説明

半導体レーザモジュール

【課題】結合効率が高く位置合わせのトレランスが大きい結合を、簡単な構成で実現できる半導体レーザモジュールを提供する。
【解決手段】本発明の半導体レーザモジュール300は、半導体レーザ素子100と少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズ200とを備える。半導体レーザ素子100は、半導体基板10と、半導体基板10上に積層された半導体多層膜を備える。半導体多層膜は、基板側から順に積層された下側クラッド層、活性層、および上側クラッド層を含む。半導体基板10および半導体多層膜は、平坦面101と、平坦面101から突出するように形成され且つ第1および第2の端面を含む積層構造102とを構成している。屈折率分布型ロッドレンズ200は、レーザ光がロイドのミラー干渉を生じる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信や光コンピューティングでは、電気信号を光信号に変換して送信する必要がある。そのためには、半導体レーザ素子と光ファイバとを結合しなければならない。従来から、半導体レーザ素子と結合する方法として、様々な方法が提案されてきた(たとえば特許文献1)。それらの例を、図15に示す。
【0003】
図15(a)の構成では、半導体レーザ素子と光ファイバとがそのまま結合されている。図15(b)の構成では、光ファイバの先端に形成された球レンズを介して半導体レーザ素子と光ファイバとが結合される。図15(c)の構成では、球レンズおよび屈折率分布型レンズを介して半導体レーザ素子と光ファイバとが結合される。いずれの場合でも、結合部において、レンズおよび光ファイバは、それらの光軸が、半導体レーザ素子のレーザ光の出射方向(すなわち、ストライプ状の活性層の延長方向)と一致するように配置される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−287726
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図15(a)の結合方法では、結合効率が低く、位置合わせのトレランス(許容範囲)が小さいという問題があった。また、図15(b)の結合方法では、結合効率は高いが、位置合わせのトレランスが小さいという問題があった。また、図15(c)の結合方法では、部品点数が多いという問題、およびそれらの部品のそれぞれを適切な位置に配置しなければならないという問題があった。
【0006】
このような状況において、本発明の目的の1つは、結合効率が高く位置合わせのトレランスが大きい結合を簡単な構成で実現できる半導体レーザモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために検討した結果、本件発明者らは、特殊な形状の半導体レーザ素子と特殊な結合方法とを組み合わせることによって、高い結合効率と、位置合わせのトレランスを大きくすることとを両立できることを見出した。本発明は、この新たな知見に基づく発明である。
【0008】
すなわち、本発明の半導体レーザモジュールは、半導体レーザ素子と少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズとを備える半導体レーザモジュールであって、前記半導体レーザ素子は、基板と、前記基板上に積層された半導体多層膜を備え、前記半導体多層膜は、基板側から順に積層された下側クラッド層、活性層、および上側クラッド層を含み、前記基板および前記半導体多層膜は、平坦面と、前記平坦面から突出するように形成され且つ第1および第2の端面を含む積層構造とを構成しており、前記第1の端面は、レーザ光が出射される端面であり、前記第2の端面は、前記第1の端面に対向する端面であり、前記第1および前記第2の端面は、少なくとも、前記下側クラッド層の少なくとも一部、前記活性層、および前記上側クラッド層によって構成され、且つ、外側に凸の曲面であり、前記少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズは、前記レーザ光がロイドのミラー干渉を生じる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体レーザ素子と屈折率分布型ロッドレンズとが、結合効率が高く位置合わせのトレランスが大きい結合方法によって結合されている半導体レーザモジュールが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は以下で述べる例には限定されない。以下の説明において特定の材料や特定の数値を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の材料や他の数値を適用してもよい。
【0011】
[半導体レーザモジュール]
本発明の半導体レーザモジュールは、半導体レーザ素子と少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズ(GRIN−rod lens)とを備える。
【0012】
屈折率分布型ロッドレンズ(以下、単に「ロッドレンズ」という場合がある)は、屈折率分布を有する棒状のレンズである。この発明で用いられるロッドレンズは、光軸(中心軸)から離れるにつれて屈折率が小さくなるレンズである。ロッドレンズには、市販のものを用いることができる。ロッドレンズの屈折率分布の一例は、以下の式で表される。
n(r)=n0[1−(gr)2+h4(gr)4+・・・]1/2
[式中、n(r)は、中心軸からの距離がrの位置での屈折率を表す。n0は、中心軸での屈折率を表す。gは収束定数を表す。h4は、4次の屈折率分布係数を表す。]
【0013】
半導体レーザ素子は、基板と、その基板上に積層された半導体多層膜を備える。半導体多層膜は、基板側から順に積層された下側クラッド層、活性層、および上側クラッド層を含む。基板および半導体多層膜は、平坦面と、その平坦面から突出するように形成され且つ第1および第2の端面を含む積層構造とを構成している。なお、積層構造は、半導体多層膜のみによって形成されてもよいし、基板と半導体多層膜の両方によって形成されてもよい。
【0014】
その第1の端面はレーザ光が出射される端面であり、第2の端面は第1の端面に対向する端面である。それら第1および第2の端面は、少なくとも、下側クラッド層の少なくとも一部、活性層、および上側クラッド層によって構成される。第1および第2の端面は、外側に凸の曲面である。
【0015】
基板には、半導体多層膜を結晶成長させることが可能な基板が用いられる。たとえば、III−V族化合物半導体からなる半導体多層膜を形成する場合には、III−V族化合物半導体からなる基板を用いることができる。
【0016】
半導体多層膜の材料および構造は、出力するレーザ光の波長を考慮して選択される。半導体多層膜の材料の好ましい一例は、III−V族化合物半導体である。半導体多層膜は、基板側から順に積層された下側クラッド層、活性層、および上側クラッド層を含む。半導体多層膜は、それらの層に加えて、バッファ層などを含んでもよい。
【0017】
下側クラッド層および上側クラッド層は、活性層よりも屈折率が低い材料からなり、下側クラッド層〜上側クラッド層の間に光を閉じ込める働きを有する。すなわち、下側クラッド層〜上側クラッド層までの多層膜は、共振器を構成する。下側クラッド層と活性層との間、および上側クラッド層と活性層との間に、他の層が配置されていてもよい。典型的な一例では、共振器を構成する各層の平面形状は、同じである。共振器の平面形状は、一般的な線状の共振器の平面形状とは異なり、2次元状に広がっている。上述した第1および第2の端面は、共振器の端面である。
【0018】
本発明の効果が得られる限り、活性層に特に限定はない。たとえば、活性層は、単一量子井戸型の活性層であってもよいし、多重量子井戸型の活性層であってもよい。
【0019】
ロッドレンズは、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光がロイドのミラー干渉を生じる位置に配置されている。この場合、ロッドレンズは、その光軸が、半導体レーザ素子のレーザ光の出射方向(レーザ光の強度が最も大きくなる方向)からずれた方向になるように配置される。なお、ロイドのミラー干渉とは、『スリットからの光のある部分はスクリーンに直接当たり、その他の部分はその表面が入射光と小さな角をなす鏡から反射するときに生じる干渉図形。1834年にH.ロイドが行った光の干渉実験で、ロイドの実験とも言い、この実験装置をロイドの鏡とも言う』(株式会社オプトロニクス社、光技術用語辞典)。
【0020】
具体的には、活性層と平坦面との距離d、上記平坦面とロッドレンズの光軸とのなす角度φ、およびレーザ光の波長λが、以下の関係を満たすように、半導体レーザ素子およびロッドレンズが配置される。
sin-1[λ/(4d)]−10°≦φ≦sin-1[λ/(4d)]+10°
距離d、角度φ、および波長λは、以下の関係を満たすことがより好ましい。
sin-1[λ/(4d)]−5°≦φ≦sin-1[λ/(4d)]+5°
距離dは、たとえば、0.4μm〜2.5μmの範囲にあり、好ましくは1.0μm〜2.0μmの範囲にある。
【0021】
本発明のモジュールでは、半導体多層膜のうち、下側クラッド層の少なくとも一部から上側クラッド層までの各層は、同じ平面形状を有することが好ましい。
【0022】
上記積層構造は、第3および第4の端面をさらに含み、上記平面形状は、第1、第2、第3および第4の端面に第1、第2、第3および第4の頂点を有する菱形の形状を内包してもよい。
【0023】
本発明の半導体レーザ素子は、半導体多層膜上に形成された第1の電極と、基板の裏面に形成された第2の電極とを備えてもよい。この第1および第2の電極によって、活性層に電流が注入される。以下、第1および第2の電極の3つのパターンについて、説明する。
【0024】
第1のパターンでは、第1の電極は、第1の頂点と前記第2の頂点とを結ぶ方向に沿った線状の領域においてキャリアを注入してもよい。そのような構成を有する半導体レーザ素子では、第1の頂点と前記第2の頂点とを結ぶ方向に沿って伝播するレーザ光LAが励起される。上記少なくとも1つのロッドレンズは、屈折率分布型ロッドレンズL1を含む。そのロッドレンズL1は、第1の端面から出射されたレーザ光LAと結合される。
【0025】
第2のパターンでは、第1の電極は、上記菱形の辺に沿った環状の領域においてキャリアを注入してもよい。ただし、菱形の辺を完全にカバーする必要はなく、たとえば50%以上、70%以上、80%以上、または90%以上をカバーすればよい(以下の第3のパターンでも同じである)。そのような構成を有する半導体レーザ素子では、上記菱形の経路を互いに逆方向に周回するレーザ光LCWとレーザ光LCCWとが励起される。そして、上記少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズは、屈折率分布型ロッドレンズL2と屈折率分布型ロッドレンズL3とを含んでもよい。屈折率分布型ロッドレンズL2は、第1の端面から出射された前記レーザ光LCWと結合される。また、屈折率分布型ロッドレンズL3は、第1の端面から出射されたレーザ光LCCWと結合される。
【0026】
第3のパターンでは、第1の電極は、上記第1の頂点と上記第2の頂点とを結ぶ方向に沿った線状の領域、および、上記菱形の辺に沿った環状の領域において、キャリアを注入してもよい。そのような構成を有する半導体レーザ素子では、上記第1の頂点と上記第2の頂点とを結ぶ方向に沿って伝播するレーザ光LAと、上記菱形の経路を互いに逆方向に周回するレーザ光LCWとレーザ光LCCWとが励起可能である。それら3種のレーザ光のいずれが出射されるかは、半導体レーザ素子の発振モードによって制御される。そして、上記少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズは、屈折率分布型ロッドレンズL1と屈折率分布型ロッドレンズL2と屈折率分布型ロッドレンズL3とを含む。屈折率分布型ロッドレンズL1は、第1または第2の端面から出射されたレーザ光LAと結合される。屈折率分布型ロッドレンズL2は、第1または第2の端面から出射されたレーザ光LCWと結合される。屈折率分布型ロッドレンズL3は、第1または第2の端面から出射されたレーザ光LCCWと結合される。
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の半導体レーザモジュールについて説明する。なお、以下の説明では、同様の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
【0028】
[実施形態1]
本発明の半導体レーザモジュールの一例について、以下に説明する。本発明の半導体レーザモジュールの一例の斜視図を、図1に示す。
【0029】
図1に示す半導体レーザモジュール300は、半導体レーザ素子100と、屈折率分布型のロッドレンズ200とを備える。ロッドレンズ200には、光ファイバ400が結合されている。半導体レーザ素子100から出力されたレーザ光は、ロッドレンズ200を介して光ファイバ400に入力される。
【0030】
ロッドレンズ200の側面図を図14(a)に示し、断面図を図14(b)に示す。また、図14(b)には、ロッドレンズの屈折率分布の一例を示す。図14(b)に示すように、ロッドレンズ200の屈折率は、光軸から離れるにつれて小さくなる。
【0031】
半導体レーザ素子100は、半導体基板10と、第1の電極11と、第2の電極12とを備える。半導体レーザ素子100は、平坦部101と、平坦部101から突出するように形成された積層部102とを備える。
【0032】
図1の線I−Iにおける断面図を図2に示す。半導体基板10上には、半導体多層膜20が形成されている。半導体基板10および半導体多層膜の材料には、たとえばIII−V族化合物半導体が用いられる。半導体多層膜20は、半導体基板10側から順に積層された下側クラッド層23と、活性層24と、上側クラッド層25とを含む。半導体多層膜20は、バッファ層26およびコンタクト層27を含み、さらに他の層を含んでもよい。半導体多層膜20上には、絶縁膜30および第1の電極11が積層されている。絶縁膜30の一部には、線状の貫通孔が形成されている。この貫通孔を介して、第1の電極11がコンタクト層27と接触している。第1の電極11とコンタクト層27とが接触している領域は、線状である。
【0033】
図2に示す例では、積層部102が半導体多層膜20および半導体基板10によって形成されている。このような積層部102は、半導体基板10上に半導体多層膜20をエピタキシャル成長させたのち、不要な部分の半導体多層膜20をエッチングによって除去することによって形成できる。積層部102の端面を平坦部101の表面に対してほぼ垂直にするため、半導体多層膜は、たとえば反応性イオンエッチング法によってエッチングされる。なお、積層部102は、半導体多層膜20のみによって形成されてもよい。その場合、エッチングは、下側クラッド層23の少なくとも一部よりは深く且つ半導体基板10に到達しない深さまで行われる。
【0034】
活性層24の平面形状を図3に示す。活性層24は、菱形の経路32を含む面状に形成された薄膜である。経路32の第1から第4の角部32a〜32dのうち、第1および第2の角部32aおよび32bは、第3および第4の角部32cおよび32dよりも角度が小さい。活性層24は、角部32a〜32dを含むように配置された第1から第4の端面(ミラー面)24a〜24dを有する。第1および第2の端面24aおよび24bは、外側に向かって凸の曲面である。第3および第4の端面24cおよび24dは、フラットな平面である。第1の電極11は、対角線32abに沿って線状に形成されている。
【0035】
第1の端面24aの第1の角部32aにおける曲面は、仮想の円筒の曲面の一部と同じ曲面である。その仮想の円筒の中心軸は、対角線32abまたはその延長線上に存在し、対角線32abと直交する。その仮想の円筒の曲率半径R1は、共振器長L(対角線32abの長さ)のたとえば0.5倍〜2倍の範囲にあり、一例では1倍である。第2の端面24bの第2の角部32bにおける曲面も、同様の曲面である。
【0036】
活性層24は、第1の領域24fと、第1の領域に隣接する4つの第2の領域24sとを備える。第1の領域24fの平面形状は、長方形の短辺を外側に凸の曲面とした形状である。経路32は、第1の領域24fに内包される。第1の領域24fと第2の領域24sとによって構成される活性層24は、略H字状の形状(より詳しくはHの字を横に引き延ばした形状)をしている。
【0037】
第1の電極11と半導体多層膜20とが接触している領域(コンタクト領域11c)、積層部102(活性層24と同じ平面形状を有する)、およびロッドレンズ200の水平方向の配置を図4(a)に模式的に示す。また、半導体レーザ装置100に対するロッドレンズ200の垂直方向の配置を図4(b)に模式的に示す。
【0038】
水平方向の配置に関して、ロッドレンズ200は、その光軸が、コンタクト領域11cの延長線(対角線32abの延長線)と重なるように配置される。一方、垂直方向の配置に関して、ロッドレンズ200は、その光軸が、対角線32abの延長線からずれた方向に配置される。具体的には、垂直方向において、ロッドレンズ200は、ロイドのミラー反射が生じる位置に配置される。一例では、平坦部101の表面(活性層の表面と平行な面である)と、ロッドレンズ200とがなす角度φは、以下の式で表される。
φ=sin-1[λ/(4d)]
式中、λはレーザ光の波長である。また、dは、平坦部101の表面と活性層24との間の距離である。
【0039】
また、ロッドレンズ200は、その光軸の延長線が、平坦部101と積層部102との境界の角部に位置するように配置される。図4(b)の構成では、図5に示すように、活性層から出射されて直接ロッドレンズ200に入射する光と、仮想の活性層24vからロッドレンズ200に入射する光とが干渉して強め合う。その結果、半導体レーザ素子100とロッドレンズ200との垂直方向における結合効率が高くなる。また、半導体レーザ素子100は、2次元状に広がる共振器を備えるため、レーザ光が水平方向に拡がることを抑制できる。以上のことから、本発明の半導体レーザモジュール300では、高い結合効率を実現できる。
【0040】
第1の電極11が、菱形状の領域で半導体多層膜20と接触している場合について、第1の電極11と半導体多層膜20とが接触している領域(コンタクト領域11c)の一例の平面形状を図6に示す。なお、図6では、コンタクト領域11cの部分にハッチングを付している。図6の第1の電極を用いた場合、菱形の経路32を時計回りに周回するレーザ光LCWと、反時計回りに周回するレーザ光LCCWとを励起することが可能である。それらの一部は、第1の端面26aまたは第2の端面26bから出射させることが可能である。図6の電極を用いる場合、2つのロッドレンズの一方をレーザ光LCWに結合させ、他方をレーザ光LCCWに結合させることが可能である。
【0041】
また、第1の電極11は、線状の領域および菱形状の領域で半導体多層膜20と接触していてもよい。そのような場合のコンタクト領域11cについて、一例の平面形状を図7に示す。なお、図7では、コンタクト領域11cの部分にハッチングを付している。図7の構成では、対角線32abの方向に沿って出射されるレーザ光LAと、図6に示すレーザ光LCWおよびLCCWとを励起することが可能である。図7の電極を用いる場合、3つのロッドレンズのうちロッドレンズL1をレーザ光LAに結合させ、ロッドレンズL2をレーザ光LCWに結合させ、ロッドレンズL3をレーザ光LCCWに結合させることが可能である。そのような半導体レーザモジュールの斜視図を、図8(a)に示す。また、レーザ光の結合状態を示す平面図を、図8(b)に示す。
【0042】
図8に示す半導体レーザモジュールの結合効率について、シミュレーションを行った。シミュレーションの条件を図9に示す。ロッドレンズL1の方位角と結合効率との関係についてシミュレーションした結果を、図10(a)に示す。ロッドレンズL1の方位角は、対角線32abとロッドレンズL1の光軸とがなす角度を示す。さらに、ロッドレンズL1の仰角φと結合効率との関係についてシミュレーションした結果を、図10(b)に示す。
【0043】
図10(a)に示すように、水平方向に関して、ロッドレンズL1の光軸が対角線32abの方向と一致したときに、結合効率が最大となった。また、図10(b)に示すように、垂直方向に関して、ロッドレンズL1の光軸の仰角が約8°となったときに、結合効率が最大となった。結合効率の最大値は、79%であった。
【0044】
結合効率が最大となる位置および角度から光ファイバF1を水平方向または垂直方向にずらしたときの結合効率について、さらにシミュレーションを行った。水平方向についての結果を図11(a)に示し、垂直方向についての結果を図11(b)に示す。図11に示すように、光ファイバF1の位置が水平方向および垂直方向に±25μmずれても、結合効率はほとんど変わらなかった。
【0045】
また、ロッドレンズL2の方位角と結合効率との関係についてシミュレーションした結果を、図12(a)に示す。ロッドレンズL2の方位角は、対角線32abとロッドレンズL2の光軸とがなす角度を示している。さらに、ロッドレンズL2の仰角φと結合効率との関係についてシミュレーションした結果を、図12(b)に示す。図12(a)に示すように、水平方向に関して、ロッドレンズL2の方位角が、菱形の軌道に対応する出射ビームの方向と一致したときに結合効率が最大となった。また、図12(b)に示すように、垂直方向に関して、ロッドレンズL2の光軸の仰角が約8°となったときに、結合効率が最大となった。
【0046】
結合効率が最大となる位置および角度から光ファイバF2を水平方向または垂直方向にずらしたときの結合効率について、さらにシミュレーションを行った。水平方向についての結果を図13(a)に示し、垂直方向についての結果を図13(b)に示す。図13に示すように、光ファイバF2の位置が水平方向および垂直方向に±25μmずれても、結合効率はほとんど変わらなかった。なお、ロッドレンズL3とレーザ光LCCWとの結合についても、同様の結果が得られる。
【0047】
本発明の半導体レーザ素子100は、半導体素子製造プロセスで用いられる公知の方法で形成できる。たとえば、国際公開公報WO2005/085759に記載の方法を用いて形成できる。また、半導体レーザ素子とロッドレンズとの位置合わせの方法に限定はなく、従来の半導体レーザモジュールで用いられてきた方法を適用できる。たとえば、光ファイバの出力光のパワーをモニタしながら、微動装置を用いてロッドレンズの位置を調整する、といった方法で位置合わせをすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、光通信や光計算機などに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の半導体レーザモジュールの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した半導体レーザ素子を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示した半導体レーザ素子について、活性層の平面形状を模式的に示す図である。
【図4】図1に示した半導体レーザモジュールについて、(a)水平方向の配置および(b)垂直方向の配置を示す図である。
【図5】本発明の半導体レーザモジュールの機能を示す図である。
【図6】本発明の半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザ素子について、第1の電極の他の一例の形状を示す平面図である。
【図7】本発明の半導体レーザモジュールに用いられる半導体レーザ素子について、第1の電極のその他の一例の形状を示す平面図である。
【図8】本発明の半導体レーザモジュールの他の一例を示す(a)斜視図、および(b)各部材の配置を模式的に示す上面図である。
【図9】シミュレーションの条件を示す図である。
【図10】シミュレーションの結果の一例を示すグラフである。
【図11】シミュレーションの結果の他の一例を示すグラフである。
【図12】シミュレーションの結果の他の一例を示すグラフである。
【図13】シミュレーションの結果の他の一例を示すグラフである。
【図14】本発明で用いられる屈折率分布型ロッドレンズの一例を示す図である。
【図15】従来の半導体レーザモジュールを示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 半導体基板
11 第1の電極
11c コンタクト領域
12 第2の電極
20 半導体多層膜
23 下側クラッド層
24 活性層
24a〜24d 第1〜第4の端面
25 上側クラッド層
32 仮想の菱形
32a〜32d 第1〜第4の角部
100 半導体レーザ素子
101 平坦部
102 積層部
200 ロッドレンズ
400 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子と少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズとを備える半導体レーザモジュールであって、
前記半導体レーザ素子は、基板と、前記基板上に積層された半導体多層膜を備え、
前記半導体多層膜は、基板側から順に積層された下側クラッド層、活性層、および上側クラッド層を含み、
前記基板および前記半導体多層膜は、平坦面と、前記平坦面から突出するように形成され且つ第1および第2の端面を含む積層構造とを構成しており、
前記第1の端面は、レーザ光が出射される端面であり、
前記第2の端面は、前記第1の端面に対向する端面であり、
前記第1および前記第2の端面は、少なくとも、前記下側クラッド層の少なくとも一部、前記活性層、および前記上側クラッド層によって構成され、且つ、外側に凸の曲面であり、
前記少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズは、前記レーザ光がロイドのミラー干渉を生じる位置に配置されている、半導体レーザモジュール。
【請求項2】
前記活性層と前記平坦面との距離d、前記平坦面と前記ロッドレンズの光軸とのなす角度φ、および前記レーザ光の波長λが、
sin-1[λ/(4d)]−10°≦φ≦sin-1[λ/(4d)]+10°
の関係を満たす請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項3】
前記半導体多層膜のうち、前記下側クラッド層の前記少なくとも一部から前記上側クラッド層までの各層が同じ平面形状を有し、
前記積層構造は、第3および第4の端面をさらに含み、
前記平面形状は、前記第1、第2、第3および第4の端面に第1、第2、第3および第4の頂点を有する菱形の形状を内包する請求項1または2に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項4】
前記半導体レーザ素子は、前記半導体多層膜上に形成された第1の電極と、前記基板の裏面に形成された第2の電極とを備え、
前記第1の電極は、前記第1の頂点と前記第2の頂点とを結ぶ方向に沿った線状の領域においてキャリアを注入し、
前記半導体レーザ素子では、前記第1の頂点と前記第2の頂点とを結ぶ方向に沿って伝播するレーザ光LAが励起され、
前記少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズは、屈折率分布型ロッドレンズL1を含み、
前記屈折率分布型ロッドレンズL1は、前記第1の端面から出射された前記レーザ光LAと結合される請求項3に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項5】
前記半導体レーザ素子は、前記半導体多層膜上に形成された第1の電極と、前記基板の裏面に形成された第2の電極とを備え、
前記第1の電極は、前記菱形の辺に沿った環状の領域においてキャリアを注入し、
前記半導体レーザ素子では、前記菱形の経路を互いに逆方向に周回するレーザ光LCWとレーザ光LCCWとが励起され、
前記少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズは、屈折率分布型ロッドレンズL2と屈折率分布型ロッドレンズL3とを含み、
前記屈折率分布型ロッドレンズL2は、前記第1の端面から出射された前記レーザ光LCWと結合され、
前記屈折率分布型ロッドレンズL3は、前記第1の端面から出射された前記レーザ光LCCWと結合される請求項3に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項6】
前記半導体レーザ素子は、前記半導体多層膜上に形成された第1の電極と、前記基板の裏面に形成された第2の電極とを備え、
前記第1の電極は、前記第1の頂点と前記第2の頂点とを結ぶ方向に沿った線状の領域、および、前記菱形の辺に沿った環状の領域においてキャリアを注入し、
前記半導体レーザ素子では、前記第1の頂点と前記第2の頂点とを結ぶ方向に沿って伝播するレーザ光LAと、前記菱形の経路を互いに逆方向に周回するレーザ光LCWとレーザ光LCCWとが励起可能であり、
前記少なくとも1つの屈折率分布型ロッドレンズは、屈折率分布型ロッドレンズL1と屈折率分布型ロッドレンズL2と屈折率分布型ロッドレンズL3とを含み、
前記屈折率分布型ロッドレンズL1は、前記第1の端面から出射された前記レーザ光LAと結合され、
前記屈折率分布型ロッドレンズL2は、前記第1または第2の端面から出射された前記レーザ光LCWと結合され、
前記屈折率分布型ロッドレンズL3は、前記第1または第2の端面から出射された前記レーザ光LCCWと結合される請求項3に記載の半導体レーザモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−253108(P2009−253108A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100792(P2008−100792)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【出願人】(307020545)公立大学法人岡山県立大学 (8)
【Fターム(参考)】