説明

半導体ウエーハ外観検査装置の検査条件データ生成方法及び検査システム

【課題】 ウエーハ外観検査装置の検査条件データを生成する方法において、複数台の検査装置に対する共通の検査条件データを生成し、機差を考慮した装置毎の検査条件データを短時間で生成できる方法及び検査システムを提供する。
【解決手段】 ウエーハ検査装置の検査条件データを生成する方法であって、同一の検査機能を有する複数台の検査装置の検査条件データが、各検査装置毎に設計値に対する機差を算出し、機差補正データを登録するステップと、選択されたいずれかの検査装置において、ウエーハを用いて検査条件データを作成するステップと、前記検査条件データと、前記選択されたいずれかの検査装置の前記機差補正データと、から共通検査条件データを生成するステップと、前記共通検査条件データと、各検査装置毎の前記機差補正データと、から各検査装置毎の検査条件データを生成するステップからなるウエーハ検査条件生成方法及び検査システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハの外観検査を行う装置における、検査条件データ生成方法及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは、半導体ウエーハと呼ばれる基板上に、回路パターンが幾重にも積層形成されて製造されている。この半導体チップは、製造過程において回路パターン形成と検査が所定回数交互に行われ、後にウエーハから半導体チップを所定の寸法に切り出し、完成する。この回路パターン形成過程において、ウエーハ上の傷や異物、回路パターンの崩れなどの、欠陥の有無について、半導体ウエーハ外観検査装置を用いた検査が行われている。
【0003】
前記半導体ウエーハ外観検査では、検査される半導体チップの品種や位置決めの基準となるマークの位置情報、検査対象となるチップの場所や配列、使用するレンズの倍率、検査時の焦点位置や照明の明るさ等の検査条件の情報群が登録された、検査条件データに基づいて検査が行われる。この検査条件データは、検査対象となるウエーハの品種が追加される度に、検査する装置を使用して検討、決定され、登録される。その後、実際の検査過程では、この検査条件データに基づいて、回路パターンを撮像して得られた画像と、予め登録された基準画像とを照合し、その半導体チップが良品か不良品かの判定が行われる。
【0004】
多数のウエーハを検査する場合、1台の検査装置では所定の時間内で検査できるウエーハの枚数には上限があるため、複数台の検査装置を用いられる。
【0005】
特許文献1によれば、半導体の検査方法および装置において、標準試料を用いて所望の検査パラメータ値を求め、欠陥部の抵抗値を推定する手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−319721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の検査装置は、装置仕様に基づいて設計され、各部寸法が予め設計値として決定されており、その設計値を元に製作されている。しかし、部品加工や組立作業は、一般公差や公差指定と呼ばれる精度の範囲内で行われているのが通常である。そのため、完成した検査装置の各部寸法には、設計値と比べると、前記公差を起因とした寸法のずれが含まれている。また、複数の検査装置同士を比較すると、前記寸法のずれは装置間相互でも差があり、装置毎の設計値と前記寸法のずれとは機差と呼ばれている。
【0008】
これらの機差は、装置外観上は問題無く、同一品種のウエーハをある1つの装置を用いて検査をする場合にも問題とはされなかった。しかし、複数の装置を用いて検査する場合、検査条件データを共通化して良品か不良品の判定をおこなう上では、前記機差の大きさは無視できない寸法である。そのため、前記機差は、複数の装置を用いて検査する際に、検査条件データを共通化して使用する妨げとなる要因となっていた。
【0009】
前記理由のため、従来の検査装置を複数台用いて、同一品種のウエーハを検査する場合、それぞれの検査装置で個別に検査条件データを作成し、データを登録し、検査が行われていた。
【0010】
従来の検査条件データ生成手順について、図に示しながら説明する。
図9は、従来の検査条件データ生成手順を示すフロー図である。
先ず、ウエーハ外観検査装置1は、装置仕様に基づいて設計され、各部寸法が予め設計値として決定(S201)される。
【0011】
その後、装置Aが製作(S202)され、検査装置Aを使用して品種#N(N=1,2,3・・・)に対する装置Aの検査条件データ#Na(N=1,2,3・・・)を作成(S203)する。
【0012】
この検査条件データ#Naに基づいて、装置Aを使用して品種#Nに対する検査(S204)が行われる。またその後、もう1台の装置Bが製作(S205)され、検査装置Bを使用して品種#N(N=1,2,3・・・)に対する装置Bの検査条件データ#Nb(N=1,2,3・・・)を作成(S206)する。
【0013】
この検査条件データ#Nbに基づいて、装置Bを使用して品種#Nに対する検査(S207)が行われる。そして、装置Cについても同様の手順で、装置が製作され、装置毎に検査条件データを作成し、検査が行われる(S208〜S210)。
【0014】
前記のように、複数台の装置は同じ設計値に基づいて製作されたとしても、前記公差を起因とする機差があるため、それぞれが別の装置として扱われ、同一品種のウエーハを検査するにおいても、個々に検査条件データの作成が行われていた。
【0015】
したがって、検査対象となるウエーハの品種数や、検査装置の台数が増えると、それぞれの検査装置に対して、同じウエーハを検査するための検査条件データを登録する必要があった。そのため、検査条件データの登録作業には多大な時間と労力を必要としていた。また、検査装置のシステムトラブルなどが発生し検査条件データが失われてしまった場合、登録していた品種すべてについて、再び検査条件データを登録し直す必要があった。そのため、検査条件データの再登録作業には多大な時間と労力を必要としていた。
【0016】
そこで本発明の目的は、ウエーハ上に形成された半導体チップの外観を検査する検査装置の検査条件データを生成するウエーハ検査条件生成方法において、複数台の検査装置に対する共通の検査条件データを生成し、機差を考慮した装置毎の検査条件データを短時間で生成できる方法及び検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
ウエーハ上に形成された半導体チップの外観を検査する検査装置の検査条件データを生成するウエーハ検査条件生成方法であって、
同一の検査機能を有する複数台のウエーハ検査装置の検査条件データが、
各ウエーハ検査装置毎に設計値に対する機差を算出し、機差補正データを登録するステップと、
選択されたいずれかのウエーハ検査装置において、ウエーハを用いて検査条件データを作成するステップと、
前記検査条件データと、前記選択されたいずれかのウエーハ検査装置の前記機差補正データと、から共通検査条件データを生成するステップと、
前記共通検査条件データと、各ウエーハ検査装置毎の前記機差補正データと、から各ウエーハ検査装置毎の検査条件データを生成するステップと、
からなることを特徴とするウエーハ検査条件生成方法である。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記機差補正データが、
少なくとも、
ウエーハ検査装置に設けられている、ウエーハを載置するテーブルの検査ステージの原点位置とウエーハを検査する検査カメラの中心位置および前記検査ステージに載置されたウエーハの中心位置との誤差データと、
ウエーハを検査する検査カメラの、合焦位置の誤差データと、
前記検査カメラに備えられているレンズの、観察倍率の誤差データと、
前記検査カメラに備えられている照明用光源の、所望輝度に対する設定値の誤差データのいずれかの誤差データを含む、
ウエーハ検査条件生成方法である。
【0019】
請求項3に記載の発明は、
ウエーハ上に形成された半導体チップの外観を検査する検査装置の検査条件データを生成するウエーハ検査システムであって、
同一の検査機能を有する複数台のウエーハ検査装置の検査条件データが、
各ウエーハ検査装置毎に設計値に対する機差を算出し、機差補正データを登録する、機差補正データ登録手段と、
選択されたいずれかのウエーハ検査装置において、ウエーハを用いて検査条件データを作成する、検査条件データ作成手段と、
前記検査条件データと、前記選択されたいずれかのウエーハ検査装置の前記機差補正データと、から共通検査条件データを生成する、共通検査条件データ生成手段と、
前記共通検査条件データと、各ウエーハ検査装置毎の前記機差補正データと、から各ウエーハ検査装置毎の検査条件データを生成する、検査条件データ生成手段、
を備えたことを特徴とするウエーハ検査システムである。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記機差補正データが、
少なくとも、
ウエーハ検査装置に設けられている、ウエーハを載置するテーブルの検査ステージの原点位置とウエーハを検査する検査カメラの中心位置および前記検査ステージに載置されたウエーハの中心位置との誤差データと、
ウエーハを検査する検査カメラの、合焦位置の誤差データと、
前記検査カメラに備えられているレンズの、観察倍率の誤差データと、
前記検査カメラに備えられている照明用光源の、所望輝度に対する設定値の誤差データのいずれかの誤差データを含む、
ウエーハ検査システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のウエーハ検査条件生成方法及び検査システムによれば、設計値に対する各ウエーハ検査装置との機差から、各ウエーハ検査装置毎に機差補正データを求めて登録しておき、複数のウエーハ検査装置のいずれかを用いて検査条件データを作成するので、他の装置で使用可能となる共通の検査条件データを生成することができ、この共通の検査条件データと各ウエーハ検査装置毎の機差補正データとから、各ウエーハ検査装置毎の検査条件データが生成されるので、あらためて検査条件データを作成し直す手間が省ける。
【0022】
これにより、複数の装置を用いて多数のウエーハを検査する場合であっても、短時間で共通する複数品種の検査条件データを生成することが出来、個々にデータを作成し直す時間と労力を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のウエーハ外観検査装置の斜視図である。
【図2】本発明のウエーハ外観検査装置の構成図である。
【図3】ウエーハ上にパターニングされた半導体チップの一例を示した図である。
【図4】本発明の検査条件データ生成手順を示すフロー図である。
【図5】本発明のウエーハ外観検査装置における、X軸ステージとY軸ステージと各部との位置関係を示した平面図である。
【図6】本発明のウエーハ外観検査装置における、撮像光学ユニット3と各部との位置関係を示した側面図である。
【図7】本発明のウエーハ外観検査装置における、光学系寸法と各部寸法との関係を示した平面図である。
【図8】本発明のウエーハ外観検査装置における、照明用光源の設定値と輝度との関係を示したグラフである。
【図9】従来の検査条件データ生成手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、図に示しながら説明を行う。
図1は、本発明のウエーハ外観検査装置の斜視図である。
図2は、本発明のウエーハ外観検査装置の構成図であり、主要機器の構成を示している。
各図において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向とする。また、Z方向を中心として回転する方向をθ方向とする。
【0025】
本発明のウエーハ外観検査装置1には、検査対象となるウエーハ10を載置させてXY方向に移動させる検査ステージ部2と、ウエーハ10上の少なくとも一部の範囲を撮像する撮像光学ユニット3とが共に載設されて含まれ、検査ステージ部2や撮像光学ユニット3を統括して制御するために、検査ステージ部2と撮像光学ユニット3とに接続された機器が含まれた制御部4とが含まれる。また、ウエーハ外観検査装置1には、検査対象となるウエーハ10を検査ステージ部に載置するために所定の位置に搬送し、検査後はウエーハ10を搬出するためのウエーハ搬送部5が含まれる。また、ウエーハ外観検査装置1には、検査前のウエーハや検査後のウエーハを収納するカセット61及びカセット載置台62が併設されている。
【0026】
次に、検査装置を構成する各主要部について詳細に説明する。
【0027】
[ウエーハ]
図3は、ウエーハ10上にパターニングされた半導体チップの一例を示した図である。
図3(a)はウエーハ全体を示した図であり、図3(b)はウエーハの一部を拡大した図である。図3(a)に示すように、ウエーハ10の一端には、オリフラ11と呼ばれる平坦部分があり、ウエーハ10の向きを揃える基準として使用される。他にウエーハ10の向きを揃えるための基準としては、前記オリフラ11の他に、ノッチと呼ばれるウエーハ円周上の一部に付けられた凹み部を使用する場合もある。
【0028】
ウエーハ10の上には、アライメントマーク12と、半導体チップの電気配線や絶縁膜などの回路パターン13とがパターニングされている。図3(b)に示すように、半導体チップの電気配線や絶縁膜などの回路パターン13には、チップ毎のアライメントマーク12aと、回路部14と、電極部15とが含まれており、回路部14と電極部15とは、回路パターン13内でつながっている。
【0029】
図3(c)は別の品種のウエーハ全体を示した図であり、図3(d)は前記別の品種のウエーハの一部を拡大した図である。図3(c)で示したウエーハ10の上には、アライメントマーク12と、複数の半導体チップの電気配線や絶縁膜などからなる回路パターンが群16とがパターニングされている。図3(d)に示すように、半導体チップの電気配線や絶縁膜などの回路パターン13には、チップ毎のアライメントマーク12aと、回路部14と、電極部15とが含まれており、回路部14と電極部15とは、回路パターン13内でつながっている。
【0030】
本発明のウエーハ外観検査装置1では、前記のようなウエーハ上の回路パターン13の回路部14や電極部15の外観形状を検査する。
【0031】
アライメントマーク12は、ウエーハ上の各チップや回路パターンなどの位置座標を示す基準となっている。ウエーハ10上のアライメントマーク12の位置や、アライメントマーク12に対する回路パターン13との相対位置は、品種毎に予め定められ、決まった値になっている。
【0032】
[検査ステージ部]
検査ステージ部2は、装置ベース21上に配置されたX軸ステージ22と、X軸ステージ上22に配置されたY軸ステージ23と、Y軸ステージ23上に配置されたθ軸ステージ24と、θ軸ステージ24上に配置されたテーブル25とで構成されている。X軸ステージ22は、その上に配置されたY軸ステージ23をX方向に移動可能な状態で、装置ベース21上に配置されている。また、前記Y軸ステージ23は、その上に配置されたθ軸ステージ24およびテーブル25をY方向に移動可能な状態で、X軸ステージ22上に配置されている。したがって、テーブル25は、装置ベース21上でXYθ方向に移動可能となっている。
【0033】
ウエーハ10は、テーブル25の上に載置されるが、検査中は真空吸着などの方法により位置ずれしないようになっている一方、検査が終わると真空吸着を解除されてテーブル25から簡単に取り外しが可能なようになっている。
【0034】
X軸ステージ22とY軸ステージ23とθ軸ステージ24とは、制御部4の制御用コンピュータ41と接続されており、ウエーハ10の載置されたテーブル25を所定の位置に移動させたり、静止させたりすることが可能になっている。
【0035】
[撮像光学ユニット]
撮像光学ユニット3には、ウエーハ10と一定の間隔をもってウエーハ10に向けられた対物レンズ31と、対物レンズ31と隣接して載設されて対物レンズ31を通して観察されたウエーハ10上の画像を検査カメラ34に結像させる光学系33と、光学系33に隣接して載設されて撮像した画像を電気信号に変換する検査カメラ34とが含まれている。
【0036】
対物レンズ31は、ウエーハ10を観察する際の倍率を切り替えることができるように、複数本用意され、レボルバー機構32と呼ばれる回転切替機構に取り付けられ、撮像光学ユニット3に取り付けられている。
【0037】
撮像光学ユニット駆動部35は、ウエーハ10が載置された検査ステージ部2が載設されている装置ベース21に載設された支柱部37に載設されている。撮像光学ユニット駆動部35には、撮像光学ユニット3がZ方向に移動可能なように取り付けられている。また、撮像光学ユニット3には、ウエーハ10と対物レンズ31との距離を測定するための測距センサー(図示せず)が備えられている。
【0038】
撮像光学ユニット3の光学系33には、照明が接続され、前記照明には照明用光源36が接続されている。照明用光源36の明るさ設定を変更することにより、ウエーハ10の観察時の明るさを調節が可能になっている。
【0039】
ウエーハ外観検査装置1はこのような装置構成をしているので、ウエーハ10の少なくとも一部を、検査カメラ34で撮像することが可能となっている。光学系33は、少なくとも1枚以上の凸レンズや凹レンズが含まれ、照明用光源36からの光を対物レンズ31を通してウエーハ10に向け、ウエーハ10で反射した光を対物レンズ31から検査カメラ34に照射させることが可能な構造となっている。
【0040】
[制御部]
制御部4には、検査ステージ部2のX軸ステージ22とY軸ステージ23とθ軸ステージ24と撮像光学ユニット駆動部35と照明用光源36とに接続された制御用コンピュータ41と、検査条件データや検査結果データを保存するためのデータ管理用コンピュータ42と、検査カメラ34と制御用コンピュータ41とデータ管理用コンピュータ42とに接続された画像処理用コンピュータ43と、が含まれている。
【0041】
前記制御用コンピュータ41には、接続されている機器の制御に関する、パラメータと呼ばれる各種データを記録するための、情報記録媒体46aが接続されている。また、前記データ管理用コンピュータ42には、検査条件データと呼ばれる検査対象毎の検査条件や、検査の結果などのデータを記録するための、情報記録媒体46bが接続されている。また、前記画像処理用コンピュータ43には、検査の合格もしくは不合格を判定するための基準画像などのデータを記録するための、情報記録媒体46cが接続されている。前記情報記録媒体46a,46b,46cとしては、磁気ディスクや光磁気ディスクや光ディスクなどの磁気や光の変化をデータとして記録した記録媒体や、半導体メモリなどが例示できる。
【0042】
前記情報記録媒体46cには、検査の合格もしくは不合格を判定するための基準となる画像が登録されており、画像処理用コンピュータ43において前記基準となる画像と検査対象となる画像とを比較し、予め定められた判定基準にしたがって、検査の合格もしくは不合格の判定が行われる。
【0043】
前記制御用コンピュータ41と、前記データ管理用コンピュータ42には、装置の運転状況や異常履歴情報、検査条件データの値などを表示するための情報表示手段44aが、表示切替手段44cを介して接続されている。また、前記画像処理用コンピュータ43には、検査時に撮像した画像や、検査結果、不良箇所などを表示するための情報表示手段44bが接続されている。情報表示手段44a,44bとしては、ブラウン管や液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELや発光ダイオードなどの発光素子を用いたディスプレイなどが例示できる。
【0044】
前記制御用コンピュータ41と、前記データ管理用コンピュータ42と、前記画像処理用コンピュータ43には、検査条件データの設定値を入力したり編集したりするための情報入力手段45が入力切替手段45aを介して接続されている。前記情報表示手段44a,44bと、前記表示切替手段44cと、前記情報入力手段45と、前記入力切替手段45aと、情報記録媒体46a,46b,46cとは、制御部4に含まれている。
【0045】
制御部4のデータ管理用コンピュータ42には、外部装置とのデータアクセス手段47が備えられている。前記情報記録媒体46a,46b,46cに記録された、前記共通検査条件データや前記検査条件データ、前記基準画像などの各種データは、前記外部装置とのデータアクセス手段47を介して、他の装置のデータと交換したり、万が一の故障に備えて装置外に保存したりすることができる。前記外部装置とのデータアクセス手段としては、取り外し可能な磁気ディスクや半導体メモリなどのデータ記録媒体を用いる手段や、電気信号や光信号や電波を利用したデータ通信の手段などが例示できる。
【0046】
[搬送部/カセット/プリアライナ部]
ウエーハ搬送部5は、検査ステージ部2に隣接して配置され、ウエーハ10を搬送するための可動機構を備えたロボット51と、ウエーハ10を保持するハンド部52とが含まれている。
【0047】
ハンド部52は、ロボット51の可動機構と連結されており、ウエーハ10を保持したまま又はウエーハ10を保持しない状態で、XYZ方向に自在に移動できるようになっている。また、ロボット51には、X方向に移動する機構や、θ方向にハンド部を回転させる機構も備えている。
【0048】
また、ウエーハ搬送部5は、ウエーハ10を収納するカセット61を載置するための、カセット載置台62や、プリアライナ部7にも隣接して配置されている。プリアライナ部7は、ウエーハ10の中心位置を所定の位置に合わせ直したり、オリフラ11やノッチの方向を所定の方向に揃えたりする、プリアライメント機能を持っている。
前記のように、本発明のウエーハ外観検査装置1は構成されている。
【0049】
次に、ウエーハ外観検査装置1における、代表的な検査フローについて、順を追って説明する。
[検査条件データ作成]
ウエーハ10の検査に先立ち、検査条件データを作成する。
検査条件データは、検査条件データを管理するための管理番号(品種#N,N=1,2,3・・・)と、ウエーハ10上のアライメントマーク12の位置と、前記アライメントマーク12の画像と、ウエーハ10上の座標と、第1番目の検査に用いるチップの基準画像と、撮像倍率と、照明の明るさ設定値と、検査開始位置と、検査ルートとを含んでいる。さらに、同じウエーハ10に対して、再度の観察倍率を変更して検査を継続する場合は、第n番目(n=2,3,4・・・)の検査に用いるチップの基準画像と、撮像倍率と、照明の明るさ設定値と、検査開始位置と、検査ルートとを含んでいる。
【0050】
次に、良品として扱う半導体チップが含まれたウエーハ10を選択する。前記ウエーハ10を、プリアライナ部7でオリフラの向きを揃え、ウエーハ外観検査装置1のテーブル25上に載置する。次に、前記ウエーハ10上にパターニングされているアライメントマーク12が検査カメラ34で撮像できる位置に、X軸ステージ22とY軸ステージ23を移動させる。次に、前記ウエーハ10上のアライメントマーク12を検査カメラ34で観察し、予め登録されている基準位置とのずれから、XYθ方向の位置ずれ量を計算し、前記基準位置と整合するように位置決め動作を行う。
【0051】
前記ウエーハ10上にパターニングされた半導体チップの中から、良品として扱う半導体チップを選択し、その半導体チップが検査カメラ34で撮像できる位置に、X軸ステージ22とY軸ステージ23を移動させる。
【0052】
レンズ倍率は、半導体チップの大きさと、欠陥の大きさの程度から適宜選択し、決定する。照明の明るさは、撮像した画像の明るさ、ついては半導体ウエーハ10上のチップパターンの反射率やコントラストにより適宜調整し、決定する。画像を撮像するレンズ倍率や照明の明るさ設定値を決定した後、その条件で、良品として扱う半導体チップの画像を検査カメラ34で撮像する。
【0053】
[検査条件データ選択]
次に、ウエーハ外観検査装置1において、検査するウエーハ10に対する検査条件データを選択する。前記検査条件データは、予め登録されているもの中から選択し使用する。もし、前記検査条件データが予め登録されていない場合は新規に登録する。
【0054】
[ウエーハ搬送/プリアライメント/ウエーハ載置]
次に、検査するウエーハ10を、前記カセット61からウエーハ搬送部5のロボット51を用いて、1枚抜き出す。この時、カセット61から抜き出されたウエーハ10は、前記オリフラやノッチの方向が不定な状態でカセット61内に収納されている。
【0055】
検査するウエーハ10は、予め方向を揃えて検査する必要があるため、先ずプリアライナ部7に搬送される。このプリアライナ部7では、ウエーハ10のほぼ中央を回転中心としてθ方向に回転させながら前記オリフラやノッチを検出し、ウエーハ10の中心位置を揃え、前記オリフラやノッチを所定の方向に向けて保持しておく。
【0056】
次に、プリアライメントの終わったウエーハ10をウエーハ搬送部5のロボット51を用いて、プリアライナ部7から、検査ステージ部2のテーブル25に搬送する。こうすれば、ウエーハ10の前記オリフラやノッチの方向を揃えて、テーブル25に載置することができる。
【0057】
[マークアライメント]
検査するウエーハ10は、テーブル25に載置され、アライメントマーク読み取り位置へ移動する。この時、予め登録された検査条件データに基づいて、レボルバー機構32により対物レンズ31が切り替えられ、照明用光源36からの光の明るさが調節され、撮像光学ユニット駆動部35によりウエーハ10と対物レンズ31との距離が調節される。その後、撮像光学ユニット3の検査カメラ34で、アライメントマーク12が撮像される。
【0058】
ウエーハ10は、ロボット51を用いてテーブル25上に載置されるが、一連の受け渡し動作において、実際の載置位置は若干ずれることがある。この載置位置ずれの要因としては、プリアライメント部7の位置決め精度や、搬送ロボット51の搬送位置精度や、ウエーハ10をテーブル25に載置する時の横滑りなどが示される。
【0059】
前記ウエーハの載置位置ずれを補正するために、ウエーハ10をテーブル25に載置した後、ウエーハ10上のアライメントマーク12の位置を読み取り、検査カメラ34の視野内の基準点と、前記アライメントマーク12の基準位置とのずれ量が算出される。この算出された値と、アライメントマーク12を撮像した時に使用した対物レンズ31の撮像倍率と、光学系33の撮像倍率と検査カメラ34の撮像部の寸法とから、正規の位置に対してどれだけずれているかを演算し、算出される。
【0060】
ウエーハ10の載置時のθ方向の角度ずれは、θ軸ステージ24で角度が補正される。したがって、ウエーハ10が角度ずれを含んでテーブル25上に載置されたとしても、検査カメラ34で撮像する画像には、θ方向の角度ずれが含まれないようになっている。
【0061】
[チップ画像取得/検査]
次に、検査するウエーハ10を検査開始位置へ移動させる。この時、予め登録された検査条件データに基づいて、対物レンズ31が切り替えられ、照明用光源36からの光の明るさが調節される。
【0062】
検査中のウエーハ10の動作としては、ステップアンドリピートと呼ばれるような、検査位置ではウエーハ10を静止させ、検査カメラ34で撮像し、撮像が終われば次の検査位置に移動し、再びウエーハ10を静止させて、検査カメラ34で撮像し、再び次の位置に移動し、これら一連の動作を繰り返す方法がある。また一方では、ウエーハ10を連続移動させながら、照明をストロボのようにごく僅かな時間だけ断続的に発光させ、擬似的な静止状態で撮像する場合とがある。
【0063】
ウエーハ10の移動位置は、使用する対物レンズ31の倍率、照明の明るさ、対物レンズ31とウエーハ10との距離と同様に、検査条件データに登録しておく。
【0064】
前記のような機構および手段により、ウエーハ10を移動させ、ウエーハ10にパターニングされた半導体チップ上の任意の場所について検査カメラ34で撮像し、画像処理用コンピュータ43で撮像した画像に対する合格もしくは不合格の判定が行われる。
【0065】
[ウエーハ搬出]
検査が終了したウエーハ10は、テーブル25上に載置されたまま、ウエーハ受渡位置へ移動する。その後、ロボット51によって搬出され、カセット61に収納される。
ここまでが、ウエーハ外観検査装置1における、代表的な検査フローである。
【0066】
次に、検査条件データ生成手順について、図を用いながら説明をする。図4は、本発明の検査条件データ生成手順を示すフロー図である。
【0067】
装置製作に先立ち、設計値が決定(S101)され、その設計値に基づいて、装置Aが製作(S102)される。複数台の装置を製作するする場合は、同じ設計値に基づいて、装置Bと装置Cが製作される。(S103,S104)
次に、設計値に対する装置Aの機差データを取得し、設計値と装置Aとの機差を算出(S105)する。
【0068】
この機差には、次のものが示される。
(1)ウエーハを載置したテーブルをXY方向の所定の位置に移動させるためのX軸ステージ及びY軸ステージの原点位置に対する、検査カメラの視野の中心位置と、ウエーハ中心位置との相対位置のずれ。
(2)ウエーハを撮像する検査カメラが備えられた撮像ユニットにおける、検査カメラの焦点位置調整機構の原点位置と、検査カメラの合焦位置との相対位置のずれ。
(3)ウエーハを撮像する検査カメラに備えられた対物レンズや光学系の、観察倍率のずれ。
(4)ウエーハを撮像する検査カメラに備えられた照明用光源の、ウエーハ撮像時の所望輝度に対する設定値のずれ。
【0069】
前記機差による前記ずれは、誤差データとして後述の手順によって算出され、機差補正データとして、装置Aの制御用コンピュータ41に接続された、情報記録媒体46aに登録(S106)される。
【0070】
次に、装置Bおよび装置Cに関しても同様の手順で、装置が製作され、設計値との機差を算出し、機差補正データが登録される。(S107〜S110)
続いて、ウエーハの検査に先立ち、検査装置Aを使用して品種#N(N=1,2,3・・・)に対する装置Aの検査条件データ#Na(N=1,2,3・・・)を作成する(S111)。
【0071】
S111で作成された装置Aの検査条件データ#Naと、装置A固有の機差補正データとから、品種#N(N=1,2,3・・・)に対する、共通検査条件データ#N(N=1,2,3・・・)が生成される(S112)。
【0072】
その後、共通検査条件データ#Nと、装置A固有の機差補正データとから、品種#Nに対する装置A用の検査条件データ#Na(N=1,2,3・・・)が生成される(S113)。
【0073】
前記検査条件データ#Naに基づいて、装置Aを使用して品種#Nに対する検査が行われる(S114)。
【0074】
その後、共通検査条件データ#Nと、装置B固有の機差補正データとから、品種#Nに対する装置B用の検査条件データ#Nb(N=1,2,3・・・)が生成される(S115)。
【0075】
その後、前記検査条件データ#Nbに基づいて、装置Bを使用して品種#Nに対する検査が行われる(S116)。
【0076】
更に装置Cを使用する場合も同様に、共通検査条件データ#Nと、装置C固有の機差補正データとから、品種#Nに対する装置C用の検査条件データ#Ncが生成される(S117)。
【0077】
その後、前記検査条件データ#Ncに基づいて、装置Cを使用して品種#Nに対する検査が行われる(S118)。
【0078】
前記の手順を経ることで、装置Aで作成した検査条件データと装置Aの機差データとから、装置Bと装置Cでも使用可能な共通検査条件データが生成され、共通検査条件データと装置Bの機差データから装置Bの検査条件データが、共通検査条件データと装置Cの機差データとから装置Cの検査条件データが生成される。
【0079】
前記S101〜S118では、3台の装置を使用した例を示した。更に装置台数が増える場合は、必要台数の装置に対して同様の手順で作業を行うことで、検査条件データの共有化を具体化できる。
【0080】
また、複数ある装置のいずれかが壊れた場合でも、装置固有の機差補正データを算出及び登録すれば、他装置にある共通の検査条件データから、検査条件データを生成することが可能になる。
【0081】
図に示しながら、各機差について詳細に説明する。
【0082】
[ウエーハ中心位置に関する機差]
機差要因の一つとして、ウエーハ10が載置されているテーブル25をXY方向に移動させるための、X軸ステージ22の原点位置220とY軸ステージ23の原点位置230と、ウエーハ10を載置したテーブル上のウエーハ10の中心位置との相対位置ずれを示すことができる。
【0083】
ウエーハ外観検査装置1のテーブル25上に載置される、ウエーハ10の設計上の中心位置100は、設計上で決められており、検査カメラ34の設計上の視野の中心位置340と一致している。しかし、実際にテーブル25上に載置されるウエーハ10の位置は、プリアライメント部7の位置決め精度や、搬送ロボット51の搬送位置精度や、ウエーハ10をテーブル25に載置する時の横滑りなどにより、ずれが生じるためウエーハ10の載置の度に変化して定まらない。
【0084】
したがって、ウエーハ外観検査装置1では、検査カメラ34でウエーハ10上のアライメントマーク12の位置が検出され、制御部4の制御用コンピュータ41でずれ量が演算され、θ軸ステージ24の角度を調節して、検査時のウエーハ10の角度ずれがなくなるように補正される。
【0085】
前記、ウエーハ10のθ方向の角度ずれが補正された状態での、検査カメラ34の実際の中心位置341と、ウエーハ10の実際の中心位置101との相対位置のずれは、機差として算出し、機差補正データとする必要がある。
【0086】
図5は、本発明のウエーハ外観検査装置1における、X軸ステージ22とY軸ステージ23と各部との位置関係を示した平面図である。図5(a)は設計上の各部位置関係を示している。
【0087】
X軸ステージ22の原点位置220とY軸ステージ23の原点位置230は、その場所がXY平面における「ゼロ点」であることを示す位置である。設計値として、X軸ステージ22を前記原点位置220からX方向にX0だけ動かした位置221で、かつY軸ステージ23を前記原点位置230からY方向にY0だけ動かした位置231での、テーブル25の設計上のテーブル中心位置250と、テーブル25に載置されたウエーハ10の設計上の中心位置100と、検査カメラ34の設計上の視野の中心位置340は一致しているものとする。
【0088】
図5(b)は、実際に製作された装置にウエーハが載置された状態おける、各部位置関係を示した平面図である。この時、θ方向の角度のずれは、既に補正され、XY方向の位置のずれのみが残った状態であることを示している。
【0089】
実際に製作された装置において、X軸ステージ22の原点位置220とY軸ステージ23の原点位置230と、検査カメラ34の実際に製作された装置に載設されている状態での視野331の中心位置341との距離は、公差によるずれがあるため、設計上の視野の中心位置340との距離とは一致していない。
【0090】
X軸ステージ22の原点位置220とY軸ステージ23の原点位置230から、X軸ステージ22をX方向にX1だけ動かした位置222で、かつY軸ステージ23をY方向にY1だけ動かした位置232での、テーブル25の実際のテーブル中心位置と、検査カメラ34の実際の視野の中心位置341とが一致するとする。そうすると、検査カメラ34の設計上の視野の中心位置340と、実際の視野の中心位置341との相対位置は、X方向にX1、Y方向にY1、ずれていることになる。
【0091】
実際にテーブル25上に載置されるウエーハ10の位置は、プリアライメント部7の位置決め精度や、搬送ロボット51の搬送位置精度、さらには、ウエーハ10をテーブル25に載置する時の横滑りなどのずれが生じるため、ウエーハ10の載置の度に変化し、定まらない。
【0092】
そのため、実際のテーブル中心位置と、載置されたウエーハ10の実際の中心位置101とは一致しない。そこで、ウエーハ10に対する近似円を求めるために、ウエーハ10の円周上を検査カメラ34にて撮像し、画像処理用コンピュータ43を用いて、得られたウエーハ10の外形位置情報から、ウエーハ10の実際の中心位置101を演算して算出する。
【0093】
この時の、テーブル25上のウエーハ10の実際の中心位置101と、検査カメラ34の実際の視野331の視野中心位置341とのずれを、X方向にX2、Y方向にY2とする。
【0094】
前記ずれ量X1,Y1,X2,Y2を、カメラ中心位置とウエーハ中心位置に関する機差補正データとして登録する。
【0095】
[撮像光学ユニットの原点と合焦位置の機差]
機差の要因の一つとして、撮像光学ユニット3における、撮像光学ユニット駆動部35の原点復帰時の原点位置と、対物レンズ31の合焦位置との距離のずれを示すことができる。前記距離のずれは、前記原点位置が示すZ方向の「ゼロ点」と、対物レンズ31がウエーハ10上に合焦する合焦位置までの距離のずれを意味する。
【0096】
もし、合焦位置がずれて画像が鮮明でなくなると、正しい検査結果を得られないことになる。したがって、前記Z方向の「ゼロ点」と合焦位置までの距離を合わせることは、ウエーハ10上を観察して検査する場合に重要となる。しかし、前記原点位置と検査カメラ34の合焦位置とに機差があると、ある装置では合焦位置の座標値であっても、他の装置で同じ座標値に移動指令を出したとしても、合焦しないことになる。
【0097】
したがって、Z方向の原点位置と検査カメラ34の合焦位置との距離について、設計上の値と実際の値との差を算出し、撮像光学ユニット上下位置に関する機差補正データとして登録する必要がある。
【0098】
図6は、本発明のウエーハ外観検査装置1における、撮像光学ユニット3と各部との位置関係を示した側面図である。図6(a)は設計上の各部位置関係を示している。
前記撮像光学ユニット駆動部35の原点位置350は、その場所がZ方向における「ゼロ点」であることを示す位置である。
【0099】
設計値として、前記原点位置からZ方向下向きにZ0だけ撮像光学ユニット駆動部35をを移動させたとき、対物レンズ31は合焦し、この時の撮像光学ユニット駆動部35の位置を設計上のレンズ合焦位置310とする。前記設計上のレンズ合焦位置310と、ウエーハの設計上の表面位置100zとの距離をD0とする。
【0100】
図6(b)は、実際に製作された装置における、各部位置関係を示した側面図である。
実際に製作された装置において、設計上のレンズ合焦位置310と、ウエーハの実際の表面位置101zとの距離をD1とする。実際に製作された装置において、前記D0とD1とは公差によるずれがあるため、一致しない。したがって、前記撮像光学ユニット駆動部の原点位置350からZ方向下向きにZ0の距離だけ動いた、前記設計上のレンズ合焦位置310では合焦しない。
【0101】
ウエーハの実際の表面位置101zが、ウエーハの設計上の表面位置100zに対して、Z方向上向きにZ1だけずれていたとする。この場合、実際のレンズ合焦位置311は、設計上のレンズ合焦位置310から、Z方向上向きにZ1の距離だけ動いた位置にある。つまり、D0とD1との差、Z1が、撮像光学ユニット上下位置の機差となる。
【0102】
このZ1は、対物レンズ31を複数使用する場合、それぞれの対物レンズ31毎で実際のレンズ合焦位置311が異なる。したがって、全ての対物レンズ31の合焦位置について、設計上の値と実際の値との差を算出し、撮像光学ユニットの原点と合焦位置に関する機差補正データとして登録しておく。
【0103】
[対物レンズや光学系の観察倍率の機差]
機差の要因の一つとして、撮像時に用いる対物レンズ31や光学系33や検査カメラ34における、実際の倍率及び縦横比を示すことができる。対物レンズ31や光学系33に用いられるレンズには、加工時や組立時の寸法誤差が含まれるため、設計上の倍率及び縦横比と実際の倍率及び縦横比とで、ずれが生じる場合がある。つまり、ある装置の検査カメラ34で撮像した、ウエーハ10上の既知寸法の基準マークを画像認識した場合の画素数と、他の装置で前記基準マークを画像認識した場合の画素数が一致しない場合がある。したがって、所定寸法を観察したときの、設計上の画素数と実際の画素数との差を算出し、観察倍率に関する機差補正データとして登録する必要がある。
【0104】
図7本発明のウエーハ外観検査装置における、光学系寸法と各部寸法との関係を示した平面図である。図7(a)は、設計上のウエーハ外観検査装置1において、撮像光学ユニット3を用いて既知寸法の前記寸法基準マーク17を撮像した状態を示す平面図である。
【0105】
対物レンズ31と光学系33とは、それぞれ複数のレンズを用いられて構成されている場合が多いが、本説明ではそれぞれを1枚のレンズとして図化し、説明を行っている。
【0106】
まず、ウエーハ10上にパターニングされている、既知寸法の前記寸法基準マーク17を選ぶ。前記寸法基準マーク17は、対物レンズ31と光学系33とを通して、検査カメラ34の設計上の視野330a内に撮像された寸法基準マーク170として撮像されている。この時、ウエーハ上の設計上の視野330bは、図で示される範囲となる。
【0107】
前記寸法基準マーク17の寸法は既知で、X方向の寸法をMx0、Y方向の寸法をMy0とする。この時、前記視野330a内に撮像された寸法基準マーク170のX方向の画素数をQx0、Y方向の画素数をQy0とする。
【0108】
また、X方向の画素分解能をαx0、Y方向の画素分解能をαy0と定義すると、数式(1),(2)で示すことができる。
【0109】
【数1】

【0110】
【数2】

【0111】
前記画素分解能は、検査カメラ34の撮像素子1画素に対する、被撮像物の設計上の寸法を意味する。
【0112】
図7(b)は、実際のウエーハ外観検査装置1において、撮像光学ユニット3を用いて前記寸法基準マーク17を撮像した状態を示す平面図である。
【0113】
ウエーハ10上の前記寸法基準マーク17は、対物レンズ31と光学系33とを通して、検査カメラ34の実際の視野331a内に撮像された寸法基準マーク171として撮像されている。前記寸法基準マーク17の寸法は既知で、X方向の寸法をMx0、Y方向の寸法をMy0とする。この時、前記検査カメラ34の実際の視野331a内に撮像された寸法基準マーク171のX方向の画素数をQx1、Y方向の画素数をQy1とする。また、ウエーハ上の実際の視野331bは、図で示される範囲となる。
【0114】
寸法が未知のマーク17aのX方向の寸法をMx2、Y方向の寸法をMy2とし、前記検査カメラ34の実際の視野331a内に撮像された、寸法が未知のマーク17aの実際のX方向の画素数をQx2、Y方向の画素数をQy2とすると、関係式は数式(3)〜(6)で示すことができる。
【0115】
【数1】

【0116】
【数2】

【0117】
【数3】

【0118】
【数4】

また、X方向の画素分解能をαx1、Y方向の画素分解能をαy1と定義すると、数式(7),(8)で示すことができる。
【0119】
【数7】

【0120】
【数8】

【0121】
前記画素分解能は、検査カメラ34の撮像素子1画素に対する、被撮像物の実際の寸法を意味する。この画素分解能は、対物レンズ31や光学系33の組み合わせで異なる。そのため、前記対物レンズ31と前記光学系33との全ての組み合わせにおいて、所定寸法を観察したときの、設計上の画素数と実際の画素数との差を算出し、観察倍率に関する機差補正データとして登録する。
【0122】
[照明用光源の明るさ設定値と輝度の機差]
機差の要因の一つとして、撮像に用いる光源における、光量調整用設定値と実際の輝度のずれを示すことができる。
【0123】
ウエーハ外観検査装置1では、照明用光源36の明るさ設定を、制御用コンピュータ41からのコントロール信号により行っている。制御用コンピュータ41内では、前記コントロール信号は数値、つまりはディジタル信号であるため、機差を生じることはない。
【0124】
しかし、制御用コンピュータ41から照明用光源36に対して、もしくは照明用光源36内の照明調光部に対しては、アナログ信号で明るさの制御される。また、明るさ制御のアナログ信号の値が同じであったとしても、照明個々のバラツキや、照明から対物レンズまでの光の透過率や、対物レンズから光学系を経て検査カメラまでの光の透過率により、装置毎に機差となる。したがって、複数のウエーハ外観検査装置1において、制御用コンピュータ41で設定する明るさの設定値を同じにしても、実際の輝度には機差を生じる場合がある。
【0125】
そのため、所定の輝度を得るための設計上の設定値と実際の設定値との差を、予め基準となるウエーハを使用して、照明の明るさの設定値を徐々に変えながら実際の輝度を測定して算出し、輝度と設定値に関する機差補正データとして登録する必要がある。
【0126】
図8(a)は、照明用光源の明るさ設定値と、設計上の輝度の関係を示すグラフである。縦軸が輝度B、横軸が照明用光源の明るさ設定値Aとなっている。
【0127】
暗点とする明るさ設定値DA0での設計上の輝度をDP0、明点とする明るさ設定値BA0での設計上の輝度をBP0とすると、照明用光源の明るさ設定値と、設計上の輝度とは、BC0で図示されるような、数式(9),(10)で示される関係式となる。
【0128】
【数9】

【0129】
すなわち、
【0130】
【数10】

【0131】
前記数式(10)を用い、所望の輝度Bに対する、設計上の照明用光源の明るさ設定値Aが算出できる。
【0132】
図8(b)は、照明用光源の明るさ設定値と、実際の輝度の関係を示すグラフである。縦軸が輝度B、横軸が照明用光源の明るさ設定値Aとなっている。
【0133】
暗点とする輝度DP0になるような実際の照明用光源の明るさ設定値はDA1となり、明点とする輝度BP0になるような実際の照明用光源の明るさ設定値はBA1となる。したがって、照明用光源の明るさ設定値と、実際の輝度とは、BC1で図示されるような、数式(11),(12)で示される関係式となる。
【0134】
【数11】

【0135】
すなわち、
【0136】
【数12】

【0137】
前記数式(12)を用い、所望の輝度Bに対する、実際の照明用光源の明るさ設定値Aを算出できる。
【0138】
前記数式(10),(12)において、所望の輝度となる設計上の設定値と実際の設定値とのずれは、実際に製作した装置毎で異なり、機差となる。また、使用する対物レンズ31や光学系33、検査カメラ34の組み合わせにより異なる。
【0139】
したがって、使用する対物レンズ31や光学系33、検査カメラ34全ての組み合わせにおいて、所望の輝度に対する設計上の明るさ設定値と、実際の明るさ設定値との差を算出し、照明輝度に関する機差補正データとして登録する。
【0140】
前記の手順にしたがって、装置毎に機差を算出し、装置固有の機差補正データとして登録することで、ある装置で作成された検査条件データから、他の装置で使用可能な共通検査条件データが生成される。そして他の装置においては、前記機差補正データと前記共通検査条件データとから、その装置用の検査条件データが生成される。
【0141】
したがって、従来の装置で行っていたような、品種毎の検査条件データ作成を全ての装置で行う作業が不要となり、システムトラブルなどが発生した場合に行っていた検査条件データの再登録作業も不要となる。
【0142】
その結果、短時間で共通する複数品種の検査条件データを生成することが出来、個々にデータを作成し直す時間と労力を省くことができる。
【符号の説明】
【0143】
1 ウエーハ外観検査装置
2 検査ステージ部
3 撮像光学ユニット
4 制御部
5 ウエーハ搬送部
10 ウエーハ
11 オリフラ
12 アライメントマーク
12a チップ毎のアライメントマーク
13 半導体チップ回路パターン
14 半導体チップ回路部
15 半導体チップ電極部
16 半導体チップ群
17 既知寸法の寸法基準マーク
17a
21 装置ベース
22 X軸ステージ
23 Y軸ステージ
24 θ軸ステージ
25 テーブル
31 対物レンズ
32 レボルバー機構
33 光学系
34 検査カメラ
35 撮像光学ユニット駆動部
36 照明用光源
37 支柱部
41 制御用コンピュータ
42 データ管理用コンピュータ
43 画像処理用コンピュータ
44a 情報表示手段
44b 情報表示手段
44c 表示切替手段
45 情報入力手段
45a 入力切替手段
46a 情報記録媒体
46b 情報記録媒体
46c 情報記録媒体
47 外部装置とのデータアクセス手段
51 ロボット
52 ハンド部
61 カセット
62 カセット載置台
100 ウエーハの設計上の中心位置
101 ウエーハの実際の中心位置
100z ウエーハの設計上の表面位置
101z ウエーハの実際の表面位置
170 検査カメラの設計上の視野内に撮像された寸法基準マーク
171 検査カメラの実際の視野内に撮像された寸法基準マーク
220 X軸ステージの原点位置
221 X軸ステージを原点位置からX方向にX0だけ動かした位置
222 X軸ステージを原点位置からX方向にX1だけ動かした位置
230 Y軸ステージの原点位置
231 Y軸ステージを原点位置からY方向にY0だけ動かした位置
232 Y軸ステージを原点位置からY方向にY1だけ動かした位置
250 設計上のテーブル中心位置
310 設計上のレンズ合焦位置
311 実際のレンズ合焦位置
330 検査カメラの設計上の視野
331 検査カメラの実際の視野
330a 検査カメラの設計上の視野
331a 検査カメラの実際の視野
330b 検査カメラの設計上の視野
331b 検査カメラの実際の視野
340 検査カメラの設計上の視野の中心位置
341 検査カメラの実際の視野の中心位置
350 撮像光学ユニット駆動部の原点位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハ上に形成された半導体チップの外観を検査する検査装置の検査条件データを生成するウエーハ検査条件生成方法であって、
同一の検査機能を有する複数台のウエーハ検査装置の検査条件データが、
各ウエーハ検査装置毎に設計値に対する機差を算出し、機差補正データを登録するステップと、
選択されたいずれかのウエーハ検査装置において、ウエーハを用いて検査条件データを作成するステップと、
前記検査条件データと、前記選択されたいずれかのウエーハ検査装置の前記機差補正データと、から共通検査条件データを生成するステップと、
前記共通検査条件データと、各ウエーハ検査装置毎の前記機差補正データと、から各ウエーハ検査装置毎の検査条件データを生成するステップと、
からなることを特徴とするウエーハ検査条件生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記機差補正データが、
少なくとも、
ウエーハ検査装置に設けられている、ウエーハを載置するテーブルの検査ステージの原点位置とウエーハを検査する検査カメラの中心位置および前記検査ステージに載置されたウエーハの中心位置との誤差データと、
ウエーハを検査する検査カメラの、合焦位置の誤差データと、
前記検査カメラに備えられているレンズの、観察倍率の誤差データと、
前記検査カメラに備えられている照明用光源の、所望輝度に対する設定値の誤差データのいずれかの誤差データを含む、
ウエーハ検査条件生成方法。
【請求項3】
ウエーハ上に形成された半導体チップの外観を検査する検査装置の検査条件データを生成するウエーハ検査システムであって、
同一の検査機能を有する複数台のウエーハ検査装置の検査条件データが、
各ウエーハ検査装置毎に設計値に対する機差を算出し、機差補正データを登録する、機差補正データ登録手段と、
選択されたいずれかのウエーハ検査装置において、ウエーハを用いて検査条件データを作成する、検査条件データ作成手段と、
前記検査条件データと、前記選択されたいずれかのウエーハ検査装置の前記機差補正データと、から共通検査条件データを生成する、共通検査条件データ生成手段と、
前記共通検査条件データと、各ウエーハ検査装置毎の前記機差補正データと、から各ウエーハ検査装置毎の検査条件データを生成する、検査条件データ生成手段、
を備えたことを特徴とするウエーハ検査システム。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、
前記機差補正データが、
少なくとも、
ウエーハ検査装置に設けられている、ウエーハを載置するテーブルの検査ステージの原点位置とウエーハを検査する検査カメラの中心位置および前記検査ステージに載置されたウエーハの中心位置との誤差データと、
ウエーハを検査する検査カメラの、合焦位置の誤差データと、
前記検査カメラに備えられているレンズの、観察倍率の誤差データと、
前記検査カメラに備えられている照明用光源の、所望輝度に対する設定値の誤差データのいずれかの誤差データを含む、
ウエーハ検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239041(P2010−239041A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87456(P2009−87456)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】