説明

半導体発光素子、及び半導体発光素子を作製する方法

【課題】I−Lカーブの温度変換を低減可能な半導体発光素子を提供する。
【解決手段】伝搬定数同調コア23は活性導波路コア25に中間半導体層21を介して光学的に結合される。導波路コア17は例えば伝搬定数同調コア23を含み、導波路コア19は活性導波路コア25を含む。伝搬定数同調コア23に係るフォトルミネセンス波長は活性層27に係るフォトルミネセンス波長より短い。活性導波路コア25に係る分散特性は伝搬定数同調コア23に係る分散特性と異なる。活性導波路コア25における光伝搬に係る位相速度は、ある波長で、伝搬定数同調コア23における光伝搬に係る位相速度に等しくなる。活性導波路コア25及び伝搬定数同調コア23における位相速度に等しくなる波長でレーザ発振が生じる。導波路コア17、19の端面はそれぞれ基準面R1、R2に沿って延在し、第1の基準面R1は第2の基準面R2に対して傾斜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、及び半導体発光素子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体集積化素子が記載されている。半導体集積化素子は、n型InP基板上に、分布帰還のための回折格子、アンドープInGaAsPガイド層、p型InP中間層、アンドープInGaAsP活性層、及びn型InPクラッド層を含む。
【0003】
特許文献2には、分布帰還(DFB)型レーザが記載されている。DFB型レーザでは、光学利得ピーク波長λgとDFB発振波長λLDとの関係△G(=λg−λLD)が、レーザの動作温度の変化に従って異なるものになる。このため、動作温度の変化に伴うしきい値電流の変化が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−286587号
【特許文献2】特開平7−249829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように分布帰還型半導体レーザでは、動作温度の変化に伴うしきい値電流の変化が大きい。これは、レーザの動作温度の変化に伴って、レーザのI−Lカーブが大きく変化することを示している。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、I−Lカーブの温度変化を低減可能な半導体発光素子を提供することを目的とし、また、この半導体発光素子を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体発光素子は、(a)第1導電型クラッド領域と、(b)前記第1導電型クラッド領域の主面上に設けられた第2導電型クラッド領域と、(c)前記第1導電型クラッド領域と前記第2導電型クラッド領域との間に設けられた第1の導波路コアと、(d)前記第1導電型クラッド領域と前記第2導電型クラッド領域との間に設けられた第2の導波路コアと、(e)前記第1の導波路コアと前記第2の導波路コアとの間に設けられた中間半導体層と、(f)導波路軸の方向に延在する電極とを備える。前記半導体領域は、前記第1導電型クラッド領域、前記第1の導波路コア、前記中間半導体層、前記第2の導波路コア、及び前記第2導電型クラッド領域を含み、前記電極は前記半導体領域上に設けられ、前記第1の導波路コアの端面は第1の基準面に沿って延在しており、前記第2の導波路コアの端面は第2の基準面に沿って延在しており、前記第1の基準面は前記第2の基準面に対して傾斜し、前記導波路軸は、当該半導体発光素子の一端から他端への方向に延在し、前記第2の導波路コアの前記端面における内向き法線は、前記第2の導波路コアの前記端面における前記導波路軸の接線に対してゼロより大きく直角より小さい角度で傾斜しており、前記第1の導波路コアは伝搬定数同調コア及び活性導波路コアのいずれか一方を含み、前記第2の導波路コアは前記伝搬定数同調コア及び前記活性導波路コアのいずれか他方を含み、前記中間半導体層は、前記活性層にキャリアを閉じ込めるように設けられ、前記活性導波路コアは、前記第1導電型クラッド領域及び前記第2導電型クラッド領域からのキャリアの注入により光を発生する活性層を含み、前記伝搬定数同調コアに係るフォトルミネセンス波長は、前記活性層に係るフォトルミネセンス波長より短く、前記活性導波路コアに係る第1の分散曲線は、前記伝搬定数同調コアに係る第2の分散曲線と異なり、前記活性導波路コアにおける光伝搬に係る位相速度は、ある波長で前記伝搬定数同調コアにおける光伝搬に係る位相速度に等しくなり、前記伝搬定数同調コアは前記活性導波路コアに前記中間半導体層を介して光学的に結合される。
【0008】
この半導体発光素子において、活性導波路コアに係る第1の分散曲線は、伝搬定数同調コアに係る第2の分散曲線と異なると共に、活性導波路コアにおける光伝搬に係る位相速度は、あるクロス波長で伝搬定数同調コアにおける光伝搬に係る位相速度に等しい。このクロス波長の付近でレーザ発振が生じる。レーザ発振特性は、クロス波長の付近における光学利得に関連する。また、クロス波長は、半導体層の屈折率の温度特性に依存する。これによって、発振波長の温度特性を調整可能な半導体発光素子が提供される。
【0009】
この半導体発光素子では、活性導波路コアは、キャリアの注入により光を発生する活性層を含み、活性層は波長により変化する光学利得を有する。この光学利得のピークを示すピーク波長は、温度依存性を示す。
【0010】
この半導体発光素子と異なる分布帰還型半導体レーザでは、分布帰還のための回折格子は、該回折格子を構成する半導体層の熱膨張に係る変形に起因した温度特性を示す。分布帰還型半導体レーザにおけるレーザ発振波長の温度特性は、回折格子構造のための半導体層の熱膨張係数と光学利得のピーク波長の温度変化とによって規定される。
【0011】
当該半導体発光素子では、クロス波長の温度特性は2つの分散曲線に傾きによって調整でき、光学利得のピーク波長は、活性層の構造により調整できる。このため、当該半導体発光素子におけるI−Lカーブの温度変換を低減できる。
【0012】
第1及び第2の導波路コアの端面はそれぞれ第1及び第2の基準面に沿って延在しており、第1の基準面は第2の基準面に対して傾斜する。第2の導波路コアの端面における内向き法線は、この端面における導波路軸の接線に対してゼロより大きく直角より小さい角度で傾斜している。これらの傾斜によれば、第2の導波路コアにおける反射光が導波路軸の方向に戻ることを低減できる。
【0013】
本発明に係る半導体発光素子は、前記半導体領域を搭載する主面を有する基板を更に備えることができる。前記第1導電型クラッド領域、前記第1の導波路コア、前記中間半導体層、前記第2の導波路コア、及び前記第2導電型クラッド領域は、前記主面の法線軸の方向に順に配列され、前記半導体領域は、前記第2の導波路コア及び前記第2導電型クラッド領域を含む半導体メサのストライプ構造を有し、前記第2の導波路コアの前記端面は、前記基板の前記主面に平行な平行平面内において前記導波路軸に直交する直交平面に対して傾斜している。
【0014】
この半導体発光素子によれば、半導体メサにより電流の閉じ込めが可能になる。また、第2の導波路コアの端面が平行平面内において直交平面に対して傾斜するので、反射光が導波路軸の方向に戻ることを低減でき、ファブリペローモードの発振が活性化されることを抑制できる。
【0015】
本発明に係る半導体発光素子では、前記活性導波路コアは、活性層と該活性層より低い屈折率の第1の光閉じ込め層とを含むことができ、前記伝搬定数同調コアは、受動コア層と該受動コア層より低い屈折率の第2の光閉じ込め層とを含むことができる。前記伝搬定数同調コアにおける前記第2の光閉じ込め層と前記受動コア層との屈折率差は、前記活性導波路コアにおける前記活性層と前記第1の光閉じ込め層との屈折率差より小さい。前記中間半導体層の屈折率は、前記第1の光閉じ込め層、前記活性層、前記第2の光閉じ込め層及び前記受動コア層の屈折率より小さい。
【0016】
この半導体発光素子によれば、活性層と第1の光閉じ込め層とを利用して活性導波路コアにおいて所望の屈折率差を設定でき、第2の光閉じ込め層と受動コア層とを利用して伝搬定数同調コアにおいて所望の屈折率差を設定できる。これらによって、互いに異なる分散曲線を伝搬定数同調コア及び活性導波路コアに提供できる。
【0017】
本発明に係る半導体発光素子では、前記伝搬定数同調コアの導電型は前記中間半導体層の導電型と同じであることができる。この半導体発光素子によれば、伝搬定数同調コア及び中間半導体層を介して、活性層にキャリアを提供できる。
【0018】
本発明に係る半導体発光素子では、前記活性層は、III族構成元素としてアルミニウムを含むAl系III−V化合物半導体からなり、前記伝搬定数同調コアはGaInAsP系半導体からなることができる。この半導体発光素子によれば、好適な実施例を提供できる。
【0019】
本発明に係る半導体発光素子では、前記中間半導体層の材料は、前記第1導電型クラッド領域及び前記第2導電型クラッド領域の少なくともいずれか一方と同じであることができる。この半導体発光素子によれば、中間半導体層は、2つのコア間に好適な光結合を提供できると共に、所望導電型のキャリアを活性層に供給できる。
【0020】
本発明に係る半導体発光素子では、前記活性導波路コアにおける実効屈折率差(△n_a)と前記伝搬定数同調コアにおける実効屈折率差(△n_p)との屈折率差(△n_a−△n_p)は0.25より大きいことが良い。
【0021】
本発明に係る半導体発光素子では、前記第1及び第2の導波路コアのいずれかの前記端面において、前記内向き法線は前記導波路軸の前記接線に対して20度以上の角度で傾斜していることが好ましい。この半導体発光素子によれば、端面における反射を十分に低減可能である。
【0022】
本発明に係る半導体発光素子では、前記第2の導波路コアの前記端面の反対側の別の端面における内向き法線は、前記別の端面における前記導波路軸の接線に対してゼロより大きく直角より小さい角度で傾斜していることが好ましい。この半導体発光素子によれば、一方の端面の傾斜に加えて他方の端面の傾斜により、ファブリペローモードの発振が活性化されることをさらに低減できる。
【0023】
また、第2の端面において、前記内向き法線は前記導波路軸の前記接線に対して20度以上の角度で傾斜していることが好ましい。この半導体発光素子によれば、第2の端面における反射を十分に低減可能である。
【0024】
本発明の別の側面に係る発明は、半導体発光素子を作製する方法である。この方法は、(a)第1の分散曲線を提供する活性導波路コアの構造と、前記第1の分散曲線と異なる第2の分散曲線を提供する伝搬定数同調コアの構造とを、前記活性導波路コアにおける光伝搬に係る位相速度がある波長で前記伝搬定数同調コアにおける光伝搬に係る位相速度に等しくなるように決定する工程と、(b)第1導電型クラッド領域上に、第1の導波路コア、中間半導体層、第2の導波路コア、及び第2導電型クラッド領域を基板上に順に成長して、半導体領域を形成する工程と、(c)前記半導体領域から、導波路軸の方向に延在する電極を含む基板生産物を形成する工程と、(d)前記基板生産物をエッチングして、前記導波路軸に直交する平面に対して傾斜した端面を前記第2の導波路コアに形成する工程とを備える。前記基板生産物の前記電極は、前記活性層にキャリアを供給するように設けられる。前記第1の導波路コアは前記伝搬定数同調コア及び前記活性導波路コアのいずれか一方を含み、前記第2の導波路コアは前記伝搬定数同調コア及び前記活性導波路コアのいずれか他方を含み、前記活性導波路コアは、キャリアの注入により光を発生する活性層を含み、前記中間半導体層は、前記活性層にキャリアを閉じ込めるように設けられ、前記伝搬定数同調コアに係るフォトルミネセンス波長は、前記活性層に係るフォトルミネセンス波長より短く、前記伝搬定数同調コアは前記活性導波路コアに前記中間半導体層を介して光学的に結合される。
【0025】
この作製方法によれば、活性導波路コアに係る第1の分散曲線は伝搬定数同調コアに係る第2の分散曲線と異なると共に、活性導波路コアにおける光伝搬に係る位相速度は、あるクロス波長で伝搬定数同調コアにおける光伝搬に係る位相速度に等しくなる。このクロス波長の付近でレーザ発振が生じる。レーザ発振特性は、クロス波長の付近における光学利得に関連する。また、クロス波長は、2種類のコアにおける半導体層の屈折率の温度特性に依存する。活性導波路コアは、キャリアの注入により光を発生する活性層を含み、これ故に、活性層は、波長により変化する光学利得を有する。この光学利得のピークを示すピーク波長は、温度依存性を示す。
【0026】
この製造方法によれば、クロス波長の温度特性は2つの分散曲線に傾きによって調整でき、光学利得のピーク波長は、活性層の構造により調整できる。このため、当該半導体発光素子におけるI−Lカーブの温度変化を低減できる。
【0027】
この製造方法によれば、基板生産物をエッチングして、導波路軸に直交する平面に対して傾斜した端面を前記第2の導波路コアに形成する。この傾斜によれば、第1の端面における反射光が導波路軸の方向に戻ることを低減できる。
【0028】
本発明に係る製造方法では、前記活性層はIII−V化合物半導体からなると共に、前記伝搬定数同調コアはIII−V化合物半導体からなり、前記活性層の前記III−V化合物半導体は、前記伝搬定数同調コアのIII−V化合物半導体と異なることができる。この作製方法によれば、2つのコアにおける分散曲線の設定が容易になる。
【0029】
本発明に係る製造方法では、前記基板は第1導電型InP基板を含み、前記第1導電型クラッド領域は第1導電型InP層を含み、前記中間半導体層はInP層を含み、前記第2導電型クラッド領域は第2導電型InP層を含むことができる。
【0030】
この作製方法によれば、中間半導体層は、2つのコア間に好適な光結合を形成できると共に、活性層にキャリアの閉じ込めを可能な構造を形成できる。
【0031】
本発明に係る製造方法では、前記活性導波路コアは、前記活性層の屈折率より低い屈折率の第1の光閉じ込め層とを含み、前記伝搬定数同調コアは、受動コア層と該受動コア層より低い屈折率の第2の光閉じ込め層とを含むことができる。前記伝搬定数同調コアにおける前記第2の光閉じ込め層と前記受動コア層との屈折率差は、前記活性導波路コアにおける前記活性層と前記第1の光閉じ込め層との屈折率差より小さい。前記中間半導体層の屈折率は、前記第1の光閉じ込め層、前記活性層、前記第2の光閉じ込め層及び前記受動コア層の屈折率より小さい。前記伝搬定数同調コアにおける前記第2の光閉じ込め層と前記受動コア層との屈折率差は、前記活性導波路コアにおける前記活性層と前記第1の光閉じ込め層との屈折率差より小さい。
【0032】
この作製方法によれば、活性層と第1の光閉じ込め層とを利用して活性導波路コアに所望の屈折率差を提供でき、第2の光閉じ込め層と受動コア層とを利用して伝搬定数同調コアに所望の屈折率差を提供できる。伝搬定数同調コアの分散曲線と活性導波路コアの分散曲線が所望のクロス波長に提供できる。
【0033】
本発明に係る製造方法では、前記活性導波路コアにおける実効屈折率差(△n_a)と前記伝搬定数同調コアにおける実効屈折率差(△n_p)との屈折率差(△n_a−△n_p)が0.25より大きくなるように、前記活性導波路コアの構造及び前記伝搬定数同調コアの構造を決定できる。
【0034】
この作製方法によれば、単一モード発振が可能な半導体発光素子を作製できる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、I−Lカーブの温度変換を低減可能な半導体発光素子が提供される。また、本発明の別の側面によれば、I−Lカーブの温度変換を低減可能な半導体発光素子を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本実施の形態に係る半導体発光素子の構造を模式的に示す図面である。
【図2】図2は、図1に示されたI−I線に沿ってとられた断面を模式的に示す図面である。
【図3】図3は、活性導波路コア及び伝搬定数同調コアに係る分散曲線と波長との関係を示す図面である。
【図4】図4は、活性導波路コア及び伝搬定数同調コアの構造及び屈折率分布を示す図面である。
【図5】図5は、活性導波路コアにおける実効屈折率差(△n_a)と伝搬定数同調コアにおける実効屈折率差(△n_p)との屈折率差(△n_a−△n_p)とクロス波長領域△λ_coupleとの関係を示す図面である。
【図6】図6は、比較のための分布帰還型半導体レーザにおけるI−L特性の温度依存性を示す図面である。
【図7】図7は、本実施の形態に係る一実施例の半導体レーザにおけるI−L特性の温度依存性を示す図面である。
【図8】図8は、比較のための分布帰還型半導体レーザにおける発振スペクトル(摂氏20度、摂氏80度)を示す図面である。
【図9】図9は、本実施の形態に係る半導体レーザにおける発振スペクトル(摂氏20度、摂氏80度)を示す図面である。
【図10】図10は、活性層付近に閉じ込められるモードの反射率と端面の傾斜角との関係を示す図面である。
【図11】図11に、本実施の形態に例における端面傾斜としきい値電流Ithとの関係を示す図面である。
【図12】図12は、本実施の形態に係る半導体光素子の一実施例におけるデバイス構造を示す図面である。
【図13】図13は、本実施の形態に係る半導体光素子の一実施例におけるデバイス構造を示す図面である。
【図14】図14は、本実施の形態に係る半導体光素子の一実施例におけるデバイス構造を示す図面である。
【図15】図15は、本実施の形態に係る半導体発光素子を作製する方法における主要な工程を示す工程フローを示す図面である。
【図16】図16は、本実施の形態に係る半導体発光素子を作製する方法における主要な工程を示す工程フローを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の半導体発光素子、及び半導体発光素子を作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0038】
図1は、本実施の形態に係る半導体発光素子の構造を模式的に示す図面である。図2は、図1に示されたI−I線に沿ってとられた断面を模式的に示す図面である。半導体発光素子11は、第1導電型クラッド領域13と、第2導電型クラッド領域15と、第1の導波路コア17と、第2の導波路コア19と、中間半導体層21とを備える。第2導電型クラッド領域15は、第1導電型クラッド領域13の主面13a上に設けられる。第1の導波路コア17は、第1導電型クラッド領域13と第2導電型クラッド領域15との間に設けられる。半導体発光素子11は第1及び第2の端面11a、11bを有し、端面11aは端面11bの反対側にある。図2では、第1の端面11aから第2の端面11bまで延在する第1の導波路コア17の延在軸に沿って取られた断面を示す。第2の導波路コア19は、例えば第1の端面11aから第2の端面11bまで延在する。
【0039】
第1の導波路コア17は伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25のいずれか一方を含み、第2の導波路コア19は伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25のいずれか他方を含む。本実施例では、第1の導波路コア17は例えば伝搬定数同調コア23を含み、第2の導波路コア19は活性導波路コア25を含む。第2の導波路コア19は、第1導電型クラッド領域13と第2導電型クラッド領域15との間に設けられる。中間半導体層21は、第1の導波路コア17と第2の導波路コア19との間に設けられる。活性導波路コア25は活性層27を含み、この活性層27は、第1導電型クラッド領域13及び第2導電型クラッド領域15からのキャリアの注入により光を発生する。中間半導体層21は、活性層27にキャリアを閉じ込めるように設けられる。伝搬定数同調コア23に係るフォトルミネセンス波長は活性層27に係るフォトルミネセンス波長より短い。伝搬定数同調コア23は活性導波路コア25に中間半導体層21を介して光学的に結合される。
【0040】
第1導電型クラッド領域13は、基板29上に設けられる。基板29は、半導体領域を搭載する主面29aと、裏面29bを含み、基板29は導電性を有する。本実施例では、基板29は半導体基板であることができる。半導体層13,17、21、19、15は基板29の主面29aの法線軸の方向に配置されている。
【0041】
この半導体発光素子11は、活性導波路コア25は、キャリアの注入により光を発生する活性層27を含む。活性層27は、波長により変化する光学利得を有しており、この光学利得は温度依存性を有する。この光学利得のピークを示すピーク波長は、温度の上昇に伴い長波長に移動する温度依存性を示し、また光学利得のピーク強度は温度の上昇に伴い低下する。
【0042】
半導体発光素子11では、第1及び第2の導波路コア17、19は導波路軸Axに沿って延在し、この導波路軸Axは、第1及び第2の端面11a、11bの一方(一端)から第1及び第2の端面11a、11bの他方(他端)への方向に延在する。図1の(b)部に示されるように、第1の端面11aにおける内向き法線NIxは、第1の端面11aにおける導波路軸Axの接線に対してゼロより大きく直角より小さい角度TH1で傾斜する。
【0043】
半導体発光素子11では、第1及び第2の導波路コア17、19の端面11c、11aはそれぞれ第1及び第2の基準面R1、R2に沿って延在する。第1の基準面R1は第2の基準面R2に対して傾斜しており、本実施例では、傾斜角は角度TH1である。これらの傾斜によれば、第2の導波路コア19の端面11aにおける反射光が導波路軸の方向に戻ることを低減できる。
【0044】
また、半導体発光素子11では、第1の端面11aが導波路軸Axに直交する面に対して角度TH1で傾斜しているけれども、図1の(c)部に示される半導体発光素子12aは、第1の端面11aの反対側の端面11dが導波路軸Axに直交する面に対して角度TH2で傾斜していることもできる。この傾斜によれば、端面11dにおける反射光が導波路軸Axの方向に戻ることを低減できる。
【0045】
活性導波路コア25に係る分散特性は、例えば1.3μm波長帯、1.55μm波長帯といった波長帯において伝搬定数同調コア23に係る分散特性と異なる。これ故に、活性導波路コア25に係る第1の分散特性は、伝搬定数同調コア23に係る第2の分散特性と異なるものになる。活性導波路コア25における光伝搬に係る位相速度は、ある波長(「クロス波長」と呼ぶ)で伝搬定数同調コア23における光伝搬に係る位相速度に等しくなる。
【0046】
図3の(a)部に示されるように、活性導波路コア25に係る第1の分散曲線DS1の傾きは伝搬定数同調コア23に係る第2の分散曲線DS2の傾きと異なる。活性導波路コア25における光伝搬に係る伝搬定数の波長依存性は、伝搬定数同調コア23における光伝搬に係る伝搬定数の波長依存性と異なる。第1及び第2の分散曲線DS1、DS2で示されるように、活性導波路コア25における光伝搬に係る位相速度は、ある波長領域△λCで伝搬定数同調コア23における光伝搬に係る位相速度にコア間で光結合が生じるのに十分なほど近くなる。
【0047】
図3の(b)部に示されるように、第1及び第2の分散曲線DS1、DS2の交差点は、温度の上昇に応答して長波長へ移動する。つまり、発光波長λCは、半導体層の屈折率の温度特性に依存する。
【0048】
光学的に結合された活性導波路コア25及び伝搬定数同調コア23の分散関係には光学モードの組み換えが生じる。結合された活性導波路コア25及び伝搬定数同調コア23の分散関係において、クロス波長領域△λ_couple内のクロス波長λCの付近でレーザ発振が生じる。レーザ発振特性は、クロス波長λCの付近における光学利得に関連する。クロス波長領域△λ_coupleにおいては活性導波路コア25と伝搬定数同調コア23との光学的結合が、クロス波長領域△λ_coupleと異なる波長領域における光学的結合に比べて強くなり、モード利得が、当該半導体発光素子11の総損失(例えばミラー損失及び内部損失)に比べて大きくなり、この結果、クロス波長領域△λ_couple内のある波長でレーザ発振が生じる。このとき、活性層において発生された光は、第1の端面11aと第2の端面11bとの間の導波路を伝搬する。
【0049】
この半導体発光素子11と異なる分布帰還型半導体レーザでは、特許文献2においても説明されるように、分布帰還のための回折格子は、該回折格子を構成する半導体層の熱膨張に係る変形に起因した温度特性を示す。分布帰還型半導体レーザにおけるレーザ発振波長の温度特性は、分布帰還型回折格子のための半導体層の熱膨張係数と光学利得のピーク波長の位置とによって規定される。一方、半導体発光素子11は、分布帰還型半導体レーザのような発振波長を直接に決定する分布帰還型回折格子を含まない。
【0050】
当該半導体発光素子11では、クロス波長λCの温度特性は2種の分散曲線に傾きによって調整でき、光学利得は、活性層27の材料及び構造により調整できる。この調整により、当該半導体発光素子におけるI−Lカーブの温度変化を低減できる。
【0051】
図1を再び参照すると、半導体発光素子11は、第2導電型クラッド領域15上に設けられた第2導電型のコンタクト層31を含むことができる。コンタクト層31上には、絶縁膜33が設けられ、この絶縁膜33は、電流注入領域を規定する開口33aを含む。コンタクト層31及び絶縁膜33上には電極(例えばアノード)35が設けられ、電極37は開口33aを介してコンタクト層31に接続される。また、基板29の裏面29b上には、電極(例えばカソード)39が接続され、本実施例では電極37は基板29の裏面29aの全面に設けられる。
【0052】
本実施例では、図1に示されるように、基板29の主面29a上に、第1導電型クラッド層29、伝搬定数同調コア23、中間半導体層21、活性導波路コア25、第2導電型クラッド領域15及びコンタクト層31が順に配列されている。しかしながら、伝搬定数同調コア23の位置が活性導波路コア25の位置と入れ替えられることができる。
【0053】
図4に示されるように、半導体発光素子11では、活性導波路コア25は、活性層27と第1の光閉じ込め層39とを含むことができ、活性層27は第1の光閉じ込め層39の間に設けられる。第1の光閉じ込め層39の屈折率は、活性層27の屈折率より低い。
【0054】
伝搬定数同調コア23は、受動コア層41と第2の光閉じ込め層43とを含むことができ、受動コア層41は第2の光閉じ込め層43の間に設けられる。第2の光閉じ込め層43の屈折率n43は受動コア層41の屈折率n_pより低い。伝搬定数同調コア23における第2の光閉じ込め層43の屈折率n43と受動コア層41の屈折率n_pとの屈折率差△n_p(=n_p−n43)は、活性導波路コア25における活性層27の屈折率n_aと第1の光閉じ込め層39の屈折率n39との屈折率差△n_a(=n_a−n39)より小さい。中間半導体層21の屈折率n21は、第1の光閉じ込め層39の屈折率n39、活性層27の屈折率n_a、受動コア層41の屈折率n_p、及び第2の光閉じ込め層43の屈折率n43より小さい。
【0055】
この半導体発光素子11によれば、第2の光閉じ込め層43と受動コア層41とを利用して伝搬定数同調コア23において所望の屈折率差(△n_p)を設定でき、活性層27と第1の光閉じ込め層39とを利用して活性導波路コア25において所望の屈折率差(△n_a)を設定できる。これらの屈折率差によって、伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25に互いに異なる分散曲線を提供できる。
【0056】
半導体発光素子11では、中間半導体層の材料21は、第1導電型クラッド領域13及び第2導電型クラッド領域15の少なくともいずれか一方と同じであることができる。中間半導体層21は、2つのコア間に好適な光結合を提供できると共に、活性層27にキャリアを提供できる。
【0057】
また、伝搬定数同調コア23の導電型は中間半導体層21の導電型と同じであることができる。伝搬定数同調コア23及び中間半導体層21を介して、活性層27にキャリアを提供できる。活性導波路コア25を挟むクラッド領域及び中間半導体層21の導電型は互いに異なる。伝搬定数同調コア23を挟むクラッド領域及び中間半導体層21の導電型は同一である。一実施例では、クラッド領域15、活性導波路コア25、中間半導体層21及び伝搬定数同調コア23、クラッド領域15の導電型の配列は、例えばp−ud−n−n―nであることができ、或いは例えばn−ud−p−p―pであることができる。「ud」はアンドープを示す。
【0058】
活性層27はIII−V化合物半導体からなると共に、伝搬定数同調コア23はIII−V化合物半導体からなる。活性層27のIII−V化合物半導体は伝搬定数同調コア23のIII−V化合物半導体と異なることができ、これにより2つのコアにおける分散曲線の設定が容易になる。好適な実施例では、活性層27は、III族構成元素としてアルミニウムを含むAl系III−V化合物半導体からなることができ、例えばAlGaInAsからなることができる。また、伝搬定数同調コア23はGaInAsP系半導体からなることができる。活性層27は例えば量子井戸構造を有するでき、また受動コア層41は例えば単一半導体層からなることができる。
【0059】
半導体発光素子11では、基板29は第1導電型InP基板を含み、第1導電型クラッド領域13は第1導電型InP層を含み、中間半導体層21は第1導電型又は第2導電型InP層を含み、第2導電型クラッド領域15は第2導電型InP層を含むことができる。この組み合わせによれば、中間半導体層21は、2つのコア間に好適な光結合を形成できると共に、活性層27にキャリアの閉じ込めを可能な構造を形成できる。中間半導体層21の厚さは例えば500nm以上であることができ、単一モード発振となるようスペクトル幅を狭くできるからである。また、中間半導体層21の厚さは例えば2μm以下であることができ、レーザ発振するのに十分な光結合が得られるからである。
【0060】
半導体発光素子11においては、電流閉じ込めのための構造として、リッジ型、埋め込みメサ型等の構造を有することができる。
【0061】
半導体発光素子11の構造の一例は以下のものであり、元素記号の後の丸カッコ内に記載された数字は、該元素の組成を示す。
共振器長:200μm(半導体発光素子の端面間隔により規定される)。
p側電極長:150μm。
リッジ高さ:2μm。
エッチングストップ層:30nm、p型AlInAs層。
活性導波路コアの構造。
上部閉じ込め層:80nm、p型Al(0.40)Ga(0.08)In(0.52)As。
活性層の障壁層:10nm(9層)、アンドープAl(0.32)Ga(0.16)In(0.52)As。
活性層の井戸層:5nm(8層)、アンドープAl(0.16)Ga(0.11)In(0.73)As。
下部閉じ込め層:100nm、n型Al(0.40)Ga(0.08)In(0.52)As。
中間半導体層:1.26μm、n型InP。
伝搬定数同調コアの構造。
上部閉じ込め層:1.5μm、n型In(0.90)Ga(0.10)As(0.21)P(0.79)。
受動導波路:1.0μm、n型In(0.80)Ga(0.20)As(0.43)P(0.57)。
下部閉じ込め層:2.0μm、n型In(0.90)Ga(0.10)As(0.21)P(0.79)。
クラッド層:0.5μm、n型InP。
基板:n型InP基板。
【0062】
図5は、上記のモデルにおいて活性導波路コアにおける実効屈折率差(△n_a)と伝搬定数同調コアにおける実効屈折率差(△n_p)との屈折率差(△n_a−△n_p)とクロス波長領域△λ_coupleとの関係を示す。図5において、クロス波長領域△λ_coupleの波長幅は、クロス波長における実効屈折率差に対して−0.00005〜+0.00005の範囲として規定される。屈折率差(△n_a−△n_p)は、伝搬定数同調コア23と活性導波路コア25との間の構造の非対称性を表している。図5によれば、この非対称性が強まるに伴って、クロス波長領域△λ_coupleの幅が小さくなる。このため、単一モード発振が容易になる。
【0063】
実効屈折率差(△n_a)と実効屈折率差(△n_p)との差を示す屈折率差(△n_a−△n_p)は0.25より大きいことが良い。この値の範囲であるとき、例えば半導体発光素子11におけるフリースペクトラルレンジ(FSR)をクロス波長領域△λ_coupleの波長幅より大きくできる。半導体発光素子11は、実効屈折率差(△n_a)は例えば0.3程度の値である。FSRは、2つの端面11a、11bに亘って延在する第1の導波路コア17における実効光学長によって規定される。必要な場合には、第1の導波路コア17の両端には、第1の導波路コア17の端面における反射率を調整する反射調整膜を設けることができる。この反射調整膜の反射率は例えば81%であり、この程度の反射率は誘電体多層膜のコーティングにより提供される。
【0064】
図6は、比較のための分布帰還型半導体レーザにおけるI−L特性の温度依存性を示す図面である。図7は、本実施の形態に係る一実施例の半導体レーザにおけるI−L特性の温度依存性を示す図面である。図6及び図7を比較すると、本実施の形態に係る半導体レーザ(1.3μm波長帯)におけるI−L特性の温度依存性は、分布帰還型半導体レーザに比べて小さい。例えば、半導体発光素子のレーザ発振波長の光パワーの温度特性は、DFBレーザより小さい摂氏20度から摂氏80度の範囲において60mA以下の電流印加時に1mW以下の変化量にできる。
【0065】
図8は、比較のための分布帰還型半導体レーザにおける発振スペクトル(摂氏20度、摂氏80度)を示す図面である。図9は、本実施の形態に係る半導体レーザにおける発振スペクトル(摂氏20度、摂氏80度)を示す図面である。図8における分布帰還型半導体レーザのスペクトルでは、上記の温度変化にと伴って光出力の変化が大きい(例えば、温度の上昇に伴って0.25倍)。一方、本実施の形態に係る半導体レーザのスペクトルでは、上記の温度変化にと伴って光出力の変化が小さい(例えば、温度の上昇に伴って0.9倍)。
【0066】
発明者の実験によるしきい値電流の温度依存性の一例を示す。摂氏20度から摂氏80度の温度範囲で、しきい値電流の変化は16.4mAから19.1mAであり、この変化は15%以下に抑えられている。
【0067】
次いで、端面の傾斜によって提供される技術的寄与を説明する。図10は、活性層付近に閉じ込められるモードの反射率と端面の傾斜角との関係をシミュレーションにより求めた結果を示す。端面が、光導波路と直交する方向に延在するとき、つまり端面の傾斜の角度がゼロ度であると定義している。傾斜角が5度を超えるとき、反射率が0.8%程度まで低下できる。傾斜角が10度であるとき、反射率が0.65%程度まで低下できる。傾斜角が20度であるとき、反射率はほぼゼロ程度まで低下できる。傾斜20度以上では反射率はほぼ0に抑えられる。傾斜0度では、導波光は端面で反射されて導波路に戻る。しかしながら、傾斜20度以上の場合には屈折によりレーザ外部に放射される。
【0068】
図11に、本実施の形態に例における端面傾斜としきい値電流Ithとの関係を示す図面である。端面傾斜20度を有する素子構造におけるしきい値電流Ith及び端面傾斜なし(ゼロ度)の構造におけるしきい値電流Ithの温度依存性を示す。素子構造では、摂氏20度〜摂氏80度の温度範囲でIthの変動幅R1は5mA以下に低減される。一方、傾斜無しの構造では摂氏20度〜摂氏80度の温度範囲でしきい値Ithの変動幅R2は18mA以上である。傾斜ゼロの構造では活性層両端の反射率が高いので、測定した全温度にわたってファブリーペローモードがレーザ発振に寄与しているのに対し、提案構造では端面の反射率が低減されるので、ファブリーペローモードによる発振が抑制される。その結果、しきい値電流のばらつき幅が低減されている。例えば摂氏20度〜摂氏80度の温度範囲では、本実施の形態において説明した結合モードが発振するので、上記のばらつき低減が可能になった所望の動作が得られていると考えられる。
【0069】
端面にはHR多層膜が形成される。端面多層膜の構成を以下に示す。傾斜端面における多層膜の膜厚を見積もることが容易にでないので、以下の膜厚は傾斜のない端面における成膜値が示される。発明者の知見によれば、膜厚はこの値よりも減少する。このHR多層膜は、半導体端面側から順に配列された下記5層により構成される。
Al:95nm。
SiO:160nm。
Si:95nm。
SiO:225nm。
Si:95nm。
共振器長は以下のもの。
200μm(傾斜しない半導体領域における端面間隔)。
180μm(傾斜20度の場合の活性層における端面間隔)。
200μm(伝搬定数同調層における端面間隔)。
上部閉じ込め層:80nm、p型Al(0.40)Ga(0.08)In(0.52)As。
活性層の構造。
障壁層:10nm×9、アンド−プAl(0.32)Ga(0.16)In(0.62)As。
井戸層:5nm×8、アンド−プAl(0.16)Ga(0.11)In(0.73)As。
下部閉じ込め層:100nm、n型Al(0.40)Ga(0.08)In(0.52)As。
中間層:1.26μm、n型InP。
クラッド層:1.5μm、n型In(0.90)Ga(0.10)As(0.21)P(0.79)。
伝搬定数同調層:1.0μm、n型In(0.80)Ga(0.20)As(0.43)P(0.57)。
クラッド層:0.5μm、n型InP。
基板:n型InP。
【0070】
本実施の形態は、図1に示された構造に限定されるものではない。図12を参照すると、半導体発光素子12bは、埋込領域45によって埋め込まれたストライプ構造を有する半導体メサ47を含む。半導体メサ47により電流の閉じ込めが可能になる。半導体メサ47は、第2導電型のコンタクト層31、第2導電型クラッド領域15、導波路コア19、及び中間半導体層21の一部分を含むことができる。半導体メサ47には伝搬定数同調コア23もしくは活性導波路コア25のいずれかが含まれる。この形態の利点は、伝搬定数同調コア23が基板29と活性導波路コア25との間に位置する構造としたときに、しきい値電流を下げられることである。埋込領域45の材料は、例えばFeドープInPである。
【0071】
図13を参照すると、半導体発光素子12cは、埋込領域49によって埋め込まれたストライプ形状の半導体メサ51を含む。半導体メサ51により電流の閉じ込めが可能になる。半導体メサ51は、第2導電型のコンタクト層31、第2導電型クラッド領域15、導波路コア19、中間半導体層21、導波路コア17、及び第1導電型クラッド領域13を含むことができる。本実施形態では、活性導波路コア25が基板29と伝搬定数同調コア23との間に位置する構造、及び伝搬定数同調コア23が基板29と活性導波路コア25との間に位置する構造のいずれにおいても、しきい値電流を下げることができる。埋込領域49の材料は、例えばFeドープInPである。
【0072】
図14の(a)部を参照すると、半導体発光素子12dは、埋込領域53によって埋め込まれたストライプ形状の半導体メサ55を含む。半導体メサ55により電流の閉じ込めが可能になる。半導体メサ55の延在方向は、基板29の端面に対して、当該端面に垂直な方向から角度TH1、TH2だけ傾斜させている。半導体メサ55は、第2導電型のコンタクト層31、第2導電型クラッド領域15、導波路コア19、中間半導体層21、導波路コア17、及び第1導電型クラッド領域13を含むことができる。この構造の利点は、半導体メサ55の延在方向を基板29の端面に垂直な方向から傾斜させることで、端面からの戻り光を低減できるとともに、合わせて半導体発光素子12dと光結合した光ファイバ等からの戻り光の影響も低減できるので、所謂戻り光耐性を高めることができることである。埋込領域53の材料は、例えばFeドープInPである。
【0073】
図14の(b)部を参照すると、半導体メサ55の上部に、第2導電型のコンタクト層31、第2導電型クラッド領域15、導波路コア19、及び中間半導体層21が含まれる。半導体メサ55の下部に、中間半導体層21、導波路コア17、及び第1導電型クラッド領域13が含まれる。導波路軸Axは、半導体メサ55の下部の端面に対して、当該端面に垂直な方向から角度TH1だけ傾斜する。半導体メサ55の上部の端面は、導波路軸Axに対してほぼ垂直である。
【0074】
活性導波路コア25が基板29と伝搬定数同調コア23との間に位置する構造では、例えば戻り光耐性を高めることができる。また、図12に示される構造のように、なお、伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25のいずれか一方が半導体メサに含まれるようにしてもよい。
【0075】
半導体発光素子12b、12cでは、一方の端面11aだけでなく、端面11aの反対側の端面も傾斜していることができる。また、第1の導波路コア17は伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25のいずれか一方を含み、第2の導波路コア19は伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25のいずれか他方を含む。また、導体発光素子12dでは、端面11a及び端面11bの両方ではなく、端面11a及び端面11bの一方が傾斜していることができる。
【0076】
図15及び図16は、本実施の形態に係る半導体発光素子を作製する方法における主要な工程を示す工程フローを示す図面である。引き続く説明においては理解を容易にするために、図1〜図4において示された参照符号を用いる。
【0077】
工程S101では、活性導波路コア25に係る分散曲線DS1を提供する活性層27の構造と、第1の分散曲線と異なり伝搬定数同調コア23に係る分散曲線DS2を提供する受動コア層41の構造とを決定する。この決定は、活性導波路コア25における光伝搬に係る位相速度が、ある波長で伝搬定数同調コア23における光伝搬に係る位相速度に等しくなるように行われる。つまり、活性導波路コア25に係る分散曲線DS1は、伝搬定数同調コア23に係る分散曲線DS2と異なる。
【0078】
具体的には、工程S102において、第1の分散曲線を提供する導波路構造を決定する。この導波路構造は、例えば活性層27の構造によって提供される。活性導波路コア25の活性層27は、キャリアの注入により光を発生する。このために、活性層27において発光に係る半導体層のバンドギャップは、受動コア層41及び光閉じ込め層43のバンドギャップより小さい。この設計の一例では、活性導波路コア25の活性層27の構造は、当該半導体発光素子11の発光波長を提供できるように設計される。また、活性層27は、半導体発光素子11の発光に求められる波長帯域に光学利得を有する構造に設計される。
【0079】
また、工程S103において、第2の分散曲線を提供する導波路構造を決定する。この導波路構造は、例えば伝搬定数同調コア23の構造によって提供される。伝搬定数同調コア23の構造の設計は、半導体発光素子11の発光に求められる波長帯域において、伝搬定数同調コア23に係る分散曲線DS2が分散曲線DS1に交差するように行われる。多くの場合に、半導体発光素子11の発光に求められる波長帯域に係る制約から、活性導波路コア25の活性層27の構造の設計フレキシビリティが制限される可能性がある。このとき、クロス波長領域△λ_coupleの幅は、分散曲線DS2の傾斜によって調整可能である。既に説明したように、クロス波長領域△λ_coupleの幅は、屈折率差(△n_a−△n_p)に関連している。
【0080】
第1回の設計において得られた伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25の組み合わせにおいて、設計上の発光波長λCの温度特性の確認を行う。この温度特性は、例えばシミュレーションにより見積もられる。例えば、半導体発光素子における動作温度範囲内の2つの温度にうち低い温度における光学利得を高い温度における光学利得における極大値以下に設定することが好適である。必要な場合は、活性層の構造を微調整して光学利得の変更することができ、また、伝搬定数同調コア23における屈折率差を変更して分散曲線の傾きを調整することができる。
【0081】
また、中間半導体層21の材料及び厚さは、中間半導体層21がキャリアを活性層27に閉じ込めるように設計される。伝搬定数同調コア23は活性導波路コア25に中間半導体層21を介して光学的に結合されるので、中間半導体層21の屈折率及び厚みは、所望の光結合を実現できるようにも設計される。
【0082】
工程S104では、上記設計に基づいてエピタキシャル基板を作製する。エピタキシャル基板の作製のために、例えば有機金属気相成長法を用いることができる。以下に説明する半導体層を基板上に順に成長して、半導体領域を形成する。エピタキシャル基板では、第1の導波路コア17が伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25のいずれか一方を含み、第2の導波路コア19が伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25のいずれか他方を含むことができる。
【0083】
工程S105では、基板29上に第1導電型クラッド領域13を成長する。工程S106では、第1の導波路コア17(例えば、伝搬定数同調コア23)を第1導電型クラッド領域13上に形成する。このために、まず、工程S107では、第1導電型クラッド領域上13上に下部光閉じ込め層を成長し、工程S108では、下部光閉じ込め層上にコア層(例えば伝搬定数同調層41)を成長し、工程S109では、コア層上に上部光閉じ込め層を成長する。
【0084】
工程S110では、第1の導波路コア17上に中間半導体層21を成長する。
【0085】
工程S111では、中間半導体層21上に第2の導波路コア19(例えば、活性層コア25)を成長する。このために、まず、工程S112では、中間半導体層21上に下部光閉じ込め層を成長し、工程S113では、下部光閉じ込め層上にコア層(例えば活性層27)を成長し、工程S114では、コア層上に上部光閉じ込め層を成長する。
【0086】
工程S115では、第2の導波路コア19上に第2導電型クラッド領域15を成長する。エピタキシャル基板の作製において、必要な場合には、工程S116で、第2導電型クラッド領域15上に第2導電型コンタクト領域31を成長することができる。
【0087】
エピタキシャル基板は、第1導電型クラッド領域13、第1の導波路コア17、中間半導体層21、第2の導波路コア19、第2導電型クラッド領域15及び第2導電型コンタクト層31を含み、これらの半導体層は基板29上に順に成長される。光学的結合に関しては、基板29上における、伝搬定数同調コア23及び活性導波路コア25の配置順序は任意である。エピタキシャル基板では、伝搬定数同調コア41に係るフォトルミネセンス波長は、活性層27に係るフォトルミネセンス波長より短い。
【0088】
工程S117では、リソグラフィー工程とエッチング工程により活性導波路コア25上にリッジ構造または半導体メサ構造を形成する。リッジ構造または半導体メサ構造の作製は、図1、図2、図12から図14に示されたデバイス構造に応じて選択される。リソグラフィー工程とエッチング工程には、通常のフォトリソグラフィーとドライエッチングを用いることができる。
【0089】
工程S118では、エピタキシャル基板上に電極を作製して、基板生産物を形成する。基板生産物の電極は、活性層にキャリアを供給するように設けられる。工程S119では、導波路軸の方向に延在する電極を含む基板生産物を半導体領域から形成した後に、基板生産物をエッチングして、導波路軸に直交する平面に対して傾斜した端面を導波路コアに形成する。端面の傾斜は、図1、図2、図12から図14に示されたデバイス構造に応じて選択される。工程S120では、基板生産物を分離して、半導体レーザチップを作製できる。半導体レーザチップにおいて、第1の導波路コア17は端面11aから端面11bまで延在しており、これらの端面11a、11bは、例えばへき開により作製される。端面11a、11bの間隔は例えば100μm〜300μmであることができる。
【0090】
この作製方法によれば、活性導波路コア25に係る分散曲線DS1が伝搬定数同調コア23に係る分散曲線DS2と異なるように設定されると共に、活性導波路コア25における光伝搬に係る位相速度がクロス波長で伝搬定数同調コア23における光伝搬に係る位相速度に等しくなるように設定される。このクロス波長の付近でレーザ発振が生じる。活性導波路コア25は、キャリアの注入により光を発生する活性層27を含み、これ故に、活性層27は、波長により変化する光学利得を有する。この光学利得のピークを示すピーク波長は、温度依存性を有する。レーザ発振特性は、クロス波長の付近における光学利得に関連する。また、クロス波長λCは、活性導波路コア25及び伝搬定数同調コア23における半導体層の屈折率の温度特性に依存する。
【0091】
クロス波長λCの温度特性は2つの分散曲線DS1、DS2に傾きによって調整でき、光学利得のピーク波長は、活性層27の材料及び構造により調整できる。このため、当該半導体発光素子11におけるI−Lカーブの温度変換を低減できる。
【0092】
既に説明したように、本実施の形態に係る半導体レーザは、分布帰還型半導体レーザに比べて良好な温度特性を示す。本実施の形態に係る半導体レーザの構造では、活性導波路コアは屈折率差の比較的大きな導波路構造を有し、受動導波コアは屈折率差の比較的小さな導波路構造を有する。導波路構造に違いにより、これらの分散曲線の傾き(群速度)は互いに異なる。これらの分散曲線の傾きの違いよって、2つの分散曲線は、ある波長領域で交差する。これらの導波路構造は半導体層を介して光学的に結合されている。このため、これら2つの分散曲線の近づく結合波長帯でのみ、活性導波路コア及び受動導波コアに係る2つの光学モードが結合する。本実施の形態に係る半導体レーザは、発振波長の規定のために、分布帰還型半導体レーザのような回折格子を利用しない。
【0093】
光学利得を有する活性層においてキャリアが再結合すると、光が生成される。活性導波路コアに係る光学モードは、結合波長帯において、受動導波コアに係る光学モードに強く結合して、この波長帯において活性層への閉じ込め効率が変化する。これ故に、結合波長帯内のある波長において、レーザ発振が生じる。このレーザ発振における利得は、活性導波路コアの活性層における光学利得に関連している。結合波長付近において、光閉じ込め効率の変化に伴い両モードとも実効利得が変化する。この結果として、内部損失とミラー損失との和(総損失)が波長依存性を示すことになる。半導体レーザは、モード利得が総損失(ミラー損失と内部損失の和)を超えたときに発振する。結合波長付近では、モード利得も損失も中程度となり、発振しきい値が他の波長に比べ低くなる。
【0094】
結合波長領域は、活性層導波路と伝搬定数同調導波路の屈折率の温度変化により支配されており、また温度の上昇に伴って長波長に移動する。光学利得は、バンドギャップの温度変化により支配されており、また温度の上昇に伴って長波長に移動する。前者の活性層導波路と伝搬定数同調導波路の分散曲線の交点である結合波長の温度変化量は、活性層導波路と伝搬定数同調導波路の群速度(つまり分散曲線の傾き)に依存しており、それぞれの導波路構造により調整可能である。結合波長と対応する発振波長の温度変化を、利得波長の温度変化に近づけることで、温度変化による利得変化を小さくできる。両温度の利得は同程度の値に調整できる。このことから、発振波長での利得の温度依存性が抑制される。
【0095】
また、本実施の形態に係る半導体レーザのスペクトル幅を狭くできる。
【0096】
以上説明したように、2つの導波モードの群速度が異なるように導波路コアを設計する。このとき、理論的には一波長でのみ、これらの導波路コアに係る両モードが結合できる。この結合波長における波長依存性により、実効利得と反射率にも波長依存性が生じ、上記のように決定される特定波長においてレーザ発振が可能となる。利得スペクトルの温度依存性を考慮して、発振波長での実効利得の温度依存性が小さくなるよう設計することにより、温度特性が良好な半導体レーザが実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本実施形態によれば、発振波長の温度特性を調整可能な半導体発光素子が提供され、この半導体発光素子を作製する方法が提供される。また、I−Lカーブの温度変換を低減可能な半導体発光素子が提供され、I−Lカーブの温度変換を低減可能な半導体発光素子を作製する方法が提供される。さらに、しきい値電流の温度変換を低減可能な半導体発光素子が提供され、しきい値電流の温度変換を低減可能な半導体発光素子を作製する方法が提供される。
【符号の説明】
【0098】
11、12b、12c、12d…半導体発光素子、13…第1導電型クラッド領域、15…第2導電型クラッド領域、17…第1の導波路コア、19…第2の導波路コア、21…中間半導体層、11a、11b、11c、11d…端面、23…伝搬定数同調コア、25…活性導波路コア、27…活性層、29…基板、29a…主面、29b…裏面、DS1、DS2…分散曲線、△λ_couple…クロス波長領域、31…第2導電型のコンタクト層、35、37…電極、39…第1の光閉じ込め層、41…受動コア層、43…第2の光閉じ込め層、47、51、55…半導体メサ、45、49、53…埋込領域、TH1、TH2、TH3…傾斜角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子であって、
第1導電型クラッド領域と、
前記第1導電型クラッド領域の主面の上に設けられた第2導電型クラッド領域と、
前記第1導電型クラッド領域と前記第2導電型クラッド領域との間に設けられた第1の導波路コアと、
前記第1導電型クラッド領域と前記第2導電型クラッド領域との間に設けられた第2の導波路コアと、
前記第1の導波路コアと前記第2の導波路コアとの間に設けられた中間半導体層と、
導波路軸の方向に延在する電極と、
を備え、
前記電極は半導体領域の上に設けられ、
前記半導体領域は、前記第1導電型クラッド領域、前記第1の導波路コア、前記中間半導体層、前記第2の導波路コア、及び前記第2導電型クラッド領域を含み、
前記第1の導波路コアの端面は第1の基準面に沿って延在しており、
前記第2の導波路コアの端面は第2の基準面に沿って延在しており、
前記第1の基準面は前記第2の基準面に対して傾斜し、
前記導波路軸は、当該半導体発光素子の一端から他端への方向に延在し、
前記第2の導波路コアの前記端面における内向き法線は、前記第2の導波路コアの前記端面における前記導波路軸の接線に対してゼロより大きく直角より小さい角度で傾斜しており、
前記第1の導波路コアは伝搬定数同調コア及び活性導波路コアのいずれか一方を含み、
前記第2の導波路コアは前記伝搬定数同調コア及び前記活性導波路コアのいずれか他方を含み、
前記中間半導体層は、前記活性層にキャリアを閉じ込めるように設けられ、
前記活性導波路コアは、前記第1導電型クラッド領域及び前記第2導電型クラッド領域からのキャリアの注入により光を発生する活性層を含み、
前記伝搬定数同調コアに係るフォトルミネセンス波長は、前記活性層に係るフォトルミネセンス波長より短く、
前記活性導波路コアに係る第1の分散曲線は、前記伝搬定数同調コアに係る第2の分散曲線と異なり、前記活性導波路コアにおける光伝搬に係る位相速度の値は、前記伝搬定数同調コアにおける光伝搬に係る位相速度の値とある波長で同じになり、前記伝搬定数同調コアは前記活性導波路コアに前記中間半導体層を介して光学的に結合される、半導体発光素子。
【請求項2】
前記半導体領域を搭載する主面を有する基板を更に備え、
前記第1導電型クラッド領域、前記第1の導波路コア、前記中間半導体層、前記第2の導波路コア、及び前記第2導電型クラッド領域は、前記主面の法線軸の方向に順に配列され、
前記半導体領域は、前記第2の導波路コア及び前記第2導電型クラッド領域を含む半導体メサのストライプ構造を有し、
前記第2の導波路コアの前記端面は、前記基板の前記主面に平行な平行平面内において前記導波路軸に直交する直交平面に対して傾斜している、請求項1に記載された半導体発光素子。
【請求項3】
前記活性導波路コアは、前記活性層の屈折率より低い屈折率の第1の光閉じ込め層を含み、
前記伝搬定数同調コアは、受動コア層と該受動コア層より低い屈折率の第2の光閉じ込め層とを含み、
前記伝搬定数同調コアにおける前記第2の光閉じ込め層と前記受動コア層との屈折率差は、前記活性導波路コアにおける前記活性層と前記第1の光閉じ込め層との屈折率差より小さく、
前記中間半導体層の屈折率は、前記第1の光閉じ込め層、前記活性層、前記第2の光閉じ込め層及び前記受動コア層の屈折率より小さい、請求項1又は請求項2に記載された半導体発光素子。
【請求項4】
前記伝搬定数同調コアの導電型は前記中間半導体層の導電型と同じである、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
【請求項5】
前記活性層は、III族構成元素としてアルミニウムを含むAl系III−V化合物半導体からなり、
前記伝搬定数同調コアはGaInAsP系半導体からなる、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
【請求項6】
前記中間半導体層の材料は、前記第1導電型クラッド領域及び前記第2導電型クラッド領域の少なくともいずれか一方と同じである、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
【請求項7】
前記活性導波路コアにおける実効屈折率差(△n_a)と前記伝搬定数同調コアにおける実効屈折率差(△n_p)との屈折率差(△n_a−△n_p)は0.25より大きい、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1及び第2の導波路コアのいずれかの前記端面において、前記内向き法線は前記導波路軸の前記接線に対して20度以上の角度で傾斜している、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
【請求項9】
前記第2の導波路コアの前記端面の反対側の別端面における内向き法線は、前記別端面における前記導波路軸の接線に対してゼロより大きく直角より小さい角度で傾斜している、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
【請求項10】
半導体発光素子を作製する方法であって、
第1の分散曲線を提供する活性導波路コアの構造と、前記第1の分散曲線と異なる第2の分散曲線を提供する伝搬定数同調コアの構造とを、前記活性導波路コアにおける光伝搬に係る位相速度の値が前記伝搬定数同調コアにおける光伝搬に係る位相速度の値とある波長で同じになるように決定する工程と、
第1導電型クラッド領域、第1の導波路コア、中間半導体層、第2の導波路コア、及び第2導電型クラッド領域を基板上に順に成長して、半導体領域を形成する工程と、
前記半導体領域から、導波路軸の方向に延在する電極を含む基板生産物を形成する工程と、
前記基板生産物をエッチングして、前記導波路軸に直交する平面に対して傾斜した端面を前記第2の導波路コアに形成する工程と、
を備え、
前記基板生産物の前記電極は、前記活性層にキャリアを供給するように設けられ、
前記第1の導波路コアは前記伝搬定数同調コア及び前記活性導波路コアのいずれか一方を含み、
前記第2の導波路コアは前記伝搬定数同調コア及び前記活性導波路コアのいずれか他方を含み、
前記活性導波路コアは、キャリアの注入により光を発生する活性層を含み、
前記中間半導体層は、前記活性層にキャリアを閉じ込めるように設けられ、
前記伝搬定数同調コアに係るフォトルミネセンス波長は、前記活性層に係るフォトルミネセンス波長より短く、
前記伝搬定数同調コアは前記活性導波路コアに前記中間半導体層を介して光学的に結合される、半導体発光素子を作製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−59844(P2012−59844A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200270(P2010−200270)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】