医用画像診断装置、及び医用画像診断システム
【課題】過去の医療情報を広い適用性をもって高精度で再現することができる共有情報を生成でき、また、当該共有情報を有効に利用することができる医用画像診断装置等を提供すること。
【解決手段】過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、画像収集処理において使用された第1の撮影条件、画像収集処理において第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトに基づいて、第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを実行し、第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定し、第1の撮影範囲が設定された第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示するものである。
【解決手段】過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、画像収集処理において使用された第1の撮影条件、画像収集処理において第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトに基づいて、第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを実行し、第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定し、第1の撮影範囲が設定された第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に寝台上に置かれた被検体をスキャンして得られたデータから画像生成する医用画像診断装置、医用画像診断装置に接続される医用画像保管通信システム用サーバ(PACSサーバ)、医用画像診断装置及び医用画像診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療行為の専門分野は細分化されている。例えば、画像診断においては、患者の診断画像の取得、取得された診断画像の読影及びレポート作成、レポート結果に基づく診断結果や治療方針の説明、等の各作業に分割される。各作業は、各専門家(担当の医師又は担当技師)によって担当され、これら全ての作業によって、患者に対する診断等の医療行為が達成される。各専門家は、前段の作業において他の専門家が作成した情報に基づいて、且つ適宜過去の診断情報等を参照することにより、各作業を実行する。これらの作業は、例えば、診断画像を取得するX線CT装置、MRI装置等の医用画像診断装置、診断画像を記憶するPACSサーバ、診断画像を読影するための画像参照装置より行われる。
【0003】
図29は、画像診断における医療行為の流れ(患者からの依頼〜画像検査まで)の一例を示した図である。同図に示すように、まず、被依頼医師(主治医)は、患者との問診等に基づいて検査(スタディ)オーダを作成し、検査技師に伝える(ステップSa)。ここで、オーダとは、オーダシステムを利用して各種医用画像診断装置にネットワーク等を介して送られる、次にしなければならない検査の要求である。
【0004】
次に、検査技師は、所定の医用画像診断装置を用いて検査を実施し、患部に関する画像を取得する(ステップSb)。この検査は、例えば医用画像診断装置のモニタ上に表示される(検査オーダに基づく)検査要求のリストから、所望の検査を選択することで実行される。従って、検査は、原則検査オーダに従って実施されることになる。しかしながら、検査の方法や撮影すべき範囲/方向、撮影の条件の判断のためにそれらの情報だけでは不十分なことがある。その場合は、検査技師は、前回の検査画像、前回のレポート、前回のレポートに関連付けられたキー画像(診断の根拠となる画像)を参照して、その画像と同じ画像が得られるように撮影の範囲/方向、撮影条件を勘案し検査を実施している。取得された画像データは、デジタルとして医用画像診断装置から出力され、例えばPACSサーバにおいて保管される。なお、医用画像診断装置及びPACSサーバでは、一般に、検査(スタディ)、シリーズ(一回のスキャン処理を区別するための指標)、画像という階層に分けて画像を管理している。従って、ある一つの検査において複数回のスキャンが実行された場合には、その検査に対応する複数のシリーズ情報が対応付けて記憶され、また、各シリーズには、そのシリーズ(すなわち、そのスキャン処理)に対応する複数の画像が対応付けて記憶されることになる。
【0005】
次に、放射線科の読影医は、検査オーダに対応した読影レポートを作成する(ステップSc)。この際、前回の画像診断の根拠となった画像、すなわち前回レポートと関連付けられたキー画像と、今回の検査画像を比較して診断することが重要となる。従って、放射線科の読影医は、オーダを参照して依頼内容、及び前回検査のレポートや画像を参照して読影すべきポイントを確認し、今回検査の画像を読影(画像診断)する。
【0006】
次に、依頼医師は、作成されたレポートを参照して、画像診断の結果を判断する(ステップSd)。すなわち、依頼医師は、レポートに関連付けられたキー画像(診断根拠画像)を同時に参照しながらレポートの内容を解釈し、図示していない他の情報と統合して診断を行い、治療を行うことになる。
【0007】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開平9−81646号公報
【特許文献2】特開平6−90938号公報
【特許文献3】特開2003−164442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の医用画像診断システムにおいては、次のような問題がある。
【0009】
過去の検査との比較診断を行うにあたって、今回の検査内容を過去の検査内容に近づけたいという要望があるが、従来のシステムでは、検査技師がファイルサーバーに記憶された過去検査の画像或いはフィルム画像を参考にして検査計画を立てたり、過去検査の画像に付帯された情報を使って検査計画を立てていた。しかしながら、過去の検査画像或いはフィルム画像は基本的に読影に用いられるためのものであり、検査(撮影)の参考として用いることを目的としたものではない。従って、今回の検査に必要な情報を十分に取得できず、過去画像等から想像して設定する項目があったり、前回と同じ設定ができない撮影条件が出てしまうという問題がある。特に、MRI画像やX線CT画像のような断面画像では、検査技師は撮影位置、再構成範囲等に関する情報を把握することは困難である。
【0010】
また、一般に、寝台天板上での患者の位置、姿勢は、設定時の(患者、装置操作者両方の)状態により前回と異なることが多いため、前回検査の撮影計画(スキャン範囲、再構成位置等)をそのまま利用するだけでは、比較診断のための十分な精度を確保できない場合がある。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、過去の医療情報を広い適用性をもって高精度で再現することができる共有情報を生成することができ、また、当該共有情報を有効に利用することができる医用画像診断装置、及び医用画像診断システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0013】
一実施形態に係る医用画像診断装置は、過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、前記画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、前記画像収集処理において使用された第1の撮影条件、前記画像収集処理において前記第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、前記第1のオブジェクトに基づいて、前記第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを行うオブジェクト解析ユニットと、前記第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定する制御ユニットと、前記第1の撮影範囲が設定された前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示する表示ユニットと、を具備するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上本発明によれば、過去の医療情報を広い適用性をもって高精度で再現することができる共有情報を生成することができ、また、当該共有情報を有効に利用することができる医用画像診断装置、及び医用画像診断システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態乃至第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
(第1実施形態)
(医療画像診断システム)
図1は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成図を示している。同図に示すように、本医療画像診断システムSは、病院情報システム(HIS: Hospital Information System)を利用して構築され、それぞれネットワークNに接続された医用画像診断装置(X線コンピュータ断層撮影装置1(以下、X線CT装置1))、画像参照装置7、PACSサーバ9を具備している。
【0017】
なお、図1では、医用画像診断装置としてX線CT装置1を用いる例を示した。しかしながら、本発明の技術的思想はこれに拘泥されず、例えば磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、X線診断装置、核医学診断装置等の寝台を利用して撮影位置を決定するものであれば、適用することが可能である。また、図1では、一つの病院内での情報システムを利用して構築される医療画像診断システムSの例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、例えばインターネット等の外部ネットワークを介して、異なる医療機関や研究機関に設置された医用画像診断装置、PACSサーバ、画像参照装置、医療端末等から構成されるようにしてもよい。
【0018】
(X線CT装置)
X線CT装置1は、X線投影データを取得するためのスキャンシーケンス、X線投影データを用いた画像再構成によるX線断層画像の生成・表示処理等を実行する。また、X線CT装置1等は、スキャン処理、X線CT画像の再構成、ボリュームレンダリング、MPR処理等の画像処理に用いられた条件を用いて、共有オブジェクトの生成処理を実行する。
【0019】
図2は、X線CT装置1の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本X線CT装置1は、架台100、情報処理部101から構成される。架台100は、被検体Pに関する投影データを収集するために構成されたものであり、スリップリング11、架台駆動部112、X線管球113、X線検出器115、回転フレーム116、データ収集部117、非接触データ伝送装置118を具備している。情報処理部101は、架台100におけるデータ収集動作の制御、及び架台100において収集されたデータに所定の処理を施すことで、X線CT画像及びこれを用いた各種臨床情報を生成するものであり、高電圧発生装置119、前処理部120、メモリ部121、再構成部123、画像処理部124、記憶部125、制御部127、表示部129、入力部131、共有オブジェクト生成部133、送受信部140を具備している。
【0020】
架台駆動部112は、回転フレーム116を回転駆動する。この回転駆動により、X線管球113とX線検出器115とが対向しながら、被検体Pの体軸を中心に螺旋状に回転することになる。
【0021】
X線管球113は、X線を発生する真空管であり、回転フレーム116に設けられている。当該X線管球113には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生装置119からスリップリング11を介して供給される。X線管球113は、供給された高電圧により電子を加速させターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内に載置された被検体に対してX線を曝射する。
【0022】
X線検出器115は、被検体を透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管球113に対向する向きで回転フレーム116に取り付けられている。当該X線検出器115は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードとの組み合わせで構成される複数の検出素子が、それぞれのタイプに応じて一次元的又は二次元的に配列されている。
【0023】
回転フレーム116は、Z軸を中心として回転駆動されるリングであり、X線管球113とX線検出器115とを搭載している。この回転フレーム116の中央部分は開口されており、この開口部に、寝台(図示せず)上に載置された被検体Pが挿入される。
【0024】
データ収集装置17は、一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれ、検出器15からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は、非接触データ伝送装置18を介して情報処理装置3に取り込まれる。
【0025】
高電圧発生装置119は、スリップリング11を介して、X線の曝射に必要な電力をX線管球113に供給する装置であり、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、高電圧切替器等から成る。
【0026】
前処理部120は、非接触データ伝送装置18を介してデータ収集装置17から生データを受け取り、感度補正やX線強度補正を実行する。各種補正を受けた所定角度分の生データは、記憶部125に一旦記憶される。なお、当該前処理部120によって前処理が施された生データは、「投影データ」と呼ばれる。
【0027】
再構成部123は、複数種類の再構成法を装備し、操作者から選択された再構成法により、設定される画像生成条件に従って画像データを再構成する。複数種類の再構成法には、例えば、ファンビーム再構成法(ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法ともいう)、再構成面に対して投影レイが斜めに交差する場合の再構成法として、コーン角が小さいことを前提として畳み込みの際にはファン投影ビームとみなして処理し、逆投影はスキャンの際のレイに沿って処理する近似的画像再構成法としてのフェルドカンプ法、フェルドカンプ法よりもコーン角エラーを抑える方法として再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正するコーンビーム再構成法等が含まれる。
【0028】
画像処理部124は、再構成部123により生成された再構成画像データに対して、設定される画像生成条件に従ってボリュームレンダリング、MPR処理等の画像処理(後処理)を行い、表示部129に出力する。
【0029】
記憶部125は、生データ、投影データ、スキャノグラムデータ、断層像データ等の画像データや、検査計画のためのプログラム等を記憶する。また、記憶部125は、後述する共有オブジェクト生成機能等を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0030】
制御部127は、スキャン処理、信号処理、画像生成処理、画像表示処理等において、本X線CT装置1の統括的な制御を行う。例えば、制御部127は、スキャン処理においては、設定される撮影(スキャン)条件に従って、高電圧発生装置119、寝台駆動部12、及び寝台天板aの体軸方向への送り量、送り速度、X線管球113及びX線検出器115の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、被検体の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像のデータ収集(スキャン)処理を行う。また、制御部127は、記憶部125に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上において展開することで、後述する共有オブジェクト生成機能を実現する。
【0031】
表示部129は、画像処理部124から入力したX線CT画像、スキャノグラム像、撮影条件、画像生成条件等を設定するための対話画面等を表示する出力装置である。なお、本実施形態においては、X線CT画像を、「X線コンピュータ断層装置によって取得されたFOV(撮影領域)内の各CT値に基づいて生成された画像」と定義する。ここで、CT値とは、物質のX線吸収係数を、基準物質(例えば、水)からの相対値として表したものである。また、表示部129は、図示していない計画補助システムによって実現されるスキャン計画画面等を表示する。
【0032】
入力部131は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータを介してスライス厚やスライス数等の各種スキャン条件を入力可能な装置である。
【0033】
共有オブジェクト生成部133は、記憶部125に記憶された専用プログラムを制御部127内のメモリ上において展開することにより実現されるものであり、X線投影データ取得のためのスキャンにおいて使用される撮影条件、位置決め画像(リファレンス像)等を含む共有オブジェクトを生成する。例えば、リファレンス像は、X線CT装置の場合、X線管と検出器を固定した状態で天板を移動させることにより収集したスカウト像、MRI装置の場合、コロナル像である。また、共有オブジェクト生成部133は、スキャンによって取得された投影データから画像を再構成する場合に用いられる画像生成条件等を含む共有オブジェクトを生成する。これらの共有オブジェクト生成処理については、後で詳しく説明する。
【0034】
送受信部140は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。特に、送受信部140は、ネットワークNに接続されたRIS(Radiology Information System)から、当該被検体の撮影に関する情報(患者情報、診断部位等)を受信する。
【0035】
[画像参照装置]
画像参照装置7は、例えば医師が画像を読影しながらレポート作成等を行う場合に使用されるものであり、PACSサーバ9から読み出された画像をそのままで、又は所定の画像処理を施すことで診断画像を生成し表示する。また、画像参照装置7は、診断画像生成のための後処理等において、共有オブジェクトの生成処理を実行する。
【0036】
図3は、画像参照装置7の構成を説明するためのブロック図である。同図に示すように、画像参照装置7は、制御部71、画像処理部72、表示部73、操作部74、共有オブジェクト生成部76、記憶装置77、送受信部78を具備している。
【0037】
制御部71は、本画像参照装置7の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。また、制御部71は、記憶装置77に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上において展開することで、共有オブジェクト生成機能等を実現する。
【0038】
画像処理部72は、各種医用画像診断装置によって取得された画像データを用いて、ボリュームレンダリング、MPR画像生成等の画像処理を行う。
【0039】
表示部73は、各種医用画像診断装置によって取得された画像、画像処理部72における画像処理によって生成された画像、画像生成条件等を設定するための対話画面等を所定の形態にて表示する。
【0040】
操作部74は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータからの指示を入力可能な装置である。
【0041】
レポート作成部75は、操作部74からの入力に基づいてレポートを作成する。
【0042】
共有オブジェクト生成部76は、X線投影データ取得のためのスキャンにおいて使用される撮影条件、位置決め画像等を含む共有オブジェクトを生成する。また、共有オブジェクト生成部76は、スキャンによって取得された投影データから画像を再構成する場合に用いられる画像生成条件、ボリュームレンダリング処理、MPR処理等の後処理において用いられる画像生成条件等を含む共有オブジェクトを生成する。
【0043】
記憶装置77は、各種医用画像診断装置によって取得された画像データ(装置より直接取得したもの、PACSサーバ9から取得したものを含む)を記憶する。また、記憶装置77は、共有オブジェクト生成機能等を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0044】
送受信部78は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。特に、送受信部78は、生成された共有オブジェクトを、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する。
【0045】
[PACSサーバ]
PACSサーバ9は、各種医用画像診断装置において生成された画像、画像参照装置7において後処理により生成された画像等を、患者ID等によって管理し保存する。また、PACSサーバ9は、過去の画像に付された付帯情報、過去のシリーズに関する位置決め画像等を用いて、共有オブジェクトを生成する。
【0046】
図4は、PACSサーバ9の構成を説明するためのブロック図である。同図に示すように、PACSサーバ9は、制御部91、共有オブジェクト生成部92、表示部93、操作部94、記憶装置95、送受信部96を具備している。
【0047】
制御部91は、本PACSサーバ9の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。また、制御部91は、記憶装置95に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上において展開することで、共有オブジェクト生成機能等を実現する。さらに、制御部91は、医用画像診断装置や画像参照装置等からの要求に応答して、記憶装置95から対象となる画像データ、共有オブジェクトを検索し、ネットワークを介して送信する。
【0048】
共有オブジェクト生成部92は、所定のタイミングで、自身が保管する過去画像に付された付帯情報、各シリーズに対応する位置決め画像等に基づいて、共有オブジェクトの生成処理を実行する。
【0049】
表示部93は、操作画面や所定の画像を表示するためのモニタである。
【0050】
操作部94は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータからの指示を入力可能な装置である。
【0051】
記憶装置95は、画像記憶部95a、共有オブジェクト記憶部95b、プログラム記憶部95c、レポート記憶部95dを有している。画像記憶部95aは、各種医用画像診断装置によって取得された画像、各種検査において使用されるオーダ情報等を記憶する。共有オブジェクト記憶部95bは、X線CT装置1又は画像参照装置7若しくは自身において生成された共有オブジェクトを記憶する。プログラム記憶部95cは、共有オブジェクト生成機能等を実現するための専用プログラムを記憶する。レポート記憶部95dは、読影医師によって作成されたレポートに関する情報等を記憶する。
【0052】
送受信部96は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0053】
(共有オブジェクト生成機能)
次に、X線CT装置1、PACSサーバ9、画像参照装置7が有する、共有オブジェクト生成機能について説明する。
【0054】
ここで、共有オブジェクト生成機能とは、過去の医療行為実施時において使用された情報(例えば、位置決め画像、撮影位置、撮影範囲、撮影条件、画像生成条件等)を有効に利用するために、画像情報と付帯(文字または数値)情報とから構成される共有オブジェクトを生成するものである。この共有オブジェクトは、通常の画像データとは分離した情報の実体(例えばファイル)として生成され、保存・管理される。
【0055】
図5は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。同図に示すように、共有オブジェクトは、医用画像生成のための、スキャン位置、画像生成位置等を再現するために必要な情報を1つのデータの纏りとして関連付けたものであり、画像情報と付帯情報とを具備している。以下、共有オブジェクトを構成する画像情報及び付帯情報のそれぞれについて説明する。
【0056】
[画像情報]
共有オブジェクトが具備する画像情報とは、位置又は範囲を参照するための一つまたは複数の位置決め画像(例えば、X線CT装置で用いられるスキャノグラム、MRI装置で用いられるパイロットスキャンによるコロナル像等)である。ここで、範囲とは、実際に医用画像診断装置がX線や高周波等によりエネルギーを供給し、検出器が供給されたエネルギーに基づく信号検出或いは画像生成の対象とする物理範囲である。例えば、X線CT装置1の場合、検出器で検出された投影データに基づいて再構成される体軸方向の範囲(再構成範囲)であり、MRI装置の場合はスキャン範囲である。範囲は、一般的にスキャン前に取得される位置決め画像上に点線等で明示され、体軸方向の画像生成ピッチを示す線と共に示されることもある。
【0057】
[付帯情報]
共有オブジェクトが具備する付帯情報は、大きくオブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報の5種類に分類することができる。以下、各情報について説明する。
【0058】
[付帯情報1:オブジェクト固有情報]
オブジェクト固有情報とは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するため、又は当該オブジェクトと他のオブジェクトとの関連性を示すための情報であり、オブジェクト識別子(オブジェクトUID)、親オブジェクト識別子(親オブジェクトUID)、関係シリーズ識別子(関係シリーズUID)、当該シリーズ識別子(当該シリーズUID)を含む。
【0059】
オブジェクトUIDは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するための情報であり、各装置のオブジェクト生成部により、共有オブジェクト生成時に重複しない体系で発番される。親オブジェクトUIDは、当該オブジェクトを生成する場合に参照されたオブジェクト(親オブジェクト)を特定するための情報である。関係シリーズUIDは、当該共有オブジェクトと同一の条件(例えば、撮影条件、位置決め画像等)を用いたシリーズを特定するための情報である。この関係シリーズUIDは、その性質上、オブジェクト固有情報内において複数個存在する場合がある。このとき、同時にそのシリーズの付帯情報(シリーズ日時、シリーズ番号、シリーズ記述、造影種別)などもシリーズUIDと関連付けて付帯させることが好ましい。この様な構成により、共有オブジェクトを参照するだけで、実際の画像群の画像を検索することなく操作者が識別する情報を取得することができるようになる。当該シリーズUIDは、当該共有オブジェクトにより撮影条件等が示されるシリーズを特定するための識別子である。
【0060】
なお、各UIDによって特定されるデータとは、リンクが張られている、従って、各UIDに基づいてリンク先のデータにアクセスすることで、その画像群の派生の検査経過を迅速に辿ることが可能になる。また、共有オブジェクトの作成日、作成時間をオブジェクト固有情報に含めても良い。
【0061】
[付帯情報2:人体座標情報]
人体座標情報とは、スキャンによって取得された画像群が持つ座標系(一般的には、絶対寝台位置または相対寝台位置を基準とする装置毎の座標)とは異なり、画像上の人体構造を基準とした座標(人体基準座標)に関する情報である。この人体基準座標は、各装置の共有オブジェクト生成部において生成される。
【0062】
図6A、図6Bは、人体基準座標の概念を説明するための図である。同図において、前回人体座標系における基準点(例えば、OMライン、骨盤、みぞおち(心窩)等)O1から距離Lの位置にある断層が撮影断層位置であるとする。係る場合には、基準点O1及び今回座標系の基準O2(解剖学的に基準点O1と同一位置)との間のずれ量である座標校正量(Δx、 Δy、 Δz)と、基準点からの距離Lとに基づいて、前回撮影断層と同じ位置を特定することができる。従って、この人体座標情報により、撮影範囲やキー画像情報のキー画像座標など、次の検査や読影で再現が必要な位置を解剖学的に一致させることができる。
【0063】
なお、この人体座標情報を構成する位置情報は、上記例に拘泥されない。例えば、座標系の校正量(Δx, Δy, Δz)以外に、拡大や回転も含めて校正を行う場合には、拡大率αや回転角(β,θ)を、或いは一つの基準点に拘泥されず、別の基準点からの位置ずれ量(Δx2, Δy2, Δz2)を、人体座標情報にさらに含めるようにしてもよい。
【0064】
また、座標の基準点を解剖学的な構造物の名称と位置決め画像座標系(画像データの左上を(0,0)とする)の組合せを、前述の校正量とは別な情報として持ってもよい。この解剖学的基準点は、モダリティあるいはPACSの画像参照装置等の画像表示ユニットをもち、操作者が指定する位置情報を取得して保存する機能によって付加することができる。これを用いると、前回検査の位置決め画像上に解剖学的な基準点を描画によって図示することが可能になる。操作者はこれを見ながら今回検査の位置決め画像で同じ解剖学的構造物を指定することで、検査装置は容易に前回の座標系とのずれ=座標系校正量を認識することができるようになる。
【0065】
解剖学基準点は、呼吸や拍動といった生理的な体動による位置の変化が少ない部分を選択するのが好ましい。具体例としては、第12胸椎椎体下縁中央、腸骨棘、腸骨陵、恥骨結合下縁、気管分岐部下縁などがある。ここでは構造物を人間が判断するため名称を格納しているが、体内臓器を画像から自動的に識別する技術を用いる場合は計算機によって識別できる構造物の識別子としてもよい。このような技術は、「科研費特定領域研究プロジェクト 多次元医用画像の知的診断支援(http://www.future-cad.org/fcad/index_j.htm)」によって研究・開示されている。
【0066】
[付帯情報3:撮影条件]
撮影条件とは、撮影動作によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集するために必要な物理的条件である。この条件の内容は、モダリティの種類に依存する。例えば、X線CT装置の撮影条件は、スキャンの開始位置と範囲(寝台移動量)、X線管球のKV/mA、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(ビームピッチ)といった物理量である。しかしながら、撮影条件の内容は、この例に拘泥されない。例えば、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、造影剤投与の有無、投与量、薬剤の種類、患者の体位(診断上で寝る方向、姿勢)等を含める構成としてもよい。さらに、最近は被曝低減のために一定の画質になるようにKV/mAを自動制御する機能があるが、そのような場合は、制御量である画像ノイズ(SD値)を撮影条件に含める構成としてもよい。
【0067】
また、例えばMRI装置の場合は、撮影範囲、患者の挿入方向や体位、磁場強度、パルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位、装着位置といったパラメータを撮影条件に含めることができる。
【0068】
[付帯情報4:画像生成条件]
画像生成条件とは、撮影によって得られた物理データから画像を再構成するするためのパラメータであり、例えば再構成範囲、時相、画像の位置、方向、厚さ、FOV(拡大率)、再構成関数等のフィルタ処理パラメータなどである。また、この画像生成条件には、各種医用画像診断装置や画像参照装置において実行されるボリュームレンダリングやMPR処理等の画像処理において使用される条件も含まれる。例えば、MPR処理の場合は、基準座標と法線ベクトル、スライス厚、範囲などが相当する。
【0069】
なお、再構成条件の範囲については、再構成範囲を示した位置決め画像を付帯することにより定義してもよい。係る場合は、一つの共有オブジェクトの中に、複数の再構成範囲を示す複数の位置決め画像が格納されることになる。
【0070】
[付帯情報5:キー画像情報]
キー画像情報は、PACS側のコンポーネントで読影や画像診断の段階で付されるキー画像の位置、方向、画像処理に関する情報等である。各装置の共有オブジェクト生成部は、PACSの画像参照装置に表示して特定の画像をキー画像として指定したタイミング、あるいはレポートへの貼り付け操作、レポート文章との関連付け操作(ハイパーリンク)等を行ったタイミングで、該当する画像をキー画像として認識する。画像参照装置は、認識した画像が含まれるシリーズの共有オブジェクトを検索して特定する。その画像の識別子たとえばDICOM規格のSOPInstanceUID、z軸座標位置あるいは、観察時の方向、拡大率、WW/WLといった情報をキー画像情報として保持する。また、MPRを作成した場合は、画像生成条件と同様にキー画像となるMPR画像についての位置や方向、生成条件を用いてもよい.
以上の付帯情報を保持することによって、検査読影開始時に前回画像と比較可能な画像を漏れなく適正に撮影することができるようになる。なお、共有オブジェクトは、上記に示した全ての情報を有する必要はなく、過去の医療行為実施時において使用された情報を有効に利用可能とするものであれば、利用される装置や目的に応じてその内容は種々変更可能である。例えば、医用画像診断装置(モダリティ)に用いる共有オブジェクトは、患者ID、スキャン範囲(再構成範囲)に関係する位置情報、ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像とから構成することもできる。また、PACSに用いる共有オブジェクトでは、、患者ID、キー画像の位置情報・ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像から構成するとしてもよい。さらに、リファレンス像を必要とせず、単に過去の撮影条件等のみを利用する仕様を望む場合には、撮影条件等を含む付帯情報のみからなる構成にて共有オブジェクトを生成すればよい。
【0071】
(動作)
次に、本医用画像診断システムSの動作について、X線CT装置1又はPACSサーバ9において共有オブジェクト生成を行う場合を例に説明する。
【0072】
[実施例1]
まず、X線CT装置1における共有オブジェクト生成処理について説明する。この共有オブジェクト生成処理は、例えば同一シリーズの画像生成・保存が行われるタイミングで、当該シリーズに関する共有オブジェクトを生成するものである。しかしながら、共有オブジェクトの生成タイミングはこの例に拘泥されず、当該シリーズにおいて、撮影条件、画像生成条件等の共有オブジェクトを構成する情報が決定された後であれば、どのようなタイミングであってもよい。
【0073】
図7は、共有オブジェクト生成においてX線CT装置1が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、X線CT画像を取得するために、患者ID等からの患者情報の入力及び検査オーダの選択を受けると(ステップS1)、制御部127は、スキャノグラムの撮影条件(FOV、管球電圧、スキャン方向等)に基づいてX線管球113、X線検出器115等を制御し当該患者に関するスキャノグラムを収集し、表示部129に表示する(ステップS2)。
【0074】
次に、入力部131からの撮影条件、画像生成条件等の設定を受けると(ステップS3)、制御部127は、設定された撮影条件に従ってX線CT画像取得のためのスキャンを実行する(ステップS4)。
【0075】
再構成部123は、設定された画像生成条件に従って、X線CT画像を生成する(ステップS5)。生成されたX線CT画像は、一つのシリーズ情報として自動的に記憶部125に保存される(ステップS6)。
【0076】
次に、共有オブジェクト生成部133は、ステップS6において保存されたシリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、スキャノグラム、及びX線CT画像生成において用いられた画像生成条件等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するシリーズ情報との関連付け情報(例えば、シリーズUIDと共有オブジェクトUIDとの対応テーブル)を生成する(ステップS7)。
【0077】
なお、ステップS3の撮影条件、画像生成条件等の設定では、例えば当該患者に関する過去のスキャノグラム、撮影条件、画像生成条件等が参照される場合がある。係る場合には、参照された当該過去のスキャノグラム。及びこれに対応する過去のシリーズUID等を、共有オブジェクトに含める構成とすることが好ましい。
【0078】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、当該スキャンによって得られたシリーズ情報と共にPACSサーバ9に送信される(ステップS8)。PACSサーバ9は、受け取ったシリーズ情報を画像記憶部95aに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS9)。
【0079】
[実施例2]
次に、PACSサーバ9における共有オブジェクト生成処理について説明する。この共有オブジェクト生成処理は、例えばX線CT装置において過去のスキャノグラム等を参照してスキャンが実行された場合、当該X線CT装置からの画像データ、共有オブジェクト、関連づけ情報の受信をトリガとして、参照にされたスキャノグラムに対応するシリーズを構成する画像群(及びその付帯情報)を用いて、共有オブジェクトを生成するものである。
【0080】
しかしながら、共有オブジェクトの生成タイミングはこの例に拘泥されず、PACSサーバ9は、自身が保管する過去画像に付された付帯情報等に基づいて、設定により任意のタイミングで、共有オブジェクトの生成処理を実行することが可能である。
【0081】
図8は、共有オブジェクト生成においてPACSサーバ9が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。なお、同図におけるステップS7〜S9までの処理は、図7に示したものと同様である。
【0082】
共有オブジェクト生成部92は、受信したシリーズに対応するスキャンにおいて参照された過去画像(位置決め画像を含む)、過去撮影情報等を関連シリーズUIDに基づいて検索し取得する(ステップS10)。また、共有オブジェクト生成部92は、取得した過去画像の付帯情報、位置決め画像等を用いて、共有オブジェクトを生成し、また、当該共有オブジェクトと過去画像との関連情報を生成する(ステップS11)。生成された共有オブジェクト、及び関連づけ情報は共有オブジェクト記憶部95bに保存される(ステップS12)。
【0083】
[実施例3]
次に、画像参照装置7における共有オブジェクト生成処理について説明する。この共有オブジェクト生成処理は、例えば読影処理段階におけるキー画像の生成に用いられた画像処理パラメータの設定、撮影範囲内のキー画像の位置等を用いて、共有オブジェクトを生成するものである。
【0084】
図9は、共有オブジェクト生成において画像参照装置7が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、読影処理を実施するために、制御部71は、PACSサーバ9に対して、読影対象となるシリーズに属する画像データ群の取得要求を送信する(ステップS13)。PACSサーバ9の制御部91は、取得要求を受信し、画像記憶部95aから該当する画像データ群を読み出す(ステップS14)。当該読み出された画像データ群は、送受信部96により画像参照装置7に送信される(ステップS15)。送信された画像データ群は、画像参照装置7の送受信部78により受信され、記憶装置77に保存される。
【0085】
次に、画像データ群から読影医師によってキー画像が選択され、当該キー画像に対し、操作部74からの指示に従って画像処理部72により所定の画像処理が施される(ステップS16)。レポート作成部75は、読影医師による操作部74からの入力に基づいてレポートを作成する(ステップS17)。
【0086】
次に、共有オブジェクト生成部76は、ステップS17において実行された画像処理に関する条件(倍率、方向、変換処理等)、キー画像を特定するための位置情報、読影対象としたシリーズのUID等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するレポートとの関連付け情報を生成する(ステップS18)。
【0087】
なお、ステップS16のキー画像選択では、読影対象となるシリーズにおいて取得された位置決め画像が参照される場合がある。係る場合には、参照された位置決め画像を、共有オブジェクトに含める構成とすることが好ましい。
【0088】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、作成されたレポートと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS19)。PACSサーバ9は、受け取ったレポートをレポート記憶部95dに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS20)。
【0089】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0090】
本医療画像診断システムによれば、過去の医療情報のうち、撮影段階やレポート作成段階に有効なものについて、統一された形式にて共有情報(共有オブジェクト)を新たに生成する。この共有情報には、位置決め画像、オブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報が含まれる。従って、現在の撮影において、過去の(例えば前回の)撮影条件や撮影範囲等を高い精度で再現させることができる。
【0091】
また、医療画像診断システムにおいて形成される共有オブジェクトは、統一された形式にて生成される。従って、その内容にばらつきは発生しないため高い汎用性をもち、従って種々の装置や処理で利用することができる。
【0092】
また、医療画像診断システムにおいて形成される共有オブジェクトは、対応するシリーズに関する情報や作成の基礎とされた(親)共有オブジェクトを特定するための情報等を、オブジェクト固有情報として含んでいる。従って、当該共有オブジェクトやシリーズに対応する情報に、迅速にアクセスすることができる。
【0093】
また、医療画像診断システムにおいては、例えばシリーズ情報作成等の所定のタイミングにより、当該装置において使用された撮影条件等を用いて自動的に生成される。従って、撮影者に新たな作業を要求することなく、医療行為に有効な共有情報を生成することができる。
【0094】
なお、本実施形態においては、X線CT装置1、PACSサーバ9、画像参照装置7のそれぞれが共有オブジェクト生成機能を有する例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、X線CT装置1、PACSサーバ9、画像参照装置7のうちの少なくとも一つに共有オブジェクト生成機能を持たせる等、利用目的に応じてその構成は種々変更可能である。
【0095】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る医療画像診断システムSは、例えば第1の実施形態で述べた手法により生成された共有オブジェクトを利用して、画像診断で用いられる各種医療関連機器における条件設定、画像読影(及びこれに伴うレポート作成等)において用いられる過去情報(前回検査のキー画像等)へのアクセス等を簡略化ならしめる支援機能(以下、「共有オブジェクトを用いた支援機能」と呼ぶ。)を有するものである。
【0096】
図10は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。同図と図1の構成を比較した場合、共有オブジェクトを用いた支援機能を有するX線CT装置3をさらに具備する点、及び画像参照装置7が共有オブジェクトを用いた支援機能を有する点がさらに異なる。
【0097】
[X線CT装置]
図11は、本実施形態に係るX線CT装置3を示した図である。同図に示すX線CT装置3の構成は、図2に示したX線CT装置1の構成と比較した場合、共有オブジェクト解析部140をさらに具備する点、及び共有オブジェクトを用いた支援機能をさらに具備する点で異なる。
【0098】
記憶部125は、後述する共有オブジェクトを用いた支援機能を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0099】
制御部127は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現する。この内容については、後で詳しく説明する。
【0100】
共有オブジェクト解析部140は、共有オブジェクトを用いた支援機能に基づく処理(共有オブジェクトを用いた支援処理)において、例えばPACSサーバ9内の共有オブジェクト記憶部95bから読み出された共有オブジェクトを解析する。
【0101】
[画像参照装置]
図12は、本実施形態に係る画像参照装置7を示した図である。同図に示す画像参照装置7の構成は、図3に示した第1の実施形態に係る画像参照装置の構成と比較した場合、共有オブジェクト解析部79をさらに具備する点、及び共有オブジェクトを用いた支援機能をさらに具備する点で異なる。
【0102】
記憶部77は、後述する共有オブジェクトを用いた支援機能を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0103】
制御部71は、記憶部77に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現する。この内容については、後で詳しく説明する。
【0104】
共有オブジェクト解析部79は、共有オブジェクトを用いた支援処理において、例えばPACSサーバ9内の共有オブジェクト記憶部95bから読み出された共有オブジェクトを解析する。
【0105】
(共有オブジェクトを用いた支援機能)
次に、X線CT装置3、画像参照装置7のそれぞれが共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの動作について説明する。
【0106】
[実施例1]
まず、X線CT装置3が共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの動作について説明する。この共有オブジェクトを用いた支援処理は、例えば同一患者の過去の検査において取得されたシリーズに関する共有オブジェクトを用いて、撮影時における撮影条件設定、撮影範囲設定等の作業を支援するものである。
【0107】
図13、14は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、X線CT画像を取得するために、患者ID等の患者情報の入力及び検査オーダの選択を受けると(ステップS21)、制御部127は、スキャノグラムの撮影条件に従ってX線管球113、X線検出器115等を制御し当該患者に関するスキャノグラムを収集して、表示部129に表示する(ステップS22)。
【0108】
次に、制御部127は、ステップS21において入力された患者情報に基づいて、当該患者のシリーズ情報に対応する共有オブジェクトの検索要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS23)。PACSサーバ9の制御部91は、検索要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bに記憶された共有オブジェクトのうち、当該患者に関するシリーズの共有オブジェクトを検索し(ステップS24)、その検索結果をX線CT装置3に送信する(ステップS25)。X線CT装置3の送受信部140によって受信された検索結果は、所定の形態にて表示部129に表示される。
【0109】
図15は、患者のシリーズ情報に対応する共有オブジェクトの検索結果の表示形態を示しており、当該患者のシリーズ情報が一覧表示される例を示している。操作者により、一覧表示された複数のシリーズ情報から入力部131を介して所望のシリーズが選択されると(ステップS26)、制御部127は、選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトの取得要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS27)。PACSサーバ9の制御部91は、共有オブジェクトの取得要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bから選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトを抽出し(ステップS28)、ネットワークを介してX線CT装置3に送信する(ステップS29)。
【0110】
X線CT装置3の送受信部140によって受信された共有オブジェクトは、共有オブジェクト解析部135において解析される(ステップS30)。すなわち、共有オブジェクト解析部135は、取得した共有オブジェクトにおいて記録されている撮影条件を解析し、現在の撮影と矛盾しない条件については、当該共有オブジェクトの内容と等価となるように自動的に設定する。また、共有オブジェクト解析部135は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像を解析し、当該画像上の基準点(例えば、身体上のランドマーク)と、現在の(すなわち、ステップS22において取得された)位置決め画像上の基準点とを特定する。なお、過去及び現在の位置決め画像の基準点指定は、上記例に拘泥されず、マニュアル操作によって実行するようにしてもよい。
【0111】
制御部127は、共有オブジェクトの解析結果を所定の形態にて表示部129に表示する(ステップS31)。具体的には、制御部127は、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された条件を設定させるため、及び自動設定された条件の可否を判断させるために、例えば図15に示すような対話形式にて解析結果を表示部129に表示する。また、制御部127は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とが対応するように、双方の位置決め画像を重ね合わせ表示、又は隣り合わせて表示させる。
【0112】
次に、制御部127は、操作者による入力部131からの指示に基づいて、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された残りの条件、撮影範囲を設定する(ステップS32)。このとき、過去と現在との位置決め画像が、互いの基準点が対応するように表示されているため、操作者は、より正確に過去と現在との設定の違いを把握することができる。従って、操作者は、この違いを考慮して、解剖学的な断面位置が前回と一致するよう今回の検査での断面設定を行うことができる。なお、このステップS32における断面位置設定は、操作者による上記マニュアル操作の他、人間座標情報に基づいて、装置が自動的に行う構成であってもよい。
【0113】
次に、入力部131からの撮影条件、画像生成条件等の設定を受けると、制御部127は、設定された撮影条件に従ってX線CT画像取得のためのスキャンを実行する(ステップS33)。再構成部123は、設定された画像生成条件に従って、X線CT画像を生成する(ステップS34)。生成されたX線CT画像は、一つのシリーズ情報として自動的に記憶部125に保存される(ステップS35)。
【0114】
次に、共有オブジェクト生成部133は、ステップS6において保存されたシリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、スキャノグラム、及びX線CT画像生成において用いられた画像生成条件等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するシリーズとの関連付け情報を生成する(ステップS36)。このとき、ステップS26において選択されたシリーズのUIDは、本シリーズに参考として使用された親シリーズUIDとして、また、ステップS27において選択された共有オブジェクトのUIDは、本シリーズに対応する共有オブジェクトの基礎として使用された親共有オブジェクトUIDとして、当該共有オブジェクトに記録される。
【0115】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、当該スキャンによって得られたシリーズと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS37)。PACSサーバ9は、受け取ったシリーズ情報を画像記憶部95aに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS38)。
【0116】
なお、本実施例では、過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とが対応するように、位置合わせを自動的に行う場合について説明した。しかしながら、これに拘泥されず、マニュアル操作による人為的な位置合わせや微調整を行うようにしてもよい。
【0117】
また、位置決め画像間の位置合わせは、例えば画像上の骨の位置等を基準として実行される。従って、例えば、過去の位置決め画像上に映像化されている骨を例えば緑色で、何組織を赤色で表示することで、グレースケールで表示される現在の位置決め画像との位置合わせを容易にすることができる。
【0118】
また、撮影範囲を設定する場合には、現在の位置決め画像上における過去のキー画像位置を把握することが重要である。しかしながら、、一般に、呼吸等の体動のため、同一部位(又は同一範囲)を撮影した場合であっても、厳密には過去の位置決め画像と現在の位置決め画像との間で位置が対応しない場合がある。この様な不具合を改善するため、過去の位置決め画像と現在の位置決め画像とを位置合わせする場合に、過去の位置決め画像上において過去のキー画像位置をマーカ表示等することが好ましい。このように過去の位置決め画像上におけるキー画像位置を明示することで、ユーザは、必ず過去のキー画像位置を含むように今回の撮影範囲を設定することができる。
【0119】
[実施例2]
次に、画像参照装置7が共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの動作について説明する。この共有オブジェクトを用いた支援処理は、例えば同一患者の過去の検査において取得されたシリーズに関する共有オブジェクトを用いて、読影段階における前回検査時のキー画像検索、前回と同様の画像処理パラメータ設定等の作業を支援するものである。
【0120】
図17は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、読影処理を実施するために、制御部71は、PACSサーバ9に対して、読影対象となるシリーズに属する画像データ群、及び当該シリーズに対応する共有オブジェクト、当該患者の同一検査に関する直近のレポートに対応する共有オブジェクトの取得要求を送信する(ステップS40)。PACSサーバ9の制御部91は、取得要求を受信し、画像記憶部95aから該当する画像データ群を、共有オブジェクト記憶部95bから該当する共有オブジェクトをそれぞれ読み出し(ステップS42)、その検索結果を画像参照装置7に送信する(ステップS43)。
【0121】
画像参照装置7の送受信部78によって受信された共有オブジェクトは、共有オブジェクト解析部79において解析される(ステップS44)。すなわち、共有オブジェクト解析部79は、取得した共有オブジェクトにおいて記録されている画像生成条件等を解析し、前回のレポート作成時において使用されたキー画像と同一位置に対応する画像を受信した画像データ群から選択すると共に、前回のレポート作成時に用いられた画像処理パラメータを自動的に設定する。
【0122】
次に、画像データ群から読影医師によってキー画像が選択され、当該キー画像に対し、操作部74からの指示に従って画像処理部72により所定の画像処理が施される。レポート作成部75は、読影医師による操作部74からの入力に基づいてレポートを作成する(ステップS45)。
【0123】
次に、共有オブジェクト生成部76は、ステップS17において実行された画像処理に関する条件(倍率、方向、変換処理等)、キー画像を特定するための位置情報、読影対象としたシリーズのUID、ステップS44において解析した共有オブジェクトのUID等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するレポートとの関連付け情報を生成する(ステップS46)。
【0124】
生成されたレポート、共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、作成されたレポートと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS47)。PACSサーバ9は、受け取ったレポートをレポート記憶部95dに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS48)。
【0125】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0126】
まず、本医用画像診断システムによれば、統一された形式を持つ共有オブジェクトを用いて、過去の検査と同様の撮影条件、撮影範囲、撮影断層位置、画像生成条件等を自動的に設定することができる。従って、撮影段階やレポート作成段階における医師等の作業労力を軽減させることができ、また、過去の(例えば前回の)検査での条件を高精度で再現することができる。
【0127】
また、本医用画像診断システムによれば、現在の設定と矛盾する条件等は、操作者に別途設定要求を提示し、また、自動設定された条件についても、その確認要求を提示する。従って、各種条件の設定ミスを防止することができ、医師等の作業労力を軽減させつつも、高い安全性を確保することができる。
【0128】
また、本医用画像診断システムによれば、共有オブジェクトの人体座標情報を用いて、過去の位置決め画像と現在の位置決め画像との空間的に対応付けて、並列又は重畳させて表示することができる。従って、医師等は、撮影範囲、撮影断面位置を容易に把握、設定することができ、医師等の作業労力を軽減させつつも、精度の高い画像診断を実現することができる。
【0129】
また、本医用画像診断システムが使用する共有オブジェクトには、オブジェクト固有情報により、関連のあるシリーズや共有オブジェクトにリンクが張られている。従って、所望の関連情報に迅速にアクセスすることができ、医師等の作業労力軽減、及び作業効率の向上を実現することができる。
【0130】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る医療画像診断システムSは、共有オブジェクトを利用する磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)を具備するものである。
【0131】
図18は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。同図と図10の構成を比較した場合、共有オブジェクト生成機能、共有オブジェクトを用いた支援機能を有するMRI装置5をさらに具備する点がさらに異なる。
【0132】
[MRI装置]
MRI装置5は、磁気共鳴現象を利用したスキャンシーケンスを実行することにより、被検体の任意の断面に関する画像(MR画像)を生成するものである。
【0133】
図19は、MRI装置5の構成を示したブロック図である。同図に示すように、MRI装置5は、静磁場磁石511、冷却系制御部512、傾斜磁場コイル513、高周波送信コイル514、高周波受信コイル515、送信部518、受信部519、データ処理部500、第1表示部524、第2表示部を具備している。
【0134】
静磁場磁石511は、静磁場を発生する磁石であり、一様な静磁場を発生する。
【0135】
冷却系制御部512は、静磁場磁石511の冷却機構を制御する。
【0136】
傾斜磁場コイル513は、静磁場磁石11の内側に設けられ、且つ静磁場磁石511よりも短軸であり、傾斜磁場コイル装置電源517から供給されるパルス電流を傾斜磁場に変換する。この傾斜磁場コイル513が発生する傾斜磁場によって、信号発生部位(位置)が特定される。
【0137】
なお、Z軸方向は、本実施形態では静磁場の方向と同方向にとるものとする。また、本実施形態において、傾斜磁場コイル513及び静磁場磁石511は円筒形をしているものとする。また、傾斜磁場コイル513は、所定の支持機構によって真空中に配置される。これは、静音化の観点から、パルス電流の印加によって発生する傾斜磁場コイル13の振動を、音波として外部に伝播させないためである。
【0138】
高周波送信コイル(RF送信コイル)514は、被検体のスキャン領域に対して、磁気共鳴信号を発生させるための高周波パルスを印加するためのコイルである。この高周波送信コイル514は全身用RFコイルであり、例えば腹部等を撮影する場合には、受信コイルとしても使用することができる。
【0139】
高周波受信コイル(RF受信コイル)515は、被検体の近傍、好ましくは密着させた状態で当該被検体を挟むように設置され、被検体から磁気共鳴を受信するためのコイルである。当該高周波受信コイル515は、一般的には、部位別に専用の形状を有する。
【0140】
なお、図19では、高周波送信コイルと高周波受信コイルとを別体とするクロスコイル方式を例示したが、これらを一つのコイルで兼用するシングルコイル方式を採用する構成であってもよい。
【0141】
傾斜磁場コイル装置電源517は、傾斜磁場を形成するためのパルス電流を発生し、傾斜磁場コイル513に供給する。また、傾斜磁場コイル装置電源517は、後述する制御部502の制御に従って、傾斜磁場コイル513に供給するパルス電流の向きを切替えることにより、傾斜磁場の極性を制御する。
【0142】
送信部518は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部(それぞれ図示せず)を有しており、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用高周波コイルに送信する。当該送信によって高周波送信コイル514から発生した高周波によって、被検体の所定原子核の磁化は、励起状態となる。
【0143】
受信部519は、増幅部、中間周波数変換部、位相検波部、フィルタ、A/D変換器(それぞれ図示せず)を有する。受信部519は、高周波受信コイル515から受信した、核の磁化が励起状態から基底状態に緩和するとき放出する磁気共鳴信号(高周波信号)に対して、増幅処理、発信周波数を利用した中間周波数変換処理、位相検波処理、フィルタ処理、A/D変換処理を施す。
【0144】
データ処理部500は、受信後のデータを処理して磁気共鳴画像を生成する計算機システムであり、記憶部501、制御部502、データ収集部503、再構成部504、共有オブジェクト生成部505、共有オブジェクト解析部506、操作部507、送受信部508を有している。
【0145】
記憶部501は、本MRI装置5によって取得されたMR画像、位置決め画像(スカウト画像)、ネットワークNを介して取得した各種情報等を記憶する。また、記憶部501は、共有オブジェクト生成機能、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0146】
制御部502は、図示していないCPU、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として、本磁気共鳴イメージング装置を静的又は動的に制御する。また、制御部502は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、共有オブジェクト生成機能、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現する。
【0147】
データ収集部503は、受信部519によってサンプリングされたディジタル信号を収集する。
【0148】
再構成部504は、データ収集部503によって収集されたデータに対して、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成等を実行し、被検体内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0149】
共有オブジェクト生成部505は、磁気共鳴イメージングにおいて使用される撮影条件(TR、TE、スライス厚、FOVサイズ、マトリクスサイズ等)、位置決め画像等を含む共有オブジェクトを生成する。また、共有オブジェクト生成部76は、スキャンによって取得された投影データから画像を再構成する場合に用いられる画像生成条件等を含む共有オブジェクトを生成する。
【0150】
共有オブジェクト解析部506は、共有オブジェクトを用いた支援処理において、例えばPACSサーバ9内の共有オブジェクト記憶部95bから読み出された共有オブジェクトを解析する。
【0151】
操作部507は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむため入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)を有している。
【0152】
送受信部508は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0153】
第1表示部524は、データ処理部520から入力したスペクトラムデータあるいは画像データ等を表示する出力ユニットである。
【0154】
第2表示部525は、静磁場磁石511、例えば図20に示すように傾斜磁場コイル513等が配置されるシールドルーム内、或いは当該シールドルームから視認可能なその他の所定位置に配置され、例えば過去のシリーズに関する共有オブジェクトに記録された撮影情報(例えば、RFコイルの種別、接続方法、寝台天板上への設置方法、心電同期の有無、被検体の体位設定、固定方法、造影剤投与の有無、造影剤の種類その他の被検体設定に必要な情報)を表示する。
【0155】
(動作)
次に、本医用画像診断システムSの動作について、MRI装置5において実行される処理を中心に説明する。
【0156】
[実施例1]
実施例1は、MRI装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトを利用するものである。
【0157】
図21は、本MRI装置5が共有オブジェクトを利用して実行する撮影処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、MR画像を取得するために、患者ID等の患者情報の入力を受けると(ステップS50)、制御部502は、当該患者に関する過去のシリーズの検索要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS51)。PACSサーバ9の制御部91は、検索要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bに記憶された共有オブジェクトのうち、当該患者のシリーズに対応する共有オブジェクトを検索し(ステップS52)、その検索結果をMRI装置5に送信する(ステップS53)。MRI装置5の送受信部508によって受信された検索結果は、所定の形態にて第1表示部524に所定の形態にて表示される。
【0158】
次に、操作者により、一覧表示された複数のシリーズ情報から入力部131を介して所望のシリーズが選択されると(ステップS54)、制御部502は、選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトの取得要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS55)。PACSサーバ9の制御部91は、共有オブジェクトの取得要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bから選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトを抽出し(ステップS56)、ネットワークを介してMRI装置5に送信する(ステップS57)。
【0159】
MRI装置5の送受信部508によって受信された共有オブジェクトは、共有オブジェクト解析部506において解析され(ステップS58)、当該共有オブジェクトに記録されている被検体設定に関する撮影条件(例えば、RFコイルの種別、接続方法、寝台天板上への設置方法、心電同期の有無、被検体の体位設定、固定方法、造影剤投与の有無、造影剤の種類等)が抽出され、第1表示部524、第2表示部525に表示される(ステップS59)。医療技師等は、例えばシールドルーム内において第2表示部525に表示された撮影条件を見ることで、前回検査と同じ被検体設定を容易に行うことができる。
【0160】
被検体設定が終了すると、制御部202は、リファレンス画像(例えば、パイロットスキャンによって収集されたコロナル像)の撮影条件に従って送信部518、受信部519、傾斜磁場コイル装置電源517等を制御し当該被検体に関するリファレンス画像を収集し、第1表示部524に表示する(ステップS60)。共有オブジェクト解析部506は、取得された現在のリファレンス画像上の基準点と共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像と解析し、両画像上の基準点を特定する。また、共有オブジェクト解析部506は、共有オブジェクトにおいて記録されている撮影条件、画像生成条件を解析し、現在の撮影と矛盾しない条件については、当該共有オブジェクトの内容と等価となるように自動的に設定する。
【0161】
制御部502は、共有オブジェクトの解析結果を所定の形態にて第1表示部524に表示する(ステップS62)。具体的には、制御部127は、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された条件を設定させるため、及び自動設定された条件の可否を判断させるために、例えば対話形式にて解析結果を第1表示部524に表示する。また、制御部202は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とが対応するように、双方の位置決め画像を重ね合わせ表示、或いは例えば図22、図23、図24のそれぞれに示すように隣り合わせて表示させる。
【0162】
次に、制御部502は、操作者による操作部507からの指示に基づいて、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された残りの条件、撮影範囲を設定する(ステップS63)。入力部131からの撮影条件、画像生成条件等の設定を受けると、制御部502は、設定された撮影条件に従ってMRI画像取得のためのスキャンを実行する(ステップS64)。再構成部504は、設定された画像生成条件に従って、MR画像を生成する(ステップS65)。生成されたMR画像は、一つのシリーズ情報として自動的に記憶部501に保存される。
【0163】
次に、共有オブジェクト生成部505は、保存されたシリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、リファレンス画像、及びMR画像生成において用いられた画像生成条件等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するシリーズとの関連付け情報を生成する(ステップS66)。このとき、ステップS54において選択されたシリーズのUIDは、本シリーズにの参考として使用された親シリーズUIDとして、当該共有オブジェクトに記録される。
【0164】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部508により、当該スキャンによって得られたシリーズと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS67)。PACSサーバ9は、受け取ったシリーズ情報を画像記憶部95aに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS68)。
【0165】
[実施例2]
実施例2は、X線CT装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトを利用するものである。なお、この例に拘泥されることなく、MRI装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトを、X線CT装置を用いた検査で利用するものであってもよい。さらに、MRI装置とX線CT装置との間に限定されず、過去と現在との検査において、使用する医用画像診断装置の種類が異なる他の場合であって、適用可能である。
【0166】
本実施例の場合には、図21のステップS54において、例えば図25に示すような検索結果が表示されることになる。また、ステップS58、ステップS61の共有オブジェクト解析においては、当該MRI装置5と共有可能な条件のみが選択され、利用されることになる。特に、共有オブジェクトに記録されている(位置決め画像を用いた)撮影範囲、スキャン断面の位置は、人体座標情報に変換されたものとなっている。従って、過去と現在との検査において、使用する医用画像診断装置の種類が異なる場合であっても、略同一の撮影範囲、スキャン断面位置を設定することができる。さらに、ステップS66の共有オブジェクト生成では、ステップS58において解析対象とされた共有オブジェクトに、シリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、リファレンス画像、及びMR画像生成において用いられた画像生成条件等を追記することで、新たな共有オブジェクトが生成されることになる。
【0167】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0168】
まず、本医用画像診断システムでは、統一された形式を持つ共有オブジェクトを用いて、過去の検査と同様の撮影条件、撮影範囲、撮影断層位置、画像生成条件等を自動的に設定することができる。従って、撮影段階やレポート作成段階における医師等の作業労力を軽減させることができ、また、過去の(例えば前回の)検査での条件を高精度で再現することができる。
【0169】
また、本医用画像診断システムでは、共有オブジェクトに記録された人体座標情報を用いて、過去の撮影範囲等と現在の撮影範囲等との対応付けを行う。従って、過去の検査と現在の検査との医用画像診断装置が異なる場合であっても、医師等の作業労力を軽減させつつも、精度の高い画像診断を実現することができる。
【0170】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態では、本スキャンの前段階(例えば、患者の寝台設定、位置決め用画像の取得等)において、共有オブジェクトを利用する医用画像診断装置の動作例についてさらに詳細に説明する。なお、説明を具体的にするため、本実施形態では医用画像診断装置としてMRI装置5を用いる場合を説明する。しかしながら、これに拘泥されず、本実施形態で説明する構成・動作がその他の医用画像診断装置にも適用可能であることは、当然である。
【0171】
図26は、本実施形態に係る画像診断における医療行為の流れ(検査依頼〜画像検査まで)を示した図である。
【0172】
同図に示すように、まず、MR画像を取得するために、患者ID等の患者情報の入力を受けると(ステップS50)、図21において示したステップS51〜ステップS58までの処理が実行される。共有オブジェクト解析の結果、当該共有オブジェクトに記録されている被検体設定に関する撮影条件(例えば、RFコイルの種別、接続方法、寝台天板上への設置方法、心電同期の有無、被検体の体位設定、固定方法、造影剤投与の有無、造影剤の種類等)が抽出され、第1表示部524、第2表示部525に表示される(ステップS59a)。医療技師等は、例えばシールドルーム内において第2表示部525に表示された撮影条件に基づいて、患者の寝台への設定、コイル設定等を行う(ステップS59b)。
【0173】
患者の寝台への設定が行われると、共有オブジェクト解析部506は、取得した共有オブジェクトから位置決め用画像の取得に利用可能な撮影条件(例えば、前回の位置決め用画像、前回の音声指示データ(例えば、前回の位置決め用画像撮影時に行われた、「息を吸って、呼吸を止めてください」等の患者に対する医療技師等の音声指示に関する情報。呼気又は吸気のいずれの状態での撮影かを判定するための情報である。図15の「前音声」、「後音声」参照。)、位置決め用画像上におけるキー画像の位置情報等)を抽出する。抽出された撮影条件は、第1表示部524、第2表示部525に表示される(ステップS59c)。なお、共有オブジェクト解析部506による解析の結果、共有オブジェクトに例えば前回の音声指示データが含まれない場合には、「前回の音声指示データ無し」等の所為のメッセージを表示することが好ましい。医療技師等は、提示された撮影条件を参照しながら、今回の位置決め用画像を取得するための撮影条件を設定する。
【0174】
制御部202は、設定された撮影条件に従って送信部518、受信部519、傾斜磁場コイル装置電源517等を制御し当該患者に関する位置決め用画像を収集し、第1表示部524に表示する(ステップS60)。以下、図21のステップS61〜S68までの処理が同様に実行され、診断画像及び共有オブジェクトが各シリーズ毎に生成される。
【0175】
以上述べた構成によれば、本スキャンやその後段階(例えば、画像生成段階)のみならず、患者の寝台への設定や位置決め用画像の取得時等の本スキャンの前段階においても、共有オブジェクトを利用することで、効率的又は再現性の高い画像診断を実現することができる。
【0176】
(第5の実施形態)
ある患者に対する検査(スタディ)を行う場合、図27に示すような複数のスキャンを含む診断プロトコルが計画され、実施される場合がある。典型的な例としては、第1スキャンにより胸部を撮影し、第2スキャンにより腹部を撮影するといった場合である。また、一回のスキャンによって取得された所定部位に関する画像データを用いて、異なる画像生成条件で複数の診断画像を生成する場合がある。典型的な例としては、図27に示す第1スキャンによって得られた画像データを用いて、シリーズ1−1としてサジタル像を生成し、シリーズ1−2としてアキシャル像を生成するといった場合である。
【0177】
一方、共有オブジェクトは各シリーズ毎に生成される。このため、図27に示した診断プロトコルを実行した場合には、合計n+m個の個別の共有オブジェクトが生成され管理されることになる。
【0178】
本実施形態では、この様に一回のスキャンや一回の診断プロトコルを実施した結果複数のシリーズ(及び共有オブジェクト)が生成される場合において、過去の共有オブジェクトを利用して効率的にスキャン計画を行うための例について説明する。
【0179】
なお、説明を具体的にするため、本実施形態では医用画像診断装置としてMRI装置5を用いる場合を説明する。しかしながら、これに拘泥されず、本実施形態で説明する構成・動作がその他の医用画像診断装置にも適用可能であることは、当然である。
【0180】
図28は、例えば図26のステップS54において表示される検索結果の一例を示している。同図において、シリーズ1−1〜シリーズ1−nは、第1スキャン(例えば、胸部スキャン)に基づくものであり、画像生成条件のみが異なるものである。また、シリーズ2−1〜シリーズ2−nは、第2スキャン(例えば腹部スキャン)に基づくものであり、同じく画像生成条件のみが異なるものである。
【0181】
図26のステップS55における動作として、図28の様に検索結果として表示された複数のシリーズの中から、例えば、シリーズ1−1及びシリーズ1−2に対応する共有オブジェクトの取得要求がなされたものとする。係る場合、共有オブジェクト解析部506は、シリーズ1−1に対応する共有オブジェクト1−1及びシリーズ1−2に対応する共有オブジェクト1−2を解析し、患者の設定に関する撮影条件、位置決め用画像、位置決め画像に関する撮影条件、本スキャンに関する撮影条件、画像生成条件等が重複するか否か等の種々の判別を行う。例えば、共有オブジェクト解析部506は、共有オブジェクト1−1と共有オブジェクト1−2とは、同一の位置決め用画像、位置決め画像に関する撮影条件、本スキャンに関する撮影条件を有する一方、異なる画像生成条件を有していることを判別する。
【0182】
従って、図26のステップS59a、ステップS59c、ステップS63では、共有オブジェクト1−1及び共有オブジェクト1−2に共通な撮影条件や位置決め用画像が利用される。このため、今回の撮影において利用する共有オブジェクトは二つであるにも関わらず、位置決め用画像の取得時における撮影条件の設定は、一回で済ませることができる。一方、共有オブジェクト1−1と共有オブジェクト1−2との画像生成条件が異なるため、ステップS65においては、共有オブジェクト1−1に含まれる画像生成条件に従うMR画像と、共有オブジェクト1−2に含まれる画像生成条件に従うMR画像との二種類が自動的に生成されることになる。
【0183】
また、図28の様に検索結果として表示された複数のシリーズの中から、例えば、シリーズ1−1、シリーズ1−2及びシリーズ2−1、シリーズ2−2が選択された場合には、シリーズ1−1、シリーズ1−2を再現するための胸部用の第1スキャンと、シリーズ2−1、シリーズ2−2を再現するための腹部用の第2スキャンとが自動的に計画される。第1スキャンでは共有オブジェクト1−1、1−2に基づいて、第2スキャンでは共有オブジェクト2−1、2−2に基づいて、ステップS58〜ステップS68までの動作が繰り返されることになる。
【0184】
以上述べた構成によれば、複数のシリーズに対応する複数の共有オブジェクトを利用する場合においても、共有オブジェクト間で重複する情報や異なる情報を判別し、効率的にスキャン計画を立てることが可能となる。従って、必要とされる各種条件の入力を必要最小限にして医療技師等の労力を軽減させることができると共に、再現性の高い画像取得を実現することができる。
【0185】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0186】
各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0187】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0188】
以上本発明によれば、過去の医療情報を広い適用性をもって高精度で再現することができる共有情報を生成することができ、また、当該共有情報を有効に利用することができる医用画像診断装置、及び医用画像診断システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る医療画像診断システムSの構成図を示している。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る画像参照装置7の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るPACSサーバ9の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図5は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。
【図6】図6(a)、(b)は、人体基準座標の概念を説明するための図である。
【図7】図7は、共有オブジェクト生成においてX線CT装置1が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。
【図8】図8は、共有オブジェクト生成においてPACSサーバ9が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。
【図9】図9は、共有オブジェクト生成において画像参照装置7が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係るX線CT装置3を示した図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る画像参照装置7を示した図である。
【図13】図13は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。
【図14】図14は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。
【図15】図15は、共有オブジェクト解析結果の表示形態の一例を示した図である。
【図16】図16は、患者のシリーズ情報に対応する共有オブジェクトの検索結果の表示形態を示しており、当該患者のシリーズ情報が一覧表示される例を示している。
【図17】図17は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。
【図18】図18は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。
【図19】図19は、第3の実施形態に係るMRI装置5の構成を示したブロック図である。
【図20】図20は、第2表示部525の配置例を示した図である。
【図21】図21は、本MRI装置5が共有オブジェクトを利用して実行する撮影処理の流れを示したフローチャートである。
【図22】図22は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とを対応させた表示形態の一例を示した図である。
【図23】図23は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とを対応させた表示形態の他の例を示した図である。
【図24】図24は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とを対応させた表示形態の他の例を示した図である。
【図25】図25は、X線CT装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトをMRI装置で利用する場合に表示されるシリーズ選択画面である。
【図26】図26は、第4の実施形態に係る画像診断における医療行為の流れ(検査依頼〜画像検査まで)を示した図である。
【図27】図27は、複数のスキャンを含む診断プロトコルを説明するための概念図である。
【図28】図28は、例えば図26のステップS54において表示される検索結果の一例を示している。
【図29】図29は、画像診断における医療行為の流れ(患者からの依頼〜画像検査まで)を示した図である。
【符号の説明】
【0190】
S…医用画像診断システム、1、3…X線CT装置、5…MRI装置、7…画像参照装置、9…PACSサーバ、71…制御部、72…画像処理部、73…表示部、74…操作部、76…共有オブジェクト生成部、77…記憶装置、78…送受信部、91…制御部、92…共有オブジェクト生成部、93…表示部、94…操作部、95…記憶装置、96…送受信部、100…架台、101…情報処理部、111…スリップリング、112…架台駆動部、113…X線管球、115…X線検出器、116…回転フレーム、117…データ収集部、118…非接触データ電送装置、119高電圧発生装置、120…前処理部、121…メモリ部、123…再構成部、124…画像処理部、125…記憶部、127…制御部、129…表示部、131…入力部、133…共有オブジェクト生成部、140…送受信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に寝台上に置かれた被検体をスキャンして得られたデータから画像生成する医用画像診断装置、医用画像診断装置に接続される医用画像保管通信システム用サーバ(PACSサーバ)、医用画像診断装置及び医用画像診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療行為の専門分野は細分化されている。例えば、画像診断においては、患者の診断画像の取得、取得された診断画像の読影及びレポート作成、レポート結果に基づく診断結果や治療方針の説明、等の各作業に分割される。各作業は、各専門家(担当の医師又は担当技師)によって担当され、これら全ての作業によって、患者に対する診断等の医療行為が達成される。各専門家は、前段の作業において他の専門家が作成した情報に基づいて、且つ適宜過去の診断情報等を参照することにより、各作業を実行する。これらの作業は、例えば、診断画像を取得するX線CT装置、MRI装置等の医用画像診断装置、診断画像を記憶するPACSサーバ、診断画像を読影するための画像参照装置より行われる。
【0003】
図29は、画像診断における医療行為の流れ(患者からの依頼〜画像検査まで)の一例を示した図である。同図に示すように、まず、被依頼医師(主治医)は、患者との問診等に基づいて検査(スタディ)オーダを作成し、検査技師に伝える(ステップSa)。ここで、オーダとは、オーダシステムを利用して各種医用画像診断装置にネットワーク等を介して送られる、次にしなければならない検査の要求である。
【0004】
次に、検査技師は、所定の医用画像診断装置を用いて検査を実施し、患部に関する画像を取得する(ステップSb)。この検査は、例えば医用画像診断装置のモニタ上に表示される(検査オーダに基づく)検査要求のリストから、所望の検査を選択することで実行される。従って、検査は、原則検査オーダに従って実施されることになる。しかしながら、検査の方法や撮影すべき範囲/方向、撮影の条件の判断のためにそれらの情報だけでは不十分なことがある。その場合は、検査技師は、前回の検査画像、前回のレポート、前回のレポートに関連付けられたキー画像(診断の根拠となる画像)を参照して、その画像と同じ画像が得られるように撮影の範囲/方向、撮影条件を勘案し検査を実施している。取得された画像データは、デジタルとして医用画像診断装置から出力され、例えばPACSサーバにおいて保管される。なお、医用画像診断装置及びPACSサーバでは、一般に、検査(スタディ)、シリーズ(一回のスキャン処理を区別するための指標)、画像という階層に分けて画像を管理している。従って、ある一つの検査において複数回のスキャンが実行された場合には、その検査に対応する複数のシリーズ情報が対応付けて記憶され、また、各シリーズには、そのシリーズ(すなわち、そのスキャン処理)に対応する複数の画像が対応付けて記憶されることになる。
【0005】
次に、放射線科の読影医は、検査オーダに対応した読影レポートを作成する(ステップSc)。この際、前回の画像診断の根拠となった画像、すなわち前回レポートと関連付けられたキー画像と、今回の検査画像を比較して診断することが重要となる。従って、放射線科の読影医は、オーダを参照して依頼内容、及び前回検査のレポートや画像を参照して読影すべきポイントを確認し、今回検査の画像を読影(画像診断)する。
【0006】
次に、依頼医師は、作成されたレポートを参照して、画像診断の結果を判断する(ステップSd)。すなわち、依頼医師は、レポートに関連付けられたキー画像(診断根拠画像)を同時に参照しながらレポートの内容を解釈し、図示していない他の情報と統合して診断を行い、治療を行うことになる。
【0007】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開平9−81646号公報
【特許文献2】特開平6−90938号公報
【特許文献3】特開2003−164442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の医用画像診断システムにおいては、次のような問題がある。
【0009】
過去の検査との比較診断を行うにあたって、今回の検査内容を過去の検査内容に近づけたいという要望があるが、従来のシステムでは、検査技師がファイルサーバーに記憶された過去検査の画像或いはフィルム画像を参考にして検査計画を立てたり、過去検査の画像に付帯された情報を使って検査計画を立てていた。しかしながら、過去の検査画像或いはフィルム画像は基本的に読影に用いられるためのものであり、検査(撮影)の参考として用いることを目的としたものではない。従って、今回の検査に必要な情報を十分に取得できず、過去画像等から想像して設定する項目があったり、前回と同じ設定ができない撮影条件が出てしまうという問題がある。特に、MRI画像やX線CT画像のような断面画像では、検査技師は撮影位置、再構成範囲等に関する情報を把握することは困難である。
【0010】
また、一般に、寝台天板上での患者の位置、姿勢は、設定時の(患者、装置操作者両方の)状態により前回と異なることが多いため、前回検査の撮影計画(スキャン範囲、再構成位置等)をそのまま利用するだけでは、比較診断のための十分な精度を確保できない場合がある。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、過去の医療情報を広い適用性をもって高精度で再現することができる共有情報を生成することができ、また、当該共有情報を有効に利用することができる医用画像診断装置、及び医用画像診断システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0013】
一実施形態に係る医用画像診断装置は、過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、前記画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、前記画像収集処理において使用された第1の撮影条件、前記画像収集処理において前記第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、前記第1のオブジェクトに基づいて、前記第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを行うオブジェクト解析ユニットと、前記第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定する制御ユニットと、前記第1の撮影範囲が設定された前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示する表示ユニットと、を具備するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上本発明によれば、過去の医療情報を広い適用性をもって高精度で再現することができる共有情報を生成することができ、また、当該共有情報を有効に利用することができる医用画像診断装置、及び医用画像診断システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態乃至第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
(第1実施形態)
(医療画像診断システム)
図1は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成図を示している。同図に示すように、本医療画像診断システムSは、病院情報システム(HIS: Hospital Information System)を利用して構築され、それぞれネットワークNに接続された医用画像診断装置(X線コンピュータ断層撮影装置1(以下、X線CT装置1))、画像参照装置7、PACSサーバ9を具備している。
【0017】
なお、図1では、医用画像診断装置としてX線CT装置1を用いる例を示した。しかしながら、本発明の技術的思想はこれに拘泥されず、例えば磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、X線診断装置、核医学診断装置等の寝台を利用して撮影位置を決定するものであれば、適用することが可能である。また、図1では、一つの病院内での情報システムを利用して構築される医療画像診断システムSの例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、例えばインターネット等の外部ネットワークを介して、異なる医療機関や研究機関に設置された医用画像診断装置、PACSサーバ、画像参照装置、医療端末等から構成されるようにしてもよい。
【0018】
(X線CT装置)
X線CT装置1は、X線投影データを取得するためのスキャンシーケンス、X線投影データを用いた画像再構成によるX線断層画像の生成・表示処理等を実行する。また、X線CT装置1等は、スキャン処理、X線CT画像の再構成、ボリュームレンダリング、MPR処理等の画像処理に用いられた条件を用いて、共有オブジェクトの生成処理を実行する。
【0019】
図2は、X線CT装置1の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本X線CT装置1は、架台100、情報処理部101から構成される。架台100は、被検体Pに関する投影データを収集するために構成されたものであり、スリップリング11、架台駆動部112、X線管球113、X線検出器115、回転フレーム116、データ収集部117、非接触データ伝送装置118を具備している。情報処理部101は、架台100におけるデータ収集動作の制御、及び架台100において収集されたデータに所定の処理を施すことで、X線CT画像及びこれを用いた各種臨床情報を生成するものであり、高電圧発生装置119、前処理部120、メモリ部121、再構成部123、画像処理部124、記憶部125、制御部127、表示部129、入力部131、共有オブジェクト生成部133、送受信部140を具備している。
【0020】
架台駆動部112は、回転フレーム116を回転駆動する。この回転駆動により、X線管球113とX線検出器115とが対向しながら、被検体Pの体軸を中心に螺旋状に回転することになる。
【0021】
X線管球113は、X線を発生する真空管であり、回転フレーム116に設けられている。当該X線管球113には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生装置119からスリップリング11を介して供給される。X線管球113は、供給された高電圧により電子を加速させターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内に載置された被検体に対してX線を曝射する。
【0022】
X線検出器115は、被検体を透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管球113に対向する向きで回転フレーム116に取り付けられている。当該X線検出器115は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードとの組み合わせで構成される複数の検出素子が、それぞれのタイプに応じて一次元的又は二次元的に配列されている。
【0023】
回転フレーム116は、Z軸を中心として回転駆動されるリングであり、X線管球113とX線検出器115とを搭載している。この回転フレーム116の中央部分は開口されており、この開口部に、寝台(図示せず)上に載置された被検体Pが挿入される。
【0024】
データ収集装置17は、一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれ、検出器15からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は、非接触データ伝送装置18を介して情報処理装置3に取り込まれる。
【0025】
高電圧発生装置119は、スリップリング11を介して、X線の曝射に必要な電力をX線管球113に供給する装置であり、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、高電圧切替器等から成る。
【0026】
前処理部120は、非接触データ伝送装置18を介してデータ収集装置17から生データを受け取り、感度補正やX線強度補正を実行する。各種補正を受けた所定角度分の生データは、記憶部125に一旦記憶される。なお、当該前処理部120によって前処理が施された生データは、「投影データ」と呼ばれる。
【0027】
再構成部123は、複数種類の再構成法を装備し、操作者から選択された再構成法により、設定される画像生成条件に従って画像データを再構成する。複数種類の再構成法には、例えば、ファンビーム再構成法(ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法ともいう)、再構成面に対して投影レイが斜めに交差する場合の再構成法として、コーン角が小さいことを前提として畳み込みの際にはファン投影ビームとみなして処理し、逆投影はスキャンの際のレイに沿って処理する近似的画像再構成法としてのフェルドカンプ法、フェルドカンプ法よりもコーン角エラーを抑える方法として再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正するコーンビーム再構成法等が含まれる。
【0028】
画像処理部124は、再構成部123により生成された再構成画像データに対して、設定される画像生成条件に従ってボリュームレンダリング、MPR処理等の画像処理(後処理)を行い、表示部129に出力する。
【0029】
記憶部125は、生データ、投影データ、スキャノグラムデータ、断層像データ等の画像データや、検査計画のためのプログラム等を記憶する。また、記憶部125は、後述する共有オブジェクト生成機能等を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0030】
制御部127は、スキャン処理、信号処理、画像生成処理、画像表示処理等において、本X線CT装置1の統括的な制御を行う。例えば、制御部127は、スキャン処理においては、設定される撮影(スキャン)条件に従って、高電圧発生装置119、寝台駆動部12、及び寝台天板aの体軸方向への送り量、送り速度、X線管球113及びX線検出器115の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、被検体の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像のデータ収集(スキャン)処理を行う。また、制御部127は、記憶部125に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上において展開することで、後述する共有オブジェクト生成機能を実現する。
【0031】
表示部129は、画像処理部124から入力したX線CT画像、スキャノグラム像、撮影条件、画像生成条件等を設定するための対話画面等を表示する出力装置である。なお、本実施形態においては、X線CT画像を、「X線コンピュータ断層装置によって取得されたFOV(撮影領域)内の各CT値に基づいて生成された画像」と定義する。ここで、CT値とは、物質のX線吸収係数を、基準物質(例えば、水)からの相対値として表したものである。また、表示部129は、図示していない計画補助システムによって実現されるスキャン計画画面等を表示する。
【0032】
入力部131は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータを介してスライス厚やスライス数等の各種スキャン条件を入力可能な装置である。
【0033】
共有オブジェクト生成部133は、記憶部125に記憶された専用プログラムを制御部127内のメモリ上において展開することにより実現されるものであり、X線投影データ取得のためのスキャンにおいて使用される撮影条件、位置決め画像(リファレンス像)等を含む共有オブジェクトを生成する。例えば、リファレンス像は、X線CT装置の場合、X線管と検出器を固定した状態で天板を移動させることにより収集したスカウト像、MRI装置の場合、コロナル像である。また、共有オブジェクト生成部133は、スキャンによって取得された投影データから画像を再構成する場合に用いられる画像生成条件等を含む共有オブジェクトを生成する。これらの共有オブジェクト生成処理については、後で詳しく説明する。
【0034】
送受信部140は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。特に、送受信部140は、ネットワークNに接続されたRIS(Radiology Information System)から、当該被検体の撮影に関する情報(患者情報、診断部位等)を受信する。
【0035】
[画像参照装置]
画像参照装置7は、例えば医師が画像を読影しながらレポート作成等を行う場合に使用されるものであり、PACSサーバ9から読み出された画像をそのままで、又は所定の画像処理を施すことで診断画像を生成し表示する。また、画像参照装置7は、診断画像生成のための後処理等において、共有オブジェクトの生成処理を実行する。
【0036】
図3は、画像参照装置7の構成を説明するためのブロック図である。同図に示すように、画像参照装置7は、制御部71、画像処理部72、表示部73、操作部74、共有オブジェクト生成部76、記憶装置77、送受信部78を具備している。
【0037】
制御部71は、本画像参照装置7の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。また、制御部71は、記憶装置77に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上において展開することで、共有オブジェクト生成機能等を実現する。
【0038】
画像処理部72は、各種医用画像診断装置によって取得された画像データを用いて、ボリュームレンダリング、MPR画像生成等の画像処理を行う。
【0039】
表示部73は、各種医用画像診断装置によって取得された画像、画像処理部72における画像処理によって生成された画像、画像生成条件等を設定するための対話画面等を所定の形態にて表示する。
【0040】
操作部74は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータからの指示を入力可能な装置である。
【0041】
レポート作成部75は、操作部74からの入力に基づいてレポートを作成する。
【0042】
共有オブジェクト生成部76は、X線投影データ取得のためのスキャンにおいて使用される撮影条件、位置決め画像等を含む共有オブジェクトを生成する。また、共有オブジェクト生成部76は、スキャンによって取得された投影データから画像を再構成する場合に用いられる画像生成条件、ボリュームレンダリング処理、MPR処理等の後処理において用いられる画像生成条件等を含む共有オブジェクトを生成する。
【0043】
記憶装置77は、各種医用画像診断装置によって取得された画像データ(装置より直接取得したもの、PACSサーバ9から取得したものを含む)を記憶する。また、記憶装置77は、共有オブジェクト生成機能等を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0044】
送受信部78は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。特に、送受信部78は、生成された共有オブジェクトを、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する。
【0045】
[PACSサーバ]
PACSサーバ9は、各種医用画像診断装置において生成された画像、画像参照装置7において後処理により生成された画像等を、患者ID等によって管理し保存する。また、PACSサーバ9は、過去の画像に付された付帯情報、過去のシリーズに関する位置決め画像等を用いて、共有オブジェクトを生成する。
【0046】
図4は、PACSサーバ9の構成を説明するためのブロック図である。同図に示すように、PACSサーバ9は、制御部91、共有オブジェクト生成部92、表示部93、操作部94、記憶装置95、送受信部96を具備している。
【0047】
制御部91は、本PACSサーバ9の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。また、制御部91は、記憶装置95に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上において展開することで、共有オブジェクト生成機能等を実現する。さらに、制御部91は、医用画像診断装置や画像参照装置等からの要求に応答して、記憶装置95から対象となる画像データ、共有オブジェクトを検索し、ネットワークを介して送信する。
【0048】
共有オブジェクト生成部92は、所定のタイミングで、自身が保管する過去画像に付された付帯情報、各シリーズに対応する位置決め画像等に基づいて、共有オブジェクトの生成処理を実行する。
【0049】
表示部93は、操作画面や所定の画像を表示するためのモニタである。
【0050】
操作部94は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータからの指示を入力可能な装置である。
【0051】
記憶装置95は、画像記憶部95a、共有オブジェクト記憶部95b、プログラム記憶部95c、レポート記憶部95dを有している。画像記憶部95aは、各種医用画像診断装置によって取得された画像、各種検査において使用されるオーダ情報等を記憶する。共有オブジェクト記憶部95bは、X線CT装置1又は画像参照装置7若しくは自身において生成された共有オブジェクトを記憶する。プログラム記憶部95cは、共有オブジェクト生成機能等を実現するための専用プログラムを記憶する。レポート記憶部95dは、読影医師によって作成されたレポートに関する情報等を記憶する。
【0052】
送受信部96は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0053】
(共有オブジェクト生成機能)
次に、X線CT装置1、PACSサーバ9、画像参照装置7が有する、共有オブジェクト生成機能について説明する。
【0054】
ここで、共有オブジェクト生成機能とは、過去の医療行為実施時において使用された情報(例えば、位置決め画像、撮影位置、撮影範囲、撮影条件、画像生成条件等)を有効に利用するために、画像情報と付帯(文字または数値)情報とから構成される共有オブジェクトを生成するものである。この共有オブジェクトは、通常の画像データとは分離した情報の実体(例えばファイル)として生成され、保存・管理される。
【0055】
図5は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。同図に示すように、共有オブジェクトは、医用画像生成のための、スキャン位置、画像生成位置等を再現するために必要な情報を1つのデータの纏りとして関連付けたものであり、画像情報と付帯情報とを具備している。以下、共有オブジェクトを構成する画像情報及び付帯情報のそれぞれについて説明する。
【0056】
[画像情報]
共有オブジェクトが具備する画像情報とは、位置又は範囲を参照するための一つまたは複数の位置決め画像(例えば、X線CT装置で用いられるスキャノグラム、MRI装置で用いられるパイロットスキャンによるコロナル像等)である。ここで、範囲とは、実際に医用画像診断装置がX線や高周波等によりエネルギーを供給し、検出器が供給されたエネルギーに基づく信号検出或いは画像生成の対象とする物理範囲である。例えば、X線CT装置1の場合、検出器で検出された投影データに基づいて再構成される体軸方向の範囲(再構成範囲)であり、MRI装置の場合はスキャン範囲である。範囲は、一般的にスキャン前に取得される位置決め画像上に点線等で明示され、体軸方向の画像生成ピッチを示す線と共に示されることもある。
【0057】
[付帯情報]
共有オブジェクトが具備する付帯情報は、大きくオブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報の5種類に分類することができる。以下、各情報について説明する。
【0058】
[付帯情報1:オブジェクト固有情報]
オブジェクト固有情報とは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するため、又は当該オブジェクトと他のオブジェクトとの関連性を示すための情報であり、オブジェクト識別子(オブジェクトUID)、親オブジェクト識別子(親オブジェクトUID)、関係シリーズ識別子(関係シリーズUID)、当該シリーズ識別子(当該シリーズUID)を含む。
【0059】
オブジェクトUIDは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するための情報であり、各装置のオブジェクト生成部により、共有オブジェクト生成時に重複しない体系で発番される。親オブジェクトUIDは、当該オブジェクトを生成する場合に参照されたオブジェクト(親オブジェクト)を特定するための情報である。関係シリーズUIDは、当該共有オブジェクトと同一の条件(例えば、撮影条件、位置決め画像等)を用いたシリーズを特定するための情報である。この関係シリーズUIDは、その性質上、オブジェクト固有情報内において複数個存在する場合がある。このとき、同時にそのシリーズの付帯情報(シリーズ日時、シリーズ番号、シリーズ記述、造影種別)などもシリーズUIDと関連付けて付帯させることが好ましい。この様な構成により、共有オブジェクトを参照するだけで、実際の画像群の画像を検索することなく操作者が識別する情報を取得することができるようになる。当該シリーズUIDは、当該共有オブジェクトにより撮影条件等が示されるシリーズを特定するための識別子である。
【0060】
なお、各UIDによって特定されるデータとは、リンクが張られている、従って、各UIDに基づいてリンク先のデータにアクセスすることで、その画像群の派生の検査経過を迅速に辿ることが可能になる。また、共有オブジェクトの作成日、作成時間をオブジェクト固有情報に含めても良い。
【0061】
[付帯情報2:人体座標情報]
人体座標情報とは、スキャンによって取得された画像群が持つ座標系(一般的には、絶対寝台位置または相対寝台位置を基準とする装置毎の座標)とは異なり、画像上の人体構造を基準とした座標(人体基準座標)に関する情報である。この人体基準座標は、各装置の共有オブジェクト生成部において生成される。
【0062】
図6A、図6Bは、人体基準座標の概念を説明するための図である。同図において、前回人体座標系における基準点(例えば、OMライン、骨盤、みぞおち(心窩)等)O1から距離Lの位置にある断層が撮影断層位置であるとする。係る場合には、基準点O1及び今回座標系の基準O2(解剖学的に基準点O1と同一位置)との間のずれ量である座標校正量(Δx、 Δy、 Δz)と、基準点からの距離Lとに基づいて、前回撮影断層と同じ位置を特定することができる。従って、この人体座標情報により、撮影範囲やキー画像情報のキー画像座標など、次の検査や読影で再現が必要な位置を解剖学的に一致させることができる。
【0063】
なお、この人体座標情報を構成する位置情報は、上記例に拘泥されない。例えば、座標系の校正量(Δx, Δy, Δz)以外に、拡大や回転も含めて校正を行う場合には、拡大率αや回転角(β,θ)を、或いは一つの基準点に拘泥されず、別の基準点からの位置ずれ量(Δx2, Δy2, Δz2)を、人体座標情報にさらに含めるようにしてもよい。
【0064】
また、座標の基準点を解剖学的な構造物の名称と位置決め画像座標系(画像データの左上を(0,0)とする)の組合せを、前述の校正量とは別な情報として持ってもよい。この解剖学的基準点は、モダリティあるいはPACSの画像参照装置等の画像表示ユニットをもち、操作者が指定する位置情報を取得して保存する機能によって付加することができる。これを用いると、前回検査の位置決め画像上に解剖学的な基準点を描画によって図示することが可能になる。操作者はこれを見ながら今回検査の位置決め画像で同じ解剖学的構造物を指定することで、検査装置は容易に前回の座標系とのずれ=座標系校正量を認識することができるようになる。
【0065】
解剖学基準点は、呼吸や拍動といった生理的な体動による位置の変化が少ない部分を選択するのが好ましい。具体例としては、第12胸椎椎体下縁中央、腸骨棘、腸骨陵、恥骨結合下縁、気管分岐部下縁などがある。ここでは構造物を人間が判断するため名称を格納しているが、体内臓器を画像から自動的に識別する技術を用いる場合は計算機によって識別できる構造物の識別子としてもよい。このような技術は、「科研費特定領域研究プロジェクト 多次元医用画像の知的診断支援(http://www.future-cad.org/fcad/index_j.htm)」によって研究・開示されている。
【0066】
[付帯情報3:撮影条件]
撮影条件とは、撮影動作によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集するために必要な物理的条件である。この条件の内容は、モダリティの種類に依存する。例えば、X線CT装置の撮影条件は、スキャンの開始位置と範囲(寝台移動量)、X線管球のKV/mA、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(ビームピッチ)といった物理量である。しかしながら、撮影条件の内容は、この例に拘泥されない。例えば、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、造影剤投与の有無、投与量、薬剤の種類、患者の体位(診断上で寝る方向、姿勢)等を含める構成としてもよい。さらに、最近は被曝低減のために一定の画質になるようにKV/mAを自動制御する機能があるが、そのような場合は、制御量である画像ノイズ(SD値)を撮影条件に含める構成としてもよい。
【0067】
また、例えばMRI装置の場合は、撮影範囲、患者の挿入方向や体位、磁場強度、パルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位、装着位置といったパラメータを撮影条件に含めることができる。
【0068】
[付帯情報4:画像生成条件]
画像生成条件とは、撮影によって得られた物理データから画像を再構成するするためのパラメータであり、例えば再構成範囲、時相、画像の位置、方向、厚さ、FOV(拡大率)、再構成関数等のフィルタ処理パラメータなどである。また、この画像生成条件には、各種医用画像診断装置や画像参照装置において実行されるボリュームレンダリングやMPR処理等の画像処理において使用される条件も含まれる。例えば、MPR処理の場合は、基準座標と法線ベクトル、スライス厚、範囲などが相当する。
【0069】
なお、再構成条件の範囲については、再構成範囲を示した位置決め画像を付帯することにより定義してもよい。係る場合は、一つの共有オブジェクトの中に、複数の再構成範囲を示す複数の位置決め画像が格納されることになる。
【0070】
[付帯情報5:キー画像情報]
キー画像情報は、PACS側のコンポーネントで読影や画像診断の段階で付されるキー画像の位置、方向、画像処理に関する情報等である。各装置の共有オブジェクト生成部は、PACSの画像参照装置に表示して特定の画像をキー画像として指定したタイミング、あるいはレポートへの貼り付け操作、レポート文章との関連付け操作(ハイパーリンク)等を行ったタイミングで、該当する画像をキー画像として認識する。画像参照装置は、認識した画像が含まれるシリーズの共有オブジェクトを検索して特定する。その画像の識別子たとえばDICOM規格のSOPInstanceUID、z軸座標位置あるいは、観察時の方向、拡大率、WW/WLといった情報をキー画像情報として保持する。また、MPRを作成した場合は、画像生成条件と同様にキー画像となるMPR画像についての位置や方向、生成条件を用いてもよい.
以上の付帯情報を保持することによって、検査読影開始時に前回画像と比較可能な画像を漏れなく適正に撮影することができるようになる。なお、共有オブジェクトは、上記に示した全ての情報を有する必要はなく、過去の医療行為実施時において使用された情報を有効に利用可能とするものであれば、利用される装置や目的に応じてその内容は種々変更可能である。例えば、医用画像診断装置(モダリティ)に用いる共有オブジェクトは、患者ID、スキャン範囲(再構成範囲)に関係する位置情報、ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像とから構成することもできる。また、PACSに用いる共有オブジェクトでは、、患者ID、キー画像の位置情報・ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像から構成するとしてもよい。さらに、リファレンス像を必要とせず、単に過去の撮影条件等のみを利用する仕様を望む場合には、撮影条件等を含む付帯情報のみからなる構成にて共有オブジェクトを生成すればよい。
【0071】
(動作)
次に、本医用画像診断システムSの動作について、X線CT装置1又はPACSサーバ9において共有オブジェクト生成を行う場合を例に説明する。
【0072】
[実施例1]
まず、X線CT装置1における共有オブジェクト生成処理について説明する。この共有オブジェクト生成処理は、例えば同一シリーズの画像生成・保存が行われるタイミングで、当該シリーズに関する共有オブジェクトを生成するものである。しかしながら、共有オブジェクトの生成タイミングはこの例に拘泥されず、当該シリーズにおいて、撮影条件、画像生成条件等の共有オブジェクトを構成する情報が決定された後であれば、どのようなタイミングであってもよい。
【0073】
図7は、共有オブジェクト生成においてX線CT装置1が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、X線CT画像を取得するために、患者ID等からの患者情報の入力及び検査オーダの選択を受けると(ステップS1)、制御部127は、スキャノグラムの撮影条件(FOV、管球電圧、スキャン方向等)に基づいてX線管球113、X線検出器115等を制御し当該患者に関するスキャノグラムを収集し、表示部129に表示する(ステップS2)。
【0074】
次に、入力部131からの撮影条件、画像生成条件等の設定を受けると(ステップS3)、制御部127は、設定された撮影条件に従ってX線CT画像取得のためのスキャンを実行する(ステップS4)。
【0075】
再構成部123は、設定された画像生成条件に従って、X線CT画像を生成する(ステップS5)。生成されたX線CT画像は、一つのシリーズ情報として自動的に記憶部125に保存される(ステップS6)。
【0076】
次に、共有オブジェクト生成部133は、ステップS6において保存されたシリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、スキャノグラム、及びX線CT画像生成において用いられた画像生成条件等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するシリーズ情報との関連付け情報(例えば、シリーズUIDと共有オブジェクトUIDとの対応テーブル)を生成する(ステップS7)。
【0077】
なお、ステップS3の撮影条件、画像生成条件等の設定では、例えば当該患者に関する過去のスキャノグラム、撮影条件、画像生成条件等が参照される場合がある。係る場合には、参照された当該過去のスキャノグラム。及びこれに対応する過去のシリーズUID等を、共有オブジェクトに含める構成とすることが好ましい。
【0078】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、当該スキャンによって得られたシリーズ情報と共にPACSサーバ9に送信される(ステップS8)。PACSサーバ9は、受け取ったシリーズ情報を画像記憶部95aに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS9)。
【0079】
[実施例2]
次に、PACSサーバ9における共有オブジェクト生成処理について説明する。この共有オブジェクト生成処理は、例えばX線CT装置において過去のスキャノグラム等を参照してスキャンが実行された場合、当該X線CT装置からの画像データ、共有オブジェクト、関連づけ情報の受信をトリガとして、参照にされたスキャノグラムに対応するシリーズを構成する画像群(及びその付帯情報)を用いて、共有オブジェクトを生成するものである。
【0080】
しかしながら、共有オブジェクトの生成タイミングはこの例に拘泥されず、PACSサーバ9は、自身が保管する過去画像に付された付帯情報等に基づいて、設定により任意のタイミングで、共有オブジェクトの生成処理を実行することが可能である。
【0081】
図8は、共有オブジェクト生成においてPACSサーバ9が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。なお、同図におけるステップS7〜S9までの処理は、図7に示したものと同様である。
【0082】
共有オブジェクト生成部92は、受信したシリーズに対応するスキャンにおいて参照された過去画像(位置決め画像を含む)、過去撮影情報等を関連シリーズUIDに基づいて検索し取得する(ステップS10)。また、共有オブジェクト生成部92は、取得した過去画像の付帯情報、位置決め画像等を用いて、共有オブジェクトを生成し、また、当該共有オブジェクトと過去画像との関連情報を生成する(ステップS11)。生成された共有オブジェクト、及び関連づけ情報は共有オブジェクト記憶部95bに保存される(ステップS12)。
【0083】
[実施例3]
次に、画像参照装置7における共有オブジェクト生成処理について説明する。この共有オブジェクト生成処理は、例えば読影処理段階におけるキー画像の生成に用いられた画像処理パラメータの設定、撮影範囲内のキー画像の位置等を用いて、共有オブジェクトを生成するものである。
【0084】
図9は、共有オブジェクト生成において画像参照装置7が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、読影処理を実施するために、制御部71は、PACSサーバ9に対して、読影対象となるシリーズに属する画像データ群の取得要求を送信する(ステップS13)。PACSサーバ9の制御部91は、取得要求を受信し、画像記憶部95aから該当する画像データ群を読み出す(ステップS14)。当該読み出された画像データ群は、送受信部96により画像参照装置7に送信される(ステップS15)。送信された画像データ群は、画像参照装置7の送受信部78により受信され、記憶装置77に保存される。
【0085】
次に、画像データ群から読影医師によってキー画像が選択され、当該キー画像に対し、操作部74からの指示に従って画像処理部72により所定の画像処理が施される(ステップS16)。レポート作成部75は、読影医師による操作部74からの入力に基づいてレポートを作成する(ステップS17)。
【0086】
次に、共有オブジェクト生成部76は、ステップS17において実行された画像処理に関する条件(倍率、方向、変換処理等)、キー画像を特定するための位置情報、読影対象としたシリーズのUID等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するレポートとの関連付け情報を生成する(ステップS18)。
【0087】
なお、ステップS16のキー画像選択では、読影対象となるシリーズにおいて取得された位置決め画像が参照される場合がある。係る場合には、参照された位置決め画像を、共有オブジェクトに含める構成とすることが好ましい。
【0088】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、作成されたレポートと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS19)。PACSサーバ9は、受け取ったレポートをレポート記憶部95dに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS20)。
【0089】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0090】
本医療画像診断システムによれば、過去の医療情報のうち、撮影段階やレポート作成段階に有効なものについて、統一された形式にて共有情報(共有オブジェクト)を新たに生成する。この共有情報には、位置決め画像、オブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報が含まれる。従って、現在の撮影において、過去の(例えば前回の)撮影条件や撮影範囲等を高い精度で再現させることができる。
【0091】
また、医療画像診断システムにおいて形成される共有オブジェクトは、統一された形式にて生成される。従って、その内容にばらつきは発生しないため高い汎用性をもち、従って種々の装置や処理で利用することができる。
【0092】
また、医療画像診断システムにおいて形成される共有オブジェクトは、対応するシリーズに関する情報や作成の基礎とされた(親)共有オブジェクトを特定するための情報等を、オブジェクト固有情報として含んでいる。従って、当該共有オブジェクトやシリーズに対応する情報に、迅速にアクセスすることができる。
【0093】
また、医療画像診断システムにおいては、例えばシリーズ情報作成等の所定のタイミングにより、当該装置において使用された撮影条件等を用いて自動的に生成される。従って、撮影者に新たな作業を要求することなく、医療行為に有効な共有情報を生成することができる。
【0094】
なお、本実施形態においては、X線CT装置1、PACSサーバ9、画像参照装置7のそれぞれが共有オブジェクト生成機能を有する例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、X線CT装置1、PACSサーバ9、画像参照装置7のうちの少なくとも一つに共有オブジェクト生成機能を持たせる等、利用目的に応じてその構成は種々変更可能である。
【0095】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る医療画像診断システムSは、例えば第1の実施形態で述べた手法により生成された共有オブジェクトを利用して、画像診断で用いられる各種医療関連機器における条件設定、画像読影(及びこれに伴うレポート作成等)において用いられる過去情報(前回検査のキー画像等)へのアクセス等を簡略化ならしめる支援機能(以下、「共有オブジェクトを用いた支援機能」と呼ぶ。)を有するものである。
【0096】
図10は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。同図と図1の構成を比較した場合、共有オブジェクトを用いた支援機能を有するX線CT装置3をさらに具備する点、及び画像参照装置7が共有オブジェクトを用いた支援機能を有する点がさらに異なる。
【0097】
[X線CT装置]
図11は、本実施形態に係るX線CT装置3を示した図である。同図に示すX線CT装置3の構成は、図2に示したX線CT装置1の構成と比較した場合、共有オブジェクト解析部140をさらに具備する点、及び共有オブジェクトを用いた支援機能をさらに具備する点で異なる。
【0098】
記憶部125は、後述する共有オブジェクトを用いた支援機能を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0099】
制御部127は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現する。この内容については、後で詳しく説明する。
【0100】
共有オブジェクト解析部140は、共有オブジェクトを用いた支援機能に基づく処理(共有オブジェクトを用いた支援処理)において、例えばPACSサーバ9内の共有オブジェクト記憶部95bから読み出された共有オブジェクトを解析する。
【0101】
[画像参照装置]
図12は、本実施形態に係る画像参照装置7を示した図である。同図に示す画像参照装置7の構成は、図3に示した第1の実施形態に係る画像参照装置の構成と比較した場合、共有オブジェクト解析部79をさらに具備する点、及び共有オブジェクトを用いた支援機能をさらに具備する点で異なる。
【0102】
記憶部77は、後述する共有オブジェクトを用いた支援機能を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0103】
制御部71は、記憶部77に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現する。この内容については、後で詳しく説明する。
【0104】
共有オブジェクト解析部79は、共有オブジェクトを用いた支援処理において、例えばPACSサーバ9内の共有オブジェクト記憶部95bから読み出された共有オブジェクトを解析する。
【0105】
(共有オブジェクトを用いた支援機能)
次に、X線CT装置3、画像参照装置7のそれぞれが共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの動作について説明する。
【0106】
[実施例1]
まず、X線CT装置3が共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの動作について説明する。この共有オブジェクトを用いた支援処理は、例えば同一患者の過去の検査において取得されたシリーズに関する共有オブジェクトを用いて、撮影時における撮影条件設定、撮影範囲設定等の作業を支援するものである。
【0107】
図13、14は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、X線CT画像を取得するために、患者ID等の患者情報の入力及び検査オーダの選択を受けると(ステップS21)、制御部127は、スキャノグラムの撮影条件に従ってX線管球113、X線検出器115等を制御し当該患者に関するスキャノグラムを収集して、表示部129に表示する(ステップS22)。
【0108】
次に、制御部127は、ステップS21において入力された患者情報に基づいて、当該患者のシリーズ情報に対応する共有オブジェクトの検索要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS23)。PACSサーバ9の制御部91は、検索要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bに記憶された共有オブジェクトのうち、当該患者に関するシリーズの共有オブジェクトを検索し(ステップS24)、その検索結果をX線CT装置3に送信する(ステップS25)。X線CT装置3の送受信部140によって受信された検索結果は、所定の形態にて表示部129に表示される。
【0109】
図15は、患者のシリーズ情報に対応する共有オブジェクトの検索結果の表示形態を示しており、当該患者のシリーズ情報が一覧表示される例を示している。操作者により、一覧表示された複数のシリーズ情報から入力部131を介して所望のシリーズが選択されると(ステップS26)、制御部127は、選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトの取得要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS27)。PACSサーバ9の制御部91は、共有オブジェクトの取得要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bから選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトを抽出し(ステップS28)、ネットワークを介してX線CT装置3に送信する(ステップS29)。
【0110】
X線CT装置3の送受信部140によって受信された共有オブジェクトは、共有オブジェクト解析部135において解析される(ステップS30)。すなわち、共有オブジェクト解析部135は、取得した共有オブジェクトにおいて記録されている撮影条件を解析し、現在の撮影と矛盾しない条件については、当該共有オブジェクトの内容と等価となるように自動的に設定する。また、共有オブジェクト解析部135は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像を解析し、当該画像上の基準点(例えば、身体上のランドマーク)と、現在の(すなわち、ステップS22において取得された)位置決め画像上の基準点とを特定する。なお、過去及び現在の位置決め画像の基準点指定は、上記例に拘泥されず、マニュアル操作によって実行するようにしてもよい。
【0111】
制御部127は、共有オブジェクトの解析結果を所定の形態にて表示部129に表示する(ステップS31)。具体的には、制御部127は、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された条件を設定させるため、及び自動設定された条件の可否を判断させるために、例えば図15に示すような対話形式にて解析結果を表示部129に表示する。また、制御部127は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とが対応するように、双方の位置決め画像を重ね合わせ表示、又は隣り合わせて表示させる。
【0112】
次に、制御部127は、操作者による入力部131からの指示に基づいて、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された残りの条件、撮影範囲を設定する(ステップS32)。このとき、過去と現在との位置決め画像が、互いの基準点が対応するように表示されているため、操作者は、より正確に過去と現在との設定の違いを把握することができる。従って、操作者は、この違いを考慮して、解剖学的な断面位置が前回と一致するよう今回の検査での断面設定を行うことができる。なお、このステップS32における断面位置設定は、操作者による上記マニュアル操作の他、人間座標情報に基づいて、装置が自動的に行う構成であってもよい。
【0113】
次に、入力部131からの撮影条件、画像生成条件等の設定を受けると、制御部127は、設定された撮影条件に従ってX線CT画像取得のためのスキャンを実行する(ステップS33)。再構成部123は、設定された画像生成条件に従って、X線CT画像を生成する(ステップS34)。生成されたX線CT画像は、一つのシリーズ情報として自動的に記憶部125に保存される(ステップS35)。
【0114】
次に、共有オブジェクト生成部133は、ステップS6において保存されたシリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、スキャノグラム、及びX線CT画像生成において用いられた画像生成条件等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するシリーズとの関連付け情報を生成する(ステップS36)。このとき、ステップS26において選択されたシリーズのUIDは、本シリーズに参考として使用された親シリーズUIDとして、また、ステップS27において選択された共有オブジェクトのUIDは、本シリーズに対応する共有オブジェクトの基礎として使用された親共有オブジェクトUIDとして、当該共有オブジェクトに記録される。
【0115】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、当該スキャンによって得られたシリーズと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS37)。PACSサーバ9は、受け取ったシリーズ情報を画像記憶部95aに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS38)。
【0116】
なお、本実施例では、過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とが対応するように、位置合わせを自動的に行う場合について説明した。しかしながら、これに拘泥されず、マニュアル操作による人為的な位置合わせや微調整を行うようにしてもよい。
【0117】
また、位置決め画像間の位置合わせは、例えば画像上の骨の位置等を基準として実行される。従って、例えば、過去の位置決め画像上に映像化されている骨を例えば緑色で、何組織を赤色で表示することで、グレースケールで表示される現在の位置決め画像との位置合わせを容易にすることができる。
【0118】
また、撮影範囲を設定する場合には、現在の位置決め画像上における過去のキー画像位置を把握することが重要である。しかしながら、、一般に、呼吸等の体動のため、同一部位(又は同一範囲)を撮影した場合であっても、厳密には過去の位置決め画像と現在の位置決め画像との間で位置が対応しない場合がある。この様な不具合を改善するため、過去の位置決め画像と現在の位置決め画像とを位置合わせする場合に、過去の位置決め画像上において過去のキー画像位置をマーカ表示等することが好ましい。このように過去の位置決め画像上におけるキー画像位置を明示することで、ユーザは、必ず過去のキー画像位置を含むように今回の撮影範囲を設定することができる。
【0119】
[実施例2]
次に、画像参照装置7が共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの動作について説明する。この共有オブジェクトを用いた支援処理は、例えば同一患者の過去の検査において取得されたシリーズに関する共有オブジェクトを用いて、読影段階における前回検査時のキー画像検索、前回と同様の画像処理パラメータ設定等の作業を支援するものである。
【0120】
図17は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。同図に示すように、まず、読影処理を実施するために、制御部71は、PACSサーバ9に対して、読影対象となるシリーズに属する画像データ群、及び当該シリーズに対応する共有オブジェクト、当該患者の同一検査に関する直近のレポートに対応する共有オブジェクトの取得要求を送信する(ステップS40)。PACSサーバ9の制御部91は、取得要求を受信し、画像記憶部95aから該当する画像データ群を、共有オブジェクト記憶部95bから該当する共有オブジェクトをそれぞれ読み出し(ステップS42)、その検索結果を画像参照装置7に送信する(ステップS43)。
【0121】
画像参照装置7の送受信部78によって受信された共有オブジェクトは、共有オブジェクト解析部79において解析される(ステップS44)。すなわち、共有オブジェクト解析部79は、取得した共有オブジェクトにおいて記録されている画像生成条件等を解析し、前回のレポート作成時において使用されたキー画像と同一位置に対応する画像を受信した画像データ群から選択すると共に、前回のレポート作成時に用いられた画像処理パラメータを自動的に設定する。
【0122】
次に、画像データ群から読影医師によってキー画像が選択され、当該キー画像に対し、操作部74からの指示に従って画像処理部72により所定の画像処理が施される。レポート作成部75は、読影医師による操作部74からの入力に基づいてレポートを作成する(ステップS45)。
【0123】
次に、共有オブジェクト生成部76は、ステップS17において実行された画像処理に関する条件(倍率、方向、変換処理等)、キー画像を特定するための位置情報、読影対象としたシリーズのUID、ステップS44において解析した共有オブジェクトのUID等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するレポートとの関連付け情報を生成する(ステップS46)。
【0124】
生成されたレポート、共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部140により、作成されたレポートと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS47)。PACSサーバ9は、受け取ったレポートをレポート記憶部95dに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS48)。
【0125】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0126】
まず、本医用画像診断システムによれば、統一された形式を持つ共有オブジェクトを用いて、過去の検査と同様の撮影条件、撮影範囲、撮影断層位置、画像生成条件等を自動的に設定することができる。従って、撮影段階やレポート作成段階における医師等の作業労力を軽減させることができ、また、過去の(例えば前回の)検査での条件を高精度で再現することができる。
【0127】
また、本医用画像診断システムによれば、現在の設定と矛盾する条件等は、操作者に別途設定要求を提示し、また、自動設定された条件についても、その確認要求を提示する。従って、各種条件の設定ミスを防止することができ、医師等の作業労力を軽減させつつも、高い安全性を確保することができる。
【0128】
また、本医用画像診断システムによれば、共有オブジェクトの人体座標情報を用いて、過去の位置決め画像と現在の位置決め画像との空間的に対応付けて、並列又は重畳させて表示することができる。従って、医師等は、撮影範囲、撮影断面位置を容易に把握、設定することができ、医師等の作業労力を軽減させつつも、精度の高い画像診断を実現することができる。
【0129】
また、本医用画像診断システムが使用する共有オブジェクトには、オブジェクト固有情報により、関連のあるシリーズや共有オブジェクトにリンクが張られている。従って、所望の関連情報に迅速にアクセスすることができ、医師等の作業労力軽減、及び作業効率の向上を実現することができる。
【0130】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る医療画像診断システムSは、共有オブジェクトを利用する磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)を具備するものである。
【0131】
図18は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。同図と図10の構成を比較した場合、共有オブジェクト生成機能、共有オブジェクトを用いた支援機能を有するMRI装置5をさらに具備する点がさらに異なる。
【0132】
[MRI装置]
MRI装置5は、磁気共鳴現象を利用したスキャンシーケンスを実行することにより、被検体の任意の断面に関する画像(MR画像)を生成するものである。
【0133】
図19は、MRI装置5の構成を示したブロック図である。同図に示すように、MRI装置5は、静磁場磁石511、冷却系制御部512、傾斜磁場コイル513、高周波送信コイル514、高周波受信コイル515、送信部518、受信部519、データ処理部500、第1表示部524、第2表示部を具備している。
【0134】
静磁場磁石511は、静磁場を発生する磁石であり、一様な静磁場を発生する。
【0135】
冷却系制御部512は、静磁場磁石511の冷却機構を制御する。
【0136】
傾斜磁場コイル513は、静磁場磁石11の内側に設けられ、且つ静磁場磁石511よりも短軸であり、傾斜磁場コイル装置電源517から供給されるパルス電流を傾斜磁場に変換する。この傾斜磁場コイル513が発生する傾斜磁場によって、信号発生部位(位置)が特定される。
【0137】
なお、Z軸方向は、本実施形態では静磁場の方向と同方向にとるものとする。また、本実施形態において、傾斜磁場コイル513及び静磁場磁石511は円筒形をしているものとする。また、傾斜磁場コイル513は、所定の支持機構によって真空中に配置される。これは、静音化の観点から、パルス電流の印加によって発生する傾斜磁場コイル13の振動を、音波として外部に伝播させないためである。
【0138】
高周波送信コイル(RF送信コイル)514は、被検体のスキャン領域に対して、磁気共鳴信号を発生させるための高周波パルスを印加するためのコイルである。この高周波送信コイル514は全身用RFコイルであり、例えば腹部等を撮影する場合には、受信コイルとしても使用することができる。
【0139】
高周波受信コイル(RF受信コイル)515は、被検体の近傍、好ましくは密着させた状態で当該被検体を挟むように設置され、被検体から磁気共鳴を受信するためのコイルである。当該高周波受信コイル515は、一般的には、部位別に専用の形状を有する。
【0140】
なお、図19では、高周波送信コイルと高周波受信コイルとを別体とするクロスコイル方式を例示したが、これらを一つのコイルで兼用するシングルコイル方式を採用する構成であってもよい。
【0141】
傾斜磁場コイル装置電源517は、傾斜磁場を形成するためのパルス電流を発生し、傾斜磁場コイル513に供給する。また、傾斜磁場コイル装置電源517は、後述する制御部502の制御に従って、傾斜磁場コイル513に供給するパルス電流の向きを切替えることにより、傾斜磁場の極性を制御する。
【0142】
送信部518は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部(それぞれ図示せず)を有しており、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用高周波コイルに送信する。当該送信によって高周波送信コイル514から発生した高周波によって、被検体の所定原子核の磁化は、励起状態となる。
【0143】
受信部519は、増幅部、中間周波数変換部、位相検波部、フィルタ、A/D変換器(それぞれ図示せず)を有する。受信部519は、高周波受信コイル515から受信した、核の磁化が励起状態から基底状態に緩和するとき放出する磁気共鳴信号(高周波信号)に対して、増幅処理、発信周波数を利用した中間周波数変換処理、位相検波処理、フィルタ処理、A/D変換処理を施す。
【0144】
データ処理部500は、受信後のデータを処理して磁気共鳴画像を生成する計算機システムであり、記憶部501、制御部502、データ収集部503、再構成部504、共有オブジェクト生成部505、共有オブジェクト解析部506、操作部507、送受信部508を有している。
【0145】
記憶部501は、本MRI装置5によって取得されたMR画像、位置決め画像(スカウト画像)、ネットワークNを介して取得した各種情報等を記憶する。また、記憶部501は、共有オブジェクト生成機能、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現するための専用プログラムを記憶する。
【0146】
制御部502は、図示していないCPU、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として、本磁気共鳴イメージング装置を静的又は動的に制御する。また、制御部502は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、共有オブジェクト生成機能、共有オブジェクトを用いた支援機能を実現する。
【0147】
データ収集部503は、受信部519によってサンプリングされたディジタル信号を収集する。
【0148】
再構成部504は、データ収集部503によって収集されたデータに対して、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成等を実行し、被検体内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0149】
共有オブジェクト生成部505は、磁気共鳴イメージングにおいて使用される撮影条件(TR、TE、スライス厚、FOVサイズ、マトリクスサイズ等)、位置決め画像等を含む共有オブジェクトを生成する。また、共有オブジェクト生成部76は、スキャンによって取得された投影データから画像を再構成する場合に用いられる画像生成条件等を含む共有オブジェクトを生成する。
【0150】
共有オブジェクト解析部506は、共有オブジェクトを用いた支援処理において、例えばPACSサーバ9内の共有オブジェクト記憶部95bから読み出された共有オブジェクトを解析する。
【0151】
操作部507は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむため入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)を有している。
【0152】
送受信部508は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0153】
第1表示部524は、データ処理部520から入力したスペクトラムデータあるいは画像データ等を表示する出力ユニットである。
【0154】
第2表示部525は、静磁場磁石511、例えば図20に示すように傾斜磁場コイル513等が配置されるシールドルーム内、或いは当該シールドルームから視認可能なその他の所定位置に配置され、例えば過去のシリーズに関する共有オブジェクトに記録された撮影情報(例えば、RFコイルの種別、接続方法、寝台天板上への設置方法、心電同期の有無、被検体の体位設定、固定方法、造影剤投与の有無、造影剤の種類その他の被検体設定に必要な情報)を表示する。
【0155】
(動作)
次に、本医用画像診断システムSの動作について、MRI装置5において実行される処理を中心に説明する。
【0156】
[実施例1]
実施例1は、MRI装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトを利用するものである。
【0157】
図21は、本MRI装置5が共有オブジェクトを利用して実行する撮影処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、MR画像を取得するために、患者ID等の患者情報の入力を受けると(ステップS50)、制御部502は、当該患者に関する過去のシリーズの検索要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS51)。PACSサーバ9の制御部91は、検索要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bに記憶された共有オブジェクトのうち、当該患者のシリーズに対応する共有オブジェクトを検索し(ステップS52)、その検索結果をMRI装置5に送信する(ステップS53)。MRI装置5の送受信部508によって受信された検索結果は、所定の形態にて第1表示部524に所定の形態にて表示される。
【0158】
次に、操作者により、一覧表示された複数のシリーズ情報から入力部131を介して所望のシリーズが選択されると(ステップS54)、制御部502は、選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトの取得要求を、ネットワークNを介してPACSサーバ9に送信する(ステップS55)。PACSサーバ9の制御部91は、共有オブジェクトの取得要求に応答して、共有オブジェクト記憶部95bから選択されたシリーズに対応する共有オブジェクトを抽出し(ステップS56)、ネットワークを介してMRI装置5に送信する(ステップS57)。
【0159】
MRI装置5の送受信部508によって受信された共有オブジェクトは、共有オブジェクト解析部506において解析され(ステップS58)、当該共有オブジェクトに記録されている被検体設定に関する撮影条件(例えば、RFコイルの種別、接続方法、寝台天板上への設置方法、心電同期の有無、被検体の体位設定、固定方法、造影剤投与の有無、造影剤の種類等)が抽出され、第1表示部524、第2表示部525に表示される(ステップS59)。医療技師等は、例えばシールドルーム内において第2表示部525に表示された撮影条件を見ることで、前回検査と同じ被検体設定を容易に行うことができる。
【0160】
被検体設定が終了すると、制御部202は、リファレンス画像(例えば、パイロットスキャンによって収集されたコロナル像)の撮影条件に従って送信部518、受信部519、傾斜磁場コイル装置電源517等を制御し当該被検体に関するリファレンス画像を収集し、第1表示部524に表示する(ステップS60)。共有オブジェクト解析部506は、取得された現在のリファレンス画像上の基準点と共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像と解析し、両画像上の基準点を特定する。また、共有オブジェクト解析部506は、共有オブジェクトにおいて記録されている撮影条件、画像生成条件を解析し、現在の撮影と矛盾しない条件については、当該共有オブジェクトの内容と等価となるように自動的に設定する。
【0161】
制御部502は、共有オブジェクトの解析結果を所定の形態にて第1表示部524に表示する(ステップS62)。具体的には、制御部127は、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された条件を設定させるため、及び自動設定された条件の可否を判断させるために、例えば対話形式にて解析結果を第1表示部524に表示する。また、制御部202は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とが対応するように、双方の位置決め画像を重ね合わせ表示、或いは例えば図22、図23、図24のそれぞれに示すように隣り合わせて表示させる。
【0162】
次に、制御部502は、操作者による操作部507からの指示に基づいて、共有オブジェクト解析により現在の撮影と矛盾すると判定された残りの条件、撮影範囲を設定する(ステップS63)。入力部131からの撮影条件、画像生成条件等の設定を受けると、制御部502は、設定された撮影条件に従ってMRI画像取得のためのスキャンを実行する(ステップS64)。再構成部504は、設定された画像生成条件に従って、MR画像を生成する(ステップS65)。生成されたMR画像は、一つのシリーズ情報として自動的に記憶部501に保存される。
【0163】
次に、共有オブジェクト生成部505は、保存されたシリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、リファレンス画像、及びMR画像生成において用いられた画像生成条件等を用いて、共有オブジェクトを生成すると共に、対応するシリーズとの関連付け情報を生成する(ステップS66)。このとき、ステップS54において選択されたシリーズのUIDは、本シリーズにの参考として使用された親シリーズUIDとして、当該共有オブジェクトに記録される。
【0164】
生成された共有オブジェクト及び関連付け情報は、送受信部508により、当該スキャンによって得られたシリーズと共にPACSサーバ9に送信される(ステップS67)。PACSサーバ9は、受け取ったシリーズ情報を画像記憶部95aに、共有オブジェクト及び関連づけ情報を共有オブジェクト記憶部95bにそれぞれ保存する(ステップS68)。
【0165】
[実施例2]
実施例2は、X線CT装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトを利用するものである。なお、この例に拘泥されることなく、MRI装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトを、X線CT装置を用いた検査で利用するものであってもよい。さらに、MRI装置とX線CT装置との間に限定されず、過去と現在との検査において、使用する医用画像診断装置の種類が異なる他の場合であって、適用可能である。
【0166】
本実施例の場合には、図21のステップS54において、例えば図25に示すような検索結果が表示されることになる。また、ステップS58、ステップS61の共有オブジェクト解析においては、当該MRI装置5と共有可能な条件のみが選択され、利用されることになる。特に、共有オブジェクトに記録されている(位置決め画像を用いた)撮影範囲、スキャン断面の位置は、人体座標情報に変換されたものとなっている。従って、過去と現在との検査において、使用する医用画像診断装置の種類が異なる場合であっても、略同一の撮影範囲、スキャン断面位置を設定することができる。さらに、ステップS66の共有オブジェクト生成では、ステップS58において解析対象とされた共有オブジェクトに、シリーズに関する情報、当該スキャンにおいて使用された撮影条件、リファレンス画像、及びMR画像生成において用いられた画像生成条件等を追記することで、新たな共有オブジェクトが生成されることになる。
【0167】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0168】
まず、本医用画像診断システムでは、統一された形式を持つ共有オブジェクトを用いて、過去の検査と同様の撮影条件、撮影範囲、撮影断層位置、画像生成条件等を自動的に設定することができる。従って、撮影段階やレポート作成段階における医師等の作業労力を軽減させることができ、また、過去の(例えば前回の)検査での条件を高精度で再現することができる。
【0169】
また、本医用画像診断システムでは、共有オブジェクトに記録された人体座標情報を用いて、過去の撮影範囲等と現在の撮影範囲等との対応付けを行う。従って、過去の検査と現在の検査との医用画像診断装置が異なる場合であっても、医師等の作業労力を軽減させつつも、精度の高い画像診断を実現することができる。
【0170】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態では、本スキャンの前段階(例えば、患者の寝台設定、位置決め用画像の取得等)において、共有オブジェクトを利用する医用画像診断装置の動作例についてさらに詳細に説明する。なお、説明を具体的にするため、本実施形態では医用画像診断装置としてMRI装置5を用いる場合を説明する。しかしながら、これに拘泥されず、本実施形態で説明する構成・動作がその他の医用画像診断装置にも適用可能であることは、当然である。
【0171】
図26は、本実施形態に係る画像診断における医療行為の流れ(検査依頼〜画像検査まで)を示した図である。
【0172】
同図に示すように、まず、MR画像を取得するために、患者ID等の患者情報の入力を受けると(ステップS50)、図21において示したステップS51〜ステップS58までの処理が実行される。共有オブジェクト解析の結果、当該共有オブジェクトに記録されている被検体設定に関する撮影条件(例えば、RFコイルの種別、接続方法、寝台天板上への設置方法、心電同期の有無、被検体の体位設定、固定方法、造影剤投与の有無、造影剤の種類等)が抽出され、第1表示部524、第2表示部525に表示される(ステップS59a)。医療技師等は、例えばシールドルーム内において第2表示部525に表示された撮影条件に基づいて、患者の寝台への設定、コイル設定等を行う(ステップS59b)。
【0173】
患者の寝台への設定が行われると、共有オブジェクト解析部506は、取得した共有オブジェクトから位置決め用画像の取得に利用可能な撮影条件(例えば、前回の位置決め用画像、前回の音声指示データ(例えば、前回の位置決め用画像撮影時に行われた、「息を吸って、呼吸を止めてください」等の患者に対する医療技師等の音声指示に関する情報。呼気又は吸気のいずれの状態での撮影かを判定するための情報である。図15の「前音声」、「後音声」参照。)、位置決め用画像上におけるキー画像の位置情報等)を抽出する。抽出された撮影条件は、第1表示部524、第2表示部525に表示される(ステップS59c)。なお、共有オブジェクト解析部506による解析の結果、共有オブジェクトに例えば前回の音声指示データが含まれない場合には、「前回の音声指示データ無し」等の所為のメッセージを表示することが好ましい。医療技師等は、提示された撮影条件を参照しながら、今回の位置決め用画像を取得するための撮影条件を設定する。
【0174】
制御部202は、設定された撮影条件に従って送信部518、受信部519、傾斜磁場コイル装置電源517等を制御し当該患者に関する位置決め用画像を収集し、第1表示部524に表示する(ステップS60)。以下、図21のステップS61〜S68までの処理が同様に実行され、診断画像及び共有オブジェクトが各シリーズ毎に生成される。
【0175】
以上述べた構成によれば、本スキャンやその後段階(例えば、画像生成段階)のみならず、患者の寝台への設定や位置決め用画像の取得時等の本スキャンの前段階においても、共有オブジェクトを利用することで、効率的又は再現性の高い画像診断を実現することができる。
【0176】
(第5の実施形態)
ある患者に対する検査(スタディ)を行う場合、図27に示すような複数のスキャンを含む診断プロトコルが計画され、実施される場合がある。典型的な例としては、第1スキャンにより胸部を撮影し、第2スキャンにより腹部を撮影するといった場合である。また、一回のスキャンによって取得された所定部位に関する画像データを用いて、異なる画像生成条件で複数の診断画像を生成する場合がある。典型的な例としては、図27に示す第1スキャンによって得られた画像データを用いて、シリーズ1−1としてサジタル像を生成し、シリーズ1−2としてアキシャル像を生成するといった場合である。
【0177】
一方、共有オブジェクトは各シリーズ毎に生成される。このため、図27に示した診断プロトコルを実行した場合には、合計n+m個の個別の共有オブジェクトが生成され管理されることになる。
【0178】
本実施形態では、この様に一回のスキャンや一回の診断プロトコルを実施した結果複数のシリーズ(及び共有オブジェクト)が生成される場合において、過去の共有オブジェクトを利用して効率的にスキャン計画を行うための例について説明する。
【0179】
なお、説明を具体的にするため、本実施形態では医用画像診断装置としてMRI装置5を用いる場合を説明する。しかしながら、これに拘泥されず、本実施形態で説明する構成・動作がその他の医用画像診断装置にも適用可能であることは、当然である。
【0180】
図28は、例えば図26のステップS54において表示される検索結果の一例を示している。同図において、シリーズ1−1〜シリーズ1−nは、第1スキャン(例えば、胸部スキャン)に基づくものであり、画像生成条件のみが異なるものである。また、シリーズ2−1〜シリーズ2−nは、第2スキャン(例えば腹部スキャン)に基づくものであり、同じく画像生成条件のみが異なるものである。
【0181】
図26のステップS55における動作として、図28の様に検索結果として表示された複数のシリーズの中から、例えば、シリーズ1−1及びシリーズ1−2に対応する共有オブジェクトの取得要求がなされたものとする。係る場合、共有オブジェクト解析部506は、シリーズ1−1に対応する共有オブジェクト1−1及びシリーズ1−2に対応する共有オブジェクト1−2を解析し、患者の設定に関する撮影条件、位置決め用画像、位置決め画像に関する撮影条件、本スキャンに関する撮影条件、画像生成条件等が重複するか否か等の種々の判別を行う。例えば、共有オブジェクト解析部506は、共有オブジェクト1−1と共有オブジェクト1−2とは、同一の位置決め用画像、位置決め画像に関する撮影条件、本スキャンに関する撮影条件を有する一方、異なる画像生成条件を有していることを判別する。
【0182】
従って、図26のステップS59a、ステップS59c、ステップS63では、共有オブジェクト1−1及び共有オブジェクト1−2に共通な撮影条件や位置決め用画像が利用される。このため、今回の撮影において利用する共有オブジェクトは二つであるにも関わらず、位置決め用画像の取得時における撮影条件の設定は、一回で済ませることができる。一方、共有オブジェクト1−1と共有オブジェクト1−2との画像生成条件が異なるため、ステップS65においては、共有オブジェクト1−1に含まれる画像生成条件に従うMR画像と、共有オブジェクト1−2に含まれる画像生成条件に従うMR画像との二種類が自動的に生成されることになる。
【0183】
また、図28の様に検索結果として表示された複数のシリーズの中から、例えば、シリーズ1−1、シリーズ1−2及びシリーズ2−1、シリーズ2−2が選択された場合には、シリーズ1−1、シリーズ1−2を再現するための胸部用の第1スキャンと、シリーズ2−1、シリーズ2−2を再現するための腹部用の第2スキャンとが自動的に計画される。第1スキャンでは共有オブジェクト1−1、1−2に基づいて、第2スキャンでは共有オブジェクト2−1、2−2に基づいて、ステップS58〜ステップS68までの動作が繰り返されることになる。
【0184】
以上述べた構成によれば、複数のシリーズに対応する複数の共有オブジェクトを利用する場合においても、共有オブジェクト間で重複する情報や異なる情報を判別し、効率的にスキャン計画を立てることが可能となる。従って、必要とされる各種条件の入力を必要最小限にして医療技師等の労力を軽減させることができると共に、再現性の高い画像取得を実現することができる。
【0185】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0186】
各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0187】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0188】
以上本発明によれば、過去の医療情報を広い適用性をもって高精度で再現することができる共有情報を生成することができ、また、当該共有情報を有効に利用することができる医用画像診断装置、及び医用画像診断システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る医療画像診断システムSの構成図を示している。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る画像参照装置7の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るPACSサーバ9の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図5は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。
【図6】図6(a)、(b)は、人体基準座標の概念を説明するための図である。
【図7】図7は、共有オブジェクト生成においてX線CT装置1が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。
【図8】図8は、共有オブジェクト生成においてPACSサーバ9が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。
【図9】図9は、共有オブジェクト生成において画像参照装置7が実行する処理の流れを示したタイムチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係るX線CT装置3を示した図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る画像参照装置7を示した図である。
【図13】図13は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。
【図14】図14は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。
【図15】図15は、共有オブジェクト解析結果の表示形態の一例を示した図である。
【図16】図16は、患者のシリーズ情報に対応する共有オブジェクトの検索結果の表示形態を示しており、当該患者のシリーズ情報が一覧表示される例を示している。
【図17】図17は、共有オブジェクトを用いた支援処理を行う場合の本医用画像診断システムSの処理の流れを示したタイムチャートである。
【図18】図18は、本実施形態に係る医療画像診断システムSの構成を示した図である。
【図19】図19は、第3の実施形態に係るMRI装置5の構成を示したブロック図である。
【図20】図20は、第2表示部525の配置例を示した図である。
【図21】図21は、本MRI装置5が共有オブジェクトを利用して実行する撮影処理の流れを示したフローチャートである。
【図22】図22は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とを対応させた表示形態の一例を示した図である。
【図23】図23は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とを対応させた表示形態の他の例を示した図である。
【図24】図24は、共有オブジェクトを構成する過去の位置決め画像上の基準点と現在の位置決め画像上の基準点とを対応させた表示形態の他の例を示した図である。
【図25】図25は、X線CT装置を用いた検査において生成された共有オブジェクトをMRI装置で利用する場合に表示されるシリーズ選択画面である。
【図26】図26は、第4の実施形態に係る画像診断における医療行為の流れ(検査依頼〜画像検査まで)を示した図である。
【図27】図27は、複数のスキャンを含む診断プロトコルを説明するための概念図である。
【図28】図28は、例えば図26のステップS54において表示される検索結果の一例を示している。
【図29】図29は、画像診断における医療行為の流れ(患者からの依頼〜画像検査まで)を示した図である。
【符号の説明】
【0190】
S…医用画像診断システム、1、3…X線CT装置、5…MRI装置、7…画像参照装置、9…PACSサーバ、71…制御部、72…画像処理部、73…表示部、74…操作部、76…共有オブジェクト生成部、77…記憶装置、78…送受信部、91…制御部、92…共有オブジェクト生成部、93…表示部、94…操作部、95…記憶装置、96…送受信部、100…架台、101…情報処理部、111…スリップリング、112…架台駆動部、113…X線管球、115…X線検出器、116…回転フレーム、117…データ収集部、118…非接触データ電送装置、119高電圧発生装置、120…前処理部、121…メモリ部、123…再構成部、124…画像処理部、125…記憶部、127…制御部、129…表示部、131…入力部、133…共有オブジェクト生成部、140…送受信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、前記画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、前記画像収集処理において使用された第1の撮影条件、前記画像収集処理において前記第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、
前記第1のオブジェクトに基づいて、前記第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを行うオブジェクト解析ユニットと、
前記第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定する制御ユニットと、
前記第1の撮影範囲が設定された前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、設定された前記第2の撮影条件の可否を操作者が確認するための対話画面が表示されるように、前記表示ユニットを制御する請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記第1のオブジェクトは、前記位置決め画像上の基準点の位置及び前記撮影範囲の位置の少なくとも一方を、人体構造を基準とした位置で示した人体基準座標をさらに具備し、
前記オブジェクト解析ユニットは、前記人体基準座標に基づいて、前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像との空間的対応付けを行う請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
少なくとも前記第2の撮影条件、前記第2の位置決め画像を含み、現在の画像収集処理に関する特性を示すための情報である第2のオブジェクトを生成するオブジェクト生成ユニットをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記第2のオブジェクトは、前記第1の撮影条件及び前記第1の位置決め画像の少なくとも一方を含む請求項4記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記医用画像診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であり、
前記第1のオブジェクトが具備する前記第1の撮影条件及び前記第1の位置決め画像は、磁気共鳴イメージング装置において利用又は生成されたものである請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記第1のオブジェクトが具備する前記第1の撮影条件及び前記第1の位置決め画像は、X線コンピュータ断層撮影装置において利用又は生成されたものである請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記第1のオブジェクトは、前記過去の所定の画像収集処理での画像生成において用いられる第1の画像生成条件をさらに具備し、
画像生成条件に従って画像再構成を実行することにより、複数の画像を生成する画像生成ユニットをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記第1の画像生成条件に基づいて現在の画像収集処理において使用される第2の画像生成条件を設定し、当該第2の画像生成条件に従って前記画像再構成処理が実行されるように、前記画像再構成ユニットを制御する請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記オブジェクトは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するための情報である第1の識別子、当該オブジェクトを生成する場合に参照されたオブジェクトを特定するための情報である第2の識別子、当該オブジェクトが特性を示す画像収集処理と関連性をもつ画像収集処理を特定するための情報である第3の識別子のうちの少なくとも一つを含むオブジェクト固有情報をさらに具備する請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
オブジェクト固有情報が含む識別子によって特定されるデータと当該オブジェクトとは、リンクが張られている請求項9記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記医用画像診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であり、
前記撮影条件は、画像収集処理時における寝台移動量、前記照射ユニットであるX線管の管電流又は管電圧、得られる断層画像の相幅に対する一回転での寝台移動量、検査時の被検体挿入方向、検査時の被検体の体位、造影剤投与の有無、造影剤投与量、造影剤の種類のうちの少なくとも一つを含み、
前記画像生成条件は、再構成範囲、前記複数の画像の時相、複数の画像のそれぞれの位置、複数の画像の方向、複数の画像のそれぞれの厚さ、拡大率、再構成関数のうちのの少なくとも一つを含むこと、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記撮影条件は、検査時の被検体挿入方向、検査時の被検体の体位、磁場強度、使用されたパルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期の有無、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位のうちの少なくとも一つを含み、
前記画像生成条件は、再構成範囲、前記複数の画像の時相、複数の画像のそれぞれの位置、複数の画像の方向、複数の画像のそれぞれの厚さ、拡大率、再構成関数のうちのの少なくとも一つを含む請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
ネットワークに接続された医用画像診断装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
前記医用画像診断装置は、
被検体の位置決め画像に対する撮影範囲を含む撮影条件及び画像生成条件を入力するための入力ユニットと、
前記撮影条件に基づいて、前記被検体の前記撮影範囲を映像化するための映像化データを取得するデータ取得ユニットと、
前記映像化データを用いた画像再構成を前記画像生成条件に従って実行することで、複数の画像を生成する画像生成ユニットと、
前記複数の画像を記憶する記憶ユニットと、
少なくとも前記撮影条件、前記画像生成条件、前記位置決め画像を含み、前記複数の画像の収集処理に関する特性を示すための情報であるオブジェクトを生成するオブジェクト生成ユニットと、
を有し、
前記医用画像保管通信システム用サーバは、
前記オブジェクト及び前記関連付け情報を、前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置から受信する受信ユニットと、
受信した前記オブジェクト及び前記関連付け情報を記憶する記憶ユニットと、
を具備する医用画像診断システム。
【請求項14】
ネットワークに接続された医用画像診断装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
前記医用画像保管通信システム用サーバは、
過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、前記画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、前記画像収集処理において使用された第1の撮影条件、前記画像収集処理において前記第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、
要求に応じて、前記第1のオブジェクトを前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置に送信する送信ユニットと、
を具備し、
前記医用画像診断装置は、
前記第1のオブジェクトを前記ネットワークを介して前記送信ユニットから受信する受信ユニットと、
受信した前記第1のオブジェクトに基づいて、前記第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを行うオブジェクト解析ユニットと、
前記第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定する制御ユニットと、
前記第1の撮影範囲が設定された前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示する表示ユニットと、
を有する医用画像診断システム。
【請求項15】
ネットワークに接続された画像参照装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
前記画像参照装置は、
前記医用画像保管通信システム用サーバから、所定の画像収集処理で収集された画像群を前記ネットワークを介して取得する取得ユニットと、
取得された前記画像群からの第1の画像の選択と、選択された前記第1の画像に関する画像処理の条件である画像生成条件の入力とを行うための操作ユニットと、
前記画像生成条件に従って前記第1の画像を用いた画像処理を実行することで、第2の画像を生成する画像生成処理ユニットと、
少なくとも前記画像生成条件、前記所定の画像収集処理を特定するための情報を含み、前記画像生成処理の特性を示すための情報であるオブジェクトを生成するオブジェクト生成ユニットと、
を有し、
前記医用画像保管通信システム用サーバは、
前記オブジェクト及び前記関連付け情報を、前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置から受信する受信ユニットと、
受信した前記オブジェクト及び前記関連付け情報を記憶する記憶ユニットと、
を具備する医用画像診断システム。
【請求項16】
ネットワークに接続された画像参照装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
医用画像保管通信システム用サーバは、
第1の画像収集処理で収集された複数の画像から選択された第1の画像に基づいて第1の診断画像を生成するための画像生成処理に関する特性を示すための情報であって、前記第1の画像収集処理を特定するための情報、前記第1の画像を選択するための情報、前記画像生成処理において用いられる第1の画像生成条件を含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、
要求に応じて、前記第1のオブジェクトを前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置に送信する送信ユニットと、
を具備し、
前記画像参照装置は、
前記第1の画像を選択するための情報に基づいて、第2の画像収集処理において利用された複数の画像からの第2の画像を選択し、且つ前記第1の画像生成条件に基づいて、前記第2の画像に基づいて第2の診断画像を生成するための画像生成処理において用いられる第2の画像生成条件を設定する制御ユニットと、
設定される画像生成条件に従って画像処理を実行することで、診断画像を生成する画像生成処理ユニットと、
を具備する医用画像診断システム。
【請求項1】
過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、前記画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、前記画像収集処理において使用された第1の撮影条件、前記画像収集処理において前記第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、
前記第1のオブジェクトに基づいて、前記第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを行うオブジェクト解析ユニットと、
前記第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定する制御ユニットと、
前記第1の撮影範囲が設定された前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、設定された前記第2の撮影条件の可否を操作者が確認するための対話画面が表示されるように、前記表示ユニットを制御する請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記第1のオブジェクトは、前記位置決め画像上の基準点の位置及び前記撮影範囲の位置の少なくとも一方を、人体構造を基準とした位置で示した人体基準座標をさらに具備し、
前記オブジェクト解析ユニットは、前記人体基準座標に基づいて、前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像との空間的対応付けを行う請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
少なくとも前記第2の撮影条件、前記第2の位置決め画像を含み、現在の画像収集処理に関する特性を示すための情報である第2のオブジェクトを生成するオブジェクト生成ユニットをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記第2のオブジェクトは、前記第1の撮影条件及び前記第1の位置決め画像の少なくとも一方を含む請求項4記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記医用画像診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であり、
前記第1のオブジェクトが具備する前記第1の撮影条件及び前記第1の位置決め画像は、磁気共鳴イメージング装置において利用又は生成されたものである請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記第1のオブジェクトが具備する前記第1の撮影条件及び前記第1の位置決め画像は、X線コンピュータ断層撮影装置において利用又は生成されたものである請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記第1のオブジェクトは、前記過去の所定の画像収集処理での画像生成において用いられる第1の画像生成条件をさらに具備し、
画像生成条件に従って画像再構成を実行することにより、複数の画像を生成する画像生成ユニットをさらに具備し、
前記制御ユニットは、前記第1の画像生成条件に基づいて現在の画像収集処理において使用される第2の画像生成条件を設定し、当該第2の画像生成条件に従って前記画像再構成処理が実行されるように、前記画像再構成ユニットを制御する請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記オブジェクトは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するための情報である第1の識別子、当該オブジェクトを生成する場合に参照されたオブジェクトを特定するための情報である第2の識別子、当該オブジェクトが特性を示す画像収集処理と関連性をもつ画像収集処理を特定するための情報である第3の識別子のうちの少なくとも一つを含むオブジェクト固有情報をさらに具備する請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
オブジェクト固有情報が含む識別子によって特定されるデータと当該オブジェクトとは、リンクが張られている請求項9記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記医用画像診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であり、
前記撮影条件は、画像収集処理時における寝台移動量、前記照射ユニットであるX線管の管電流又は管電圧、得られる断層画像の相幅に対する一回転での寝台移動量、検査時の被検体挿入方向、検査時の被検体の体位、造影剤投与の有無、造影剤投与量、造影剤の種類のうちの少なくとも一つを含み、
前記画像生成条件は、再構成範囲、前記複数の画像の時相、複数の画像のそれぞれの位置、複数の画像の方向、複数の画像のそれぞれの厚さ、拡大率、再構成関数のうちのの少なくとも一つを含むこと、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記医用画像診断装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記撮影条件は、検査時の被検体挿入方向、検査時の被検体の体位、磁場強度、使用されたパルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期の有無、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位のうちの少なくとも一つを含み、
前記画像生成条件は、再構成範囲、前記複数の画像の時相、複数の画像のそれぞれの位置、複数の画像の方向、複数の画像のそれぞれの厚さ、拡大率、再構成関数のうちのの少なくとも一つを含む請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
ネットワークに接続された医用画像診断装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
前記医用画像診断装置は、
被検体の位置決め画像に対する撮影範囲を含む撮影条件及び画像生成条件を入力するための入力ユニットと、
前記撮影条件に基づいて、前記被検体の前記撮影範囲を映像化するための映像化データを取得するデータ取得ユニットと、
前記映像化データを用いた画像再構成を前記画像生成条件に従って実行することで、複数の画像を生成する画像生成ユニットと、
前記複数の画像を記憶する記憶ユニットと、
少なくとも前記撮影条件、前記画像生成条件、前記位置決め画像を含み、前記複数の画像の収集処理に関する特性を示すための情報であるオブジェクトを生成するオブジェクト生成ユニットと、
を有し、
前記医用画像保管通信システム用サーバは、
前記オブジェクト及び前記関連付け情報を、前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置から受信する受信ユニットと、
受信した前記オブジェクト及び前記関連付け情報を記憶する記憶ユニットと、
を具備する医用画像診断システム。
【請求項14】
ネットワークに接続された医用画像診断装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
前記医用画像保管通信システム用サーバは、
過去の所定の画像収集処理に関する特性を示すための情報であって、前記画像収集処理において利用された第1の位置決め画像、前記画像収集処理において使用された第1の撮影条件、前記画像収集処理において前記第1の位置決め画像を用いて設定された第1の撮影範囲の位置に関する情報を少なくとも含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、
要求に応じて、前記第1のオブジェクトを前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置に送信する送信ユニットと、
を具備し、
前記医用画像診断装置は、
前記第1のオブジェクトを前記ネットワークを介して前記送信ユニットから受信する受信ユニットと、
受信した前記第1のオブジェクトに基づいて、前記第1の位置決め画像と現在の画像収集処理において利用される第2の位置決め画像との空間的対応付けを行うオブジェクト解析ユニットと、
前記第1の撮影条件に基づいて、現在の画像収集処理において使用される第2の撮影条件を設定する制御ユニットと、
前記第1の撮影範囲が設定された前記第1の位置決め画像と前記第2の位置決め画像とを空間的に対応付けて表示する表示ユニットと、
を有する医用画像診断システム。
【請求項15】
ネットワークに接続された画像参照装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
前記画像参照装置は、
前記医用画像保管通信システム用サーバから、所定の画像収集処理で収集された画像群を前記ネットワークを介して取得する取得ユニットと、
取得された前記画像群からの第1の画像の選択と、選択された前記第1の画像に関する画像処理の条件である画像生成条件の入力とを行うための操作ユニットと、
前記画像生成条件に従って前記第1の画像を用いた画像処理を実行することで、第2の画像を生成する画像生成処理ユニットと、
少なくとも前記画像生成条件、前記所定の画像収集処理を特定するための情報を含み、前記画像生成処理の特性を示すための情報であるオブジェクトを生成するオブジェクト生成ユニットと、
を有し、
前記医用画像保管通信システム用サーバは、
前記オブジェクト及び前記関連付け情報を、前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置から受信する受信ユニットと、
受信した前記オブジェクト及び前記関連付け情報を記憶する記憶ユニットと、
を具備する医用画像診断システム。
【請求項16】
ネットワークに接続された画像参照装置、医用画像保管通信システム用サーバを具備する医用画像診断システムであって、
医用画像保管通信システム用サーバは、
第1の画像収集処理で収集された複数の画像から選択された第1の画像に基づいて第1の診断画像を生成するための画像生成処理に関する特性を示すための情報であって、前記第1の画像収集処理を特定するための情報、前記第1の画像を選択するための情報、前記画像生成処理において用いられる第1の画像生成条件を含む第1のオブジェクトを記憶する記憶ユニットと、
要求に応じて、前記第1のオブジェクトを前記ネットワークを介して前記医用画像診断装置に送信する送信ユニットと、
を具備し、
前記画像参照装置は、
前記第1の画像を選択するための情報に基づいて、第2の画像収集処理において利用された複数の画像からの第2の画像を選択し、且つ前記第1の画像生成条件に基づいて、前記第2の画像に基づいて第2の診断画像を生成するための画像生成処理において用いられる第2の画像生成条件を設定する制御ユニットと、
設定される画像生成条件に従って画像処理を実行することで、診断画像を生成する画像生成処理ユニットと、
を具備する医用画像診断システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−179447(P2012−179447A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142480(P2012−142480)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2006−319356(P2006−319356)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2006−319356(P2006−319356)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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