説明

半導体ウエハ製造方法、ウエハ挟持ユニット、およびウエハ搬送装置

【課題】複数の上記ウエハとこれらのウエハに接合された支持部材とを分離した後においてこれらのウエハの取扱いを容易にすることが可能な半導体ウエハ製造方法を提供すること。
【解決手段】互いに隙間を隔てて対向するように列をなした状態で各々の端縁wbの一部が支持部材1に接合され、かつ、各々が面内方向において両側に位置する一対の側縁waを備えた、半導体からなる複数のウエハwを、支持部材1から分離する工程を有する半導体ウエハ製造方法であって、上記分離する工程は、複数のウエハwを、一対の側縁waにおいて一対の挟持部材21,22で挟持した状態で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば太陽電池の材料に用いられる半導体ウエハ製造方法、ウエハ挟持ユニット、およびウエハ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、半導体ウエハの製造におけるワイヤソー装置を用いた切断工程を示している(たとえば特許文献1参照)。同図に示されたワイヤソー装置Kは、4つのガイドローラ93およびワイヤ94を備えており、半導体材料92をウエハ状に切断する装置である。ワイヤ94は、たとえばメッキが施されたピアノ線であり、4つのガイドローラ93に掛け回されており、図示された矢印の方向に送られる。半導体材料92は、たとえばガラスからなる支持部材91に接着剤によって接合された状態で、ワイヤ94に押し付けられる。ワイヤ94が半導体材料92を超えて支持部材91に到達すると、半導体材料92の切断が完了する。この切断により、支持部材91に各々の端縁が接合された状態で、複数のウエハが得られる。
【0003】
しかしながら、切断を終えた後には、最終的に上記ウエハを1枚1枚分離した状態にする必要がある。この分離作業に先立って、切断粉の洗浄や、支持部材91からの剥離を目的として、上記ウエハは、洗浄液や接着剤を溶解する溶液に漬けられる。これらの液体によって上記ウエハがウエットの状態になると、となり合う上記ウエハどうしが張り付いてしまいやすい。このようなことでは、上記ウエハを1枚1枚分離した状態とすることは容易ではなく、たとえば作業者が手作業によって上記ウエハを1枚ずつ取り上げるといった作業が強いられていた。
【0004】
【特許文献1】特開2007−160431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、複数の上記ウエハと、これらのウエハに接合された支持部材とを分離した後において、これらのウエハの取扱いを容易にすることが可能な半導体ウエハ製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される半導体ウエハ製造方法は、互いに隙間を隔てて対向するように列をなした状態で各々の端縁の一部が支持部材に接合され、かつ、各々が面内方向において両側に位置する一対の側縁を備えた、半導体からなる複数のウエハを、上記支持部材から分離する工程を有する半導体ウエハ製造方法であって、上記分離する工程は、上記複数のウエハを、上記一対の側縁において一対の挟持部材で挟持した状態で行われることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記分離する工程において、それぞれの上記ウエハが離間している状態が維持される。そのため、上記ウエハどうしが密着しにくい。これにより、その後の上記ウエハの取扱いが容易になる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記挟持部材は、上記ウエハ側の表面に形成された保持部を備え、この保持部は、上記ウエハを上記面内方向に移動させる力を、上記ウエハを上記ウエハの列方向に移動させる力よりも小とするものである。このような構成によれば、上記ウエハが、上記面内方向と比較して上記列方向に移動しにくい。これは、複数の上記ウエハが離間している状態を維持させるのに有利である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保持部は、上記面内方向に延びる、弾性材料からなる複数の棒状体とされている。このような構成によれば、上記ウエハの表面には、隣接する上記ウエハの間における上記棒状体がある。そのため、上記ウエハが上記列方向に移動しようとしても上記棒状体に当たり、上記ウエハは、上記列方向に移動しにくい。そのため、複数の上記ウエハが離間した状態を維持しやすい。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保持部は、ブラシ状とされている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保持部は、弾性材料からなる膜とされている。このような構成によれば、上記側縁が上記膜を押圧し、上記膜が凹状になる。そのため、上記側縁は、上記列方向に移動しにくくなる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ウエハを分離する工程の後に、上記ウエハのいずれか一つを、上記面内方向に沿ってプッシャーにより押出す工程をさらに備える。このような構成によれば、上記ウエハを一枚ずつ取り出すことができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記プッシャーは、上記面内方向に沿って前後方向に自在に移動できる支点から、一定距離を保ちつつ揺動可能に構成されている、上記ウエハの側面を前方に向かって押す押進面と、上記押進面より前方、かつ、上記支点の後方に位置しているとともに、上記押進面に連結および固定され上記側縁を上記押進面まで誘導するガイド面と、を含む。このような構成によれば、上記プッシャーにより上記ウエハを押出すとき、上記側面が上記ガイド面に当接した場合でも、上記押進面および上記ガイド面が上記支点を中心として移動してゆく。そして、上記側面は上記押進面により押されることとなる。そのため、上記押進面と上記側面との位置合わせを正確にする必要がない。その結果、上記側縁と上記押進面との上記列方向における位置合わせに余裕が出る。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記プッシャーは、支持体と、上記支持体に固定されている板ばねと、を備え、上記支点が、上記支持体および上記板ばねが固定された部分であり、上記ガイド面が、上記板ばねの表面である。このような構成によれば、上記ウエハを押出した後、上記プッシャーは、ばねの弾性力で元の状態に戻る。そのため、上記プッシャーを、水平方向以外の方向に沿ってスライドさせ、用いることが可能である。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記押出す工程の後に、上記列方向に並ぶ複数のウエハ収容部を備えたカセットに、上記ウエハを一枚ずつ収容する収容工程をさらに備える。このような構成によれば、上記押出す工程と上記収容工程とが実行される間において、上記ウエハの面方向を変化させる必要がない。そのため、押し出された上記ウエハを、上記ウエハ収容部に収容させるまでの工程を簡素化できる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記カセットは、上記挟持部材で挟まれた複数の上記ウエハに対して、上記列方向に沿って相対移動自在である。このような構成によれば、上記列方向において、押し出された上記ウエハの位置と同じ位置に上記ウエハ収容部を配置することができる。そのため、上記ウエハを所望の上記ウエハ収容部に収容することが容易となる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記押出す工程の後であり上記収容工程の前に、上記ウエハの状態を検査する検査工程をさらに備えている。このような構成によれば、上記ウエハを上記ウエハ収容部に収容する前に、上記ウエハの状態を認識できている。上記カセットから上記ウエハを取り出した後に、上記ウエハの状態を一枚ずつ検査する手間が省ける。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記検査工程においては、光電センサにより上記ウエハの状態を判断する。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記検査工程と上記収容工程との間に、上記検査工程において所定の条件を満たしている上記ウエハのみに上記収容工程を実行させる判断工程をさらに備える。このような構成によれば、上記カセットに、不良品などの望まない上記ウエハが収容されることを防止できる。
【0020】
本発明の第2の側面によって提供されるウエハ挟持ユニットは、互いに隙間を隔てて対向するように列をなし、かつ、各々が面内方向において両側に位置する一対の側縁を備えた、半導体からなる複数のウエハを、上記一対の側縁において挟み、上記ウエハを上記面内方向に移動させる力を、上記ウエハを上記ウエハの列方向に移動させる力よりも小さくする上記ウエハの保持部を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保持部はブラシ状とされている。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記保持部は弾性部材からなる膜とされている。
【0023】
本発明の第3の側面によって提供されるウエハ搬送装置は、本発明の第2の側面によって提供されるウエハ挟持ユニットと、上記ウエハ挟持ユニットにより挟まれた上記ウエハを移動させる移動手段と、を含む。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記移動手段は、上記面内方向に沿って前後方向に自在に移動できる支点から、一定距離を保ちつつ揺動可能に構成されている、上記ウエハの側面を前方に向かって押す押進面と、上記押進面より前方、かつ、上記支点の後方に位置しているとともに、上記押進面に連結および固定され上記側面を上記押進面まで誘導するガイド面と、を備えた、上記ウエハを上記面内方向に沿って押すプッシャーとされている。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の上記ウエハの列方向に並ぶ複数のウエハ収容部を備えたカセットが、上記ウエハ挟持ユニットに並設されている。このような構成によれば、上記ウエハ挟持ユニットから上記ウエハが取り出された後に、上記ウエハの面方向を変化させる必要がない。これは、上記ウエハの製造を簡素化するのに好適である。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ウエハ挟持ユニットに挟まれている位置から上記カセットに至るまでの上記ウエハの移動経路上における上記ウエハの状態を検出する検出手段をさらに備える。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記列方向は、鉛直方向と一致しており、上記検出手段において上記ウエハが上記所定の条件を満たしている場合、上記ウエハを上記カセットに収容させ、上記検出手段において上記ウエハが上記所定の条件を満たしていない場合、上記ウエハを上記移動経路から下方にそらす処理手段を備える。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
図1に、本発明の実施形態にかかるウエハ搬送装置を示している。同図に示されたウエハ搬送装置Xは、ウエハ挟持ユニットA、プッシャーP、カセットc、および、ウエハ検査ユニットDを備えている。図2に、図1に示したウエハ挟持ユニットAの右側面図を示している。図3は、図2における領域IIIの部分拡大図である。
【0031】
図1,2に示されているように、ウエハ挟持ユニットAは、一対のウエハ挟持部材21,22、および、連結板23を備えている。ウエハ挟持ユニットAは、一対のウエハ挟持部材21,22により、半導体からなる複数のウエハwを挟み、この状態を保持させるためのものである。ウエハ挟持部材21,22は、それぞれ、挟持板21a,22a、および、保持部21b,22bを備えている。挟持板21a,22aは、長矩形状とされている。挟持板21a,22aは、たとえばステンレス鋼から構成されている。保持部21b,22bは、挟持板21a,22aの表面のウエハw側に配置されている。図2,3によく表れているように、保持部21b,22bは、ブラシ状とされている。また、保持部21b,22bは、ブラシ状であるから、ウエハwの面内方向x1に延びる、弾性材料からなる多数の棒状体bであるともいえる。これらの棒状体bは、たとえば樹脂により構成されている。棒状体bは、挟持板21a,22bの表面の0.15mm×0.15mmの領域内において、複数本形成されている。図1,2に表れているように、連結板23は、ウエハ挟持部材21,22を連結および固定させるために用いられる。連結板23は、たとえば、ステンレス鋼から構成されている。連結板23は、ウエハ挟持部材21,22と、ネジなどにより固定されている。ウエハ挟持ユニットAは、リフタ31により、ウエハの列方向x2に沿って移動することが可能となっている。図1では、列方向x2が鉛直方向と一致する。
【0032】
図1,2によく表れているように、ウエハ挟持ユニットAに挟まれた複数のウエハwは、互いに隙間を隔てて対向するように列をなしている。これらのウエハwの枚数は、1000枚程度である。それぞれのウエハwどうしの隙間は、たとえば0.15mmである。ウエハwは、たとえば156mm角であって、その厚さは、たとえば0.14〜0.18mmである。
【0033】
図3に示されているように、ウエハwは、面内方向x1の両側に位置する側縁waを備えている。ここでは、ウエハ挟持部材21におけるものを示しているが、ウエハ挟持部材22においても同様である。ウエハwの側縁waの近傍部分は、複数の棒状体bの隙間に入り込んでいる。すなわち、列方向x2において、ウエハwは、たわんだ状態の複数の棒状体bに挟まれている。そのため、列方向x2に移動させるような力がウエハwにかかっても、ウエハwは列方向x2に移動しにくい。一方、図3における紙面手前または奥向きの方向に、ウエハwを移動させるような力がかかった場合、ウエハwの移動は棒状体bには遮られにくい。このことは、保持部21b,22bは、ウエハwを面内方向x1に移動させる力を、ウエハwを列方向x2に移動させる力よりも小さくするものであることを意味する。
【0034】
図4は、図1に示したプッシャーの要部拡大図を示している。図1,4によく表れているように、プッシャーPは、支持体5、板バネ6、および、爪板7を備えている。プッシャーPは、ウエハ挟持ユニットAに挟持されたウエハwを、たとえば図1では右方へ押動させるためのものである。プッシャーPは、本発明における移動手段の一例に相当する。
【0035】
支持体5は、たとえば20mm×500mmの長矩形状板である。支持体5の厚さは、たとえば3mmである。支持体5は、駆動機構(図示略)により前後方向y1−y2に移動自在に構成されている。なお本実施形態では、図4における右方向が前方y1であり、左方向が後方y2である。
【0036】
図4によく表れているように、板バネ6の先端は、支持体5の先端と連結している。板バネ6と支持体5とが連結しているこの部分が、本発明でいう支点sである。もちろん、支点sも、前後方向y1−y2に自在に移動できるといえる。板バネ6は、たとえば20mm×140mmの長矩形状であり、その厚さは、たとえば0.3mm程度である。板バネ6は、支持体5の延びる方向から多少の傾きを有して構成されている。板バネ6の後端は、板バネ6の先端より、図4において下方に位置している。たとえば板バネ6の後端は、板バネ6の先端より、ウエハwの数枚の厚さ程度、下方に位置している。板バネ6の表面の下側の一部は、本発明でいうガイド面m1である。ガイド面m1は、支点sより後方y2側に位置している。板バネ6は、弾性変形を許すため、図4の上下方向に揺動可能となっている。
【0037】
図4によく表れているように、爪板7は、板バネ6の後端の下面に張り合わされ、かつ固定されている。爪板7は、たとえば金属製や樹脂製の薄板とされている。爪板7は、20mm×40mm程度の矩形状であり、厚さが約0.15mmである。爪板7の側面のうち前方y1側を向いている部分は、本発明でいう押進面m2である。押進面m2は、ガイド面m1の後方y2側に位置している。押進面m2は、ウエハwの側面wcを押すためのものである。爪板7は、板バネ6の揺動とともに、図4における上下方向に移動可能となっている。これは、押進面m2が、支点sから一定距離を保ちつつ揺動可能となっていることを意味する。
【0038】
図1に表れているように、カセットcは、ウエハ挟持ユニットAに並設されている。カセットcは、互いに積層された複数のポケットc1を有している。各ポケットc1は、1枚のウエハwを収容可能とされている。ポケットc1は、本発明におけるウエハ収容部に相当する。ポケットc1の積層方向は、列方向x2に一致する。カセットcは、リフタ32によって列方向x2に自在に移動できる。すなわち、カセットcは、ウエハ挟持ユニットAにより挟まれたウエハwに対して、列方向x2に沿って相対移動自在である。
【0039】
図1に表わされているように、ウエハ検査ユニットDは、ウエハ挟持ユニットAとカセットcとの間に、配置されている。ウエハ検査ユニットDは、可動床81、シュート82、検出手段83、および、処理手段(図示略)を備えている。可動床81は、可動床81の表面上のウエハwを図1の右側に搬送できるベルトコンベアとされている。そのため、可動床81の表面上を、ウエハwが搬送され移動していく。可動床81の表面は、ウエハwの移動経路84である。さらに、可動床81は、ウエハ挟持ユニットAの近傍の軸811を中心として、回動可能に構成されている。
【0040】
シュート82は、可動床81の図1における下方に配置されている。シュート82は、可動床81が水平状態から回動したときに移動経路84から落下してくるウエハwを、廃棄ボックス(図示略)に導くために用いられる。検出手段83は、可動床81の上部に配置されている。検出手段83は、移動経路84上において搬送されているウエハwの状態を、検出するために用いられる。検出手段83としては、たとえば光電センサが挙げられる。ウエハwの状態とは、たとえばウエハwの割れやヒビの有無、ウエハwの厚さや重さなどが挙げられる。上記処理手段は、可動床81の動きを制御するための処理を司るものである。
【0041】
次に、本発明の実施形態にかかるウエハ搬送装置を用いた半導体ウエハ製造方法について説明する。
【0042】
まず、図5を用いて、ウエハwがウエハ挟持ユニットAに挟まれたものを製造するための工程について説明する。
【0043】
まず、柱状の半導体材料に支持部材1を接着剤などによって接合する。この半導体材料は、たとえば、断面形状が156mm角、長さが400mm程度である。この半導体材料がワイヤソー装置によって切断されることにより、厚さがたとえば0.14mm〜0.18mmのウエハwが1000枚ほど形成される。
【0044】
図9で示したワイヤソー装置Kを用いて、上記半導体材料の下端をワイヤ94に押し当て、上記半導体材料を切断する。ワイヤ94としては、たとえば直径140μm程度のピアノ線にCu,Znなどのメッキを施したものを用いる。さらに、上記半導体材料を下方に押し下げると、ワイヤ94は、上記半導体材料に対して相対的に上方に移動することとなる。ワイヤ94が支持部材1に到達すると、上記半導体材料の切断が完了する。これにより、複数のウエハwが得られる。各ウエハwは、それぞれの端縁wbが支持部材1に接合されている。ウエハwは接着剤によって支持部材1に接着されている。この接着剤は、上述した半導体材料を支持部材1に接合するために塗布されたものである。
【0045】
次に、図6(a),(b)に示すように、これらのウエハwの側縁waを両側から、ウエハ挟持部材21,22により挟む。次に、ウエハ挟持部材21,22と連結板23とを、レバーを回すなどして連結する。これにより、ウエハwとウエハ挟持ユニットAとが固定される。このウエハ挟持ユニットAにより挟まれたウエハwから、支持部材1を分離する。この分離作業は、たとえば、ウエハ挟持ユニットAおよびウエハwを、上記接着剤を溶解させる液に浸すことにより行われる。その後、ウエハ挟持ユニットAを鉛直方向に起立させ、リフタ31に連結すると、図1に示した格好となる。
【0046】
次に、図7(a),(b)を用いて、ウエハwを押出す工程について説明する。図7(a)は、図1に示したウエハ挟持ユニットAの要部拡大図である。同図においては、理解の便宜上、ウエハ挟持部材21を省略している。また、ウエハwを上から順に、ウエハw1,w2,w3としている。ウエハw1,w2,w3にかかる側面wを、それぞれ、側面w1c,w2c,w3cとしている。
【0047】
この工程においては、ウエハwを一枚ずつ、最上位のものから押出す。まず、ウエハw1の図左方にプッシャーPを配置する。このとき、押進面m2が、ウエハw1の側面w1cよりもやや下方となるようにする。そのため、列方向x2において、ガイド面m1は側面w1cと同位置となる。
【0048】
次いで、プッシャーPを、前方y1に移動させ、ウエハw1に接近させる。ここでは、前方y1は、ウエハwの面内方向x3に一致する。すると、側面w1cにガイド面m1が当接する。板バネ6は、支持体5に対して傾きを有しているから、このときガイド面m1には側面w1cから上向きの力が働く。さらに、プッシャーを前方y1に移動させていくと、側面w1cからの力により、板バネ6の後方y2側における部分および爪板7が上方に移動するように、板バネ6がたわむ。さらに、プッシャーPを前方y1に移動させる。プッシャーPは、ガイド面m1を側縁waが沿うように移動する。そして、板バネ6がさらにたわんでいく。これにより、押進面m2が前方y1に移動するとともに、上方にも移動する。さらに、プッシャーPを前方y1に移動させる。すると、押進面m2が側面w1cに当接することとなる。このようにして、ガイド面m1は、側面w1cを押進面m2まで誘導する。さらに、プッシャーPを前方y1に移動させる。すると、図7(b)に示すように、押進面m2が側面w1cを前方y1に向かって押動する。そして、ウエハw1がウエハ挟持ユニットAから完全に押し出され、ウエハw1の全体が図1に示した可動床81の表面に位置するまで、ウエハw1を押動する。
【0049】
次に、図1を用いて、ウエハwを抽出する工程について説明する。
【0050】
まず、プッシャーPにより押動され、可動床81の表面を移動しているウエハwの状態を、検出手段83により検出する。たとえば、ウエハwの表面に光を出射しその反射光を測定するなどして、ウエハwのヒビや割れなどを調べるための公知のプロセスを実行する。次に、検出手段83により検出されたウエハwに関する信号を上述した処理手段に送る。入力された信号により、上記処理手段は、ウエハwの状態が、割れているなどの不良状態であるか否かを判断する。これは、本発明において、ウエハwの状態が所定の条件を満たしているか否かを判断することに相当する。
【0051】
次に、ウエハwの状態が不良状態であると上記処理手段が判断した場合、上記処理手段は可動床81の駆動機構に、可動床81を開放させるための信号を出力する。このとき、可動床81は回動し、ウエハwがシュート82に落下する。そして一定時間経過後、上記処理手段は、上記駆動機構に、可動床81を水平状態に戻すための信号を出力する。一方、ウエハwの状態が不良状態でないと上記処理手段が判断した場合には、上記処理手段は、上記駆動機構に信号を出力させない。そのため、可動床81は水平のまま保たれる。
【0052】
可動床81が水平状態のまま保たれている場合には、その後、ウエハwを、可動床81により搬送し、ポケットc1に収容する。このとき、ウエハwを所望のポケットc1に収容するために、カセットcの高さをリフトにより調整しておく。上述したウエハwの押出し工程、ウエハwの状態を検出する工程、および、ここで述べたウエハwをポケットc1に収容する工程は、停滞することなく一連に行う。以上の工程により、ウエハ搬送装置Xを用いたウエハwの製造が終了する。
【0053】
次に、本実施形態にかかる半導体ウエハ製造方法、ウエハ挟持ユニット、およびウエハ搬送装置の作用について説明する。
【0054】
本実施形態によれば、複数のウエハwから支持部材1を分離する工程において、ウエハ挟持ユニットAによって、複数のウエハwが離間している状態が維持される。そのため、この工程において、ウエハwどうしが密着しにくい。これにより、その後のウエハwの取扱いが容易になる。また、保持部21b,22bが形成されているため、ウエハwが列方向x2に移動しにくい。特に、本実施形態では、ウエハwの表面は、複数の棒状体bに挟まれている。ウエハwが列方向x2に移動しようとしても、棒状体bに当たる。そのため、ウエハwは、列方向x2に移動しにくい。このことは、複数の上記ウエハwが離間した状態を維持するのに好適である。
【0055】
本実施形態では、ウエハwをウエハ挟持ユニットAから取り出すのに、プッシャーPを用いている。これは、ウエハwを一枚ずつ、ウエハ挟持ユニットAから取り出すのに好適である。
【0056】
プッシャーPにより、ウエハwを押出すとき、側面wcがガイド面m1に当接した場合でも、板バネ6がたわむことにより、押進面m2およびガイド面m1が支点sを中心として移動してゆく。そして、側面wcは押進面m2により押されることとなる。そのため、押進面m2と側面wcとの位置合わせに多少の誤差が生じたとしても、押進面m2が側面wcを確実に押すことが可能となる。
【0057】
また、プッシャーPは板バネ6を備えている。そのため、ウエハw1の押出しを完了した後に、ウエハw2を押出すためにプッシャーPを初期の位置に戻した際には、板バネ6がたわみのない状態に戻る。そのため、ウエハ挟持ユニットAが鉛直方向に沿って配置されている状態でなくても、プッシャーPを用いて、ウエハwの押出しを容易に行うことができる。
【0058】
本実施形態においては、ウエハ挟持ユニットAおよびカセットcは、それぞれ、鉛直方向に移動可能となっている。そのため、ポケットc1を、ウエハ挟持ユニットAにおけるウエハwと鉛直方向において同位置に配置することにより、ウエハwを、容易に所望のポケットc1に収容することが可能となっている。また、ウエハwは、ウエハ挟持ユニットAから押し出された後、ウエハ検査ユニットDを通過し、そのままポケットc1に収容される。この一連の工程では、ウエハwの面方向を変化させる必要がない。以上より、押し出されたウエハwをポケットc1に収容させるまでの工程を、簡素にすることができる。
【0059】
本実施形態においては、ウエハwがウエハ挟持ユニットAから押し出されてポケットc1に収容されるまでに、検出手段83がウエハwの状態を検出する。そして、検出手段83において、ウエハwが、たとえば不良であると判断された場合には、このウエハwはカセットcには収容されない。そのため、カセットcにウエハwを収容後ウエハwの状態を検出する、などといった煩わしい作業をする必要がない。これにより、ウエハwの製造の効率化を図ることが可能となる。
【0060】
図8は、本発明の他の実施形態にかかるウエハ挟持部材の要部拡大図を示している。同図は、上述した実施形態で示した図3に対応する。なお、この図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。本実施形態は、保持部21bの形状が上述した実施形態と異なる。
【0061】
本実施形態では、保持部21bが弾性材料から構成された膜状とされている。上述した実施形態におけるものと同様に、複数のウエハwは、保持部21b,22bに面内方向x1の両端から挟まれている。このような構成によれば、ウエハwの側縁waは、保持部21bの表面が凹状となるように、保持部21bに食い込んでいる。そのため、ウエハwに列方向x2に移動させる力が働いても、ウエハwは列方向x2に移動しにくい。このことは、複数の上記ウエハwを離間させた状態を維持するのに好適である。
【0062】
また、本実施形態においても、上述と同様の効果を奏する。さらに、保持部21bは、挟持板21a,22aの表面と垂直方向である面内方向x1に突出し、かつ、列方向x2に延びるひだ状でもよい。
【0063】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る半導体ウエハ製造方法、ウエハ挟持部材、およびウエハ搬送装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0064】
たとえば、本発明にかかる上記支持部材が接合される上記ウエハの上記端縁と、上記側縁の一部とが、上記ウエハにおける同一の辺に位置していても構わない。また、本発明にかかる移動手段は、プッシャーに限定されない。たとえば、上記ウエハを吸着するアームを用いてもよい。また、一対の上記挟持部材は、一体成型されたものでも構わない。
【0065】
本発明にかかる上記押進面は、上記板バネに形成されていてもよい。また、上記プッシャーは、板バネを用いている必要はない。たとえば、上記支持体から一定角度をなす範囲内において、上記支点を中心に回動可能な板を用いてもよい。そして、この板に、上記ガイド面および上記押進面を形成するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態にかかるウエハ搬送装置の正面図である。
【図2】図1に示したウエハ挟持ユニットの右側面図である。
【図3】図2における領域IIIの部分拡大図である。
【図4】図1に示したプッシャーの要部拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に基づく半導体ウエハ製造方法を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に基づく半導体ウエハ製造方法の一工程を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に基づく半導体ウエハ製造方法の一工程を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかる挟持部材の要部拡大図である。
【図9】従来の半導体ウエハの製造方法の一工程を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
X ウエハ搬送装置
A ウエハ挟持ユニット
P プッシャー(移動手段)
c カセット
D ウエハ検査ユニット
1 支持部材
21,22 ウエハ挟持部材
21a,22a 挟持板
21b,22b 保持部
23 連結板
31,32 リフタ
5 支持体
6 板バネ
7 爪板
81 可動床
811 軸
82 シュート
83 検出手段
84 移動経路
b 棒状体
s 支点
c1 ポケット
x2 列方向
m1 ガイド面
m2 押進面
x1,x3 面内方向
y1 前方
y2 後方
w,w1,w2,w3 ウエハ
wa 側縁
wb 端縁
wc,w1c 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隙間を隔てて対向するように列をなした状態で各々の端縁の一部が支持部材に接合され、かつ、各々が面内方向において両側に位置する一対の側縁を備えた、半導体からなる複数のウエハを、上記支持部材から分離する工程を有する半導体ウエハ製造方法であって、
上記分離する工程は、上記複数のウエハを、上記一対の側縁において一対の挟持部材で挟持した状態で行われることを特徴とする、半導体ウエハ製造方法。
【請求項2】
上記挟持部材は、上記ウエハ側の表面に形成された保持部を備え、
この保持部は、上記ウエハを上記面内方向に移動させる力を、上記ウエハを上記ウエハの列方向に移動させる力よりも小とするものである、請求項1に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項3】
上記保持部は、上記面内方向に延びる、弾性材料からなる複数の棒状体とされている、請求項2に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項4】
上記保持部は、ブラシ状とされている、請求項2または3に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項5】
上記保持部は、弾性材料からなる膜とされている、請求項2に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項6】
上記ウエハを分離する工程の後に、上記ウエハのいずれか一つを、上記面内方向に沿ってプッシャーにより押出す工程をさらに備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項7】
上記プッシャーは、
上記面内方向に沿って前後方向に自在に移動できる支点から、一定距離を保ちつつ揺動可能に構成されている、上記ウエハの側面を前方に向かって押す押進面と、
上記押進面より前方、かつ、上記支点の後方に位置しているとともに、上記押進面に連結および固定され上記側縁を上記押進面まで誘導するガイド面と、
を含む、請求項6に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項8】
上記プッシャーは、支持体と、上記支持体に固定されている板ばねと、を備え、
上記支点が、上記支持体および上記板ばねが固定された部分であり、
上記ガイド面が、上記板ばねの表面である、請求項7に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項9】
上記押出す工程の後に、上記列方向に並ぶ複数のウエハ収容部を備えたカセットに、上記ウエハを一枚ずつ収容する収容工程をさらに備える、請求項6ないし8のいずれかに記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項10】
上記カセットは、上記挟持部材で挟まれた複数の上記ウエハに対して、上記列方向に沿って相対移動自在である、請求項9に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項11】
上記押出す工程の後であり上記収容工程の前に、上記ウエハの状態を検査する検査工程をさらに備えている、請求項9または10に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項12】
上記検査工程においては、光電センサにより上記ウエハの状態を判断する、請求項11に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項13】
上記検査工程と上記収容工程との間に、上記検査工程において所定の条件を満たしている上記ウエハのみに上記収容工程を実行させる判断工程をさらに備える、請求項11または12に記載の半導体ウエハ製造方法。
【請求項14】
互いに隙間を隔てて対向するように列をなし、かつ、各々が面内方向において両側に位置する一対の側縁を備えた、半導体からなる複数のウエハを、上記一対の側縁において挟み、
上記ウエハを上記面内方向に移動させる力を、上記ウエハを上記ウエハの列方向に移動させる力よりも小さくする上記ウエハの保持部を備えていることを特徴とする、ウエハ挟持ユニット。
【請求項15】
上記保持部はブラシ状とされている、請求項14に記載のウエハ挟持ユニット。
【請求項16】
上記保持部は弾性部材からなる膜とされている、請求項14に記載のウエハ挟持ユニット。
【請求項17】
請求項14ないし16のいずれかに記載のウエハ挟持ユニットと、
上記ウエハ挟持ユニットにより挟まれた上記ウエハを移動させる移動手段と、
を含むウエハ搬送装置。
【請求項18】
上記移動手段は、
上記面内方向に沿って前後方向に自在に移動できる支点から、一定距離を保ちつつ揺動可能に構成されている、上記ウエハの側面を前方に向かって押す押進面と、
上記押進面より前方、かつ、上記支点の後方に位置しているとともに、上記押進面に連結および固定され上記側面を上記押進面まで誘導するガイド面と、
を備えた、上記ウエハを上記面内方向に沿って押すプッシャーとされている、請求項17に記載のウエハ搬送装置。
【請求項19】
複数の上記ウエハの列方向に並ぶ複数のウエハ収容部を備えたカセットが、上記ウエハ挟持ユニットに並設された、請求項17または18に記載のウエハ搬送装置。
【請求項20】
上記ウエハ挟持ユニットに挟まれている位置から上記カセットに至るまでの上記ウエハの移動経路上における上記ウエハの状態を検出する検出手段をさらに備える、請求項19に記載のウエハ搬送装置。
【請求項21】
上記列方向は、鉛直方向と一致しており、
上記検出手段において上記ウエハが上記所定の条件を満たしている場合、上記ウエハを上記カセットに収容させ、上記検出手段において上記ウエハが上記所定の条件を満たしていない場合、上記ウエハを上記移動経路から下方にそらす処理手段を備える、請求項20に記載のウエハ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−135588(P2010−135588A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310703(P2008−310703)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000153672)株式会社住友金属ファインテック (35)
【Fターム(参考)】