説明

半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け方法及び装置

【課題】シリコンウエハのような半導体ウエハの薄型化に対応できる新方式の半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け方法及び装置を提供する。
【解決手段】シリコンウエハ1のダイシング前工程においてダイシングテープ2をシリコンウエハ1の一面に貼り付ける場合に、ダイシングテープ2を張った状態で且つ真空中で、ダイシングテープ及びシリコンウエハの一方を他方に押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハのダイシング前工程においてダイシングテープを半導体ウエハの一面に貼り付ける方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの製造工程では、例えばシリコンウエハに露光−拡散−エッチングなどの前工程処理を施した後に、シリコンウエハ1をチップサイズにダイシングする。その具体例を、図2の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の工程を模式的に示す。
【0003】
通常、半導体ウエハとして用いられるシリコンウエハ1は、投入時の初期の厚みt1が700〜200μmであり、前工程(回路形成)終了まで、その厚みで処理される(図2(1))。これは、前工程処理が酸化膜形成−露光−熱拡散−エッチングなどの回路形成工程を何回も繰り返すため、温度履歴や表面処理履歴の影響でシリコンウエハに変形を発生させない厚みを保つ必要があるためである。
【0004】
次いで、前工程が終了したシリコンウエハ1を、回路形成面を保護テープ4で覆う(図2(2))。保護テープ4は、ウエハの薄型化に伴って製造過程で生じる反りを防止するために使用される。通常のICチップの厚みは、350μm程度であり、投入時の厚みをそのまま使用して、ダイシングを行っていたが、近年、ICチップはフラッシュメモリ用などに対応するため、例えば50μmの厚みにするなど、その薄型化が図られている。このような薄型にする場合には、グラインダでシリコンウエハ1の裏面から所定の肉厚部分1´までを削っている(図2(2))。
【0005】
この、薄くした後のシリコンウエハ1の一面(回路形成面と反対側)に、ダイシングテープ2をローラ加圧方式機構5により貼り付け(図2(4))、その後に保護テープ4を剥がしダイシングカッター(レジンに砥石を混ぜたブレード)6を用いてダイシング工程が行われる(図2(5))。
【0006】
ダイシングテープ2は、ダイシング作業で半導体チップが散乱するのを防止し、チップの現状の位置に保持してそのまま次の工程へまとめてチップを搬送するために使用される。そのためにダイシングカッターは半導体ウエハのダイシングの際にダイシングテープの肉厚の途中までしか及ばないようにして、ダイシングテープは切断されないようにしてある。
【0007】
ここで、シリコンウエハ1へのダイシングテープ2貼り付けの従来の方法を説明する。まず、下準備として、図2(4)に示すように、張力を与えた状態で円環状のダイシングフレーム3に貼り付けられたダイシングテープ2(円形状にカットされている)が用意される。このようにしてダイシングフレームで張力を保持されたダイシングテープ2の一面(接着面)に真空チャック11aなどで保持されたシリコンウエハの一面をあてがって、ダイシングテープをローラ加圧機構5により加圧する。ローラ加圧により、ダイシングテープ2・シリコンウエハ1間に気泡の混在をなくしてダイシングテープを均一にならした状態で、ダイシングテープにシリコンウエハが貼り付けられる。このようなローラ加圧を経て、ダイシングテープで保持されたシリコンウエハがダイシング装置に供給される。図3は、ダイシング後の半導体チップがダイシングテープ2に接着されている状態を半導体チップの回路形成面側から見た平面模式図である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、50μmの厚みのシリコンウエハは、今後益々薄くなる傾向にある。それに伴い、ダイシングテープに対するシリコンウエハのローラ加圧方式貼り付け方法によれば、シリコンウエハにダメージを与えることが予想される。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされ、その目的は、半導体ウエハ(例えばシリコンウエハ)の薄型化に対応できる新方式の半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、半導体ウエハのダイシング前工程においてダイシングテープを半導体ウエハの一面に貼り付ける方法において、
前記ダイシングテープに張力を与えた状態で且つ真空中で、前記ダイシングテープ及び半導体ウエハの一方を他方に押し付けることで、前記ダイシングテープの接着面を前記半導体ウエハの一面に貼り付けることを特徴とする。
【0011】
また、そのような方法を実現する装置として、
半導体ウエハを保持して直線的に往復移動可能な移動機構と、
前記移動機構上の前記半導体ウエハに対面する位置でダイシングテープを保持するダイシンテープ保持部と、
前記移動機構が前記半導体ウエハを前記ダイシングテープの対向面に押し付けた時のウエハからの押し付け力を受けるウエハ受け部と、
前記半導体ウエハの移動空間及びそれに対向するダイシングテープの接着面の周囲を真空状態にする真空室と、
を備えたダイシングテープ貼り付け装置を提案する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、ダイシングの前工程において、薄型化する半導体ウエハにダメージを与えることなくダイシングテープをシリコンウエハなような半導体ウエハに貼り付けることができ、シリコンウエハの歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【0014】
図2の(1)(2)(3)(4´)(5)の工程が、本発明のダイシングテープ貼り付け方式を取り入れた半導体製造工程を示すものである。図2の(1)、(2)、(3)、(5)の工程は、既述した従来方式と同様であり、説明は省略する。図2の(4´)のダイシングテープ貼り付け工程が従来例と異なるものである。
【0015】
図2(4´)では、シリコンウエハのダイシング前工程において、予めダイシングフレーム3にダイシングテープ2を張った状態(張力を充分に与えた状態)で、シリコンウエハ1の被接着面とダイシングテープ2の接着面とを対面させて、真空中で、移動機構を介してシリコンウエハ1をダイシングテープ2の接着面に向けて直線的に相対的に移動させて、シリコンウエハ1をダイシングテープ2に押し付ける。このようにすれば、移動機構の加圧力がシリコンウエハ1の一面に均一に作用して、シリコンウエハ1がダイシングテープ2に押し付けられ、しかも真空中でダイシングテープとシリコンウエハとを面接着するので、低荷重の加圧力でダイシングテープの貼り付け作業を実行することができる。したがって、薄型化する半導体ウエハにダメージを与えることなく、且つダイシングテープをシリコンウエハなような半導体ウエハに気泡が入ることなく貼り付けることができる。
【0016】
ダイシング後の半導体チップは、ダイシングテープに保持されてそのままの状態で次工程の作業位置に送られる。
【0017】
ここで、上記ダイシングテープ貼り付け方法を具現化するための具体例を、図1に基づき装置を含めて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るダイシングテープ貼り付け装置の縦断面図である。
【0019】
図1の装置は、基本的には、シリコンウエハ1を真空チャック11aにより保持して直線的に往復移動可能な移動機構11と、移動機構11上のシリコンウエハ1に対面する位置でダイシングテープ2を保持するダイシングテープホルダ(ダイシングテープ保持部)20と、移動機構11がシリコンウエハ1をダイシングテープ2の対向面に押し付けた時のウエハからの押し付け力を受けるウエハ受け部21と、シリコンウエハ1の移動空間及びそれに対向するダイシングテープ2の接着面の周囲を真空状態にする真空室12とを備える。
【0020】
ダイシングテープホルダ20は、真空室12のハウジング本体(固定壁)となるべきものであり、環状体により形成される。ダイシングテープホルダ20の上面部にホルダ20の内周に沿ってダイシングフレーム3を着脱自在に嵌め込める環状溝22が形成されている。この環状溝22にダイシングフレーム3をセットすることで、ダイシングテープ2が真空チャック11a上の半導体ウエハ1に対面するようにセット可能にしてある。
【0021】
ウエハ受け部20は、真空室12の蓋13の内面に固定され、蓋13の内面とダイシングテープ2の間に介在する。本実施例では、ウエハ受け部20は、蓋13に内面に取り付けられているが、着脱自在方式とすることも可能である。ウエハ受け20として、例えばゴム板、鏡面SUS板などが用いられる。
【0022】
蓋13は、ダイシングテープホルダ20の上面にシールリング(例えばOリング)23を介して着脱可能に取り付けられる。
【0023】
ウエハのための移動機構11は、真空チャック11a、それを支持する可動ベース11b、一端が可動ベース11bに接続され他端が図示されないウォームギアに噛み合うボールスクリュウ機構11c、可動ベース11bの直線的往復移動(図1では上下移動)を案内するリニアガイドロッド11dよりなる。
【0024】
ダイシングテープホルダ20は、支柱24を介して固定ベース25に支持されている。ボールスクリュウ11c、リニアガイドロッド11dは、固定ベース25に貫通状態で保持されている。
【0025】
真空チャック11aのために真空引きをする真空パイプ26は、可動ベース11bを貫通して真空チャック室と外部真空駆動源(図示せず)とに連結している。真空チャック11aは、ポーラスな部材により形成されている。
【0026】
真空室12は、蓋13、ダイシングテープホルダ20、ベローズ(例えば金属ベローズ)27により囲まれる空間により形成され、その内部にダイシングテープ2と真空チャック11a,可動ベース11bとが配置される。
【0027】
ベローズ27の一端は、移動機構11の可動部である可動ベース11bの外壁面にパッキン28を介して接続され、他端が真空室の一部となる固定壁(例えばダイシングテープホルダ20)の外壁にパッキン29を介して接続されている。ダイヤフラムを使用した場合には、移動機構11の可動部を気密性を高めて囲む真空室を形成することができる。
【0028】
真空室12は、ダイシングテープホルダ20に設けた真空パイプ30を介して外部真空源(図示せず)と接続される。
【0029】
真空室12と真空チャック11aの真空系統は、互いに独立しており、真空チャックの機能を維持するために、真空室12の真空度を真空チャック11aの真空度よりも低真空に設定してある。なお、真空室12の真空度は、真空チャック11aの真空度よりも低真空であれば特に条件を限定されない。
【0030】
上記構成の装置において、シリコンウエハ1とダイシングテープ2とは、蓋13を開けてそれぞれの所定位置にセットされる。セット後、蓋13が閉まって真空室12が気密状態になる。このとき、シリコンウエハ11は、初期状態として、ダイシングテープ2から離れた位置にある。ダイシングテープ2の接着面となる一面は、シリコンウエハ1と対面するようにセットされる。
【0031】
シリコンウエハ1に対するダイシングテープの貼り付けは、真空室12と真空チャック11aとを真空引きした後、可動ベース11bが上方向(ダイシングテープの向けた方向)に所定量だけ移動するようにボールスクリュー11cを駆動させる。これにより、シリコンウエハ1は、ダイシングテープ2の対向面に押し付けられ、その時のウエハからの押し付け力をウエハ受け部21が受ける。
【0032】
それにより、ダイシングテープ2を張った状態で且つ真空中で、ダイシングテープの一面(接着面)をシリコンウエハ1の一面に貼り付けることができる。
【0033】
なお、移動機構11は、ボールスクリュウのほかに油圧制御方式を採用することも考えられ、ボールスクリュウに限定するものではない。ボールスクリュウ方式の場合には、シリコンウエハ1の位置精度、換言すればダイシングテープへのシリコンウエハの接着動作をデジタル管理することができる。したがって、シリコンウエハ1のダイシングテープ2への微妙な押し付け力コントロールを最も精度良く確保し、かつウエハ受け部21により、シリコンウエハ1のダイシングテープ2への押し付け圧力の荷重を受けるときの衝撃を緩和できる。
【0034】
本実施例によれば、薄型化するシリコンウエハに、ダメージを与えることなく、且つダイシングテープとシリコンウエハ間の接合面間に気泡が入ることなく貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例に係るダイシングテープ貼り付け装置の縦断面図。
【図2】シリコンウエハに対するダイシングテープの貼り付け方式を従来例と本発明方式とを比較して示す半導体製造工程図。
【図3】ダイシングカット後の半導体ウエハの平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…半導体ウエハ、2…ダイシングテープ、3…ダイシングフレーム、11…移動機構、11…真空チャック、12…真空室、20…ダイシングテープホルダ、21…ウエハ受け部、27…金属ベローズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハのダイシング前工程においてダイシングテープを半導体ウエハの一面に貼り付ける方法において、
前記ダイシングテープに張力を与えた状態で且つ真空中で、前記ダイシングテープ及び半導体ウエハの一方を他方に押し付けることで、前記ダイシングテープの接着面を前記半導体ウエハの一面に貼り付けることを特徴とする半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け方法。
【請求項2】
請求項1において、前記半導体ウエハに対する前記ダイシングテープの貼り付けは、前記半導体ウエハの被接着面と前記ダイシングテープの接着面とを対面させて、真空中で、移動機構を介して前記半導体ウエハをダイシングテープの接着面に向けて相対的に移動させて前記半導体ウエハを前記ダイシングテープに押し付けることで行うことを特徴とする半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け方法。
【請求項3】
請求項2において、前記移動機構は、前記半導体ウエハを保持する真空チャックを介して半導体ウエハをダイシングテープに向けて直線的に移動させる移動機構よりなり、前記半導体ウエハの移動空間及びそれに対向するダイシングテープの接着面の周囲を、前記真空チャックの真空度よりも低真空にして、前記半導体ウエハを前記ダイシングテープに押し付けることを特徴とする半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け方法。
【請求項4】
半導体ウエハを保持して直線的に往復移動可能な移動機構と、
前記移動機構上の前記半導体ウエハに対面する位置でダイシングテープを保持するダイシンテープ保持部と、
前記移動機構が前記半導体ウエハを前記ダイシングテープの対向面に押し付けた時のウエハからの押し付け力を受けるウエハ受け部と、
前記半導体ウエハの移動空間及びそれに対向するダイシングテープの接着面の周囲を真空状態にする真空室と、
を備えたことを特徴とする半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記移動機構は、前記半導体ウエハを保持するための真空チャックを有し、
前記真空室を前記真空チャックの真空度よりも低真空に設定することを特徴とする半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け装置。
【請求項6】
前記真空室は、その一部がベローズにより形成されて、前記ベローズの一端が前記移動機構の可動部に接続され、他端が前記真空室の一部となる固定壁に接続されている半導体ウエハのダイシングテープ貼り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−153597(P2008−153597A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342867(P2006−342867)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(390006127)日立設備エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】