説明

半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法

【課題】半導体製造の微細なパターン形成に用いられるレジスト膜として好適な、保存中のパーティクルの析出が僅かであるために現像欠陥が極めて少ない半導体レジスト用共重合体を得ることのできる半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を提供する。
【解決手段】本発明は、極性基を有する繰り返し単位と脂環構造を有する繰り返し単位とを有する半導体レジスト用共重合体を含み、且つ、イオン性添加剤を含まない半導体レジスト用共重合体溶液を、アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターに通過させることを特徴とする半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リソグラフィーにおいて使用されるレジスト膜形成用として好適な半導体レジスト用共重合体に適用するための半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造のために採用されるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められている。パターンの微細化には露光光源の短波長化が不可欠であるが、現在ではフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー(波長248nm)によるリソグラフィーが主流になりつつあり、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)による線幅線幅100nm以下のリソグラフィーも実用化されようとしている。更には、フッ素ダイマー(F2)エキシマレーザー光(波長157nm)、極紫外線(EUV)、X線、電子線等を用いた短波長の各種放射線リソグラフィー技術が開発段階にある。
【0003】
これら半導体リソグラフィーにおいては、酸の作用でアルカリ現像液に対する溶解性が変化することを利用して基板に転写するためのレジストパターンを形成するレジスト膜や、該レジスト膜の上層若しくは下層等に種々の塗布膜が使用されている。例えば下層に適用される塗布膜、即ち下層膜としては、基板からの反射光を抑えて微細なレジストパターンを正確に形成するための反射防止膜や、パターンが形成された基板に更にレジストパターンを形成する際に該基板表面の凹凸を平坦化する目的でレジストの下層に使用される平坦化膜、レジストパターンをドライエッチングにより転写するための多層レジストにおける下層膜等が挙げられる。
【0004】
これらの塗布膜は、それぞれの塗布膜の機能を有したリソグラフィー用共重合体とその他添加剤を有機溶剤に溶解した塗布液を調製し、スピンコーティングなどの方法で基板に塗布し、必要により加熱するなどして溶媒を除去して形成される。この際に使用されるリソグラフィー用共重合体は、レジスト膜や反射防止膜に求められる光学的性質、化学的性質、塗布性や基板あるいは下層膜に対する密着性等の物理的性質に加え、微細なパターン形成を妨げる異物がないことなどの塗膜用共重合体としての基本的な性質が求められている。
【0005】
レジスト膜に用いられる共重合体としては、酸の作用によってアルカリ現像液への溶解性が低下するネガ型と、酸の作用によってアルカリ現像液への溶解性が増大するポジ型とがある。ポジ型のレジスト用共重合体は、半導体基板や下層膜に対する密着性を高めたり、レジスト用有機溶媒やアルカリ現像液に対する溶解性を調整したりするための極性基を有する繰り返し単位と、非極性置換基が酸によって解離してアルカリ現像液に可溶な極性基が発現する構造を有する繰り返し単位とを必須成分とし、必要に応じてレジスト用有機溶媒やアルカリ現像液への溶解性を調節するための酸安定性の非極性置換基を有する繰り返し単位を含んで構成される。
【0006】
このようなポジ型レジスト用共重合体の具体例としては、KrFリソグラフィーでは、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と酸分解性アルコキシスチレン由来の繰り返し単位とを含む共重合体、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と酸分解性アルキル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を含む共重合体、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位の一部をアセタールで保護したポリマー等が知られており、ArFリソグラフィーでは、ヒドロキシアルキル基が置換した(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位と酸分解性アルキル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位とを含む共重合体等が知られている。特に、レジストパターンの微細化に伴い、疎水性の高い脂環構造を、酸解離性基として導入して解離前後におけるアルカリ現像液への溶解性のコントラストを高めたり、エッチング耐性や光線透過率を高めたりした樹脂が使用され始めている。
【0007】
一方で、半導体リソグラフィーにおいては、レジストパターンの欠陥が半導体の歩留まりに影響するため、レジストパターンの微細化に伴い、より微細な欠陥についても低減することが求められている。特に、レジスト用共重合体に微量含まれる、分子量が極端に高い高分子量体(以下、ハイポリマーという)や、極性基若しくは脂環構造を有する繰り返し単位を含む共重合体において同種の繰り返し単位が連続して長鎖を形成した構造(以下、長鎖連続体という)は、レジスト用有機溶媒やアルカリ現像液に溶解しにくい。又、このようなハイポリマーや長鎖連続体は、共重合体を含むレジスト溶液を製造した直後は溶解していても、保存中に極微小の難溶解性物質が核となって生成すると想像される微小粒径の異物(以下、パーティクルという)が析出しやすく、現像後にレジストパターンの欠陥(以下、現像欠陥という)が生じやすいと言う問題があり、レジストパターンの微細化において大きな障害となっていた。
【0008】
脂環構造を有する共重合体に含有されている微小な夾雑物を除去する方法としては、例えば、共重合体を光酸発生剤等の感放射線性化合物と共に溶媒に溶解したレジスト組成物を、孔径0.1μm以下のフィルターでろ過する方法(特許文献1)が知られている。しかし、この方法によっては、ろ過時点で存在する微小な夾雑物は除去できるものの、保存中に経時的に析出するパーティクルを低減するという課題は解決できていなかった。
【0009】
又、アルカリ可溶性樹脂や酸の作用によりアルカリ可溶性になる樹脂等のバインダー成分を酸発生剤と共に溶媒に溶解したレジスト組成物を、正のゼータ電位を有するフィルターに通過させることにより、長期間保存してもシリコンウエハーに塗布した薄膜にピンホール欠陥がない、保存安定性に優れたレジスト組成物を製造する方法が知られている(特許文献2)。しかし、酸発生剤を含む組成物を正のゼータ電位を有するフィルターに通過させると、酸発生剤等のイオン性添加物の一部が正のゼータ電位を有するフィルターに捕捉されてしまうため、感度等のリソグラフィー特性が変化してしまうという問題があって実用的でなく、又、現像欠陥の原因であるパーティクルの核物質が十分に捕捉されないためか、保存中に経時的に析出するパーティクルを低減することができないという問題があった。
【0010】
イオン性添加剤を含まないリソグラフィー用共重合体溶液を、ゼータ電位を有するフィルターに通過させる例としては、溶媒に溶解したビニルフェノール系重合体を、カチオン電荷調節剤によってゼータ電位を生じるフィルターに通過させる方法(特許文献3)、若しくは、イオン交換体及び/又はキレート形成体とカチオン電荷調節剤とを一体若しくは別々に含むフィルターに通過させることにより金属不純物を効果的に除去する方法(特許文献4)が知られている。しかし、脂環構造を有する共重合体において特に問題となるパーティクルを低減する効果は見出されていなかった。
【0011】
又、レジスト組成物の中には経時的に感度が変化するものがあり、このような感度変化を引き起こす原因物質を取り除く方法として、酸分解性樹脂と酸発生剤とを含有するレジスト溶液を、ポリエチレン、ナイロン又はポリスルホンを含有するフィルターでろ過する方法(特許文献5)や、単環又は多環の脂環式炭化水素構造を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂を、イオン交換フィルターで濾過する濾過工程、及び/又は、不溶コロイド除去フィルターで濾過する方法(特許文献6)が知られている。しかし、感度変化は抑制されるものの、難溶解性である異物の核物質の除去効果は不明であり、保存中の経時的な異物発生の問題は何ら解決していなかった。

【特許文献1】特開平11−231539号公報
【特許文献2】特開2001−350266号公報
【特許文献3】特開平08−165313号公報
【特許文献4】特開平10−237125号公報
【特許文献5】特開2001−125269号公報
【特許文献6】特開2003−330202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体製造の微細なパターン形成に用いられるレジスト膜として好適な、保存中のパーティクルの析出が僅かであるために現像欠陥が極めて少ない半導体レジスト用共重合体を得ることのできる半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、極性基を有する繰り返し単位と脂環構造を有する繰り返し単位とを有する半導体レジスト用共重合体を含み、且つ、イオン性添加剤を含まない半導体レジスト用共重合体溶液を、アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターに通過させることを特徴とする半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を提供する。
【0014】
同じく上記目的を達成するために本発明は、極性基を有する繰り返し単位と脂環構造を有する繰り返し単位とを有する半導体レジスト用共重合体を含み、且つ、イオン性添加剤を含まない半導体レジスト用共重合体溶液を、アミノ基及び/又はアミド結合を有するフィルターを通過させる工程と、ポリアミド樹脂を含むフィルターを通過させる工程に付すことを特徴とする半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、長期間保存した場合の経時的なパーティクルの析出を抑えることが可能な半導体レジスト用共重合体を得ることができ、簡便に実施することができる半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を適用する半導体レジスト用共重合体は、半導体基板や下層膜との密着性を高めたり、レジスト用有機溶媒やアルカリ現像液に対する溶解性を調整したりするための極性基を有する繰り返し単位(A)を必須成分とし、更に、例えばポジ型レジスト用共重合体の場合は、酸で分解してアルカリ可溶性の置換基が発現する構造を有する繰り返し単位(B)を含み、必要に応じて、レジスト用溶媒やアルカリ現像液に対する溶解性を調整するための非極性の構造を有する繰り返し単位(C)を含んで構成され、且つ、繰り返し単位(A)、(B)、(C)のいずれか、若しくは全てに脂環構造を有するものである。
【0017】
密着性や溶解性を調整するための極性基を有する繰り返し単位(A)は、極性基を有する単量体を共重合させることによって導入することができる。このような単量体として、例えば、1) ヒドロキシスチレン類、2) ヒドロキシフルオロアルキルスチレン類、3) エチレン性二重結合を有するカルボン酸、4)前記3)のヒドロキシアルキルエステル、5)前記3)のヒドロキシフルオロアルキルエステル等の水酸基を有する化合物;6)ラクトン、酸無水物、アミド、イミド、ニトリル、カーボネート、エポキシ等の極性の構造を有する置換基が、上記した水酸基を有する化合物の水酸基に置換した化合物、更には7)無水マレイン酸、マレイミド等の極性基含有重合性化合物を挙げることができる。
【0018】
上記水酸基を有する化合物(単量体)の具体例としては、1)p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等のヒドロキシスチレン類;2)p−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレン等のヒドロキシフルオロアルキルスチレン類;3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸類、及び、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、2−トリフルオロメチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等の脂環構造を有するエチレン性二重結合を有するカルボン酸類;4)前記3)のエチレン性二重結合を有するカルボン酸類に、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基、及びヒドロキシ−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基等の脂環構造を有するヒドロキシアルキル基等が置換したヒドロキシアルキルエステル類;5)前記3)のエチレン性二重結合を有するカルボン酸類に、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)メチル基等のヒドロキシフルオロアルキル基、及び、5−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)メチル−2−ノルボルニル基、5−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)メチル−3−ノルボルニル基、5−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)−2−ノルボルニル基、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基等の脂環構造を有するヒドロキシフルオロアルキルエステル基等が置換したヒドロキシフルオロアルキルエステル類等を挙げることができる。
【0019】
水酸基以外の極性基を有する単量体としては、6)ラクトン、酸無水物、イミド、ニトリル、カーボネート、エポキシ等の極性の構造を有する置換基が、上記1)〜5)で例示した水酸基を有する単量体の水酸基に置換した化合物の他、7)無水マレイン酸やマレイミド等の極性基含有重合性化合物を挙げることができる。
【0020】
前記6)にいう極性置換基として特に好ましいのはラクトン構造を含む置換基であり、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、メバロン酸δ−ラクトン等のラクトン構造、及び、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン、2,6−ノルボルナンカルボラクトン、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン等の脂環構造を有するラクトン構造を有する置換基を挙げることができる。6)にいう上記1)〜5)で例示した水酸基を有する単量体の水酸基に置換した化合物としては、これらの置換基が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、2−トリフルオロメチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸に置換したエステル化合物が挙げられる。
【0021】
一方、酸で分解してアルカリ可溶性の置換基が発現する構造を有する繰り返し単位(B)は、従来レジストとして一般的に用いられている構造を意味し、酸によって解離する置換基(以下、酸解離性基)でアルカリ可溶性基が保護された構造を有する単量体を重合させるか、或いは、アルカリ可溶性の構造を有する単量体を重合させた後、アルカリ可溶性基を酸解離性基で保護することにより得ることができる。
【0022】
酸解離性基としては、tert−ブチル基、tert−アミル基等のアルキル基;1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−メチル-1−シクロヘキシル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−プロピル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−メチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基、8−エチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の脂環構造を有するアルキル基;1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−iso−プロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、iso−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、tert−ブトキシカルボニル基等の含酸素アルキル基;1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエチル基、シクロペンチルオキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシメチル基等の脂環構造を有する含酸素炭化水素基等を挙げることができる。
【0023】
酸解離性基を有する単量体としては、例えば、上記繰り返し単位(A)の1)〜5)で例示した化合物の水酸基を酸解離性基で保護した化合物等を挙げることができる。又、保護されていないアルカリ可溶性基を有する単量体を重合させた後、アルカリ可溶性基を酸解離性基で保護する場合は、前記のアルカリ可溶性基を有する重合性化合物を重合させた後、酸触媒のもとでビニルエーテルやハロゲン化アルキルエーテルなどの酸解離性基を与える化合物と反応させることによって達成できる。反応に用いる酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、強酸性イオン交換樹脂等を挙げることができる。
【0024】
更に、必要に応じて含むことのできる、レジスト用有機溶媒やアルカリ現像液への溶解性を調節するための酸安定性の非極性置換基を有する繰り返し単位(C)を与える単量体としては、例えばエチレン性二重結合に極性基を含まない置換若しくは未置換のアリール基が結合した化合物や、上記繰り返し単位(A)の1)〜2)で例示した化合物の水酸基が酸に安定な非極性基で置換された化合物を挙げることができる。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデン等のエチレン性二重結合を有する芳香族化合物;アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、ノルボルネンカルボン酸、2−トリフルオロメチルノルボルネンカルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸に非極性の酸安定基が置換したエステル化合物;ノルボルネン、テトラシクロドデセン等のエチレン性二重結合を有する脂環式炭化水素化合物などを挙げることができる。又、前記カルボン酸にエステル置換する非極性酸安定基の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、2−アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基等の脂環構造を有するアルキル基を挙げることができる。
【0025】
これらの単量体は、繰り返し単位(A)、(B)及び(C)のそれぞれについて1種類若しくは2種類以上を混合して用いることができ、得られるレジストポリマー中の各繰り返し単位の組成比は、レジストとしての基本性能を損なわない範囲で選択することができる。
【0026】
例えばポジ型レジスト用共重合体の場合、一般に、繰り返し単位(A)は30〜90モル%であることが好ましく、40〜90モル%であることがより好ましい。尚、同一の極性基を有する単量体単位については、70モル%以下とすることが好ましい。繰り返し単位(B)の組成比は10〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがより好ましい。繰り返し単位(C)の組成比は、0〜50モル%であることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましい。
【0027】
上記半導体レジスト用共重合体の重合方法としては、重合溶媒の存在下に重合開始剤及び必要に応じ連鎖移動剤を使用して上記の単量体群から選択される2種類以上の重合性化合物をラジカル重合して得ることが好ましい。
【0028】
重合反応に用いる重合開始剤としては、一般にラジカル発生剤として用いられているものであれば特に制限されないが、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート等の有機過酸化物を単独若しくは混合して用いることができる。
【0029】
重合開始剤及び連鎖移動剤の使用量は、重合反応に用いる原料単量体や重合開始剤、連鎖移動剤の種類、重合温度や、重合溶媒、重合方法、精製条件等の製造条件により異なるので一概に規定することはできないが、所望の分子量を達成するための最適な量を使用する。一般に、共重合体の重量平均分子量が高すぎると、塗膜形成時の使用される溶媒やアルカリ現像液への溶解性が低くなり、一方、低すぎると塗膜性能が悪くなることから、重量平均分子量が2,000〜40,000の範囲になるよう調整することが好ましく、更に、3,000〜30,000の範囲になるよう調整することがより好ましい。
【0030】
重合の反応方式としては、全ての単量体、重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤を重合溶媒に溶解して重合温度に加熱するいわゆる一括重合法や、単量体を溶媒に溶解し、重合温度に加熱した後で重合開始剤を添加する開始剤添加法、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤の一部若しくは全てを混合若しくは独立して重合温度に加熱した重合系内に滴下するいわゆる滴下重合法などにより実施することができる。中でも、滴下重合法はロット間差を小さくすることができるため好適であり、特に、滴下時間中に未滴下の単量体を安定的に保持するという点で、単量体と重合開始剤をそれぞれ別々に保持し、滴下する方法が好ましい。
【0031】
重合反応に用いる溶媒としては、原料単量体、得られた共重合体、重合開始剤及び連鎖移動剤を安定して溶解し得る溶媒であれば特に制限されない。重合溶媒の具体な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができ、これらを単独又は混合して用いることができる。重合溶媒の使用量には特に制限はないが、通常、単量体1重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。溶媒の使用量があまりに少なすぎると単量体が析出したり高粘度になりすぎて重合系を均一に保てなくなったりする場合があり、多すぎると単量体の転化率が不十分であったり共重合体の分子量が所望の値まで高めることができなかったりする場合がある。
【0032】
重合の反応条件は特に制限されないが、一般に反応温度は40℃〜100℃程度が好ましく、共重合体のロット間差を小さくするためには重合温度を厳密に制御する必要があり、設定温度±1℃以内で制御することが好ましい。反応時間は、滴下重合の場合、滴下時間は長い方が重合系内の単量体組成及び濃度とラジカル濃度が一定に保てるので、滴下時間中に生成するポリマーの組成、分子量が均一になりやすく好ましいが、逆に滴下時間が長すぎると時間当たりの生産効率及び滴下液中の単量体の安定性の面から好ましくない。従って、滴下時間は、0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間の間を選択する。滴下終了後は、未反応単量体が残るので、一定時間、重合温度を維持しながら熟成することが好ましい。熟成時間は8時間以内、好ましくは1〜6時間の中から選択し、一括重合の場合、重合温度到達後の熟成時間は1〜24時間、好ましくは2〜12時間の間を選択する。
【0033】
重合して得た共重合体は、未反応単量体、オリゴマー、重合開始剤や連鎖移動剤及びこれらの反応副生物等の低分子量不純物を含んでおり、これらを精製工程によって除く必要がある。具体的には、重合反応液を、必要に応じて良溶媒を加えて希釈した後、貧溶媒と接触させて共重合体を固体として析出させ、不純物を貧溶媒相に抽出する(以下、再沈という)か、若しくは、液−液二相として貧溶媒相に不純物を抽出することによって行われる。再沈させた場合、析出した固体を濾過やデカンテーション等の方法で貧溶媒から分離した後、この固体を、良溶媒で再溶解して更に貧溶媒を加えて再沈する工程、若しくは、析出した固体を貧溶媒で洗浄する工程によって更に精製することができる。又、液−液二層分離した場合、分液によって貧溶媒相を分離した後、得られた共重合体溶液に貧溶媒を加えて再沈若しくは液液二相分離によって更に精製することができる。これらの操作は、同じ操作を繰り返しても、異なる操作を組み合わせても良い。
【0034】
この精製工程に用いる貧溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、乳酸エチル等の水酸基を有する化合物、ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、エチルシクロヘキサン等の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和炭化水素類、若しくは、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を挙げることができる。これらの溶媒は、それぞれ単独若しくは混合して用いることができる。又、良溶媒としては、上記の重合溶媒や後述する塗膜形成用溶媒で例示する溶媒等を挙げることができ、貧溶媒を良溶媒と混合して用いることもできる。
【0035】
精製工程に用いる貧溶媒の種類と量は、共重合体を低分子量化合物と分離できれば特に制限されないが、共重合体の貧溶媒への溶解度、重合に用いた溶媒の種類と量、不純物の種類と量等に応じて適宜選択することができる。貧溶媒の量は、一般的には、必要に応じて良溶媒で希釈した重合反応液の総量に対して重量で0.5〜50倍であり、好ましくは1〜20倍であり、更に好ましくは2〜10倍である。何れの場合も、溶媒の使用量が少ないと未反応単量体、重合開始剤、連鎖移動剤及びこれらの反応副生物などの不純物の分離が不十分となり、逆に多すぎると廃液が増えるなど、作業性及びコストの面で好ましくない。
【0036】
精製工程の温度は、半導体レジスト用共重合体の分子量、分子量分布、残存単量体や開始剤残査等の不純物の除去率、更にはリソグラフィーにおける様々な特性等に大きく影響するため、厳密に制御する必要がある。精製工程の温度は、低すぎると再沈溶媒や洗浄溶媒への不純物の溶解性が不十分となり、不純物の除去が十分に行われないため効率的でなく、逆に高すぎると共重合体が再沈溶媒及び洗浄溶媒に溶出し、共重合体の低分子領域における組成バランスが崩れたり、収率が低下したりするため好ましくない。このため、精製工程は温度0〜40℃の範囲で、好ましくは0〜30℃の範囲で実施することが好ましい。
【0037】
このようにして精製した後の共重合体は、乾燥し粉体として取り出すか、若しくは乾燥前若しくは乾燥後に良溶媒を投入して再溶解し、溶液として取り出すことができる。再溶解に用いる良溶媒は、上記の重合溶媒や後述する塗膜形成用溶媒で例示する溶媒等を用いることができる。
【0038】
精製後に粉体として取り出した場合は、塗膜形成溶媒と混合して溶解し、又、溶液として取り出した場合は、必要に応じて塗膜形成用の溶媒を供給しながら精製時に使用した他の溶媒等の低沸点不純物を減圧下で留去するなどして、塗膜形成用溶液に仕上げることができる。塗膜形成用の溶媒としては、共重合体を溶解するものであれば特に制限されないが、通常、沸点、半導体基板やその他の塗布膜への影響、リソグラフィーに用いられる放射線の吸収を勘案して選択される。塗膜形成用に一般的に用いられる溶媒の例としては、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルアミルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン等の溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は特に制限されないが、通常、共重合体1重量部に対して1重量部〜20重量部の範囲である。
【0039】
本発明では、上記のようにして重合され、且つ、イオン性添加剤を含まない半導体レジスト用共重合体溶液に、即ち、例えば、重合反応後から酸発生剤等のイオン性化合物を添加する前のいずれか1以上の工程において、好ましくは精製後から酸発生剤等のイオン性化合物を添加する前のいずれか1以上の工程において、アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターに通過させる、本発明の半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を適用する。
【0040】
アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターとしては、例えば(ア)ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46等のポリアミド樹脂を含むフィルター、(イ)ポリアミド−ポリアミンエピクロロヒドリンカチオン樹脂等の、ポリアミンをジカルボン酸などの反応性化合物と反応して得られる正のゼータ電位を有する樹脂を含むフィルターが挙げられる。(イ)のフィルターとしては、(イ−a)正のゼータ電位を有する樹脂を、珪藻土、セルロース等のろ材と共に繊維上に担持したフィルターや、(イ−b)正のゼータ電位を有する樹脂を、例えばポリアミド樹脂等の他の樹脂からなるフィルターにコーティングしたフィルター等が挙げられる。
【0041】
上記のアミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターを、市販のフィルターで例示すると、(ア)のフィルターの例としては、日本ポール製のウルチプリーツP−ナイロン、ウルチポアN66等のメンブレンフィルターが挙げられ、又、(イ−a)の例として、キュノ製ゼータプラス、日本ポール製SEITZデプスフィルター等が挙げられ、更に、(イ−b)の例として、キュノ製エレクトロポア等のメンブレンフィルターが挙げられる。
【0042】
本発明では、前記(ア)のポリアミド樹脂を含むフィルターと、(イ)の正のゼータ電位を有する樹脂を含むフィルターとの両方に通すことが好ましい。中でも、前記キュノ製エレクトロポアのような、ポリアミド樹脂に、ポリアミンをジカルボン酸などの反応性化合物と反応して得られる正のゼータ電位を有する樹脂がコーティングされたフィルターは、フィルター(ア)とフィルター(イ)の両方の機能を有するため、特に好ましい。
【0043】
フィルターの孔径は、パーティクルの核物質と夾雑物を除去するため、好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.05μm以下とする。正のゼータ電位を有する樹脂を含むフィルター(イ)は、その孔径が0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下であれば、パーティクルの核物質を除去する効果が得られるが、夾雑物を除くためには、該フィルターを通過後、材質を問わず孔径が0.1μm以下、特に好ましくは0.05μm以下のフィルターを通過させることが好ましい。尚、ゼータ電位を有する樹脂を含むフィルターも、孔径が大きいとパーティクルの核物質を捕捉する効果が小さくなるので、より好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.05μm以下の孔径のものを用いる。尚、ここでいう孔径は、フィルターメーカーの公称孔径である。
【0044】
尚、これらのフィルターを通過させる前に、イオン交換機能を有する樹脂と接触させてもよく、又、アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターが、イオン交換機能を有する官能基を含んでいてもよい。
【0045】
上記のようなフィルターを通過させることによって得られる本発明の半導体レジスト用共重合体では、長期間保存した場合の経時的なパーティクルの析出が抑制され、例えば、3ヶ月経過後において、粒子径0.2μm以上のパーティクル数が1mL中で20以下である。
【0046】
このような、長期間保存した場合の経時的なパーティクルの析出を抑えることが可能な半導体レジスト用共重合体を使用することにより、半導体パターンのディフェクトが減少すると共に、歩留まりが向上し、品質の安定した半導体パターンの製造が可能となる。
【0047】
一方、得られた半導体レジスト用共重合体を半導体レジスト用組成物とする場合は、更に感放射線性酸発生剤、放射線に暴露されない部分への酸の拡散を防止するための含窒素化合物等の酸拡散制御剤等を添加して仕上げる。感放射線性酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物等、一般的にレジスト用原料として使用されているものを用いることができる。
【0048】
又、半導体レジスト用組成物には、更に必要に応じて、溶解抑止剤、増感剤、染料等レジスト用添加剤として慣用されている化合物を添加することができる。レジスト組成物中の各成分(レジスト溶媒を除く)の配合比は特に制限されないが、一般に、ポリマー濃度5〜50質量%、感放射線性酸発生剤0.1〜10質量%、酸拡散制御剤0.001〜10質量%の範囲から選択される。
【実施例】
【0049】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、得られた共重合体の共重合組成は13C−NMRの測定結果により求めた。又、重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果より求めた。レジスト組成物中のパーティクル数は、液中パーティクルカウンターを用いて測定した。以下に測定方法を記載する。
【0050】
(1)共重合体の共重合組成
共重合体10重量部、クロム(III)アセチルアセトナート1重量部を重アセトン20重量部に溶解し、試料溶液を調製した。この試料溶液をNMRチューブに入れ、13C−NMR(Bruker製400MHz)を用いて分析した。
【0051】
(2)共重合体のMw、Mw/Mn
共重合体4重量部をテトラヒドロフラン(以下、THF)100重量部に溶解し、試料溶液を調製した。この試料溶液20μLを、GPCカラム(昭和電工製KF−804L×4本)を備えたGPC装置(東ソー製GPC8220)にTHFを溶離液として注入し、溶出した液を示差屈折率(RI)検出器にて検出した。MwとMw/Mnは、あらかじめ標準ポリスチレンを用いて作成した検量線に基づいて算出した。
【0052】
(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法
共重合体60重量部、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す)360重量部からなる15重量%PGMEA溶液に、光酸発生剤としてトリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム1.0重量部、トリエタノールアミン0.1重量部を加えて溶解し、日本マイクロリシス製オプチマイザーD(孔径0.05μmのポリエチレン製メンブレンフィルター)でろ過して、レジスト組成物を調製した。このレジスト組成物を2つに分け、一方は当日、もう一方は3ヶ月間室温にて保管した後、リオン社製液中パーティクルカウンターKS−40Bを用いて、パーティクルサイズ0.2μm以上の1mL中の液中パーティクル数を測定した。
【0053】
(合成例)
窒素雰囲気に保った原料調製槽にメチルエチルケトン(以下、「MEK」と記す)61.0kg、α−メタクリロイルオキシ−γブチロラクトン(以下、「GBLM」と記す)13.3kg、2メチル−2−アダマンチルメタクリレート(以下、「MAM」と記す) 19.7kg、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート(以下、「HAM」と記す) 9.0kgを仕込み、20〜25℃で攪拌して単量体溶液を調製した。又、窒素雰囲気に保った別の容器にMEK11.0kg、アゾビスイソブチロニトリル1.1kgを仕込み、10〜20℃で攪拌して溶解させて開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気に保った重合槽にMEK25.0kgを仕込み、攪拌しながら80℃に加熱した後、室温(約20℃)に保った開始剤溶液と温度25〜30℃に加温した単量体溶液を、80℃に保った重合槽内に同時に供給開始し、各々一定速度で4時間かけて供給した。供給終了後、重合温度を80℃に保ったまま2時間熟成させ、室温まで冷却して重合液を取り出した。得られた重合液を水5重量%を含むメタノール700kgに滴下してポリマーを沈殿させ、ろ過した後、得られたウエットケーキを、水5重量%を含むメタノール700kgで洗浄してろ過する操作を2回繰り返した。得られたウエットケーキの一部をサンプリングして減圧乾燥機で乾燥させ、得られた白色粉体を13C−NMRとGPCにて分析した。13C−NMRで求めた共重合体組成は、GBLM/MAM/HAM=40/41/19であった。又、GPCで求めたMwは10,400、Mw/Mnは1.85であった。残りのウエットケーキは、MEKに再溶解し、共重合体10重量%を含むMEK溶液を調製した。
【0054】
(実施例1)
上記合成例で得られたMEK溶液を、キュノ製ゼータプラス020GN(公称孔径0.2μmの、正のゼータ電位を含む樹脂が珪藻土、セルロース等のろ材と共に繊維上に担持されたフィルター)に通過させた後、減圧下で加熱してMEKを追い出しながらPGMEAを投入し、共重合体15重量%を含むPGMEA溶液を調製した。得られたPGMEA溶液中のパーティクル数を、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例2)
上記合成例で得られたMEK溶液を、減圧下で加熱してMEKを追い出しながらPGMEAを投入し、共重合体15重量%を含むPGMEA溶液を調製した。得られたPGMEA溶液を、キュノ製ゼータプラス020GNに通過させた後、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例3)
キュノ製ゼータプラス020GNを、日本ポール製ウルチプリーツP−ナイロン(孔径0.04μmのナイロン66製メンブレンフィルター)に変更した以外は、実施例2と同様に行い、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例4)
キュノ製ゼータプラス020GNを、キュノ製エレクトロポアEF(孔径0.04μmの正のゼータ電位を付加したナイロン66製メンブレンフィルター)に変更した以外は、実施例2と同様に行い、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例5)
実施例1で得られたPGMEA溶液を、日本ポール製ウルチプリーツP−ナイロンを通過させた後、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例6)
上記合成例で得られたMEK溶液を、キュノ製エレクトロポアEFを通過させた後、減圧下で加熱してMEKを追い出しながらPGMEAを投入し、共重合体15重量%を含むPGMEA溶液を調製した。得られたPGMEA溶液を、日本ポール製ウルチプリーツP−ナイロンに通過させた後、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
キュノ製ゼータプラス020GNを通過させなかった以外は、実施例1と同様にPGMEA溶液を調製し、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例2)
比較例1で調製したPGMEA溶液を、キュノ製ゼータプラス020GNを通過させた後、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例3)
キュノ製ゼータプラス020GNを、日本ポール製ウルチプリーツP−ナイロンに変更した以外は、比較例2と同様に行い、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例4)
キュノ製ゼータプラス020GNを、キュノ製エレクトロポアEFに変更した以外は、比較例2と同様に行い、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例5)
キュノ製ゼータプラス020GNを、日本マイクロリシス製オプチマイザーDに変更した以外は、実施例2と同様に行い、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例6)
キュノ製ゼータプラス020GNを、日本ポール製イオンクリーンAQ(メーカー公称孔径無しのイオン交換基修飾ポリエチレン製メンブレンフィルター)に変更した以外は、実施例2と同様に行い、前記(3)レジスト組成物中のパーティクル数の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】



【0067】
以上の実施例及び比較例から明らかなように、極性基を有する繰り返し単位と脂環構造を有する繰り返し単位とを有する半導体レジスト用共重合体を含み、且つ、イオン性添加剤を含まない半導体レジスト用共重合体溶液を、アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターに通過させて得られる半導体レジスト用共重合体は、粒子径0.2μm以上のパーティクル数が3ヶ月経過後において1mL中で20以下、具体的には17以下であり、特にアミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターが、正のゼータ電位を有し、且つ、ポリアミド樹脂を含むフィルターである場合(実施例4)や、正のゼータ電位を有するフィルターと、ポリアミド樹脂を含むフィルターとを通過させた場合は、1mL中で10以下であった。
【0068】
これに対し、フィルターを使用しないでパーティクル数を計測した場合(比較例1)や、アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルター以外のフィルターに通過させた場合(比較例5,6)は、粒子径0.2μm以上のパーティクル数が3ヶ月経過後において1mL中で100以上となり、又、イオン性添加剤を含むレジスト用組成物としてからアミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターを通過させた場合(比較例2〜4)も、40以上と多数のパーティクルが計測された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、半導体製造の微細なパターン形成に用いられるレジスト膜として好適な、保存中のパーティクルの析出が僅かであるために現像欠陥が極めて少ない半導体レジスト用共重合体を得ることのできる半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基を有する繰り返し単位と脂環構造を有する繰り返し単位とを有する半導体レジスト用共重合体を含み、且つ、イオン性添加剤を含まない半導体レジスト用共重合体溶液を、アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターに通過させることを特徴とする半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法。
【請求項2】
アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターが、正のゼータ電位を有するフィルターである請求項1に記載の半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法。
【請求項3】
アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターが、ポリアミド樹脂を含むフィルターである請求項1に記載の半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法。
【請求項4】
アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターが、正のゼータ電位を有し、且つ、ポリアミド樹脂を含むフィルターである請求項1に記載の半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法。
【請求項5】
極性基を有する繰り返し単位と脂環構造を有する繰り返し単位とを有する半導体レジスト用共重合体を含み、且つ、イオン性添加剤を含まない半導体レジスト用共重合体溶液を、アミノ基及び/又はアミド結合を有するフィルターを通過させる工程と、ポリアミド樹脂を含むフィルターを通過させる工程に付すことを特徴とする半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法。
【請求項6】
アミノ基及び/又はアミド結合を有する樹脂を含むフィルターが、正のゼータ電位を有するフィルターである請求項5に記載の半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載した半導体レジスト用共重合体におけるパーティクルの増加防止方法を適用して得られることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項8】
請求項7に記載した半導体リソグラフィー用共重合体を含む半導体レジスト用組成物。

【公開番号】特開2006−83214(P2006−83214A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266755(P2004−266755)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】