説明

医療用デバイス上における微生物バイオフィルムの生育および増殖を抑制するための抗菌性組成物

本発明は、デバイス上における、バイオフィルムに包埋された微生物の生育または増殖を防止するための組成物であって、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備えている組成物を提供する。本発明はさらに、そのような組成物を用いて医療用デバイスを作製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス、特にカテーテルのような医療用デバイスの表面または内部における、バイオフィルムに包埋された微生物の生育および増殖を抑制する抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本願は、2005年7月1日出願の米国仮特許出願第60/695,546号明細書ならびに2005年12月6日出願の米国仮特許出願第60/742,972号明細書に関連し、同出願の優先権を主張する。
【0003】
(背景)
尿路感染症(UTI)は、すべての院内感染のうち最大で40%を占める最も一般的な院内感染である。UTI症例の大多数は、経尿道的フォリーカテーテル、恥骨上カテーテル、および腎臓瘻術カテーテルを含む尿道カテーテルの使用に関係している。これらの尿道カテーテルは、高齢者、脳卒中の犠牲者、脊髄を負傷した患者、手術後の患者および閉塞性尿路疾患の患者を含む様々な人々に挿入される。尿道カテーテルの挿入およびメンテナンスに関する無菌ガイドラインを遵守しても、カテーテルに関連したUTIは大きな問題を提起し続けている。例えば、脊髄を負傷した入院患者のほぼ4分の1が入院中に症候性UTIを発症すると推測される。カテーテルに関連するUTI症例の原因は、グラム陰性桿菌がほぼ60〜70%であり、腸球菌が約25%であり、カンジダ属菌種が約10%である。更に、血管カテーテルを含む医療用留置デバイスは、静脈へのアクセスを提供することから入院患者の管理において不可欠になりつつある。これらのカテーテルならびに他のタイプの医療用デバイス、たとえば腹腔カテーテル、心臓血管デバイス、整形外科用インプラントおよび他の人工器官などからもたらされる恩恵は、感染合併症によってしばしば相殺されてしまう。これらの感染合併症を引き起こす最も一般的な生物は表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である。血管カテーテルの場合、これら2種の生物がすべての感染生物のほぼ70〜80%を占め、表皮ブドウ球菌が最も一般的な生物である。真菌病原体であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、カテーテル感染の10〜15%の原因となっている。
【0004】
近年、デバイスに関連した感染の発生率を減少させる手段として、脈管構造内または尿路に配置されることになるデバイスの表面上または内部に抗菌剤および抗生物質を封じ込める多大な努力がなされてきた。これらの抗菌物質は様々な化学組成のものであり、カチオン性ポリペプチド(プロタミン、ポリリシン、リゾチームなど)、防腐剤(クロルヘキシジン、トリクロサンなど)、界面活性剤(硫酸ドデシルナトリウム、トゥイーン(R)−80、サーファクチンなど)、第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム、トリドデシル・メチル塩化アンモニウム、ジデシル・ジメチル塩化アンモニウムなど)、銀イオン/銀化合物およびニトロフラゾンを含むことができる。
【0005】
抗菌カテーテルの主な作製方法には、浸漬またはフラッシング、コーティング、薬物とポリマーとの共役、および含浸が挙げられる(ターメイ(Turmey)ら、Rev.Med.Microbiol.、第7巻第4号、p.195−205、1996年)。臨床的には、適切なカテーテルに、一定の状況において臨床医に可撓性とコントロールとを提供する浸漬処理を、配置の直前に施すことができる。いくつかの研究により、抗菌物質でコーティングされたカテーテルの臨床的有効度が検討されている。ミノサイクリンおよびEDTAでコーティングされたポリウレタン・カテーテルは、血管カテーテルに関連した再発性の感染を低減する可能性を示した(ラード(Raad)ら、Clin.Infect.Dis.、第25巻、p.149−151、1997年)。ミノサイクリンおよびリファンピンによるコーティングは、カテーテルに関連する感染のリスクを著しく減少させることが示された(ラード(Raad)ら、Crit.Care Med.、第26巻、p.219−224、1998年)。尿道カテーテル上にコーティングされたミノサイクリンは、コロニー形成に対しある程度の防御を呈することが示された(ダルーシェ(Darouiche)ら、Int.J.Antimicrob.Ag.、第8巻、p.243−247、1997年)。ジョンソン(Johnson)らは、ニトロフラゾンでコーティングされた市販のシリコーン・カテーテルの生体外(in vitro)における大きな抗菌活性について述べている(ジョンソン(Johnson)ら、Antimicrob.Agents Chemother.、第43巻、p.2990−2995、1999年)。医療用デバイス用の抗菌コーティング剤としての銀含有化合物の抗細菌活性は、広く調査されている。クロルヘキシジンと併用されたスルファジアジン銀は、中心静脈カテーテルのコーティング剤として特に関心を集めてきた(スティクラー(Stickler)、Curr.Opin.Infect.Dis.、第13巻、p.389−393、2000年およびダルーシェ(Darouiche)ら、New Eng.J.Med.、第340巻、p.1−8、1999年)。
【0006】
浸漬またはコーティングの技術による医療用デバイス中への抗菌物質の装入は、比較的簡単であるという長所を有する。しかしながら、組み込むことができる薬物量に限界があるため抗菌効果の延長には不十分な場合があり、また、デバイスを臨床的に挿入した後の薬物の放出が急速で比較的抑制しにくい。これらの問題を軽減する手段は、医療用デバイスのポリマーマトリクス中に、該ポリマーの合成工程またはデバイスの製造工程で抗菌物質を直接組み込むことによる。リファンピシンは、髄液シャントでの感染を防止すべくシリコーンに組み入れられ、ある程度の成功を収めている(シェルホルツ(Schierholz)ら、Biomaterials、第18巻、p.839−844、1997年)。ヨウ素も医療用デバイスの生体材料に組み入れられている。冠状動脈のステントは、シリコーンにヘパリンを共有結合させた後、このヘパリン処理された表面に結合した架橋コラーゲン中へ抗生物質を取り込むことによって、抗血栓作用および抗菌活性を有するように修飾されている(フォールグレン(Fallgren)ら、Zentralbl.Bakteriol.、第287巻、p.19−31、1998年)。
【0007】
ウェル(Welle)らは、医療用デバイスをフラッシング処理するためのキットの作製方法を開示した(米国特許第6,187,768号明細書)。このキットは、抗生物質、抗凝血薬(硫酸プロタミン)、およびカテーテル中の細菌増殖によって引き起こされる感染を防ぐのに有用な抗血栓剤またはキレート剤を含んだ溶液を備えている。
【0008】
ラード(Raad)らは、ミノサイクリンとEDTAとの混合物の医薬組成物がカテーテル・ポートの開通性を維持するのに役立つことを明らかにした(米国特許第5,362,754号明細書)。最近、ラード(Raad)およびシェレツ(Sheretz)は、有効なカテーテルのフラッシング溶液を、非グリコペプチド抗菌物質、抗トロンビン剤、抗凝血薬、ならびに、EDTA、EGTAおよびDTPAから成る群から選択されたキレート剤を用いて調製可能であることをさらに示した(米国特許第5,688,516号明細書)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウェル(Welle)らは、医療用デバイスで使用される、硫酸プロタミンを含むいくつかの抗凝血薬の使用を教示している(米国特許第6,187,768号明細書)。硫酸プロタミンとある種の抗生物質との併用は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)のような、カテーテルに関連した細菌に対して相乗効果を有することが示されている(ソボー(Soboh)ら、Antimicrob.Agents.Chemother.、第39巻、p.1281−1286、1995年およびリチャーズ(Richards)ら、ASAIO Trans、第36巻、p.296−299)。キム(Kim)ら(キム(Kim)ら、Am.J.Kidney Dis.、第39巻、p.165−173、2002年)は、カフおよびチューブ材のポリマーマトリクス中にクロルヘキシジン、スルファジアジン銀およびトリクロサンを含浸させることにより、抗菌剤を含浸させた腹膜透析カテーテルを開発した。フォックス(Fox)らは、銀塩およびクロルヘキシジンを含んでなる相乗効果のある組成物を有する医療用デバイスを開示している(米国特許第5,019,096号明細書)。ソロマン(Soloman)らは、クロルヘキシジンを含んだ抗感染性の医療用品を開示している(米国特許第6,261,271号明細書)。モダク(Modak)らは、米国特許第6,706,024号明細書および米国特許第6,843,784号明細書において、クロルヘキシジン、トリクロサン、および銀化合物を含んだ医療用デバイスを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、デバイス上における、バイオフィルムに包埋された微生物の生育および増殖を防止するための組成物であって、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備えている組成物を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態では、カチオン性ポリペプチドは組成物中で約12.5mg/ml〜約100mg/mlである。
本発明の別の実施形態では、ビスグアニドは組成物中で約100mg/ml〜約400mg/mlである。
【0012】
さらなる実施形態では、本発明の組成物はバイオフィルムに包埋された細菌の生育および増殖の防止に有効である。
細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロビデンティア・ステュアルティイ(Providentia stuartii)およびセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)から成る群から選択されたグラム陰性細菌でもよい。
【0013】
細菌は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびスタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)から成る群から選択されたグラム陽性細菌でもよい。
【0014】
別の実施形態では、組成物はバイオフィルムに包埋された真菌の生育および増殖の防止に有効であり、真菌はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を含んでもよい。
さらなる実施形態では、カチオン性ポリペプチドは、硫酸プロタミン、デフェンシン、ラクトペルオキシダーゼおよびリゾチームから成る群から選択される。
【0015】
さらに別の実施形態では、ビスグアニドは、クロルヘキシジン、アレキシジンおよびポリマー性のビスグアニドから成る群から選択される。
さらに別の実施形態では、ビスグアニドはクロルヘキシジン塩である。
【0016】
クロルヘキシジン塩は、ジグルコン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよび二塩酸クロルヘキシジンから成る群から選択されうる。
さらなる実施形態では、カチオン性ポリペプチドは硫酸プロタミンであり、ビスグアニドはクロルヘキシジン塩である。
【0017】
さらに別の実施形態では、組成物は約100mg/mlの硫酸プロタミンと約400mg/mlのクロルヘキシジン塩とを含む。
また別の実施形態では、本発明による組成物は、水;結合剤、接合剤もしくはカップリング剤または架橋剤;ビスフェノール;第四級アンモニウム化合物;マレイミド;抗生物質;およびpH調整剤から成る群から選択された一つ以上の成分をさらに含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、本発明による組成物を用いてデバイスの少なくとも一つの表面を処理する行程を含む、デバイスの作製方法を提供する。
さらなる態様では、本発明は、本発明の組成物をポリマーに組み込む行程を備えるデバイスの作製方法であって、ポリマーがデバイスの形成に使用される方法を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、デバイスの作製方法であって、該デバイスの少なくとも一つの表面上を本発明の組成物でコーティングする行程を備える、デバイスの作製方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、組成物は有効な量の硫酸プロタミンおよびクロルヘキシジン塩を含む。
本発明の一実施形態では、デバイスは医療用デバイスである。
【0021】
本発明の別の実施形態では、デバイスはカテーテルであってもよい。
カテーテルは、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、動脈カテーテル、血液透析カテーテル、臍帯カテーテル、経皮的非トンネル式シリコーン・カテーテル、カフ付トンネル式中心静脈カテーテルおよび皮下中心静脈ポートから成る群から選択された留置カテーテルであってよい。
【0022】
カテーテルは、尿道カテーテル、腹腔カテーテルおよび中心静脈カテーテルから成る群から選択された留置カテーテルであってもよい。
別の実施形態では、デバイスは、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、ボイスプロテーゼ、コンタクトレンズおよび子宮内避妊器具から成る群から選択されてもよい。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、デバイスに関連した感染を防止するための組成物であって、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備える組成物を提供する。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を用いてデバイスの少なくとも一つの表面を処理する行程を備える、デバイスの作製方法を提供する。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備える組成物と、(c)前記カチオン性ポリペプチドおよび前記ビス・グアニジン、またはそれらの塩のコーティング、組み込み、または処理がなされている医療用デバイスとを提供する。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物に移植するための医療用デバイスの作製における、本願に記載された組成物のうちのいずれかの使用方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
少なくとも一つのカチオン性ポリペプチドおよび少なくとも一つのビスグアニドを備えている組成物は、増強された抗菌活性を有する。特に前記の化合物は、バイオフィルムに包埋された、細菌および真菌のいずれも含む微生物の生育および増殖の防止に有効である。抗菌活性の増強は、有効な抗菌性組成物を生産するために使用すべき上記の各化合物の量が少ないことによって証拠づけられる。必要とされる化合物の全体量は、化合物のうちいずれかが単独で使用された場合に必要な量よりも少ない。特に、生物学的に許容可能なカチオン性ポリペプチド少量と、低濃度では生物学に許容可能であり有効な抗菌剤であるビスグアニド少量とを使用することが可能である。
【0028】
従って、本発明の実施形態は、バイオフィルムに包埋された微生物の生育および増殖を防止するための組成物であって、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備える組成物を提供する。
【0029】
本発明の実施形態はまた、留置カテーテルによって引き起こされる尿路感染症のような、植え込み型医療用デバイスまたはカテーテルによって引き起こされる感染または悪化する感染を、組成物で前記医療用デバイスまたはカテーテルをコーティングすることによって防止するための組成物を提供し、そのような組成物は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備える。
【0030】
本発明の相乗効果を有する抗菌性組成物は、効果を発揮するために(過去に使用されてきたものと比較して)極めて少量の有効成分しか必要としない。本発明に係る組成物は、個々の化合物の特性を含むが効能と適用範囲とにおいて個々の化合物を越える特性を有することができる。活性化合物または活性成分が、非常に低濃度で、従って効能が高いことにより、本発明の実施形態は非常に望ましく、かつ製造するのに比較的経済的なものとなるが、ある種の適用について望まれる場合にはこれらの化合物をより高い濃度で使用することもできる。これらの組成物を使用するさらなる利点は、バイオフィルムに包埋された細菌および真菌、特にカテーテルのような医療用デバイスにコロニーを形成する細菌種および真菌種の生育を防止する有効性である。本発明の組成物を作製するのに有用なカチオン性ポリペプチドの例には、硫酸プロタミン、デフェンシン、ラクトペルオキシダーゼおよびリゾチームが挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の好ましい実施形態では、カチオン性ポリペプチドは硫酸プロタミンである。
【0031】
組成物に含まれるカチオン性ポリペプチドの量は、好ましくは約10〜200mg/mlであり、より好ましくは約12.5〜100mg/mlである。この範囲のうち高濃度域は、使用に先立って希釈可能な濃縮製品を作製するために使用することができる。
【0032】
本発明の組成物を作製するのに有用なビスグアニドの例には、クロルヘキシジン、アレキシジンまたはポリマー性のビスグアニドが挙げられるが、これらに限定はされない。ビスグアニドは、適切な塩の形態であってもよい。ビスグアニド塩は周知である。本発明の好ましい実施形態では、組成物は、クロルヘキシジン塩、より好ましくはジグルコン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジンまたは二塩酸クロルヘキシジンを使用して作製される。
【0033】
組成物に含まれるビスグアニドの量は、好ましくは約10〜400mg/mlであり、より好ましくは約100〜400mg/mlである。この範囲のうち高濃度域は、使用に先立って希釈可能な濃縮製品を作製するために使用することができる。
【0034】
標的とする細菌および処理しようとするデバイスに応じた一定の適用に対して、より高い濃度の化合物を使用することができる。適切な作用濃度は、既知の方法を使用して容易に決定することができる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、組成物は、カチオン性ポリペプチドとしての硫酸プロタミン、およびビスグアニドとしてのクロルヘキシジン塩を含む。さらに好ましい実施形態では、組成物は約100mg/mlの硫酸プロタミンおよび約400mg/mlのクロルヘキシジン塩を含む。
【0036】
本発明の組成物を既知の方法を使用して作製することができる。一般に、構成成分を、水、グリセロール、有機酸およびその他の適切な溶媒などの適切な溶媒に溶解する。
本発明の組成物は、任意の数の周知の活性成分および基剤を含んでもよい。組成物は、成分、例えば水のような適切な溶媒;抗細菌剤および抗真菌剤のような抗生物質; 結合剤、接合剤、もしくはカップリング剤、架橋剤;またはpH調整剤など(これらに限定はされない)をさらに含んでもよい。
【0037】
本発明の組成物は、ビスフェノール、N置換マレイミド、および第四級アンモニウム化合物のような追加の抗菌性成分をさらに含んでもよい。本発明の組成物を作製するのに有用なビスフェノールの例には、トリクロサンおよびヘキサクロロフェンが含まれるが、これらに限定はされない。本発明の組成物を作製するのに有用なN置換マレイミドの例には、N−エチルマレイミド(NEM)、5,5−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、N−フェニルマレイミド(PheM)、N−(1−ピレニル)マレイミド(PyrM)、ナフタレン−1,5−ジマレイミド(NDM)、N,N’−(1,2−フェニレン)ジマレイミド(oPDM)、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド(pPDM)、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド(mPDM)、および1,1−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド(BM)が含まれるが、これらに限定はされない。本発明の組成物を作製するのに有用な第四級アンモニウム化合物の例には、塩化ベンザルコニウム、トリドデシル・メチル塩化アンモニウム、およびジデシル・ジメチル塩化アンモニウムが含まれるが、これらに限定はされない。
【0038】
組成物の構成成分になりうるその他のものとしては、緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、ポリビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン(例えばシリコーン・ラッソー(silicone lassoers)およびシリコーン接着剤)、ポリカルボン酸(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ(マレイン酸モノエステル)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、アルギン酸またはペクチン酸)、ポリカルボン酸無水物(例えば、ポリマレイン無水物、ポリメタクリル無水物、ポリアクリル酸無水物)、ポリアミン、ポリアミン・イオン(例えばポリエチレン・イミン、ポリビニルアミン、ポリリシン、ポリ(ジアルキルアミノエチル・メタクリル酸)、ポリ(ジアルキルアミノメチル・スチレン)またはポリ(ビニルピリジン)、ポリアンモニウムイオン(例えばポリ(2−メタクリルオキシエチル・トリアルキル・アンモニウムイオン)、ポリ(ビニルベンジル・トリアルキル・アンモニウムイオン)、ポリ(N,N−アルキルピリジニウムイオン)またはポリ(ジアルキルオクタメチレン・アンモニウムイオン)およびポリスルホネート(例えば、ポリ(ビニルスルホネート)またはポリ(スチレンスルホネート)、コロジオン、ナイロン、ゴム、プラスチック、ポリエステル、ダクロン(TM)(ポリエチレンテトラフタラート)、テフロン(TM)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、およびこれらの誘導体、エラストマーおよびダクロン(ゼラチン、コラーゲンあるいはアルブミンで封孔されたもの、シアノアクリレート、メタクリル酸塩、多孔性のバリアフィルムを備えた紙材、接着剤、例えば、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤、および接着性ヒドロゲル、織物、ならびに架橋ヒドロゲルおよび非架橋ヒドロゲル、ならびに、その他のポリマー性材料であって、活性成分の分散と、バイオフィルム浸透性コーティング剤の少なくとも一つの医療用デバイス表面への付着とを促進する材料が含まれるが、これらに限定はされない。上記の例証されたポリマーの構成分子をモノマーとして含んでいる線状コポリマー、架橋コポリマー、グラフトポリマーおよびブロックポリマーが使用されてもよい。
【0039】
本発明の組成物を使用して抑制可能な、バイオフィルムに包埋された細菌の例には、グラム陰性菌、限定するものではないが例えば大腸菌、プロテウス・ミラビリス、肺炎桿菌、緑膿菌、クレブシエラ・オキシトカ、プロビデンティア・ステュアルティイまたはセラチア・マルセッセンス、ならびにグラム陽性菌、限定するものではないが例えばエンテロコッカス・フェカーリス、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ヴィリダンス型連鎖球菌、表皮ブドウ球菌、および黄色ブドウ球菌またはスタフィロコッカス・サプロフィティクスが挙げられる。これらの細菌は一般にカテーテルなどの医療用デバイスに関連して見出されている。
【0040】
本発明に係る組成物は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・パラシローシス(Candida parapsilosis)およびカンジダ・ユチリス(Candida utilis)などの、バイオフィルムに包埋された真菌の生育および増殖を抑制するために使用することも可能である。別の態様では、本発明は、本発明に係るカチオン性ポリペプチドおよびビスグアニドの組成物でデバイスの少なくとも一つの表面を処理する行程を含む、デバイスの作製方法を提供する。本発明の好ましい実施形態では、デバイスの作製に使用される組成物は、有効な量の、カチオン性ポリペプチドとしての硫酸プロタミンと、ビスグアニドとしてのクロルヘキシジン塩とを備えている。
【0041】
用語「有効な」とは、ある具体的な組成物でコーティングされた医療用デバイスの少なくとも一つの表面上で、バイオフィルムに包埋された微生物の生育または増殖をほぼ防止するために十分な量の活性成分を意味し;かつ、十分な量の活性成分としては、医療用デバイスの少なくとも一つの表面上のバイオフィルムに十分に浸透し、またはバイオフィルムを破壊し、その結果として活性成分、抗菌物質および/または抗真菌物質がバイオフィルムに包埋された微生物に接近し易くなり、したがって、具体的な組成物の溶液で処理された医療用デバイスの少なくとも一つの表面からほぼすべての微生物が除去されるものである。量は、各活性成分によって、ならびに薬学的特性;医療用デバイスのタイプ;バイオフィルムに包埋された微生物による汚染の程度;および使用期間のような既知の要因によって変化可能である。
【0042】
本発明の組成物を用いて処理することが可能なデバイスの例には、チューブ材のような医療用デバイス、ならびにカテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、ボイスプロテーゼ、コンタクトレンズおよび子宮内避妊器具のような他の医療用デバイスが含まれる。
【0043】
医療用デバイスには、使い捨てもしくは恒久的な留置カテーテル(例えば中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期型トンネル式中心静脈カテーテル、短期型中心静脈カテーテル、末梢挿入中心カテーテル、末梢静脈カテーテル、肺動脈スワン−ガンツカテーテル、尿道カテーテルおよび腹腔カテーテル)、長期型泌尿器用デバイス、組織接着性泌尿器用デバイス、人工血管、血管カテーテル・ポート、創傷排液用チューブ、心室カテーテル、水頭症シャント用人工弁、心臓補助装置(例えば左室補助装置)、ペースメーカー・カプセル、失禁デバイス、ペニス・インプラント、小型または一時性の代替関節、尿道拡張器、カニューレ、エラストマー、ヒドロゲル、外科用器具、歯科用器具、静脈チューブ、呼吸管、歯科用水ライン、歯科用排液チューブおよび栄養管などのチューブ材、織物、紙材、インジケータ・ストリップ(例えば、紙製インジケータ・ストリップまたはプラスチック製インジケータ・ストリップ)、接着剤(例えばヒドロゲル接着剤、ホットメルト接着または溶剤系接着剤)、包帯、整形外科用インプラント、ならびに医療分野で使用されるその他の任意のデバイスが挙げられる。
【0044】
医療用デバイスはさらに、ヒトまたは他の動物に挿入または移植される可能性があるか、または挿入部位もしくは移植部位近くの皮膚などの挿入部位もしくは移植部位に配置される可能性があり、かつ、バイオフィルムに包埋された微生物によるコロニー形成が生じやすい少なくとも一つの表面を備えた、あらゆるデバイスを含んでいる。
【0045】
本発明に適した医療用デバイスには、手術室、緊急処置室、病室、クリニックおよび浴室内の設備の表面が含まれる。
移植可能な医療用デバイスには、バイオフィルムに包埋された微生物による汚染または感染の有無について内視鏡検査を使用して調査することができる、整形外科用インプラントが含まれる。挿入可能な医療用デバイスには、内視鏡検査のような侵襲性の技法を用いずに検査することができるカテーテルおよびシャントが含まれる。
【0046】
医療用デバイスは任意の適切な金属材料あるいは非金属材料から形成することができる。金属材料の例には、チタン、ステンレス鋼、およびそれらの誘導体または組み合わせが含まれるが、これらに限定はされない。非金属材料の例には、熱可塑性またはポリマー性材料、たとえばゴム、プラスチック、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、シリコーン、Gortex(TM)(ポリテトラフルオロエチレン)、ダクロン(TM)(ポリエチレンテトラフタラート)、テフロン(TM)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、エラストマー、およびゼラチン、コラーゲンもしくはアルブミンで封孔されたダクロン(TM)、ならびにこれらの誘導体または組み合わせが含まれるが、これらに限定はされない。
【0047】
好ましい実施形態では、医療用デバイスの少なくとも一つの表面を処理する方法は、医療用デバイスを本発明の組成物と接触させる行程を含む。本願において使用されるように、用語「接触」には、コーティング、スプレー、浸漬、すすぎ、フラッシング、サブマージおよび洗浄が含まれる。医療用デバイスを、処理された医療用デバイス表面からバイオフィルムに包埋された微生物をほぼすべて除去するのに十分な期間、組成物と接触させる。
【0048】
より好ましい実施形態では、医療用デバイスを少なくとも5分間組成物中に沈める。あるいは、医療用デバイスを組成物でフラッシングしてもよい。歯科用排液チューブなどチューブ材の医療用デバイスの場合には、組成物を歯科用排液チューブ内に注入し、該チューブの両端を留め、組成物がチューブのルーメン内に保持されるようにすればよい。その後、医療用デバイスの少なくとも一つの表面から微生物をほぼすべて除去するのに十分な時間、一般には少なくとも約1分間から約48時間、チューブ材が組成物で満たされ続けるようにする。別例として、バイオフィルムに包埋された微生物すべての実質的な生育を防止するのに十分な時間、チューブ材のルーメンに組成物を流し込むことにより、チューブ材をフラッシングしてもよい。組成物中の活性成分の濃度は、組成物が医療用デバイスと接触する時間を減少させることが望ましいかまたはその必要があるときは、変更可能である。
【0049】
デバイスの表面を処理する方法の別の実施形態では、本発明の組成物はさらに、医療用デバイスの表面と組成物との反応性を増強するために、有機溶媒、医療用デバイス材料への浸透剤を含んでもよいし、または組成物へのアルカリ化剤の添加を含んでもよい。有機溶媒、医療用デバイス材料への浸透剤および/またはアルカリ化剤は、医療用デバイスの少なくとも一つの表面への組成物の付着を一層促進するものである。
【0050】
別の態様は、デバイスの少なくとも一つの表面上を本発明の組成物でコーティングする方法を提供する。好ましくは、デバイスは医療用デバイスである。概して、医療用デバイスをコーティングする方法は、医療用デバイスを提供するステップと;組成物コーティング剤を提供または形成するステップと;医療用デバイスの少なくとも一つの表面上におけるバイオフィルムに包埋された微生物の生育または増殖をほぼ防止するのに十分な量の組成物コーティング剤を医療用デバイスの少なくとも一つの表面に施用するステップとを含む。特定の一実施形態では、医療用デバイスをコーティングする方法は、活性成分の活性化のために有効な濃度の本発明の組成物を形成し、その結果として医療用デバイスの少なくとも一つの表面上の微生物の生育または増殖をほぼ防止するステップを含み、本発明の組成物が活性成分と基剤とを組み合わせることにより形成されることを特徴とする。その後、医療用デバイスの少なくとも一つの表面を、本発明の組成物が医療用デバイスの少なくとも一つの表面を被覆する条件の下で、本発明の組成物と接触させる。用語「接触」はさらに、含浸、複合、混合、統合、コーティング、スプレーおよびディッピングを含むが、これらに限定はされない。
【0051】
医療用デバイスをコーティングする方法の別の実施形態では、組成物コーティング剤は、活性成分と基剤とを室温で組み合わせ、デバイスの表面に組成物を施用するのに先立って組成物中の活性物質を均一に分散させるのに十分な時間混合することにより、形成させることが好ましい。医療用デバイスを、組成物がデバイスの少なくとも一つの表面に付着するのに十分な時間、組成物と接触させればよい。組成物をデバイスの表面に施用した後、乾燥させる。
【0052】
デバイスは、約25℃〜約60℃の範囲の温度で約30秒間〜約180分間の範囲の時間、医療用デバイスを組成物中にディッピングすることにより、組成物と接触させておくことが好ましい。好ましくは、デバイスは、約37℃の温度で約60分間、医療用デバイスを組成物中にディッピングすることにより、組成物と接触させておく。デバイスを組成物から取り出し、次に乾燥させる。医療用デバイスを、組成物が乾くのに十分な時間、オーブンまたは他の加熱環境に置けばよい。
【0053】
組成物を1つの層またはコーティングとしても所望の組成物コーティングが得られると考えられるが、多層とするのが好ましい。組成物の多層は、上述のステップを繰り返すことにより医療用デバイスの少なくとも一つの表面に施用されることが好ましい。好ましくは、医療用デバイスを組成物と3回接触させるものとし、医療用デバイスの少なくとも一つの表面上で組成物を乾燥させてからそれぞれ次の層のために該医療用デバイスを組成物と接触させる。したがって、医療用デバイスは、該医療用デバイスの少なくとも一つの表面上に組成物の被膜または層を3つ含むことが好ましい。
【0054】
別の実施形態では、組成物コーティング剤で医療用デバイスをコーティングする方法は、医療用デバイスの少なくとも一つの表面上におけるバイオフィルムに包埋された微生物の生育または増殖をほぼ防止するために有効な濃度の組成物コーティング剤を形成するステップを含み、コーティング剤の形成は、活性成分を有機溶媒に溶解し、この活性成分および有機溶媒と医療用デバイス材料への浸透剤とを組み合わせ、医療用デバイス材料の反応性を改善するためにアルカリ化剤を組み合わせることにより行われる。その後、組成物を約30℃〜約60℃の範囲の温度に加熱して、デバイスの少なくとも一つの表面への組成物コーティング剤の付着を増強する。組成物コーティング剤は、好ましくは、組成物コーティングが医療用デバイスの少なくとも一つの表面に付着するのに十分な時間、医療用デバイスの少なくとも一つの表面に組成物コーティング剤を接触させることにより、医療用デバイスの少なくとも一つの表面に施用される。医療用デバイスを組成物コーティング剤から取り出し、好ましくは室温で少なくとも18時間乾燥させる。その後、医療用デバイスを水などの液体ですすぎ、少なくとも2時間、好ましくは4時間乾燥させてから殺菌することができる。医療用デバイスの表面上での本発明の組成物の乾燥を促進するために、医療用デバイスをオーブンなどの加熱環境に置いてもよい。
【0055】
別の態様では、本発明は、デバイス中に本発明の組成物を組み込む方法を提供する。好ましくは、デバイスは医療用デバイスであり、組成物は、該医療用デバイスの形成時に医療用デバイスを形成する材料に組み込まれる。例えば、組成物は、医療用デバイスを形成する材料、例えばシリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、Gortex(TM)(ポリテトラフルオロエチレン)、ダクロン(TM)(ポリエチレンテトラフタラート)、テフロン(TM)(ポリテトラフルオロエチレン)、および/またはポリプロピレンと組み合わされて、医療用デバイスを形成する材料とともに押出し加工され、その結果として組成物が医療用デバイスを形成する材料中に組み込まれてもよい。この実施形態では、組成物は、医療用デバイスの挿入部位または移植部位に位置するセプタムまたは接着剤に組み込まれてもよい。この実施形態に従って医療用デバイスを形成する材料中に組成物が組み込まれている医療用デバイスの一例は、下記にさらに詳細に述べる、接着剤層を有するカテーテル挿入シールである。材料中に組成物が組み込まれている医療用デバイスの別例は、接着剤である。本発明の組成物は、テープなどの接着剤に溶け込ませることが可能であり、その結果として、該接着剤の少なくとも一つの表面上におけるバイオフィルムに包埋された微生物の生育または増殖を防止することのできる接着剤を提供することができる。
【0056】
本発明について、例示的な実施形態に関連して述べてきたが、当業者には当然のことながら、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されるものではなく、様々な変更および改良を施すことが可能である。変更および修正はすべて、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【実施例】
【0057】
実施例1 バイオフィルムに包埋された、カテーテルに関連した細菌に対する、硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)との組み合わせの増強効果
バイオフィルムに包埋された、大腸菌、緑膿菌および表皮ブドウ球菌のようなカテーテル関連のバイオフィルム形成細菌の生育に対する、硫酸プロタミンとクロルヘキシジン塩との組み合わせの増強効果を測定するために、生体外におけるマイクロプレート分析を実施した。ルリア=ベルターニ(LB)またはトリプティックソイブロス(TSB)中で生育させた各菌株の一晩培養物を植菌物として使用した。細菌は、12ウェル・マイクロプレートにてコロニー形成抗原(CFA)培地(グラム陰性菌用)またはTSB(グラム陽性菌用)中で、各試験化合物(PSまたはCHX)単独の存在下または非存在下ならびに共存下(PS+CHX)において、試験化合物を12.5μg/ml、25μg/mlまたは50μg/mlとして生育させた。プレートを37℃で24時間インキュベートした。各ウェル中のプランクトン様細胞を含んだ培地を静かに取り出し、滅菌水ですすいだ。既知体積の水を各ウェルに加えて30秒間超音波処理した。各ウェルの内容物を滅菌チューブに移して1分間攪拌した後、10倍希釈系列とし、スプレッダを使用して寒天プレート上に塗り拡げた。プレートを37℃で24時間インキュベートした後、コロニー形成単位(CFU)を計数した。クロルヘキシジン塩は、バイオフィルムに包埋された3種の供試生物すべての生育の抑制において硫酸プロタミンよりも有効であったが、硫酸プロタミンとクロルヘキシジン塩との組み合わせは、緑膿菌および表皮ブドウ球菌に対して増強された抑制作用を有していた(図1〜3)。
【0058】
実施例2 硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)との組み合わせでコーティングされたシリコーン・カテーテルの、カテーテルに関連する細菌に対する抑制活性
1cm長のシリコーン・カテーテル片をPS+CHXでコーティング処理したもの、および未処理のものの抗菌活性を、シェレツ(Sheretz)らが先に述べたように(Antimicrob.Agents.Chemother.、第33巻、p.1174−1178、1989年)カービー=バウアー法を使用して評価した。カテーテルは、米国特許第6,475,434号明細書に記載のように、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)溶液中にディッピングした後で乾燥させることによりコーティングした。カテーテルをエチレンオキサイドでガス滅菌した。大腸菌、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、肺炎桿菌、エンテロコッカス・フェカーリス、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスのようなカテーテルに関連する微生物を、37℃で18時間普通ブロスにおいて生育させた。適切な植菌量の各細菌株または酵母株を用いて塗布プレートを作製した。その後、コーティング処理したカテーテル片および未処理のカテーテル片を、各プレートの中央に注意深く押しつけた。37℃で24時間インキュベートした後、各カテーテル片を囲む阻止帯を、長軸に垂直な向きに計測した。阻止帯は生物によって6mm〜21mmの範囲で変動した(表1)。コーティングされたカテーテルは、大腸菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対し顕著な抑制活性を有していた。
【0059】
【表1】

実施例3 硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)との組み合わせでコーティングされたシリコーン・カテーテルの、カテーテルに関連する細菌に対する抗付着効果
細菌コロニー形成に抵抗するためにPS+CHX、PSおよびCHXでコーティングしたシリコーン・カテーテルの能力について、コーティング処理片と未処理片とを大腸菌、緑膿菌および表皮ブドウ球菌に曝露することにより三連で試験した。シリコーン・カテーテルを、PS(100mg/ml)、CHX(100mg/ml)およびPS(100mg/ml)+CHX(100mg/ml)でコーティングし、エチレンオキサイドでガス滅菌した。このコーティング処理カテーテル片を、細菌に曝露する前に滅菌人工尿中で37℃にて24時間、100rpm(毎分回転数)でインキュベートした。インキュベートした後、カテーテル片を滅菌水ですすぎ、BHI培地中の細菌培養物中で37℃にて3時間、100rpmでインキュベートした。3時間インキュベートした後、カテーテル片を穏やかに2度洗浄した。洗浄した各カテーテル片を、1mlの滅菌水が入った滅菌チューブに移し、30秒間超音波処理した後に1分間攪拌した。さらに、滅菌水を使用して各区分を段階希釈し、LB寒天プレート上に塗り拡げた。プレートを37℃で24時間インキュベートし、コロニー(CFU)を計数した。CHXのみでコーティングしたカテーテルは、PSおよびPS+CHXでコーティングしたカテーテルよりも、大腸菌および表皮ブドウ球菌の付着の抑制において優れていた(図4および6)。しかしながら、PS+CHXの組み合わせでコーティングしたカテーテルは、緑膿菌に対して増強された抗付着効果を示した(図5)。
【0060】
実施例4 硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)との組み合わせでコーティングされたシリコーン・カテーテルの抑制活性の耐久性
PS+CHXでコーティングした1cm長のシリコーン・カテーテル片の抗菌活性を、シェレツ(Sheretz)らが先に述べたように(Antimicrob.Agents.Chemother.、第33巻、p.1174−1178、1989年)カービー=バウアー法を使用して評価した。カテーテルは、米国特許第6,475,434号明細書の記載のように、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)溶液中にディッピングした後で乾燥させることによりコーティングした。カテーテルをエチレンオキサイドでガス滅菌した。大腸菌、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、肺炎桿菌、エンテロコッカス・フェカーリス、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスのようなカテーテルに関連する微生物を、37℃で18時間普通ブロスにおいて生育させた。適切な植菌量の各細菌株を用いて塗布プレートを作製した。その後、コーティング処理したカテーテル片を、各プレートの中央に注意深く押しつけた。37℃で24時間インキュベートした後、各カテーテル片を囲む阻止帯を、長軸に垂直な向きに計測した。阻止帯を計測した後、カテーテル片を、それぞれの供試生物が植菌された新しいプレート上に移し、再び37℃で24時間インキュベートした。各カテーテル片を囲む阻止帯を再び計測した。コーティング処理したカテーテル片の抑制活性の耐久性を測定するために、各供試生物を用いて3日間、7日間、および10日間、上記の手順を繰り返した。コーティング処理したカテーテル片の、肺炎桿菌、VREおよび緑膿菌に対する抑制活性は、3日しか続かなかった(表2)。しかしながら、コーティングされたカテーテル片は、10日間経過した後でも大腸菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対する顕著な抑制活性を示した。
【0061】
【表2】


実施例5 硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)との組み合わせでコーティングされたシリコーン・カテーテルの抗付着活性の耐久性
PS+CHXでコーティングしたシリコーン・カテーテルが7日間細菌コロニー形成に抵抗する能力について、コーティング処理片と未処理片とを大腸菌および表皮ブドウ球菌に(二連で)曝露することにより試験した。シリコーン・カテーテルを、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)でコーティングし、エチレンオキサイドでガス滅菌した。コーティング処理したカテーテル片および未処理片を、細菌に曝露する前に別々に滅菌人工尿中で37℃にて7日間、100rpmでインキュベートした。フラスコ中の人工尿は24時間ごとに新しい人工尿に取り替えた。コーティング処理したカテーテル片および未処理のカテーテル片(三連)を、1、3、5および7日目の時点で取り出し、滅菌水で穏やかにすすいだ。さらに、これらをひとつずつ上記の供試生物に曝露した。インキュベートした後、カテーテル片を滅菌水で穏やかに3回すすぎ、供試生物の培養ブロス中で37℃にて3時間、100rpmでインキュベートした。3時間インキュベートした後、カテーテル片を穏やかに2回洗浄した。洗浄した各片を1mlの滅菌水が入った滅菌チューブに移し、30秒間超音波処理してから1分間攪拌した。さらに、滅菌水を使用して各区分を段階希釈し、LB寒天プレート上に塗り拡げた。プレートを37℃で24時間インキュベートし、コロニー形成単位(CFU)を計数した。この手順を各時点について同様に実施した。PS+CHXでコーティングしたカテーテル片は細菌細胞の付着防止において有効であり、第7日ではいずれの細菌株の付着についても約80%の抑制が観察された(図7〜8)。
【0062】
実施例6 硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)との組み合わせでコーティングされたシリコーン・カテーテルの生体内(in vivo)における有効性
生体内における有効性の検討は、以前に報告されたウサギモデル(ダルーシェ(Darouiche)ら、J.Heart.Valve.Dis.、第11巻、p.99−104、2002年)に軽微な改良を加えて実施した。この予備的検討は、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)でコーティングしたシリコーン・カテーテルの生体内における有効性を、皮下に注入されたシリコーン・カテーテル片の大腸菌感染の防止において評価するものとした。シリコーン・カテーテルを、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)でコーティングし、エチレンオキサイドでガス滅菌した。合計15個のコーティングしていない1cm長のシリコーン・カテーテル片と、15個のコーティングしたカテーテル片とを、グラム陽性の皮膚微生物相に対する予防のためにバンコマイシン(体重1kgあたり20mg)を1回投与済みの合計4羽のウサギの背部に皮下移植した。各デバイスに、大腸菌の臨床分離株を2×10CFU/mlとして50μl植菌し、次いで創傷部を閉じた。体重1kgあたり2mgのケトプロフェンを、抗炎症剤/鎮痛剤として各ウサギに毎日筋肉内(IM)注射した。7日後にこの4羽のウサギを殺処分した。デバイスを体外に取り出し、超音波処理法およびプレート塗布を用いて培養した。周囲の流体を回収してスワブ培養物を得た。コーティングしていないカテーテル片15個のうちの3個(20%)には大腸菌のコロニーが形成されたが、コーティングされたカテーテル片15個ではすべて細菌のコロニー形成が全くなかった(表3)。
【0063】
【表3】

実施例7 クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングされたシリコーン膀胱カテーテルの生体内における有効性
本実施例の目的は、(1)クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルの生体内における有効性を、コーティングしていないカテーテルと比較して確認すること、(2)クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルと、ヒドロゲル銀でコーティングしたカテーテルとについて、大腸菌によるデバイスでのコロニー形成およびデバイスに関連した感染の割合を比較すること、(3)クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルがバイオフィルムに包埋された微生物の生育または増殖の防止に有用であることを示すこと、ならびに(4)クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルがデバイス関連の感染に対する防御に有用であることを示すこと、とした。
【0064】
動物実験は、ウサギの背部に皮下挿入された医療用デバイスの大腸菌感染の確立モデルを使用して行った。特定病原体未感染の、雌のニュージーランドホワイト種のウサギ(体重2〜3kg)を、ケタミン(体重1kgあたり70mg)およびアセプロマジン(体重1kgあたり2mg)の混合物の筋肉内注射(体重1kgあたり0.5ml)により麻酔した。ヒト患者において手術時に抗生物質による予防処置を施す習慣をシミュレートするために、各動物について、麻酔の導入直後に、グラム陽性生物に対して活性を有するが大腸菌に対しては活性のないバンコマイシン(20mg/kg)の筋肉内注射を行った。ウサギ背部の毛刈りを行い、次いで無菌的に下処理して布で覆った。6個(クロルヘキシジン/プロタミンコーティング2個、ヒドロゲル−銀コーティング2個、および未コーティング2個)の2cm長のカテーテル片を、脊椎の3〜4cm外側に、互いに離して皮下挿入した。合計84個のデバイスを14羽のウサギに配置した。10CFUの病原性大腸菌株2131(カテーテル関連のUTI患者由来の臨床分離株)を、挿入したデバイスの表面上に植菌して創傷部を縫合した。局所感染、敗血症または重大な苦痛の徴候についてウサギを毎日観察した。ウサギを1週間の時点で殺処分し、以下の実験:
a.超音波処理法の使用によるデバイスからの定量培養
b.デバイスに隣接している部位の定性的スワブ培養を実施した。
【0065】
この実験の第1の結果2つは、デバイスでのコロニー形成(定量的な超音波処理培養から大腸菌の生育として定義される;検出限界は10CFU)ならびにデバイス関連の感染(デバイスでのコロニー形成に加えてデバイス周辺部位の定性的なスワブ培養から大腸菌の生育として定義される)であった。デバイスでのコロニー形成およびデバイス関連の感染の割合を、異なる群の間でフィッシャーの直接法(両側、検出力90%)を使用して比較した。P値≦0.05のとき有意差を示す。
【0066】
取り出したカテーテルから回収された細菌の平均CFUである第2の結果は、3群の間で連続変数を用いた2サンプルT検定を使用して比較した。P値≦0.05のとき有意差を示す。
【0067】
クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテル28個のうち2個(7%)、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル28個のうち25個(89%)、およびコーティングしていないカテーテル28個のうち18個(64%)について、大腸菌のコロニー形成が生じた。クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルは、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル(P<0.001)またはコーティングしていないカテーテル(P=0.0016)のいずれよりも有意にコロニー形成が生じにくかった。銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテルとコーティングしていないカテーテルとではコロニー形成の割合に有意差はなかった(P=0.51)。
【0068】
クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテル28個のうち1個(4%)、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル28個のうち12個(43%)、およびコーティングしていないカテーテル28個のうち14個(50%)について、大腸菌によるデバイスに関連した感染が生じた。クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルは、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル(P=0.046)またはコーティングしていないカテーテル(P=0.013)のいずれよりもデバイスに関連した感染を引き起こしにくかった。銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテルとコーティングしていないカテーテルとではデバイス関連の感染の割合に有意差はなかった(P=1.69)。
【0069】
CFUの平均数は、クロルヘキシジン/プロタミンの群では4.6×10であり、銀−ヒドロゲルの群では2.5×10であり、および非コーティング群では8.3×10であった。CFUの平均数は、コーティングしていないカテーテルよりもクロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルの表面で有意に低かった(P=0.031)。銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテルを、クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテル(P=0.22)またはコーティングしていないカテーテル(P=0.13)と比較しても、cfuの平均数に有意差はなかった。
【0070】
これらの結果(表4)は、クロルヘキシジン/プロタミンを用いたカテーテルのコーティングによりデバイスでのコロニー形成およびデバイス関連の感染に対する防御がもたらされるが、銀/ヒドロゲルを用いた場合には防御はもたらされないことを示す。デバイス培養物に関する最小検出力は1デバイス当たり10CFUであった。2×10CFU/mlを50μl、すなわち絶対量として1×10CFUの植菌量を使用した。抗炎症剤/鎮痛剤として2mg/kgのケトプロフェンを各ウサギに毎日IM注射した。予防的な抗生物質として20mg/kgのバンコマイシンを手術前に与えた。シリコーン尿道カテーテルの外径は4mmであった。コーティングされていないカテーテルの2cm片を使用した。ウサギの殺処分前に採取した血液からの培養物はいずれも陰性であった。
【0071】
【表4】



【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】バイオフィルムに包埋された大腸菌の数(CFU)に対する、陰性対照(NC)(有効成分を含まない溶液)、50μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および50μg/mlの硫酸プロタミンと12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩との組み合わせ(PS+CHX)の効果を示す棒グラフ。
【図2】バイオフィルムに包埋された緑膿菌の数(CFU)に対する、陰性対照(NC)、25μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、25μg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および25μg/mlの硫酸プロタミンと25μg/mlクロルヘキシジン塩との組み合わせ(PS+CHX)の効果を示す棒グラフ。
【図3】バイオフィルムに包埋された表皮ブドウ球菌の数(CFU)に対する、陰性対照、12.5μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および12.5μg/mlの硫酸プロタミンと12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩との組み合わせ(PS+CHX)の、増強された効果を示す棒グラフ。
【図4】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)、100mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および100mg/mlの硫酸プロタミンと100mg/mlのクロルヘキシジン塩との組み合わせ(PS+CHX)でコーティングされたシリコーン・カテーテルの、大腸菌に対する抗付着効果を示す棒グラフ。
【図5】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)、100mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および100mg/mlの硫酸プロタミンと100mg/mlのクロルヘキシジン塩との組み合わせ(PS+CHX)でコーティングされたシリコーン・カテーテルの、緑膿菌に対する増強された抗付着効果を示す棒グラフ。
【図6】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)、100mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および100mg/mlの硫酸プロタミンと100mg/mlのクロルヘキシジン塩との組み合わせ(PS+CHX)でコーティングされたシリコーン・カテーテルの、表皮ブドウ球菌に対する抗付着効果を示す棒グラフ。
【図7】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)および400mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)でコーティングされたシリコーン・カテーテルの、大腸菌に対する抗付着活性の耐久性を示す線グラフ。
【図8】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)および400mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)でコーティングされたシリコーン・カテーテルの、表皮ブドウ球菌に対する抗付着活性の耐久性を示す線グラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス上における、バイオフィルムに包埋された微生物の生育または増殖を防止するための組成物であって、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備えている組成物。
【請求項2】
前記カチオン性ポリペプチドは組成物中で約12.5mg/ml〜約100mg/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビス・グアニジンは組成物中で約100mg/ml〜約400mg/mlである、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記微生物は細菌である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロビデンティア・ステュアルティイ(Providentia stuartii)およびセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)から成る群から選択されたグラム陰性細菌である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記細菌は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびスタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)から成る群から選択されたグラム陽性細菌である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記微生物は真菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記真菌はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性ポリペプチドは、硫酸プロタミン、デフェンシン、ラクトペルオキシダーゼおよびリゾチームから成る群から選択される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記カチオン性ポリペプチドは硫酸プロタミンである、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ビスグアニドは、クロルヘキシジン、アレキシジンおよびポリマー性のビスグアニドから成る群から選択される、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ビスグアニドはクロルヘキシジン塩である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記クロルヘキシジン塩は、ジグルコン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよび二塩酸クロルヘキシジンから成る群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記カチオン性ポリペプチドは硫酸プロタミンであり、ビスグアニドはクロルヘキシジン塩である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記硫酸プロタミンは約100mg/mlであり、クロルヘキシジン塩は約400mg/mlである、請求項4に記載の組成物。
【請求項16】
水;結合剤、接合剤もしくはカップリング剤;ビスフェノール;第四級アンモニウム化合物;マレイミド;抗生物質;およびpH調整剤から成る群から選択された一つ以上の成分をさらに備える、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
追加の抗菌性成分をさらに備える、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記追加の抗菌性成分は、ビスフェノール、N置換マレイミド、および第四級アンモニウム化合物から成る群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ビスフェノールは、トリクロサンおよびヘキサクロロフェンから成る群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記N置換マレイミドは、N−エチルマレイミド(NEM)、5,5−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、N−フェニルマレイミド(PheM)、N−(1−ピレニル)マレイミド(PyrM)、ナフタレン−1,5−ジマレイミド(NDM)、N,N’−(1,2−フェニレン)ジマレイミド(oPDM)、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド(pPDM)、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド(mPDM)、および1,1−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド(BM)から成る群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記第四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム、トリドデシル・メチル塩化アンモニウム、およびジデシル・ジメチル塩化アンモニウムから成る群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の組成物を用いてデバイスの少なくとも一つの表面を処理する工程を含む、デバイスの作製方法。
【請求項23】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の組成物をポリマーに組み込む行程を備えるデバイスの作製方法であって、前記ポリマーがデバイスの形成に使用される方法。
【請求項24】
デバイスの作製方法であって、請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の組成物でデバイスの少なくとも一つの表面上をコーティングする行程を備える方法。
【請求項25】
前記組成物は有効な量の硫酸プロタミンおよびクロルヘキシジン塩を備える、請求項22から請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記デバイスは医療用デバイスである、請求項22から請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記デバイスはカテーテルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記カテーテルは留置カテーテルである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記留置カテーテルは、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、動脈カテーテル、血液透析カテーテル、臍帯カテーテル、経皮的非トンネル式シリコーン・カテーテル、カフ付トンネル式中心静脈カテーテルおよび皮下中心静脈ポートから成る群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記留置カテーテルは、尿道カテーテル、腹腔カテーテルおよび中心静脈カテーテルから成る群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記デバイスは、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、ボイスプロテーゼ、コンタクトレンズおよび子宮内避妊器具から成る群から選択される、請求項22から請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
デバイスに関連した感染を防止するための組成物であって、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビスグアニド、またはそれらの塩を備えている組成物。
【請求項33】
前記カチオン性ポリペプチドは組成物中で約12.5mg/ml〜約100mg/mlである、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記ビス・グアニジンは組成物中で約100mg/ml〜約400mg/mlである、請求項32または請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記感染は細菌感染である、請求項32から請求項34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロビデンティア・ステュアルティイ(Providentia stuartii)およびセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)から成る群から選択されたグラム陰性細菌である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記細菌は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびスタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)から成る群から選択されたグラム陽性細菌である、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記感染は真菌感染である、請求項32に記載の組成物。
【請求項39】
前記真菌はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記カチオン性ポリペプチドは、硫酸プロタミン、デフェンシン、ラクトペルオキシダーゼおよびリゾチームから成る群から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記カチオン性ポリペプチドは硫酸プロタミンである、請求項32から請求項40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記ビスグアニドは、クロルヘキシジン、アレキシジンおよびポリマー性のビスグアニドから成る群から選択される、請求項32から請求項41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
ビスグアニドはクロルヘキシジン塩である、請求項32から請求項42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記クロルヘキシジン塩は、ジグルコン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよび二塩酸クロルヘキシジンから成る群から選択される、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記カチオン性ポリペプチドは硫酸プロタミンであり、ビスグアニドはクロルヘキシジン塩である、請求項32から請求項44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記硫酸プロタミンは約100mg/mlであり、クロルヘキシジン塩は約400mg/mlである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
水、結合剤、接合剤もしくはカップリング剤、ビスフェノール、第四級アンモニウム化合物、マレイミド、抗生物質、およびpH調整剤から成る群から選択された一つ以上の成分をさらに含む、請求項32から請求項46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
請求項32から請求項47のいずれか一項に記載の組成物を用いて前記デバイスの少なくとも一つの表面を処理する行程を備える、デバイスの作製方法。
【請求項49】
請求項32から請求項48のいずれか一項に記載の組成物をポリマーに組み込む行程を備えるデバイスの作製方法であって、前記ポリマーがデバイスの形成に使用される方法。
【請求項50】
請求項32から請求項47のいずれか一項に記載の組成物で前記デバイスの少なくとも一つの表面上をコーティングする行程を備える、デバイスの作製方法。
【請求項51】
前記組成物は有効な量の硫酸プロタミンおよびクロルヘキシジン塩を備える、請求項48から請求項50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記デバイスは医療用デバイスである、請求項48から請求項50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記デバイスはカテーテルである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記カテーテルは留置カテーテルである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記留置カテーテルは、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、動脈カテーテル、血液透析カテーテル、臍帯カテーテル、経皮的非トンネル式シリコーン・カテーテル、カフ付トンネル式中心静脈カテーテルおよび皮下中心静脈ポートから成る群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記留置カテーテルは、尿道カテーテル、腹腔カテーテルおよび中心静脈カテーテルから成る群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記デバイスは、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、ボイスプロテーゼ、コンタクトレンズおよび子宮内避妊器具から成る群から選択される、請求項48から請求項50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物は、前記カチオン性ポリペプチドおよび前記ビス・グアニジン、またはそれらの塩のコーティング、組み込み、または処理がなされている医療用デバイスをさらに備える、請求項32から請求項47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記医療用デバイスはカテーテルである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記カテーテルは留置カテーテルである、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記留置カテーテルは、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、動脈カテーテル、血液透析カテーテル、臍帯カテーテル、経皮的非トンネル式シリコーン・カテーテル、カフ付トンネル式中心静脈カテーテルおよび皮下中心静脈ポートから成る群から選択される、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記留置カテーテルは、尿道カテーテル、腹腔カテーテルおよび中心静脈カテーテルから成る群から選択される、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記医療用デバイスは、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、ボイスプロテーゼ、コンタクトレンズおよび子宮内避妊器具から成る群から選択される、請求項59に記載の組成物。
【請求項64】
哺乳動物に移植するための医療用デバイスの作製における、請求項32から請求項47のいずれか一項に記載の組成物の使用方法。
【請求項65】
前記医療用デバイスの組成物によるコーティング、組み込み、または処理がなされる、請求項65に記載の使用方法。
【請求項66】
前記医療用デバイスは、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、ボイスプロテーゼ、コンタクトレンズおよび子宮内避妊器具から成る群から選択される、請求項64または請求項65に記載の使用方法。
【請求項67】
前記カテーテルは留置カテーテルである、請求項66に記載の使用方法。
【請求項68】
前記留置カテーテルは、尿道カテーテル、腹腔カテーテルおよび中心静脈カテーテルから成る群から選択される、請求項67に記載の使用方法。
【請求項69】
前記留置カテーテルは、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、動脈カテーテル、血液透析カテーテル、臍帯カテーテル、経皮的非トンネル式シリコーン・カテーテル、カフ付トンネル式中心静脈カテーテルおよび皮下中心静脈ポートから成る群から選択される、請求項68に記載の使用方法。
【請求項70】
組成物により尿路感染症が防止される、請求項64から請求項69のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−546812(P2008−546812A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518577(P2008−518577)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000029
【国際公開番号】WO2007/003028
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507422644)ケーン バイオテク インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】KANE BIOTECH INC.
【Fターム(参考)】