説明

半導体のエッチングによって形成された作動部品を使用する被駆動部品を移動させる方法および装置

本発明は、被駆動部品(10)、被駆動部品(10)と噛合うようになっている駆動部品(250)、駆動部品(250)を移動させるための交番運動を生み出すのに適した作動部品(202)を備える装置に関するものであり、該装置は、駆動部品(250)および作動部品(202)は、半導体材料のブロックにエッチングを行うことによって形成されており、作動部品(202)によって生み出された運動の第一の交番(a)の最中に、駆動部品(250)が被駆動部品(10)を牽引するために被駆動部品(10)と噛合い、作動部品(202)によって生み出された反対方向での第二の交番(b)の最中に、駆動部品(250)が被駆動部品を滑動し、被駆動部品(10)が駆動部品(250)によるステッピング運動に従って動作するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)の分野に関するものである。
【0002】
これらの微小電気機械システムは、一般的にはシリコン製の、半導体材料製のブロックまたは小プレートにエッチングを行うことによって形成される。
【背景技術】
【0003】
(2004年9月10日付けの)仏国特許発明第2852111号明細書は、歯車、歯車と逐次的に噛合うのに適した駆動部品および、駆動部品が歯車の連続する歯と噛合うような形でヒステリンス運動に従って駆動部品を移動させるのに適した作動を備える時計装置について記述している。このような装置において作動部品は、二つの作動用静電モジュールを備えている。モジュールのうちの一方は、駆動部品を歯車に対して半径方向に移動させるのに適しており、もう一方のモジュールは、駆動部品を歯車に対して接線方向に移動させるのに適している。
【0004】
この装置は、作動用静電モジュールが、駆動部品のヒステリシス運動を起こす仕方で二相信号によって制御されるようにアドレス指定システムの使用を必要とする。駆動部品のヒステリンス運動は、歯車の回転を生み出す。
【特許文献1】仏国特許発明第2852111号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、駆動部品を移動させるためのより単純な装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的で、本発明は、被駆動部品、被駆動部品と噛合うようになっている駆動部品、駆動部品を移動させるための交番運動を生み出すのに適した作動部品を備える装置を提案するものであり、駆動部品および作動部品は、半導体材料のブロックにエッチングを行うことによって形成されており、
作動部品によって生み出された運動の第一の交番の最中に、駆動部品が被駆動部品を牽引するために被駆動部品と噛合い、
作動部品によって生み出された反対方向での第二の交番の最中に、駆動部品が被駆動部品を滑動し、
被駆動部品が駆動部品によるステッピング運動に従って移動させるように配置されられていることを特徴とする。
【0007】
かかる装置は、一つの作動部品しか必要とせず、たった一つの制御信号で作動することができる。
【0008】
したがって、装置のアドレス指定は単純化される。
【0009】
さらに、本発明は、一度のアドレス指定経路の給電しか必要とせず、かくして、二つのモジュールを有する装置と比べ、装置の消費するエネルギーを削減することを可能にする。
【0010】
本発明の装置は、さらに以下のような特徴を提示しうる。
駆動部品は、第一の交番の最中に被駆動部品を牽引するために被駆動部品と接触するようになっている駆動面と、第二の交番の最中に被駆動部品を滑動するようになっている案内面を有している。
駆動部品は、被駆動部品と駆動部品の噛合いを制限するための支持面を備えている。
被駆動部品は、歯付き部品である。
被駆動部品の歯は、非対称である。
被駆動部品の各々の歯は、被駆動面と案内面とを有しており、駆動部品は第一の交番の最中に被駆動部品を牽引するために該被駆動面に接触し、駆動部品が第二の交番の最中に該案内面を滑動する。
装置は、
第一の交番の最中に、駆動部品が被駆動部品の二つの歯の間に係合され、
第二の交番の最中に、駆動部品が二つの歯のうちの一方を乗り越え、被駆動部品の隣接する他の二つの歯の間に係合するよう、配置されている。
作動部品は、少なくとも一枚の可撓性の薄板を備えており、該薄板は、第一の交番の最中に駆動部品が第一の方向に移動させられ、それにより可撓性の薄板の変形をひき起こされ、そして第二の交番の最中に、駆動部品が可撓性の薄板の弾性復帰によって第一の方向とは反対の第二の方向に移動させられるように配置されている。
駆動部品は、可撓性の薄板に蓄積された残留弾性エネルギーの回復により二つの歯のうちの一方を乗り越える。
装置は、第二の交番の最中に被駆動部品を阻止することに適した逆転防止歯止を備えている。
逆転防止歯止は、割出部品を備えており、該割出部品は、
作動部品によって生み出された運動の第一の交番の最中に、被駆動部品を滑動し、
第二の交番の最中に、被駆動部品を阻止するために被駆動部品と噛合うのに適している。
歯止は、第一の交番の最中に被駆動部品を滑動するようになっている案内面と、第二の交番の最中に被駆動部品を阻止するために被駆動部品が接触するようになっている阻止面を有している。
被駆動部品は、一定のピッチを有する歯付き部品であり、駆動部品が被駆動部品で滑動する際に接触点において被駆動部品と接触するようになっている案内面を備えており、
そして休止状態においては、
<p−e+k×p、d>k×p
であり、式中
pは、被駆動部品のピッチであり、
eは、駆動部品の駆動面と案内面の接触点の間の距離であり、
は、駆動部品の案内面と歯止の阻止面の接触点の間の距離であり、
kは、正の整数である。
装置は、駆動部品を被駆動部品に接触した状態に維持するための弾性予応力手段を備えている。
【0011】
本発明はさらに、前述において定義した装置の作動方法を提案するものであり、装置は、被駆動部品、駆動部品および作動部品を備えており、駆動部品および作動部品は、半導体材料のブロックにエッチングを行うことによって形成されており、
駆動部品を移動させるために交番運動を生み出すよう、作動部品を制御する段階、
作動部品によって生み出された運動の第一の交番の最中に、駆動部品が被駆動部品を牽引するために被駆動部品と噛合う段階、
作動部品によって生み出された反対方向の第二の交番の最中に、駆動部品が被駆動部品を滑動する段階、
から成ることを特徴とし、それは、被駆動部品が駆動部品によるステッピング運動に従って移動させられるようにしてなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
その他の特徴および利点は、さらに、制限的な意味のなく純粋に例示を目的とするものでありかつ添付の図に照らして読むべきものである以下の記述から明らかになることだろう。
図1は、本発明の実施態様に従った装置を概略的に示した図である。
図2は、作動部品を概略的に示した図である。
図3は、装置の異なる作動段階の最中の駆動部品、逆転防止歯止および被駆動部品の相対的な位置を概略的に示した図である。
図4は、被駆動部品の歯の形状および駆動部品の形状を概略的に示した図である。
図5は、駆動部品および逆転防止歯止の配置を概略的に示した図である。
【0013】
図1において、装置は被駆動部品10、駆動装置20および割出装置50を備えている。
【0014】
駆動装置20および割出装置50は、半導体材料、例えばシリコン製の唯一のブロックにマイクロエッチングを行うことによって同時に形成される。被駆動部品10も同様に、同一ブロックにおいて形成されること、または、駆動装置20に対面して、追加そして配置されることが可能である。したがってブロックは、エッチングされた部品が上に配置されている基板を形成する。
【0015】
以下に続く本文において、「固定の」という表現は基板に嵌込まれたあらゆる部品を形容し、「可動な」という表現は、同様に基板に嵌込まれた弾性懸垂手段を用いることによって基板から数ミクロンの高さに維持されているあらゆる部品を形容する。
【0016】
被駆動部品10は、回転式に可動な歯車を備えている。
【0017】
「半径」という表現は、歯車に対して半径方向に沿って延びるあらゆる部品を形容し、「接線」という表現は、歯車に対して接線方向に沿って延びるあらゆる部品を形容するものであり、半径方向および接線方向は、駆動装置が歯車と噛合うことになる歯車の点として考慮されている。
【0018】
駆動装置20は、多くの場合、接線方向で交番運動を生み出すことのできる作動部品202、接線方向の可撓性の薄板212、そして歯車10と噛合うようになっている駆動部品250を備えている。駆動部品250は、接線方向の可撓性の薄板212を介して作動部品202に接続されている。駆動部品250は、歯車の連続する二つの歯の間に係合されるようになっている歯の形を有している。
【0019】
割出装置50は、接線方向の可撓性の薄板511と歯車10と噛合うようになっている割出部品550とを備えている。割出部品550は、接線方向の可撓性の薄板511を介して基板に接続されている。割出部品550は、歯車の連続する二つの歯の間に係合されるようになっている歯の形を有している。
【0020】
図2にみられるように、作動部品202は、櫛形構造を有する静電作動部品(「コームドライブ」という英語の呼称で公知)である。このタイプの構造は、櫛形対を備えている。
【0021】
作動モジュール202は、固定部分222および接線方向の薄板212が接続された可動部分232で構成されている。
【0022】
固定部分222は、接線方向の電極224を備えており、該電極から半径方向に沿って平行な固定櫛形構造226が延びている。各櫛は、主要薄板とこの主要薄板に連結され、そして該薄板に垂直に延びる平行な一連のフィンガーまたは繊毛体によって形成されている。
【0023】
可動部分232は、嵌込ブロック238、240によって基板に連結された二枚の可撓性の薄板233、235を含む可動フレーム234を備える。可撓性の薄板233、235は、基板に対するフレーム234の可動性を可能にする弾性懸垂装置を形成する。
【0024】
可動部分232は、可動フレーム234から多くの場合半径方向に延びている櫛形アセンブリ236を備えている。各櫛形は、主要薄板と主要薄板に連結され、そして該薄板に垂直に延びる平行な一連のフィンガーまたは繊毛体で形成されている。
【0025】
固定部分222の櫛形構造226と可動部分232の櫛形構造236は、互いに平行に配置され、そして交互に挿入されている。また、各可動櫛236は、フィンガーが交互に挿入され、固定櫛226と対面するように配置され、櫛形対を形成する。
【0026】
櫛形の挿入フィンガーは、平面コンデンサに類似しており、該コンデンサのうちの一つの電極端子は電極224に接続され、もう一つの電極端子が嵌込リンク238、240を介してアースに接続されている。
【0027】
電極224に電圧が印加された際に、この電圧は、作動部品202の固定部分222と可動部分232との間に電位差を作り出す。可動櫛236のフィンガーと固定櫛226のフィンガーによって形成されたコンデンサの電極端子の間に、電場が確立される。この電場は、可動櫛236を、フィンガーの方向で固定櫛226に引きつける傾向がある静電気力を生み出す。この静電気力は、接線方向でのフレーム234の移動、ひいては第一の方向(矢印a)において、歯車10に対して接線方向で、薄板212の作用によって駆動用歯250の並進運動をひき起こす。
【0028】
作動モジュール202は、同様に固定された機械的ストッパ241を備える。機械的ストッパ241は、作動部品202の可動部分232の変形ひいては駆動部品250のストロークを制限する。
【0029】
電極224に印加された電圧が消滅した際、フレーム234は、可撓性の薄板233、235に貯えられた弾性エネルギーの回復によって休止位置に戻る。この弾性復帰段階は、第一の方向と反対の第二の方向(矢印b)において、歯車10に対して接線方向で、歯250の並進運動をひき起こす効果をもつ。
【0030】
換言すると、第一の方向(矢印a)において、作動部品202の運動は、固定櫛226と可動櫛236との間で生み出される静電気力によって生み出されるのに対し、第二の方向(矢印b)においては、作動部品202の運動は、フレーム234の可撓性の薄板233、235によって蓄積されたエネルギーに起因する弾性復元力によって生み出される。
【0031】
かくして、作動部品202のアドレス指定電極224に交流信号Vを適用した場合、作動部品は、歯車10に対して接線方向に交番運動を生み出す。
【0032】
ストッパ241は、交番動作(矢印a)の際に、歯車10を一ピッチだけ駆動させるために駆動部品250が移動させられるように配置されている。
【0033】
ここで、装置の作動方法について記述する。
【0034】
図3は、作動部品が交番運動を生み出している際の、歯車が移動している最中の駆動部品250、割出部品550、そして歯車10の相対的な位置を概略的に示している。作動によって生み出されている運動は、駆動部品250がa方向に移動させられている最中の第一の交番と、駆動部品250がa方向と反対のb方向に移動させられている最中の第二の交番から構成される。
【0035】
図3では、歯車10はその円周に、それぞれ1、2、3および4という番号のついた連続する歯を有している。歯車10の歯1、2、3および4は非対称である。図3に示されている外形は、時計回りの方向の歯車10の駆動を優先している。
【0036】
当初は(Aにおいて)、割出部品550は歯車10の二つの歯2、3の間に係合されている。駆動部品250は、歯車10の二つの歯3、4の間に係合されている。
【0037】
第一の交番(静電気力)によって駆動部品250の運動が生み出されている間の能動的交番の最中、装置は以下の段階に従って作動する。
【0038】
第一段階(B)によると、駆動部品250は、歯車10に対して接線方向(矢印a)で、作動部品による並進運動によって駆動される。駆動部品250は歯4と接触する。
【0039】
第二段階(C)によると、駆動部品250は、歯車10を時計回りの方向に回転式に動かすようにして歯車10を牽引する。歯車10の回転の結果、割出部品550は、歯車10の歯2と接触することになる。
【0040】
第三段階(D)によると、歯車10の回転の結果、割出部品550が歯車10の歯2を滑動することになる。このことは、薄板511が可撓性であり、そして歯車10に対する半径方向への割出部品550の運動を許容することから可能となっている。
【0041】
第四段階(E)によると、割出部品550は歯2を乗り越える。薄板511は、その弾性により、割出部品を歯車10に戻し、それはそのときに割出部品550が歯1と歯2との間に係合されるようにしてなされる。駆動部品250の歯は、ストロークの最終位置にある。
【0042】
第二の交番(弾性薄板233、235に蓄積されたエネルギーに起因する弾性復元力によって、駆動部品250の運動が生み出されている間の受動的交番)の最中、装置は以下の段階に従って作動する。
【0043】
第五段階(F)によると、駆動部品250は、歯車10に対して接線方向(矢印b)で、作動部品による並進運動によって駆動される。駆動部品250は歯3と接触する。
【0044】
第六段階(G)によると、駆動部品250は、歯車10を反時計の回り方向に回転式に動かすようにして歯車10を牽引する。歯車10の回転の結果、割出部品550は歯車10の歯2と接触することになる。
【0045】
第七段階(H)によると、割出部品550は、歯車10の回転を阻止する。歯車10の阻止の結果、駆動部品250が歯3を滑動することになる。
【0046】
第八段階(I)によると、駆動部品250は歯3を乗り越える。薄板212はその弾性により、駆動部品250を歯車10に戻し、それはそのときに駆動部品250が歯2と3の間に係合されるようにしてなされる。
【0047】
第九段階(J)によると、駆動部品250は初期の休止位置(Aに)に戻る。
【0048】
第一段階から第九段階までで、歯車10は時計回りの方向に回転式に駆動され、歯車の歯に対応する角度だけ動かされた。
【0049】
かくして、以上の段階は反復され、駆動部品250は、ステッピング運動に従って歯車10を動かすものであり、これにおいて各ピッチは歯車の一つの歯に対応している。
【0050】
割出装置50は、駆動部品250が休止位置に戻った際に歯車の回転を阻止する。逆転防止装置は、単一方向への歯車の回転を可能にする歯止を構成する。
【0051】
図4は、歯車10の歯1の形状と駆動用歯250の形状を概略的に示している。
【0052】
この図を見ればわかるように、歯車10の歯1は、第一の交番(a)の最中に歯車10を牽引するために駆動用歯250が接触するようになっている被駆動面11と駆動サイクルの第二の交番(b)の最中に駆動用歯250が上を滑動する案内面12とを備えている。
【0053】
被駆動面11は、歯車10の半径方向に対して横逃げ角D1を形成するような形で方向づけされており、この横逃げ角D1は、好ましくは約5〜15度の間に含まれる。
【0054】
歯1の案内面12は、歯車の接線方向に対して可能なかぎり小さい角度αを形成するような形で方向づけされている。角度αは、好ましくは、約20〜60度の間に含まれる。
【0055】
駆動用歯250は、第一の交番(a)の最中に歯車10を牽引するために歯車10と接触するようになっている駆動面251と、第二の交番(b)の最中に歯車10を滑動するようになっている案内面252と、歯車10の歯の間の駆動用歯250の係合を制限するために歯車10に支持されるようになっている支持面253とを備えている。
【0056】
駆動面251は、歯車10の半径方向に対して0度の角度を形成するような形で方向づけされる。
【0057】
案内面252は、歯車10の接線方向に対して角度D2を形成するような形で方向づけされ、この角度D2は好ましくは約0〜30度の間に含まれる。
【0058】
支持面253は、歯車10の接線方向に対して0度の角度を形成するような形で方向づけされている。支持面253と駆動面251は、歯車10の歯の間の駆動用歯250の係合を制限する肩部を形成する。
【0059】
被駆動面11と駆動面251とは、互いに平行ではないが、角度D1を形成している。この特徴は、駆動用歯250が歯車10を牽引する際に、駆動用歯250と歯車10との歯1の間を不可逆的な接触に至らせる可能性のある被駆動面11と駆動面251との間の接触面積を制限するという効果をもつ。
【0060】
同様に、案内面12と案内面252とは、互いに平行ではないが、一つの角度を形成している。この特徴は、駆動用歯250が歯車10を滑動する際に、駆動用歯250と歯車10の歯1との間を不可逆的な接触に至らせる可能性のある、案内面12と案内面252との間の接触面積を制限するという効果をもつ。かくして、案内面12と案内面252とは、駆動部品250の案内面252の接触点254において接触する。
【0061】
一方、駆動用歯250の駆動面251と支持面253によって形成されている肩部は、駆動用歯250が歯車10の歯の間で阻止された状態になるのを回避している。実際、駆動用歯250の歯車10の歯形の底への進入は、場合によっては、駆動装置の不可逆的な阻止を導く可能性がある。
【0062】
図5は、休止位置(つまり作動部品202が給電されていない場合)での駆動部品250と割出部品550の配置を概略的に示している。
【0063】
駆動部品250および割出部品550は、類似した形状を有している。
【0064】
割出部品550は、第二の交番(b)の最中に歯車10を阻止するために歯車10と接触するようになっている阻止面551と、第一の交番(a)の最中に歯車10を滑動するようになっている案内面552と、歯車10の歯の間の割出用歯550の係合を制限するために歯車10に支持されるようになっている支持面553とを備えている。
【0065】
作動部品202は、振幅がΔである交番運動を生成する。換言すると、Δは作動部品のストロークである。
【0066】
駆動部品250が第二の交番(交番b)の最中に歯車10の一つの歯を乗り越えるには、作動部品202の残留弾性変形(deformation elastique residuelle)は、駆動部品250が乗り越える歯の頂にあるときに(図3の構成Iに例示されているように)歯車10上での駆動部品250の滑動を可能にするのに充分なものでなくてはならない。
【0067】
駆動部品250が乗り越える歯の頂にある場合、残留弾性変形は幾何学的に以下のように定義される。
Δresiduelle=p−e−d+k×p 〔1〕
ここで、
Δresiduelleは、作動部品の残留弾性変形であり、
pは、歯車10のピッチであり、
eは、駆動部品250の駆動面251と案内面252の接触点254との間の距離であり、
は、割出部品550の阻止面551と接触点254との間の距離であり、
kは、正の整数である。
【0068】
装置が作動するには、関係式〔1〕で定義された残留弾性変形が正であること、そして、図5に例示された割出部品550と駆動部品250の相対的配置において、距離dが正であることが必要である。換言すると、歯車10のk+1の歯が駆動部品250と割出部品550の間に挿入されている場合、距離dは一般に、歯車10のピッチのk倍を上回らなければならない。つまり、
p−e−d+k×p>0、d>k×p 〔2〕
故に、
k・p<d<p−e+k・p 〔3〕
【0069】
例えば(図5で表わされているように)k=0を選択した場合、次の関係が得られる。
0<d<p−e 〔4〕
【0070】
例えば、p=15μm、e=5μmというパラメータを考慮すると、以下の関係が得られるはずである。
0<d<10μm 〔5〕
【0071】
k=1を選択した場合、
15μm<d<25μm 〔6〕
という関係が得られるはずである。
【0072】
k=2を選択した場合には、
30μm<d<40μm 〔7〕
という関係が得られるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施態様に従った装置を概略的に示した図である。
【図2】作動部品を概略的に示した図である。
【図3】装置の異なる作動段階の最中の駆動部品、逆転防止歯止および被駆動部品の相対的な位置を概略的に示した図である。
【図4】被駆動部品の歯の形状および駆動部品の形状を概略的に示した図である。
【図5】駆動部品および逆転防止歯止の配置を概略的に示した図である。
【符号の説明】
【0074】
1 歯
2 歯
3 歯
4 歯
10 被駆動部品
11 被駆動面
12 案内面
202 作動部品
222 固定部分
224 電極
226 櫛形構造
232 可動部分
234 可動フレーム
241 機械的ストッパ
250 駆動部品
251 駆動面
252 案内面
253 支持面
254 接触点
511 薄板
550 割出部品
551 阻止面
552 案内面
553 支持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部品(10)、被駆動部品(10)と噛合うようになっている駆動部品(250)、駆動部品(250)を移動させるための交番運動を生み出すのに適した作動部品(202)を備える装置であり、駆動部品(250)および作動部品(202)は、半導体材料のブロックにエッチングを行うことによって形成されており、
作動部品(202)によって生み出された運動の第一の交番(a)の最中に、駆動部品(250)が被駆動部品(10)を牽引するために被駆動部品(10)と噛合い、
作動部品(202)によって生み出された反対方向での第二の交番(b)の最中に、駆動部品(250)が被駆動部品(10)を滑動し、
被駆動部品(10)が、駆動部品(250)によるステッピング運動に従って移動させられるように配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
駆動部品(250)が、第一の交番(a)の最中に被駆動部品(10)を牽引するために被駆動部品(10)と接触するようになっている駆動面(251)と、第二の交番(b)の最中に被駆動部品(10)を滑動するようになっている案内面(252)とを有している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
駆動部品(250)が、被駆動部品(10)と駆動部品(250)の噛合いを制限するための支持面(253)を備えている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
被駆動部品(10)が、歯付き部品である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
被駆動部品(10)の歯(1、2、3、4)が、非対称である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
被駆動部品(10)の各々の歯(1、2、3、4)が、被駆動面(11)と案内面(12)とを有しており、駆動部品(250)は、第一の交番(a)の最中に被駆動部品(10)を牽引するために該被駆動面に接触し、駆動部品(250)が第二の交番(b)の最中に該案内面を滑動する、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
第一の交番(a)の最中に、駆動部品(250)が被駆動部品(10)の二つの歯(3、4)の間に係合され、
第二の交番(b)の最中に、駆動部品(250)が二つの歯(3)のうちの一方を乗り越え、被駆動部品(10)の隣接する他の二つの歯(2、3)の間に係合するよう、
配置されている、請求項4〜6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
駆動部品(202)が、少なくとも一枚の可撓性の薄板(233、235)を備えており、該薄板は、第一の交番(a)の最中に駆動部品(250)が第一の方向に移動させられ、それにより可撓性の薄板(233、235)が変形をひき起こされ、そして第二の交番(b)の最中に、駆動部品が可撓性の薄板(233、235)の弾性復帰によって第一の方向とは反対の第二の方向に移動させられるように配置されている、請求項1〜7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
駆動部品(250)が、可撓性の薄板(233、235)に蓄積された残留弾性エネルギーの回復により二つの歯(2、3)のうちの一方を乗り越える、請求項7および8に記載の装置。
【請求項10】
第二の交番(b)の最中に被駆動部品(10)を阻止することに適した逆転防止歯止(50)を備えている、請求項1〜9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
作動部品(202)によって生み出された運動の第一の交番(a)の最中に、被駆動部品(10)を滑動し、
第二の交番(b)の最中に、被駆動部品(10)を阻止するために被駆動部品(10)と噛合うのに適している割出部品(550)を備えている、
逆転防止歯止を備える請求項10に記載の装置。
【請求項12】
歯止(50)が、第一の交番(a)の最中に被駆動部品(10)を滑動するようになっている案内面(552)と、第二の交番(b)の最中に被駆動部品(10)を阻止するために被駆動部品(10)が接触するようになっている阻止面(551)を有している、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
被駆動部品(10)が、一定のピッチを有する歯付き部品であり、駆動部品(250)が被駆動部品(10)を滑動する際に接触点(254)において被駆動部品(10)と接触するようになっている案内面(252)を備えており、
そして休止状態においては、
<p−e+k×p、d>k×p
であり、式中、
pは、被駆動部品(10)のピッチであり、
eは、駆動部品(250)の駆動面(251)と案内面(252)の接触点(254)の間の距離であり、
は、駆動部品(250)の案内面(252)と歯止(50)の阻止面(551)の接触点(254)の間の距離であり、
kは、正の整数である、
請求項1〜12のいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
駆動部品(250)を被駆動部品(10)に接触した状態に維持するための弾性予応力手段(212)を備えている、請求項1〜13のいずれか一つに記載の装置。
【請求項15】
被駆動部品(10)、駆動部品(250)および作動部品(202)を備えており、駆動部品(250)および作動部品(202)が、半導体材料のブロックにエッチングを行うことによって形成されており、
駆動部品(250)を移動させるために交番運動を生み出すよう、作動部品(202)を制御する段階、
作動部品(202)によって生み出された運動の第一の交番(a)の最中に、駆動部品(250)が被駆動部品(10)を牽引するために被駆動部品(10)と噛合う段階、
作動部品(202)によって生み出された反対方向の第二の交番(b)の最中に、駆動部品(250)が被駆動部品(10)を滑動する段階、
から成ることを特徴とし、
それは、被駆動部品(10)が、駆動部品(250)によるステッピング運動に従って移動させられるようにしてなされる、装置の動作方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−532782(P2008−532782A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501304(P2008−501304)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060758
【国際公開番号】WO2006/097491
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507069601)
【氏名又は名称原語表記】SILMACH
【Fターム(参考)】