動力伝達装置
【課題】回転軸を軸支するベアリングに加わるスラスト荷重を低減してベアリングの回転抵抗を低減させ、従動側機器の駆動エネルギーの損失を低減する。また、薄形小型化を可能にするとともに、組立作業性に優れた動力伝達装置を提供する。
【解決手段】ダンパーゴム16をプーリ4の環状凹部17内にダンパー保持部材15を介して配設する。連結部材19のかしめぶ19cをかしめて回転伝達部材30の固定部30aとプリセット荷重設定部材60を連結し、連結部材19の本体19aをダンパーゴム16の中心孔に進退可能に係入する。プリセット荷重設定部材60は、規制部60Bを回転伝達部材30の弾性復帰力によりリベット29に圧接されることにより、回転伝達部材30の弾性復帰を規制し、これにより回転伝達部材30にプリセット荷重を付与する。
【解決手段】ダンパーゴム16をプーリ4の環状凹部17内にダンパー保持部材15を介して配設する。連結部材19のかしめぶ19cをかしめて回転伝達部材30の固定部30aとプリセット荷重設定部材60を連結し、連結部材19の本体19aをダンパーゴム16の中心孔に進退可能に係入する。プリセット荷重設定部材60は、規制部60Bを回転伝達部材30の弾性復帰力によりリベット29に圧接されることにより、回転伝達部材30の弾性復帰を規制し、これにより回転伝達部材30にプリセット荷重を付与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側機器と従動側機器との間の動力伝達経路に配設され、過負荷が発生したときに動力伝達を遮断するトルクリミッターの機能が付加された動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーエアコン用コンプレッサ等に用いられている動力伝達装置としては、従来から種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。この種の動力伝達装置は、ダンパー機構を備え、このダンパー機構を介して駆動側回転体の回転を従動側回転体に伝達するように構成されている。
【0003】
図16は従来の動力伝達装置の一例を示す断面図で、これを概略説明すると、2はカーエアコン用コンプレッサ(従動側機器)、3はコンプレサ2のハウジング、4はハウジング3の円筒部3Aにベアリング5を介して回転自在に装着されたプーリ(駆動側回転体)、6はコンプレッサ2の回転軸、7は回転軸6に装着されたハブ(従動側回転部材)、8はプーリ4とハブ7とを連結する回転伝達部材、9はプーリ4と回転伝達部材8とを連結するダンパー機構、11はハブ7とともに従動側回転体12を構成する挾持板であり、これらによってコンプレッサ2の動力伝達装置1を構成している。
【0004】
前記回転伝達部材8は、略円板状に形成された本体8Aと、この本体8Aの外周に周方向に等間隔おいて突設された複数個の固定部8Bと、各固定部8Bに本体8Aの外周に沿って延設され板厚方向に弾性変形可能な円弧状の連結部8Cと、連結部8Cの先端部に延設された接続部8Dとを備えている。そして、回転伝達部材8は、固定部8Bが止めねじ10によってダンパー機構9を介してプーリ4に固定され、接続部8Dが連結部8Cの弾性変形によりハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間に差し込まれ離脱可能に挾持されている。
【0005】
前記ダンパー機構9は、動力伝達時の衝撃やトルク変動を緩衝するための機構であって弾性部材(以下、ダンパーゴムという)16と連結部材19とを備え、ダンパー保持部材15内に周方向に等間隔おいて、例えば3個組み込まれている。ダンパー保持部材15は、プーリ4の環状凹部17内に配設されており、各ダンパー機構9をそれぞれ収納する3つの収納部18を有している。ダンパーゴム16は、両端開放の筒状体に形成されて連結部材19とともに前記収納部18内に組み込まれている。連結部材19は、雌ねじを有する鍔付きの円筒体に形成されて外周に前記ダンパーゴム16が装着されており、前端面(ハブ側端面)に回転伝達部材8の固定部8Bが止めねじ10によって固定されることにより、後端に設けたフランジ部19Aによってダンパーゴム16をプーリ4の円板部4Aの内面に押し付けている。
【0006】
このような動力伝達装置1において、自動車エンジン(駆動側機器)からの動力は、プーリ4−ダンパー機構9−回転伝達部材8−従動側回転体12を経て回転軸6に伝達される。
【0007】
ダンパー機構9は、動力伝達中においてプーリ4から従動側回転体12に伝達されるトルク変動や衝撃をダンパーゴム16によって効果的に緩衝する。したがって、動力伝達中におけるトルク変動や衝撃によって回転伝達部材8の接続部8Dに加わる張力が軽減され、接続部8Dがハブ7と挾持板11との間から抜け出すようなことはない。
【0008】
コンプレッサ2側に過負荷が発生すると、回転軸6の回転が抑制されてプーリ4とハブ7との間に所定の大きさ以上の回転力が生じ、この回転力により回転伝達部材8によるプーリ4とハブ7との結合状態が解除される。すなわち、回転軸6の回転が抑制されると、プーリ4とハブ7との間に生じる回転力により回転伝達部材8の接続部8Dがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間から離脱してプーリ4と従動側回転体12の結合を解除する。そして、連結部8Cが弾性復帰して接続部8Dを挾持板11の後方側に移動させる。したがって、接続部8Dが離脱した後は回転伝達部材8と従動側回転体12が干渉せず、プーリ4から回転軸6への回転伝達を確実に断つことができる。
【0009】
【特許文献1】特許第3421619号公報
【特許文献2】特開2003−56595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の動力伝達装置1においては、回転伝達部材8の接続部8Dをハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bによって離脱可能に挾持し、連結部8Cをプーリ4方向に弾性変形させて固定部8Bをダンパー機構9の連結部材19に止めねじ10によって固定しているため、連結部8Cの弾性復帰力が回転軸6を軸支しているベアリング(図示せず)に対して図において右方向のスラスト荷重として加わり、その結果として前記ベアリングの回転抵抗が高くなりコンプレッサ2の駆動エネルギーの損失を来すという問題があった。また、連結部8Cの弾性復帰力は、プーリ4を軸支しているベアリング5にも上記とは反対方向(図において左方)のスラスト荷重として加わっている。
【0011】
このような問題を解決するようにした従来装置としては、前記特許文献2に開示されている動力伝達機構が知られている。この動力伝達機構は、ダンパーゴムとともにダンパー機構を構成するトルク伝達ピン(連結部材)の頭部をハブと回転伝達部材とで保持し、ピン本体をダンパーゴムに対して進退可能に圧入し、前記ハブに過負荷の発生時に前記頭部を逃がす凹溝部を設けたものである。
【0012】
このような構成において、コンプレッサ側に過負荷が発生したとき、回転軸の回転が抑制されてプーリとハブとの間に所定の大きさ以上の回転力が生じ、この回転力により回転伝達部材の接続部がハブと挾持板との間から離脱してプーリとハブの結合を解除する。また、接続部がハブと挾持板との間から離脱すると、連結部の弾性復帰力によってトルク伝達ピンのピン本体がダンパーゴムから引き抜かれて頭部がハブの凹溝部に移動する。これにより、プーリが空転してエンジンからコンプレッサへの動力伝達が遮断され、コンプレッサ側のエンジン側への負荷を取り除くことができる。
【0013】
このような構造においては、トルク伝達ピンのピン本体をダンパーゴムに対して進退可能に圧入しているので、回転伝達部材の連結部の弾性復帰力が回転軸やプーリを軸支するベアリングに対してスラスト荷重として作用せず、上記問題を解決することができる。
【0014】
しかしながら、このような従来の動力伝達機構は、過負荷の発生時にトルク伝達ピンのピン本体をダンパーゴムから引き抜いて頭部をハブの凹溝部に移動させる構造を採っているため、トルク伝達ピンとダンパーゴムとの結合力を強固なものにするためにはトルク伝達ピンのピン本体を長く形成するとともに、頭部の肉厚を厚く形成し、凹溝部の溝深さを深くする必要があることから、装置の軸線方向の寸法が大きくなり装置を小型化することができないという問題があった。
【0015】
また、ピン本体を長く形成すると回転伝達部材の固定部でトルク伝達ピンの厚肉の頭部を支持するためには、連結部のスパンを長くして弾性変形量を大きくする必要があり、回転伝達部材が大型化するという問題もあった。
【0016】
本発明は、上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、主に回転軸を軸支するベアリングに加わるスラスト荷重を低減してベアリングの回転抵抗を低減させ、従動側機器の駆動エネルギーの損失を低減することができ、また薄形小型化を可能にするとともに、組立作業性に優れた動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、駆動側機器の動力によって回転する駆動側回転体と、従動側機器の回転軸に取付けられた従動側回転部材と挾持板とからなる従動側回転体と、一端部が前記駆動側回転体にダンパー機構を介して連結され、他端部が前記従動側回転体に接離可能に連結され、前記駆動側回転体の回転を前記従動側回転体に伝達する回転伝達部材とを備え、前記ダンパー機構を前記駆動側回転体に取付けられた筒状の弾性部材と、前記回転伝達部材に取付けられ前記弾性部材に進退可能に係入される連結部材とで構成し、前記従動側回転体と前記連結部材との間に前記回転伝達部材を弾性変形させてプリセット荷重を付与するプリセット荷重設定手段を設けたものである。
【0018】
また、本発明は、前記プリセット荷重設定手段が前記回転伝達部材の弾性復帰を規制する規制部を有して前記回転伝達部材とともに前記連結部材に固定され、前記規制部を従動側回転体に圧接することにより前記回転伝達部材にプリセット荷重を付与するものである。
【0019】
また、本発明は、前記回転伝達部材が、前記連結部材が取付けられた固定部と、この固定部に延設された板厚方向に弾性変形可能な連結部と、この連結部の先端部に設けられ従動側回転体によって接離可能に挾持された接続部を一体に有して前記従動側回転体の周方向に複数個配列されており、前記固定部には、過負荷の発生時に前記接続部が前記従動側回転体から離脱したとき、前記プリセット荷重設定手段の規制部に当接することにより遠心力による前記回転伝達部材の外側方向への回動を制限する回動制限部が設けられているものである。
【0020】
また、本発明は、前記回動制限部には、動力伝達中における負荷変動による前記回転伝達部材の捩れ振動により前記回動制限部が前記プリセット荷重設定手段に接触するのを防止する逃げ部が設けられているものである。
【0021】
また、本発明は、前記回動制限部の内側端縁には前記プリセット荷重設定手段の規制部に近接して対向する折曲部が設けられているものである。
【0022】
さらに、本発明は、前記規制部がプリセット荷重設定手段の代わりに従動側回転体に設けられており、前記プリセット荷重設定手段に圧接するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、連結部材を弾性部材に進退可能に係入しているので、回転伝達部材の連結部の弾性復帰力がスラスト荷重として従動側の回転軸や駆動側回転体を軸支するベアリングに加わらず、ベアリングの回転抵抗を低減することができる。
また、過負荷発生時に連結部材を弾性部材から抜き出す必要がないので、連結部材を必要以上に長く形成する必要がなく、装置の軸線方向の寸法を小さくすることができる。
また、従動側回転体、連結部材、回転伝達部材およびプリセット荷重設定手段を一体に組み付けることにより、回転伝達部材にプリセット荷重を付与することができ、この状態で従動側回転体を従動側機器の回転軸に取付け、連結部材を弾性部材に係入するようにすると組立作業も容易である。
【0024】
また、本発明においては、回転伝達部材の固定部に回動制限部を設け、過負荷発生時に、回転伝達部材の接続部が従動側回転体から離脱したとき、前記回動制限部がプリセット荷重設定手段の規制部に当接するように構成したので、遠心力による回転伝達部材の外側方向への回動を制限することができる。
【0025】
また、本発明においては、回転伝達部材の回動制限部に逃げ部を設けているので、動力伝達中における負荷変動により回転伝達部材が捩れ変形したとき、回動制限部がプリセット荷重設定手段に当たって当該部を擦るようなおそれがない。
【0026】
さらに、回動制限部に設けられた折曲部は回転伝達部材を補強する。また、規制部に当たって回転伝達部材の遠心力による回動を制限する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る動力伝達装置の第1の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3はプーリの正面図、図4(a)、(b)は挾持板の正面図およびB−B線断面図、図5(a)、(b)、(c)は回転伝達部材の正面図、C矢視側面図、D−D線断面図、図6はプリセット荷重設定部材の正面図およびE−E線断面図である。なお、従来技術と同一の構成部品、部分については同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。
【0028】
図1および図2において、全体を参照符号20で示す動力伝達装置は、従動側機器であるカーエアコン用コンプレッサ2の回転軸6に装着され、駆動側機器(エンジン)の動力を前記コンプレッサ2に伝達して駆動させるとともに、コンプレッサ2に過負荷が発生したときにコンプレッサ2への動力伝達を遮断するトルクリミッターとして作動する動力伝達装置である。
【0029】
駆動側回転体であるプーリ4は、フェノール樹脂樹脂やアルミニウム等の射出成形によって一体に形成されることにより、円板部4Aと、この円板部4Aの外周と内周に突設された外側円筒部4Bおよび内側円筒部4Cとで構成され、円板部4Aと外側円筒部4Bおよび内側円筒部4Cとの間に前方に開放する環状凹部17が形成されている。円板部4Aは、プーリ4の前後方向中央より後方側に設けられており、それぞれ3個からなる大小2種類の挿通孔24,25が周方向に等間隔おいて交互に形成されている。これらの挿通孔のうち小径の挿通孔24は、ダンパー機構9に対応して形成された空気抜き用孔である。一方、大径の挿通孔25は、ダンパー保持部材15を固定するためのリベット50が挿通される孔である。外側円筒部4Bは、外周面に複数のV溝26が形成されており、このV溝26に図示を省略したVベルトが張架され、自動車エンジンの動力が伝達されるように構成されている。一方、内側円筒部4Cは、コンプレッサ2のハウジング3に設けた円筒部3Aにベアリング5を介して回転自在に軸支されている。
【0030】
コンプレッサ2の回転軸6は、一端部がハウジング3の円筒部3Aより外部に突出し、その突出端部にハブ7がボルト27によって固定されている。
【0031】
前記ハブ7は、回転軸6の軸端にスプライン結合されたボス部7Aと、このボス部7Aから半径方向外側に延びる円板状のフランジ部7Bとを一体に備えている。フランジ部7Bは、周方向に等間隔おいて同一円周上に形成された3つの挿通孔28を有し、これらの挿通孔28にそれぞれ挿通されるリベット29により挾持板11がフランジ部7Bの裏面側に取付けられている。また、フランジ部7Bの外周には、挾持板11とともに後述する回転伝達部材30の接続部30cを離脱可能に挾持する3つの挾持部7Cが周方向に等間隔おいて一体に突設されている。
【0032】
図4において、前記挾持板11は、ばね用鋼板等によって適宜な板厚を有する円板状に形成されることにより、リング状の本体11Aを備え、この本体11Aの外周には3つの挾持部11Bが周方向に等間隔おいて一体に突設されている。また本体11Aには、3つの貫通孔34が前記ハブ7の挿通孔28に対応して形成されている。各挾持部11Bの中央には、回転伝達部材30の接続部30cに突設した係合部42との係合により接続部30cの周方向の離脱を防止する係止孔35がそれぞれ形成されている。また、挾持部11Bは、回転伝達部材30の負荷変動による捩れ変形を少なくするためにプーリ4側に所要角度をもって折り曲げられている。なお、前記ハブ(従動側回転部材)7と前記挾持板11は、従動側回転体12を構成している。
【0033】
図1、図2および図5において、プーリ4と従動側回転体12との間に介装されこれら両部材を離脱可能に連結する前記回転伝達部材30は、薄肉のばね鋼板などによって正面視略円弧状に形成されることにより、前記ダンパー機構9に後述するプリセット荷重設定部材(プリセット荷重設定手段)60とともに固定される固定部30aと、この固定部30aより延設された円弧状の連結部30bと、この連結部30bの先端部に延設された接続部30cと、固定部30aの内側端縁に中心方向に延設された回動制限部30dとで構成されている。固定部30aの中央には、ダンパー機構9の連結部材19のかしめ部19c(図2)が挿通される挿通孔41が形成されている。
【0034】
回転伝達部材30の連結部30bは、固定部30aのハブ7の回転方向とは反対方向の端縁に延設されている。また、この連結部30bは、図5(b)および(c)に示すように、自然状態において固定部30aに対して表面側に所定の角度αをもって傾斜するように折り曲げ形成されている。
【0035】
回転伝達部材30の接続部30cは、挾持板11との摩擦結合強度を高めるために裏面中央に突設された半球状の係合部42を有し、連結部30bとは反対方向(プーリ4側)に所要角度をもって折り曲げられている。
【0036】
回転伝達部材30の回動制限部30dは、コンプレッサ2に過負荷が発生して接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間から離脱したとき、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bに当接することにより、遠心力による回転伝達部材30の外側方向への回動を制限するために設けられている。回動制限部30dの内側端縁30eは、平面視凹状の円弧面に形成されており、回転方向とは反対側端部、すなわち後端部には逃げ部30fが形成されている。逃げ部30fは、動力伝達中における負荷変動による回転伝達部材30が捩れ変形したときに、内側端縁30eの後端がプリセット荷重設定部材60の規制部60Bに接触して当該接触部を擦ったり騒音が発生しないようにするために設けられるもので、内側端縁30eの後端部を例えば30°の角度で斜めに切り落とすことにより形成されている。
【0037】
このような回転伝達部材30は、図1に示すようにハブ7の周方向に等間隔おいて3個配列され、各固定部30aが前記プリセット荷重設定部材60とともに各ダンパー機構9の連結部材19に取付けられ、各接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bによってそれぞれ接離可能に挾持されている。
【0038】
ダンパー保持部材15は、周方向に等配されて形成された3つの収納部15aを有し、これらの収納部15a内に前記ダンパー機構9がそれぞれ収納されている。各収納部15aは、前記プーリ4の円板部4Aに形成されている前記空気抜き孔24に連通している。
【0039】
前記各ダンパー機構9は、弾性部材としてのダンパーゴム16と、連結部材19とで構成され、前記プーリ4の環状凹部17にダンパー保持部材15を介して配設されている。
ダンパーゴム16は、両端開放の筒状体からなり、ダンパー保持部材15の各収納部15a内に接着剤、焼き付け等によって固定されている。連結部材19は、ダンパーゴム16の中心孔16aに進退可能に圧入される円柱状の本体19aと、この本体19aの前端側に一体に設けられた円板状のフランジ部19bと、このフランジ部19bの前面中央に突設された小径円柱状のかしめ部19cとで構成されている。かしめ部19cは、プリセット荷重設定部材60と回転伝達部材30の固定部30aに設けられている挿通孔41、62に裏面側から挿通されてその突出端部がかしめられることにより、プリセット荷重設定部材60と回転伝達部材30の固定部30aとを連結部材19に固定している。言い換えれば、連結部材19は、回転伝達部材30とプリセット荷重設定部材60にかしめ固定されることによりこれら両部材を連結している。
【0040】
図2および図6において、前記プリセット荷重設定部材60は、金属板のプレス加工によって形成されることにより、円板状の本体60Aと、この本体60Aの内周に表面側に押出加工によって形成された環状の突条体からなる規制部60Bとで構成されている。
【0041】
前記本体60Aには、それぞれ3個からなる挿通孔62とリブ63が周方向に等間隔おいて交互に形成されている。挿通孔62は、連結部材19のかしめ部19cが挿通される孔である。リブ63は、本体60Aを補強するために形成されるもので、本体60Aの裏面側に突出するように周方向に長い円弧状に形成されている。
【0042】
前記規制部60Bは、回転伝達部材30の弾性復帰を規制するもので、本体60Aの内周縁より表面側に立ち上がる環状の立ち上がり壁60aと、この立ち上がり壁60aの先端部を中心方向に塑性変形させることにより形成された円板部60bとで構成されている。立ち上がり壁60aの外周面は、回転伝達部材30の回動制限部30dの内側端縁30eと近接して対向している。また、立ち上がり壁60aの高さXは、コンプレッサ2に過負荷が発生して回転伝達部材30の接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間から離脱したとき回転伝達部材30の連結部30bが瞬時に弾性復帰できるように、前記連結部30bに所定のプリセット荷重を付与し得る高さに設定されている。すなわち、回転伝達部材30は、過負荷の発生時に接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bとの間から離脱したとき、接続部30cを連結部30bの弾性復帰力によって挾持板11の後方側に速やかに移動させるために(挾持板11との干渉を防止するため)、連結部30bが弾性変形させられた状態でダンパー機構9と従動側回転体12との間に介装される必要がある。そこで、プリセット荷重設定部材60を連結部材19に取付けるとき、連結部30bをハブ7側に弾性変形させておいて規制部60Bの円板部60bをリベット29に回転伝達部材30の弾性復帰力で圧接すると、回転伝達部材30には連結部30bの弾性変形量に相当するプリセット荷重が付与されたことになる。これにより、ダンパーゴム16と連結部材19を一体に結合させる必要がなく、連結部材19をスラスト荷重が発生しないようにするためにダンパーゴム16に対して進退可能に係入させることができる。また、連結部材19とリベット29との間隔を略一定に保持することができる。なお、回転伝達部材30に付与されるプリセット荷重は、前記立ち上がり壁60aの高さXによって異なり、高くすると増大し、低くすると減少する。また、連結部30bは、接続部30cがハブ7と挾持板11との挾持部間から離脱しない限り弾性復帰することはない。
【0043】
また、このようなプリセット荷重設定部材60は、3個全てのダンパー機構9の連結部材19を連結しているため、連結部材19の個別の動きを規制し各回転伝達部材30の固定部30aに加えられる負荷を均一化する機能をも有している。
【0044】
このような構造からなる動力伝達装置20の組立てに際しては、プーリ4の環状凹部17にダンパー保持部材15を収納してリベット50により円板部4Aに固定する。ダンパー保持部材15の各収納部15aには予めダンパーゴム16が組み込まれている。
【0045】
次に、ダンパーゴム16が組み込まれたプーリ4をハウジング3の円筒部3Aにベアリング5を介して回転自在に取付け、止め輪71によってベアリング5の円筒部3Aからの抜けを防止する。
【0046】
次に、ハブ7、挾持板11、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60を一体化させる。これら部材を一体化させるには、先ずハブ7のフランジ部7Bの裏面に回転伝達部材30と挾持板11とを重ね合わせて回転伝達部材30の接続部30cをハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bにより挟持し、係合部42を挾持板11の係止孔35に係合させる。そして、リベット29をハブ7の挿通孔28と挾持板11の挿通孔34に挿通してかしめることにより、ハブ7、挾持板11および回転伝達部材30を一体化させる。
【0047】
次に、回転伝達部材30の連結部30bを後方に弾性変形させて固定部30aをプリセット荷重設定部材60の本体60Aに重ね合わせ、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bをリベット29の後端面に当接させる。これにより回転伝達部材30は、プリセット荷重が付与され、連結部30bが弾性変形した状態に保持される。そして、この状態で連結部材19のかしめ部19cをプリセット荷重設定部材60の挿通孔62と回転伝達部材30の挿通孔41に挿通してかしめることにより、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60を一体化させる。
【0048】
このようにしてハブ7、挾持板11、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60が一体に組立てられた後、ハブ7のボス部7Aを回転軸6にスプライン結合させてボルト27により固定するとともに、連結部材19の本体19aをダンパーゴム16の中心孔16aに摺動可能に圧入することにより動力伝達装置20の組立てが完了する。
【0049】
このような動力伝達装置20において、エンジンからの動力は、プーリ4−ダンパーゴム16−連結部材19−回転伝達部材30−従動側回転体12を経て回転軸6に伝達される。
【0050】
動力伝達中において、ダンパー機構9は、プーリ4からハブ7に伝達されるトルク変動や衝撃をダンパーゴム16によって効果的に緩衝する。したがって、動力伝達時の衝撃や動力伝達中における過負荷に至らない程度のトルク変動によって回転伝達部材30の接続部30cに加わる張力が軽減され、接続部30cがハブ7と挾持板11との間から抜け出すようなことはない。
【0051】
何らかの原因により、例えばコンプレッサ2に加わる過負荷によって回転軸6が停止すると、自動車エンジンの動力で回転伝達部材30によるプーリ4とハブ7の結合状態が解除される。すなわち、回転軸6が停止した後も、プーリ4は回転し続けているため回転伝達部材30を回転させ続けようとする。このため、回転に伴う引張力が回転伝達部材30の接続部30cに対するハブ7と挾持板11とによる挾持力に打ち勝つと接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部間から離脱してプーリ4とハブ7の結合を解除する。回転伝達部材30はプーリ4とハブ7の結合が解除されると、連結部8bの弾性復帰により図5(b)、(c)に示す自然な状態に戻るため、接続部30cを挾持板11の後方側に瞬時に移動させる。したがって、接続部30cが離脱した後は回転伝達部材30と従動側回転体12が干渉することはなく、プーリ4の回転伝達を確実に断つことができる。
【0052】
また、このような構造からなる動力伝達装置20によれば、スラスト荷重の発生を防止することができる。すなわち、連結部材19をダンパーゴム16に進退移動可能に係入したので、回転伝達部材30の連結部30bの弾性復帰力は、ハブ7やプーリ4に伝達されることはない。このため、プーリ4を軸支するベアリング5や回転軸6を軸支するベアリング(図示せず)に対してスラスト荷重が発生せず、ベアリングの回転抵抗を低減でき、さらには動力伝達装置20の耐久性および信頼性を向上させることができる。
【0053】
また、ハブ7、挾持板11、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60を予め組み立てて1つのユニットにするとき、回転伝達部材30にプリセット荷重を付与することができるので、動力伝達装置20の組付作業が容易で、組立作業性を向上させることができる。
【0054】
また、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bは、連結部材19とリベット29との間隔を一定に保持しているため、過負荷の発生時に回転伝達部材30の接続部30cがハブ7と挾持板11との間から離脱し、連結部30bが弾性復帰しても、連結部材19はダンパーゴム16に対して軸線方向にほとんど動くことがない。したがって、連結部材19をダンパーゴム16から引き抜いたり、長く形成する必要がなく、上記した特許文献2に記載の動力伝達機構に比べて軸線方向の寸法を短縮することができ装置自体を薄型化することができる。
【0055】
また、回転伝達部材30に回動制限部30dを設けているので、過負荷発生時の遠心力による回転伝達部材30の回動を制限することができる。すなわち、過負荷発生にともなって回転伝達部材30の接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部間から離脱すると、回転伝達部材30は遠心力により固定部30aを中心としてそのかしめ固定部分の緩みにより回動し、連結部30bおよび接続部30cがハブ4の外側に飛び出そうとする。そこで、回転伝達部材30の固定部30aに回動制限部30dを設けておくと、回転伝達部材30が遠心力で外側に回動しようとしたとき、前記回動制限部30dの内側端縁30eがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの立ち上がり壁60aに当たって回転伝達部材30の外側への回動を制限する。したがって、回転伝達部材30、特に固定部30aの変形、破損等を防止することができる。
【0056】
さらに、回動制限部30dの内側端縁30eの後端に逃げ部30fを設けているので、負荷変動により回転伝達部材30が捩れ変形したとき、前記内側端縁30eがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bに当たって規制部60Bを擦るようなことはない。したがって、騒音が発生することもない。
【0057】
図7は本発明の第2の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図8は図7のF−F線断面図、図9(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、G矢視側面図およびH−H線断面図である。
この実施の形態では、上記した第1の実施の形態の回転伝達部材30とは形状の一部が異なる回転伝達部材30Xを用いた点が相違するだけで、その他の構造は全く同一である。すなわち、第1の実施の形態では、動力伝達中の負荷変動による回転伝達部材30の捩れ変形により、その回動制限部30dの後端がプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に当たらないように、回動制限部30dの内側端縁30eの後端に逃げ部30fを形成したが、この第2の実施の形態では、回転伝達部材30Xの回動制限部30d自体の後端が動力伝達中においてプリセット荷重設定部材60の規制部60Bに当たらないようにした。つまり図9に示すように、回転伝達部材30Xは、円弧状に形成されることにより、固定部30a、連結部30b、および接続部30cを一体に有し、また固定部30aの内側縁に回動制限部30dを中心方向に向かって延設し、この回動制限部30dの内側端縁30eにハブ7側に折り曲げられた折曲部30gを形成している。さらに、回動制限部30dの後端に円弧状に延在し連結部30bと径方向において対向する延長部30hを連設している。この延長部30hの内側縁にもハブ側に折り曲げられた折曲部30gが形成されている。この折曲部30gは、固定部30aや回動制限部30dや延長部30hを補強する。また、折曲部30gは、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に近接して対向している。
【0058】
このような回転伝達部材30Xを備えた動力伝達装置において、動力伝達が遮断されると、回転伝達部材30Xは接続部30cがハブ7と挾持板11との間から離脱するため、遠心力により固定部30aを中心としてそのかしめ固定部分の緩みにより回動して外側に飛び出そうとする。このとき、回動制限部30dから延長部30hまでの折曲部30gがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に当接することにより、空転中の回転伝達部材30Xの回動変位を防止する。
【0059】
また、動力伝達中における負荷変動による回転伝達部材30Xの振れ変形は、折曲部30gがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に当接し、延長部30hが外側に弾性変形することにより抑制される。よって、動力伝達中における回転伝達部材30Xの固定部30aや接続部30cに作用する応力も低減でき、固定部30aの破損や接続部30cとハブ7および挾持板11の挾持部7C、11Bとの摩擦係合力の低下を抑制することができる。
【0060】
図10は本発明の第3の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図11は図10のI−I線断面図、図12(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、J矢視側面図およびK−K線断面図である。
この実施の形態では、プーリ4の円板部4Aを外側円筒部4Bと内側円筒部4Cの後端(ハブ7側とは反対側端)側に設け、環状凹部17を深く形成した点、回転軸6の先端面が当接するハブ7の当接部7gをフランジ部7Bの内径側に形成した点、回転伝達部材30Yとプリセット荷重設定部材60の連結部材19によるかしめ固定部分、具体的には回転伝達部材30Yの固定部30aとプリセット荷重設定部材60の本体60Aをプーリ4の環状凹部17内に位置させた点が上記した第1、第2の実施の形態と異なっている。またさらには、回転伝達部材30Yの回動制限部30dの内側端縁30eにハブ7側に折り曲げられた折曲部30gを設け、逃げ部や延長部を設けない点が異なる。
【0061】
このような構造からなる動力伝達装置によれば、回転伝達部材30Yとプリセット荷重設定部材60の連結部材19によるかしめ固定部分をプーリ4側に変位させて環状凹部17内に収納しているので、その変位分だけ動力伝達装置の軸線方向の寸法を短縮することができる。
【0062】
図13は本発明の第4の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図14は図13のL−L線断面図、図15(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、M−M線断面図、N−N線断面図である。
上記した第1〜第3の実施の形態では、回転伝達部材30、30X、30Yをそれぞれ円弧状に形成してハブ7の円周方向に3個配列した例を示したが、この実施の形態では、円弧状の回転伝達部材30(または30X、30Y)を3個形成する代わりに、3個の回転伝達部材を一体に形成して1つの回転伝達部材80とした点が前記第1〜第3の実施の形態と異なるだけで、その他の構造は同じである。
【0063】
図15において、前記回転伝達部材80は、ばね用鋼板によって全体が略円板状に形成されており、3つの円弧状スリット81を形成することによりスリット81の内側に位置する環状の本体(回動制限部)80Aと、この本体80Aの外周を取り囲むように円弧状に延設された3つの連結片80Bとを備えている。
【0064】
本体80Aの内周縁には表面側(ハブ7側)に折り曲げられプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に近接して対向する折曲部80dが設けられている。この折曲部80dは、負荷変動時の回転伝達部材80の捩れ変形により前記規制部60Bに当接したとき弾性変形し得るように、切欠部84によって本体80Aの円周方向に3等分されている。
【0065】
各連結片80Bは、基端部(回転伝達部材80の回転方向側端部)がダンパー機構9に固定される固定部80aを形成し、この固定部80aから反回転方向に延設された円弧状部分が板厚方向に弾性変形可能な連結部80bを形成し、この連結部80bの先端部(反回転方向側端部)がハブ7と挾持板11とによって離脱可能に挾持される接続部80cを形成している。固定部80aは、本体80Aと同一面を形成し、ダンパー機構9の連結部材19が挿通される挿通孔82が形成されている。連結部80bは、自然状態において表面側(ハブ7側)に所要角度折り曲げられている。接続部80cの裏面側には、ハブ7と挾持板11との摩擦結合力を高めるために小さな円弧状の係合部83が突設されている。
【0066】
このような構造からなる動力伝達装置によれば、回転伝達部材80を1つの部材で構成しているので、部品点数を削減することができる。
【0067】
なお、上記した第1〜第4の実施の形態では、いずれもプリセット荷重設定部材60に規制部60Bを絞り加工により形成し、この規制部60Bをハブ7と挾持板11を連結するリベット29に当接させて回転伝達部材(30(30X、30Y、80)の連結部30b(80b)を弾性変形させ、プリセット荷重を付与するようにした例を示したが、これに限らずその構造はその他構造でもよい。例えば、プリセット荷重設定部材60を平板状のプレートとして、従動側回転体12を構成するハブ7または挾持板11にプーリ4側に突出しプリセット荷重設定部材に当接する規制部を設けてもよい。つまり、プリセット荷重設定手段としては、過負荷発生により回転伝達部材30(30X、30Y、80)の接続部30b(80b)がハブ7と挾持板11の挾持部間から抜け出て回転伝達部材30の連結部30bが弾性復帰したとき、回転伝達部材と回転方向で干渉しなければ、2つの部材で構成されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る動力伝達装置の第1の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】プーリの正面図である。
【図4】(a)、(b)は挾持板の正面図およびB−B線断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)は回転伝達部材の正面図、C矢視側面図、D−D線断面図である。
【図6】プリセット荷重設定部材の正面図およびE−E線断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図8】図7のF−F線断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、G矢視側面図およびH−H線断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図11】図10のI−I線断面図である。
【図12】(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、J矢視側面図およびK−K線断面である。
【図13】本発明の第4の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図14】図13のL−L線断面図である。
【図15】(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、M−M断面図、N−N線断面図である。
【図16】従来の動力伝達装置の断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1,20…動力伝達装置、2…コンプレッサ、3…ハウジング、4…プーリ(駆動側回転体)、6…回転軸、7…ハブ(従動側回転部材)、9…ダンパー機構、11…挾持板、12…従動側回転体、16…ダンパーゴム、19…連結部材、30、30X、30Y…回転伝達部材、30a…固定部、30b…連結部、30c…接続部、30d…回動制限部、30f…逃げ部、30g…折曲部、60…プリセット荷重設定部材、60B…規制部、80…回転伝達部材、80A…本体、80B…連結片、80a…固定部、80b…連結部、80c…接続部、80d…折曲部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側機器と従動側機器との間の動力伝達経路に配設され、過負荷が発生したときに動力伝達を遮断するトルクリミッターの機能が付加された動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーエアコン用コンプレッサ等に用いられている動力伝達装置としては、従来から種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。この種の動力伝達装置は、ダンパー機構を備え、このダンパー機構を介して駆動側回転体の回転を従動側回転体に伝達するように構成されている。
【0003】
図16は従来の動力伝達装置の一例を示す断面図で、これを概略説明すると、2はカーエアコン用コンプレッサ(従動側機器)、3はコンプレサ2のハウジング、4はハウジング3の円筒部3Aにベアリング5を介して回転自在に装着されたプーリ(駆動側回転体)、6はコンプレッサ2の回転軸、7は回転軸6に装着されたハブ(従動側回転部材)、8はプーリ4とハブ7とを連結する回転伝達部材、9はプーリ4と回転伝達部材8とを連結するダンパー機構、11はハブ7とともに従動側回転体12を構成する挾持板であり、これらによってコンプレッサ2の動力伝達装置1を構成している。
【0004】
前記回転伝達部材8は、略円板状に形成された本体8Aと、この本体8Aの外周に周方向に等間隔おいて突設された複数個の固定部8Bと、各固定部8Bに本体8Aの外周に沿って延設され板厚方向に弾性変形可能な円弧状の連結部8Cと、連結部8Cの先端部に延設された接続部8Dとを備えている。そして、回転伝達部材8は、固定部8Bが止めねじ10によってダンパー機構9を介してプーリ4に固定され、接続部8Dが連結部8Cの弾性変形によりハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間に差し込まれ離脱可能に挾持されている。
【0005】
前記ダンパー機構9は、動力伝達時の衝撃やトルク変動を緩衝するための機構であって弾性部材(以下、ダンパーゴムという)16と連結部材19とを備え、ダンパー保持部材15内に周方向に等間隔おいて、例えば3個組み込まれている。ダンパー保持部材15は、プーリ4の環状凹部17内に配設されており、各ダンパー機構9をそれぞれ収納する3つの収納部18を有している。ダンパーゴム16は、両端開放の筒状体に形成されて連結部材19とともに前記収納部18内に組み込まれている。連結部材19は、雌ねじを有する鍔付きの円筒体に形成されて外周に前記ダンパーゴム16が装着されており、前端面(ハブ側端面)に回転伝達部材8の固定部8Bが止めねじ10によって固定されることにより、後端に設けたフランジ部19Aによってダンパーゴム16をプーリ4の円板部4Aの内面に押し付けている。
【0006】
このような動力伝達装置1において、自動車エンジン(駆動側機器)からの動力は、プーリ4−ダンパー機構9−回転伝達部材8−従動側回転体12を経て回転軸6に伝達される。
【0007】
ダンパー機構9は、動力伝達中においてプーリ4から従動側回転体12に伝達されるトルク変動や衝撃をダンパーゴム16によって効果的に緩衝する。したがって、動力伝達中におけるトルク変動や衝撃によって回転伝達部材8の接続部8Dに加わる張力が軽減され、接続部8Dがハブ7と挾持板11との間から抜け出すようなことはない。
【0008】
コンプレッサ2側に過負荷が発生すると、回転軸6の回転が抑制されてプーリ4とハブ7との間に所定の大きさ以上の回転力が生じ、この回転力により回転伝達部材8によるプーリ4とハブ7との結合状態が解除される。すなわち、回転軸6の回転が抑制されると、プーリ4とハブ7との間に生じる回転力により回転伝達部材8の接続部8Dがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間から離脱してプーリ4と従動側回転体12の結合を解除する。そして、連結部8Cが弾性復帰して接続部8Dを挾持板11の後方側に移動させる。したがって、接続部8Dが離脱した後は回転伝達部材8と従動側回転体12が干渉せず、プーリ4から回転軸6への回転伝達を確実に断つことができる。
【0009】
【特許文献1】特許第3421619号公報
【特許文献2】特開2003−56595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の動力伝達装置1においては、回転伝達部材8の接続部8Dをハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bによって離脱可能に挾持し、連結部8Cをプーリ4方向に弾性変形させて固定部8Bをダンパー機構9の連結部材19に止めねじ10によって固定しているため、連結部8Cの弾性復帰力が回転軸6を軸支しているベアリング(図示せず)に対して図において右方向のスラスト荷重として加わり、その結果として前記ベアリングの回転抵抗が高くなりコンプレッサ2の駆動エネルギーの損失を来すという問題があった。また、連結部8Cの弾性復帰力は、プーリ4を軸支しているベアリング5にも上記とは反対方向(図において左方)のスラスト荷重として加わっている。
【0011】
このような問題を解決するようにした従来装置としては、前記特許文献2に開示されている動力伝達機構が知られている。この動力伝達機構は、ダンパーゴムとともにダンパー機構を構成するトルク伝達ピン(連結部材)の頭部をハブと回転伝達部材とで保持し、ピン本体をダンパーゴムに対して進退可能に圧入し、前記ハブに過負荷の発生時に前記頭部を逃がす凹溝部を設けたものである。
【0012】
このような構成において、コンプレッサ側に過負荷が発生したとき、回転軸の回転が抑制されてプーリとハブとの間に所定の大きさ以上の回転力が生じ、この回転力により回転伝達部材の接続部がハブと挾持板との間から離脱してプーリとハブの結合を解除する。また、接続部がハブと挾持板との間から離脱すると、連結部の弾性復帰力によってトルク伝達ピンのピン本体がダンパーゴムから引き抜かれて頭部がハブの凹溝部に移動する。これにより、プーリが空転してエンジンからコンプレッサへの動力伝達が遮断され、コンプレッサ側のエンジン側への負荷を取り除くことができる。
【0013】
このような構造においては、トルク伝達ピンのピン本体をダンパーゴムに対して進退可能に圧入しているので、回転伝達部材の連結部の弾性復帰力が回転軸やプーリを軸支するベアリングに対してスラスト荷重として作用せず、上記問題を解決することができる。
【0014】
しかしながら、このような従来の動力伝達機構は、過負荷の発生時にトルク伝達ピンのピン本体をダンパーゴムから引き抜いて頭部をハブの凹溝部に移動させる構造を採っているため、トルク伝達ピンとダンパーゴムとの結合力を強固なものにするためにはトルク伝達ピンのピン本体を長く形成するとともに、頭部の肉厚を厚く形成し、凹溝部の溝深さを深くする必要があることから、装置の軸線方向の寸法が大きくなり装置を小型化することができないという問題があった。
【0015】
また、ピン本体を長く形成すると回転伝達部材の固定部でトルク伝達ピンの厚肉の頭部を支持するためには、連結部のスパンを長くして弾性変形量を大きくする必要があり、回転伝達部材が大型化するという問題もあった。
【0016】
本発明は、上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、主に回転軸を軸支するベアリングに加わるスラスト荷重を低減してベアリングの回転抵抗を低減させ、従動側機器の駆動エネルギーの損失を低減することができ、また薄形小型化を可能にするとともに、組立作業性に優れた動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、駆動側機器の動力によって回転する駆動側回転体と、従動側機器の回転軸に取付けられた従動側回転部材と挾持板とからなる従動側回転体と、一端部が前記駆動側回転体にダンパー機構を介して連結され、他端部が前記従動側回転体に接離可能に連結され、前記駆動側回転体の回転を前記従動側回転体に伝達する回転伝達部材とを備え、前記ダンパー機構を前記駆動側回転体に取付けられた筒状の弾性部材と、前記回転伝達部材に取付けられ前記弾性部材に進退可能に係入される連結部材とで構成し、前記従動側回転体と前記連結部材との間に前記回転伝達部材を弾性変形させてプリセット荷重を付与するプリセット荷重設定手段を設けたものである。
【0018】
また、本発明は、前記プリセット荷重設定手段が前記回転伝達部材の弾性復帰を規制する規制部を有して前記回転伝達部材とともに前記連結部材に固定され、前記規制部を従動側回転体に圧接することにより前記回転伝達部材にプリセット荷重を付与するものである。
【0019】
また、本発明は、前記回転伝達部材が、前記連結部材が取付けられた固定部と、この固定部に延設された板厚方向に弾性変形可能な連結部と、この連結部の先端部に設けられ従動側回転体によって接離可能に挾持された接続部を一体に有して前記従動側回転体の周方向に複数個配列されており、前記固定部には、過負荷の発生時に前記接続部が前記従動側回転体から離脱したとき、前記プリセット荷重設定手段の規制部に当接することにより遠心力による前記回転伝達部材の外側方向への回動を制限する回動制限部が設けられているものである。
【0020】
また、本発明は、前記回動制限部には、動力伝達中における負荷変動による前記回転伝達部材の捩れ振動により前記回動制限部が前記プリセット荷重設定手段に接触するのを防止する逃げ部が設けられているものである。
【0021】
また、本発明は、前記回動制限部の内側端縁には前記プリセット荷重設定手段の規制部に近接して対向する折曲部が設けられているものである。
【0022】
さらに、本発明は、前記規制部がプリセット荷重設定手段の代わりに従動側回転体に設けられており、前記プリセット荷重設定手段に圧接するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、連結部材を弾性部材に進退可能に係入しているので、回転伝達部材の連結部の弾性復帰力がスラスト荷重として従動側の回転軸や駆動側回転体を軸支するベアリングに加わらず、ベアリングの回転抵抗を低減することができる。
また、過負荷発生時に連結部材を弾性部材から抜き出す必要がないので、連結部材を必要以上に長く形成する必要がなく、装置の軸線方向の寸法を小さくすることができる。
また、従動側回転体、連結部材、回転伝達部材およびプリセット荷重設定手段を一体に組み付けることにより、回転伝達部材にプリセット荷重を付与することができ、この状態で従動側回転体を従動側機器の回転軸に取付け、連結部材を弾性部材に係入するようにすると組立作業も容易である。
【0024】
また、本発明においては、回転伝達部材の固定部に回動制限部を設け、過負荷発生時に、回転伝達部材の接続部が従動側回転体から離脱したとき、前記回動制限部がプリセット荷重設定手段の規制部に当接するように構成したので、遠心力による回転伝達部材の外側方向への回動を制限することができる。
【0025】
また、本発明においては、回転伝達部材の回動制限部に逃げ部を設けているので、動力伝達中における負荷変動により回転伝達部材が捩れ変形したとき、回動制限部がプリセット荷重設定手段に当たって当該部を擦るようなおそれがない。
【0026】
さらに、回動制限部に設けられた折曲部は回転伝達部材を補強する。また、規制部に当たって回転伝達部材の遠心力による回動を制限する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る動力伝達装置の第1の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3はプーリの正面図、図4(a)、(b)は挾持板の正面図およびB−B線断面図、図5(a)、(b)、(c)は回転伝達部材の正面図、C矢視側面図、D−D線断面図、図6はプリセット荷重設定部材の正面図およびE−E線断面図である。なお、従来技術と同一の構成部品、部分については同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。
【0028】
図1および図2において、全体を参照符号20で示す動力伝達装置は、従動側機器であるカーエアコン用コンプレッサ2の回転軸6に装着され、駆動側機器(エンジン)の動力を前記コンプレッサ2に伝達して駆動させるとともに、コンプレッサ2に過負荷が発生したときにコンプレッサ2への動力伝達を遮断するトルクリミッターとして作動する動力伝達装置である。
【0029】
駆動側回転体であるプーリ4は、フェノール樹脂樹脂やアルミニウム等の射出成形によって一体に形成されることにより、円板部4Aと、この円板部4Aの外周と内周に突設された外側円筒部4Bおよび内側円筒部4Cとで構成され、円板部4Aと外側円筒部4Bおよび内側円筒部4Cとの間に前方に開放する環状凹部17が形成されている。円板部4Aは、プーリ4の前後方向中央より後方側に設けられており、それぞれ3個からなる大小2種類の挿通孔24,25が周方向に等間隔おいて交互に形成されている。これらの挿通孔のうち小径の挿通孔24は、ダンパー機構9に対応して形成された空気抜き用孔である。一方、大径の挿通孔25は、ダンパー保持部材15を固定するためのリベット50が挿通される孔である。外側円筒部4Bは、外周面に複数のV溝26が形成されており、このV溝26に図示を省略したVベルトが張架され、自動車エンジンの動力が伝達されるように構成されている。一方、内側円筒部4Cは、コンプレッサ2のハウジング3に設けた円筒部3Aにベアリング5を介して回転自在に軸支されている。
【0030】
コンプレッサ2の回転軸6は、一端部がハウジング3の円筒部3Aより外部に突出し、その突出端部にハブ7がボルト27によって固定されている。
【0031】
前記ハブ7は、回転軸6の軸端にスプライン結合されたボス部7Aと、このボス部7Aから半径方向外側に延びる円板状のフランジ部7Bとを一体に備えている。フランジ部7Bは、周方向に等間隔おいて同一円周上に形成された3つの挿通孔28を有し、これらの挿通孔28にそれぞれ挿通されるリベット29により挾持板11がフランジ部7Bの裏面側に取付けられている。また、フランジ部7Bの外周には、挾持板11とともに後述する回転伝達部材30の接続部30cを離脱可能に挾持する3つの挾持部7Cが周方向に等間隔おいて一体に突設されている。
【0032】
図4において、前記挾持板11は、ばね用鋼板等によって適宜な板厚を有する円板状に形成されることにより、リング状の本体11Aを備え、この本体11Aの外周には3つの挾持部11Bが周方向に等間隔おいて一体に突設されている。また本体11Aには、3つの貫通孔34が前記ハブ7の挿通孔28に対応して形成されている。各挾持部11Bの中央には、回転伝達部材30の接続部30cに突設した係合部42との係合により接続部30cの周方向の離脱を防止する係止孔35がそれぞれ形成されている。また、挾持部11Bは、回転伝達部材30の負荷変動による捩れ変形を少なくするためにプーリ4側に所要角度をもって折り曲げられている。なお、前記ハブ(従動側回転部材)7と前記挾持板11は、従動側回転体12を構成している。
【0033】
図1、図2および図5において、プーリ4と従動側回転体12との間に介装されこれら両部材を離脱可能に連結する前記回転伝達部材30は、薄肉のばね鋼板などによって正面視略円弧状に形成されることにより、前記ダンパー機構9に後述するプリセット荷重設定部材(プリセット荷重設定手段)60とともに固定される固定部30aと、この固定部30aより延設された円弧状の連結部30bと、この連結部30bの先端部に延設された接続部30cと、固定部30aの内側端縁に中心方向に延設された回動制限部30dとで構成されている。固定部30aの中央には、ダンパー機構9の連結部材19のかしめ部19c(図2)が挿通される挿通孔41が形成されている。
【0034】
回転伝達部材30の連結部30bは、固定部30aのハブ7の回転方向とは反対方向の端縁に延設されている。また、この連結部30bは、図5(b)および(c)に示すように、自然状態において固定部30aに対して表面側に所定の角度αをもって傾斜するように折り曲げ形成されている。
【0035】
回転伝達部材30の接続部30cは、挾持板11との摩擦結合強度を高めるために裏面中央に突設された半球状の係合部42を有し、連結部30bとは反対方向(プーリ4側)に所要角度をもって折り曲げられている。
【0036】
回転伝達部材30の回動制限部30dは、コンプレッサ2に過負荷が発生して接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間から離脱したとき、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bに当接することにより、遠心力による回転伝達部材30の外側方向への回動を制限するために設けられている。回動制限部30dの内側端縁30eは、平面視凹状の円弧面に形成されており、回転方向とは反対側端部、すなわち後端部には逃げ部30fが形成されている。逃げ部30fは、動力伝達中における負荷変動による回転伝達部材30が捩れ変形したときに、内側端縁30eの後端がプリセット荷重設定部材60の規制部60Bに接触して当該接触部を擦ったり騒音が発生しないようにするために設けられるもので、内側端縁30eの後端部を例えば30°の角度で斜めに切り落とすことにより形成されている。
【0037】
このような回転伝達部材30は、図1に示すようにハブ7の周方向に等間隔おいて3個配列され、各固定部30aが前記プリセット荷重設定部材60とともに各ダンパー機構9の連結部材19に取付けられ、各接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bによってそれぞれ接離可能に挾持されている。
【0038】
ダンパー保持部材15は、周方向に等配されて形成された3つの収納部15aを有し、これらの収納部15a内に前記ダンパー機構9がそれぞれ収納されている。各収納部15aは、前記プーリ4の円板部4Aに形成されている前記空気抜き孔24に連通している。
【0039】
前記各ダンパー機構9は、弾性部材としてのダンパーゴム16と、連結部材19とで構成され、前記プーリ4の環状凹部17にダンパー保持部材15を介して配設されている。
ダンパーゴム16は、両端開放の筒状体からなり、ダンパー保持部材15の各収納部15a内に接着剤、焼き付け等によって固定されている。連結部材19は、ダンパーゴム16の中心孔16aに進退可能に圧入される円柱状の本体19aと、この本体19aの前端側に一体に設けられた円板状のフランジ部19bと、このフランジ部19bの前面中央に突設された小径円柱状のかしめ部19cとで構成されている。かしめ部19cは、プリセット荷重設定部材60と回転伝達部材30の固定部30aに設けられている挿通孔41、62に裏面側から挿通されてその突出端部がかしめられることにより、プリセット荷重設定部材60と回転伝達部材30の固定部30aとを連結部材19に固定している。言い換えれば、連結部材19は、回転伝達部材30とプリセット荷重設定部材60にかしめ固定されることによりこれら両部材を連結している。
【0040】
図2および図6において、前記プリセット荷重設定部材60は、金属板のプレス加工によって形成されることにより、円板状の本体60Aと、この本体60Aの内周に表面側に押出加工によって形成された環状の突条体からなる規制部60Bとで構成されている。
【0041】
前記本体60Aには、それぞれ3個からなる挿通孔62とリブ63が周方向に等間隔おいて交互に形成されている。挿通孔62は、連結部材19のかしめ部19cが挿通される孔である。リブ63は、本体60Aを補強するために形成されるもので、本体60Aの裏面側に突出するように周方向に長い円弧状に形成されている。
【0042】
前記規制部60Bは、回転伝達部材30の弾性復帰を規制するもので、本体60Aの内周縁より表面側に立ち上がる環状の立ち上がり壁60aと、この立ち上がり壁60aの先端部を中心方向に塑性変形させることにより形成された円板部60bとで構成されている。立ち上がり壁60aの外周面は、回転伝達部材30の回動制限部30dの内側端縁30eと近接して対向している。また、立ち上がり壁60aの高さXは、コンプレッサ2に過負荷が発生して回転伝達部材30の接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11B間から離脱したとき回転伝達部材30の連結部30bが瞬時に弾性復帰できるように、前記連結部30bに所定のプリセット荷重を付与し得る高さに設定されている。すなわち、回転伝達部材30は、過負荷の発生時に接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bとの間から離脱したとき、接続部30cを連結部30bの弾性復帰力によって挾持板11の後方側に速やかに移動させるために(挾持板11との干渉を防止するため)、連結部30bが弾性変形させられた状態でダンパー機構9と従動側回転体12との間に介装される必要がある。そこで、プリセット荷重設定部材60を連結部材19に取付けるとき、連結部30bをハブ7側に弾性変形させておいて規制部60Bの円板部60bをリベット29に回転伝達部材30の弾性復帰力で圧接すると、回転伝達部材30には連結部30bの弾性変形量に相当するプリセット荷重が付与されたことになる。これにより、ダンパーゴム16と連結部材19を一体に結合させる必要がなく、連結部材19をスラスト荷重が発生しないようにするためにダンパーゴム16に対して進退可能に係入させることができる。また、連結部材19とリベット29との間隔を略一定に保持することができる。なお、回転伝達部材30に付与されるプリセット荷重は、前記立ち上がり壁60aの高さXによって異なり、高くすると増大し、低くすると減少する。また、連結部30bは、接続部30cがハブ7と挾持板11との挾持部間から離脱しない限り弾性復帰することはない。
【0043】
また、このようなプリセット荷重設定部材60は、3個全てのダンパー機構9の連結部材19を連結しているため、連結部材19の個別の動きを規制し各回転伝達部材30の固定部30aに加えられる負荷を均一化する機能をも有している。
【0044】
このような構造からなる動力伝達装置20の組立てに際しては、プーリ4の環状凹部17にダンパー保持部材15を収納してリベット50により円板部4Aに固定する。ダンパー保持部材15の各収納部15aには予めダンパーゴム16が組み込まれている。
【0045】
次に、ダンパーゴム16が組み込まれたプーリ4をハウジング3の円筒部3Aにベアリング5を介して回転自在に取付け、止め輪71によってベアリング5の円筒部3Aからの抜けを防止する。
【0046】
次に、ハブ7、挾持板11、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60を一体化させる。これら部材を一体化させるには、先ずハブ7のフランジ部7Bの裏面に回転伝達部材30と挾持板11とを重ね合わせて回転伝達部材30の接続部30cをハブ7と挾持板11の挾持部7C、11Bにより挟持し、係合部42を挾持板11の係止孔35に係合させる。そして、リベット29をハブ7の挿通孔28と挾持板11の挿通孔34に挿通してかしめることにより、ハブ7、挾持板11および回転伝達部材30を一体化させる。
【0047】
次に、回転伝達部材30の連結部30bを後方に弾性変形させて固定部30aをプリセット荷重設定部材60の本体60Aに重ね合わせ、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bをリベット29の後端面に当接させる。これにより回転伝達部材30は、プリセット荷重が付与され、連結部30bが弾性変形した状態に保持される。そして、この状態で連結部材19のかしめ部19cをプリセット荷重設定部材60の挿通孔62と回転伝達部材30の挿通孔41に挿通してかしめることにより、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60を一体化させる。
【0048】
このようにしてハブ7、挾持板11、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60が一体に組立てられた後、ハブ7のボス部7Aを回転軸6にスプライン結合させてボルト27により固定するとともに、連結部材19の本体19aをダンパーゴム16の中心孔16aに摺動可能に圧入することにより動力伝達装置20の組立てが完了する。
【0049】
このような動力伝達装置20において、エンジンからの動力は、プーリ4−ダンパーゴム16−連結部材19−回転伝達部材30−従動側回転体12を経て回転軸6に伝達される。
【0050】
動力伝達中において、ダンパー機構9は、プーリ4からハブ7に伝達されるトルク変動や衝撃をダンパーゴム16によって効果的に緩衝する。したがって、動力伝達時の衝撃や動力伝達中における過負荷に至らない程度のトルク変動によって回転伝達部材30の接続部30cに加わる張力が軽減され、接続部30cがハブ7と挾持板11との間から抜け出すようなことはない。
【0051】
何らかの原因により、例えばコンプレッサ2に加わる過負荷によって回転軸6が停止すると、自動車エンジンの動力で回転伝達部材30によるプーリ4とハブ7の結合状態が解除される。すなわち、回転軸6が停止した後も、プーリ4は回転し続けているため回転伝達部材30を回転させ続けようとする。このため、回転に伴う引張力が回転伝達部材30の接続部30cに対するハブ7と挾持板11とによる挾持力に打ち勝つと接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部間から離脱してプーリ4とハブ7の結合を解除する。回転伝達部材30はプーリ4とハブ7の結合が解除されると、連結部8bの弾性復帰により図5(b)、(c)に示す自然な状態に戻るため、接続部30cを挾持板11の後方側に瞬時に移動させる。したがって、接続部30cが離脱した後は回転伝達部材30と従動側回転体12が干渉することはなく、プーリ4の回転伝達を確実に断つことができる。
【0052】
また、このような構造からなる動力伝達装置20によれば、スラスト荷重の発生を防止することができる。すなわち、連結部材19をダンパーゴム16に進退移動可能に係入したので、回転伝達部材30の連結部30bの弾性復帰力は、ハブ7やプーリ4に伝達されることはない。このため、プーリ4を軸支するベアリング5や回転軸6を軸支するベアリング(図示せず)に対してスラスト荷重が発生せず、ベアリングの回転抵抗を低減でき、さらには動力伝達装置20の耐久性および信頼性を向上させることができる。
【0053】
また、ハブ7、挾持板11、連結部材19、回転伝達部材30およびプリセット荷重設定部材60を予め組み立てて1つのユニットにするとき、回転伝達部材30にプリセット荷重を付与することができるので、動力伝達装置20の組付作業が容易で、組立作業性を向上させることができる。
【0054】
また、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bは、連結部材19とリベット29との間隔を一定に保持しているため、過負荷の発生時に回転伝達部材30の接続部30cがハブ7と挾持板11との間から離脱し、連結部30bが弾性復帰しても、連結部材19はダンパーゴム16に対して軸線方向にほとんど動くことがない。したがって、連結部材19をダンパーゴム16から引き抜いたり、長く形成する必要がなく、上記した特許文献2に記載の動力伝達機構に比べて軸線方向の寸法を短縮することができ装置自体を薄型化することができる。
【0055】
また、回転伝達部材30に回動制限部30dを設けているので、過負荷発生時の遠心力による回転伝達部材30の回動を制限することができる。すなわち、過負荷発生にともなって回転伝達部材30の接続部30cがハブ7と挾持板11の挾持部間から離脱すると、回転伝達部材30は遠心力により固定部30aを中心としてそのかしめ固定部分の緩みにより回動し、連結部30bおよび接続部30cがハブ4の外側に飛び出そうとする。そこで、回転伝達部材30の固定部30aに回動制限部30dを設けておくと、回転伝達部材30が遠心力で外側に回動しようとしたとき、前記回動制限部30dの内側端縁30eがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの立ち上がり壁60aに当たって回転伝達部材30の外側への回動を制限する。したがって、回転伝達部材30、特に固定部30aの変形、破損等を防止することができる。
【0056】
さらに、回動制限部30dの内側端縁30eの後端に逃げ部30fを設けているので、負荷変動により回転伝達部材30が捩れ変形したとき、前記内側端縁30eがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bに当たって規制部60Bを擦るようなことはない。したがって、騒音が発生することもない。
【0057】
図7は本発明の第2の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図8は図7のF−F線断面図、図9(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、G矢視側面図およびH−H線断面図である。
この実施の形態では、上記した第1の実施の形態の回転伝達部材30とは形状の一部が異なる回転伝達部材30Xを用いた点が相違するだけで、その他の構造は全く同一である。すなわち、第1の実施の形態では、動力伝達中の負荷変動による回転伝達部材30の捩れ変形により、その回動制限部30dの後端がプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に当たらないように、回動制限部30dの内側端縁30eの後端に逃げ部30fを形成したが、この第2の実施の形態では、回転伝達部材30Xの回動制限部30d自体の後端が動力伝達中においてプリセット荷重設定部材60の規制部60Bに当たらないようにした。つまり図9に示すように、回転伝達部材30Xは、円弧状に形成されることにより、固定部30a、連結部30b、および接続部30cを一体に有し、また固定部30aの内側縁に回動制限部30dを中心方向に向かって延設し、この回動制限部30dの内側端縁30eにハブ7側に折り曲げられた折曲部30gを形成している。さらに、回動制限部30dの後端に円弧状に延在し連結部30bと径方向において対向する延長部30hを連設している。この延長部30hの内側縁にもハブ側に折り曲げられた折曲部30gが形成されている。この折曲部30gは、固定部30aや回動制限部30dや延長部30hを補強する。また、折曲部30gは、プリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に近接して対向している。
【0058】
このような回転伝達部材30Xを備えた動力伝達装置において、動力伝達が遮断されると、回転伝達部材30Xは接続部30cがハブ7と挾持板11との間から離脱するため、遠心力により固定部30aを中心としてそのかしめ固定部分の緩みにより回動して外側に飛び出そうとする。このとき、回動制限部30dから延長部30hまでの折曲部30gがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に当接することにより、空転中の回転伝達部材30Xの回動変位を防止する。
【0059】
また、動力伝達中における負荷変動による回転伝達部材30Xの振れ変形は、折曲部30gがプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に当接し、延長部30hが外側に弾性変形することにより抑制される。よって、動力伝達中における回転伝達部材30Xの固定部30aや接続部30cに作用する応力も低減でき、固定部30aの破損や接続部30cとハブ7および挾持板11の挾持部7C、11Bとの摩擦係合力の低下を抑制することができる。
【0060】
図10は本発明の第3の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図11は図10のI−I線断面図、図12(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、J矢視側面図およびK−K線断面図である。
この実施の形態では、プーリ4の円板部4Aを外側円筒部4Bと内側円筒部4Cの後端(ハブ7側とは反対側端)側に設け、環状凹部17を深く形成した点、回転軸6の先端面が当接するハブ7の当接部7gをフランジ部7Bの内径側に形成した点、回転伝達部材30Yとプリセット荷重設定部材60の連結部材19によるかしめ固定部分、具体的には回転伝達部材30Yの固定部30aとプリセット荷重設定部材60の本体60Aをプーリ4の環状凹部17内に位置させた点が上記した第1、第2の実施の形態と異なっている。またさらには、回転伝達部材30Yの回動制限部30dの内側端縁30eにハブ7側に折り曲げられた折曲部30gを設け、逃げ部や延長部を設けない点が異なる。
【0061】
このような構造からなる動力伝達装置によれば、回転伝達部材30Yとプリセット荷重設定部材60の連結部材19によるかしめ固定部分をプーリ4側に変位させて環状凹部17内に収納しているので、その変位分だけ動力伝達装置の軸線方向の寸法を短縮することができる。
【0062】
図13は本発明の第4の実施の形態の一部を破断して示す正面図、図14は図13のL−L線断面図、図15(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、M−M線断面図、N−N線断面図である。
上記した第1〜第3の実施の形態では、回転伝達部材30、30X、30Yをそれぞれ円弧状に形成してハブ7の円周方向に3個配列した例を示したが、この実施の形態では、円弧状の回転伝達部材30(または30X、30Y)を3個形成する代わりに、3個の回転伝達部材を一体に形成して1つの回転伝達部材80とした点が前記第1〜第3の実施の形態と異なるだけで、その他の構造は同じである。
【0063】
図15において、前記回転伝達部材80は、ばね用鋼板によって全体が略円板状に形成されており、3つの円弧状スリット81を形成することによりスリット81の内側に位置する環状の本体(回動制限部)80Aと、この本体80Aの外周を取り囲むように円弧状に延設された3つの連結片80Bとを備えている。
【0064】
本体80Aの内周縁には表面側(ハブ7側)に折り曲げられプリセット荷重設定部材60の規制部60Bの外周面に近接して対向する折曲部80dが設けられている。この折曲部80dは、負荷変動時の回転伝達部材80の捩れ変形により前記規制部60Bに当接したとき弾性変形し得るように、切欠部84によって本体80Aの円周方向に3等分されている。
【0065】
各連結片80Bは、基端部(回転伝達部材80の回転方向側端部)がダンパー機構9に固定される固定部80aを形成し、この固定部80aから反回転方向に延設された円弧状部分が板厚方向に弾性変形可能な連結部80bを形成し、この連結部80bの先端部(反回転方向側端部)がハブ7と挾持板11とによって離脱可能に挾持される接続部80cを形成している。固定部80aは、本体80Aと同一面を形成し、ダンパー機構9の連結部材19が挿通される挿通孔82が形成されている。連結部80bは、自然状態において表面側(ハブ7側)に所要角度折り曲げられている。接続部80cの裏面側には、ハブ7と挾持板11との摩擦結合力を高めるために小さな円弧状の係合部83が突設されている。
【0066】
このような構造からなる動力伝達装置によれば、回転伝達部材80を1つの部材で構成しているので、部品点数を削減することができる。
【0067】
なお、上記した第1〜第4の実施の形態では、いずれもプリセット荷重設定部材60に規制部60Bを絞り加工により形成し、この規制部60Bをハブ7と挾持板11を連結するリベット29に当接させて回転伝達部材(30(30X、30Y、80)の連結部30b(80b)を弾性変形させ、プリセット荷重を付与するようにした例を示したが、これに限らずその構造はその他構造でもよい。例えば、プリセット荷重設定部材60を平板状のプレートとして、従動側回転体12を構成するハブ7または挾持板11にプーリ4側に突出しプリセット荷重設定部材に当接する規制部を設けてもよい。つまり、プリセット荷重設定手段としては、過負荷発生により回転伝達部材30(30X、30Y、80)の接続部30b(80b)がハブ7と挾持板11の挾持部間から抜け出て回転伝達部材30の連結部30bが弾性復帰したとき、回転伝達部材と回転方向で干渉しなければ、2つの部材で構成されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る動力伝達装置の第1の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】プーリの正面図である。
【図4】(a)、(b)は挾持板の正面図およびB−B線断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)は回転伝達部材の正面図、C矢視側面図、D−D線断面図である。
【図6】プリセット荷重設定部材の正面図およびE−E線断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図8】図7のF−F線断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、G矢視側面図およびH−H線断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図11】図10のI−I線断面図である。
【図12】(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、J矢視側面図およびK−K線断面である。
【図13】本発明の第4の実施の形態の一部を破断して示す正面図である。
【図14】図13のL−L線断面図である。
【図15】(a)〜(c)は、回転伝達部材の正面図、M−M断面図、N−N線断面図である。
【図16】従来の動力伝達装置の断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1,20…動力伝達装置、2…コンプレッサ、3…ハウジング、4…プーリ(駆動側回転体)、6…回転軸、7…ハブ(従動側回転部材)、9…ダンパー機構、11…挾持板、12…従動側回転体、16…ダンパーゴム、19…連結部材、30、30X、30Y…回転伝達部材、30a…固定部、30b…連結部、30c…接続部、30d…回動制限部、30f…逃げ部、30g…折曲部、60…プリセット荷重設定部材、60B…規制部、80…回転伝達部材、80A…本体、80B…連結片、80a…固定部、80b…連結部、80c…接続部、80d…折曲部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側機器の動力によって回転する駆動側回転体と、
従動側機器の回転軸に取付けられた従動側回転部材と挾持板とからなる従動側回転体と、
一端部が前記駆動側回転体にダンパー機構を介して連結され、他端部が前記従動側回転体に接離可能に連結され、前記駆動側回転体の回転を前記従動側回転体に伝達する回転伝達部材とを備え、
前記ダンパー機構を前記駆動側回転体に取付けられた筒状の弾性部材と、前記回転伝達部材に取付けられ前記弾性部材に進退可能に係入される連結部材とで構成し、
前記従動側回転体と前記連結部材との間に前記回転伝達部材を弾性変形させてプリセット荷重を付与するプリセット荷重設定手段を設けたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達装置において、
前記プリセット荷重設定手段は、前記回転伝達部材の弾性復帰を規制する規制部を有して前記回転伝達部材とともに前記連結部材に固定され、前記規制部を従動側回転体に圧接することにより前記回転伝達部材にプリセット荷重を付与することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力伝達装置において、
前記回転伝達部材は、前記連結部材が取付けられた固定部と、この固定部に延設された板厚方向に弾性変形可能な連結部と、この連結部の先端部に設けられ従動側回転体によって接離可能に挾持された接続部とを有して前記従動側回転体の周方向に複数個配列されており、
前記固定部には、過負荷の発生時に前記接続部が前記従動側回転体から離脱したとき、前記プリセット荷重設定手段に当接することにより遠心力による前記回転伝達部材の外側方向への回動を制限する回動制限部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3記載の動力伝達装置において、
前記回動制限部には、動力伝達中における負荷変動による前記回転伝達部材の捩れ振動により前記回動制限部が前記プリセット荷重設定手段の規制部に接触するのを防止する逃げ部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項5】
請求項3記載の動力伝達装置において、
前記回動制限部の内側端縁には、前記プリセット荷重設定手段の規制部に近接して対向する折曲部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】
請求項2記載の動力伝達装置において、
前記規制部がプリセット荷重設定手段の代わりに従動側回転体に設けられており、前記プリセット荷重設定手段に圧接することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項1】
駆動側機器の動力によって回転する駆動側回転体と、
従動側機器の回転軸に取付けられた従動側回転部材と挾持板とからなる従動側回転体と、
一端部が前記駆動側回転体にダンパー機構を介して連結され、他端部が前記従動側回転体に接離可能に連結され、前記駆動側回転体の回転を前記従動側回転体に伝達する回転伝達部材とを備え、
前記ダンパー機構を前記駆動側回転体に取付けられた筒状の弾性部材と、前記回転伝達部材に取付けられ前記弾性部材に進退可能に係入される連結部材とで構成し、
前記従動側回転体と前記連結部材との間に前記回転伝達部材を弾性変形させてプリセット荷重を付与するプリセット荷重設定手段を設けたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達装置において、
前記プリセット荷重設定手段は、前記回転伝達部材の弾性復帰を規制する規制部を有して前記回転伝達部材とともに前記連結部材に固定され、前記規制部を従動側回転体に圧接することにより前記回転伝達部材にプリセット荷重を付与することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力伝達装置において、
前記回転伝達部材は、前記連結部材が取付けられた固定部と、この固定部に延設された板厚方向に弾性変形可能な連結部と、この連結部の先端部に設けられ従動側回転体によって接離可能に挾持された接続部とを有して前記従動側回転体の周方向に複数個配列されており、
前記固定部には、過負荷の発生時に前記接続部が前記従動側回転体から離脱したとき、前記プリセット荷重設定手段に当接することにより遠心力による前記回転伝達部材の外側方向への回動を制限する回動制限部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3記載の動力伝達装置において、
前記回動制限部には、動力伝達中における負荷変動による前記回転伝達部材の捩れ振動により前記回動制限部が前記プリセット荷重設定手段の規制部に接触するのを防止する逃げ部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項5】
請求項3記載の動力伝達装置において、
前記回動制限部の内側端縁には、前記プリセット荷重設定手段の規制部に近接して対向する折曲部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】
請求項2記載の動力伝達装置において、
前記規制部がプリセット荷重設定手段の代わりに従動側回転体に設けられており、前記プリセット荷重設定手段に圧接することを特徴とする動力伝達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−196524(P2008−196524A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29475(P2007−29475)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000185248)小倉クラッチ株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000185248)小倉クラッチ株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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