説明

化学増幅型レジスト組成物

【課題】170nm以下の波長の光に対する透過率に優れ、特にF2 エキシマレーザーリソグラフィに適したレジスト組成物を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂及び感放射線化合物を含有し、該バインダー樹脂が、それ自身アルカリ可溶性であるか又は放射線照射後の該感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものであって、下式(I)


(式中、Qは水素又はメチルを表し、R1は少なくとも1個のフッ素で置換された水酸基を有する炭素数1〜14のフルオロアルキルを表す。)で示されるモノマーから導かれる重合単位を有するバインダー樹脂である化学増幅型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる化学増幅型レジスト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細加工には通常、レジスト組成物を用いたリソグラフィプロセスが採用されており、リソグラフィにおいては、レイリー(Rayleigh)の回折限界の式で表される如く、原理的には露光波長が短いほど解像度を上げることが可能である。半導体の製造に用いられるリソグラフィ用露光光源は、波長436nmのg線、波長365nmのi線、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのArFエキシマレーザーと年々短波長になってきており、さらに次世代の露光光源として波長157nmのF2エキシマレーザーが有望視されている。KrFエキシマレーザー露光やArFエキシマレーザー露光用には、露光により発生する酸の触媒作用を利用したいわゆる化学増幅型レジストが、感度に優れることから多く用いられている。そしてF2エキシマレーザー露光用にも、感度の点で化学増幅型レジストが使われる可能性が高い。
【0003】
KrFエキシマレーザー露光用のレジストには、ポリビニルフェノール系の樹脂が用いられてきた。一方、ArFエキシマレーザー露光用のレジストに用いる樹脂は、レジストの透過率を確保するために芳香環を持たず、またドライエッチング耐性を持たせるために、芳香環の代わりに脂環式環を有するものがよいことが知られている。このような脂環式の樹脂としては、非特許文献1に記載されるような各種のものが知られている。また、非特許文献2や特許文献1には、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルの重合体又は共重合体を化学増幅型レジストの樹脂として用いた場合には、2−メチル−2−アダマンチルが酸の作用により解裂してポジ型に作用するとともに、高いドライエッチング耐性、高解像性及び基板への良好な接着性が得られることが報告されている。
【0004】
しかしながら、従来のKrFエキシマレーザー露光やArFエキシマレーザー露光用のレジストに用いられている樹脂は、170nm以下の波長の光、例えば、波長157nmのF2エキシマレーザーに対して、充分な透過率を示さなかった。
透過率が低いと、プロファイル、コントラスト、感度などの諸性能に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−73173号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D.C.Hofer,Journal of Photopolymer Science and Technology,Vol.9,No.3,387-398(1996)
【非特許文献2】S.Takechi et al,Journal of Photopolymer Science and Technology,Vol.9,No.3,475-487(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、170nm以下の波長の光に対する透過率に優れ、特にF2エキシマレーザーリソグラフィに適したレジスト組成物を提供することにある。本発明者らは、レジスト組成物を構成する樹脂として、特定のモノマーに由来する重合単位を有する樹脂を用いることにより、157nmのF2エキシマレーザーの波長における透過率の改良ができることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、バインダー樹脂及び感放射線化合物を含有し、バインダー樹脂が、それ自身アルカリ可溶性であるか又は放射線照射後の感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものであって、下式(I)
【0009】

【0010】
(式中、Qは水素、メチル又は炭素数1〜4のフルオロアルキルを表し、R1はハロゲン、水酸基もしくは脂環式環で置換されていても良い炭素数1〜14のアルキル、又はハロゲン、水酸基、アルキル基で置換されていても良い脂環式環もしくはラクトン環を表し、Q、R1のうちの少なくとも一方は、少なくとも1個のフッ素原子を有する。)
で示されるモノマーから導かれる重合単位を有する化学増幅型のレジスト組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレジスト組成物は、170nm以下の波長の光源、例えば波長157nmのF2エキシマレーザーを用いた露光において、高い透過率を示し、KrF、ArF露光での解像度も高く、充分なコントラストを有するので、170nm以下の波長の光源を用いる化学増幅型のレジストとして、優れた性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、上記式(I)に示すとおり、Q、R1のうちの少なくとも一方が、少なくとも1個のフッ素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル類に由来する重合単位を有する樹脂を用いる。
ここでQは、水素、メチル又は炭素数1〜4のフルオロアルキルを表すが、このフルオロアルキルは、炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。またこのフルオロアルキルは、少なくとも1個のフッ素原子を有していればよいが、フッ素原子を2個以上有しているのが好ましい。トリフルオロメチル基のものが入手が容易なことから、現実的である。
【0013】
またR1は、ハロゲン、水酸基もしくは脂環式環で置換されていても良い炭素数1〜14のアルキル、又はハロゲン、水酸基、アルキル基で置換されていても良い脂環式環もしくはラクトン環を表す。ハロゲン、水酸基もしくは脂環式環で置換されていても良い炭素数1〜14のアルキルは、炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。ここでハロゲンとしては、例えばフッ素、塩素、臭素等が挙げられる。脂環式環としては、例えばシクロペンチル環、シクロヘキシル環、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル環、ビシクロ[4.3.0]ノニル環、ビシクロ[4.4.0]デカニル環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル環、アダマンチル環等が挙げられる。なかでも少なくとも1個のフッ素で置換された水酸基を有することもある炭素数1〜14のフルオロアルキルが好ましい。
ハロゲン、水酸基、アルキル基で置換されていても良い脂環式環もしくはラクトン環におけるアルキル基は、炭素数が1〜4程度の低級アルキル基であるのが通常である。炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。ハロゲンとしては、例えば上記と同様なものが、脂環式環としては、例えば上記と同様な脂環式環が挙げられる。またラクトン環としては、例えば2―オキソオキセタンー3―イル環、2−オキソオキソラン−3−イル環、2−オキソオキサン−3−イル環、2―オキセパノンー3―イル環等が挙げられる。
【0014】
1が少なくとも1個のフッ素原子を有している場合は、市場からモノマー(I)の入手のし易さを考慮すると、R1は下式(II)
【0015】

(式中、R2は水素、アルキル又はフルオロアルキルを表し、R3はフルオロアルキルを表し、R2とR3の合計炭素数は1〜11である。nは0または1を表す。)
であることが好ましい。
ここにおけるアルキル、フルオロアルキルは、炭素数が3以上である場合は、直鎖でも分岐していてもよい。またフルオロアルキルは、少なくとも1個のフッ素原子を有しておれば良いが、フッ素原子を2個以上有しているものが好ましい。もちろんパーフルオロアルキルであっても良い。また水酸基が置換されている場合は、親水性が増大する結果、現像液へのなじみを向上し得る。
【0016】
式(I)で示される(メタ)アクリル酸フルオロアルキルの具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
【0017】
アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、
メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、
アクリル酸1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル、
メタクリル酸1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル、
メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、
メタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、
アクリル酸1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデシル、
メタクリル酸1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデシル、
【0018】
メタクリル酸 3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル、
メタクリル酸 3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル、
メタクリル酸 3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル、
メタクリル酸 3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル、
メタクリル酸 3−(パーフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル、
メタクリル酸 3−(パーフルオロオクチル)−2−ヒドロキシプロピル、
メタクリル酸 3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル、
アクリル酸 3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル、
アクリル酸 3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル、
アクリル酸 3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル、
アクリル酸 3−(パーフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル、
アクリル酸 3−(パーフルオロオクチル)−2−ヒドロキシプロピル、
【0019】

など。
【0020】
このような式(I)で示されるモノマーの重合によって、下式(Ia)で示される単位が形成されることになる。
【0021】

【0022】
式中、Q及びR1は先に定義したとおりである。
【0023】
また、本発明に用いるバインダー樹脂は、それ自身アルカリ可溶性であるか又は放射線照射後に後述する感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものである。このような、それ自身アルカリ可溶性であるか又は放射線照射後に感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となる性質は、アルカリ現像タイプの化学増幅型レジストに一般的に求められるものであり、したがって、化学増幅型レジストにおいて従来から知られている技術を応用して、このような性質を付与することができる。
【0024】
バインダー樹脂がそれ自身アルカリ可溶性であるか、又は放射線照射後の感放射線化合物の作用によりアルカリ可溶性となるものであり、当該バインダー樹脂を含むレジスト膜の放射線照射部がアルカリ現像によって除去される場合は、ポジ型レジストとなる。すなわち、化学増幅型のポジ型レジストは、放射線照射部で感放射線化合物から発生した酸又は塩基が、その後の熱処理(post exposure bake)によって拡散し、樹脂等の保護基を解裂させるとともに酸又は塩基を再生成することにより、その放射線照射部をアルカリ可溶化する。化学増幅型ポジ型レジストには、バインダー樹脂がアルカリ可溶性であり、このバインダー樹脂及び感放射線化合物に加えて、酸又は塩基の作用により解裂しうる保護基を有し、それ自身はアルカリ可溶性バインダー樹脂に対して溶解抑止能を持つが、酸又は塩基の作用により上記保護基が解裂した後はアルカリ可溶性となる溶解抑止剤を含有するものと、バインダー樹脂が酸又は塩基の作用により解裂しうる保護基を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸又は塩基の作用により上記保護基が解裂した後はアルカリ可溶性になるものとがある。
【0025】
一方、バインダー樹脂がアルカリ可溶性であり、当該バインダー樹脂を含むレジスト膜の放射線照射部が硬化し、アルカリ現像によって放射線の照射されていない部分が除去される場合は、ネガ型レジストとなる。すなわち、化学増幅型のネガ型レジストは通常、バインダー樹脂がアルカリ可溶性であり、このバインダー樹脂及び感放射線成分に加えて架橋剤を含有し、放射線照射部で感放射線化合物から発生した酸又は塩基がその後の熱処理(post exposure bake)によって拡散し、架橋剤に作用してその放射線照射部のバインダー樹脂を硬化させ、アルカリ不溶化させる。
【0026】
本発明で用いるバインダー樹脂におけるアルカリ可溶性部位は、例えば、フェノール骨格を有する単位や、(メタ)アクリル酸エステル骨格を有し、エステルのアルコール側に脂環式環及びカルボキシル基を有する単位、不飽和カルボン酸の単位などでありうる。具体的には、ビニルフェノール単位、イソプロペニルフェノール単位、(メタ)アクリル酸の脂環式エステルであって、その脂環式環にカルボキシル基を有する単位、(メタ)アクリル酸単位などが挙げられる。このようなアルカリ可溶性の単位を比較的多く存在させることにより、その樹脂自体がアルカリ可溶性となる。もちろん、これらの単位とともに、アルカリ不溶性の単位が存在していてもよく、例えば、ビニルフェノール単位又はイソプロペニルフェノール単位の水酸基の一部がアルキルエーテル化された混合単位を有する樹脂、ビニルフェノール又はイソプロペニルフェノールと他の重合性不飽和化合物との共重合によって得られる混合単位を有する樹脂、(メタ)アクリル酸の脂環式エステルと(メタ)アクリル酸との共重合によって得られる混合単位を有する樹脂なども、全体としてアルカリ可溶であれば、本発明で規定するそれ自身アルカリ可溶性である樹脂となりうる。
【0027】
一方、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、放射線照射後の感放射線化合物の作用によりアルカリ可溶性になる樹脂をバインダーとする場合、このような性質を有する部位は、例えば、先に例示したフェノール骨格を有する単位やカルボキシル基を有する単位のようなアルカリ可溶性単位に、アルカリ現像液に対して溶解抑止能を持つが、酸又は塩基の作用により解裂しうる保護基を導入したものでありうる。アルカリ現像液に対しては溶解抑止能を持つが、酸又は塩基に対して不安定な基は、公知の各種保護基であることができる。
【0028】
アルカリ現像液に対しては溶解抑止能を持つが、酸に対して不安定な基としては、例えば、tert−ブチル、tert−ブトキシカルボニル及びtert−ブトキシカルボニルメチルのような4級炭素が酸素原子に結合する基;テトラヒドロ−2−ピラニル、テトラヒドロ−2−フリル、1−エトキシエチル、1−(2−メチルプロポキシ)エチル、1−(2−メトキシエトキシ)エチル、1−(2−アセトキシエトキシ)エチル、1−〔2−(1−アダマンチルオキシ)エトキシ〕エチル及び1−〔2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)エトキシ〕エチルのようなアセタール型の基;3−オキソシクロヘキシル、4−メチルテトラヒドロ−2−ピロン−4−イル(メバロニックラクトンから導かれる)及び2−アルキル−2−アダマンチルのような非芳香族環状化合物の残基などが挙げられ、これらの基が、フェノール性水酸基の水素又はカルボキシル基の水素に置換することになる。これらの保護基は、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂に、公知の保護基導入反応を施すことによって、又はこのような基を有する不飽和化合物を一つのモノマーとする共重合を行うことによって、樹脂中に導入することができる。
【0029】
一方、塩基に対して不安定な基の例としては、アルキルカーバメート又はシクロアルキルカーバメート系の基が挙げられる。具体的には例えば、フェノール骨格を有し、そのフェノール性水酸基の一部がアルキルカルバモイルオキシ基やシクロアルキルカルバモイルオキシ基で置き換えられた単位を有する樹脂が、このようなタイプのバインダー樹脂となりうる。
【0030】
本発明では、バインダー樹脂中に、前記式(I)で示されるモノマー中にアルカリ可溶性基を有する重合単位又は放射線照射後に感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となる基を有する場合以外は、前記式(I)で示されるモノマーから導かれる重合単位に加えて、以上説明したようなアルカリ可溶性基を有する重合単位又は放射線照射後に感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となる基を有する重合単位を存在させることになる。その場合、この樹脂は、式(I)で示されるモノマーを一つのモノマーとし、アルカリ可溶性基を有するか、又は放射線照射後に感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となる基を有する重合性不飽和化合物を別のモノマーとして、共重合を行うことにより、製造される。共重合自体は常法に従って行うことができ、例えば、適当な溶媒中に各モノマーを溶解し、重合開始剤の存在下に重合を開始し、反応を進めればよい。また、例えばビニルフェノールやイソプロペニルフェノールの単位における水酸基を、アルキルや放射線照射後に感放射線化合物の作用により脱離する基で修飾する場合は、式(I)で示されるモノマーとビニルフェノール又はイソプロペニルフェノールとを共重合させた後、ビニルフェノール単位又はイソプロペニルフェノール単位の水酸基を修飾するのが一般的である。
【0031】
式(I)のモノマーから導かれる重合単位をバインダー樹脂中に組み込むことにより、この樹脂は、170nm以下の波長の光、例えば波長157nmのF2 エキシマレーザーに対する透過率に優れたものとなる。したがって、式(I)のモノマーから導かれる重合単位は、このような性能が達成でき、かつ樹脂自身がアルカリ可溶性であるか、又は放射線照射後に感放射線化合物の作用によりアルカリ可溶性となる範囲で存在させればよい。レジストの種類やタイプにもよるが、一般的には、式(I)のモノマーから導かれる重合単位の割合は、樹脂全体のうち、10〜100モル%程度の範囲から適宜選択すればよい。
【0032】
アルカリ可溶性の単位を比較的多く存在させることにより、その樹脂自身がアルカリ可溶性となる。それ自身がアルカリ可溶性であるバインダー樹脂は、溶解抑止剤及び感放射線化合物と組み合わせて、ポジ型レジストとすることができ、また架橋剤及び感放射線化合物と組み合わせて、ネガ型レジストとすることができる。
【0033】
アルカリ可溶性樹脂自体をバインダーとし、ポジ型レジストとする場合に用いられる溶解抑止剤は、フェノール系化合物のフェノール性水酸基を、アルカリ現像液に対しては溶解抑止能を持つが、酸又は塩基の作用により解裂する基で保護した化合物でありうる。酸の作用により解裂する基としては、例えば、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられ、これがフェノール性水酸基の水素に置換することになる。酸の作用により解裂する基を有する溶解抑止剤には、例えば、2,2−ビス(4−tert−ブトキシカルボニルオキシフェニル)プロパン、ビス(4−tert−ブトキシカルボニルオキシフェニル)スルホン、3,5−ビス(4−tert−ブトキシカルボニルオキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダンなどが包含される。一方、塩基の作用により解裂する基としては、例えば、アルキルカーバメート又はシクロアルキルカーバメート系の基が挙げられ、フェノール性水酸基をアルキルカルバモイルオキシ基やシクロアルキルカルバモイルオキシ基で置き換えた化合物が、塩基の作用により解裂する基を有する溶解抑止剤となりうる。このような溶解抑止剤を用いる場合は、バインダー樹脂とともにバインダー成分に含めて考慮するのが好都合である。
【0034】
アルカリ可溶性樹脂自体をバインダーとし、ネガ型レジストとする場合に用いられる架橋剤は、酸又は塩基の作用によりバインダー樹脂を架橋させるものであればよい。架橋剤は一般に、酸の作用により架橋反応を起こすものであることが多く、通常は、メチロール基を有する化合物又はそのアルキルエーテル体が用いられる。具体例としては、ヘキサメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチルメラミン及びテトラメトキシメチルメラミンのようなメチロール化メラミン又はそのアルキルエーテル体、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン及びトリメトキシメチルベンゾグアナミンのようなメチロール化ベンゾグアナミン又はそのアルキルエーテル体、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノール又はそのアルキルエーテル体、4−tert−ブチル−2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール又はそのアルキルエーテル体、 5−エチル−1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ペルヒドロ−1,3,5−トリアジン−2−オン(通称N−エチルジメチロールトリアゾン)又はそのアルキルエーテル体、N,N−ジメチロール尿素又はそのジアルキルエーテル体、3,5−ビス(ヒドロキシメチル)ペルヒドロ−1,3,5−オキサジアジン−4−オン(通称ジメチロールウロン)又はそのアルキルエーテル体、テトラメチロールグリオキザールジウレイン又はそのテトラメチルエーテル体などが挙げられる。
【0035】
一方、放射線照射後の感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性になる単位と、式(I)のモノマーから導かれる単位とを有するバインダー樹脂は、感放射線化合物と組み合わせて、ポジ型レジストとすることができる。式(I)のモノマー中自体が、放射線照射後の感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性になる単位になる場合もありうる。放射線照射後に感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性になる単位のなかでも、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル類から導かれる重合単位を有するものは、解像度やドライエッチング耐性の点で優れている。(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル類は、具体的には下式(III)で表すことができ、それの重合によって、下式(IIIa)の単位が形成されることになる。
【0036】

【0037】
式中、Rは水素、メチル又は炭素数1〜4のフルオロアルキルを表し、R4はアルキルを表す。R4で表されるアルキルは、例えば炭素数1〜8程度であることができ、通常は直鎖であるのが有利であるが、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。具体的なR4としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどが挙げられる。式(IIIa)で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル類の重合単位では、2−アルキル−2−アダマンチルが酸の作用により解裂するので、この単位を有する樹脂は、感放射線化合物として酸発生剤を用いたポジ型レジストに適用することができる。
【0038】
バインダー樹脂が、式(I)の導かれる重合単位に加えて、下式(IV)

(式中、R5及びR6は互いに独立に、水素、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、カルボキシル、シアノ若しくは基−COOR7(R7はアルコール残基である)を表すか、又はR5とR6が一緒になって、-C(=O)OC(=O)-で示されるカルボン酸無水物残基を形成する。)
並びに無水マレイン酸及び無水イタコン酸から選ばれる不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位で示される脂環式オレフィンの重合単位を含有することは、ドライエッチング耐性を上げる上で特に有効である。
【0039】
式(IV)中のR5及びR6は互いに独立に、水素、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、カルボキシル、シアノ若しくは基−COOR7(R7はアルコール残基である)を表すか、又はR5とR6が一緒になって、-C(=O)OC(=O)- で示されるカルボン酸無水物残基を形成することもできる。R5及び/又はR6がアルキルである場合の具体例としては、メチル、エチル、プロピルなどが挙げられ、同じくヒドロキシアルキルである場合の具体例としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。R5及び/又はR6が基−COOR7である場合は、カルボキシルがエステルとなったものであり、R7に相当するアルコール残基としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜8程度のアルキル、2−オキソオキソラン−3−又は−4−イルなどを挙げることができ、ここにアルキルの置換基としては、水酸基や脂環式炭化水素残基などが挙げられる。そこで、R5及び/又はR6が−COOR7で示されるカルボン酸エステル残基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、2−オキソオキソラン−3−イルオキシカルボニル、2−オキソオキソラン−4−イルオキシカルボニル、1,1,2−トリメチルプロポキシカルボニル、1−シクロヘキシル−1−メチルエトキシカルボニル、1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエトキシカルボニル、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0040】
また式(IV)で示される脂環式オレフィンの重合単位に導くためのモノマーとして、具体的には例えば、次のような化合物を挙げることができる。
【0041】
2−ノルボルネン
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン
5−ノルボルネン−2−カルボン酸
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル
5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、 5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、
5−ノルボルネン−2−メタノール、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物など。
【0042】
不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位は、無水マレイン酸の重合単位及び無水イタコン酸の重合単位から選ばれ、それぞれ下式(V)及び下式(VI)で示すことができる。これらのの重合単位に導くためのモノマーとして、具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0043】

【0044】
式(I)のモノマーから導かれる重合単位が組み込まれ、それ自身がアルカリ可溶性であるか、又は放射線照射後の感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるバインダー樹脂について、典型的ないくつかの例を挙げると、以下の式(VII)〜(XXVIII)で示される各単位を有するものなどがある。
【0045】

【0046】

【0047】
式中、R8は水酸基の保護基を表す。ここでいう水酸基の保護基は、先に説明したアルキルや、酸又はアルカリの作用により解裂する基として例示した各種の基でありうる。
【0048】
以上のような、アルカリ可溶性の又はアルカリ可溶性となりうる樹脂をバインダーとする化学増幅型レジストは、放射線の作用により分解する感放射線化合物を含有する。バインダー樹脂がアルカリ可溶性であって、溶解抑止剤として酸の作用により解裂する基を有する化合物を用い、ポジ型に作用させる場合や、バインダー樹脂が酸の作用により解裂する基を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用により解裂する基が解裂した後はアルカリ可溶性となるものであって、ポジ型に作用させる場合は、感放射線化合物として、放射線の作用により酸を発生する酸発生剤が用いられる。また、バインダー樹脂がアルカリ可溶性であって、架橋剤を含有するネガ型レジストの場合は、架橋剤が酸の作用により架橋反応を起こすものであることが多いことから、感放射線化合物としては、やはり酸発生剤が用いられる。一方、バインダー樹脂がアルカリ可溶性であって、溶解抑止剤として塩基の作用により解裂する基を有する化合物を用い、ポジ型に作用させる場合や、バインダー樹脂が塩基の作用により解裂する基を有するものであって、ポジ型に作用させる場合は、感放射線化合物として、放射線の作用により塩基を発生する塩基発生剤が用いられる。
【0049】
感放射線化合物としての酸発生剤は、その物質自体に、又はその物質を含むレジスト組成物に、放射線を照射することによって、酸を発生する各種の化合物であることができる。例えば、オニウム塩、ハロゲン化アルキルトリアジン系化合物、ジスルホン系化合物、ジアゾメタンスルホニル骨格を有する化合物、スルホン酸エステル系化合物などが挙げられる。このような酸発生剤の具体例を以下に示す。
【0050】
オニウム塩:
ジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、 ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4-t-ブチルフェニルヨードニウム カンファースルホネート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートなど。
【0051】
ハロゲン化アルキルトリアジン系化合物:
2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、 2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、 2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなど。
【0052】
ジスルホン系化合物:
ジフェニル ジスルホン、
ジ−p−トリル ジスルホン、
フェニル p−トリル ジスルホン、
フェニル p−メトキシフェニル ジスルホンなど。
【0053】
ジアゾメタンスルホニル骨格を有する化合物:
ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
(ベンゾイル)(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなど。
【0054】
スルホン酸エステル系化合物:
1−ベンゾイル−1−フェニルメチル p−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル p−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、
1,2,3−ベンゼントリイル トリスメタンスルホネート、
2,6−ジニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
4−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(ブチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミドなど。
【0055】
感放射線化合物としての塩基発生剤も、その物質自体に、又はその物質を含むレジスト組成物に、放射線を照射することによって、塩基を発生する各種の化合物であることができる。その具体例としては、2−ニトロベンジル シクロヘキシルカーバメート、2,6−ジニトロベンジル シクロヘキシルカーバメート、ホルムアニリド、水酸化トリフェニルスルホニウムなどが挙げられる。これらの化合物は、放射線の作用により分解して、アミンやヒドロキシルアニオンを生成する。
【0056】
また、一般に酸発生剤を用いる化学増幅型のレジスト組成物においては、塩基性化合物、特に塩基性含窒素有機化合物、例えばアミン類を、クェンチャーとして添加することにより、放射線照射後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良できることが知られており、本発明においても、感放射線化合物として酸発生剤を用いる場合は、このような塩基性化合物を配合するのが好ましい。クェンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるようなものが挙げられる。
【0057】

【0058】

【0059】
式中、R11及びR12は互いに独立に、水素、水酸基で置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル又はアリールを表し、R13、R14及びR15は互いに独立に、水素、水酸基で置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリール又はアルコキシを表し、R16は水酸基で置換されていてもよいアルキル又はシクロアルキルを表し、Aはアルキル、アルキレン、カルボニル、イミノ、ジスルフィド、スルフィド又は2級アミンを表す。R11〜R16で表されるアルキル及びR13〜R15で表されるアルコキシは、それぞれ炭素数1〜6程度であることができ、R11〜R16で表されるシクロアルキルは、炭素数5〜10程度であることができ、そしてR11〜R15で表されるアリールは、炭素数6〜10程度であることができる。また、Aで表されるアルキレンは、炭素数1〜6程度であることができ、直鎖でも分岐していてもよい。
【0060】
さらには、特開平11-52575号公報に開示されているような、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物をクエンチャーとすることもできる。
【0061】
本発明のレジスト組成物は、その全固形分量を基準に、バインダー成分を60〜99.9重量%程度、そして感放射線化合物を0.1〜20重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。ポジ型レジストであって、溶解抑止剤を用いる場合は、上記バインダー成分の内数として、レジスト組成物の全固形分量を基準に、5〜40重量%程度の範囲で含有するのが適当である。ネガ型レジストの場合には、同じくレジスト組成物の全固形分量を基準に、架橋剤を1〜30重量%程度の範囲で含有するのが適当である。バインダー樹脂が、放射線照射後の感放射線化合物の作用によりアルカリ可溶性となるものであって、ポジ型に作用し、レジスト組成物の大部分がバインダー樹脂と感放射線化合物で占められる場合、バインダー樹脂の量は、組成物中の全固形分量を基準に80重量%程度以上となるようにするのが適当である。また、感放射線化合物が酸発生剤であって、クェンチャーとして塩基性化合物を用いる場合は、同じくレジスト組成物の全固形分重量を基準に、0.01〜1重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。この組成物はまた、必要に応じて、増感剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加物を少量含有することもできる。
【0062】
本発明のレジスト組成物は通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態でレジスト液となり、シリコンウェハーなどの基体上に、スピンコーティングなどの常法に従って塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で一般に用いられている溶剤が使用しうる。例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
基体上に塗布され、乾燥されたレジスト膜には、パターニングのための露光処理が施され、次いで脱保護基反応又は架橋反応を促進するための加熱処理を行った後、アルカリ現像液で現像される。ここで用いるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であることができるが、一般には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液が用いられることが多い。
【実施例】
【0064】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中にある部は、特記ないかぎり重量基準である。また重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミェーションクロマトグラフィーにより求めた値である。
【0065】
モノマー合成例1(メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルの合成)
2−メチル−2−アダマンタノール83.1gとトリエチルアミン101gを仕込み、200gのメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに、メタクリル酸クロリド78.4g(2−メチル−2−アダマンタノールに対して1.5モル倍)を滴下し、その後、室温で約10時間攪拌した。濾過後、有機層を5重量%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて水洗を2回行った。有機層を濃縮した後、減圧蒸留して、次式で示されるメタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルを得た。
【0066】

【0067】
モノマー合成例2(α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの合成)
α−ブロモ−γ−ブチロラクトン100gとメタクリル酸104.4g(α−ブロモ−γ−ブチロラクトンに対して2.0モル倍)を仕込み、α−ブロモ−γ−ブチロラクトンの3重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこにトリエチルアミン183.6g(α−ブロモ−γ−ブチロラクトンに対して3.0モル倍)を滴下し、その後、室温で約10時間攪拌した。濾過後、有機層を5重量%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて水洗を2回行った。有機層を濃縮して、次式で示されるα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを得た。
【0068】

【0069】
樹脂合成例(A1)
磁気攪拌子、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた100mL三つ口フラスコに、2−トリフルオロメチルアクリル酸〔関東化学(株)より入手〕5.81g、2−(2−メチルアダマンタン)メタクリル酸 エステル9.72g、メチルイソブチルケトン10.5gを加え、窒素置換を行った後に80℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル0.34gをメチルイソブチルケトン10gに溶解した溶液を30分かけて滴下した。その後80℃に保ったまま8時間保温した。この反応液を30℃まで冷却した後にトリエチルアミン7.5gを1時間かけて滴下した。その後35〜45℃でα−ブロモ−γ−ブチロラクトン8.56gを2時間かけて滴下した。45℃に保ったまま8時間反応を行った。その後濾過し、濾液を6回水洗した。水洗後の有機層を濃縮後2−ヘプタノンを加え濃縮し、65%メタノール水に滴下し、析出した樹脂を濾過、乾燥し樹脂A1を得た。得量14.05g。
【0070】
樹脂合成例(A2)
磁気攪拌子、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた100mL三つ口フラスコに、t−ブチル5−ノルボルネン−2−カルボキシレート15.54g、無水マレイン酸7.84g、メタクリル酸 ヘキサフルオロイソプロピル9.44g、メチルイソブチルケトン22gを仕込んだ。窒素置換を行った後に80℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル0.82gをメチルイソブチルケトン11gに溶解した溶液を30分かけて滴下した。その後80℃に保ったまま8時間保温した。その後メタノール250g、水100gの混合溶液に反応液を注ぎ、析出した樹脂をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解し、濃縮することにより樹脂溶液を得た。得量64.55g。固形分21.40%。これを樹脂A2とする。
【0071】
樹脂合成例(A3)
冷却管、温度計、磁気攪拌子、滴下ロートを備えた100ml三つ口フラスコに、2−メチルアダマンチル ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシレート(NB−2MAd)8.59g、無水マレイン酸(MA)2.94g、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル アクリレート(TFMC70OHAA)5.97g、4−メチル−2−ペンタノン 10gをしこみ、窒素置換を行った。その後80℃まで昇温し、4−メチル−2−ペンタノン 7gに溶解したAIBN0.31gを30分かけて滴下した。
その後80℃で8時間保温した。冷却後メタノール300mlに反応液を滴下し析出した樹脂を濾過により得た。40℃で減圧乾燥を8時間行い樹脂10.2gを得た。ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)6400。これを樹脂A3とする。
【0072】
樹脂合成例(A4、A5、X1)
樹脂A3の合成例と同様の操作により下表の樹脂を得た。
【0073】
仕込みモノマー組成 Mw
樹脂合成例A4 NB-TB/MA/TFMC70HAA=40/40/20 6100
樹脂合成例A5 NB-2Mad/MA/TFMC70HAA=45/45/10 5500
樹脂合成例X1 NB-TB/MA=50/50 5400
NB-TB:2−メチルプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシレート
【0074】
樹脂合成例(A6)
冷却管、温度計、磁気攪拌子、滴下ロートを備えた100ml三つ口フラスコに、2−アダマンチルプロピル ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシレート (NB−AdTB)9.43g、MA 2.94g、TFMC7OHAA 5.97g、4−メチル−2−ペンタノン 10gをしこみ、窒素置換を行った。その後80℃まで昇温し、4−メチル−2−ペンタノン 7gに溶解したAIBN0.31gを30分かけて滴下した。その後80℃で8時間保温した。冷却後ヘキサン300mlに反応液を滴下し析出した樹脂を濾過により得た。40℃で減圧乾燥を8時間行い樹脂7.3gを得た。ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)10900。これを樹脂A6とする。
【0075】
樹脂合成例(A7)
仕込みモノマーのモル比をNB-AdTB/MA/TFMC7OHMA=40/40/20とする以外は、樹脂合成例A6と同様の操作を行い樹脂を得た。ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)16700。これを樹脂A7とする。
【0076】
樹脂合成例(A8)
冷却管、温度計、磁気攪拌子、滴下ロートを備えた100ml三つ口フラスコに、2−アダマンチル メタクリレート(2MAdMA) 7.03g、TFMC7OHMA 12.37g、4−メチル−2−ペンタノン 10gをしこみ、窒素置換を行った。その後80℃まで昇温し、4−メチル−2−ペンタノン 7gに溶解したAIBN0.25gを30分かけて滴下した。その後80℃で8時間保温した。冷却後ヘキサン300mlに反応液を滴下し析出した樹脂を濾過により得た。40℃で減圧乾燥を8時間行い樹脂10.5gを得た。ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)24000。これを樹脂A8とする。
【0077】
樹脂合成例(X2)
メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルとα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを5:5のモル比(15.0g:11.7g)で仕込み、全モノマーの2重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して2モル%添加し、80℃で約8時間加熱した。その後、反応液を大量のヘプタンに注いで沈殿させる操作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が10000の共重合体を得た。これを樹脂X2とする。
【0078】
実施例1〜8及び比較例1、2
以下の各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0079】
樹脂 10部
酸発生剤:p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート
〔みどり化学(株)より入手した“MDS−205” 0.2部
クェンチャー:2,6−ジイソプロピルアニリン 0.015部
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100部
【0080】
ヘキサメチルジシラザンを用いて23℃で20秒間処理したシリコンウェハーに、上で調製したレジスト液を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるよう塗布した。プリベークは、120℃、60秒の条件で、ダイレクトホットプレート上にて行った。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、簡易型F2 エキシマレーザー露光機〔リソテックジャパン(株)から入手した“VUVES-4500”〕を用い、露光量を段階的に変化させてオープンフレーム露光した。露光後は、ダイレクトホットプレート上にて、120℃で60秒間のポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のウェハーを目視観察して、レジストが膜抜けする最少露光量(膜抜け感度)を求め、表1の結果を得た。
【0081】
一方、フッ化マグネシウムウェハーに、先に調製したレジスト液及び樹脂のみをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒に溶解した液を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるよう塗布し、120℃、60秒の条件で、ダイレクトホットプレート上にてプリベークして、レジスト膜を形成させた。こうして形成されたレジスト膜の波長157nmにおける透過率を、上で用いた簡易型F2 エキシマレーザー露光機の透過率測定機能を用いて測定し、表1に示す結果を得た。
【0082】
【表1】

【0083】
樹脂合成例(A9)
磁気攪拌子、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた100mLフラスコに、メタクリル酸 3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル〔ダイキン化成品販売(株)より入手〕10.31g、p−t−ブトキシスチレン17.63g、メチルイソブチルケトン31gを仕込んだ。窒素置換を行った後に80℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル0.82gをメチルイソブチルケトン11gに溶解した溶液を30分かけて滴下した。その後80℃に保ったまま8時間保温した。その後メタノール250g、水100gの混合溶液に反応液を注ぎ、析出した樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解し、濃縮することにより57.6gの樹脂溶液を得た。この樹脂溶液にメチルイソブチルケトン62.8g、p−トルエンスルホン酸3.0g、水9.7gを加えて70℃で15時間保温した。この反応液を5回水洗を行い濃縮後、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート300gを加え更に濃縮し、樹脂溶液を得た。得量65.3g。
固形分27.21%。重量平均分子量14900。この樹脂を樹脂A9とする。
【0084】
樹脂合成例(A10)
磁気攪拌子、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた200mLフラスコに、メチルイソブチルケトン26.81gを仕込んだ。窒素置換を行った後に84℃に昇温し、別途、メタクリル酸 3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル〔ダイキン化成品販売(株)より入手〕9.89g、p−t−ブトキシスチレン16.92g、アゾビスイソブチロニトリル1.97gをメチルイソブチルケトン26.81gに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。その後84℃に保ったまま8時間保温した。その後メタノール247.23g、水123.61gの混合溶液に反応液を30分かけて滴下し、得られた樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解し、濃縮することにより67.03gの樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液にメチルイソブチルケトン93.52g、p−トルエンスルホン酸3.49g、水11.26gを加えて70℃で15時間保温した。この反応液を5回水洗を行い濃縮後、n−ヘプタン446.88g中に30分かけて滴下し、得られた樹脂をろ過、減圧乾燥を行い、樹脂を得た。得量17.07g。重量平均分子量4400。これを樹脂A10とする。
【0085】
樹脂X3:日本曹達(株)製のポリ(p−ビニルフェノール)(商品名“VP-2500”)の水酸基を平均保護率20%でイソプロピル基で保護した樹脂。
【0086】
実施例9、10及び比較例3
以下の各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0087】
樹脂(固形分として) 10部
架橋剤:ヘキサメトキシメチルメラミン 0.5部
酸発生剤:N−(イソプロピルスルホニルオキシ)スクシンイミド 1.1部
クェンチャー:1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン 0.0125部
溶剤(樹脂持ち込み分を加えて):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100部
【0088】
Brewer 社製の有機反射防止膜用組成物である“DUV-42を塗布し、215℃、60秒の条件でベークして、厚さ 600Åの有機反射防止膜を形成させたシリコンウェハーに、上で調製したレジスト液を乾燥後の膜厚が0.523μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、100℃、60秒の条件でダイレクトホットプレート上にてプリベークした。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、KrFエキシマステッパー〔(株)ニコン製の“NSR 2205EX-12B”、NA=0.55、σ=0.8〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて105℃、60秒の条件でポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、以下の方法で実効感度及び解像度を調べた。
【0089】
実効感度: 0.20μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で表示した。
【0090】
解像度: 実効感度の露光量で分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法で表示した。
【0091】
一方、フッ化マグネシウムウェハーに、先に調製したレジスト液及び樹脂のみをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒に溶解した液を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるよう塗布し、100℃、60秒の条件で、ダイレクトホットプレート上にてプリベークして、レジスト膜を形成させた。こうして形成されたレジスト膜の波長157nmにおける透過率を、簡易型F2 エキシマレーザー露光機(リソテックジャパン製 VUVES−4500)の透過率測定機能を用いて測定し、表2に示す結果を得た。
【0092】
【表2】

【0093】
樹脂合成例(A11)
磁気攪拌子、窒素導入管、ジムロート冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル9.37g、メタクリル酸1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル〔東京化成工業(株)より入手〕9.44g、アゾビスイソブチロニトリル0.263g及びメチルイソブチルケトン40.9gを仕込み、雰囲気を窒素に置換した。その後、系内に窒素を流しながらオイルバスを用いて80℃まで昇温し、約7時間保温した。冷却後、反応液を1dm3 のメタノール中に攪拌しながら滴下した。30分間攪拌した後、濾過して、白色粉末25.8gを得た。この白色粉末を、減圧下に60℃で約6時間乾燥して、8.4gの樹脂を得た。収率45%。重量平均分子量10200。これを樹脂A11とする。
【0094】
実施例11及び比較例4
以下の各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0095】
樹脂(固形分換算) 10部
酸発生剤:p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート
〔みどり化学(株)より入手した“MDS−205”〕 0.2部
クェンチャー:ジシクロヘキシルメチルアミン 0.015部
溶剤:実施例 2−ヘプタノン 100部
比較例 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/γ−ブチロラクトン(95/5) 100部
【0096】
Brewer 社製の有機反射防止膜用組成物である“DUV−30J−14”を塗布し、215℃、60秒の条件でベークして、厚さ 1,600Åの有機反射防止膜を形成させたシリコンウェハーに、上で調製したレジスト液を乾燥後の膜厚が0.39μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて120℃、60秒の条件でプリベークした。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、ArFエキシマステッパー〔(株)ニコン製の“NSR ArF”、NA=0.55、σ=0.6〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて120℃、60秒の条件で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、以下の方法で実効感度及び解像度を調べた。結果を表3に示す。
【0097】
実効感度: 0.18μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で表示した。
【0098】
解像度: 実効感度の露光量で分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法で表示した。
【0099】
一方、フッ化マグネシウムウェハーに、先に調製したレジスト液及び樹脂のみをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒に溶解した液を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるよう塗布し、120℃、60秒の条件で、ダイレクトホットプレート上にてプリベークして、レジスト膜を形成させた。こうして形成されたレジスト膜の波長157nmにおける透過率を、簡易型F2 エキシマレーザー露光機〔リソテックジャパン(株)から入手した“VUVES−4500”〕の透過率測定機能を用いて測定し、表3に示す結果を得た。
【0100】
【表3】

【0101】
樹脂合成例(A12)
攪拌棒、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた100mLフラスコに、 p−アセトキシスチレン9.73g、アクリル酸t−ブチル2.56g、メタクリル酸 3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル〔ダイキン化成品販売(株)より入手〕7.96gとイソプロパノール13.51gを仕込んで窒素置換をし、80℃まで昇温した。別途、アゾビスイソブチロニトリル0.41gをイソプロパノール6.75gに溶解した溶液を0.5時間かけて滴下した。80℃で6時間保温した後、
メタノールと水の混合液中に滴下し晶析させ、濾過、乾燥し、15.69gの樹脂を得た。
得られた樹脂15.69gと4−ジメチルアミノピリジン1.57gとメタノール47.07gを攪拌棒、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた100mLフラスコに仕込んで、還流下、15時間熟成した。冷却後、氷酢酸0.93gで中和し、水784.50g中にチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出した。その後、結晶をアセトンに溶かし、水にチャージし晶析させ、濾過により結晶を取り出し、この操作を計3回繰り返した後、得られた結晶を乾燥し、12.59gの樹脂を得た。重量平均分子量は37000、分散度3.72(GPC法:ポリスチレン換算) であった。これを樹脂A12とする。
【0102】
樹脂合成例(A13)
攪拌棒、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた100mLフラスコに、 p−アセトキシスチレン9.73g、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル4.69g 、メタクリル酸 3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル〔ダイキン化成品販売(株)より入手〕7.96gとイソプロパノール13.92gを仕込んで窒素置換をし、80℃まで昇温した。別途、アゾビスイソブチロニトリル0.41gをイソプロパノール7.46gに溶解した溶液を0.5時間かけて滴下した。80℃で6時間保温した後、メタノールと水の混合液中に滴下し晶析させ、濾過し、22.08gの樹脂を得た。
得られた樹脂22.08gと4−ジメチルアミノピリジン2.21gとメタノール110gを攪拌棒、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた300mLフラスコに仕込んで、還流下、15時間熟成した。冷却後、氷酢酸2.21gで中和し、水2000g中にチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出した。その後、結晶をアセトンに溶かし、水にチャージし晶析させ、濾過により結晶を取り出し、この操作を計3回繰り返した後、得られた結晶を乾燥し、11.51gの樹脂を得た。重量平均分子量は30900、分散度1.99(GPC法:ポリスチレン換算) であった。これを樹脂A13とする。
【0103】
樹脂合成例(X4)
重量平均分子量が12600、分散度1.87(GPC法:ポリスチレン換算)のt−ブチルアクリレートとスチレンとp−ヒドロキシスチレン共重合体(丸善石化(株)製のTSM−4)の共重合比は、核磁気共鳴(13C−NMR)分光計により、約20:20:60と求められた。
【0104】
樹脂合成例(X5)
(1)フラスコに、 メタクリル酸2−アダマンチル−2−メチル24.6g(0.105モル)とp−アセトキシスチレン39.7g(0.245モル)とイソプロパノール128.6gを仕込んで窒素置換をし、75℃まで昇温した。その溶液に、ジメチル2、2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.84g(0.021モル)をイソプロパノール9.7gに溶かしてから滴下した。75℃で約0.5時間、還流下で約11時間熟成した後、アセトンで希釈し、ヘプタンにチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出し、得られた結晶を乾燥した。得られたメタクリル酸2−アダマンチル−2−メチルとp−アセトキシスチレン共重合体の結晶は54.1gであった。
【0105】
(2)フラスコに、上記で得られたメタクリル酸2−アダマンチル−2−メチルとp−アセトキシスチレン共重合体(30:70)53.2g(モノマー単位として0.29モル)と4−ジメチルアミノピリジン5.3g(0.043 モル)とメタノール159.5gを仕込んで、還流下、20時間熟成した。冷却後、氷酢酸3.92g(0.065モル)で中和し、水にチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出した。その後、結晶をアセトンに溶かし、水にチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出し、この一連の操作を計3回繰り返した後、得られた結晶を乾燥した。得られたメタクリル酸2−アダマンチル−2−メチルとp−ヒドロキシスチレン共重合体の結晶は41.2gであった。また、重量平均分子量は8100、分散度1.68(GPC法:ポリスチレン換算)であり、共重合比は核磁気共鳴(13C−NMR)分光計により、約30:70と求められた。この樹脂を樹脂X5とする。
【0106】
樹脂合成例(X6)
(1)フラスコに、 メタクリル酸2−アダマンチル−2−メチル16.4g(0.07モル)とp−アセトキシスチレン45.4g(0.28モル)とイソプロパノール123.6gを仕込んで窒素置換をし、75℃まで昇温した。その溶液に、ジメチル2‘2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.84g(0.021モル)をイソプロパノール9.7gに溶かしてから滴下した。75℃で約0.5時間、還流下で約11時間熟成した後、アセトンで希釈し、ヘプタンにチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出し、得られた結晶を乾燥した。得られたメタクリル酸2−アダマンチル−2−メチルとp−アセトキシスチレン共重合体の結晶は54.2gであった。
【0107】
(2)フラスコに、上記で得られたメタクリル酸2−アダマンチル−2−メチルとp−アセトキシスチレン共重合体(20:80)53.0g(モノマー単位として0.30モル)と4−ジメチルアミノピリジン5.3g(0.043 モル)とメタノール159.0gを仕込んで、還流下、20時間熟成した。冷却後、氷酢酸3.13g(0.052モル)で中和し、水にチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出した。その後、結晶をアセトンに溶かし、水にチャージし、晶析させ、濾過により結晶を取り出し、この一連の操作を計3回繰り返した後、得られた結晶を乾燥した。得られたメタクリル酸2−アダマンチル−2−メチルとp−ヒドロキシスチレン共重合体の結晶は37.8gであった。また、重量平均分子量は約7900、分散度1.72(GPC法:ポリスチレン換算)であり、共重合比は核磁気共鳴(13C−NMR)分光計により、約20:80と求められた。 この樹脂を樹脂X6とする。
【0108】
実施例12及び比較例5
以下の各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0109】
樹脂 10部
酸発生剤:ビス(4−t−ブチルフェニルヨードニウム カンファースルホネート
0.52部
クェンチャー:トリイソプロパノールアミン 0.052部
溶剤:乳酸エチル 100部
【0110】
実施例13及び比較例6
以下の各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0111】
樹脂 10部
酸発生剤:ビス(4−t−ブチルフェニルヨードニウム カンファースルホネート
0.52部
クェンチャー:2,6−ジイソプロピルアニリン 0.052部
溶剤:メチルアミルケトン 100部
【0112】
ヘキサメチルジシラザンを用いて23℃で20秒間処理したシリコンウェハーに、上で調製したレジスト液を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるよう塗布した。プリベークは、130℃、60秒の条件で、ダイレクトホットプレート上にて行った。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、簡易型F2 エキシマレーザー露光機〔リソテックジャパン(株)から入手した“VUVES-4500”〕を用い、露光量を段階的に変化させてオープンフレーム露光した。露光後は、ダイレクトホットプレート上にて、140℃で60秒間のポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のウェハーを目視観察して、レジストが膜抜けする最少露光量(膜抜け感度)を求め、表4の結果を得た。
【0113】
一方、フッ化マグネシウムウェハーに、先に調製したレジスト液及び樹脂のみをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒に溶解した液を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるよう塗布し、130℃、60秒の条件で、ダイレクトホットプレート上にてプリベークして、レジスト膜を形成させた。こうして形成されたレジスト膜の波長157nmにおける透過率を、真空紫外分光器(日本分光製 VUV−200)用いて測定し、表4に示す結果を得た。
【0114】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のレジスト組成物は、170nm以下の波長の光源、例えば波長157nmのF2エキシマレーザーを用いた露光において、高い透過率を示し、KrF、ArF露光での解像度も高く、充分なコントラストを有するので、170nm以下の波長の光源を用いる化学増幅型のレジストとして、優れた性能を発揮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂及び感放射線化合物を含有し、該バインダー樹脂が、それ自身アルカリ可溶性であるか又は放射線照射後の該感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものであって、下式(I)

(式中、Qは水素又はメチルを表し、R1は少なくとも1個のフッ素で置換された、水酸基を有する炭素数1〜14のフルオロアルキルを表す。)
で示されるモノマーから導かれる重合単位を有するバインダー樹脂であることを特徴とする化学増幅型レジスト組成物。
【請求項2】
バインダー樹脂及び感放射線化合物を含有し、該バインダー樹脂が、それ自身アルカリ可溶性であるか又は放射線照射後の該感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものであって、下式(I)

(式中、Qは水素又はメチルを表し、R1は下式(II)

(式中、R2は水素、アルキル又はフルオロアルキルを表し、R3はフルオロアルキルを表し、R2とR3の合計炭素数は1〜11である。nは1を表す。)
で示される基を表す。)
で示されるモノマーから導かれる重合単位を有するバインダー樹脂であることを特徴とする化学増幅型レジスト組成物。
【請求項3】
感放射線化合物が放射線の作用により酸又は塩基を発生する活性化合物であって、ポジ型に作用する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
バインダー樹脂が酸又は塩基の作用で解裂する基を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸又は塩基の作用でアルカリ可溶性となる請求項3記載の組成物。
【請求項5】
バインダー樹脂が、式(I)のモノマーから導かれる重合単位に加えて、下式(III)

(式中、Rは水素又はメチルを表し、R4はアルキルを表す)
で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルから導かれる重合単位を有し、感放射線化合物が、放射線の作用により酸を発生する酸発生剤である請求項3又は4記載の組成物。
【請求項6】
バインダー樹脂が、式(I)のモノマーから導かれる重合単位に加えて、下式(IV)

(式中、R5及びR6は互いに独立に、水素、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、カルボキシル、シアノ若しくは基−COOR7(R7はアルコール残基である)を表すか、又はR5とR6が一緒になって、−C(=O)OC(=O)−で示されるカルボン酸無水物残基を形成する。)
並びに無水マレイン酸及び無水イタコン酸から選ばれる不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位で示される脂環式オレフィンの重合単位を含有する請求項3〜5いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
バインダー樹脂がそれ自身アルカリ可溶性であり、さらに架橋剤を含有し、ネガ型に作用する請求項1又は2いずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2010−204672(P2010−204672A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84850(P2010−84850)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【分割の表示】特願2000−332641(P2000−332641)の分割
【原出願日】平成12年10月31日(2000.10.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】