説明

動圧軸受装置及びその製法並びにスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク装置

【課題】 硬質粒子が生じることを防ぎつつ円錐台側周面形状の軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を効率良く設定する。
【解決手段】 軸受部材12bの線膨張係数をロータハブ10に比し大とする。室温付近における軸受部材12bの内径を軸部材12aの軸部12a1の外径よりもやや大とする。室温付近において、軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20が当接するよう軸部材12aをロータハブ10内周部に嵌挿した後、軸受部材12bを軸部材12aに隙間嵌めする。昇温させて所定温度とし、軸受部材12bを下方移動させて軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18を同軸状に当接させ、内方突出部10bを軸方向に挟み、軸受部材12bの内周上端部と軸部12a1をレーザ溶接する。その後、所定温度から室温に低下させ、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の間に所要間隙を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置及びその製法並びにその動圧軸受装置を用いたスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6(従来のコニカル動圧軸受の分解斜視図)及び図7(図6のコニカル動圧軸受を用いたスピンドルモータの一部切取斜視図)に示す特許3043294号公報(特許文献1)記載のスピンドルモータaは、上円錐bと下円錐cを有する軸体と、各円錐部に対応した形状の円錐状凹部dを上下に有するブッシュeを有し、オイル又は空気を作動流体として前記軸体に対し前記ブッシュeを回転自在に支持するコニカル動圧軸受とを備えている。このスピンドルモータaは、例えば、ハードディスクなどのディスク装置等において、幅広く適用される。
【0003】
このような、軸受面が円錐台側周面形状をなすコニカル動圧軸受を用いると、次のような利点が得られる。すなわち、軸受面が円錐状の対向面間に構成されていて、モータにかかるラジアル荷重とスラスト荷重とを1つの動圧軸受で同時に支持することが可能となるため、回転精度を損なうことなくスピンドルモータを小型・薄型化することが可能となる。また、高精度な加工を要求される軸受面が少なくなり、加工コストが低減されるのでスピンドルモータ全体の製造に要するコストも抑制される。加えて、高精度な加工を要求される面が少なくて済むことから、工数が削減され、歩留まりが改善される。更に、動圧軸受を対向する円錐状の傾斜面間に構成することで、ラジアル荷重を支持するラジアル軸受とスラスト荷重を支持するスラスト軸受からなる軸受構造に比べて、軸受隙間の管理およびコントロールが容易になる。
【特許文献1】特許3043294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許3043294号公報(特許文献1)記載のコニカル動圧軸受においては、図6に示されるように、ブッシュe内の上下円錐状凹部dに、スペーサfを挟んで上円錐bと下円錐cが位置し、貫通孔hに軸jが嵌挿固定されている。
【0005】
このようなコニカル動圧軸受においては、軸jに対し上円錐bと下円錐cを圧入し、それらの上円錐b及び下円錐cの円錐状外周面とブッシュe(スリーブ)側の円錐状凹部dの円錐状内周面の間に動圧軸受部を構成するために、それらの円錐状外周面と円錐状内周面の間に適切な軸受隙間を設ける必要がある。
【0006】
この場合における円錐状外周面と円錐状内周面の間の軸受隙間の設定は、軸jに対する上円錐b及び下円錐cの軸方向位置決めにより行うことになる。そのためには、軸jに対する上円錐b及び下円錐cの圧入と軸方向間隙の測定を何度か繰り返して軸受隙間の調整を行わなければならないが、このような作業は量産に不向きである。また、このような作業においては、軸jと上円錐b又は下円錐cが擦れたときに材料の一部が削れて硬質粒子が生じ、その硬質粒子が軸受内に侵入するおそれがある。円錐状外周面と円錐状内周面の間の軸受隙間の設定を軸jに対する上円錐b及び下円錐cの軸方向位置決めにより行う作業は、軸jに対し垂直な方向の間隙の調整に比し精度を要するため、そのような硬質粒子の侵入の可能性はより高くなる。
【0007】
また、このような軸受を用いたスピンドルモータおよびディスク装置では、上述した軸受の影響を受けて、同様の課題を含んだものとなってしまう。
【0008】
なお、ここに述べた内容は、コニカル動圧軸受を軸方向の1箇所或いは3以上の箇所に備える動圧軸受装置についても同様に該当するものである。
【0009】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、硬質粒子が生じることを防ぎつつ円錐台側周面形状の軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を効率良く設定することができるコニカル動圧軸受を備えた軸受装置及びその製法並びにその動圧軸受装置を用いたスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の動圧軸受装置の製造方法は、
軸心線を中心とする円錐台側周面形状の軸側軸受外周部を備えた軸体と、軸心線を中心とする円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部を備えたスリーブ体の一方に対し他方が同軸状に相対回転し得、前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部が、両者間の軸受隙間に配された潤滑流体を介し径方向に相対して一方に対し他方を回転自在に支持する動圧軸受部を構成する動圧軸受装置を製造する方法であって、
前記軸体は、軸部材と、その軸部材に対し径方向外側に嵌合し且つ軸側軸受外周部を備える環状の軸受部材を有し、その軸受部材は、スリーブ体よりも線膨張係数が大きいものとし、
動圧軸受装置の使用温度域よりも高い所定温度において、スリーブ体内に軸体が嵌挿され且つ前記軸受部材が前記軸部材に隙間嵌めされている状態で、前記軸部材に対し前記軸受部材を相対的に軸方向移動させて前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部を両者が同軸状をなすように当接させ、その当接状態において、前記軸受部材を所定の接合部で軸部材に固定し、
固定後、前記所定温度から温度を低下させることにより前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を設けることを特徴とする。
【0011】
この製造方法においては、同軸状に相対回転し得る軸体とスリーブ体がそれぞれ有する円錐台側周面形状の軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部が、両者間の軸受隙間における潤滑流体を介し径方向に相対して一方に対し他方を回転自在に支持する動圧軸受部を構成する動圧軸受装置の製造を、次のように行う。
【0012】
軸体は、軸部材と、その軸部材に対し径方向外側に嵌合し且つ軸側軸受外周部を備える環状の軸受部材を有し、その軸受部材は、スリーブ体よりも線膨張係数が大きいものとする。
【0013】
動圧軸受装置の使用温度域よりも高い所定温度において、スリーブ体内に軸体が嵌挿され且つ軸受部材が軸部材に隙間嵌めされている状態で、軸部材に対し軸受部材を相対的に軸方向移動させて軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部をそれらが同軸状をなすよう当接させ、その当接状態において、軸受部材を所定の接合部において軸部材に固定する。軸受部材は軸部材に隙間嵌めされている状態であるため、軸部材に対する軸受部材の移動により硬質粒子が生じることは防がれる。
【0014】
そのように固定した後、所定温度から温度を低下させることにより、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を設ける。
【0015】
軸受部材の線膨張係数が、その軸受部材の径方向外方に相対するスリーブ体の線膨張係数よりも大きいので、軸部材に対し軸受部材を相対的に軸方向移動させて軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部を両者が同軸状をなすように当接させた状態で接合部において軸受部材を軸部材に固定する際の温度(すなわち所定温度)を適切に管理することにより、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を精度良く設けることができる。
【0016】
また、軸受部材はスリーブ体よりも線膨張係数が大きく、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間の軸受隙間は温度上昇により減少するので、温度上昇により流体潤滑流体の粘度が低下する場合に、温度補償の効果を奏する。
【0017】
本発明の動圧軸受装置は、
軸心線を中心とする円錐台側周面形状の軸側軸受外周部を備えた軸体と、軸心線を中心とする円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部を備えたスリーブ体の一方に対し他方が同軸状に相対回転し得、前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部が、両者間の軸受隙間に配された潤滑流体を介し径方向に相対して一方に対し他方を回転自在に支持する動圧軸受部を構成する動圧軸受装置であって、
前記軸体は、軸部材と、その軸部材に対し径方向外側に嵌合し且つ軸側軸受外周部を備える環状の軸受部材と、軸受部材を軸部材に固定する接合部を有し、前記軸受部材の線膨張係数がスリーブ体の線膨張係数よりも大きく、
動圧軸受装置の使用温度域よりも高い所定温度において、スリーブ体内に軸体が嵌挿され且つ前記軸受部材が前記軸部材に隙間嵌めされている状態で前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部が同軸状に当接した状態において、前記接合部における固定が行われ、前記所定温度からの温度低下により前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間が設定されたものであることを特徴とする。
【0018】
また本発明のスピンドルモータは、この動圧軸受装置を備えたものである。
更に、本発明のディスク装置は、
情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク装置において、
ハウジングと、当該ハウジング内部に固定され前記記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記記録媒体の所要の位置に情報を書き込みまたは読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク装置であって、前記スピンドルモータは、請求項9に記載したスピンドルモータであることを特徴とする。
【0019】
前記動圧軸受装置においては、動圧軸受装置の使用温度域よりも高い所定温度において、スリーブ体内に軸体が嵌挿され且つ前記軸受部材が前記軸部材に隙間嵌めされている状態で、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部が同軸状をなすよう当接させた状態において、軸受部材を接合部において軸部材に固定している。軸受部材は軸部材に隙間嵌めされている状態であるため、当接させるために前記軸部材に対し前記軸受部材を相対的に軸方向移動させた場合に硬質粒子が生じることが防がれる。そのように固定した後、所定温度から温度を低下させることにより、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間が設定されている。
【0020】
軸受部材の線膨張係数が、その軸受部材の径方向外方に相対するスリーブ体の線膨張係数よりも大きいので軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部が同軸状をなすように当接させた状態で接合部において軸受部材を軸部材に固定する際の温度(すなわち所定温度)を適切に管理することにより、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を精度良く設けることができる。
【0021】
上記各発明においては、上記接合部が、上記軸受部材の軸方向のうち上記軸側軸受外周部が拡径している側に位置することが好ましい。この場合、接合部により軸受部材の軸側軸受外周部側の変形特性が阻害されることが防がれ、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を確実に設定することができる。
【0022】
上記各発明においては、上記軸部材に対し上記軸受部材を相対的に軸方向移動させて上記軸側軸受外周部と上記スリーブ側軸受内周部を両者が同軸状をなすように当接させ、前記軸受部材と、軸方向において上記スリーブ体に対し前記軸受部材と逆の側に位置する所定部との間に、前記スリーブ体を軸方向に挟み、その状態において、前記軸受部材を所定の接合部において前記軸部材に固定するものであることが好ましい。前記所定部は軸部材の一部とすることができる。
【0023】
この場合、軸受部材と所定部(例えば軸部材)との間にスリーブ体を軸方向に挟み、その状態において、軸受部材を接合部において軸部材に固定することにより、軸体とスリーブ体との軸方向の相対的な移動が規制されると共に、両部材の軸方向位置関係を確実に設定して、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を効率的に而も精度良く設けることができる。
【0024】
また、軸方向に相対してスラスト軸受部を構成する軸側スラスト部とスリーブ側スラスト部を、それぞれ軸部材及びスリーブ体の一部として有し、前記所定部が前記軸側スラスト部である場合、スラスト軸受部を構成する軸側スラスト部とスリーブ側スラスト部は高精度に仕上げられているため、軸体とスリーブ体の軸方向位置関係をより正確に設定して、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間をより精度良く設けることができる。
【0025】
また上記各発明においては、上記軸体が、上記円錐台側周面形状の軸側軸受外周部を互いに逆向きに2箇所に備えると共に、上記スリーブ体が、上記円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部を前記軸側軸受外周部に対応して互いに逆向きに2箇所に備えるものであることが好ましい。
【0026】
この場合の動圧軸受装置においては、互いに逆向きの円錐台側周面形状をなす2箇所の軸側軸受外周部と、それぞれに対応する互いに逆向きの円錐台側周面形状をなす2箇所のスリーブ側軸受内周部が、それぞれ動圧軸受部を構成するので、高い回転精度を実現することができる。
【0027】
更に、上記各発明においては、上記軸部材に対し径方向外側に嵌合する、互いに逆向きの円錐台側周面形状の軸側軸受外周部をそれぞれ備える2個の環状の軸受部材を有し、前記軸部材に対し前記2個の軸受部材を相対的に軸方向移動させて2箇所の軸側軸受外周部と2箇所のスリーブ側軸受内周部をそれぞれにおいて両者が同軸状をなすように当接させて、前記両軸受部材の間にスリーブ体を軸方向に挟み、その状態において、前記2個の軸受部材をそれぞれ所定の接合部において前記軸部材に固定するものであることが好ましい。
【0028】
この場合、2個の軸受部材の間に、その軸受部材に対し相対回転すべき軸体又はスリーブ体を挟み、その状態において、前記2個の軸受部材を接合部において軸部材に固定することにより、軸体とスリーブ体との相対的な移動が規制されると共に、両部材の軸方向位置関係を確実に設定して、軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を効率的に而も精度良く設けることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、何れも円錐台側周面形状をなす軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部が相対して動圧軸受部を構成する動圧軸受装置を、軸部材と軸受部材の嵌合時に硬質粒子が生じることを防ぎつつ、軸受部材を軸部材に固定する際の温度を適切に管理して軸側軸受外周部とスリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を設けることにより、精度良く効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態を、図1乃至図5を参照しつつ説明する。
【0031】
図1乃至図4は、コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置を用いたハードディスク(或いはその他の記録媒体)駆動用のスピンドルモータの一例についてのものであって、そのうち図1はスピンドルモータの模式的な要部断面図、図2乃至図4は、製造工程を示す模式的な要部断面図である。
【0032】
図1に示すこのスピンドルモータにおいては、ハードディスクを保持するロータハブ10がスリーブ体を構成し、そのロータハブ10が、潤滑油R(潤滑流体)を介して固定軸体12に対し回転自在に支持されている。尤も、本発明は、このような軸固定型の動圧軸受装置及びスピンドルモータに限らず、軸回転型の動圧軸受装置及びスピンドルモータにも適用されることは言うまでもない。また、本発明の動圧軸受装置において用いる潤滑流体は、ここに例示する潤滑油又はその他の潤滑液の他、空気等の気体とすることもできる。
【0033】
軸体12は、軸部材12aと軸受部材12bからなる。軸部材12aは、円柱状の軸部12a1と、軸部12a1の下端に形成された縮径部12a2と、縮径部12a2の下側に位置する径方向外方張出のスラスト円板部12a3を一体的に備える。スラスト円板部12a3の環状上面部は、軸側スラスト環状部14を構成する。軸受部材12bは、軸心線を中心とする環状の回転体であり、軸部材12aの軸部12a1に対し径方向外側に同軸状に嵌合固定される。軸受部材12bの内周部は円筒面状をなす。軸受部材12bの外周部は、上部が円筒面状をなし、下部は、下方に向かって縮径する円錐台側周面形状の軸側軸受外周部16を構成する。図1の軸側軸受外周部16は、下方に向かって直線状に縮径しているが、曲線状に縮径する形状とすることもできる。
【0034】
ロータハブ10は、軸心線を中心とする略円筒状部10aの内周側に断面略三角形状をなす内方突出部10bを有すると共に外周側に鍔状部10cを有する。内方突出部10bは、軸受部材12bとスラスト円板部12a3とで挟まれるように構成されるため、ロータハブ10は後述する軸受隙間を超えての軸方向の移動が規制される。内方突出部10bの内周面は、軸側軸受外周部16に対応して下方に向かって縮径する円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部18を構成する。内方突出部10bの環状下面部は、スリーブ側スラスト環状部20を構成する。図1のスリーブ側軸受内周部18は、下方に向かって直線状に縮径しているが、曲線上に縮径する形状とすることもできる。なお、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の少なくとも一方、並びに軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20の少なくとも一方には、それぞれ潤滑油Rに対する動圧発生のためのへリングボーン溝(図示を略す)が設けられている。
【0035】
鍔状部10cの上面には、ハードディスクDが搭載される。鍔状部10cの下側には環状のマグネットMが嵌合固定されている。マグネットMの径方向外方にはステータSが隙間を介して配置されている。ステータSは、軸部材12a等と共にベース部材Bに固定されている。ステータSが通電されると回転磁界が誘起され、マグネットMとの電磁的作用によりロータハブ10が回転する。(図1)
【0036】
ロータハブ10と軸部材12aは、線膨張係数が等しい材料(必ずしも線膨張係数が等しいことを要するものではない。)からなり、軸受部材12bは、ロータハブ10に比し線膨張係数が大きい材料からなる。各部材の材料の一例として、ロータハブ10と軸部材12aについてはSUS400系ステンレス鋼、軸受部材12bについてはSUS300系ステンレス鋼を挙げることができる。軸受部材12bの内径は、室温付近における寸法が、軸部材12aの軸部12a1の外径よりもやや大きいように形成されている。なお、軸受部材12bは、軸部材12aよりも線膨張係数が大きい材料からなることが好ましい。
【0037】
この動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの製造においては、室温又は動圧軸受装置の使用温度域付近において、軸体12における軸側スラスト環状部14とロータハブ10におけるスリーブ側スラスト環状部20が当接するように、軸体12の軸部材12aをロータハブ10内周部に嵌挿した後、軸受部材12bを軸部材12aに対し隙間嵌めする。
【0038】
次いで軸体12及びロータハブ10の温度を昇温させて、スピンドルモータにおける動圧軸受装置の使用温度域(例えば、上限が約90℃)よりも高い所定温度とする。その所定温度において、軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20が当接する状態を維持しつつ軸部材12aに対し軸受部材12bを軸方向下方に移動させて軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18を両者が同軸状をなすように当接させ、内方突出部10b(スリーブ体)を軸方向に挟むようにする。軸受部材12bは軸部材12aに比し線膨張係数が大きいため、使用温度域よりも高い所定温度においても軸部材12aに対し隙間嵌め状態が保たれる。また、軸部材12aに対する軸受部材12bの移動により、材料の削れ等により硬質粒子が生じることは防がれる。(図2)
なお、軸受部材12bとロータハブ10は、半径方向の肉厚が部位によって異なる
など複雑な形状をしているため、熱膨張時と非熱膨張時の形状は完全な相似関係と
はならない。したがって、予め熱膨張時と非熱膨張時における各部(特に軸側軸受
外周部16とスリーブ側軸受内周部18)の形状を考慮した設計を行うと良い。
【0039】
所定温度での軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の当接状態及び軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20の当接状態を維持しつつ、軸受部材12bの内周上端部と軸部12a1の外周部をレーザ溶接により接合する。このレーザ溶接により形成された接合部22において軸受部材12bを軸部材12aに固定する。(図3)
【0040】
軸受部材12bを軸部材12aに固定した後、軸体12及びロータハブ10の温度を所定温度から室温又は使用温度域に低下させると、軸受部材12bはロータハブ10に比し線膨張係数が大きいため、軸受部材12bの方がより縮径し、線膨張係数の差異、所定温度、軸受部材12bの寸法等の設定に応じ、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の間に所要の間隙(間隙の軸方向寸法g1)を設けることができる。(図4)
【0041】
ロータハブ10を軸方向上方に移動させると、この間隙が、軸方向において、軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20の間隙(間隙の軸方向寸法g2)と、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の間隙(間隙の軸方向寸法g3)に分配されることにより(つまり、g1=g2+g3)、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の間に所要の軸受隙間が設けられる。尤も、軸部材12aとロータハブ10(スリーブ体)の線膨張係数に差異がある場合は、各間隙及び軸受隙間は、各部品の加工誤差や組立誤差、並びにその線膨張係数の差異による寸法変化が加味されたものとなる。
【0042】
この軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の軸受隙間及び軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20の軸受隙間を含むロータハブ10と軸体12の間隙に潤滑油Rを充填することにより、ロータハブ10が軸体12に対し非接触で回転自在に支持された動圧軸受装置が得られる。このうち軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18が、両者の軸受隙間に潤滑油Rが介在してコニカル動圧軸受を構成し、軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20が、両者の軸受隙間に潤滑油Rが介在してスラスト軸受部を構成する。なお、環状のシールキャップ24は、潤滑油Rの充填前にロータハブ10の上端内周部に固定される。(図1)
【0043】
このような、所定温度の管理、及び、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18を同軸状に当接させることによる両者の位置関係の設定は、何れも容易且つ確実に行うことができるため、精度良く効率的に軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の間に所要の軸受隙間を設けて、コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置を用いた高精度のスピンドルモータを高効率で製造することが可能となる。
また、軸部材12aと軸受部材12bは、所定温度に昇温された状態でレーザ溶接される。そのため、両部材間のレーザの照射部と非照射部との温度差が小さく、そのレーザ照射部の溶融時および凝固時に発生する熱応力が緩和されるため、部品の変形や溶接部のクラックの発生を抑えることができる。
【0044】
また、軸受部材12bはロータハブ10よりも線膨張係数が大きく、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の間の軸受隙間は温度上昇により減少するので、温度上昇により潤滑油Rの粘度が低下する場合に、温度補償の効果を奏する。
【0045】
接合部22は、軸受部材12bの軸方向の上端に位置し下端側の位置するコニカル軸受部から離れているので、軸受部材12bと軸部材12aの締結関係を維持しつつ、軸受部材12bが膨張又は収縮する際にコニカル軸受部の軸受隙間が接合部の影響を受けにくい。
【0046】
スピンドルモータの製造においては、軸側スラスト環状部14とスリーブ側スラスト環状部20を当接状態にするが、両者は共に軸受部を構成する部分であるから高精度に加工されている。そのため、軸部材12aとロータハブ10との軸方向位置関係が良好となる。この状態で軸受部材12bを移動させて軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18を当接させるものであるから、軸受部材12bを軸部材12aに高精度に位置合わせし、その状態で両者を接合部22において固定することができる。
【0047】
また、このスピンドルモータの製造は、軸部材12aとロータハブ10と軸受部材12bを当接させて組み立てるため、各部材の個体差を組立中に吸収することができる。つまり、通常では、同じ部品であっても公差範囲において寸法上のバラツキがある(個体差)ので、より高精度に組み立てるには、その公差が小さくなるように部品精度を高めるか、或いは組立後の精度が低くなるように部品の組み合わせを考慮した組み立てをする必要があるが、本形態では部品間の固体差があってもそのような手間をかけずに組立中に誤差を吸収できる。
【0048】
潤滑油Rの下方側の気液界面は、ロータハブ10の下端内周面とスラスト円板部12a3の外周面との間の下方拡開の断面テーパ状の環状間隙に、上に凹のメニスカスとして形成される。また潤滑油Rの上方側の気液界面は、ロータハブ10の上端内周部に外周部が固定された環状のシールキャップ24の下面と軸受部材12bの上面の間の径方向内方拡開の断面テーパ状の環状間隙に、径方向外方に凹のメニスカスとして形成される。
【0049】
更に、コニカル軸受部とスラスト軸受部との間における、縮径部12a2と軸受部材12bの内周面との間の上方拡開の断面テーパ状の環状間隙に、上に凹となるメニスカスの気液界面を形成する。なお、この環状間隙のうちメニスカスの上方部分は、軸部材12a等に設けた貫通孔(図示略)を介して外気と連通している。
【0050】
なお、軸体12の軸部材12aの、ロータハブ10内周部(スリーブ体内)への嵌挿、及び軸受部材12bの軸部材12aに対する隙間嵌めは、必ずしも室温又は動圧軸受装置の使用温度域付近において行うことを要するものではない。例えば、所定温度等の、使用温度域より高い温度において行うこともできる。
【0051】
また、軸部材12aに対し軸受部材12bを軸方向下方に(又は軸受部材12bを軸部材12aに対し軸方向上方に)移動させて軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18を両者が同軸状をなすように当接させる際に、軸部材12aとスリーブ体50の軸方向位置関係を設定することができれば、内方突出部10b(スリーブ体)を軸方向に挟むことを要しない。例えば、軸部材12aを、軸部12a1とスラスト円板部12a3の別部材にて構成し、この軸部12a1の下端部に軸方向に面する段差部を形成しておく。そして、製造時、その軸部12a1の段差部を所定のジグに当接させて固定しつつ、この軸部12a1に嵌挿したスリーブ体50もそのジグに当接させて固定する。この状態で軸受部材12bを上述と同様の方法で軸部12a1に固定する。そして、この状態を維持したまま、そのジグに代えてスラスト円板部12a3をその軸部12a1の段差部に当接させて固定する。この構成では、軸部12a1およびスラスト円板部12a3が加工し易く精度が出しやすくなる。
【0052】
軸受部材12bを軸部材12aに固定する接合部22は、軸受部材12bの軸方向のうち軸側軸受外周部16が拡径している側(図における上部)の内周部に位置し、軸受部材12bの軸方向のうち軸側軸受外周部16が縮径している側(図における下部)の内周部は軸部材12aに対し非接合状態であることが好ましい。所定温度からの温度が低下する際の軸受部材12bの収縮による、軸側軸受外周部16とスリーブ側軸受内周部18の間隙の形成を良好に行い得るからである。接合部22は、レーザ溶接によるものが好ましいが、これに限らない。抵抗溶接、熱硬化性接着剤による接着、焼きばめ、温間圧入等による接合であってもよい。
【0053】
図5は、一対のコニカル動圧軸受を軸方向の2箇所に逆向きに備える動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの一例についての断面図である。図5中の符号で図1乃至図4と共通のものは同一の意義である。
【0054】
図5に示すスピンドルモータは、固定軸体52に対し上下一対のコニカル動圧軸受においてスリーブ体50が回転自在に支持された動圧軸受装置を備えるものである。
【0055】
軸体52は、軸部材52aと上下一対の互いに逆向きの軸受部材52bからなる。軸部材52aは、円柱状をなし、ブラケット40の中央嵌合穴40aに下端部が嵌挿されて立設されている。軸受部材52bは、軸心線を中心とする環状の回転体であり、軸部材52aに対し径方向外側に同軸状に嵌合固定される。各軸受部材52bの内周部は円筒面状をなし、各軸受部材52bの外周部は、軸方向外方側の面が、軸方向外方に向かって比較的急角度で縮径する円錐台側周面形状の端面部、軸方向内方側の面は、軸方向内方に向かって漸次縮径する円錐台側周面形状の軸側軸受外周部56を構成する。
【0056】
スリーブ体50は、軸心線を中心とする略円筒状部50aの上端に環状張出部50bを有し、内周側の上下端部に、軸側軸受外周部56に対応してそれぞれ軸方向内方に向かって縮径する上下一対の互いに逆向きの円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部58を有する。なお、軸側軸受外周部56又はスリーブ側軸受内周部58には、潤滑油Rに対し動圧を発生させるためのへリングボーン溝(図示を略す)が設けられている。
【0057】
スリーブ体50が軸体52に外嵌されて両者の間隙に潤滑油Rが充填されることにより、上下それぞれの軸側軸受外周部56とスリーブ側軸受内周部58の軸受隙間に潤滑油Rが介在して上下一対のコニカル動圧軸受を構成し、高い回転精度を実現する。潤滑油Rの上下の気液界面は、それぞれスリーブ体50の上下端内周部に外周部が固定された環状のシールキャップ60の軸方向内方側の面と軸受部材52bの軸方向外方側の面の間の径方向内方拡開の断面テーパ状の環状間隙に、径方向外方に凹のメニスカスとして形成される。
【0058】
ブラケット40におけるスリーブ体50の外周側には環状の上方突起部40bが形成され、この上方突起部40bに、ステータコアにステータコイルが巻装されてなるステータ42が外嵌固定されている。
【0059】
スリーブ体50には、下端外周に鍔状部62aを有する略円筒状をなすロータハブ62が同軸状に外嵌され、ロータハブ62の上端内周部においてスリーブ体50の環状張出部50bの外周側に固定されている。スリーブ体50の内周部には、ステータ42に対し径方向外方に相対する円筒状のロータマグネット44が内嵌固定されている。
【0060】
スリーブ体50と軸部材52aは、線膨張係数が等しい材料からなり、軸受部材52bは、スリーブ体50に比し線膨張係数が大きい材料からなる。軸受部材52bの内径は、室温付近における寸法が、軸部材52aの外径よりもやや大きいように形成されている。
【0061】
この動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの製造においては、室温又は動圧軸受装置の使用温度域付近において、軸部材52aをスリーブ体50内周部に嵌挿した後、上下軸受部材52bを、それぞれ軸部材52aに対し上下端部から隙間嵌めする。
【0062】
次いで軸体52及びスリーブ体50の温度を昇温させて、スピンドルモータにおける動圧軸受装置の使用温度域よりも高い所定温度とする。その所定温度において、軸部材52aに対し上下軸受部材52bをそれぞれ隙間嵌め状態で軸方向内方に移動させて、上下の軸側軸受外周部56と上下のスリーブ側軸受内周部58を、それぞれ両者が同軸状をなすように当接させ、スリーブ体50における上下のスリーブ側軸受内周部58の間の小径部50cを軸方向に挟むようにする。これにより、軸体52とスリーブ体50の軸方向位置関係を確実に設定することができる。軸受部材52bはスリーブ体50に比し線膨張係数が大きいため、使用温度域よりも高い所定温度においても軸部材52aに対し隙間嵌め状態が保たれ、軸部材52aに対する軸受部材52bの移動により、材料の削れ等により硬質粒子が生じることは防がれる。
【0063】
所定温度での上下軸側軸受外周部56と上下スリーブ側軸受内周部58の当接状態を維持しつつ、上側の軸受部材52bの内周上端部と軸部52a1の外周部並びに下側の軸受部材52bの内周下端部と軸部52a1の外周部をレーザ溶接により接合する。このレーザ溶接により形成された接合部22において軸受部材52bを軸部材52aに固定する。
【0064】
上下の軸受部材52bを軸部材52aに固定した後、軸体52及びスリーブ体50の温度を所定温度から室温又は使用温度域に低下させると、軸受部材52bはスリーブ体50に比し線膨張係数が大きいため、軸受部材52bの方がより収縮し、線膨張係数の差異、所定温度、軸受部材52bの寸法等の設定に応じ、精度良く効率的に上下軸側軸受外周部56と上下スリーブ側軸受内周部58の間にそれぞれ所要の軸受隙間を設けることができる。その軸受隙間に潤滑油Rを充填することにより、上下一対のコニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置が得られる。そのため、コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置を用いた高精度のスピンドルモータを高効率で製造することが可能となる。また、温度上昇により潤滑油Rの粘度が低下する場合に温度補償の効果を奏すること、及び線膨張係数の異なる部材が接合部22において固定された後で温度低下した収縮の痕跡が認められることは、図1の例と同様である。
【0065】
次に、本発明のディスク装置について説明する。
図8に、一般的なディスク装置70の内部構成を模式図として示す。ハウジング71の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板73が装着された本発明のスピンドルモータ72が設置されている。加えてハウジング内部には、ディスク板73に対して情報を読み書きするヘッド移動機構が配置されている。このヘッド移動機構は、ディスク板上の情報を読み書きするヘッド76、このヘッドを支えるアーム75、およびヘッドおよびアームをディスク板上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部74により構成される。
なお、以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はそれらに限定されるものではない。また、以上の実施の形態についての記述における上下位置関係は、単に図に基づいた説明の便宜のためのものであって、実際の使用状態等を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの模式的な要部断面図である。
【図2】コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの製造工程を示す模式的な要部断面図である。
【図3】コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの製造工程を示す模式的な要部断面図である。
【図4】コニカル動圧軸受を備えた動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの製造工程を示す模式的な要部断面図である。
【図5】コニカル動圧軸受を軸方向の2箇所に逆向きに備える動圧軸受装置を用いたスピンドルモータの断面図である。
【図6】従来のコニカル動圧軸受の分解斜視図である。
【図7】図6のコニカル動圧軸受を用いたスピンドルモータの一部切取斜視図である。
【図8】図1のスピンドルモータを用いたディスク装置の模式図である。
【符号の説明】
【0067】
10 ロータハブ
10a 略円筒状部
10b 内方突出部
10c 鍔状部
12 軸体
12a 軸部材
12a1 軸部
12a2 縮径部
12a3 スラスト円板部
12b 軸受部材
14 軸側スラスト環状部
16 軸側軸受外周部
18 スリーブ側軸受内周部
20 スリーブ側スラスト環状部
22 接合部
24 シールキャップ
40 ブラケット
40a 中央嵌合穴
40b 上方突起部
42 ステータ
44 ロータマグネット
50 スリーブ体
50a 略円筒状部
50b 環状張出部
50c 小径部
52 軸体
52a 軸部材
52b 軸受部材
56 軸側軸受外周部
58 スリーブ側軸受内周部
60 シールキャップ
62 ロータハブ
62a 鍔状部
B ベース部材
D ハードディスク
M マグネット
R 潤滑油
S ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心線を中心とする円錐台側周面形状の軸側軸受外周部を備えた軸体と、軸心線を中心とする円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部を備えたスリーブ体の一方に対し他方が同軸状に相対回転し得、前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部が、両者間の軸受隙間に配された潤滑流体を介し径方向に相対して一方に対し他方を回転自在に支持する動圧軸受部を構成する動圧軸受装置を製造する方法であって、
前記軸体は、軸部材と、その軸部材に対し径方向外側に嵌合し且つ軸側軸受外周部を備える環状の軸受部材を有し、その軸受部材は、スリーブ体よりも線膨張係数が大きいものとし、
動圧軸受装置の使用温度域よりも高い所定温度において、スリーブ体内に軸体が嵌挿され且つ前記軸受部材が前記軸部材に隙間嵌めされている状態で、前記軸部材に対し前記軸受部材を相対的に軸方向移動させて前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部を両者が同軸状をなすように当接させ、その当接状態において、前記軸受部材を所定の接合部で軸部材に固定し、
固定後、前記所定温度から温度を低下させることにより前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間を設けることを特徴とする動圧軸受装置の製造方法。
【請求項2】
上記接合部が、上記軸受部材の軸方向のうち上記軸側軸受外周部が拡径している側に位置する請求項1記載の動圧軸受装置の製造方法。
【請求項3】
上記軸部材に対し上記軸受部材を相対的に軸方向移動させて上記軸側軸受外周部と上記スリーブ側軸受内周部を両者が同軸状をなすように当接させ、前記軸受部材と、軸方向において上記スリーブ体に対し前記軸受部材と逆の側に位置する所定部との間に、前記スリーブ体を軸方向に挟み、その状態において、前記軸受部材を所定の接合部において前記軸部材に固定する請求項1又は2記載の動圧軸受装置の製造方法。
【請求項4】
上記所定部が上記軸部材の一部である請求項3記載の動圧軸受装置の製造方法。
【請求項5】
上記動圧軸受装置が、軸方向に相対してスラスト軸受部を構成する軸側スラスト部とスリーブ側スラスト部を、それぞれ上記軸部材及び上記スリーブ体の一部として有し、
上記所定部が前記軸側スラスト部である請求項2記載の動圧軸受装置の製造方法。
【請求項6】
上記軸体が、上記円錐台側周面形状の軸側軸受外周部を互いに逆向きに2箇所に備えると共に、上記スリーブ体が、上記円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部を前記軸側軸受外周部に対応して互いに逆向きに2箇所に備える請求項1、2又は3記載の動圧軸受装置の製造方法。
【請求項7】
上記軸部材に対し径方向外側に嵌合する、互いに逆向きの円錐台側周面形状の軸側軸受外周部をそれぞれ備える2個の環状の軸受部材を有し、前記軸部材に対し前記2個の軸受部材を相対的に軸方向移動させて2箇所の軸側軸受外周部と2箇所のスリーブ側軸受内周部をそれぞれにおいて両者が同軸状をなすように当接させて、前記両軸受部材の間にスリーブ体を軸方向に挟み、その状態において、前記2個の軸受部材をそれぞれ所定の接合部において前記軸部材に固定する請求項6記載の動圧軸受装置の製造方法。
【請求項8】
軸心線を中心とする円錐台側周面形状の軸側軸受外周部を備えた軸体と、軸心線を中心とする円錐台側周面形状のスリーブ側軸受内周部を備えたスリーブ体の一方に対し他方が同軸状に相対回転し得、前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部が、両者間の軸受隙間に配された潤滑流体を介し径方向に相対して一方に対し他方を回転自在に支持する動圧軸受部を構成する動圧軸受装置であって、
前記軸体は、軸部材と、その軸部材に対し径方向外側に嵌合し且つ軸側軸受外周部を備える環状の軸受部材と、軸受部材を軸部材に固定する接合部を有し、前記軸受部材の線膨張係数がスリーブ体の線膨張係数よりも大きく、
動圧軸受装置の使用温度域よりも高い所定温度において、スリーブ体内に軸体が嵌挿され且つ前記軸受部材が前記軸部材に隙間嵌めされている状態で前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部が同軸状に当接した状態において、前記接合部における固定が行われ、前記所定温度からの温度低下により前記軸側軸受外周部と前記スリーブ側軸受内周部の間に所要の軸受隙間が設定されたものであることを特徴とする動圧軸受装置。
【請求項9】
請求項8記載の動圧軸受装置を備えたスピンドルモータ。
【請求項10】
情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク装置において、
ハウジングと、当該ハウジング内部に固定され前記記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記記録媒体の所要の位置に情報を書き込みまたは読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク装置であって、前記スピンドルモータは、請求項9に記載したスピンドルモータであることを特徴とするディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−77825(P2006−77825A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260329(P2004−260329)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】