説明

包装用フィルムの溶断装置及び溶断方法

【課題】低コストで安定した溶断動作を可能とする包装用フィルムの溶断装置及び溶断方法を提供する。
【解決手段】溶断装置は、溶断刃と、溶断刃の上流側に配設され且つ溶断刃よりもフィルム帯状体に向けて突出する上流側フィルム押圧体と、溶断刃の下流側に配設され且つ溶断刃よりもフィルム帯状体に向けて突出する下流側フィルム押圧体と、溶断刃が設置された第1取付部材と、第1取付部材に対して上流側フィルム押圧体をスライド移動可能に支持する第2取付部材と、第1取付部材に対して下流側フィルム押圧体をスライド移動可能に支持する第3取付部材と、第1取付部材と上流側及び下流側のフィルム押圧体との間にそれぞれ介在するとともに、上流側及び下流側のフィルム押圧体をそれぞれフィルム帯状体に向けて付勢する弾性体と、溶断刃をフィルム帯状体に対して接離自在に駆動する駆動源と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、包装用フィルムの溶断装置及び溶断方法に関する。本発明は、詳細には、被包装物の挿入された包装用フィルム帯状体を溶着・溶断する、包装用フィルムの溶断装置及び溶断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトメール等で使用される樹脂フィルム製の封筒は、例えば、ロール状に巻回されたフィルム帯状体を折り畳み装置で折り畳む工程、溶着装置を用いてフィルム帯状体の重ね合わせ部を溶着する工程、溶断装置を用いてフィルム帯状体の下流側を溶着・溶断する工程、被包装物をその中に挿入する工程、及び、溶断装置を用いてフィルム帯状体の上流側を溶着・溶断する工程を繰り返すことにより製造されている。
【0003】
溶断装置を用いてフィルム帯状体を溶着・溶断する場合において、溶着・溶断された直後のフィルム帯状体の端辺は、それ自身が有する熱で熱変形可能であるような高温状態にある。その結果、溶着・溶断された直後のフィルム帯状体の端辺においては、何らかの外力が働くと端辺の溶着部分が剥離しやすい状態になっている。
【0004】
フィルム帯状体に対して接離自在な溶断刃の上流側及び下流側の両方に、フィルム帯状体に対して接離自在なフィルム押圧体を配設して、溶着・溶断する際にフィルム押圧体でフィルム帯状体を押さえ付けることにより、端辺の溶着部分の剥離を防止することができる。すなわち、フィルム押圧体を離間させた状態で搬送すること、フィルム押圧体でフィルム帯状体を圧接すること、溶断刃を用いてフィルム帯状体を溶着・溶断すること、及び、フィルム押圧体を離間させた状態で搬送することにより、溶着・溶断時にフィルム帯状体の上流側及び下流側の両方がフィルム押圧体で押さえ付けられるので、端辺の溶着部分の剥離が防止される。溶断刃とフィルム押圧体とを接離自在に別々に駆動するための駆動源(例えばモータ)を2個使用する構成とするならば、上記フィルム押圧構成を容易に実現することができるものの、コストアップになるという問題がある。
【0005】
これに対して、1つの駆動源(モータ)を使用したフィルム押圧構成として、フィルム帯状体に対して接離自在な溶断刃の上流側及び下流側の両方に、板状の高弾性ゴムからなるフィルム押圧体を配設することを特許文献1が開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−99918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明では、板状の高弾性ゴムからなるフィルム押圧体が溶断刃よりもフィルム側に突出しており、溶断動作を行うときには溶断刃よりも先にフィルム押圧体の先端突出部が内側に弾性的に変形しながらフィルムを押圧する。したがって、特許文献1の発明は、1つの駆動源(モータ)によってフィルムを押圧する構成を実現している。
【0008】
しかしながら、特許文献1のフィルム押圧体では、その先端突出部が外側に向けて先細の傾斜面となるように構成されている。したがって、被包装物の厚みやフィルムとの当接状態に応じて、先端突出部の変形形態が変化するために、押圧状態が不安定で溶断部形成の安定性に欠けるという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献1に開示された高弾性ゴムからなるフィルム押圧体は、高温に加熱された溶断刃の近傍に配置されている。したがって、フィルム押圧体が溶断刃からの高熱の影響を受けるために、フィルム押圧体を構成するゴム材料の熱劣化が発生して、フィルム押圧体が長期間にわたって所望とする押圧性能を維持することが困難であるという問題がある。
【0010】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、低コストで安定した溶断動作を可能とする包装用フィルムの溶断装置及び溶断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の包装用フィルムの溶断装置及び溶断方法が提供される。
【0012】
すなわち、本発明の請求項1に係る包装用フィルムの溶断装置は、
フィルム帯状体に対して熱及び圧力を印加する溶断刃と、
前記溶断刃に対して搬送方向上流側に配設されているとともに前記溶断刃よりも前記フィルム帯状体に向けて突出している上流側フィルム押圧体と、
前記溶断刃に対して搬送方向下流側に配設されているとともに前記溶断刃よりも前記フィルム帯状体に向けて突出している下流側フィルム押圧体と、
前記溶断刃が設置された第1取付部材と、
前記第1取付部材に対して前記上流側フィルム押圧体をスライド移動可能に支持する第2取付部材と、
前記第1取付部材に対して前記下流側フィルム押圧体をスライド移動可能に支持する第3取付部材と、
前記第1取付部材と前記上流側フィルム押圧体との間及び前記第1取付部材と前記下流側フィルム押圧体との間にそれぞれ介在するとともに、前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体をそれぞれ前記フィルム帯状体に向けて付勢する弾性体と、
前記溶断刃が設置された第1取付部材を前記フィルム帯状体に対して接離自在に駆動する駆動源と、を備え、
前記駆動源が作動すると、前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記溶断刃と一体的に前記フィルム帯状体に当接するまで移動し、前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記フィルム帯状体に対して弾性的に当接した後に、前記溶断刃が前記フィルム帯状体に対して当接することにより、被包装物の挿入された包装用フィルム帯状体を溶着・溶断することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に係る包装用フィルムの溶断装置では、
前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体は、剛性を有する金属から構成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3に係る包装用フィルムの溶断装置では、
前記下流側フィルム押圧体において、前記フィルム帯状体に対面する先端部分が丸みを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に係る包装用フィルムの溶断装置では、
前記下流側フィルム押圧体の先端部分が、回転自在の押圧ローラから構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5に係る包装用フィルムの溶断装置では、
前記溶断刃の刃先部は、前記下流側フィルム押圧体の側に偏在配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6に係る包装用フィルムの溶断装置では、
前記駆動源と前記第1取付部材との間は、クランク機構によって連結されており、前記駆動源の回転駆動力により、前記第1取付部材に設置された前記溶断刃が最上位の退避状態と最下位の溶断状態との間を往復移動することを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項7に係る包装用フィルムの溶断方法では、
前記請求項1乃至6のいずれか一つに記載された包装用フィルムの溶断装置を用いて、被包装物の挿入された包装用フィルム帯状体を溶断する溶断方法であって、
前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記フィルム帯状体に対して弾性的に当接するフィルム保持工程と、
前記溶断刃が前記フィルム帯状体に対して当接することにより、被包装物の挿入された前記フィルム帯状体を溶着・溶断するフィルム溶断工程と、
前記溶断刃が前記フィルム帯状体から離間する溶断刃退避工程と、
前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記フィルム帯状体から離間する押圧体退避工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項8に係る包装用フィルムの溶断方法では、
前記フィルム溶断工程の最中に、前記フィルム帯状体を強制的に下流側に移送させる強制移送工程をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る本発明では、単一の駆動源を用いて、上流側フィルム押圧体及び下流側フィルム押圧体のそれぞれが、切断刃から離れた位置にある別体の弾性体を介して、フィルム帯状体を付勢する構成であるので、被包装物の厚みやフィルムとの当接状態や切断刃からの熱の影響を受けにくくなっており、弾性体の付勢力変動を抑制することができる。したがって、低コストで安定した溶断動作が可能であるという効果を奏する。
【0021】
請求項2に係る本発明では、上流側フィルム押圧体及び下流側フィルム押圧体を、樹脂材料やエラストマ材料等よりも優れた耐熱性や剛性を有する金属材料とすることにより、上流側フィルム押圧体及び下流側フィルム押圧体を溶断刃に対して近接配置することができ、溶断装置を小型化することができるという効果を奏する。
【0022】
請求項3に係る本発明では、下流側フィルム押圧体がフィルム帯状体に向けて付勢された状態でフィルム帯状体を搬送方向下流側に強制的に移送させる場合に、下流側フィルム押圧体の先端部分での引っ掛かりが少なくなり、フィルム帯状体を搬送方向下流側にスムーズに移送させることができるとともに、移送中のフィルム帯状体への傷の発生も防止できるという効果を奏する。
【0023】
請求項4に係る本発明では、下流側フィルム押圧体がフィルム帯状体に向けて付勢された状態でフィルム帯状体を搬送方向下流側に強制的に移送させる場合に、下流側フィルム押圧体の先端部分での引っ掛かりがさらに少なくなり、フィルム帯状体を搬送方向下流側にさらにスムーズに移送させることができるとともに、移送中のフィルム帯状体への傷の発生も防止できるという効果を奏する。
【0024】
請求項5に係る本発明では、下流側フィルム押圧体がフィルム帯状体に向けて付勢された状態でフィルム帯状体を搬送方向下流側に強制的に移送させる場合に、フィルム帯状体が下流側フィルム押圧体を通過する際にフィルム帯状体の溶断部が素早く平坦化且つ冷却化される。その結果、溶断部がさらに強固に密着するので、溶断部の剥離防止をさらに高めるという効果を奏する。
【0025】
請求項6に係る本発明では、溶断刃が退避状態あるいは溶断状態となるように溶断刃の位置決め制御が容易であるという効果を奏する。
【0026】
請求項7に係る本発明では、低コストで安定した溶断動作が可能である溶断方法を提供するという効果を奏する。
【0027】
請求項8に係る本発明では、フィルム溶断工程中という流動性の高いフィルム帯状体を強制的に下流側に移送させると、フィルム帯状体がスムーズに溶断されるために、フィルム帯状体の溶断部の仕上がりが良好であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る包装用フィルムの溶断装置を含む包装装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した包装装置のII−II線断面図である。
【図3A】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3B】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3C】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3D】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3E】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3F】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3G】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3H】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3I】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3J】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3K】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3L】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3M】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3N】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図3O】図1に示した包装装置の動作を説明する概略図である。
【図4】本発明に係る包装用フィルムの溶断装置を示す正面図である。
【図5】図4に示した溶断装置のV−V線断面図である。
【図6】図4に示した溶断装置のVI−VI線断面図である。
【図7】図4に示した溶断装置の斜視図である。
【図8】図4に示した溶断装置を背面方向から見た斜視図である。
【図9】図7に示した溶断装置から下側座板部及び下側側フレーム部を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図10】図8に示した溶断装置から下側座板部及び下側側フレーム部を取り除いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る包装用フィルムの溶断装置50及び溶断装置50を含む包装装置10について説明する。説明の都合上、被包装物110の搬送方向Xの上流側を「前方」又は単に「前」、下流側を「後方」又は単に「後」として呼ぶことがある。
【0030】
図1は、本発明に係る包装装置10の斜視図である。図1に示すように、包装装置10の下部には、被包装物110を包装する樹脂製(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる)のフィルム帯状体101が巻回されたシートロール100が載置される、ロール載置部11が配置されている。包装装置10の上部には、前方から後方に向かって順に、被包装物110が載置される供給部12、被包装物110がフィルム帯状体101で包装される包装部13、被包装物110が包装された包装体1が排出される排出部14が配置されている。また、包装装置10内には、包装装置10を構成する各ユニットの動作を制御する制御手段(図示せず)が配置されている。
【0031】
すなわち、制御手段としてのCPU(中央処理演算装置)は、入力操作部や出力表示部が配置された操作パネルや、各ユニットの動作を制御する制御プログラム等を記憶したROM(リード・オンリー・メモリ:フラッシュROM)や、種々のデータを一時的に記憶するRAM(ランダム・アクセス・メモリやハードディスク)や、各種の入出力装置等の動作を制御する。
【0032】
ロール載置部11は、支持ローラ111及び支持ローラ112を備えている。支持ローラ111及び支持ローラ112は、それぞれ、円柱形状であって、包装装置10のフレーム10aに回転自在に支持されている。支持ローラ111は、駆動ローラとしての支持ローラ112にタイミングベルトで連動連結されており、支持ローラ112の回転に連動して同じ方向に回転するように、フレーム10aに支持されている。シートロール100は、支持ローラ111及び支持ローラ112によって回転自在に支持されており、支持ローラ112の後上方から1枚の帯状のフィルム帯状体101が上方に引き出されるようになっている。
【0033】
供給部12は、被包装物110が載置される供給台121と、被包装物110の両側縁を規制する側板122と、を備えている。供給台121に載置された被包装物110は、側板122によって両側縁が規制され、包装部13に送られる。本実施形態では、被包装物110は手動で包装部13に送られるようになっているが、自動供給機構を備えていても良い。供給部12は、包装装置10のフレーム10aに対して、着脱可能に構成されている。
【0034】
排出部14は、包装部13において形成された包装体1が載置される排出台141と、排出台141を水平に保持する保持部材142と、を備えている。保持部材142は、排紙台141を保持する状態と保持しない状態とに変更可能となっており、保持部材142が排紙台141を保持しない状態においては、排紙台141は、その下面がフレーム10aに接するように、フレーム10aに折り畳まれるようになっている。
【0035】
図2は、図1のII−II断面図である。包装装置10の上方に配置される包装部13は、前方から後方に向かって順に、フィルム折り部材21と、溶着ユニット30と、第1搬送ユニット40と、溶断ユニット50と、第2搬送ユニット60と、を備えている。溶着ユニット30や第1搬送ユニット40や溶断ユニット50や第2搬送ユニット60は、同一又は類似した形状をしている。上方に配置された包装部13の全体が包装装置10のフレーム10aに対して開閉自在に構成されている(例えば、包装部13がヒンジによって回動自在に支持されている)ので、万が一、フィルム帯状体101や包装体1が搬送経路の中で詰まっても、包装部13を開くことで容易に取り除くことができる。また、各ユニットの点検や交換・保守も容易である。
【0036】
フィルム折り部材21は、フィルム帯状体101の左右の側端部を折り返し、側端部同士が重ね合わされた折り合わせ部を形成するようになっている。溶着ユニット30は、フィルム帯状体101の折り合わせ部に加熱された溶着ローラ(溶着部材)31を押し付け、折り合わせ部のフィルム帯状体101を溶かすことによって、X方向に接着するようになっている。第1搬送ユニット40は、折り合わせ部が溶着されたフィルム帯状体101を後方に搬送し、溶断ユニット50に送るようになっている。溶断ユニット50は、加熱された溶断刃によって、折り合わせ部が溶着されたフィルム帯状体101をX方向に対して直交する方向(Y方向)に溶着・溶断し、後端部及び前端部が封止された包装体1を形成するようになっている。第2搬送ユニット60は、封止された包装体1を排出部14に送るようになっている。
【0037】
図3A乃至図3Oは、フィルム折り部材21を除く包装部13の動作を説明する概略図である。以下、図3A乃至図3Oを用いて、包装部13の動作プロセスの概要を説明する。なお、図A乃至図3Fは、フィルム帯状体101によって被包装物110を包装する前の準備動作を説明する図面であり、図3G乃至図3Oは、フィルム帯状体101によって被包装物110を包装する包装動作を説明する図面である。
【0038】
図3Aに示されるように、フィルム折り部材21によって側端部同士が重ねられ折り合わせ部が形成されたフィルム帯状体101は、包装部13の搬送面131に配置される。
【0039】
次に、図3Bに示されるように、第1搬送ユニット40の第1従動ローラ41が下方に移動し、フィルム帯状体101は、第1従動ローラ41及び第1駆動ローラ42によって挟持される。その後、折り合わせ部の溶着を行うために、溶着ユニット30の溶着ローラ31が下方に移動し、フィルム帯状体101に接する。そして、溶着ローラ31が折り合わせ部を溶着すると同時に、折り合わせ部が溶着されたフィルム帯状体101は、第1従動ローラ41及び第1駆動ローラ42によって挟持されながら後方に搬送される。ここで、第1駆動ローラ42は、第1従動ローラ41よりも大径であり、反時計方向に回動する。
【0040】
フィルム帯状体101が一定量だけ後方に搬送されると、図3Cに示されるように、第2搬送ユニット60の従動ローラ61が下方に移動し、フィルム帯状体101は、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によって挟持され、その後、第1従動ローラ41が上方に移動する。そして、フィルム帯状体101は、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によって挟持されながら後方に搬送される。ここで、第2駆動ローラ62は、第2従動ローラ61よりも大径であり、反時計方向に回動する。
【0041】
次に、折り合わせ部の溶着が完了すると、図3Dに示されるように、溶着ローラ31が上方に移動し、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62は、フィルム帯状体101の搬送を停止する。そして、溶断ユニット50の溶断部材51が下方に移動し、フィルム帯状体101を溶断して、フィルム帯状体101の後端封止部(搬送方向下流側の封止部)が形成される。
【0042】
次に、図3Eに示されるように、溶断部材51が上方に移動し、その後、図3Fに示されるように、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62が溶断されたフィルム帯状体101の搬送方向下流側の部分(不要なフィルムシート体)を後方に搬送する。溶断されたフィルム帯状体101の搬送方向下流側の部分(不要なフィルムシート体)が、除去される。そして、第2従動ローラ61が上方に移動する。これにより、フィルム帯状体101によって被包装物110を包装する前の準備動作が完了する。
【0043】
次に、図3Gに示されるように、被包装物110が、フィルム帯状体101内に挿入される。そして、センサ52が被包装物110の後端部(搬送方向下流側の端部)を検知すると、図3Hに示されるように、第1従動ローラ41が下方に移動し、被包装物110が挿入された状態のフィルム帯状体101は、第1従動ローラ41及び第1駆動ローラ42によって挟持される。
【0044】
次に、図3Iに示されるように、溶着ローラ31が下方に移動し、フィルム帯状体101に当接する。そして、溶着ローラ31が折り合わせ部を溶着すると同時に、包装体110が挿入されて折り合わせ部が溶着されたフィルム帯状体101は、第1従動ローラ41及び第1駆動ローラ42によって挟持されながら後方に搬送される。
【0045】
図3Jに示されるように、被包装物110が挿入されたフィルム帯状体101が一定量だけ後方に搬送されると、図3Kに示されるように、第2従動ローラ61が下方に移動し、フィルム帯状体101は、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によって挟持され、その後、第1従動ローラ41が上方に移動する。そして、包装体110が挿入されたフィルム帯状体101は、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によって挟持されながら後方に搬送される。
【0046】
次に、センサ52が被包装物110の前端部(搬送方向上流側の端部)を検知すると、図3Lに示されるように、被包装物110が挿入されたフィルム帯状体101は、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によってさらに一定距離だけ後方に搬送され、被包装物110の前端部が溶断部材51の後方に位置する。それと同時に、溶着ローラ31が上方に移動する。
【0047】
次に、図3Mに示されるように、溶断部材51が下方に移動し、被包装物110が挿入されたフィルム帯状体101を溶断して、フィルム帯状体101の前端封止部(搬送方向上流側の封止部)が形成される。その結果、被包装物110がフィルム帯状体101で封止・包装された包装体が形成される。それと同時に、被包装物110が挿入されていないフィルム帯状体101の後端封止部も形成される。
【0048】
次に、図3Nに示されるように、包装体1は、第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によって挟持されながら後方に搬送される。そして、図3Oに示されるように、第2従動ローラ61が上方に移動する。
【0049】
以後、図3G乃至図3Oの動作を繰り返すことによって、包装体1が形成される。
【0050】
次に、本発明の一実施形態に係る包装用フィルムの溶断ユニット(溶断装置)50の構成について、図4乃至図10を参照しながら詳細且つ具体的に説明する。
【0051】
図4において、溶断ユニット(溶断装置)50は、駆動モータ200の取り付けられた上ユニット225と、フィルム帯状体101を溶着・溶断するための溶断部材51と、溶断部材51の取り付けられた下ユニット235と、駆動モータ200の回転駆動力を従動シャフト205に伝える駆動力伝達機構と、駆動モータ200の回転駆動力を下ユニット235の上下駆動力に変換する駆動力変換機構と、を備えている。溶断ユニット(溶断装置)50において、下ユニット235が上ユニット225に対して上下に滑動自在に支持されている。
【0052】
上ユニット225は、駆動源としての駆動モータ200と、上側座板部220と、上側側フレーム部221と、内側ガイドレール224を有する左右一対の内側支柱部材222と、を備える。上側座板部220及び上側側フレーム部221が、ビス等により左右の内側支柱部材222に固着されている。駆動モータ200が上側座板部220の上面にビス等で取り付けられている。駆動モータ200は、例えば、駆動パルスの数に比例して回転量が規定されるステッピングモータや、エンコーダによって回転量が検出されるサーボモータである。また、従動シャフト205を回動自在に支持する支持部材207が、上側座板部220の下面にビス等で取り付けられている。駆動モータ200の駆動シャフト201に取り付けられたプーリ203と、従動シャフト205に取り付けられたプーリ206とが、上側座板部220に形成された開口に挿通された無端ベルト203を介して、連結されていて、駆動モータ200の回転駆動力が従動シャフト205に伝達される。したがって、プーリ203とプーリ206と無端ベルト203とにより、駆動力伝達機構が構成されている。
【0053】
従動シャフト205の両端には、偏心カム210がそれぞれ取り付けられている。各偏心カム210には、連結アーム211の一端がそれぞれ回転自在に取り付けられている。連結アーム211の他端は、L字状に折り曲げられた継手部材212に回転自在に取り付けられている。したがって、偏心カム210と連結アーム211と継手部材212とからなるクランク機構により、駆動力伝達機構を介して駆動モータ200に接続された従動シャフト205と、下ユニット235の継手部材212とが、連結されている。駆動力変換機構としての当該クランク機構により、駆動モータ200の回転駆動力を下ユニット235の上下駆動力に変換することができる。
【0054】
下ユニット235は、溶断刃250及び一対のフィルム押圧体240,245を備える溶断部材51と、下側座板部230と、下側側フレーム部231と、外側ガイドレール234を有する左右一対の外側支柱部材232と、を備える。下側座板部230及び下側側フレーム部231が、ビス等により左右の外側支柱部材232に固着されている。ビス等を取り外すことにより、溶断部材51等が取り付けられた下側座板部230及び下側側フレーム部231を1つのかたまりとして左右の外側支柱部材232から取り外すことができる。したがって、溶断部材51等を含む溶断ユニット50の点検や交換・保守が容易である。下側座板部230及び下側側フレーム部231は、第1取付部材を構成する。継手部材212が、下側座板部230の上面にビス等で取り付けられている。溶断刃250の上ブロック251を支持する複数の支持部材259が、下側座板部230の下面にビス等で取り付けられている。
【0055】
内側支柱部材222の内側ガイドレール224と外側支柱部材232の外側ガイドレール234とが摺動自在に係合して、外側支柱部材232が内側支柱部材222に対して上下にスライド移動することができるように構成されている。また、最上位検出センサとしてのフォトセンサ209が、下側座板部230の上面にビス等で取り付けられている。フォトセンサ209は、例えば一対の発光部と受光部とを備えている。図示した例では、発光部から放射された光が、上側座板部220の下面に取り付けられた支持部材207の下部で遮光されて受光部で受光できなくなることにより、下ユニット235の最上位の退避状態が検出される。そして、フォトセンサ209は、下ユニット235が最上位の退避状態にあるという電気信号を発する。
【0056】
駆動モータ200が回動すると、無端ベルト203を介して従動シャフト205が回動する。従動シャフト205が回動すると、偏心カム210及び連結アーム211を介して、下ユニット235が上下にスライド移動する。下ユニット235においては、後述するように、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が、複数の圧縮バネ248等を介して、溶断部材51と一体的に連結されている。図示した例では、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245のそれぞれに対して、2個の圧縮バネ248が離間して配置されている。弾性体としての圧縮バネ248は、好適には、高温でもへたりの少ない、耐熱性や剛性に優れた金属材料(例えばピアノ線やステンレス鋼線)から構成されている。したがって、駆動モータ200が回動すると、下ユニット235は、最上位の退避状態と最下位の溶断状態との間を往復移動する。すなわち、駆動モータ200の回動により、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が、溶断部材51と一体的にフィルム帯状体101に対する接離(当接・離間)動作を行う。
【0057】
溶断刃250は、支持部材259で支持される上ブロック251と、下ブロック252と、上ブロック251及び下ブロック252をまたぐように溶断刃250の大略中央に形成された挿入穴の中に装填されたヒータ(例えば、シーズヒータ)255と、を備える。一対のリード線256により、ヒータ255への電力供給が行われる。上ブロック251及び下ブロック252は、熱伝導性や耐熱性や剛性に優れた金属材料(例えばステンレス)から構成されている。
【0058】
下ブロック252は、その下面において、下方に向けて先細に突出した刃先部253を有する。刃先部253は、下流側フィルム押圧体245の側(搬送方向下流側)に偏在配置されている。刃先部253は、上流側が傾斜面であって下流側が垂直面であるような断面視略直角三角形をした形状を有する。加熱された溶断部材51の刃先部253がフィルム帯状体101に当接することにより、フィルム帯状体101における刃先部253との接触部分が溶着・溶断されて溶断状態になる。下流側フィルム押圧体245がフィルム帯状体101に向けて付勢された状態でフィルム帯状体101を搬送方向下流側に強制的に移送させる場合に、フィルム帯状体101が下流側フィルム押圧体245を通過する際にフィルム帯状体101の溶断部が下流側フィルム押圧体245で素早く平坦にされるとともに冷却される。その結果、溶断部がさらに強固に密着するので、溶断部の剥離防止をさらに高めることができる。
【0059】
溶断刃250の上流側及び下流側には、それぞれ、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が配設されている。図5,6に示すように、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の下端は、溶断刃250の刃先部253に対して下方に僅かに突出している。上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245は、熱伝導性や耐熱性や剛性に優れた金属材料(例えばステンレス)から構成されているので、フィルム帯状体101を安定して押圧することができる。
【0060】
上流側の下側側フレーム部231の内側には、板状の上流側フィルム押圧体240が下側側フレーム部231の内面に沿って摺動可能に並設されている。上流側フィルム押圧体240は、円筒形の圧縮バネ248の一部分を受け入れるように形成された切欠247を複数個(図8,10では、2個が図示されている)有する。各切欠247の下部には、円筒形の圧縮バネ248の下端と係合するように上向きに突出した係合部が形成されている。また、下側側フレーム部231は、切欠247と対応する位置において、円筒形の圧縮バネ248を受け入れるように形成された開口窓229を有する。各開口窓229の上部には、円筒形の圧縮バネ248の上端と係合するように下向きに突出した係合部が形成されている。すなわち、切欠247が開口窓229に重なり合って、円筒形の圧縮バネ248が、切欠247の係止部と、開口窓229の係止部と、の間で係止するように、円筒形の圧縮バネ248が上流側フィルム押圧体240と下側側フレーム部231との間に介在配置されている。その結果、上流側フィルム押圧体240が下側側フレーム部231に対して上向きに移動すると、上流側フィルム押圧体240の切欠247が円筒形の圧縮バネ248を圧縮することになるので、上流側フィルム押圧体240を下向きに押圧する付勢力が発生する。
【0061】
また、上下方向に延びる長穴237aが上流側の下側側フレーム部231に形成されているとともに、長穴237aと摺動可能に係合するガイド突起238aが上流側フィルム押圧体240に対して複数個(図8,10では、3個が図示されている)取り付けられている。ガイド突起238aが長穴237aに沿って係合しながら上下にスライド移動することにより、上流側フィルム押圧体240が上流側の下側側フレーム部231に対して上下にスライド移動することができる。したがって、搬送方向上流側に位置する長穴237a及びガイド突起238aが、第2取付部材を構成する。なお、長穴237aの上下方向の長さは、上流側フィルム押圧体240のスライド移動可能量(ストローク)を規定し、ガイド突起238a及び長穴237aの組合せは、上流側フィルム押圧体240の可動範囲を規制するストッパー的な働きも有する。
【0062】
そして、上流側フィルム押圧体240と下側側フレーム部231との間に介在配置された圧縮バネ248により付勢力が発生する。下ユニット235が下方にスライド移動して上流側フィルム押圧体240がフィルム帯状体101に圧接するようになったとき、上流側フィルム押圧体240は、下側側フレーム部231に対して相対的に上方にスライド移動する。このとき、圧縮バネ248が圧縮されて、その圧縮に抗する付勢力が発生する。当該付勢力は、上流側フィルム押圧体240を下向きに押圧する。したがって、上流側フィルム押圧体240の下端がフィルム帯状体101に当接する当接状態になったあと、相対的に上向きにさらにスライド移動すると、そのスライド移動量に比例して発生する付勢力により、上流側フィルム押圧体240の下端がフィルム帯状体101に圧接する圧接状態になる。当該圧接状態では、剛体からなる上流側フィルム押圧体240が自己変形することなく圧縮バネ248による付勢力をフィルム帯状体101に印加するものの、溶断部材51がフィルム帯状体101に対して非接触である。なお、下ユニット235が上方にスライド移動して上流側フィルム押圧体240がフィルム帯状体101に圧接することを止めると、圧縮バネ248の付勢力により、上流側フィルム押圧体240が当接待機状態に戻る。
【0063】
また、下流側の下側側フレーム部231の内側には、可動側板244が下側側フレーム部231の内面に沿って摺動可能に並設されている。可動側板244の左右の端部には、それぞれ、軸支部材242が取り付けられている。フィルム押圧ローラ243が、左右の軸支部材242によって軸支されている。したがって、可動側板244と左右の軸支部材242とフィルム押圧ローラ243とにより、下流側フィルム押圧体245が構成されている。図示した実施形態では、下流側フィルム押圧体245は、フィルム押圧ローラ243を用いている。その代わりに、下流側フィルム押圧体245は、上流側フィルム押圧体240のような板状体を用いることもできるが、上流側フィルム押圧体240のような板状体において、フィルム帯状体101に対面する先端部分が丸みを有する構成とすることが好適である。
【0064】
下流側フィルム押圧体245において、フィルム帯状体101に対面する先端部分が丸みに有する構成は、フィルム帯状体101が下流側フィルム押圧体245によって付勢された状態でフィルム帯状体101を搬送方向下流側に強制的に移送させる場合に、下流側フィルム押圧体245の先端部分での引っ掛かりが少なくなり、フィルム帯状体101を搬送方向下流側にスムーズに移送させることができるとともに、移送中のフィルム帯状体101への傷の発生も防止できる。そして、下流側フィルム押圧体245において、フィルム帯状体101に対面する先端部分にフィルム押圧ローラ243を配設する構成は、同様のフィルム帯状体101の搬送方向下流側への強制移送時において、フィルム押圧ローラ243での引っ掛かりがさらに少なくなり、フィルム帯状体101を搬送方向下流側にさらにスムーズに移送させることができるので、さらに好適である。
【0065】
可動側板244は、圧縮バネ248の一部分を受け入れるように形成された切欠247を複数個(図7,9では、2個が図示されている)有する。各切欠247の下部には、圧縮バネ248の下端と係合するように上向きに突出した係合部が形成されている。また、下側側フレーム部231は、切欠247と対応する位置において、圧縮バネ248を受け入れるように形成された開口窓229を有する。各開口窓229の上部には、圧縮バネ248上端と係合するように下向きに突出した係合部が形成されている。すなわち、切欠247が開口窓229に重なり合って、圧縮バネ248が、切欠247の係止部と、開口窓229の係止部と、の間で係止するように、圧縮バネ248が可動側板244と下側側フレーム部231との間に介在配置されている。その結果、可動側板244が下側側フレーム部231に対して上向きに移動すると、可動側板244の切欠247が圧縮バネ248を圧縮することになるので、可動側板244すなわち下流側フィルム押圧体245を下向きに押圧する付勢力が発生する。
【0066】
また、上下方向に延びる長穴237bが下流側の下側側フレーム部231において複数個形成されているとともに、対応する長穴237bと摺動可能に係合するガイド突起238bが可動側板244に対して複数個(図7,9では、3個が図示されている)取り付けられている。対となるガイド突起238bが長穴237bに沿って係合しながら上下にスライド移動することにより、可動側板244が下流側の下側側フレーム部231に対して上下にスライド移動することができる。したがって、搬送方向下流側に位置する長穴237b及びガイド突起238bが、第3取付部材を構成する。なお、長穴237bの上下方向の長さは、可動側板244すなわち下流側フィルム押圧体245のスライド移動可能量(ストローク)を規定する。また、一対のガイド突起238b及び長穴237bの組合せは、下流側フィルム押圧体245の可動範囲を規制するストッパー的な働きも有する。
【0067】
上述したように、可動側板244と下側側フレーム部231との間に介在配置された圧縮バネ248により、付勢力が発生する。下ユニット235が下方にスライド移動して下流側フィルム押圧体245がフィルム帯状体101に圧接するようになったとき、可動側板244は、下側側フレーム部231に対して相対的に上方にスライド移動することになる。このとき、圧縮バネ248が圧縮されて、その圧縮に抗する付勢力が発生する。当該付勢力は、可動側板244を下向きに押圧する。したがって、下流側フィルム押圧体245のフィルム押圧ローラ243がフィルム帯状体101に当接する当接状態になったあと、相対的に上向きにさらにスライド移動すると、そのスライド移動量に比例して発生する付勢力により、下流側フィルム押圧体245のフィルム押圧ローラ243がフィルム帯状体101に圧接する圧接状態になる。当該圧接状態では、剛体からなる下流側フィルム押圧体245が自己変形することなく圧縮バネ248による付勢力をフィルム帯状体101に印加するものの、溶断部材51がフィルム帯状体101に対して非接触である。なお、下ユニット235が下方にスライド移動して下流側フィルム押圧体245がフィルム帯状体101に圧接することを止めると、圧縮バネ248の付勢力により、下流側フィルム押圧体245が当接待機状態に戻る。
【0068】
長穴237a,237bの上下方向の長さを、刃先部253に対する上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の両下端の下方突出量よりも大きくすることにより、刃先部253がフィルム帯状体101に確実に当接することになる。
【0069】
なお、圧縮バネ248が開口窓229から露出すること及び/又は圧縮バネ248が溶断刃250から空間的に離間していることにより、圧縮バネ248が冷却されやすくなり、圧縮バネ248が溶断刃250からの熱の影響を受けにくくなり、圧縮バネ248の付勢力の変動や熱劣化を防止することができる。
【0070】
上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が複数の圧縮バネ248等を介して溶断部材51と一体的に連結された下ユニット235が取り得る状態を整理すると、上方から下方に向けて順に、フィルム帯状体101との衝突を回避するための最上位の退避状態と、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の下端がフィルム帯状体101に対して非接触である当接待機状態と、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の下端がフィルム帯状体101に対して当接する当接状態と、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が自己変形することなく圧縮バネ248による付勢力をフィルム帯状体101に印加しつつ溶断部材51がフィルム帯状体101に対して非接触である圧接状態と、溶断部材51がフィルム帯状体101を溶着・溶断する最下位の溶断状態と、になる。なお、最下位の溶断状態では、溶断部材51の刃先部253がプラテンに当接する位置に位置決めされており、フィルム帯状体101が介在する溶断時にはフィルム帯状体101の厚みの分だけ僅かにフィルム帯状体101を加圧する状態になっている。
【0071】
駆動モータ200の回転駆動力により、下ユニット235が上下にスライド移動する。駆動モータ200が単純に一方向に回転するだけであるので、駆動モータ200が回転すると、下ユニット235が下方にスライド移動して、下ユニット235が、順に、最上位の退避状態、当接待機状態、当接状態、圧接状態、及び、最下位の溶断状態の各状態を取り、そのあと続けて、最下位の溶断状態にある下ユニット235が上方にスライド移動して、圧接状態、当接状態、当接待機状態、及び、最上位の退避状態の各状態を取ることになる。したがって、上記5つの状態を順に取ることを単純に繰り返すだけであるので、駆動モータ200の制御が簡単である。
【0072】
他方、駆動モータ200は、上述したように、例えば、ステッピングモータやサーボモータのような駆動源であるので、駆動シャフト201や従動シャフト205の回転量を制御することが容易である。したがって、変形例として、駆動モータ200の回転量を制御して、駆動モータ200をある方向に回転させて、下ユニット235が、順に、最上位の退避状態、当接待機状態、当接状態、圧接状態、及び、最下位の溶断状態の各状態を取るようにしたあと、駆動モータ200の回転方向を逆にして、最下位の溶断状態にある下ユニット235が、順に、圧接状態、当接状態、当接待機状態、及び、最上位の退避状態の各状態を取るように構成することもできる。
【0073】
図3A乃至図3Oを参照しながら、包装部13の全体的な動作プロセスをすでに説明したが、図3K乃至図3Nを参照しながら、包装用フィルムの溶断ユニット(溶断装置)50に関する動作プロセスを簡単に説明する。
【0074】
図3Kに示されるように、第1搬送ユニット40と溶断ユニット50との間に配置されたセンサ52が、フィルム帯状体101に挿入された被包装物110を検出している。そして、センサ52が、フィルム帯状体101に挿入された被包装物110の前端部を検知すると、被包装物110が挿入されたフィルム帯状体101は、第2搬送ユニット60の第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によってさらに所定距離だけ搬送方向下流側に搬送されて、図3Kに示されるように、所定の溶断状態で停止する。このとき、溶断ユニット50の溶断部材51が、最上位の退避状態にあるとともに、被包装物110の前端部よりも搬送方向下流側に位置している。第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62によるフィルム帯状体101の搬送が終了するのと同時に、溶着ローラ31が上方に移動することにより、溶着ローラ31によるフィルム帯状体101の過熱を防止する。
【0075】
次に、溶断ユニット50の駆動モータ200が回動すると、上述した駆動力伝達機構及びクランク機構が作動して、溶断ユニット50のうち、最上位の退避状態にある下ユニット235の溶断部材51が、図3Lに示されるように、フィルム帯状体101に向けて下方に移動する。このとき、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が、溶断刃250と一体的にフィルム帯状体101に向けて下方に移動する。
【0076】
溶断部材51が、図3Mに示される溶断状態に至る過程で、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の下端が、溶断刃250の刃先部253よりも先にフィルム帯状体101に当接する当接状態になる。上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245によるフィルム帯状体101への当接から、溶断刃250によるフィルム帯状体101への当接までの圧接状態の間は、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245からの付勢力でフィルム帯状体101が押さえ付けられた緊張状態にある。すなわち、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245によって、フィルム帯状体101が引き伸ばされた緊張状態にあって、フィルム帯状体101の動きが制限されている。したがって、溶断刃250の刃先部253がフィルム帯状体101に当接する直前にシワが発生することを防止することができる。
【0077】
駆動モータ200の回動がさらに進むと、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の下端が溶断刃250の刃先部253の下端と同じ高さとなる最下位の溶断状態に至るまで、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245がさらに下方に移動する。このとき、圧縮バネ248の圧縮により、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245を下向きに押圧する付勢力が発生するので、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の下端が、フィルム帯状体101に対して圧接する。フィルム帯状体101は、溶断刃250の刃先部253の熱及び圧力を受けて、熱的に溶着されるとともに溶断される。当該溶着・溶断の動作により、フィルム帯状体101の前端封止部が形成される。その結果、被包装物110がフィルム帯状体101の中に封止・包装された包装体1が作成される。前端封止部の形成と同時に、被包装物110が挿入されていないフィルム帯状体101の後端封止部も形成される。
【0078】
ところで、上記の溶着・溶断動作の最中に、フィルム帯状体101を強制的に下流側に移送させることが好ましい。溶着・溶断されている最中のフィルム帯状体101が、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245で付勢されている状態で、フィルム帯状体101を強制的に下流側に移送させると、フィルム帯状体101の前端封止部(溶断部)の仕上がりが良好になる。これは、溶着・溶断中という流動性の高い溶融状態にある前端封止部(溶断部)を有するフィルム帯状体101が、強制的に下流側に移送されることにより、フィルム帯状体101が、スムーズに溶断されるからである。また、搬送されるフィルム帯状体101が下流側フィルム押圧体245の下端とプラテンとの隙間を通過する際に、フィルム帯状体101の溶断部が素早く平坦化且つ冷却される。その結果、溶断部がさらに強固に接着するので、溶断部の剥離防止をさらに高めることができる。
【0079】
なお、フィルム帯状体101を強制的に下流側に移送させる場合、下流側フィルム押圧体245の下端が丸みを有する場合には、下流側フィルム押圧体245による下向きの付勢力にもかかわらず、下流側に搬送されるフィルム帯状体101を、傷が付くこと無くスムーズに移送させることができる。特に、下流側フィルム押圧体245の下端にフィルム押圧ローラ243が配設されている場合には、下流側に搬送されるフィルム帯状体101を傷が付くこと無くさらにスムーズに移送させることができる。
【0080】
フィルム帯状体101の溶着・溶断が終了すると、駆動モータ200の回動が進み、最下位の溶断状態にある下ユニット235のうち溶断部材51が、フィルム帯状体101から離間するように上方に移動する。このとき、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が、溶断刃250と一体的にフィルム帯状体101から離間するように上方に移動する。
【0081】
溶断部材51が図3Nに示される最上位の退避状態に至る過程で、溶断刃250の刃先部253は、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の下端よりも先にフィルム帯状体101から離間する。
【0082】
下ユニット235の溶断部材51が、図3Nに示された最上位の退避状態に至ると、フォトセンサ209の発光部からの光が、上ユニット225の上側座板部220の下面にビス等で取り付けられた支持部材207で遮光されることにより、下ユニット235の溶断部材51が最上位の退避状態にあることが検出される。そして、フォトセンサ209は、溶断部材51が最上位の退避状態に位置することを知らせる信号を発する。当該信号により、第2駆動ローラ62の駆動が開始する。
【0083】
被包装物110がフィルム帯状体101で封止・包装された包装体1は、第2搬送ユニット60の第2従動ローラ61及び第2駆動ローラ62で挟持されながら、搬送方向下流側に搬送され、排出部14の排出台12の上に載置される。その後、図3Oに示されるように、第2搬送ユニット60の第2従動ローラ61が上方に移動する。溶断ユニット50の搬送方向上流側には、後端封止部を有するとともに被包装物110が挿入されていないフィルム帯状体101が次の溶断動作の開始を待っている。
【0084】
上述したように、本発明の溶断装置50によれば、単一の駆動モータ200を用いながら、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245が、切断刃250から離れた位置にある別体の圧縮バネ248を介して、フィルム帯状体101を付勢する構成であるので、被包装物110すなわち包装体1の厚みやフィルムとの当接状態や熱の影響を受けにくくなっており、圧縮バネ248の付勢力変動を抑制することができる。したがって、低コストで安定した溶断動作が可能になっている。
【0085】
上記実施形態では、上流側と下流側とで同じバネ定数を有する圧縮バネ248を用いるとともに、下流側フィルム押圧体245の下端が丸みを有する構成となっている。したがって、上流側フィルム押圧体240及び下流側フィルム押圧体245の付勢力が同じであるにもかかわらず、溶着・溶断中のフィルム帯状体101を下流側フィルム押圧体245から引き出しやすくなっている。
【0086】
しかしながら、変形例として、上流側の圧縮バネ248よりも下流側の圧縮バネ248のバネ定数を小さくすることにより、上流側フィルム押圧体240の付勢力よりも下流側フィルム押圧体245の付勢力を小さくした構成にすることもできる。このとき、下流側フィルム押圧体245の下端は、丸みを持った湾曲面であってもよいし、平坦面であってもよい。別の変形例として、刃先部253に対する上流側フィルム押圧体240の下端の下方突出量を、刃先部253に対する下流側フィルム押圧体245の下端の下方突出量より大きくするとともに、上流側と下流側とで同じバネ定数を有する圧縮バネ248を用いることにより、上流側フィルム押圧体240の付勢力よりも下流側フィルム押圧体245の付勢力を小さくした構成にすることもできる。いずれの変形例においても、低コストで安定した溶断動作が可能である。
【0087】
好適な実施形態として、電気的に精密に制御且つ駆動されるとともに装置の小型化に寄与する駆動モータ200(ステッピングモータやサーボモータ)を駆動源として説明したが、変形例として、空気等の流体圧で駆動される流体シリンダを駆動源として用いる構成にすることも可能である。この場合、流体シリンダのピストンが上下動するので、溶断部材51の設置された下ユニット235を、直接にあるいはクランク機構を介して間接的に、上下にスライド駆動する態様となる。
【0088】
また、本発明の好ましい実施形態として、フィルム帯状体101が水平方向に搬送される水平搬送タイプの包装装置10を説明したが、本発明は、フィルム帯状体101が垂直方向に搬送される垂直搬送タイプの包装装置10にも適用可能である。
【0089】
なお、本発明を理解しやすくするために、具体的な構成や数値や材料を示して説明したが、これらはあくまでも例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲内において、種々の実施形態や変形例を構成することができることは、当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0090】
1:包装体
10:包装装置
50:溶断ユニット(溶断装置)
110:被包装物
101:フィルム帯状体
200:駆動モータ(駆動源)
210:偏心カム
220:上側座板部
221:上側側フレーム部
222:内側支柱部材
230:下側座板部(第1取付部材)
231:下側側フレーム部(第1取付部材)
237a:上流側の長穴(第2取付部材)
237b:下流側の長穴(第3取付部材)
238a:上流側のガイド突起(第2取付部材)
238b:下流側のガイド突起(第3取付部材)
240:上流側フィルム押圧体
243:フィルム押圧ローラ
244:可動側板
245:下流側フィルム押圧体
247:切欠
248:圧縮バネ(弾性体)
250:溶断刃
253:刃先部
255:ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム帯状体に対して熱及び圧力を印加する溶断刃と、
前記溶断刃に対して搬送方向上流側に配設されているとともに前記溶断刃よりも前記フィルム帯状体に向けて突出している上流側フィルム押圧体と、
前記溶断刃に対して搬送方向下流側に配設されているとともに前記溶断刃よりも前記フィルム帯状体に向けて突出している下流側フィルム押圧体と、
前記溶断刃が設置された第1取付部材と、
前記第1取付部材に対して前記上流側フィルム押圧体をスライド移動可能に支持する第2取付部材と、
前記第1取付部材に対して前記下流側フィルム押圧体をスライド移動可能に支持する第3取付部材と、
前記第1取付部材と前記上流側フィルム押圧体との間及び前記第1取付部材と前記下流側フィルム押圧体との間にそれぞれ介在するとともに、前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体をそれぞれ前記フィルム帯状体に向けて付勢する弾性体と、
前記溶断刃が設置された第1取付部材を前記フィルム帯状体に対して接離自在に駆動する駆動源と、を備え、
前記駆動源が作動すると、前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記溶断刃と一体的に前記フィルム帯状体に当接するまで移動し、前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記フィルム帯状体に対して弾性的に当接した後に、前記溶断刃が前記フィルム帯状体に対して当接することにより、被包装物の挿入された包装用フィルム帯状体を溶着・溶断することを特徴とする包装用フィルムの溶断装置。
【請求項2】
前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体は、剛性を有する金属から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の包装用フィルムの溶断装置。
【請求項3】
前記下流側フィルム押圧体において、前記フィルム帯状体に対面する先端部分が丸みを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用フィルムの溶断装置。
【請求項4】
前記下流側フィルム押圧体の先端部分が、回転自在の押圧ローラから構成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の包装用フィルムの溶断装置。
【請求項5】
前記溶断刃の刃先部は、前記下流側フィルム押圧体の側に偏在配置されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の包装用フィルムの溶断装置。
【請求項6】
前記駆動源と前記第1取付部材との間は、クランク機構によって連結されており、前記駆動源の回転駆動力により、前記第1取付部材に設置された前記溶断刃が最上位の退避状態と最下位の溶断状態との間を往復移動することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の包装用フィルムの溶断装置。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか一つに記載された包装用フィルムの溶断装置を用いて、被包装物の挿入された包装用フィルム帯状体を溶断する溶断方法であって、
前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記フィルム帯状体に対して弾性的に当接するフィルム保持工程と、
前記溶断刃が前記フィルム帯状体に対して当接することにより、被包装物の挿入された前記フィルム帯状体を溶着・溶断するフィルム溶断工程と、
前記溶断刃が前記フィルム帯状体から離間する溶断刃退避工程と、
前記上流側フィルム押圧体及び前記下流側フィルム押圧体が前記フィルム帯状体から離間する押圧体退避工程と、を備えることを特徴とする、包装用フィルムの溶断方法。
【請求項8】
前記フィルム溶断工程の最中に、前記フィルム帯状体を強制的に下流側に移送させる強制移送工程をさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の包装用フィルムの溶断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図3M】
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【図3N】
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【図3O】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103366(P2013−103366A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247204(P2011−247204)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】