説明

医療用粘着テープまたはシートの製造方法

【課題】蒸れにくく、肌触りの良好な医療用粘着テープまたはシートであって、かつ製造コストが低減され、環境に優しい医療用粘着テープまたはシートの製造方法を提供する。
【解決手段】紙および/若しくは布帛からなる基材が積層され、積層された基材の少なくとも片面に粘着剤層が積層されてなる医療用粘着テープまたはシートの製造方法であって、積層された基材へ目止め剤を塗布することにより目止め処理し、その後直写法により粘着剤溶液を塗布し、乾燥を行う医療用粘着テープまたはシートの製造方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の空隙率が高く、皮膚に優しい医療用粘着テープまたはシートの製造方法に関し、エマルジョン粘着剤溶液の直写により製造コストが低減され、かつ貼付時の使用感が優れた粘着テープまたはシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚面に貼付して使用することを目的とする医療用粘着テープまたはシートは、一般に粘着剤層を介して適用すべき皮膚面に貼付して使用される。この時に空隙率の高い基材を用いた医療用粘着シートまたはテープを使用すると、肌触りが良好であり、貼付時の不快感が減少される。しかし、空隙率の高い基材を用いる場合は、空隙から粘着剤溶液が裏面へ漏出するのを防ぐため、転写により粘着剤を積層するのが一般的である。該転写による場合は、基材に粘着剤を積層するために、予め剥離紙などのシートに粘着剤を積層し、該粘着剤が積層されたシートを基材に貼り合わせて転写させる操作が必要となる。しかし、基材に粘着剤が転写された後は、医療用粘着テープまたはシートの形態によっては該剥離紙などのシートが不要となる場合があり、該剥離紙などのシートは廃棄されるので製造コストがかかる。
【0003】
製造コストの低減や環境面を考慮すると、基材に直接粘着剤溶液を塗布する粘着剤溶液の直写が望まれる。しかし、空隙率の高い基材に粘着剤溶液を直写すると、基材の隙間に粘着剤溶液が浸入し、粘着シートとしての機能を果たさなくなるだけでなく、粘着剤溶液が基材の裏側に漏出した場合、長時間の生産が困難となり、生産時の歩留が著しく低下する。
【0004】
基材の隙間への粘着剤溶液の浸入および裏側への漏出を防止するために、基材に目止め処理を行うと、空隙率が低下し、肌触りが悪くなる上に、基材端部での物理刺激によりかぶれを生じるなどの問題が考えられる。
また特許文献1には、貼付剤用支持体(基材)に関し、粘着剤溶液を直写するために、不織布とフィルムを組合せ、フィルム面への直写を可能とする方法が開示されている。生産安定性を考慮した場合、粘着剤溶液の隙間への浸入や裏側への漏出が起こらなくなるために有利ではあるが、フィルムを皮膚へ長時間貼付する場合、フィルムに通気性がないと蒸れが発生する。
【0005】
従って、粘着剤溶液を直写した際に基材の裏側への漏出が起こらず、かつ製造コストが低減され、環境に優しい製造方法であり、かつ蒸れにくく、肌触りが良好な医療用粘着テープまたはシートの提供方法が望まれる。
【特許文献1】特開平10−67652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造コストが低減され、環境に優しい医療用粘着テープまたはシートの製造方法であり、かつ該製造方法により製造された医療用粘着テープまたはシートは蒸れにくく、肌触りが良好であるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、紙および/若しくは布帛からなる基材が積層され、該積層された基材に目止め処理を施すことにより、粘着剤溶液を直写法により基材に塗布する際に、基材の裏側へ粘着剤溶液が漏出するのを防止でき、かつ肌触りのよい医療用粘着テープまたはシートを提供できることを見出した。また粘着テープまたはシートのループ硬さを15mN以上60mN以下とすることで、優れた医療用粘着テープまたはシートを提供しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.紙および/若しくは布帛からなる基材が積層され、該積層された基材の少なくとも片面に粘着剤層が積層されてなる医療用粘着テープまたはシートの製造方法であって、該基材へ目止め剤を塗布することにより目止め処理し、その後直写法により粘着剤溶液を塗布し、乾燥を行うことを特徴とする医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
2.積層される基材が、嵩密度の異なる紙および/若しくは布帛が少なくとも二層積層される前項1に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
3.積層される基材の少なくとも一方が、嵩密度0.30g/cm以上の紙および/若しくは布帛である前項2に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
4.積層される基材が、不織布である前項1〜3のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
5.不織布を構成する部材が、ポリエステルである前項4に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
6.医療用粘着テープまたはシートのループ硬さが、15mN以上60mN以下となるように目止め処理することを特徴とする前項1〜5のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
7.目止め剤塗布量が、10〜50g/mである前項1〜6のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
8.目止め剤が、エマルジョン剤である、前項1〜7のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
9.粘着剤溶液の粘度が、50〜150Pa・sである、前項1〜8のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
10.粘着剤溶液が、エマルジョン粘着剤溶液である、前項1〜9のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
11.粘着剤溶液が、コンマリバース方式により基材に塗布される、前項1〜10のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医療用粘着テープまたはシートの製造方法は、積層された紙および/若しくは布帛からなる基材へ目止め処理を行うことで、粘着剤溶液を直写法により基材に塗布することを可能とする。粘着剤溶液を直写することにより、転写法において必要とされる剥離紙などを必要とせず、製造コストが低減され、環境に優しい製造方法ということができる。さらに、該製造方法により製造された医療用粘着テープまたはシートは、蒸れにくく肌触りが良好である。したがって、本発明の製造方法により得られた粘着テープまたはシートは、肌に優しい医療用の粘着テープまたはシートとして利用することができる。具体的には、救急絆創膏や巻絆、パット付き大型絆創膏やドレッシング材などに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法により製造される医療用粘着テープまたはシートは、基材が積層され、該基材の少なくとも片面に粘着剤層を有するものである。
【0011】
本発明の製造方法において、目止め処理を効果的に行うために、紙および/若しくは布帛からなる基材は少なくとも二層積層されていることが必要である。基材を一層とすると、後述の目止め処理を施した場合に、目止め剤の塗布量が多く必要となるため、医療用粘着テープまたはシートの肌触りが悪くなることや、蒸れが生じやすくなるなどの欠点が生ずる。また、目止め処理が容易にできるように、嵩密度の高い部材のみとすると、粘着剤層とは反対側の基材の肌触りが悪くなる。前記少なくとも二層から構成される基材は、嵩密度の異なる部材であり、好適には嵩密度の異なる不織布とすることができる。嵩密度の高い基材により、目止め処理を容易に行うことができ、嵩密度の低い基材により、肌触りのよい基材とすることができる。
【0012】
本発明において、紙および/若しくは布帛からなる基材は特に限定されるものではないが、例えば不織布からなる基材が好適に用いられる。このような基材を構成する部材は、特に限定されるものではないが、高融点の材質のものを使用することができる。このような材質のものとして、ポリエステルが好適である。ポリエステルとしては、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)など耐熱性に優れているものがより好適である。
【0013】
本発明の製造方法により製造される医療用粘着テープまたはシートは、そのループ硬さが60mN以下が望ましく、より望ましくは50mN以下であり、さらに望ましくは40mN以下である。ループ硬さが60mNよりも硬い場合は、貼付時の不快感などが生じるからである。一方、粘着剤溶液が直写法により基材に塗布されることは、本発明の製造方法における必要不可欠な条件であるが、そのためにはループ硬さが15mN以上であることが必要とされる。ループ硬さが15mN以下の場合は、粘着剤溶液を直写することができない。
本発明において、ループ硬さは、JIS L 1069に準拠してループ圧縮法により測定することができる。
【0014】
本発明において、基材が少なくとも二層積層とは、基材が二層以上積層されていればよいが、得られる医療用粘着テープまたはシートの硬さを15mN以上60mN以下とするために、二〜四層積層され、好ましくは二〜三層積層される。積層される紙および/若しくは布帛からなる基材は、嵩密度の異なるものが好適である。
【0015】
本発明において、嵩密度は1cmの基材の重量と厚みを測定し、以下の式により算出することができる。
嵩密度[g/cm]=基材重量[g/cm]/厚み[cm]
【0016】
このような基材として、積層された基材の少なくとも一方を嵩密度が0.25g/cm以下の不織布とし、他の一方を嵩密度が0.30g/cm以上の不織布とすることができる。より好適には、基材の少なくとも一方を0.23g/cm以下の不織布とし、他の一方を0.37g/cm以上の不織布とすることができる。嵩密度が0.30g/cmより高い場合には、目止め処理を容易にすることができるが、肌触りの点で問題があり、嵩密度が0.25g/cmより少ない場合には、肌触りが優れているが、目止め処理を十分に行うには困難がある。
【0017】
本発明において、嵩密度が0.30g/cm以上の不織布は、メルトブロー法により作製することができる。また、嵩密度が0.25g/cm以下の不織布は、一般的な不織布の作製方法により作製することができる。例えば、乾式法では接着剤型の浸漬法、プリント法、スプレー法、粉末法、サーマルボンド法など、機械結合型のフェルト法、ステッチ法、ニードルパンチ法、水流絡合型のスパンレース法、紡糸型のスパンボンド法、網状法、メルトブロー法、フィルム法などが挙げられ、湿式法では水流絡合型のスパンレース法、紡糸法のスパンボンド法、フラッシュ法、抄紙法の熱融着繊維法、熱圧法、接着剤法等を採用することができる。
【0018】
基材の積層方法は、特に限定されないが、熱溶融、メルトブロー法による積層や接着剤による方法など、一般的な方法を適用することができる。例えば、スパンボンド法により嵩密度が低い不織布層を形成し、その上にメルトブロー法により、例えばポリエステルを吹きつけ、嵩密度が高いポリエステル不織布層を積層することができる。必要に応じて、さらにスパンボンド法により作製したポリエステル不織布層をさらに積層することができる。
【0019】
本発明の製造方法において、紙および/若しくは布帛からなる基材に目止め剤を塗布することによる目止め処理が必要とされる。目止め処理を施さなければ、粘着剤溶液を直写する際に、基材に粘着剤溶液が浸入してしまったり、または、エマルジョン粘着剤溶液が裏面に漏出することなどにより、医療用粘着テープまたはシートとして機能しなくなる場合がある。
【0020】
本発明において目止め剤塗布量は、目止め剤を塗布した基材1mの重量を測定し、以下の式により算出することができる。
目止め剤塗布量[g/m
=目止め剤を塗布した基材重量[g/m]−基材重量[g/m
【0021】
目止め処理は、上述の算出方法に基づき、塗布量を10〜50g/mとすることができる。塗布量が10g/mより少ない場合は、粘着剤溶液の基材の裏面への漏出が防止できない。一方、塗布量が50g/mより多い場合は、製造される医療用粘着テープまたはシートの肌触りが悪く蒸れやすくなり、基材端部の物理的刺激によりかぶれを生じる場合も考えられる。したがって、好ましい塗布量は10〜35g/mであり、より好適には10〜20g/mである。
【0022】
目止め剤については、特に限定されるものではないが、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)系、ロジン系樹脂等を用いることができる。溶剤系のものを用いても良いが、環境保護の観点からエマルジョン状の水系のものが望ましい。目止め処理の方法としては、目止め剤を任意の濃度に調整したのち、基材に含浸させ、乾燥させるなど、一般的な方法を用いる事ができる。
【0023】
目止め剤の塗布速度は、5〜30m/分の範囲で行うことができ、生産性の観点から、15〜25m/分が好適である。
【0024】
目止め剤塗布後の乾燥は、120〜170℃の範囲で行うことができる。処理工程を速くすることが生産性に有利であることから、140℃以上が好ましく、基材への熱履歴を考慮した場合には、140〜160℃が好ましい。
【0025】
本発明の製造方法では、上記目止め処理された基材に対して粘着剤溶液が直写法により塗布される。本発明の製造方法に使用される粘着剤溶液は、基材に塗布・乾燥した際に、粘着性を示し、良好な接着力や保持力等を有するものあれば特に限定されないが、環境保護の観点から特にエマルジョン粘着剤溶液が好適に使用される。エマルジョン粘着剤溶液として、アクリル系ポリマー、ウレタン−アクリル系ポリマー等の水分散体、スチレン−ブタジエン共重合体等の合成ゴム、天然ゴム等のゴム系ポリマーの水分散体が挙げられる。本発明においては、必要に応じて架橋剤、粘着付与樹脂、充填剤、オイル、顔料等の添加剤を配合してもよい。
【0026】
本発明の製造方法における直写法による粘着剤溶液の塗布は、コンマリバース方式により行うことができる。
【0027】
粘着剤溶液の粘度は、50Pa・s以上で使用することができる。粘着剤溶液を均一に塗工することを考えた場合、50〜150Pa・sの範囲が好適であり、より好適には50〜130Pa・sで使用することができる。粘着剤溶液の塗布厚は、30〜80μmの範囲で塗布が可能である。
【0028】
粘着剤溶液の塗工速度は、5〜30m/分の範囲で行うことができ、生産性の観点から、15〜25m/分が好適である。
【0029】
粘着剤溶液の塗工後の乾燥は、120〜180℃の範囲で行うことができる。処理工程を速くすることが生産性に有利であることから、十分な乾燥を得るために160〜180℃が好ましい。
【0030】
本発明の製造方法により得られる医療用粘着テープまたはシートの形態は、特に限定されないが、例えばロール状粘着部材のように、剥離紙を伴わないものが好適である。ロール状の粘着テープまたはシートは剥離紙を必要としないため、直写法での粘着剤溶液の塗布による製造コストの低減効果が大きいからである。ロール状の粘着テープまたはシートとする場合には、基材の粘着剤層とは反対側の面に背面処理を施す必要がある。背面処理剤としては、フッ素系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤、シリコーン系剥離剤またはその混合系等を用いることができる。背面処理の方法については一般的な方法を用いる事ができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を列記して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
なお、以下の実施例において「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0032】
1.粘着シートの製造方法
1)エマルジョン粘着剤溶液の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル95部およびアクリル酸5部からなる単量体混合物を、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2部および過硫酸カリウム(重合開始剤)0.2部を使用して、常法により乳化重合させることにより、粒子内ゲル分(架橋分)を46重量%含有し、溶剤可溶分のポリマーの重量平均分子量が80万であるアクリル系ポリマーが水中に均一に乳化分散されてなる、固形分濃度が50重量%のエマルジョン粘着剤溶液を得た。
【0033】
2)目止め処理
目止め剤として、アクリルエステル共重合体のエマルジョン(Tg=−30℃)を用いた。目止め剤を基材に含浸させ、120℃で2分間乾燥した。
【0034】
3)直写法による粘着剤溶液の塗布
調製したエマルジョン粘着剤溶液を、コンマリバース方式により、基材に糊厚が40μmになるよう塗布し、130℃にて3分間乾燥し、粘着シートを得た。
【0035】
2.試験方法
各実施例および各比較例にて得られた皮膚貼付用粘着シートについて、以下の試験を行った。
【0036】
1)目止め剤塗布量
目止め剤を塗布した基材1mの重量を測定し、以下の式により目止め剤塗布量を算出した。
目止め剤塗布量[g/m
=目止め剤を塗布した基材重量[g/m]−基材重量[g/m
【0037】
2)粘着剤溶液粘度
BH型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した。
【0038】
3.評価方法
各実施例および各比較例にて得られた医療用粘着シートについて、以下により評価を行った。
1)基材裏への漏出
粘着剤溶液を基材に塗布し、乾燥工程を行う前に蝕指により粘着剤溶液が基材の裏面へ漏出しているか否かを確認した。
2)粘着剤の塗工の可能性
基材へ粘着剤溶液が均一に塗工できたか否かを目視にて観察した。
3)ループ硬さ
JIS L 1069に準拠し、ループ圧縮法により基材のループ硬さの測定を行った。
【0039】
(実施例1)
メルトブロー法にて形成された嵩密度0.37g/cmのポリエチレンテレフタレート不織布の両側に、それぞれスパンボンド法にて作製された嵩密度0.23g/cmのポリエチレンテレフタレート不織布が積層された基材(図1)に、溶液濃度が23%の目止め処理剤を、塗布量が15g/mになるよう塗布した後、粘度が70Pa・sのエマルジョン粘着剤溶液を40μmになるように塗布した。その結果、粘着剤溶液の裏側への漏出は確認されず、直写法による塗布が可能であった。このときの粘着シートのループ硬さは26mNであった。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様に作製された基材(図1)に、溶液濃度が45%の目止め処理剤を、塗布量が20g/mになるよう塗布した後、粘度が70Pa・sのエマルジョン粘着剤溶液を40μmになるように塗布した。その結果、粘着剤溶液の裏側への漏出は確認されず、直写法による塗布が可能であった。このときの粘着シートのループ硬さは30mNであった。
【0041】
(実施例3)
実施例1と同様に作製された基材(図1)に、溶液濃度が23%の目止め処理剤を、塗布量が15g/mになるよう塗布した後、粘度が150Pa・sのエマルジョン粘着剤溶液を40μmになるように塗布した。その結果、粘着剤溶液の裏側への漏出は確認されず、直写法による塗布が可能であった。このときの粘着シートのループ硬さは26mNであった。
【0042】
(実施例4)
メルトブロー法にて形成された嵩密度0.30g/cmのポリエチレンテレフタレート不織布の片側に、スパンボンド法にて作製された嵩密度0.16g/cmのポリエチレンテレフタレート不織布が積層された基材(図2)に、溶液濃度が45%の目止め処理剤を、塗布量が40g/mになるよう塗布した後、粘度が50Pa・sのエマルジョン粘着剤溶液を40μmになるように塗布した。その結果、粘着剤溶液の裏側への漏出は確認されず、直写法による塗布が可能であった。このときの粘着シートのループ硬さは15mNであった。
【0043】
(比較例1)
実施例1と同様に作製された基材(図1)に、溶液濃度が45%の目止め処理剤を、塗布量が20g/mになるよう塗布した後、粘度が30Pa・sのエマルジョン粘着剤溶液を40μmになるように塗布した。その結果、粘着剤溶液の裏側への漏出が確認され、直写法による塗布はできなかった。粘着シートが得られなかったため、ループ硬さは測定できなかった。
【0044】
(比較例2)
実施例1と同様に作製された基材(図1)に、溶液濃度が45%の目止め処理剤を、塗布量が20g/mになるよう塗布した後、粘度が180Pa・sのエマルジョン粘着剤溶液を40μmになるように塗布した。その結果、粘着剤溶液の裏側への漏出が確認されなかったが、粘着剤溶液の粘度が高く直写法による塗布が困難であった。このときの粘着シートのループ硬さは30mNであった。
【0045】
実施例1〜4および比較例1〜2により得られた粘着シートの評価結果を表1にまとめた。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
上記詳述したように、本発明の製造方法により得られる医療用粘着テープまたはシートは、粘着剤溶液が直写法により塗布されているため、環境に優しく、製造コストが低減され経済的である。さらに、上記の医療用粘着テープまたはシートは、蒸れにくく、粘着剤層とは反対側の基材表面については肌触りがよい。したがって、本発明の医療用粘着テープまたはシートは、肌に優しい医療用の粘着テープまたはシートとして利用することができる。具体的には、救急絆創膏や巻絆、パッド付き大型絆創膏やドレッシング材などに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】三層積層した基材。(実施例1〜3、比較例1,2)
【図2】二層積層した基材。(実施例4)
【符号の説明】
【0048】
1 スパンボンド層
2 メルトブロー層
3 粘着剤層
4 目止め処理および背面処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙および/若しくは布帛からなる基材が積層され、該積層された基材の少なくとも片面に粘着剤層が積層されてなる医療用粘着テープまたはシートの製造方法であって、該基材へ目止め剤を塗布することにより目止め処理し、その後直写法により粘着剤溶液を塗布し、乾燥を行うことを特徴とする医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項2】
積層される基材が、嵩密度の異なる紙および/若しくは布帛が少なくとも二層積層される請求項1に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項3】
積層される基材の少なくとも一方が、嵩密度0.30g/cm以上の紙および/若しくは布帛である請求項2に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項4】
積層される基材が、不織布である請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項5】
不織布を構成する部材が、ポリエステルである請求項4に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項6】
医療用粘着テープまたはシートのループ硬さが、15mN以上60mN以下となるように目止め処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項7】
目止め剤塗布量が、10〜50g/mである請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項8】
目止め剤が、エマルジョン剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項9】
粘着剤溶液の粘度が、50〜150Pa・sである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項10】
粘着剤溶液が、エマルジョン粘着剤溶液である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。
【請求項11】
粘着剤溶液が、コンマリバース方式により基材に塗布される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療用粘着テープまたはシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−43461(P2008−43461A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220499(P2006−220499)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】