説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂硬化剤
(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤
中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5となる量、
(C)無機質充填剤
(A),(B)成分の総量100質量部に対し、400〜1,200質量部、
(D)希土類酸化物
(A),(B)成分の総量100質量部に対し、0.5〜20質量部
を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【効果】 本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、耐熱性に優れると共に耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、耐熱性、耐湿信頼性に優れたものであり、産業上特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び該樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体デバイスは樹脂封止型のダイオード、トランジスター、IC、LSI、超LSIが主流であるが、エポキシ樹脂が他の熱硬化性樹脂に比べて成形性、接着性、電気特性、機械特性、耐湿性等に優れているため、エポキシ樹脂組成物で半導体装置を封止することが一般的である。近年では自動車の電子制御化に伴い、自動車のエンジン周り等、常時高温下に晒される部位でも使用されるため、高温下での動作保証が要求されている。
【0003】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を高めるため、一般にハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されている。このハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとの組み合わせは、気相においてラジカルトラップ、空気遮断効果が大きく、その結果、高い難燃効果が得られるものである。
【0004】
しかしながら、ハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンを含む半導体封止材で封止されたデバイスを長期間高温下に晒すと、ハロゲン化イオンにより金線とシリコンチップ上のアルミパッドの接合部分の金属化合物の形成が促進され、機械的強度、並びに電気的特性の低下が認められる。
【0005】
このような要求に対して、ハロゲン化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等の検討がなされてきている。しかし、Al(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物は難燃効果が低いため、難燃組成とするためには、エポキシ樹脂組成物中に水酸化物を多量に添加しなければならず、その結果、組成物の粘度が上昇し、成形時にボイド、ワイヤー流れ等の成形不良が発生するという問題がある。一方、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加した場合、半導体装置が高温高湿条件に晒されると、リン系難燃剤が加水分解されてリン酸が生成し、このリン酸がアルミ配線を腐食させ、信頼性を低下させるという大きな問題があった。
【0006】
また、エポキシ樹脂と硬化剤の組成物からなる硬化物自体も熱により分解され、酢酸やギ酸といった有機酸が発生するため、デバイスの信頼性に影響を及ぼす。そのためエポキシ当量が低く、芳香環を多く含む耐熱安定性に優れた樹脂系がその高い難燃性と相まって使用されているが、硬化物のガラス転移温度が低く、ガラス転移温度以上の高温下ではイオン性不純物の動きが活発となり、やはり電気特性の低下が見られる。
【0007】
更に、高温下長期保管時にイオン性不純物が低減され、耐熱信頼性、耐湿信頼性に優れた硬化物を与える半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られるものとして、イオン性不純物を捕捉する目的、及び硬化物の酸性度を中和する目的でハイドロタルサイト化合物を組成物に添加することが行われている(特許文献1〜12:特許第2501820号公報、特許第2519277号公報、特許第2712898号公報、特許第3167853号公報、特公平6−51826号公報、特開平9−118810号公報、特開平10−158360号公報、特開平11−240937号公報、特開平11−310766号公報、特開2000−159520号公報、特開2000−230110号公報、特許第2843244号公報等参照)。しかし、かかるハイドロタルサイト化合物では、ホスファゼン化合物等のリン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加した場合、半導体装置が高温条件に晒された場合に、リン系難燃剤が分解されて生成するリン酸を完全に無害化することに限界があった。
【0008】
一方、特許第2843244号公報(特許文献12)では、赤リンの表面にSiXY組成からなる被覆層で被覆した化合物を難燃剤として使用したエポキシ樹脂組成物が提案されているが、上記の耐湿信頼性は改善されていないのが現状である。また、特開平10−259292号公報(特許文献13)では、環状ホスファゼン化合物を、充填剤を除く配合成分の合計量に対して、燐原子の量が0.2〜3.0重量%となる量を使用したエポキシ樹脂組成物も提案されているが、難燃性を得るためには相当な量をエポキシ樹脂組成物に添加する必要があり、その場合は硬化性の低下、並びに高温環境下での電気抵抗性低下を引き起こす等の問題点があった。また環状ホスファゼン化合物は比較的熱に対して安定であるが、長時間高温化に晒されると分解し、リン酸化合物が発生し、半導体素子の高温動作に影響を及ぼすこともある。
【0009】
更に、特開2003−138102号公報(特許文献14)では、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機質充填剤、(D)モリブデン酸亜鉛を無機質充填剤に担持したモリブデン化合物、(E)下記平均組成式(i)で示されるホスファゼン化合物
【化1】


[式中、Xは単結合、又はCH2、C(CH32、SO2、S、O、及びO(CO)Oから選ばれる基であり、YはOH、SH又はNH2であり、R1は炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基、NH2、NR23並びにSR2から選ばれる基であり、R2,R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。d,e,f,nは0≦d≦0.25n、0≦e<2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2n、3≦n≦1000を満たす数である。]
を必須成分とし、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないことを特徴とする半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物が開示され、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物及び三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有せず、成形性に優れると共に、難燃性及び耐湿信頼性に優れる硬化物を得ることができる半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物が開示されている。しかし、ホスファゼン化合物等のリン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加した場合、半導体装置が高温条件に晒されると、リン系難燃剤が分解されてリン酸が生成し、デバイスの信頼性を低下させるという問題がある。
【0010】
【特許文献1】特許第2501820号公報
【特許文献2】特許第2519277号公報
【特許文献3】特許第2712898号公報
【特許文献4】特許第3167853号公報
【特許文献5】特公平6−51826号公報
【特許文献6】特開平9−118810号公報
【特許文献7】特開平10−158360号公報
【特許文献8】特開平11−240937号公報
【特許文献9】特開平11−310766号公報
【特許文献10】特開2000−159520号公報
【特許文献11】特開2000−230110号公報
【特許文献12】特許第2843244号公報
【特許文献13】特開平10−259292号公報
【特許文献14】特開2003−138102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、耐熱性及び耐湿信頼性に優れる硬化物となり得る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有せず、成形性に優れると共に、難燃性及び耐湿信頼性に優れる硬化物を得ることができる半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物を提供することを他の目的とする。
更に、本発明は、上記エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)無機質充填剤、(D)希土類酸化物を必須成分とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、耐熱性及び耐湿信頼性に優れる硬化物となり得ることを見出した。
即ち、本発明者等は、希土類酸化物が不純物イオンを捕捉する能力に優れることを知見し、これをエポキシ樹脂組成物中に用いると、高温下で発生する不純物イオンの増加を抑え、信頼性に優れること、更に高温高湿下においても優れたイオン捕捉能力を示し、耐湿信頼性も優れることを見出した。
また、上記成分に加えて、(E)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物を配合することにより、臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まなくとも、成形性に優れると共に、難燃性、耐湿信頼性及び耐熱性に優れる硬化物となり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
従って、本発明は、第一に、
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂硬化剤
(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤
中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5となる量、
(C)無機質充填剤
(A),(B)成分の総量100質量部に対し、400〜1,200質量部、
(D)希土類酸化物
(A),(B)成分の総量100質量部に対し、0.5〜20質量部
を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこの組成物の硬化物で封止された半導体装置を提供する。
【0014】
本発明の上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、耐熱性に優れると共に耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができ、この硬化物で封止された半導体装置は、耐熱性、耐湿信頼性に優れたものである。
【0015】
この場合、(D)希土類酸化物の添加量を(A),(B)成分の総量100質量部に対し、2〜10質量部とすることが好ましい。また、上記組成物には、硬化促進剤を(A),(B)成分の総量100質量部に対し、2〜10質量部、離型剤を(A),(B)成分の総量100質量部に対し、0.1〜5質量部、シランカップリング剤を(A),(B)成分の総量100質量部に対し、0.1〜5質量部配合することができる。
【0016】
また、本発明は、第二に
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂硬化剤
(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤
中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5となる量、
(C)無機質充填剤
(A),(B)成分及び下記(E)成分の総量
100質量部に対し、400〜1,200質量部、
(D)希土類酸化物
(A),(B)成分及び下記(E)成分の総量
100質量部に対し、0.5〜20質量部、
(E)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物
(A),(B),(E)成分の合計量100質量%に対し、1〜50質量%、
【化2】


[但し、Xは単結合、又はCH2、C(CH32、SO2、S、O及びO(CO)Oから選ばれる基であり、YはOH、SH又はNH2であり、R1は炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基、NH2、NR23並びにSR4から選ばれる基であり、R2,R3,R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。d,e,f,nは、0≦d≦0.25n、0≦e≦2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2n、3≦n≦1,000を満足する数である。]
を含むことを特徴とする半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物、及びこの組成物の硬化物で封止された半導体装置を提供する。
【0017】
この場合、上記組成物には、硬化促進剤を(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対し、2〜10質量部、離型剤を(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対し、0.1〜5質量部、シランカップリング剤を(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対し、0.1〜5質量部配合することができる。
【0018】
上記(D)希土類酸化物に(E)ホスファゼン化合物を併用することにより、特に、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まなくとも高い難燃性を達成することができる。即ち、一般に、エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を達成するため、臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されているが、この臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとを使用せずに、難燃規格であるUL−94、V−0を達成することができる。
【0019】
ここで、臭素化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等が検討されている。しかし、これらの公知の代替難燃剤は、特に高温において耐水性が弱く、難燃剤自身が溶解、分解して、抽出水中の不純物イオンを増加させるという共通の欠点があった。このため、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まない従来の難燃性エポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置を長時間高温高湿下に放置すると、半導体装置のアルミ配線が腐食し、耐湿信頼性が低下するという問題があった。
【0020】
本発明者等は、上記不都合を解決すべく鋭意検討を行った結果、難燃剤として、(E)平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物とイオントラップ材として(D)希土類酸化物を併用した半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、前述のように抽出水中の不純物イオンを増加させることもなく、成形性に優れ、難燃性、耐湿信頼性及び耐熱性に優れた硬化物を得ることができることを見出したものである。(E)平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物は耐熱性、耐水性が高く、抽出水中のリン酸イオンのような不純物イオンは比較的少ない。しかしながら、150〜200℃という高温下に長時間晒された場合は一部分解してリン酸化合物が発生する。これに対し、本発明者らは、(D)希土類酸化物がリン酸イオンのトラップ能力に優れ、しかも希土類金属は溶出せず、組成物の硬化特性にも影響がないことを見出したものである。従って、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、成形性に優れ、難燃性、耐湿信頼性及び耐熱性に優れた硬化物を得ることができるものである。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物をエポキシ樹脂組成物中に含有しないので、人体、環境に対する悪影響もないものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、耐熱性に優れると共に耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、耐熱性、耐湿信頼性に優れたものであり、産業上特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂硬化剤、
(C)無機質充填剤、
(D)希土類酸化物
を含み、更に好ましくは
(E)ホスファゼン化合物
を含む。
【0023】
[(A)エポキシ樹脂]
本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する(A)エポキシ樹脂は特に限定されない。一般的なエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。これらのうちでは、芳香環を含むエポキシ樹脂が好ましい。なお、本発明においては臭素化エポキシ樹脂は配合されない。
【0024】
上記エポキシ樹脂は、加水分解性塩素が1,000ppm以下、特に500ppm以下であり、ナトリウム及びカリウムは、それぞれ10ppm以下とすることが好ましい。加水分解性塩素が1,000ppmを超えたり、ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。
【0025】
[(B)フェノール樹脂硬化剤]
本発明に用いる(B)フェノール樹脂硬化剤も特に限定されるものではない。具体的には、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。
【0026】
上記硬化剤は、エポキシ樹脂と同様に、ナトリウム及びカリウムをそれぞれ10ppm以下とすることが好ましい。ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。
【0027】
ここで、フェノール樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5の範囲であり、特に0.8〜1.2の範囲であることが好ましい。モル比が0.5未満あるいは1.5を超えるとエポキシ基とフェノール性水酸基の量がアンバランスであり、硬化物の特性が十分でない。
【0028】
[(C)無機質充填剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物中に配合される(C)無機質充填剤としては、通常エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。
【0029】
これら無機質充填剤の平均粒径や形状は特に限定されないが、難燃性を高めるためには、エポキシ樹脂組成物中に成形性を損なわない範囲で可能な限り多量に充填させることが好ましい。この場合、無機質充填剤の平均粒径、形状として、平均粒径5〜30μmの球状の溶融シリカが特に好ましい。また、(C)成分である無機質充填剤の充填量は、(A),(B),(E)成分の総量100質量部(但し、(E)成分が含まれない、つまり(E)成分0質量部の場合がある。以下、同様。)に対し、400〜1,200質量部であり、特に500〜1,000質量部とすることが好ましい。充填量が400質量部未満では線膨張係数が大きくなり、半導体素子に加わる応力が増大し、1,200質量部を超えると流動性が著しく低下し、成形性が悪くなる。
【0030】
なお、本発明において、平均粒径は、例えばレーザー光回折法等による重量平均値(又はメディアン径)等として求めることができる。
【0031】
無機質充填剤は、樹脂と無機質充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン、γ−エピスルフィドキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。ここで、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0032】
[(D)希土類酸化物]
(D)成分である希土類酸化物は、イオン、特にリン酸イオンのトラップ能力に優れ、高温、高湿下においてもLa,Y,Gd,Bi,Mg,Al等の金属イオンが溶出せず、かつエポキシ樹脂組成物の硬化性にも影響せず、耐熱性、耐湿性に優れた硬化物を与えることができる。
【0033】
希土類酸化物としては、酸化ランタン、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化ツリウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化エルビウム、酸化テルビウム、酸化プラセオジウム、酸化ジスプロジウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ホルミウムなどが挙げられる。
【0034】
希土類酸化物の添加量としては、(A),(B),(E)成分の合計量100質量部に対し、0.5〜20質量部であり、(E)成分を含有する場合は1〜10質量部が好ましく、特に2〜10質量部が好ましい。添加量が0.5質量部未満では十分なイオントラップ効果が得られず、また20質量部を超えると、流動性の低下を引き起こす。
【0035】
[(E)ホスファゼン化合物]
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、(E)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物を配合することが好ましい。
【0036】
【化3】


[但し、Xは単結合、又はCH2、C(CH32、SO2、S、O、及びO(CO)Oから選ばれる基であり、YはOH、SH又はNH2であり、R1は炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基、NH2、NR23並びにSR4から選ばれる基であり、R2,R3,R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。d,e,f,nは、0≦d≦0.25n、0≦e≦2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2n、3≦n≦1,000を満足する数である。]
【0037】
上記式(1)で示されるホスファゼン化合物を添加した本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤を添加したエポキシ樹脂組成物と比較して、熱水抽出特性に優れ、耐湿信頼性に特に優れる硬化物を得ることができる。
【0038】
ここで、上記式(1)において、nは3〜1,000であるが、より好ましい範囲は3〜10である。合成上特に好ましくはn=3である。
【0039】
d,e,fの比率は、0≦d≦0.25n、0≦e≦2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2nである。0.25n<dでは、ホスファゼン化合物の分子間架橋が多いため、軟化点が高くなり、エポキシ樹脂中に相溶しにくく、期待される難燃効果が得られない。dの比率は、0≦d≦0.15nであることが好ましい。
【0040】
X、Y、R1は上記の通りであり、R1は電子供与性の基である。電子供与基の置換がない場合、Yの求核性が低下するため、エポキシ基との反応性が低くなる。そのため、上記式(1)で表されるホスファゼン化合物の添加量を増やした場合、硬化性の低下、高温時の電気抵抗性低下が生じる。また硬化性が悪いと熱分解しやすいため、難燃性も低下する。また、R1が炭素数5以上のアルキル基、アルコキシ基において、炭素数が増加すると難燃性が低下する。従って、メチル基、メトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基が望ましい。
【0041】
なお、Xが単結合である場合、
【化4】

で表される。
【0042】
また、(E)成分であるホスファゼン化合物の添加量は、(A),(B),(E)成分の合計量100質量%に対し、1〜50質量%であることが好ましく、特に2〜20質量%が好ましい。添加量が1質量%未満では十分な難燃効果が得られない場合があり、また50質量%を超えると、流動性の低下を引き起こす場合がある。
【0043】
[(F)その他添加剤]
本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、上記各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、下記成分(a)〜(e)を配合することができる。
(a)硬化促進剤
本発明において、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるため、硬化促進剤を用いることが好ましい。この硬化促進剤は、硬化反応を促進させるものであれば特に制限はなく、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンの付加物などのリン系化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7などの第3級アミン化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物等を使用することができる。
硬化促進剤の配合量は有効量であるが、上記リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物等の硬化促進剤は、(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対し、0.1〜5質量部、特に0.5〜2質量部とすることが好ましい。配合量が0.1質量部未満であると硬化不良を引き起こす場合があり、5質量部を超えると硬化時間が短く、未充填を引き起こす場合がある。
【0044】
(b)離型剤
離型剤成分としては、例えばカルナバワックス、ライスワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、モンタン酸、モンタン酸と飽和アルコール、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−エタノール、エチレングリコール、グリセリン等とのエステル化合物であるモンタンワックス;ステアリン酸、ステアリン酸エステル、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられ、これら1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
離型剤の配合量としては、(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対して、0.1〜5質量部、更に好ましくは0.3〜4質量部であることが望ましい。
【0045】
(c)シランカップリング剤
本発明のエポキシ樹脂組成物には、組成物のなじみをよくするために、従来より公知の各種シランカップリング剤を添加することができる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましく、耐湿信頼性に優れ、吸湿劣化後の接着強度の低下が少ないエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0046】
上記カップリング剤を用いる場合、その使用量は、(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対して、通常0.1〜5質量部であり、好ましくは0.3〜3質量部である。
【0047】
(d)その他の難燃剤及びイオントラップ材
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、本発明の目的及び効果を発現できる範囲内において、難燃剤、例えば赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の無機化合物、及び他のイオントラップ材、例えばハイドロタルサイト化合物、リン酸ジルコニウム化合物、水酸化ビスマス化合物を添加することもできる。但し、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物は配合されない。
【0048】
難燃剤の配合量としては(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対して、3〜50質量部、更に好ましくは5〜20質量部であることが望ましい。
【0049】
他のイオントラップ材としては、特許第2501820号公報、特許第2519277号公報、特許第2712898号公報、特許第3167853号公報、特公平6−51826号公報、特開平9−118810号公報、特開平10−158360号公報、特開平11−240937号公報、特開平11−310766号公報、特開2000−159520号公報、特開2000−230110号公報、特許第2843244号公報等に記載されているものが使用されるが、特に、下記一般式で表されるハイドロタルサイト化合物が、半導体封止材料のイオントラップ材として数多くの使用例が挙げられていて好ましい。
MgxAly(OH)2x+3y+2z(CO32・mH2
(x,y,zはそれぞれ0<y/x≦1,0≦z/y<1.5なる関係を有し、mは整数を示す。)
ハイドロタルサイト化合物の配合量としては(A),(B),(E)成分の総量100質量部に対して、1〜30質量部、更に好ましくは2〜5質量部であることが望ましい。
【0050】
(e)その他
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、カーボンブラック等の着色剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0051】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機質充填剤、希土類酸化物、必要によりホスファゼン化合物、及びその他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。
【0052】
このようにして得られる本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、各種の半導体装置の封止用として有効に利用でき、この場合、封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の成形条件は150〜180℃で30〜180秒、後硬化は150〜180℃で2〜16時間行うことが望ましい。
【実施例】
【0053】
以下、ホスファゼン化合物の合成例、エポキシ樹脂組成物の実施例と比較例を示し、本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、式中のMeはメチル基を示す。
【0054】
[合成例A]
窒素雰囲気下、0℃で水素化ナトリウム8.6g(214mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール19.8g(211mmol)のTHF75ml溶液を滴下した。30分撹拌後、ヘキサクロロトリホスファゼン12.0g(34.5mmol)のTHF75ml溶液を滴下し、18時間加熱還流を行った。溶媒を減圧留去し、メタノールを加え、析出した結晶をメタノール、水で洗浄し、白色結晶を23.8g得た。
【0055】
【化5】

【0056】
[合成例B]
窒素雰囲気下、0℃で水素化ナトリウム4.6g(114mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール9.7g(104mmol)、4,4’−スルホニルジフェノール0.40g(1.7mmol)のTHF50ml溶液を滴下した。30分撹拌後、ヘキサクロロトリホスファゼン12.5g(36.0mmol)のTHF50ml溶液を滴下し、5時間加熱還流を行った。溶媒を減圧留去後、シクロヘキサン150ml、メチルヒドロキノン57.3g(345mmol)を加え、そこにピリジン27.3g(345mmol)を滴下した。18時間加熱還流した後、デカンテーションにより得られた下層の黄色シロップ状物を80%酢酸80mlに溶解し、水500mlに移して結晶を得た。その結晶をメタノールに溶かし、水に移して結晶を得た。この操作を水が中性になるまで繰返し、茶褐色結晶を25.8g得た。
【0057】
【化6】

【0058】
[実施例1〜7、比較例1〜5]
表1,2に示す成分を熱2本ロールにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。これらの組成物につき、次の(i)〜(iv)の諸特性を測定した。結果を表3,4に示した。
(i)流動性
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃、6.9N/mm2、成形時間120秒の条件でスパイラルフロー値を測定した。
(ii)抽出水イオン性不純物
50mmφ×3mmの円板を175℃、6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。この円板を175℃の雰囲気中1,000時間保管後、ディスクミルで粉砕し、粒径63μm〜212μmの粉砕物10gを純水50ml中に加え、125℃,20時間、可溶性のイオン性不純物を抽出した。ろ過液中のCl,PO4,NO3,HCOO,CH3COOイオン濃度をイオンクロマトグラフィーで、金属(La,Y,Gd,Bi,Mg,Al)イオン濃度をICP−AESで測定した。
(iii)耐熱性
5μm幅、5μm間隔のアルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを25μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を175℃、6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージ20個を175℃の雰囲気中−5Vの直流バイアス電圧をかけて1,000時間放置した後、抵抗値を測定し、その平均値を調べた。
(iv)耐湿性
5μm幅、5μm間隔のアルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを25μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を175℃、6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージ20個を130℃/85%RHの雰囲気中−20Vの直流バイアス電圧をかけて500時間放置した後、アルミニウム腐食が発生したパッケージ数を調べた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
(A)エポキシ樹脂:
(ア)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:EOCN1020−55(日本化薬(株)製、エポキシ当量200)
(イ)ビフェニル含有アラルキル型エポキシ樹脂:NC−3000(日本化薬(株)製、エポキシ当量272)
(B)硬化剤:
(ウ)フェノールノボラック樹脂:DL−92(明和化成(株)製、フェノール性水酸基当量110)
(エ)ビフェニル含有アラルキル型フェノール樹脂:MEH−7851SS(明和化成(株)製、フェノール性水酸基当量175)
(C)無機質充填剤:球状溶融シリカ((株)龍森製、平均粒径20μm)
(D)希土類酸化物:
酸化ランタン(III)(信越化学工業(株)製)、酸化イットリウム(III)(信越化学工業(株)製)、酸化ガドリニウム(III)(信越化学工業(株)製)
(F)その他添加剤
イオントラップ材:
IXE−500(東亞合成(株)製、BiO(OH)0.7(NO30.3
DHT−4A−2(協和化学(株)製、ハイドロタルサイト化合物)
難燃剤:ホスファゼン化合物、SPE−100(大塚化学(株)製)
硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学(株)製)
離型剤:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ(株)製)
カーボンブラック:デンカブラック(電気化学工業(株)製)
シランカップリング剤:KBM−403(信越化学工業(株)製、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
表3,4の結果から明らかなように、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、イオン性不純物が少なく、耐熱性、耐湿信頼性に優れる硬化物を得ることができ、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、耐熱性、耐湿信頼性に優れるものである。
【0065】
[実施例8〜12、比較例6〜9]
表5に示す成分を熱2本ロールにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。これらの組成物につき、次の(i)〜(v)の諸特性を測定した。結果を表5に併記した。
(i)成形硬度
JIS−K6911に準じて175℃、6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で10×4×100mmの棒を成形したときの熱時硬度をバーコール硬度計で測定した。
(ii)難燃性
UL−94規格に基づき、1/16インチ厚の板を、成形条件175℃、6.9N/mm2、成形時間120秒で成形し、180℃で4時間ポストキュアーしたものの難燃性を調べた。
(iii)抽出水イオン性不純物
50mmφ×3mmの円板を175℃、6.9N/mm2、成形時間90秒で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。この円板を175℃の雰囲気中1,000時間保管後、ディスクミルで粉砕し、粒径63μm〜212μmの粉砕物10gを純水50ml中に加え、125℃で20時間可溶性の化合物を抽出した。ろ過液中のリン酸イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで、金属イオン濃度をICP−AESで測定した。
(iv)耐湿性
5μm幅、5μm間隔のアルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを25μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を成形条件175℃、6.9N/mm2、成形時間120秒で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージ20個を130℃/85%RHの雰囲気中−20Vの直流バイアス電圧をかけて500時間放置した後、アルミニウム腐食が発生したパッケージ数を調べた。
(v)耐熱性
5μm幅、5μm間隔のアルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを25μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を成形条件175℃、6.9N/mm2、成形時間120秒で成形し、180℃で4時間ポストキュアーした。このパッケージ20個を175℃の雰囲気中−5Vの直流バイアス電圧をかけて1,000時間放置した後、抵抗値の平均値を調べた。
【0066】
【表5】

【0067】
(A)エポキシ樹脂:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN1020−55(日本化薬(株)製、エポキシ当量200)
(B)硬化剤:フェノールノボラック樹脂:DL−92(明和化成(株)製、フェノール性水酸基当量110)
(C)無機質充填剤:球状溶融シリカ((株)龍森製、平均粒径20μm)
(D)希土類酸化物:
酸化ランタン(III)(信越化学工業(株)製)、酸化イットリウム(III)(信越化学工業(株)製)、酸化ガドリニウム(III)(信越化学工業(株)製)
(F)その他添加剤
硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製)
離型剤:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ(株)製)
カーボンブラック:デンカブラック(電気化学工業(株)製)
シランカップリング剤:KBM−403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)
【0068】
表5の結果から明らかなように、本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、硬化性に優れると共に、難燃性、耐湿信頼性、耐熱性に優れる硬化物を得ることができ、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、難燃性、耐湿信頼性、耐熱性に優れるものである。しかも、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を樹脂組成物中に含有しないので、人体・環境に対する悪影響がないものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂硬化剤
(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤
中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5となる量、
(C)無機質充填剤
(A),(B)成分の総量100質量部に対し、400〜1,200質量部、
(D)希土類酸化物
(A),(B)成分の総量100質量部に対し、0.5〜20質量部
を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(D)希土類酸化物の添加量が、(A),(B)成分の総量100質量部に対し、2〜10質量部であることを特徴とする請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂硬化剤
(A)エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤
中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5となる量、
(C)無機質充填剤
(A),(B)成分及び下記(E)成分の総量
100質量部に対し、400〜1,200質量部、
(D)希土類酸化物
(A),(B)成分及び下記(E)成分の総量
100質量部に対し、0.5〜20質量部、
(E)下記平均組成式(1)で示されるホスファゼン化合物
(A),(B),(E)成分の合計量100質量%に対し、1〜50質量%、



[但し、Xは単結合、又はCH2、C(CH32、SO2、S、O及びO(CO)Oから選ばれる基であり、YはOH、SH又はNH2であり、R1は炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基、NH2、NR23並びにSR4から選ばれる基であり、R2,R3,R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。d,e,f,nは、0≦d≦0.25n、0≦e≦2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2n、3≦n≦1,000を満足する数である。]
を含むことを特徴とする半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
臭素化物及びアンチモン化合物を実質的に含まないことを特徴とする請求項3記載の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(D)希土類酸化物が、酸化ランタン、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化ツリウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化エルビウム、酸化テルビウム、酸化プラセオジウム、酸化ジスプロジウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ホルミウムから選択される1種又は2種以上のものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
更に、硬化促進剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
更に、離型剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
更に、シランカップリング剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。

【公開番号】特開2006−89717(P2006−89717A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200137(P2005−200137)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】