説明

半導体パッケージ放熱用部品

【課題】熱伝導性が高く、放熱性の良い半導体パッケージ放熱用部品を提供する。
【解決手段】半導体パッケージ20上に配置され、熱伝導部材30に接する半導体パッケージ放熱用部品であって、当該放熱用部品の前記熱伝導部材と対向する面には、線状の高熱伝導性物質60が熱伝導方向に林立するように形成され、前記線状の高熱伝導性物質の先端部は、前記熱伝導部材の表面に密着している半導体パッケージ放熱用部品により解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ上に配置され、熱伝導部材に接する半導体パッケージ放熱用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU(Central Processing Unit)等に使用される半導体素子は、パッケージ上に電気的に接続され、固定される。半導体素子は、動作時に高温となるため、半導体素子の温度を強制的に下げなければ、半導体素子の性能を発揮できず、半導体素子が壊れる可能性がある。したがって、半導体素子上に、放熱板(ヒートシンク)や、放熱フィン(あるいはヒートパイプ)を装着することにより、半導体素子が発する熱を外部に有効に放出する経路を確保している。半導体素子と、放熱板等の間には、熱伝導部材(TIM;Thermal Interface Material)を挟み、それぞれの凹凸面に追従して接触熱抵抗を減らし、スムーズな熱伝導が行なわれるよう試みられている。
【0003】
図1は、半導体パッケージに従来の放熱部品を装着した例を示す断面図である。半導体パッケージにおいて、基板100に搭載された半導体素子200から発する熱は、半導体素子200上に配置した熱伝導部材300を介して放熱板400に伝熱される。また、放熱板400に伝熱された熱は、放熱板400上に配置した熱伝導部材300を介して放熱フィン500に伝熱される。
【0004】
このように、熱伝導部材300は、半導体素子200と放熱板400とを、また放熱板400と放熱フィン500とを、直接接触させずに熱的に接続する手段として使用される。
【0005】
熱伝導部材300の材料には、熱伝導性の良いインジウムが使用されることが多いが、インジウムは希少金属であるため、高価であり、将来的に供給の面で不安がある。また、放熱板400に密着させるためのリフロー等の熱処理が必要とされるため、製造工程が複雑という問題もあった。
【0006】
そのため、熱伝導部材300の他の例として、シリコングリース、あるいは高熱伝導性物質としての金属フィラー、グラファイト等を含有した有機系の樹脂バインダー等が使用されている。また、カーボンナノチューブを熱伝導方向に配列させて、樹脂で成形してシート状にした熱伝導部材300も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−347500号公報
【特許文献2】特開2004−349497号公報
【特許文献3】特開2008−205273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した金属フィラーや、グラファイト等の高熱伝導性物質を、樹脂をバインダーとして成形した熱伝導部材300は、樹脂の熱伝導性が高くないため放熱性能的に問題があった。また、熱伝導方向に配列させたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ端面と放熱部品との接触熱抵抗が大きく、期待される性能が得られないという問題があった。これは、カーボンナノチューブのうち長さの短いものが放熱部品表面に到達できないためである。
【0009】
例えば、図2は、高熱伝導性物質を含有した熱伝導部材と従来の放熱部品との接触面を示す断面図である。図2に示すように、放熱板400又は放熱フィン500(以下、放熱板400を例に示す。)と熱伝導部材300との接触面は、ミクロ的には表面が粗くなっているため、空間600が生じている。また、熱伝導部材300は、熱伝導部材300の最表面が、樹脂の割合の高い層である低熱伝導物質層301に覆われている。
【0010】
したがって、放熱板400と金属フィラーや、グラファイト等の高熱伝導性物質302との間に物理的な接触がなく、放熱板400と高熱伝導性物質302との間の接触熱抵抗が大きくなり、熱伝導性が低くなるため、放熱性が良くないという問題があった。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、熱伝導性が高く放熱性の良い半導体パッケージ放熱用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0013】
半導体パッケージ上に配置され、熱伝導部材に接する半導体パッケージ放熱用部品であって、当該放熱用部品の前記熱伝導部材と対向する面には、線状の高熱伝導性物質が熱伝導方向に林立するように形成され、前記線状の高熱伝導性物質の先端部は、前記熱伝導部材の表面に密着している半導体パッケージ放熱用部品により解決することができる。
【0014】
また、半導体パッケージ上に配置され、熱伝導部材に接する半導体パッケージ放熱用部品であって、当該放熱用部品の前記熱伝導部材と対向する面には、第1の線状の高熱伝導性物質が熱伝導方向に林立するように形成され、前記熱伝導部材の当該放熱用部品と対向する面には、第2の線状の高熱伝導性物質が熱伝導方向に林立するように形成され、前記第1の線状の高熱伝導性物質の先端部は、隣接する前記第2の線状の高熱伝導性物質が形成する空隙に入り込み、前記第2の線状の高熱伝導性物質の先端部は、隣接する前記第1の線状の高熱伝導性物質が形成する空隙に入り込むことにより互いに密着している半導体パッケージ放熱用部品により解決することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱伝導性が高く放熱性の良い半導体パッケージ放熱用部品を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】半導体パッケージに従来の放熱部品を装着した例を示す断面図である。
【図2】高熱伝導性物質を含有した熱伝導部材と従来の放熱部品との接触面を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る放熱板及び放熱フィンを半導体パッケージに装着した断面図である。
【図4】低熱伝導物質層と高熱伝導性物質からなるTIMの断面図である。
【図5】放熱板又は放熱フィンに形成されたカーボンナノチューブを拡大した断面図である。
【図6】放熱板又は放熱フィンとTIMとの接触部を拡大した断面図である。
【図7】半導体パッケージ放熱用部品の製造工程を示すフローチャートである。
【図8】半導体パッケージ放熱用部品装着工程を示す図である。
【図9】半導体パッケージ実装工程を示すフローチャートである。
【図10】樹脂シート内に金属やカーボン等のピラーを貫通させたTIMを示す図である。
【図11】図5に示す放熱板又は放熱フィンと、図10に示すTIMとの接触部を拡大した断面図である。
【図12】カーボンナノチューブを熱伝導方向に配列させ樹脂で成形してシート状にしたTIMの断面図である。
【図13】放熱板又は放熱フィンと図12に示すTIMとの接触部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
(第1の実施形態に係る半導体パッケージ放熱用部品)
図3は、第1の実施形態に係る放熱板及び放熱フィンを半導体パッケージに装着した断面図である。図3に示すように、第1の実施形態に係る放熱板40は、基板10に搭載された半導体素子20の上面に設置された熱伝導部材としてのTIM30の上面に配置されている。又、第1の実施形態に係る放熱フィン50は、放熱板40の上面に設置されたTIM30の上面に配置されている。
【0019】
なお、TIM30は、例えば金属フィラー、カーボンフィラー、グラファイト、カーボンナノチューブ等の高熱伝導性物質を含有し、エポキシ樹脂や有機系の樹脂を主成分として成形されている。
【0020】
TIM30は、半導体素子20と放熱板40との間に配置されることにより、半導体素子20と放熱板40とを熱的に接続する。またTIM30は、放熱板40と放熱フィン50との間に配置されることにより、放熱板40と放熱フィン50とを熱的に接続する。
【0021】
放熱板40は、例えばヒートシンク等を示し、放熱フィン50は、例えばヒートポンプが付いた放熱フィン等を示す。放熱板40、及び放熱フィン50は、例えば無酸素銅にニッケルめっきを施したものやアルミニウム等の熱伝導率の良い材料からなり、半導体素子20が発する熱を外部に伝熱放散させる役割を担う。なお、放熱板40の厚さは、約0.5〜2mmである。
【0022】
図3に示すように、放熱板40と放熱フィン50のTIM30と対向する面には、線状の高熱伝導性物質であるカーボンナノチューブ60が熱伝導方向(放熱板40又は放熱フィン50のTIM30と対向する面に直角な方向)に林立するように形成されている。なお、第1の実施形態では、放熱板40の上下両面にカーボンナノチューブ60が形成されているが、特に両面に限定されるものではない。
【0023】
図4は、低熱伝導物質層と高熱伝導性物質からなるTIMの断面図である。図4に示すように、TIM30の最表面は、低熱伝導物質層31で覆われて、高熱伝導性物質32は、TIM30の内部に含まれている。
【0024】
低熱伝導物質層31は、樹脂の割合が高い層であり、金属フィラー等の高熱伝導物質32をわずかに含むだけであるため、熱伝導が低くなっている。
【0025】
高熱伝導性物質32には、例えば導電性金属である金属フィラー、カーボンフィラー、又はグラファイト、カーボンナノチューブ等のうち少なくとも1つを含み、それらが密集しているため、熱伝導性が高い。なお、TIM30の全体の厚さは、約0.25mmであり、低熱伝導物質層31の厚さは、約4μm〜5μmである。
【0026】
図5は、放熱板又は放熱フィンに形成されたカーボンナノチューブを拡大した断面図である。図5に示すように、カーボンナノチューブ60は、放熱板40と放熱フィン50のTIM30と対向する面に、熱伝導方向(放熱板40又は放熱フィン50のTIM30と対向する面に直角な方向)に林立するように形成されている。
【0027】
カーボンナノチューブ60は、直径が0.7〜70nm程度の略円筒形状(線状)をした炭素の結晶である。カーボンナノチューブ60は熱伝導性が高く、その熱伝導率は、例えば3000W/m・k程度である。すなわち、カーボンナノチューブ60は線状の高熱伝導性物質である。
【0028】
放熱板40と放熱フィン50のTIM30と対向する面からカーボンナノチューブ60の先端部62までの高さL1は、例えば50〜100μmとすることができる。カーボンナノチューブ60の先端部62の位置は、所定のばらつきを有する。最短のカーボンナノチューブ60と最長のカーボンナノチューブ60のそれぞれの先端部62の位置の相対的な差異L2は、約20μm程度である。
【0029】
図6は、放熱板又は放熱フィンとTIMとの接触部を拡大した断面図である。カーボンナノチューブ60は撓み性を有しているため、図6に示すように、カーボンナノチューブ60がTIM30の表面に配置され熱伝導方向に加圧されると、カーボンナノチューブ60の先端部62は、様々な方向に変形するので、カーボンナノチューブ60とTIM30の最表面の低熱伝導物質層31とが接触する確率を高めることができる。その結果、カーボンナノチューブ60はTIM30の最表面の低熱伝導物質層31と密着するため、接触熱抵抗を低減することが可能となり、熱伝導性を向上することができる。
【0030】
また、放熱板40又は放熱フィン50、TIM30の表面形状(表面の凹凸)に依存されることなく、接触熱抵抗を低減することができ、密着性の向上も可能となる。
【0031】
(第1の実施形態に係る半導体パッケージ放熱用部品の製造方法)
次に、上記した放熱板40及び放熱フィン50の製造方法について図7〜図9にしたがって説明する。
【0032】
図7は、半導体パッケージ放熱用部品の製造工程を示すフローチャートである。図7に示すように、まず、放熱板40にカーボンナノチューブ60を形成する(S20〜22)。S20では、例えば無酸素銅にNiめっきが施された放熱板40を用意する。放熱板40の材料は無酸素銅には限定されないが、放熱板40の材料として無酸素銅を主成分とする材料を用いることにより、カーボンナノチューブ60を良好に成長させることができる。
【0033】
次に、S22では、放熱板40のTIM30と対向する面に対して、CVD法(化学的気相成長法)等によりカーボンナノチューブ60を、熱伝導方向(放熱板40のTIM30と対向する面に直角な方向)に林立するように形成する。
【0034】
より具体的には、始めに、放熱板40のTIM30と対向する面にスパッタリング法等によって、金属触媒層を形成する。金属触媒層としては、例えばFe、Co及びNi等を用いることができる。金属触媒層の厚さは、例えば数nm程度とすることができる。
【0035】
次いで、金属触媒層が形成された放熱板40を所定の圧力及び温度に調整された加熱炉に入れて、CVD法(化学的気相成長法)により金属触媒上にカーボンナノチューブ60を形成する。加熱炉の圧力及び温度は、例えば100pa及び600℃とすることができる。又、プロセスガスとしては、例えばアセチレンガス等を用いることができ、キャリアガスとしては、例えばアルゴンガスや水素ガス等を用いることができる。
【0036】
カーボンナノチューブ60は、金属触媒上に、放熱板40のTIM30と対向する面に直角な方向に形成されるが、放熱板40のTIM30と対向する面からカーボンナノチューブ60の先端部62までの高さL1は、カーボンナノチューブ60の成長時間によって制御することができる。なお、第1の実施形態では、放熱板40の上下両面に対してカーボンナノチューブ60を形成する。
【0037】
次に、放熱フィン50に対しても同様にカーボンナノチューブ60を形成する。放熱フィン50にカーボンナノチューブ60を形成する工程について説明する(S30〜S32)。
【0038】
S30では、例えばアルミニウム等の熱伝導率の良い放熱フィン50を用意する。この放熱フィン50はヒートパイプが付いていても良い。次に、S32では、放熱フィン50のTIM30と対向する面に対して、CVD法(化学的気相成長法)等によりカーボンナノチューブ60を、熱伝導方向(放熱フィン50のTIM30と対向する面に直角な方向)に林立するように形成する。具体的な方法については前述の通りである。このようにして、放熱フィン50にカーボンナノチューブ60を形成する。なお、この工程(S30〜S32)は、放熱板40にカーボンナノチューブ60を形成する工程(S20〜S22)と同時に又は予め別に行っておくことも可能である。
【0039】
次に、カーボンナノチューブ60を形成した放熱板40と放熱フィン50をTIM30に装着する工程を、図8を用いながら説明する(S42〜S46)。図8は、半導体パッケージ放熱用部品装着工程を示す図である。ここで、TIM30を2つ用意する(TIM30A、TIM30B)。
【0040】
S42では、TIM30Aと放熱板40を用意し、図8(A)に示すように、放熱板40の上面に形成したカーボンナノチューブ60をTIM30Aの下面に向けて、加圧する。次に、S44では、放熱板40の下面に設けたカーボンナノチューブ60をTIM30Bの上面に向けて、加圧する。
【0041】
次に、S46では、放熱フィン50を用意し、図8(A)に示すように、放熱フィン50の下面に形成したカーボンナノチューブ60を、TIM30Aの上面に向けて加圧する。このようにして、図8(B)に示すように、放熱板40及び放熱フィン50をTIM30A、Bにそれぞれ装着する。
【0042】
なお、S42から46の工程で、加える圧力は、約0.5MPa〜5MPaである。この圧力は、撓み性を有するカーボンナノチューブ60の先端部62が、低熱伝導物質層31と接触して様々な方向に変形することができる圧力とする。
【0043】
次に、図8(C)の放熱部品装着図にしたがって、半導体パッケージ実装工程について説明する。図9は、半導体パッケージ実装工程を示すフローチャートである。図9に示すように、S50は、基板10に半導体素子20を実装する工程である。ここでは、基板10上に半導体素子20を配置した後、公知の方法で接着固定する。
【0044】
次に、S52は、S46の処理により放熱部品製造工程で得られた放熱部品を半導体素子20に接着する。具体的には、例えば図8(C)に示すように、S46において、放熱フィン50、TIM30A、放熱板40を装着したTIM30Bの下面と、S50で基板上に実装した半導体素子20の上面を合わせて、接着する。
【0045】
これにより、上記図3に示した半導体パッケージが完成する。なお、上記順序は、適宜変更することができる。例えば、放熱板40を装着したTIM30Bの下面を、半導体素子20の上面に接着した後、放熱板40の上面にTIM30Aの下面を装着し、TIM30Aの上面に、放熱フィン50を装着してもよい。
【0046】
上述したように、第1の実施形態では、放熱板40又は放熱フィン50のTIM30と対向する面に、線状の高熱伝導性物質であるカーボンナノチューブ60が熱伝導方向(放熱板40又は放熱フィン50のTIM30と対向する面に直角な方向)に林立するように形成されている。その結果、カーボンナノチューブ60がTIM30の表面に配置され熱伝導方向に加圧されると、カーボンナノチューブ60の先端部62が様々な方向に変形するため、カーボンナノチューブ60とTIM30の最表面の低熱伝導物質層31とが接触する確率を高めることができる。その結果、カーボンナノチューブ60はTIM30の最表面の低熱伝導物質層31と密着するため、接触熱抵抗を低減することが可能となり、熱伝導性を向上することができる。よって半導体素子20から発する熱を外部に放出する放熱性能を良くすることが可能となる。
【0047】
また、放熱板40又は放熱フィン50、TIM30の表面形状(表面の凹凸)に依存されることなく、接触熱抵抗を低減することができ、密着性の向上も可能となる。
【0048】
(半導体パッケージ放熱用部品の変形例1)
図10は、樹脂シート内に金属やカーボン等のピラーを貫通させたTIMを示す図である。図10に示すように、TIM35は、樹脂シート37内に金属やカーボン等のピラーである高熱伝導性物質39を貫通させたシートである。
【0049】
図10の拡大図に示すように、樹脂シート37と高熱伝導性物質39の水平面における高さを比較すると、樹脂シート37の樹脂面に対して、金属ピラーである高熱伝導性物質39の方が窪んで、わずかに低くなっている。このため、例えば従来の放熱板を使用した場合に、放熱板とTIM35との接触面には空気層ができて、接触熱抵抗が上がり、熱伝導性を低くしていた。
【0050】
図11は、図5に示す放熱板又は放熱フィンと、図10に示すTIMとの接触部を拡大した断面図である。図11に示すように、放熱板40又は放熱フィン50のTIM35と対向する面にはカーボンナノチューブ60が形成されている。カーボンナノチューブ60がTIM35の表面に配置され熱伝導方向に加圧されると、カーボンナノチューブ60の先端部62が様々な方向に変形するため、TIM35の高熱伝導性物質39が樹脂シート37よりも低くなっていたとしても、カーボンナノチューブ60がTIM35の表面全体と接する。その結果、放熱板40又は放熱フィン50とTIM35との接触熱抵抗を低減することが可能となり、熱伝導性を向上することができる。よって半導体素子20から発する熱を外部に放出する放熱性能を良くすることが可能となる。
【0051】
(第2の実施形態)
(第2の実施形態に係る半導体パッケージ放熱用部品)
第2の実施形態は、第1の実施形態の図3におけるTIM30をTIM70に置換したものであり、それ以外は第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図12は、カーボンナノチューブを熱伝導方向に配列させ樹脂で成形してシート状にしたTIMの断面図である。図12に示すように、TIM70は、熱伝導方向に配列させたカーボンナノチューブ80を樹脂90で成形してシート状にした構造を有する。カーボンナノチューブ80の一方の端部82は樹脂90の一方の面から突出し、カーボンナノチューブ80の他方の端部84は樹脂90の他方の面から突出している。カーボンナノチューブ80は、図4に示すTIM30の高熱伝導性物質32に相当する。樹脂90は、例えばエポキシ樹脂や有機系の樹脂を主成分として成形されている。カーボンナノチューブ80の詳細についてはカーボンナノチューブ60と同様であるため、その説明は省略する。なお、カーボンナノチューブ80を樹脂90の一方の面のみから突出させることも可能である。
【0053】
樹脂90の一方の面からカーボンナノチューブ80の一方の端部82までの高さL3は、例えば50〜100μmとすることができる。カーボンナノチューブ80の一方の端部82の位置は、所定のばらつきを有する。最短のカーボンナノチューブ80と最長のカーボンナノチューブ80のそれぞれの一方の端部82の位置の相対的な差異L4は、約20μm程度である。
【0054】
又、樹脂90の他方の面からカーボンナノチューブ80の他方の端部84までの高さL5は、例えば50〜100μmとすることができる。カーボンナノチューブ80の他方の端部84の位置は、所定のばらつきを有する。最短のカーボンナノチューブ80と最長のカーボンナノチューブ80のそれぞれの他方の端部84の位置の相対的な差異L6は、約20μm程度である。なお、TIM70の全体の厚さは、約0.25mmである。
【0055】
図13は、放熱板又は放熱フィンと図12に示すTIMとの接触部を拡大した断面図である。カーボンナノチューブ60及び80は撓み性を有しており、カーボンナノチューブ60の先端部62は、隣接するカーボンナノチューブ80が形成するnmオーダーの空隙に入り込み、カーボンナノチューブ80の一方の端部82は、隣接するカーボンナノチューブ60が形成するnmオーダーの空隙に入り込んでいる。
【0056】
なお、半導体パッケージ放熱用部品装着工程については、第1の実施形態の図8に示す工程と同様であるため、その説明は省略する。
【0057】
上述したように、第2の実施形態では、放熱板40又は放熱フィン50のTIM70と対向する面に、線状の高熱伝導性物質であるカーボンナノチューブ60が熱伝導方向(放熱板40又は放熱フィン50のTIM70と対向する面に直角な方向)に林立するように形成されている。更に、TIM70の放熱板40又は放熱フィン50と対向する面に、線状の高熱伝導性物質であるカーボンナノチューブ80が熱伝導方向(TIM70の放熱板40又は放熱フィン50と対向する面に直角な方向)に林立するように形成されている。そのため、カーボンナノチューブ60がカーボンナノチューブ80と対向するように配置され熱伝導方向に加圧されると、カーボンナノチューブ60の先端部62は、隣接するカーボンナノチューブ80が形成するnmオーダーの空隙に入り込み、カーボンナノチューブ80の一方の端部82は、隣接するカーボンナノチューブ60が形成するnmオーダーの空隙に入り込む。その結果、カーボンナノチューブ60とカーボンナノチューブ80とは互いに密着するため、接触熱抵抗を低減することが可能となり、熱伝導性を向上することができる。よって半導体素子20から発する熱を外部に放出する放熱性能を良くすることが可能となる。
【0058】
また、放熱板40又は放熱フィン50、樹脂90の表面形状(表面の凹凸)に依存されることなく、接触熱抵抗を低減することができる。又、放熱板40又は放熱フィン50とTIM70との密着性を向上することができる。
【0059】
なお、カーボンナノチューブ80に代えて、カーボンナノチューブ80と同様な線状の高熱伝導性物質(金属フィラー、カーボンフィラー、グラファイト等)を用いても、同様の効果を奏する。
【0060】
上述したように、本発明によれば、熱伝導性が高く放熱性の良い半導体パッケージ放熱用部品を提供することを可能とする。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0062】
10,100 基板
20,200 半導体素子
30,35,70,300 TIM(熱伝導部材)
31,37,301 低熱伝導物質層
32、39,302 高熱伝導性物質
40,400 放熱板(ヒートシンク)
50,500 放熱フィン
60,80 カーボンナノチューブ
62 先端部
82 一方の端部
84 他方の端部
90 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージ上に配置され、熱伝導部材に接する半導体パッケージ放熱用部品であって、
当該放熱用部品の前記熱伝導部材と対向する面には、線状の高熱伝導性物質が熱伝導方向に林立するように形成され、
前記線状の高熱伝導性物質の先端部は、前記熱伝導部材の表面に密着していることを特徴とする半導体パッケージ放熱用部品。
【請求項2】
前記線状の高熱伝導性物質は、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の半導体パッケージ放熱用部品。
【請求項3】
半導体パッケージ上に配置され、熱伝導部材に接する半導体パッケージ放熱用部品であって、
当該放熱用部品の前記熱伝導部材と対向する面には、第1の線状の高熱伝導性物質が熱伝導方向に林立するように形成され、
前記熱伝導部材の当該放熱用部品と対向する面には、第2の線状の高熱伝導性物質が熱伝導方向に林立するように形成され、
前記第1の線状の高熱伝導性物質の先端部は、隣接する前記第2の線状の高熱伝導性物質が形成する空隙に入り込み、前記第2の線状の高熱伝導性物質の先端部は、隣接する前記第1の線状の高熱伝導性物質が形成する空隙に入り込むことにより互いに密着していることを特徴とする半導体パッケージ放熱用部品。
【請求項4】
前記第1の線状の高熱伝導性物質はカーボンナノチューブであり、前記第2の線状の高熱伝導性物質は、金属フィラー、カーボンフィラー、グラファイト、及びカーボンナノチューブのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体パッケージ放熱用部品。
【請求項5】
無酸素銅を主成分とする請求項1乃至4の何れか一項記載の半導体パッケージ放熱用部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−171200(P2010−171200A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12270(P2009−12270)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】