説明

動き検出装置

【課題】移動する測定対象物が加速、減速した場合であっても該測定対象物の速度を高精度に測定することが可能な動き検出装置を提供する。
【解決手段】撮像部11で撮像される画像の各画素に、測定対象物の測定対象物が存在した場合に、投票値を付与する。そして、積算された投票値が増加する場合には、測定対象物は減速しているものと判断し、他方、積算された投票値が減少する場合には、測定対象物は加速しているものと判断する。そして減速している場合には、特徴領域に対応する画素の投票値に、所定の補正値を加算することにより、実際の速度を反映した投票値に補正する。また、減速している場合には、特徴領域に対応する画素の投票値から所定の補正値を減算することにより、実際の速度を反映した投票値に補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺画像を時系列的に複数撮像し、撮像した画像に含まれる対象物の動きを検出する動き検出装置に係り、特に、対象物に加速、減速が生じた場合であっても対象物の動きを高精度に検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動する対象物の動きを検出する動き検出装置として、例えば特開平8−149516号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。該特許文献1では、物体が通過している空間にスリット光、パターン光を照射し、照射された移動物体の画像を時間的に順に複数取得し、光が照射されている部分の輪郭を抽出し、各輪郭をパターンマッチングすることで物体の速度を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−149516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例は、パターンマッチングによる移動ベクトルを算出する手法を採用しているので、演算に長時間を要し、物体を撮像する際のフレーム間隔を長くせざるを得なくなり、更に、フレーム間隔が長くなると、物体の速度が急激に変化した際には、正確な速度を検出することができなくなるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、移動する対象物の速度を高精度に測定することが可能な動き検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、車両周辺の画像を時系列的に複数撮像する撮像手段と、撮像手段にて撮像された複数の画像からそれぞれ測定対象物の特徴点を抽出する特徴抽出手段と、特徴抽出手段で抽出された特徴点の大きさを画素に対応して規格化し、規格化された特徴点を特徴領域として設定する特徴点規格化手段とを有する。更に、特徴点規格化手段にて設定された特徴領域が、複数の画像に含まれる各画素について、特徴領域が存在した場合に1つの投票値を付与し、更に、複数の画像に対して付与される投票値を各画素毎に積算する特徴領域投票手段と、特徴領域に対応する画素の投票値、及び特徴領域の過去の動き情報に基づいて、特徴領域の加速、減速を評価する投票値評価手段と、投票値評価手段による評価結果に基づいて、特徴領域に対応する各画素の投票値を補正する投票値補正手段と、特徴領域に対応する各画素の補正後の投票値に基づいて、特徴領域の移動速度を算出する移動速度算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る動き検出装置では、特徴領域に対応する画素の投票値の増減に基づいて、測定対象物が加速しているか、或いは減速しているかを判断し、この判断結果に基づいて各特徴領域に対応する画素の投票値を補正する。従って、測定対象物の加速、減速を即時に認識し、測定対象物の移動速度に反映させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る動き検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】測定対象物が等速で移動している場合の、各画素の投票値の変化を示す説明図である。
【図3】測定対象物が減速しながら移動している場合の、各画素の投票値の変化を示す説明図である。
【図4】測定対象物が減速しながら移動している場合の、各画素の投票値の補正手順を示す説明図である。
【図5】測定対象物が加速しながら移動している場合の、各画素の投票値の変化を示す説明図である。
【図6】測定対象物が減速しながら移動している場合の、各画素の投票値の補正手順を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る動き検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る動き検出装置の構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示すように、この動き検出装置100は、車両に搭載して車両外部に存在する測定対象物(例えば、歩行者)の動きを検出するものであり、車両外部に存在する測定対象物を撮像する撮像部(撮像手段)11と、該撮像部11で撮像された映像から特徴点を抽出する特徴抽出部(特徴抽出手段)12と、特徴点を規格化して特徴領域を設定する特徴規格部(特徴点規格化手段)13と、特徴領域が存在する画素に投票値を加算する特徴投票部(特徴領域投票手段)14と、各画素の投票値を評価する投票値評価部(投票値評価手段)15と、評価結果に基づいて投票値を補正する投票値補正部(投票値補正手段)16と、補正後の投票値に基づいて測定対象物の速度を求める速度算出部(移動速度算出手段)17と、を備えている。
【0011】
撮像部11は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子によって構成され、車両周囲の画像を時系列的に撮像する。例えば、30[フレーム/秒]の一定の間隔で周囲の画像を撮像し、撮像した画像データを特徴抽出部12に出力する。
【0012】
特徴抽出部12は、撮像部11で撮像された画像を取得し、この画像を画像処理して動き検出の対象となる対象物(例えば、歩行者)の特徴点を抽出する。特徴点は、例えば画像の濃淡が急激に変化する点であり、対象物のエッジ等である。また、特徴点の抽出方法としては、測定対象物のエッジを検出して特徴点とするエッジ検出フィルタ、測定対象物のコーナエッジを検出して特徴点とするコーナエッジ検出フィルタ、或いは測定対象物の形状特徴成分を特徴点として抽出する手法等を採用することができる。
【0013】
特徴規格化部13は、特徴抽出部12にて抽出された特徴点を基準として、特徴領域の大きさを規格化する。例えば、特徴点を含む周囲の9画素を特徴領域として規格化する。従って、特徴抽出部12で抽出された特徴点を含む特徴領域が一定の大きさとなるように設定されることになる。
【0014】
特徴投票部14は、特徴規格化部13により規格化された特徴領域が検出された位置に対応する画素の投票値を積算する処理、及び、特徴領域が検出されなくなった位置に対応する画素の投票値をリセットする処理を実行する。詳細については、後述する。
【0015】
投票値評価部15は、特徴投票部14で投票された投票値の積算値に基づいて、対象物に加速または減速が生じているか否かを判断する。詳細には、特徴領域に対応する画素の投票値が増加した場合には、測定対象物の移動速度が低下(減速)しているものと判断し、特徴領域に対応する画素の投票値が減少した場合には、測定対象物の移動速度が増加(加速)しているものと判断する。
【0016】
投票値補正部16は、投票値評価部15にて測定対象物に加速または減速が生じていると判断された場合には、加速または減速が生じる前に積算された投票値(加速・減速前の影響による投票値)と、加速または減速が生じた後に積算された投票値(加速・減速後の影響による投票値)とに分類し、更に、加速または減速が生じた後に積算された投票値に基づいて、特徴領域に対応する各画素の投票値を補正する処理を実行する。また、後述するように、減速が生じていると判断された場合には、特徴領域が移動する方向に向けて補正値(加算する投票値)が小さくなるように設定し、他方、加速が生じていると判断された場合には、移動元となる特徴領域の画素の補正値(減算する投票値)が大きくなるように設定する。詳細については後述する。
【0017】
速度算出部17は、特徴投票部14で投票された投票値に基づいて、測定対象物の移動速度を算出すると共に、測定対象物の移動速度に減速、または加速が発生した場合には、投票補正部16で補正された各画素の投票値に基づき、各画素の投票値の変化から特徴領域(測定対象物)の移動速度、及び移動方向を算出する。
【0018】
次に、測定対象物が等速で移動する場合、及び加速または減速を伴って移動する場合における特徴投票部14、投票値評価部15及び投票値補正部16による処理を、図2〜図6を参照して説明する。
【0019】
[対象物が等速で移動する場合]
図2(a)〜(c)に示す各マスは、撮像部11で撮像される画像の画素を模式化して示しており、斜線で示す画素は、特徴領域が検出されている領域を示している。図2の例では、説明を簡単にするため特徴領域を3つの画素としている。また、撮像部11は、時刻t1,t2,t3,・・・の順に所定の時間間隔で時系列的に周囲画像を撮像するものとする。
【0020】
そして、撮像部11で撮像される画像中の、左側から右側に向けて等速で移動する測定対象物が存在すると、図2(a)に示すように、時刻t1,t2において、測定対象物の特徴領域はP1〜P3に示す3つの画素にて検出され、図2(b)に示すように、時刻t3,t4において、測定対象物の特徴領域はP2〜P4に示す画素にて検出され、図2(c)に示すように、時刻t5,t6において、測定対象物の特徴領域はP3〜P5に示す画素にて検出される。換言すれば、時刻t1,t2の間は特徴領域は画素P1〜P3に停滞し、時刻t3,t4の間は特徴領域は画素P2〜P4に停滞し、時刻t5,t6の間は特徴領域は画素P3〜P5に停滞する。
【0021】
そして、図1に示した特徴投票部では、各画素に対し特徴領域が停滞した回数分の投票値を付与し、この投票値を積算する。従って、画素P1〜P3には、図2(a)に示すように時刻t1,t2の2画像分の投票値が付与されるので、それぞれ投票値は「2」となる。次いで、図2(b)に示すように時刻t3,t4では、画素P2〜P4に対して、2画像分の投票値が付与されるので、それぞれに投票値「2」が加算されて、画素P2〜P4の投票値はそれぞれ「4」「4」「2」となる。この際、特徴領域の外側となる画素P1は、投票値がリセットされる。即ち、図2(b)に示す画素P1の投票値は「0」とされる。
【0022】
更に、図2(c)に示すように時刻t5,t6では、画素P3〜P5に対して、2画像分の投票値が付与されるので、それぞれに投票値「2」が加算されて、画素P3〜P5の投票値はそれぞれ「6」「4」「2」となる。また、画素P2の投票値はリセットされるので「0」となる。
【0023】
その後、測定対象物が等速で移動する場合には、この状況が継続されるので、投票値が「6」「4」「2」となる画素が左側から右側に順次移動することになる。そして、速度算出部17は、この傾斜(変化)に基づいて測定対象物の速度を求めることができる。具体的には、左端の投票値である「6」と右端の投票値である「2」の差分を求め、この差分である「4」の逆数が速度に対応する数値となるので、この数値に基づいて対象物の速度を求める。
【0024】
[対象物が減速する場合]
次に、測定対象物が減速した場合について図3に示す説明図を参照して説明する。図2の場合と同様に、図3(a)〜(c)に示す各マスは、撮像部11で撮像される画像の画素を模式化して示しており、斜線で示す画素は、特徴領域が検出されている領域を示している。
【0025】
そして、時刻t1,t2,t3,・・で撮像部11より時系列的に画像が取得され、更に画像中に左側から右側に移動しながら減速している測定対象物が存在すると、図3(a)に示すように、時刻t1,t2において、測定対象物の特徴領域はP1〜P3に示す3つの画素にて検出され、図3(b)に示すように、時刻t3,t4において、測定対象物の特徴領域はP2〜P4に示す画素にて検出され、更に、減速したことにより図3(c)に示すように、時刻t4,t5,t6において、測定対象物の特徴領域はP3〜P5に示す画素にて検出される。換言すれば、時刻t1,t2の間は特徴領域は画素P1〜P3に停滞し、時刻t3,t4の間は特徴領域は画素P2〜P4に停滞し、時刻t5,t6,t7の間は特徴領域は画素P3〜P5に停滞する。つまり、測定対象物が減速したことにより、画素P3〜P5に停滞する時間が長くなっている。
【0026】
そして、各画素には特徴領域が停滞した回数分の投票値が付与されて積算される。従って、図3(a)に示す時刻t1,t2では、画素P1〜P3には、時刻t1,t2の2画像分の投票値が付与されるので、それぞれ投票値は「2」となる。次いで、図3(b)に示す時刻t3,t4では、画素P2〜P4に対して、2画像分の投票値が付与されるので、それぞれに投票値「2」が加算されて、画素P2〜P4の投票値はそれぞれ「4」「4」「2」となる。この際、特徴領域の外側となる画素P1は、投票値がリセットされる。即ち、図3(b)に示す画素P1の投票値は「0」とされる。
【0027】
更に、図3(c)に示す時刻t5,t6,t7では、画素P3〜P5に対して、3画像分の投票値が付与されるので、それぞれに投票値「3」が加算されて、画素P3〜P5の投票値はそれぞれ「7」「5」「3」となる。また、画素P2の投票値はリセットされるので「0」となる。
【0028】
そして、速度算出部17は、投票値の傾斜(変化)に基づいて測定対象物の速度を求める。具体的には、左端の投票値である「7」と右端の投票値である「3」の差分を求め、この差分の逆数が速度に対応する数値となるので、この数値に基づいて測定対象物の速度を求める。この際、「7」と「3」の差分は「4」であり、図2に示した等速で移動する場合と同一となる。このため、測定対象物が減速しているにも関わらず、等速で移動している場合と同一の速度であるものとして、速度を算出することになる。
【0029】
本実施形態では、図1に示した投票値評価部15、及び投票値補正部16により、測定対象物の実際の速度が反映するように投票値を補正する。以下、投票値を補正する処理について、図4を参照して説明する。
【0030】
図4は、3画素分の特徴領域の投票値の変化を模式的に示す説明図であり、図4(a)は測定対象物(特徴領域)が等速で移動している場合を示し、図4(b)は測定対象物が減速している場合を示し、図4(c)は投票値補正部16により補正した後の投票値を示している。また、図4(a)〜(c)に示すマスは、積算された投票値を示している。
【0031】
図4(a)に示すように、測定対象物が等速で移動している場合には、3つの特徴領域Q1〜Q3の投票値は前述した図2にて示したようにそれぞれ「6」「4」「2」となる。また、図4(b)に示すように、測定対象物が減速している場合には、3つの特徴領域Q1〜Q3の投票値は前述した図3にて示したようにそれぞれ「7」「5」「3」となる。
【0032】
そして、投票値評価部15は、各特徴領域Q1〜Q3の投票値の増加、減少に基づいて、測定対象物が減速しているか、或いは加速しているかを判断する。具体的には、投票値が増加している場合には測定対象物は減速しているものと判断し、投票値が減少している場合には測定対象物は加速しているものと判断する。
【0033】
図4(b)に示す場合には、各特徴領域Q1〜Q3の投票値は増加しているので(即ち、「6」「4」「2」から「7」「5」「3」へと変化しているので)、測定対象物は減速しているものと判断する。そして、投票値補正部16は、測定対象物が減速していると判断された場合には、減速後の影響による投票値の増加分に基づいて、各特徴領域Q1〜Q3の投票値を補正する。
【0034】
以下、具体的に説明すると、測定対象物が減速したことにより、各特徴領域Q1〜Q3の投票値は「1」ずつ加算されたことになる。即ち、図4(b)のq1,q2,q3に示す投票値が加算されたことになり、減速後の影響による投票値は「1」である。本実施形態では、投票値補正部16により、この投票値q1,q2,q3を、特徴領域Q1,Q2の投票値に加算する処理を実行する。具体的には、図4(c)に示すように、特徴領域Q1に対して2つ分の投票値q4,q5を加算し、特徴領域Q2に対して1つ分の投票値q6を加算する。なお、特徴領域Q3については加算処理を行わない。
【0035】
つまり、特徴領域の各画素について、特徴領域が移動する方向(図中右側)に向けて補正値(加算する投票値)が小さくなるように設定している。即ち、加算する投票値は、左側から順に、「2」「1」「0」に設定されている。
【0036】
その結果、補正後の投票値は、図4(c)に示すように、各特徴領域Q1〜Q3に対してそれぞれ「9」「6」「3」となり、左端の投票値である「9」と右端の投票値である「3」の差分が「6」となり、この差分に基づいて算出される測定対象物の速度は、減速していることが反映されている。即ち、図4(b)に示す投票値に基づいて測定対象物の速度を算出すると、左端の投票値である「7」と右端の投票値である「3」の差分が「4」であるから、測定対象物の減速が反映されていないが、図4(c)に示す補正後の投票値に基づいて測定対象物の速度を算出すると差分が「6」となるので、減速が反映していることになる。即ち、投票値補正部16により補正された投票値を採用して速度を求めることにより、測定対象物が減速している場合であっても、この速度を正確に求めることが可能となる。
【0037】
[対象物が加速する場合]
次に、対象物が加速した場合について図5に示す説明図を参照して説明する。図2,図3の場合と同様に、図5(a)〜(d)に示す各マスは、撮像部11で撮像される画像の画素を模式化して示しており、斜線で示す画素は、特徴領域が検出されている領域を示している。
【0038】
そして、時刻t1,t2,t3,・・で撮像部11より時系列的に画像が取得され、更に画像中に左側から右側に向けて加速している測定対象物が存在すると、図5(a)に示すように、時刻t1〜t4において、測定対象物の特徴領域はP1〜P3に示す3つの画素にて検出され、図5(b)に示すように、時刻t5〜t8において、測定対象物の特徴領域はP2〜P4に示す画素にて検出され、図5(c)に示すように、加速したことにより時刻t9,t10において、測定対象物の特徴領域はP3〜P5に示す画素にて検出され、更に、図5(d)に示すように、時刻t11において、測定対象物の特徴領域はP4〜P6に示す画素にて検出される。
【0039】
換言すれば、時刻t1〜t4の間は特徴領域は画素P1〜P3に停滞し、時刻t5〜t8の間は特徴領域は画素P2〜P4に停滞し、時刻t9,t10の間は特徴領域は画素P3〜P5に停滞し、時刻t11の間は特徴領域は画素P4〜P6に停滞する。つまり、測定対象物が加速したことにより、画素P3〜P5、画素P4〜P6に停滞する時間が短くなっている。
【0040】
そして、各画素には特徴領域が停滞した回数分の投票値が付与されて積算される。従って、図5(a)に示す時刻t1〜t4では、画素P1〜P3には、時刻t1〜t4の4画像分の投票値が付与されるので、それぞれ投票値は「4」となる。次いで、図5(b)に示す時刻t5〜t8では、画素P2〜P4に対して、4画像分の投票値が付与されるので、それぞれに投票値「4」が加算されて、画素P2〜P4の投票値はそれぞれ「8」「8」「4」となる。この際、特徴領域の外側となる画素P1は、投票値がリセットされる。即ち、図5(b)に示す画素P1の投票値は「0」とされる。
【0041】
更に、図5(c)に示す時刻t9,t10では、画素P3〜P5に対して2画像分の投票値が付与されるので、それぞれに投票値「2」が加算されて、画素P3〜P5の投票値はそれぞれ「10」「6」「2」となる。また、画素P2の投票値はリセットされて「0」となる。
【0042】
また、図5(d)に示す時刻t11では、画素P4〜P6に対して1画像分の投票値が付与されるので、それぞれに投票値「1」が加算されて、画素P4〜P6の投票値はそれぞれ「7」「3」「1」となる。また、画素P3の投票値はリセットされて「0」となる。
【0043】
速度算出部17は、投票値の傾斜(変化)に基づいて測定対象物の速度を求める。具体的には、左端の投票値である「7」と右端の投票値である「1」の差分を求め、この差分の逆数が速度に対応する数値となるので、この数値に基づいて測定対象物の速度を求める。この際、「7」と「1」の差分は「6」であり、この逆数に応じた速度が算出されることになる。しかし、実際には測定対象物は加速しているので、正確な速度が求められていないことになる。
【0044】
本実施形態では、図1に示した投票値評価部15、及び投票値補正部16により、測定対象物の実際の速度が反映するように投票値を補正する。以下、投票値を補正する処理について、図6を参照して説明する。
【0045】
図6は、測定対象物が加速しながら移動しているときの、3画素分の特徴領域の投票値の変化を模式的に示す説明図であり、図6(a)は特徴領域が図5(c)の状態にある場合の投票値を示し、図6(b)は測定対象物が加速して図5(d)の状態にある場合の投票値を示し、図6(c)は投票値補正部16により補正した後の投票値を示している。また、図6(a)〜(c)に示すマスは、積算された投票値を示している。
【0046】
図6(a)に示すように、測定対象物が等速状態から加速に移行する場合には、3つの特徴領域Q11〜Q13の投票値は前述した図5(c)に示したようにそれぞれ「10」「6」「2」となる。また、図6(b)に示すように、測定対象物が加速している場合には、各画素に停滞する時間が減少するので3つの特徴領域Q11〜Q13の投票値は、それぞれ「7」「3」「1」となる。
【0047】
そして、投票値評価部15は、各特徴領域Q11〜Q13の投票値の増加、減少に基づいて、測定対象物が減速しているか、或いは加速しているかを判断する。具体的には、投票値が増加している場合には測定対象物は減速しているものと判断し、投票値が減少している場合には測定対象物は加速しているものと判断する。
【0048】
図6(b)に示す場合には、各特徴領域Q13の投票値が減少しているので(即ち「2」から「1」へと変化しているので)、測定対象物は加速しているものと判断する。そして、投票値補正部16は、測定対象物が加速していると判断された場合には、特徴領域Q11の投票値を補正する。
【0049】
以下、具体的に説明すると、測定対象物が加速したことにより、各特徴領域Q11〜Q13の投票値は「1」ずつ加算されたことになる。即ち、図6(b)のq11,q12,q13に示す投票値が加算されたことになる。つまり、加速後の影響による投票値は「1」であり、これ以外の投票値は加速前の影響による投票値である。
【0050】
この場合、特徴領域Q12とQ13の投票値より得られる速度が実際の速度を反映した数値となる。つまり、特徴領域Q12の投票値「3」と特徴領域Q13の投票値「1」の差分値は「2」であり、この差分値を用いることによりにより現実に近い速度を求めることができる。ところが、図6(b)の特徴領域Q11の投票値は「7」であるから、Q11とQ13の投票値の差分は「6」となり、測定対象物の実際の速度を反映していないことになる。
【0051】
本実施形態では、投票値補正部16により、特徴領域Q11の投票値を変更することにより、実際の速度が反映されるようにする。具体的には、特徴領域Q12とQ13との間の投票値の差分は「2」であるから、特徴領域Q11とQ12との間の投票値の差分もこれと同一の「2」となるように補正する。即ち、図6(c)に示すように、特徴領域Q11の投票値から2つ分を削減し、投票値を「5」に補正する。その結果、特徴領域Q11とQ13の差分値は「4」となり、測定対象物の速度を反映した速度を算出することができることになる。即ち、投票値補正部16により補正された投票値を採用して速度を求めることにより、測定対象物が加速している場合であっても、この速度を正確に求めることが可能となる。
【0052】
[処理手順の説明]
次に、上述のように構成された本実施形態に係る動き検出装置の処理動作を図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0053】
初めに、ステップS11において、撮像部11は、車両の周辺画像を時系列的に撮像し、撮像した画像データを出力する。ステップS12において、特徴抽出部12は、取得した画像についてエッジ検出を行う。更に、ステップS13において、エッジの画素を255とし、エッジ以外の画素を0とする処理、即ち2値化処理を実行する。ステップS14において、特徴抽出部12は、エッジ幅が1画素となるように細線化する。
【0054】
更に、ステップS15において、特徴規格化部13は、エッジ幅が均一となるように膨張させ、エッジ幅を規格化する。この処理では、エッジ幅を例えば3画素とする。このエッジ幅に対応する領域を特徴領域とする。
【0055】
ステップS16において、特徴投票部14は、特徴領域に該当する画素の投票値に「1」を加算し、特徴領域に該当しない画素の投票値をリセットする。
【0056】
ステップS17において、投票値評価部15は、前回速度から算出した現時刻における推定投票値と、実際の投票値とを比較し、増減が存在する場合にはステップS18に処理を進め、増減が無ければステップS21に処理を進める。
【0057】
ステップS18において、増減量を算出し、増加である場合にはステップS19に処理を進め、減少である場合にはステップS20に処理を進める。
【0058】
ステップS19において、投票値補正部16は、投票値の増加量に基づいて投票値を補正する。具体的には、図4に示したように、投票値を追加する処理を実行する。
【0059】
ステップS20において、投票値補正部16は、投票値の減少量に基づいて、投票値を補正する。具体的には、図6に示したように、投票値を削減する処理を実行する。
【0060】
ステップS21において、速度算出部17は、求められた投票値、或いは補正された投票値に基づいて、測定対象物の速度を算出する。
【0061】
ステップS22において、速度算出部17は、全てのエッジについて速度を算出したか否かを判定し、算出していなければ(ステップS22でNO)、ステップS17に処理を戻し、算出していれば(ステップS22でYES)、ステップS23に処理を進める。
【0062】
ステップS23において、イグニッションがオフであるか否かを判断し、オフでなければ(ステップS23でNO)、ステップS11に処理を戻し、オフであれば(ステップS23でYES)、本処理を終了する。
【0063】
このようにして、本実施形態に係る動き検出装置では、各特徴領域の投票値の増減に基づいて、測定対象物が等速で移動しているか、減速しているか、或いは加速しているかを判断し、減速していると判断された場合には、特徴領域に対応する各画素の投票値に補正値を加算する処理を行う。この際、加算値は、特徴領域が移動する方向に向けて小さくなるように設定する。即ち、図4に示したように、移動する方向に向けて「2」「1」「0」の補正値を加算する。その結果、測定対象物が減速していることを即時に求めることができ、動き検出の即応性を向上させることができる。
【0064】
また、測定対象物の速度が加速していると判断された場合には、特徴領域の移動元となる画素の投票値を削減する処理を行う。即ち、図6に示したように、移動元となる画素Q11の投票値を2個分削減することにより、投票値の変化(傾き)を低減することができるので、この投票値に基づいて求められる測定対象物の移動速度は、測定対象物が加速したことを反映した速度となる。従って、測定対象物が加速していることを即時に求めることができ、動き検出の即応性を向上させることができる。
【0065】
更に、測定対象物の特徴抽出の手法として、コーナエッジ成分を検出することにより、高精度な特徴点の検出が可能となり、特徴領域の移動状況を確実に認識することが可能となる。また、他の手法として測定対象物の形状特徴成分、例えば、歩行者の頭部や眼等を抽出して特徴領域とすることにより、特徴領域の移動状況を高精度に認識することが可能となる。
【0066】
以上、本発明の動き検出装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0067】
例えば、上述した実施形態では、特徴領域を3画素としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、4画素以上とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、測定対象物が加速、減速した場合であっても対象物の動きを高精度に検出することに利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
11 撮像部
12 特徴抽出部
13 特徴規格化部
14 特徴投票部
15 投票値評価部
16 投票値補正部
17 速度算出部
100 動き検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の画像を時系列的に複数撮像する撮像手段と、
前記撮像手段にて撮像された複数の画像からそれぞれ測定対象物の特徴点を抽出する特徴抽出手段と、
前記特徴抽出手段で抽出された特徴点の大きさを、前記画像の画素に対応して規格化し、規格化された特徴点を特徴領域として設定する特徴点規格化手段と、
前記特徴点規格化手段にて設定された特徴領域が、前記複数の画素に含まれる各画素について、前記特徴領域が存在した場合に1つの投票値を付与し、更に、複数の画像に対して付与される前記投票値を各画素毎に積算する特徴領域投票手段と、
特徴領域に対応する画素の投票値、及び特徴領域の過去の動き情報に基づいて、特徴領域の加速、減速を評価する投票値評価手段と、
前記投票値評価手段による評価結果に基づいて、前記特徴領域に対応する各画素の投票値を補正する投票値補正手段と、
前記特徴領域に対応する各画素の補正後の投票値に基づいて、前記特徴領域の移動速度を算出する移動速度算出手段と、
を備えたことを特徴とする動き検出装置。
【請求項2】
前記投票値評価手段は、前記特徴領域に対応する画素の投票値が増加した場合に、前記測定対象物の移動速度が減速しているものと判断し、
前記投票値補正手段は、前記測定対象物が減速していると判断された場合には、前記特徴領域に存在する画素の投票値を、減速前の影響による投票値と減速後の影響による投票値に分類し、前記減速後の影響による投票値に基づいて、前記特徴領域に対応する各画素の投票値に補正値を加算する処理を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の動き検出装置。
【請求項3】
前記投票値補正手段は、前記特徴領域に対応する各画素について、特徴領域が移動する方向に向けて前記補正値が小さくなるように設定することを特徴とする請求項2に記載の動き検出装置。
【請求項4】
前記投票値評価手段は、前記特徴位置に対応する画素の投票値が減少した場合に、前記測定対象物の移動速度が加速しているものと判断し、
前記投票値補正手段は、前記測定対象物が加速していると判断された場合には、前記特徴領域に存在する画素の投票値を、加速前の影響による投票値と加速後の影響による投票値に分類し、前記加速後の影響による投票値に基づいて、前記特徴領域に対応する各画素の投票値から補正値を減算する処理を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の動き検出装置。
【請求項5】
前記投票値補正手段は、前記特徴領域に対応する各画素について、特徴領域が移動する際の移動元となる特徴領域に対応する画素の補正値が大きくなるように設定することを特徴とする請求項4に記載の動き検出装置。
【請求項6】
前記特徴抽出手段は、前記測定対象物のコーナエッジ成分を、前記特徴領域として抽出することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の動き検出装置。
【請求項7】
前記特徴抽出手段は、前記測定対象物の形状特徴成分を、前記特徴領域として抽出することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の動き検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50797(P2013−50797A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187532(P2011−187532)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】