化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法
【課題】結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なう、化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】化合物半導体結晶の製造装置は、気体供給部101と、結晶成長室110と、気体排出部120と、圧力制御部130、140とを備えている。結晶成長室110は、気体供給部101から気体が供給される。気体排出部120は、結晶成長室110から気体を排出する。圧力制御部130、140は、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間の少なくとも一方に接続され、かつ結晶成長室110と、気体供給部101および気体排出部120の少なくとも一方とにそれぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。
【解決手段】化合物半導体結晶の製造装置は、気体供給部101と、結晶成長室110と、気体排出部120と、圧力制御部130、140とを備えている。結晶成長室110は、気体供給部101から気体が供給される。気体排出部120は、結晶成長室110から気体を排出する。圧力制御部130、140は、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間の少なくとも一方に接続され、かつ結晶成長室110と、気体供給部101および気体排出部120の少なくとも一方とにそれぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などの化合物半導体結晶は、発光素子、電子素子、および半導体センサなどの半導体デバイスを形成するための材料として非常に有用である。このような化合物半導体結晶を成長させるために、従来から、たとえばフラックス法などが提案されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1に開示の結晶成長装置は、反応容器(結晶成長室)と、反応容器内の圧力以上の窒素ガスが充填されている第1のガス供給装置と、窒素ガスの圧力を調整する圧力調整機構とを備えている。圧力調整機構は、圧力センサと圧力調整弁とを有している。そして、特許文献1には、この結晶成長装置を用いて、III族窒化物結晶を成長することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−64097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の結晶成長装置および結晶成長方法では、1つの圧力調整弁を用いて、反応容器内の窒素ガス圧力を調整している。本発明者が鋭意研究した結果、上記特許文献1に開示の1つの圧力調整弁を用いて窒素ガスなどの気体の圧力を制御すると、反応容器内の気体の圧力を精密に制御できないことを見い出した。
【0006】
図17および図18は、特許文献1に開示の結晶成長装置の構成例を示す図である。図17および図18を参照して、特許文献1の課題について、以下に詳細に説明する。
【0007】
特許文献1において、図17に示すように、第1のガス供給装置220の第1のシリンダー210は常に反応容器201の内部の圧力以上になるようにガスが充填されており、これらの間に圧力調整弁208が介されて圧力を調整していると記載されている(特許文献1の請求項1および段落0023−0025など)。このことから、第1のシリンダー210の内部の圧力と反応容器201との内部の圧力とが等しくなるように、圧力調整弁208が全開に開放されることはなく、また圧力調整弁は一般に、設定された圧力に応じて弁の開度を調整するものであるから、その調整は連続的になされる。このような機構においては、圧力調整弁の開度の精度が、そのまま圧力制御の精度を決定づけるため、反応容器201の内部の圧力の精密な制御は非常に困難である。
【0008】
また、特許文献1において、図18に示すように、第2のガス供給装置230を用意した場合、フラックス法においては、Na(ナトリウム)などの危険物が第1のシリンダー210に拡散することを防ぐ効果は期待できることが記載されている(特許文献1の段落0038など)。しかし、第2のガス供給装置230の第2のシリンダー212は常に反応容器201の内部の圧力以上になるようにガスが充填されており、これらの間に圧力調整弁208が介されて圧力を調整していると記載されている(特許文献1の請求項2および段落0034など)。このことから、やはり第2のシリンダー212の内部の圧力と反応容器201の内部の圧力とが等しくなるように、圧力調整弁208が全開に開放されることはなく、また圧力調整弁は一般に、設定された圧力に応じて弁の開度を調整するものであるから、その調整は連続的に為される。このような機構においては、圧力調整弁の開度の精度が、そのまま圧力制御の精度を決定づけるため、反応容器201の内部の圧力の精密な制御はやはり非常に困難である。
【0009】
このように、特許文献1における反応容器201の内部の圧力の制御性は、圧力調整弁208の前後の圧力が常に異なっていることから、連続的に調整される圧力調整弁208の開度の精度に依存している。本発明者が追試したところによると、様々な機器を用いても、その精度は反応容器201の内部の設定圧力に対して10%以内に収めるのがせいぜいであり、たとえば1%未満となるような高精度な圧力制御弁は、得られ難いのが現状である。
【0010】
本発明者は、実際にこのような圧力調整弁208を用いた機器構成で、フラックス法によりGaNの結晶の成長を試みた。その結果、内部の圧力の制御性が設定圧力に対して±10%と大きく、結晶が成長しない場合が発生し、再現性に問題があり、また成長した結晶も全面で等しい成長速度で成長しないなど、品質面の問題があることが分かった。結晶成長を安定的に進行させるのに必要な圧力制御性は一般に高精度なものが必要であり、たとえば10MPaの反応容器の設定圧力に対して、0.1MPa〜0.01MPaの精度を実現するなど、圧力制御機構は、反応容器の内部の設定圧力に対して1%未満、より良くは0.1%未満が望まれる。このように、化合物半導体結晶の製造装置は、高精度な圧力制御が可能であることが望ましい。
【0011】
また、図17および図18に示す特許文献1の機器構成においては、連続的に圧力を調整している圧力調整弁208の開度の制御性の問題から、しばしば閉の状態にすべき時に完全に閉の状態にならず、微小流量のガスを通過させてしまう現象、いわゆる“出流れ”と呼ばれる現象が起こる恐れがある。この場合は、圧力の制御性が悪化するだけでなく、加熱された反応容器201の内部の圧力が所望の圧力以上に上昇して破裂するなど、設備が危険な状態になる恐れがある。この危険は、特許文献1の圧力調整弁208をマスフローコントローラーに変更し、精密な流量制御によって反応容器201の内部の圧力を制御しようと試みても同様に起こり得る。このように制御性および安全上の観点からも、化合物半導体結晶の製造装置は、反応容器にガスを供給する弁に、圧力調整弁やマスフローコントローラーなど、連続的に圧力または流量を調整する機器を用いるのではなく、ストップバルブなどの断続的に開または閉の状態を確実に作れる弁を用いるものであることが望ましい。
【0012】
また、図17および図18に示す特許文献1の機器構成においては、たとえば反応容器201が加熱装置205によって加熱された際、圧力調整弁208によってではなく、ボイル・シャルルの法則によって反応容器201の内部の圧力が上昇し、所望の圧力以上になり、その後圧力調整弁208では減圧側に圧力を調整できず、反応容器201の内部の圧力が大幅に設計を超えた圧力となって、反応容器201が破裂するなど、設備が危険な状態になる恐れもある。このように制御性および安全上の観点から、化合物半導体結晶の製造装置は、反応容器に接続する圧力制御機構によって、加圧および減圧の双方を行えることが望ましい。
【0013】
また、特許文献1の機器構成に見られる圧力調整弁208は、一般に価格がストップバルブの10倍以上であるなど、たいへん高価な機器である。安全性、制御性を確保しることが前提だが、産業上の利用を考えると、化合物半導体結晶の製造装置は、出来るだけ安価な機器を用いることが望ましい。
【0014】
したがって、本発明の目的は、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なう、化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の化合物半導体結晶の製造装置は、気体供給部と、結晶成長室と、気体排出部と、圧力制御部とを備えている。結晶成長室は、気体供給部から気体が供給される。気体排出部は、結晶成長室から気体を排出する。圧力制御部は、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ結晶成長室と、気体供給部および気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。
【0016】
本発明の化合物半導体結晶の製造方法は、気体供給部から結晶成長室へ気体を供給する工程と、結晶成長室から気体排出部へ気体を排出する工程とを備える。気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ結晶成長室と、気体供給部および気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する圧力制御部を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0017】
本発明の化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、気体を供給する工程時には、結晶成長室の圧力と異なる圧力となるように気体供給部からの気体を圧力制御部に一旦保持し、その気体を結晶成長室へ供給することができる。気体を結晶成長室に供給した際、圧力制御部の圧力と結晶成長室の圧力とは一時的に等しくなる。圧力制御部から結晶成長室への1回の気体の供給量はその最大量が圧力制御部に保持した量(モル数)以下である。圧力制御部に保持した気体の量(モル数)は、圧力制御部の圧力と、圧力制御部の体積とに比例し、圧力制御部の絶対温度に反比例する。このため、圧力制御部の圧力、体積および温度を任意に設定することによって、圧力制御部から結晶成長室への1回の気体の供給量を自在に制御でき、結晶成長室の内部の気体の圧力上昇の精度を自在に高めることができる。これを繰り返すことにより、気体を供給する工程時に精度を向上して結晶成長室の内部の気体の圧力を制御することができる。
【0018】
また、気体を排出する工程時には、圧力制御部の圧力を結晶成長室の内部の圧力と異なる圧力としておき、次に結晶成長室の圧力と圧力制御部の圧力とが一時的に等しい圧力となるように、結晶成長室からの気体を圧力制御部に排出して圧力制御部で保持する。次にその気体を、圧力制御部の圧力と気体排出部の圧力とが等しい圧力になるように圧力制御部から気体排出部に排出することができる。結晶成長室から圧力制御部への1回の気体の排出量はその最大量が圧力制御部に保持した量(モル数)以下である。圧力制御部に保持した気体の量(モル数)は、圧力制御部の圧力と、圧力制御部の体積とに比例し、圧力制御部の絶対温度に反比例する。このため、圧力制御部の圧力、体積および温度を任意に設定することによって、結晶成長室から圧力制御部への1回の気体の排出量を自在に制御でき、結晶成長室の内部の気体の圧力減少の精度を自在に高めることができる。これを繰り返すことにより、気体を排出する工程時に精度を向上して結晶成長室の内部の気体の圧力を制御することができる。
【0019】
このように、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくともいずれか一方で、動作1回あたりの気体の供給量または排出量を自在に制御できる圧力制御部を用いることにより、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を自在に向上して化合物半導体結晶の製造を行なう。
【0020】
ここで、上記「結晶成長室と、開放されることで断続的に圧力が変化する」とは、圧力制御部が結晶成長室と開放された場合、圧力制御部の圧力と結晶成長室の圧力とが等しくなるように気体が流動することを言う。上記「気体供給部および気体排出部の少なくとも一方に、開放されることで断続的に圧力が変化する」とは、圧力制御部が気体供給部または気体排出部の少なくとも一方に開放された場合、圧力制御部の圧力と、気体供給部の圧力および気体排出部の圧力との少なくとも一方が等しくなるように気体が流動することを言う。
【0021】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部は、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室と気体排出部との間に接続される。
【0022】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程では、圧力制御部を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0023】
これにより、気体を供給する工程および気体を排出する工程の両方の工程で、圧力制御部を用いることができるので、気体供給部または気体排出部の圧力や、圧力制御部の内容積や温度などを適切に設定することによって、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を自在に向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【0024】
上記化合物半導体結晶の製造装置において、圧力制御部において、気体供給部と結晶成長室との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室および気体排出部との間の圧力を制御する制御部とが同じとしてもよい。
【0025】
上記化合物半導体結晶の製造方法において、気体を供給する工程および気体を排出する工程では、気体供給部と結晶成長室との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室および気体排出部との間の圧力を制御する制御部とが同じである圧力制御部を用いて結晶成長室の内部の圧力を制御してもよい。
【0026】
これにより、気体を供給する工程での圧力制御部と、気体を排出する工程での圧力制御部とを共有することができる。このため、結晶製造装置の構成要素を低減できるので、コストを低減して化合物半導体結晶を製造することができる。
【0027】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部は、2つの弁と、弁で仕切られる配管とを有する制御部を含む。
【0028】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、2つの弁と、弁で仕切られる配管とを有する制御部を含む圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0029】
弁は連続的に開度を調整できるものである必要は無いが、断続的に確実に開閉できるものであれば好ましい。このような弁の開閉の動作により、弁で仕切られる配管に気体を確実に保持することができる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【0030】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部は、3つ以上の弁と、弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する制御部を含む。
【0031】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、3つ以上の弁と、弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する制御部を含む圧力制御部を用いて結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0032】
弁を開閉の動作により、弁で仕切られる配管における2つ以上の領域に気体を保持することができる。この2つ以上の領域を異なる圧力に制御することもできる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力制御の精度をより高めることができる。
【0033】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、結晶成長室と、圧力制御部とを接続する接続配管と、接続配管に設けられたバッファ配管とをさらに備え、バッファ配管は、接続配管の容積と異なる容積を有する。
【0034】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、結晶成長室と圧力制御部とを接続する接続配管に設けられ、かつ接続配管と異なる容積のバッファ配管を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0035】
バッファ配管により、結晶成長室の内部の圧力の変化量をより最適化することができる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【0036】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部を加熱する加熱部をさらに備えている。
【0037】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、圧力制御部を加熱する。
【0038】
これにより、圧力制御部で保持する気体のモル数を調整することができる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【0039】
上記化合物半導体結晶の製造装置および製造方法において好ましくは、結晶成長室の圧力を制御するための指令部を設け、指令部に予め設定された圧力制御プログラムと、圧力計からの圧力の値とに応じて、指令部から圧力制御部に指令を出す。
【0040】
これにより、結晶成長に必要な圧力制御と温度制御とを同時に行なうことや、圧力計からの圧力の値に応じて、最も圧力制御性が良くなるように圧力制御部に指令を出すことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法によれば、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の開始状態を概略的に示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の終了状態を概略的に示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法における制御動作を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態3における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態4における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態4における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の開始状態を概略的に示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態4における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の終了状態を概略的に示す模式図である。
【図10】実施例における加圧時の結晶成長室内部の気体の圧力を示す図である。
【図11】実施例における加圧時の結晶成長室内部の気体の圧力変化量を示す図である。
【図12】実施例における減圧時の結晶成長室内部の気体の圧力を示す図である。
【図13】実施例における減圧時の結晶成長室内部の気体の圧力変化量を示す図である。
【図14】実施例における結晶成長室の中の温度および圧力を示す図である。
【図15】実施例における結晶成長後の結晶表面の顕微鏡写真を示す図である。
【図16】実施例における結晶成長後の結晶表面の顕微鏡写真を示す他の図である。
【図17】特許文献1の結晶成長装置の構成例を示す図である。
【図18】特許文献1の結晶成長装置の構成例を示す他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0044】
(実施の形態1)
図1を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置を説明する。図1に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、気体供給部101と、配管102、103と、結晶成長室110と、気体排出部120と、圧力制御部130、140と、減圧弁150と、圧力計151と、指令部160とを備えている。
【0045】
気体供給部101は、結晶成長室110へ気体を供給する。気体供給部101が供給する気体は、たとえば製造する化合物半導体結晶の原料を含む。気体供給部101は、結晶成長室110の内部よりも高い圧力で保持されている。気体供給部101は、たとえば窒素ガスボンベである。
【0046】
配管102は、気体供給部101と圧力制御部130とを接続し、内部に気体を流動させる。配管103は、圧力制御部130、140と、結晶成長室110とを接続し、内部に気体を流動させる。
【0047】
結晶成長室110は、気体供給部101から気体が供給される。結晶成長室110は、所望の圧力になるように気体が供給され、内部で化合物半導体結晶を成長する。結晶成長室110は、たとえばフラックス法などの液相成長法の場合、加熱部111と反応容器112とを含む。加熱部111は、気体供給部101から供給され、かつ圧力制御された気体114および原料を含む溶媒113を加熱する。反応容器112は、溶媒113および種基板115を内部に保持する。
【0048】
気体排出部120は、結晶成長室110から製造装置の外部へ気体を排出する。気体排出部120は、結晶成長室110よりも低い圧力になっており、たとえば大気圧となっている。気体排出部120を大気圧とする場合は、排出ガスの成分に安全上や環境上の問題が無ければ、そのまま大気開放としてもよい。
【0049】
圧力制御部130、140は、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続されている。圧力制御部130、140は、それぞれ結晶成長室110と、気体供給部101および気体排出部120の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。
【0050】
圧力制御部130は、2つの弁131、132と、この2つの弁131、132で仕切られる配管133とを有している。圧力制御部140は、2つの弁141、142と、この2つの弁141、142で仕切られる配管143とを有している。弁131、132、141、142は、それぞれ開閉可能である。弁131、132および弁141、142で仕切られる配管133および配管143の内部の圧力を、それぞれ弁131、142を開くことで、結晶成長室110の内部の圧力と異なる圧力にすることができる。あるいは、それぞれ弁132、141を開くことで、結晶成長室110と配管133および配管143が開放され、結晶成長室110の内部の圧力と等しい圧力にすることができる。配管133、143は弁131、132、141、142により閉空間にすることができる。
【0051】
圧力制御部130、140を加熱する加熱部(図示せず)が配置されてもよい。この場合、加熱部はたとえば配管133、143を加熱可能である。加熱部によっても配管133、143内部の気体のモル数を調整することができる。
【0052】
減圧弁150は、気体供給部101から供給される気体の圧力を減圧する。圧力計151は、結晶成長室110内部の圧力を測定する。または、気体供給部101から供給される気体の圧力が不足している場合には、減圧弁150に代えてこの箇所にコンプレッサを設け、気体供給部101から供給される気体の圧力を加圧しても良い。
【0053】
指令部160は、結晶成長室110の圧力を制御するために、圧力計151からの圧力の値に応じて弁131、132、141、142の開閉を指令する。
【0054】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、図1に示す製造装置を用いて行なう。
【0055】
まず、気体供給部101から結晶成長室110へ気体を供給する。気体供給部101から導出された気体は、減圧弁150により圧力がP1(P1は結晶成長室110の圧力よりも高い)に調整され、配管102を介して、圧力制御部130へ流入する。圧力制御部130へ流入した気体を、結晶成長室110へ供給する。
【0056】
このとき、気体供給部101と結晶成長室110との間に接続される圧力制御部130を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御する。本実施の形態では、2つの弁131、132と、この2つの弁131、132で仕切られる配管133とを有する圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する。
【0057】
具体的には、図2に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じる。この状態で、圧力がP1に調整された気体を配管133に供給する。これにより、配管133には、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体が充填される。このとき、圧力制御部130(本実施の形態では配管133)を加熱して温度T1をさらに調整してもよい。
【0058】
その後、図3に示すように、弁131を閉め、弁132を開ける。これにより、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体が、配管103を介して結晶成長室110に供給されるので、結晶成長室110内部の圧力を高めることができる。
【0059】
この圧力制御部130の1回の動作(図2における開始状態から図3における終了状態までの動作)において、質量保存の法則および気体の状態方程式から、T1、TAをそれぞれ絶対温度(単位K)として、(P1×V1)/(R×T1)+(P2×VA)/(R×TA)=(P3×V1)/(R×T1)+(P3×VA)/(R×TA)の関係が成立する。したがって、圧力制御部130の1回の動作において、結晶成長室110の内部の圧力はP2からP3へ上昇する。一方、圧力制御部130の内部の圧力は、P1からP3に下降する。このように、圧力制御部130内部の気体は、結晶成長室110に向かって全てが押し出されるのではない。弁132を開けることで、圧力制御部130の内部の圧力と結晶成長室110の内部の圧力とが、それぞれP1とP2との間の圧力であるP3に等しくなるように気体が流動する。このことは、結晶成長室110の内部の圧力を精密に制御できることに寄与している。その後、弁132を閉じる。
【0060】
そして、上述の工程を断続的に繰り返すことにより、圧力制御部130の1回の動作毎に、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体を上記関係式に従ってその一部を結晶成長室110に供給できるので、精度を向上して結晶成長室110内部の圧力を上昇することができる。なお、圧力制御部130の1回の動作については、圧力計151により測定される結晶成長室110内部の圧力に基づいて、指令部160により弁131、132の開閉およびその開になる時間を制御してもよい。
【0061】
結晶成長室110の内部が所望の圧力に達すると、化合物半導体結晶の成長を行なう。たとえば、種基板115が反応容器112の内部に配置され、反応容器112内に原料である金属を含む溶媒113が収容されている。加熱部111により溶媒113を加熱して、液化する。そして、圧力制御部130から供給される気体を溶媒113に溶解させる。これにより、気体が溶解した溶媒を種基板115に接触させることができる。この状態で、圧力制御部130から供給される気体の圧力を調整して、種基板115上に化合物半導体結晶を成長する。
【0062】
なお、結晶成長中においても、圧力が下がった場合には、圧力制御部130を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を上昇させてもよい。この場合、結晶成長室110内部の圧力を制御するために、指令部160を用いてもよい。
【0063】
次に、結晶成長室110の内部を冷却および減圧するために、結晶成長室110から気体排出部120へ気体を排出する。このとき、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続される圧力制御部140を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御する。本実施の形態では、2つの弁141、142と、この弁141、142で仕切られる配管143とを有する圧力制御部140を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する。
【0064】
具体的には、弁131、132、142を閉じ、弁141を開ける。この状態で、配管143に結晶成長室110から排出した気体を供給する。この場合、配管143は、圧力が高い気体が充填される。このとき、圧力制御部140(本実施の形態では配管143)を加熱して充填される気体のモル数を調整してもよい。
【0065】
その後、弁141を閉め、弁142を開ける。これにより、配管143に充填された気体が、気体排出部120に排出されるので、結晶成長室110内部の圧力を低くすることができる。圧力制御部140の1回の動作で、結晶成長室110からの気体を少しずつ減圧することができるので、上述の工程を断続的に繰り返すことにより、精度を向上して圧力を下降することができる。なお、圧力制御部140の1回の動作については、圧力計151により測定される結晶成長室110内部の圧力に基づいて、指令部160により弁141、142の開閉およびその開になる時間を制御してもよい。また、気体排出部120の圧力は大気圧でもよく、結晶成長室110の内部の圧力より低い任意の圧力に制御してもよい。
【0066】
次に、結晶成長室110から化合物半導体結晶を取り出す。以上の工程を実施することにより、化合物半導体結晶を製造することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、気体を供給する工程および気体を排出する工程で、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続される圧力制御部130、140を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御している。しかし、本発明は、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方において、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間の少なくとも一方に接続される圧力制御部130、140を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御すればよい。
【0068】
また、本実施の形態では、化合物半導体結晶の成長方法としてフラックス法などの液相成長法を例に挙げて説明したが、圧力の精密制御が必要な結晶成長法が広く適用可能であり、ガスが直接結晶の原料とならない液相成長法である融液成長法や、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法などの気相成長法などを適用してもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、気体供給部101から供給される気体は、原料を含む気体を例に挙げて説明したが、気体供給部101から供給される気体は、キャリアガスなど、原料を含んでいなくてもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、圧力制御部130、140により、結晶成長室110の内部の圧力変化をたとえば図4に示すような状態にすることができる。なお、図4において、矢印は、圧力制御部130、140の1回の動作による時間変化および圧力変化を示し、実線は設定圧力を示し、点線は温度を示す。また、e(時間)からf(時間)は結晶成長室110内部の圧力を上昇する工程であり、f(時間)からg(時間)は結晶成長する工程であり、g(時間)からh(時間)は結晶成長室110内部の圧力を下降する工程である。
【0071】
具体的には、気体を供給する工程時には、結晶成長室110の圧力よりも高い圧力となるように気体供給部101からの気体を圧力制御部130(本実施の形態では配管133)に一旦保持し、その気体を結晶成長室110へ供給することができる。圧力制御部130から結晶成長室110への1回の気体の供給では、圧力制御部130の圧力P1、体積V1、温度T1をそれぞれ適切に選んで、圧力制御部130の1回の動作によって結晶成長室110に供給する気体のモル数を少なくすることで、圧力制御部130の1回の動作による圧力変化を少なくできる。また1回の気体の供給のために弁131、132が開閉する時間を短くすることで、圧力制御部130の1回の動作による時間変化を少なくできる。これらの結果として図4における矢印がそれぞれ短くなり、結晶成長室110の内部の気体の圧力上昇の精度を高めることができる。これを繰り返すことにより、図4に示すように、時間e(時間)からf(時間)の間に、結晶成長室110の温度をc(℃)からd(℃)まで上昇するとともに、圧力をa(MPa)からb(MPa)まで少しずつ(階段状に)上昇することができる。このため、設定圧力通りに、精度を向上して結晶成長室110の内部の気体の圧力を上昇することができる。
【0072】
また、気体を排出する工程時には、結晶成長室110の圧力よりも低い圧力である圧力制御部140(本実施の形態では配管143)に、結晶成長室110からの気体を一旦保持し、その気体を気体排出部120から排出することができる。結晶成長室110から圧力制御部140への1回の気体の排出では、結晶成長室110の内部の気体の圧力減少の精度を高めることができる。これを繰り返すことにより、図4に示すように、時間g(時間)からh(時間)の間に、結晶成長室110の温度をd(℃)からc(℃)まで下降するとともに、圧力をb(MPa)からa(MPa)まで、少しずつ(階段状に)下降することができる。このため、設定圧力通りに、精度を向上して結晶成長室110の内部の気体の圧力を下降することができる。
【0073】
以上より、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくともいずれか一方で、圧力制御部130、140を用いることにより、結晶成長室110の内部の気体の圧力制御の精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【0074】
このように本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法は圧力制御の精度を向上できるので、突発的な核生成や不均一な成長が起こりにくく、面内での成長速度や結晶品質が均一化される。このため、成長表面が平坦であったり均質であったりする化合物半導体結晶を製造することができる。また核生成が面内で不均一に起こりにくくなるので、転位密度分布の少ない化合物半導体結晶を製造することができる。さらに、このような高品質な化合物半導体結晶をコストを低減して製造することができる。
【0075】
特に、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法は、フラックス法に好適に用いられる。フラックス法は、気体、液体、および固体が共存する系であり、液体内にはフラックス(溶媒)としてNaなどのアルカリ金属や、自己フラックスとして成長しようとする結晶の構成元素(たとえばGa)などを入れてもよい。このような系では基本的に気相成分の液相への溶解量はヘンリーの法則により気相成分の分圧に比例する。この溶解量と液相の温度とによって、結晶成長速度、核生成に影響を及ぼす過飽和度が決まる。したがって、本実施形態のように圧力制御の精度を向上できる製造装置および製造方法によれば、均質な化合物半導体結晶を製造することができる。
【0076】
本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法において製造する化合物半導体結晶は特に限定されないが、窒化物結晶を製造することが好ましく、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)などを製造することがより好ましい。窒素は溶媒113に溶けにくいが、圧力制御の精度を向上することで、窒素を溶媒113に各温度で必要な量だけ精密に制御して溶解させることができるためである。
【0077】
(実施の形態2)
図5を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置を説明する。図5に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、基本的には図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置と同様の構成を備えているが、気体供給部101と結晶成長室110との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室110と気体排出部120との間の圧力を制御する制御部とが同じである点において異なっている。
【0078】
具体的には、図5に示すように、本実施の形態では、気体供給部101と結晶成長室110との間であって、かつ結晶成長室110と気体排出部120との間に、圧力制御部130が配置されている。
【0079】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1の化合物半導体結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、気体を供給する工程および気体を排出する工程では、気体供給部101と結晶成長室110との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室110および気体排出部120との間の圧力を制御する制御部とが同じである圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する点において異なっている。具体的には、気体を排出する工程では、弁121を開けて、圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御している。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、気体を供給する工程および気体を排出する工程の両方の工程で、圧力制御部130を用いるので、結晶成長室110内部の気体圧力の制御精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【0081】
(実施の形態3)
図6を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置を説明する。図6に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、基本的には図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置と同様の構成を備えているが、圧力制御部130、140は、3つ以上の弁131、132、134、141、142、144と、この3つ以上の弁131、132、134、141、142、144で2つ以上の領域に仕切られる配管133、135、143、145とを有する点において異なっている。
【0082】
具体的には、圧力制御部130は、3つの弁131、132、134と、弁131、132で仕切られている配管133と、弁132、134で仕切られている配管135とを有している。圧力制御部140は、3つの弁141、142、144と、弁141、142で仕切られている配管143と、弁141、144で仕切られている配管145とを有している。
【0083】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1の化合物半導体結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、3つ以上の弁131、132、134、141、142、144と、この3つ以上の弁131、132、134、141、142、144で2つ以上の領域に仕切られる配管133、135、143、145とを有する圧力制御部130、140を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する点において異なる。
【0084】
具体的には、気体を供給する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を高める場合には、まず、3つの弁131、132、134のうち、弁132、134を閉じ、弁131を開ける。その後、弁132を開ける。最後に弁131、132を閉じる。これにより、配管133、135に圧力を高めた気体を充填することができる。このとき、配管133、135の内部の容積は同じであっても、異なっていてもよい。
【0085】
その後、弁131、132を閉じたままで、かつ弁134を開けると、配管135に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。その後、弁131を閉じたままで、かつ弁132、134を開けると、配管133に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。最後に弁131、132、134を閉じる。このような動作を繰り返すことにより、結晶成長室110内部の圧力を段階的に高めることができる。
【0086】
さらに、気体を供給する工程において、制御性を一層高めて結晶成長室110の圧力を高める場合には、まず、3つの弁131、132、134のうち、弁132、134を閉じ、弁131を開ける。その後、弁131を閉じてから、弁132を開ける。最後に弁132を閉じる。これにより、配管133、135に圧力を高めた気体を充填することができ、配管133、135に充填される圧力は、減圧弁150によって制御する圧力よりも低くなる。このとき、配管133、135の内部の容積は同じであっても、異なっていてもよい。
【0087】
その後、弁131、132を閉じたままで、かつ弁134を開けると、配管135に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。その後、弁131を閉じたままで、かつ弁132、134を開けると、配管133に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。最後に、弁131、132、134を閉じる。このような動作を繰り返すことにより、結晶成長室110内部の圧力を一層小刻みに、段階的に高めることができる。このような動作は、結晶成長工程で特に圧力の精密な制御を行ないたい場合に、好適に用いられる。
【0088】
結晶成長室110の内部が所望の圧力に達するまで、圧力制御部130の上記動作を繰り返す。
【0089】
また、気体を排出する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を下げる場合には、まず、3つの弁141、142、144のうち、弁141、142を閉じ、弁144を開ける。これにより、結晶成長室110からの気体は、配管145に充填される。その後、弁142を閉じたままで、弁141を開けると、結晶成長室110からの気体は、配管143にも充填される。この状態で、弁141、144を閉じ、弁142を開けると、配管143に充填された気体が気体排出部120から外部に排出される。弁144を閉じ、弁141を開けると、配管145に充填された気体も気体排出部120から排出される。これらにより、結晶成長室110内部の圧力を段階的に低くすることができる。
【0090】
さらに、気体を排出する工程において、制御性を一層高めて結晶成長室110の内部の圧力を下げる場合には、まず、3つの弁141、142、144のうち、弁141、142を閉じ、弁144を開ける。これにより、結晶成長室110からの気体は、配管145に充填される。その後、弁144を閉じてから、弁142を閉じたままで、弁141を開けると、配管145に充填された気体は、その一部が配管143にも充填され、配管145、143に充填された気体の圧力は、結晶成長室110の圧力よりも低くなる。この状態で、弁141、144を閉じ、弁142を開けると、配管143に充填された気体が気体排出部120から外部に排出される。最後に、弁141、142、144を閉じる。このような動作を繰り返すことにより、結晶成長室110内部の圧力を一層小刻みに、段階的に低くすることができる。このような動作は、結晶成長工程で特に圧力の精密な制御を行ないたい場合に、好適に用いられる。
【0091】
結晶成長室110の内部が所望の圧力に達するまで、圧力制御部130の動作を繰り返す。
【0092】
なお、圧力制御部130、140の1回の動作において、上記に説明した場合以外で、2以上の配管133、135、143、145のうちの1つの配管のみに気体を充填させる場合があってもよい。
【0093】
また、圧力制御部130、140の1回の動作は上記の弁の開閉の順序に限定されず、他の順序により結晶成長室110の内部の圧力を制御してもよい。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、弁131、132、134、141、142、144の開閉の動作により、弁131、132、134、141、142、144で仕切られる配管133、135、143、145に気体を保持することができる。この配管133、135、143、145内の圧力を互いに異なる圧力に制御することもできる。このため、結晶成長室110の内部の気体の圧力上昇の精度をより高めることができる。
【0095】
(実施の形態4)
図7を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置について説明する。図7に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置と基本的には同様の構成を備えているが、配管103の容積と異なる容積を有するバッファ配管170をさらに備えている点において異なる。本実施の形態では、圧力制御部130、140と、結晶成長室110との間に、バッファ配管170が配置されている。
【0096】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、結晶成長室110と圧力制御部130、140とを接続する配管103に設けられ、かつ配管103と異なる容積のバッファ配管170を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御する点において異なる。
【0097】
具体的には、気体を供給する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を高める場合には、まず、図8に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じた状態で、配管133は、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体を充填する。次いで、図9に示すように、弁131を閉め、弁132を開ける。これにより、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体が、配管103およびバッファ配管170に充填されると共に結晶成長室110に供給される。
【0098】
この1回の動作において、質量保存の法則および気体の状態方程式から、(P1×V1)/(R×T1)+(P2×VB)/(R×TB)+(P2×VA)/(R×TA)=(P3×V1)/(R×T1)+(P3×VB)/(R×TB)+(P3×VA)/(R×TA)の関係が成立する。したがって、圧力制御部130の1回の動作において、結晶成長室110の内部の圧力はP2からP3へ上昇する際に、バッファ配管170でも結晶成長室110の内部の圧力を調整することができる。たとえば関係式より、バッファ配管の容積VBを大きくするほど、圧力P2と圧力P3との差は小さくなるので、結晶成長室110内部の圧力をより小刻みに、段階的に変化させることができる。
【0099】
また、気体を排出する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を下げる場合においても同様に、バッファ配管170でも結晶成長室110の内部の圧力を調整することができる。
【0100】
以上より、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、バッファ配管170により、結晶成長室110の内部の圧力の変化量をより最適化することができる。このため、結晶成長室110の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【実施例】
【0101】
本実施例では、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方で、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、結晶成長室の内部の圧力と異なる圧力に制御可能な圧力制御部を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御することの効果について調べた。
【0102】
(本発明例1)
本発明例1では、図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置を用いて、結晶成長室110に気体を供給し、その後結晶成長室110から気体を排出した。先ずはこの製造装置の圧力の制御の基本的な精度を調べるため、結晶成長室110、圧力制御部130、140の温度を全て室温として、結晶成長室110の圧力上昇および圧力下降の速度、および圧力制御部130、140のそれぞれの1回の動作における、結晶成長室110の圧力変化量を調べた。
【0103】
具体的には、まず、気体供給部101から結晶成長室110へ気体として窒素ガスを圧力制御部130へ流動させ、さらに結晶成長室110へ供給した。このとき、2つの弁131、132と、この弁131、132で仕切られる配管133とを有する圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を以下のように10MPa近傍まで上昇した。
【0104】
なお、気体供給部101から排出される気体の圧力は14.7MPaであり、減圧弁150により11.0MPaまで減圧した。配管133の体積は、1.7ccであった。結晶成長室110の体積は、500ccであった。また、結晶成長室110の温度は、加圧前は室温であり、加圧後も室温であった。
【0105】
結晶成長室110の圧力の上昇は以下のようにした。すなわち、図2に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じた状態で、配管133に気体を供給した。その後、図3に示すように、弁131を閉め、弁132を開け、配管103に充填された気体を結晶成長室110に供給した。この動作を断続的に繰り返して、結晶成長室110の内部の圧力を上昇した。その結果を図10および図11に示す。なお、図10は、圧力を上昇する工程において、経過時間に対する圧力を示す。図11は、圧力を上昇する工程において、経過時間に対する圧力変化量を示す。図11中、実線は、本発明例1の圧力変化量を二乗近似した値である。
【0106】
図10に示すように、本発明例1の製造装置および製造方法によれば、結晶成長室の内部を41分以内に10MPaまで上昇することができた。
【0107】
また、図11に示すように、本発明例1の加圧工程における圧力変化量を理論値とほぼ同様にできた。さらに、結晶成長室110の内部の圧力を10MPaまで加圧した時には、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で0.002MPaであり、最も大きい場合でも0.01MPaとなり、結晶成長室110内部の圧力は非常に安定することがわかった。
【0108】
次に、結晶成長室110の内部を減圧するために、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続される圧力制御部140を用いて、結晶成長室110から気体排出部120へ気体を排出した。圧力制御部140は、2つの弁141、142と、この2つの弁141、142で仕切られる配管143とを有していた。配管143の体積は、1.7ccであった。また、結晶成長室110の温度は、減圧前は室温であり、減圧後の温度も室温であった。
【0109】
結晶成長室110の圧力の下降は以下のようにした。すなわち、弁131、132、142を閉じ、弁141を開けた状態で、配管143に結晶成長室110から排出した気体を充填した。その後、弁141を閉め、弁142を開け、配管143に充填した気体を気体排出部120に排出した。この動作を断続的に繰り返して、結晶成長室110の内部の圧力を10MPaから低減した。その結果を図12および図13に示す。なお、図12は、圧力を下降する工程において、経過時間に対する圧力を示す。図13は、圧力を下降する工程において、経過時間に対する圧力変化量を示す。図13中、実線は、本発明例1の圧力変化量を二乗近似した値である。
【0110】
図12に示すように、本発明例1の製造装置および製造方法によれば、60分経過後の結晶成長室の内部の圧力を0.56MPa以下まで下降することができた。
【0111】
また、図13に示すように、理論値とほぼ同様にすることができた。さらに、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で−0.002MPaであり、最も大きい場合でも−0.01MPaとなり、結晶成長室110内部の圧力は非常に安定することがわかった。
【0112】
(本発明例2)
本発明例2では、図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置を用いて、化合物半導体であるGaNの結晶成長をフラックス法(溶液成長法)によって行なった。本発明例2では結晶成長室110の圧力および温度をそれぞれ、所定の結晶成長条件とし、反応容器112をpBN坩堝とし、溶媒113を金属ガリウムとし、気体114を窒素ガスとし、種基板115を1辺10mmの正方形状で、厚さ400μmのGaN種基板とした。GaN種基板115上にて、液体状の金属ガリウムと、液体状の金属ガリウムに溶解した窒素ガスとを反応させることによって、GaNの結晶成長を行なった。
【0113】
具体的には、結晶成長室110の内部の温度の上昇の開始と同時に、気体供給部101から気体として窒素ガスを圧力制御部130へ流動させ、さらに結晶成長室110へ供給した。このとき、2つの弁131、132と、この弁131、132で仕切られる配管133とを有する圧力制御部130を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を0MPaから9MPaまで上昇させた。この結晶成長における結晶成長室110の中の温度および圧力条件を図14に示す。図14において、横軸は時間(単位:時間(hrs))を示し、0hrsは動作開始を示し、236hrsは動作終了を示す。また、図14において、実線は圧力を示し、点線は温度を示す。
【0114】
なお、気体供給部101から排出される気体の圧力は14.7MPaであり、減圧弁150により11.0MPaまで減圧した。配管133の体積は、1.7ccであった。結晶成長室110の体積は、500ccであった。また、結晶成長室110の温度は、結晶成長室110の圧力上昇前で圧力が0MPaの時は室温であり、結晶成長室110の圧力上昇後で圧力が9MPaの時は900℃であった。この圧力上昇および温度上昇はそれぞれ18時間で行なった。
【0115】
結晶成長室110の圧力の上昇は以下のように行なった。図2に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じた状態で、配管133に気体を供給した。その後、図3に示すように、弁131を閉じ、弁132を開け、配管103に充填された気体を結晶成長室110に供給した。最後に、弁132を閉じた。弁131および弁132を開けている時間はそれぞれ1秒間とし、全ての弁を閉じている時間はそれぞれ0.5秒間とした。よってこれら一連の動作に必要な時間は合計3秒間である。この一連の動作を、指令部160によって断続的に繰り返し行なうことで、徐々に結晶成長室110の圧力を上昇させた。一連の動作の繰り返しの間隔は、結晶成長室110の内部の圧力が0MPaから9MPaまで18時間で直線的に上昇するように、その時の結晶成長室110の内部の圧力に応じて指令部160から制御した。その後結晶成長室110の温度を900℃に、圧力を9MPaに保持する結晶成長時間を200時間設けた。この結晶成長時間中に、気体114である窒素ガスが、溶媒113である金属ガリウム中に溶解し、種基板115であるGaN種基板上に到達し、GaN結晶として成長する。結晶成長時間中に結晶成長に伴って消費された窒素ガスは、指令部160からの指令によって圧力制御部130から供給され、結晶成長時間中の圧力は一定に保たれる。
【0116】
本発明例2において、結晶成長室110の圧力の上昇時および圧力を保持する結晶成長時間中の結晶成長室110の内部の圧力は、結晶成長室110の温度にかかわらず所望の値に制御することができ、さらに、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で0.004MPaであり、最も大きい場合でも0.01MPaとなった。これは結晶成長時間における結晶成長室110の内部の圧力の0.04%〜0.1%の精度に収まっており、結晶成長室110内部の圧力は圧力上昇時および圧力保持時の双方で、非常に精密に制御させることができた。
【0117】
次に、結晶成長室110の内部を減圧するために、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続され、結晶成長室110の内部の圧力と異なる圧力に制御可能な圧力制御部140を用いて、結晶成長室110から気体排出部120へ気体を排出した。この圧力制御部140は、結晶成長室110と、気体供給部101および気体排出部120の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。圧力制御部140は、2つの弁141、142と、この2つの弁141、142で仕切られる配管143とを有しており、配管143の体積は、1.7ccとした。また、結晶成長室110の温度は、減圧前は900℃であり、減圧後の温度は室温とした。
【0118】
結晶成長室110の圧力の下降は以下のようにした。弁131、132、142を閉じ、弁141を開けた状態で、配管143に結晶成長室110から排出した気体を充填した。その後、弁141を閉じ、弁142を開け、配管143に充填した気体を気体排出部120に排出した。最後に、弁142を閉じた。これらの一連の動作を断続的に繰り返して、結晶成長室110の内部の圧力を9MPaから低減した。
【0119】
本発明例2において、圧力下降時においても、結晶成長室110の温度が変化していても、所望の時間で結晶成長室110の圧力を所望の値に制御することができ、さらに、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で−0.004MPaであり、最も大きい場合でも−0.01MPaとなった。これは結晶成長時間における結晶成長室110の内部の圧力の、0.04%〜0.1%の精度に収まっており、圧力下降時においても、結晶成長室110の内部の圧力は非常に精密に制御させることができた。
【0120】
結晶成長室110の内部の圧力が0MPaとなり、温度が室温となった後、反応容器112から種基板115(GaN種基板)およびその上に成長したGaN結晶を取り出し、王水に浸漬して溶媒113(金属ガリウム)を除去した後、ノマルスキ−顕微鏡で種基板115上に成長しているGaN結晶の表面形状を観察した。また、エッチングによって現れるエッチピットの密度によって表面の転位密度を評価した。
【0121】
その結果、種基板115上に成長しているGaN結晶の表面は、図15に示すように、ノマルスキ−顕微鏡観察で、非常に平坦で、全面に安定的に二次元的に成長したことを表す、ほぼ平行な成長縞が複数本観察された。また表面の転位密度はリン酸および硫酸の混合液によるエッチングでエッチピットを観察したところ、105個/cm2台またはそれ以下と見積もれ、低転位密度の結晶が成長していることを確認した。なお、図15は、本発明例2の結晶の100μm四方の視野のノマルスキー顕微鏡写真である。
【0122】
本発明例2において、成長した結晶は平坦で、転位密度も低いので、結晶成長室110の内部の圧力の制御性は十分に良好であったと考えられる。更に圧力を精密に制御したい場合は、気体供給部101から排出される気体の圧力を、減圧弁150により現状の11MPaより低く減圧することや、配管133の体積を更に少なくすることや、あるいは図7に記載されるバッファ配管170を設けることなどにより、上記質量保存の法則および気体の状態方程式から導いた関係式におけるP2(圧力制御部の動作前)とP3(圧力制御部の動作後)との圧力差を小さくすることで、自在に精密に制御することができる。
【0123】
(比較例)
本発明例2において、圧力制御部130の代わりに圧力制御弁を用いて、圧力制御部140の代わりに開閉が可能なストップバルブ(弁)を用いて、圧力制御弁は指令部160によって制御し、他の条件は同じとしてGaNの結晶成長を行なった。その結果、結晶成長室の内部の圧力を9MPaまで上昇させることはできたが、9MPaに保持すべき結晶成長時間(200時間)の圧力が、8.8MPa〜9.1MPaの間で変動しており、本発明例2と比較して、圧力の制御性が10倍以上悪かった。
【0124】
結晶成長時間の終了後、結晶成長室110の温度を室温まで低減し、内部の窒素ガスを排出した後、反応容器112から種基板115(GaN種基板)およびその上に成長したGaN結晶を取り出し、王水に浸漬して溶媒113(金属ガリウム)を除去した後、ノマルスキ−顕微鏡で種基板115上に成長しているGaN結晶の表面形状を観察した。また、カソードルミネッセンスによって表面の転位密度を評価した。
【0125】
その結果、種基板115上に成長しているGaN結晶の表面は、図16に示すように、ノマルスキ−顕微鏡観察で、ランダムな成長縞が観察された。また表面の転位密度はリン酸および硫酸の混合液によるエッチングでエッチピットを観察したところ、107〜108個/cm2台と見積もれ、高転位密度の結晶が成長していることを確認した。結晶成長時間における窒素ガスの圧力の制御性が悪かったため、溶液中の窒素濃度が不安定になり、GaN種基板表面でランダムにGaN結晶の核生成が起こりやすくなり、その後も面内で不均一に成長が進んだ結果、核同士が合体するように結晶成長が進んだことを表すランダムな成長縞が見られ、またその合体部では結晶の方位ずれが起こり、転位密度が高くなったものと考えられる。なお、図16は、比較例の結晶の100μm四方の視野のノマルスキー顕微鏡写真である。
【0126】
以上より、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方で、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、結晶成長室の内部の圧力と異なる圧力に制御可能な圧力制御部を用いることにより、結晶成長室内部の気体圧力を高精度に制御できることが確認できた。またこの際に連続的に圧力を調整する圧力制御弁は用いる必要がないため、製造装置の機器を安価にすることが可能であり、また断続的に確実に弁の開閉ができるため、安全に化合物半導体結晶を製造することができる。
【0127】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
101 気体供給部、102,103,133,135,143,145 配管、110 結晶成長室、111 加熱部、112 反応容器、113 溶媒、114 気体、115 種基板、120 気体排出部、130 圧力制御部、121,131,132,134,141,142,144 弁、150 減圧弁、151 圧力計、160 指令部、170 バッファ配管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などの化合物半導体結晶は、発光素子、電子素子、および半導体センサなどの半導体デバイスを形成するための材料として非常に有用である。このような化合物半導体結晶を成長させるために、従来から、たとえばフラックス法などが提案されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1に開示の結晶成長装置は、反応容器(結晶成長室)と、反応容器内の圧力以上の窒素ガスが充填されている第1のガス供給装置と、窒素ガスの圧力を調整する圧力調整機構とを備えている。圧力調整機構は、圧力センサと圧力調整弁とを有している。そして、特許文献1には、この結晶成長装置を用いて、III族窒化物結晶を成長することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−64097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の結晶成長装置および結晶成長方法では、1つの圧力調整弁を用いて、反応容器内の窒素ガス圧力を調整している。本発明者が鋭意研究した結果、上記特許文献1に開示の1つの圧力調整弁を用いて窒素ガスなどの気体の圧力を制御すると、反応容器内の気体の圧力を精密に制御できないことを見い出した。
【0006】
図17および図18は、特許文献1に開示の結晶成長装置の構成例を示す図である。図17および図18を参照して、特許文献1の課題について、以下に詳細に説明する。
【0007】
特許文献1において、図17に示すように、第1のガス供給装置220の第1のシリンダー210は常に反応容器201の内部の圧力以上になるようにガスが充填されており、これらの間に圧力調整弁208が介されて圧力を調整していると記載されている(特許文献1の請求項1および段落0023−0025など)。このことから、第1のシリンダー210の内部の圧力と反応容器201との内部の圧力とが等しくなるように、圧力調整弁208が全開に開放されることはなく、また圧力調整弁は一般に、設定された圧力に応じて弁の開度を調整するものであるから、その調整は連続的になされる。このような機構においては、圧力調整弁の開度の精度が、そのまま圧力制御の精度を決定づけるため、反応容器201の内部の圧力の精密な制御は非常に困難である。
【0008】
また、特許文献1において、図18に示すように、第2のガス供給装置230を用意した場合、フラックス法においては、Na(ナトリウム)などの危険物が第1のシリンダー210に拡散することを防ぐ効果は期待できることが記載されている(特許文献1の段落0038など)。しかし、第2のガス供給装置230の第2のシリンダー212は常に反応容器201の内部の圧力以上になるようにガスが充填されており、これらの間に圧力調整弁208が介されて圧力を調整していると記載されている(特許文献1の請求項2および段落0034など)。このことから、やはり第2のシリンダー212の内部の圧力と反応容器201の内部の圧力とが等しくなるように、圧力調整弁208が全開に開放されることはなく、また圧力調整弁は一般に、設定された圧力に応じて弁の開度を調整するものであるから、その調整は連続的に為される。このような機構においては、圧力調整弁の開度の精度が、そのまま圧力制御の精度を決定づけるため、反応容器201の内部の圧力の精密な制御はやはり非常に困難である。
【0009】
このように、特許文献1における反応容器201の内部の圧力の制御性は、圧力調整弁208の前後の圧力が常に異なっていることから、連続的に調整される圧力調整弁208の開度の精度に依存している。本発明者が追試したところによると、様々な機器を用いても、その精度は反応容器201の内部の設定圧力に対して10%以内に収めるのがせいぜいであり、たとえば1%未満となるような高精度な圧力制御弁は、得られ難いのが現状である。
【0010】
本発明者は、実際にこのような圧力調整弁208を用いた機器構成で、フラックス法によりGaNの結晶の成長を試みた。その結果、内部の圧力の制御性が設定圧力に対して±10%と大きく、結晶が成長しない場合が発生し、再現性に問題があり、また成長した結晶も全面で等しい成長速度で成長しないなど、品質面の問題があることが分かった。結晶成長を安定的に進行させるのに必要な圧力制御性は一般に高精度なものが必要であり、たとえば10MPaの反応容器の設定圧力に対して、0.1MPa〜0.01MPaの精度を実現するなど、圧力制御機構は、反応容器の内部の設定圧力に対して1%未満、より良くは0.1%未満が望まれる。このように、化合物半導体結晶の製造装置は、高精度な圧力制御が可能であることが望ましい。
【0011】
また、図17および図18に示す特許文献1の機器構成においては、連続的に圧力を調整している圧力調整弁208の開度の制御性の問題から、しばしば閉の状態にすべき時に完全に閉の状態にならず、微小流量のガスを通過させてしまう現象、いわゆる“出流れ”と呼ばれる現象が起こる恐れがある。この場合は、圧力の制御性が悪化するだけでなく、加熱された反応容器201の内部の圧力が所望の圧力以上に上昇して破裂するなど、設備が危険な状態になる恐れがある。この危険は、特許文献1の圧力調整弁208をマスフローコントローラーに変更し、精密な流量制御によって反応容器201の内部の圧力を制御しようと試みても同様に起こり得る。このように制御性および安全上の観点からも、化合物半導体結晶の製造装置は、反応容器にガスを供給する弁に、圧力調整弁やマスフローコントローラーなど、連続的に圧力または流量を調整する機器を用いるのではなく、ストップバルブなどの断続的に開または閉の状態を確実に作れる弁を用いるものであることが望ましい。
【0012】
また、図17および図18に示す特許文献1の機器構成においては、たとえば反応容器201が加熱装置205によって加熱された際、圧力調整弁208によってではなく、ボイル・シャルルの法則によって反応容器201の内部の圧力が上昇し、所望の圧力以上になり、その後圧力調整弁208では減圧側に圧力を調整できず、反応容器201の内部の圧力が大幅に設計を超えた圧力となって、反応容器201が破裂するなど、設備が危険な状態になる恐れもある。このように制御性および安全上の観点から、化合物半導体結晶の製造装置は、反応容器に接続する圧力制御機構によって、加圧および減圧の双方を行えることが望ましい。
【0013】
また、特許文献1の機器構成に見られる圧力調整弁208は、一般に価格がストップバルブの10倍以上であるなど、たいへん高価な機器である。安全性、制御性を確保しることが前提だが、産業上の利用を考えると、化合物半導体結晶の製造装置は、出来るだけ安価な機器を用いることが望ましい。
【0014】
したがって、本発明の目的は、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なう、化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の化合物半導体結晶の製造装置は、気体供給部と、結晶成長室と、気体排出部と、圧力制御部とを備えている。結晶成長室は、気体供給部から気体が供給される。気体排出部は、結晶成長室から気体を排出する。圧力制御部は、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ結晶成長室と、気体供給部および気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。
【0016】
本発明の化合物半導体結晶の製造方法は、気体供給部から結晶成長室へ気体を供給する工程と、結晶成長室から気体排出部へ気体を排出する工程とを備える。気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ結晶成長室と、気体供給部および気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する圧力制御部を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0017】
本発明の化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、気体を供給する工程時には、結晶成長室の圧力と異なる圧力となるように気体供給部からの気体を圧力制御部に一旦保持し、その気体を結晶成長室へ供給することができる。気体を結晶成長室に供給した際、圧力制御部の圧力と結晶成長室の圧力とは一時的に等しくなる。圧力制御部から結晶成長室への1回の気体の供給量はその最大量が圧力制御部に保持した量(モル数)以下である。圧力制御部に保持した気体の量(モル数)は、圧力制御部の圧力と、圧力制御部の体積とに比例し、圧力制御部の絶対温度に反比例する。このため、圧力制御部の圧力、体積および温度を任意に設定することによって、圧力制御部から結晶成長室への1回の気体の供給量を自在に制御でき、結晶成長室の内部の気体の圧力上昇の精度を自在に高めることができる。これを繰り返すことにより、気体を供給する工程時に精度を向上して結晶成長室の内部の気体の圧力を制御することができる。
【0018】
また、気体を排出する工程時には、圧力制御部の圧力を結晶成長室の内部の圧力と異なる圧力としておき、次に結晶成長室の圧力と圧力制御部の圧力とが一時的に等しい圧力となるように、結晶成長室からの気体を圧力制御部に排出して圧力制御部で保持する。次にその気体を、圧力制御部の圧力と気体排出部の圧力とが等しい圧力になるように圧力制御部から気体排出部に排出することができる。結晶成長室から圧力制御部への1回の気体の排出量はその最大量が圧力制御部に保持した量(モル数)以下である。圧力制御部に保持した気体の量(モル数)は、圧力制御部の圧力と、圧力制御部の体積とに比例し、圧力制御部の絶対温度に反比例する。このため、圧力制御部の圧力、体積および温度を任意に設定することによって、結晶成長室から圧力制御部への1回の気体の排出量を自在に制御でき、結晶成長室の内部の気体の圧力減少の精度を自在に高めることができる。これを繰り返すことにより、気体を排出する工程時に精度を向上して結晶成長室の内部の気体の圧力を制御することができる。
【0019】
このように、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくともいずれか一方で、動作1回あたりの気体の供給量または排出量を自在に制御できる圧力制御部を用いることにより、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を自在に向上して化合物半導体結晶の製造を行なう。
【0020】
ここで、上記「結晶成長室と、開放されることで断続的に圧力が変化する」とは、圧力制御部が結晶成長室と開放された場合、圧力制御部の圧力と結晶成長室の圧力とが等しくなるように気体が流動することを言う。上記「気体供給部および気体排出部の少なくとも一方に、開放されることで断続的に圧力が変化する」とは、圧力制御部が気体供給部または気体排出部の少なくとも一方に開放された場合、圧力制御部の圧力と、気体供給部の圧力および気体排出部の圧力との少なくとも一方が等しくなるように気体が流動することを言う。
【0021】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部は、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室と気体排出部との間に接続される。
【0022】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程では、圧力制御部を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0023】
これにより、気体を供給する工程および気体を排出する工程の両方の工程で、圧力制御部を用いることができるので、気体供給部または気体排出部の圧力や、圧力制御部の内容積や温度などを適切に設定することによって、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を自在に向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【0024】
上記化合物半導体結晶の製造装置において、圧力制御部において、気体供給部と結晶成長室との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室および気体排出部との間の圧力を制御する制御部とが同じとしてもよい。
【0025】
上記化合物半導体結晶の製造方法において、気体を供給する工程および気体を排出する工程では、気体供給部と結晶成長室との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室および気体排出部との間の圧力を制御する制御部とが同じである圧力制御部を用いて結晶成長室の内部の圧力を制御してもよい。
【0026】
これにより、気体を供給する工程での圧力制御部と、気体を排出する工程での圧力制御部とを共有することができる。このため、結晶製造装置の構成要素を低減できるので、コストを低減して化合物半導体結晶を製造することができる。
【0027】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部は、2つの弁と、弁で仕切られる配管とを有する制御部を含む。
【0028】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、2つの弁と、弁で仕切られる配管とを有する制御部を含む圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0029】
弁は連続的に開度を調整できるものである必要は無いが、断続的に確実に開閉できるものであれば好ましい。このような弁の開閉の動作により、弁で仕切られる配管に気体を確実に保持することができる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【0030】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部は、3つ以上の弁と、弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する制御部を含む。
【0031】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、3つ以上の弁と、弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する制御部を含む圧力制御部を用いて結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0032】
弁を開閉の動作により、弁で仕切られる配管における2つ以上の領域に気体を保持することができる。この2つ以上の領域を異なる圧力に制御することもできる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力制御の精度をより高めることができる。
【0033】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、結晶成長室と、圧力制御部とを接続する接続配管と、接続配管に設けられたバッファ配管とをさらに備え、バッファ配管は、接続配管の容積と異なる容積を有する。
【0034】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、結晶成長室と圧力制御部とを接続する接続配管に設けられ、かつ接続配管と異なる容積のバッファ配管を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御する。
【0035】
バッファ配管により、結晶成長室の内部の圧力の変化量をより最適化することができる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【0036】
上記化合物半導体結晶の製造装置において好ましくは、圧力制御部を加熱する加熱部をさらに備えている。
【0037】
上記化合物半導体結晶の製造方法において好ましくは、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、圧力制御部を加熱する。
【0038】
これにより、圧力制御部で保持する気体のモル数を調整することができる。このため、結晶成長室の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【0039】
上記化合物半導体結晶の製造装置および製造方法において好ましくは、結晶成長室の圧力を制御するための指令部を設け、指令部に予め設定された圧力制御プログラムと、圧力計からの圧力の値とに応じて、指令部から圧力制御部に指令を出す。
【0040】
これにより、結晶成長に必要な圧力制御と温度制御とを同時に行なうことや、圧力計からの圧力の値に応じて、最も圧力制御性が良くなるように圧力制御部に指令を出すことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の化合物半導体結晶の製造装置および化合物半導体結晶の製造方法によれば、結晶成長室内部の気体の圧力制御の精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の開始状態を概略的に示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の終了状態を概略的に示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法における制御動作を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態3における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態4における化合物半導体結晶の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態4における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の開始状態を概略的に示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態4における化合物半導体結晶の製造方法において結晶成長室の内部を加圧する際の圧力制御部の1回の動作の終了状態を概略的に示す模式図である。
【図10】実施例における加圧時の結晶成長室内部の気体の圧力を示す図である。
【図11】実施例における加圧時の結晶成長室内部の気体の圧力変化量を示す図である。
【図12】実施例における減圧時の結晶成長室内部の気体の圧力を示す図である。
【図13】実施例における減圧時の結晶成長室内部の気体の圧力変化量を示す図である。
【図14】実施例における結晶成長室の中の温度および圧力を示す図である。
【図15】実施例における結晶成長後の結晶表面の顕微鏡写真を示す図である。
【図16】実施例における結晶成長後の結晶表面の顕微鏡写真を示す他の図である。
【図17】特許文献1の結晶成長装置の構成例を示す図である。
【図18】特許文献1の結晶成長装置の構成例を示す他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0044】
(実施の形態1)
図1を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置を説明する。図1に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、気体供給部101と、配管102、103と、結晶成長室110と、気体排出部120と、圧力制御部130、140と、減圧弁150と、圧力計151と、指令部160とを備えている。
【0045】
気体供給部101は、結晶成長室110へ気体を供給する。気体供給部101が供給する気体は、たとえば製造する化合物半導体結晶の原料を含む。気体供給部101は、結晶成長室110の内部よりも高い圧力で保持されている。気体供給部101は、たとえば窒素ガスボンベである。
【0046】
配管102は、気体供給部101と圧力制御部130とを接続し、内部に気体を流動させる。配管103は、圧力制御部130、140と、結晶成長室110とを接続し、内部に気体を流動させる。
【0047】
結晶成長室110は、気体供給部101から気体が供給される。結晶成長室110は、所望の圧力になるように気体が供給され、内部で化合物半導体結晶を成長する。結晶成長室110は、たとえばフラックス法などの液相成長法の場合、加熱部111と反応容器112とを含む。加熱部111は、気体供給部101から供給され、かつ圧力制御された気体114および原料を含む溶媒113を加熱する。反応容器112は、溶媒113および種基板115を内部に保持する。
【0048】
気体排出部120は、結晶成長室110から製造装置の外部へ気体を排出する。気体排出部120は、結晶成長室110よりも低い圧力になっており、たとえば大気圧となっている。気体排出部120を大気圧とする場合は、排出ガスの成分に安全上や環境上の問題が無ければ、そのまま大気開放としてもよい。
【0049】
圧力制御部130、140は、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続されている。圧力制御部130、140は、それぞれ結晶成長室110と、気体供給部101および気体排出部120の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。
【0050】
圧力制御部130は、2つの弁131、132と、この2つの弁131、132で仕切られる配管133とを有している。圧力制御部140は、2つの弁141、142と、この2つの弁141、142で仕切られる配管143とを有している。弁131、132、141、142は、それぞれ開閉可能である。弁131、132および弁141、142で仕切られる配管133および配管143の内部の圧力を、それぞれ弁131、142を開くことで、結晶成長室110の内部の圧力と異なる圧力にすることができる。あるいは、それぞれ弁132、141を開くことで、結晶成長室110と配管133および配管143が開放され、結晶成長室110の内部の圧力と等しい圧力にすることができる。配管133、143は弁131、132、141、142により閉空間にすることができる。
【0051】
圧力制御部130、140を加熱する加熱部(図示せず)が配置されてもよい。この場合、加熱部はたとえば配管133、143を加熱可能である。加熱部によっても配管133、143内部の気体のモル数を調整することができる。
【0052】
減圧弁150は、気体供給部101から供給される気体の圧力を減圧する。圧力計151は、結晶成長室110内部の圧力を測定する。または、気体供給部101から供給される気体の圧力が不足している場合には、減圧弁150に代えてこの箇所にコンプレッサを設け、気体供給部101から供給される気体の圧力を加圧しても良い。
【0053】
指令部160は、結晶成長室110の圧力を制御するために、圧力計151からの圧力の値に応じて弁131、132、141、142の開閉を指令する。
【0054】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、図1に示す製造装置を用いて行なう。
【0055】
まず、気体供給部101から結晶成長室110へ気体を供給する。気体供給部101から導出された気体は、減圧弁150により圧力がP1(P1は結晶成長室110の圧力よりも高い)に調整され、配管102を介して、圧力制御部130へ流入する。圧力制御部130へ流入した気体を、結晶成長室110へ供給する。
【0056】
このとき、気体供給部101と結晶成長室110との間に接続される圧力制御部130を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御する。本実施の形態では、2つの弁131、132と、この2つの弁131、132で仕切られる配管133とを有する圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する。
【0057】
具体的には、図2に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じる。この状態で、圧力がP1に調整された気体を配管133に供給する。これにより、配管133には、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体が充填される。このとき、圧力制御部130(本実施の形態では配管133)を加熱して温度T1をさらに調整してもよい。
【0058】
その後、図3に示すように、弁131を閉め、弁132を開ける。これにより、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体が、配管103を介して結晶成長室110に供給されるので、結晶成長室110内部の圧力を高めることができる。
【0059】
この圧力制御部130の1回の動作(図2における開始状態から図3における終了状態までの動作)において、質量保存の法則および気体の状態方程式から、T1、TAをそれぞれ絶対温度(単位K)として、(P1×V1)/(R×T1)+(P2×VA)/(R×TA)=(P3×V1)/(R×T1)+(P3×VA)/(R×TA)の関係が成立する。したがって、圧力制御部130の1回の動作において、結晶成長室110の内部の圧力はP2からP3へ上昇する。一方、圧力制御部130の内部の圧力は、P1からP3に下降する。このように、圧力制御部130内部の気体は、結晶成長室110に向かって全てが押し出されるのではない。弁132を開けることで、圧力制御部130の内部の圧力と結晶成長室110の内部の圧力とが、それぞれP1とP2との間の圧力であるP3に等しくなるように気体が流動する。このことは、結晶成長室110の内部の圧力を精密に制御できることに寄与している。その後、弁132を閉じる。
【0060】
そして、上述の工程を断続的に繰り返すことにより、圧力制御部130の1回の動作毎に、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体を上記関係式に従ってその一部を結晶成長室110に供給できるので、精度を向上して結晶成長室110内部の圧力を上昇することができる。なお、圧力制御部130の1回の動作については、圧力計151により測定される結晶成長室110内部の圧力に基づいて、指令部160により弁131、132の開閉およびその開になる時間を制御してもよい。
【0061】
結晶成長室110の内部が所望の圧力に達すると、化合物半導体結晶の成長を行なう。たとえば、種基板115が反応容器112の内部に配置され、反応容器112内に原料である金属を含む溶媒113が収容されている。加熱部111により溶媒113を加熱して、液化する。そして、圧力制御部130から供給される気体を溶媒113に溶解させる。これにより、気体が溶解した溶媒を種基板115に接触させることができる。この状態で、圧力制御部130から供給される気体の圧力を調整して、種基板115上に化合物半導体結晶を成長する。
【0062】
なお、結晶成長中においても、圧力が下がった場合には、圧力制御部130を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を上昇させてもよい。この場合、結晶成長室110内部の圧力を制御するために、指令部160を用いてもよい。
【0063】
次に、結晶成長室110の内部を冷却および減圧するために、結晶成長室110から気体排出部120へ気体を排出する。このとき、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続される圧力制御部140を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御する。本実施の形態では、2つの弁141、142と、この弁141、142で仕切られる配管143とを有する圧力制御部140を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する。
【0064】
具体的には、弁131、132、142を閉じ、弁141を開ける。この状態で、配管143に結晶成長室110から排出した気体を供給する。この場合、配管143は、圧力が高い気体が充填される。このとき、圧力制御部140(本実施の形態では配管143)を加熱して充填される気体のモル数を調整してもよい。
【0065】
その後、弁141を閉め、弁142を開ける。これにより、配管143に充填された気体が、気体排出部120に排出されるので、結晶成長室110内部の圧力を低くすることができる。圧力制御部140の1回の動作で、結晶成長室110からの気体を少しずつ減圧することができるので、上述の工程を断続的に繰り返すことにより、精度を向上して圧力を下降することができる。なお、圧力制御部140の1回の動作については、圧力計151により測定される結晶成長室110内部の圧力に基づいて、指令部160により弁141、142の開閉およびその開になる時間を制御してもよい。また、気体排出部120の圧力は大気圧でもよく、結晶成長室110の内部の圧力より低い任意の圧力に制御してもよい。
【0066】
次に、結晶成長室110から化合物半導体結晶を取り出す。以上の工程を実施することにより、化合物半導体結晶を製造することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、気体を供給する工程および気体を排出する工程で、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続される圧力制御部130、140を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御している。しかし、本発明は、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方において、気体供給部101と結晶成長室110との間、および、結晶成長室110および気体排出部120との間の少なくとも一方に接続される圧力制御部130、140を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御すればよい。
【0068】
また、本実施の形態では、化合物半導体結晶の成長方法としてフラックス法などの液相成長法を例に挙げて説明したが、圧力の精密制御が必要な結晶成長法が広く適用可能であり、ガスが直接結晶の原料とならない液相成長法である融液成長法や、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法などの気相成長法などを適用してもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、気体供給部101から供給される気体は、原料を含む気体を例に挙げて説明したが、気体供給部101から供給される気体は、キャリアガスなど、原料を含んでいなくてもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、圧力制御部130、140により、結晶成長室110の内部の圧力変化をたとえば図4に示すような状態にすることができる。なお、図4において、矢印は、圧力制御部130、140の1回の動作による時間変化および圧力変化を示し、実線は設定圧力を示し、点線は温度を示す。また、e(時間)からf(時間)は結晶成長室110内部の圧力を上昇する工程であり、f(時間)からg(時間)は結晶成長する工程であり、g(時間)からh(時間)は結晶成長室110内部の圧力を下降する工程である。
【0071】
具体的には、気体を供給する工程時には、結晶成長室110の圧力よりも高い圧力となるように気体供給部101からの気体を圧力制御部130(本実施の形態では配管133)に一旦保持し、その気体を結晶成長室110へ供給することができる。圧力制御部130から結晶成長室110への1回の気体の供給では、圧力制御部130の圧力P1、体積V1、温度T1をそれぞれ適切に選んで、圧力制御部130の1回の動作によって結晶成長室110に供給する気体のモル数を少なくすることで、圧力制御部130の1回の動作による圧力変化を少なくできる。また1回の気体の供給のために弁131、132が開閉する時間を短くすることで、圧力制御部130の1回の動作による時間変化を少なくできる。これらの結果として図4における矢印がそれぞれ短くなり、結晶成長室110の内部の気体の圧力上昇の精度を高めることができる。これを繰り返すことにより、図4に示すように、時間e(時間)からf(時間)の間に、結晶成長室110の温度をc(℃)からd(℃)まで上昇するとともに、圧力をa(MPa)からb(MPa)まで少しずつ(階段状に)上昇することができる。このため、設定圧力通りに、精度を向上して結晶成長室110の内部の気体の圧力を上昇することができる。
【0072】
また、気体を排出する工程時には、結晶成長室110の圧力よりも低い圧力である圧力制御部140(本実施の形態では配管143)に、結晶成長室110からの気体を一旦保持し、その気体を気体排出部120から排出することができる。結晶成長室110から圧力制御部140への1回の気体の排出では、結晶成長室110の内部の気体の圧力減少の精度を高めることができる。これを繰り返すことにより、図4に示すように、時間g(時間)からh(時間)の間に、結晶成長室110の温度をd(℃)からc(℃)まで下降するとともに、圧力をb(MPa)からa(MPa)まで、少しずつ(階段状に)下降することができる。このため、設定圧力通りに、精度を向上して結晶成長室110の内部の気体の圧力を下降することができる。
【0073】
以上より、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくともいずれか一方で、圧力制御部130、140を用いることにより、結晶成長室110の内部の気体の圧力制御の精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【0074】
このように本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法は圧力制御の精度を向上できるので、突発的な核生成や不均一な成長が起こりにくく、面内での成長速度や結晶品質が均一化される。このため、成長表面が平坦であったり均質であったりする化合物半導体結晶を製造することができる。また核生成が面内で不均一に起こりにくくなるので、転位密度分布の少ない化合物半導体結晶を製造することができる。さらに、このような高品質な化合物半導体結晶をコストを低減して製造することができる。
【0075】
特に、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法は、フラックス法に好適に用いられる。フラックス法は、気体、液体、および固体が共存する系であり、液体内にはフラックス(溶媒)としてNaなどのアルカリ金属や、自己フラックスとして成長しようとする結晶の構成元素(たとえばGa)などを入れてもよい。このような系では基本的に気相成分の液相への溶解量はヘンリーの法則により気相成分の分圧に比例する。この溶解量と液相の温度とによって、結晶成長速度、核生成に影響を及ぼす過飽和度が決まる。したがって、本実施形態のように圧力制御の精度を向上できる製造装置および製造方法によれば、均質な化合物半導体結晶を製造することができる。
【0076】
本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法において製造する化合物半導体結晶は特に限定されないが、窒化物結晶を製造することが好ましく、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)などを製造することがより好ましい。窒素は溶媒113に溶けにくいが、圧力制御の精度を向上することで、窒素を溶媒113に各温度で必要な量だけ精密に制御して溶解させることができるためである。
【0077】
(実施の形態2)
図5を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置を説明する。図5に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、基本的には図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置と同様の構成を備えているが、気体供給部101と結晶成長室110との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室110と気体排出部120との間の圧力を制御する制御部とが同じである点において異なっている。
【0078】
具体的には、図5に示すように、本実施の形態では、気体供給部101と結晶成長室110との間であって、かつ結晶成長室110と気体排出部120との間に、圧力制御部130が配置されている。
【0079】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1の化合物半導体結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、気体を供給する工程および気体を排出する工程では、気体供給部101と結晶成長室110との間の圧力を制御する制御部と、結晶成長室110および気体排出部120との間の圧力を制御する制御部とが同じである圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する点において異なっている。具体的には、気体を排出する工程では、弁121を開けて、圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御している。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、気体を供給する工程および気体を排出する工程の両方の工程で、圧力制御部130を用いるので、結晶成長室110内部の気体圧力の制御精度を向上して化合物半導体結晶の製造を行なうことができる。
【0081】
(実施の形態3)
図6を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置を説明する。図6に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、基本的には図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置と同様の構成を備えているが、圧力制御部130、140は、3つ以上の弁131、132、134、141、142、144と、この3つ以上の弁131、132、134、141、142、144で2つ以上の領域に仕切られる配管133、135、143、145とを有する点において異なっている。
【0082】
具体的には、圧力制御部130は、3つの弁131、132、134と、弁131、132で仕切られている配管133と、弁132、134で仕切られている配管135とを有している。圧力制御部140は、3つの弁141、142、144と、弁141、142で仕切られている配管143と、弁141、144で仕切られている配管145とを有している。
【0083】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1の化合物半導体結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、3つ以上の弁131、132、134、141、142、144と、この3つ以上の弁131、132、134、141、142、144で2つ以上の領域に仕切られる配管133、135、143、145とを有する圧力制御部130、140を用いて結晶成長室110の内部の圧力を制御する点において異なる。
【0084】
具体的には、気体を供給する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を高める場合には、まず、3つの弁131、132、134のうち、弁132、134を閉じ、弁131を開ける。その後、弁132を開ける。最後に弁131、132を閉じる。これにより、配管133、135に圧力を高めた気体を充填することができる。このとき、配管133、135の内部の容積は同じであっても、異なっていてもよい。
【0085】
その後、弁131、132を閉じたままで、かつ弁134を開けると、配管135に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。その後、弁131を閉じたままで、かつ弁132、134を開けると、配管133に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。最後に弁131、132、134を閉じる。このような動作を繰り返すことにより、結晶成長室110内部の圧力を段階的に高めることができる。
【0086】
さらに、気体を供給する工程において、制御性を一層高めて結晶成長室110の圧力を高める場合には、まず、3つの弁131、132、134のうち、弁132、134を閉じ、弁131を開ける。その後、弁131を閉じてから、弁132を開ける。最後に弁132を閉じる。これにより、配管133、135に圧力を高めた気体を充填することができ、配管133、135に充填される圧力は、減圧弁150によって制御する圧力よりも低くなる。このとき、配管133、135の内部の容積は同じであっても、異なっていてもよい。
【0087】
その後、弁131、132を閉じたままで、かつ弁134を開けると、配管135に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。その後、弁131を閉じたままで、かつ弁132、134を開けると、配管133に充填された気体が結晶成長室110へ流入する。最後に、弁131、132、134を閉じる。このような動作を繰り返すことにより、結晶成長室110内部の圧力を一層小刻みに、段階的に高めることができる。このような動作は、結晶成長工程で特に圧力の精密な制御を行ないたい場合に、好適に用いられる。
【0088】
結晶成長室110の内部が所望の圧力に達するまで、圧力制御部130の上記動作を繰り返す。
【0089】
また、気体を排出する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を下げる場合には、まず、3つの弁141、142、144のうち、弁141、142を閉じ、弁144を開ける。これにより、結晶成長室110からの気体は、配管145に充填される。その後、弁142を閉じたままで、弁141を開けると、結晶成長室110からの気体は、配管143にも充填される。この状態で、弁141、144を閉じ、弁142を開けると、配管143に充填された気体が気体排出部120から外部に排出される。弁144を閉じ、弁141を開けると、配管145に充填された気体も気体排出部120から排出される。これらにより、結晶成長室110内部の圧力を段階的に低くすることができる。
【0090】
さらに、気体を排出する工程において、制御性を一層高めて結晶成長室110の内部の圧力を下げる場合には、まず、3つの弁141、142、144のうち、弁141、142を閉じ、弁144を開ける。これにより、結晶成長室110からの気体は、配管145に充填される。その後、弁144を閉じてから、弁142を閉じたままで、弁141を開けると、配管145に充填された気体は、その一部が配管143にも充填され、配管145、143に充填された気体の圧力は、結晶成長室110の圧力よりも低くなる。この状態で、弁141、144を閉じ、弁142を開けると、配管143に充填された気体が気体排出部120から外部に排出される。最後に、弁141、142、144を閉じる。このような動作を繰り返すことにより、結晶成長室110内部の圧力を一層小刻みに、段階的に低くすることができる。このような動作は、結晶成長工程で特に圧力の精密な制御を行ないたい場合に、好適に用いられる。
【0091】
結晶成長室110の内部が所望の圧力に達するまで、圧力制御部130の動作を繰り返す。
【0092】
なお、圧力制御部130、140の1回の動作において、上記に説明した場合以外で、2以上の配管133、135、143、145のうちの1つの配管のみに気体を充填させる場合があってもよい。
【0093】
また、圧力制御部130、140の1回の動作は上記の弁の開閉の順序に限定されず、他の順序により結晶成長室110の内部の圧力を制御してもよい。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、弁131、132、134、141、142、144の開閉の動作により、弁131、132、134、141、142、144で仕切られる配管133、135、143、145に気体を保持することができる。この配管133、135、143、145内の圧力を互いに異なる圧力に制御することもできる。このため、結晶成長室110の内部の気体の圧力上昇の精度をより高めることができる。
【0095】
(実施の形態4)
図7を参照して、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置について説明する。図7に示すように、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置は、図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置と基本的には同様の構成を備えているが、配管103の容積と異なる容積を有するバッファ配管170をさらに備えている点において異なる。本実施の形態では、圧力制御部130、140と、結晶成長室110との間に、バッファ配管170が配置されている。
【0096】
続いて、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法について説明する。本実施の形態における化合物半導体結晶の製造方法は、基本的には実施の形態1における化合物半導体結晶の製造方法と同様の構成を備えているが、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方では、結晶成長室110と圧力制御部130、140とを接続する配管103に設けられ、かつ配管103と異なる容積のバッファ配管170を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を制御する点において異なる。
【0097】
具体的には、気体を供給する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を高める場合には、まず、図8に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じた状態で、配管133は、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体を充填する。次いで、図9に示すように、弁131を閉め、弁132を開ける。これにより、圧力がP1で、体積がV1で、温度がT1の気体が、配管103およびバッファ配管170に充填されると共に結晶成長室110に供給される。
【0098】
この1回の動作において、質量保存の法則および気体の状態方程式から、(P1×V1)/(R×T1)+(P2×VB)/(R×TB)+(P2×VA)/(R×TA)=(P3×V1)/(R×T1)+(P3×VB)/(R×TB)+(P3×VA)/(R×TA)の関係が成立する。したがって、圧力制御部130の1回の動作において、結晶成長室110の内部の圧力はP2からP3へ上昇する際に、バッファ配管170でも結晶成長室110の内部の圧力を調整することができる。たとえば関係式より、バッファ配管の容積VBを大きくするほど、圧力P2と圧力P3との差は小さくなるので、結晶成長室110内部の圧力をより小刻みに、段階的に変化させることができる。
【0099】
また、気体を排出する工程において、結晶成長室110の内部の圧力を下げる場合においても同様に、バッファ配管170でも結晶成長室110の内部の圧力を調整することができる。
【0100】
以上より、本実施の形態における化合物半導体結晶の製造装置および製造方法によれば、バッファ配管170により、結晶成長室110の内部の圧力の変化量をより最適化することができる。このため、結晶成長室110の内部の気体の圧力変動の精度をより高めることができる。
【実施例】
【0101】
本実施例では、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方で、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、結晶成長室の内部の圧力と異なる圧力に制御可能な圧力制御部を用いて、結晶成長室の内部の圧力を制御することの効果について調べた。
【0102】
(本発明例1)
本発明例1では、図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置を用いて、結晶成長室110に気体を供給し、その後結晶成長室110から気体を排出した。先ずはこの製造装置の圧力の制御の基本的な精度を調べるため、結晶成長室110、圧力制御部130、140の温度を全て室温として、結晶成長室110の圧力上昇および圧力下降の速度、および圧力制御部130、140のそれぞれの1回の動作における、結晶成長室110の圧力変化量を調べた。
【0103】
具体的には、まず、気体供給部101から結晶成長室110へ気体として窒素ガスを圧力制御部130へ流動させ、さらに結晶成長室110へ供給した。このとき、2つの弁131、132と、この弁131、132で仕切られる配管133とを有する圧力制御部130を用いて結晶成長室110の内部の圧力を以下のように10MPa近傍まで上昇した。
【0104】
なお、気体供給部101から排出される気体の圧力は14.7MPaであり、減圧弁150により11.0MPaまで減圧した。配管133の体積は、1.7ccであった。結晶成長室110の体積は、500ccであった。また、結晶成長室110の温度は、加圧前は室温であり、加圧後も室温であった。
【0105】
結晶成長室110の圧力の上昇は以下のようにした。すなわち、図2に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じた状態で、配管133に気体を供給した。その後、図3に示すように、弁131を閉め、弁132を開け、配管103に充填された気体を結晶成長室110に供給した。この動作を断続的に繰り返して、結晶成長室110の内部の圧力を上昇した。その結果を図10および図11に示す。なお、図10は、圧力を上昇する工程において、経過時間に対する圧力を示す。図11は、圧力を上昇する工程において、経過時間に対する圧力変化量を示す。図11中、実線は、本発明例1の圧力変化量を二乗近似した値である。
【0106】
図10に示すように、本発明例1の製造装置および製造方法によれば、結晶成長室の内部を41分以内に10MPaまで上昇することができた。
【0107】
また、図11に示すように、本発明例1の加圧工程における圧力変化量を理論値とほぼ同様にできた。さらに、結晶成長室110の内部の圧力を10MPaまで加圧した時には、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で0.002MPaであり、最も大きい場合でも0.01MPaとなり、結晶成長室110内部の圧力は非常に安定することがわかった。
【0108】
次に、結晶成長室110の内部を減圧するために、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続される圧力制御部140を用いて、結晶成長室110から気体排出部120へ気体を排出した。圧力制御部140は、2つの弁141、142と、この2つの弁141、142で仕切られる配管143とを有していた。配管143の体積は、1.7ccであった。また、結晶成長室110の温度は、減圧前は室温であり、減圧後の温度も室温であった。
【0109】
結晶成長室110の圧力の下降は以下のようにした。すなわち、弁131、132、142を閉じ、弁141を開けた状態で、配管143に結晶成長室110から排出した気体を充填した。その後、弁141を閉め、弁142を開け、配管143に充填した気体を気体排出部120に排出した。この動作を断続的に繰り返して、結晶成長室110の内部の圧力を10MPaから低減した。その結果を図12および図13に示す。なお、図12は、圧力を下降する工程において、経過時間に対する圧力を示す。図13は、圧力を下降する工程において、経過時間に対する圧力変化量を示す。図13中、実線は、本発明例1の圧力変化量を二乗近似した値である。
【0110】
図12に示すように、本発明例1の製造装置および製造方法によれば、60分経過後の結晶成長室の内部の圧力を0.56MPa以下まで下降することができた。
【0111】
また、図13に示すように、理論値とほぼ同様にすることができた。さらに、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で−0.002MPaであり、最も大きい場合でも−0.01MPaとなり、結晶成長室110内部の圧力は非常に安定することがわかった。
【0112】
(本発明例2)
本発明例2では、図1に示す実施の形態1における化合物半導体結晶の製造装置を用いて、化合物半導体であるGaNの結晶成長をフラックス法(溶液成長法)によって行なった。本発明例2では結晶成長室110の圧力および温度をそれぞれ、所定の結晶成長条件とし、反応容器112をpBN坩堝とし、溶媒113を金属ガリウムとし、気体114を窒素ガスとし、種基板115を1辺10mmの正方形状で、厚さ400μmのGaN種基板とした。GaN種基板115上にて、液体状の金属ガリウムと、液体状の金属ガリウムに溶解した窒素ガスとを反応させることによって、GaNの結晶成長を行なった。
【0113】
具体的には、結晶成長室110の内部の温度の上昇の開始と同時に、気体供給部101から気体として窒素ガスを圧力制御部130へ流動させ、さらに結晶成長室110へ供給した。このとき、2つの弁131、132と、この弁131、132で仕切られる配管133とを有する圧力制御部130を用いて、結晶成長室110の内部の圧力を0MPaから9MPaまで上昇させた。この結晶成長における結晶成長室110の中の温度および圧力条件を図14に示す。図14において、横軸は時間(単位:時間(hrs))を示し、0hrsは動作開始を示し、236hrsは動作終了を示す。また、図14において、実線は圧力を示し、点線は温度を示す。
【0114】
なお、気体供給部101から排出される気体の圧力は14.7MPaであり、減圧弁150により11.0MPaまで減圧した。配管133の体積は、1.7ccであった。結晶成長室110の体積は、500ccであった。また、結晶成長室110の温度は、結晶成長室110の圧力上昇前で圧力が0MPaの時は室温であり、結晶成長室110の圧力上昇後で圧力が9MPaの時は900℃であった。この圧力上昇および温度上昇はそれぞれ18時間で行なった。
【0115】
結晶成長室110の圧力の上昇は以下のように行なった。図2に示すように、弁131を開け、弁132、141、142を閉じた状態で、配管133に気体を供給した。その後、図3に示すように、弁131を閉じ、弁132を開け、配管103に充填された気体を結晶成長室110に供給した。最後に、弁132を閉じた。弁131および弁132を開けている時間はそれぞれ1秒間とし、全ての弁を閉じている時間はそれぞれ0.5秒間とした。よってこれら一連の動作に必要な時間は合計3秒間である。この一連の動作を、指令部160によって断続的に繰り返し行なうことで、徐々に結晶成長室110の圧力を上昇させた。一連の動作の繰り返しの間隔は、結晶成長室110の内部の圧力が0MPaから9MPaまで18時間で直線的に上昇するように、その時の結晶成長室110の内部の圧力に応じて指令部160から制御した。その後結晶成長室110の温度を900℃に、圧力を9MPaに保持する結晶成長時間を200時間設けた。この結晶成長時間中に、気体114である窒素ガスが、溶媒113である金属ガリウム中に溶解し、種基板115であるGaN種基板上に到達し、GaN結晶として成長する。結晶成長時間中に結晶成長に伴って消費された窒素ガスは、指令部160からの指令によって圧力制御部130から供給され、結晶成長時間中の圧力は一定に保たれる。
【0116】
本発明例2において、結晶成長室110の圧力の上昇時および圧力を保持する結晶成長時間中の結晶成長室110の内部の圧力は、結晶成長室110の温度にかかわらず所望の値に制御することができ、さらに、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で0.004MPaであり、最も大きい場合でも0.01MPaとなった。これは結晶成長時間における結晶成長室110の内部の圧力の0.04%〜0.1%の精度に収まっており、結晶成長室110内部の圧力は圧力上昇時および圧力保持時の双方で、非常に精密に制御させることができた。
【0117】
次に、結晶成長室110の内部を減圧するために、結晶成長室110および気体排出部120との間に接続され、結晶成長室110の内部の圧力と異なる圧力に制御可能な圧力制御部140を用いて、結晶成長室110から気体排出部120へ気体を排出した。この圧力制御部140は、結晶成長室110と、気体供給部101および気体排出部120の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する。圧力制御部140は、2つの弁141、142と、この2つの弁141、142で仕切られる配管143とを有しており、配管143の体積は、1.7ccとした。また、結晶成長室110の温度は、減圧前は900℃であり、減圧後の温度は室温とした。
【0118】
結晶成長室110の圧力の下降は以下のようにした。弁131、132、142を閉じ、弁141を開けた状態で、配管143に結晶成長室110から排出した気体を充填した。その後、弁141を閉じ、弁142を開け、配管143に充填した気体を気体排出部120に排出した。最後に、弁142を閉じた。これらの一連の動作を断続的に繰り返して、結晶成長室110の内部の圧力を9MPaから低減した。
【0119】
本発明例2において、圧力下降時においても、結晶成長室110の温度が変化していても、所望の時間で結晶成長室110の圧力を所望の値に制御することができ、さらに、1動作当たりの圧力変化量は最も小さい場合で−0.004MPaであり、最も大きい場合でも−0.01MPaとなった。これは結晶成長時間における結晶成長室110の内部の圧力の、0.04%〜0.1%の精度に収まっており、圧力下降時においても、結晶成長室110の内部の圧力は非常に精密に制御させることができた。
【0120】
結晶成長室110の内部の圧力が0MPaとなり、温度が室温となった後、反応容器112から種基板115(GaN種基板)およびその上に成長したGaN結晶を取り出し、王水に浸漬して溶媒113(金属ガリウム)を除去した後、ノマルスキ−顕微鏡で種基板115上に成長しているGaN結晶の表面形状を観察した。また、エッチングによって現れるエッチピットの密度によって表面の転位密度を評価した。
【0121】
その結果、種基板115上に成長しているGaN結晶の表面は、図15に示すように、ノマルスキ−顕微鏡観察で、非常に平坦で、全面に安定的に二次元的に成長したことを表す、ほぼ平行な成長縞が複数本観察された。また表面の転位密度はリン酸および硫酸の混合液によるエッチングでエッチピットを観察したところ、105個/cm2台またはそれ以下と見積もれ、低転位密度の結晶が成長していることを確認した。なお、図15は、本発明例2の結晶の100μm四方の視野のノマルスキー顕微鏡写真である。
【0122】
本発明例2において、成長した結晶は平坦で、転位密度も低いので、結晶成長室110の内部の圧力の制御性は十分に良好であったと考えられる。更に圧力を精密に制御したい場合は、気体供給部101から排出される気体の圧力を、減圧弁150により現状の11MPaより低く減圧することや、配管133の体積を更に少なくすることや、あるいは図7に記載されるバッファ配管170を設けることなどにより、上記質量保存の法則および気体の状態方程式から導いた関係式におけるP2(圧力制御部の動作前)とP3(圧力制御部の動作後)との圧力差を小さくすることで、自在に精密に制御することができる。
【0123】
(比較例)
本発明例2において、圧力制御部130の代わりに圧力制御弁を用いて、圧力制御部140の代わりに開閉が可能なストップバルブ(弁)を用いて、圧力制御弁は指令部160によって制御し、他の条件は同じとしてGaNの結晶成長を行なった。その結果、結晶成長室の内部の圧力を9MPaまで上昇させることはできたが、9MPaに保持すべき結晶成長時間(200時間)の圧力が、8.8MPa〜9.1MPaの間で変動しており、本発明例2と比較して、圧力の制御性が10倍以上悪かった。
【0124】
結晶成長時間の終了後、結晶成長室110の温度を室温まで低減し、内部の窒素ガスを排出した後、反応容器112から種基板115(GaN種基板)およびその上に成長したGaN結晶を取り出し、王水に浸漬して溶媒113(金属ガリウム)を除去した後、ノマルスキ−顕微鏡で種基板115上に成長しているGaN結晶の表面形状を観察した。また、カソードルミネッセンスによって表面の転位密度を評価した。
【0125】
その結果、種基板115上に成長しているGaN結晶の表面は、図16に示すように、ノマルスキ−顕微鏡観察で、ランダムな成長縞が観察された。また表面の転位密度はリン酸および硫酸の混合液によるエッチングでエッチピットを観察したところ、107〜108個/cm2台と見積もれ、高転位密度の結晶が成長していることを確認した。結晶成長時間における窒素ガスの圧力の制御性が悪かったため、溶液中の窒素濃度が不安定になり、GaN種基板表面でランダムにGaN結晶の核生成が起こりやすくなり、その後も面内で不均一に成長が進んだ結果、核同士が合体するように結晶成長が進んだことを表すランダムな成長縞が見られ、またその合体部では結晶の方位ずれが起こり、転位密度が高くなったものと考えられる。なお、図16は、比較例の結晶の100μm四方の視野のノマルスキー顕微鏡写真である。
【0126】
以上より、気体を供給する工程および気体を排出する工程の少なくとも一方で、気体供給部と結晶成長室との間、および、結晶成長室および気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、結晶成長室の内部の圧力と異なる圧力に制御可能な圧力制御部を用いることにより、結晶成長室内部の気体圧力を高精度に制御できることが確認できた。またこの際に連続的に圧力を調整する圧力制御弁は用いる必要がないため、製造装置の機器を安価にすることが可能であり、また断続的に確実に弁の開閉ができるため、安全に化合物半導体結晶を製造することができる。
【0127】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
101 気体供給部、102,103,133,135,143,145 配管、110 結晶成長室、111 加熱部、112 反応容器、113 溶媒、114 気体、115 種基板、120 気体排出部、130 圧力制御部、121,131,132,134,141,142,144 弁、150 減圧弁、151 圧力計、160 指令部、170 バッファ配管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体供給部と、
前記気体供給部から気体が供給される結晶成長室と、
前記結晶成長室から気体を排出するための気体排出部と、
前記気体供給部と前記結晶成長室との間、および、前記結晶成長室および前記気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ前記結晶成長室と、前記気体供給部および前記気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する圧力制御部とを備えた、化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項2】
前記圧力制御部は、前記気体供給部と前記結晶成長室との間、および、前記結晶成長室と前記気体排出部との間に接続される、請求項1に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項3】
前記圧力制御部において、前記気体供給部と前記結晶成長室との間の圧力を制御する制御部、および、前記結晶成長室と前記気体排出部との間の圧力を制御する制御部が同じである、請求項2に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項4】
前記圧力制御部は、2つの弁と、前記弁で仕切られる配管とを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項5】
前記圧力制御部は、3つ以上の弁と、前記弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項6】
前記結晶成長室と、前記圧力制御部とを接続する接続配管と、
前記接続配管に設けられたバッファ配管とをさらに備え、
前記バッファ配管は、前記接続配管の容積と異なる容積を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項7】
前記圧力制御部を加熱する加熱部をさらに備えた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項8】
気体供給部から結晶成長室へ気体を供給する工程と、
前記結晶成長室から気体排出部へ気体を排出する工程とを備え、
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、前記気体供給部と前記結晶成長室との間、および、前記結晶成長室および前記気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ前記結晶成長室と、前記気体供給部および前記気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する圧力制御部を用いて、前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項9】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程では、前記圧力制御部を用いて、前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項10】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程では、前記気体供給部と前記結晶成長室との間の圧力を制御する制御部と、前記結晶成長室および前記気体排出部との間の圧力を制御する制御部とが同じである前記圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項9に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項11】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、2つの弁と、前記弁で仕切られる配管とを有する前記圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項12】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、3つ以上の弁と、前記弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する前記圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項13】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、前記結晶成長室と前記圧力制御部とを接続する接続配管に設けられ、かつ前記接続配管と異なる容積のバッファ配管を用いて、前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項14】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、前記圧力制御部を加熱して前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜13のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項1】
気体供給部と、
前記気体供給部から気体が供給される結晶成長室と、
前記結晶成長室から気体を排出するための気体排出部と、
前記気体供給部と前記結晶成長室との間、および、前記結晶成長室および前記気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ前記結晶成長室と、前記気体供給部および前記気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する圧力制御部とを備えた、化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項2】
前記圧力制御部は、前記気体供給部と前記結晶成長室との間、および、前記結晶成長室と前記気体排出部との間に接続される、請求項1に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項3】
前記圧力制御部において、前記気体供給部と前記結晶成長室との間の圧力を制御する制御部、および、前記結晶成長室と前記気体排出部との間の圧力を制御する制御部が同じである、請求項2に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項4】
前記圧力制御部は、2つの弁と、前記弁で仕切られる配管とを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項5】
前記圧力制御部は、3つ以上の弁と、前記弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項6】
前記結晶成長室と、前記圧力制御部とを接続する接続配管と、
前記接続配管に設けられたバッファ配管とをさらに備え、
前記バッファ配管は、前記接続配管の容積と異なる容積を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項7】
前記圧力制御部を加熱する加熱部をさらに備えた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造装置。
【請求項8】
気体供給部から結晶成長室へ気体を供給する工程と、
前記結晶成長室から気体排出部へ気体を排出する工程とを備え、
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、前記気体供給部と前記結晶成長室との間、および、前記結晶成長室および前記気体排出部との間の少なくとも一方に接続され、かつ前記結晶成長室と、前記気体供給部および前記気体排出部の少なくとも一方とに、それぞれ開放されることで断続的に圧力が変化する圧力制御部を用いて、前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項9】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程では、前記圧力制御部を用いて、前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項10】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程では、前記気体供給部と前記結晶成長室との間の圧力を制御する制御部と、前記結晶成長室および前記気体排出部との間の圧力を制御する制御部とが同じである前記圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項9に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項11】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、2つの弁と、前記弁で仕切られる配管とを有する前記圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項12】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、3つ以上の弁と、前記弁で2つ以上の領域に仕切られる配管とを有する前記圧力制御部を用いて前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項13】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、前記結晶成長室と前記圧力制御部とを接続する接続配管に設けられ、かつ前記接続配管と異なる容積のバッファ配管を用いて、前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【請求項14】
前記気体を供給する工程および前記気体を排出する工程の少なくとも一方では、前記圧力制御部を加熱して前記結晶成長室の内部の圧力を制御する、請求項8〜13のいずれか1項に記載の化合物半導体結晶の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図17】
【図18】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−219311(P2011−219311A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90589(P2010−90589)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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