説明

半導体チップの加工方法および半導体装置の製造方法

【課題】半導体チップ同士の位置精度を確保することで、高精度の加工が可能な半導体チップの加工方法を実現する。
【解決手段】本発明の半導体チップの加工方法では、粘着テープ2上に配置された複数の半導体チップ1上に接合用樹脂4を形成し、接合用樹脂4を半導体チップ1間に入り込ませて、半導体チップ1間に入り込んだ部分以外の不要な接合用樹脂4を除去する。これにより、半導体チップ1の相対位置は固定されるため、位置ズレが生じることなく、半導体チップ1に対して高精度の加工が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、チップ状態の半導体素子に対する加工技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、直径200mmウェハから300mmウェハへの移行が最先端デバイスを中心に急速に進んでいる。しかしながら、ウェハサイズの移行により、新たに設備を購入する場合、設備投資の負担が大きい。そこで、現在の設備を有効活用するため、300mmウェハをダイシングして良品の半導体チップを抽出し、200mmウェハサイズのダイボンドテープに当該半導体チップを再配置して加工する事などが行われている。
【0003】
このように、ダイシングされたチップ状態の半導体素子に対して突起を作りこむ等の加工を行う場合、半導体チップをトレイに収納するか、粘着テープ上に貼って保持した状態で加工する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、高精度の加工が困難であるという問題がある。
【0005】
具体的には、半導体チップをトレイに収納して加工を行う場合、半導体チップの固定が不確実であるため加工が困難である。また、半導体チップを粘着テープ上に保持して加工する場合、加工時に加えられる温度変化・水分・酸・アルカリ・外力等により、粘着テープの膨張、収縮および厚みの変化が生じることにより、半導体チップが剥がれたりして、位置ズレが発生する。このため、チップ状態の半導体素子に対して加工を行う場合、トレイへの収納や粘着テープに貼っての保持は、高精度の加工には不適切な方法となる。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体チップ同士の位置精度を確保することで、高精度の加工が可能な半導体チップの加工方法および半導体装置の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体チップの加工方法は、上記課題を解決するために、粘着テープ上にダイシングされた複数の半導体チップを配置するチップ配置工程と、前記複数の半導体チップを接合用樹脂で覆う樹脂形成工程と、前記接合用樹脂を変形させて、前記複数の半導体チップ同士の間に前記接合用樹脂を入り込ませる樹脂変形工程と、前記接合用樹脂のうち、前記複数の半導体チップ同士の間に入り込んだ接合用樹脂以外の少なくとも一部を除去して、少なくとも前記半導体チップの加工対象部分を露出させる樹脂除去工程と、前記樹脂除去工程において加工対象部分が露出した前記半導体チップに対し所定の加工を施す加工工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、チップ配置工程において、複数の半導体チップを粘着テープ上に配置し、樹脂形成工程において、配置された半導体チップ全体を接合用樹脂で覆い、その後、樹脂変形工程において、接合用樹脂を半導体チップ同士の間に入り込ませる。さらに、樹脂除去工程において、半導体チップの加工対象部分を露出させて、加工工程において半導体チップを加工する。ここで、樹脂変形工程において、半導体チップ間が接合用樹脂によって結合しているので、半導体チップ間の相対位置が固定される。このため、加工工程において、半導体チップの位置ズレは生じない。したがって、半導体チップ同士の位置精度を確保することで、高精度の加工が可能な半導体チップの加工方法を実現できるという効果を奏する。
【0009】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、上記接合用樹脂は、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂は、熱膨張や熱収縮のない樹脂であるので、半導体チップ間に入り込んだ接合用樹脂が膨張収縮することによる半導体チップの位置ズレは発生しない。
【0011】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記樹脂形成工程において、前記接合用樹脂は液状であってもよい。
【0012】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記樹脂形成工程において、前記接合用樹脂はフィルム状であってもよい。
【0013】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記樹脂変形工程では、前記接合用樹脂に対し熱を加えることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、接合用樹脂は、加熱により流動性をもつので、樹脂変形工程において、容易に複数の半導体チップ同士の間に入り込む。
【0015】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記樹脂変形工程では、前記接合用樹脂に対し圧力を加えてもよい。
【0016】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記接合用樹脂は、紫外線感光性樹脂であり、前記樹脂除去工程は、前記接合用樹脂を除去する前に、前記接合用樹脂の除去対象部分に紫外線を照射する工程を含むことが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、接合用樹脂が紫外線感光性であるので、あらかじめ除去対象部分に紫外線を照射することで、樹脂除去工程において、容易に接合用樹脂を除去することができる。
【0018】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記接合用樹脂は、アクリル樹脂であり、前記樹脂除去工程は、前記接合用樹脂を除去する前に、前記接合用樹脂の除去対象部分にプラズマを照射する工程を含むことが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、除去対象部分をあからじめプラズマ処理することにより、樹脂除去工程において、容易に接合用樹脂を除去することができる。
【0020】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記樹脂除去工程では、前記除去対象部分をエッチング液により除去してもよい。
【0021】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記加工工程では、前記半導体チップの加工前に、前記接合用樹脂のうち少なくとも前記半導体チップ間に入り込んだ部分に対し熱処理を行うことにより、当該熱処理を行った部分の強度を上げることが好ましい。
【0022】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記加工工程では、前記半導体チップの加工前に、前記接合用樹脂のうち少なくとも前記半導体チップ間に入り込んだ部分に対し紫外線処理を行うことにより、当該紫外線処理を行った部分の強度を上げることが好ましい。
【0023】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記加工工程では、前記半導体チップの加工前に、前記接合用樹脂のうち少なくとも前記半導体チップ間に入り込んだ部分に対しプラズマ処理を行うことにより、当該プラズマ処理を行った部分の強度を上げることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、熱処理、紫外線処理またはプラズマ処理によって、半導体チップ間を結合する接合用樹脂の強度が上がるので、さらに半導体チップ間の位置精度を向上させることができる。
【0025】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記粘着テープは、ダイシングテープであってもよい。
【0026】
上記の構成によれば、加工工程の後、複数の半導体チップの結合体を別の場所に移動させることなく、そのままダイシング工程と同様に半導体チップ間の接合用樹脂を分断できる。
【0027】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記樹脂除去工程と前記加工工程との間に、前記複数の半導体チップの結合体を前記粘着テープから剥離する剥離工程と、前記粘着テープから剥離された前記結合体を他の粘着テープ上に配置する結合体配置工程と、を有することが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、樹脂除去工程の後、複数の半導体チップの結合体を粘着テープから剥離して、他の粘着テープ上に配置する。これにより、加工工程は別の粘着テープ上で行われる。したがって、樹脂変形工程において、もとの粘着テープの粘着力が低下していたり、半導体チップが沈みこんでいた場合に生じるアライメントずれ等の不都合を回避できる。
【0029】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記他の粘着テープは、ダイシングテープであることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、加工工程の後、複数の半導体チップの結合体を別の場所に移動させることなく、そのままダイシング工程と同様に半導体チップ間の接合用樹脂を分断できる。
【0031】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記粘着テープは、紫外線発泡型であり、前記剥離工程は、前記結合体を前記粘着テープから剥離する前に、前記粘着テープに紫外線を照射する工程を有することが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、粘着テープに紫外線を照射することで粘着テープの粘着力が弱まるので、剥離工程において、複数の半導体チップの結合体に大きな負荷をかけることなく当該結合体を容易に剥離することができる。
【0033】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記粘着テープは、熱発泡型であり、前記剥離工程は、前記結合体を前記粘着テープから剥離する前に、前記粘着テープに熱を加える工程を有することが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、粘着テープに熱を加えることで粘着テープの粘着力が弱まるので、剥離工程において、複数の半導体チップの結合体に大きな負荷をかけることなく当該結合体を容易に剥離することができる。
【0035】
本発明に係る半導体チップの加工方法では、前記樹脂変形工程では、前記接合用樹脂は、前記粘着テープに接触しないことが好ましい。
【0036】
樹脂変形工程において、接合用樹脂が粘着テープに接触していた場合、接合用樹脂と粘着テープとの間の接着力により、剥離工程において、半導体チップの結合体を剥離しにくくなる。そこで、上記の構成によれば、接合用樹脂と粘着テープとが接触していないので、剥離工程において、半導体チップの結合体を容易に剥離することができる。
【0037】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、上記半導体チップの加工方法の各工程を含むことを特徴としている。
【0038】
上記の構成によれば、半導体チップに対し高精度の加工が可能な半導体装置の製造方法を実現できる。
【0039】
本発明に係る半導体装置の製造方法では、前記加工工程の後に、前記半導体チップ間に入り込んだ接合用樹脂を切断して、前記複数の半導体チップの結合体を、単体の半導体チップに分割する分割工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る半導体チップの加工方法は、以上のように、粘着テープ上にダイシングされた複数の半導体チップを配置するチップ配置工程と、前記複数の半導体チップを接合用樹脂で覆う樹脂形成工程と、前記接合用樹脂を変形させて、前記複数の半導体チップ同士の間に前記接合用樹脂を入り込ませる樹脂変形工程と、前記接合用樹脂のうち、前記複数の半導体チップ同士の間に入り込んだ接合用樹脂以外の少なくとも一部を除去して、少なくとも前記半導体チップの加工対象部分を露出させる樹脂除去工程と、前記樹脂除去工程において加工対象部分が露出した前記半導体チップに対し所定の加工を施す加工工程と、を有する。また、本発明に係る半導体チップの加工方法は、上記半導体チップの加工方法の各工程を含んでいる。したがって、半導体チップ同士の位置精度を確保することで、高精度の加工が可能な半導体チップの加工方法および半導体装置の製造方法を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。
【0042】
図1は、本実施形態に係る半導体チップの加工方法を示しており、(a)は、半導体チップ1が粘着テープ2上に配置された状態を示す断面図であり、(b)は、その平面図である。半導体チップ1は、半導体ウエハーからダイシングされた良品の半導体素子である。粘着テープ2は、両面テープであり、サポート3上に設けられている。サポート3として、直径5インチφ〜8インチφ/厚さ500μm〜750μmのシリコンウエハー又は直径5インチφ〜8インチφ/厚さ500μmのホウケイ酸ガラスウエハー若しくは石英ガラスを使用する。なお、図1は簡略化されており、実際にはより多くの半導体チップ1が配置される。半導体チップ1の個数は、チップサイズ・チップ間の距離・サポート3のサイズなどで決まる。
【0043】
粘着テープ2上に配置される複数の半導体チップ1同士の位置精度は、接合後も変化がないため、半導体チップ1を加工する際に要求される位置精度(例えば±10μm)で配置する必要がある。粘着テープ2上に±10μmの精度で半導体チップ1を配置するには、一例としてフリップチップボンダーという設備を使用すれば機械精度上可能である。
【0044】
続いて、複数の半導体チップ1同士の接合方法について説明する。
【0045】
図2は、半導体チップ1全体を接合用樹脂4で覆った状態を示す断面図である。本実施形態では、接合用樹脂4として、液状の高粘度アクリル樹脂(粘度20.0mPa・s以上30.0mPa・s以下)、高粘度のフォトレジスト(粘度20.0mPa・s以上30.0mPa・s以下)、またはフィルム状のエポキシ樹脂を主成分とする感光性樹脂を使用する。
【0046】
液状の高粘度アクリル樹脂や高粘度のフォトレジストを使用する場合、スピン滴下によって半導体チップ1全体を覆う。スピン滴下の際には、エッジリンスやバックリンスを使用して、不要な部分にまで樹脂やフォトレジストが塗布されないようにコントロールする。エッジリンスやバックリンスでは対応できない場合は、エッジ露光を用いる。また、フィルム状のエポキシ樹脂を使用する場合は、半導体チップ1全体に貼り付ける。
【0047】
図2に示す状態では、接合しようとする半導体チップ1同士の間に接合用樹脂4は入り込んでいないため、続いて、接合用樹脂4に熱を加える。
【0048】
図3(a)は、半導体チップ1全体を覆う接合用樹脂4を加熱した後の状態を示す断面図であり、(b)は、接合用樹脂4と粘着テープ2との間の部分((a)の円内)を示す拡大断面図である。接合用樹脂4は、加熱により流動性をもつため、適正な温度(60℃〜120℃)を加えることにより、複数の半導体チップ1同士の間に入り込む。
【0049】
ただし、接合用樹脂4が粘着テープ2の上面まで到達すると、半導体チップ1同士が接合されてできた基板(図5参照)を粘着テープ2から剥す際や、基板状態から再度チップ状態へ切り離す際の支障となる。一方、接合用樹脂4が半導体チップ1間に入り込む量が少なすぎると、基板状になった際の平坦度や強度が不足してしまう。そのため、接合用樹脂4の下端と粘着テープ2の上面との間に空間ができるように、接合用樹脂4が半導体チップ1間に入り込む量を十分にコントロールする必要がある。
【0050】
本実施形態では、図3(b)に示すように、接合用樹脂4の下端と粘着テープ2の上面との距離Aを1μm以上確保する。距離Aの上限値は、半導体チップ1の厚み、および半導体チップ1間の接合強度を考慮して設定され、例えば、半導体チップ1の厚みから1μm引いた値に設定される。
【0051】
また、接合用樹脂4に加える温度は、半導体チップ1が粘着テープ2から剥がれる温度より高いと、接合用樹脂4を加熱した場合、半導体チップ1の位置がずれてしまうおそれがある。そのため、接合用樹脂4に加える温度は、半導体チップ1が粘着テープ2から剥がれる温度より低い必要がある。
【0052】
さらに、半導体チップ1間に入り込んだ接合用樹脂4が、加熱により膨張や収縮などの性質を持っていると、半導体チップ1同士が接合されてできた基板が反ったり、半導体チップ1が位置ズレを起こす可能性があるため、接合用樹脂の材料選定には注意する必要がある。本実施形態で使用する接合用樹脂4は、半導体製造工程において一般的に使用され熱膨張や熱収縮がないことが確認されているアクリル樹脂、エポキシ樹脂またはフォトレジストであるため、上記基板の反りや半導体チップの位置ズレは発生しない。
【0053】
なお、接合用樹脂4の上面に圧力を加えることにより、接合用樹脂4を半導体チップ1間に入り込ませてもよい。この場合、接合用樹脂4の性質と圧力(時間や温度も含む)とのマッチング、圧力をかけることによる半導体チップ1の位置精度の確保、半導体チップ1と粘着テープ2との密着力、およびサポート3と粘着テープ2との密着力、等を考慮して、圧力のかけ方をコントロールする。
【0054】
続いて、図4に示すように、アルカリ性のエッチング液(現像液)など、使用する接合用樹脂4の性質に適した方法/材料で接合用樹脂4の不要な部分を除去する。図4(a)は、接合用樹脂4の不要な部分を除去した状態を示す断面図であり、(b)は、その平面図である。図4では、接合用樹脂4のうち、半導体チップ1間に入り込んだ接合用樹脂4を以外の全てを除去しているが、半導体チップ1の加工対象部分が上面の一部の場合、当該加工対象部分のみが露出するように、接合用樹脂4を除去してもよい。
【0055】
なお、接合用樹脂4の除去に先立ち、接合用樹脂4の性質により、接合用樹脂4の不要部分を除去するために前処理が必要な場合、当該処理を行う。例えば、接合用樹脂4が感光性の性質をもつ場合、UV照射(600〜2000mJ/cm)などの露光処理を行い、接合用樹脂4がアクリルなどの場合はプラズマ処理などを行う。
【0056】
また、接合用樹脂4の不要部分を除去した後、接合用樹脂4の性質や、必要とされる接合の強度等の各種条件によって、必要により接合用樹脂4に対して追加の熱処理等を行う。例えば、接合用樹脂4に熱処理、紫外線処理またはプラズマ処理を行うことにより、接合用樹脂4の強度を上げる。以上により、複数の半導体チップ1同士は接合されて所定の強度を持つ基板形状となる。この状態でも、半導体チップ1に対して加工を行なってもよい。
【0057】
ただし、接合用樹脂4を半導体チップ1間に入り込ませるの際の熱により、粘着テープ2の粘着力が低下していた場合、半導体チップ1の全面剥離または一部剥離が発生し、アライメントずれや基板の破損が発生するおそれがある。また、加圧により接合用樹脂4を半導体チップ1間に入り込ませた場合、半導体チップ1が粘着テープ2に沈みこんだ状態となっていると、加工に支障をきたすおそれがある。
【0058】
このため、基板状態の半導体チップ1の結合体を粘着テープ2から剥がし、ダイシングテープ等の別の場所に移して半導体チップ1の加工を行うことが望ましい。
【0059】
図5は、基板状態の半導体チップ1の結合体を粘着テープ2から剥がした状態を示す断面図である。このように、接合用樹脂4は、複数の半導体チップ1間に入り込んで、複数の半導体チップ1同士を接着すると同時に、半導体チップ1と同様の強度をもった基板の一部となる。
【0060】
ここで、サポート3がガラスの場合、粘着テープ2として、UV照射により粘着力が低下する性質のUV発泡タイプの粘着テープを使用し、サポート3の粘着テープ2が貼られている面と反対側(裏側)よりUV照射(例えば600〜2000mJ/cm)を行う。また、サポート3がシリコンウエハーの場合は、粘着テープ2として、熱により粘着力が低下する熱発泡タイプの粘着テープを使用し、粘着テープ2を加熱する。これにより、粘着テープ2と半導体チップ1との間の粘着力が失われ、半導体チップ1が粘着テープ2から剥がれる。
【0061】
図6(a)は、基板状態の半導体チップ1の結合体を、ダイシングリング6に貼られたダイシングテープ5上に配置した状態を示す断面図であり、(b)は、その平面図である。ダイシングテープ5は、片面テープであり、ダイシングリング6は、例えば外形280mmφ/厚さ5mmのステンレス製のリングである。前述のように、基板状態の半導体チップ1の結合体は、半導体チップ1と同様の強度を持っているので、半導体チップ1の位置ズレは発生せず、半導体チップ1に対して高精度の加工が可能となる。例えば、複数の半導体チップ1上に50μm以上の高さを持つ直方体突起をつくりこむため、複数の半導体チップ1に対してフォトリソ工程を行い、その後垂直に圧力を加えて加工するのに適している。
【0062】
半導体チップ1の加工後、通常の半導体ウエハーのダイシング工程と同様に、半導体チップ1間の接合用樹脂4を分断し、半導体チップ1の結合体を単体の半導体チップ1に分割する。分割後の半導体チップ1には、側面部に接合用樹脂4が付着しているので、半導体チップ1に接合用樹脂4が付着しているか否かで、本発明の加工方法を使用したか否かが判別できる。
【0063】
なお、接合用樹脂4の性質/特性を選択することにより、半導体チップ1の結合体をフィルムのような柔軟な性質を持った基板とすることも可能である。
【0064】
以上のように、図1〜図6に示す工程では、サポート3上で基板状態の半導体チップ1の結合体を形成し、その後ダイシングテープ上に移動して、個々の半導体チップ1に分割した。これに対し、図7に示すように、あらかじめダイシングリング6に貼られたダイシングテープ5上に半導体チップ1を配置し、半導体チップ1全体を接合用樹脂4で覆ってもよい。その後、図3および図4に示す工程により基板状態の半導体チップ1および接合用樹脂4を形成し、そのまま半導体チップ1に加工を行った後、個々の半導体チップ1に分割する。この場合、図5に示す、基板状態の半導体チップ1の結合体を粘着テープ2から剥がす工程は不要であり、半導体チップ1に垂直に圧力を加えない加工に適している。また、接合用樹脂4を加熱または加圧により半導体チップ1間に入り込ませる工程では、接合用樹脂4と粘着テープ2とが接触していてもよい。
【0065】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、チップ状態の複数の素子を加工する用途に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体チップの加工方法を示しており、(a)は、半導体チップが粘着テープ上に配置された状態を示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【図2】上記半導体チップ全体を接合用樹脂で覆った状態を示す断面図である。
【図3】(a)は、接合用樹脂が半導体チップ間に入り込んだ状態を示す断面図であり、(b)は、接合用樹脂と粘着テープとの間の部分を示す拡大断面図である。
【図4】(a)は、接合用樹脂の不要な部分を除去した状態を示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【図5】基板状態の半導体チップの結合体を粘着テープから剥がした状態を示す断面図である。
【図6】(a)は、基板状態の半導体チップの結合体を、ダイシングリングに貼られたダイシングテープ上に配置した状態を示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る半導体チップの加工方法の変形例を示しており、(a)は、半導体チップがダイシングテープ上に配置された状態を示す断面図であり、(b)は、その平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 半導体チップ
2 粘着テープ
4 接合用樹脂
5 ダイシングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープ上にダイシングされた複数の半導体チップを配置するチップ配置工程と、
前記複数の半導体チップを接合用樹脂で覆う樹脂形成工程と、
前記接合用樹脂を変形させて、前記複数の半導体チップ同士の間に前記接合用樹脂を入り込ませる樹脂変形工程と、
前記接合用樹脂のうち、前記複数の半導体チップ同士の間に入り込んだ接合用樹脂以外の少なくとも一部を除去して、少なくとも前記半導体チップの加工対象部分を露出させる樹脂除去工程と、
前記樹脂除去工程において加工対象部分が露出した前記半導体チップに対し所定の加工を施す加工工程と、
を有することを特徴とする半導体チップの加工方法。
【請求項2】
上記接合用樹脂は、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項3】
前記樹脂形成工程において、前記接合用樹脂は液状であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項4】
前記樹脂形成工程において、前記接合用樹脂はフィルム状であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項5】
前記樹脂変形工程では、前記接合用樹脂に対し熱を加えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項6】
前記樹脂変形工程では、前記接合用樹脂に対し圧力を加えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項7】
前記接合用樹脂は、紫外線感光性樹脂であり、
前記樹脂除去工程は、前記接合用樹脂を除去する前に、前記接合用樹脂の除去対象部分に紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項8】
前記接合用樹脂は、アクリル樹脂であり、
前記樹脂除去工程は、前記接合用樹脂を除去する前に、前記接合用樹脂の除去対象部分にプラズマを照射する工程を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項9】
前記樹脂除去工程では、前記除去対象部分をエッチング液により除去することを特徴とする請求項7または8に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項10】
前記加工工程では、前記半導体チップの加工前に、前記接合用樹脂のうち少なくとも前記半導体チップ間に入り込んだ部分に対し熱処理を行うことにより、当該熱処理を行った部分の強度を上げることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項11】
前記加工工程では、前記半導体チップの加工前に、前記接合用樹脂のうち少なくとも前記半導体チップ間に入り込んだ部分に対し紫外線処理を行うことにより、当該紫外線処理を行った部分の強度を上げることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項12】
前記加工工程では、前記半導体チップの加工前に、前記接合用樹脂のうち少なくとも前記半導体チップ間に入り込んだ部分に対しプラズマ処理を行うことにより、当該プラズマ処理を行った部分の強度を上げることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項13】
前記粘着テープは、ダイシングテープであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項14】
前記樹脂除去工程と前記加工工程との間に、
前記複数の半導体チップの結合体を前記粘着テープから剥離する剥離工程と、
前記粘着テープから剥離された前記結合体を他の粘着テープ上に配置する結合体配置工程と、
を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項15】
前記他の粘着テープは、ダイシングテープであることを特徴とする請求項14に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項16】
前記粘着テープは、紫外線発泡型であり、
前記剥離工程は、前記結合体を前記粘着テープから剥離する前に、前記粘着テープに紫外線を照射する工程を有することを特徴とする請求項14または15に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項17】
前記粘着テープは、熱発泡型であり、
前記剥離工程は、前記結合体を前記粘着テープから剥離する前に、前記粘着テープに熱を加える工程を有することを特徴とする請求項14または15に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項18】
前記樹脂変形工程では、前記接合用樹脂は、前記粘着テープに接触しないことを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の半導体チップの加工方法の各工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記加工工程の後に、前記半導体チップ間に入り込んだ接合用樹脂を切断して、前記複数の半導体チップの結合体を、単体の半導体チップに分割する分割工程を含むことを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−158869(P2009−158869A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338261(P2007−338261)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】