説明

半導体レーザ素子およびその製造方法

【課題】窓構造によりレーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制しながら、温度特性をより向上させることが可能な半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】この半導体レーザ素子は、レーザ光の出射端面部に窓構造を有する活性層4と、活性層4の表面上に形成され、不純物としてMgおよびZnを含有するp型クラッド層5とを備え、p型クラッド層5に含有されるZnの不純物濃度は、p型クラッド層5に含有されるMgの不純物濃度よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ素子およびその製造方法に関し、特に、レーザ光の出射端面部に窓構造を備えた半導体レーザ素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録可能なDVDシステムにおいて、2層記録を可能にするためには、ディスク上に照射されるレーザ光の強度を向上させる必要がある。このようにディスク上に照射されるレーザ光の強度を向上させるためには、光源である半導体レーザの高出力化を図る必要がある。
【0003】
また、半導体レーザの高出力化には、COD(Catastrophic Optical Damage:レーザ光出射端面劣化)レベルの向上が不可欠である。ここで、CODは、以下に示すサイクルで発生することが知られている。まず、高密度に表面準位が存在する出射端面部に電流が注入されると、この準位を介して非発光再結合が生じる。このため、出射端面部が発熱する。この発熱により、出射端面部の活性層のエネルギーギャップが減少するので、光吸収が拡大する。これにより、さらに発熱が増大する。このようなサイクルによって、出射端面部の温度が上昇するので、結晶が融解し、その結果、出射端面部が破壊される。
【0004】
このようなCODを抑制する半導体レーザ素子としては、従来、Zn拡散による窓構造を備えた半導体レーザ素子が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。上記非特許文献1のZn拡散による窓構造を備えた半導体レーザ素子では、半導体レーザ素子の出射端面部に不純物(Zn)を導入することにより、従来の一例による半導体レーザ素子の図31に示したZn拡散前のZn濃度のプロファイル、および、図32に示したZn拡散後のZn濃度のプロファイルから明らかなように、p型クラッド層の出射端面部に導入されたZnが活性層を介してn型クラッド層まで押し出されるように拡散する。このとき、活性層の井戸層および障壁層の構成原子が相互拡散されることによって、活性層の量子井戸構造が無秩序化される。それによって、活性層の出射端面部のバンドギャップが他の領域よりも広がるので、出射端面部における光吸収が低減される。これにより、出射端面部の温度上昇を抑制することができるので、CODが低減される。
【0005】
一方、従来のAlGaInP系からなる赤色半導体レーザ素子では、活性層およびp型クラッド層間の伝導帯側のバンド不連続値が小さいので、活性層に供給された電子が熱により活性層からp型クラッド層へオーバーフローしやすい。このため、高温時に、通電した電流値に対して光出力値が低下しやすいので、温度によって光出力値が変化しないことの指標となる特性である温度特性を向上させるのが困難であるという不都合がある。このような不都合を解消して温度特性を向上させるためには、p型クラッド層のキャリア(ホール)濃度を高濃度化して、活性層およびp型クラッド層間の伝導帯側のバンド不連続値を大きくする必要がある。このため、従来の赤色半導体レーザ素子では、不純物としてZnを導入することによりp型クラッド層のキャリア(ホール)濃度を高濃度化していた。
【0006】
つまり、従来では、n型クラッド層、活性層およびp型クラッド層の出射端面部にZnを導入することによりZn拡散による窓構造を形成するとともに、p型クラッド層に不純物としてZnを導入することによりp型クラッド層のキャリア(ホール)濃度の高濃度化を図っていた。
【0007】
【非特許文献1】IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS,VOL.29,NO.6,p1874−1877,1993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の赤色半導体レーザ素子のように、不純物としてZnを導入することによりp型クラッド層のキャリア(ホール)濃度を高濃度化する構造では、Znのドーピング可能量(導入量)に限界があるため、p型クラッド層に導入する不純物(Zn)のドープ量をより多くするのが困難であるという不都合があった。このため、半導体レーザ素子の温度特性をより向上させるのが困難であるという問題点があった。
【0009】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、窓構造によりレーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制しながら、温度特性をより向上させることが可能な半導体レーザ素子およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による半導体レーザ素子は、レーザ光の出射端面部に窓構造を有する活性層と、活性層の表面上に形成され、不純物としてMgおよびZnを含有するp型層とを備え、p型層に含有されるZnの不純物濃度は、p型層に含有されるMgの不純物濃度よりも大きい。
【0011】
この第1の局面による半導体レーザ素子では、上記のように、活性層の表面上に、不純物としてMgおよびZnを含有するp型層を設けることによって、MgはZnに比べて高濃度までドープすることができるので、p型層に不純物としてZnのみを含有する場合に比べて、p型層におけるキャリア濃度を大きくすることができる。これにより、活性層とp型層との間の伝導帯側のバンド不連続値を大きくすることができるので、活性層に供給された電子が熱によりp型層にオーバーフローするのを抑制することができる。これにより、高温時に、通電した電流値に対して光出力値が低下するのを抑制することができるので、温度特性をより向上させることができる。また、活性層の表面上に形成されるp型層に含有されるZnの不純物濃度を、p型層に含有されるMgの不純物濃度よりも大きくすることによって、ZnはMgに比べて拡散しやすいので、出射端面部におけるp型層の不純物を活性層に十分に拡散させやすくすることができる。これにより、出射端面部における活性層の結晶構造を十分に無秩序化することができるので、出射端面部における活性層のバンドギャップを十分に大きくすることができる。このため、活性層の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができるので、活性層の出射端面部が高温になるのを十分に抑制することができる。その結果、レーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制することができる。
【0012】
上記構成において、好ましくは、MgおよびZnは、少なくともp型層の出射端面部以外の領域において、少なくともp型層の活性層近傍の部分まで所定の値以上の不純物濃度を有するように導入されている。このように構成すれば、p型層の活性層近傍の部分までキャリア濃度を大きくすることができるので、活性層に供給された電子が熱によりp型層にオーバーフローするのをより抑制することができる。
【0013】
上記構成において、好ましくは、活性層の少なくとも出射端面部以外の領域に、MgおよびZnが導入されている。このように構成すれば、p型層の活性層近傍の部分までキャリア濃度を、容易に、大きくすることができるので、活性層に供給された電子が熱によりp型層にオーバーフローするのを、容易に、抑制することができる。
【0014】
上記構成において、好ましくは、活性層の少なくとも出射端面部に、MgおよびZnが導入され、活性層の出射端面部に導入されるZnの不純物濃度は、活性層の出射端面部に導入されるMgの不純物濃度よりも大きい。このように構成すれば、ZnはMgに比べて拡散しやすいので、出射端面部における活性層の不純物を拡散させやすくすることができる。これにより、出射端面部における活性層の結晶構造を、容易に、十分に無秩序化することができるので、出射端面部における活性層のバンドギャップを、容易に、十分に大きくすることができる。その結果、容易に、活性層の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができる。
【0015】
上記構成において、好ましくは、活性層をp型層とにより挟み込むように活性層の表面上に形成されるn型層をさらに備え、p型層の出射端面部に導入されるZnが活性層を介してn型層まで拡散することにより、窓構造が形成される。このように構成すれば、活性層の出射端面部に、容易に、窓構造を形成することができる。
【0016】
上記構成において、好ましくは、活性層の出射端面部および出射端面部以外の領域にZnが導入され、活性層の出射端面部のZnの不純物濃度は、活性層の出射端面部以外の領域のZnの不純物濃度よりも大きい。このように構成すれば、活性層の出射端面部以外の領域において、Znが拡散して結晶構造が無秩序化するのを抑制しながら、活性層の出射端面部のみをZnにより十分に拡散させて結晶構造を無秩序化することができる。
【0017】
上記構成において、好ましくは、窓構造を有する活性層と、MgおよびZnを含有するp型層とを含む第1レーザ素子部と、第2レーザ素子部と、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部が表面上に形成される単一の基板とをさらに備える。このように、2つのレーザ素子部を備えた2波長の半導体レーザ素子に本発明を適用してもよい。
【0018】
上記第1レーザ素子部と第2レーザ素子部と基板とを備える構成において、第1レーザ素子部を、赤色半導体レーザ素子または赤外半導体レーザ素子のいずれか一方を構成するように形成してもよい。
【0019】
この発明の第2の局面による半導体レーザ素子の製造方法は、単一の基板上に、第1活性層および第2活性層を形成する工程と、第1活性層および第2活性層の表面上に、それぞれ、MgとMgよりも大きい不純物濃度を有するZnとを不純物として含有する第1p型層および第2p型層を形成する工程と、第1活性層および第1p型層と、第2活性層および第2p型層とに、同時にZn拡散を行うことにより、第1活性層および第2活性層のレーザ光の出射端面部に、それぞれ窓構造を同時に形成する工程とを備えている。
【0020】
この第2の局面による半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、第1活性層および第2活性層の表面上に、それぞれ、不純物としてMgおよびZnを含有する第1p型層および第2p型層を設けることによって、MgはZnに比べて高濃度までドープすることができるので、第1p型層および第2p型層に不純物としてZnのみを含有する場合に比べて、第1p型層および第2p型層におけるキャリア濃度を大きくすることができる。これにより、第1活性層と第1p型層との間、および、第2活性層と第2p型層との間の伝導帯側のバンド不連続値を大きくすることができるので、第1活性層および第2活性層に供給された電子が、それぞれ、熱により第1p型層および第2p型層にオーバーフローするのを抑制することができる。これにより、高温時に、通電した電流値に対して光出力値が低下するのを抑制することができるので、温度特性をより向上させることができる。また、第1活性層の表面上に形成される第1p型層および第2活性層の表面上に形成される第2p型層に含有されるZnの不純物濃度を、第1p型層および第2p型層に含有されるMgの不純物濃度よりも大きくすることによって、ZnはMgに比べて拡散しやすいので、出射端面部における第1p型層および第2p型層の不純物を、それぞれ、第1活性層および第2活性層に十分に拡散させやすくすることができる。これにより、出射端面部における第1活性層および第2活性層の結晶構造を十分に無秩序化することができるので、出射端面部における第1活性層および第2活性層のバンドギャップを十分に大きくすることができる。このため、第1活性層および第2活性層の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができるので、第1活性層および第2活性層の出射端面部が高温になるのを十分に抑制することができる。その結果、レーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制することができる。また、第1活性層および第2活性層のレーザ光の出射端面部に、それぞれ窓構造を同時に形成することによって、半導体レーザ素子の製造プロセスを簡略化することができるとともに、製造時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。図2は、図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の活性層の詳細を示した拡大断面図である。図3は、図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子のA点における深さ方向に対するMgおよびZnの不純物濃度を示した図である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の構造について説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態による赤色半導体レーザ素子では、図1に示すように、GaAs基板1上に、約0.3μmの厚みを有するn型GaInPからなるバッファ層2が形成されている。また、バッファ層2上には、約2.5μmの厚みを有するSiがドープされたn型AlGaInPからなるn型クラッド層3が形成されている。なお、n型クラッド層3は、本発明の「n型層」の一例である。
【0024】
ここで、第1実施形態では、n型クラッド層3上には、所定の不純物濃度を有するMgおよびZnが導入された活性層4が形成されている。この活性層4は、多重量子井戸(MQW)構造を有している。また、活性層4は、図2に示すように、約15nmの厚みを有するAlGaInPからなる2つの光ガイド層4aの間に、約6nmの厚みを有する3つのGaInPからなる井戸層4bと、約4nmの厚みを有する2つのAlGaInPからなる障壁層4cとが交互に積層された歪補償多重量子井戸構造を有する。
【0025】
また、第1実施形態では、活性層4上には、図1に示すように、約1.5μmの厚みを有するとともに、活性層4近傍の部分までMgおよびZnが同時にドープされたp型AlGaInPからなるp型クラッド層5が形成されている。なお、p型クラッド層5は、本発明の「p型層」の一例である。このp型クラッド層5には、図3に示すように、MgおよびZnの活性層4近傍でのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるように、MgおよびZnがドープされている。
【0026】
また、p型クラッド層5には、図1に示すように、台形形状を有する凸部5aが形成されている。また、凸部5aの上面上の全面に接触するように、約0.1μmの厚みを有するとともに、MgおよびZnが同時にドープされたp型GaInPからなるp型コンタクト層6が形成されている。そして、p型クラッド層5の凸部5aとp型コンタクト層6とによって、所定の方向(図1のX方向)に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部が構成されている。
【0027】
また、第1実施形態では、n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5およびp型コンタクト層6の出射端面部には、不純物としてZnが導入されたZn拡散領域20が形成されている。具体的には、このZn拡散領域20は、p型クラッド層5の出射端面部に導入されたZnが活性層4を介してn型クラッド層3まで押し出されるように拡散されている。これにより、活性層4の井戸層4bおよび障壁層4cの構成原子が相互拡散されるので、活性層4の出射端面部は、多重量子井戸構造が無秩序化されている。それによって、活性層4の出射端面部のバンドギャップが他の部分のバンドギャップに比べて拡大された窓構造が形成されている。なお、Zn拡散領域20に位置するp型クラッド層5および活性層4には、Znに加えて、Mgも導入されている。
【0028】
また、第1実施形態では、Zn拡散領域20の活性層4のZnの不純物濃度は、Zn拡散領域20の活性層4以外の領域のZnの不純物濃度よりも大きい。また、Zn拡散領域20の活性層4のZnの不純物濃度は、Zn拡散領域20の活性層4のMgの不純物濃度よりも大きい。
【0029】
また、p型コンタクト層6上には、約0.3μmの厚みを有するとともに、Znがドープされたp型GaAsからなる下側キャップ層7が形成されている。また、p型クラッド層5の上面と、p型クラッド層5の凸部5aの側面と、p型コンタクト層6の側面と、下側キャップ層7の上面以外の側面および出射端面部側の上面とを覆うように、約0.4μmの厚みを有するn型AlInP層、および、約0.4μmの厚みを有するn型GaAs層からなる電流ブロック層8が形成されている。このように、出射端面部の上面を覆うように電流ブロック層8が形成されることにより、リッジ部の出射端面部上に電流が注入されない端面電流非注入構造が形成されている。
【0030】
また、電流ブロック層8および下側キャップ層7上には、約1.0μmの厚みを有するとともに、Znがドープされたp型GaAsからなる上側キャップ層9が形成されている。なお、下側キャップ層7および上側キャップ層9により、キャップ層が形成されている。また、上側キャップ層9上には、Cr層およびAu層からなるp側電極10が形成されている。また、GaAs基板1の裏面には、Au層、Ge層、Ni層およびAu層からなるn側電極11が形成されている。
【0031】
第1実施形態では、上記のように、活性層4上に、不純物としてMgおよびZnを含有するp型クラッド層5を設けることによって、MgはZnに比べて高濃度までドープすることができるので、p型クラッド層5に不純物としてZnのみを含有する場合に比べて、p型クラッド層5におけるキャリア濃度を大きくすることができる。これにより、活性層4とp型クラッド層5との間の伝導帯側のバンド不連続値を大きくすることができるので、活性層4に供給された電子が熱によりp型クラッド層5にオーバーフローするのを抑制することができる。これにより、高温時に、通電した電流値に対して光出力値が低下するのを抑制することができるので、温度特性をより向上させることができる。また、活性層4上に形成されるp型クラッド層5に含有されるZnの不純物濃度を、p型クラッド層5に含有されるMgの不純物濃度よりも大きくすることによって、ZnはMgに比べて拡散しやすいので、出射端面部におけるp型クラッド層5の不純物を活性層4に十分に拡散させやすくすることができる。これにより、出射端面部における活性層4の多重量子井戸構造を十分に無秩序化することができるので、出射端面部における活性層4のバンドギャップを十分に大きくすることができる。このため、活性層4の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができるので、活性層4の出射端面部が高温になるのを十分に抑制することができる。その結果、レーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制することができる。
【0032】
また、第1実施形態では、MgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるように、p型クラッド層5の活性層4近傍の部分までMgおよびZnをドープすることによって、p型クラッド層5の活性層4近傍の部分までキャリア濃度を大きくすることができるので、活性層4に供給された電子が熱によりp型クラッド層5にオーバーフローするのをより抑制することができる。
【0033】
また、第1実施形態では、活性層4に、MgおよびZnを導入することによって、p型クラッド層5の活性層4近傍の部分までキャリア濃度を、容易に、大きくすることができるので、活性層4に供給された電子が熱によりp型クラッド層5にオーバーフローするのを、容易に、抑制することができる。
【0034】
また、第1実施形態では、活性層4の出射端面部のZnの不純物濃度を、活性層4の出射端面部のMgの不純物濃度よりも大きくすることによって、ZnはMgに比べて拡散しやすいので、出射端面部における活性層4のZnを拡散させて、出射端面部における活性層4の多重量子井戸構造を、容易に、十分に無秩序化することができる。これにより、出射端面部における活性層4のバンドギャップを、容易に、十分に大きくすることができるので、容易に、活性層4の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができる。
【0035】
また、第1実施形態では、p型クラッド層5の出射端面部のZnが活性層4を介してn型クラッド層3まで拡散することにより、窓構造を形成することによって、p型クラッド層5の出射端面部のZnを、容易に、活性層4に十分に拡散させることができるので、活性層4の出射端面部に、容易に、窓構造を形成することができる。
【0036】
また、第1実施形態では、活性層4の出射端面部のZnの不純物濃度を、活性層4の出射端面部以外の領域のZnの不純物濃度よりも大きくすることによって、活性層4の出射端面部以外の領域において、Znが拡散して多重量子井戸構造が無秩序化するのを抑制しながら、活性層4の出射端面部のみをZnにより十分に拡散させて多重量子井戸構造を無秩序化することができる。
【0037】
図4〜図10は、図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。次に、図1、図2および図4〜図10を参照して、本発明の第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
【0038】
まず、図4に示すように、MOCVD法を用いて、GaAs基板1上に、バッファ層2、n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5、p型コンタクト層6および下側キャップ層7を順次成長させる。
【0039】
具体的には、GaAs基板1上に、約0.3μmの厚みを有するn型GaInPからなるバッファ層2を成長させる。この後、バッファ層2上に、約2.5μmの厚みを有するとともに、Siがドープされたn型AlGaInPからなるn型クラッド層3を成長させる。
【0040】
続いて、図2に示すように、n型クラッド層3(図4参照)上に、約15nmの厚みを有するAlGaInPからなる光ガイド層4aを成長させる。この後、光ガイド層4a上に、約6nmの厚みを有するGaInPからなる3層の井戸層4bと、約4nmの厚みを有するAlGaInPからなる2層の障壁層4cとを交互に成長させる。そして、井戸層4b上に、約15nmの厚みを有するAlGaInPからなる光ガイド層4aを成長させることにより活性層4を形成する。
【0041】
その後、活性層4上に、図4に示すように、約50nmの厚みを有するアンドープのAlGaInPと、MgおよびZnが同時にドープされたp型AlGaInPとからなる約1.5μmの厚みを有するp型クラッド層5を成長させる。このとき、p型クラッド層5には、MgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるようにMgおよびZnをドープする。そして、p型クラッド層5上に、約0.1μmの厚みを有するとともに、MgおよびZnが同時にドープされたp型GaInPからなるp型コンタクト層6を成長させる。その後、p型コンタクト層6上に、Znがドープされたp型GaAsからなる下側キャップ層7を成長させる。
【0042】
そして、図5に示すように、プラズマCVD法を用いて、下側キャップ層7上の所定の領域(出射端面部以外の領域)に、SiN層12を形成する。その後、SiN層12をマスクとして、下側キャップ層7をエッチングすることにより、下側キャップ層7の出射端面部を除去する。
【0043】
そして、図6に示すように、下側キャップ層7のエッチングされた部分(出射端面部)に、ZnOからなる拡散ソース13を成長させる。その後、約500℃の温度で約20分熱処理を行うことによって、p型クラッド層5の出射端面部に含まれるZnを、活性層4を介してn型クラッド層3まで拡散させる。そして、n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5およびp型コンタクト層6の出射端面部に、窓構造を有するZn拡散領域20が形成される。このとき、Zn拡散領域20の活性層4の多重量子井戸(MQW)構造が無秩序化されて、Zn拡散領域20の活性層4のバンドギャップが大きくなる。つまり、第1実施形態では、予め結晶成長時にMgおよびZnが同時にドープされたp型クラッド層5の出射端面部に、さらにZnを拡散ソース13から拡散させることによって、窓構造を有するZn拡散領域20を形成する。
【0044】
その後、図7に示すように、拡散ソース13(図6参照)およびSiN層12(図6参照)を除去するとともに、p型コンタクト層6および下側キャップ層7の所定の領域に、所定の方向(図5のX方向)に延びるSiO層14を形成する。
【0045】
そして、図8に示すように、SiO層14をマスクとして、下側キャップ層7、p型コンタクト層6、および、p型クラッド層5の上面から所定の厚み分をエッチングする。これにより、p型クラッド層5の凸部5aとp型コンタクト層6とにより、所定の方向(図6のX方向)に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部が形成される。その後、図9に示すように、SiO層14の所定の領域を除去する。
【0046】
そして、図10に示すように、MOCVD法を用いて、p型クラッド層5の上面と、p型クラッド層5の凸部5aの側面と、p型コンタクト層6の上面および側面と、下側キャップ層7の上面および側面と、SiO層14(図9参照)の側面とを覆うように、約0.4μmの厚みを有するn型AlInP層、および、約0.4μmの厚みを有するn型GaAs層からなる電流ブロック層8を成長させる。このとき、リッジ部の出射端面部に電流が注入されない端面電流非注入構造が形成される。その後、SiO層14(図9参照)を除去する。
【0047】
そして、図1に示すように、MOCVD法を用いて、全面を覆うように、約1.0μmの厚みを有するとともに、Znがドープされたp型GaAsからなる上側キャップ層9を成長させる。これにより、下側キャップ層7および上側キャップ層9からなるキャップ層が形成される。この後、不純物を活性化するために約500℃の温度で約20分の熱処理を行う。そして、電子ビーム蒸着法を用いて、上側キャップ層9上に、Cr層およびAu層からなるp側電極10を形成する。その後、電子ビーム蒸着法を用いて、GaAs基板1の裏面上に、Au層、Ge層、Ni層およびAu層からなるn側電極11を形成する。最後に、約450℃の温度で約15分の電極アロイ処理を行う。ここで、前述した窓構造作製のための熱処理、電流ブロック層8や上側キャップ層9の結晶成長、不純物の活性化のための熱処理および電極アロイ処理の熱履歴によって、p型クラッド層5の出射端面部以外の領域のMgおよびZnが、活性層4に拡散される。なお、p型クラッド層5の出射端面部以外の領域のZnが活性層4に拡散される量は、p型クラッド層5の出射端面部のZnが活性層4に拡散される量に比べて小さいので、活性層4の出射端面部以外の領域のZnの不純物濃度は、活性層4の出射端面部のZnの不純物濃度よりも小さくなる。以上のようにして、第1実施形態による赤色半導体レーザ素子が形成される。
【0048】
図11〜図14は、図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験を説明するための図である。次に、図11〜図14を参照して、第1実施形態の赤色半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験について説明する。
【0049】
まず、図11を参照して、p型クラッド層5に導入する不純物の組成に対する電流−光出力特性(I−L特性)を調べた比較実験について説明する。なお、この比較実験では、第1実施形態に対応する実施例1による試料Aと、比較例1〜3による試料B〜Dとを作製するとともに、それらの作製した試料A〜Dについて電流−光出力特性(I−L特性)を評価した。
【0050】
実施例1による試料Aは、上記した第1実施形態による製造プロセスにより作製した。すなわち、実施例1による試料Aは、p型クラッド層5の活性層4近傍におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるように、p型クラッド層5にMgおよびZnをドープすることにより作製した。また、比較例1による試料Bは、p型クラッド層の活性層近傍におけるZnのドーズ量が約6×1017cm−3になるように、p型クラッド層にZnのみをドープすることにより作製した。また、比較例2による試料Cは、p型クラッド層の活性層近傍におけるMgのドーズ量が約6×1017cm−3になるように、p型クラッド層にMgのみをドープすることにより作製した。また、比較例3による試料Dは、p型クラッド層の活性層近傍におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約5×1017cm−3および約1×1017cm−3になるように、p型クラッド層にMgおよびZnをドープすることにより作製した。なお、比較例1〜3による試料B〜Dは、上記以外の条件を実施例1による試料Aと同様にして作製した。これらの試料A〜Dについて、温度:80℃、パルス幅:30ns、動作パルスの比(デューティ比):33%の条件において、電流−光出力を測定した。その結果を図11に示す。
【0051】
図11を参照して、p型クラッド層5の活性層4近傍におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるようにp型クラッド層5にMgおよびZnがドープされた第1実施形態に対応する実施例1は、p型クラッド層の活性層近傍におけるZnのドーズ量が約6×1017cm−3になるようにp型クラッド層にZnのみがドープされた比較例1に比べて、所定の電流値に対する光出力値が大きくなることが判明した。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、第1実施形態に対応する実施例1では、p型クラッド層5に、ZnのみならずMgもドープすることによって、p型クラッド層5のキャリア濃度を大きくすることができたので、活性層4とp型クラッド層5との間の伝導帯側のバンド不連続値を大きくすることができたと考えられる。これにより、活性層4に供給された電子が熱によりp型クラッド層5にオーバーフローするのを抑制することができたので、高温(80℃)時に、所定の電流値に対して光出力値が低下するのを抑制することができたと考えられる。
【0052】
また、p型クラッド層5の活性層4近傍におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるようにp型クラッド層5にMgおよびZnがドープされた第1実施形態に対応する実施例1は、p型クラッド層の活性層近傍におけるMgのドーズ量が約6×1017cm−3になるようにp型クラッド層にMgのみがドープされた比較例2、および、p型クラッド層の活性層近傍におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約5×1017cm−3および約1×1017cm−3になるようにp型クラッド層にMgおよびZnがドープされた比較例3に比べて、CODレベルが向上することが判明した。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、実施例1では、Mgに比べて拡散しやすいZnのドーズ量をMgのドーズ量よりも多くすることによって、出射端面部におけるp型クラッド層5の不純物を活性層4に十分に拡散させることができたと考えられる。これにより、出射端面部における活性層4の多重量子井戸構造を十分に無秩序化することができたので、出射端面部における活性層4のバンドギャップを十分に大きくすることができたと考えられる。このため、活性層4の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができたので、活性層4の出射端面部が高温になるのを十分に抑制することができたと考えられる。その結果、レーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制することができたと考えられる。
【0053】
次に、図12および図13を参照して、p型クラッド層5に導入する不純物のトータル量に対するエージング特性と、活性層フォトルミネッセンススペクトルとを調べた比較実験について説明する。なお、この比較実験では、第1実施形態に対応する実施例2による試料Eと、比較例4による試料Fとを作製するとともに、それらの作製した試料EおよびFについてエージング特性と、活性層フォトルミネッセンススペクトルとを調べた。
【0054】
実施例2による試料Eは、上記実施例1と同様の製造プロセスにより作製した。すなわち、実施例2による試料Eは、p型クラッド層5の活性層4近傍の領域におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるようにMgおよびZnをドープすることにより作製した。また、比較例4による試料Fは、p型クラッド層の活性層近傍の領域におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1.5×1017cm−3および約7×1017cm−3になるようにMgおよびZnをドープすることにより作製した。なお、比較例4による試料Fは、上記以外の条件を実施例2による試料Eと同様にして作製した。これらの試料EおよびFについて、温度:80℃、パルス:80mWの条件における時間−動作電流を測定するとともに、活性層フォトルミネッセンススペクトルを測定し、活性層フォトルミネッセンススペクトルの最大値が1.0になるように規格化を行った。その結果を図12および図13にそれぞれ示す。
【0055】
まず、図12を参照して、p型クラッド層5の活性層4近傍の領域におけるにMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるようにMgおよびZnがドープされた第1実施形態に対応する実施例2は、p型クラッド層の活性層近傍の領域におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1.5×1017cm−3および約7×1017cm−3になるようにMgおよびZnがドープされた比較例4に比べて、長時間安定動作することが判明した。具体的には、第1実施形態に対応する実施例2は、約950時間以上安定動作した。一方、比較例4は、約400時間動作した後、劣化した。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、実施例2では、p型クラッド層5の出射端面部以外の領域においてp型クラッド層5から活性層4に拡散する不純物の濃度が、所定の値よりも小さく、赤色半導体レーザ素子の信頼性に悪影響を及ぼさなかったためであると考えられる。一方、比較例4では、p型クラッド層の出射端面部以外の領域においてp型クラッド層から活性層に拡散する不純物の濃度が、所定の値よりも大きくなり、赤色半導体レーザ素子の信頼性に悪影響を及ぼしたためであると考えられる。したがって、p型クラッド層の活性層近傍におけるMgおよびZnのドーズ量は、それぞれ、約1.5×1017cm−3未満および約7×1017cm−3未満に設定するのが好ましいと考えられる。
【0056】
次に、図13を参照して、p型クラッド層5の活性層4近傍の領域におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1×1017cm−3および約5×1017cm−3になるようにMgおよびZnがドープされた第1実施形態に対応する実施例2は、p型クラッド層の活性層近傍の領域におけるMgおよびZnのドーズ量がそれぞれ約1.5×1017cm−3および約7×1017cm−3になるようにMgおよびZnがドープされた比較例4に比べて、活性層フォトルミネッセンススペクトルの半値幅を小さくすることができることが判明した。具体的には、第1実施形態に対応する実施例2による半値幅(W1)は、約12nmであり、比較例4の半値幅(W2)は、約14nmであった。これにより、第1実施形態に対応する実施例2では、赤色半導体レーザ素子の記録密度を向上させることが可能である。
【0057】
次に、図14を参照して、出射端面部における窓構造の有無に対する電流−光出力特性(I−L特性)を調べた比較実験について説明する。なお、この比較実験では、第1実施形態に対応する実施例3による試料Gと、比較例5による試料Hとを作製するとともに、それらの作製した試料GおよびHについて電流−光出力特性(I−L特性)を評価した。
【0058】
実施例3による試料Gは、上記した第1実施形態による製造プロセスにより作製した。すなわち、実施例3による試料Gは、n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5およびp型コンタクト層6の出射端面部に窓構造を有するZn拡散領域20を形成することにより作製した。また、比較例5による試料Hは、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層およびp型コンタクト層の出射端面部に窓構造を有するZn拡散領域を形成せずに作製した。なお、比較例5による試料Hは、上記以外の条件を実施例3による試料Gと同様にして作製した。これらの試料GおよびHについて、約25℃の温度において連続通電することにより、電流−光出力を測定した。その結果を図14に示す。
【0059】
図14を参照して、出射端面部に窓構造が形成された第1実施形態に対応する実施例3は、出射端面部に窓構造が形成されていない比較例5に比べて、CODレベルが向上することが判明した。具体的には、実施例3では、駆動電流が約700mAの場合にも、素子の損傷は見られなかった。その一方、比較例5では、駆動電流が約150mAのときに、素子の損傷が見られた。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、実施例3では、出射端面部においてp型クラッド層5の不純物を活性層4に拡散させる窓構造形成工程を行うことにより、出射端面部における活性層4の多重量子井戸を十分に無秩序化することができたので、出射端面部の活性層4のバンドギャップを十分に大きくすることができたと考えられる。このため、活性層4の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができたので、活性層4の出射端面部が高温になるのを十分に抑制することができたと考えられる。その結果、レーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制することができたと考えられる。なお、実施例3では、駆動電流が約450mA〜約500mA付近のときをピークとして、光出力値の低下が見られた。これは、駆動電流の増加により、素子の発熱量が増加することによって、発光効率が低下したためであると考えられる。
【0060】
(第2実施形態)
図15は、本発明の第2実施形態による赤外半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。図15を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、本発明の半導体レーザ素子を赤外半導体レーザ素子に適用する場合について説明する。
【0061】
この第2実施形態による赤外半導体レーザ素子では、図15に示すように、n型クラッド層23上には、上記第1実施形態と同様、所定の不純物濃度を有するMgおよびZnが導入された活性層24が形成されている。また、活性層24は、約10nmの厚みを有するAlGaAsからなる2つの光ガイド層(図示せず)の間に、約4nmの厚みを有する2つのGaAsからなる井戸層(図示せず)と、約3nmの厚みを有する1つのAlGaAsからなる障壁層(図示せず)とが交互に積層された多重量子井戸活性層を有する。なお、n型クラッド層23は、本発明の「n型層」の一例である。
【0062】
また、第2実施形態では、上記第1実施形態と同様、n型クラッド層23、活性層24、凸部25aを有するp型クラッド層25およびp型コンタクト層26の出射端面部には、不純物としてZnが導入されたZn拡散領域40が形成されている。具体的には、このZn拡散領域40は、p型クラッド層25の出射端面部に導入されたZnが活性層24を介してn型クラッド層23まで押し出されるように拡散されている。これにより、活性層24の井戸層(図示せず)および障壁層(図示せず)の構成原子が相互拡散されるので、活性層24の出射端面部は、多重量子井戸構造が無秩序化されている。それによって、活性層24の出射端面部のバンドギャップが他の部分のバンドギャップに比べて拡大された窓構造が形成されている。なお、p型クラッド層25は、本発明の「p型層」の一例である。
【0063】
なお、第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0064】
また、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、図15を参照して、本発明の第2実施形態による赤外半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
【0066】
第2実施形態では、図15に示すように、上記第1実施形態と同様のプロセスを用いて、n型クラッド層23上に、約10nmの厚みを有するAlGaAsからなる2つの光ガイド層(図示せず)を成長させる。この後、光ガイド層(図示せず)上に、約4nmの厚みを有する2つのGaAsからなる井戸層(図示せず)と、約3nmの厚みを有する1つのAlGaAsからなる障壁層(図示せず)とを交互に成長させる。そして、井戸層(図示せず)上に、約10nmの厚みを有するAlGaAsからなる2つの光ガイド層(図示せず)を成長させることにより活性層24を形成する。
【0067】
また、第2実施形態では、上記第1実施形態と同様のプロセスを用いて、n型クラッド層23、活性層24、p型クラッド層25およびp型コンタクト層26の出射端面部に、窓構造を有するZn拡散領域40を形成する。このとき、Zn拡散領域40の活性層24の多重量子井戸(MQW)構造が無秩序化されて、Zn拡散領域40の活性層24のバンドギャップが大きくなる。
【0068】
なお、第2実施形態のその他の製造プロセスは、上記第1実施形態の製造プロセスと同様である。
【0069】
図16は、図15に示した第2実施形態による赤外半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験を説明するための図である。次に、図16を参照して、第2実施形態の赤外半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験について説明する。
【0070】
ここで、図16を参照して、出射端面部における窓構造の有無に対する電流−光出力特性(I−L特性)を調べた比較実験について説明する。なお、この比較実験では、第2実施形態に対応する実施例4による試料Iと、比較例6による試料Jとを作製するとともに、それらの作製した試料IおよびHについて電流−光出力特性(I−L特性)を評価した。
【0071】
実施例4による試料Iは、上記した第2実施形態による製造プロセスにより作製した。すなわち、実施例4による試料Iは、n型クラッド層23、活性層24、p型クラッド層25およびp型コンタクト層26の出射端面部に窓構造を有するZn拡散領域40を形成することにより作製した。また、比較例6による試料Jは、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層およびp型コンタクト層の出射端面部に窓構造を有するZn拡散領域を形成せずに作製した。なお、比較例6による試料Jは、上記以外の条件を実施例4による試料Iと同様にして作製した。これらの試料IおよびHについて、約25℃の温度において連続通電することにより、電流−光出力を測定した。その結果を図16に示す。
【0072】
図16を参照して、出射端面部に窓構造が形成された第2実施形態に対応する実施例4は、出射端面部に窓構造が形成されていない比較例6に比べて、CODレベルが向上することが判明した。具体的には、実施例4では、駆動電流が約700mAの場合にも、素子の損傷は見られなかった一方、比較例6では、駆動電流が約250mAのときに、素子の損傷が見られた。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、実施例4では、出射端面部においてp型クラッド層25の不純物を活性層24に拡散させる窓構造形成工程を行うことにより、出射端面部における活性層24の多重量子井戸を十分に無秩序化することができたので、出射端面部における活性層24のバンドギャップを十分に大きくすることができたと考えられる。このため、活性層24の出射端面部で光が吸収されるのを十分に抑制することができたので、活性層24の出射端面部が高温になるのを十分に抑制することができたと考えられる。その結果、レーザ光の出射端面部が熱により破壊されるのを十分に抑制することができたと考えられる。
【0073】
ここまでは、1つの基板に1つの半導体レーザ素子を形成した実施形態について説明したが、本発明は、1つの基板に複数の半導体レーザ素子を形成することも可能である。以下、1つの基板に複数の半導体レーザ素子を形成する場合について説明する。
【0074】
(第3実施形態)
図17は、本発明の第3実施形態による半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。図17を参照して、この第3実施形態では、上記第1および第2実施形態と異なり、1つのGaAs基板1に、660nm帯の発振波長を有するとともに、DVD−R用として用いられる高出力の赤色半導体レーザ素子と、780nm帯の発振波長を有するとともに、CD−R用として用いられる高出力の赤外半導体レーザ素子とを形成した2波長の半導体レーザ素子に本発明を適用する場合について説明する。
【0075】
この第3実施形態による半導体レーザ素子では、図17に示すように、上記第1実施形態による赤色半導体レーザ素子、および、上記第2実施形態による赤外半導体レーザ素子が、1つのGaAs基板1に形成されている。具体的には、赤色半導体レーザ素子を構成する赤色半導体レーザ素子部(バッファ層2、n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5、p型コンタクト層6、下側キャップ層7、電流ブロック層8、上側キャップ層9およびp側電極10)と、赤外半導体レーザ素子を構成する赤外半導体レーザ素子部(バッファ層2、n型クラッド層23、活性層24、p型クラッド層25、p型コンタクト層26、下側キャップ層7、電流ブロック層8、上側キャップ層9およびp側電極10)とが、Y方向に所定の間隔を隔てて、X方向に延びるように形成されている。なお、GaAs基板1は、本発明の「基板」の一例である。また、赤色半導体レーザ素子部は、本発明の「第1レーザ素子部」の一例であり、赤外半導体レーザ素子部は、本発明の「第2レーザ素子部」の一例である。また、活性層4は、本発明の「第1活性層」の一例であり、活性層24は、本発明の「第2活性層」の一例である。また、p型クラッド層5は、本発明の「第1p型層」の一例であり、p型クラッド層25は、本発明の「第2p型層」の一例である。
【0076】
なお、第3実施形態のその他の構造は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0077】
図18〜図29は、図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。次に、図17〜図29を参照して、本発明の第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
【0078】
まず、図18に示すように、上記第2実施形態と同様のプロセスを用いて、GaAs基板1上に、バッファ層2、n型クラッド層23、活性層24、p型クラッド層25、p型コンタクト層26および下側キャップ層7を順次成長させる。
【0079】
ここで、第3実施形態では、図19に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いて、赤外半導体レーザ素子部に対応する部分以外のバッファ層2、n型クラッド層23、活性層24、p型クラッド層25、p型コンタクト層26および下側キャップ層7を除去する。
【0080】
そして、図20に示すように、上記第1実施形態と同様のプロセスを用いて、GaAs基板1上に、バッファ層2、n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5、p型コンタクト層6および下側キャップ層7を順次成長させる。
【0081】
その後、第3実施形態では、図21に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いて、赤色半導体レーザ素子部に対応する部分以外のバッファ層2、n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5、p型コンタクト層6および下側キャップ層7を除去する。
【0082】
そして、第3実施形態では、図22に示すように、上記第1および第2実施形態と同様のプロセスを用いて、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の下側キャップ層7上の所定の領域(出射端面部以外の領域)に、それぞれSiN層12を同時に形成する。その後、SiN層12をマスクとして、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の下側キャップ層7を同時にエッチングすることにより、下側キャップ層7の出射端面部を除去する。
【0083】
そして、第3実施形態では、図23に示すように、上記第1および第2実施形態と同様のプロセスを用いて、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の下側キャップ層7(図22参照)のエッチングされた部分(出射端面部)に、それぞれ、ZnOからなる拡散ソース13を同時に成長させる。その後、約500℃の温度で約20分間熱処理を行うことによって、赤色半導体レーザ素子部のp型クラッド層5および赤外半導体レーザ素子部のp型クラッド層25の出射端面部に含まれるZnを、それぞれ、活性層4および24を介してn型クラッド層3および23まで同時に拡散させる。そして、赤色半導体レーザ素子部の出射端面部および赤外半導体レーザ素子部の出射端面部に、それぞれ、窓構造を有するZn拡散領域20および40が同時に形成される。
【0084】
その後、図24に示すように、拡散ソース13(図23参照)およびSiN層12(図22参照)を除去するとともに、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の所定の領域に、所定の方向(図17のX方向)に延びるSiO層14を、それぞれ、同時に形成する。
【0085】
そして、図25に示すように、上記第1および第2実施形態と同様のプロセスを用いて、SiO層14をマスクとして、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の下側キャップ層7、p型コンタクト層6、26、p型クラッド層5および25の上面から所定の厚み分を、それぞれ、同時にエッチングする。これにより、p型クラッド層5の凸部5aおよびp型クラッド層25の凸部25aとp型コンタクト層6とにより、所定の方向(図17のX方向)に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部が形成される。その後、図26に示すように、SiO層14の所定の領域を除去する。
【0086】
そして、図27に示すように、上記第1および第2実施形態と同様のプロセスを用いて、p型クラッド層5および25の上面と、p型クラッド層5の凸部5aおよびp型クラッド層25の凸部25aの側面と、p型コンタクト層6および26の上面および側面と、下側キャップ層7の上面および側面と、SiO層14(図26参照)の側面とを覆うように、約0.4μmの厚みを有するn型AlInP層、および、約0.4μmの厚みを有するn型GaAs層からなる電流ブロック層8を成長させる。その後、SiO層14(図26参照)を除去する。
【0087】
そして、図28に示すように、上記第1および第2実施形態と同様のプロセスを用いて、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の全面を覆うように、約1.0μmの厚みを有するとともに、Znがドープされたp型GaAsからなる上側キャップ層9を成長させる。
【0088】
その後、第3実施形態では、図29に示すように、エッチング技術を用いて、赤色半導体レーザ素子部と赤外半導体レーザ素子部との間の電流ブロック層8および上側キャップ層9を除去する。これにより、GaAs基板1上の赤色半導体レーザ素子部と赤外半導体レーザ素子部とが分離される。
【0089】
そして、図17に示すように、上記第1および第2実施形態と同様のプロセスを用いて、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の上側キャップ層9上に、Cr層およびAu層からなるp側電極10を、それぞれ、同時に形成する。これにより、赤色半導体レーザ素子を構成する赤色半導体レーザ素子部(2〜10)と、赤外半導体レーザ素子を構成する赤外半導体レーザ素子部(2、23〜26、7〜10)とが形成される。
【0090】
なお、第3実施形態のその他の製造プロセスは、上記第1および第2実施形態の製造プロセスと同様である。
【0091】
第3実施形態では、上記のように、活性層4および24の出射端面部に、それぞれ、窓構造を有するZn拡散領域20および40を同時に形成することによって、半導体レーザ素子の製造プロセスを簡略化することができるとともに、製造時間を短縮することができる。
【0092】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0093】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0094】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、半導体レーザ素子の一例としてAlGaInP赤色半導体レーザ素子およびAlGaAs赤外半導体レーザ素子に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限らず、GaN系青紫色半導体レーザ素子にも適用可能である。また、1つの基板に複数の半導体レーザ素子を形成する場合には、赤色半導体レーザ素子、赤外半導体レーザ素子および青紫色半導体レーザ素子を組み合わせて形成してもよい。この場合、赤色半導体レーザ素子、赤外半導体レーザ素子および青紫色半導体レーザ素子を有する3波長の半導体レーザ素子を得ることも可能である。
【0095】
また、上記第1〜第3実施形態では、下側キャップ層および電流ブロック層の上に上側キャップ層を設けるとともに、上側キャップ層上にp側電極を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、下側キャップ層および電流ブロック層の上に上側キャップ層を設けることなく、下側キャップ層および電流ブロック層の上にp側電極を直接設けてもよい。
【0096】
また、上記第3実施形態では、赤色半導体レーザ素子部および赤外半導体レーザ素子部の両方の出射端面部に窓構造を形成するとともに、両方の出射端面部上に端面電流非注入構造を形成した例について説明したが、本発明はこれに限らず、図30に示した第3実施形態の変形例のように、赤色半導体レーザ素子部(2〜10)の出射端面部に窓構造を形成するとともに、出射端面部上に端面電流非注入構造を形成し、かつ、赤外半導体レーザ素子部(2、33〜36、7、38、9および10)の出射端面部に窓構造を形成しないとともに、出射端面部上に端面電流非注入構造を形成しなくてもよい。この場合、赤外半導体レーザ素子部の活性層34を、約20nmの厚みを有するAlGaAsからなる2つの光ガイド層(図示せず)の間に、約4nmの厚みを有する3つのGaAsからなる井戸層(図示せず)と、約8nmの厚みを有する2つのAlGaAsからなる障壁層(図示せず)とが交互に積層された多重量子井戸活性層を有するように形成してもよい。また、赤外半導体レーザ素子部のn型クラッド層33を約2.5μmの厚みを有するn型AlGaAsにより形成するとともに、p型クラッド層35を、約1.5μmの厚みを有するp型AlGaAsにより形成してもよい。また、赤外半導体レーザ素子部の電流ブロック層38を、約0.6μmの厚みを有するn型AlGaAs層、および、約0.3μmの厚みを有するn型GaAs層により形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の活性層の詳細を示した拡大断面図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子のA点における深さ方向に対するMgおよびZnの不純物濃度を示した図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図8】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図9】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図11】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験を説明するための図である。
【図12】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験を説明するための図である。
【図13】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験を説明するための図である。
【図14】図1に示した第1実施形態による赤色半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験を説明するための図である。
【図15】本発明の第2実施形態による赤外半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。
【図16】図15に示した第2実施形態による赤外半導体レーザ素子の効果を確認するために行った実験を説明するための図である。
【図17】本発明の第3実施形態による半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。
【図18】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図19】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図20】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図21】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図22】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図23】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図24】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図25】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図26】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図27】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図28】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図29】図17に示した第3実施形態による半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための図である。
【図30】第3実施形態の変形例による半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。
【図31】従来の一例による半導体レーザ素子の出射端面部におけるZn拡散前のZn濃度のプロファイルを示した図である。
【図32】従来の一例による半導体レーザ素子の出射端面部におけるZn拡散後のZn濃度のプロファイルを示した図である。
【符号の説明】
【0098】
1 GaAs基板(基板)
3、23 n型クラッド層(n型層)
4 活性層(第1活性層)
5 p型クラッド層(p型層、第1p型層)
24 活性層(第2活性層)
25 p型クラッド層(p型層、第2p型層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の出射端面部に窓構造を有する活性層と、
前記活性層の表面上に形成され、不純物としてMgおよびZnを含有するp型層とを備え、
前記p型層に含有される前記Znの不純物濃度は、前記p型層に含有される前記Mgの不純物濃度よりも大きい、半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記Mgおよび前記Znは、少なくとも前記p型層の前記出射端面部以外の領域において、少なくとも前記p型層の前記活性層近傍の部分まで所定の値以上の不純物濃度を有するように導入されている、請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記活性層の少なくとも前記出射端面部以外の領域に、前記Mgおよび前記Znが導入されている、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記活性層の少なくとも前記出射端面部に、前記Mgおよび前記Znが導入され、
前記活性層の前記出射端面部に導入される前記Znの不純物濃度は、前記活性層の前記出射端面部に導入される前記Mgの不純物濃度よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記活性層を前記p型層とにより挟み込むように前記活性層の表面上に形成されるn型層をさらに備え、
前記p型層の前記出射端面部に導入される前記Znが前記活性層を介して前記n型層まで拡散することにより、前記窓構造が形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記活性層の前記出射端面部および前記出射端面部以外の領域に前記Znが導入され、
前記活性層の前記出射端面部の前記Znの不純物濃度は、前記活性層の前記出射端面部以外の領域の前記Znの不純物濃度よりも大きい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記窓構造を有する活性層と、前記MgおよびZnを含有するp型層とを含む第1レーザ素子部と、
第2レーザ素子部と、
前記第1レーザ素子部および前記第2レーザ素子部が表面上に形成される単一の基板とをさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記第1レーザ素子部は、赤色半導体レーザ素子または赤外半導体レーザ素子のいずれか一方を構成する、請求項7に記載の半導体レーザ素子。
【請求項9】
単一の基板上に、第1活性層および第2活性層を形成する工程と、
前記第1活性層および前記第2活性層の表面上に、それぞれ、MgとMgよりも大きい不純物濃度を有するZnとを不純物として含有する第1p型層および第2p型層を形成する工程と、
前記第1活性層および前記第1p型層と、前記第2活性層および前記第2p型層とに、同時にZn拡散を行うことにより、前記第1活性層および前記第2活性層のレーザ光の出射端面部に、それぞれ窓構造を同時に形成する工程とを備えた、半導体レーザ素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−123837(P2007−123837A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231132(P2006−231132)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】