説明

化合物、光電変換素子及び光電気化学電池

【課題】錯体化合物を提供すること。
【解決手段】下記式(II)で表される化合物[化合物(II)と略す。]を金属原子に配位させて得られる錯体化合物(I)。


[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、酸性基を含んでいてもよいアリール基で置換されたアルケニル基、および酸性基等を表す。a、b及びcは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表し、かつa+b+c≧1である。]該化合物は光増感色素4、該色素を含む光電変換素子、及び該光電変換素子を含む太陽電池などの光電気化学電池に利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、該化合物を含む光増感色素、該色素を含む光電変換素子、及び該光電変換素子を含む太陽電池などの光電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のために大気中に放出されるCO2の削減が求められている。CO2の削減の有力な手段として、例えば、家屋の屋根にpn接合型のシリコン系太陽電池などの光電気化学電池を用いるソーラーシステムへの切り替えが提唱されている。しかしながら、上記シリコン系光電気化学電池に用いられる単結晶、多結晶及びアモルファスシリコンは、その製造過程において高温、高真空条件が必要なために高価であるという問題があった。
一方、特許文献1や非特許文献1には、製造が容易な光増感色素を酸化チタンなどの半導体微粒子の表面に吸着させた光電変換素子を含む光電気化学電池が提案され、具体的には下記式(1)や式(2)で表される化合物が優れた光電変換効率を示すことが報告されている。

【0003】
【特許文献1】平7−500630号公報、適用例A
【非特許文献1】J.Phys.Chem.B 2003,107,8981-8987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが光増感色素(1)及び(2)を含む光電気化学電池について検討したところ、可視光領域から長波長領域、特に750nm以上の長波長領域における光電変換効率が十分ではないことが明らかになった。
本発明の目的は、可視光領域から長波長領域の広い領域での光電変換効率の高い光電変換素子を与える化合物、該化合物を含む光電変換素子用色素、該色素を含む光電変換素子、及び、該素子を含む光電気化学電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記式(II)で表される化合物[化合物(II)と略す。]で示される配位子、及び、化合物(II)を金属原子に配位させて得られる錯体化合物(I);該錯体化合物を含むことを特徴とする光増感色素;該光増感色素を吸着させた半導体微粒子層及び導電性基板を含むことを特徴とする光電変換素子;該光電変換素子、電荷移動層及び対極を含むことを特徴とする光電気化学電池である。
【0006】
式(II)


[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、下記式(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)で表される置換基を表し、かつ少なくとも一つは式(III)で表される置換基である。a、b及びcは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表し、かつa+b+c≧1である。


ここで、Lは下記式(VII)又は式(VIII)で表される連結基を表す。Arは置換基を有していてもよいアリール基を表し、Aは酸性基又はその塩を表し、Yは置換基を表す。Q1及びQ2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又はシアノ基を表し、p及びqは、それぞれ、1〜3の整数を表す。



ここで、上記Yで表される置換基は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールアルキルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数7〜20のアリールアルキルチオ基、炭素数7〜20のアリールチオアルキル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で2置換されたアミノ基、及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の錯体化合物(I)は、可視光領域から長波長領域において光電変換効率の高い光電変換素子を与える化合物である。中でも、750nm以上の長波長領域における光電変換効率に著しく優れ、光電気化学電池用などの光電変換素子に好適に用いることができる。さらに、かかる錯体化合物の重要中間体(II)は、本発明の製造方法を用いると多くの反応に適用できて製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず本発明の化合物(II)、化合物(II)を金属原子に配位して得られる錯体化合物(I)及び化合物(II)の製造方法について説明する。
金属原子としては、第4族のTi、Zr、第8族のFe、Ru、Os、第9族のCo、Rh、Ir、第10族のNi、Pd、Pt、第11族のCu、第12族のZnなどが挙げられるが、好ましくは第8族の金属原子、より好ましくはRuである。
【0009】
式(I)及び式(II)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、式(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)で表される置換基を表し、少なくとも一つは式(III)で表される置換基を有する。
【0010】
式(III)及び式(IV)中、Lは上記式(VII)又は式(VIII)で表される連結基を表す。Q1及びQ2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又はシアノ基を表すが、特に水素原子が好ましい。p及びqは1〜3の整数を表し、好ましくはp=1又はq=1である。また、E体、Z体のいずれでもよく、E体とZ体の混合物であってもよい。
【0011】
式(III)又は式(IV)中、Arは以下に示すアリール基を表す。
Arの具体例としては、以下の式で表される例が挙げられる。尚、下記例示は、炭素原子上に置換される水素原子の中で2つの水素原子が結合部位となることを表す。*は置換基A又はYとの結合部位を表し、**は連結基Lの片方との結合部位を表している。なお、連結基Lのもう片方はピリジン環と結合している。Arとしては、式(A-1)又は(A-4)で表される基が好ましい。

【0012】
以下、Arの置換基について述べる。Arの置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールアルキルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数7〜20のアリールアルキルチオ基、炭素数7〜20のアリールチオアルキル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で2置換されたアミノ基、シアノ基等が挙げられる。
【0013】
炭素数1〜20のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基などの直鎖状アルキル基;i−プロピル基、t−ブチル基、2−エチル−ヘキシル基などの分枝状アルキル基;シクロプロピル基、シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基等が挙げられる。
アリール基は、炭素数6〜20であり、具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、アルキル基又はアリール基に含まれる炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子に置換されていてもよい。
【0014】
アルキル基又はアリール基で2置換されたアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルヘキシルアミノ基、メチルオクチルアミノ基などの直鎖状又は分枝状のアルキル基を含むジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などのジアリールアミノ基などが挙げられる。
【0015】
式(III)又は式(V)中、Aは、酸性基又は酸性基の塩を表す。酸性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基(−SO3H)、スクアリン酸基、リン酸基(−PO3H2)、ホウ酸基(−B(OH)2)等が挙げられる。特にカルボキシル基が好適である。

酸性基の塩としては、有機塩基との塩が挙げられ、具体的にはテトラアルキルアンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。
【0016】
式(IV)又は式(VI)中、Yで表される置換基について述べる。Yで表される置換基は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールアルキルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数7〜20のアリールアルキルチオ基、炭素数7〜20のアリールチオアルキル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で2置換されたアミノ基及びシアノ基からなる群から選ばれる基である。
【0017】
ここで、アルキル基の炭素数は、1〜20、好ましくは1〜12である。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基などの直鎖状アルキル基;i−プロピル基、t−ブチル基、2−エチル−ヘキシル基などの分枝状アルキル基;シクロプロピル基、シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基等が挙げられる。
アリール基は、炭素数6〜20であり、具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アルキル基又はアリール基に含まれる炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子に置換されていてもよい。
【0018】
アルキル基又はアリール基で2置換されたアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルヘキシルアミノ基、メチルオクチルアミノ基などの直鎖状又は分枝状のアルキル基を含むジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などのジアリールアミノ基などが挙げられる。
【0019】
式(II)中、a、b及びcはそれぞれ独立に0〜2の整数を表し、a+b+c≧1である。特に好ましくはa+b+cが1〜3の整数である。
【0020】
1、R2、R3のうち少なくとも一つは式(III)で表される置換基を有するが、好ましくは、連結基Lが式(VII)で表され、かつ、Q1及びQ2が水素原子でpが1であり、Arが置換基を有していてもよいチオフェン環であり、Aがカルボキシル基の場合である。
【0021】
以下、化合物(II)の製造方法について説明する。
本発明の化合物(II)を製造する場合、酸性基Aの種類によってはStilleカップリング反応が進行しない場合があるため、あらかじめ酸性基Aを保護したハロゲン化合物を用いてスズ化及びカップリング反応を行って化合物(XVI)を得、それを加水分解することによって目的とする化合物(II)を得た。
【0022】


[式(XVI)中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、式(XII)、式(XIII)、式(XIV)又は式(XV)で表される置換基を表し、少なくとも一つは式(XII)で表される置換基を有する。a、b及びcは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表し、a+b+c≧1である。


ここで、式中、L,Ar,Yは、化合物(II)の式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)のL,Ar,Yと同じ意味を表す。Bは、式(III)及び(V)中のAの酸性基を保護した置換基を表す。]
Bは、例えばAの酸性基をアルキルエステル化することにより得ることができる。アルキルエステルのアルキル基としては、炭素数1〜10の置換されていてもよいアルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。好ましくは、カルボン酸のアルキルエステルである。
【0023】
上記反応についてより詳しく説明する。
[1段階目]:
酸性基を保護したハロゲン化合物をスズ化する。[下記式中、R'-Xは、下記式(IX)及び(X)で表されるハロゲン化合物を表す。Xは、ハロゲン化合物(IX)及び(X)のXと同じ意味である。R''''は、アルキル基を表す。]

【0024】
下記式(IX)及び(X)で表されるハロゲン化合物

式(IX)及び式(X)中、Xはハロゲン原子を表すが、好ましくはBr、Cl、Iであり、特に好ましくはBrである。
【0025】
[2段階目]:
1段階目で得られたスズ化合物と、ハロゲン化合物をStilleカップリング反応する。[下記式中、R'' -Xは下記式(IX)及び式(X)で表されるハロゲン化合物を表す。Xは、ハロゲン化合物(IX)及び(X)のXと同じ意味である。R''-R'は、上記式(XVI)で表される化合物を表す。]


【0026】
[3段階目]:
次に、得られた化合物を脱保護(加水分解反応)する。[下記式中、R'''は、上記式(XVI)で表される化合物のうち、式(XII)及び式(XIV)の置換基B以外の部分を表す。Bは、Aの酸性基が保護された置換基を表す。R'''-Aは、本発明の化合物(II)を表す。]

【0027】
スズ化試薬を用いたスズ化方法には、(1)n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液及びハロゲン化アルキルスズを用いる方法、(2)アルキルスズリチウムを用いる方法、(3)金属触媒存在下、下記式(XI)で表されるスズ試薬を用いる方法等が挙げられる。(3)の方法は多くの置換基に対して許容性がある方法であり、特に、ハロゲン化物(IX)の置換基R5及びハロゲン化合物(X)の置換基R6が、式(XII)や式(XIV)で表される置換基である場合に、(1)や(2)の方法ではハロゲン化物のスズ化が進行しないが、(3)の方法では反応して化合物(XVI)を得ることができる。
【0028】
下記式(XI)で表されるスズ試薬

【0029】
上記スズ試薬(XI)のR7〜R12はそれぞれ独立に、炭素数1〜6までのアルキル基を表し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、tert-ブチル、n−ペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、4−メチルペンチル等が挙げられる。R7〜R12は各々異なっていてもよいし、同じでもよい。特に好ましくは、R7〜R12全てがメチル基またはn−ブチル基である。スズ試薬の使用量は、ハロゲン化合物1モルに対し通常、1〜50当量倍用い、好ましくは1〜5当量倍である。
【0030】
以下、1段階目の反応についてより詳しく説明する。
反応で用いる金属触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス[o−フェニレンビス(ジエチルホスフィノ)エタン(ジフェニルホスフィノ)パラジウム(0)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)等が挙げられるが、好ましくは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)である。それぞれは、単独で用いても併用しても良い。また、金属触媒を反応溶媒に溶解しない樹脂などの担体に担持させて不均一系で反応させることもできる。本発明の反応において、上記金属触媒の使用量は、ハロゲン化合物1モルに対し通常、0.00001当量倍以上、5当量倍以下、好ましくは0.00001当量倍以上、1当量倍以下である。
【0031】
反応は、溶媒中で行うのが好ましい。
このような溶媒としては、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はなく、例えば、ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリルのようなニトリル類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルホスホロトリアミドのようなアミド類を挙げることができる。
【0032】
反応温度はハロゲン化合物の構造にもよるが、通常は0〜200℃であり、好ましくは50〜150℃である。反応時間は、主に反応温度、反応原料、試薬、添加剤または使用される溶媒の種類によって異なるが、通常、5分〜5日間であり、好ましくは15分〜24時間である。反応速度の遅いものはハロゲン化合物が消失する時点までさらに延長すれば反応収率が向上する。また、反応中に酸素による触媒の失活を防ぐ為に、反応は不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが挙げられる。また、反応圧力は特に制限されないが、通常は大気圧下で行なう。本発明の製造方法において、ハロゲン化合物、金属触媒、反応溶媒の仕込み順序について特段の制限はなく、一例としてはハロゲン化合物、スズ試薬、及び、金属触媒とを上記有機溶媒中で混合する方法が挙げられる。得られたスズ化合物は、必要に応じて蒸留、再結晶、各種クロマトグラフィー等の手段を施すことにより精製することもできる。
【0033】
一段階目の反応を化合物(IX)を用いて行った場合、下記式(A)で表される反応生成物が得られ、化合物(X)を用いて行った場合、下記式(B)で表される反応生成物が得られる。



【0034】
次に2段階目の反応について説明する。Stilleカップリング反応で用いるハロゲン化合物は、1段階目で化合物(IX)を用いてスズ化反応を行ってスズ化合物(A)が得た場合には、ハロゲン化合物(X)と反応させることにより化合物(XVI)を得ることができる。また、化合物(X)を用いてスズ化反応を行ってスズ化合物(B)を得、ハロゲン化合物(IX)と反応させた場合も同様である。上記ハロゲン化合物使用量は、スズ化合物1モルに対し通常、0.1当量倍以上〜1.0当量倍以下、好ましくは0.7当量倍以上〜1.0当量倍以下である。また、スズ化合物(B)を用いて下記ハロゲン化合物(XVII)と反応させた場合にはR4=R6の化合物(XVI)を得ることができる。その場合のハロゲン化合物(XVII)の使用量は、スズ化合物(X)に対し通常、0.1当量倍以上〜0.5当量倍以下、好ましくは0.3当量倍以上〜0.5当量倍以下である。Xはハロゲン原子を表すが、好ましくはBr、Cl、Iであり、特に好ましいハロゲン化合物はX=Brである。


【0035】
上記金属触媒、及び、反応溶媒は、1段階目で例示したものの中から選択して使用すればよく、1段階目で用いたものと同じでもよいし、異なってもよい。上記金属触媒の使用量は、ハロゲン化合物に対し通常、0.00001当量倍以上〜1.0当量倍以下、好ましくは0.00001当量倍以上〜0.2当量倍以下である。反応温度はハロゲン化合物の構造にもよるが、通常は0〜200℃であり、好ましくは50〜150℃である。反応時間は、主に反応温度、反応原料、試薬、添加剤または使用される溶媒の種類によって異なるが、通常、5分〜5日間であり、好ましくは15分〜24時間である。また、反応中に酸素による触媒の失活を防ぐ為に、反応は不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが挙げられる。また、反応圧力は特に制限されないが、通常は大気圧下で行なう。また、ハロゲン化合物、金属触媒、反応溶媒の仕込み添加順序について特段の制限はなく、一例としてはハロゲン化合物、スズ試薬、及び、金属触媒とを上記有機溶媒中で混合する方法が挙げられる。なお、反応速度の遅いものはハロゲン化合物が消失する時点までさらに反応時間を延長するか、金属触媒若しくはスズ化合物を追加することにより反応収率が向上する。
得られた化合物(XVI)は、必要に応じて蒸留、再結晶、各種クロマトグラフィー等の手段を施すことにより精製することもできる。
【0036】
次に3段階目の反応について説明する。ここで行う加水分解反応は、酸・塩基のどちらを用いても行うことができるが、塩基を用いて反応を行った場合、短時間で温和な条件で加水分解することが可能である。本発明で使用する塩基としては、無機塩基であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩、アルカリ土類金属の酸化物である。アルカリ金属水酸化物としては水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等が挙げられ、アルカリ金属炭酸塩としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、特に好ましくはアルカリ金属水酸化物である。これらの塩基の使用量は、化合物(XVI)に対し、通常、1〜50当量倍用い、好ましくは1〜5当量倍である。また、2種類以上の塩基を用いてもよい。
【0037】
反応では通常、溶媒が用いられ、好ましくは有機溶媒中で行われる。
有機溶媒としては、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はなく、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のようなハロゲン系炭化水素;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリルのようなニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルホスホロトリアミドのようなアミド類を挙げることができる。これらのうちでもメタノールやエタノール等のアルコール類は基質、目的物及び塩基をある程度溶解するので好ましい。また、有機溶媒のみ使用しても、無機塩基を溶解させる目的で水を添加してもよい。
【0038】
反応温度は比較的広い範囲で可能であるが、通常は5〜150℃で行われ、好ましくは5〜100℃の範囲である。反応時間は、特に制限されるものではなく、原料が消失した時点を反応終点とする。通常5分〜24時間の範囲である。また、原料の添加順序について特段の制限はなく、一例としては化合物(XVI)と塩基を上記有機溶媒中で混合する方法が挙げられる。反応は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス下でも、空気下でもよく、反応圧力は特に制限されないが、通常は大気圧下で行なう。
【0039】
本発明において、上記加水分解後の反応液が、有機層と水層との二層に分離している場合には生成物を有機溶媒にて抽出した後、該抽出溶媒を濃縮し、晶析、ろ過することにより目的物を得ることができる。有機層と水層に分離せずに単層である場合には、この反応液を濃縮乾固させて酸で中和する。中和する際に用いられる酸は特に限定しないが、塩酸や硫酸などがよく用いられる。濃度は特に限定されないが、通常は50重量%以下の水溶液を用いるのが好ましい。酸の使用量は加水分解時に未反応であった塩基の等量以上を使用することが好ましい。pHは中和を完結させるために7以下が好ましいが、多くの場合酸性条件下で目的物が析出するので析出するまで酸を添加するとよい。
中和の際に結晶が析出する場合には、濾別、洗浄することにより目的物を得ることができるし、結晶が析出しない場合には、そのまま濃縮乾固させてもよい。得られた生成物は、再結晶や各種クロマトグラフィー等の手段を施すことにより精製することができる。また、精製しなくとも、錯体化合物(I)の合成に使用することもできる。
【0040】
化合物(II)の具体例としては、下式及び表1−1及び表1−2で表される化合物(II-1)〜(II-73)が挙げられる。表1−1及び表1−2には(R1a、(R2b及び(R3Cのピリジン環への結合位置と置換基について記載した。なお、それぞれのピリジン環において、窒素原子は1、1'、1''の位置である。表1−1及び表1−2中、III-1〜III-16は式(III)で表される置換基であり、表1'に置換基を構成するAr、L、p、Aについて記載した。また、表1−1及び表1−2中のIV-1は式(IV)で表される置換基であり、表1''に置換基を構成するAr、L、p、Yについて記載した。
【0041】









































【0042】


【0043】
表1−2


【0044】

TBA=テトラn-ブチルアンモニウム塩
【0045】



【0046】
本発明の錯体化合物(I)は、金属原子に、前記式(II)で表される化合物を配位させて得られる。
また、本発明の錯体化合物(I)は、中心原子が金属原子Mであり、配位子の1つが前記式(II)で表される化合物である。
前記式(II)で表される化合物以外の補助配位子が配位していてもよく、錯体化合物(I)に含まれる補助配位子としては、例えば、イソチオシアネート(−N=C=S、以下、NCSという場合がある)、チオシアネート(−S−C≡N、以下、SCNという場合がある)、ジケトナート、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、水酸基等が挙げられ、好ましくはNCSもしくはSCNである。ハロゲンアニオンなどのカウンターアニオンを伴い、電荷を中和した形で存在する場合もある。
【0047】
以下に、錯体化合物(I)の製造方法として、金属原子がRuである場合を例にとって説明する。
Ru試薬をN,N-ジメチルホルムアミドやアルコール溶媒に溶解し、化合物(II)を40〜180℃程度で混合させたのち、必要に応じて、補助配位子を与える塩を混合させ、得られた反応溶液から再結晶、クロマトグラフィーなどで精製して得る方法などが挙げられる。ここで、Ru試薬としては、2価及び3価のRu試薬が用いられ、具体的には、RuCl3、[RuCl2(p-cymene)]2やRuCl2(DMSO)4などが例示される。錯体化合物(I)の具体例としては、下式、表2−1〜表2−4で表される化合物(I-1)〜(I-152)が挙げられる。


【0048】



【0049】

【0050】

【0051】

【0052】
本発明の光増感色素は、前記の錯体化合物(I)を含む色素である。色素としては、錯体化合物(I)のみであっても、さらに錯体化合物(I)とは異なる種類の化合物が含有されていてもよい。
錯体化合物(I)と混合してもよい色素としては、波長 300〜700nm付近に吸収を持つ金属錯体や有機色素などを挙げることができる。
混合してもよい金属錯体の具体例としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、特開平1−220380号や特表平5−504023号に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体などが挙げられる。
ルテニウム錯体をさらに詳しく例示すれば、cis-ビス(イソチオシアネート)ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)-ルテニウム(II)ビス-テトラブチルアンモニウム、cis-ビス(イソチオシアネート)ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)-ルテニウム(II)、トリス(イソチオシアネート)−ルテニウム(II)-2,2':6',2"-ターピリジン-4,4',4"-トリカルボン酸トリス−テトラブチルアンモニウム、cis-ビス(イソチオシアネート)(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジノニル)ルテニウム(II)などが挙げられる。
【0053】
有機色素としては、例えば、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素、クマリン系色素、インドリン系等の有機色素、スクアリリウム系色素などが挙げられる。
シアニン系色素としては、具体的には、NK1194、NK3422(いずれも日本感光色素研究所製)などが例示される。
メロシアニン系色素としては、具体的には、NK2426、NK2501(いずれも日本感光色素研究所製)が挙げられる。
キサンテン系色素としては、例えば、ウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセインなどが挙げられる。
トリフェニルメタン色素としては、例えば、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレットが挙げられる。
クマリン系色素としては、NKX−2677(林原生物化学研究所製)等の以下に示した構造部位を含む化合物が挙げられる。
インドリン系色素としては、D149(三菱製紙社製)等の以下に示した構造部位を含む化合物などが例示される。
スクアリリウム系色素としては、具体的には以下に示した構造部位を含む化合物などが例示される。
【0054】

【0055】
本発明の光電気化学電池とは、光電変換素子、電荷移動層及び対極を含み、光を電気に変換することができるものである。光電気化学電池は、光電変換素子、電荷移動層及び対極が順次、積層され、光電変換素子の導電性基板と対極とが連結されて、電荷が移動して、すなわち、発電する。
他の光電気化学電池としては、例えば、光電変換素子及び電荷移動層からなる積層部が複数と1つの対極からなる光電気化学電池、例えば、複数の光電変換素子、1つの電荷移動層及び1つの対極が積層されてなる光電気化学電池などが例示される。
光電気化学電池は、湿式光電気化学電池及び乾式光電気化学電池に大別される。湿式光電気化学電池は、含まれる電荷移動層が電解液から構成される層であり、通常、電荷移動層は光電変換素子と対極の間に電解液が充填される。
乾式光電気化学電池としては、例えば、光電変換素子と対極との間の電荷移動層が固体のホール輸送材料である電池などが挙げられる。
【0056】
光電気化学電池の一実施態様を図1に示した。導電性基板8と、該導電性基板8に対向する対極(導電性基板)9と、これらの間に、光電変換素子用色素4が吸着された半導体微粒子層3が存在する。湿式光電変換素子とする場合は、半導体粒子層3は電解液5で満たされ、封止材10で封止されている。
【0057】
ここで、光電変換素子に用いられる半導体微粒子の一次粒径は、通常、1〜5000nm程度、好ましくは5〜300nm程度である。反射による光電変換効率の向上を目的として、一次粒径の異なる半導体微粒子を混入させてもよい。また、チューブや中空形状の微粒子を用いてもよい。
【0058】
ここで、光電変換素子に用いられる半導体微粒子の一次粒径は、通常、1〜5000nm程度、好ましくは5〜300nm程度である。反射による光電変換効率の向上を目的として、一次粒径の異なる半導体粒子を混入させてもよい。また、チューブや中空形状の微粒子を用いてもよい。
【0059】
半導体微粒子を構成する材料化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸ナトリウム等の金属酸化物;
ヨウ化銀、臭化銀、ヨウ化銅、臭化銅等の金属ハロゲン化物;
硫化亜鉛、硫化チタン、硫化インジウム、硫化ビスマス、硫化カドミウム、硫化ジルコニウム、硫化タンタル、硫化モリブデン、硫化銀、硫化銅、硫化スズ、硫化タングステン、硫化アンチモン等の金属硫化物;
セレン化カドミウム、セレン化ジルコニウム、セレン化亜鉛、セレン化チタン、セレン化インジウム、セレン化タングステン、セレン化モリブデン、セレン化ビスマス、セレン化鉛等の金属セレン化物;
テルル化カドミウム、テルル化タングステン、テルル化モリブデン、テルル化亜鉛、テルル化ビスマス等の金属テルル化物;
リン化亜鉛、リン化ガリウム、リン化インジウム、リン化カドミウム等の金属リン化物;
ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物、シリコン、ゲルマニウム等の材料化合物が挙げられる。
さらに、酸化亜鉛/酸化スズ、酸化スズ/酸化チタンのような二種以上の材料化合物の混合物であってもよい。
【0060】
中でも、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸ナトリウム、酸化亜鉛/酸化スズ、酸化スズ/酸化チタン等の金属酸化物が、比較的安価で入手しやすく、色素にも染色されやすいことから好ましく、特に、酸化チタンが好適である。
【0061】
本発明の光電変換素子に用いられる導電性基板(図1における8及び9)としては、導電性物質そのもの、又は、基板に導電性物質を重ねたものなどを用いることができる。導電性物質としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、パラジウム又は鉄等の金属や、該金属のアロイ、或いはインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等の導電性金属酸化物、炭素、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン等の導電性高分子などが挙げられる。導電性高分子は、例えば、パラトルエンスルフォン酸等がドープされていてもよい。
入射した光を閉じ込め、有効に利用するために、導電性基板は、その表面にテクスチャー構造を有するものが好ましい。導電層(図1における2及び6)は抵抗が低いほどよく、高透過性(350nmより長波長側で、透過率が80%以上)であることが好ましい。導電性基板(図1における8及び9)としては、ガラス又はプラスチックに導電性の金属酸化物を塗布したものが好ましい。中でも、フッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を積層した導電性ガラスが特に好ましい。プラスチック基板とする場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリアリレート(PAR);アートン(JSRの登録商標)、ゼオノア(日本ゼオンの登録商標)、アペル(三井化学の登録商標)やトーパス(Ticona社の登録商標)等の環状ポリオレフィン(COP);ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアミド(PA)等が用いられる。
これらの中でも、インジウム−スズ複合酸化物からなる導電層を堆積した導電性PETが、抵抗が低く、透過性も良く、入手もしやすいことから特に好ましい。
【0062】
導電性基板上に半導体微粒子層を形成する方法としては、半導体微粒子をスプレー噴霧等で直接、導電性基板上に薄膜として形成する方法;導電性基板を電極として電気的に半導体微粒子薄膜を析出させる方法;半導体微粒子のスラリーを導電性基板上に塗布した後、乾燥、硬化又は焼成することによって製造する方法などが例示される。
半導体微粒子のスラリーを導電性基板上に塗布する方法として、例えば、ドクターブレード、スキージ、スピンコート、ディップコートやスクリーン印刷等の手法が挙げられる。この方法の場合、スラリー中の半導体微粒子の分散状態における平均粒径は、0.01μm〜100μmであることが好ましい。スラリーを分散させる分散媒としては半導体微粒子を分散させ得るものであればよく、水、又はエタノール、イソプロパノール、t−ブタノールやテルピネオール等のアルコール溶媒;アセトン等のケトン溶媒等の有機溶媒が用いられる。これらの水や有機溶媒は混合物であってもよい。分散液には、ポリエチレングリコール等のポリマー;Triton−X等の界面活性剤;酢酸、蟻酸、硝酸や塩酸等の有機酸又は無機酸;アセチルアセトン等のキレート剤を含んでいてもよい。
スラリーを塗布した導電性基板は焼成されるが、該焼成温度は熱可塑性樹脂等の基材の融点(又は軟化点)未満であり、通常は、焼成温度の上限は900℃であり、好ましくは600℃以下である。また、焼成時間は、通常、10時間以内である。導電性基板上の半導体微粒子層の厚みは、通常は1〜200μmであり、好ましくは5〜50μmである。
【0063】
導電性基板上に比較的低温で半導体微粒子層を形成する方法としては、水熱処理を施してポーラスな半導体微粒子層を形成するHydrothermal法(実用化に向けた色素増感光電気化学電池、第2講(箕浦秀樹)第63〜65頁、NTS社発行(2003))、分散された半導体粒子の分散液を基板に電着する泳動電着法(T.Miyasaka et al.,Chem.Lett.,1250(2002))、半導体ペーストを基板に塗布、乾燥後にプレスするプレス法(実用化に向けた色素増感光電気化学電池、第12講(萬 雄彦)第312〜313頁、NTS社発行(2003))等が挙げられる。
【0064】
半導体微粒子層の表面に、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。このことにより、半導体微粒子の表面積を増大させたり、半導体微粒子近傍の純度を高めたり、半導体微粒子表面に存在する鉄等の不純物を覆い隠したり、又は、半導体微粒子の連結性、結合性を高めたりすることができる。
半導体微粒子は多くの光増感色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。このため、半導体微粒子層を基板上に塗布した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この上限は、通常、1000倍程度である。
半導体微粒子層は、微粒子1個の単層に限らず、粒径の異なる層等を複数重ねてもよい。
【0065】
半導体微粒子への本発明の光増感色素の吸着方法としては、本発明の光増感色素の溶液中に、よく乾燥した半導体微粒子を1分〜24時間程度、浸漬する方法が用いられる。光増感色素の吸着は室温で行ってもよいし、加熱還流下に行ってもよい。光増感色素の吸着は、半導体微粒子の塗布前に行ってもよく、塗布後に行ってもよく、半導体微粒子と光増感色素を同時に塗布して吸着させてもよいが、塗布後の半導体微粒子膜に光増感色素を吸着させるのがより好ましい。半導体微粒子層を加熱処理する場合の光増感色素吸着は加熱処理後に行うことが好ましく、加熱処理後、微粒子層表面に水が吸着する前に、すばやく光増感色素を吸着させる方法が特に好ましい。
半導体微粒子に付着していない光増感色素が浮遊することによる増感効果の低減を抑制するため、未吸着の光増感色素は洗浄によって除去することが望ましい。
吸着する光増感色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。用途が光電気化学電池である場合、太陽光などの照射光の光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する光増感色素を選ぶことが好ましい。また、光増感色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1gに対して0.01〜1ミリモルが好ましい。このような色素量とすると、半導体微粒子における増感効果が十分に得られ、半導体微粒子に付着していない光増感色素が浮遊することによる増感効果の低減を抑制する傾向にあることから好ましい。
【0066】
光増感色素同士が会合や凝集等の相互作用することを抑制する目的で、無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また、余分な光増感色素の除去を促進する目的で、色素を吸着させた後、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては、ピリジン、4−tert−ブチルピリジンやポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、固体の場合は有機溶媒に溶解して用いてもよい。
上記の導電性基板8は、上から順に基板1と導電層2で構成されている。対極9は、下から順に基板7と導電層6で構成されている。
【0067】
本発明の光電気化学電池が湿式光電気化学電池である場合、湿式光電気化学電池に含まれる電解液に用いられる電解質としては、例えば、I2と各種ヨウ化物との組合せ、Br2と各種の臭化物との組合せ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩の金属錯体の組合せ、フェロセン−フェリシニウムイオンの金属錯体の組合せ、アルキルチオール−アルキルジスルフィドのイオウ化合物の組合せ、アルキルビオローゲンとその還元体の組合せ、ポリヒドロキシベンゼン類とその酸化体の組合せ等が挙げられる。
ここで、I2と組合せ得るヨウ化物としては、例えば、LiI、NaI、KI、CsIやCaI2等の金属ヨウ化物;1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイドダイド等の4価のイミダゾリウム化合物のヨウ素塩;4価のピリジニウム化合物のヨウ素塩;テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ素塩等が挙げられる。
Br2と組合せ得る臭化物としては、例えば、LiBr、NaBr、KBr、CsBrやCaBr2等の金属臭化物;テトラアルキルアンモニウムブロマイドやピリジニウムブロマイド等の4価のアンモニウム化合物の臭素塩等が挙げられる。
アルキルビオローゲンとしては、例えば、メチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレートなどが挙げられ、ポリヒドロキシベンゼン類としては、例えばハイドロキノンやナフトハイドロキノン等が挙げられる。
電解質としては中でも、金属ヨウ化物、4価のイミダゾリウム化合物のヨウ素塩や4価のピリジニウム化合物のヨウ素塩、及びテトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ素塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のヨウ化物とI2との組合せが好ましい。
【0068】
上記の電解液に用いる有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリルやプロピオニトリル等のニトリル系溶媒;エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドや1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド;1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド等のイオン性液体が挙げられる。また、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、ポリ4−ビニルピリジンやChemistry Letters,1241(1998)に示される低分子ゲル化剤でゲル化されていてもよい。
【0069】
本発明の光電気化学電池では、電解液の代わりに、固体のホール輸送材料を用いることができる。
ホール輸送材料としては、CuIやCuSCN等の一価の銅を含むp型無機半導体や、Synthetic Metal,89,215(1997)及びNature,395,583(1998)で示されるようなアリールアミン類;ポリチオフェン及びその誘導体;ポリピロール及びその誘導体;ポリアニリン及びその誘導体;ポリ(p−フェニレン)及びその誘導体;ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体等の導電性高分子等が挙げられる。
【0070】
本発明の光電変換素子を構成する対極とは、導電性を有する電極であり、強度を維持したり密閉性を向上させるため前記導電性基板と同様の基板を用いてもよい。
光増感色素が吸着された半導体微粒子層に光が到達するため、前述の導電性基板と対極の少なくとも一方は通常、実質的に透明である。本発明の光電変換素子においては、半導体微粒子層を有する導電性基板が透明で、照射光を導電性基板の側から入射させるものが好ましい。この場合、対極9は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
光電変換素子の対極9としては、例えば、金属、カーボン、導電性の酸化物などを蒸着したガラスやプラスチックを使用することができる。また、導電層を、1mm以下、好ましくは5nm〜100μmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成して作製することもできる。本発明では白金やカーボンを蒸着したガラス、又は、蒸着やスパッタリングによって導電層を形成した対極とすることが好ましい。
【0071】
電解液の漏洩や蒸散を防ぐため、封止材を使用して封止してもよい。該封止材としては、ハイミラン(三井デュポンポリケミカル製)等のアイオノマー樹脂;ガラスフリット;SX1170(Solaronix製)等のホットメルト接着剤;Amosil 4(Solaronix製)のような接着剤;BYNEL(デュポン製)を使用することができる。
【0072】
本発明の錯体化合物は可視光のみならず750nm以上の長波長領域においても光電変換特性に優れ、光増感色素として好適に用いられる。また、該錯体化合物を含む光電変換素子は光電変換効率に優れることから、太陽光による太陽電池、トンネルや屋内での人工光による光電気化学電池に用いることができる。また、該光電変換素子は、光の照射を受けて電流が流れることから、光センサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0073】
次に、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
【0074】





【0075】
(実施例1)
<製造例1:錯体化合物(I-16)の製造例>
Q-1(1.95g, 7.33mmol) を1,2-ジクロロエタン55gに溶解し、二酸化マンガン(4.29g,37.1mmol)を加えて3時間還流した。反応後、セライトろ過してクロロホルムで洗浄した。濾液を濃縮してHPLC純度93.4%のQ-2 1.03gを収率49%で得た。
次いで、Q-3(0.90g, 1.77mmol) にテトラヒドロフラン8.9gを加えて、氷冷し、n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(0.5ml, 0.80mmol)を約10分かけて滴下し、同温で1時間反応した。そこに、Q-2 (0.90g, 3.42mmol)のテトラヒドロフラン1ml溶液を約5分かけて滴下して同温で2時間反応し、室温まで昇温して2時間攪拌した。反応後、溶媒を減圧留去して得た残渣に水を注入してクロロホルムで抽出、水で洗浄して硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去して得た残渣をカラムクロマトグラフィーで精製してHPLC純度80.5%のQ-4 0.29gを収率31%で得た。
得られたQ-4(0.32g, 0.77mmol)に、Q-5(0.39g, 1.08mmol)、Pd(PPh3)4(88mg, 0.08mmol)、トルエン3.2gを加えて4時間還流した。反応後、溶媒を減圧留去、カラムクロマトグラフィーにより精製してHPLC純度71.9%のQ-6 0.38gを収率84%で得た。
次いで得られたQ-6(0.28g, 0.67mmol)をエタノール5mlに溶解して、水酸化リチウム(0.48g, 20.02mmol)と水2mlを加えて、2時間還流してカルボン酸エステルの加水分解を行った。反応終了を確認後、2N塩酸で中和してエタノールとともに共沸脱水することでII-16を得た。得られた固形物はESI-MSにより目的化合物(II-16、分子量385)であることを確認した。
化合物(II-16) ESI-MS(m/z)
m/z=386 [M+H]+
得られたII-16 23mg(0.06mmol)にエタノールを加え、さらに塩化ルテニウム3水和物18mg(0.07mmol)を仕込み還流条件下、3時間攪拌し、放冷後、減圧濃縮し黒紫色結晶を得た。得られた結晶をDMF 10mlに溶解し、チオシアン酸カリウム(119mg,1.34mmol)と水1mlを加え、150℃で4時間加熱攪拌した。反応溶液をエバポレータで濃縮し、濃縮残査から主成分を高速液体クロマトグラフィにより分取し、紫色の固形物を得た。得られた固形物はESI-MSにより目的化合物(I-16、分子量660)であることを確認した。
錯体化合物(I-16) ESI-MS(m/z)
m/z=661 [M+H]+
【0076】
<錯体化合物(I-16)を含む光電気化学電池の調製>
導電性基板である、フッ素をドープした酸化スズ膜付き導電性ガラス(日本板硝子製、10Ω/□)の導電性面に、酸化チタン分散液であるTi−Nanoxide T/SP(商品名、Solaronix社製)をスクリーン印刷機を用いて塗布後、500℃で焼成し、ガラスを冷却して、導電性基板に半導体粒子層を積層させた。続いて、化合物(I-16)の溶液(濃度は0.0003モル/リットル、溶媒はN,N-ジメチルアセトアミド、ケノデオキシコール酸(以下、DCAと略す)を0.03モル/リットル添加)に16時間浸漬し、溶液から取り出したのち、アセトニトリルで洗浄後、自然乾燥させ、導電性基板及び光増感色素を吸着させた半導体微粒子層の積層体(酸化チタン電極の面積は24mm2)を得た。次に、該層の周りに、スペーサーとして25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを設置後、該層に電解液(溶媒はアセトニトリル;溶媒中の沃素濃度は0.05モル/リットル、同じくヨウ化リチウム濃度は0.1モル/リットル、同じく4−t−ブチルピリジン濃度は0.5モル/リットル、同じく1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド濃度は0.6モル/リットル)を含浸させた。最後に、対極である白金蒸着ガラスを重ね合わせ、導電性基板、光増感色素を吸着させた半導体微粒子層、並びに該導電性基板の対極が積層され、導電性基板と対極との間に電解液が含浸された、光電気化学電池を得た。このようにして作製した光電気化学電池について、IPCE(incident photon-to-current efficiency)測定装置(分光計器製)を用いてIPCEを測定した。結果を表3に示す。
【0077】





【0078】
(実施例2)
<製造例2:錯体化合物(I-30)の製造例>
製造法1と同様にしてQ-2の代わりにQ-7を用いて反応を行って得たQ-8(0.70g, 2.07mmol)に、スズ試薬XI-1(1.29ml, 6.21mmol)、PdCl2(PPh3)2 (0.29g, 0.41mmol)、を1,2-ジメトキシエタン120mlに溶解して1時間還流した。反応後、溶媒を減圧留去、ジエチルエーテルに溶解し、不溶分をろ過し、溶解分を溶媒留去してスズ化合物Q-9を得た。次いで得られたQ-9に、Q-10(0.26g, 1.03mmol)、PdCl2(PPh3)2 (0.29g, 0.41mmol)、トルエン5mlを加え11時間還流した。反応後、溶媒を減圧留去、カラムクロマトグラフィーにより精製してHPLC純度81.6%のQ-11 0.16gを収率21%で得た。
次いで得られたQ-11(56mg, 0.10mmol)をエタノール5mlに溶解して、水酸化リチウム(47mg, 0.20mmol)と水1mlを加えて、2時間還流した。反応終了を確認後、2N塩酸で中和してエタノールとともに共沸脱水することでII-30を得た。得られた固形物はESI-MSにより目的化合物(II-30、分子量551)であることを確認した。
化合物(II-30) ESI-MS(m/z)
m/z=552 [M+H]+
得られたII-30を用いて実施例1と同様に反応し、I-30を得た。

【0079】
(実施例3)
<製造例3:錯体化合物(I-25)の製造例>
Q-12(0.32g, 1.23mmol)、XI-1(0.16ml,0.49mmol)、Pd(PPh3)4 (54mg, 0.05mmol)を1,2-ジメトキシエタン5mlに溶解し、1時間還流した。反応後、溶媒を減圧留去、ジエチルエーテルに溶解し、不溶分をろ過し、溶解分を溶媒留去してQ-13を得た。
次いで得られたQ-13に、Q-8(0.13g, 0.39mmol)、PdCl2(PPh3)2 (47mg, 0.07mmol)、トルエン5mlを加え11時間還流した。反応後、溶媒を減圧留去、カラムクロマトグラフィーにより精製してHPLC純度65.7%のQ-14 0.23gを収率83%で得た。
次いで得られたQ-14を製造法1と同様の方法で加水分解を行いII-25を得た。得られた固形物はESI-MSにより目的化合物(II-25、分子量413)であることを確認した。
化合物(II-25) ESI-MS(m/z)
m/z=414 [M+H]+
得られたII-25を用いて実施例1と同様に反応し、I-25を得た。
錯体化合物(I-25) ESI-MS(m/z)
m/z=689 [M+H]+
【0080】
実施例3で得られた錯体化合物(I-25)についても、IPCEを実施例1と同様にして測定した。実施例3で得た光電変換素子のIPCEを表4に示す。
【0081】
(比較例1及び2)
光増感色素として、cis-ビス(イソチオシアネート)ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)-ルテニウム(II)ビス-テトラブチルアンモニウム(以下錯体化合物(2)と略す)を用い、溶解溶媒にt-ブタノール/アセトニトリル=1/1(vol/vol)溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてセルを作成し、光電気化学電池を得た。次いで、IPCEを実施例1と同様にして測定した。結果を表3、表4に記載した。なお、比較例1及び2は、同じ表中に記載されている実施例記載化合物と同一日にセルを作成及び評価したものである。
【0082】
表3

【0083】
表4


【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の光電気化学電池の断面模式図である。
【符号の説明】
【0085】
1 基板
2 導電層
3 半導体粒子層
4 光増感色素
5 電解液
6 導電層
7 基板
8 導電性基板
9 対極(導電性基板)
10 封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で表される化合物[化合物(II)と略す。]を金属原子に配位させて得られる錯体化合物(I)。

[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、下記式(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)
で表される置換基を表し、かつ少なくとも一つは式(III)で表される置換基である。a、b及びcは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表し、かつa+b+c≧1である。



ここで、Lは下記式(VII)又は式(VIII)で表される連結基を表す。Arは置換基を有していてもよいアリール基を表し、Aは酸性基又はその塩を表し、Yは水素原子又は置換基を表す。Q1及びQ2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数
1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又はシアノ基を表し、p及びqは、それぞれ、1〜3の整数を表す。


ここで、上記Yで表される置換基は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールアルキルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数7〜20のアリールアルキルチオ基、炭素数7〜20のアリールチオアルキル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で2置換されたアミノ基、及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である。
【請求項2】
請求項1に記載の式(III)中のLが、式(VII)で表される置換基を有する化合物(II)を金属原子に配位させて得られる錯体化合物(I)[式中、R1、R2、R3、a、b、c、A、L、Ar、Y、p、Q1及びQ2は、請求項1と同じ意味を表す。]
【請求項3】
請求項1に記載の式(III)中のLが、式(VIII)で表される置換基を有する化合物(II)を金属原子に配位させて得られる錯体化合物(I)[式中、R1、R2、R3、a、b、c、A、L、Ar、Y及びqは、請求項1と同じ意味を表す。]
【請求項4】
酸性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、スクアリン酸基、リン酸基、ホウ酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である請求項1〜3のいずれかに記載の錯体化合物(I)。
【請求項5】
酸性基が、カルボキシル基である請求項1〜4のいずれかに記載の錯体化合物(I)。
【請求項6】
酸性基の塩が、有機塩基との塩である請求項1〜5のいずれかに記載の錯体化合物(I)。
【請求項7】
1、R2及びR3のうち少なくとも一つが、請求項1に記載の式(III)で表される置換
基であり、連結基Lが式(VII)で表され、かつ、Q1及びQ2が水素原子でpが1であり
、Arが置換基を有していてもよいチオフェン環であり、Aがカルボキシル基である請求項1、2、4、5又は6に記載の錯体化合物(I)。
【請求項8】
a+b+cが1〜3の整数である請求項1〜7のいずれかに記載の錯体化合物(I)。
【請求項9】
金属原子がFe、Ru又はOsである請求項1〜8のいずれかに記載の錯体化合物(I)。
【請求項10】
式(II)

[式中、R1、R2、R3、a、b、c、A、L、Ar、Y、p、q、Q1及びQ2は、請
求項1と同じ意味を表す。]
で表される化合物。
【請求項11】
請求項10記載の式(II)で表される化合物において、式(III)中のLが、式(VII)で表される置換基を有する化合物である化合物(II)。
【請求項12】
請求項10記載の式(II)で表される化合物において、式(III)中のLが、式(VIII)で表される置換基を有する化合物である化合物(II)。
【請求項13】
酸性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、スクアリン酸基、リン酸基、ホウ酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である請求項10〜12のいずれかに記載の化合物(II)。
【請求項14】
酸性基が、カルボキシル基である請求項10〜13のいずれかに記載の化合物(II)。
【請求項15】
酸性基の塩が、有機塩基との塩である請求項10〜14のいずれかに記載の化合物(II)。
【請求項16】
1、R2及びR3のうち少なくとも一つが、請求項1に記載の式(III)で表される置換
基であり、連結基Lが式(VII)で表され、かつ、Q1及びQ2が水素原子でpが1であり
、Arが置換基を有していてもよいチオフェン環であり、Aがカルボキシル基である請求項10、11、13、14又は15に記載の化合物(II)。
【請求項17】
a+b+cが、1〜3の整数である請求項10〜16のいずれかに記載の化合物(II)。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれかに記載の錯体化合物(I)を含む光増感色素。
【請求項19】
導電性基板、及び請求項18に記載の光増感色素を吸着させた半導体微粒子層を含む光電変換素子。
【請求項20】
請求項19に記載の光電変換素子、電荷移動層及び対極を含む光電気化学電池。
【請求項21】
下記式に記載のハロゲン化合物(IX)又は(X)を、金属触媒存在下、下記式(XI)で表されるスズ試薬と反応させることを特徴とする下記式(A)又は(B)で表されるスズ化合物の製造方法。



式(XI)で表されるスズ試薬


下記(A)と(B)は、(IX)又は(X)と(XI)との反応生成物


[式中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、式(XII)、式(XIII)、式(XIV)又は
式(XV)で表される置換基を表し、少なくとも一つは式(XII)で表される置換基を有する。a、b及びcは、請求項1と同じ意味を表す。R7、R8、R9、R10、R11及びR
12は、それぞれ独立に、炭素数1〜6までのアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。]


[式中、L,Ar,Yは請求項1と同じ意味を表す。Bは保護基を導入した酸性基を表す。
]
【請求項22】
請求項21に記載の製造方法で得られた式(A)で表されるスズ化合物とハロゲン化合物(X)とを、或は式(B)で表されるスズ化合物とハロゲン化合物(IX)とを、金属触媒存在下、カップリング反応させて下記化合物(XVI)を得、次いで化合物(XVI)を加水分解させることを特徴とする請求項10〜17のいずれかに記載の式(II)で表される化合物の製造方法。
式(XVI)


[式中、R4、R5、R6、a、b及びcは請求項21と同じ意味を表す。]
【請求項23】
請求項21に記載の製造方法を用いてハロゲン化合物(X)から製造した式(B)で表されるスズ化合物を、金属触媒存在下、下記式(XVII)で表されるハロゲン化合物とカップリング反応させて請求項22に記載の化合物(XVI)を得、さらに加水分解させることを特徴とする化合物(II)の製造方法。



[式中、R5,b及びXは、請求項21と同じ意味を表し、(R4a=(R6cであ
る。]

【図1】
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【公開番号】特開2008−266639(P2008−266639A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86242(P2008−86242)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】