説明

医薬組成物用のMnk1/Mnk2阻害活性を有するハロゲン又はシアノ置換されたチエノ[2,3−d]ピリミジン

本発明は一般式(I)の新規なチエノピリミジン化合物、これらの化合物を含む医薬組成物及び、Mnk1及び/又はMnk2(Mnk2a又はMnk2b)及び/又はその変異体のキナーゼ活性の阻害に影響されうる疾患の予防及び/又は治療のためのそれらの治療上の使用に関する。


(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチエノピリミジン化合物及びチエノピリミジン化合物を含む新規な医薬組成物に関する。
さらには、本発明はMnk1(Mnk1a又はMnk1b)及び/又はMnk2(Mnk2a又はMnk2b)又はさらにその変異体のキナーゼ活性を阻害することにより影響されうる疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物を製造する為の、本発明のチエノピリミジン化合物の使用に関する。特に、本発明は、糖尿病、高脂質血症及び肥満などの代謝性疾患、造血障害、神経変性疾患、腎障害、炎症性疾患、及び癌並びにそれらの続発的合併症及びそれらに関連する障害の予防及び/又は治療のための医薬組成物を製造する為の、本発明のチエノピリミジン化合物の使用に関する。
代謝性疾患は異常な代謝過程により引き起こされる疾患であり、酵素異常の遺伝が原因の先天性であるか、又は内分泌器官の疾患又は肝臓若しくは膵臓のような代謝的に重要な器官の障害が原因の後天性のいずれかでありうる。
本発明はより詳細には、特に脂質及び糖質代謝の代謝性疾患及び続発的合併症並びにそれらに関連する障害の治療及び/又は予防に向けられる。
【背景技術】
【0002】
脂質の障害は血漿中の脂質及びリポタンパク質のレベル及び代謝に異常を引き起こす一群の状態を包含する。従って、高脂質血症は、それらがアテローム性動脈硬化症及び冠状動脈性心疾患などのその後の血管疾患の発生の重要なリスク因子となることから、特に臨床的に関連する。
糖尿病は、結果として生じる臓器損傷及び代謝過程の機能障害と関連する慢性高血糖として定義される。その病因に応じて、インスリンの絶対的(インスリン分泌の欠如又は減少)又は相対的欠如のどちらかが原因で、いくつかの型の糖尿病に区別される。I型糖尿病
(IDDM、インスリン依存症糖尿病)は、一般に20歳未満の若者に発生する。それは自己免疫性の病因により膵島炎に至り、続いてインスリン合成を担うランゲルハンス島β細胞が破壊されると推定される。加えて、成人の潜在的な自己免疫性糖尿病(LADA;Diabetes Care. 8:1460-1467、2001)においては、β細胞は自己免疫的な攻撃が原因で破壊されている。残っている膵島細胞により産生されるインスリンの量は非常に少なく、血糖値の上昇をもたらす(高血糖症)。II型糖尿病は一般的により高齢で生じる。それはとりわけ肝臓及び骨格筋におけるインスリン抵抗性と関連するがまたランゲルハンス島の欠損とも関連する。高血糖レベル(及びまた高い血中脂質レベル)が、次にはβ細胞の機能障害及びβ細胞のアポトーシスの増加を導く。
【0003】
今日の一般的な抗糖尿病薬が血糖値を十分に制御して高血糖及び低血糖の発生を完全に防止しないことから、糖尿病は非常に身体に障害を引き起こす病気である。範囲外の血糖値は有毒であり、長期の合併症、例えば網膜症、腎症、神経障害及び抹消血管疾患を引き起こす。多くの関連する病気、例えば肥満症、高血圧症、心臓疾患及び高脂質血症があり、そのために糖尿病を患う人は実質的に危険にさらされているのである。
肥満症は、後に続いて起こる病気、例えば循環器疾患、高血圧症、糖尿病、高脂質血症及び増加死亡率の増加する危険性と関係付けられる。糖尿病(インスリン抵抗性)及び肥満症は、いくつかの疾患の間の連関として定義される「代謝症候群」(症候群X、インスリン抵抗性症候群、又は死の四重奏としても称される)の一部である。これらはしばしば同じ患者において発生し、II型糖尿病及び循環器疾患の発生の主な危険要因である。II型糖尿病、心臓疾患及び代謝症候群の他の発生を治療するために、脂質レベル及び血糖値の制御が必要とされることが示唆されてきた(例えば、Diabetes 48:1836-1841、1999;JAMA 288:2209-2716、2002を参照されたい)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある態様において、本発明の化合物及び組成物は、糖質代謝の代謝性疾患並びにそれらの続発性合併症及び障害、例えば耐糖能異常、糖尿病(好ましくはII型糖尿病)、糖尿病性合併症、例えば糖尿病性壊疽、糖尿病性関節症、糖尿病性骨減少症、糖尿病性糸球体硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性白内障及び糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、糖尿病性脚症候群、ケトアシドーシスを伴う又は伴わない糖尿病性昏睡、糖尿病性高浸透性昏睡、低血糖性昏睡、高血糖性昏睡、糖尿病性アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシス、毛細血管内糸球体腎症、キンメルスティール-ウィルソン症候群、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性自律神経障害、糖尿病性単発神経障害、糖尿病性多発神経障害、糖尿病性血管障害、糖尿病性末梢神経障害、糖尿病性潰瘍、糖尿病性関節症又は糖尿病中肥満症の治療及び/又は予防に有用である。
【0005】
さらなる態様において、本発明の化合物及び組成物は、脂質代謝の代謝性疾患(すなわち脂質異常症)並びにそれらの続発性合併症及び障害、例えば高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、フレデリクソン高リポタンパク血症、高βリポタンパク血症、高脂質血症、低密度リポタンパク型[LDL]高リポタンパク血症、純型高グリセリド血症、内因性高グリセリド血症、孤発性高コレステロール血症、孤発性高トリグリセリド血症、循環器疾患、例えば高血圧症、虚血、静脈瘤、網膜静脈閉塞、アテローム性動脈硬化症、狭心症(angina pectoris)、心筋梗塞、狭心症(stenocardia)、肺高血圧症、鬱血性心不全、糸球体症、尿細管間質疾患、腎不全、血管狭窄症又は脳血管疾患、例えば脳溢血の治療及び/又は予防に有用である。
【0006】
本発明のさらなる態様において、本発明の化合物及び組成物は、造血障害並びにそれらの続発性合併症及び障害、例えば急性骨髄性白血病(AML)、ホジキン病(Morbus Hodgkin)、非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin’s lymphoma);造血疾患、急性非リンパ性白血病(ANLL)、骨髄増殖性疾患、急性前骨髄性白血病(APL)、急性骨髄単球性白血病(AMMoL)、多発性骨髄腫、真性多血症、リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CCL)、ウィルムス腫瘍、又はユーイング肉腫の治療及び/又は予防に有用である。
本発明のさらなる態様において、本発明の化合物及び組成物は、癌並びに続発性合併症及び障害、例えば上部消化管の癌、膵臓癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、頸癌、子宮内膜癌、脳腫瘍、精巣癌、喉頭癌、骨の癌、前立腺癌、網膜芽腫、肝臓癌、肺癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、甲状腺癌、食道癌、軟部組織肉腫、皮膚癌、骨肉腫、黄紋筋肉腫、膀胱癌、転移性癌、悪液質、又は疼痛の治療及び/又は予防に有用である。
【0007】
シスプラチンのような特定の抗癌剤は、腎臓毒性又は聴神経障害といった重大な副作用に関連し、用量制限性でありうる。Mnksの活性化はこれらの副作用と関連していた。本発明のさらなる態様において、本発明の化合物及び組成物は、耳又は腎臓の障害の治療及び/又は予防、特に耳及び腎臓の薬剤誘発性の障害の予防又は治療に有用である。
さらに本発明は、サイトカイン関連疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物を製造するためのチエノピリミジン化合物の使用に関する。
そのような疾患は、一般に(i.a.)炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨疾患、増殖性疾患、感染症、神経変性疾患、アレルギー、又は炎症性サイトカインに付随する他の疾患である。
アレルギー性及び炎症性疾患は、例えば急性又は慢性の炎症、慢性炎症性関節炎、関節リウマチ、乾癬、COPD、炎症性腸疾患、喘息及び敗血症性ショック及びそれらに付随するそれらの続発性合併症及び障害である。
関節リウマチのような炎症性疾患、COPDのような炎症性肺病、炎症性腸疾患及び乾癬は、生涯のうちに3人に1人を苦しめる。それらの疾患は莫大な医療費を負わせるだけでなく、肢体不自由にして衰弱させるものが多い。
炎症は、以下のこれらの炎症性疾患の統一した発病過程であるものの、現在の治療アプローチは複雑であり、概して任意の一疾患に対して特異的である。今日利用可能な現行の治療の多くは、疾患の症状を処置するのみであり、根本的な炎症の原因を処置するものではない。
【0008】
本発明の組成物は、炎症性疾患並びに続発性合併症及び障害、例えば、慢性又は急性炎症、関節の炎症、例えば慢性炎症性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、若年性関節リウマチ、ライター症候群、外傷性リウマチ様関節炎、風疹性関節炎、急性滑膜炎及び痛風性関節炎;炎症性皮膚疾患、例えば日焼け、乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、湿疹、皮膚炎、急性又は慢性グラフト形成(graft formation)、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、蕁麻疹及び強皮症;消化管の炎症、例えば炎症性腸疾患、クローン病及び関連疾患、潰瘍性大腸炎、大腸炎、及び憩室炎;腎炎、尿道炎、卵管炎、卵巣炎、子宮内膜炎、脊椎炎、全身性エリテマトーデス及び関連障害、多発性硬化症、喘息、髄膜炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎、静脈炎、血栓静脈炎、呼吸器疾患、例えば喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性肺疾患及び成人呼吸窮迫症候群、及びアレルギー性鼻炎;心内膜炎、骨髄炎、リウマチ熱、リウマチ性心外膜炎、リウマチ性心内膜炎、リウマチ性心筋炎、リウマチ性僧帽弁疾患、リウマチ性大動脈弁疾患、前立腺炎、前立腺膀胱炎、脊椎関節症(spondoarthropathies)強直性脊椎炎、滑膜炎、腱滑膜炎(tenosynovotis)、筋炎、咽頭炎、リウマチ性多発筋痛、肩腱炎又は滑液泡炎、痛風、偽痛風、血管炎、肉芽種性甲状腺炎、リンパ球性甲状腺炎、湿潤性線維性甲状腺炎、急性甲状腺炎から選択される甲状腺の炎症性疾患;橋本甲状腺炎、川崎病、レイノー現象、シェーグレン症候群、神経炎症性疾患、敗血症、結膜炎、角膜炎、虹彩毛様体炎、視神経炎、耳炎、リンパ節炎、鼻咽頭炎(nasopaharingitis)、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃腺炎、喉頭炎, 喉頭蓋炎、気管支炎、肺臓炎、口内炎、歯肉炎、食道炎、胃炎、腹膜炎、肝炎、胆石症、胆嚢炎、糸球体腎炎、グッドバスチャー病、半月体形成性糸球体腎炎、膵炎、子宮内膜炎、子宮筋層炎、子宮炎、子宮頸管炎、子宮頸管内膜炎、子宮頸管外炎(exocervicitis)、子宮傍組織炎、結核、膣炎、外陰炎、珪肺症、サルコイドーシス、塵肺、発熱、炎症性多発性関節症、乾癬性関節炎、腸線維症、気管支拡張症及び腸疾患性関節症の治療及び/又は予防に有用である。
【0009】
さらに、サイトカインはまた、様々な心血管障害及び脳血管障害、例えば鬱血性心疾患、心筋梗塞、アテローム性プラークの形成、高血圧、血小板凝集、狭心症、脳卒中、アルツハイマー病、再潅流傷害、再狭窄及び抹消血管疾患などの血管外傷、並びに例えば、様々な骨代謝障害、例えば骨粗鬆症(老年性及び閉経後の骨粗鬆症を含む)、パジェット病、骨転移、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨硬化症、骨粗鬆症及び歯周炎、並びに関節リウマチ及び変形性関節症を伴いうる骨代謝の異常変化の生成及び発生に関係していると考えられる。
過剰なサイトカイン生成はまた、細菌、真菌及び/又はウイルス感染のある種の合併症、例えば内毒素性ショック、敗血症性ショック及び毒素性ショック症候群の仲介、並びにCNS手術又は神経外傷及び虚血性脳卒中のような障害のある種の合併症の仲介に関係していた。
過剰なサイトカイン生成は、さらに、軟骨組織又は筋肉の再吸収を伴う疾患、肺線維症、肝硬変、腎線維症、悪性疾患及び後天性免疫不全症候群(AIDS)のようなある種の慢性疾患、腫瘍浸潤及び腫瘍転移に見られる悪液質並びに多発性硬化症の発生の仲介又は悪化に関係していた。これらの疾患の治療及び/又は予防はまた本発明によって検討される。
【0010】
加えて、本発明の組成物は、限定されないが、全身性エリテマトーデス、アジソン病、多腺性自己免疫疾患(多腺性自己免疫症候群としても知られている)、糸球体腎炎、関節リウマチ強皮症、慢性甲状腺炎、グレーブス病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、糸球体腎炎、関節リウマチ自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、及び移植片対宿主病などの自己免疫疾患に関連する炎症の処置に使用することができる
さらなる態様において、本発明の組成物は、敗血症、敗血症性ショック、細菌性赤痢、及びヘリコバクター・ピロリなどの感染症、並びに単純ヘルペス1型(HSV-1)、単純ヘルペス2型(HSV-2)、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バー、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、急性肝炎感染症(A型肝炎、B型肝炎及びC型肝炎を含む)、HIV感染及びCMV網膜炎などのウイルス性疾患、AIDS又は悪性腫瘍、マラリア、マイコバクテリア感染及び髄膜炎の治療及び予防に使用することができる。これらにはまた、インフルエンザウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス-6(HHV-6)、ヒトヘルペスウイルス-7(HHV-7)、ヒトヘルペスウイルス-8(HHV-8)、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、サル痘ウイルス、仮性狂犬病及び鼻気管炎によるウイルス感染が含まれる。
【0011】
本発明の組成物はまた、関節炎症、湿疹、乾癬及び日焼けなどの炎症性皮膚疾患;結膜炎などの炎症性の目の疾患;発熱、疼痛及び炎症に関連する他の疾患などの、過剰なサイトカイン生成により仲介又は悪化される局所疾患状態の治療又は予防に局所的に使用することができる。
歯周病もまた、局所及び全身の両方のサイトカイン産生に関係していた。よって、歯肉炎及び歯周炎といったそのような口周囲疾患におけるサイトカイン産生に関係する炎症を抑えるための本発明の組成物の使用は、本発明の別の局面である。
最終的に、本発明の組成物はまた、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、前頭側頭葉型認知症、脊髄小脳失調症、レビー小体認知症、脳虚血又は外傷によって引き起こされる神経変性疾患、グルタミン酸神経毒性又は低酸素症から選択される神経変性疾患を治療又は予防するために使用することができる。
好ましい態様においては、本発明の組成物は、慢性又は急性炎症、慢性炎症性関節炎、関節リウマチ、乾癬、COPD、炎症性腸疾患、敗血症性ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症及び喘息から選択される疾患を治療又は予防するために使用することができる。
【0012】
タンパク質キナーゼは、多くの細胞機能の調節に関与する重要な酵素である。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のLK6-セリン/トレオニン-キナーゼ遺伝子は、微小管に関係しうる短寿命キナーゼとして記載された(J. Cell Sci. 1997、110(2):209-219)。キイロショウジョウバエ(Drosophila)の複眼の発生における遺伝子分析は、RASシグナル経路の調節における役割を示唆した(Genetics 2000 156(3):1219-1230)。キイロショウジョウバエ(Drosophila)のLK6-キナーゼに最も近縁のヒトホモログはMAP-キナーゼ相互作用キナーゼ2(Mnk2、例えば変異体Mnk2a及びMnk2b)及びMAP-キナーゼ相互作用キナーゼ1(Mnk1)及びその変異体である。これらのキナーゼは大部分が細胞質に局在している。Mnkは、p42 MAPキナーゼErk1及びErk2並びにp38-MAPキナーゼによってリン酸化される。このリン酸化は、成長因子、ホルボールエステル並びにRas及びMosなどの癌遺伝子に応答して、及びストレスシグナル伝達分子及びサイトカインにより誘発される。Mnkタンパク質のリン酸化は、真核生物開始因子4E(elF4E)に対するそれらのキナーゼ活性を刺激する(EMBO J. 16:1909-1920、1997;Mol Cell Biol 19、1871-1880、1990;Mol Cell Biol 21、743-754、2001)。マウスにおいてMnk1及びMnk2遺伝子両方を同時に破壊すると、eIF4Eの基礎リン酸化及び刺激されたリン酸化が減少する(Mol Cell Biol 24、6539-6549、2004)。elF4Eのリン酸化は、タンパク質翻訳の調節を招く(Mol Cell Biol 22:5500-5511、2001)。
【0013】
Mnkタンパク質によるタンパク質翻訳の刺激様式を説明する種々の仮説がある。多くの刊行物は、MAPキナーゼ相互作用キナーゼの活性化におけるキャップ依存性タンパク質翻訳に対する肯定的な刺激効果を説明している。従って、Mnkタンパク質の活性化は、例えばサイトゾル性ホスホリパーゼ2αに対する効果により、タンパク質翻訳の間接的な刺激又は調節をもたらしうる(BBA 1488:124-138, 2000)。
WO03/037362は、ヒトMnk遺伝子、とりわけヒトMnk2遺伝子の変異体と体重又は熱産生の調節と関連する疾患との間の関係について開示する。ヒトMnk遺伝子、特にMnk2変異体は、例えば肥満症、摂食障害、悪液質、糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、脂質異常症、変形性関節症、胆管結石、生殖器の癌及び睡眠時無呼吸などの代謝性疾患のような疾患、並びに例えば糖尿病及び癌のようなROS防御に関連する疾患に関与すると仮定されている。WO03/03762はさらに、体重又は熱産生の調節に関連する疾患の診断、予防又は治療におけるMAPキナーゼ相互作用キナーゼ(Mnk)遺伝子ファミリーの核酸配列及びこれらをコードするアミノ酸配列の使用並びにこれらの配列又はMnk核酸若しくはポリペプチドのエフェクター、特にMnk阻害剤及び活性化因子の使用について開示する。
WO02/103361は、2型糖尿病の治療に特に有用である薬理学的活性成分を同定するためのアッセイにおける、ヒトMAPキナーゼと相互作用するキナーゼ2a及び2b(Mnk2a及びMnk2b)の使用を記載する。さらに、WO02/103361はまた、Mnk2a又はMnk2bの発現又は活性の調節によるインスリン抵抗性関連疾患の予防及び/又は治療を開示する。ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド及びヌクレオチドアナログ以外に、4-ヒドロキシ安息香酸メチルエステルがヒトMnk2タンパク質と結合する物質として記載されている。
【0014】
炎症においてMnkが果たす役割の最初の証拠は、炎症促進性刺激によるMnk1の活性化を実証する研究によって提供された。サイトカインTNFα及びIL-1βは、インビトロでのMnk1の活性化を誘発し(Fukunaga and Hunter、EMBO J 16(8):1921-1933、1997)、インビボでのMnk特異的基質eIF4Eのリン酸化を誘導する(Uedaら、Mol Cell Biol 24(15):6539-6549、2004)。さらに、炎症反応の強力な刺激物質であるリポ多糖体(LPS)の投与は、マウスにおけるMnk1及びMnk2の活性化を誘導し、同時にそれらの基質であるeIF4Eのリン酸化が起きる(Uedaら、Mol Cell Biol 24(15):6539-6549、2004)。
さらに、Mnk1は、炎症性サイトカインの産生調節に関与することが示された。Mnk1は、ケモカインRANTESの発現を高める(Nikolchevaら、J Clin Invest 110、119-126、2002)。RANTESは、単球、好酸球、好塩基球及びナチュラルキラー細胞の強力な化学誘引物質である。Tリンパ球の増殖を活性化及び誘導し、好塩基球の脱顆粒を仲介し、好酸球における呼吸バーストを誘導する(Conti and DiGioacchino、Allergy Asthma Proc 22(3):133-7、2001)。
【0015】
WO2005/00385及びBuxadeら、Immunity 23:177-189、August 2005は、共にMnkとTNFα生合成の調整との関連を開示している。提起されたメカニズムは、TNFα mRNAにおける調整AUリッチエレメント(ARE)によって仲介される。Buxadeらは、ARE機能と結合し制御するタンパク質がMnk1及びMnk2によりリン酸化されることを実証している。具体的には、ARE-結合タンパク質hnRNP A1のMnk介在性のリン酸化は、TNFα mRNAの翻訳を高めることが示唆された。
TNFαは、AREによって調節される唯一のサイトカインではない。機能的AREはまた、いくつかのインターロイキン、インターフェロン及びケモカインの転写において見出される(Khabar、J Interf Cytokine Res 25:1-10、2005)。ARE結合タンパク質のMnk介在性リン酸化は、従って、TNFαの生合成に加えて、サイトカインの生合成を制御する潜在性を有する。
現在の証拠は、Mnkを、炎症シグナルの下流の目標及び炎症応答の仲介物質として実証している。TNFα、RANTES、及び潜在的に追加のサイトカインの産生におけるそれらの関連は、抗炎症性の治療的介入の戦略としてのMnkの阻害を示唆している。
【0016】
Mnk1及びMnk2(全ての接合形態を含む)は、翻訳因子eIF4Eをセリン209でリン酸化する。Mnk1/2ダブルノックアウトマウスは、セリン209でのリン酸化を完全に欠如し、Mnkキナーゼがこの部位をインビボでリン酸化できる唯一のキナーゼであることを示す(Uedaら、Mol Cell Biol. 2004;24(15):6539-49)。eIF4Eは広範囲のヒト悪性腫瘍に過剰発現し、高いeIF4E発現は、より侵攻性の高い疾患及び予後不良としばしば関連する。さらに、eIF4Eは、発癌活性のための標準アッセイでアッセイされた場合に癌遺伝子として作用しうる(例えば、Ruggeroら、Nat Med. 2004 May;10(5):484-6)。eIF4Eは、MCP-1のような生存促進因子の発現を増大させることによって(Wendelら、Genes Dev. 2007;21(24):3232-7)及び薬剤耐性経路の正の調整を行うことによって(Wendelら、Nature 2004;428(6980):332-7;Graffら、Cancer Res. 2008;68(3):631-4;De Benedetti and Graff、Oncogene 2004;23(18):3189-99;Barnhart and Simon、J Clin Invest. 2007;117(9):2385-8)、c-myc及びcyclinD1などの癌遺伝子の転写を促進することにより、その発癌活性を発揮する(Culjkovicら、J Cell Biol、2006;175(3):415-26)。アンチセンスオリゴヌクレオチドによるeIF4Eの発現抑制は、ヒト腫瘍細胞を用いた前臨床実験において有望であることが示された(Graffら、J Clin Invest. 2007;117(9):2638-48)。Ser209でのリン酸化は、インビトロ及びインビボでのeIF4Eの発癌活性に厳密に必要であることが示された(Topisirovicら、Cancer Res. 2004;64(23):8639-42;Wendelら、Genes Dev. 2007;21(24):3232-7)。従って、Mnk1及びMnk2の阻害はヒトの悪性腫瘍において有益な効果を有すると期待される。
【0017】
Mnk阻害剤(CGP57380及びCGP052088として表される)が記載された(Mol. Cell. Biol. 21、5500、2001;Mol Cell Biol Res Comm 3、205、2000;Genomics 69、63、2000参照)。CGP052088は、Mnk1のインビトロでのキナーゼ活性阻害について70nMのIC50を有するスタウロスポリン誘導体である。CGP57380は、Mnk2(Mnk2a又はMnk2b)又はMnk1の低分子量、選択的、非細胞毒性の阻害剤である。Mnk2(Mnk2a又はMnk2b)又はMnk1でトランスフェクションされた、細胞培養の細胞へのCGP57380の添加は、リン酸化されたelF4Eの大幅な低減を示す。
さらなるMnk阻害剤が記載された。例えばMnkキナーゼ阻害剤として、ピラゾロピリミジン化合物を記載しているWO06/066937、特定のチエノピリミジン化合物を記載しているWO06/136402、改変されたコア環を有するさらなるチエノピリミジン化合物を記載しているWO07/115822、及びピロロピリミジンを記載しているWO08/006547の、出願人の特許出願を参照されたい。
【0018】
本発明の根底にある課題は、代謝性疾患、炎症性疾患、癌、神経変性疾患並びにそれらの続発性合併症及び障害の治療に効果的かつ安全に使用することができる、強力で選択的なMnk1及び/又はMnk2阻害剤を提供することである。
ここで驚くべきことに、ある種のチエノピリミジン化合物が、キナーゼ酵素Mnk1及び/又はMnk2及び/又はその変異体の強力な阻害剤であり、それ自体がMnk1及び/又はMnk2(Mnk2a又はMnk2b)及び/又はその変異体のキナーゼ活性の阻害によって影響されうる疾患の予防及び/又は治療に有用でありうることが、分かった。
【0019】
当技術分野において周知であるチエノピリミジン化合物、例えば出願人の特許出願WO06/136402及びWO2007/115822に開示された化合物とは対照的に、本発明のチエノピリミジン化合物は、いくつかの利点、すなわち高い溶解度、安定な塩を形成する可能性、改善された代謝安定性、生化学又は細胞のMnk活性アッセイにおける高い又は維持された活性、及び他のキナーゼに対する高い又は維持された選択性を提供する。
WO06/136402及びWO07/115822に開示されるチエノピリミジン化合物は、Mnk酵素アッセイにおいて高い活性及び極めて高い選択性を示すが、これらは非常に低い溶解度を示し、多くの場合代謝的に不安定であり望ましくない薬物動態特性をもたらす。
【0020】
驚くべきことに、下記の一般式(I)の化合物においてR4位への極性基の導入により意外な実質的代謝安定化を導き、本発明のチエノピリミジンをインビボにおける薬理学的適用に有用にすることが見出された。
さらに、本出願で記載される化合物は、また、改善された溶解度を示し、生化学及び細胞アッセイにおいて強い阻害効力を有し、高度に選択性であり、全体的に大きく改善された薬理学的特性をもたらす。
特に規定しない限り、本出願において述べる任意のアルキル部分は直鎖又は分岐であってもよい。
【0021】
本発明のチエノピリミジン化合物は、一般式(I)の化合物、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩である。
【化1】

(I)、
(式中、Xは、CH又はNであり、
R1は、水素若しくはハロゲン原子、CN又はCONH2であり、
R2は、2位以降で1又は2個のOH、C1-4アルコキシ又はNH2により置換されていてもよい、又は任意の位置で1〜3個のFにより又はCO2H、CONH2、CONH(C1-3アルキル)、CON(C1-3アルキル)2、CONRR’、SO2NH2、SO2NH(C1-3アルキル)又はSO2N(C1-3アルキル)2基により置換されている、直鎖又は分岐のC1-6アルキル基、
(ここで残基R及びR’は、それらが結合しているN原子と一緒になって3-8員環を形成し、ここで1つのCH2基は、O、S、SO、SO2又はNにより置換されていてもよく、及び窒素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子は、OH、F、C1-3アルキル又はNH2により置換されていてもよい);
酸素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子上で1又は2個のOH、C1-4アルコキシ又はNH2により;又はF、CO2H、CONH2、CONH(C1-3アルキル)、CON(C1-3アルキル)2、SO2NH2、SO2NH(C1-3アルキル)、SO2N(C1-3アルキル)2、SO2(C1-3アルキル)、(CH2)mOR5;(CH2)mN(R5)2により置換されていてもよい、C3-8シクロアルキル基、
(ここでアルキル基及びシクロアルキル基の置換基として上記したNH2基は、独立にC1-3アルキル、-(CH2)m-OH、-(CH2)m-OCH3、-(CH2)m-CN、-(CH2)m-F、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい);
又は以下の化学式の任意の1つから選択される、1つ以上のR6により置換されていてもよい、ヘテロシクリル系:
【化2】



(ここでNH基の水素原子は、C1-3アルキル、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい)であり;
R3はC1-2アルキル基であり;
R4は、F、Cl、Br、I又はCNであり;
R5は、H及びC1-4アルキルから選択され;
R6は、O又はNに結合しているもの以外の任意の炭素原子上のOH、OR5及びN(R5)2;F;CO2H;CON(R5)2;SO2N(R5)2;SO2R5;(CH2)mOR5;(CH2)mN(R5)2から選択され;及び
mは、1、2又は3である。)
【0022】
好ましい式(I)の化合物は以下、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩である。
(式中、Xは、CH又はNであり、
R1は、水素若しくはフッ素原子又はCONH2基であり、
R2は、2位以降でNH2により置換されていてもよい直鎖又は分岐C1-4アルキル基;又は任意の位置で1〜3個のFにより置換されている直鎖又は分岐C1-4アルキル基;又は任意の位置でCONH2、CONH(C1-3アルキル)、CON(C1-3アルキル)2又はCONRR’により置換されている、直鎖又は分岐C1-4アルキル基、
(ここで残基R及びR’は、それらが結合しているN原子と一緒になって3-8員環を形成し、ここで1つのCH2基は、O又はNにより置換されていてもよく、及び任意の炭素原子は、OH、F又はNH2により置換されていてもよい);
酸素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子上で1又は2個のOH、C1-4アルコキシ又はNH2により置換されていてもよい、C5-7シクロアルキル基、
(ここでアルキル基及びシクロアルキル基の置換基として上記したNH2基は、独立にC1-3アルキル、-(CH2)m-OH、-(CH2)m-OCH3、-(CH2)m-CN、-(CH2)m-F、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい);
又は以下の化学式の任意の1つから選択される、ヘテロシクリル系:
【化3】



(ここでNH基の水素原子は、SO2(C1-3アルキル)又はCO2(C1-4アルキル)により置換されていてもよい)であり;
R3はC1-2アルキル基であり;
R4は、F、Cl、Br又はCNであり;及び
mは、1、2又は3である。)
【0023】
より好ましい式(I)の化合物は以下、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩である。
(式中、
Xは、CH又はNであり、
R1は、水素若しくはフッ素原子又はCONH2基であり、
R2は、2位以降でNH2により置換されていてもよい、又は任意の位置で1〜3個のFにより置換されている、直鎖又は分岐C1-4アルキル基;
酸素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子上でOH、C1-3アルコキシ又はNH2により置換されていてもよい、シクロヘキシル基、
(ここでアルキル基及びシクロアルキル基の置換基として上記したNH2基は、独立にC1-3アルキル、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい);
又は以下の化学式の任意の1つから選択される、ヘテロシクリル系:
【化4】



(ここでNH基の水素原子は、SO2(C1-3アルキル)又はCO2(C1-4アルキル)により置換されていてもよい)であり;
R3はC1-2アルキル基であり、及び
R4は、F、Cl又はBrである。)
【0024】
好ましいサブグループは、式(I)の化合物、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩に関連し、
X並びにR1、R2及びR4は、上記のように定義され、及び
R3はCH3である。
別の好ましいサブグループは、式(I)の化合物、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩に関連し、
R2〜R4は、上記のように定義され、
XはCHであり、及び
R1は、F又はCONH2である。
第三の好ましいサブグループは、式(I)の化合物、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩に関連し、
R2〜R4は上記のように定義され、
XはNであり、及び
R1はHである。
第四の好ましいサブグループは、式(I)の化合物、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩に関連し、
X及びR1〜R3は、上記のように定義され、及び
R4は、F、Cl又はBrである。
さらにより好ましいものは、式(I)の化合物、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は塩であり、
X及びR1〜R3は、上記のように定義され、及び
R4は、Cl又はBrである。
【0025】
特に好ましい式(I)の化合物は、以下又はその薬学的に許容可能な塩である。
a) (trans-3-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-シクロヘキサノール、
b) (6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[2-(trans-4-メチルアミノ-シクロヘキシルオキシ)-ピリジン-3-イル]-アミン、
c) (6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-(2-フルオロ-1-フルオロメチル-エトキシ)-フェニル]-アミン、
d) (6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-((R)-ピペリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-アミン、
e) 6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-((R)-1-メタンスルホニル-ピペリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-アミン、
f) [2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン、
g) N-{2-[2-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-メタンスルホンアミド、
h) (6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)-フェニル]-アミン、
i) [2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン、
j) N-{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-アセトアミド、
k) N-{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-メタンスルホンアミド、
l) 4-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-エトキシ-ベンズアミド、
m) 4-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-エトキシ-ベンズアミド及び
n) (6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-(4-フルオロ-2-イソプロポキシ-フェニル)-アミン。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の化合物の典型的な調製方法は以下の実施例の部分で述べる。
本発明の化合物の強い阻害効果は、実施例においてより詳細に記載されるインビトロの酵素アッセイにより測定されうる。
【0027】
一般的な合成方法:
本発明の化合物は以下のスキームに従って合成される。
【化5】

一般式Cの化合物は、化合物Aと脱プロトン化アルコールBを、THF又はDMFなどの適当な溶媒中において温度0℃〜150℃で反応させることにより合成することができる。Bの脱プロトン化形態は、水素化ナトリウム又はリチウムヘキサメチルジシラザンのような塩基で好ましい温度である0℃で脱プロトン化することにより得ることができる。一般式Dの化合物を得るための化合物Cの水素添加は、Cを水素及びパラジウム又はラネーニッケルなどの触媒の存在下で反応させることにより達成できる。水素は、気体として導入するか又はギ酸アンモニウムなどの水素源から生成することができる。
【0028】
【化6】

一般式Cの化合物は、また、THFなどの溶媒中でトリフェニルホスフィン及びジアルキルアゾジカルボキシラート、例えばジエチルアゾジカルボキシラート、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート又はジ-tertブチルアゾジカルボキシラートの存在下で、温度-10℃〜80℃、好ましくは0℃〜30℃において、一般式Eの化合物とアルコールBとの光延(Mitsunobu)反応により得ることができる。
【0029】
【化7】

式Gの化合物は、化合物DとFとを、好ましくはp-トルエンスルホン酸又は塩酸などの酸の存在下において、ジオキサンなどの溶媒中で温度10℃〜150℃にて反応させることにより合成できる。一般式Hの化合物の合成は、化合物Gを溶媒、例えばメタノール、エタノール、THF及び水又はその混合物、好ましくはエタノール/THF又はTHF/水中で、温度10℃〜100℃にて水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムなどの塩基と反応させることにより達成できる。一般式Jの化合物は、化合物Hと一般式Iのアミンとを、DMF又はTHFなどの溶媒中でジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下又は非存在下において、試薬、例えばTBTU、HATU又はEDC/N-ヒドロキシスクシンイミドを採用するアミドカップリング法を使用し、温度0℃〜120℃好ましくは0℃〜30℃で反応させることにより得ることができる。
【0030】
6-ハロ-チエノ[2,3-d]ピリミジンは、チエノ[2,3-d]ピリミジンとN-ハロ-スクシンイミドとを酢酸中で上昇させた温度、好ましくは60℃〜90℃においてハロゲン化することにより調製することができる。
6-シアノ-チエノ[2,3-d]ピリミジンは、対応するチエノ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミドを、脱水剤例えば、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、リンオキシクロリドを用いて、ピリジン、ピリジン/ジクロロメタン中で低温、好ましくは-10℃〜10℃にて脱水することにより調製することができる。
【0031】
本発明の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩は、多数の有機及び無機の酸並びに塩基を用いて形成することができる。例となる酸付加塩としては、アセテート、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビサルフェート、ボレート、ブチレート、シトレート、カンホレート、カンファスルホネート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘミサルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレアート、メタンスルホネート、2-ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オキサレート、パモエート、ペクチネート、ペルサルフェート、3-フェニルスルホネート、3-フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、サリシレート、スクシネート、サルフェート、スルホネート、タルトレート、チオシアネート、トルエンスルホネート、例えばトシレート、ウンデカノエートなどが挙げられる。
【0032】
塩基性の窒素含有部分は、ハロゲン化低級アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージド;ジアルキルサルフェート、例えばジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミルサルフェート、長鎖アルキルハライド、例えばデシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロリド、ブロミド及びヨージド、又はアラルキルハライド、例えばベンジル及びフェネチルブロミド、又は他のものを用いて四級化することができる。水溶性又は水分散性の生成物はそうして得ることができる。
薬学的に許容可能な塩基付加塩としては、限定されないが、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩などのアルカリ及びアルカリ土類金属に基づくカチオンが挙げられ、及び毒性を示さないアンモニウムである第四級アンモニウム、及びアミンのカチオン、限定されないが、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的なアミンとして、ベンゾアゼチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラビン、N-メチル-D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミド、t-ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなど、及びアルギニン、リシンなどのアミノ酸の塩が挙げられる。
【0033】
特に示さない限り、明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、与えられた化学式又は化学名は、その互変異性体及び全ての立体、光学、幾何異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体など)及びラセミ化合物、並びに別個のエナンチオマーの異なる比率における混合物、ジアステエオマーの混合物、又はそのような異性体及びエナンチオマーが存在する前述の形態の任意の混合物、並びにその薬学的に許容可能な塩などの塩及びその溶媒和物、例えば遊離化合物の溶媒和物又は化合物の塩の溶媒和物などの水和物を包含すべきである。
【0034】
本明細書で使用される用語「代謝物」は、(i)代謝の生成物(中間体及び生成物を含む)、(ii)代謝に関する任意の物質(代謝の生成物又は代謝に必須なものとして)、又は(iii)代謝の間に生成又は使用される任意の物質を示す。特に、それは代謝後に残存する最終生成物を示す。
【0035】
本明細書で使用される用語「プロドラッグ」は、(i)体内でそれを有用な形態又は活性形態に変換する代謝過程の後にその効果を発揮する、薬物の不活性形態、又は(ii)それ自体は活性でないが、薬理学的に活性のある代謝物を生じる物質(すなわち不活性前駆物質)を示す。
用語「プロドラッグ」又は「プロドラッグ誘導体」は、その薬理学的作用を示す前に少なくともいくらかの生体内変化を受ける親化合物又は活性薬剤物質の共有結合の誘導体若しくは担体を意味する。一般的に、そのようなプロドラッグは、代謝的に開裂可能な基を有し、例えば血中の加水分解によりインビボで迅速に変換されて親化合物を生じ、及び通常親化合物のエステル及びアミドアナログを含む。プロドラッグは、化学安定性の改善、患者の承認及び順守の改善、生物学的利用率の改善、作用の持続時間の延長、器官選択性の改善、製剤の改善(例えば水溶性の増大)、及び/又は副作用の低減(例えば毒性)といった目的で形成される。一般に、プロドラッグ自体は弱いか又は非生物活性を有し、通常の条件下では安定である。プロドラッグは、A Textbook of Drug Design and Development、Krogsgaard-Larsen and H. Bundgaard(編)、Gordon & Breach、1991、特にChapter 5:「Design and Applications of Prodrugs」;Design of Prodrugs、H. Bundgaard(編)、Elsevier、1985;Prodrugs:Topical and Ocular Drug Delivery、K.B. Sloan(編)、Marcel Dekker、1998;Methods in Enzymology、K. Widderら(編)、Vol. 42、Academic Press、1985、特に309-396頁;Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery、5th Ed.、M. Wolff(編)、John Wiley & Sons、1995、特にVol. 1及び172-178頁及び949-982頁;Pro-Drugs as Novel Delivery Systems、T. Higuchi and V. Stella(編)、Am. Chem. Soc.、1975;Bioreversible Carriers in Drug Design、E.B. Roche(編)、Elsevier、1987(これらのそれぞれは、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記載されるような、当技術分野で既知の方法を用い、親化合物から容易に調製される。
本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能なプロドラッグ」は、健全な医学的判断の範囲内において、ヒト及び下等動物の組織との接触において過度の毒性、刺激、アレルギー性反応等なしに使用するのに適切であって、合理的な恩恵/リスクの比率と釣り合っており、及びそれらの意図する使用に効果的であり、必要であれば両性イオン形態である、本発明の化合物のプロドラッグを意味する。
【0036】
本明細書で使用される用語「C3-10シクロアルキル」又は「C3-8シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニル、シクロヘプタトリエニル過水和(perhydrated)ナフタレン又はインデン、アダマンチル又はノルボナニルなどの、それぞれ3〜10又は3〜8の環原子を有する、単環式又は多環式の炭素環アルキル置換基又は基を示す。
単独又は他の用語との組み合わせにおいて、例えばアルコキシで使用される用語「C1-8アルキル」は、例えばメチル、エチル、プロピル(イソ-、n-)、ブチル(イソ-、n-、sec-、tert-)、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(イソ-、n-)、ブトキシ(イソ-、n-、sec-、tert-)、ペントキシ、ヘキソキシなどの、C1-8、好ましくはC1-4の直鎖又は分岐のアルキル/アルコキシ基を表し、さらに、用語「C1-8アルキル」には、また、鎖の中に酸素を有し、ハロゲンで置換されてエーテル又はハロゲン化エーテル基を形成しうるアルキル基が含まれる。
特にアルキル基、アルコキシ基、又はアルケニル基において、任意の水素原子はフッ素原子に置換されてもよい。
用語「C2-8アルケニル」は、それ自体で又は別の基の一部として、直鎖に2〜8個の炭素、好ましくは2〜6個の炭素を有し、直鎖に1つ以上の2重結合を含む、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニルなどの、直鎖又は分岐のアルケニル基を示す。
【0037】
用語「ヘテロシクリル」は、N、S及びOから選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、残りの環原子は炭素原子であり、好ましくは3〜10個の環原子合計数を有する、モルホリノ、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、インドリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、トリアゾリル、チオフェニル又はフラニルなどの、単環式飽和又は不飽和ヘテロシクリル基を示す。
用語「ヘテロアリール」は、N、S及びOから選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、残りの環原子が炭素原子であり、好ましくは5〜10個の環原子合計数を有する単環式又は二環式の芳香族基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例は、ベンゾフラニル、フリル、チエニル、ベンゾチエニル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、プリニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズアミダゾリル、インドリル、イソインドリル、ピラジニル、ジアジニル、ピラジン、トリアジニルトリアジン、テトラジニル、テトラゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾピリジル及びベンゾイミダゾリルなどである。
【0038】
さらなる局面において、本発明は、本発明のチエノピリミジン化合物を含み、及び薬学的に許容可能な担体を含んでいてもよい医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物は、さらに追加の治療薬を含んでいてもよい。特に好ましいものは、追加の治療薬が、インスリン、長時間及び短時間作用型のインスリンアナログ、スルホニル尿素、ビグアニド、DPP-IV阻害剤、SGLT2阻害剤、11β-HSD阻害剤、グルコキナーゼ活性化剤、AMPK活性化剤、Glp-1受容体作動薬、GIP受容体作動薬、DGAT阻害剤、PPARガンマ作動薬、PPARデルタ作動薬、及びチアゾリジンジオンに由来する他の抗糖尿病薬などの抗糖尿病薬、スタチン、フィブラート、イオン交換樹脂ニコチン酸誘導体、又はHMG-CoAレダクターゼ阻害剤などの脂質低下薬、硝酸エステルなどの心血管治療薬、β-ブロッカー、ACE阻害剤、Ca-チャネルブロッカー、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、利尿薬、血小板凝集阻害剤などの降圧剤、又はアルカロイド、アルキル化剤、抗生物質、又は代謝拮抗剤などの抗腫瘍薬、又は抗肥満薬から選択される組成物である。さらに好ましい組成物は、追加の治療薬が、ヒスタミン拮抗薬、ブラジキニン拮抗薬、セロトニン拮抗薬、ロイコトリエン、抗喘息薬、NSAID、解熱剤、コルチコステロイド、抗生物質、鎮痛剤、尿酸排泄薬、化学療法剤、抗痛風薬、気管支拡張剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、ステロイド、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、ロイコトリエン拮抗薬、細胞増殖抑制剤、抗腫瘍薬、mTor阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイトカインに対する抗体又はそのフラグメント、及びサイトカインレセプターの可溶性部分(フラグメント)から選択される組成物である。
【0039】
より特に好ましいものは、ヒトNPHインスリン、ヒトレンテ又はウルトラレンテインスリン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリンデテミル又はインスリングラルギン、メトホルミン、フェンホルミン、アカルボース、ミグリトール、ボグリボース、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン(rosiglizatone)、リボグリタゾン、アレグリタザール(aleglitazar)、アログリプチン、サクサグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、エキセナチド、リラグルチド、アルビグルチド、プラムリンチド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、トラザミド、トルブタミド、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、エスモロール、セリプロロール、タリノロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロパノロール(propanolol)、ブプロパノロール(bupropanolol)、ペンブトロール、メピンドロール、ソタロール、セルテオロール(certeolol)、ナドロール、カルベジロール、ニフェジピン、ニトレンジピン、アムロジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ジルチアゼム、エナラプリル、ベラパミル、ガロパミル、キナプリル、カプトプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、ラミプリル、ペリドプリル(peridopril)、ホシノプリル、トランドラプリル、イルベサタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン、オルメサルタン、ヒドロクロロチアジド、ピレタニド、クロロタリドン、メフルシド、フロセミド、ベンドロフルメチアジド、トリアムテレン、デヒドララジン(dehydralazine)、アセチルサリチル酸、チロフィバン-HCl、ジピラミドール(dipyramidol)、トリクロピジン(triclopidin)、イロプロスト-トロメタノール(trometanol)、エプチフィバチド、クロピドグレル、ピラテカム(piratecam)、アブシキシマブ、トラピジル、シムバスタチン、ベザフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、エトフィリン、クロフィブラート、エトフィブラート、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、コレスチラミド(colestyramide)、コレスチポール-HCl、キサンチノールニコチネート、イノシトールニコチネート、アシピモックス、ネビボロール、グリセロールニトレート、イソソルビドモノニトレート、イソソルビドジニトレート、ペンタエリトリチルテトラニトレート、インダパミド、シラゼプリル(cilazepril)、ウラピジル、エプロサルタン、ニルバジピン、メトプロロール、ドキサゾシン、モルシドルミン(molsidormin)、モキサベリン、アセブトロール、プラゾシン、トラピジル、クロニジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンなどのビンカアルカロイド及びアナログ、ポドフィロトキシン誘導体、エトポシド、テニポシド、アルキル化剤、ニトロソ尿素、N-ロストアナログ(N-lost analogues)、シクロプロンファミド(cycloplonphamid)、エスタムスチン(estamustin)、メルファラン、イホスファミド、ミトキサントロン、イダルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、ダプトマイシン、ドセタキセル、パクリタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、BBR3464、サトラプラチン、ブスルファン、トレオスルファン、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、クロラムブシル、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、ウラムスチン、チオテパ、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン、エトポシド、テニポシド、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ゲムツズマブ、アミノレブリン酸、メチルアミノレブリネート、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィン、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、レチノイド(アリトレチノイン、トレチノイン)、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ(ペグアスパルガーゼ)、ベキサロテン、ボルテゾミブ、デニロイキンジフチトクス、エストラムスチン、イクサベピロン、マソプロコール、ミトタン、テストラクトン、チピファルニブ、アベチムス、デフォロリムス、エベロリムス、グスペリムス、ピメクロリムス、シロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、シタラビン、フルオロウラシル、フルオロアラビン(fluoroarabin)、ゲムシタビン、チオグアニン、カペシタビンなどの代謝拮抗薬、アドリアマイシン/ダウノルビシン、シトシンアラビノシド/シタラビンなどの配合剤、4-HC、又は他のホスファミドなどの化合物である。
【0040】
他の好ましい化合物はクレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリネート、プロメタジン、セチリジン、アステミゾール、レボカバスチン、ロラチジン(loratidine)、テルフェナジン、アセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム(sodoum salicylate)、サルサレート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、メサラジン、スルファサラジン、オサラジン(osalazine)、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ケトロラク、ベタメタゾン(bethamethason)、ブデソニド、クロモグリシニン酸(chromoglycinic acid)、ジメチコン、シメチコン(simeticone)、ドンペリドン、メトクロプラミド、アセメタシン、オキサセプロール、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルブリプロフェン(flubriprofen)、フェノプロフェン、オキサプロジン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フェニルブタゾン(pheylbutazone)、オキシフェンブタゾン、アザプロパゾン、ニメスリド、メタミゾール、レフルナミド(leflunamide)、エフォリコキシブ(eforicoxib)、ロナゾラク、ミソプロストール、パラセタモール、アセクロフェナク、バルデコキシブ、パレコキシブ、セレコキシブ、プロピフェナゾン、コデイン、オキサポジン(oxapozin)、ダプソン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デクスイブプロフェン、デキサメタゾン、フルニソリド、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン、テオフィリン、カフェイン、ナプロキセン、硫酸グルコサミン、エタネルセプト、ケトプロフェン、アダリムマブ、ヒアルロン酸、インドメタシン(indometacine)、プログルメタシンジマレアート、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、インフリキシマブ、エトフェナメート、オーラノフィン、金、[224Ra]塩化ラジウム、チアプロフェン酸、デクスケトプロフェン(トロメタモール)、クロプレドノール、金チオリンゴ酸ナトリウム、金チオグルコース、コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン、ベンズブロマロン、カルバマゼピン、ロルノキシカム、フルオルコルトロン(fluorcortolon)、ジクロフェナク、エファリズマブ、イダルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、ダプトマイシン、シタラビン、フルオロウラシル、フルオロアラビン(fluoroarabin)、ゲムシタビン、チオグアニン、カペシタビン、アドリアマイシン(adriamydin)/ダウノルビシン、シトシンアラビノシド/シタラビン、4-HC、又は他のホスファミド、ペニシラミン、ヒアルロン酸調製物、アルテパロン(arteparon)、グルコサミン、MTX、TNF-レセプター可溶性フラグメント(エタネルセプト(エンブレル(Enbrel))など)及び抗TNF抗体(インフリキシマブ(レミケード(Remicade))、ナタリズマブ(チサブリ(Tysabri))及びアダリムマブ(ヒュミラ(Humira))など)などの化合物である。
【0041】
本発明の化合物及び追加の治療薬は、1つの単回剤形に製剤化することができ、又は別個の剤形で存在することができ、及び併用(すなわち同時に)又は逐次のいずれかで投与されうることが、当業者により理解される。
本発明の医薬組成物は、意図された投与方法に適した任意の形態にすることができる。
本発明の化合物は、経口的、非経口的に、例えば、気管支肺、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、経皮、経粘膜、硬膜下、イオン導入により局所的に(locally or topically)、舌下、吸入噴霧、エアロゾルにより、又は直腸などに、場合により従来の薬学的に許容可能な賦形剤を含む用量単位の製剤で投与することができる。
【0042】
本発明の医薬組成物の製剤において使用することができる賦形剤は、担体、ビヒクル、希釈剤、溶媒、例えばエタノール、イソプロパノールなどの一価アルコール及びグリコールなどの多価アルコール、及びダイズ油、ココナッツ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油などの食用油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートなどの油状エステル;結合剤、アジュバント、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、崩壊剤、流動促進剤、潤滑剤、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤、甘味料、着色料、香味料、コーティング剤、保存料、抗酸化剤、加工剤、薬物送達調節剤及び促進剤、例えばリン酸カルシウム、マグネシウム状態、タルク、単糖、二糖、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、イオン交換樹脂を含む。
他の適切な薬学的に許容可能な賦形剤は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences、15th Ed.、Mack Publishing Co.、New Jersey (1991)」に記載されている。
【0043】
経口投与のための剤形としては、錠剤、カプセル、トローチ剤、丸薬、ウェーハ、顆粒、経口液体、例えばシロップ、懸濁液、液剤、エマルション、製剤調製用粉末が挙げられる。
非経口投与の剤形としては、注射用の水溶性又は油性(olageous)の液剤又はエマルション、注射用予備充填シリンジ用の水性又は油性(olageous)の液剤、懸濁液又はエマルション、及び/又は製剤調製用粉末が挙げられる。
局所(local/topical)投与用の剤形は、吹入、エアロゾル、定量エアロゾル、経皮治療システム、薬用パッチ、直腸坐剤、及び/又は膣坐剤を含む。
単回剤形を製剤化するための賦形剤と組み合わせることができる本発明の化合物の量は、処置されるホスト及び特定の投与様式に応じて異なる。
本発明の医薬組成物は、例えば「Remington’s Pharmaceutical Sciences、15th Ed.、Mack Publishing Co.、New Jersey (1991)」に記載されるように、当業者に既知の方法で製造することができる。
【0044】
本発明のさらなる局面において、Mnk1若しくはMnk2(Mnk2a、Mnk2b)又はそのさらなる変異体のキナーゼ活性の活性を阻害するための、特に代謝性疾患、造血障害、癌並びにそれらの続発性合併症及び疾患の予防又は治療のための医薬組成物を製造するための、本発明のチエノピリミジン化合物の使用が提供される。ここで、糖質及び/又は脂質代謝の代謝性疾患の予防及び治療が好ましい。
Mnk1及び/又はMnk2(Mnk2a又はMnk2b)及び/又はそのさらなる変異体のキナーゼ活性の阻害によって影響される本発明の疾患として、代謝性疾患の調節に関係する疾患、例えば肥満、摂食障害、悪液質、糖尿病、代謝症候群、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、脂質異常症、変形性関節症、胆石及び/又は睡眠時無呼吸、並びに活性酸素化合物(ROS防御)に関係する疾患、例えば糖尿病、神経変性疾患及び癌が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、上記のとおり、肥満、糖尿病並びに糖質及び脂質代謝の他の代謝性疾患、特には糖尿病及び肥満の予防及び治療に特に有用である。
従って、本発明の好ましい態様において、代謝性疾患の予防又は治療のための医薬組成物を製造するための、チエノピリミジン化合物の使用が提供される。
本発明の更なる局面において、炎症性疾患のようなサイトカイン介在性疾患の治療又は予防のための医薬組成物を製造するための、本発明のチエノピリミジン化合物の使用が提供される。
【0045】
従って本発明の医薬組成物は、炎症性疾患、特には慢性又は急性の炎症、慢性炎症性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節炎、若年性関節リウマチ、痛風性関節炎;乾癬、乾癬性紅皮症、膿胞性乾癬、炎症性腸疾患、クローン病及び関連疾患、潰瘍性大腸炎、大腸炎、憩室炎、腎炎、尿道炎、卵管炎、卵巣炎、子宮内膜炎、脊椎炎、全身性エリテマトーデス及び関連疾患、多発性硬化症、喘息、髄膜炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎、静脈炎、血栓静脈炎、慢性閉塞性疾患(COPD)、炎症性肺疾患、アレルギー性鼻炎、心内膜炎、骨髄炎、リウマチ熱、リウマチ性心外膜炎、リウマチ性心内膜炎、リウマチ性心筋炎、リウマチ性僧帽弁疾患、リウマチ性大動脈弁疾患、前立腺炎、前立腺膀胱炎、脊椎関節症(spondoarthropathies)、強直性脊椎炎、滑膜炎、腱鞘炎(tenosynovotis)、筋炎、咽頭炎、リウマチ性多発筋痛、肩腱炎又は滑液包炎、痛風、偽痛風、血管炎、肉芽腫性甲状腺炎、リンパ球性甲状腺炎、浸潤性線維性甲状腺炎、急性甲状腺炎から選択される甲状腺の炎症性疾患;橋本甲状腺炎、川崎病、レイノー現象、シェーグレン症候群、神経炎症性疾患、敗血症、結膜炎(conjubctivitis)、角膜炎、虹彩毛様体炎、視神経炎、耳炎、リンパ節炎(lymphoadenitis)、鼻咽頭炎(nasopaharingitis)、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎(tensillitis)、喉頭炎、喉頭蓋炎、気管支炎、肺炎、口内炎、歯肉炎、食道炎、胃炎、腹膜炎、肝炎、胆石症、胆嚢炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー病、半月体形成性糸球体腎炎、膵炎、皮膚炎、子宮内膜炎、子宮筋層炎、子宮炎、子宮頸炎、子宮頸内膜炎、子宮頸外炎、子宮傍組織炎、結核、膣炎、外陰炎、珪肺、サルコイドーシス、塵肺、炎症性多発性関節症、乾癬性関節炎(psoriatric arthropathies)、腸線維症、気管支拡張症及び腸疾患性関節症の予防又は治療に有用である。
【0046】
既に上記に述べたように、本発明の組成物は特に、慢性又は急性の炎症、慢性炎症性関節症、関節リウマチ、乾癬、COPD、炎症性腸疾患、敗血性ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症及び喘息から選択される治療又は予防に有用である。
従って、本発明のより好ましい態様において、慢性又は急性の炎症、慢性炎症性関節症、関節リウマチ、乾癬、COPD、炎症性腸疾患、敗血症ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症及び喘息から選択される炎症性疾患の予防又は治療のための医薬組成物を製造するための、チエノピリミジン化合物の使用が提供される。
本発明の更なる局面では、癌、ウイルス性疾患又は神経変性疾患の治療又は予防のための医薬組成物の製造のための、本発明のチエノピリミジン化合物の使用が提供される。
【0047】
本発明の目的のために、治療上有効な用量は一般的に、1回又は複数回投与されうる、約1〜2000mg/日、好ましくは約10〜約1000mg/日、及び最も好ましくは約10〜約500mg/日である。
しかしながら、任意の特定患者のための本発明の化合物の特定の用量レベルは、年齢、性別、体重、一般的健康状態、食生活、処置される患者の個人応答、投与時間、処置される疾患の重症度、適用される特定の化合物の活性、剤形、適用様式及び併用薬などの様々な要因に依存すると理解される。所定の状態に治療上有効な量は、日常の実験により容易に決定され、通常の臨床医又は医師の技術及び判断の範囲内である。
【実施例】
【0048】
キナーゼ蛍光偏光アッセイ
アッセイの原理:Mnk1、Mnk2a及び他のキナーゼに対する化合物の阻害効力を、間接的(競合)蛍光偏光として当業者に公知の形式に基づくアッセイを用いて評価した。アッセイの検出システムは、リン特異的抗体に結合した小型フルオロフォア標識リン-ペプチド(リガンドと呼ぶ)を含む。キナーゼ反応により発生した生成物は、抗体結合のためのリガンドと競合する。結合したリガンドのより大きな分子体積に基づき(それが溶液中でより低い回転速度をもたらす)、その発光は、遊離リガンドからの発光よりも高度の偏光を有する。
【0049】
特異的均一系キナーゼアッセイの説明
実施例2a. Mnk1及びMnk2aのインビトロキナーゼアッセイ
酵素源として、ヒトMnk1及びヒトMnk2aを、E. coliでGST融合タンパク質として発現させ、グルタチオンアフィニティークロマトグラフィーにより>80%均一になるまで精製し、予備活性化ERK2を用いてインビトロで活性化させた。簡潔には、それぞれのフォーワード/リバースプライマー対
配列番号:1 5’TTTAGGATCCGTATCTTCTCAAAAGTTGG /
配列番号:2 5’ CTGGGTCGACTCAGAGTGCTGTGGGCGG 及び
配列番号:3 5’ACAGGGATCCGTGCAGAAGAAACCAGCC /
配列番号:4 5’GATGGTCGACTCAGGCGTGGTCTCCCACC
(下線部の制限部位を利用)を使用して、cDNAからヒトMnk1及びMnk2aのオープン・リーディング・フレームを増幅させ、ベクターpGEX-4T1(Amersham,Sweden、cat. no. 27-4580-01)のBamHI及びSalIの部位にクローニングした。これらの構築物は、N-末端グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ(GST-Mnk1又はGST-Mnk2aと呼ぶ)を有する融合タンパク質として原核生物にMnk1又はMnk2aを発現させる。以下の発現及び精製の手順は、GST-Mnk1及びGST-Mnk2a(2つのアイソフォーム間を区別しない場合、一般にGST-Mnkと呼ぶ)と同一である。GST-Mnkの発現は、E. coli BL21(Merck Biosciences,Germany、cat. no. 69449)で行った。100μg/mlのアンピリシン(Sigma,Germany、cat. no. A9518)を補充したLB-Bouillon(Merck,Germany、cat. no. 1.10285)にて37℃で、細胞を培養した。培養が0.8のA600に対応する密度に到達したときに、等体積の氷冷LB/アンピリシンを加え、培養を25℃にし、1mMのイソプロピルチオガラクトシド(IPTG、Roth,Germany、cat. no. 2316.4)で4時間誘導した。遠心分離により回収した細胞を、細胞ペレット湿重量1グラムあたり10mlの溶解緩衝液(50mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(Tris/HCl、Sigma,Germany、cat. no. T5941)pH7.5、300mMの塩化ナトリウム(NaCl、Sigma,Germany、cat. no. S7653)、5%(w/v)のグリセロール(Sigma,Germany、cat. no. G5516)、3mMのDTTジチオスレイトール(DTT、Sigma,Germany、cat. no. D9779))に再懸濁した。超音波装置を用いた細胞破壊及び38000gで45分間4℃での遠心分離によるその後の透明化により、溶解液を調製した。
【0050】
溶解緩衝液で平衡化したGSTPrep FF 16/10カラム(Amersham,Sweden、cat. no. 17-5234-01)に溶解液を適用した。未結合の物質を、3カラム容積(CV)の溶解緩衝液により除去した。溶出は、2CVの溶出緩衝液(50mMのTris/HCl pH7.5、300mMのNaCl、5%(w/v)のグリセロール、20mMのグルタチオン(Sigma,Germany、cat. no. G4251))を用いた。ピーク画分をプールし、PD10脱塩カラム(Amersham,Sweden、cat. no. 17-0851-01)でのゲル濾過により、タンパク質を保存用緩衝液(50mMのTris/HCl pH7.5、200mMのNaCl、0.1mMのエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA、Aldrich,Germany、cat. no. 23、453-2)、1mMのDTT、10%(w/v)のグリセロール、0.5Mのスクロース(Sigma,Germany、cat. no. S0389))に移した。一定分量を液体窒素中で急速冷凍し、-80℃で保存した。
【0051】
Mnk1及びMnk2aの活性化は、2.5μM濃度の精製GST-Mnk1又はGST-Mnk2aのいずれかにて、20mMのN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(HEPES、Fluka,Germany、cat. no 54459)/水酸化カリウム(KOH、Roth,Germany、cat. no 6751.1)pH7.4、10mMの塩化マグネシウム(MgCl2、Sigma,Germany、cat. no. M2670)、0.25mMのDTT、0.05%(w/v)のポリオキシエチレン20ステアリルエーテル(Brij 78、Sigma,Germany、cat. no. P4019)(HMDB緩衝液)を含む緩衝液中の150nMの予備活性化NHis-ERK2(調製はERK2アッセイ参照)及び50μMのアデノシントリフォスフェート(ATP、Sigma、cat. no. A2699)と共に30℃で45分間インキュベーションすることにより行った。インキュベーションの後、調製液を単回使用の試料に等分し、液体窒素中で急速冷凍して-80℃で保存し、下記に詳述するMnk1又はMnk2aキナーゼアッセイに利用した。Mnk活性アッセイを妨害しないように、活性化キナーゼの存在を試験した。
【0052】
基質:真核生物翻訳開始因子4E(eIF4E)のセリン209周辺のアミノ酸配列から得られた、配列
配列番号:5 TATKSGSTTKNR、
を有するカルボキシ末端アミド化12merペプチドを合成し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Thermo、Germany)により>95%まで精製した。Mnkキナーゼによりリン酸化されたセリン残基に下線を付す。
リガンド:アミド化カルボキシ末端を含み、アミノ末端で下記に示されるオキサジン由来のフルオロフォアにコンジュゲートされているペプチドTATKSG-pS-TTKNRを合成し、リガンドとして使用した。
【0053】
【化8】

【0054】
抗体:SPF New Zealand White Rabbitsを、標準プロトコルに従って、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と結合したペプチドNH2-CTATKSG-pS-TTKNR-CONH2で免疫処置した。当技術において公知の手法により、免疫グロブリンG(IgG)画分を、強化した動物の血清から精製した。簡単に言うと、血清をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供した。溶出した物質を50%の冷飽和硫酸アンモニウムで析出させ、ペレットを溶解させ、脱塩した。結果として得られた物質は、さらなる抗原特異的精製をせずに下記のアッセイにおける使用に適していた。
【0055】
アッセイの準備:Mnk1及びMnk2aのキナーゼ活性の阻害を、それぞれ予備活性化したGST-Mnk1又はGST-Mnk2aを使用して同じアッセイ系で評価した。キナーゼ反応物は、30μMの基質ペプチド、20μMのATP、60nMのリガンド及び25nMの予備活性化Mnk1又は2.5nMの予備活性化Mnk2aのいずれか1つを含む。反応緩衝液の条件は、16mMのHEPES/KOH pH7.4、8mMのMgCl2、0.4mMのDTT、0.08%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA、Sigma,Germany、cat. no. A3059)、0.008%(w/v)のPluronic F127(Sigma,Germany、cat. no. P2443)、3%(v/v)のDMSO(Applichem,Germany、cat. no. A3006)である。キナーゼ反応は、30℃にて40分間で行う。キナーゼ反応は、20mMのHEPES/KOH pH7.4、50mMのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA、Sigma,Germany、cat. no. E5134)、0.5mMのDTT、0.05%(w/v)のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20、Sigma,Germany、cat. no. P7949)中の1μM抗体の0.67反応体積の添加により終了させる。室温での1時間の平衡時間の後、試料を蛍光偏光測定に供する。DLRP650ダイクロイックミラー(Omega Opticals,Brattleboro,VT,USA、cat. no. XF2035)、励起側に630AF50バンドパスフィルター(Omega Opticals,Brattleboro,VT,USA、cat. no. XF1069)、及び発光側に695AF55バンドパスフィルター(Omega Opticals,Brattleboro,VT,USA、cat. no. XF3076)を備えるAnalyst ADマルチモードリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)で、蛍光偏光の読み取り値を発生させた。
【0056】
Mnkタンパク質の活性は、また、他のインビトロキナーゼアッセイ形式によりアッセイすることができる。例えば、適切なキナーゼアッセイは、Knaufら、Mol Cell Biol. 2001 Aug;21(16):5500-11又はScheperら、Mol Cell Biol. 2001 Feb;21(3):743-54における文献に記載されている。一般に、Mnkキナーゼアッセイは、下記にさらに記載するような改変を含むか又は含まないことがある、タンパク質又はペプチドなどのMnk基質又はその他が、インビトロで酵素活性を有するMnkタンパク質によりリン酸化されるように行うことができる。次いで、候補薬剤の活性は、そのMnkタンパク質の酵素活性を減少させる能力により決定することができる。キナーゼ活性はリン酸化による基質の化学、物理又は免疫学的特性の変化により検出することができる。
【0057】
一例では、キナーゼ基質は、基質のリン酸化状態の分析に適したシグナルを発生させるためにその結合又は検出を容易にするように設計されたか又は内在する特徴を有しうる。これらの特徴は、限定されないが、ビオチン分子又はその誘導体、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ部分、6個以上の連続ヒスチジン残基の部分、エピトープのタグとして機能するアミノ酸配列又はハプテン、蛍光色素、酵素又は酵素フラグメントでありうる。キナーゼ基質は、これら又は立体障害を避けるために分子スペーサーアームを有する他の特徴に結びつきうる。
別の例においては、キナーゼ基質は、フルオロフォアでラベルすることができる。溶液中のラベルされた基質への試薬の結合の後に、文献に記載されるような蛍光偏光の技法を行う。この実施例の変形においては、間接的蛍光偏光として当業者に公知の技法によりキナーゼ活性を検出するために、蛍光トレーサー分子は、分析物の基質と競合しうる。
さらに別の例においては、キナーゼ反応で放射性γ-ATPを使用し、試験基質の放射性リン酸の取り込みにおける試験薬剤の影響を、対照条件と比較して決定する。
【0058】
本発明の化合物が、Mnk1及び/又はMnk2キナーゼ活性の阻害について実施例2aに記載するような、インビトロでの生物学的スクリーニングアッセイにおいて、低いIC50値を示すことが示された。以下の表は、例示的な化合物についての試験結果を含む。
MNK2阻害:
実施例8:11nM
実施例10:8nM
実施例13:10nM
実施例15:9nM
実施例16.2:16nM
実施例18:58nM
(これらの実施例の構造は、実施例の項に示される。)
【0059】
(実施例)
中間体I
2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロフェノール
I.1 5-メチル-チエノ[2,3-d]-ピリミジン-4-オール
【化9】

2-アミノ-チオフェン-3-カルボン酸エチルエステル(25g)をホルムアミド(200ml)に溶解して180℃で6時間加熱し、150℃で一晩撹拌した。次にそれを室温まで冷却した。析出物を濾過してEt2Oで洗浄し、次に熱酢酸エチル及びメタノールに溶解した。木炭を加えて数分間撹拌し、濾過して真空下で濃縮した。残留物をジクロロメタン:メタノール 50:1で撹拌し、次にEt2Oで洗浄して濾過及び乾燥した。
収量:10.40g
ESI質量スペクトル:m/z=167(M+H)+
【0060】
I.2 6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4(3H)-オン
【化10】

5-メチルチエノ[2,3-d]-ピリミジン-4-オール(500mg)及びN-クロロスクシンイミド(480mg)を氷酢酸(20ml)に溶解し、95℃で1.5時間した。次に反応混合物を真空下で濃縮した。残留物を水で撹拌し、濾過して再び水及びメタノールで洗浄し乾燥した。
収量:530mg
ESI質量スペクトル:m/z=201(M+H)+
【0061】
I.3 4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン
【化11】

6-クロロ-5-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン-4(3H)-オン(520mg)を20mlの塩化チオニルに溶解し、0.2mlのDMFを加え反応混合物を還流下で2時間加熱した。次に混合物を濃縮し、残留物をジクロロメタンに溶解し、水で数分間撹拌した。有機層を分離して真空下で濃縮し、粗生成物を得て次の段階に直接使用した。
収量:560mg
【0062】
I.4 2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロフェノール
【化12】

4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(560mg)及び2-アミノ-5-フルオロフェノール(325mg)を20mlのジオキサンに溶解し、90mgのp-トルエンスルホン酸を加えた。反応混合物をマイクロ波照射下で140℃にて15分間加熱し、次にそれを室温まで冷却して、得られた析出物を濾過し、ジオキサン、メタノール及びEt2Oで洗浄して表題の化合物を得た。
収量:460mg
ESI質量スペクトル:m/z=310(M+H)+
【0063】
中間体II
trans-3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-シクロヘキサノール
II.1 tert-ブチル-[trans-3-(5-フルオロ-2-ニトロ-フェノキシ)-シクロヘキシルオキシ]-ジメチル-シラン
【化13】

ジイソプロピル-アゾジカルボキシラート(30.2ml)をTHF(500ml)中のトリフェニルホスフィン(39.9g)に滴下して加え、室温で30分間撹拌した。5-フルオロ-2-ニトロフェノールを少量ずつ加え、混合物をさらに30分間撹拌した。3-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-シクロヘキサノール(30.0g)を加えた後、それを一晩撹拌した。さらにジイソプロピル-アゾジカルボキシラート及びトリフェニルホスフィンを加え、2時間後反応混合物を水に注ぎジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して真空下で濃縮した。粗生成物を石油エーテルで洗浄して濾過した。濾液を濃縮しクロマトグラフィー(シリカゲル、シクロヘキサン:ジクロロメタン 90/10-75/25)により精製してジアステレオマーを分離し、ラセミ混合物としての表題の化合物を得た。
収量:11.4g
ESI質量スペクトル:m/z=370(M+H)+
【0064】
II.2 2-[trans-3-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-シクロヘキシルオキシ]-4-フルオロアニリン
【化14】

tert-ブチル-[trans-3-(5-フルオロ-2-ニトロ-フェノキシ)-シクロヘキシルオキシ]-ジメチル-シラン(9.2g)及びMeOH(200ml)中のラネーニッケル(0.9g)の混合物を、水素雰囲気下(3.0bar)で20時間撹拌した。触媒を濾過により除去して混合物を真空下で濃縮し、ラセミ混合物としての表題の化合物を得た。
収量:8.1g
ESI質量スペクトル:m/z=340(M+H)+
【0065】
II.3 trans-3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-シクロヘキサノール
【化15】

2-[trans-3-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-シクロヘキシルオキシ]-4-フルオロアニリン(250mg)を、MeOH(10ml)中の1.25MのHClで室温にて30分間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮した;残留物を1Mの水酸化ナトリウム溶液で塩基性化して酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥して真空下で濃縮し、ラセミ混合物としての表題の化合物を得た。
収量:140mg
ESI質量スペクトル:m/z=226(M+H)+
【0066】
中間体III
2-(1,3-ジフルオロプロパン-2-イルオキシ)-4-フルオロアニリン
III.1 2-(1,3-ジフルオロプロパン-2-イルオキシ)-4-フルオロ-1-ニトロベンゼン
【化16】

1,3-ジフルオロ-プロパン-2-オール(840mg)を20mlのTHF中に溶解し0℃まで冷却した。この温度にてLiHMDS(1M;THF中8.7ml溶液)を滴下して加え、反応混合物を20分間撹拌した。次にTHF(5ml)中の2,4-ジフルオロニトロベンゼン(959μl)を加え、室温で一晩撹拌し続けた。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液でクエンチし、ジクロロメタン(DCM)で抽出した。有機層を真空下で濃縮し、残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc 1/1)により精製した。
収量:1.30g
ESI質量スペクトル:m/z=235(M+H)+
【0067】
III.2 2-(1,3-ジフルオロプロパン-2-イルオキシ)-4-フルオロアニリン
【化17】

2-(1,3-ジフルオロプロパン-2-イルオキシ)-4-フルオロ-1-ニトロベンゼン(5.0g)、メタノール(500ml)及びラネーニッケル(1.0g)の混合物を、室温にて水素雰囲気下(5.0bar)で6時間撹拌した。触媒を濾過により除去して混合物を真空下で濃縮し表題の化合物を得た。
収量:4.42g
ESI質量スペクトル:m/z=206(M+H)+
【0068】
中間体IV
(R)-3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
IV.1 (R)-3-(5-フルオロ-2-ニトロ-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化18】

THF(60ml)中の(R)-3-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(4.7g)を0℃まで冷却した。この温度にてLiHMDS(1M;THF中28.0ml)を滴下して加え、反応混合物を45分間撹拌した。次にTHF(10ml)中の2,4-ジフルオロニトロ-ベンゼン(4.1g)を加え、16時間撹拌し続けた。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液でクエンチし、真空下で濃縮した。水層を10%KHSO4水溶液でpH3に調整し、DCMで抽出した。有機層を疎水性フリットに通し、濃縮してクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc 4/1)により精製した。
収量:6.7g
【0069】
IV.2 (R)-3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化19】

(R)-3-(5-フルオロ-2-ニトロ-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(6.7g)、ギ酸アンモニウム(6.2g)及びMeOH(80ml)中パラジウム炭素(1.0g)の混合物を室温にて90分間撹拌した。触媒を濾過により除去して混合物を真空下で濃縮した。粗混合物をDCMに溶解し水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥して真空下で濃縮し表題の化合物を得た。
収量:6.1g
【0070】
中間体V
trans-4-フルオロ-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)-アニリン
V.1 4-フルオロ-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)-ニトロベンゼン
【化20】

THF(1000ml)中の1,4-シクロヘキサンジオール(100g)の溶液にNaH(鉱油中60%;38.5g)を加えた。混合物を1時間還流した。2,4-ジフルオロニトロベンゼン(48.0ml)を1時間の間滴下して加え、混合物をさらに2日間還流し、真空下で濃縮して水中に溶解しDCMで数回抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;DCM/MeOH 100:0→98:2)により精製し、褐色油としての異性体混合物を得た。
収率:49.2g
ESI質量スペクトル:m/z=273(M+NH4)+
【0071】
V.2 trans-4-フルオロ-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)-ニトロベンゼン
【化21】

V.1からのシス/トランス混合物をSFCクロマトグラフィーにより、異性体に分離した:カラム:Daicel OJH 250mm×4.6mm;
移動層:CO2/メタノール 85:15(0.2%ジエチルアミンを添加)
第1溶離:シス異性体;第2溶離:トランス異性体。
【0072】
V.3 trans-4-フルオロ-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)-アニリン
【化22】

メタノール(15ml)中のtrans-4-フルオロ-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)-ニトロベンゼン(2.0g)を、触媒(300mg)としてのパラジウム炭素(5%)を使用し50psi水素下で、室温にて2時間水素添加した。触媒を濾別し、溶媒を真空下で除去して表題の化合物を得た。
収量:2.0g
ESI質量スペクトル:m/z=226(M+H)+
【0073】
中間体VI
[2-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
VI.1 [2-(5-フルオロ-2-ニトロ-フェノキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化23】

トリフェニルホスフィン(26.3g)及びジ-tert-ブチル-アゾジカルボキシラート(23.2g)を冷却しながらTHF(70ml)中の2-ニトロ-5-フルオロフェノール(10.5g)及び(2-ヒドロキシ-プロピル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(14.8g)の混合物に加え、室温にて3日間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/DCM 1:1)により精製して所望の化合物を得た。
収量:4.2g
ESI質量スペクトル:m/z=315(M+H)+
【0074】
VI.2 [2-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化24】

[2-(5-フルオロ-2-ニトロ-フェノキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(3.1g)、MeOH(50ml)及び10%パラジウム炭素(300mg)の混合物を、水素雰囲気下(3bar)で室温にて2.5時間撹拌した。触媒を濾過により除去し、濾液を真空下で濃縮した。
収率:2.5g
ESI質量スペクトル:m/z=285(M+H)+
【0075】
中間体VII
4-アミノ-3-エトキシベンズアミド
VII.1 3-フルオロ-4-ニトロベンズアミド
【化25】

100mlのアセトン/水(80:20)中の3-フルオロ-4-ニトロベンゾニトリル(15.0g)及びK2CO3(25.0g)の撹拌溶液に過酸化尿素(17.0g)付加物を加えた。反応物を室温にて撹拌した。反応混合物にジクロロメタン(100ml)及び水(500ml)を加え、有機層を分離した。水層をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を鹹水で洗浄し、セライトを通して濾過し相分離器を通した。残留物を真空下で濃縮し、オレンジ色固形物を得た。粗生成物をEtOAc/ヘキサンから再結晶させて生成物を得た。
収量:2.94g
【0076】
VII.2 3-エトキシ-4-ニトロベンズアミド
【化26】

氷冷したTHF(8.0ml)及びエタノール(990μl)に0.64gのNaHを加えた。混合物を30分間撹拌し、THF(6.0ml)中3-フルオロ-4-ニトロベンズアミド溶液を懸濁液に加え、混合物を室温まで温めて一晩撹拌した。次に反応を水でクエンチし、溶媒を揮発させた。残留物をジクロロメタンに溶解し、水及び鹹水で洗浄して、真空下で濃縮した。固形物をEtOAcから再結晶させた。
収量:1.25g
【0077】
VII.3 4-アミノ-3-エトキシベンズアミド
【化27】

無水MeOH(20.0ml)中の3-エトキシ-4-ニトロベンズアミドの撹拌溶液にギ酸アンモニウム(2.22g)を加え、続いてパラジウム炭素(500mg)を加え、反応物を還流下で2時間加熱した。反応混合物をセライトに通して濾過した。濾液を濃縮して表題の化合物を得た。
収量:1.52g
ESI質量スペクトル:m/z=311(M+H)+
【0078】
中間体VIII
[3-(3-アミノ-ピリジン-2-イルオキシ)-ブチル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
VIII.1 [3-(3-ニトロ-ピリジン-2-イルオキシ)-ブチル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化28】

トルエン(100ml)中のKOH(7.07g)、炭酸カリウム(4.36g)及び(3-ヒドロキシ-ブチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(8.52g)の撹拌混合物に、2-クロロ-3-ニトロ-ピリジン(5.00g)を加え、続いてトリス(3,6-ジオキサヘプチル)アミン(1.03g)を加える。反応混合物を室温にて2時間撹拌し、真空下で濃縮した。粗生成物をジクロロメタン及び水の混合物に溶解した。有機層を分離し、乾燥及び濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/MeOH 30/1)により精製して表題の化合物を得た。
収量:1.20g
ESI質量スペクトル:m/z=312(M+H)+
【0079】
VIII.2 [3-(3-アミノ-ピリジン-2-イルオキシ)-ブチル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化29】

[3-(3-ニトロ-ピリジン-2-イルオキシ)-ブチル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(1.20g)、MeOH(30ml)及びラネーニッケル(150mg)の混合物を水素雰囲気下(3bar)で室温にて一晩撹拌した。触媒を濾過により除去し、濾液を真空下で濃縮した。
収量:1.1g
ESI質量スペクトル:m/z=282(M+H)+
【0080】
中間体IX
cis-4-メトキシ-シクロヘキサノール
【化30】

IX.1. 4-メトキシシクロヘキサノール(シス及びトランス異性体の混合物)
【化31】

エタノール(759ml)中4-メトキシフェノール(100g)を、Nishimuraの触媒(10.0g)を使用して50psi水素下で、室温にて4.5時間水素添加した。触媒を濾別し、溶媒を真空下で除去して95%純度の黄色液体としての所望の生成物を得た。
収量:114g
ESI質量スペクトル:m/z=131(M+H)+
【0081】
IX.2. cis-4-メトキシシクロヘキサノール
【化32】

ジエチルエーテル(1M)中の5gのアルミニウム三塩化物(37.5mmol)及び9.32mlのリチウムアルミニウム水素化物の混合物に5mlジエチルエーテル中の4.8gの4-メトキシ-シクロヘキサノール(36.8mmol、シス/トランス混合物)を加えた。反応混合物を室温にて20分間撹拌し、次に真空下にて濃縮した。ジエチルエーテルを加えて上澄み液を数回移した。ジエチルエーテルを残留物に加え、次に硫酸(10%)を両方の相が透明になるまで加えた。有機層を分離し、続いて水及び飽和重炭酸ナトリウム溶液で抽出した。有機層を乾燥した。
収量:1.33g(28%)
ESI質量スペクトル:m/z=131(M+H)+
【0082】
中間体X
3-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ピリジン-2-オール
【化33】

中間体I.4と同様に、3-アミノ-ピリジン-2-オール及び中間体I.3から調製した。残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/MeOH 30/1)により精製して表題の化合物を得た。
収量:0.35g(52%)
【0083】
中間体XI
4-(2-アミノ-5-カルバモイル-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化34】

XI.1. 4-(2-ニトロ-5-カルバモイル-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化35】

実施例VII.2と同様に、3-フルオロ-4-ニトロベンズアミド及び4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルから調製した。
収量:1.7g(61%)
ESI質量スペクトル:m/z=366(M+H)+
【0084】
XI.2. 4-(2-アミノ-5-カルバモイル-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化36】

実施例VII.3と同様に、4-(2-ニトロ-5-カルバモイル-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルから調製した。
収量:1.4g(89%)
【0085】
中間体XII
[4-trans-(3-アミノ-ピリジン-2-イルオキシ)-シクロヘキシル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化37】

XII.1. [4-trans-(3-ニトロ-ピリジン-2-イルオキシ)-シクロヘキシル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化38】

54ml(54mmol)のLiHMDS(1M THF中)を0℃にて70mlのTHF中の(4-ヒドロキシ-シクロヘキシル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル溶液に加え、15分間撹拌した。少量のTHF中の7g(49.2mmol)の2-フルオロ-3-ニトロ-ピリジンを加えた。冷却をはずし、反応混合物を1.5時間撹拌して室温にした。次に混合物を水に注いだ。飽和塩化アンモニウム溶液を加えた。混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を連続して水及び鹹水で抽出した。後に有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。
収量:16.6g(99.9%)
ESI質量スペクトル:m/z=338(M+H)+
【0086】
XII.2 [4-trans-(3-アミノ-ピリジン-2-イルオキシ)-シクロヘキシル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化39】

実施例II.2と同様に、[4-trans-(3-ニトロ-ピリジン-2-イルオキシ)-シクロヘキシル]-カルバミン酸tert-ブチルエステルから調製した。
収量:6.9g(97%)
ESI質量スペクトル:m/z=308(M+H)+
【0087】
中間体XIII
1-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-プロパン-2-オール
【化40】

XIII.1. 1-(2-ニトロ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-プロパン-2-オール
【化41】

III.1と同様に、LiHMDSの代わりに水酸化ナトリウム(60% 油中)を使用し、2,4-ジフルオロニトロベンゼン及び2-メチル-プロパン-1,2-ジオールから調製した。
収量:1.9g(93%)
ESI質量スペクトル:m/z=247(M+NH4)+
【0088】
XIII.2 1-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-プロパン-2-オール
【化42】

実施例VI.2と同様に、1-(2-ニトロ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-プロパン-2-オールから調製した。
収量:1.56g(94%)
ESI質量スペクトル:m/z=200(M+H)+
【0089】
中間体XV
3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-ブタン-2-オール
【化43】

XV.1. 3-(2-ニトロ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-ブタン-2-オール
【化44】

LiHMDSの代わりに水酸化ナトリウム(60% 油中)を使用し、III.1と同様に、2,4-ジフルオロニトロベンゼン及び2-メチル-ブタン-2,3-ジオールから調製した。
収量:1.7g(85%)
ESI質量スペクトル:m/z=261(M+NH4)+
Rt(HPLC):1.18分(方法A_6)
【0090】
XV.2. 3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-ブタン-2-オール
【化45】

実施例VI.2と同様に、3-(2-ニトロ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-ブタン-2-オールから調製した。
収量:1.45g(97%)
ESI質量スペクトル:m/z=214(M+H)+
Rt(HPLC):0.68分(方法A_6)
【0091】
実施例1
(trans-3-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-シクロヘキサノール
【化46】

ジオキサン(2ml)中の4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(80mg)、trans-3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-シクロヘキサノール(100mg)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(10mg)の混合物をマイクロ波照射下で140℃にて15分間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン及び1M HClで希釈した。有機層を1Mの水酸化ナトリウム溶液で洗浄し、真空下で濃縮した。残留物をMeOHで錬和し、濾過して表題の化合物を得た。
収量:46mg
ESI質量スペクトル:m/z=408(M+H)+
Rt(HPLC):2.19分(方法A_9)
【0092】
実施例2
(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[2-(trans-4-メチルアミノ-シクロヘキシルオキシ)-ピリジン-3-イル]-アミン
【化47】

ジオキサン(5ml)中の4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(150mg)、[4-(3-アミノ-ピリジン-2-イルオキシ)-シクロヘキシル]-メチル-カルバミン酸tert-ブチルエステル(265mg)及びp-トルエンスルホン酸(20mg)の混合物を100℃にて2日間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、DCM中25%TFAと室温にて2時間撹拌した。次に反応混合物を再度真空下で濃縮し、RP-クロマトグラフィー((H2O+2%TFA)/MeOH:グラジエント85/15から0/100)により精製した。画分を収集して真空下で濃縮し、残留物をDCM/MeOH及び1Mの水酸化ナトリウム溶液に溶解した。有機層を乾燥し、真空下で濃縮して表題の化合物を得た。
収量:120mg
ESI質量スペクトル:m/z=404(M+H)+
Rt(HPLC):2.20分(方法A_4)
【0093】
実施例3
N-{trans-4-[3-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ピリジン-2-イルオキシ]-シクロヘキシル}-N-メチル-メタンスルホンアミド
【化48】

トリエチルアミン(40μl)及び塩化メタンスルホニル(12μl)を、DCM(1ml)中(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[2-(trans-4-メチルアミノ-シクロヘキシルオキシ)-ピリジン-3-イル]-アミン(実施例2;50mg)に加え、室温にて2時間撹拌した。反応混合物を水で希釈しジクロロメタンを揮発させた。懸濁液を濾過し、得られた固体をMeOH及びジエチルエーテルで洗浄して表題の化合物を得た。
収量:53mg
ESI質量スペクトル:m/z=482(M+H)+
Rt(HPLC):3.65分(方法A_4)
【0094】
実施例4
(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-(2-フルオロ-1-フルオロメチル-エトキシ)-フェニル]-アミン
【化49】

ジオキサン(2ml)中の2-(1,3-ジフルオロプロパン-2-イルオキシ)-4-フルオロアニリン(85mg)、4,6-ジクロロ-5-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン(80mg)及びp-トルエンスルホン酸(10mg)から実施例1に従い調製した。
収量:60mg
ESI質量スペクトル:m/z=388(M+H)+
Rt(HPLC):2.27分(方法A_9)
【0095】
実施例5
(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-((R)-ピペリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-アミン塩酸塩
【化50】

ジオキサン(5ml)中の(R)-3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(300mg)、4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(160mg)及びp-トルエンスルホン酸(20mg)の混合物を100℃にて3日間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残留物をDCM中25%TFA中で室温にて2時間撹拌した。混合物を再度真空下で濃縮し、RP-クロマトグラフィー((H2O+2%TFA)/MeOH:グラジエント85/15から0/100)により精製した。画分を収集して真空下で濃縮し、残留物をメタノール及びメタノールHClに溶解し、真空下で濃縮してアセトンで錬和した。残留物を濾過してジエチルエーテルで洗浄し表題の生成物を得た。
収量:125mg
ESI質量スペクトル:m/z=393(M+H)+
Rt(HPLC):2.13分(方法A_4)
【0096】
実施例6
6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-((R)-1-メタンスルホニル-ピペリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-アミン
【化51】

DCM(1ml)中の(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-((R)-ピペリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-アミン塩酸塩(実施例5;50mg)の溶液にトリエチルアミン(40μl)、続いて塩化メタンスルホニル(11μl)を加えた。反応混合物を室温にて4時間撹拌し、DCM及び水でクエンチした。有機層を真空下で乾燥及び濃縮して表題の化合物を得た。
収量:25mg
ESI質量スペクトル:m/z=471(M+H)+
Rt(HPLC):3.45分(方法A_4)
【0097】
実施例7
4-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-trans-シクロヘキサノール
【化52】

ジオキサン(2ml)中のtrans-4-フルオロ-2-(4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)-アニリン(100mg)、4,6-ジクロロ-5-メチルチエノ[2,3-d]ピリミジン(80mg)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(10mg)から実施例1に従い調製した。
収量:72mg
ESI質量スペクトル:m/z=408(M+H)+
Rt(HPLC):3.47分(方法A_4)
【0098】
実施例8
[2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン
【化53】

ジオキサン(15ml)中の6-ブロモ-4-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(500mg)(文献:Robbaら Bulletin de la Societe Chimique de France;1975;592-597)、[2-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(590mg)及びDIPEA(1.0ml)の混合物を100℃にて3日間撹拌した。反応混合物を真空下にて濃縮し、残留物をDCM及び水の間に分配させた。次に水層をDCM/MeOH 9/1で抽出した。合わせた抽出液をNa2SO4で乾燥し、真空下で濃縮した。残留物をDCM中25%TFA中で室温にて1時間撹拌し、次に再度濃縮してRP-クロマトグラフィー((H2O+2%TFA)/MeOH:グラジエント85/15から0/100)により精製した。画分を収集し、真空下で濃縮して残留物をDCM及び1M水酸化ナトリウム溶液中で撹拌した。有機層を真空下で乾燥及び濃縮した。最後に残留物をジエチルエーテルで錬和して濾過し、表題の生成物を得た。
収量:48mg
ESI質量スペクトル:m/z=411(M+H)+
Rt(HPLC):2.17分(方法A_4)
【0099】
実施例9
N-{2-[2-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-アセトアミド
【化54】

塩化アセチル(6μl)をDCM(0.5ml)中の[2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン(実施例8、20mg)及びトリエチルアミン(8μl)の混合物に加え、室温にて一晩撹拌した。反応混合物を水で希釈し、DCMを揮発させた。懸濁液を濾過し、得られた残留物を水、MeOH及びジエチルエーテルで洗浄して表題の化合物を得た。
収量:18mg
ESI質量スペクトル:m/z=453(M+H)+
Rt(HPLC):3.15分(方法A_4)
【0100】
実施例10
N-{2-[2-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-メタンスルホンアミド
【化55】

DCM(0.5ml)中の[2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン(実施例8;20mg)、塩化メタンスルホニル(6μl)及びトリエチルアミン(8μl)から実施例9に従い調製した。
収量:19mg
ESI質量スペクトル:m/z=489(M+H)+
Rt(HPLC):3.22分(方法A_4)
【0101】
実施例11
(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)-フェニル]-アミン
【化56】

4-フルオロ-2-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)アニリン(225mg)をジオキサン(5ml)中の6-ブロモ-4-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(280mg)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(20mg)の混合物に加え、還流下で4時間、80℃で一晩及び100℃で2時間撹拌した。反応混合物を水で希釈して濾過し、残留物を水、ジオキサン及びジエチルエーテルで洗浄して表題の化合物を得た。
収量:340mg
ESI質量スペクトル:m/z=438(M+H)+
Rt(HPLC):3.70分(方法A_4)
【0102】
実施例12
{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-カルバミン酸tert-ブチルエステル
【化57】

4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(460mg)、[2-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(390mg)及びトリフェニルホスフィン(1.5g)の混合物に、ジ-tert-ブチル-アゾジカルボキシラート(1.0g)を加え、室温にて4時間撹拌した。反応混合物をセライトに通して濾過し、DCM及びTHFで洗浄した。濾液を真空下で濃縮して残留物をMeOHで錬和し、濾過及びMeOH及びジエチルエーテルで洗浄して表題の化合物を得た。
収量:470mg
ESI質量スペクトル:m/z=467(M+H)+
Rt(HPLC):2.39分(方法A_9)
【0103】
実施例13
[2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミントリフルオロアセタート
【化58】

{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-カルバミン酸tert-ブチルエステル(実施例12、350mg)を、DCM中25%TFA中で室温にて4時間撹拌した。反応混合物を濃縮して表題の化合物を得た。
収量:340mg
ESI質量スペクトル:m/z=367(M+H)+
Rt(HPLC):1.79分(方法A_9)
【0104】
実施例14
N-{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-アセトアミド
【化59】

塩化アセチル(16μl)を、DCM(1.5ml)中の[2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミントリフルオロアセタート(80mg)及びトリエチルアミン(58μl)の混合物に加え、室温にて一晩撹拌した。反応混合物をDCM及び水で希釈した。有機層を乾燥し、真空下で濃縮して残留物をジエチルエーテルで錬和し、濾過してMeOH及びジエチルエーテルで洗浄し、表題の化合物を得た。
収量:48mg
ESI質量スペクトル:m/z=409(M+H)+
Rt(HPLC):1.93分(方法A_9)
【0105】
実施例15
N-{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-メタンスルホンアミド
【化60】

DCM(1.5ml)中の[2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミントリフルオロアセタート(実施例13;80mg)、塩化メタンスルホニル(17μl)及びトリエチルアミン(58μl)から、実施例14に従い調製した。
収量:64mg
ESI質量スペクトル:m/z=445(M+H)+
Rt(HPLC):2.00分(方法A_9)
【0106】
実施例16
4-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-エトキシ-ベンズアミド
16.1 3-エトキシ-4-(5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ベンズアミド
【化61】

i-PrOH(20ml)中の4-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(1.2g)、4-アミノ-3-エトキシ-ベンズアミド(1.1g)及びp-トルエンスルホン酸一水和物の混合物を、100℃にて20時間撹拌した。混合物を濃縮し、残留物をジオキサン中で加熱して還流した。反応混合物をアンモニア及び水でクエンチし、濾過して残留物を水、ジエチルエーテル及びシクロへキサンで洗浄し、表題の化合物を得た。
収量:1.4g
【0107】
16.2 4-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-エトキシ-ベンズアミド
【化62】

酢酸(1.5ml)中の3-エトキシ-4-(5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ベンズアミド(100mg)及びN-クロロスクシンイミド(45mg)の混合物を、25℃で1時間、80℃でさらに1時間撹拌した。次に反応混合物を冷却して水で希釈し、濾過して残留物をジエチルエーテルで洗浄した。生成物をMeOHから再結晶させて、表題の化合物を得た。
収量:57mg
ESI質量スペクトル:m/z=363(M+H)+
1H NMR (400MHZ; d6DMSO; 20℃): δ 9.55 (s, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.13 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.60 (d, 2H), 7.42 (d, 1H), 4.08 (m, 2H), 2.54 (s, 3H), 1.10 (m, 3H)。
【0108】
実施例17
4-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-エトキシ-ベンズアミド
【化63】

N-ブロモスクシンイミド(178mg)、続いて2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(8mg)を、乾燥四塩化炭素(5ml)中の3-エトキシ-4-(5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ベンズアミド(実施例16.1、328mg)に還流下で加え、3時間撹拌した。反応混合物を濾過し、残留物をMeOHで洗浄してクロマトグラフィーにより精製した。
収量:15mg
ESI質量スペクトル:m/z=408(M+H)+
1H NMR (400MHZ; d6DMSO; 20℃): δ 8.80 (d, 1H), 8.65 (s, 2H), 7.97 (s, 1H), 7.61 (d, 2H), 7.33 (s, H), 4.25 (m, 2H), 2.79 (s, 3H), 1.50 (m, 3H)。
【0109】
実施例18
(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-(4-フルオロ-2-イソプロポキシ-フェニル)-アミン
【化64】

ジオキサン(6ml)中の6-ブロモ-4-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(456mg)、4-フルオロ-2-イソプロポキシ-フェニルアミン(293mg)及びp-トルエンスルホン酸(33mg)の混合物を、80℃にて3日間撹拌した。反応混合物をEtOAc及び10%K2CO3水溶液でクエンチし濾過した。残留物をさらにEtOAcで洗浄し、乾燥して表題の化合物を得た。
収量:288mg
ESI質量スペクトル:m/z=397(M+H)+
1H NMR (400MHZ; d6DMSO; 20℃): δ 8.47 (s, 2H), 8.34 (s, 1H), 7.17-7.03 (m, 1H), 6.90-6.78 (m, 1H), 4.88-4.76 (m, 1H), 2.74 (s, 3H), 1.35 (d, 6H)。
【0110】
実施例19
[2-(3-アミノ-1-メチル-プロポキシ)-ピリジン-3-イル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミントリフルオロ酢酸塩
【化65】

ジオキサン(5ml)中の[3-(3-アミノ-ピリジン-2-イルオキシ)-ブチル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル(180mg)、4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン(140mg)及びp-トルエンスルホン酸(12mg)の混合物を、100℃にて24時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/MeOH 30/1)により精製し、表題の化合物を得た。
収量:8mg
ESI質量スペクトル:m/z=364(M+H)+
Rt(HPLC):2.44分(方法A_10)
【0111】
実施例20
N-{3-[3-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ピリジン-2-イルオキシ]-ブチル}-メタンスルホンアミド
【化66】

塩化メタンスルホニル(15μl)を、DCM中の[2-(3-アミノ-1-メチル-プロポキシ)-ピリジン-3-イル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミントリフルオロ酢酸塩(90mg)及びDIPEA(70μl)の混合物中に加え、室温にて30分間撹拌した。反応混合物を濃縮し、クロマトグラフィー(シリカゲル、DCM/MeOH 30/1)により精製して表題の化合物を得た。
収量:23mg
ESI質量スペクトル:m/z=442(M+H)+
Rt(HPLC):2.00分(方法A_10)
【0112】
実施例21
(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[2-(trans-4-メトキシ-シクロヘキシルオキシ)-ピリジン-3-イル]-アミン
【化67】

THF中の80mg(0.27mmol)の3-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ピリジン-2-オール、50mg(0.38mmol)のcis-4-メトキシ-シクロヘキサノール及び270mgのトリフェニルホスフィン(ポリマー結合、0.81mmol)の混合物に、180mg(0.78mmol)のジイソブチルアゾジカルボキシラートを加えた。混合物を室温にて18時間撹拌した。混合物を次にセライトで濾過し、メタノール、DMF及びジクロロメタンで洗浄した。有機層を真空下にて濃縮した。精製はHPLC(方法P_1)により行った。
収量:18mg(16%)
ESI質量スペクトル:m/z=405(M+H)+
Rt(HPLC):2.51分(方法A_9)
【0113】
実施例22
(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[2-(trans-4-ヒドロキシ-シクロヘキシルオキシ)-ピリジン-3-イル]-アミン
【化68】

実施例21と同様に、3-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-ピリジン-2-オール及びcis-4-ヒドロキシ-シクロヘキサノールから調製した。
ESI質量スペクトル:m/z=391(M+H)+
Rt(HPLC):2.02分(方法A_9)
【0114】
実施例23
4-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)-ベンズアミド
【化69】

実施例I.4と同様に、4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン及び4-アミノ-3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)-ベンズアミドから調製した。
ESI質量スペクトル:m/z=419(M+H)+
Rt(HPLC):1.73分(方法A_9)
【0115】
実施例24
4-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-イソプロポキシ-ベンズアミド
【化70】

実施例I.4と同様に、4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン及び4-アミノ-3-イソプロポキシ-ベンズアミドから調製した。
収量:52mg(38%)
ESI質量スペクトル:m/z=377(M+H)+
Rt(HPLC):1.91分(方法A_9)
【0116】
実施例25
4-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-(ピペリジン-4-イルオキシ)-ベンズアミド
【化71】

実施例I.4と同様に4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン及び中間体XIから調製した。
収量:35mg(18%)
ESI質量スペクトル:m/z=418(M+H)+
【0117】
実施例26
(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-(4-メトキシ-シクロヘキシルオキシ)-フェニル]-アミン
【化72】

実施例21と同様に中間体I.4及び中間体IXから調製した。
収量:4mg(6%)
ESI質量スペクトル:m/z=422(M+H)+
Rt(HPLC):4.03分(方法A_4)
【0118】
実施例27
[2-(4-アミノ-シクロヘキシルオキシ)-ピリジン-3-イル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン
【化73】

5mlジオキサン中の100mg(0.45mmol)の4,6-ジクロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン、170mg(0.55mmol)の中間体XII及び15mgのp-トルエンスルホン酸の混合物を電子レンジ内で130℃にて15分間撹拌した。次に混合物を真空下にて濃縮した。塩化メチレン及び20%のトリフルオロ酢酸の混合物10mlを残留物に加え、室温にて1.5時間撹拌した。混合物を濃縮した。残留物を分取HPLC(方法P_2)により精製した。
収量:46mg(20%)
ESI質量スペクトル:m/z=390(M+H)+
Rt(HPLC):2.27分(方法A_5)
【0119】
実施例28
1-[2-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-2-メチル-プロパン-2-オール
【化74】

I.4と同様に、6-ブロモ-4-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン及び1-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-プロパン-2-オールから調製した。
収量:430mg(53%)
ESI質量スペクトル:m/z=427(M+H)+
Rt(HPLC):1.59分(方法A_6)
【0120】
実施例29
3-[2-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-2-メチル-ブタン-2-オール
【化75】

I.4と同様に、6-ブロモ-4-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン及び3-(2-アミノ-5-フルオロ-フェノキシ)-2-メチル-ブタン-2-オールから調製した。
収量:460mg(55%)
ESI質量スペクトル:m/z=440(M+H)+
Rt(HPLC):1.64分(方法A_6)
実施例において与えられたHPLCデータは、以下のようにして得た。
【0121】
方法A_9:
Waters ZQ 2000;Waters 1515ポンプ;Waters PDA 996検出器;Waters 2747インジェクター
DAD 200-420nm
移動相:
A:水と0.10%ギ酸
B:アセトニトリルと0.10%ギ酸

固定相:X-terra MS C18;4.6×30mm*2.5μm
【0122】
方法A_4
Waters ZQ 2000;Waters 1515ポンプ;Waters PDA 996検出器;Waters 2747インジェクター
DAD 200-420nm
移動相:
A:水と0.10%ギ酸
B:アセトニトリルと0.10%ギ酸

固定相:X-terra MS C18;4.6×30mm*2.5μm
【0123】
方法A_5
Waters ZQ2000;Waters 1515ポンプ、Waters PDA 996検出器、Waters 2747インジェクター
移動相:
A 水+0.1%ギ酸
B アセトニトリル+0.1%ギ酸
グラジエント:

固定相:X-terra(商標) MS C18 2.5μm 4.6mm×30mm
カラム温度 約25℃
【0124】
方法A_6
Agilent 1200、MS G6140A、バイナリポンプ、DAD 190-400nm
フラグメンター 70、ゲイン EMV 1.0、質量範囲100-1000

溶媒A:水+0.1%TFA
溶媒B:メタノール
温度:60℃
【0125】
方法P_1
分取カラム:xterraカラム(Waters technologies)、MS C18 xterra ODB 5μm 30×100mm、カラム温度25℃
移動相:
A:水/トリフルオロ酢酸 99.8/0.2
B:メタノール

【0126】
方法P_2
分取カラム:xterra(商標)カラム(Waters technologies) MS C18 xterra ODB(商標)5μm 30×100mm、カラム温度25℃
グラジエント:


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式の化合物、又はその塩。
【化1】

(I)、
(式中、Xは、CH又はNであり、
R1は、水素若しくはハロゲン原子、CN又はCONH2であり、
R2は、2位以降で1又は2個のOH、C1-4アルコキシ又はNH2により置換されていてもよい、又は任意の位置で1〜3個のFにより又はCO2H、CONH2、CONH(C1-3アルキル)、CON(C1-3アルキル)2、CONRR’、SO2NH2、SO2NH(C1-3アルキル)又はSO2N(C1-3アルキル)2基により置換されている、直鎖又は分岐のC1-6アルキル基、
(ここで残基R及びR’は、それらが結合しているN原子と一緒になって3-8員環を形成し、ここで1つのCH2基は、O、S、SO、SO2又はNにより置換されていてもよく、及び窒素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子は、OH、F、C1-3アルキル又はNH2により置換されていてもよい);
酸素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子上で1又は2個のOH、C1-4アルコキシ又はNH2により;又はF、CO2H、CONH2、CONH(C1-3アルキル)、CON(C1-3アルキル)2、SO2NH2、SO2NH(C1-3アルキル)、SO2N(C1-3アルキル)2、SO2(C1-3アルキル)、(CH2)mOR5;(CH2)mN(R5)2により置換されていてもよい、C3-8シクロアルキル基、
(ここでアルキル基及びシクロアルキル基の置換基として上記したNH2基は、独立にC1-3アルキル、-(CH2)m-OH、-(CH2)m-OCH3、-(CH2)m-CN、-(CH2)m-F、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい);
又は以下の化学式の任意の1つから選択される、1つ以上のR6により置換されていてもよいヘテロシクリル系:
【化2】



(ここでNH基の水素原子は、C1-3アルキル、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい)であり;
R3はC1-2アルキル基であり;
R4は、F、Cl、Br、I又はCNであり;
R5は、H及びC1-4アルキルから選択され;
R6は、O又はNに結合しているもの以外の任意の炭素原子上のOH、OR5及びN(R5)2;F;CO2H;CON(R5)2;SO2N(R5)2;SO2R5;(CH2)mOR5;(CH2)mN(R5)2から選択され;及び
mは、1、2又は3である。)
【請求項2】
Xが、CH又はNであり、
R1が、水素若しくはフッ素原子又はCONH2基であり、
R2が、2位以降でNH2により置換されていてもよい直鎖又は分岐C1-4アルキル基;又は任意の位置で1〜3個のFにより置換されている直鎖又は分岐C1-4アルキル基;又は任意の位置でCONH2、CONH(C1-3アルキル)、CON(C1-3アルキル)2又はCONRR’により置換されている、直鎖又は分岐C1-4アルキル基、
(ここで残基R及びR’が、それらが結合しているN原子と一緒になって3-8員環を形成し、ここで1つのCH2基が、O又はNにより置換されていてもよく、及び任意の炭素原子が、OH、F又はNH2により置換されていてもよい);
酸素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子上で1又は2個のOH、C1-4アルコキシ又はNH2により置換されていてもよい、C5-7シクロアルキル基、
(ここでアルキル基及びシクロアルキル基の置換基として上記したNH2基が、独立にC1-3アルキル、-(CH2)m-OH、-(CH2)m-OCH3、-(CH2)m-CN、-(CH2)m-F、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい);
又は以下の化学式の任意の1つから選択されるヘテロシクリル系:
【化3】



(ここでNH基の水素原子が、SO2(C1-3アルキル)又はCO2(C1-4アルキル)により置換されていてもよい)であり;
R3がC1-2アルキル基であり;
R4が、F、Cl、Br又はCNであり;及び
mが、1、2又は3である、請求項1の式Iの化合物又はその塩。
【請求項3】
XがCH又はNであり、
R1が、水素若しくはフッ素原子又はCONH2基であり、
R2が、2位以降でNH2により置換されていてもよい、又は任意の位置で1〜3個のFにより置換されている、直鎖又は分岐C1-4アルキル基;
酸素原子に結合しているもの以外の任意の炭素原子上でOH、C1-3アルコキシ又はNH2により置換されていてもよい、シクロヘキシル基、
(ここでアルキル基及びシクロアルキル基の置換基として上記したNH2基が、独立にC1-3アルキル、SO2(C1-3アルキル)、CO2(C1-4アルキル)又はCO(C1-3アルキル)により置換されていてもよい;
又は以下の化学式の任意の1つから選択されるヘテロシクリル系:
【化4】



(ここでNH基の水素原子が、SO2(C1-3アルキル)又はCO2(C1-4アルキル)により置換されていてもよい)であり;
R3がC1-2アルキル基であり、及び
R4が、F、Cl又はBrである、請求項2の式Iの化合物又はその塩。
【請求項4】
X並びにR1、R2及びR4が請求項1〜3に定義された通りであり、及び
R3がCH3である、請求項1〜3のいずれか1項の式Iの化合物、又はその塩。
【請求項5】
R2〜R4が請求項1〜3に定義された通りであり、
XがCHであり、及び
R1がF又はCONH2である、請求項1〜3のいずれか1項の式Iの化合物又はその塩。
【請求項6】
R2〜R4が請求項1〜3に定義された通りであり、
XがNであり、及び
R1がHである、請求項1〜3のいずれか1項の式Iの化合物又はその塩。
【請求項7】
X及びR1〜R3が請求項1〜3に定義された通りであり、及び
R4が、F、Cl又はBrである、請求項1〜3のいずれか1項の式Iの化合物又はその塩。
【請求項8】
X及びR1〜R3が請求項1〜3に定義された通りであり、及び
R4がCl又はBrである、請求項7の式Iの化合物又はその塩。
【請求項9】
a) (trans-3-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-シクロヘキサノール、
b) (6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[2-(trans-4-メチルアミノ-シクロヘキシルオキシ)-ピリジン-3-イル]-アミン、
c) (6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-(2-フルオロ-1-フルオロメチル-エトキシ)-フェニル]-アミン、
d) (6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-((R)-ピペリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-アミン、
e) 6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-((R)-1-メタンスルホニル-ピペリジン-3-イルオキシ)-フェニル]-アミン,
f) [2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン、
g) N-{2-[2-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-メタンスルホンアミド、
h) (6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-[4-フルオロ-2-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)-フェニル]-アミン、
i) [2-(2-アミノ-1-メチル-エトキシ)-4-フルオロ-フェニル]-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン、
j) N-{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-アセトアミド、
k) N-{2-[2-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-5-フルオロ-フェノキシ]-プロピル}-メタンスルホンアミド、
l) 4-(6-クロロ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-エトキシ-ベンズアミド、
m) 4-(6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-3-エトキシ-ベンズアミド及び
n) (6-ブロモ-5-メチル-チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-(4-フルオロ-2-イソプロポキシ-フェニル)-アミン
から選択される、請求項1の式(I)の化合物、又はその塩。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項の化合物又は請求項10の塩を含み、及び薬学的に許容される担体を含んでいてもよい医薬組成物。
【請求項12】
追加の治療薬をさらに含む請求項11の医薬組成物。
【請求項13】
追加の治療薬が、抗糖尿病薬、脂質低下薬、心血管治療薬、降圧剤、利尿薬、血小板凝集阻害剤、抗腫瘍薬又は抗肥満薬から選択される、請求項12の医薬組成物。
【請求項14】
Mnk1又はMnk2(Mnk2a、Mnk2b)又はその変異体のキナーゼ活性の活性阻害で使用するための請求項1〜9のいずれか1項で定義される化合物又は請求項10の塩。
【請求項15】
代謝性疾患、造血障害、神経変性疾患、腎障害、炎症性疾患、及び癌並びにそれらの続発性合併症及び疾患の予防又は治療において使用するための請求項1〜9のいずれか1項で定義される化合物又は請求項10の塩。
【請求項16】
糖質及び/又は脂質代謝の代謝性疾患並びにそれらの続発性合併症及び疾患の予防又は治療において使用するための請求項1〜9のいずれか1項の化合物又は請求項10の塩。
【請求項17】
糖尿病の予防又は治療において使用するための請求項1〜9のいずれか1項の化合物又は請求項10の塩。
【請求項18】
追加の治療薬との組み合わせにおいて患者へ併用又は逐次で投与するための請求項14〜17のいずれか1項の化合物。
【請求項19】
サイトカイン関連疾患の治療又は予防において使用するための請求項1〜9のいずれか1項で定義される化合物又は請求項10の塩。
【請求項20】
追加の治療薬との組み合わせにおいて患者へ併用又は逐次で投与するための請求項19の化合物。
【請求項21】
追加の治療薬が、ヒスタミン拮抗薬、ブラジキニン拮抗薬、セロトニン拮抗薬、ロイコトリエン、抗喘息薬、NSAID、解熱剤、コルチコステロイド、抗生物質、鎮痛剤、尿酸排泄薬、化学療法剤、抗痛風薬、気管支拡張剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、ステロイド、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、ロイコトリエン拮抗薬、細胞増殖抑制剤、抗腫瘍薬、mTor阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、サイトカインに対する抗体又はそのフラグメント、及びサイトカインレセプターの可溶性部分(フラグメント)から選択される、請求項20の化合物。

【公表番号】特表2013−520473(P2013−520473A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554348(P2012−554348)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052811
【国際公開番号】WO2011/104338
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】