説明

医薬品

本発明は、抗癌活性を発揮する新規化合物をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。本発明のスクリーニング方法は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、癌の治療・予防剤のスクリーニング方法等に関し、更に詳細には、抗癌剤が効かなくなった癌細胞や固形癌に対しても有効な癌の治療・予防剤をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
現在、臨床的に用いられている抗癌剤としては多くの種類のものが知られている。このような臨床的に用いられている抗癌剤の多くがかかえる問題点としては、いったんは効果のあった抗癌剤が効かなくなるという獲得耐性癌細胞が出現したり、固形癌に効きにくいということがある。抗癌剤が固形癌に効きにくくなるのは、固形癌が一定以上の大きさになるとその内部が低酸素状態となることが原因と考えられている。
進行性の癌においては、癌細胞内部の増殖速度が周囲の細胞よりも速いため、新しく生成された血管の供給が足りず、血液の供給が不十分となり、低酸素状態となると考えられる。例えば、Teicher,B.A.Hypoxia and drug resistance.Cancer Metastasis Rev.,13:139−168,1994、Brown,J.M.& Giaccia,A.J.The unique physiology of solid tumors:opportunities(and problems)for cancer therapy.Cancer Res.,58:1408−1416,1998、Brown,J.M.Exploiting the hypoxic cancer cell:mechanisms and therapeutic strategies.Mol.Med.Today,6:157−162,2000、Luk,C.K.,Veinot−Drebot,L.,Tjan,E.& Tannock,I.F.Effect of transient hypoxia on sensitivity to doxorubicin in human and murine cell lines.J Natl.Cancer Inst.,82:684−692,1990、Sakata,K.,Kwok,T.T.,Murphy,B.J.,Laderoute,K.R.,Gordon,G.R.,Sutherland,R.M.Hypoxia−induced drug resistance:comparison to P−glycoprotein−associated drug resistance.Br.J Cancer,64:809−814,1991、Sanna,K.& Rofstad,E.K.Hypoxia−induced resistance to doxorubicin and methotrexate in human melanoma cell lines in vitro.Int.J Cancer,58:258−262,1994には、低酸素状態にある癌細胞が、高い酸素状態にある癌細胞よりも、化学療法、放射線療法に対して耐性を有しており、低酸素状態が、固形癌細胞において薬剤耐性を誘導することが開示されている。上記文献に記載された結果は、低酸素状態が固形癌細胞において、抗アポトーシス因子を誘導していることを示している。
一方、セリン/スレオニンキナーゼであるPim−1は、最初はマウス白血病ウィルス(MuLV)によって引き起こされるT細胞リンパ腫内において白血病ウィルスの挿入によってしばしば活性化される遺伝子として同定されたセリン/スレオニンキナーゼである(Comerford,K.M.,Wallace,T.J.,Karhausen,J.,Loui,s N.A.,Montalto,M.C.,Colgan,S.P.Hypoxia−inducible factor−1−dependent regulation of the multidrug resistance(MDR1)gene.Cancer Res.,62:3387−3394,2001、及びNiizeki,H.,Kobayashi,M.,Horiuchi,I.,Akakura,N.,Chen,J.,Wang,J.,Hamada,J.,Seth,P.,Katoh,H.,Watanabe,H.,Raz,A.,Hosokawa,M.Hypoxia enhances the expression of autocrine motility factor and the motility of human pancreatic cancer cells.Br.J Cancer,86:1914−1919,2002)。また、細胞質内のPim−1が種々の造血細胞内においてアポトーシスを阻害するための因子として機能することが報告されている(Cuypers,H.T.,Selten,G.,Quint,W.,Zijlstra,M.,Maandag,E.R.,Boelens,W.,van Wezenbeek,P.,Melief,C.,Berns,A.Murine leukemia virus−induced T−cell lymphomagenesis:integration of proviruses in a distinct chromosomal region.Cell,37:141−150,1984、及びSelten,G.,Cuypers,H.T.& Berns,A.Proviral activation of the putative oncogene Pim−1 in MuLV induced T−cell lymphomas.EMBO J,4:1793−1798,1985)。従って、Pim−1を不活性化できる物質があれば、固形癌、及びそれに起因する各種疾患の予防/治療に有効であるといえる。
従って、本発明においては、抗癌活性を発揮する新規化合物をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。また、本発明は、Pim−1を不活性化することにより、癌を予防・治療するための癌の予防・治療剤のスクリーニング方法等を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、癌細胞中に多く存在するタンパク質を見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする、癌の予防・治療剤のスクリーニング方法を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を含有してなる癌の予防・治療剤のスクリーニング用キットを提供する。
また、本発明は、上記スクリーニング方法又はスクリーニング用キットを用いて得られる癌の予防・治療剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物又はその塩を含有してなる癌の予防・治療剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩を含有してなる癌の予防・治療剤を提供する。
また、本発明は、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有してなる癌の予防・治療剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩に対する抗体を含有してなる癌の予防・治療剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする、アポトーシス誘導剤のスクリーニング方法を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を含有してなるアポトーシス誘導剤のスクリーニング用キットを提供する。
また、本発明は、上記スクリーニング方法又はスクリーニング用キットを用いて得られるアポトーシス誘導剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物又はその塩を含有してなるアポトーシス誘導剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩を含有してなるアポトーシス誘導剤を提供する。
また、本発明は、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有してなるアポトーシス誘導剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩に対する抗体を含有してなるアポトーシス誘導剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする、抗癌剤増強剤のスクリーニング方法を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を含有してなる抗癌剤増強剤のスクリーニング用キットを提供する。
また、本発明は、上記スクリーニング方法又はスクリーニング用キットを用いて得られる抗癌剤増強剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を阻害する化合物又はその塩を含有してなる抗癌剤増強剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩を含有してなる抗癌剤増強剤を提供する。
また、本発明は、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有してなる抗癌剤増強剤を提供する。
また、本発明は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩に対する抗体を含有してなる抗癌剤増強剤を提供する。
また、本発明は、以下の(a)及び(b)のポリヌクレオチドと少なくとも95%以上の相同性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドを提供する。
(a)配列番号:4で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:4で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なcDNAであるポリヌクレオチド;
(b)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なcDNAであるポリヌクレオチド。
また、本発明は、上記ポリヌクレオチドを含有する組換ベクターを提供する。
また、本発明は、上記発現ベクターを保持する宿主細胞を提供する。
また、本発明は、上記宿主細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、得られた培養物からポリペプチドを回収する工程を含む、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその塩の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記ポリヌクレオチド又は組換ベクターを含有してなる癌の予防・治療剤を提供する。
また、本発明は、上記ポリヌクレオチド又は組換ベクターを含有してなるアポトーシス誘導剤を提供する。
また、本発明は、上記ポリヌクレオチド又は組換ベクターを含有してなる抗癌剤増強剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、FACS解析の結果を示す図である。
図2は、FACS解析の結果を示す図である。
図3は、FACS解析の結果を示す図である。
図4は、各種細胞を低酸素分圧下及び正常酸素分圧下で培養した際のPim−1をウェスタンブロット法により検出した結果である。
図5は、各種細胞を低酸素分圧下及び正常酸素分圧下で培養した差異のPim−1 mRNAをノーザンブロット法により検出した結果である
図6は、Pim−1をウェスタンブロット法により検出した結果である。
図7は、Pim−1をウェスタンブロット法により検出した結果である。
図8は、形質転換細胞のタンパク質電気泳動の結果である。
図9は、形質転換細胞のタンパク質電気泳動の結果である。
図10は、FACS解析の結果を示す図である。
図11は、FACS解析の結果を示す図である。
図12は、各種細胞を投与した場合の腫瘍の大きさの変化を示すグラフである。
図13は、免疫組織化学染色を行った結果を示す写真である。
図14は、FACS解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について説明する。
本発明において、「セリン/スレオニンキナーゼPim−1」(以下、本明細書において、「Pim−1」ともいう)とは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するセリン/スレオニンキナーゼ活性を有するポリペプチドである。また、Pim−1は、マウス白血病ウィルス(MuLV)によって引き起こされたT細胞リンパ腫内でMuLVの挿入によって活性化される遺伝子として同定された(Comerford,K.M.,Wallace,T.J.,Karhausen,J.,Loui,s N.A.,Montalto,M.C.,Colgan,S.P.Hypoxia−inducible factor−1−dependent regulation of the multidrug resistance(MDR1)gene.Cancer Res.,62:3387−3394,2001、及びNiizeki,H.,Kobayashi,M.,Horiuchi,I.,Akakura,N.,Chen,J.,Wang,J.,Hamada,J.,Seth,P.,Katoh,H.,Watanabe,H.,Raz,A.,Hosokawa,M.Hypoxia enhances the expression of autocrine motility factor and the motility of human pancreatic cancer cells.Br.J Cancer,86:1914−1919,2002)。
本発明においては、Pim−1もしくはその部分ペプチドとは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含み、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、Pim−1が有するセリン/スレオニンキナーゼ活性が挙げられる。このキナーゼ活性が同等であるものが好ましい。このキナーゼ活性は、例えばp21タンパク質、mybタンパク質等等の基質ペプチドをリン酸化する活性として測定することができる。また、Pim−1は、後述するように、アポトーシス誘導活性を抑制するので、このアポトーシス誘導活性の抑制効果を測定することによって、実質的に同質の活性か否かを判断することができる。
本発明において用いられるPim−1としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列中の1又は2個以上(例えば、1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列に1又は2個以上(例えば、1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1又は2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1又は2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を有するペプチド、又はそれらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質等も含まれる。上記のアミノ酸の挿入、置換、欠失がなされている場合、その挿入、置換、欠失の位置は、とくに限定されない。
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。また、エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等の炭素数が1〜6個のアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素数が3〜8個のシクロアルキル基、フェニル、α−ナフチル等の炭素数が6〜12個のアリール基、ベンジル、フェネチル等のフェニル−アルキル基、α−ナフチルメチル等のα−ナフチル−アルキル基、炭素数が7〜14個のアラルキル基、ピバロイルオキシメチル基等が挙げられる。配列番号:1で表わされるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものであってもよい。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステル等が挙げられる。さらに、配列番号:1で表わされるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(ホルミル基、アセチル基等の炭素数が1〜6個のアルカノイル等の炭素数が1〜6個のアシル基等)で保護されているもの、生体内で切断されて生成されるN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基等)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基等の炭素数が1〜6個のアルカノイル基等の炭素数が1〜6個のアシル基等)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質などでもよい。
本発明において用いられるPim−1の部分ペプチドとしては、前記したタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記したタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
本発明で用いられるPim−1又はその部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩が挙げられる。本発明で用いられるPim−1もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞又は組織から公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできる。また、タンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列からなるDNA)を含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、公知のペプチド合成法に準じて製造することもできる。ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸等を用いて抽出を行ない、得られた抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明において用いられるPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩は合成したものを用いることができ、その合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂等を挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらの塩を取得する。上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化等によって保護することができる。セリンの水酸基は、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(炭素数が1〜6個)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される置換基等を用いることができる。また、エーテル化に適する置換基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基等が挙げられる。チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチル等が用いられる。ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmoc等が用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕等を用いることができる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが挙げられる。保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素等の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン等による塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元等を用いることが可能である。このような酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤を添加することが有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上述した1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール等の存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によって除去することできる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化は公知の置換基又は公知の手段から適宜選択しうる。タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明で用いられるPim−1の部分ペプチドまたはそれらの塩は、公知のペプチド合成法に従って製造することができる。又は、本発明で用いられるPim−1を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。
本発明で用いられるPim−1をコードするポリヌクレオチドとしては、Pim−1をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。DNAが好ましく用いられる。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上述した細胞・組織由来のcDNA、上述した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNA等が挙げられる。ライブラリーに用いられるベクターとしては、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド等が用いられる。また、上述した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。本発明で用いられるPim−1をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2で表される塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものであってもよい。
配列番号:2で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、更に好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等が挙げられる。ハイブリダイゼーションは、公知の方法又はそれに準じる方法に従って行うことができる。例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法等に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合には、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が19〜40mM、好ましくは19〜20mMで、温度が50〜70℃、好ましくは60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が19mMで温度が65℃の場合が最も好ましい。
本発明で用いられるPim−1の部分ペプチドをコードするDNAとしては、上述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、上述した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれもが用いられる。本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNAの一部分を有するDNA、または配列番号:2で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分を含有するDNA等が挙げられる。配列番号:2で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、上述したことと同様の意味を示す。ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は上述したものが用いられる。
本発明で用いられるPim−1、及びその部分ペプチド(本明細書において、以下、本明細書においては、これらを単にPim−1いうこともある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、Pim−1をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅してもよく、又は適当なベクターに組み込んだDNAをPim−1の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。DNAの塩基配列の変換は、PCR、公知のキット、例えば、MutanTM−superExpress Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LAPCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。Pim−1の発現ベクターは、例えば、(1)Pim−1をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(2)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
本発明の癌の予防・治療剤のスクリーニング方法は、上述したPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする。具体的には、本発明の予防・治療剤のスクリーニング方法は、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩と被検物質とを接触させ、Pim−1のリン酸化活性を測定することにより実施することができる。また、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩と被検物質とを接触させ、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩のアポトーシス誘導能の阻害効果を測定することにより実施することができる。
いずれの場合においても、被検物質の非存在下における活性と比較して、活性物質の存在を確認することによってスクリーニングを行う。この方法によって、アポトーシス誘導剤のスクリーニングの実施も可能である。また、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害することにより、腫瘍の形成能を阻害することができるので、この方法によって、抗癌剤増強剤のスクリーニングが可能である。
本発明のスクリーニング方法において用いられる被検試料としては、例えば、細胞抽出物、植物抽出物、精製又は粗精製タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成低分子化合物、天然化合物、遺伝子ライブラリー等が挙げられる。本発明のスクリーニング方法は、細胞内で行ってもよいが、試験管内で行うことも可能である。
細胞内で行う場合、Pim−1を生成する細胞を用いて行うことができるが、Pim−1をコードするDNAを含有する組換ベクターで形質転換された形質転換細胞を用いることもできる。試験管内で行う場合、Pim−1と、Pim−1の基質ペプチドとを、適当な反応バッファー中で混合し、そのリン酸化能を測定することによって実施する。基質ペプチドとしては、Pim−1によってリン酸化されるペプチドであれば特に制限なく用いることができ、反応条件は従来公知のキナーゼにおいて用いられる条件でよい。
次に、上述した組換ベクターについて説明する。
Pim−1をコードするDNAを含有する組換ベクターとしては、Pim−1をコードするヌクレオチド断片(例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチド)を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって製造することができる。ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC18またはpUC118等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5またはpC194)、酵母由来のプラスミド(例えばpSH19またはpSH15)、λファージ等のバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルス等のウイルス等の動物ウイルスの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo等が用いられる。本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主が大腸菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、araBADプロモーター等が、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、penPプロモーター、XYLプロモーター、HWPプロモーター、CWPプロモーター等が好ましく、宿主が枯草菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等が好ましく、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が好ましい。動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーター等が好ましく用いられる。また、昆虫細胞を宿主として用いる場合はポリヘドリンプロモーター、Op1E2プロモーター等が用いられる。
組換ベクターには、以上の他に、所望により当該技術分野で公知の、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40orgdiと略称する場合がある)等を付加することができる。また、必要に応じて、本発明のDNAにコードされたタンパク質を他のタンパク質(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼおよびプロテインA)との融合タンパク質として発現させることも可能である。このような融合タンパク質は、部位特異的プロテアーゼを使用して切断し、それぞれのタンパク質に分離することができる。
上記選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
宿主細胞としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞等が用いられる。エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,60巻,160(1968)),JM103(Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)),JA221(Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)),HB101(Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969))、C600(Genetics,39巻,440(1954)、DH5αおよびJM109等が用いられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114(Gene,24巻,255(1983)),207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕およびバチルス・ブレビス等が用いられる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccaromyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)M71およびハンセヌラ・ポリモーファ(Hansenula polymorpha)等が用いられる。昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞等が用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N細胞;BmN細胞)等が用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn,J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13,213−217,(1977))等が用いられる。昆虫としては、例えば、カイコの幼虫等が用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。哺乳動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞等が用いられる。
また、必要に応じて、宿主細胞に適したシグナル配列をコードするポリヌクレオチドを、Pim−1をコードするポリヌクレオチドの5’末端側に付加してもよい。宿主細胞としてエシェリヒア属菌を用いる場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列等が用いられ、宿主細胞としてバチルス属菌を用いる場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列等が用いられ、宿主細胞として酵母を用いる場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列等が用いられ、宿主細胞として動物細胞を用いる場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列等のシグナル配列が用いられる。このようにして構築された本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
上述した宿主細胞の形質転換は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。例えば、以下に記載の文献に宿主細胞を形質転換する方法が記載されている。Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69巻,2110(1972);Gene,17巻,107(1982);Molecular & General Genetics,168巻,111(1979);Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991);Proc.Natl.Acad.Sci.USA),75巻,1929(1978);細胞工学別冊8 新 細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行);及びVirology,52巻,456(1973)。
大腸菌等の細菌への組換ベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入することのできる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばカルシウムイオンを用いる方法(Cohen,S.N.et al.:Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69:2110(1972)、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、酵母への組換ベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入することのできる方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、動物細胞への組換ベクターの導入方法は、動物細胞にDNAを導入することのできる方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、昆虫細胞への組換ベクターの導入方法は、昆虫細胞にDNAを導入することのできる方法であれば特に限定されず、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
遺伝子が宿主に組み込まれたか否かを確認するための方法としては、例えばPCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。次いで、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、次いで増幅産物を1本のバンドとして検出し、形質転換されたことを確認することができる。予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出してもよい。更に、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させた後、蛍光又は酵素反応を用いて増幅産物を確認する方法を用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法は、上述した形質転換細胞を用いて行うことができる。以下、上述した形質転換細胞を用いて本発明のスクリーニング方法を行なう場合について説明する。
本発明のスクリーニング方法においては、上述した形質転換細胞を、Pim−1の基質ペプチド、及び[32P]−ATPと共に培養し、32Pの基質ペプチドへの取り込みを測定することにより、Pim−1のリン酸化活性を測定する。この測定を被検物質の存在下、及び非存在下で行い、両者を比較し、スクリーニングを行う。すなわち、被検物質の存在下と、非存在下でPim−1のリン酸化活性を測定し、被検物質の存在下の方が非存在下よりもリン酸化活性が低い場合は、被検物質はPim−1の阻害効果を有するものであることがわかる。
また、本発明のスクリーニング方法は、Pim−1のリン酸化活性を測定することに代え、アポトーシス誘導能を測定することによって実施することができる。すなわち、Pim−1はアポトーシス誘導能を阻害するので、被検物質の存在下と、非存在下でアポトーシス誘導能の阻害効果を測定し、この阻害が減少すれば、被検物質はPim−1の活性を阻害し、アポトーシス誘導能を有し、癌の予防・治療、抗癌剤の増強等に有効であることがわかる。
Pim−1は固形癌細胞内に多く存在していることから、Pim−1に対する阻害効果を有する化合物は癌の予防・治療効果、特に固形癌の予防・治療効果を有する化合物であると考えられる。また、この癌治療効果は癌細胞の腫瘍形成能を阻害するものであり、この効果はアポトーシス誘導効果により発揮されるものである。従って、上記スクリーニング方法は、アポトーシス誘導剤をスクリーニングする方法として用いることができる。また、上記スクリーニング方法は、抗癌剤増強剤をスクリーニングする方法として用いることができる。
また、本発明のスクリーニング方法は、セリン/スレオニンキナーゼPim−1の活性を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法であって、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩と被検物質とを接触させる工程、セリン/スレオニンキナーゼPim−1のリン酸化活性を検出する工程を含む、方法である。
リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質の結合に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量の変化を指標として検出することができる。また、リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質のリン酸化された状態を認識する抗体を用いて検出することができる。
リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質の結合に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量の変化を指標として検出する場合について説明する。
Pim−1によってリン酸化される基質ペプチドの結合配列をレポーター遺伝子の発現ベクターに連結し、これを宿主細胞に導入する。また、同じ宿主細胞に、Pim−1を発現するベクターを導入すると、2つの発現ベクターが導入された細胞が製造される。なお、Pim−1を発現するベクターとしては上述したものが用いられる。
また、上記レポーター遺伝子の発現ベクターは、Pim−1を発現するベクターと同様にして製造することができ、宿主細胞としては、上述したものを特に制限なく用いることができる。
本発明において用いられる、Pim−1によってリン酸化される基質ペプチドとしては、リン酸化されることによって結合配列に結合するものである。このような基質ペプチドとしては、例えばc−Myb、Nuclear Factor Activating(NFAT)及びP21等が挙げられる例えば、c−mybはリン酸化されると、結合配列に結合し、レポーター遺伝子が発現され、そのレポーター遺伝子の発現を検出することにより、c−mybがリン酸化されたか否かが検出される。
レポーター遺伝子としては、特に限定されないが、安定でかつ活性の定量が容易なものが好ましい。このようなレポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、HIS3遺伝子、グリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP)等をコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。レポーター遺伝子は、遺伝子本来のプロモータを有するものであってもよいし、プロモータ部分が他の遺伝子由来のものと置換されたものを用いてもよい。レポータ遺伝子は、応答配列の下流に機能的に連結されていればよい。
すなわち、上述したスクリーニング方法においては、被検物質がPim−1を阻害する活性を有している場合、レポーター遺伝子の発現が抑制又は阻害されるので、そのレポーター遺伝子の発現を検出することにより、被検物質がPim−1の活性を促進又は阻害するか否かを検出することが可能となる。
次に、リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質のリン酸化された状態を認識する抗体を用いて検出する場合について説明する。
抗体を用いる場合、例えば、Pim−1によってリン酸化される基質のリン酸化された状態を認識する抗体(一次抗体)をプレートに固相化させる。これとは別に、Pim−1とPim−1によってリン酸化される基質ペプチドとを、被検物質の存在下又は非存在下に緩衝液中で混合し、通常は2〜4時間インキュベートしておく。この操作により、基質ペプチドはPim−1によってリン酸化される。次いで、この基質ペプチドを含む緩衝液をプレートの穴に入れ、一定時間インキュベーションする。この操作により、リン酸化された基質ペプチドは一次抗体と結合し、リン酸化されていない基質ペプチドは一次抗体と結合しない。
リン酸化された基質ペプチドは一次抗体と結合しているので、次いで、基質プチドに対する別の抗体(二次抗体)との結合を調べることにより、基質ペプチドがリン酸化されているか否かを調べることができる。
二次抗体の結合の検出には、例えば、放射性同位元素を結合したものを用いた場合、液体シンチレーション等を用いて検出する。二次抗体に酵素を結合したものを用いる場合には、基質の酵素的変化、例えば発色の程度を吸光度計により検出する。また、二次抗体に蛍光物質を結合したものを用いる場合には、蛍光光度計により検出する。これらの結果を、被検物質の存在下の場合と非存在下の場合とを比較することにより、被検物質がPim−1のリン酸化活性を促進するか阻害するかを調べることができる。
用いられる基質としては、例えば、P21タンパク質等が挙げられる。
なお、用いる抗体としては、リン酸化された基質タンパク質、又はリン酸化されていない基質タンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。該抗体は、例えばP21タンパク質(リン酸化されているもの、及びされていないもの)を抗原として用い、従来公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
次に、本発明のスクリーニング用キットについて説明する。
本発明のスクリーニング用キットは、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を含有する。本発明のスクリーニング用キットは、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物をスクリーニングするために用いられる。
本発明のスクリーニング用キットには、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩、Pim−1の基質ペプチド、該基質ペプチドをリン酸化するためのリン酸基供与体を含有することが好ましい。
また、本発明のスクリーニング用キットは、上述した、発現ベクター、又は形質転換体を含有する。発現ベクター、又は形質転換対を含有するスクリーニング用キットにおいても、Pim−1の基質ペプチド、該基質ペプチドをリン酸化するためのリン酸基供与体を含有することが好ましい。これらのスクリーニング用キットを用いることにより、上記スクリーニング方法を実施することができる。
Pim−1の活性を阻害する化合物は、アポトーシスを誘導する薬剤の候補となり、癌の治療・予防への応用、抗癌剤の増強剤としての応用が考えられる。
本発明の癌の予防・治療剤、アポトーシス誘導剤、抗癌剤増強剤は、Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物またはその塩を含有してなる。Pim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物またはその塩は、上記スクリーニング方法又はスクリーニング用キットを用いて検索することができる。
Pim−1の活性を阻害する化合物の具体例としては、例えば配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列よりなるポリペプチドがx挙げられる。配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するPim−1のキナーゼ活性ドメインを欠失したポリペプチドであり、配列番号:1の1〜80番目のアミノ酸残基を欠失したポリペプチドである。配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、キナーゼ活性ドメインを欠失したポリペプチドであり、このポリペプチドが存在すると、Pim−1の活性が阻害され、その結果、このポリペプチドは癌治療・予防剤、アポトーシス誘導剤、抗癌剤増強剤として用いることができる。また、Pim−1の活性を阻害する化合物としては、Pim−1に対する抗体が挙げられる。また、Pim−1の活性を阻害する化合物としては、Pim−1をコードする遺伝子、すなわち配列番号:2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドに対する二本鎖RNA(以下、本明細書においてSiRNAともいう)、アンチセンスヌクレオチドが挙げられる。また、二本鎖RNAとしては、21〜23塩基対のshort interference RNAが好ましい。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドとしては、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するポリペプチドと実質的に同一なポリペプチドは、合成ポリペプチドであってもよい。
配列番号:3で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドとしては、例えば、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列中の1又は2個以上(例えば、1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列に1又は2個以上(例えば、1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1又は2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1又は2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を有するペプチド、又はそれらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質等も含まれる。上記のアミノ酸の挿入、置換、欠失がなされている場合、その挿入、置換、欠失の位置は、とくに限定されない。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドは、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。また、エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等の炭素数が1〜6個のアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素数が3〜8個のシクロアルキル基、フェニル、α−ナフチル等の炭素数が6〜12個のアリール基、ベンジル、フェネチル等のフェニル−アルキル基、α−ナフチルメチル等のα−ナフチル−アルキル基、炭素数が7〜14個のアラルキル基、ピバロイルオキシメチル基等が挙げられる。配列番号:1で表わされるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものであってもよい。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステル等が挙げられる。さらに、配列番号:3で表わされるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(ホルミル基、アセチル基等の炭素数が1〜6個のアルカノイル等の炭素数が1〜6個のアシル基等)で保護されているもの、生体内で切断されて生成されるN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基等)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基等の炭素数が1〜6個のアルカノイル基等の炭素数が1〜6個のアシル基等)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質などでもよい。
配列番号:3で表されるアミノ酸配列よりなるポリペプチドは、塩の形態であってもよく、このような塩としては、Pim−1について説明したものと同様である。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドは、公知のペプチド合成法によって合成することもできる。ペプチド合成については、Pim−1について説明した方法と同様な方法が挙げられる。
また、上述したPim−1を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
また、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドは、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号:4で表わされる塩基配列からなるDNA)を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を培養することによっても製造することができる。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:4で表される塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有するDNAであれば何れのものであってもよい。
配列番号:4で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:4で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、更に好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等が挙げられる。ハイブリダイゼーションは、上述した方法に従って行うことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェントな条件とは、上述した通りである。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドを完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅してもよく、又は適当なベクターに組み込んだDNAを配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、上述した通りである。DNAの塩基配列の変換についてでも、上述した通りである。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチド、例えば、配列番号:4で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する組換ベクターは、上記ポリヌクレオチド断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって製造することができる。ベクター及びプロモーターは、上述したものが用いられる。
組換ベクターには、以上の他に、所望により当該技術分野で公知の、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40orgdiと略称する場合がある)等を付加することができる。また、必要に応じて、本発明のDNAにコードされたタンパク質を他のタンパク質(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼおよびプロテインA)との融合タンパク質として発現させることも可能である。このような融合タンパク質は、部位特異的プロテアーゼを使用して切断し、それぞれのタンパク質に分離することができる。
上述した組換ベクターを宿主細胞に形質転換する方法については上述した通りである。また、宿主細胞としては、上述したものを用いることができる。
上述した宿主細胞の形質転換は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。この方法については上述した通りである。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその塩は、上記宿主細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、得られた培養物からポリペプチドを回収する工程を含む。
具体的には、上述した宿主細胞をホモジナイズした後、酸等で抽出を行い、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを組み合わせことによる公知のタンパク質の精製方法によって実施することができる。
得られたポリペプチドが遊離体である場合には、公知の方法によって適当な塩に変換することができる。また、塩として得られた場合には、公知の方法によって遊離体又は他の塩に変換することができる。
本発明の、上記配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なcDNAであるポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを含有する組換ベクターは、癌の予防・治療剤、アポトーシス誘導剤、及び抗癌剤増強剤として用いることができる。
例えば、癌の患者等に対して、(イ)上記ポリヌクレオチドを標的細胞内で機能し得るプロモーターの制御下においた発現ベクターを該患者に投与して生体内で本発明のポリペプチドを発現させることによって、(ロ)取り出した細胞に本発明のポリヌクレオチドを上記と同様に導入し、上記ポリペプチドを発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、上記効果を発揮させる。上記リヌクレオチドを上記目的に使用する場合は、該ポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクター等の適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って投与してもよい。
配列番号:2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドに対する二本鎖RNAは、同じ配列を有する遺伝子の発現を抑制し、従って、配列番号:2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドの発現を抑制するため、Pim−1の発現が抑制され、Pim−1の活性を阻害することができる。このような二本鎖RNAとしては、21〜23塩基対のshort interference RNAが好ましい。二本鎖RNAの調製法としては、従来公知の方法を特に制限なく用いることができ、例えば、Silencer si RNA construction kit(Ambion社製)を用いて製造することができる。
配列番号:2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドに対する二本鎖RNAとしては、例えば、配列番号:9で表わされる配列からなるポリヌクレオチド(5’−aaugaugaagucgaagagaucccugucuc−3’)と、配列番号:10で表わされる配列からなるポリヌクレオチド(5’−aagaucucuucgacuucaucaccugucuc−3’)とからなる二本鎖RNA、配列番号:11で表わされる配列からなるポリヌクレオチド(5’−aaaucuaaugagaugcugacaccugucuc−3’)と、配列番号:12で表わされる配列からなるポリヌクレオチド(5’−aaugucagcaucucauuagauccugucuc−3’)とからなる二本鎖RNA、配列番号:13で表わされる配列からなるポリヌクレオチド(5’−aaauccauggaugguucuggaccugucuc−3’)と、配列番号:14で表わされる配列からなるポリヌクレオチド(5’−aauccagaaccauccauggauccugucuc−3’)とからなる二本鎖RNAが挙げられる。
上述した、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチド等の、Pim−1の活性を阻害する化合物は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤等の生理学的に認められる担体とともに製剤化し、投与できる。上記ポリペプチドを癌の予防・治療、アポトーシス誘導、又は抗癌剤増強剤として使用する場合は、好ましくは90%、更に好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上に精製されたポリペプチドを使用することが好ましい。上記ポリペプチドは、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等として経口的に、あるいはエアロゾル化して吸入剤の形で、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。
例えば、本発明のポリペプチドを生理学的に許容し得る担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤等とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴム等の結合剤、結晶性セルロース等の賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の膨化剤、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリン等の甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリー等の香味剤等が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂等の液状担体を含有することができる。注射剤は、本発明のポリペプチドを通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール等)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール等)、酸化防止剤等を配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法等により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
上記ポリヌクレオチドが挿入された組換ベクターも上記と同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等)に対して投与することができ、癌の予防・治療剤、アポトーシス誘導剤、又は抗癌剤増強剤として用いることができる。
上記癌治療・予防剤、抗癌剤増強剤の対象となる癌としては、例えば、膵臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆道癌、脾臓癌、腎癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、甲状腺癌、膵臓癌、脳腫瘍及び血液腫瘍等が挙げられ、また、細胞内の酸素濃度が低下している固形癌に特に有効である。
本発明の癌治療・予防剤、アポトーシス誘導剤、抗癌剤増強剤を用いる場合、患者に直接投与する以外に、公知の製剤学的方法によって製剤化して投与を行うことが可能である。例えば、薬理学上許容される担体又は媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤等と適宜組み合わせて製剤化して投与することができる。患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射等の他、鼻腔内的、経気管支的、筋肉的、又は経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法等により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
【実施例】
以下に、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
低酸素分圧及び正常酸素分圧下における、固形癌細胞の抗癌剤に対する感受性を調べた。細胞としては、3種類の固形膵臓癌細胞系(PCI−35細胞、KMP−4細胞及びPCI−43細胞)を用いた。各細胞2×10個を、50μg/mlのシスプラチンの存在下で低酸素分圧下(1%酸素、5%二酸化炭素、以下、本実施例において同じ)、又は正常酸素分圧下(20%酸素、5%二酸化炭素、以下、本実施例において同じ)で6時間培養を行った。培養を行った後、生理加リン酸バッファー(pH7.4)で2回洗浄を行い、試料を調整した。なお、培養に用いた培地はDulcecco’s Modified Eagle’s Medium/F−12である(以下、本明細書において特に限定しない限り、同一の培地を用いるものとする)。
上記細胞について、プロピジウムヨーダイド(PI)及びFITCを結合した抗アネキシンVで染色し、FACScalibur(Becton Dickinson社製)でFACS解析を行った。
FACS解析の結果を図1に示す。図1において、Normoxiaは正常酸素分圧下を意味し、Hyposiaは低酸素分圧下を意味する(以下、本明細書において同じ)。本実施例におけるFACS解析について説明すると、細胞は、PI及び抗アネキシンVで染色され、それぞれの染色の強弱によって分割され、図1にしめすように分布する。この図においては、右下段が早期アポトーシス細胞を示し、右上段が後期アポトーシス細胞を示す。また、左下段は生細胞を示す。右下段及び右上段の総計をアポトーシス細胞として、図中に割合を%で示した。以下、本明細書におけるFACS解析は同様である。
図1に示すように、3種類の固形膵臓癌細胞系においては、シスプラチンの存在下、正常酸素分圧下で培養することにより、低酸素分圧下に比べ、約2倍のアポトーシスが誘導された。すなわち、上記3種類の固形膵臓癌細胞系においては、低酸素分圧下においては、正常酸素分圧下よりもアポトーシス誘導が阻害されることがわかった。
【実施例2】
PCI−43細胞について、実施例1と同一条件にて24時間まで培養を行い、培養開始前、12時間培養後、及び24時間培養後の試料を用いて同様に解析を行った。結果を図2に示す。図2に示すように、時間の経過と共にシスプラチンによってアポトーシスは誘導されたが、低酸素分圧下における培養においては、正常酸素分圧下の場合の約1/2であった。
上記結果より、各種細胞は、低酸素分圧下でシスプラチンによって誘導されるアポトーシスに対して、正常酸素分圧下よりも耐性であることを示す。
【実施例3】
ゲムシタビン、アドリアマイシン及びシスプラチンを用い、細胞はPCI−43細胞を用い、実施例1と同様にして測定を行った。なお、ゲムシタビン、アドリアマイシンの濃度は、それぞれ0.1〜1μmol、0.1〜5μmolとした。測定結果から、IC50を以下のようにして算出した。
各種濃度の抗癌剤で48時間処理した後の生細胞数を測定し、各種抗癌剤を加えない場Eの半分の生細胞数になる抗癌剤の濃度をIC50とした。結果を表1に示す。

表1に示すように、ゲムシタビン及びアドリアマイシンによる50%アポトーシス誘導には、シスプラチンと同様、低酸素分圧下の方が、ゲムシタビン、アドリアマイシンともに正常酸素状態よりも高濃度の抗癌剤が必要であった。
【実施例4】
PCI−43細胞について、シスプラチンに代え、抗Fas抗体2μg/mlを用いた以外は、実施例1と同様に培養を行い、解析を行った。解析は培養開始前及び24時間培養後に行った。結果を図3に示す。
図3に示すように、PCI−43細胞は、低酸素分圧下で抗Fas抗体によって誘導されるアポトーシスに対して、正常酸素分圧下よりも感受性を示すことがわかった。
【実施例5】
各種の癌細胞を、低酸素分圧及び正常酸素分圧下で16時間培養し、それぞれの細胞内におけるPim−1タンパク質、及びPim−1mRNAの解析を行った。
用いた細胞は、HCT116(大腸癌細胞株)、HePG2(肝癌細胞株)、KMP−4(膵臓癌細胞株)、PCI−10(膵臓癌細胞株)、PCI−35(膵臓癌細胞株)及びPCI−43(膵臓癌細胞株)である。各細胞を、低酸素分圧下(1%酸素、5%二酸化炭素)、又は正常酸素分圧下(20%酸素、5%二酸化炭素)で16時間培養を行った。培養が終了した細胞について、Trizol試薬を用いてRNA抽出を行い、蛋白抽出は1% NP−40 lysis buffer(50uM Tris PH7.5,150nM NaCl,2uM EDTA,1uM EGTA,50uM NaF,1uM Na3VO4,1uM PMSF)を用いて行った。
タンパク質の検出はウェスタンブロットにより行った。すなわち、上記試料を12%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。膜をブロッキングバッファー(5%スキムミルク、生理加Tween−リン酸バッファー中)でブロッキングし、抗Pim−1抗体と1時間反応し、次いで、ペロオキシダーゼを結合したヤギ抗マウスIgG二次抗体でインキュベートし、ECL検出キット(Amersham)で発色させた。
結果を図4に示す。図4は、各種細胞を低酸素分圧下及び正常酸素分圧下で培養した際のPim−1をウェスタンブロット法により検出した結果である。図4において、Nは正常酸素分圧下、Hは低酸素分圧下による培養を行った試験結果である。図4に示すように、試験を行った細胞株全てにおいて、Pim−1は、正常酸素分圧下で培養した場合よりも、低酸素分圧下で培養した方がPim−1の量が多いことがわかる。
次いで、ノーザンブロット解析を行い、各種細胞におけるPim−1 mRNAの検出を行った。Pim−1検出用のcDNAフラグメントをRT−PCRで増幅し、ノーザンブロット解析用プローブとして用いた。PCRプライマーとしては以下のものを用いた。

結果を図5に示す。図5は、各種細胞を低酸素分圧下及び正常酸素分圧下で培養した差異のPim−1 mRNAをノーザンブロット法により検出した結果である。また、図5の下部に示すグラフは、上部のウェスタンブロットによる解析結果をスキャナーで読みとり、その強度比を示すものである。図5に示すように、試験を行った細胞株全てにおいて、Pim−1 mRNAは、正常酸素分圧下で培養した場合よりも、低酸素分圧下で培養した方がPim−1 mRNA量が多いことがわかる。
上記結果より、癌細胞においては、正常酸素分圧下よりも低酸素分圧下で培養した場合に、Pim−1が大量に生産されることがわかる。
【実施例6】
各種膵臓癌細胞を低酸素分圧下に曝した場合のPim−1タンパク質の発現を時間経過を追って観察した。細胞としては、HCT116、PCI−10及びPCI−43を用いた。培養開始前、低酸素分圧下に細胞を曝して2時間経過後、4時間経過後に細胞をサンプリングし、実施例5と同様に操作を行い、ウェスタンブロット解析を行った。結果を図6に示す。図6において、β−actinは、発色のコントロールとして用いたものである。図6に示すように、用いた3種類の細胞全てにおいて、低酸素分圧下に曝してからの時間の経過とともにPim−1の量が増加していることがわかった。
【実施例7】
正常酸素分圧下において、Pim−1がプロテアーゼによって分解されているか否かを調べた。PCI−43細胞を、低酸素分圧下、及び正常酸素分圧下にて培養した。低酸素分圧下で培養した細胞については、培養前、培養開始4時間、12時間及び24時間経過後にサンプリングし、実施例5と同様に操作を行い、ウェスタンブロット解析を行った。また、正常酸素分圧下における培養においては、培地中にプロテアソーム阻害剤であるN−acetyl−L−leucinyl−L−leucinyl−L−norleucinal(ALLN)を50μM濃度加えて培養を行った。正常酸素分圧下における培養においては、培養開始前、培養開始6時間、及び12時間経過後にサンプリングし、実施例5と同様に操作を行い、ウェスタンブロット解析を行った。結果を図7に示す。図7に示すように、低酸素分圧下における培養においては、低酸素分圧に曝してからの時間経過に伴い、Pim−1の量が増加しており、正常酸素分圧下においても時間経過に伴いPim−1の量が増加していた。これは、プロテアソーム阻害剤のない状況においては、Pim−1タンパク質が分解されていることを示す。
【実施例8】
PCI−43細胞を、プロテアソーム阻害剤であるALLNの存在下、正常酸素分圧下にて培養した。培養を6時間行い、サンプリングし、ユビキチンを免疫沈降させた後、ウェスタンブロット法により解析を行った。一次抗体として、抗ユビキチン抗体、及び抗Pim−1抗体を用いる以外は実施例5と同様に操作を行った。ALLNの濃度は、0、50及び100μMで行った。結果を図8に示す。図8において、左側は一次抗体として抗Pim−1を用いた結果であり、右側は一次抗体として抗ユビキチンを用いた結果である。図8に示すように、サンプルは抗Pim−1抗体と反応することから、免疫沈降したユビキチンにPim−1が結合していることがわかる。すなわち、Pim−1は、最初ユビキチン化され、プロテアソームがユビキチンを指標としてプロテアソームによってPim−1が分解されることがわかった。
【実施例9】
実施例1〜3で、癌細胞中で低酸素分圧下において各種抗癌剤によって誘導されるアポトーシス誘導能が低下することが明らかとなった。また、実施例4において、低酸素分圧下で培養した癌細胞中にPim−1が大量に存在することが明らかになったので、Pim−1の役割りを明らかにするため、ドミナントネガティブPim−1トランスフェクタントを確立した。Pim−1トランスフェクタントは、野生型Pim−1のキナーゼ活性ドメインを欠如したペプチド、すなわち配列番号:3で表わされるペプチドを生産するものである。
キナーゼ活性ドメインを欠失した、ドミナントネガティブPim−1のcDNAは、PCI−10細胞から精製されたmRNAのRT生成物から増幅し、PCR4−TOPO中にクローニングした。プラスミドの配列決定は、ABI377自動化配列決定装置(Applied Biosystems)を用い、DyeDeoxy Terminator kit(Perkin−Elmer)を用いて行った。クローニングされたフラグメント(Invitrogen)に結合した。なお、RT−PCRの方法を以下に簡単に説明する。
75mM KCl、50mM Tris−HCl(pH8.3)、3mM MgCl2、10mM ジチオスレイトール、0.5mM 各dNTP、2μM ランダムプライマー、及び1000U AMLVリバーストランスクリプターゼ(Gibco BRL)を含む反応混合物中で37℃、1時間インキュベーションすることにより、各RNA試料(5μg)からcDNAの増幅を行った。cDNAののPCR増幅は、50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH9.0)、2.5mM MgCl2、0.1%Triton X−100、200μM 各dNTP、10μM 各特異的プライマー、及び1UのTaqポリメラーゼ(Gibco BrL)を含む反応混合物中で行った。PCRは、DNAサーマルサイクラー(Barnstead/Thermolyne)中で、35サイクル(94℃、1分、60℃、1分、72℃、2分)行った。
PCRプライマーとしては以下のものを用いた。

得られたベクターを、PCI−43細胞に、リポフェクタミン(Life Technologies)を用いて発現ベクターに形質導入した。トランスフェクタントを、1,200μg/mlのG−418で選択した後、限界希釈法でクローニングし、ドミナントネガティブトランスフェクタントdnp3、dnp4及びdnp10を得た。次いで、トランスフェクタントを600μg/mlのG−418の存在下、維持した。
得られた形質転換細胞について、タンパク質の電気泳動を行った。試料の調製は、1%NP−40 lysis buffer(50μM Tris PH7.5,150nM NaCl,2μM EDTA,1μM、EGTA,50μM NaF,1μM NaVO,1μM PMSF)を用いておこなった。
コントロールとして、ベクターを形質転換したものについても行った。
結果を図9に示す。図9は、形質転換細胞のタンパク質電気泳動の結果である。図9に示すように、dnp3、dnp4及びdnp10は、キナーゼドメインを欠失したPim−1の存在を表すピークが検出された(図9におけるdnPim−1)。ベクターのみを形質転換したもの(v3及びv4)については、このピークは検出されなかった。
【実施例10】
実施例9で得られたdnp3、dnp4、dnp10及びベクターのみを形質転換した細胞v3について、実施例1と同様にしてアポトーシス誘導能を測定した。結果を図10に示す。
図10に示すように、v3については、シスプラチンの存在下、正常酸素分圧下で培養することにより、低酸素分圧下に比べ、約2倍のアポトーシスが誘導された。これに対し、ドミナントネガティブPim−1であるdnp3、dnp4及びdnp10については、正常酸素分圧下及び低酸素分圧下において差は認められなかった。
【実施例11】
シスプラチンに代え、抗Fas抗体2μg/mlを用いた以外は、実施例1と同様に培養を行い、解析を行った。解析は培養開始前及び24時間培養後に行った。結果を図11に示す。
図11に示すように、v3、dnp3、dnp4及びdnp10について低酸素分圧下及び正常酸素分圧下において、抗Fas抗体によって誘導されるアポトーシスに対して、感受性は等しかった。
実施例9及び実施例10の結果から、Pim−1の機能を阻害することによって、抗癌剤により誘導されるアポトーシスに対する感受性は回復するが、低酸素状態で抗Fas抗体によって誘導されるアポトーシスに対する感受性を回復せず、このことは、Pim−1が膵臓癌細胞において抗癌剤に対する耐性と相関があることを示す。
【実施例12】
SCIDマウスの右脇腹に、V3、dnp3、dnp4及びdnp10を、それぞれ5×10個づつ皮下注射した。皮下注射後、3日毎に21日目まで腫瘍の大きさを観察した。腫瘍の大きさの測定は腫瘍の大きさの測定は短径及び長径をノギスを用いて測定し、以下の計算式にて体積を算出し、腫瘍の大きさとした。
(短径)×(短径)×(長径)/2
結果を図12に示す。図12は、各種細胞を投与した場合の腫瘍の大きさの変化を示すグラフである。図12のグラフにおいて、横軸は皮下注射後の経過日数であり、縦軸は腫瘍の大きさ(mm)である。図12のグラフは、SCIDマウス5匹を用いて行った実験における平均、及び標準偏差を示す。図12に示すように、v3を投与した群においては、日数の経過とともに腫瘍の大きさは増加した。これに対し、ドミナントネガティブKPim−1であるdnp3、dnp4及びdnp10を投与した群においては、投与後6日目から腫瘍の大きさが減少した。このことより、ドミナントネガティブPim−1が腫瘍形成能を欠失していることがわかる。
【実施例13】
実施例11で用いたマウスについて、皮下注射後6日経過したマウスから腫瘍細胞を切除し、PCNAアポトーシス及びタネル染色の免疫組織化学染色を行った。結果を図13に示す。
図13において、aはV3を皮下注射したマウスの腫瘍細胞のPCNA染色像であり、bはdnP4を皮下注射したマウスの腫瘍細胞のPCNA染色像であり、cはV3を皮下注射したマウスの腫瘍細胞のタネル染色像であり、dはdnP4を皮下注射したマウスの腫瘍細胞のタネル染色像である。図13に示すように、v3のPCNA染色陽性細胞は、dnP4のPCNA染色細胞に比較して優位に多く、逆に、タネル染色陽性細胞はdnP4にのみ認められた。
これらの結果より、Pim−1の機能がin vivoにおいて膵臓癌の形成に必要であることが示された。
【実施例14】
Silencer si RNA construction kit(Ambion社製)を用いて、配列番号:9で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドと、配列番号:9で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドとからなるSiRNA、配列番号:11で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドと、配列番号:12で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドとからなるSiRNA、配列番号:13で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドと、配列番号:14で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドとからなるSiRNAを作成した(それぞれを、Pim−1−RNASi−379、Pim−1−RNASi−784及びPim−1−RNASi−848とした)。また、コントロールとして、配列番号:15で表わされる塩基配列からなるSiRNAを用いた(これを、GFP−controlとした)。PCI−43細胞(2×10細胞)を6穴のプレートにまき、12時間インキュベートした。次いで、この細胞にリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いてSiRNAを導入し、24時間インキュベートし、50μMのシスプラチンとともに低酸素分圧下、及び正常酸素分圧下にて48時間培養を行い、実施例1と同様にFACS解析を行った。
FACS解析の結果を図14に示す。図14に示すように、コントロールについては、シスプラチンの存在下、正常酸素分圧下で培養することにより、低酸素分圧下に比べ、約2倍のアポトーシスが誘導された。これに対し、SiRNAの存在下で培養した場合には、正常酸素分圧下及び低酸素分圧下において差は認められなかった。
【実施例15】
pTAL−Lucベクターにc−Mybの結合配列(配列番号:16で表わされる塩基配列を有する、5’−TAACGGTT−3’)を5個直列に継ぎ、作製したc−Mybルシフェラーゼ発現ベクターと、pcDNA3.1に全長のc−Mybを結合した発現ベクターを導入したヒト胎児腎細胞293細胞株にpcDNA3.1−Pim−1発現ベクターと候補となる化合物を混合して、インキュベートした。インキュベートした後、デュアルルシフェラーゼ定量試薬(プロメガ株式会社)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。なお、候補となる化合物としては、実施例9で得られたドミナントネガティブPim−1トランスフェクタントを用いた。
結果は図示しないが、ドミナントネガティブPim−1トランスフェクタントを混合した時は、ルシフェラーゼ活性が阻害されており、この系によって、Pim−1の活性を阻害する化合物を検索することが可能であることが確認された。
以上詳述した通り、低酸素分圧下に曝された種々の癌細胞においては、Pim−1の量が増加しており、正常酸素分圧下においてはPim−1は分解されていた。ドミナントネガティブPim−1によってPim−1遺伝子の機能を阻害することにより、抗癌剤耐性が低下し、腫瘍形成能が低下した。
これらのことより、Pim−1タンパク質、又はPim−1遺伝子の機能を阻害することにより、癌の治療、アポトーシス誘導、抗癌剤増強効果を発揮することが可能であり、従って、ドミナントネガティブPim−1及びPim−1の機能を阻害する化合物は癌の治療等に有効である。
【配列表】










【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする、癌の予防・治療剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を含有してなる癌の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
【請求項3】
請求項1に記載のスクリーニング方法又は請求項2に記載のスクリーニング用キットを用いて得られる癌の予防・治療剤。
【請求項4】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物又はその塩を含有してなる癌の予防・治療剤。
【請求項5】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩を含有してなる癌の予防・治療剤。
【請求項6】
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有してなる癌の予防・治療剤。
【請求項7】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩に対する抗体を含有してなる癌の予防・治療剤。
【請求項8】
癌が膵臓癌である、請求項4又は5に記載の癌の予防・治療剤。
【請求項9】
癌が膵臓癌である、請求項6に記載の癌の予防・治療剤。
【請求項10】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする、アポトーシス誘導剤のスクリーニング方法。
【請求項11】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を含有してなるアポトーシス誘導剤のスクリーニング用キット。
【請求項12】
請求項10に記載のスクリーニング方法又は請求項11に記載のスクリーニング用キットを用いて得られるアポトーシス誘導剤。
【請求項13】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物又はその塩を含有してなるアポトーシス誘導剤。
【請求項14】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩を含有してなるアポトーシス誘導剤。
【請求項15】
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有してなるアポトーシス誘導剤。
【請求項16】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩に対する抗体を含有してなるアポトーシス誘導剤。
【請求項17】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を用いることを特徴とする、抗癌剤増強剤のスクリーニング方法。
【請求項18】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を含有してなる抗癌剤増強剤のスクリーニング用キット。
【請求項19】
請求項17に記載のスクリーニング方法又は請求項18に記載のスクリーニング用キットを用いて得られる抗癌剤増強剤。
【請求項20】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩を阻害する化合物又はその塩を含有してなる抗癌剤増強剤。
【請求項21】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩を含有してなる抗癌剤増強剤。
【請求項22】
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列よりなるポリペプチドと同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有してなる抗癌剤増強剤。
【請求項23】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩に対する抗体を含有してなる抗癌剤増強剤。
【請求項24】
癌が膵臓癌である、請求項20又は21に記載の癌の予防・治療剤。
【請求項25】
癌が膵臓癌である、請求項22に記載の癌の予防・治療剤。
【請求項26】
以下の(a)及び(b)のポリヌクレオチドと少なくとも95%以上の相同性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(a)配列番号:4で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:4で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なcDNAであるポリヌクレオチド;
(b)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能なcDNAであるポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項26に記載のポリヌクレオチドを含有する組換ベクター。
【請求項28】
請求項27に記載の発現ベクターを保持する宿主細胞。
【請求項29】
請求項28に記載の宿主細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、得られた培養物からポリペプチドを回収する工程を含む、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその塩の製造方法。
【請求項30】
請求項26に記載のポリヌクレオチド、又は請求項28に記載の組換ベクターを含有してなる癌の予防・治療剤。
【請求項31】
請求項26に記載のポリヌクレオチド、又は請求項28に記載の組換ベクターを含有してなるアポトーシス誘導剤。
【請求項32】
請求項26に記載のポリヌクレオチド、又は請求項28に記載の組換ベクターを含有してなる抗癌剤増強剤。
【請求項33】
哺乳動物に対して、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物又はその塩、又は上記ペプチド又はその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩の有効量を投与することを特徴とする、癌の予防・治療方法。
【請求項34】
哺乳動物に対して、セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物又はその塩、又は上記ペプチド又はその部分ペプチド又はその塩の遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩の有効量を投与することを特徴とする、アポトーシス誘導剤。
【請求項35】
低酸素によって抗癌剤耐性を誘導された固形癌を有する患者の治療方法であって、
固形癌細胞内のセリン/スレオニンキナーゼPim−1の発現を抑制することを特徴とする方法。
【請求項36】
固形癌が膵臓癌である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
低酸素状態によって抗癌剤耐性を誘導された膵臓癌に、ドミナントネガティブPim−1を導入することを特徴とする、低酸素状態における膵臓癌の抗癌剤耐性を減少する方法。
【請求項38】
ドミナントネガティブPim−1を膵臓癌細胞に導入することを特徴とする、膵臓癌細胞の腫瘍形成能を減少する方法。
【請求項39】
ドミナントネガティブPim−1トランスフェクタントである、固形癌細胞。
【請求項40】
ドミナントネガティブPim−1トランスフェクタントである、膵臓管腺癌。
【請求項41】
セリン/スレオニンキナーゼPim−1の活性を促進又は阻害する物質をスクリーニングする方法であって、
セリン/スレオニンキナーゼPim−1もしくはその部分ペプチド又はその塩と被検物質とを接触させる工程、
セリン/スレオニンキナーゼPim−1のリン酸化活性を検出する工程を含む、方法。
【請求項42】
リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質の結合に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量の変化を指標として検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
リン酸化活性の検出を、セリン/スレオニンキナーゼPim−1によってリン酸化される基質のリン酸化された状態を認識する抗体を用いて検出する、請求項41に記載の方法。

【国際公開番号】WO2004/090158
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505284(P2005−505284)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004917
【国際出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【出願人】(504283301)株式会社オンコレックス (7)
【Fターム(参考)】