【0063】
【表9】

【0064】
[実施例1−9]
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、これをコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さをRzで2μm以下、3μm、5μm,7μmとしたものを作製し、定着ローラとした。表層の最終厚みは40μmである。このローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に装着し、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚の黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察したときの観察結果を下記の表10に示す。
この定着ローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に装着し、10000枚の黒ベタ画像を通して定着を繰り返し、ローラ表面のトナー付着量と紙の巻き付きを見た。この結果、表面粗さがRzで5μm以下であれば、効果があることが確認された。また、7μmのものは、MF4570でジャムが多発したため実験を取りやめている。
【0065】
【表10】

【実施例2】
【0066】
次に、図3に示すような構成の電磁誘導加熱方式の定着装置(加熱装置)6Bに用いられる加熱部材(定着部材)11Bの実施例について説明する。
[実施例2−1]
導電層の構成材料として、SUS430ステンレス鋼などの導電性を有する金属製部材で厚みtが100μmを定着ローラの芯金となるアルミニウム管上に配置し、さらにその上に実施例1−2と同様にして、前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、Ni粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、その後に研磨することにより、定着ローラとした。表層の最終厚みは100μmである。これを粒径の異なるコランダム粒子で研磨を行い、最表層の表面粗さを10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製した。
【0067】
この定着ローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に用い、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図3に示すような構成の電磁誘電加熱用のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚の黒ベタ画像を通して定着を繰返した後、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した結果、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。また、このとき使用した芯金(基材)は、定着部の管の厚みが1.5mmと厚く、通常のハロゲンヒータによる内部加熱では、ローラの表面温度が180℃になるのに50秒必要であるが、本実施例の電磁誘導加熱式の定着ローラでは、5秒程度であった(両方とも定格出力800Wの場合)。
【0068】
[実施例2−2]
導電層の構成材料として、SUS430ステンレス鋼などの導電性を有する厚みtが100μmの金属製部材を定着ローラの芯金となるアルミニウム管上に配置し、さらにその上に実施例1−4と同様に、
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、380℃で塗装した樹脂を溶融させた後に冷却し、その後に研磨することにより、定着ローラとした。表層の最終厚みは100μmである。これを粒径の異なるコランダム粒子で研磨を行い、最表層の表面粗さを、10点平均粗さ(Rz)で2μm以下としたものを作製した。
【0069】
この定着ローラを前記画像形成装置MF4570の定着部に用い、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図3に示すような構成の電磁誘電加熱用のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚の黒ベタ画像を通して定着を繰返した後、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した結果、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。また、このとき使用した芯金は、定着部の管の厚みが1.5mmと厚く、通常のハロゲンヒータによる内部加熱では、ローラの表面温度が180℃になるのに50秒必要であるが、本実施例の電磁誘導加熱式の定着ローラでは、5秒程度であった(両方とも定格出力800Wの場合)。
【0070】
[実施例2−3]
導電層の構成材料として、SUS430ステンレス鋼などの導電性を有する厚みtが100μmの金属製部材を定着ローラの芯金となるアルミニウム管上のシリコンゴム層の上に配置し、さらにその上に、実施例1−4と同様に、
前記湿式フッ素塗料EN700CLに乾燥PFA重量に対し、銀粉(平均粒径0.5μm)を比重から計算した体積比で82:18として混入して攪拌分散し、さらに前記PFA粉を前記湿式フッ素塗料EN700CLの乾燥PFA重量に対し、比重から計算した体積比で65:35として混入して攪拌分散した後、定着ローラの芯金となるアルミニウム管にスプレー塗装を行い、340℃で焼成溶融させた後に冷却し、定着ローラとした。表層の厚みは100μm(離型層70μm、導電層30μm)である。これを粒径の異なるコランダム粒子で研磨を行い、表面粗さをRzで2μm以下としたものを作製した。この表層の表面は図6と同様の構造である。また、定着ローラの断面構造は図9のようになり、表層15および導電層43と芯金(基材)17の間にシリコンゴムからなる断熱層(または弾性層)18を有する構成となる。
【0071】
この定着ローラを市販のカラー複写機の定着部に用い、シリコンオイルレスの構成とし、画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図3に示すような構成の電磁誘電加熱用のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚のカラーのベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した結果、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。また、このとき使用した芯金(基材)は、定着部の管の厚みが1.5mmと厚く、通常のハロゲンヒータによる内部加熱では、ローラの表面温度が180℃になるのに50秒必要であるが、本実施例の電磁誘導加熱式の定着ローラでは、15秒程度であった(両方とも定格出力800Wの場合)。また、本実施例の構成では、最表面に発熱層があるためモノクロ機並みの立ち上げ時間となっている。
【0072】
[実施例2−4]
以上の実施例2−1〜2−3では、図3に示す構成の定着装置6Bに実施例5に係る定着ローラ11Bを装着してテストした例を示したが、図4に示すような構成の加熱手段12を2つ備えた定着装置6Cにも同様に適用でき、上下の2つのローラに実施例2−3に係る定着ローラを用いることにより、記録用紙Sの両面を同時に加熱できるようになる。従って、この構成では、記録用紙Sの両面から効率良く加熱できるようになり、さらには、記録用紙の両面に付いた未定着トナー像を同時に定着することができる。
【実施例3】
【0073】
図10は表層の構成の違いによる熱伝導率の違いを示す図である。
以上の実施例1〜2に示したように、本発明の加熱部材(定着部材)は、「離型性を有するフッ素樹脂に、少なくとも1種類の熱伝導性の金属材料および少なくとも1種類の熱伝導性の非金属材料が混在した表層を有し、その熱伝導性の金属材料および熱伝導性の非金属材料が連接していること」により、表層の離型性を保ちながら熱伝導率を向上することができる。さらに、フッ素樹脂とし、炭素系材料を含有したフッ素樹脂を用いることにより、表層の熱伝導率や耐久性をさらに向上することができる。
ここで、図10は、「(A)フッ素樹脂であるPFAの熱伝導率」に対し、(B)炭素系材料を含有させたPFA、(C)Agが混在したPFAがAgが混在しないPFAを取り囲むもの、(D)Agが混在したPFAが炭素系材料を含有させたPFAを取り囲むもの、を作成して、それらの熱伝導率を比較したものであり、PFAの熱伝導率に対する倍率で表示している。
同図より明らかなように、炭素系材料を含有したフッ素樹脂を用いることにより、熱伝導率をさらに向上することができる。特に炭素系材料含有フッ素樹脂に、Agを混在させたものは、PFAに比べて8.6倍の熱伝導率が得られる。従って、前述の実施例において、表層を構成するフッ素樹脂に、炭素系材料含有フッ素樹脂を用いることにより、表層の熱伝導率をさらに改善することが可能となる。
【0074】
以上説明したように、本発明に係る加熱部材(定着部材)では、離型層が良熱伝導層であるため、低熱伝導の従来のフッ素樹脂材料で起こる加熱部材(定着部材)表面の温度低下を小さくできる。そのため、画像形成装置の定着装置に用いた場合に、連続通紙時、従来の画像形成装置で、表面温度低下の時に行われる、紙の通紙速度の減速等を行わずにすみ、安定した画像形成が可能となる。また、熱伝導率の向上は、未定着画像を定着部材の温度をどこまで下げて定着できるかというコールドオフセット温度の測定でも評価できる。このように、本発明では、定着時の加熱効率を上げることができ、画像形成の生産性を向上することができる定着部材を提供することができ、それを用いた定着装置を提供することができる。
【0075】
また、本発明に係る加熱部材では、表層の離型層を、電磁誘導加熱の発熱層(導電層)上に直接形成することができるため、加熱時の立ち上げ時間を非常に短くすることができる。また、通常用いられる画質向上のためのシリコンゴム層等を発熱部より奥(基材側)に配置できるため、加熱のタイムラグを極小にすることができる。また、通常の構成では、離型性を確保するために必須のフッ素樹脂は熱伝導率が低いため加熱効率低下になるが、本発明では、離型層を電磁誘導加熱の発熱層(導電層)上に直接形成することができるため、離型性を損なわずに電磁誘導加熱に用いることができるので非常に有利である。したがって、本発明の加熱部材を用いた加熱装置は、複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリなどの画像形成装置の定着装置として好適に利用することができ、信頼性の高い、エネルギー効率のよい画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る加熱部材を用いた定着装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る定着装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図4】両面加熱の例を説明するための図である。
【図5】本発明に係る定着装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図6】本発明に係る定着装置のさらに他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本発明に係る加熱部材の表層の構成例を示す図である。
【図8】表層の垂直断面を示す図である。
【図9】加熱部材に断熱層を設ける例を示す図である。
【図10】表層の構成の違いによる熱伝導率の違いを示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1:感光体
3:光走査装置
4:現像装置
5:転写ローラ
6,6A,6B,6C:定着装置(加熱装置)
11,11A,11B,11C:定着ローラ(定着部材(加熱部材))
12:磁束生成コイル(加熱手段)
13:加圧ローラ(加圧部材)
14:ハロゲンヒータ(発熱手段)
15:表層
16:温度検知素子
17:基材(芯金)
18:断熱層(または弾性層)
19A,19B:離型剤塗布部材
21:コア
30:リッツ線
41:熱伝導性を有する材料が混在しないフッ素樹脂部
42:熱伝導性を有する材料が混在したフッ素樹脂
43:導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱部材に接触し該被加熱部材を加熱する加熱部材であって、該加熱部材は基材と、該基材の上側に設けられた離型性を有する樹脂材料に熱伝導性を有する材料が混在した表層とを有し、該表層は、熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料と、熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料とを含み、前記熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料が前記熱伝導性を有する材料が混在しない樹脂材料を取り囲むことを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱部材において、前記離型性を有する樹脂材料はフッ素樹脂であることを特徴とする加熱部材。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱部材において、前記フッ素樹脂は炭素系材料を含有していることを特徴とする加熱部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の水に対する接触角が80°以上であることを特徴とする加熱部材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料部分は、前記基材面に垂直な断面において厚さが50μm以下であることを特徴とする加熱部材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の熱伝導性を有する材料が混在した樹脂材料部分は、任意の断面において最大幅部が30μm以下であることを特徴とする加熱部材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層に含まれる熱伝導性を有する材料は、前記被加熱部材を加熱する時の温度より高い融点を有することを特徴とする加熱部材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記表層の10点平均粗さ(Rz)による表面粗さを5μm以下にすることを特徴とする加熱部材。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記基材はローラ状もしくは無端ベルト状に形成され、該基材の内側に発熱手段を有し、前記表層が熱伝導層として機能することを特徴とする加熱部材。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一つに記載の加熱部材において、前記基材はローラ状もしくは無端ベルト状に形成され、前記基材と前記表層の間に発熱手段を有し、該発熱手段は外部からの作用により渦電流を発生させることができる導電層であることを特徴とする加熱部材。
【請求項11】
請求項10に記載の加熱部材において、前記基材と、前記導電層との間に弾性層もしくは断熱層を有することを特徴とする加熱部材。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一つに記載の加熱部材の表層の作製方法において、フッ素樹脂微粒子を水溶液中に分散して作製した塗装液に、熱伝導性を有する材料および前記フッ素樹脂微粒子よりも粒径が大きいフッ素樹脂粒子を混合し、耐熱性基材に塗装した後、加熱して離型層としたことを特徴とした加熱部材離型層の作製方法。
【請求項13】
請求項12に記載の加熱部材離型層の作製方法において、前記フッ素樹脂の融点以上に加熱することを特徴とする加熱部材離型層の作製方法。
【請求項14】
請求項10またはし11に記載の加熱部材と、励磁手段と、を有し、該励磁手段によって前記渦電流を発生させることを特徴とする加熱装置。
【請求項15】
請求項9ないし11のいずれか一つに記載の加熱部材を有し、該加熱部材を被加熱部材であるシート状の記録材に接触して該記録材を加熱し、該記録材上の未定着画像を定着することを特徴とする定着装置。
【請求項16】
請求項14に記載の加熱装置を有し、前記加熱部材を被加熱部材であるシート状の記録材に接触して該記録材を加熱し、該記録材上の未定着画像を定着することを特徴とする定着装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の定着装置において、前記加熱部材はローラ状に形成され、少なくとも1つの該加熱部材を含む2つのローラ状回転体をなす部材の圧接領域に前記シート状の記録材を加圧しながら通過させることを特徴とする定着装置。
【請求項18】
請求項15または16に記載の定着装置において、前記加熱部材に圧接される加圧部材を有し、該加圧部材が前記加熱部材に圧接される領域を前記シート状の記録材を加圧しながら通過させることを特徴とする定着装置。
【請求項19】
請求項17または18に記載の定着装置において、前記シート状の記録材を通過させる領域における両部材の接触面の単位面積当たりの加圧力が0.5[kgf/cm]以上となるようにしたことを特徴とする定着装置。
【請求項20】
請求項15ないし19のいずれか1つに記載の定着装置において、前記シート状の記録材を加圧しながら通過させる部材の少なくとも前記発熱部材を有する部材に離型剤を塗布する手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項21】
請求項15または16に記載の定着装置を用いる定着方法であって、前記加熱部材に圧接される加圧部材を有し、該加圧部材が前記加熱部材に圧接される領域を前記シート状の記録材を加圧しながら通過させることを特徴とする定着方法。
【請求項22】
請求項21に記載の定着方法において、前記未定着画像はワックス含有のトナーからなることを特徴とする定着方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の定着方法において、前記シート状の記録材を加圧しながら通過させる部材の少なくとも前記発熱部材を有する部材に離型剤を塗布することを特徴とする定着方法。
【請求項24】
請求項15ないし20のいずれか1つに記載の定着装置と、前記未定着画像を前記シート状の記録材上に形成する画像形成部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項25】
請求項21ないし23のいずれか1つに記載の定着方法を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−156221(P2006−156221A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347033(P2004−347033)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】