説明

化学発熱剤発熱装置および化学発熱剤発熱装置を組み入れた携帯食品用容器

【課題】開裂紐引き抜きタイプの化学発熱剤発熱装置の機能性、利便性、長期保管性、衛生保持性を高め、同時に製造コストを大幅に低減させる。
【解決手段】上面開口する発熱用トレー2の底部に発熱剤パック4と水パック5の両方を開裂する開裂紐3の基端部9を固着し、その上にアルミ箔製袋に発熱剤を充填し、開裂機構13を設けた発熱剤パック4と、開裂機構16を設けた水パック5を重合し、開裂紐3を、発熱剤パック開裂機構13および水パック開裂機構16を介して屈曲反転させて、発熱用トレー2に設けた開裂紐係止機構8に係止して、発熱用トレーの外部に引き出し自由端とし、発熱用トレー2の上面開口部を、水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シート6で、開裂紐3と離隔した状態で密封し、開裂紐3を発熱用トレー2の外部から引出し、発熱剤パック4と水パック5を開裂し、保護シート6は開裂させず、水蒸気のみを透過させ、粉体の透過を防止する構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発熱剤発熱装置、および化学発熱剤発熱装置を組み入れた携帯食品用容器に関し、特に、駅弁等の調理済み食品を、場所、時間を選ばず、随時加熱、保温することができるようにした化学発熱剤発熱装置、および化学発熱剤発熱装置を組み入れた携帯食品用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学物質の発熱反応を利用した、いわゆる化学発熱剤が各種提案されている。代表的なものとしては、粉体酸化カルシウム(生石灰)の一成分系から成る発熱剤と水との反応を利用するタイプ、及び粉体酸化カルシウム(生石灰)と粉体アルミニウムの2成分系から成る発熱剤と水との反応を利用するタイプがある。
【0003】
また、このような化学発熱剤と水との反応を開始させる装置も、種々のタイプのものが提案されている。その代表的なものは、発熱剤を所定の容器に充填した発熱剤パックと、水を非透水性容器に充填した水パックを、発熱用トレー内に重合して載置し、発熱剤パックと水パックを開裂する引抜き紐を、発熱用トレーの外部から引き抜くことにより、発熱剤パックと水パックを同時に開裂させるタイプである(以下、このタイプを「引抜き紐タイプ発熱装置」という)。
引抜き紐タイプ発熱装置には、最低次のような4つの要件が必要である。
【0004】
第1の要件は、発熱剤が吸湿しないように完全水密構造とすることである。
引抜き紐タイプ発熱装置の代表的なものとして、透水性のシート、例えば、不織布製の袋に発熱剤を充填した発熱剤パックと、水パックを重合して発熱用トレーにセットし、発熱用トレーの開口を非透水性のシートで封止し、ティアーテープ或いはティアーストリングを引き抜いて、発熱剤パック、水パック、および非透水性のシートを同時に開裂するタイプがある。このタイプの場合、ティアーテープ或いはティアーストリングを突出させるために、発熱用トレーに設けた引き抜き孔から、空気中の水分が浸入し、発熱剤パックを発熱用トレーにセットしてから、2〜3ケ月で発熱剤が吸湿して、使用不可になる。
【0005】
第2の要件は、粉体発熱剤が絶対に飛散しないような構造とすることである。
引抜き紐タイプ発熱装置の場合、引抜き紐を引き抜いて、発熱剤パック、水パック、および非透水性のシートを同時に開裂すると、発熱剤パックに充填されている粉体発熱剤が飛散して、食品を汚染したり、使用者が吸引する危険性がある。
【0006】
第3の要件は、発熱剤装置に要する部品の数をできるだけ少なくし、且つ、製造方法を簡単にし、材料および製造に要するコストを低減化することことである。
近年、引抜き紐タイプ発熱装置を組み込んだ駅弁等においては、副食品等に益々経費をかける傾向があり、ひいては付帯部品である発熱装置に対しては、コストダウンの要求が厳しくなってきている。
【0007】
第4の要件は、学童年齢層を含む低年齢層から高年齢層、あるいは健常者および非健常者を問わず、誰でもが、引抜き紐を容易に引き抜いて、発熱剤パックと水パックを、完全且つ安全に開裂することができるよう構成にすることである。
従来から提案されている引抜き紐タイプの発熱装置が、前記4つの要件のすべてを満たしているか否かについて検討する。
【0008】
特許文献1は、上面が開口した容器本体の底部に、厚紙又は合成樹脂で製造されたプレ−トを載置し、プレ−トの上に、ポリエチレン等の合成樹脂製フィルムで製造した非透水性の袋に生石灰を充填した発熱剤パックと、ポリエチレン等の合成樹脂製フィルムで製造した非透水性の袋に水を充填した水パックを、この順序で重合し、発熱剤パックと水パックの両方を破断する破断用紐をプレ−ト一端に係止し、さらに破断用紐を発熱剤パックと水パックの両端部に固着させ、加熱容器に収容して、破断用紐を加熱容器の側面に設けた引き出し孔から貫通させ、外部から破断用紐を引き抜くことにより、発熱剤パックと水パックを破断する構造の加熱容器を記載している。
【0009】
特許文献1に記載されている加熱容器における厚紙又は合成樹脂で製造されたプレ−トは、発熱剤パックと水パックを容器本体底部に固定し、且つ、破断用紐を係止するための部材である。また、特許文献1に記載されている加熱容器では、容器本体の上面開口部には、蒸気を貫流させるための透孔を設けた食品トレーが直接嵌合されるようになっている。
【0010】
特許文献1に記載された加熱容器の第1の欠点は、発熱剤パックと水パックを容器本体の底部に固定し、且つ、破断用紐を係止するためのプレ−トを必要とすることである。プレ−トは、プラスチック、木、厚紙等で製造されるので、その材料コストと取付コストを考えると、全体のコストは引き上げられることになる。
従って、特許文献1に記載された加熱容器は、前記第4の要件を満たしていない。
【0011】
また、特許文献1に記載された加熱容器の第2の欠点は、発熱剤パックを開裂すると、粉体の一部が飛散して、直接或いは発生した蒸気と混合し、食品トレーに侵入して、食品を汚染することである。従って、特許文献1に記載された加熱容器は、前記第3の要件も満たしていない。
【0012】
特許文献2は、上面が開口したケース内に、発熱剤と、水パックと、水パック破断用紐と、破断用紐の一端を支持する破断用紐支持材とを収容し、ケ−スの開口部に防湿シートを貼着し、破断用紐の他端を、水パックの熱側片を通して、防湿シートを貫通させて、ケースの外部に引き出し、ケースの外部に引き出された破断用紐の他端を引く抜くことにより、防湿シートと水パックを同時に破断する構造の加熱ユニットを記載している。
【0013】
特許文献2に記載された加熱ユニットの第1の欠点は、台紙等の破断用紐支持材を必要とすることである。
従って、特許文献2に記載された加熱ユニットは、前記第3の要件を満たしていない。
【0014】
また、特許文献2に記載された加熱ユニットでは、ケ−スの開口部に防湿シートが貼着されているが、ケースの底部には、発熱剤が露出されたまま充填されているので、ケ−スの開口部と防湿シートの貼着箇所に不具合が発生したり、防湿シートにピンホールがあったり、経時的に劣化すると、その箇所から空気中の水分が侵入して、発熱剤が吸湿することとなる。
従って、特許文献2に記載された加熱ユニットは、前記第1の要件も満たしていない。
【0015】
特許文献3は、上面が開口したケース内に、発熱剤をアルミ箔等の不透水性フィルムに充填した発熱剤パックと、樹脂フィルム或いは金属箔製の水パックと、発熱剤パックと水パックを同時に開封する開封具を、この順序で重合した発熱具を記載している。
【0016】
特許文献3に記載された発熱具では、アルミ箔等の不透水性フィルムに充填した発熱剤パックと、樹脂フィルム或いは金属箔製の水パックは、両面接着テープ等で固着して、一体化されており、さらに、発熱剤パックと水パックを同時に開封する開封具も、発熱剤パックと水パックとの間に、発熱剤パックに両面接着テープで固着されている。
【0017】
このように、特許文献3に記載された発熱具では、発熱剤パックと、水パックと、発熱剤パックと水パックを同時に開封する開封具の3つの重要な部品が固着され、一体化された状態であるので、開封具を引き抜いて、発熱剤パックと水パックを同時に開裂するには、相当な力をを必要とする。
従って、特許文献3に記載された発熱具は、学童年齢層を含む低年齢層から高年齢層、あるいは健常者および非健常者を問わず、誰でもが開封具を引き抜いて、発熱剤パックと水パックを、容易に、且つ、完全に開裂することができるような機構でなければならないとする前記第4の要件を満たしていない。
【0018】
また、特許文献3に記載されている発熱具は、ケースの上面開口部に、蒸気を貫流させるための透孔を設けた食品トレーが直接嵌合されるようになっている。従って、特許文献3に記載された発熱具では、発熱剤パックを開裂すると、粉体の一部が飛散して、直接或いは発生した蒸気に混合し、食品トレーに侵入して、食品を汚染することとなる。
従って、特許文献2に記載された発熱具は、前記第3の要件も満たしていない。
【0019】
特許文献4は、上面が開口した発熱用トレーの底壁に、不織布製袋に発熱剤を充填した発熱剤パックと、樹脂フィルムに水を充填した水パックと、水パックを開裂するティアーテープを、この順序で重合し、発熱用トレーの上面開口部を保護シートで密封して、ティアーテープを発熱用トレーの外部から引き抜くことにより、保護シートと水パックを同時に開裂するようにした構造の化学発熱装置を記載している。
【0020】
特許文献4に記載された化学発熱装置では、発熱用トレーの上面開口部が保護シートで密封されているが、発熱剤が不織布製の袋に充填されているので、トレーの開口部と保護シートの貼着箇所に不具合が発生したり、保護シートにピンホールがあったり、経時的に劣化すると、その箇所から空気中の水分が侵入して、発熱剤が吸湿することがある。
従って、特許文献4に記載された化学発熱装置は、前記第1の要件を満たしていない。
【0021】
また、特許文献4に記載された化学発熱装置では、保護シートも開裂するようになっているので、保護シートを開裂すると、発熱剤の粉体の一部が飛散して、直接或いは発生した蒸気に混合して、食品トレーに侵入し、食品を汚染することとなる。
従って、特許文献4に記載された化学発熱装置は、前記第2の要件も満たしていない。
【0022】
上述したように、特許文献1〜4に記載されている従来の引抜き紐タイプの化学発熱剤発熱装置は、いずれも、前記第1の要件「発熱剤パックが吸湿しないような完全水密構造にすること」、第2の要件「粉体発熱剤が絶対に飛散しないような構造にすること」、第3の要件「発熱剤装置に要する部品の数をできるだけ少なくし、且つ、製造方法を簡略にし、材料および製造に要するコストを低減化すること」、および第4の要件「学童年齢層を含む低年齢層から高年齢層、あるいは健常者および非健常者を問わず、誰でもが、引抜き紐を容易に引き抜いて、発熱剤パックと水パックを完全且つ安全に開裂することができるような機構にすること」の総てを備えていない。
【特許文献1】特開平11−292155号公報
【特許文献2】特開2002−360439号公報
【特許文献3】特開2007−259966号公報
【特許文献4】特開2007−275170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
発明が解決しようとする課題は、上面開口した容器に、所定の容器に発熱剤を充填した発熱剤パックと、非透水性容器に水を充填した水パックを発熱用トレーに重合して載置し、発熱剤パックと水パックを開裂する引抜き紐を発熱用トレーの外部から引き抜くことにより、発熱剤パックと水パックを同時に開裂させるタイプの化学発熱剤発熱装置を、前記第1〜第4の要件の総てを満足させることである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によると上記課題は、次のようにして解決される。
1.開裂機構を設けた発熱剤パック、開裂機構を設けた水パック、および発熱剤パックと水パックの両方を開裂する開裂紐を上面開口する発熱用トレーに収容し、開口部を保護シートで密封し、開裂紐を引くことにより発熱剤パックおよび水パックを開裂させて、発熱反応を起こさせる紐引きタイプの化学発熱剤発熱装置であって、
発熱剤パックは、化学発熱剤を非吸湿性容器に直接充填したものとし、
保護シートが水蒸気透過性−粉体非透過性薄膜からなるものとし、
保護シートを、開裂紐と離隔した状態で、発熱用トレーの上面開口部を密封し、開裂紐を発熱用トレーの外部から引き抜くことにより、保護シートを開裂することなく、実質的に初期の形状を維持したまま、発熱剤パックと水パックの両方を開裂しうるようにしたことを特徴とする化学発熱剤発熱装置。
【0025】
2.上記1項において、開裂紐を発熱用トレーに直接固着する。
【0026】
3.上記1または2項において、発熱剤パックまたは水パックを、開裂紐と同じ長手方向にずらして発熱用トレーに固定する。
【0027】
4.上記1〜3のいずれかにおいて、発熱剤パックの発熱用トレーへの固定を、発熱用トレーの側壁に内向張出部を設け、発熱剤パックにおける外向片を内向張出部と接合し、水パックの発熱用トレーへの固定を、発熱用トレーの側壁に内向張出部を設け、水パックにおける外向片を内向張出部と接合することによって行う。
【0028】
5.上記1〜3のいずれかにおいて、発熱剤パックおよび水パックの発熱用トレーへの固定を、発熱用トレーの側壁に内向張出部を設け、発熱剤パックにおける外向片と水パックにおける外向片とを重合して、内向張出部と接合することによって行う。
【0029】
6.上記1〜5のいずれかに記載の化学発熱剤発熱装置を組み入れた携帯食品用容器。
【発明の効果】
【0030】
請求項1記載の発明によれば、次に例示する効果を奏功することができる。
1.化学発熱剤を非吸湿性容器に直接充填したので、化学発熱剤を不織布製の袋のように吸湿性容器に充填していて従来技術とは異なり、開裂紐を挿通させるために発熱用トレ−に設けた小孔から空気中の水分が発熱用トレ−内に浸入しても、吸湿することがない。従って、長期間保管しても、発熱剤が失効しない。
【0031】
2.保護シートが水蒸気透過性−粉体非透過性薄膜であるので、発熱剤と水が反応した結果発生する水蒸気のみが水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シートから透過し、発熱剤パックを開裂すると同時に発生する粉体の飛散は、水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シートで防止される。従って、発熱剤パックおよび水パックと一緒に保護シートを開裂していた従来技術のように、飛散した粉体を使用者が吸引したり、それにより食品が汚染されることがない。
【0032】
3.水蒸気透過性−粉体非透過性薄膜から成る保護シートを、開裂紐と離隔した状態で、発熱用トレーの上面開口部を密封したので、開裂紐を発熱用トレーの外部から引き抜くことにより発熱剤パックと水パックのみを開裂し、保護シートを開裂せずに初期の形状を維持することができる。従って、保護シート自体を開裂していた従来技術のように、飛散した粉体を使用者が吸引したり、それにより食品が汚染されるすることが完全に防止される。
【0033】
請求項2記載発明によれば、開裂紐を発熱用トレーに直接固着したので、従来技術が必要としていた開裂紐を支持或いは固定するための支持部材或いは固定部材が不要となり、材料コストおよび製造コストが大幅に低減される。
【0034】
請求項3記載発明によれば、発熱剤パックおよび水パックのいずれか一方を、開裂紐と同じ方向で長手方向にずらして発熱用トレーに固定したので、発熱剤パック或いは水パックのいずれか一方を先に開裂すればよく、従って、発熱剤パックと水パックを接着剤等で固着して一体化した上で、発熱用トレーに固定し、発熱剤パックと水パックを同時に開裂しなければならない従来技術に比べて、より小さな力で開裂することができる。
【0035】
請求項4記載発明によれば、発熱剤パックの発熱用トレーへの固定を、発熱用トレーの側壁に内向張出部を設け、発熱剤パックにおける外向片を内向張出部と接合し、水パックの発熱用トレーへの固定を、発熱用トレーの側壁に内向張出部を設け、水パックにおける外向片を内向張出部と接合することによって行うので、下記に例示する効果を奏功する。
【0036】
(1)発熱剤パックを固定するための内向張出部および水パックを固定するための内向張出部を、それぞれ、個別に設けたので、発熱剤パックと水パックを、それぞれ個別に開裂することができ、開裂に要する力が分散され、学童年齢層を含む低年齢層から高年齢層、あるいは健常者および非健常者を問わず、誰でもが、引抜き紐を容易に引き抜いて、発熱剤パックと水パックを完全且つ安全に開裂することができる。
【0037】
(2)発熱剤パックを固定するための内向張出部および水パックを固定するための内向張出部を、それぞれ、個別に設けたので、発熱剤パックおよび水パックを収容するための専用スペースが形成され、発熱剤パックが安定してスペース内に収容されるので、運送中に発熱剤パックが移動して、品質にバラツキを来す恐れがなく、さらに、水パックを収容する専用スペースが形成され、水パックを安定してスペース内に収容することができる。
【0038】
請求項5記載発明によれば、発熱剤パックおよび水パックの発熱用トレーへの固定を、発熱用トレーの側壁に内向張出部を設け、発熱剤パックにおける外向片と水パックにおける外向片とを重合して、内向張出部と接合するので、内向張出部は1個だけでよく、これにより、発熱用トレーの製造コストを大幅に低減することができる。
【0039】
請求項6記載発明によれば、次に例示する効果を奏功することができる。
1.発熱剤パックが吸湿しないような完全水密構造になっているので、長期間保管が可能である。従って、マーチャンダイジング或いはマーケッティングの観点からも新たな展開が期待される。
【0040】
2.保護シートに水蒸気透過性−粉体非透過性薄膜を使用し、しかも、発熱剤パック、水パック、および発熱容器を密封する保護シートの総てを開裂する従来技術と異なり、発熱剤パックおよび水パックだけを開裂し、保護シートの水蒸気透過性−粉体非透過性薄膜は初期の形状を維持する構造であるので、発熱剤パックを開裂しても粉体発熱剤が絶対に飛散しない構造になっているので、食品を汚染したり、使用者が吸引することがなく、食品衛生上および保健衛生上もリスクが大幅に低減ないしはゼロになる。
【0041】
3.学童年齢層を含む低年齢層から高年齢層、あるいは健常者および非健常者を問わず、誰でもが、引抜き紐を容易に引き抜いて、発熱剤パックと水パックを完全且つ安全に開裂することができる調理済み食品を加熱する携帯容器が提供される。
【0042】
4.発熱剤パック支持部材或いは固定部材、開裂紐支持部材等の付帯部材を必要とする従来技術に比べて、部材が1〜3個少ないので、材料コストが低減され、かつ、製造方法は簡略化されるので、製造に要するコストを低減化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、図面に基づいて、発明の好ましい実施の形態を説明する。
図1は、本発明の化学発熱剤発熱装置1の一実施形態の構成を示す分解斜視図である。図1において、2は発熱用トレー、3は開裂紐、4は発熱剤パック、5は水パック、6は水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シートである。なお、図2〜図5において、図1と同じ部材には、同じ符号を付してある。
【0044】
発熱用トレー2は、底部に発熱剤パック4と水パック5を、この順序で上方へ重合して収容することができる広さと深さを有する任意の形状の容器である。発熱用トレー2の材料は特段に限定されず、プラスチック、金属、木、厚紙、或いはこれらの組合せから任意に選択することができる。ただし、コスト、成形性等を勘案すると、プラスチックが好ましい。発熱用トレー2に使用するプラスチックは、PP、PVC、PP/EVOH/PP、A−PET、或いはPS等が好ましい。ここに、PPはポリプロピレン、PVCはポリ塩化ビニル、EVOHはエチレンビニルアルコール、A−PETは非晶質ポリエステルを表している。
【0045】
発熱用トレー2の上端外向周縁部7は、保護シート6と共に接合、たとえばヒートシールするためのシール部である。その幅は、特段に数値限定されないが、少なくとも5mmは必要である。この幅が狭いと、シール強度が弱く、広いと、強くなる。特に、シール幅が狭すぎると、同部が汚染された場合弱くなる。逆にシール幅が広すぎると、しわが発生しやすくなる。従って、シール幅は、適切に選択することが必要である。
【0046】
発熱用トレー2の上端外向周縁部7には、発熱用トレー2内に重合して収容されている発熱剤パック4に設けられた発熱剤パック開裂機構13、および水パック5に設けられた水パック開裂機構16と対向する上縁端部に、開裂紐係止機構8を形成する。開裂紐係止機構8は、開裂紐3を発熱用トレー2の上端周縁部7に固定するためのものではなく、使用者が開裂紐3を引き抜くまで、暫定的に仮止めしておくためのものである。従って、開裂紐係止機構8の形状は特段に限定されないが、通常は、突起、或いはV−ノッチなどの切り込みである。なお、発熱剤パック開裂機構13および水パック開裂機構16、並びに開裂紐3に関しては後述する。
【0047】
開裂紐3の一方の基端部9は、発熱用トレー2の底壁或いは側壁に、開裂紐固定手段10で固定されている。開裂紐固定手段10としては、熱融着法、接着剤法、或いは基端部9を発熱用トレー2の底壁または側壁へ内方から貫通させ、その基端部9を、底壁または側壁の外面で任意の手段で固定する等、特段に限定されない。開裂紐3の材料としては、凧糸状のストリング、モノフィラメント等の紐或いは糸、若しくは幅広のテープ等任意に選択できる。
【0048】
開裂紐3は、その基端部9を、発熱用トレー2の底壁或いは側壁に固定した後、その残部を、発熱用トレー2の底壁を沿わせて、固定手段10と対向する方向に導いた後、発熱用トレー2の外に引き出して、緊張させる。
【0049】
発熱剤パック4に充填された発熱剤は、水と反応して発熱する物質であれば、限定されない。即ち、従来から広く使用されている粉体酸化カルシウムでも、粉体石灰と粉体アルミニウムとの混合物でもよい。しかし、熱力学、反応速度論等の観点からも、粉体酸化カルシウムを使用することが好ましい。粉体酸化カルシウムは、空気中の湿度を吸収しただけで、直ちに反応する性質を有している。従って、極短期間で使用する場合以外、発熱剤パック4の材料は、非透湿性が好ましい。
【0050】
従来、発熱剤パックは、粉体酸化カルシウムを含む発熱剤を、透水性の紙または不織布の袋に小分け充填し、50〜100袋を、アルミ箔或いはアルミ蒸着フィルム製の非透湿性の袋に完全密封して、流通させるか、或いは保管しておき、発熱用トレーにセットする直前に、アルミ箔或いはアルミ蒸着フィルム製の非透湿性の袋から出して、発熱用トレーにセットした後、非透湿性の保護シートで発熱用トレーを密封していた。しかし、本発明では、粉体酸化カルシウムを含む発熱剤を、予め、アルミ箔或いはアルミ蒸着フィルム製の非透湿性の袋に小分け充填し、完全密封することにより、従来の煩わしい工程を省略したものである。
【0051】
発熱剤パック4の材料である非透湿性フィルムとしては、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン(高密度=0.960)、ポリエチレン(中密度=0.93)、ポリプロピレン(密度=0.907)、ポリエチレン(低密度=0.922)、ポリビニルクロライド、ポリ(ビニルクロライドービニルアセテト)、ポリ(スチレンーブタジエン)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(ブタジエンーアクリロニトリル)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/低密度ポリエチレンン/1軸延伸ポリエチレン/アルミ箔/エチレンービニルアセテート、 2軸延伸ナイロン/アルミ箔/ポリエチレン、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/1軸延伸ポリエチレン/アルミ箔/ポリプロピレン、ポリプロピレン/エバール/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリ塩化ビニリデン/ポリプロピレン、ナイロン/ポリプロピレン、ポリカーボネート/ポリプロピレン、スチール箔/ポリプロピレン等が例示される。ただし、輸送、保管上の強度、或いは完全水密性を勘案すると、金属箔フィルム、或いは金属箔フィルムを含むラミネートフィルムが好ましい。
【0052】
しかし、発熱剤パック4に適するフィルムは、開裂メカニズムの面からは、界面剥離タイプを利用したもの、層間剥離タイプを利用したもの、凝集剥離タイプを利用したもの等、任意に選択できる。ただし、シールの安定性の点からは、凝集剥離タイプが、また線シール性の点からは、界面剥離タイプが、さらに剥離面の状態からは、界面剥離タイプが優れている。また、V−ノッチなどの切り込みを入れて、ある一定方向に開封させるようにしたもの等、任意に選択できる。
【0053】
発熱剤パック4の、前記開裂紐係止機構8と対向する側の外向片12には、発熱剤パックを開裂するための発熱剤パック開裂機構13を形成してある。発熱剤パック開裂機構13は、使用者が開裂紐3を引き抜くまで、暫定的に仮止めしておくためのものである。従って、発熱剤パック開裂機構13の形状および構造は、特段に限定されないが、たとえば、V−ノッチ或いは小孔等でよい。
【0054】
発熱剤パック4は、発熱用トレー2の底壁に沿わせて、開裂紐固定手段10と対向する方向に引き出した開裂紐3に接触させて、発熱用トレー2の底壁又は側壁に固定する。図1では、発熱剤パック4の外向片12を、2本の鳩目14をもって、発熱剤パック4の底壁と接合されている。然しながら、発熱剤パック4を発熱用トレー2に固定する方法は、特段に限定されない。熱融着法、接着剤法等化学的接合方法、或いはかしめ、ステープル等機械的接合方法等、コスト、周囲の環境条件等勘案して任意に選択できる。ただし、高温等の厳しい使用条件下で接着箇所が劣化するような場合には、かしめ、ステープル等機械的接合方法が好ましい。
【0055】
水パック5は、化学発熱剤発熱装置1の外部から、適当な力で引っ張ることにより、開裂して、中の水が速やかに流出するような構成、いわゆるイージーオープンタイプ或いはイージーピールタイプである。
【0056】
水パック5には、化学量論に基づいて秤量した、いわゆる化学量論量の水が充填されている。従って、開裂する前に、水パック5に充填されている水が蒸散したり、漏水すると、発熱反応が不十分となり所要の熱量を得ることができない。従って、水パック5の材料は、非透湿性でなければならない。水パック5の材料としては、前述した発熱剤パック4の材料と同じでよい。
【0057】
水パック5に適するフィルムとしては、開裂メカニズムの面からは、界面剥離タイプを利用したもの、層間剥離タイプを利用したもの、凝集剥離タイプを利用したもの等、任意に選択できる。ただし、シールの安定性の点からは、凝集剥離タイプが、また線シール性の点からは、界面剥離タイプが、さらに剥離面の状態からは、界面剥離タイプが優れている。
【0058】
水パック5の、前記開裂紐係止機構8と対向する側の外向片15には、水パック5を開裂するための水パック開裂機構16が形成してある。水パック開裂機構16は、使用者が開裂紐3を引き抜くまで、水パック5を暫定的に仮止めしておくためのものである。従って、水パック開裂機構16の形状・構造は特段に限定されないが、たとえば、V−ノッチ或いは小孔等でよい。
【0059】
水パック5は、発熱剤パック4に重合させて、発熱用トレー2に固定される。図1では、水パック5は、4個の鳩目17で、水パック5の側片18と発熱用トレー2の側壁19とが接合されている。水パック5を発熱用トレー2に固定する方法は、特段に限定されない。熱融着法、接着剤法等の化学的接合方法、或いはかしめ、ステープル等の機械的接合方法等、コスト、周囲の環境条件等勘案して任意に選択できる。ただし、高温等の厳しい使用条件下で、接着箇所が劣化するような場合は、かしめ、ステープル等、機械的接合方法が好ましい。
【0060】
このようにして、発熱用トレー2内に、発熱剤パック4と、水パック5を重合して固定した後、開裂紐3を、発熱剤パック4に形成された発熱剤パック開裂機構13と、水パック5に形成された水パック開裂機構16を介して、反転屈曲させて、その遊端部11を、発熱用トレー2の上端周縁部7に形成された開裂紐係止機構8に係止し、その先端を、発熱用トレー2の外方へ突出させる。
【0061】
次いで、発熱用トレー2の上面開口部を、水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シート6で、開裂紐3と非融着状態で密封する。
【0062】
開裂紐3は、前記発熱剤パック開裂機構13と、水パック開裂機構16と、開裂紐係止機構8に、ぞれぞれ遊嵌されおり、水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シート6とは、離隔された状態であるので、開裂紐3の自由端を引くと、保護シート6は開裂されずに、発熱剤パック4と水パック5が開裂される。
【0063】
図2は、図1に示す本発明の化学発熱剤発熱装置の縦断面図である。図2から、発熱剤パック4と水パック5は、接触された状態で発熱用トレー2内に収容されていること、開裂紐3は、保護シート6とは離隔された状態で開裂紐係止機構8に遊貫され、その端部が自由端となっていることがよく理解されると思う。
【0064】
図3は、本発明の化学発熱剤発熱装置1の別の実施の形態を示す縦断面図である。発熱剤パック4と水パック5は、厚さ方向に、空間20だけ離隔させて、発熱用トレー2にそれぞれ固定されている。このように、発熱剤パック4と水パック5の間に空間20(図においては誇張して示してある)を設けることにより、発熱剤パック4と水パック5を、それぞれ個別に開裂することができるので、発熱剤パック4と水パック5を接着剤等で固着して一体化して発熱用トレー2に固定している従来技術に比べて、学童年齢層を含む低年齢層から高年齢層、あるいは健常者および非健常者を問わず、誰でもが、開裂紐3を容易に引き抜くことができる。
【0065】
なお、図3では、4個の鳩目17で、水パック5の側片18と発熱用トレー2の側壁19とが接合されているが、水パック5を発熱用トレー2に固定する方法は特段に限定されない。熱融着法、接着剤法等の化学的接合方法、或いはかしめ、ステープル等の機械的接合方法等、コスト、周囲の環境条件等勘案して、任意に選択できる。ただし、高温等の厳しい使用条件下で、接着箇所が劣化するような場合は、かしめ、ステープル等の機械的接合方法が好ましい。
【0066】
図4は、本発明の化学発熱剤発熱装置の別の実施の形態の構成を示す縦断面図である。発熱剤パック4と水パック5は、開裂紐3と同じ長手方向にずらして発熱用トレー2に固定されている。このような構造にすると、発熱剤パック4或いは水パック5のいずれか一方を先に開裂すればよくなり、発熱剤パック4と水パック5を接着剤等で固着して一体化した上で発熱用トレー2に固定し、発熱剤パック4と水パック5を同時に開裂しなければならない従来技術に比べて、より小さな力で開裂することができる。
【0067】
なお、図4では、水パック5は、複数の鳩目17で、水パック5の側片18と発熱用トレー2の側壁19とが接合されているが、水パック5を発熱用トレー2に固定する方法は特段に限定されない。熱融着法、接着剤法等化学的接合方法、或いはかしめ、ステープル等の機械的接合方法等、コスト、周囲の環境条件等勘案して任意に選択できる。ただし、高温等の厳しい使用条件下で接着箇所が劣化するような場合は、かしめ、ステープル等機械的接合方法が好ましい。
【0068】
図5は、本発明の化学発熱剤発熱装置1の別の実施の形態を示す縦断面図である。発熱用トレー2の側壁19には、所定の幅の内向張出部21、21’を設けてあり、発熱剤パック4の外向片12、12’が、内向張出部21、21’と、それぞれ接合されている。また、発熱用トレー2の側壁19に所定の幅の内向張出部22、22’を設けてあり、水パック5の外向片15,15’が、内向張出部22、22’と、それぞれ接合されている。このように、発熱剤パック4を固定するための内向張出部21、21’、および水パック5を固定するための内向張出部22、22’を、それぞれ、個別に設けたので、発熱剤パック4と水パック5を、それぞれ個別に開裂することができ、開裂に要する力が分散され、学童年齢層を含む低年齢層から高年齢層、あるいは健常者および非健常者を問わず、誰でもが、引抜き紐を容易に引き抜いて、発熱剤パックと水パックを完全且つ安全に開裂することができる。
【0069】
また、発熱剤パック4を固定するための内向張出部21、21’、および水パック5を固定するための内向張出部22、22’を、それぞれ、個別に設けることにより、発熱剤パック4および水パック5を収容するための専用スペースが形成され、発熱剤パック4が安定してスペース内に収容されるので、運送中に発熱剤パック4が移動して、品質にバラツキを来す恐れがなく、さらに、水パック5を収容する専用スペースが形成され、水パック5を安定してスペース内に収容することができる。また、図5に示すように、発熱剤パック4を固定するための内向張出部21,21’と、水パック5を固定するための上位の内向張出部22,22’の両方を設けることにより、発熱剤パック4と水パック5の厚さ方向の間隔を確実に設定することができるので、前記図3の実施の態様で説明した効果を確実に得ることができる。
【0070】
なお、図5では、発熱剤パック4、および水パック5は、鳩目17で、それぞれ内向張出部21,21’、および22,22’に固定されているが、この固定方法は、特段に限定されない。熱融着法、接着剤法等、化学的接合方法、或いはかしめ、ステープル等機械的接合方法等、コスト、周囲の環境条件等勘案して、任意に選択できる。ただし、高温等の厳しい使用条件下で接着箇所が劣化するような場合は、かしめ、ステープル等機械的接合方法が好ましい。
【0071】
また、図5では、発熱剤パック4、および水パック5を固定するために、それぞれ2個の内向張出部21,21’および22,22’を設けてある。然しながら、一方の内向張出部21’および22’は、必ずしも必要ではない。この場合には、発熱剤パック4に設けた発熱剤パック開裂機構13と対向する内向張出部21’、および水パック5に設けた水パック開裂機構16と対向する内向張出部22’はフリー状態となる。
【0072】
図6は、本発明の化学発熱剤発熱装置1の別の実施の形態の構成を示す平面図であり、図7は、同じく縦断面図である。発熱用トレー2の側壁19の内面には、所定の幅の内向張出部21を設けてあり、発熱剤パック4の外向片12と、水パック5の側片18を重合して、鳩目14で内向張出部21に固定されている。発熱剤パック4の外向片12と、水パック5の側片18を重合して、鳩目14で内向張出部21に固定するときは、図6に示すように、発熱剤パック開裂機構13と、水パック開裂機構16(図6では、V型ノッチ)を一致させて、開裂機構13、16を挟んで、2個の鳩目14で内向張出部21に固定する。その際、発熱剤パック開裂機構13と、水パック開裂機構16を形成する輪郭線を一致させることが好ましい。それにより、発熱剤パック開裂機構13と、水パック開裂機構16を、ほぼ同時に開裂することができる。
【0073】
また、2個の鳩目14を開裂機構13、16にできるだけ接近させて設けることが好ましい。それにより、開裂紐3を引いたときの引き裂き応力が、開裂機構13、16に集中し、発熱用トレー2の変形、もちあがり、クラック等の不具合の発生が無く、迅速且つ完全に、発熱剤パック4及び水パック5を開裂することができる。
【0074】
図6及び図7に示した実施の形態は、図5に示した実施の形態とは異なり、内向張出部は1個だけである。これにより、発熱用トレー2の製造コストを大幅に低減することができる。
なお、その余の構造は図5に示した実施の形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0075】
図8は、本発明の化学発熱剤発熱装置1を組み込んだ携帯食品用容器の断面図である。図8において、図1〜図7におけるのと同様の要素には、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0076】
容器本体23には、下方から、化学発熱剤発熱装置1と、食品トレー24が収容されている。容器本体23の断面形状は、食品の種類によって異なる。たとえば、赤飯、白飯、五目飯、ちらし寿司等のご飯類、各種調理済み食品、総菜類、カレー、ビーフシチュー、グラタン、ピラフ等、ご飯及び各種総菜類が詰め合わされた駅弁、仕出し弁当などの場合は、トレー型が好ましい。うどん、ラーメン、おでん、スープ類、酒等液状食品には、カップ型が適している。
【0077】
容器本体23を、透明単層タイプにしたい場合には、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、ポリプロピレンで、透明多層タイプにしたい場合には、ポリプロピレン/エバール/ポリプロピレンで、アルミ箔タイプにしたい場合には、外面保護塗料/アルミ箔/ヒートシールラッカー、外面保護塗料/アルミ箔/ポリプロピレンで製造することが好ましい。
【0078】
蓋25は、容器本体23の開口部全体を覆って、内容物を保護するとともに、発生する熱水蒸気が外部に漏出するのを防止するためのものである。駅弁或いは仕出し弁当のような形態食品の場合には、容器本体23と蓋25を、包装した上で、紐或いは輪ゴムで縛るだけでも十分である。
【0079】
一方、カレー、シチュー、液状食品、ラーメン、うどん等麺類は、加熱が完了するまでは完全密閉が要求され、加熱終了後は、簡単に蓋がはずせる、いわゆるイージーオープン(イージーピール性)が要求される。このような場合には、EVAをベースとし、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂或いはジペンテン重合体、或いはアルミ箔などの基材に押し出しコーティングしたものが好ましい。
【0080】
化学発熱剤発熱装置1は、容器本体23の底壁26上に載置されている。
【0081】
食品トレー24は、化学発熱剤発熱装置1の上面に密着させて重合されている。そのため、化学発熱剤発熱装置1から発生する熱は、伝導及び対流の両方により食品トレー24に伝達され、熱効率がよくなる。
【0082】
容器本体23の側壁27には、小孔28が穿設されており、化学発熱剤発熱装置1の開裂紐3の遊端11が引き出されている。この開裂紐3の遊端11を引き抜くと、化学発熱剤発熱装置1の発熱剤パック4と水パック5だけが、ほぼ同時に開裂されて、発熱反応が開始され、水蒸気が発生して、保護シート6を貫通し、食品トレー24の調理済みご飯29と惣菜30を加熱する。
【0083】
本発明で使用するプラスチックスの全部或いは一部を、加水分解性基を主鎖中に有する易加水分解性プラスチックス、高光感受性基を主鎖中に有する易光分解性プラスチックス等を使用すると、廃棄後、自然環境中で、生分解、光分解、加水分解するので、省資源化、環境汚染の防止に資することができる。
【0084】
本発明で使用に適する易分解性プラスチックスを例示すると、脂肪族ポリエステル、ポリオキシ酸、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリアンハイドライド、ポリ(アミドーエナミン)、ポリホスファゼン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアジピン酸エステル、ポリエチレンデカメチレン、ポリアジピン酸テトラメチレン、ポリプロラクトン、ポリオルトエステルポ、ポリシアノアクリル酸エステル、ポリカプロラクタン等である。
【0085】
次に、図に示した容器の各部の実際の製造要領について、例をあげて具体的に説明する。
〔携帯食品容器本体23の製造〕
ポリプロピレン/ポリ塩化ビニリデン/ポリプロピレンの3層ラミネートフィルムを使用して、深さ12cm、開口部の直径が15cm、底部の直径が10cmのカップ状の容器本体23を、深絞り真空成形機で成形した。
【0086】
〔携帯食品容器の蓋25の製造〕
ポリエチレンテレフタレート/ポリ塩化ビニリデンの2層ラミネートフィルムを使用して、図2に示す形状の蓋25を、真空成形機で成形した。
【0087】
〔食品トレー24の製造〕
未延伸ポリプロピレン/ポリ塩化ビニリデンの2層ラミネートフィルムを使用して、図6に示すように、容器本体23の内壁に密着する形状の食品トレー24を真空成形機で成形した。この食品トレー24の底壁には、化学発熱剤発熱装置1から上昇してくる水蒸気が入る小孔を複数個形成し、ご飯29と調理済み魚、野菜、コンブ、卵焼き、ハンバーグ等の惣菜30を入れた。
【0088】
〔化学発熱剤発熱装置1の製造〕
〔発熱用トレー2の製造〕
PPで、深さ18mm、縦140mm、横140mm、側壁内面に幅10mmの内向張出部21,21’および22,22’を設けた質量7.7gの発熱用トレー2を真空成形法で製造した。発熱用トレー2の一方の上端外向周縁部7に、開裂紐係止機構8として、V−ノッチを形成した。
【0089】
〔発熱剤パック4の製造〕
使用した粉体アルミニウム:山石金属株式会社製、商品名「アトマイズアルミ VA-185」)
使用した粉体生石灰:秩父石灰工業株式会社製(200メッシュ、JIS 特号品)
使用した発熱剤パックフィルム:アルミ箔
粉体アルミニウム15グラム、粉体生石灰10グラムを秤量して均一に混合し、長さ8cm、幅6cm、厚さ4mm、質量0.9gのアルミ箔製の袋に充填し、3方の端部を熱融着して密封した。一方の外向片12に、発熱剤パック開裂機構13として、V−ノッチを形成した。
【0090】
〔水パック5の製造〕
PPフィルムで、幅9cm、長さ14cm、厚さ4mm、質量0.9gの袋を製造し、水40mlを充填して、3方の端部を熱融着して密封した。一方の熱側片15に水パック開裂機構16として、V−ノッチを形成した。
【0091】
〔保護シート6の製造〕
発熱用トレー2の開口部を密封する保護シート6として、某繊維会社製の水蒸気透過性−粉体非透過性の不織布を使用した。この保護シート6は、開口径5μ以下で、水蒸気は透過するが、発熱剤に使用した粉体粉体アルミニウムおよび粉体生石灰に対しては非透過性である。
【0092】
〔化学発熱剤発熱装置1の製造〕
このようにして製造した発熱用トレー2の底壁に小孔を設け、開裂紐3の基端部9を貫挿し、その端部を加熱、溶融して、小径の直径の2倍の塊状にして、こぶにして小径から抜けないようにした。開裂紐3を発熱用トレー2の底壁に沿わせて緊張し、その上に発熱剤パック4,その上に水パック5を重合した。次いで、開裂紐3を、発熱剤パック4の外向片12に形成した発熱剤パック開裂機構13と、水パック5の側片15に形成した水パック開裂機構16の間に遊挿し、残余の15cmを反転屈曲して、その端部を、発熱用トレー2の上端外向周縁部7に形成した開裂紐係止機構8としてのV−ノッチを遊挿させ、その端部を自由端とした。次いで、発熱用トレー2の開口を、保護シート6で密封した。
【0093】
〔化学発熱剤発熱装置付き携帯食品の製造〕
このようにして製造した化学発熱剤発熱装置1を、携帯食品容器本体23の底部に収容し、開裂紐3の遊端部11を、容器本体23の側壁27に設けた小孔28から貫通させた。次いで、化学発熱剤発熱装置1の保護シート6に接して食品トレー24を乗せ、蓋25で携帯食品容器本体23を密閉した。
【0094】
このようにして製造した化学発熱剤発熱装置1を、」240個製造し、環境温度を10℃、20℃、50℃、および60℃にし、それぞれ、3カ月、6カ月、12カ月間保管して発熱剤が空気中の水分を吸湿しているか否か検査した。その結果、空気中の水分を吸湿していた発熱剤の発生率はゼロであった。即ち、化学発熱剤発熱装置1が、完全水密構造になっていることが確認された。
【0095】
駅弁を利用する年齢層のなかで、5〜10歳の低年齢の利用者20名をランダムに選んで、開裂紐を引かせるテストを100回行ったところ、発熱剤パックおよび水パックを開裂できなかったケースはゼロであった。
【0096】
また、発熱剤パックおよび水パックを開裂したあと、食品の表面を電子顕微鏡で検査した結果、粉体生石灰および粉体アルミニウムの付着は確認できなかった。この結果、保護シート6が水蒸気だけを透過し、粉体生石灰および粉体アルミニウムの透過を完全に阻止していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の化学発熱剤発熱装置は、前述した構成になっていて、前述した第1〜第4の要件の総てを同時に満足させ、機能性、利便性、長期保管性、安全性、衛生保持性等に優れているので、下記に例示するような産業上の利用可能性がある。
【0098】
1.保護シートが水蒸気透過性−粉体非透過性薄膜であるので、発熱剤と水が反応した結果発生する水蒸気のみが水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シートから透過し、発熱剤パックを開裂すると同時に発生する粉体の飛散は、水蒸気透過性−粉体非透過性の保護シートで防止される。従って、発熱剤パックおよび水パックと一緒に保護シートを開裂していた従来技術のように、飛散した粉体を使用者が吸引したり、それにより食品が汚染されることがないので、使用対象者を乳幼児から成人にまで拡大することができる。
【0099】
2.使用者の性別、年齢、健康状態等に制約を受けることなく、食品加熱用は、もとよりそれ以外にも用途の拡大が可能となる。
【0100】
3.本発明の化学発熱剤発熱装置自体が自己完結型の独立した構造であるので、商品として商取引の対象となり、食品加熱用以外にも用途の拡大が可能となる。
【0101】
4.発熱剤パックが、吸湿しないような完全水密構造になるので、長期間保管が可能である。従って、マーチャンダイジング或いはマーケッティングの観点からも、新たな展開が期待される。
【0102】
5.従来技術に比べて、部材の数を少なくして、材料コストを大幅に低減し、かつ、製造方法を簡略化したので、製造に要するコストを低減化することができ、プラスチック成形メーカーの参入が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の化学発熱剤発熱装置の一実施の形態の構成を示す分解斜視図。
【図2】図1に示す化学発熱剤発熱装置の縦断面図。
【図3】本発明の化学発熱剤発熱装置の別の実施の形態の構成を示す縦断面図。
【図4】本発明の化学発熱剤発熱装置のさらに別の実施の形態の構成を示す縦断面図。
【図5】本発明の化学発熱剤発熱装置のさらに別の実施の形態の構成を示す縦断面図。
【図6】本発明の化学発熱剤発熱装置のさらに別の実施の形態の構成を示す平面図。
【図7】図6の縦断面図。
【図8】本発明の化学発熱剤発熱装置を組み入れた携帯食品用容器の一形態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0104】
1:化学発熱剤発熱装置
2:発熱用トレー
3:開裂紐
4:発熱剤パック
5:水パック
6:保護シート
7:外向周縁部
8:開裂紐係止機構
9:開裂紐の基端部
10:開裂紐固定手段
11:開裂紐の遊端部
12:外向片
13:発熱剤パック開裂機構
14:鳩目
15:外向片
16:水パック開裂機構
17:鳩目
18:側片
19:側壁
20:空間
21、21’:内向張出部
22、22’:内向張出部
23:加熱用容器本体
24:食品トレー
25:蓋
26:底壁
27:側壁
28:小孔
29:調理済みご飯
30:惣菜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開裂機構(13)を設けた発熱剤パック(4)、開裂機構(16)を設けた水パック(5)、および発熱剤パック(4)と水パック(5)の両方を開裂する開裂紐(3)を上面開口する発熱用トレー(2)に収容し、開口部を保護シート(6)で密封し、開裂紐(3)を引くことにより発熱剤パック(4)および水パック(5)を開裂させて、発熱反応を起こさせる紐引きタイプの化学発熱剤発熱装置であって、
発熱剤パック(4)は、化学発熱剤を非吸湿性容器に直接充填したものとし、 保護シート(6)が水蒸気透過性−粉体非透過性薄膜からなるものとし、
保護シート(6)を、開裂紐(3)と離隔した状態で、発熱用トレー(2)の上面開口部を密封し、開裂紐(3)を発熱用トレー(2)の外部から引き抜くことにより、保護シート(6)を開裂することなく、実質的に初期の形状を維持したまま、発熱剤パック(4)と水パック(5)の両方を開裂しうるようにしたことを特徴とする化学発熱剤発熱装置。
【請求項2】
開裂紐(3)を発熱用トレー(2)に直接固着したことを特徴とする請求項1に記載の化学発熱剤発熱装置。
【請求項3】
発熱剤パック(4)または水パック(5)を、開裂紐(3)と同じ長手方向にずらして、発熱用トレー(2)に固定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1または2項に記載の化学発熱剤発熱装置。
【請求項4】
発熱剤パック(4)の発熱用トレー(2)への固定を、発熱用トレー(2)の側壁(19)に内向張出部(21、21’)を設け、発熱剤パック(4)における外向片(12、12’)を内向張出部(21、21’)と接合し、水パック(5)の発熱用トレー(2)への固定を、発熱用トレー(2)の側壁(19)に内向張出部(22、22’)を設け、水パック(5)における外向片(15、15’)を内向張出部(22、22’)と接合することによって行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化学発熱剤発熱装置。
【請求項5】
発熱剤パック(4)および水パック(5)の発熱用トレー(2)への固定を、発熱用トレー(2)の側壁(19)に内向張出部(21)を設け、発熱剤パック(4)における外向片(12)と水パック(5)における外向片(15)とを重合して、内向張出部(21)と接合することによって行っていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化学発熱剤発熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の化学発熱剤発熱装置を組み入れた携帯食品用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−68846(P2010−68846A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236384(P2008−236384)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(596064857)株式会社ヨシザワ (11)
【Fターム(参考)】