説明

化粧品としての5−(7−メトキシ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5−イル)−3−メチル−ペンタ−2,4−ジエン酸の使用

本発明は、5−(7−メトキシ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5−イル)−3−メチル−ペンタ−2,4−ジエン酸、ならびに組成物、特に、局所組成物、化粧品および/またはパーソナルケア組成物におけるその使用、ならびに該化合物を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−(7−メトキシ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5−イル)−3−メチル−ペンタ−2,4−ジエン酸、ならびに組成物、特に、局所組成物、化粧品および/またはパーソナルケア組成物におけるその使用、ならびに該化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
5−(7−メトキシ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5−イル)−3−メチル−ペンタ−2,4−ジエン酸は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(peroxisome proliferator−activated receptor、PPAR)リガンド、特に、PPAR−アルファおよびガンマのアゴニストであり、次の化学構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
5−(7−メトキシ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5−イル)−3−メチル−ペンタ−2,4−ジエン酸は、US6,596,758B1(特許文献1)において化合物16として記載されている。
【0005】
5−(7−メトキシ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5−イル)−3−メチル−ペンタ−2,4−ジエン酸は、以下では「化合物」とも呼ばれる。
【0006】
ヒトの皮膚は、特定の加齢過程に従い、それらの過程のあるものは、本来備わっている過程(時間加齢(chronoaging))に起因し、あるものは、外因性の要因(環境、例えば光加齢(photoageing))に起因する。加えて、皮膚の状態に対する一時的な変化またはさらには長く続く変化、例えば、座蒼、脂ぎった皮膚もしくは乾燥肌、角化症、酒さ、光感受性、炎症性、紅斑性、アレルギー性もしくは自己免疫反応性の反応、例えば皮膚病および光線性皮膚障害(photormatosis)が起こり得る。
【0007】
外因性の要因には、特に、日光または同等のスペクトルを有する人工光源、および放射によって生成され得る化合物、例えば、反応性の明確でない光反応生成物(これらはまた、フリーラジカルもしくはイオンでもあり得る)が含まれる。これらの要因にはまた、喫煙およびそこに存在する反応性化合物、例えば、オゾン、フリーラジカル(例えばヒドロキシルフリーラジカル)、一重項酸素および他の反応性の酸素または窒素化合物が含まれ、これらは皮膚の自然な生理的機能または形態を妨げる。
【0008】
これらの要因の作用は、とりわけ皮膚細胞のDNA、皮膚の強度を担う細胞外マトリックスのコラーゲン、エラスチンまたはグリコサミノグリカン分子に対する直接的な損傷を生じ得る。加えて、マトリックス分解酵素の活性化で終わるシグナル変換連鎖が影響を受け得る。これらの酵素の重要な代表例は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP、例えば、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼおよびストロメライシン)であり、これらの活性は、TIMP(マトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害剤)によってさらに制御されている。
【0009】
前記加齢過程の結果は、皮膚の薄層化、表皮と真皮の絡み合いの弱化、細胞および供給血管の数の減少である。これらは、結果的に小皺(fine line)および皺を生じ、皮膚は革状になり、色素欠陥が起こり得る。
【0010】
同じ要因はまた毛髪にも作用し、そこで同じように損傷が起こり得る。毛髪は、脆くなり、弾性が低下し、元気がなくなる。毛髪の表面構造が損傷を受ける。
【0011】
前記過程または同等の過程に逆らう、またはそれらの有害な結果を弱めるもしくは完全に変えると主張する特性を有する化粧品または皮膚科学的ケア製品は、しばしば、次の特定の性質、フリーラジカル捕捉性、酸化防止性、炎症抑制性または湿潤性、によって特徴付けられる。それらは、とりわけ、マトリックス分解酵素の活性を妨げるもしくは低下させる、または、コラーゲン、エラスチンもしくはプロテオグリカンの新たな合成を制御する。
【0012】
前記加齢過程は、結果的に、皮膚の薄層化、表皮と真皮の間の鋸歯状化(serration)の減退、細胞数の減少、さらには供給血管の減少を生じる。これらの過程は、小皺および皺の形成を伴い、皮膚は革状になる、また/または色素異常を示す。
【0013】
これらの要因はまた、毛髪の状態にも影響を及ぼし、同様に、毛髪の損傷、特に、毛髪の脆さ、弾性および光沢の低下に至る、毛髪表面の損傷を生じる。
【0014】
前記または類似の過程に抗することになる特性、および/または、損傷する結果を完全に変えることになる特性を有するケア製品および/または化粧品は、しばしば次の性質、フリーラジカル捕捉性、酸化防止性、炎症抑制性および/または潤い付与性、の1つまたは複数を保証する。好ましくは、それらは、マトリックス分解酵素の活性を妨げるまたは低下させる、あるいは、コラーゲン、エラスチンおよび/またはプロテオグリカンの新たな合成を制御する。
【0015】
化粧品組成物における酸化防止剤またはフリーラジカル捕捉剤の使用は、それ自体は、十分に知られている。このため、サンスクリーン配合物における酸化防止性ビタミンEの使用は普通に見られる。しかし、達成される効果は、この場合でさえ効果として望まれるものには程遠い。
【0016】
ビタミンAおよびビタミンA誘導体、例えば、レチノイン酸、レチノールおよびレチノールエステルは、上皮細胞の分化に作用するので、皮膚の状態を損なう非常に多数の現象の予防および治療のために用いられ、例えば、座蒼、乾癬、老人性角化症、皮膚変色、および皺に対する使用が記載されている(比較、例えば、WO93/19743およびWO02/02074)。
【0017】
しかし、レチノールおよび誘導体の皮膚刺激作用もまた文献に記載されている(例えばWO94/07462)。これらの副作用は、レチノールの使用を狭く限定された範囲に制限し、過剰投与を避けることが必要である。それゆえに、レチノール様作用スペクトルを有するが記載された副作用をもたない、または、少なくとも弱められた形で副作用を有するにすぎない活性成分が求められている。
【0018】
「PPAR活性化」により作用する化合物は、抗加齢剤として使用でき得ることが、すでに記載されている。
【0019】
PPAR−アルファ活性化物質は表皮分化を担うことが示された(フィラグリンおよびインボルクリンのレベルの増加)。オレイン酸、リノール酸およびクロフィブラートのようなPPARリガンドは、ラット由来の胎仔皮膚外植片における角質層および表皮バリアの成長を加速させた[G.Weindl et al.,Drugs 2005,65(14),1919−1934](非特許文献1)。
【0020】
PPAR−アルファアゴニストは、インターロイキン−1アルファ(IL−1a)の減少を通じて炎症の抑制を引き起こし、また、PPAR−アルファにより誘導されるIL−1アルファの減少により、結果的に、産生され、従ってまた1個の細胞当たりに組み入れられるメラニンの減少を生じ得る[J.W.Wiechers et al.,International Journal of Cosmetic Science,2005,27,123−132]。
【0021】
クロフィブラートのようなPPAR活性化物質は、ケラトヒアリン顆粒の主な構成成分であるプロフィラグリンの発現を増大させ、フィラグリンへのプロフィラグリンのプロセッシングを増加させ、また、角化エンベロープ(cornified envelope)の重要な構造タンパク質であるロリクリンの発現を増大させる。さらに、それらは、2種の分化特異的タンパク質:インボルクリンおよびトランスグルタミナーゼのタンパク質およびmRNAレベルの増加によって示される、ヒト角化細胞培養体における分化を誘発した。ビタミンD誘導体およびレチノイン酸のような、他の分化誘導物質と同様に、クロフィブラートは、インビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)で角化細胞の成長および増殖を阻害する[Hanley K, et al.,J Invest Dermatol 1998 Apr;110(4):368−75 and Komuves LG,J Invest Dermatol 2000 Sep;115(3):353−60]。
【0022】
PPAR−アルファは、胚発生後期の間の表皮の発生にとって重要であり得るが、成熟した動物における表皮の再生には必須ではない[L.Michalik,W.Wahli,Biochimica et Biophysica Acta 1771(2007)991−998]。
【0023】
興味深いことに、PPAR−アルファアゴニストのクロフィブラートは、狭い濃度範囲内でヒトの毛包の生残率を増加させる[L.Michalik,W.Wahli,Biochimica et Biophysica Acta 1771(2007)991−998]。
【0024】
最近、PPAR活性化物質(PPAR−アルファ:クロフィブラート;PPAR−ベータ/デルタ;GW501516;PPAR−ガンマ:シグリタゾン、トログリタゾンまたはGI262570)は、角化細胞の分化および表皮バリア成熟の重要な酵素、すなわちコレステロールスルホトランスフェラーゼ2B1b型の発現を増大させると報告された[L.Michalik,W.Wahli,,Biochimica et Biophysica Acta 1771(2007)991−998]。
【0025】
PPAR−アルファは炎症期の調整による皮膚の治癒を容易にし、他方、PPAR−ベータは角化細胞の生残と移動の重要なプレーヤーである。
【0026】
矛盾なく一致して、表皮においてPPAR−アルファを過剰発現するトランスジェニックマウスは、TPAの局所適用での過形成の抑制を示し、PPAR−アルファが成熟したマウスの皮膚における角化細胞の過剰増殖を防ぐことを示唆する[Q.Yang et al,J.Invest.Dermatol.126(2006)374−385]。
【0027】
インターロイキン−1アルファ(IL−a)の減少による炎症の抑制は、それゆえに、UV誘導照射に対する反応としての皮膚の日焼けである。短期的には、p38経路をアップレギュレーションすることにより、チロシナーゼ産生が増加する。長期的な枠組みでは、IL−アルファのような炎症性サイトカインが、やはりチロシナーゼレベルを上昇させる伝達的な仕方で、メラノサイトに作用する。その結果、PPAR−アルファにより誘導されるIL−1アルファの減少は、産生され、従ってまた1個の細胞当たりに組み入れられるメラニンの減少を生じる[J.W.Wiechers et al.,International Journal of Cosmetic Science,2005,27,123−132]。
【0028】
PPAR−ガンマ活性化物質は、用量に依存する仕方で黒色腫の増殖を抑える(チロシナーゼの産生の減少および/またはチロシナーゼの半減期の低下)。
【0029】
PPAR−アルファおよび−ガンマは、マウスの濾胞間表皮において、外傷の治癒の間、または12−o−テトラデカノイル−ホルボール−13−アセテート(TPA)の局所適用によって誘発される増殖の間、アップレギュレーションされる[G.Weindl et al.,Drugs 2005,65(14),1919−1934]。
【0030】
損傷を受けた表皮角化細胞によって放出されるTNF−αは、ストレス関連プロテインキナーゼ(SAPK)を活性化し、PPARδ(PPAR−デルタまたはPPAR−ベータ)プロモーターへのAP−1の結合、およびPPARδ標的遺伝子の転写を誘導する。TNF−αはまた、内因性PPARδリガンドの産生の引き金となり、これらのリガンドは、角化細胞およびマクロファージにおけるPPARδを活性化する。
【0031】
PPARδの活性化は、インテグリン結合キナーゼ(ILK)および3−ホスホイノシチド依存性キナーゼ(PDK)の発現を通して、さらには、PKB/Akt−1生残経路の活性化により、アポトーシス抵抗性を向上させることによって、再上皮形成のために十分な数の角化細胞を保つ助けとなる。PPARδを刺激する初期の炎症シグナルは、再上皮形成/修復の後期段階においてTGF−β1/Smad3に媒介されるPPARδの抑制によって抑えられる。この抑制は、Smad3/4複合体により媒介される、AP−1の活性の阻害により起こる。さらに、外傷を受けた真皮線維芽細胞によって放出されるTGF−β1は、マクロファージの数を増加させ、外傷の修復のためのECMの産生を促す[L.Michalik,W.Wahli,Biochimica et Biophysica Acta 1771(2007)991−998]。
【0032】
PPAR活性化物質は、スキンライトニングおよび/またはホワイトニングのための新しい作用メカニズムをもたらす。PPAR受容体の活性化物質は、スキンホワイトニング作用剤として知られている。PPAR−ガンマへの活性化物質の結合はメラニン形成を抑制し得る。PPAR−ガンマへの結合は、転じて、より少量のチロシナーゼが生成される結果となる。今度は、これは、その化合物がPPAR−ガンマだけでなく、PPAR−アルファにもまた結合するために、インビトロおよびインビボのいずれにおいてもメラニン形成の減少に導く。
【0033】
核内受容体PPAR−ガンマへのリガンドの結合は、炎症の転写リプレッサーであるBCL−6の放出に至り得る。これは、結果的に、炎症性サイトカイン遺伝子の発現の低下、炎症の抑制、およびアテローム性動脈硬化の減少を生じ得る[L.Michalik,W.Wahli,,Biochimica et Biophysica Acta 1771(2007)991−998]。
【0034】
化粧品のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)脂質は、対ビヒクルの効果で、また、グリコール酸と組み合わせると、グリコール酸単独に対して光加齢した皮膚外観をかなり改善することが示された[J.W.Wiechers et al.,International Journal of Cosmetic Science,2005,27,123−132]。
【0035】
しかし、オクタデセン二酸のように、PPAR受容体を通じて作用し、化粧品分野においてスキンホワイトナーに用いられる、当技術分野において知られている化合物は、PPAR−ガンマの活性化を通じて主に作用する(O.D.A White(商標))(SEDERMAの特許:W094/07837;US5,753,704;EP0662946)。これまで、PPAR−アルファとPPAR−ガンマの活性のバランスを保つPPAR活性化物質を含む化粧品は市場に存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第6596758明細書
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】G.Weindl et al.,Drugs 2005,65(14),1919−1934
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0038】
加齢過程および有害な環境の影響に対する、ヒトの皮膚およびヒトの毛髪の予防的トリートメントのための活性化成分を求める絶えず増大する需要に基づいて、本発明の目的は、すでに最初に記載された効果を示し、十分に、酸化および光に対する安定性であり、また容易に配合できる新規活性成分を提供することであった。それらを用いて調製された組成物は、さらに、可能な範囲で皮膚に対する刺激の可能性が低く、可能な範囲で皮膚における水の結合へのポジティブな影響を有し、皮膚の弾性を保持もしくは増加させ、こうして皮膚の滑らかさを高めるべきである。さらに、それらは好ましくは、皮膚に付けた際に心地よい皮膚の感触を生じるべきである。好ましくは、新しい活性成分は、抗加齢性、抗炎症性、皺防止性および外傷治癒性からなる群から選択される1つまたは複数の特性を好ましくは示す。好ましくは、それは、毛細血管脆弱のトリートメントおよび/または予防のための製品、乾癬のトリートメントおよび/または予防のための製品、セルライトのトリートメントおよび/または予防のための製品、ならびに/あるいは、白髪のトリートメントおよび/または予防のための製品に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】B16−V黒色腫細胞におけるメラニン合成の阻害を示す実験結果を示すグラフである。
【図2】目視評価によるホワイトニング効果の評価を示すグラフである。
【図3】色彩計による測定を用いた、明るさの違いを表すL値によるホワイトニング効果の評価を示すグラフである。
【図4】色彩計による測定を用いた、メラニン指数を表すITA°値によるホワイトニング効果の評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明により用いられる「化合物」は、前記使用のための新規活性成分である。好ましくは、本発明により用いられる「化合物」は、利点のある特性、例えば、向上した取扱い性、向上した安定性、および/または、PPAR−アルファおよび−ガンマ受容体の利点のある活性化プロフィールを有する。
【0041】
驚くべきことに、「化合物」は、PPAR−アルファおよび−ガンマ受容体の、よくバランスのとれた刺激をもたらし、このことは、アルファまたはガンマ受容体のいずれかを主として刺激するか、あるいは、少なくとも、このような受容体の一方に優勢な活性を有する、当技術分野において知られている他のPPAR活性化物質とは対照的であることが見出された(例えば、以下を参照、フェノフィブラートによるPPARの刺激(PPAR−アルファ;WY14643)、トログリタゾン(PPAR−ガンマ;Tontonoz P,Hu E,Spiegelman BM,Cell 1994;79,1147−1156)、およびロシグリタゾン(PPAR−ガンマ、Jo A.Van Ginderachter et al,Blood,2006,Vol.108,No.2,pp.525−535)、ならびにオクタデセン二酸(PPAR−ガンマ、WO94/07837))。同じ濃度範囲におけるPPAR−アルファおよび−ガンマ両方の受容体活性化の非常によく似た同時活性化は、化粧品分野においてそれが用いられると、有益な効果を生じる。
【0042】
Sertzingおよび同僚等の観察は、PPAR−アルファおよびPPAR−ガンマ活性化物質、または、PPAR遺伝子発現をポジティブに調節する化合物は、アトピー性皮膚炎、乾癬、およびアレルギー性接触皮膚炎のような一般的な炎症性皮膚疾患の局所もしくは全身処置のための抗炎症の非ステロイド性新規薬剤に相当し得る可能性を示唆する(Sertzing P.et al.,American Journal of Clinical Dermatology,2008)。
【0043】
PPAR−アルファは、脂肪酸(FA)の取り込みおよび酸化、炎症および血管機能の調節に関与し、他方、PPAR−ガンマは、FAの取り込みおよび貯蔵、グルコースの恒常性および炎症に関与する。望ましくない副作用は比較的少数で、PPAR−アルファとPPAR−ガンマの活性化の有益な代謝作用を併せ得る薬物は、今日まで、うまく開発されていない(ザクロの花:デュアルPPAR−アルファ/−ガンマ活性化物質の特性を有する唯一の伝統的な糖尿病治療薬。Li Y,Qi Y,Huang TH,Yamahara J,Roufogalis BD,Diabetes,obesity & metabolism(2008))。
【0044】
PPARはヒトのメラノサイトにおいて発現され、PPAR−アルファおよびPPAR−ガンマ活性化物質はメラノサイトの成長を抑制し、メラニン形成を刺激する。PPAR−アルファ(WY−14643)およびPPAR−ガンマ(シグリタゾン)に対する活性化物質は、用量に依存する仕方でメラノサイトの増殖を抑制したが、PPAR−ベータ/デルタに対する優先的活性化物質であるベザフィブラートは、全く効果がなかった(Kang HY et al,Br J Dermatol.2004 Mar;150(3):462−8)。
【0045】
オクタデカン二酸(O.D.A White)はスキンホワイトニング剤として知られているが、その活性はチロシナーゼの直接的な阻害によって媒介されていない。PPAR−ガンマへの結合は、結果的に、チロシナーゼmRNAの発現を減少させ、このことが転じて、より少量のチロシナーゼが生成される結果となる。このことが、転じて、オクタデカン二酸はPPAR−ガンマだけでなくPPAR−アルファおよびPPAR−デルタにもまた結合し、これらの受容体により媒介される他の効能もまた期待され得るために、インビトロおよびインビボのいずれにおいてもメラニン形成の減少に導く(Wiechers,J.W.,International Journal of Cosmetic Science.27(2):123−132,April 2005)。しかしながら、O.D.A WhiteのPPAR−アルファの活性化はごくわずかである(Merck KGaAのJohann Wiechersとの個人的意見交換)。EMD336340はO.D.A Whiteとは異なり、アルファおよびガンマPPAR受容体の両方に対してバランスのとれた活性を有する。
【0046】
PPAR−ガンマのアゴニストは脂肪生成に関与することが知られている[Am J Physiol Endocrinol Metab 293:E1159−E1168,2007]。脂肪細胞はブタ胎仔の毛包の周りに位置することが知られている。ブタ下皮における毛包の発生と脂肪細胞の生成との間の関係は、Hausman GJ et alによって研究された[J.Animal Sci.1982,54:1286−1296]。彼らは、ブタにおける毛包の脂肪小葉(adipose lobule)の発生は、毛包および汗腺の成長と発生に、時間的にまた空間的に関連していることを示す[J.Animal Sci.1982,54:1286−1296]。
【0047】
脂肪組織は、また、レプチン、レジスチンおよびサイトカインTNFaのようなホルモンを産生することによって、重要な内分泌器官としての役目も果たす(Kershaw EE;J.Clin.Endocrinol.Metab.89−6:2548−56,2004)。脂肪組織の生成は脂肪遺伝子によって制御されていると思われる。
【0048】
「化合物」について、FABP4(脂肪酸結合タンパク質4:脂肪細胞)およびレプチン(これらは、脂肪生成および脂肪細胞のプロモーションに関与する)が、処理されたEMD336340によるcDNAマイクロアレイデータにおいて、かなりアップレギュレーションされることが見出された[付録Aにおける結果を参照]。LEP(レプチン)は、内臓脂肪貯蔵所の大きさを制御する役目を果たすシグナル伝達経路の一部として機能し得る。LEPレベルの増加は、脂肪量の不変性を保つための恒常性メカニズムの一部として、食物の摂取を抑制する、また/または、エネルギー消費を制御するように、CNSに直接的または間接的に作用し得る。こうして、「化合物」は、脂肪細胞の調整に関与し、毛包の発生にも関与する。
【0049】
「化合物」は、皮膚科学的組成物および美容組成物における、抗加齢、抗炎症、座蒼およびスキンホワイトニング活性成分、ならびに毛髪成長調節物質成分として、より詳細には成長促進剤として、特に有用である(単独で、または他の活性剤と組み合わせて)。したがって、本発明はこのような目的に対する「化合物」の使用に関する。特に好ましいのは、スキンライトニングおよび/またはスキンホワイトニング剤としての「化合物」の使用である。
【0050】
本発明はまた、抗加齢、抗炎症剤として用いられる化粧品成分、座蒼の治療、毛髪の成長を誘発もしくは刺激するための、毛髪を失うことを遅らせるための、色素増加症の治療のための化粧品成分、あるいは色素沈着(脱色素)の改善のための化粧品成分の調製における「化合物」の使用に関する。
【0051】
「化合物」は、インビトロで試験され、上皮分化タンパク質(これらは、また、文献において、皮膚の状態の改善および全体としての皮膚の健康の指標として知られている)の発現の増加を示した(発明者の未公開の結果)。
【0052】
さらに、「化合物」は、非常に安全であり、他のPPAR活性化物質に比べて、動物モデルにおいて毒性作用を示さないことが見出された。「化合物」は、遺伝毒性でなく、細胞の増殖またはアポトーシスを示すものはなく、発癌性の危険は臨床開発の間に予想されず、皮膚/目への刺激はなく、光毒性はなく、皮膚感作はない(以下について社内データが入手可能:急性毒性試験、反復投与試験、変異誘発性試験、生殖毒物学試験、皮膚感作試験、光毒性および光アレルギーの可能性、皮膚/目への刺激試験、一般的行動および体温への影響、イオンチャネル結合アッセイ)。
【0053】
「化合物」は、遊離酸として使用できるが、有機もしくは無機の塩基とのその塩、金属、特に、アルカリ、アルカリ土類および遷移金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムもしくはアルミニウム)、または塩基、例えば、アンモニアまたは第2級もしくは第3級アミン(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンもしくはモルホリン)、または塩基性アミノ酸、またはオサミン(例えばメグルミン)、またはアミノアルコール(例えば、3−アミノブタノールおよび2−アミノエタノール)により生成される塩の1つとしても使用できる。
【0054】
本明細書で用いられる場合、用語「皮膚科学的に許容される」は、記載されている組成物または成分が、毒性の危険、不適合による不安定性、アレルギー反応などなしに、ヒトの皮膚に接触させて用いられるのに適することを好ましくは意味する。
【0055】
「皮膚加齢」、「皮膚加齢の徴候」、「局所適用」などの全ての用語は、化粧品およびパーソナルケア製品を開発、試験および販売する技術分野において、それらが一般的に広く用いられている意味において好ましくは用いられる。
【0056】
本発明による「化粧品組成物」、または好ましくはより短く単に「組成物」という用語は、美容の目的で、衛生の目的で、また/または1種または複数の医薬成分のデリバリーのためのベースとして用いることができる配合物に、好ましくは関する。これらの配合物が、一度に、これらの目的の2つ以上のために用いられることもまた可能である。このように、本明細書で用いられる場合、用語「化粧品」、「化粧品組成物」および/または「組成物」は、限定ではないが、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、エマルジョン、コロイド、溶液、懸濁液、コンパクト、固体、ペンシル、スプレーオン配合物、ブラッシュオン(burush-on)配合物などのいずれかの状態の、リップスティック、マスカラ、ルージュ、ファンデーション、ブラッシュ(blush)、アイライナー、リップライナー、リップグロス、フェイシャルまたはボディパウダー、サンスクリーンおよびサンブロック、マニキュア、ムース、スプレー、スタイリングジェル、ネイルコンディショナーを好ましくは含む。「パーソナルケア製品」は、限定ではないが、固体、パウダー、液体、クリーム、ゲル、軟膏、ローション、エマルジョン、コロイド、溶液、懸濁液、または他の状態のいずれかの、バスおよびシャワージェル、シャンプー、コンディショナー、クリームリンス、ヘアダイおよびヘアカラー製品、リーブオンコンディショナー、サンスクリーンおよびサンブロック、リップバーム、スキンコンディショナー、コールドクリーム、モイスチャライザー、ヘアスプレー、石鹸、ボディスクラブ、エクスフォリアント(exfoliant)、アストリンゼン、脱毛剤およびパーマ液、フケ防止配合物、アンチスエット(antisweat)および発汗抑制組成物、シェービング、プレシェービングおよびアフターシェービング製品、モイスチャライザー、デオドラント、コールドクリーム、クレンザー、スキンジェル、リンスを好ましくは含む。本発明での「医薬製剤」は、限定ではないが、医薬活性成分の局所および経皮適用を含めて、皮膚科学的目的のための担体を好ましくは含む。これらは、ゲル、パッチ、クリーム、鼻スプレー、軟膏、ローション、エマルジョン、コロイド、溶液、懸濁液、パウダーなどの状態であり得る。本発明による組成物には、好ましくは、化粧品、パーソナルケア製品および医薬製剤が含まれる。
【0057】
用語「皮膚加齢」または「皮膚加齢の徴候」は、これらに限定されないが、皮膚加齢に起因する、外に表れて目に見え、触って知覚できる徴候の全て、さらには他のマクロもしくはミクロの結果を好ましくは含む。このような徴候は、内在的要因または外在的要因、例えば、年齢に伴う自然な加齢および/または環境による損傷によって誘発される、または引き起こされ得る。これらの徴候は、これらに限定されないが、テクスチャの不連続性の発生、例えば、皺および粗い深い皺、皮膚の小皺、皮溝(crevice)、隆起(bump)、大きな毛穴(例えば、汗腺導管、皮脂腺、もしくは毛包のような付属器構造体に付随する)、または皮膚の凸凹もしくは粗さ、皮膚の弾性の低下(機能的皮膚エラスチンの欠損および/または不活性化)、たるみ(目の部分およびあごの膨れが含まれる)、皮膚のキメの細かさ(firmness)の低下、皮膚のハリ(tightness)の低下、変形からの皮膚の戻りの低下、変色(目の下の(黒い)くまが含まれる)、シミ、血色の悪さ、老人斑およびそばかすのような色素増加した皮膚の部分、角化症、異常分化、過度の角質化、弾力線維症、コラーゲン分解、ならびに、角質層、真皮、表皮、皮膚血管系(例えば、毛細血管拡張もしくはクモ状血管(spider vessels)、および下にある組織、特に、皮膚に近い組織における他の組織学的変化を、好ましくは含む過程から生じ得る。本発明では特に好ましくは、皮膚加齢の徴候は皺であり、本発明の組成物は、特定の好ましい実施形態において、皺と戦い、治療し防止するのに有用である。
【0058】
本明細書で用いられる場合、皮膚の状態を予防的に整えることは、皮膚加齢の徴候を含めて、皮膚における目に見える、また/または触知できる不連続性(例えば、目で見て、または感触によって認められ得る、皮膚におけるテクスチャの異常)の進行を遅らせる、最低限にする、また/または防止することを好ましくは含む。
【0059】
本明細書において用いられる場合、皮膚の状態を治療によって整えることは、皮膚加齢の徴候を含めて、皮膚における不連続性を改善すること、例えば、小さくすること、最低限にすることおよび/または消し去ることを好ましくは含む。本発明の組成物を用いて製造される製品のあるもの、さらに言えば組成物自体は、皮膚の状態を予防的にまたは治療により整えるために使用され得る。
【0060】
本発明の製品および組成物のあるものは、皮膚加齢の徴候を示す皮膚の外観および/または皮膚の感触を改善するために有用である。例えば、本発明の好ましい組成物は、皮膚に組成物を付けた後、直ちに皮膚の外観の目に見える改善をもたらすことによって、皮膚の状態の外観を整えるために有用である。一般的に言えば、粒子状材料をさらに含む本発明の組成物は、直ちに目に見える改善をもたらすのに最も有用であり得る。
【0061】
本発明の組成物のあるものは、また、配合物の安定性、際立った(消費者に許容されない)皮膚刺激のないこと、抗炎症活性および良好な美的効果を含めて、さらなる利点をもたらし得る。
【0062】
特定の好ましい態様において、本発明は、特に、日光への暴露、物理的ストレスおよびホルモンに関連するストレス、擦ること、栄養の影響、ならびに他の類似の原因によって生じる皮膚加齢の徴候を弱めるように、ヒトの皮膚の生理学的状態および/または物理的外観を改善するために有用である。しばしば、本発明の組成物は、それらを用いる消費者に、より若々しい外観を与えるように、加齢の徴候を防止するために、および/またはそれらを治療するために、用いられ得る。
【0063】
従って、本発明はより好ましくは以下に関する;
「化合物」および/またはその塩もしくは溶媒和物を含む組成物、好ましくは非治療的組成物。
【0064】
i)「化合物」および/またはその塩もしくは溶媒和物、
ii)皮膚に許容される1種または複数のビヒクル、ならびに任意選択で、
iii)スキンケアおよび/または炎症抑制作用を有する1種または複数のさらなる活性化合物、
を含む、局所使用のための組成物。
【0065】
i)「化合物」および/またはその塩もしくは溶媒和物、
ii)皮膚に許容される1種または複数のビヒクル、ならびに任意選択で、
iii)スキンケアおよび/または炎症抑制作用を有する1種または複数のさらなる活性化合物、
を含む、局所使用のための組成物。
【0066】
「化合物」が、該組成物に、0.00001重量パーセントから10重量パーセントの量で、好ましくは0.001重量パーセントから10重量パーセントの量で、より好ましくは0.1重量パーセントから10重量パーセント、より一層好ましくは0.001重量パーセントから5重量パーセント、特に0.1重量パーセントから5重量パーセントの量で含まれる、上記/下記の組成物。
【0067】
「化合物」および少なくとも1種のさらなるスキンケア成分、ならびに局所適用に適する少なくとも1種の担体を含む組成物。
【0068】
組成物、好ましくは非治療的組成物、特に好ましくは化粧品組成物または局所組成物の製造のための「化合物」の使用。
【0069】
分化および細胞増殖に関連する、欠陥のある角質化に付随する皮膚疾患の予防および/または治療に、特に、尋常性座蒼、面皰性座蒼(acne comedonica)、多形性(polymorphic)座蒼、酒さ性座蒼、結節性座蒼、凝塊性座蒼、加齢に関連する座蒼、副作用として現れる座蒼、例えば日光性座蒼(acne solaris)、薬剤に関連する座蒼または職業上の座瘡(acne professionalis)の治療に、角質化の他の欠陥、特に、魚鱗癬、魚鱗癬状の状態、ダリエー病、掌蹠角化症、白板症、白板症状の状態、皮膚および粘膜(口腔)湿疹(苔癬)の治療に、欠陥のある角質化に付随し、また炎症性および/または免疫アレルギー性要素を有する他の皮膚疾患、特に、皮膚、粘膜および手と足の爪に関連する乾癬の全ての状態、乾癬リウマチおよび皮膚アトピー、例えば、湿疹、または呼吸器官アトピー、あるいはまた歯肉肥大の治療に適する組成物の調製のための「化合物」の使用。
【0070】
皮膚または毛髪の一般的状態のケア、維持または改善のための「化合物」の使用。
【0071】
ヘアケアおよび/または毛包の発生のための「化合物」の使用。
【0072】
皮膚の凸凹、例えば、皺、小皺、粗い皮膚または毛穴が大きい皮膚に対する予防、またはこれらを減らすための「化合物」の使用。
【0073】
ヒトの皮膚またはヒトの毛髪の、時間および/または光誘発加齢過程に対する予防のための、特に、乾燥肌、皺形成および/または色素欠陥に対する予防のための、ならびに/あるいは、皮膚へのUV光の有害な作用の低減もしくは防止のための「化合物」の使用。
【0074】
好ましくは、「化合物」およびそれを含む組成物は、好ましくは組織再生に有益であると思われる。これは、皮膚細胞における、利点のある特定の生体分子(これらに限らないが、I型コラーゲン、フィブロネクチン、IV型コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸が含まれる)の産生を調整し、好ましくは刺激するそれらの能力によると考えられる。
【0075】
したがって、「化合物」およびそれを含む組成物は、小皺、皺、大きくなった毛穴、粗さ、乾燥、および他の皮膚テクスチャの欠陥、例えば、皮膚線条(妊娠、外傷もしくは他の影響によって引き起こされる)、「腫れ目」および(目の下の)暗いくまとも呼ばれる目の下のたるみ(皮膚線条も目の下のたるみも、皮膚の薄層化、不十分な血液循環および/またはたるんだ組織によって優先的に引き起こされる)を含めて、ヒトの皮膚における目に見える加齢の徴候を、特に局所適用を反復して、改善するために好ましく用いることができる。
【0076】
こうして、本発明のさらなる目的には、好ましくは以下が含まれる。
【0077】
加齢の徴候を示す動物に、好ましくは加齢の徴候を示す皮膚および/または毛髪の部分に、「化合物」を含む組成物を、加齢の目に見える徴候、好ましくは皮膚および/または毛髪の加齢の目に見える徴候を減らすのに少なくとも十分な期間、少なくとも1日1回、適用することを含む、動物、好ましくはヒト動物における、加齢の目に見える徴候を減らすための、好ましくは、皮膚および/または毛髪の加齢の目に見える徴候を減らすための方法および/または組成物。加齢の目に見える徴候を減らすのに少なくとも十分な期間は、通常、1日と12カ月、好ましくは3日間と6カ月の間、より好ましくは2週間と2カ月の間である。
【0078】
皮膚に、好ましくは少なくとも線条を示す皮膚の部分に、「化合物」を含む組成物を、線条の目に見える徴候を減らすのに少なくとも十分な期間、少なくとも1日1回適用することを含む、皮膚線条を減らすための方法および/または組成物。皮膚線条の目に見える徴候を減らすのに少なくとも十分な期間は、通常、1日と12カ月、好ましくは3日間と6カ月の間、より好ましくは2週間と2カ月の間である。
【0079】
皮膚に、好ましくは少なくとも線条を示す皮膚の部分に、「化合物」を含む組成物を、線条の目に見える徴候を減らすのに少なくとも十分な期間、少なくとも1日1回適用することを含む、皮膚線条を減らすための方法および/または組成物。皮膚線条の目に見える徴候を減らすのに少なくとも十分な期間は、通常、1日と12カ月、好ましくは3日間と6カ月の間、より好ましくは2週間と2カ月の間である。
【0080】
皮膚に、好ましくは、少なくとも暗いくまを示す皮膚の部分に、「化合物」を含む組成物を、ヒトの皮膚の部分の暗いくまを減らすのに少なくとも十分な期間、少なくとも1日1回適用することを含む、目の下の暗いくまを減らすための方法および/または組成物。暗いくまを減らすのに少なくとも十分な期間は、通常、1日と12カ月、好ましくは3日間と6カ月の間、より好ましくは2週間と2カ月の間である。
【0081】
本発明の一態様は、ヘアトリートメント剤に対する皮膚の保護のための、特に、毛髪の着色に一般的に用いられる顔料、染料(dyestuff)、染料(dye)および/または着色剤に対する、頭部の皮膚の保護のための、「化合物」の使用に関する。化粧品組成物による毛髪の処理の間、頭部トリートメント組成物と下にある皮膚との接触は、通常、完全には避けることができない。頭部トリートメント組成物と下にある皮膚との接触は、ヘアカラー組成物の場合に、生え際および/または毛髪の付け根の周りの皮膚の部分の、結果としての着色は、美しくなく、従ってまた望まれないと通常見なされるので、特に不都合である。
【0082】
したがって、ヘアトリートメント組成物のネガティブな作用から皮膚を保護することが望まれる。当技術分野において、皮膚のこのような保護を実現するために、様々な組成物、例えば、エマルジョン、または他の作用剤、例えばワセリンを用いることが知られている。しかし、従来技術の組成物および作用剤は、ごく限られた効能しか示さない、また/または、頭部トリートメント組成物を付けた後で、除去されなければならない。例えば、ワセリンは、水に対するその不溶性のせいで、皮膚および/または毛髪から取り除きにくい。それを十分に除去するために、強力な洗浄剤および/または有機溶媒の使用が必要になり得るので、ヘアトリートメント組成物を付ける意図された結果に影響を及ぼす、また/または、皮膚および/または毛髪の状態にネガティブな影響を及ぼす。
【0083】
本発明によれば、「化合物」は、ヘアトリートメント剤に対して皮膚を保護するために、特に、顔料、染料、染料および/または着色剤、あるいは一般にヘアカラー組成物の悪影響に対して頭部の皮膚を保護するために、利点をもって付けることができる。
【0084】
こうして、本発明のさらなる目的は以下のとおりである。
【0085】
ヘアトリートメント剤に対する皮膚の保護のための、特に、顔料、染料、染料および/または着色剤、あるいは一般にヘアカラー組成物に対して頭部の皮膚を保護するための、上記/下記の「化合物」の使用。
【0086】
ヘアトリートメント剤に対する皮膚の保護のための、特に、顔料、染料、染料および/または着色剤、あるいは一般にヘアカラー組成物に対して頭部の皮膚を保護するための組成物における、「化合物」の使用。
【0087】
ヘアトリートメント組成物、好ましくは、毛髪を、染色する、薄い色を付ける、形作る、堅くする、整える、柔らかくする、修復する、または特定の型にすることができる組成物、特に、毛髪を着色する、または薄い色を付けることができる組成物に対して、皮膚を保護するための調合物を製造するための、「化合物」の使用。
【0088】
ヘアトリートメント組成物に対する皮膚の、同時に作用する保護のための、さらにはスキンケアのための、「化合物」の使用。
【0089】
本発明の組成物は、通常、「化合物」と、1種または複数のビヒクルまたは担体、好ましくは化粧品に許容される1種または複数のビヒクルまたは担体とを含む。1種または複数のビヒクルまたは担体は、疎水性および親水性のビヒクルまたは担体の群から独立に選択され得る。適切な疎水性のビヒクルまたは担体には、例えば、これらに限らないが、C4からC22、好ましくはC8からC18、最も好ましくはC12からC18の炭素鎖長を有する脂肪アルコールおよび脂肪酸のエステルおよびエーテルを含めて、ワックス状非イオン性物質、好ましくは、化粧品に一般的に用いられるワックス状非イオン性物質が含まれる。疎水性脂肪担体またはビヒクルの例は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、アセチル化ラノリンアルコール、C12〜C15アルコールの安息香酸エステル、オクタン酸セテアリル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、乳酸ミリスチル、酢酸セチル、ジカプリル酸/カプリン酸プロピレングリコール、オレイン酸デシル、アセチル化ラノリン、ヘプタン酸ステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、およびイソステアリン酸イソプロピルなどからなる群から好ましくは選択される。特に溶液のための、親水性の担体またはビヒクルの例は、これらに限らないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを含めて、グリコールおよびアルコキシ化グリコール、好ましくは、化粧品に一般的に用いられるグリコールおよびアルコキシ化グリコールからなる群から好ましくは選択される。
【0090】
本発明による組成物、特に、本発明による化粧品組成物は、クリーム、ローション、セラム、スプレー、スティック、および当業者に知られている他の形態として配合され得る。クリームおよびローションが一般に好ましい製品形態である。
【0091】
好ましくは、化粧品に許容されるビヒクル中の「化合物」の濃度は、1ppbから10,000ppm、好ましくは10ppbから1,000ppm、より好ましくは100ppbから100ppm、最も好ましくは1ppmから100ppmの範囲であり得る。
【0092】
好ましくは、化粧品組成物は、通常、約0.01重量%と約90重量%の間、好ましくは約0.1%と約50%の間、より好ましくは約0.1%と約20%の間、より一層好ましくは約1重量%と約10重量%の間のレベルで、前記担体溶液を含む。
【0093】
好ましくは、適用のための、好ましくは皮膚および/または毛髪に適用するための組成物における「化合物」の濃度は、1ppbから10,000ppm、好ましくは10ppbから1,000ppm、より好ましくは100ppbから100ppm、より一層好ましくは0.5ppmから150ppm、最も好ましくは1ppmから100ppmの範囲に、例えば、約0.5ppm、約1ppm、約1.5ppm、約5ppm、約10ppm、約25ppm、約50ppm、約75ppm、約100ppmまたは約125ppmであり得る。
【0094】
適用できる場合、好ましくは、ppbおよびppmは、例えば、個々の複数の成分(例えば、「化合物」、ビヒクル)の重量、および/または個々の1つの成分の重量のそれぞれの重量と、組成物の総重量に基づくと見なされるべきである。したがって、1ppmは、好ましくは、1mg/kgまたは10-4重量%と見なされる。
【0095】
任意選択で、本発明による組成物は、これらに限らないが、賦形剤、フィラー、乳化剤、酸化防止剤、界面活性剤、フィルム形成剤、キレート剤、ゲル化剤、増粘剤、エモリエント、湿潤剤、モイスチャライザー、ビタミン、ミネラル、粘度および/またはレオロージー調整剤、サンスクリーン、角質溶解薬、脱色素剤、レチノイド、ホルモン化合物、アルファ−ヒドロキシ酸、アルファ−ケト酸、抗マイコバクテリア剤、抗真菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、脂質化合物、抗アレルギー剤、H1および/またはH2抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、刺激抑制剤(anti-irritant)、抗腫瘍剤、免疫系増強剤、免疫系抑制剤、座蒼治療剤、麻酔剤、消毒剤、虫忌避剤、皮膚冷却化合物、スキンプロテクタント、皮膚浸透促進剤、剥脱剤(exfollient)、滑剤、芳香剤、着色剤、染色剤、脱色剤、色素沈着低下(hypopigmenting)剤、保存剤、安定剤、薬剤、光安定剤、ならびにこれらの混合物を含めて、「化合物」以外のさらなる活性および不活性成分を任意選択で含み得る。前記に加えて、本発明のパーソナルケア製品は、皮膚障害の治療のための他の任意の化合物を含み得る。
【0096】
本発明はまた、本発明の化粧品組成物を局所適用することを含む、ヒトの皮膚の光−および自然加齢の徴候を改善および/または防止するための方法も提供する。本発明の化粧品組成物は、所望の抗加齢結果を達成するのに必要なだけ長い期間、毎日1または2回、皮膚の影響を受けた部分に好ましくは適用される。
【0097】
本発明はさらに、「化合物」および少なくとも1種のさらなるスキンケア成分と、局所適用に適する少なくとも1種の担体とを含む組成物、好ましくは非治療的組成物に、また、皮膚または毛髪の一般的状態のケア、維持または改善のための前記組成物の使用に関する。
【0098】
本発明による好ましい使用は、特に、ヒトの皮膚またはヒトの毛髪の時間および/または光誘発加齢過程に対する予防のための、特に、乾燥肌、皺形成および/または色素欠陥に対する予防のための、また/または、皮膚へのUV光の有害な作用の低減もしくは予防のための、また、皮膚の凸凹、例えば、皺、小皺、粗い皮膚もしくは毛穴が大きい皮膚に対する予防もしくはこれらの減少のための使用である。
【0099】
本発明による好ましい使用は、さらに、早すぎる皮膚加齢の予防および/または防止のための、特に、光もしくは加齢による誘発される皮膚の皺形成の予防および/または防止のための、色素沈着および日光角化症の軽減のための、正常な皮膚加齢または光により誘発される皮膚加齢に伴う全ての疾患の予防および/または治療のための、分化および細胞増殖に関連する、欠陥のある角質化に伴う皮膚疾患の予防および/または治療のための、特に、尋常性座蒼、面皰性座蒼、多形性座蒼、酒さ性座蒼、結節性座蒼、凝塊性座蒼、加齢に関連する座蒼、副作用として現れる座蒼、例えば日光性座蒼、薬剤に関連する座蒼または職業上の座瘡の治療のための、角質化の他の欠陥、特に、魚鱗癬、魚鱗癬状の状態、ダリエー病、掌蹠角化症、白板症、白板症状の状態、皮膚および粘膜(口腔)湿疹(苔癬)の治療のための、欠陥のある角質化に付随し、また炎症性および/または免疫アレルギー性要素を有する他の皮膚疾患、特に、皮膚、粘膜および手と足の爪に関連する乾癬の全ての状態、乾癬リウマチおよび皮膚アトピー、例えば、湿疹、または呼吸器官アトピー、あるいはまた歯肉肥大の治療のための、また、真皮または表皮の良性または悪性の全ての異常成長物(これは、ウイルスに原因があり得る)、例えば、尋常性イボ、扁平イボ、イボ状表皮成長異常症、口腔乳頭腫症、開花状乳頭腫症(papillomatosis florida)、ならびにUV光によって引き起こされ得る異常成長物、特に、基底細胞上皮種(epithelioma baso-cellulare)および有棘細胞上皮種(epithelioma spinocellulare)の予防および/または防止のための使用である。
【0100】
本発明はまた、前記使用に適する組成物の調製のための「化合物」の使用にも関する。
【0101】
組成物は、ここでは、好ましくは非治療的であり、より好ましくは局所に使用され得る組成物、例えば化粧品もしくは皮膚科学的配合物、あるいは食品または食品サプリメントのいずれかである。この場合、組成物は、化粧品に、もしくは皮膚科学的に、または食品に適切である担体、および所望の特性プロフィールに応じて、任意選択で適切なさらなる成分を含む。
【0102】
組成物における「化合物」の本発明による使用は、とりわけUV光によって、または反応性化合物によって引き起こされる過程によって、直接または間接的に引き起こされる損傷、例えば、皮膚加齢、皮膚の湿分の低下、皮膚の弾性の低下、皺もしくは小皺または色素欠陥もしくは老人班の生成に対する保護を提供する。
【0103】
本発明はさらに、例えば、座蒼もしくは脂ぎった肌、角化症、光感受性、炎症性、紅斑性、アレルギー性もしくは自己免疫反応性の反応のような、皮膚の状態の望ましくない変化の防止のための、前記組成物の使用に関する。
【0104】
しかし、「化合物」および本発明による組成物は、好ましくは、また、敏感で炎症を起こした皮膚を鎮静させるためにも、コラーゲン、ヒアルロン酸およびエラスチン合成の予防的調節、DNA合成の刺激(特に、欠陥のあるまたは活性の低い皮膚の状態の場合に)、マトリックス分解酵素、特にMMPの転写および翻訳の調節、細胞再生および皮膚の再生の増加、皮膚自体の、DNA、脂質および/またはタンパク質に対する保護および修復メカニズムの向上のためにも役立つ。
【0105】
「化合物」は、通常、本発明により、0.01から20重量%の量で、好ましくは0.1重量%から10重量%の量で、特に好ましくは1から8重量%の量で用いられる。当業者は、組成物の意図する作用に応じて相応に、その量を選択することに全く困難を有さない。
【0106】
こうして、酸化ストレスに対するまたはフリーラジカルの影響に対する保護作用は、組成物が1種または複数の追加の酸化防止剤を含む場合にさらに向上され得るが、ここで、当業者は、適度に即効性のまたは遅行性の作用を有する酸化防止剤を選択することに全く困難を有さない。
【0107】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種のさらなるスキンケア成分は、1種または複数の酸化防止剤および/またはビタミンである。
【0108】
酸化防止剤として用いることができる専門文献から知られる多くの実証された物質があり、例えば、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびこれらの誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)およびこれらの誘導体、ペプチド、例えば、D,L−カルノシン、D−カルノシン、L−カルノシンおよびこれらの誘導体(例えばアンセリン)、カルチノイド、カロテン(例えば、α−カロテン、β−カロテン、リコペン)およびこれらの誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えばジヒドロピポ酸)、アウロチオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびにこれらのグリコシル、N−アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、ラウリル、パルミトイル、オレイル、γ−リノレイル、コレステリルおよびグリセリルエステル)ならびにこれらの塩、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび塩)、および非常に低い許容用量(例えば、pmolからμmol/kg)でのスルホキシイミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタ−、ヘキサ−およびヘプタチオニンスルホキシイミン)、さらに、(金属)キレート剤(例えばα−ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α−ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTAおよびこれらの誘導体、不飽和脂肪酸およびこれらの誘導体、ビタミンCおよび誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、酢酸アスコルビル)、トコフェロールおよび誘導体(例えばビタミンE酢酸エステル)、およびベンゾイン樹脂のコニフェリル安息香酸エステル、ルチン酸およびその誘導体、α−グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアイアレト酸、トリヒドロキシブチロフェノン、ケルセチン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO4)、セレンおよびその誘導体(例えばセレノメチオニン)、スチルベンおよびそれらの誘導体(例えば、酸化スチルベン、酸化トランス−スチルベン)が挙げられる。
【0109】
適切な酸化防止剤はさらに、WO2006/111233およびWO2006/111234に記載されている。
【0110】
適切な酸化防止剤はまた、一般式Aおよび/またはBの化合物であり、
【0111】
【化2】

【0112】
[式中、
1は、−C(O)CH3、−CO23、−C(O)NH2、および−C(O)N(R42からなる群から選択され、
Xは、OまたはNHであり、
2は、1から30個のC原子を有する線状または分岐状アルキルであり、
3は、1から20個のC原子を有する線状または分岐状アルキルであり、
4は、H、および1から8個のC原子を有する線状または分岐状アルキルからなる群から、それぞれの場合に独立に選択され、
5は、1から8個のC原子を有する線状または分岐状アルキル、および1から8個のC原子を有する線状または分岐状アルコキシからなる群から選択され、
6は、1から8個のC原子を有する線状または分岐状アルキルからなる群から選択される]
好ましくは、2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンジリデン)−マロン酸、および/または2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンジル)−マロン酸の誘導体から選択され、特に好ましくは、2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンジリデン)−マロン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル(z.B.Oxynex(登録商標)ST Liquid)および/または2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンジル)−マロン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル(z.B.RonaCare(登録商標)AP)から選択される。
【0113】
酸化防止剤の混合物は同様に、本発明による化粧品組成物に用いられるのに適している。知られている市販の混合物は、例えば活性成分として、レシチン、L−(+)−パルミチン酸アスコルビルおよびクエン酸(例えばOxynex(登録商標)AP)、天然トコフェロール、L−(+)−パルミチン酸アスコルビル、L−(+)−アスコルビン酸およびクエン酸(例えばOxynex(登録商標)K LIQUID)、天然原料からのトコフェロール抽出物、L−(+)−パルミチン酸アスコルビル、L−(+)−アスコルビン酸およびクエン酸(例えばOxynex(登録商標)L LIQUID)、DL−α−トコフェロール、L−(+)−パルミチン酸アスコルビル、クエン酸およびレシチン(例えばOxynex(登録商標)LM)、またはブチルヒドロキシトルエン(BHT)、L−(+)−パルミチン酸アスコルビルおよびクエン酸(例えばOxynex(登録商標)2004)を含む混合物である。通常、このタイプの酸化防止剤は、このタイプの組成物として、「化合物」と共に、1000:1から1:1000の範囲の比率で、好ましくは100:1から1:100の量で用いられる。
【0114】
本発明による組成物は、さらなる成分としてビタミンを含み得る。本発明による化粧品組成物は、好ましくは、ビタミンB、チアミン塩化物塩酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ニコチンアミド、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、ビタミンE、DL−α−トコフェロール、酢酸トコフェロールE、コハク酸水素トコフェロール、ビタミンK1、エスクリン(ビタミンP活性成分)、チアミン(ビタミンB1)、ニコチン酸(ナイアシン)、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン(ビタミンB6)、パントテン酸、ビオチン、葉酸およびコバラミン(ビタミンB12)から選択されるビタミンおよびビタミン誘導体を、特に好ましくは、ビタミンCおよびその誘導体、DL−α−トコフェロール、酢酸トコフェロールE、ニコチン酸、パントテン酸、およびビオチンを含む。ビタミンは、通常、ここでは、「化合物」と共に、1000:1から1:1000の範囲の比率で、好ましくは100:1から1:100の量で用いられる。
【0115】
酸化防止作用を有するフェノールの中で、ポリフェノール(これらのあるものは天然に産する)が、医薬、化粧品または栄養補給の分野における適用に特に興味深い。例えば、フラボノイドまたはバイオフラボノイドは、主として植物染料として知られているが、しばしば酸化防止の可能性を有する。K,Lemanska,H.Szymusiak,B.Tyrakowska,R.Zielinski,I.M.C.M.Rietjens;Current Topics in Biophysics 2000,24(2),101−108は、モノ−およびジヒドロキシフラボンの置換パターンの影響に関係する。この文献で、ケト官能基に隣接するOH基、あるいは、3’4’−または6,7−または7,8−位にOH基を含むジヒドロキシフラボンは、酸化防止性を有するが、他のモノ−およびジヒドロキシフラボンは、いくつかの場合に酸化防止性を有さないことが確認されている。
【0116】
ケルセチン(シアニダノール(cyanidanol)、シアニデノロン(cyanidenolon)1522、メレチン、ソホレチン、エリシン(ericin)、3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)は、しばしば、特に効果的な酸化防止剤として挙げられる(例えば、C.A.Rice−Evans,N.J.Miller,G.Paganga,Trends in Plant Science 1997,2(4),152−159)。K.Lemanska,H.Szymusiak,B.Tyrakowska,R.Zielinski,A.E.M.F.Soffers,I.M.C.M.Rietjens;Free Radical Biology&Medicine 2001,31(7),869−881では、ヒドロキシフラボンの酸化防止作用のpH依存性が調べられている。ケルセチンは、調べられた構造の中で、全てのpH範囲にわたって最も高い活性を示す。
【0117】
適切な酸化防止剤は、さらに、先願のドイツ特許出願DE10244282.7に記載されている、式IIの化合物である。
【0118】
【化3】

【0119】
式中、R1からR10は、同じであっても異なっていてもよく、
− H
− OR11
− 直鎖または分岐状C1−からC20−アルキル基、
− 直鎖または分岐状C3−からC20−アルケニル基、
− 直鎖または分岐状C1−からC20−ヒドロキシアルキル基(ここで、ヒドロキシル基は鎖の第1級または第2級炭素原子に結合していてよく、さらに、アルキル鎖にはまた、酸素が介在していてもよい)、ならびに/あるいは
− C3−からC10−シクロアルキル基および/またはC3−からC12−シクロアルケニル基(ここで、複数の環が、また、それぞれ、−(CH2n−基(n=1から3)によって架橋されていてもよい)、
から選択され、
−ここで、全てのOR11は、互いに独立に、
− OH
− 直鎖または分岐状C1−からC20−アルコキシ基、
− 直鎖または分岐状C3−からC20−アルケニルオキシ基、
− 直鎖または分岐状C1−からC20−ヒドロキシアルコキシ基(ここで、(1つまたは複数の)ヒドロキシル基は、鎖の第1級または第2級炭素原子に結合していてよく、さらに、アルキル鎖にはまた、酸素が介在していてもよい)、ならびに/あるいは
− C3−からC10−シクロアルコキシ基および/またはC3−からC12−シクロアルケニルオキシ基(ここで、複数の環が、また、それぞれ、−(CH2n−基(n=1から3)によって架橋されていてもよい)、ならびに/あるいは
− モノ−および/またはオリゴグリコシル基、
であるが、
但し、R1からR7の少なくとも4つの基はOHであること、および、分子は少なくとも2つの、隣接する−OH基対を含むことが条件である、
−あるいは、R2、R5およびR6はOHであり、基R1、R3、R4およびR710はHである。
【0120】
前記利点に加えて、少なくとも1種の酸化防止剤を含む本発明による組成物の利点は、ここでは、特に酸化防止作用および良好な皮膚許容性である。さらに、本明細書に記載の化合物は、好ましくは無色である、または薄い色を有するにすぎないので、結果的に、組成物にわずかな変色を生じるまたは全く変色を生じない。
【0121】
1からR4の基の少なくとも2つの隣接する基がOHであり、またR5からR7の基の少なくとも2つの隣接する基がOHであることに特徴がある式IIの少なくとも1種の化合物を含む組成物、好ましくは非治療的組成物は、特に利点がある。特に好ましい組成物は、R1からR4の基の少なくとも3つの隣接する基がOHであり、好ましくは、R1からR3の基がOHであることに特徴がある式IIの少なくとも1種の化合物を含む。
【0122】
式IIの化合物をカプセル化された状態で、例えば、セルロースもしくはキチンカプセルとして、ゼラチンもしくはワックスのマトリックス内に、またはシクロデキストリンで包接して供用することにもまた利点がある。
【0123】
特に、本発明による好ましい組成物はまた、分化および細胞増殖に影響を及ぼす、角質化の欠陥に伴う皮膚疾患の治療に、特に、尋常性座蒼、面皰性座蒼、多形性座蒼、酒さ性座蒼、結節性座蒼、凝塊性座蒼、加齢が引き起こす座蒼、副作用として生じる座蒼、例えば日光性座蒼、薬剤が引き起こす座蒼または職業上の座瘡の治療に、角質化の他の欠陥、特に、魚鱗癬、魚鱗癬状の状態、ダリエー病、掌蹠角化症、白板症、白板症状の状態、皮膚および粘膜(口腔)(苔癬)のヘルペスの治療に、角質化の欠陥に付随し、また炎症性および/または免疫アレルギー性要素を有する他の皮膚疾患、特に、皮膚、粘膜および手と足の爪に影響を及ぼす乾癬の全ての状態、乾癬リウマチおよび皮膚アトピー、例えば、湿疹、または呼吸器官アトピー、または歯肉肥大の治療に、(化合物が、角質化の欠陥に関連しない、いくつかの炎症に用いられることも、さらに可能である)真皮または表皮の良性または悪性の全ての異常成長物(これはウイルスに原因があり得る)、例えば、尋常性イボ、扁平イボ、イボ状表皮成長異常症、口腔乳頭腫症、開花状乳頭腫症、ならびにUV光によって引き起こされ得る異常成長物、特に、基底細胞上皮種および有棘細胞上皮種の治療に、他の皮膚疾患、例えば、水疱性皮膚炎、およびコラーゲンに影響を及ぼす疾患の治療に、特定の目の疾患、特に、角膜の疾患の治療に、加齢に伴う、光により誘発される皮膚加齢を克服する、または戦うのに、色素沈着および日光角化症の抑制に、また正常な加齢または光により誘発される加齢に伴う全ての疾患の治療に、局部または全身に付けられたコルチコステロイドによって引き起こされる表皮および/または真皮の委縮による外傷/傷跡、ならびに他の全てのタイプの皮膚委縮の防止または治癒に、外傷の治癒における欠陥の防止または治療に、妊娠によって引き起こされる皮膚線条の防止または除去に、あるいは外傷の治癒の促進に、あぶら(tallow)産生における欠陥、例えば座蒼における過脂漏症または単なる脂漏症と戦うのに、癌に似た状態または前癌状態、特に前骨髄球性白血病と戦うまたは防止するのに、炎症性疾患、例えば関節炎の治療に、ウイルスにより誘発される皮膚または身体の他の部分の全ての疾患の治療に、脱毛症の防止または治療に、免疫学的要素による皮膚疾患または身体の他の部分の疾患の治療に、心臓血管の疾患、例えば、動脈硬化または高血圧、およびインスリン非依存型糖尿病の治療に、また、UV光によって引き起こされる皮膚の問題の治療に、適している。
【0124】
本発明による特に好ましい組成物は、また、「化合物」以外にUVフィルターも含む。
【0125】
原則として、全てのUVフィルターが、「化合物」と組み合わせるのに適している。特に好ましいのは、それらの生理学的許容性がすでに実証されたUVフィルターである。UVAおよびUVBフィルターのいずれでも、専門文献から知られる多くの実証された物質、例えば:
ベンジリデンカンファー誘導体、例えば、3−(4'−メチルベンジリデン)−dl−カンファー(例えばEusolex(登録商標)6300)、3−ベンジリデンカンファー(例えばMexoryl(登録商標)SD)、N−{(2および4)−[(2−オキソボルン−3−イリデン)メチル]ベンジル}アクリルアミドのポリマー(例えばMexoryl(登録商標)SW)、メチル硫酸N,N,N−トリメチル−4−(2−オキソボルン−3−イリデンメチル)アニリニウム(例えばMexoryl(登録商標)SK)、または(2−オキソボルン−3−イリデン)トルエン−4−スルホン酸(例えばMexoryl(登録商標)SL)、
ベンゾイル−またはジベンゾイルメタン、例えば、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン(例えばEusolex(登録商標)9020)、または4−イソプロピルジベンゾイルメタン(例えばEusolex(登録商標)8020)、
ベンゾフェノン、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(例えばEusolex(登録商標)4360)、または2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸およびそのナトリウム塩(例えばUvinul(登録商標)MS−40)、
メトキシケイ皮酸エステル、例えば、メトキシケイ皮酸オクチル(例えばEusolex(登録商標)2292)、または、例えば異性体混合物としての、4−メトキシケイ皮酸イソペンチル(例えばNeo Heliopan(登録商標)E 1000)、
サリチル酸誘導体、例えば、サリチル酸2−エチルへキシル(例えばEusolex(登録商標)OS)、サリチル酸4−イソプロピルベンジル(例えばMegasol(登録商標))、またはサリチル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(例えばEusolex(登録商標)HMS)、
4−アミノ安息香酸および誘導体、例えば、4−アミノ安息香酸、4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル(例えばEusolex(登録商標)6007)、またはエトキシル化された4−アミノ安息香酸エチル(例えばUvinul(登録商標)P25)、
フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、例えば、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、ならびに、そのカリウム、ナトリウムおよびトリエタノールアミン塩(例えばEusolex(登録商標)232)、2,2−(1,4−フェニレン)ビスベンゾイミダゾール−4,6−ジスルホン酸およびその塩(例えばNeoheliopan(登録商標)AP)、または2,2−(1,4−フェニレン)ビスベンゾイミダゾール−6−スルホン酸;
ならびに、さらなる物質、例えば、
− 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル(例えば、Eusolex(登録商標)OCR)、
− 3,3'−(1,4−フェニレンジメチレン)ビス(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]へプト−1−イルメタンスルホン酸およびその塩(例えばMexoryl(登録商標)SX)、
− 2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2'−エチルヘキシル−1'−オキシ)−1,3,5−トリアジン(例えばUvinul(登録商標)T 150)、および
− 2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシル(例えばUvinul(登録商標)UVA Plus、BASF)、
が存在する。
【0126】
リストに挙げられた化合物は、単に例として見なされるべきである。言うまでもなく、他のUVフィルターを用いることもまた可能である。
【0127】
これらの有機UVフィルターは、通常、化粧品配合物に、0.5から10重量パーセント、好ましくは、1〜8%の量で組み入れられる。
【0128】
適切なさらなる有機UVフィルターは、例えば、
− 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(2−メチル−3−(1,3,3,3−テトラメチル−1−(トリメチルシリルオキシ)ジシロキサニル)プロピル)フェノール(例えば、Silatrizole(登録商標))、
− 4,4'−[(6−[4−((1,1−ジメチルエチル)アミノカルボニル)フェニルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ジイミノ]ビス(安息香酸)2−エチルヘキシル(例えば、Uvasorb(登録商標)HEB)、
− α−(トリメチルシリル)−ω−[トリメチルシリル)オキシ]ポリ[[オキシ(ジメチル[および約6%のメチル[2−[p−[2,2−ビス(エトキシカルボニル]ビニル]フェノキシ]−1−メチレンエチル]および約1.5%のメチル[3−[p−[2,2−ビス(エトキシカルボニル)ビニル]フェノキシ]−プロペニル]および0.1から0.4%の(メチルハイドロジェン]シリレン]](n≒60)(CAS No.207 574−74−1)、
− 2,2'−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール)(CAS No.103 597−45−1)、
− 2,2'−(1,4−フェニレン)ビス(1H−ベンゾイミダゾール−4,6−ジスルホン酸、一ナトリウム塩)(CAS No.180 898−37−7)、
− 2,4−ビス{[4−(2−エチルへキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(CAS No.103 597−45−,187 393−00−6)、および
− 4,4'−[(6−[4−((1,1−ジメチルエチル)アミノカルボニル)フェニルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ジイミノ]ビス(安息香酸)2−エチルヘキシル(例えばUvasorb(登録商標)HEB)、
である。
【0129】
適切なさらなるUVフィルターは、また、先願のドイツ特許出願DE10232595.2に対応するメトキシフラボンである。
【0130】
有機UVフィルターは、通常、0.5から20重量パーセント、好ましくは1〜15%の量で、化粧品配合に組み入れられる。
【0131】
想定される無機UVフィルターは、二酸化チタン、例えば被覆された二酸化チタン(例えば、Eusolex(登録商標)T−2000、Eusolex(登録商標)T−AQUA)、酸化亜鉛(例えば、Sachtotec(登録商標))、酸化鉄、さらに酸化セリウムからなる群から選択されるものである。これらの無機UVフィルターは、通常、0.5から20重量パーセント、好ましくは2〜10%の量で、化粧品組成物に組み入れられる。
【0132】
UVフィルター特性を有する好ましい化合物は、3−(4'−メチルベンジリデン)−dl−カンファー、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸3,3,5−トリメチルシクロへキシル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、ならびにそのカリウム、ナトリウムおよびトリエタノールアミン塩である。
【0133】
「化合物」とさらなるUVフィルターとの組合せを通じて、UV光の有害な影響に対する保護作用は最適化できる。
【0134】
最適化された組成物は、例えば、有機UVフィルターである、4'−メトキシ−6−ヒドロキシフラボンと、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、および3−(4'−メチルベンジリデン)−dl−カンファーとの組合せを含み得る。この組合せは広帯域の保護を生じ、これは、無機UVフィルター、例えば二酸化チタン微粒子の添加によって補うことができる。
【0135】
前記UVフィルターの全てはまた、カプセル化された状態で用いることができる。特に、有機UVフィルターをカプセル化された状態で用いると有利である。詳細には以下の利点が生じる:
−カプセル壁の親水性が、UVフィルターの溶解性とは関係なく設定され得る。こうして、例えば、疎水性UVフィルターを、純粋に水性の組成物に組み入れることもまた可能である。さらに、疎水性UVフィルターを含む組成物を付けた際の油性の感じ(これは、心地よくないと見なされることが多い)が、抑えられる。
【0136】
−特定のUVフィルター、特に、ジベンゾイルメタン誘導体は、化粧品組成物中では、低い光安定性を示すにすぎない。これらのフィルター、または、これらのフィルターの光安定性を損ねる化合物、例えばケイ皮酸誘導体のカプセル化は、組成物全体の光安定性を増すことができる。
【0137】
−ヒトの皮膚に直接付けた際の、有機UVフィルターによる皮膚浸透性、およびこれに関連する刺激の可能性が、文献で繰り返し議論されている。ここで提案されている、対応する物質のカプセル化は、この作用を抑制する。
【0138】
−一般に、個々のUVフィルターまたは他の成分のカプセル化は、個々の組成成分が互いに相互作用することによって生じる組成上の問題、例えば、結晶化過程、沈殿および凝集の生成を、相互作用が抑えられるので、避けることを可能にする。
【0139】
それゆえに、本発明では、1種または複数の前記UVフィルターがカプセル化された状態であることが好ましい。ここで、カプセルが小さくて肉眼で見ることができないと有利である。前記効果を実現するためには、さらに、カプセルが十分に安定であり、カプセル化された活性成分(UVフィルター)が、外部に、わずかな程度しか、または全く放出されないことが必要とされる。
【0140】
適切なカプセルは、無機または有機ポリマーの壁を有し得る。例えば、US6,242,099B1は、キチン、キチン誘導体またはポリヒドロキシル化ポリアミンの壁を有する適切なカプセルの製造を記載する。本発明により特に好ましく用いることができるカプセルは、出願WO00/09652、WO00/72806、およびWO00/71084に記載の、ゾル−ゲル法によって得ることができる壁を有する。ここで、壁がシリカゲル(シリカ;明確でない酸化ケイ素水酸化物(silicon oxide hydroxide))で作られているカプセルがやはり好ましい。対応するカプセルの製造は、例えば引用された特許出願により、当業者に知られており、それらの内容はまた、明白に本出願の主題に属する。
【0141】
好ましくは、カプセルは、カプセル化されたUVフィルターが、組成物中に、上で示された量で存在することを保証する量で、本発明による組成物中に存在する。
【0142】
皮膚を保護する活性成分、またはスキンケア活性成分は、原則として、当業者に知られているどのような活性成分であってもよい。
【0143】
本発明の実施形態において、特に好ましい活性成分は、ピリミジンカルボン酸および/またはアリールオキシムである。
【0144】
ピリミジンカルボン酸は、好塩性微生物に見出され、これらの生物の浸透圧調節に役割を果たす(E.A.Galinski et al.,Eur.J.Biochem.,149(1985)pages135−139)。ピリミジンカルボン酸の中で、ここで、エクトイン((S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)、およびヒドロキシエクトイン((S,S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)、ならびにこれらの誘導体が特に挙げられるべきである。これらの化合物は、水溶液および有機溶媒中の酵素および他の生体分子を安定化する。さらに、それらは、塩、極端なpH値、界面活性剤、尿素、塩化グアニジニウムおよび他の化合物のような変性条件に対して、特に、酵素を安定化する。
【0145】
エクトインおよびエクトイン誘導体(例えばヒドロキシエクトイン)は、利点をもって医薬に用いることができる。特に、ヒドロキシエクトインは、皮膚疾患の治療のための医薬の調製に用いることができる。ヒドロキシエクトインおよび他のエクトイン誘導体の他の応用分野は、典型的には、例えばトレハロースが添加剤として用いられる分野である。こうして、エクトイン誘導体、例えばヒドロキシエクトインは、乾燥した酵母菌および細菌細胞における保護剤として用いることができる。薬学的に活性な非グリコシル化ペプチドおよびタンパク質、例えばt−PAのような医薬製品も、また、エクトインまたはその誘導体により保護できる。
【0146】
化粧品への応用の中では、エクトインおよびエクトイン誘導体の、加齢した皮膚、乾燥肌または炎症を起こした皮膚のケアのための使用が、特に挙げられるべきである。こうして、欧州特許出願EP−A−O671161は、特に、エクトインおよびヒドロキシエクトインが、化粧品組成物、例えば、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング製品、リップスティック、ルージュ、メイクアップ、ケアクリームおよびサンスクリーン組成物に用いられることを記載する。
【0147】
ここでは、次の式IIIのピリミジンカルボン酸の使用が好ましい。
【0148】
【化4】

【0149】
式中、
1は、基HまたはC1〜8−アルキルであり、
2は、基HまたはC1〜4−アルキルであり、また、
3、R4、R5およびR6は、それぞれ、互いに独立に、H、OH、NH2、およびC14−アルキルからなる群からの基である。
【0150】
2が、メチルもしくはエチル基であり、R1またはR5およびR6がHであるピリミジンカルボン酸の使用が好ましい。
【0151】
ピリミジンカルボン酸であるエクトイン((S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)、およびヒドロキシエクトイン((S,S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)の使用が特に好ましい。本発明による組成物は、好ましくは、このタイプのピリミジンカルボン酸を15重量%までの量で含む。ここで、ピリミジンカルボン酸は、「化合物」に対して、好ましくは100:1から1:100の比で用いられ、1:10から10:1の範囲の比が特に好ましい。
【0152】
アリールオキシムの中では、2−ヒドロキシ−5−メチルラウロフェノンオキシム(これは、また、HMLO、LPOまたはF5としても知られている)の使用が好ましい。それを化粧品組成物に用いることが適切であることは、例えばDE−A−4116123に開示されている。2−ヒドロキシ−5−メチルラウロフェノンオキシムを含む組成物は、それゆえに、炎症を伴う皮膚疾患の治療に適している。このタイプの組成物は、例えば、乾癬、様々な状態の湿疹、刺激性および中毒性皮膚炎、UV皮膚炎、ならびに皮膚および外皮付属物のさらなるアレルギー性および/または炎症性疾患の治療のために使用できることが知られている。「化合物」に加えて、さらにアリールオキシム、好ましくは2−ヒドロキシ−5−メチルラウロフェノンオキシムを含む、本発明による組成物は、驚くべき抗炎症適合性を示す。ここで、組成物は、好ましくは、0.01から10重量%のアリールオキシムを含み、組成物が0.05から5重量%のアリールオキシムを含むことが特に好ましい。
【0153】
本発明の組成物に使用できる化合物または成分の全ては、知られている、もしくは市販されている、または既知の方法によって合成できるかのいずれかである。「化合物」の調製は、US6,596,758B1に例16として記載されている。
【0154】
「化合物」は、化粧品組成物または皮膚科学的組成物に通常のやり方で組み入れることができる。適切な組成物は、例えば、クリーム、ローションもしくはゲル状で、または皮膚にスプレーできる溶液として、外用のためのものである。内服用に適するのは、カプセル、被覆錠剤、パウダー、タブレット溶液(tablet solution)または溶液のような投与形態である。
【0155】
挙げることができる本発明による組成物の使用形態は、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、PITエマルジョン、ペースト、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング調合物、オイル、エアロゾルおよびスプレーである。他の使用形態の例は、スティック、シャンプーおよびシャワー組成物である。望まれる如何なる通常の担体、助剤も、また、望まれる場合、さらなる活性成分も組成物に加えることができる。
【0156】
好ましい助剤は、保存剤、酸化防止剤、安定剤、可溶化剤、ビタミン、着色剤および香改良剤からなる群に由来する。
【0157】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、通常の担体、例えば、動物および植物の脂肪、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの物質の混合物を含み得る。
【0158】
パウダーおよびスプレーは、通常の担体、例えば、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミドパウダー、またはこれらの物質の混合物を含み得る。スプレーは、さらに、通常の圧縮不活性ガス、例えば、クロロフルオロカーボン、プロパン/ブタン、またはジメチルエーテルを含み得る。
【0159】
溶液およびエマルジョンは、通常の担体、例えば、溶媒、可溶化剤および乳化剤を、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコール、オイル、特に、綿実油、ピーナッツオイル、小麦胚芽油、オリーブオイル、ひまし油、およびゴマ油、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ならびにソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物を含み得る。
【0160】
懸濁液は、通常の担体、例えば液体希釈剤、例えば、水、エタノールもしくはプロピレングリコール、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル、微結晶セルロース、ヒドロキシアルミニウムオキシド(aluminium metahydroxide)、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物を含み得る。
【0161】
石鹸は、通常の担体、例えば、脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸モノエステルの塩、脂肪酸−タンパク質の加水分解物、イセチオネート、ラノリン、脂肪アルコール、植物オイル、植物抽出物、グリセロール、糖、またはこれらの物質の混合物を含み得る。
【0162】
界面活性剤含有クレンジング製品は、通常の担体、例えば、脂肪アルコール硫酸エステル塩、脂肪アルコールエーテル硫酸塩、スルホコハク酸モノエステル、脂肪酸−タンパク質加水分解物、イソチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテル硫酸塩、アルキルアミドベタイン、脂肪アルコール、脂肪酸グルセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物オイルおよび合成オイル、ラノリン誘導体、エトキシル化グリセロール脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物を含み得る。
【0163】
フェイスおよびボディオイルは、通常の担体、例えば、合成オイル、例えば脂肪酸エステル、脂肪アルコール、シリコーンオイル、天然オイル、例えば植物オイルおよび植物の油状抽出物、パラフィンオイル、またはラノリンオイル、またはこれらの物質の混合物を含み得る。
【0164】
さらなる典型的な化粧品の使用形態は、また、リップスティック、リップケアスティック、マスカラ、アイライナー、アイシャドウ、ルージュ、パウダーメイクアップ、エマルジョンメイクアップ、およびワックスメイクアップ、ならびにサンスクリーン、日焼け前(pre-sun)および日焼け後(after-sun)調合物である。
【0165】
本発明での好ましい組成物の形態には、特に、エマルジョンが含まれる。
【0166】
本発明によるエマルジョンは利点があり、例えば、このタイプの組成物に通常用いられるように、前記脂肪、オイル、ワックスおよび他の脂肪物質、さらには、水および乳化剤を含む。
【0167】
脂肪相は、有利には、以下の物質群から選択され得る:
−ミネラルオイル、ミネラルワックス;
−オイル、例えばカプリン酸またはカプリル酸のトリグリセリド、さらには天然オイル、例えばひまし油;
−脂肪、ワックスおよび他の天然および合成脂肪物質、好ましくは、脂肪酸と炭素数の少ないアルコールとの(例えば、イソプロパノール、プロピレングリコールもしくはグリセロールとの)エステル、または、脂肪アルコールと炭素数の少ないアルカン酸(alkanoic acid)との、または脂肪酸とのエステル;
−シリコーンオイル、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンおよびこれらの混合形。
【0168】
本発明の目的のために、エマルジョン、油性ゲル(oleo-gel)または水性分散体もしくは脂肪分散体のオイル相は、3から30個の炭素原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルカンカルボン酸と、3から30個の炭素原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルコールとのエステルからなる群から、あるいは、芳香族カルボン酸と、3から30個の炭素原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルコールとのエステルからなる群から、有利に選択される。この場合、このタイプのエステルオイルは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n−ブチル、ラウリン酸n−ヘキシル、オレイン酸n−デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシル、ならびに、合成、半合成および天然のこのタイプのエステルの混合物、例えば、ホホバ油からなる群から、有利に選択され得る。
【0169】
オイル相は、分岐状および非分岐状炭化水素およびワックス、シリコーンオイル、ジアルキルエーテルからなる群から、あるいは、飽和および不飽和、分岐状および非分岐状アルコール、ならびに脂肪酸トリグリセリド、特に、8から24個、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルカンカルボン酸のトリグリセリドエステルからなる群から、さらに有利に選択され得る。脂肪酸トリグリセリドは、例えば、合成、半合成および天然オイル、例えば、オリーブオイル、ヒマワリ油、大豆油、ピーナッツオイル、ナタネ油、アーモンドオイル、ヤシ油、ココナッツオイル、ヤシ核油などからなる群から、有利に選択され得る。
【0170】
このタイプのオイルおよびワックス成分の望まれる如何なる混合物も、また、本発明の目的のために有利に用いることができる。ワックス、例えばパルミチン酸セチルを、オイル相の唯一の脂質成分として用いることにもまた利点があり得る。
【0171】
オイル相は、イソステアリン酸2−エチルヘキシル、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、イソエイコサン、ヤシ油脂肪酸2−エチルヘキシル(2-ethylhexyl cocoate)、安息香酸C1215−アルキル、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、およびジカプリルエーテルからなる群から有利に選択される。
【0172】
特に利点があるのは、安息香酸C1215−アルキルおよびイソステアリン酸2−エチルヘキシルの混合物、安息香酸C1215−アルキルおよびイソノナン酸イソトリデシルの混合物、さらには、安息香酸C1215−アルキル、イソステアリン酸2−エチルヘキシルおよびイソノナン酸イソトリデシルの混合物である。
【0173】
炭化水素の中で、パラフィンオイル、スクワランおよびスクワレンが、本発明の目的のために、有利に使用され得る。
【0174】
さらに、オイル相は、また、有利には、環状もしくは線状シリコーンオイル含量も含み得る、または、全体がこのタイプのオイルからなり得るが、1種または複数のシリコーンオイル以外に、他のオイル相成分含量をさらに使用することが好ましい。
【0175】
本発明により使用されるシリコーンオイルは、有利には、シクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)である。しかし、本発明の目的のために、他のシリコーンオイル、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、またはポリ(メチルフェニルシロキサン)を用いることにもまた、利点がある。
【0176】
また、特に利点があるのは、シクロメチコンとイソノナン酸イソトリデシルの混合物、およびシクロメチコンとイソステアリン酸2−エチルヘキシルの混合物である。
【0177】
本発明による組成物の水性相は、炭素数の少ないアルコール、ジオールもしくはポリオール、およびそれらのエーテルを、好ましくは、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルもしくはモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチルもしくはモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、および類似の製品を、さらに、炭素数の少ないアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、1,2−プロパンジオール、もしくはグリセロールを、また、特に、1種または複数の増粘剤を、有利には任意選択で含み、増粘剤は、有利には、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、多糖およびそれらの誘導体、例えば、ヒアルロン酸、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から、特に有利には、ポリアクリレート(好ましくは、いわゆるカルボポール(Carbopol)、例えば、カルボポールのグレード980、981、1382、2984、または5984からなる群からのポリアクリレート)からなる群から、それぞれの場合に、個別にまたは組み合わせて、選択され得る。
【0178】
特に前記溶媒の混合物が用いられる。アルコール系溶媒の場合、水がさらなる成分であり得る。
【0179】
本発明によるエマルジョンは、利点があり、このタイプの配合に通常用いられるように、例えば、前記脂肪、オイル、ワックス、および他の脂肪物質、さらには水および乳化剤を含む。
【0180】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は親水性界面活性剤を含む。
【0181】
親水性界面活性剤は、アルキルグルコシド、アシルラクチレート(acyl lactylate)、ベタインおよびココナッツアンホ酢酸塩(coconut amphoacetate)からなる群から好ましくは選択される。
【0182】
アルキルグルコシドは、次の構造式によって区別されるアルキルグルコシドからなる群から、それら自体、有利に選択される。
【0183】
【化5】

【0184】
式中、
Rは、4から24個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状アルキル基であり、
【0185】
【化6】

【0186】
は、2までの平均グルコシル化度を示す。
【0187】
【化7】

【0188】
の値は、本発明により用いられるアルキルグルコシドのグルコシル化度を示し、次の通り定義される。
【0189】
【数1】

【0190】
式中、p1、p2、p3…piは、1、2、3、…、i倍のグルコシル化度の生成物の比率を重量パーセントで表す。
【0191】
本発明で利点がある製品は、1〜2、特に有利には1.1から1.5、非常に特別に有利には1.2〜1.4、特に1.3のグルコシル化度を有するものである。
【0192】
DPの値は、アルキルグルコシドが、通常それらの調製の結果として、モノ−およびオリゴグルコシドの混合物の状態であるという事実を考慮している。典型的には、40〜70重量%の程度の比較的高いモノグルコシド含量が、本発明では有利である。
【0193】
本発明の目的にとって特に有利に用いられるアルキルグルコシドは、オクチルグルコピラノシド、ノニルグルコピラノシド、デシルグルコピラノシド、ウンデシルグルコピラノシド、ドデシルグルコピラノシド、テトラデシルグルコピラノシド、およびヘキサデシルグルコピラノシドからなる群から選択される。
【0194】
同様に、本発明により用いられる活性成分の有効含量によって特徴付けられる、天然もしくは合成原料および助剤または混合物、例えば、Plantaren(登録商標)1200(Henkel KGaA)、Oramix(登録商標)NS 10(Seppic)を用いることにも利点がある。
【0195】
アシルラクチレートは、それら自体、次の構造式によって特徴付けられる物質からなる群から有利に選択される。
【0196】
【化8】

【0197】
式中、
1は、1から30個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状アルキル基であり、また
+は、アルカリ金属イオンからなる群、ならびに、1つもしくは複数のアルキルおよび/または1つもしくは複数のヒドロキシアルキル基によって置換されたアンモニウムイオンからなる群から選択される、あるいは、当量の半分のアルカリ土類金属イオンに相当する。
【0198】
例えばイソステアリルラクチレートナトリウム(例えば、American Ingredients Companyによる製品Pathionic(登録商標)ISL)が有利である。
【0199】
ベタインは、次の構造式によって特徴付けられる物質からなる群から有利には選択される。
【0200】
【化9】

【0201】
式中、
2は、1から30個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状アルキル基である。
【0202】
2は、特に有利には、6から12個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状アルキル基である。
【0203】
例えば、カプラミドプロピルベタイン(例えば、Th.Goldschmidt AGによる製品Tego(登録商標)Betain 810)は利点を有する。
【0204】
本発明の目的にとって利点があるココナッツアンホ酢酸塩は、例えば、Miranol Chemical CorpからMiranol(登録商標)Ultra C32の名称で入手可能な、ココナッツアンホ酢酸ナトリウムである。
【0205】
本発明による組成物は、有利には、(1種または複数の)親水性界面活性剤が、それぞれの場合に、組成物の全重量に対して0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の濃度で存在することに特徴がある。
【0206】
用いられる場合、化粧品組成物および皮膚科学的組成物は、化粧品では通常のやり方で、皮膚および/または毛髪に十分な量で付けられる。
【0207】
本発明による化粧品組成物および皮膚科学的組成物は、様々な形態で存在し得る。こうして、それらは、例えば、溶液、水を含まない組成物、油中水(W/O)もしくは水中油(O/W)型のエマルジョンもしくはマイクロエマルジョン、例えば水中油中水(W/O/W)型の多重エマルジョン、ゲル、ソリッドスティック、軟膏、またはエアロゾルであり得る。エクトインを、例えばコラーゲンマトリックスおよび他の通常のカプセル化材料(例えばセルロースカプセルとして)内に、ゼラチン、ワックスのマトリックス内にカプセル化した形で、またはリポソーム状にカプセル化して、供用することにもまた利点がある。特に、DE−A4308282に記載のワックスマトリックスは、好ましいことが確かめられている。エマルジョンが好ましい。O/Wエマルジョンが特に好ましい。エマルジョン、W/OエマルジョンおよびO/Wエマルジョンは、通常の方法で得ることができる。
【0208】
使用できる乳化剤は、例えば知られているW/OおよびO/W乳化剤である。本発明による好ましいO/Wエマルジョンにさらなる通常の共乳化剤(co-emulsifier)を用いると有利である。
【0209】
本発明で利点のある共乳化剤は、例えば、主に11〜16のHLB値を有し、非常に特別に好ましくは14.5〜15.5のHLB値を有する物質からなる群からのO/W乳化剤(但し、O/W乳化剤は、飽和基RおよびR'を有するとする)である。O/W乳化剤が不飽和基Rおよび/またはR'を有する場合、あるいはイソアルキル誘導体の場合、このような乳化剤の好ましいHLB値は、より低いまたはより高いこともまたあり得る。
【0210】
エトキシル化されたステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルステアリルアルコール(セテアリルアルコール)からなる群からの脂肪アルコールエトキシル化物を選択することが有利である。特に好ましいのは、以下である:ポリエチレングリコール(13)ステアリルエーテル(ステアレス−13)、ポリエチレングリコール(14)ステアリルエーテル(ステアレス−14)、ポリエチレングリコール(15)ステアリルエーテル(ステアレス−15)、ポリエチレングリコール(16)ステアリルエーテル(ステアレス−16)、ポリエチレングリコール(17)ステアリルエーテル(ステアレス−17)、ポリエチレングリコール(18)ステアリルエーテル(ステアレス−18)、ポリエチレングリコール(19)ステアリルエーテル(ステアレス−19)、ポリエチレングリコール(20)ステアリルエーテル(ステアレス−20)、ポリエチレングリコール(12)イソステアリルエーテル(イソステアレス−12)、ポリエチレングリコール(13)イソステアリルエーテル(イソステアレス−13)、ポリエチレングリコール(14)イソステアリルエーテル(イソステアレス−14)、ポリエチレングリコール(15)イソステアリルエーテル(イソステアレス−15)、ポリエチレングリコール(16)イソステアリルエーテル(イソステアレス−16)、ポリエチレングリコール(17)イソステアリルエーテル(イソステアレス−17)、ポリエチレングリコール(18)イソステアリルエーテル(イソステアレス−18)、ポリエチレングリコール(19)イソステアリルエーテル(イソステアレス−19)、ポリエチレングリコール(20)イソステアリルエーテル(イソステアレス−20)、ポリエチレングリコール(13)セチルエーテル(セテス−13)、ポリエチレングリコール(14)セチルエーテル(セテス−14)、ポリエチレングリコール(15)セチルエーテル(セテス−15)、ポリエチレングリコール(16)セチルエーテル(セテス−16)、ポリエチレングリコール(17)セチルエーテル(セテス−17)、ポリエチレングリコール(18)セチルエーテル(セテス−18)、ポリエチレングリコール(19)セチルエーテル(セテス−19)、ポリエチレングリコール(20)セチルエーテル(セテス−20)、ポリエチレングリコール(13)イソセチルエーテル(イソセテス−13)、ポリエチレングリコール(14)イソセチルエーテル(イソセテス−14)、ポリエチレングリコール(15)イソセチルエーテル(イソセテス−15)、ポリエチレングリコール(16)イソセチルエーテル(イソセテス−16)、ポリエチレングリコール(17)イソセチルエーテル(イソセテス−17)、ポリエチレングリコール(18)イソセチルエーテル(イソセテス−18)、ポリエチレングリコール(19)イソセチルエーテル(イソセテス−19)、ポリエチレングリコール(20)イソセチルエーテル(イソセテス−20)、ポリエチレングリコール(12)オレイルエーテル(オレス−12)、ポリエチレングリコール(13)オレイルエーテル(オレス−13)、ポリエチレングリコール(14)オレイルエーテル(オレス−14)、ポリエチレングリコール(15)オレイルエーテル(オレス−15)、ポリエチレングリコール(12)ラウリルエーテル(ラウレス−12)、ポリエチレングリコール(12)イソラウリルエーテル(イソラウレス−12)、ポリエチレングリコール(13)セチルステアリルエーテル(セテアレス−13)、ポリエチレングリコール(14)セチルステアリルエーテル(セテアレス−14)、ポリエチレングリコール(15)セチルステアリルエーテル(セテアレス−15)、ポリエチレングリコール(16)セチルステアリルエーテル(セテアレス−16)、ポリエチレングリコール(17)セチルステアリルエーテル(セテアレス−17)、ポリエチレングリコール(18)セチルステアリルエーテル(セテアレス−18)、ポリエチレングリコール(19)セチルステアリルエーテル(セテアレス−19)、ポリエチレングリコール(20)セチルステアリルエーテル(セテアレス−20)。
【0211】
さらに、次の群から脂肪酸エトキシル化物を選択することが有利である:
ステアリン酸ポリエチレングリコール(20)、ステアリン酸ポリエチレングリコール(21)、ステアリン酸ポリエチレングリコール(22)、ステアリン酸ポリエチレングリコール(23)、ステアリン酸ポリエチレングリコール(24)、ステアリン酸ポリエチレングリコール(25)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(12)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(13)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(14)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(15)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(16)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(17)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(18)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(19)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(20)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(21)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(22)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(23)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(24)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(25)、オレイン酸ポリエチレングリコール(12)、オレイン酸ポリエチレングリコール(13)、オレイン酸ポリエチレングリコール(14)、オレイン酸ポリエチレングリコール(15)、オレイン酸ポリエチレングリコール(16)、オレイン酸ポリエチレングリコール(17)、オレイン酸ポリエチレングリコール(18)、オレイン酸ポリエチレングリコール(19)、オレイン酸ポリエチレングリコール(20)。
【0212】
利点をもって使用できるエトキシル化アルキルエーテルカルボン酸またはその塩は、ラウレス−11カルボン酸ナトリウムである。利点をもって使用できるアルキルエーテル硫酸塩は、ラウレス−14硫酸ナトリウムである。利点をもって使用できるエトキシル化コレステロール誘導体は、ポリエチレングリコール(30)コレステリルエーテルである。ポリエチレングリコール(25)大豆ステロールも、また、うまくいくことが確かめられている。利点をもって使用できるエトキシル化トリグリセリドは、月見草脂肪酸ポリエチレングリコール(60)グリセリドである。
【0213】
ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステルを、ラウリン酸ポリエチレングリコール(20)グリセリル、ラウリン酸ポリエチレングリコール(21)グリセリル、ラウリン酸ポリエチレングリコール(22)グリセリル、ラウリン酸ポリエチレングリコール(23)グリセリル、(カプリン酸/カプリル酸)ポリエチレングリコール(6)グリセリル、オレイン酸ポリエチレングリコール(20)グリセリル、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(20)グリセリル、(オレイン酸/ヤシ油脂肪酸)ポリエチレングリコール(18)グリセリルからなる群から選択することは、さらに有利である。
【0214】
同様に、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(20)ソルビタン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(20)ソルビタン、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール(20)ソルビタン、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール(20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(20)ソルビタンからなる群からソルビタンエステルを選択することも好ましい。
【0215】
任意選択のW/O乳化剤だが、それでもやはり本発明の目的にとって利点があり得るものは、次のものであり得る:
8から30個の炭素原子を有する脂肪アルコール、8から24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルカンカルボン酸のモノグリセロールエステル、8から24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルカンカルボン酸のジグリセロールエステル、8から24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルコールのモノグリセロールエーテル、8から24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルコールのジグリセロールエーテル、8から24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルカンカルボン酸のプロピレングリコールエステル、ならびに、8から24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分岐状および/または非分岐状アルカンカルボン酸のソルビタンエステル。
【0216】
特に利点のあるW/O乳化剤は、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノイソステアリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノカプリル酸ソルビタン、モノイソオレイン酸ソルビタン、ジステアリン酸スクロース、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、イソベヘニルアルコール、セラキル(selachyl)アルコール、キミルアルコール、ポリエチレングリコール(2)ステアリルエーテル(ステアレス−2)、モノラウリン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、およびモノカプリル酸グリセリルである。
【0217】
本発明による好ましい組成物は、加齢過程に対して、また酸化ストレスに対して、すなわち、例えば、日光、熱または他の作用によって生成される、フリーラジカルによる損傷に対して、ヒトの皮膚を保護するのに特に適している。これに関連して、それらは、この用途で通常用いられる様々な投与形態にある。例えば、それらは、特に、ローションもしくはエマルジョンの形態に、例えば、クリームもしくはミルク(O/W、W/O、O/W/O、W/O/W)の形態に、油性−アルコール性、油性−水性、もしくは水性−アルコール性のゲルまたは溶液の形態に、ソリッドスティックの形態にあり得る、あるいは、エアロゾルとして配合され得る。
【0218】
本発明の組成物は、このタイプの組成物に通常用いられる化粧品アジュバント、例えば、増粘剤、軟化剤、モイスチャライザー、界面活性剤、乳化剤、保存剤、消泡剤、芳香剤、ワックス、ラノリン、圧縮不活性ガス、組成物自体または皮膚を着色する染料および/または顔料、ならびに化粧品に通常用いられる他の成分を含み得る。
【0219】
用いられる分散剤または可溶化剤は、オイル、ワックスまたは他の脂肪物質、低級モノアルコールもしくは低級ポリオールまたはこれらの混合物であり得る。特に好ましいモノアルコールまたはポリオールには、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロールおよびソルビトールが含まれる。
【0220】
本発明の好ましい実施形態は、保護クリームまたはミルクの状態のエマルジョンであり、これは、「化合物」以外に、例えば、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル(特に脂肪酸のトリグリセリド)、ラノリン、天然および合成オイルまたはワックス、ならびに水の存在下において乳化剤を含む。
【0221】
好ましいさらなる実施形態は、天然もしくは合成オイルおよびワックス、ラノリン、脂肪酸エステル(特に脂肪酸のトリグリセリド)に基づく油性ローション、または、低級アルコール、例えばエタノールもしくはグリセロール、例えばプロピレングリコール、および/またはポリオール(例えばグリセロール)、およびオイル、ワックスおよび脂肪酸エステル(例えば脂肪酸のトリグリセリド)に基づく油性−アルコール性ローションである。
【0222】
本発明による組成物は、また、1種または複数の低級アルコールまたはポリオール、例えば、エタノール、プロピレングリコールもしくはグリセロール、および増粘剤、例えばケイ質土(siliceous earth)を含む、アルコール性ゲルの状態でもあり得る。油性−アルコール性のゲルは、また、天然もしくは合成オイルまたはワックスも含む。
【0223】
ソリッドスティックは、天然もしくは合成ワックスおよびオイル、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、ラノリンおよび他の脂肪物質からなる。
【0224】
組成物がエアロゾルとして配合される場合、通常の圧縮不活性ガス、例えばアルカン、フルオロアルカンおよびクロロフルオロアルカンが通常用いられる。
【0225】
本発明の化粧品組成物は、また、色合いの変化、色あせ、または機械的性質の損傷を防止するために、光化学的損傷に対して毛髪を保護するためにも用いられ得る。この場合、適切な配合物は、洗い流されるシャンプー、ローション、ゲルまたはエマルジョンの状態にあり、該組成物は、シャンプーの前もしくは後で、着色もしくは漂白の前もしくは後で、またはパーマの前もしくは後で、付けられる。整髪または毛髪のトリートメントのためのローションまたはゲルの状態の、ブラシをかけるまたはドライヤーで乾かしながら整髪するためのローションまたはゲルの状態の、ヘアラッカー、パーマ用組成物、毛髪のための着色剤または漂白剤の状態の、組成物を選択することもまた可能である。「化合物」以外に、光に対する保護特性を有する組成物は、このタイプの組成物に用いられる様々なアジュバント、例えば、界面活性剤、増粘剤、ポリマー、軟化剤、保存剤、泡安定剤、電解質、有機溶媒、シリコーン誘導体、オイル、ワックス、アンチグリース剤、組成物自体もしくは毛髪を着色する染料および/または顔料、あるいはヘアケアのために通常用いられる他の成分を含み得る。
【0226】
本発明は、さらに、「化合物」が化粧品にまたは皮膚科学的にまたは食品に適する担体と混合されることに特徴がある、組成物の調製方法に、また組成物の調製のための「化合物」の使用に関する。
【0227】
本発明による組成物は、ここでは当業者によく知られている技術の助けで調製できる。
【0228】
混合は、結果的に、「化合物」の溶解、乳化または分散を生じ得る。
【0229】
「化合物」のポジティブな作用が、化粧品組成物または医薬組成物における使用に対して、それらの特別な適性を生じる。
【0230】
「化合物」の性質は、同様に、食品における使用、または栄養補助食品(food supplement)または機能性食品としての使用に対して、ポジティブであると見なされるべきである。食品について記載されるさらなる説明は、また、栄養補助食品および機能性食品にも同じように当てはまる。
【0231】
「化合物」により補強できる食品には、動物によって消費されるのにまたはヒトによって消費されるのに適する全ての材料、例えば、ビタミンおよびそれらのプロビタミン、脂肪、ミネラルまたはアミノ酸が含まれる(食品は固体であり得るが、また液体すなわち飲料の状態でもあり得る)。
【0232】
したがって、本発明は、さらに、ヒトまたは動物の栄養補給のための食品添加物としての「化合物」の使用、および食品または栄養補助食品であり、また関係する担体を含む組成物に関する。
【0233】
「化合物」により補強できる食品は、また、例えば、単一の天然供給源に由来する食品、例えば、糖、甘味を加えていない果汁、単一植物種のスカッシュまたはピューレ、例えば、甘味を加えていないリンゴジュース(例えば、また、様々なタイプのリンゴジュースの混合物)、グレープフルーツジュース、オレンジジュース、リンゴのシロップ煮(compote)、アプリコットスカッシュ、トマトジュース、トマトソース、トマトピューレなどでもある。「化合物」により補強できる食品のさらなる例は、単一植物種からの穀物(corn)またはシリアル(cereal)、およびこのタイプの植物種から製造される材料、例えば、シリアルシロップ、ライムギ粉、コムギ粉またはオートムギの糠である。このタイプの食品の混合物は、また、「化合物」により補強されるのに適しており、例えば、複合ビタミン剤、ミネラル混合物、または甘味を加えたジュースである。「化合物」により補強できる食品のさらなる例として、食品組成物、例えば、調合シリアル、ビスケット、混合飲料、特に子供用に調合された食品、例えば、ヨーグルト、ダイエット食品、低カロリー食品、または動物飼料を挙げることができる。
【0234】
このように、「化合物」により補強できる食品には、炭水化物、脂質、タンパク質、無機元素、微量元素、ビタミン、水、または植物および動物の活性代謝物の全ての可食の組合せが含まれる。
【0235】
「化合物」により補強できる食品は、例えば、食べ物、丸剤、錠剤、カプセル、パウダー、シロップ、溶液または懸濁液の状態で、好ましくは経口投与される。
【0236】
「化合物」により補強される本発明による食品は、当業者によく知られた技術の助けで調合できる。
【0237】
それらの作用のせいで、「化合物」は、また、医薬成分としても好ましく、また適切である。「化合物」は、例えば皮膚の炎症およびアレルギーの予防処置のために、またある場合には特定のタイプの癌の予防のために使用され得る。「化合物」は、特に皮膚の、炎症、アレルギーおよび刺激の治療のための医薬の調製に特に適している。さらに、静脈強壮剤(vein tonic)として、クペロ−ズ(couperose)抑制剤として、化学的、物理的紅斑または光による紅斑の抑制剤として、敏感肌のトリートメントのための作用薬として、充血除去剤として、乾燥剤として、痩身剤として、皺防止剤として、細胞外マトリックス成分の合成刺激剤として、皮膚の弾性を向上させるための増強剤として、また抗加齢剤として作用する医薬を調製することが可能である。さらに、「化合物」は、抗アレルギー性および抗炎症性および抗刺激性作用を示す。したがって、それらは炎症およびアレルギー反応の治療のための医薬の調製に適している。
【0238】
本発明が例によってより詳細に下で説明される。本発明は、特許請求された範囲の全体で実施でき、ここに与えられる例に限定されない。
【0239】
さらに、以下の例は、例示によって当業者が本発明を一層よく理解することを助けるために記載される。これらの例は、特許請求の範囲によって付与される保護の範囲を限定しようとするものではない。例において規定される化合物、組成物および/または使用について例示される特徴、特性および利点は、例において具体的に記載されていない、また/または規定されていない他の化合物、組成物および/または使用に、付与され得るが、特許請求の範囲において規定されていることの範囲内にある。
【実施例】
【0240】
実験
1.インビトロ(in vitro)での生物活性
PPARαおよびPPARγの活性化の分析は、PPARγの場合には内因性、またはPPARαの場合にはコトランスフェクションによるかのいずれかのPPARの制御下に、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼの遺伝子)を発現させるDNAのトランスフェクションに基づく。レポータープラスミドJ3TkLucは、ヒトのアポA−II遺伝子の、PPARに対する応答配列(response element)の3つのコピーを含み(Staels,B et al.(1995),J.Clin.Invest.,95,705−712)、これらは、プラスミドpGL3における、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーターの上流に組み込まれている。このレポーター遺伝子は、プラスミドpGL3に、前記プラスミドJ3TkCATをサブクローニングすることによって得た(Fajas,L et al.(1997),J.Biol.Chem.,272,18779−18789)。用いた細胞は、SV40ウイルスによって形質転換されたミドリザルCV1細胞(これらはPPARγを発現する)(Forman,B.et al.(1995),Cell,83,803−812)、およびヒトSK−Hep1細胞(これらはPPARを発現しない)である。これらの細胞を、20,000個の細胞/ウェル(96ウェルプレート)の密度で接種し、脂質混合物により複合化した、150ngのレポーターDNAによりトランスフェクトした。SK−Hep1細胞の場合には、Sher,T.et al.(1993),Biochemistry,32,5598−5604に記載される、PPARαの発現ベクターをコトランスフェクトした。5時間後に、細胞を2回洗い、10%のウシ胎仔血清を含む新鮮な培養基中、試験化合物の存在下に、36時間インキュベートする。培養が終わると、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を測定する。この活性は、コントロールの値に対して表される(データは表1および2に示す)。
【0241】
【表1】

【0242】
【表2】

【0243】
B16−V黒色腫細胞におけるメラニン合成の阻害−ホワイトニング活性
B16−V黒色腫細胞を、様々な量の試験物質を含むアッセイ培地で、72時間インキュベートした。濃度は、MTTアッセイの結果に応じて決まる。生存率に影響のない(24時間の培養後)濃度だけを、メラニンのさらなる評価に用いた。24時間毎に、培地を交換し、化合物およびアルファ−MSH(メラニン合成の刺激)を含む新鮮なアッセイ培地に入れ替えた。細胞数を求め、細胞を1MのNaOHを用いて溶解した。後で、メラニンの量を、マイクロプレートリーダー(Safire2TM、Tecan)により、405nmで測定した。様々な濃度の合成メラニンを用いて、校正曲線を作った。メラニン含量は、pg/細胞として表した。
【0244】
試験結果は図1に示す。これから明らかなように、「化合物」は、優秀なメラニン抑制活性を示す。さらに、この物質はコウジ酸よりかなり良好である。
【0245】
2.cDNA−マイクロアレイ研究
cDNAマイクロアレイの1つの利点は、全遺伝子の発現パターンを観察し、様々な条件で比較できることである。これは、「化合物」により処理されたヒトの皮膚の遺伝子発現プロフィールを決める最初の研究である。「化合物」物質によって誘発される遺伝子の脱制御された発現の分析のために、ヒト皮膚モデルからの処理試料およびコントロール試料を、Affymetrixのオリゴヌクレオチドマイクロアレイにより分析した。皮膚は、DNA−マイクロアレイを用いて分析された最初の器官の1つであった。さらに、表皮角化細胞は、それらが、多様性に富む、炎症性および免疫調節性サイトカイン、ホルモン、ビタミン、紫外(UV)光、毒物および物理的損傷に応答するので、多くの研究の標的である。「化合物」物質を適用した後の遺伝子発現の変化を、Affymetrixシステムにより分析した。
【0246】
遺伝子発現研究のために、皮膚等価物を、PBS緩衝液/DMSO中、c=50μMの濃度を有する、50μLの2つの当該「化合物」物質により処理した。緩衝液で処理した皮膚等価物がコントロールとしての役目を果たした。
【0247】
遺伝子発現プロファイリング−インプット遺伝子(input gene)
ゼロの比(log2)の値は調節のないことを示し、他方、正の(log2)値はアップレギュレーションを示し、負の(log2)値は、関連する遺伝子のダウンレギュレーションを示す。
【0248】
実験は、特定の閾値を有する759の遺伝子を含む(付録A)。
【0249】
データ解析:
GeneGOのMetacore(Pathways and Maps)ソフトウェア。
【0250】
一見した結果、いくつかの例:
・cDNAマイクロアレイ分析は、「化合物」が、約110の細胞および分子過程(この内容は、GeneGOによって明確に定められ注解を施される)において、関係のある遺伝子を脱制御することを明らかにした。各過程は、その過程に特徴的なタンパク質相互作用の、予め調節されたネットワークを表す。
【0251】
研究は、上位100のアップレギュレーションされる遺伝子の14が、少なくとも1つの、PPARの強い(高スコアの)部位を有することを明らかにした。
【0252】
例1:SCARB/ATP結合カセット/INSIG2/VLDR
1つの興味深い例は、SCARB(スカベンジャー受容体クラスB、恐らくHDL受容体)、INSIG2(インスリン誘導遺伝子2)、ATP結合カセットおよびVLDLR遺伝子のアップレギュレーションであり、これらは、細胞表面と細胞外ドナーおよび受容体との間の遊離コレステロールおよびエステル化されたコレステロールの流れを円滑にし、コレステロールの恒常性を制御する。PPAR−ガンマは、この過程の重要な転写因子であることが知られている(Christina Guggenberger,Dissertation 2007,Institut fur Experimentelle Genetik GSF−Forschungszentrum Fur Umwelt and Gesundheit,Neuherberg)。
【0253】
例2:PPAR/RXR
別の興味深い発見は、「化合物」がRXRA(レチノイドX受容体A)のアップレギュレーションを誘発することである。RAR/RXR転写因子複合体は、リガンドの結合によって活性化され、その天然リガンドは、全トランス型レチノイン酸(全トランス型RA)である。レチノイド酸受容体(RAR)およびペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)は、炎症反応の調節に密接に結びついている(Sabien van Neerven et al,PPAR Research,vol 2007,Article ID 29275,14pages)。フェノフィブラート(PPAR−アルファアゴニスト)は、NF−カッパBのDNA結合活性を阻害し、PPAR−アルファアゴニストが、これらの炎症促進性分子をコードする遺伝子の発現を制御し得るメカニズムを示唆する。レチノイドX受容体(RXR)は、PPAR−アルファ受容体と物理的に相互作用し、結果として生じるヘテロ2量体が、PPAR応答性遺伝子の発現を制御する。興味深いことに、9−シスRAとPPAR−アルファアゴニストのフェノフィブラートまたはジェムフィブロジルとの組合せは、協同的に、これらの細胞による、TNF−アルファ、IL−1ベータ、IL−6、およびMCP−1の産出を阻害する。総合すると、これらの結果は、PPAR−アルファおよびRXRアゴニストが、MS(多発性硬化症)(活性化されたアストロサイトが、疾患の病変に寄与すると考えられている)の治療に有効であり得る可能性を提起する(J.Xu,et al.,Journal of Neuroimmunology,vol.176,no.1−2,pp.95−105,2006)。
【0254】
両方の受容体ファミリーが、レチノイドX受容体(RXR)とヘテロ2量体を形成するリガンド活性化転写因子を含む。レチノイド受容体は、細胞成長、分化およびアポトーシスの制御に極めて重要な役割を果たす。RXRは、ホモ2量体、または様々なホルモンおよびオーファン受容体とヘテロ2量体を形成する核内受容体ファミリー(レチノイン酸受容体(RAR)、ビタミンD受容体(VDR)、甲状腺ホルモン受容体(TR)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)、COUP−TF、および他の受容体が含まれる)における連結パートナーである(Mangelsdorf,D.J.Cell,83:841−850,1995)。
【0255】
RXRAはまた、皮膚において豊富に発現される。RXRαの除去は、皮膚に、表皮濾胞間過形成、角化細胞過増殖、および異常最終分化を引き起こす(Li,M.,et al.,Development,128:675−688,2001)。RXRα欠損F9胚性癌腫細胞は、レチノイド媒介細胞分化、抗増殖、およびアポトーシスに抵抗力がある(Clifford,J.,EMBO J.,15:4142−4155,1996)。
【0256】
例3:炎症/乾癬/加齢
S100カルシウム結合タンパク質A7、S100カルシウム結合タンパク質A7AおよびS100カルシウム結合タンパク質A12(S100A7、S100A7A、およびS100A12)は、「化合物」による皮膚細胞の処理の後、ダウンレギュレーションされる遺伝子である。
【0257】
S100A7Aが、表皮の分化および炎症に関与しているということがあり得るので、乾癬および他の疾患の病因にとって重要であり得る。S100A7タンパク質は、ソリアシン(psoriasin)としてもまた知られ、皮膚の分化および疾患(乾癬)における、乳癌における伝達因子(mediator)および制御因子として、また炎症細胞に対する走化性因子として重要な機能を有する(Kulski et al.Journal of Molecular Evolution(2003),56(4),397−406)。Lener et alは、ヒトの皮膚の自然加齢過程に関与する遺伝子を調べ、自然に加齢したヒトの包皮試料についてcDNAマイクロアレイ分析を適用した。彼らは、全部で105の遺伝子において、それらの発現が、ヒトの皮膚における加齢過程の間に、1.7倍以上変わることを見出した。加齢皮膚において、S100A7はアップレギュレーションされる遺伝子と記載され、他方、GPC6(グリピカン6)はダウンレギュレーションされる遺伝子として報告されている(T.Lener et al./Experimental Gerontology 41(2006)387−397)。「化合物」により処理した皮膚は、GPC6およびS100A7遺伝子に反対の作用を有する。
【0258】
カスパーゼ14、P57/KIP2は、我々の実験では、Stephan Hsu(Stephen Hsu1 et al,Green Tea Polyphenol−Induced Epidermal Keratinocyte Differentiation Is Associated with Coordinated Expression of p57/KIP2 and Caspase 14,JPET #76075)の結果に似てかなり上向きに調節され、彼らは、EGCG(エピガロカテキン−3−ガラート)がカスパーゼ14(最近記載された角化細胞の最終分化に対する推定上の制御因子)を誘導することを報告した。彼らは、乾癬(異常角質化によって特徴付けられる疾患)における表皮細胞は、特に細胞の核の部分においてカスパーゼ14の発現の低下を示すことを見出した。総合すると、彼らのデータは、ヒトの正常表皮角化細胞(NHEK)がp57/KIP2およびカスパーゼ14の相関活性化および発現によって指示される最終分化を加速させることをECGCが可能にしたことを示す。カスパーゼ14は、NHEK(ヒト正常表皮角化細胞)の最終分化および皮膚バリア形成に密接に結びついているので(Mikolajczyk et al,2004)、彼らは、EGCGが、最終分化および加速された皮膚バリア形成に導く経路に入るように、角化細胞に指令するということを提案する。さらに、彼らは、EGCG誘発分化が、p57/KIP2およびカスパーゼ14の両方の活性化を必要とすることを示唆した。NHEKにおけるp57/KIP2およびカスパーゼ14のmRNAレベルは、EGCG処理により高められた。
【0259】
また、サイトカインIL−6、TNF−アルファ誘導タンパク質、およびケモカイン、ならびにこれらの受容体、IL−8、CCL8、CCL2、CXCL2、CXCL12、CXCL3、およびCXCL5、ならびに細胞間接着分子−1(ICAM−1)、これらは、皮膚の炎症応答を調整し、指令する主要な因子であることが知られている(Yasufumi Moromizato et al.,Am J Pathol.2000 October;157(4):1277−1281)。最近、ICAM−1を含めて、細胞接着分子が、関節リウマチ(RA)における骨膜線維芽細胞で発現されることが報告されたが(Halle LP et al,Arthritis Rheum 1989;32:22−29)、我々の実験ではかなり下向きに調節された。細胞間接着分子−1(ICAM−1)は、ランゲルハンス細胞、角化細胞、内皮細胞、真皮線維芽細胞を含めて、全ての主要な皮膚細胞集団で、常時、発現される、または誘導できる。ICAM−1は、皮膚において、炎症状態の下で誘導され、T細胞の活性化に重量な役割を果たす(R.Chatelain et al, Archives of dermatological research,vol.290,number 9,Oct.1998,477−482)。
【0260】
例4:コラーゲンの刺激、およびエラスチン/フィブロネクチン/ラミニンの増進
細胞外プロテアーゼは、細胞機能の極めて重大な制御因子である。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーは、慣行では、細胞外マトリックス(ECM)リモデリングとの関連で記載されており、このリモデリングは、組織の形態形成から外傷の治癒に渡る様々な過程において、生命現象の全体に渡って起こる。最近確認されたことによれば、MMPは、生残、血管形成、炎症およびシグナル伝達を含めて、他の機能の調節に関係している。MMPは、構造的に関連する亜鉛依存性メタロプロテイナーゼ(メトジンシン(metzincin)と呼ばれる)のより大きなファミリーの一部である。メトジンシンの他のサブファミリーは、ADAM、細菌のセラリシン(serralysin)およびアスタシンである。
【0261】
MMPは、角化脂肪および線維芽細胞から分泌され、コラーゲン、および真皮細胞外マトリックスを構成する他のタンパク質を分解する。真皮損傷の不完全な修復は、細胞外マトリックスの機能的および構造的一体性を損なう。繰り返される日光への暴露は、真皮の損傷の蓄積を引き起こし、最終的には光損傷を受けた皮膚に特徴的な皺形成が起こる(Gary J.Fisher et al,ARCH DERMATOL/VOL 138,NOV 2002)。皮膚において、MMP酵素の主な役割は、皮膚マトリックスを、特に構造タンパク質であるコラーゲンおよびエラスチンを、リサイクルすることである。低下したMMP活性は、皮膚結合組織を劣化させ、プロコラーゲンの発現の低下を防ぐ。
【0262】
I型コラーゲンは、皮膚における最も豊富なタンパク質であり、I型およびIII型コラーゲンフィブリルは、皮膚に強さおよび弾性を付与する。光加齢した皮膚は、劣化し組織化されていない多量のコラーゲンフィブリルを含み、I型およびIII型のプロコラーゲンの産生が低下する。
【0263】
マトリックスメタロプロテアーゼ、特にMMP−9の発現または活性を低下させることは、加齢および乾癬の皮膚の処置に向かう生体コラーゲン異化過程に影響を及ぼす。
【0264】
「化合物」による皮膚細胞の処理の後ダウンレギュレーションされるMMP遺伝子は、MMP9(ゼラチン、コラーゲンIV、VおよびXIV、アグレカン、エラスチンを担当する)、MMP14(コラーゲンI、IIおよびIII、ラミニン)、MMP11(フィブロネクチン)である。MMPのダウンレギュレーションは、結果的にコラーゲンフィブリルの増加を生じるようである。さらに、フィブロネクチン、エラスチンおよびラミニンが、かなり上向きに調節された。
【0265】
ラミニンは、他の細胞外マトリックス成分と相互作用することによって、胚発生の間、組織への細胞の連結、移動および組織化を媒介すると考えられる。
【0266】
また、アップレギュレーションされるHAS2遺伝子(ヒアルロナンシンターゼ2)は、ヒアルロナン/ヒアルロン酸(HA)合成に役割を果たす。
【0267】
こうして、「化合物」は、真皮線維芽細胞のコラーゲン産生のアップレギュレーション、およびコラーゲン分解のダウンレギュレーションを活性化する。
【0268】
GeneGOを用いて自動的に計算される、脱制御された遺伝子の特徴抽出(enrichment analysis)
特徴抽出は、MetaCoreの機能オントロジーにおける遺伝子IDと、アップロードされるファイルの共通の、類似の、また独特のセットに対する遺伝子IDを照合することからなる。オントロジーは、カノニカル経路マップ、GeneGO細胞過程、GO細胞過程、および疾患区分を含む。アップロードされたデータセットに対する様々なカテゴリーの「関連性」の程度がp値によって決められ、その結果より低いp値がより高い優先権を獲得する。
【0269】
3.細胞過程
上皮成長(p値:3.1554e−08)、細胞分化(p値:2.2423e−08)、および卵胞刺激ホルモン分泌の正の調節(p値 2.0701e−07)、および毛包の形態形成(p値:2.274e−05)、脱皮(molting)サイクル過程(p値:8.996e−07)、毛包の発生(p値:8.996e−07)、毛髪サイクル過程(p値:8.996e−07)、毛髪サイクル(p値:1.005e−06)、脱皮サイクル(p値:1.005e−06)が、結果として得られた、我々に関心のある細胞カテゴリーである。
【0270】
例1、表皮成長
表皮の成長は、特有の成り行きが、その生成から成熟した構造までの、経時的な表皮の発達である過程である。表皮は、植物または動物の外側上皮層であり、それは、細胞外物質を産生する単一層(例えば節足動物の表皮)、または多くの脊椎動物種の場合のように、複雑な相乗扁平上皮であり得る。
【0271】
GO/生体過程カテゴリーは、「化合物」物質による処理の後、アップレギュレーションおよびダウンレギュレーションされる遺伝子の下で過剰表現される。以下の遺伝子は、上皮の成長に重要な役割を果たし、アップレギュレーションおよびダウンレギュレーションされる(表3)。
【0272】
【表3】

【0273】
4.配合例
「化合物」を含む組成物、好ましくは非治療的組成物、化粧品組成物および/または局所組成物のための配合を例として下に示す。いくつかの市販化合物にはINCI名を記す。
【0274】
UV−Pearls(商標)OMCは、INCIでの組成物:水(EUではアクア)、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、シリカ、PVP、クロロフェネシン、BHT、を表す;この組成物は、Merck KGaA(Darmstadt)からEusolex(登録商標)UV Pearl(商標)OMCの名称で市販されている。
【0275】
表に示される他のUV Pearl製品は、それぞれ、示されるUVフィルターに置き換えられた、OMCに類似の組成物である。
【0276】
【表4】

【0277】
【表5】

【0278】
【表6】

【0279】
【表7】

【0280】
【表8】

【0281】
【表9】

【0282】
【表10】

【0283】
【表11】

【0284】
【表12】

【0285】
【表13】

【0286】
【表14】

【0287】
42.5℃、4℃、および室温で3ヶ月のあと、官能評価で安定。(organoleptically stable)。
【0288】
【表15】

【0289】
相Aおよび相Bの成分は、それぞれ互いに別に混合し、次いで相Bを相Aに加える。相Cは、相Aおよび相Bの混合物に攪拌しながら加える
42.5℃、4℃および室温で3ヶ月のあと、官能評価で安定。
【0290】
【表16】

【0291】
相Aの成分は、何れも一緒に混合する
pH=3.98
粘度(25℃)<20mPa.s。
【0292】
42.5℃、4℃および室温で3ヶ月のあと、官能評価で安定。
【0293】
【表17】

【0294】
相Aの成分は、何れも一緒に混合する
pH=4.10
粘度(25℃)<20mPa.s。
【0295】
42.5℃、4℃および室温で3ヶ月のあと、官能評価で安定。
【0296】
6.in−vivo研究
スキンホワイトニング活性は、二重盲検臨床試験で評価した。調査薬物として、1.0%の「化合物」を含む水中油エマルジョン配合物を、活性成分を全く含まない同じ配合(プラセボ)との比較で用いた。
【0297】
調査は、18から50歳の年齢で、スキンタイプ3または4の被験者で実施し、活性配合物は一方の前腕に、プラセボ配合は他方の前腕に、1日2回、4週間半、付けた。ホワイトニング効果の評価は、両方の前腕について、0、14および28日に、目視評価(皮膚の色の違いの検査)、色彩計による測定(Chroma−Meter CR 300(Minolta)を用い、明るさの違いを表すL*値およびメラニン指数を表すITA°値(個別類型角(Individual Typology Angle))を得る)、さらにはデジタル写真によって実施した。
【0298】
目視評価によって得たデータは図2に示し、色彩輝度計による評価を図3(L*値)および図4(ITA°値)に示す。このようなデータによってはっきりと示されるように、配合物における「化合物」の存在により、統計的に極めて有意である並外れたスキンホワイトニング作用が得られる。
【0299】
【表18−1】

【0300】
【表18−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としての、5−(7−メトキシ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾオキセピン−5−イル)−3−メチル−ペンタ−2,4−ジエン酸、および/またはその塩もしくは溶媒和物、ならびに1種または複数の局所に許容されるビヒクルを含む、局所使用のための組成物。
【請求項2】
a)請求項1に記載の活性成分、
b)皮膚に許容される1種または複数のビヒクル、および
c)任意選択で、スキンケアおよび/または炎症抑制作用を有する1種または複数のさらなる活性化合物
を含む、局所使用のための組成物。
【請求項3】
活性成分が、前記組成物中に、0.00001重量パーセントから10重量パーセントの量で含まれる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のさらなるスキンケア成分、および局所適用に適する少なくとも1種の担体を含む、請求項1から3の一項または複数項に記載の組成物。
【請求項5】
さらなるスキンケア成分としてエクトインを、好ましくは0.01から10重量パーセント、より好ましくは0.1から5重量パーセント、特に0.1から2重量パーセントの量で含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
化粧品組成物の製造のための、請求項1に記載の活性成分の使用。
【請求項7】
分化および細胞増殖に関連する、欠陥のある角質化に付随する皮膚疾患の予防および/または治療に、特に、尋常性座蒼、面皰性座蒼、多形性座蒼、酒さ性座蒼、結節性座蒼、凝塊性座蒼、加齢に関連する座蒼、副作用として現れる座蒼、例えば日光性座蒼、薬剤に関連する座蒼または職業上の座瘡の治療に、角質化の他の欠陥、特に、魚鱗癬、魚鱗癬状の状態、ダリエー病、掌蹠角化症、白板症、白板症状の状態、皮膚および粘膜(口腔)湿疹(苔癬)の治療に、欠陥のある角質化に付随し、また炎症性および/または免疫アレルギー性要素を有する他の皮膚疾患、特に、皮膚、粘膜および手と足の爪に関連する乾癬、乾癬リウマチおよび皮膚アトピー、例えば、湿疹、または呼吸器官アトピー、あるいはまた歯肉肥大の全ての状態の治療に適する組成物の調製のための請求項1に記載の活性成分の使用。
【請求項8】
皮膚または毛髪の一般的状態のケア、維持または改善のための、請求項1に記載の活性成分の使用。
【請求項9】
ヘアケアおよび/または毛包の発生のための、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
皮膚の凸凹、例えば、皺、小皺、粗い皮膚もしくは毛穴が大きい皮膚に対する予防、またはこれらの減少のための、請求項1に記載の活性成分の使用。
【請求項11】
スキンライトニングおよび/またはスキンホワイトニング活性剤としての、請求項1に記載の活性成分の使用。
【請求項12】
スキンライトニングおよび/またはスキンホワイトニングのための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項13】
ヒトの皮膚またはヒトの毛髪の、時間および/または光誘発加齢過程に対する予防のための、特に、乾燥肌、皺形成および/または色素欠陥に対する予防のための、ならびに/あるいは、皮膚へのUV光の有害な作用の低減もしくは防止のための、請求項1に記載の活性成分の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−530546(P2011−530546A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522397(P2011−522397)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005406
【国際公開番号】WO2010/017885
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】