説明

動力伝達機構、及び画像形成装置

【課題】回転ムラや振動を低減できるとともに、組み立て性やコスト面で不利とならず、小型の製品への搭載も可能な、はすば歯車列を有した動力伝達機構を提供する。
【解決手段】第1駆動モータ151に近い動力伝達方向上流側の第1はすば歯車111と、駆動源から遠い下流側の第2はすば歯車112と、これらの間に配置された第1中間はすば歯車121とを有したはすば歯車列を備えた。そして、第1中間はすば歯車121の前方側及び後方側いずれの歯面にもδの段差を形成し、第1はすば歯車111と接触する幅をLB1とし、第1中間はすば歯車121の歯面領域S1を形成する。また、第2はすば歯車112と接触する幅をLB2とし、第1中間はすば歯車121の歯面領域S2を形成する。そして、これらの歯面領域(S1,S2)を、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で軸方向で異なるように設定し、双方の噛み合う位相が打ち消し合うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達機構、及びこのれを備えた画像形成装置に関し、特に、はすば歯車列を有し、はすば歯車列の噛み合い時に発生する噛み合い周期の振動や回転ムラを低減できる動力伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯車列を有した動力伝達機構は、精密機械製品である複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置や、家電製品、ロボット等幅広い分野で用いられてきた。しかし、歯車列を有した動力伝達機構では、歯車列を構成する各歯車の噛み合い周期の振動や、噛み合い不良に起因した回転ムラや振動といった不具合が生じる場合がある。そして、従来から、これらの不具合を抑制するために様々な方法が提案が行われてきた。
【0003】
歯車列を構成する各歯車の噛み合い周期の振動の抑制する方法としては、例えば、特許文献1には、次のような動力伝達機構(歯車伝達機構)が記載されている。駆動源に直結している第1はすば歯車(原動歯車)と、この第1はすば歯車にかみ合っている中間はずば歯車(中間歯車)と、この中間はずば歯車に噛み合っている第2はすば歯車(目的歯車)とで、動力伝達機構(歯車伝達機構)が構成されている。また、この動力伝達機構の構成では、中間はずば歯車の歯幅を、互いに歯幅がほぼ等しい第1はすば歯車及び第2はすば歯車の歯幅よりも広くしている。そして、中間はずば歯車の歯幅の略中央に噛み合っている第1はすば歯車の端面の位置(以下、端面位置という)に対する、第2はすば歯車の端面位置を回転軸方向(以下、軸方向という)に所定量ずらして設置している。このように端面位置をずらすことで、中間はずば歯車と第1はすば歯車との噛み合い位置に対する、中間はずば歯車と第2はすば歯車との噛み合い位置を、軸方向に所定量ずらして各歯車の噛み合い周期の振動を打ち消すというものである。
【0004】
また、特許文献2には、次のような動力伝達機構が記載されている。駆動源(駆動モータ)の出力軸(支軸)に連結された第1はすば歯車(駆動ギア)と、第2はすば歯車(被駆動ギア)と、これらにそれぞれ噛み合う2枚のはすば歯車からなる中間はすば歯車(アイドラギア)とで、動力伝達機構が構成されている。そして、中間はすば歯車を多層化し、かつ転位によって歯数を変えて、駆動歯面(駆動伝達歯面)だけではなく、非駆動歯面(非駆動伝達歯面)にもかみ合わせることで、かみ合い周期の振動を低減させるというものである。また、各噛み合い部の双方でバックラッシが除去できるためバックラッシに起因した回転ムラも低減できるというものである。
【0005】
一方、噛み合い不良に起因した回転ムラや振動を抑制する方法としては、例えば、特許文献3には、次のような動力伝達機構(駆動伝達装置)が記載されている。駆動源により回転駆動される第1はすば歯車(駆動ギア)と、第1はすば歯車の端面に摺動(摺接)するフランジ部を設けた大口径の第2はすば歯車(従動ギア)とで、動力伝達機構が構成されている。ここで、第2はすば歯車に設けるフランジは、回転時のスラスト力によって第2はすば歯車が移動しようとする方向(変形する方向)とは反対側の面に設けている。そして、第2はすば歯車に設けたフランジ部を、第1はすば歯車の側面に摺動させることで、回転駆動されることで生じるスラスト方向力に起因した第2はすば歯車の弾性変形を抑制し、この弾性変形により生じる回転ムラや振動を抑制するというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の動力伝達機構では、軸方向の所定の位置に各はすば歯車を設置することで、かみ合い周期の振動や回転ムラは打ち消しあうことができる。しかし、中間はずば歯車と、第1はすば歯車及び第2はすば歯車の歯幅とが異なるとともに、第1はすば歯車の端面位置に対する、第2はすば歯車の端面位置を所定量ずらしており、各はすば歯車の端面位置が揃っていない。したがって、各はすば歯車を所定の位置に設置するための位置決め機構を各はすば歯車ごとに設ける必要があり、位置決め機構や位置決め機構を設置するスペースが各はすば歯車の端面位置を揃えている構成に比べ余分に必要となる。この余分な位置決め機構やその設置スペースにより、小型の製品への搭載が難しくなるとともに、製作コスト高になるという問題がある。また、特許文献2に記載の動力伝達機構では、噛み合い面を増やすことで、噛み合い周期の振動やバックラッシに起因した回転ムラは低減できるものの、その組付け性が低下するとともに、多層化する中間はずば歯車の製作コスト高になってしまうという問題がある。そして、特許文献3に記載の動力伝達機構では、第2はすば歯車の弾性変形による噛み合い不良は軽減できるものの、はすば歯車列を構成した場合、フランジ部が干渉して組み立て性を悪くする可能性があるとともに、製作コスト高になるという問題がある。
【0007】
特に、小型、軽量化、低コスト化の要求が高い製品に搭載する動力伝達機構として、上述した各特許文献に記載された動力伝達機構の構成では、十分にその要求に対応できないという問題点があった。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、回転ムラや振動を低減できるとともに、組み立て性やコスト面で不利とならず、小型の製品への搭載も可能な、はすば歯車列を有した動力伝達機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の動力伝達機構は、歯車駆動伝達系において、駆動源に近い動力伝達方向上流側の第1はすば歯車と、駆動源から遠い下流側の第2はすば歯車と、これらの間に配置された中間はすば歯車とを有したはすば歯車列を備え、前記第1はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域と、前記第2はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域とを、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で前記中間はすば歯車の軸方向で異なるように設定し、双方の噛み合う位相が打ち消し合うように構成されていることを特徴とするものである。
本発明は、第1はすば歯車及び第2はすば歯車に、それぞれ噛み合う中間はすば歯車の歯面領域を軸方向で異ならせて、双方の噛み合う位相を打ち消し合うよう設定できるので、中間はすば歯車上での回転ムラや振動を抑制することができる。したがって、その下流側にある第2はすば歯車上での回転ムラや振動も抑制できる。
そして、中間はすば歯車上での回転ムラや振動を抑制するのに、第1はすば歯車及び第2はすば歯車とそれぞれ噛み合う中間はすば歯車の歯面領域を、中間はすば歯車の軸方向で異ならせており、従来のように中間はずば歯車を多層化したり、第2はすば歯車にフランジを設けたりする必要がなく、組み立て性やコスト面で不利となることもない。
また、第1はすば歯車及び第2はすば歯車とそれぞれ噛み合う中間はすば歯車の歯面領域を、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で軸方向で異ならせている。したがって、従来のように、軸方向の所定の位置に各はすば歯車を設置するための位置決め機構や位置決め機構を設置するスペースが各はすば歯車の端面位置を揃えている構成に比べ余分に必要となることもない。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、第2はすば歯車の回転ムラや振動を小さくできる。そして、従来のように組み立て性やコスト面で不利となることもない。また、従来のように、軸方向の所定の位置に各はすば歯車を設置するための位置決め機構や軸方向のスペースが余分に必要となることもない。
よって、回転ムラや振動を低減できるとともに、組み立て性やコスト面で不利とならず、小型の製品への搭載も可能な、はすば歯車列を有した動力伝達機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る、画像形成装置であるプリンタの概略説明図。
【図2】一実施形態に係る、感光体ドラム駆動装置の斜視説明図。
【図3】一実施形態に係る、感光体ドラム駆動装置のはすば歯車列の説明図。
【図4】実施例1に係る、はずば歯車列の説明図。
【図5】従来の中間はずば歯車の歯面の斜視説明図。
【図6】実施例1に係る、中間はずば歯車の歯面の斜視説明図。
【図7】実施例1に係る、中間はすば歯車の噛み合い面の断面説明図。
【図8】実施例2に係る、はずば歯車列の説明図。
【図9】実施例4に係る、はずば歯車列の説明図。
【図10】実施例5に係る、形状誤差と噛み合い力の変動成分(起振力)との関係を示したグラフ。
【図11】実施例6に係る、中間はずば歯車のねじれ角の調整により行う歯面領域の設定についての説明図。
【図12】実施例7に係る、はすば歯車の形状誤差に応じた接触幅の調整により行う歯面領域の設定についての説明図。
【図13】実施例9に係る、中間はすば歯車の取り付け方向によって歯面領域が異なる場合に付ける目印の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を画像形成装置に適用した一実施形態の例として、中間転写方式のタンデム型のカラープリンタ(以下、プリンタ200という)に適用した例について、図を用いて説明する。まず、各実施例に共通する本実施形態のプリンタ200の全体構成及び動作及び、感光体ドラム駆動装置150の概要について、カラー画像を画像形成する場合を例に説明する。図1は、本実施形態に係る、画像形成装置であるプリンタ200の概略説明図、図2は、本実施形態に係る、感光体ドラム駆動装置150の斜視説明図、図3は、本実施形態に係る、感光体ドラム駆動装置150のはすば歯車列の説明図である。
【0013】
図1に示すように、このプリンタ200には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーに、それぞれ対応した潜像担持体である感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kを設けている。各感光体ドラム1は、駆動ローラ2、従動ローラ3、及び2次転写装置方向に中間転写ベルト5を加圧する加圧ローラ4に掛け渡された中間転写体である中間転写ベルト5上の、駆動ローラ2と従動ローラ3間に、中間転写ベルト5に接触するように配置されている。また、各感光体ドラム1の配置は、中間転写ベルト5の無端移動方向上流側から、感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの順で配置されている。そして、各感光体ドラム1の回りには、それぞれ不図示の帯電装置、現像装置、感光体クリーニング装置等が設けられている。そして、パソコン等から画像情報が送信されてくると、各感光体ドラム1を回転駆動させるとともに、各帯電装置で、それぞれ各感光体ドラム1上を一様帯電する。その後、各感光体ドラム1の上方に配置された、光書き込み装置6が、パソコン等から送信された画像情報に基づいて、各感光体ドラム1表面上にレーザー光を照射して静電潜像を形成する。この静電潜像を、それぞえに設けられた現像装置でトナー付着させてトナー画像として顕像化する。
【0014】
各感光体ドラム1表面上にそれぞれ形成された各色のトナー画像は、各感光体ドラム1の図1図中、反時計回りの回転にともない、図1図中、時計回りに無端移動する中間転写ベルト5を介した対向位置に、それぞれ設けられた不図示の1次転写装置位置まで搬送される。そして、1次転写装置に印加される1次転写バイアスにより、各感光体ドラム1表面上から中間転写ベルト5上に、順次、重ね合わせられるようにして1次転写され、中間転写ベルト5上にカラーのトナー画像が形成される。中間転写ベルト5上に1次転写されたカラーのトナー画像は、中間転写ベルト5の無端移動により、加圧ローラ4とローラで構成された2次転写装置7が中間転写ベルト5を介して対向配置された2次転写位置まで搬送される。そして、カラーのトナー画像が2次転写位置に搬送されるタイミングに合わせて、2次転写装置7の下方に設けられた給紙装置8から図1中、点線で示す搬送経路9に沿って給紙され、レジストローラ対10により2次転写部に搬送された転写紙P上に、カラーのトナー画像が2次転写装置7により一括転写される。
【0015】
カラーのトナー画像が一括転写された転写紙Pは、搬送経路9に沿って2次転写位置の転写紙搬送方向下流側に設けられた、定着装置11まで搬送されて転写紙P上にカラーのトナー画像が定着された後、排紙部12から排紙されて、排紙トレイ13上にスタックされる。また、1次転写位置で各感光体ドラム1上から中間転写ベルト5上に1次転写し切れなかった転写残トナーは、各感光体ドラム1における1次転写位置の感光体ドラム回転方向下流側に設けられた不図示の感光体クリーニング装置によりクリーニングされる。そして、2次転写位置で中間転写ベルト5上から転写紙P上に2次転写しきれなかった転写残トナーも、不図示の中間転写ベルトクリーニング装置によりクリーニングされ、再度の画像形成に備える。
【0016】
ここで、感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kを回転駆動する際に、個々に駆動源である駆動モータを設けても良いが、従来からコスト面などを考慮して、1つの駆動モータから複数の感光体ドラムに回転駆動力を伝達する歯車駆動系を有した動力伝達機構が広く用いられている。このように歯車駆動系を有した動力伝達機構を用いて回転駆動される感光体ドラム上での回転ムラや、感光体ドラム周辺部にある光書き込み装置などの書き込み系への振動は、画像品質に直接影響を与えるものであり、重要な課題となっている。
【0017】
次に、各感光体ドラムを回転駆動する感光体ドラム駆動装置150について説明する。本実施例のプリンタ200では、図2に示すように、感光体ドラム1Y、1C、1Mを第1駆動モータ151により回転駆動し、感光体ドラム1Kを第2駆動モータ152で単独に回転駆動する感光体ドラム駆動装置150を用いている。この感光体ドラム駆動装置150では、各感光体ドラム1を、図2図中、反時計回りに回転駆動するように、回転駆動している。
【0018】
図2に示すように、感光体ドラム1Y、1C、1Mの回転軸には、それぞれ、第1のはすば歯車である第1はすば歯車111、第2のはすば歯車である第2はすば歯車112、第3のはすば歯車である第3はすば歯車113が同軸に取り付けられている。そして、第1はすば歯車111と第2はすば歯車112との間には第1の中間はすば歯車である第1中間はすば歯車121が配置されており、この第1中間はすば歯車121は第1はすば歯車111と噛み合うとともに、第2はすば歯車112とも噛み合う。また、第2はすば歯車112と第3はすば歯車113との間には第2の中間はすば歯車である第2中間はすば歯車122が配置されており、この第2中間はすば歯車122は第2はすば歯車112と噛み合うとともに、第3はすば歯車113とも噛み合う。そして、第1駆動モータ151の第1駆動軸141には、第1の駆動はすば歯車である第1駆動はずば歯車131が取り付けられており、中間転写ベルト5の無端移動方向最上流側に配置されている感光体ドラム1Yに回転駆動力を伝達する第1はすば歯車111に噛み合っている。
【0019】
また、感光体ドラム1Kの回転軸には、第4のはすば歯車である第4はすば歯車114が同軸に取り付けられている。そして、第2駆動モータ152の第2駆動軸142には、第2の駆動はすば歯車である第2駆動はずば歯車132が取り付けられており、中間転写ベルト5の無端移動方向最下流側に配置されている感光体ドラム1Kに回転駆動力を伝達する第4はすば歯車114に噛み合っている。ここで、図2図中では、第1駆動モータ151の第1駆動軸141に取り付けられた第1駆動はずば歯車131、及び第2駆動モータ152の第2駆動軸142に取り付けられた第2駆動はずば歯車132が、それぞれ第1はすば歯車111、及び第4はすば歯車114の上方から噛み合うように記載している。しかし、この記載は、図2の斜視図説明図において、各駆動モータ、各駆動モータにそれぞれ対応する各駆動軸、及び各駆動はずば歯車が、それぞれ対応する各はすば歯車の影に隠れないように意図して上方から噛み合うように記載したものである。実際には、各はすば歯車を各駆動モータ側から視た、図3の説明図に示すように、第1はすば歯車111、及び第4はすば歯車114の、中間転写ベルト5の無端移動方向上流側の斜め下方から、第1駆動はずば歯車131及び第2駆動はずば歯車132がそれぞれ噛み合う構成である。
【0020】
図3に示すように、この感光体ドラム駆動装置150は、不図示の第2駆動モータ152により回転駆動される第2駆動はずば歯車132の回転駆動力を、不図示の感光体ドラム1Kに伝達する、第4はすば歯車114を有した第2動力伝達機構125を備えている。そして、不図示の第1駆動モータ151により回転駆動される第1駆動はずば歯車131の回転駆動力を、第1はすば歯車111、第1中間はすば歯車121、第2はすば歯車112、第2中間はすば歯車122、及び第3はすば歯車113を有したはすば歯車列(以下、3連はすば歯車列123という)を備えた第1動力伝達機構124により、感光体ドラム1Y、1C、1Mに伝達している。したがって、この感光体ドラム駆動装置150は、上記3連はすば歯車列123を備えた第1動力伝達機構124を用いることで、個々に駆動モータを備える構成に比べて、駆動モータの数を少なくすることができ、省スペースで、低コストな感光体ドラム駆動装置150を提供できる。
【0021】
以下、本発明の特徴である、歯車駆動伝達系である第1動力伝達機構124に備えるはすば歯車列の構成、及び作用・効果について、複数の実施例を挙げ説明する。ここで、本発明の動力伝達機構に備えたはすば歯車列は、中間はすば歯車の動力伝達方向上流側、及び下流側に設けられた各はすば歯車との軸方方向の噛み合い歯面領域の設定を軸方向で異なるように設定し、双方の噛み合う位相を互いに打ち消し合うようにされていることを特徴としている。したがって、以下の各実施例の説明では、図3に示した、第1動力伝達機構124のはすば歯車列の最小構成である、第1はすば歯車111、第1中間はすば歯車121、第2はすば歯車112を有したはすば歯車列(以下、2連はずば歯車列120)について説明する。具体的には、第1駆動モータ151により回転駆動される第1駆動はずば歯車131の回転駆動力を、第1はすば歯車111、第1中間はすば歯車121、及び第2はすば歯車112を有した2連はずば歯車列120で、感光体ドラム1Y、1Cに伝達する構成について説明する。
【0022】
(実施例1)
まず、本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第1の実施例である実施例1を図を用いて説明する。図4は、本実施例に係る、2連はずば歯車列120の説明図、図5は、従来の中間はずば歯車の歯面の斜視説明図、図6は、本実施例に係る、第1中間はずば歯車121の歯面の斜視説明図である。また、図7は、本実施例に係る、第1中間はずば歯車121の噛み合い面の断面説明図であり、(a)は、第2はすば歯車112と第1中間はすば歯車121との噛み合い面の断面説明図、(b)は、第1はすば歯車111と第1中間はすば歯車121との噛み合い面の断面説明図である。
【0023】
図4に示すように、本実施例の2連はずば歯車列120では、不図示の第1駆動モータ151により回転駆動される第1駆動はずば歯車131に、図4図中、左上方から第1はずば歯車111が噛み合うように配置されている。そして、第1駆動はずば歯車131の回転駆動力が第1はずば歯車111に伝達されて、感光体ドラム1Yが回転駆動される。また、この第1はずば歯車111の左側には、所定の間隔を開けて第2はずば歯車112が配置されている。そして、第1はずば歯車111と第2はずば歯車112との間には、第1中間はすば歯車121が配置され、左斜め上方から第1はずば歯車111に噛み合い、右斜め上方から第2はずば歯車112に噛み合っている。そして、このように第1中間はすば歯車121を配置することで、第1はずば歯車111からの回転動力が第2はずば歯車112に伝達されて、感光体ドラム1Cが回転駆動される。
【0024】
このように、駆動源である第1駆動モータ151に近い動力伝達方向上流側の第1はずば歯車111と、第1駆動モータ151から遠い下流側の第2はずば歯車112と、これらの間に配置した第1中間はすば歯車121とを有した、2連はずば歯車列120で、第1駆動モータ151により回転駆動される第1駆動はずば歯車131の回転動力を上流側の第1はずば歯車111及び下流側の第2はずば歯車112に伝達し、感光体ドラム1Y、1Cを回転駆動している。このようなはずば歯車列が噛み合う際には、噛み合う歯のピッチにともなう振動が発生する。このような振動が発生するのは、歯車の歯の形状誤差にともなう接触点のばらつきや、負荷が加わることで歯が弾性変形すること、又は、噛み合う歯の位置(駆動側歯車では歯底から歯先方向へ推移)による剛性変化等が起因している。
【0025】
従来から、歯車列において、噛み合いピッチによる振動を低減する方法として、噛み合う振動の位相を打ち消すように各歯車を配置することで、振動を相殺する方法が提案されている。例えば、図8に示す回転軸に垂直な平面(以下、XY平面という)における各歯車のレイアウトを操作して、噛み合う振動の位相を打ち消すような各歯車の回転中心位置を見出す方法がある。具体的には、XY平面上で、第1駆動はすば歯車131、第1はすば歯車111、第1中間はすば歯車121、及び第2はすば歯車112の配置を操作して、噛み合う際の振動の位相を打ち消すような各はすば歯車の回転中心位置を見出す方法である。また、はすば歯車に限定されるが、背景技術で説明した特許文献1のように、第1中間はすば歯車121(中間歯車)の歯幅を、第1はすば歯車111(原動歯車)及び第2はすば歯車(目的歯車)112の歯幅よりも広くしておき、第1はすば歯車111の端面位置に対して、第2はすば歯車112の端面位置を軸方向(Z軸方向)にずらして設置する方法もある。このように端面位置をずらすことで、第1中間はすば歯車121と第1はすば歯車111との噛み合い位置に対する、第1中間はすば歯車121と第2はすば歯車112との噛み合い位置を、軸方向に所定量ずらして各歯車の噛み合い周期の振動を打ち消すというものである。
【0026】
そして、はすば歯車列を有した動力伝達機構では、部品配置の構成上、各はすば歯車のXY平面上のレイアウトを噛み合う振動の位相を打ち消すような回転中心位置に配置できない場合、第1はすば歯車111の端面位置に対して、第2はすば歯車112の端面位置を軸方向にずらして設置することになる。しかし、第1中間はすば歯車121と、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の歯幅とが異なるとともに、第1はすば歯車111の端面位置に対する、第2はすば歯車112の端面位置を所定量ずらしており、各はすば歯車の端面位置が揃っていない。したがって、各はすば歯車を所定の位置に設置するための位置決め機構や軸方向のスペースが余分に必要となる。そして、この余分な位置決め機構やスペースにより、製作コスト高になるという問題がある。
【0027】
そこで、本実施例では、特許文献1のように、第2はすば歯車112だけをその端面位置が移動するようにずらして設置するのではなく、あらかじめ第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112が接触する第1中間はすば歯車121のそれぞれの歯面に加工を施しておくこととした。すなわち、図5に示す従来のように、第1中間はすば歯車121の噛み合うそれぞれの歯面を凹凸のない滑らかな面にするのではなく、あらかじめ、図6に示すように第1中間はすば歯車121の噛み合うそれぞれの歯面に加工を施しておくこととした。
【0028】
第1中間はすば歯車121は、第1はすば歯車111との噛み合い時は、図7(b)に示すように、第1中間はすば歯車121の噛み合う歯面で動力をもらう側となる従動歯車の働きをもつ。一方、第2はすば歯車112との噛み合い時は、図7(a)に示すように、第1中間はすば歯車121の噛み合う歯面で、第2はすば歯車112に動力を与える側となる駆動歯車の働きとなる。すなわち、図6図中、反時計方向の矢印で示した第1中間はすば歯車121の歯車回転方向の、前方側の歯面が駆動歯車の働きを、後方側の歯面が従動歯車の働きをもつ。
【0029】
そこで、本実施例では、図6に示すように第1中間はすば歯車121の第1はすば歯車111と噛み合う側、及び第2はすば歯車112と噛み合う側の、いずれの歯面にもδの段差を形成している。このようにδの段差を形成することで、第1はすば歯車111と噛み合う歯面領域S1と、第2はすば歯車112との噛み合う歯面領域S2とを形成し、第1はすば歯車111との噛み合いと第2はすば歯車112との噛み合いの位相関係を簡単に設定できるようにしている。具体的には、図6に示すように、第1はすば歯車111と接触する幅(以下、接触幅という)をLB1、接触しない幅(以下、非接触幅という)をLBp1とし、同様に第2はすば歯車112との接触幅をLB2、非接触幅をLBp2とし、接触する面同士を軸方向にずらして配置している。つまり、第1中間はすば歯車121の、第1はすば歯車111と接触する歯面領域S1と、第2はすば歯車112と接触する歯面領域S2とを軸方向にずらして配置している。したがって、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で、第1中間はすば歯車121の、第1はすば歯車111と接触する歯面領域S1と、第2はすば歯車112と接触する歯面領域S2とを軸方向に異ならせることができる。
【0030】
また、図6で接触幅が等しく(LB1=LB2)、それぞれの端面から形成された場合、位相差φ(rad)は次の式1により定めることができる。
ここで、mはモジュール、LBp=LBp1=LBp2は位相ずらし量である。
φ=2・LBp・cosβ・sinβ/m ・・・(式1)
また、実際には、図4で示した、XY平面におけるレイアウトの位相関係を考慮した上で、設定することになる。
【0031】
また、XY平面上で第1はすば歯車111との噛み合い振動と、第2はすば歯車112とのかみ合い振動が重なって増幅される場合、この関係を打ち消す位相にするためには、φ=πを式に代入して位相ずらして幅LBpを算出することで、簡単に設定することができる。このように設定すると、第1中間はすば歯車121にかかる力の変動成分同士が打ち消し合うので、第1中間はすば歯車121の回転ムラや振動を抑制でき、第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の回転ムラも小さくなる。したがって、各はすば歯車自体の組付けは、通常の歯車と同様に端面を揃えて配置することができ、簡単に、省スペースで組み立てることができる。
【0032】
上述したように、本実施例の2連はずば歯車列120では、第1中間はすば歯車121の、第1はすば歯車111と噛み合う歯面領域S1と、第2はすば歯車112と噛み合う歯面領域S2とを、双方の位相が打ち消し合うように軸方向で異ならせて設定している。このように、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う歯面領域S1,S2の設定を行うことで、回転ムラや振動を低減できる。そして、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112とそれぞれ噛み合う第1中間はすば歯車121の歯面領域S1,S2を、第1中間はすば歯車121の軸方向で異ならせて、第1中間はすば歯車121上での回転ムラや振動を抑制しており、従来のように中間はずば歯車を多層化したり、第2はすば歯車にフランジを設けたりする必要がなく、組み立て性やコスト面で不利とならない。
【0033】
また、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112とそれぞれ噛み合う第1中間はすば歯車121の歯面領域S1,S2を、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で軸方向で異ならせるので、従来のように、軸方向の所定の位置に各はすば歯車を設置するための位置決め機構や位置決め機構を設置するスペースが余分に必要となることもない。したがって、この余分な位置決め機構やその設置スペースにより、小型の製品への搭載が難しくなるとともに、製作コスト高になることもない。よって、回転ムラや振動を低減できるとともに、組み立て性やコスト面で不利とならず、小型の製品への搭載も可能な、2連はずば歯車列120を構成することができる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、回転ムラや振動を低減できるとともに、組み立て性やコスト面で不利とならず、小型の製品への搭載も可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0034】
また、第1中間はすば歯車121の軸方向のかみ合う歯面領域S1,S2の設定は、一方の端面側からLB1の幅だけ第1はすば歯車111と噛み合うように段差δを形成して設定し、他方の端面側からLB2の幅だけ第2はすば歯車112と噛み合うように段差δを形成して設定している。このように歯面領域S1,S2の設定をおこなうことで、第1はすば歯車111と噛み合う第1中間はすば歯車121の歯面領域S1と、第2はすば歯車112なと噛み合う第1中間はすば歯車121の歯面領域S2とを、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で第1中間はすば歯車121の軸方向で確実に異ならせて設定できる3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0035】
また、本実施例では、第1中間はすば歯車121の歯面にあらかじめ加工を施すことで、第1中間はすば歯車121の軸方向のかみ合う歯面領域S1,S2の設定したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、第1中間はすば歯車121の歯面には加工を施さず、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112のそれぞれの歯面に、あらかじめ上記のような加工を施しても良い。2連はすば歯車列120や3連はすば歯車列123の製作コストは、一概に上記のような加工を施したはすば歯車の個数のみにより左右されるものではなく、量産効果やはすば歯車に施す加工コストにも左右される。したがって、歯面にあらかじめ加工を施すはすば歯車を、第1中間はすば歯車121にするか、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112にするかは、2連はすば歯車列120や3連はすば歯車列123の総合的な製作コストを考慮して選択すれば良い。
【0036】
(実施例2)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第2の実施例である実施例2について、図を用いて説明する。図8は、本実施例に係る、2連はずば歯車列120の説明図である。ここで、上述した実施例1と本実施例とは、本実施例が、第1中間はすば歯車121を負荷が加わらないアイドラ歯車とすることを規定していることに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。
【0037】
本実施例の2連はずば歯車列120では、実施例1と異なり第1中間はすば歯車121を負荷が加わらないアイドラ歯車とすることを規定している。まず、第1中間はすば歯車121をアイドラ歯車とすることを規定している理由を説明する。図8に示すように、本実施例の2連はずば歯車列120は、駆動歯車である第1駆動はずば歯車131と、複数の被駆動歯車である第1はすば歯車111、第1中間はすば歯車121、及び第2はすば歯車112とを有している。そして、被駆動歯車である第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112に負荷が加わった場合、その負荷に応じて、それぞれ噛み合い力F1及びF2が発生する。第1中間はすば歯車121にも負荷が加わった場合、その分、噛み合い力は変化し、F1>F2になってしまい、位相を相殺してもF1−F2の振動は、小さくなるものの残ってしまう。ここで、被駆動歯車に加わる負荷としては、作業するための負荷トルクや、軸受摩擦等の負荷が加わる。
【0038】
そして、第1中間はすば歯車121の振動や回転ムラを引き起こす力は、これらの噛み合い力F1、F2に比例した大きさになるので、双方を同じにすることで効果的に相殺することができる。そこで、本実施例では、第1中間はすば歯車121を負荷が加わらないアイドラ歯車と規定している。このように第1中間はすば歯車121をアイドラ歯車とした場合、F1=F2となり、位相を相殺するように合わせることで振動を低減できる。つまり、第1中間はすば歯車121を、負荷の加わらないアイドラ歯車とすることで、第1中間はすば歯車121に加わるF1、F2の二つの力の大きさを等しでき、これらの位相を打ち消すように合わせて変動成分を消滅させることができる。その結果、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、2連はずば歯車列120を構成することができる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0039】
(実施例3)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第3の実施例である実施例3について説明する。ここで、上述した実施例1、2と本実施例とは、本実施例が、第1中間はすば歯車121に、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112よりも耐摩耗性に優れた材質のものを用いていることに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。また、本実施例の2連はずば歯車列120の基本的なレイアウトは、実施例1で、図4を用いて説明したレイアウトと同様である。
【0040】
本実施例の2連はずば歯車列120では、第1中間はすば歯車121に、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112よりも耐摩耗性に優れた材質のものを用いている。これは、第1中間はすば歯車121の歯数が、第1はすば歯車111や第2はすば歯車112よりも少ない場合、歯の噛み合う回数が多くなるので、相対的に第1中間はすば歯車121が摩耗し易くなってしまうためである。そして、本実施例の2連はずば歯車列120のように、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112よりも加わる負荷が小さい第1中間はすば歯車121の歯数を、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の歯数よりも少なくする場合が一般に多い。また、第1中間はすば歯車121の歯数を、耐摩耗性を高めるために、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の歯数よりも多くしてしまうと装置が大型化してしまう可能性が高い。そこで、本実施例の2連はずば歯車列120では、第1中間はすば歯車121に、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112よりも耐摩耗性に優れている材質を用いることで、長時間使用すること可能となる。
【0041】
また、各はすば歯車に用いる材質としは、例えば、各はずば歯車にポリプラスチックス社製のポリアセタール(POM)材であるジュラコン(登録商標)材を用いる場合、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112に材質SW−01を用い、第1中間はすば歯車121に材質NW02を用いることで実現できる。ここで、耐摩耗性を示す指標として、比摩耗量(スラスト式摺動試験)があるが、ポリプラスチックス社のカタログには、材質SW−01の比摩耗量が0.61×10−3[mm/(N・km)]、材質NW−02の比摩耗量が0.35×10−3[mm/(N・km)]と記載されており後者の方が摩耗しにくいことがわかる。
【0042】
上述したように構成することで、第1中間はすば歯車121の噛み合い回数が、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の噛み合い回数よりも多くなった場合でも、第1中間はすば歯車121が摩耗し難くなり、噛み合い力の位相関係(打ち消しあう関係)を長時間維持することが可能となる。また、第1中間はすば歯車121の歯数を、耐摩耗性を高めるために、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の歯数よりも多くする必要もなく、装置が大型化する可能性も低くできる。その結果、省スペースで、かつ長時間使用すること可能な2連はずば歯車列120を構成できる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、省スペースで、かつ長時間使用すること可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0043】
(実施例4)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第4の実施例である実施例4について、図を用いて説明する。図9は、本実施例に係る、2連はずば歯車列120の説明図であり、(a)は、XY平面上の各はすば歯車のレイアウト、及び第1中間はすば歯車121に働く噛み合い力の説明図、(b)は、第1中間はすば歯車121に働く噛み合い力の各方向成分の説明図である。ここで、上述した実施例1乃至3と本実施例とは、本実施例が、はすば歯車列に有した第1はすば歯車111、第2はすば歯車112、及び第1中間はすば歯車121の回転中心が、直線状に配置されていることに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。
【0044】
本実施例の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120では、図9(a)に示すように、2連はずば歯車列120に有した第1はすば歯車111、第2はすば歯車112、及び第1中間はすば歯車121の回転中心が、直線状に配置されている。ここで、直線状に配置されるとは、はすば歯車列に有する第1はすば歯車111、第2はすば歯車112、及び第1中間はすば歯車121の回転中心軸が、所定の誤差範囲内で、平行かつ同一面上になるように配置されていることを意図している。
【0045】
一般に、2つの歯車の間に設けられ、それぞれの歯車と噛み合う中間歯車の噛み合い力F1、F2は、歯面法線の作用線上に働く。この噛み合い力の変動成分が回転ムラや振動を引き起こす。ここで、外部に影響を与える振動源を考えた場合、噛み合い力の軸間方向成分である、図9(b)に示すF1x及びF2xが大きく影響を及ぼす。また、F1x及びF2xと、それぞれ直交する成分であるF1y及びF2yは、回転方向へと力が逃げていくので振動源としては影響が小さい。本実施例では図9(a)に示すように、2連はずば歯車列120に有した第1はすば歯車111、第2はすば歯車112、及び第1中間はすば歯車121の回転中心を、直線状に配置することで、第1はすば歯車111との噛み合い力F1の軸間方向成分F1xと、第2はすば歯車112との噛み合い力F2の軸間方向成分F2xの向きが反対となり、完全にゼロにすることが可能となる。これにより、周辺部を加振する力を無くすこととなる。
【0046】
また、例えば実施例1の説明で用いた図4に示したレイアウトでは、第1はすば歯車111、第1中間はすば歯車121、及び第2はすば歯車112の回転中心が直線状に配置されていない。すなわち、第1はすば歯車111の回転中心と第1中間はすば歯車121の回転中心とを結ぶ線分と、第1中間はすば歯車121の回転中心と第2はすば歯車112の回転中心とを結ぶ線分とがなす角度を180度ではなく、所定の角度としている。一方、本実施例の構成では、第1はすば歯車111の回転中心と第1中間はすば歯車121の回転中心とを結ぶ線分と、第1中間はすば歯車121の回転中心と第2はすば歯車112の回転中心とを結ぶ線分とがなす角度が180度なる。
【0047】
このように、第1中間はすば歯車121の噛み合い力の軸間方向成分であるF1x及びF2x同士が完全に打ち消す方向となり、振動成分の位相を操作することで、この振動源を消去するこができる。その結果、周辺部に与える振動を効果的に小さくすることが可能な2連はずば歯車列120を構成することができる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、周辺部に与える振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0048】
(実施例5)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第5の実施例である実施例5について、図を用いて説明する。図10は、本実施例に係る、形状誤差と噛み合い力の変動成分(起振力)との関係を示したグラフである。ここで、上述した実施例1乃至4と本実施例とは、本実施例が、実施例1乃至4のいずれかの構成に加え、第1はすば歯車111と第2はすば歯車112とを同一部品としていることに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。
【0049】
本実施例の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120では、実施例1乃至4のいずれかの構成に加え、第1はすば歯車111と第2はすば歯車112とを同一部品としている。同一部品であれば、その形状誤差も同程度となり、図10のグラフに示すように形状誤差にほぼ比例して大きくなる噛み合い力の変動成分(Fm:回転ムラや振動を引き起こす力)も、同程度の大きさとなる。これらを打ち消しあうように、上述した実施例1乃至4に記載したいづれかの構成を用いて、第1中間はすば歯車121の歯面領域を設定することで、回転ムラや振動を効果的に相殺することが可能となる。
【0050】
ここで、図10に記載のグラフについて補足すると、噛み合い力Fは、定常成分F+変動成分Fmで表すことができる。そして、定常成分Fは、負荷トルクや起動加速度で定まるものであり、変動成分Fmは、歯面形状誤差、組み付け誤差、及び歯面の接触する位置で変化する歯対剛性等により定まるものである。
【0051】
上述したように本実施例の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120では、第1はすば歯車111と第2はすば歯車112とを同一部品とすることで、2つの噛み合い力も同じになる。そして、2つの噛み合い力が同じになるにともなって、回転ムラや振動を引き起こす力も同等なり、その力を打ち消す位相に設定することで回転ムラや振動を効果的に相殺することが可能となる。その結果、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、2連はずば歯車列120を構成することができる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0052】
(実施例6)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第6の実施例である実施例6について、図を用いて説明する。図11は、本実施例に係る、第1中間はすば歯車121のねじれ角の調整により行う歯面領域の設定についての説明図である。そして、(a)は、ねじれ角の値が正規の値βである第1中間はすば歯車121が噛み合う場合の説明図、(b)は、ねじれ角の値が正規の値βにずらし量γを加えてた値である第1中間はすば歯車121が噛み合う場合の説明図である。ここで、上述した実施例1乃至5と本実施例とは、本実施例が、第1中間はすば歯車121のねじれ角の値(β+γ)の調整により、軸方向の噛み合う各歯面領域の設定することに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。
【0053】
本実施例では、実施例1で説明した第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う歯面領域の設定を歯面に形成する段差の位置で調整する方法とは異なり、第1中間はすば歯車121に加わる負荷の大きさと、ねじれ角の値(β+γ)で調整して設定することとした。以下に具体的な調整方法を説明する。ここで、図11(a)及び図(b)では、それぞれ、第1中間はすば歯車121の、図中右側に示した矩形の部分が第1はすば歯車111との噛み合い歯面領域S1及び歯面領域S1’を示し、図中左側に示した矩形の部分が第2はすば歯車112との噛み合い歯面領域S2及び歯面領域S2’を示している。
【0054】
図11(a)に示すように、第1中間はすば歯車121が、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112と、それぞれ軸方向全域の歯面領域S1及びS2で噛み合う場合の第1中間はすば歯車121のねじれ角の値、つまり第1中間はすば歯車121のねじれ角の正規の値をβとする。この第1中間はすば歯車121のねじれ角の値を、本実施例では、図11(b)に示すように、上記正規の値であるβにずらし量γを加えてオフセットさせた値としている。このように、第1中間はすば歯車121のねじれ角を正規の値からずらすことで、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112と接触する場所と歯面領域が変化する。すなわち、第1中間はすば歯車121を第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112と、歯幅全体で接触させるのではなく、任意の歯幅で接触させることができる。
【0055】
具体的には、図11(b)に示すように、第1はすば歯車111とは、図中下方を基点として噛み合う歯面領域S1’で噛み合い、第2はすば歯車112とは、図中上方を基点として噛み合う歯面領域S2’で噛み合う。これらの接触する歯面領域S1’,S2'は、負荷の大きさと歯面材質の関係で変わるので、動作時の負荷の大きさに対応させて、ねじれ角のずらし量γを設定する必要がある。また、ねじれ角の値を変えるだけで可能となるので、製作面でも容易である。ここで、ずらし量γは、事前にシミュレーションモデルを作成して解析的に最適値を求めても良いし、ずらし量γを変えた複数の第1中間はすば歯車121を用意して実験的に最適値を求めても良い。
【0056】
上述したように、本実施例の2連はずば歯車列120では、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う歯面領域S1’,S2'の設定は、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112にそれぞれ第1中間はすば歯車121の歯面全体が噛み合う場合の第1中間はすば歯車121のねじれ角の値(β)に所定角度(γ)加えて、第1中間はすば歯車121のねじれ角の値(β+γ)を設定することで行っている。したがって、歯面全面が噛み合うことができなくなり、噛み合いに位相差が発生する。この位相差を互いに打ち消し合うような、加わる動作時の負荷の大きさと、ねじれ角の値に設定することで、回転ムラや振動が小さくなる。その結果、製作を容易にし、部品コストの低減化を実現することが可能な、2連はずば歯車列120を構成できる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、製作を容易にし、部品コストの低減化を実現することが可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0057】
(実施例7)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第7の実施例である実施例7について、図を用いて説明する。図12は、本実施例に係る、はすば歯車の形状誤差に応じた接触幅(LB1,LB2)の調整により行う歯面領域の設定についての説明図である。そして、(a)は、XY平面上の各はすば歯車のレイアウト、及び第1中間はすば歯車121に働く噛み合い力の説明図、(b)は、第1中間はすば歯車121の第1はすば歯車111との接触幅LB1と第2はすば歯車112との接触幅幅LB2との関係説明図である。ここで、上述した実施例1乃至6と本実施例とは、本実施例が、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う各歯面領域の設定を、噛み合うはすば歯車の形状誤差の値にに応じて調整することに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。
【0058】
本実施例では、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う歯面領域(S1又はS1’,S2又はS2')の設定を、第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の形状誤差の値に応じて調整することとした。噛み合い力の変動成分を引き起こす要因の一つである、第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の形状誤差を考慮することで、2つの噛み合い力(F1,F2)の大きさを調整するものである。
【0059】
具体的には、例えば、図12(a)に示すようなレイアウトのはずば歯車列で、第1はすば歯車111の方が、第2はすば歯車112よりも形状誤差が悪い場合には、次のような調整を行う。図12(b)に示すように、第1はすば歯車111に噛み合う第1中間はすば歯車121の接触幅LB1を広く取り(LB1>LB2)、噛み合い力の変動成分を大きくならないようにする。このように第1中間はすば歯車121の接触幅を調整することで、2つの噛み合い力(F1,F2)が同程度の大きさになるようにする。そして、互いに打ち消すような位相関係にすることで、回転ムラや振動を小さくすることができる。
【0060】
ここで、本実施形態では振動を小さくするために位相を調整し、相殺するようにしているが、その振幅レベルも同等でないとその効果は小さい。そこで、本実施例では、振幅レベルを揃えるために接触幅(LB1,LB2)を調整している。この接触幅は、事前にシミュレーションモデルを作成して解析的に最適値を求めても良いし、接触幅を変えた複数の第1中間はすば歯車121を用意して実験的に最適値を求めても良い。
【0061】
上述したように、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う歯面領域の設定は、第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の形状誤差の値に応じて、形状誤差の値が大きい方のはずば歯車との歯面領域が広くなるように行うことで、第1はすば歯車111との噛み合いで発生する噛み合い変動成分の力と、第2はすば歯車112との噛み合いで発生する噛み合い変動成分の力との大きさが同程度にできる。さらに、同程度の大きさにした各噛み合い変動成分を、互いに打ち消す位相関係にすることで変動成分を減少させることができる。その結果、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、2連はずば歯車列120を構成することができる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0062】
(実施例8)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第8の実施例である実施例8について、図を用いて説明する。図については、上述した実施例7と同じ図12(a)、(b)を用いる。ここで、上述した実施例7と本実施例とは、本実施例が、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う各歯面領域の設定を、噛み合うはすば歯車の組付け誤差の値に応じて調整することに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。
【0063】
本実施例では、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う歯面領域(S1又はS1’,S2又はS2')の設定を、第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の組付け誤差の値に応じて調整することとした。第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112に組付け誤差がある場合、歯面が片当たりとなり、かみ合い力の変動成分が大きくなる。そこで、このように噛み合い力の変動成分を引き起こす要因の一つである、第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の組み付け誤差を考慮することで、2つの噛み合い力(F1,F2)の大きさを調整するものである。
【0064】
具体的には、例えば、図12(a)に示すようなレイアウトのはずば歯車列で、第1はすば歯車111の方が、第2はすば歯車112よりも組み付け誤差が悪い場合には、次のような調整を行う。第2はすば歯車112噛み合う第1中間はすば歯車121の歯面領域を狭くして、噛み合い力の変動成分が同程度の大きさになるようにし、かつ、互いに打ち消すような位相関係にすることで、回転ムラや振動を小さくすることができる。このように調整を行う場合の、第1中間はすば歯車121の歯面領域の調整は、図12(b)に示すように、第2はすば歯車112に噛み合う第1中間はすば歯車121の接触幅(LB2)を狭くして(LB1>LB2)、2つの噛み合い力(F1,F2)が同程度の大きさになるようにする。そして、互いに打ち消すような位相関係にすることで、回転ムラや振動を小さくすることができる。
【0065】
ここで、本実施形態では振動を小さくするために位相を調整し、相殺するようにしているが、その振幅レベルも同等でないとその効果は小さい。そこで、本実施例では、振幅レベルを揃えるために接触幅(LB1,LB2)を調整している。この接触幅は、事前にシミュレーションモデルを作成して解析的に最適値を求めても良いし、接触幅を変えた複数の第1中間はすば歯車121を用意して実験的に最適値を求めても良い。
【0066】
上述したように、第1中間はすば歯車121の軸方向の噛み合う歯面領域の設定は、第1中間はすば歯車121に噛み合う第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112の組み付け誤差の値に応じて、組付け誤差の値が小さい方のはずば歯車との歯面領域を狭くするように行うことで、第1はすば歯車111との噛み合いで発生する噛み合い変動成分の力と、第2はすば歯車112との噛み合いで発生する噛み合い変動成分の力との大きさが同程度にできる。さらに、同程度の大きさにした各噛み合い変動成分を、互いに打ち消す位相関係にすることで変動成分を減少させることができる。その結果、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、2連はずば歯車列120を構成することができる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0067】
(実施例9)
本実施形態の第1動力伝達機構124に備える2連はずば歯車列120の第9の実施例である実施例9について図を用いて説明する。図13は、本実施例に係る、第1中間はすば歯車121の取り付け方向によって歯面領域が異なる場合に付ける目印の説明図である。ここで、上述した実施例1乃至8と本実施例とは、本実施例が、第1中間はすば歯車121の歯面以外の場所に、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112に噛み合うそれぞれ歯面領域を識別するための印し126を設けたことに係る点のみが異なるで、他の同様な構成・動作にについては、適宜、省略して説明する。
【0068】
本実施例では、図13に示すように、第1はすば歯車111と噛み合う第1中間はすば歯車121の歯面領域と、第2はすば歯車112と噛み合う第1中間はすば歯車121の歯面領域の大きさが異なる場合に、第1中間はすば歯車121の歯面以外の場所に識別用の印し126を設けている。噛み合う歯面領域の大きさが等しければ、どちら側からも組みつけが可能となるが、噛み合う歯面領域が異なる場合には、それを示す目印が必要になる。そこで、設けた印し126を参考に組付けを行えば、たとえ噛み合う歯面領域の違いが微小な場合でも間違うことなく組み付けすることができる。
【0069】
このように、歯面以外の場所に印し126を設けることで、それぞれの歯面領域を適切な噛み合わせにすることができる。その結果、組付けを容易にし、組立コストの低減化を実現することが可能な、2連はずば歯車列120を構成することができる。そして、この2連はずば歯車列120の構成を3連はすば歯車列123に適用することで、組付けを容易にし、組立コストの低減化を実現することが可能な、3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を提供することができる。
【0070】
また、上述した各本実施例では、第1はずば歯車111には感光体ドラム1Y及びその回転軸が、第2はずば歯車112には感光体ドラム1C及びその回転軸が、それぞれ負荷として加わっている。しかし、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば、感光体ドラム1Y及びその回転軸が、第1はずば歯車111に取り付けられておらず、負荷として加わるのが、第2はずば歯車112に取り付けられた感光体ドラム1C及びその回転軸だけの構成にも適用可能である。
【0071】
以上、本実施形態のプリンタ200では、上述した実施例1乃至9のいずれかの3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124を用いることで、実施例1乃至9のいずれかの3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124と同様な作用・効果を奏することができる。その結果、プリンタ200における画像品質の向上、例えば、多色重ね合わせでの色ずれ低減や濃度ムラの低減などを実現できる。
【0072】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
動力伝達機構124などの歯車駆動伝達系において、第1駆動モータ151などの駆動源に近い動力伝達方向上流側の第1はすば歯車111などの第1はすば歯車と、駆動源から遠い下流側の第2はすば歯車112などの第2はすば歯車と、これらの間に配置された第1中間はすば歯車121などの中間はすば歯車とを有したはすば歯車列を備え、前記第1はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域S1などの歯面領域と、前記第2はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域S2などの歯面領域とを、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で前記中間はすば歯車の軸方向で異なるように設定し、双方の噛み合う位相が打ち消し合うように構成されていることを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例1について説明したように、回転ムラや振動を低減できるとともに、組み立て性やコスト面で不利とならず、小型の製品への搭載も可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様B)
(態様A)において、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の軸方向のかみ合う歯面領域の設定は、一方の端面側から所定の幅だけ第1はすば歯車111などの第1はすば歯車と噛み合うように設定し、他方の端面側から所定の幅だけ第2はすば歯車112などの第2はすば歯車と噛み合うように設定することを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例1について説明したように、第1はすば歯車111などの第1はすば歯車と噛み合う第1中間はすば歯車121などの中間はすば歯車の歯面領域S1などの歯面領域と、第2はすば歯車112などの第2はすば歯車と噛み合う中間はすば歯車の歯面領域S2などの歯面領域とを、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で中間はすば歯車の軸方向で確実に異ならせることができる3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様C)
(態様A)又は(態様B)において、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車が、負荷の加わらないアイドラ歯車であることを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例2について説明したように、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様D)
(態様A)乃至(態様C)のいずれかにおいて、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車は、第1はすば歯車111などの前記第1はすば歯車及び第2はすば歯車112などの前記第2はすば歯車よりも耐摩耗性に優れていることを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例3について説明したように、省スペースで、かつ長時間使用すること可能な、3連はすば歯車列123などのはずば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様E)
(態様A)乃至(態様D)のいずれかにおいて、2連はずば歯車列120などの前記はすば歯車列に有した第1はすば歯車111などの前記第1はすば歯車、第2はすば歯車112などの前記第2はすば歯車、及び第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の回転中心が、直線状に配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例4について説明したように、周辺部に与える振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様F)
(態様A)乃至(態様E)のいずれかにおいて、第1はすば歯車111などの前記第1はすば歯車と第2はすば歯車112などの前記第2はすば歯車とが、同一部品であることを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例5について説明したように、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様G)
(態様B)乃至(態様F)のいずれかにおいて、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の軸方向のかみ合う歯面領域S1’,S2'などの歯面領域の設定は、第1はすば歯車111などの前記第1はすば歯車及び第2はすば歯車112などの前記第2はすば歯車にそれぞれ噛み合う側の前記中間はすば歯車の歯面に段差を設けて行うことを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例1について説明したように、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の軸方向のかみ合う歯面領域S1’,S2'などの歯面領域の設定を確実に行うことができる、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様H)
(態様B)乃至(態様F)のいずれかにおいて、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の軸方向のかみ合う歯面領域S1’,S2'などの歯面領域の設定は、第1はすば歯車111などの前記第1はすば歯車及び第2はすば歯車112などの前記第2はすば歯車にそれぞれ前記中間はすば歯車の歯面全体が噛み合う場合の該中間はすば歯車のねじれ角の値(β)に所定角度(γ)加えて、前記中間はすば歯車のねじれ角の値(β+γ)を設定することで行うことを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例6について説明したように、製作を容易にし、部品コストの低減化を実現することが可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様I)
(態様A)乃至(態様H)のいずれかにおいて、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の軸方向の噛み合う歯面領域S1又はS1’,S2又はS2'などの歯面領域の設定は、第1はすば歯車111及び第2はすば歯車112などの噛み合う各はすば歯車の歯車の形状誤差の値に応じて、形状誤差の値が大きい方のはずば歯車との歯面領域が広くなるように行うことを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例7について説明したように、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様J)
(態様A)乃至(態様I)のいずれかにおいて、第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の軸方向の噛み合う歯面領域S1又はS1’,S2又はS2'などの歯面領域の設定は、歯車の組付け誤差の値に応じて、組付け誤差の値が小さい方のはずば歯車との歯面領域を狭くするように行うことを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例8について説明したように、回転ムラや振動を効果的に小さくすることが可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様K)
(態様A)乃至(態様J)のいずれかにおいて、第1はすば歯車111などの前記第1はすば歯車と噛み合う第1中間はすば歯車121などの前記中間はすば歯車の歯面領域S1又はS1’などの歯面領域と第2はすば歯車112などの前記第2はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域S2又はS2’などの歯面領域の大きさが異なる場合に、歯面以外の場所に識別用の印し126などの印を設けてあることを特徴とするものである。
これによれば、上記実施例9で説明したように、組付けを容易にし、組立コストの低減化を実現することが可能な、3連はすば歯車列123などのはすば歯車列を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を提供することができる。
(態様L)
感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kなどの複数の感光体ドラムを備えたプリンタ200などの画像形成装置において、前記複数の感光体ドラムの内、感光体ドラム1Y、1C、1Mなどの2以上の感光体ドラムに駆動力を伝達する動力伝達機構に、(態様A)乃至(態様K)のいずれかの3連はすば歯車列123を備えた動力伝達機構124などの動力伝達機構を用いること特徴とするものである。
これによれば、本実施形態で説明したように、プリンタ200などの画像形成装置における画像品質の向上、例えば、多色重ね合わせでの色ずれ低減や濃度ムラの低減などを実現できる。
【符号の説明】
【0073】
1 感光体ドラム
2 駆動ローラ
3 従動ローラ
4 加圧ローラ
5 中間転写ベルト
6 光書き込み装置
7 2次転写装置
8 給紙装置
9 搬送経路
10 レジストローラ対
11 定着装置
12 排紙部
13 排紙トレイ
111 第1はすば歯車
112 第2はすば歯車
113 第3はすば歯車
114 第4はすば歯車
120 2連はすば歯車列
121 第1中間はすば歯車
122 第2中間はすば歯車
123 3連はすば歯車列
124 第1動力伝達機構
125 第2動力伝達機構
126 印し
131 第1駆動はずば歯車
132 第2駆動はずば歯車
141 第1駆動軸
142 第2駆動軸
150 感光体ドラム駆動装置
151 第1駆動モータ
152 第2駆動モータ
200 プリンタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2002−295603号公報
【特許文献2】特開2007−239903号公報
【特許文献3】特開2006−163198号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車駆動伝達系において、駆動源に近い動力伝達方向上流側の第1はすば歯車と、駆動源から遠い下流側の第2はすば歯車と、これらの間に配置された中間はすば歯車とを有したはすば歯車列を備え、
前記第1はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域と、前記第2はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域とを、各はすば歯車の端面位置を揃えた状態で前記中間はすば歯車の軸方向で異なるように設定し、
双方の噛み合う位相が打ち消し合うように構成されていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達機構において、
前記中間はすば歯車の軸方向のかみ合う歯面領域の設定は、一方の端面側から所定の幅だけ第1はすば歯車と噛み合うように設定し、他方の端面側から所定の幅だけ第2はすば歯車と噛み合うように設定することを特徴とする動力伝達機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動力伝達機構において、
前記中間はすば歯車が、負荷の加わらないアイドラ歯車であることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記中間はすば歯車は、前記第1はすば歯車及び前記第2はすば歯車よりも耐摩耗性に優れていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記はすば歯車列に有した前記第1はすば歯車、前記第2はすば歯車、及び前記中間はすば歯車の回転中心が、直線状に配置されていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記第1はすば歯車と前記第2はすば歯車とが、同一部品であることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項7】
請求項2乃至6のずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記中間はすば歯車の軸方向のかみ合う歯面領域の設定は、前記第1はすば歯車及び前記第2はすば歯車にそれぞれ噛み合う側の前記中間はすば歯車の歯面に段差を設けて行うことを特徴とする動力伝達機構。
【請求項8】
請求項2乃至6のずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記中間はすば歯車の軸方向のかみ合う歯面領域の設定は、前記第1はすば歯車及び前記第2はすば歯車にそれぞれ前記中間はすば歯車の歯面全体が噛み合う場合の該中間はすば歯車のねじれ角の値(β)に所定角度(γ)加えて、前記中間はすば歯車のねじれ角の値(β+γ)を設定することで行うことを特徴とする動力伝達機構。
【請求項9】
請求項1乃至8のずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記中間はすば歯車の軸方向の噛み合う歯面領域の設定は、噛み合う各はすば歯車の歯車の形状誤差の値に応じて、形状誤差の値が大きい方のはずば歯車との歯面領域が広くなるように行うことを特徴とする動力伝達機構。
【請求項10】
請求項1乃至9のずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記中間はすば歯車の軸方向の噛み合う歯面領域の設定は、歯車の組付け誤差の値に応じて、組付け誤差の値が小さい方のはずば歯車との歯面領域を狭くするように行うことを特徴とする動力伝達機構。
【請求項11】
請求項1乃至10のずれか一に記載の動力伝達機構において、
前記第1はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域と前記第2はすば歯車と噛み合う前記中間はすば歯車の歯面領域の大きさが異なる場合に、歯面以外の場所に識別用の印を設けることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項12】
複数の感光体ドラムを備えた画像形成装置において、
前記複数の感光体ドラムの内、2以上の感光体ドラムに駆動力を伝達する動力伝達機構に、請求項1乃至11のいずれか一に記載の動力伝達機構を用いること特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−64455(P2013−64455A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203988(P2011−203988)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】