説明

半導体ポリマおよび半導体ポリマを調製する方法

【課題】既知の薄膜トランジスタの性能を改良する。
【解決手段】式(I)および(II):


式(I) 式(II)
(式中、RおよびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択され、XおよびYは、独立して、共役二価部分であり、aおよびbは、独立して、0から10までの整数であり、nは、2から5,000までの整数である)からなる群から選択される半導体ポリマである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、さまざまな実施形態において、電子デバイス、例えば薄膜トランジスタ(「TFT」)などで使用するのに適する組成物およびプロセスに関する。本開示は、また、上記の組成物およびプロセスを用いて製造するコンポーネントまたは層、ならびに上記の材料を含有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)は、例えば、センサ、イメージスキャナ、および電子表示デバイスを含めた現代の電子機器における基本的コンポーネントである。現在主流のシリコン技術を用いるTFT回路は、いくつかの用途、特に大面積電子デバイス、例えば高速のスイッチングが必須ではないディスプレイ用のバックプレーンスイッチング回路(例えば、アクティブマトリクス液晶モニタまたはテレビ受信機)に対してはコストが高過ぎることがある。シリコンベースのTFT回路の高コストは、主として、大きな資本を必要とするシリコン製造設備ならびに厳密に制御された環境下での複雑な高温、高真空写真平版製造プロセスのためである。はるかに低い製造コストを有するだけでなく物理的に小型、軽量、および柔軟性であるなどの機械的特性をアピールするTFTを作製することが一般に求められる。有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、高速のスイッチングまたは高密度を必要としないような用途に対して適切であり得る。
【0003】
TFTは、概ね、支持基板、3つの導電性電極(ゲート、ソースおよびドレイン電極)、チャネル半導体層、およびゲート電極を半導体層から分離する電気絶縁性のゲート誘電体層から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−288033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知のTFTの性能を改良することが望まれる。性能は、少なくとも3つの特性、移動度、電流オン/オフ比、およびしきい値電圧によって評価することができる。移動度は、cm/V・秒の単位で測定され、より高い移動度が望ましい。より高い電流オン/オフ比が望ましい。しきい値電圧は、電流が流れるようにするためにゲート電極に加える必要のあるバイアス電圧と関係する。概して、できるだけゼロ(0)に近いしきい値電圧が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、さまざまな実施形態において、薄膜トランジスタの半導体層における使用に適する半導体ポリマを対象とする。
【0007】
その半導体ポリマは、式(I)および(II):
【化1】


式(I) 式(II)
(式中、
およびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択され、
XおよびYは、独立して、共役二価部分であり、
aおよびbは、独立して、0から約10までの整数であり、
nは、2から約5,000までの整数である)
からなる群から選択される。
【0008】
XおよびYは、独立して、
【化2】


(式中、Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)およびそれらの組合せから選択される部分を含む。
【0009】
該半導体ポリマは、式(I−a)〜(I−h):
【化3】


式(I-a) 式(I-b)
【化4】


式(I-c) 式(I-d)
【化5】


式(I-e) 式(I-f)
【化6】


式(I-g) 式(I-h)
(式中、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)から選択することができる。
【0010】
該半導体ポリマは、式(II−a)〜(II−v):
【化7】


式(II-a) 式(II-b)
【化8】


式(II-c) 式(II-d)
【化9】


式(II-e) 式(II-f)
【化10】


式(II-g) 式(II-h)
【化11】


式(II-i) 式(II-j)
【化12】


式(II-k) 式(II-l)
【化13】


式(II-m) 式(II-n)
【化14】


式(II-o) 式(II-p)
【化15】


式(II-q) 式(II-r)
【化16】


式(II-s) 式(II-t)
【化17】


式(II-u) 式(II-v)
(式中、R、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)から選択することができる。特定の実施形態において、R、RおよびRは、独立して、C〜C20アルキルである。
【0011】
ヘテロアリール基は、チエニル、フラニル、ピリジニル、オキサゾリル、ピロイル、トリアジニル、イミダゾイル、ピリミジニル、ピラジニル、オキサジアゾイル、ピラゾイル、トリアゾイル、チアゾイル、チアジアゾイル、キノリニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、およびカルバゾイルから選択することができ、そのヘテロアリールは、アルキル、アリール、ゼロ〜約36個の炭素原子を有するヘテロ原子含有基、またはハロゲンにより置換されていてもよい。
【0012】
他の実施形態において、該半導体ポリマは、式(I)または(II):
【化18】


式(I) 式(II)
[式中、
およびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択され、
各XおよびY部分は、独立して、
【化19】


(式中、Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)から選択され、
aおよびbは、独立して、0から約10までの整数であり、
nは、2から約5,000までの整数である]を有する。
【0013】
また実施形態に開示されているのは、式:
【化20】


式(II-j)
(式中、Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)
の半導体ポリマを調製する方法であって、
5,5’−ジホルミル−4,4’−ジ(R)チオ−2,2’−ビチオフェンを合成するステップと、
5,5’−ジホルミル−4,4’−ジ(R)チオ−2,2’−ビチオフェンとヒドラジンとを重合して、前記式(II−J)で表されるポリマを形成するステップとを含む方法である。
【0014】
またさらなる実施形態に含まれているのは、このプロセスによって生産された半導体層および/または薄膜トランジスタである。そのトランジスタは、0.01cm/V・秒以上の移動度および/または10以上の電流オン/オフ比を有することができる。
【0015】
本開示の例示的な実施形態のこれらおよびその他の限定されない特徴を、以下により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示のTFTの最初の例示的な実施形態を示す図である。
【図2】本開示のTFTの2番目の例示的な実施形態を示す図である。
【図3】本開示のTFTの3番目の例示的な実施形態を示す図である。
【図4】本開示のTFTの4番目の例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に開示されているコンポーネント、プロセス、および装置のより完全な理解は、添付の図面を参照することによって得ることができる。これらの図面は本開発を説明する便利さおよび容易さに基づく単なる略図であり、従って、デバイス類またはそれらのコンポーネントの相対的大きさおよび寸法を示しかつ/または例示的な実施形態の範囲を定義または限定することは意図されていない。
【0018】
明瞭さのために特定の用語が以下の説明において使用されているが、これらの用語は図面中で説明のために選択した実施形態の詳しい構造を表すことのみが意図されており、本開示の範囲を定義または限定することは意図されていない。図面および以下の説明において、同様の数字表示は、同様の機能をもつコンポーネントを意味することを理解されたい。
【0019】
本開示は、下でさらに説明する式(I)または(II)の半導体ポリマに関する。それらの半導体ポリマは、薄膜トランジスタまたは有機薄膜トランジスタ(OTFT)の半導体層における使用に対して特に適している。かかるトランジスタ類は、多くの異なる構造を有している。
【0020】
図1は、最初のOTFTの実施形態または構造を示す。OTFT10は、ゲート電極30および誘電体層40と接している基板20を含む。ここでゲート電極30は基板20中に画かれているがこれは必ずしも必要ない。しかしながら重要なのは、誘電体層40がゲート電極30をソース電極50、ドレイン電極60、および半導体層70から分離していることである。ソース電極50は、半導体層70に接している。ドレイン電極60も半導体層70に接している。半導体層70は、ソース電極50とドレイン電極60の上および間に広がっている。随意的な界面層80は、誘電体層40と半導体層70との間に位置している。
【0021】
図2は、2番目のOTFTの実施形態または構造を示す。OTFT10は、ゲート電極30および誘電体層40と接している基板20を含む。半導体層70は、誘電体層40を覆ってまたは誘電体層40の上部に配置されており、それをソース電極50およびドレイン電極60から分離している。随意的な界面層80は、誘電体層40と半導体層70との間に位置している。
【0022】
図3は、3番目のOTFTの実施形態または構造を示す。OTFT10は、ゲート電極としても作用し、誘電体層40と接している基板20を含む。半導体層70は、誘電体層40を覆ってまたは誘電体層40の上部に配置されており、それをソース電極50およびドレイン電極60から分離している。随意的な界面層80は、誘電体層40と半導体層70との間に位置している。
【0023】
図4は、4番目のOTFTの実施形態または構造を示す。OTFT10は、ソース電極50、ドレイン電極60、および半導体層70と接している基板20を含む。半導体層70は、ソース電極50とドレイン電極60の上および間に広がっている。誘電体層40は、半導体層70の上部にある。ゲート電極30は、誘電体層40の上部にあり、半導体層70とは接していない。随意的な界面層80は、誘電体層40と半導体層70の間に位置している。
【0024】
該半導体ポリマは、式(I)および(II):
【化21】


式(I) 式(II)
(式中、
およびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択され、
XおよびYは、独立して、共役二価部分であり、
aおよびbは、独立して、0から約10までの整数であり、
nは、2から約5,000までの整数である)
からなる群から選択される。
【0025】
概して、アルキル基は、1〜約20個の炭素原子を含有しており、アリール基は、約2〜約20個の炭素原子を含有している。いくつかの実施形態において、式(I)に対してはa>0または式(II)に対しては(a+b)>0である。他の実施形態において、aは1から6までである。式(II)の特定の実施形態において、aはゼロである。式(II)の他の実施形態において、aはゼロまたは1であり、bは、1から6までである。いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方とも水素であり、一方その他においてRおよびRは、独立して、C〜C20アルキルである。
【0026】
各XおよびY部分は、
【化22】


およびそれらの組合せから選択することができ、上式中、Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される。特定の実施形態において、Rは、アルキル、例えばC〜C20アルキルなどである。注意すべきは、XおよびYは、単に部分の存在を示し、一方、aおよびbは部分の数を示していることである。言い換えると、本明細書でさらに見られるように、X部分とY部分とは互いに異なるものであり得る。加えて、例えばaが1より大きい場合、そのときはX部分それ自体が異なることができる。
【0027】
その他の実施形態において、XおよびYは、
【化23】


【化24】


または
【化25】


のいずれかである。
【0028】
複数の実施形態において、該半導体ポリマは、式(I−a)〜(I−h):
【化26】


式(I-a) 式(I-b)
【化27】


式(I-c) 式(I-d)
【化28】


式(I-e) 式(I-f)
【化29】


式(I-g) 式(I-h)
(式中、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)から選択することができる。RおよびRは、独立して、C〜C20アルキルから選択することができる。実施形態において、該半導体ポリマは、式(I−b)である。
【0029】
XおよびYの意味に関連して、式(I−e)においてはa=2である。X部分は両方とも同じ(1個の側鎖を有するチオフェン)であるが、Rの側鎖は、1つのチオフェンについては3位炭素にあり、他のチオフェンについては4位炭素にある。式(I−f)においては、a=4である。2つのX部分は置換されていないチオフェンであり、他の2つのX部分は1つの側鎖を有するチオフェンである。この場合もやはり、Rの側鎖は、1つのチオフェンについては3位炭素にあり、他のチオフェンについては4位炭素にある。
【0030】
他の実施形態において、該半導体材料は、式(II−a)〜(II−v):
【化30】


式(II-a) 式(II-b)
【化31】


式(II-c) 式(II-d)
【化32】


式(II-e) 式(II-f)
【化33】


式(II-g) 式(II-h)
【化34】


式(II-i) 式(II-j)
【化35】


式(II-k) 式(II-l)
【化36】


式(II-m) 式(II-n)
【化37】


式(II-o) 式(II-p)
【化38】


式(II-q) 式(II-r)
【化39】


式(II-s) 式(II-t)
【化40】


式(II-u) 式(II-v)
(式中、R、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)の1つから選択される。特定の実施形態においてR、RおよびRは、独立して、C〜C20アルキルから選択することができる。望ましくは、該半導体ポリマは、式(II−j)のものである。
【0031】
式(I)および(II)のR、RまたはRは、ヘテロアリールであり、そのヘテロアリールは、チエニル、フラニル、ピリジニル、オキサゾリル、ピロイル、トリアジニル、イミダゾイル、ピリミジニル、ピラジニル、オキサジアゾイル、ピラゾイル、トリアゾイル、チアゾイル、チアジアゾイル、キノリニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、およびカルバゾイルから選択することができる。そのヘテロアリール基は、アルキル、アリール、ゼロ〜約36個の炭素原子を有するヘテロ原子含有基、またはハロゲンにより置換されていてもよい。
【0032】
式(I)または(II)のいくつかの実施形態において、各XおよびY部分は、独立して、
【化41】


(式中、Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)から選択される。これらの実施形態は、また、式(I−a)〜(I−h)および式(II−a)〜(II−v)もカバーする。
【0033】
式(I)または(II)の半導体ポリマは、任意の適当な合成法によって形成することができる。例えば、スキーム1に示されているように、ホルミルまたはカルボニル基をアミノ基と反応させてポリマ(I)および(II)を形成させることができる。
【0034】
(スキーム1:ポリマ(I)および(II)の例示的な合成)
【化42】


式中、
およびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択され、
XおよびYは、独立して、共役二価部分であり、
aおよびbは、独立して、0から約10までの整数であり、
nは、2から約5,000までの整数である。
【0035】
必要に応じて、該半導体層は、別の有機半導体材料をさらに含むことができる。他の有機半導体材料の例としては、アセン類、例えばアントラセン、テトラセン、ペンタセン、およびそれらの置換誘導体類など、ペリレン類、フラーレン類、オリゴチオフェン類、その他の半導体ポリマ類、例えば、トリアリールアミンポリマ類、ポリインドロカルバゾール、ポリカルバゾール、ポリアセン類、ポリフルオレン、ポリチオフェン類およびそれらの置換誘導体類、フタロシアニン類、例えば、銅フタロシアニン類または亜鉛フタロシアニン類およびそれらの置換誘導体類が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0036】
その半導体層は、約5nmから約1000nmまでの厚さ、特に約10nmから約100nmまでの厚さである。その半導体層は、任意の適当な方法によって形成することができる。しかしながら、その半導体層は、液体組成物、例えば、分散液または溶液などから一般に形成され、次いでトランジスタの基板に堆積させる。例示的な堆積方法としては、液相成長、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、スタンピング、インクジェット印刷など、ならびに技術的に既知のその他の通常のプロセスが挙げられる。
【0037】
その基板は、シリコン、ガラス板、プラスチックフィルムまたはシートを含むが、それらには限定されない材料から構成され得る。構造的に柔軟なデバイスに対しては、プラスチック基板、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどを使用することができる。基板の厚さは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えるまでであり、例示的な厚さは、特に、柔軟なプラスチック基板に対しては約50マイクロメートルから約5ミリメートルであり、ガラスまたはシリコンのような硬い基板に対しては約0.5ミリメートルから約10ミリメートルまでである。
【0038】
ゲート電極は、導電性材料を含んで成る。それは、薄い金属膜、導電性ポリマフィルム、導電性インクもしくはペーストから製造される導電性フィルムまたは基板それ自体、例えば高濃度にドープされたシリコンであり得る。ゲート電極材料の例としては、アルミニウム、金、銀、クロム、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマ類、例えばポリスチレンスルホネートをドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)、およびカーボンブラック/グラファイトまたは銀コロイドを含んでなる導電性インク/ペーストが挙げられるが、これらに限定はされない。ゲート電極は、真空蒸着、金属もしくは導電性金属酸化物のスパッタリング、通常のリソグラフィおよびエッチング、化学気相蒸着、スピンコーティング、キャスティングまたは印刷、あるいはその他の堆積プロセスによって調製することができる。ゲート電極の厚さは、金属膜については約10から約500ナノメートルまで、導電性ポリマについては約0.5から約10マイクロメートルまで変動する。
【0039】
誘電体層は、概して、無機材料フィルム、有機ポリマフィルム、または有機−無機複合体フィルムであり得る。誘電体層として適切な無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウムなどが挙げられる。適切な有機ポリマの例としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリメタクリレート類、ポリアクリレート類、エポキシ樹脂などが挙げられる。その誘電体層の厚さは、使用されるその材料の誘電率に依存し、例えば、約10ナノメートルから約500ナノメートルまでである。該誘電体層は、例えば、1センチメートル当たり約10−12シーメンス(S/cm)未満である導電率を有する。誘電体層は、ゲート電極の形成で記載したようなプロセスを含む当技術分野で既知の通常のプロセスを用いることにより形成される。
【0040】
必要に応じて誘電体層と半導体層の間に界面層を配置することができる。有機薄膜トランジスタ中の電荷輸送はこれら2つの層の界面で起こるため、その界面層はTFTの特性に影響を及ぼす可能性がある。例示的な界面層は、シラン類、例えば、2008年4月11日に出願された米国特許出願第12/101,942号に記載されているものなどから形成することができる。
【0041】
ソース電極およびドレイン電極として使用するのに適する代表的な材料としては、ゲート電極材料のもの、例えば、金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマ類、および導電性インク類などが挙げられる。特定の実施形態において、該電極材料は、半導体に低い接触抵抗を提供する。代表的な厚さは、およそ、例えば、約40ナノメートルから約1マイクロメートルであり、より具体的な厚さは、約100〜約400ナノメートルである。本開示のOTFTデバイスは、半導体チャネルを含有する。その半導体チャネル幅は、例えば、約5マイクロメートルから約5ミリメートルまでであり、特定のチャネル幅は、約100マイクロメートルから約1ミリメートルまでである。その半導体チャネル長は、例えば、約1マイクロメートルから約1ミリメートルまでであり、より特定的なチャネル長は約5マイクロメートルから約100マイクロメートルまでである。
【0042】
ソース電極は、接地され、例えば、約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧がゲート電極に加えられるとき、例えば、約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧がドレイン電極に加えられて、半導体チャネルを越えて輸送される電荷キャリアを集める。その電極は、当技術分野で知られている通常のプロセスを用いて形成または堆積させることができる。
【0043】
必要に応じて、TFTの上部に、それをその電気特性を劣化させる可能性のある環境条件、例えば、光、酸素および湿気などから保護するために、バリア層を堆積させることもできる。かかるバリア層は、当技術分野で知られており、単にポリマを含んでなるものであり得る。
【0044】
OTFTのさまざまなコンポーネントは、図において見られるように、任意の順序で基板上に堆積させることができる。用語「基板上に」は、各コンポーネントが直接基板と接触することを必要とすると解釈すべきではない。その用語は、基板に対するコンポーネントの位置を説明するものと解釈すべきである。しかしながら、一般に、ゲート電極および半導体層は、両方とも誘電体層と接触していなければならない。加えて、ソース電極およびドレイン電極は、両方とも半導体層と接触していなければならない。本開示の方法によって形成された半導体ポリマは、有機薄膜トランジスタの任意の適切なコンポーネントに堆積してそのトランジスタの半導体層を形成することができる。
【0045】
得られたトランジスタは、複数の実施形態において、0.001cm/V・秒以上の移動度を有することができる。いくつかの実施形態において、その移動度は、0.01cm/V・秒以上である。
【0046】
以下の実施例は、本開示の方法によって作製したOTFTを説明している。実施例は、単に説明のためであり、そこに示されている材料、条件、またはプロセスパラメータに関して本開示を限定することを意味するものではない。すべて、部は、他に指示が無い限り、重量パーセントである。
【実施例】
【0047】
<ポリ(1,2−ビス((3−ドデシル−5−メチルチオフェン−2−イル)メチレン)ヒドラジン)>
ポリ(1,2−ビス((3−ドデシル−5−メチルチオフェン−2−イル)メチレン)ヒドラジン)、式(II−j)、の合成の概要をスキーム2に示す。
【0048】
(スキーム2)
【化43】

【0049】
[5,5’−ジホルミル−4,4’−ジドデシルチオ−2,2’−ビチオフェン2の合成]
アルゴンの雰囲気下、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(18.65mmol、7.46mL、2.5M)を、10分かけてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(18.65mmol)および固体の3,4’−ジドデシルチオフェン1(9.33mmol)の乾燥ヘキサン(100mL)中の混合物に加えた。その固体を溶解させると黄色の透明溶液となり、次いで淡黄色の沈殿が生じた。40mLのさらなるヘキサンを加えた。その混合物を30分間還流させてかき混ぜ、次いで−78℃まで冷却した。過剰の乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(32mmol)を、アルゴン下で5分かけて滴下して加えた。その混合物は直ちに黄色になった。その反応混合物を室温に到達するまで(一晩)放置し、得られた溶液を0℃より低く保って激しい撹拌下で3.7%HCl水溶液(400mL)中に注いだ。炭酸水素ナトリウムで中和した後、有機層をエーテルで数回抽出し、硫酸ナトリウムにより乾燥した。最初にイソプロパノール、次にヘプタンを用いて固体を晶出させた。
収量:4.35g(83.5%)
【0050】
[II−jの合成]
ヒドラジン(52.67mg、1.052mmol)および5,5’−ジホルミル−4,4’−ジドデシルチオ−2,2’−ビチオフェン2(0.5881g、1.052mmol)をエタノール(20mL)およびクロロホルム(10mL)中で混合した。その混合物を、24時間加熱して還流させ、次いで室温まで冷却し、メタノール(200mL)中に注いだ。濾過後、その固体を炭酸水素ナトリウム水溶液中で撹拌し、次いで濾過した。その固体を、ヘキサンを用いる24時間のソックスレ抽出によって精製し、次いでトルエンにより溶解した。溶媒を除去することにより、濃い紫色の金属フレークとしてのII−jを生じさせた。
収量:0.21g(36%)
DSC:融点:170℃;211℃
GPC:M/M=45066/21349=2.11
【0051】
[OTFT製作および特性決定]
図3に概略的に示した上面接触薄膜トランジスタ構成を、試験デバイス構造として使用した。その試験デバイスは、その上に約200ナノメートルの厚さを有する熱的に成長させた酸化ケイ素層によりn型にドープし、キャパシタメータにより測定して約15nF/cm(ナノファラッド/平方センチメートル)の電気容量を有するシリコンウエハー上に築いた。そのウエハーは、ゲート電極として機能し、一方、酸化ケイ素層は、ゲート誘電体として作用した。そのシリコンウエハーを、最初にイソプロパノール、アルゴンプラズマ、イソプロパノールで洗浄して空気乾燥し、次にトルエン中のオクチルトリクロロシラン(OTS−8)の0.1Mの溶液に60℃で20分間浸した。その後、そのウエハーをトルエン、イソプロパノールにより洗浄し、空気乾燥した。ジクロロベンゼンに溶解したポリマ(II−j)の溶液(0.5重量パーセント)を、最初に1.0マイクロメートルのシリンジフィルタを通して濾過し、次にOTS−8で処理したシリコンウエハーに、室温で120秒にわたり1000rpmでスピンコートした。この結果、該シリコンウエハー上に厚さが20〜50ナノメートルの半導体層が形成され、それを次に80℃の真空オーブン中で5〜10時間にわたり乾燥させた。その後、厚さが約50ナノメートルの金のソース電極およびドレイン電極を、真空蒸着によりさまざまなチャネル長およびチャネル幅のシャドーマスクを通して半導体層の上部に堆積し、かくしてさまざまな寸法の一連のトランジスタを作製した。そのデバイスは評価する前に140℃で10〜15分間アニールした。
【0052】
トランジスタ性能の評価は、Keithley4200SCS半導体特性決定システムを用いて周囲条件でのブラックボックス(すなわち、周辺光を排除した密閉箱)中で遂行した。キャリア移動度、μ、は、式(1)
SD=Cμ(W/2L)(V−V (1)
(式中、ISDは、飽和レジーム(saturated regime)におけるドレイン電流であり、WおよびLは、それぞれ、半導体チャネル幅およびチャネル長であり、Cはゲート誘電体層の単位面積当たりの電気容量であり、VおよびVは、それぞれ、ゲート電圧およびしきい値電圧である)と一致する飽和レジーム(ゲート電圧、V<ソース−ドレイン電圧、VSD)におけるデータから計算した。そのデバイスのVは、飽和レジームにおけるISDの平方根と測定したデータをISD=0に外挿することによるデバイスのVとの間の関係から決定した。
【0053】
該デバイスの伝達特性および出力特性は、該化合物がp型半導体であることを示した。W=5,000μmおよびL=90μmの寸法のトランジスタを用いて少なくとも5個のトランジスタから次の平均的特性が得られた:
移動度:0.03cm/V・秒
オン/オフ比:10
【0054】
OTFTデバイスを製造して、完全に周囲条件下で測定したところ、このタイプのポリマは、優れた空気安定性を示した。
【符号の説明】
【0055】
10 OTFT、20 基板、30 ゲート電極、40 誘電体層、50 ソース電極、60 ドレイン電極、70 半導体層、80 界面層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)および(II):
【化1】


式(I) 式(II)
(式中、
およびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択され、
XおよびYは、独立して、共役二価部分であり、
aおよびbは、独立して、0から10までの整数であり、
nは、2から5,000までの整数である)
からなる群から選択されることを特徴とする半導体ポリマ。
【請求項2】
式(I)および(II):
【化2】


式(I) 式(II)
[式中、
およびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択され、
各XおよびY部分は、独立して、
【化3】


(式中、Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)から選択され、
aおよびbは、独立して、0から10までの整数であり、
nは、2から5,000までの整数である]
からなる群から選択されることを特徴とする半導体ポリマ。
【請求項3】
式:
【化4】


式(II-j)
(式中、Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびヘテロアリールから選択される)
の半導体ポリマを調製する方法であって、
5,5’−ジホルミル−4,4’−ジ(R)チオ−2,2’−ビチオフェンを合成するステップと、
5,5’−ジホルミル−4,4’−ジ(R)チオ−2,2’−ビチオフェンとヒドラジンとを重合して、前記式(II−J)で表されるポリマを形成するステップと、
を含むことを特徴とする半導体ポリマを調製する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−43259(P2010−43259A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186302(P2009−186302)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】