説明

助手席用エアバッグ装置

【課題】ガスの供給によって膨張展開するメインバッグの乗員頭部への到達を早め、かつサブバッグによるメインバッグのブレを防ぐことで、エアバッグの乗員保護性能を高めるとともに、小型化及び軽量化を図ることにある。
【解決手段】インストルメントパネル2の内部に折り畳まれた状態で収納配置され、ガスが供給されると乗員M側へ膨張展開するエアバッグ14を備えた助手席用エアバッグ装置1において、エアバッグ14は、乗員Mの頭部Maへ向かって展開するメインバッグ15と、メインバッグ15と一体化し、ウインドシールド3に当接してメインバッグ15を支持すべく、ウインドシールド3へ向かって展開するサブバッグ16とを有し、サブバッグ16は、メインバッグ15の上部に設けられ、メインバッグ15の展開時に、メインバッグ15の上部を押さえるように仮置きされた状態で収納され、メインバッグ15を対流したガスが流入することで、メインバッグ15の展開よりも遅れて展開するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席前方位置のインストルメントパネルに設置される助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの助手席前方に位置するインストルメントパネルの内部には、助手席用エアバッグ装置が設置されており、該助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルの内部の所定部位に折り畳まれた状態で収納されるエアバッグを備えている。この収納されたエアバッグは、ガスが供給されると、車室内の助手席に着座している乗員の頭部を保護するため、乗員側へ向かって膨張展開するようになっている。一方、従来の助手席用エアバッグ装置には、膨張展開したエアバッグに当たった乗員の頭部が移動しないように、エアバッグを支持する構造が必要となっていた。
【0003】
このようなエアバッグの支持構造の従来技術としては、図7や特許文献1及び2に示すものが挙げられる。例えば、図7における従来技術では、インストルメントパネル51の助手席側の内部に設置された助手席用エアバッグ装置52のエアバッグ53が供給されたガスによりインストルメントパネル51の上面51aから乗員M側へ向かって膨張展開すると、膨張展開したエアバッグ53は、ウインドシールド(フロントガラス)54やインストルメントパネル51によって支持され、乗員Mの頭部Maを保護するように構成されている。なお、図7において、矢印F方向は車両前方を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−120114号公報
【特許文献2】特開2009−196551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の助手席用エアバッグ装置52におけるエアバッグ53の支持構造では、エアバッグ53をウインドシールド54に当ててから乗員Mに向けて膨張展開させているので、乗員Mの姿勢によってはエアバッグ53が十分に展開する前に乗員Mの頭部Maが車体側に移動したり、あるいは、ウインドシールド54がエアバッグ53の展開力により破壊したりして、乗員Mを保護するという点で改善の余地を有している。また、インストルメントパネル51のデザインが多様化している中で、エアバッグ53の支持構造をインストルメントパネル51に設けようとすると、エアバッグ53を大型化する必要があった。大型化したエアバッグ53は、その展開挙動を安定させることが困難となるため、エアバッグ53を十分に機能させることができないというおそれがあった。
【0006】
また、エアバッグ53は、乗員Mの頭部Maへ向けて、直線的に膨張展開するように設定されていることが好ましいが、近年のインストルメントパネル51に対する収納容量の拡大の要望を受けて、収納ボックスやトレーなどをインストルメントパネル51に設けるケースが増えてきているので、乗員Mの頭部Maが位置する箇所と異なる方向にエアバッグ53を向けて展開させざるを得なくなり、これによってエアバッグ53の展開挙動を安定させることがより困難となるおそれがあった。
さらに、インストルメントパネル51などは、車種ごとに部品のレイアウトや外観のデザインが異なるので、エアバッグ53の容量や展開の仕方が変わり、設計していく過程で、その都度、エアバッグ53の展開挙動についての確認及び調整に多大な労力をかけなければならないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ガスの供給によって膨張展開するメインバッグの乗員頭部への到達を早め、かつサブバッグによるメインバッグのブレを防ぐことで、エアバッグの乗員保護性能を高めるとともに、小型化及び軽量化を図ることが可能な助手席用エアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、インストルメントパネルの内部に折り畳まれた状態で収納配置され、ガスが供給されると乗員側へ膨張展開するエアバッグを備えた助手席用エアバッグ装置において、前記エアバッグは、乗員頭部へ向かって展開するメインバッグと、前記メインバッグと一体化し、ウインドシールドに当接して前記メインバッグを支持すべく、前記ウインドシールドへ向かって展開するサブバッグとを有し、前記サブバッグは、前記メインバッグの上部に設けられ、前記メインバッグの展開時に、前記メインバッグの上部を押さえるように仮置きされた状態で収納され、かつ前記メインバッグを対流したガスが流入することによって、前記メインバッグの展開よりも遅れて展開するように構成されている。
【0009】
また、本発明において、前記サブバッグは、前記メインバッグの上部で摘まれて形成され、車両前後方向に沿って延在している。
さらに、本発明において、前記サブバッグは、車両後方側より展開するように構成されている。
【0010】
そして、本発明において、前記サブバッグは、縫製によって形成されて収納されている。
また、本発明において、前記サブバッグは、脆弱部を有する連結部材によって形成されて収納されている。
さらに、本発明において、前記サブバッグの車両後方側には、流入したガスを排気するベントホールが設けられている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネルの内部に折り畳まれた状態で収納配置され、ガスが供給されると乗員側へ膨張展開するエアバッグを備えたものであって、前記エアバッグは、乗員頭部へ向かって展開するメインバッグと、前記メインバッグと一体化し、ウインドシールドに当接して前記メインバッグを支持すべく、前記ウインドシールドへ向かって展開するサブバッグとを有し、前記サブバッグは、前記メインバッグの上部に設けられ、前記メインバッグの展開時に、前記メインバッグの上部を押さえるように仮置きされた状態で収納され、かつ前記メインバッグを対流したガスが流入することによって、前記メインバッグの展開よりも遅れて展開するように構成されているので、メインバッグの展開時に、サブバッグの収納部に隣接する面でエアバッグのガス流入口が狭くなってガスの流速が増すことになり、流速の高まったガスがメインバッグに一気に流入されることとなって、メインバッグを瞬時に膨張展開させ、当該メインバッグの乗員頭部への到達を早めることができる。また、メインバッグの展開よりも遅れて展開するサブバッグがウインドシールドに当接することで、当該ウインドシールドによってサブバッグ及びメインバッグを乗員頭部へ向かう方向と対向する方向で支持することが可能となるので、メインバッグの支持強度を高め、展開するメインバッグのブレを効果的に防止することができる。したがって、本発明の助手席用エアバッグ装置によれば、助手席に着座している乗員の姿勢に拘わらず、乗員の頭部を保護することが可能となり、乗員保護性能を高めることができる。
それに加えて、本発明の助手席用エアバッグ装置では、従来技術においてバッグ支持部を含めた容量がエアバッグに求められていたが、展開対象物に合わせて展開方向が異なるメインバッグ及びサブバッグという2つのバッグを一体化しているので、エアバッグ全体の大きさを小さくすることができ、小型軽量化を図ることができる。また、エアバッグ全体の大きさを小さくすることで、エアバッグを展開させるガス出力を小さくすることが可能となるため、インフレータの小型化を図ることができる。
【0012】
また、本発明において、前記サブバッグは、前記メインバッグの上部で摘まれて形成され、車両前後方向に沿って延在しているので、メインバッグの展開方向を制御することが可能となる。したがって、本発明によれば、収納部品などのレイアウトに伴い、対象物に対して展開方向に向けることが難しいエアバッグでも、メインバッグをより確実に乗員の頭部に向けて展開するように制御できる。
【0013】
さらに、本発明において、前記サブバッグは、車両後方側より展開するように構成されているので、メインバッグを対流したガスをサブバッグへ円滑に取り込み、当該サブバッグの展開方向を安定してウインドシールドに向かわせて当てることができる。
【0014】
そして、本発明において、前記サブバッグは、縫製によって形成されて収納されているので、縫い方や縫い糸の種類、太さ等を選択することによって縫製部の破断強度の調整が可能となり、サブバッグの展開するタイミングを容易に調整することができる。
【0015】
また、本発明において、前記サブバッグは、脆弱部を有する連結部材によって形成されて収納されているので、部品構成の簡略化や加工工程数の省略化が可能となり、エアバッグの生産性向上とコストダウンを図ることができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記サブバッグの車両後方側には、流入したガスを排気するベントホールが設けられているので、膨張展開時のメインバッグの内圧を一定に保つことが可能となり、当該メインバッグと接触する乗員の頭部を安定的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る助手席用エアバッグ装置が車両のインストルメントパネルの内部に設置された状態を概念的に示す側方断面図である。
【図2】上記実施形態の助手席用エアバッグ装置のエアバッグが膨張展開した状態を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は上記実施形態のエアバッグを構成するメインバッグ及びサブバッグが膨張展開する過程を示すものであり、(a)はメインバッグが展開して最終位置に到達し、かつサブバッグが収納されている状態の概念的側方断面図、(b)はメインバッグが展開して最終位置に到達したままで、サブバッグが展開を開始する状態の概念的側方断面図、(c)はメインバッグが展開して最終位置に到達したままで、サブバッグの展開が完了している状態の概念的側方断面図である。
【図4】(a)及び(b)は上記実施形態のエアバッグを構成するメインバッグと縫製されたサブバッグを示すものであり、(a)はメインバッグ及びサブバッグが膨張展開する前の状態の斜視図、(b)はメインバッグ及びサブバッグが膨張展開した後の状態の斜視図である。
【図5】上記実施形態のエアバッグを構成するメインバッグ及びサブバッグが膨張展開している状態を示すものであり、サブバッグに設けられるベントホールの位置関係を説明する概念的側方断面図である。
【図6】図4の変形例に係るエアバッグであり、脆弱部を有する連結部材によって形成されたサブバッグを拡大して示す斜視図である。
【図7】従来の助手席用エアバッグ装置におけるエアバッグが膨張展開した状態を示す概念的側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の助手席用エアバッグ装置が車両のインストルメントパネルの内部に設置された状態の概念的側方断面図、図2は上記実施形態のエアバッグが膨張展開した状態の斜視図、図3は上記実施形態のエアバッグを構成するメインバッグ及びサブバッグが膨張展開する過程を示す概念的側方断面図、図4は上記実施形態のエアバッグを構成するメインバッグと縫製されたサブバッグを示す斜視図、図5は上記実施形態のメインバッグ及びサブバッグが膨張展開している状態の概念的側方断面図である。
【0019】
図1〜図3及び図5に示すように、本実施形態の助手席用エアバッグ装置1は、乗員Mが着座する助手席前方に位置する大型樹脂部品のインストルメントパネル2の上面2a側の内部に設置されるタイプのエアバッグ装置である。このため、インストルメントパネル2は、車両の車室内の前方側であって、ウインドシールド(フロントガラス)3の下方に配設されている。また、インストルメントパネル2は、後述のエアバッグが展開する際の開口部を見え難くする構造を採用しており、助手席用エアバッグ装置1の設置箇所と対応するインストルメントパネル2の上面2aの裏面側には、レーザーなどの後加工によってティアライン(図示せず)が形成されており、後述のエアバッグが展開する際に、当該ティアラインの部分が破断して後述のエアバッグを車室内に展開できるように構成されている。なお、図1において、矢印F方向は車両前方を示し、Maは乗員Mの頭部を示している。
【0020】
本実施形態の助手席用エアバッグ装置1は、設置された状態で装置の上部側に位置してインストルメントパネル2の上面2aの裏面側に取付けられるエアバッグチャンネル11と、箱状のエアバッグケース12と、該エアバッグケース12の底部に固定され、上部がケース内に配置されるインフレータ13と、エアバッグケース12内においてインフレータ13の外周部に折り畳み状態で収納配置され、インフレータ13からガスが供給されると乗員M側へ膨張展開する袋体のエアバッグ14とを備えることによって構成されている。エアバッグチャンネル11は、上下方向に延在する縦壁部11aを有しており、縦壁部11aの上下中間位置にエアバッグケース12の上端部が取付けられている。また、インフレータ13の上部には、作動時にエアバッグ14内に膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口(図示せず)が設けられている。
一方、助手席用エアバッグ装置1と隣接する位置で車室内側寄りのインストルメントパネル2の上面2aには、ペットボトルなどの小物等を入れる袋状の収納ボックス4が設けられているとともに、助手席用エアバッグ装置1の下方には、上向き開口を有する空調用ブロアユニット5が配置されている。
【0021】
本実施形態の助手席用エアバッグ装置1におけるエアバッグ14は、図2〜図5に示すように、インストルメントパネル2の上面2aから乗員Mの頭部Maへ向かって展開するメインバッグ15と、該メインバッグ15と一体化しており、ウインドシールド3に当接してメインバッグ15を支持すべく、ウインドシールド3へ向かって展開するサブバッグ16とを有している。すなわち、本実施形態のエアバッグ14は、展開対象物に合わせて展開方向が異なるメインバッグ15とサブバッグ16という2つのバッグから構成されている。
【0022】
本実施形態のサブバッグ16は、メインバッグ15の外形(容量)よりも小さく形成されて、メインバッグ15の上部に設けられている。しかも、サブバッグ16は、メインバッグ15の展開時に、メインバッグ15の上部を押さえるように仮置きされた状態で収納されており、メインバッグ15を対流したガスが流入することによって、メインバッグ15の展開よりも遅れて展開するように構成されている。したがって、膨張用ガスは、図3の矢印Gで示すように、メインバッグ15内に流入してメインバッグ15を展開させた後、メインバッグ15の内壁に当たって跳ね返りながらサブバッグ16内に流入するようになっている。
このため、サブバッグ16は、図4(a)に示すように、メインバッグ15の上部で摘まれ、開口周縁部分を縫製により縫い合わせてなる縫製部16aで袋状に形成されて収納されており、車両前後方向に沿って延在している。また、サブバッグ16が設置された収納部分に隣接しているメインバッグ15の上部には、車両前後方向に延びるメインバッグ展開方向制御面15aがサブバッグ16を間に置いて左右両側に形成されており、当該制御面15aによってメインバッグ15へのガス流入口15b(図3参照)が狭くなり、ガスの流速を高めるとともに、メインバッグ15の展開時におけるガス流入方向を制御し、メインバッグ15が乗員Mの頭部Maに向かって正確に展開され、かつメインバッグ15の乗員Mの頭部Maへの到達を早めるように構成されている。
【0023】
また、本実施形態のサブバッグ16は、車両後方側より展開するように構成されている。このため、サブバッグ16の車両後方側には、メインバッグ15内に流入してメインバッグ15を展開させた後、メインバッグ15の内壁に当たって跳ね返ったガスが車両前方へ向かってバッグ内に流入するように、開口部17が設けられている(図3(b)参照)。これによって、サブバッグ16は、ウインドシールド3が配置されている車両前方側へ向かって展開し、ウインドシールド3に当たってメインバッグ15を支持することが可能となっている。
【0024】
さらに、本実施形態のサブバッグ16の車両後方側には、図2、図3(c)、図4(b)及び図5に示すように、バッグ内に流入したガスを排気するベントホール18が設けられている。このようなベントホール18の配置構造は、膨張用ガスがメインバッグ15を経てサブバッグ16内を循環して流れた後、外部に排気されることになり、乗員Mの頭部Maを保護するメインバッグ15の内圧が一定に保たれることになり、メインバッグ15はウインドシールド3に当たったサブバッグ16に支持され、メインバッグ15の内圧低減による乗員Mの頭部Maのメインバッグ15内への入り込みが防止され、頭部Ma保護が確実に行われることになる。また、車両機種に応じた周辺部品、例えば、インストルメントパネル2やウインドシールド3のレイアウトやデザインに影響されることなく、サブバッグ16がウインドシールド3面の傾きに応じた展開をすることでエアバッグ14の共通化が可能となり、また、図5の鎖線で示すように、傾きの異なるウインドシールド3によってベントホール18が塞がれてしまうことがなくなるため、メインバッグ15の内圧上昇による乗員Mへの過度の衝撃を防止できる。
【0025】
このように構成された本発明の実施形態の助手席用エアバッグ装置1において、車両が衝撃を受けてインフレータ13が作動することによりエアバッグ14内に膨張用ガスが吐出されると、当該ガスは、図3(a)の矢印Gで示すように、ガス流入口15bを通ってメインバッグ15内に流入し、流入したガスによってメインバッグ15は、インストルメントパネル2の上面2aから助手席に着座している乗員Mの頭部Maへ向かって膨張して展開する。この際、サブバッグ16に隣接する制御面15aによってガス流入口15bが狭くなっているとともに、ガスの流れる方向が制御されているため、当該ガスの流速が増し、流速の高まったガスがメインバッグ15内に一気に流入してメインバッグ15を乗員Mの頭部Maへ向かって瞬時に展開させることが可能となり、メインバッグ15の乗員Mの頭部Maへの到達が早まり、かつメインバッグ15が乗員Mの頭部Maの位置に正確に達することになる。
【0026】
次いで、メインバッグ15内に流入したガスは、図3(b)の矢印Gで示すように、メインバッグ15の内壁に当たって跳ね返り、車両前方へ向かって流れながら、開口部17よりサブバッグ16内に流入し、縫製部16aを引きちぎって車両後方側よりウインドシールド3へ向かい、メインバッグ15の展開よりも遅れて膨張展開し、ウインドシールド3に当接する。この状態においては、図3(c)の矢印で示すように、サブバッグ16及びメインバッグ15がウインドシールド3により乗員Mの頭部Maの進入方向に対向する方向で支持され、乗員Mの頭部Maが保護されることになる。
その後、サブバッグ16内に流入したガスは、展開した状態にあるメインバッグ15の内圧を所定時間一定に保ち、乗員Mの頭部Maのメインバッグ15内への入り込みを防ぎながら、図4(b)の矢印Gで示すように、ベントホール18から徐々に外部へ排気されることになる。
【0027】
このように、本発明の実施形態の助手席用エアバッグ装置1では、エアバッグ14が、乗員Mの頭部Maへ向かって展開するメインバッグ15と、ウインドシールド3へ向かって展開するサブバッグ16とを有し、このサブバッグ16は、メインバッグ15と一体化し、ウインドシールド3に当接してメインバッグ15を支持すべく、メインバッグ15の上部に設けられ、メインバッグ15の展開時に、メインバッグ15の上部を押さえるように仮置きされた状態で収納され、かつメインバッグ15の展開よりも遅れて展開するように配置構成されているので、エアバッグ14全体の大きさが小さくなり、小型軽量化を実現できるとともに、サブバッグ16に隣接する制御面15aで狭くなったガス流入口15bを通るガスの流速を高め、かつ流速の高まったガスを乗員Mの頭部Maへ向かってメインバッグ15内に流すことが可能になり、メインバッグ15を瞬時に膨張展開させ、メインバッグ15を乗員Mの頭部Maへ迅速に到達させることができる。また、エアバッグ14の大きさを小さくすることで、エアバッグ14を展開させるガス出力を小さくすることが可能となるため、インフレータ13の小型化を図ることができる。
しかも、本発明の実施形態の助手席用エアバッグ装置1では、メインバッグ15の展開後にサブバッグ16が展開してウインドシールド3に当接するので、ウインドシールド3によってサブバッグ16及びメインバッグ15を乗員Mの頭部Maへ向かう方向と対向する方向で支持することが可能となり、展開状態にあるメインバッグ15のブレを効果的に防止でき、乗員Mの姿勢に拘わらず、乗員Mの頭部Maを確実に保護することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0029】
例えば、既述の実施の形態では、サブバッグ16が縫製により接合されて形成されているが、図6に示すように、サブバッグ26が脆弱部27aを有する連結部材27によって形成されていても良い。この構成によると、部品構成を簡略できるとともに、加工工程数を省略でき、エアバッグ14の生産性向上とコストダウンを実現することができる。すなわち、エアバッグ14は、その容量や展開の仕方に応じて、複雑に折り畳まれて収納されているため、折り畳み構造の中に新たな構造を追加することは、加工を困難にし、生産性の低下を招くことになる。しかし、本発明のように、メインバッグ15とサブバッグ16とを有するエアバッグ14の構造においては、折り畳まれたエアバッグ14のサブバッグ16を最後に連結部材27によって仮固定することで加工作業の手間が省けるとともに、展開挙動にも悪影響を与えない生産性に優れるエアバッグ14を備えた助手席用エアバッグ装置1を提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 助手席用エアバッグ装置
2 インストルメントパネル
2a インストルメントパネルの上面
3 ウインドシールド
14 エアバッグ
15 メインバッグ
15a メインバッグ展開方向制御面
15b ガス流入口
16 サブバッグ
16a 縫製部
17 開口部
18 ベントホール
26 サブバッグ
27 連結部材
27a 脆弱部
M 乗員
Ma 乗員の頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの内部に折り畳まれた状態で収納配置され、ガスが供給されると乗員側へ膨張展開するエアバッグを備えた助手席用エアバッグ装置において、
前記エアバッグは、乗員頭部へ向かって展開するメインバッグと、前記メインバッグと一体化し、ウインドシールドに当接して前記メインバッグを支持すべく、前記ウインドシールドへ向かって展開するサブバッグとを有し、
前記サブバッグは、前記メインバッグの上部に設けられ、前記メインバッグの展開時に、前記メインバッグの上部を押さえるように仮置きされた状態で収納され、かつ前記メインバッグを対流したガスが流入することによって、前記メインバッグの展開よりも遅れて展開するように構成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記サブバッグは、前記メインバッグの上部で摘まれて形成され、車両前後方向に沿って延在していることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記サブバッグは、車両後方側より展開するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記サブバッグは、縫製によって形成されて収納されていることを特徴とする請求項2または3に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記サブバッグは、脆弱部を有する連結部材によって形成されて収納されていることを特徴とする請求項2または3に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記サブバッグの車両後方側には、流入したガスを排気するベントホールが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−82338(P2013−82338A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223902(P2011−223902)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】