説明

加飾装置

【課題】樹脂部と金属体とを組み合わせて一体成形される複合品の金属製の成形基材の表面に適切に加飾を施すことが可能な加飾装置を提供する。
【解決手段】金属製の成形基材2の裏面に樹脂部を一体成形すると共に、金属製の成形基材2の表面2bに加飾を施す加飾装置100は、金属製の成形基材2が配置される第1成形型K1と、当該第1成形型K1と型締めされる第2成形型K2と、第1成形型K1と第2成形型K2との型締め時に、金属製の成形基材2の表面2bに施す加飾が付された加飾フィルムLを金属製の成形基材2の表面2bの側に配設する加飾フィルム配設機構30と、金属製の成形基材2を裏面の側から加飾フィルムLの側に押圧する押圧手段と、第2成形型K2と加飾フィルムLとの間に配設され、押圧手段による押圧力に応じて加飾フィルムLを金属製の成形基材2の表面2bに押圧する弾性材Dと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の成形基材の一方の面に加飾を施すことが可能な加飾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表面に立体的形状や平面模様等の加飾が施された製品に対するニーズが高まっている。このような加飾が施された製品の一例として、樹脂により形成された樹脂成形品や、樹脂部と金属製の成形基材とを組み合わせて一体成形された複合品がある。例えば、樹脂成形品の表面に加飾する技術として、下記に出典を示す特許文献1に記載されるものがある。
【0003】
特許文献1に記載の技術によれば、樹脂成形に用いられる一対の成形型の間に、所期の加飾が施された熱可塑性樹脂フィルムを配置した状態で型締めし、当該一対の成形型の間に形成されたキャビティ内に所定の圧力で溶融状態の成形樹脂を射出する。当該射出された成形樹脂の硬化と同時に成形樹脂表面に化粧シートを一体的に接着させることにより樹脂成形品の表面に加飾を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−214499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、樹脂成形品の表面であれば溶融樹脂を射出する際の圧力により適切に加飾することができる。しかしながら、当該技術を樹脂部と金属製の成形基材とを組み合わせて一体成形する複合品において、金属製の成形基材の表面に加飾を施す場合には以下に例示される問題が生じる可能性がある。例えば、一対の成形型の間に加飾が施された加飾フィルムと金属製の成形基材とを配置した状態で型締めを行い、金属製の成形基材の裏面側に溶融状態の成形樹脂を射出する際の圧力で金属製の成形基材に加飾フィルムを押し付けて金属製の成形基材の表面に加飾する構成の場合においては、樹脂部に直接加飾を施す場合と比べて、溶融樹脂の射出圧力が金属製の成形基材まで到達し難く、加飾の転写性や密着性に問題が生じうる。また、成形基材の一部の面に対して部分的に樹脂を充填する製品においては、樹脂部分以外に射出圧力が伝わらず、加飾の転写性や密着性に問題が生じうる。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、樹脂部と金属製の成形基材とを組み合わせて一体成形される複合品の金属製の成形基材の表面に加飾を施す場合において、加飾を適切に施すことができる加飾装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る加飾装置の特徴構成は、金属製の成形基材の一方の面に樹脂部を一体成形すると共に、前記金属製の成形基材の他方の面に加飾を施すために、前記金属製の成形基材が配置される第1成形型と、前記第1成形型と型締めされる第2成形型と、前記第1成形型と前記第2成形型との型締め時に、前記金属製の成形基材の他方の面に施す加飾が付された加飾フィルムを前記金属製の成形基材の他方の面の側に配設する加飾フィルム配設機構と、前記金属製の成形基材を前記一方の面の側から前記加飾フィルムの側に押圧する押圧手段と、前記第2成形型と前記加飾フィルムとの間に配設され、前記押圧手段による押圧力に応じて前記加飾フィルムを前記金属製の成形基材の他方の面に押圧する弾性材と、を備える点にある。
【0008】
このような特徴構成を有する結果、金属製の成形基材の一方の面に一体形成される樹脂部の大きさに拘らず、第1成形型と第2成形型との型締めにより加飾フィルムを金属製の成形基材の他方の面に押し付けることが可能となる。したがって、金属製の成形基材の他方の面に適切に加飾を施すことが可能となる。
【0009】
また、前記樹脂部が、前記金属製の成形基材の一方の面に射出成形により一体成形され、前記押圧手段による押圧力が、前記第1成形型と前記第2成形型との型締め時に、発生する型締め圧力、或いは前記第1成形型と前記金属製の成形基材との間に形成される樹脂注入用のキャビティに注入される溶融樹脂の射出圧力であると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、射出成形においてキャビティに溶融樹脂を注入する際の射出圧力で金属製の成形基材を加飾フィルムに押し付けると共に、弾性材で加飾フィルムを金属製の成形基材の他方の面に押し付けることができる。また、樹脂部のない成形基材の部分においても型締め時の型締め圧力で金属製の成形基材を加飾フィルムに押し付けると共に、弾性材で加飾フィルムを金属製の成形基材の他方の面に押し付けることができる。したがって、金属製の成形基材の他方の面に適切に加飾を施すことが可能となる。
【0011】
また、前記弾性材が、シート状であり、前記第1成形型と前記第2成形型との型締め時に、当該型締めによって前記第2成形型の形状に沿うように変形すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、弾性材を予め第2成形型の形状に加工しておく必要がない。したがって、弾性材の製造コストを低減することができるので、低コストで加飾装置を実現できる。
【0013】
また、前記弾性材が、前記金属製の成形基材の他方の面に沿った形状で形成されてあると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、金属製の成形基材の他方の面が凹凸を有する形状であった場合でも加飾フィルムを金属製の成形基材の他方の面に、より隙間無く密着させることが可能となる。したがって、金属製の成形基材の他方の面に適切に加飾を施すことができる。
【0015】
また、前記弾性材が、前記金属製の成形基材の他方の面に沿った形状で形成され、前記第2成形型に付設されてあると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、第1成形型と第2成形型との型締め時における弾性材の位置ずれを防止できる。したがって、例えば金属製の成形基材の他方の面が複雑な形状からなる場合であっても、当該金属製の成形基材の他方の面に加飾フィルムを押し付けることができるので、適切に加飾を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る加飾装置により加飾が施された複合品を示す一部切欠き斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る型締め前の状態を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る型締め前の状態を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る樹脂注入後の状態を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る型締め前の状態を示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る型締め前の状態を示す断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る型締め前の状態を示す断面図である。
【図8】第5の実施形態に係る加飾装置により加飾が施された複合品を示す斜視図である。
【図9】第5の実施形態に係る樹脂注入後の状態を示す断面図である。
【図10】第6の実施形態に係る加飾装置により加飾が施された複合品を示す斜視図である。
【図11】第6の実施形態に係る樹脂注入後の状態を示す断面図である。
【図12】第7の実施形態に係る加飾装置により加飾が施された複合品を示す斜視図である。
【図13】プレス加工により複合品を形成する際の型締め後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に係る加飾装置100は、金属製の成形基材2の一方の面2aに射出成形により樹脂部3を一体成形すると共に、金属製の成形基材2の他方の面2bに加飾を施す機能を備えている。図1は、本加飾装置100(図2参照)により加飾された複合品1の斜視図であり、例えば、携帯電話等の電子機器の外装材として使用することが可能である。本実施形態における複合品1とは、金属製の成形基材2と樹脂部3とが一体成形された部材を示すものとして用いられる。なお、図1に示される斜視図においては、金属製の成形基材2と樹脂部3との構成が理解し易いように、金属製成形基材2の一部が切欠き状態で示される。
【0019】
このような複合品1は、図1に示されるように、金属製の成形基材2の一方の面2aに樹脂部3が一体成形され、他方の面2bに加飾Sが施される。したがって、一方の面2aは裏面に相当し、他方の面2bは表面に相当する。このため、以下の説明では理解を容易にするために、一方の面2aを裏面2aとし、他方の面2bを表面2bとして説明する。加飾Sは、例えば文字、模様若しくは色彩等又はこれらの結合からなるものであれば良い。また、本加飾装置100によれば、加飾Sは金属製の成形基材2の表面2bの全面に施すことも可能であるし、図1に示されるように金属製の成形基材2の表面2bの一部(例えば正面部分2cや側面部分2d)に施すことも可能である。本実施形態においては、図1に示されるように表面2bにおける正面部分2cの一部と側面部分2dとに加飾Sを施す場合の例について説明する。
【0020】
図2は、図1に示される複合品1に加飾Sを施すのに好適に利用される本実施形態に係る加飾装置100の概略構成を示す斜視図である。また、図3には、加飾装置100の断面図が示される。加飾装置100は、第1成形型K1、第2成形型K2、フィルム配設機構30、弾性材Dを備えて構成される。第1成形型K1には、金属製の成形基材2が配置される。金属製の成形基材2とは、上述の複合体1を構成し、その表面2bに加飾Sが施される。このような金属製の成形基材2はプレス等により予め所定の形状に形成される。第1成形型K1は、金属製の成形基材2の裏面2aに対応する形状を有するキャビティ面K1Aが形成される。第1成形型K1(第1成形型K1のキャビティ面K1A)と金属製の成形基材2との間には、溶融状態の樹脂を注入する樹脂注入用のキャビティV(図4参照)が形成される。第1成形型K1には、当該キャビティVに溶融状態の樹脂を注入するためのゲート11も形成される。
【0021】
第2成形型K2は、第1成形型K1と型締めされる。第2成形型K2も、上述の第1成形型K1と同様に、金属製の成形基材2の表面2bに沿った形状を有するキャビティ面K2Aが形成される。これにより、第1成形型K1と第2成形型K2とを型締めすることにより、第2成形型K2で金属体2を支持することが可能となる。
【0022】
加飾フィルム配設機構30は、第1成形型K1と第2成形型K2との型締め時に、加飾フィルムLを金属製の成形基材2の表面2bの側に配設する。加飾フィルム配設機構30は転写シート送り装置として機能し、第1成形型K1と第2形成型K2との間に加飾フィルムLを送り込む。上述のように、第2成形型K2のキャビティ面K2Aの形状は金属製の成形基材2の表面2bの形状に沿ったものである。したがって、第1成形型K1と第2形成型K2とが型締めされた場合には、加飾フィルムLが金属製の成形基材2の表面2bに押し付けられることになる。
【0023】
また、加飾フィルムLには、金属製の成形基材2の表面2bに施す加飾Sが付されている。特に、加飾フィルムLは、金属体2の表面2bに接する側に加飾Sが付される。本実施形態における加飾フィルムLは、当該加飾フィルムLに付された加飾Sを金属製の成形基材2の表面2bに転写可能な転写フィルムから構成される。上述のように、加飾フィルムLは、図2及び図3に示されるように加飾フィルム配設機構30により第1成形型K1と第2形成型K2との間に送り込まれる。この送り込みは、転写1回毎に新たな転写フィルムが金属製の成形基材2の表面2bに対向するように行われる。これにより、金属製の成形基材2の表面2bに適切に加飾Sを施すことが可能となる。
【0024】
また、第2成形型K2と加飾フィルムLとの間には弾性材Dが配設される。本実施形態に係る弾性材Dは、図2及び図3に示されるようにシート状で形成される。また、弾性材Dは、上述の加飾フィルムLと同様に、第1成形型K1と第2成形型K2との型締め時に、当該型締めによって第2成形型K2の形状に沿うように変形して挟み込まれる(図4参照)。
【0025】
弾性材Dは、耐熱性及び弾性力のあるシリコンゴムにより形成することが可能である。また、シリコンゴムよりも機械的強度の優れた弾性材(例えば、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、二トリルゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム等)を用いることも可能である。もちろん、上記以外のゴムを用いることも可能であるし、適宜所定の特性を向上するために材料を添加したゴムを用いることも可能であるし、ゴム以外の弾性材を用いることも可能である。
【0026】
本実施形態に係る弾性材Dは、金属製の成形基材2の表面2b全体を覆う形状のものが用いられる。また、少なくとも加飾Sが施される範囲を覆うことが可能なように弾性材Dの形状が決定される。係る場合には、弾性材Dの形状は、少なくとも金属製の成形基材2の表面2bに施す加飾Sの位置、大きさ、範囲に応じて決定すると好適である。したがって、第1成形型K1と第2成形型K2との型締めが行われた場合に、加飾フィルムLを金属製の成形基材2の表面2bに押圧することが可能となる。これにより、金属製の成形基材2の表面2bと加飾フィルムLとの密着性を高めることができるので、適切に金属製の成形基材2の表面2bに加飾Sを施すことが可能となる。
【0027】
なお、弾性材Dは上述のように第1成形型K1と第2成形型K2とを型締めすることにより加飾フィルムLを金属製の成形基材2の表面2bに押し付けられるので、弾性材Dは型締めが行われた場合にある程度の弾性歪みを生じると好適である。係る場合には、弾性材Dの弾性力に応じて厚さを決定すると好適である。例えば、やわらかい弾性材Dを用いる場合には厚さの薄いものを選択すると好適である。
【0028】
図4は、第1成形型K1と第2成形型K2とが型締めされた後、キャビティVに溶融状態の樹脂が注入された状態を示す断面図である。キャビティVには樹脂が注入され樹脂部3が形成されている。本実施形態に係る加飾装置100は、金属製の成形基材2の裏面2aがゲート11から注入される溶融樹脂により押圧されると共に、金属製の成形基材2の表面2bが弾性材Dにより押圧される。本実施形態では、このような溶融樹脂が金属製の成形基材2を裏面2aの側から加飾フィルムLの側に押圧することから、押圧手段として機能する。このような押圧による押圧力、即ち溶融樹脂の射出圧力により、上述の弾性材Dは、加飾フィルムLを金属製の成形基材2の裏面2aに押圧する。これにより、金属製の成形基材2の表面2bと加飾フィルムLとの密着性を高めることが可能となる。したがって、金属製の成形基材2の表面2bの形状に拘らず、適切に加飾Sを施すことが可能となる。また、金属製の成形基材2の表面2bの正面部分2cだけでなく側面部分2dも押圧することができるので、弾性材Dが第2成形型K2のキャビティ面K2Aと成形基材2の表面2bとのギャップと、そのバラツキとを埋めることにより、加飾フィルムLと成形基材2の表面2bとを完全に密着させて射出圧力や型締め圧力を加えることが可能となる。
【0029】
ここで、本実施形態に係る複合品1の形成する場合には、弾性材Dの厚みは0.1〜0.5mm程度のものを用い、金属製の成形基材2の厚みは0.3〜0.8mm程度のものを用いると好適である。このような弾性材D及び金属製の成形基材2を用いた場合には、射出成形条件として溶融樹脂の射出圧力を100〜250Mpaとし、キャビティVの内圧(第1成形型K1と第2成形型K2との間の圧力)を50〜200Mpaに保持すると好適である。また、第1成形型K1及び第2成形型K2の温度は50〜100℃に保持し、溶融樹脂の温度は200〜350℃とすると好適である。
【0030】
係る場合には、弾性材Dの圧縮量を0.01〜0.2mmとすることができる。弾性材Dの圧縮量とは、第1成形型K1と第2成形型K2とを型締めした状態で、溶融樹脂をキャビティVに注入した場合に、弾性材Dが圧縮されて縮む量が相当する。このような弾性材Dの圧縮量が0.01mm未満の場合には加飾フィルムLと金属製の成形基材2との密着性を悪化させ、0.2mmより大きい場合には射出圧力により金属製の成形基材2に過度の圧力が加わり、当該金属製の成形基材2が変形してしまう可能性がある。したがって、弾性材Dの圧縮量が0.01〜0.2mmになるように制御すると好適である。
【0031】
このような制御は、弾性材Dの厚さや金属製の成形基材2の厚さや弾性材Dの弾性力に応じて、上述の溶融樹脂の射出圧力等を設定することにより行うことが可能である。更に、金属製の成形基材2の温度は30〜120℃で保持し、特に80〜100℃とすると金属製の成形基材2と加飾シートLとの密着性を良好にすることができ、適切に加飾Sを施すことが可能となる。このような条件を用いることにより、適切に複合品1を形成しつつ、加飾Sを施すことが可能となる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態では、弾性材Dを金属製の成形基材2の表面2bに沿った形状とする。このような弾性材Dが図5に示される。図5に示されるように、本実施形態に係る弾性材Dは予め金属製の成形基材2の表面2bに沿うように形成されている。このため、第2成形型K2と弾性材Dとの間で隙間を生じることがない。したがって、加飾フィルムLを金属製の成形基材2の表面2bの全面に亘って適切に押し付けることが可能となる。
【0033】
〔第3の実施形態〕
本実施形態では、上述の第2の実施形態で示した金属製の成形基材2の表面2bに沿うように形成した弾性材Dを第2成形型K2に付設する。図6に示されるように、本実施形態に係る弾性材Dは、予め金属製の成形基材2の表面2bに沿った形状で形成されると共に、第2成形型K2に付設されている。これにより、第1成形型K1と第2成形型K2との型締めを行う際に、弾性材Dの位置ずれの発生を防止できると共に、第2成形型K2と弾性材Dとの間で隙間を生じることがない。したがって、加飾フィルムLを金属製の成形基材2の表面2bの全面に亘って適切に押し付けることが可能となる。
【0034】
〔第4の実施形態〕
本実施形態では、弾性材Dをロール状に巻いた例を示す。図7(a)には加飾装置100の断面図が示され、図7(b)には加飾シート100における弾性材D及び加飾シートLの配設形態について示される。図7(b)に示すように、弾性材Dは弾性材配設機構40により第1成形型K1と第2成形型K2との間に送り込むことが可能なように構成される。また、図7(b)に示されるように弾性材Dは、加飾シートLと平面視において交差して送り込まれる。弾性材配設機構40は、弾性材送り装置として機能し、上述の加飾フィルムLと同様に、第1成形型K1と第2成形型K2との間に弾性材Dを送り込む。この送り込みは型締め1回毎に行っても良いし、所定の回数毎に行っても良い。したがって、第1成形型K1と第2成形型K2との型締めにより弾性材Dが劣化して加飾フィルムLと金属体2の表面2bとの密着性が悪化する前に、劣化していない新たな弾性材Dを送り込むことにより弾性材Dの所期の弾性力を維持することが可能となる。したがって、長期間に亘って適切に加飾Sを施すことが可能になると共に、所期形状の複合品1を形成することが可能となる。
【0035】
〔第5の実施形態〕
本発明に係る加飾装置100によれば、図8に示すように金属製の成形基材2の所定の位置に開口部4を備え、且つ開口部4を樹脂部3が充填する複合品1であっても適切に加飾Sを施すことが可能である。このような複合品1に加飾Sを施すのに好適な加飾装置100の断面図が図9に示される。
【0036】
図9は、第1形成型K1と第2形成型K2とが型締めされた状態を示している。このような金属製の成形基材2に開口部4を有する複合品1を構成する場合には、弾性材Dも開口部4の形状に応じて開口部5を有して形成すると好適である。また、ゲート11から注入される溶融状態の樹脂の熱が弾性材Dに伝達されにくいように、弾性材Dの開口部5の開口領域を金属製の成形基材2の開口部4の開口領域よりも大きく形成すると好適である。例えば、このように形成する場合には、金属製の成形基材2の開口部4の開口領域よりも弾性材Dの開口部5の開口領域を数mm程度大きくするだけで良い。もちろん、この数mmは単なる一例であり、注入される溶融状態の樹脂の温度や弾性材Dの耐熱性や金属製の成形基材2の開口部4の形状等により、数mm以上に変更したり1mm以下に変更したりすることは当然に可能である。
【0037】
〔第6の実施形態〕
本実施形態に係る複合品1としては、図10に示すように金属製の成形基材2が開口部4を有し、樹脂部3も開口部6を有する構成とすることができる。このような複合品1に加飾Sを施すのに好適な加飾装置100の断面図が図11に示される。その加飾装置100は、金属製の成形基材2の開口部4及び樹脂部3の開口部6に対応する位置に弾性材7を備えている。このように構成することにより、弾性材Dが加飾フィルムLを介して第1成形型K1から受ける応力を和らげることができるので、弾性材Dの劣化を防止することができる。
【0038】
〔第7の実施形態〕
本発明に係る複合品1は、例えば、図12に示されるように、開口部を有さない金属製の成形基材2と、開口部6を有する樹脂部3とから形成することも可能である。このような複合品1であれば、例えば樹脂部3にネジ孔を形成し、当該ネジ孔を利用して複合品1を容易に他の部材に取り付けることが可能となる。また、樹脂の使用量を減らすことができるので材料コストの低減が可能となると共に、複合品1の重量を軽くすることができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、加飾フィルムLはフィルム配設機構30により送り込まれるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第2の実施形態で示した弾性材Dと同様に、加飾フィルムLも予め金属製の成形基材2の裏面2bに沿った形状で加工されたものを用いることも当然に可能である。このような場合であっても、適切に金属製の成形基材2の表面2bに加飾Sを施すことは可能である。係る場合には、金属製の成形基材の裏面2bに、加飾フィルムLを配設する手段(例えば、加飾フィルムLを金属製の成形基材の裏面2bに吸着させるための吸入手段)が上述の加飾フィルム配設機構30に相当する。
【0040】
上記実施形態では、加飾フィルムLが転写フィルムから構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、加飾フィルムLを加飾層と基材層とを共に成形基材2に付着させる加飾シートで構成することも可能である。このような加飾フィルムLであっても、弾性材Dを用いて金属製の成形基材2の表面2bに加飾シートを押圧することにより金属製の成形基材2の表面2bに適切に加飾Sを施すことが可能となる。
【0041】
上記実施形態では、第1成形型K1と第2成形型K2とを型締めする前に金属製の成形基材2、加飾フィルムL、及び弾性材Dを挟み込んで型締めするとして説明した。これらの金属体2、加飾フィルムL、及び弾性材Dは第1成形型K1と第2成形型K2を型締めする前に落下や位置ずれが生じないように第1成形型K1のキャビティ面K1Aや第2成形型K2のキャビティ面K2Aの夫々から吸着可能なように吸入する構成とすることが可能である。また、その他の公知の技術を用いて第1成形型K1と第2成形型K2とを型締めする前に金属製の成形基材2、加飾フィルムL、及び弾性材Dを支持する構成とすることは当然に可能である。
【0042】
上記実施形態では、金属製の成形基材2の一方の面2aが金属製の成形基材2の裏面2aであり、金属製の成形基材2の他方の面2bが金属製の成形基材2の表面2bであるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。金属製の成形基材2の一方の面2aが金属製の成形基材2の表面2aであり、金属製の成形基材2の他方の面2bが金属製の成形基材2の裏面2bであっても、適切に加飾Sを施すことは当然に可能である。即ち、裏面2bに加飾Sを施したい場合であっても、本加飾装置100によれば適切に加飾Sを施すことが可能である。
【0043】
上記実施形態では、金属製の成形基材2の裏面2aに射出成形により樹脂部3が一体成形されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。樹脂部3を射出成形により成形せず、例えば平板状の樹脂をプレス加工により金属製の成形基材2の裏面2aに一体成形することも当然に可能である。このような形成段階における第1成形型K1及び第2成形型K2型の型締め状態の断面図が図13に示される。このように形成される樹脂部3を備えた複合品1であっても、プレス加工により金属製の成形基材2を加飾シートLの側に押圧すると共に、弾性材Dにより加飾シートLを金属製の成形基材2の表面2bに押圧することが可能である。係る場合には、プレス加工は本願の押圧手段に相当し、プレス加工によるプレス圧力(第1成形型K1と第2成形型K2との型締め時に発生する型締め圧力)が押圧力に相当する。このような構成であっても、適切に加飾Sを施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、金属製の成形基材の一方の面に加飾を施すことが可能な加飾装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
2:金属製の成形基材
2a:裏面
2b:表面
3:樹脂部
11:ゲート
30:加飾フィルム配設機構
100:加飾装置
D:弾性材
K1:第1成形型
K2:第2成形型
L:加飾フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の成形基材の一方の面に樹脂部を一体成形すると共に、前記金属製の成形基材の他方の面に加飾を施す加飾装置であって、
前記金属製の成形基材が配置される第1成形型と、
前記第1成形型と型締めされる第2成形型と、
前記第1成形型と前記第2成形型との型締め時に、前記金属製の成形基材の他方の面に施す加飾が付された加飾フィルムを前記金属製の成形基材の他方の面の側に配設する加飾フィルム配設機構と、
前記金属製の成形基材を前記一方の面の側から前記加飾フィルムの側に押圧する押圧手段と、
前記第2成形型と前記加飾フィルムとの間に配設され、前記押圧手段による押圧力に応じて前記加飾フィルムを前記金属製の成形基材の他方の面に押圧する弾性材と、
を備える加飾装置。
【請求項2】
前記樹脂部が、前記金属製の成形基材の一方の面に射出成形により一体成形され、
前記押圧手段による押圧力が、前記第1成形型と前記第2成形型との型締め時に、発生する型締め圧力、或いは前記第1成形型と前記金属製の成形基材との間に形成される樹脂注入用のキャビティに注入される溶融樹脂の射出圧力である請求項1に記載の加飾装置。
【請求項3】
前記弾性材が、シート状であり、前記第1成形型と前記第2成形型との型締め時に、当該型締めによって前記第2成形型の形状に沿うように変形する請求項1又は2に記載の加飾装置。
【請求項4】
前記弾性材が、前記金属製の成形基材の他方の面に沿った形状で形成されてある請求項1又は2に記載の加飾装置。
【請求項5】
前記弾性材が、前記金属製の成形基材の他方の面に沿った形状で形成され、前記第2成形型に付設されてある請求項1又は2に記載の加飾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−152677(P2011−152677A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14544(P2010−14544)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】