説明

半導体発光素子

【課題】光取り出し面における局所的な電界集中を防止して光出力と静電気耐圧を向上できる半導体発光素子を提供すること。
【解決手段】カウンタ電極構造の半導体発光素子は、第1半導体層の支持基板側に設けられ、第1半導体層とオーミック接触し、少なくとも1つの線状の第1電極片を含む第1電極と、第2半導体層の上に設けられ、第2半導体層とオーミック接触し、少なくとも1つの線状の第2電極片を含む第2電極と、第2の半導体層上に形成された複数の錐状突起と、を有する。第1電極片と第2電極片とは、半導体発光積層体の積層方向に重ならずに配置される。第1電極片と第2電極片とは、上面視において平行に配置される。複数の錐状突起のうち、上面視において、相互に平行に配置された第1電極片と第2電極片との間に位置する錐状突起は、その軸が、いずれも、該第一電極片と該第2電極片の伸長方向との成す角度が、±26度の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子に関し、特に半導体発光素子の電極構造及び光取り出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子の光出力いわゆる光取り出し出力は、半導体材料と周囲媒体、例えば、空気やエポキシ樹脂との屈折率差が大きいため制限される。例として、AlGaInP系半導体発光素子(屈折率semi=3.3)材料と樹脂(屈折率regin=1.5)の場合、臨界角は27°、界面の反射率は15%程度、となり外部へ取り出せる光は4.5%程度に制限される。
【0003】
さらに、半導体発光素子の半導体層は、MOCVD法を用いて、AlGaInP層ではGaAs基板、またGaN層ではサファイヤ基板などの成長基板上に製造されるが、活性層から発光した光の成長基板への吸収や閉じ込めが生じるため光出力の低下が高効率化への課題となっている。
【0004】
特に、AlGaInP系材料で構成される半導体発光素子は、AlGaInP系材料と格子整合するGaAs基板上にMOCVD法により作製される。しかし、AlGaInP系材料で構成される半導体発光素子は、GaAs基板のバンドギャップより活性層のバンドギャップの方が大きい。そのため、発光した光のうち、光取り出し面側に向かう光の一部は取り出すことができるが、GaAs基板側に向かう光はGaAs基板により吸収され、効率が低下する。
【0005】
従来から、GaAs成長基板上にMOCVD法を用いて半導体素子が作製されるが、GaAs成長基板を除去し成長基板と異なる支持基板を金属を介して設けた半導体発光素子(MB構造とも呼ばれる)が知られている。例えば、かかる構造の半導体発光素子は、特許文献1に開示されている。かかる半導体発光素子は光取り出し面の反対側に反射ミラーを取り付けることで成長基板に吸収されていた光を反射させ外部へと光を取り出し光出力の向上を図るものである。さらに、かかる半導体発光素子は光取り出し面側の半導体層表面に形状、配置、サイズがランダムな粗面化した表面を更に備えている。これは、粗面化により半導体内部で伝播する光の伝搬方向を変換させ、臨界角以上の光成分を取り出すことで光出力の向上を図ったものである。特にMB構造の半導体発光素子では半導体内部で光が多重反射を繰り返すため、粗面化による光出力の改善効果は大きい。
【0006】
また、光取り出し面側の電極と反射面側の電極を上面視野で重ならないようにずらして配置した半導体発光素子(カウンタ電極構造とも呼ばれる)が知られている。かかるカウンタ電極構造の半導体発光素子では、少ない電極被覆率で均一な電流拡散ができるため、光出力が向上する(特許文献2、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−227895号公報
【特許文献2】特開2010−192709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたようなMB構造の半導体発光素子においては、光取り出し面にランダムな粗面化を行うことで、半導体発光素子の光出力を向上させることができる。しかし、光取り出し面を単純な粗面化を行うと、形成される粗面表面の複数の突起はその先端がランダムに全方向に向いているため、素子内を流れる電流(電流経路という)の方向と同方向に先端が向いている突起が形成される。一般に、反射ミラーをもつMB構造の半導体発光素子の場合、半導体発光積層体はMOCVD法により作製された層のみで構成されるため、層の厚み(10μm以下)が光取り出し面側電極と反射面側電極の間の距離に比べ非常に薄いため、面内方向の電流経路が垂直方向(層の厚み方向)と比較して長くなる。よって、面内方向の電流経路と平行に先端が向いている突起が形成される場合、かかる突起先端に電界集中が起こり、静電耐圧が低下するという問題が生じる。
【0009】
さらに、電流経路の向きと同方向に向いている粗面表面の突起と表面電極片までの距離が近ければ近いほど、突起近傍の電流密度が高くなるため、電界集中はさらに大きくなり静電耐圧の更なる低下が生じる。光取り出し面側半導体層の粗面化を行う面積(粗面化被覆率)を大きくしたほうが光出力は向上するが、突起と表面電極片までの距離を縮めることとなるので、粗面化被覆率の点で光出力と静電気耐圧の向上の両方を満足することができないという問題が従来のMB構造の半導体発光素子では残る。
【0010】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、光取り出し面における局所的な電界集中を防止して光出力と静電気耐圧を向上できる半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光素子は、支持基板と、前記支持基板上に形成された第1半導体層、前記第1半導体層の上に形成された活性層、および、前記活性層の上に形成された第2半導体層、からなる半導体発光積層体と、を含む半導体発光素子であって、前記第1半導体層の前記支持基板側に設けられ、前記第1半導体層とオーミック接触し、少なくとも1つの線状の第1電極片を含む第1電極と、前記第2半導体層の上に設けられ、前記第2半導体層とオーミック接触し、少なくとも1つの線状の第2電極片を含む第2電極と、前記第2の半導体層上に形成された複数の錐状突起と、を有し、前記第1電極片と前記第2電極片とは、前記半導体発光積層体の積層方向に重ならずに配置され、前記第1電極片と前記第2電極片とは、上面視において平行に配置され、前記複数の錐状突起のうち、上面視において、相互に平行に配置された前記第1電極片と前記第2電極片との間に位置する錐状突起は、その軸が、いずれも、該第一電極片と該第2電極片の伸長方向との成す角度が、±26度の範囲内であることを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光素子の製造方法は、成長基板の表面上に第1半導体層、前記第1半導体層の上に形成された活性層、及び、前記活性層の上に形成された第2半導体層、からなる半導体発光積層体を形成する工程と、前記第2半導体層の上に、前記第2半導体層とオーミック接触する線状の第2電極片を含む第2電極を形成する工程と、前記第2電極の形成された半導体発光積層体に、支持基板を接合する工程と、前記半導体発光積層体から前記成長基板を除去する工程と、前記第1半導体層の上に、前記第1半導体層とオーミック接触する線状の第1電極片を含む第1電極を形成する工程と、前記第1半導体層の上の前記第1電極の形成されていない領域に複数の錐状突起を形成する工程と、を含み、前記第1電極形成工程において、前記第1電極片は、前記第2電極片と、前記半導体発光積層体の積層方向に重ならずに配置され、前記第1電極形成工程において、前記第1電極片と前記第2電極片とは、上面視において平行に配置され、前記錐状突起を形成する工程において、前記複数の錐状突起のうち、上面視において、相互に平行に配置された前記第1電極片と前記第2電極片との間に位置する錐状突起は、軸が、前記第一電極片と前記第2電極片の伸張方向との成す角度が、±26度の範囲内で配向するように、形成されること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体発光素子においては、MB構造の半導体発光積層体において上下電極を特定な配置としたカウンタ電極を用い半導体層の面内の電流経路を制御するとともに、単純な粗面化によるランダムな突起でなく、電流経路の主方向に対し突起の向きを1軸方向(電流経路の主方向にほぼ垂直方向)に配向する異方性のある粗面化を施すことにより、突起先端の電界集中を抑制し、素子の静電耐圧を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の構成を用いることで、粗面化被覆率を大きくしても静電気耐圧を低下させることなく、光出力を向上させることができる。さらに、電流経路と突起の向きを制御したことで、突起先端に電界集中が生じなくなるため、電極と突起形成領域との距離を短くしても静電耐圧の低下を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による実施例の半導体発光素子の概略平面図である。
【図2】図1における2−2線に沿った断面図である。
【図3】図1における3−3線に沿った断面図である。
【図4】図1における粗面を省略して実施例の表面電極の構成と反射面側コンタクト電極の構成を示す半導体発光素子の概略平面図である。
【図5】本発明による実施例の半導体発光素子の概略斜視図である。
【図6】本発明による実施例の半導体発光素子の粗面における錐状突起の傾く方向を説明するための模式的な断面図である。
【図7】本発明による実施例の半導体発光素子の粗面における錐状突起の傾く方向を説明するための模式的な斜視図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明による実施例の半導体発光素子の製造方法を示す断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、本発明による実施例の半導体発光素子の製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明による実施例の半導体発光素子の一方向(Y)に突起が配向された光取り出し構造の粗面を撮影した顕微鏡写真、その拡大図及び素子の断面写真である。
【図11】実施例、比較例1及び比較例2の半導体発光素子について測定した静電耐圧の値と明るさの値の結果を示す表1である。
【図12】比較例1及び比較例2の半導体発光素子の静電破壊電圧と電極保護領域幅の関係を示すグラフである。
【図13】本発明による実施例の半導体発光素子の静電破壊電圧と電極保護領域幅の関係を示すグラフである。
【図14】比較例1及び比較例2の半導体発光素子の光束と電極保護領域幅の関係を示すグラフである。
【図15】本発明による実施例の半導体発光素子の光束と電極保護領域幅の関係を示すグラフである。
【図16】(a)本発明による実施例の変形例1の半導体発光素子の概略平面図と、(b)変形例1の粗面を省略した半導体発光素子を示す概略平面図である。
【図17】(a)本発明による実施例の変形例2の半導体発光素子の概略平面図と、(b)変形例1の粗面を省略した半導体発光素子を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に示す図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
【0017】
[半導体発光素子の構成]
図1は、本発明による実施例の半導体発光素子1の平面図である。図2は、図1における2−2線(一点鎖線で示す)に沿った断面図である。図3は、図1における3−3線(一点鎖線で示す)に沿った断面図である。図4は、かかる半導体発光素子1の電極構成(上記の第1電極である反射面側電極及び上記の第2電極である表面電極:後述する)を示す平面図である。図5は、該実施例の半導体発光素子1の概略斜視図である。
【0018】
図1乃至図3に示すように、半導体発光素子1は、半導体発光積層体10、反射絶縁層20、上記の第1電極であるコンタクト電極21、接合膜30、支持体40、上記の第2電極である表面電極50(ショットキー電極51、及びオーミック電極52(表面電極片52A〜52D、すなわち第2電極片))、並びに接続配線53を含む。半導体発光素子1は、半導体発光積層体10と支持体40とが反射絶縁層20及び接合膜30を介して接合する、いわゆる貼り合わせ構造を有している。
【0019】
図1乃至図5に示すように、半導体発光素子1は、表面電極片52A〜52Dの間の半導体発光積層体10の上に、複数の錐状突起PTからなる粗面RSを有する。複数の錐状突起PTは、それらの軸方向が反射面側電極片及び表面電極片52A〜52Dの長手伸長方向に垂直な方向に交差する方向に配向されている。図面において、錐状突起PTの各々を鋭角で交わる線分で示してあるが、実施の突起形状や大きさを示すものではなく説明するために示してあるだけである。また、図面において、表面電極片52A〜52Dの長手伸長方向をY方向とし、Y方向に垂直な向をX方向とし、XY平面に垂直な向をZ方向とする。かかる錐状突起PT及び粗面RSについては後に詳述する。
【0020】
図2に示すように、半導体発光積層体10は、光取り出し面側から順にn型クラッド層11、活性層12、p型クラッド層13が積層された構造を有する。
【0021】
n型クラッド層11は、例えば、層厚3μmのSiがドープされた(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層(キャリア濃度:1×1018cm−3)である。なお、ショットキー電極51、オーミック電極52及び接続配線53と接するように、n型コンタクト層をn型クラッド層上に電極側に積層することもできる。
【0022】
活性層12は、例えばAlGaInPで構成される多重量子井戸構造を有し、(Al0.1Ga0.90.5In0.5Pからなる層厚10nmの井戸層と(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなる層厚10nmの障壁層とが交互に15回繰り返して積層されている。なお、井戸層のAl組成は発光波長に合わせて0≦z≦0.4の範囲で調整することができる。
【0023】
p型クラッド層13は、例えば、層厚1μmのMgがドープされたAl0.5In0.5P層(キャリア濃度:5×1017cm−3)である。
【0024】
p型コンタクト層14は、例えば、層厚1μmのMgがドープされたGaP層(キャリア濃度:3×1018cm−3)である。なお、p型コンタクト層にInを添加して、活性層12からの光を吸収しない範囲で調整することができる。
【0025】
p型コンタクト層14に接して反射絶縁層20が設けられ、反射絶縁層20に接して接合膜30が設けられている。なお、上記の第1半導体層がp型クラッド層13及びp型コンタクト層14に対応し、上記の第2半導体層はn型クラッド層11に対応するが、これらの材料と層数には限定されず、活性層の両側に活性層よりもエネルギーギャップが大きい材料があれば限定されない。
【0026】
支持体40は、支持基板41、支持基板41の両面に形成されたオーミック金属層42及び43から構成されている。支持基板41は、例えばp型不純物を高濃度で添加することによって導電性が付与されたSi基板である。オーミック金属層42及び43は、例えばPtから構成されている。オーミック金属層43の上には、第2接合層32が設けられている。なお、支持基板41の材料としては、Si以外にもGe、Al、Cuなどの他の導電性材料を用いることができる。
【0027】
反射絶縁層20は例えばSiOなどの誘電体層からなる誘電体反射膜である。反射絶縁層20の両側界面(p型コンタクト層14及び接合膜30)において部分的に電気的な接触を得るため、反射絶縁層20を貫通するAuZnなどからなるコンタクト電極21がエッチング方法により形成された貫通孔に挿入されている。なお、反射絶縁層20の材料としては、SiO以外にもSiやAlなどの他の透明な誘電体材料を用いることができる。なお、誘電体層の成膜方法として熱CVD法やスパッタ法を用いることもできる。また、誘電体層の多層膜のエッチング方法としてドライエッチング法を用いることも可能である。コンタクト電極21は反射絶縁層20の開口部においてp型コンタクト14に接触し、この接触は、オーミック接触となっている。コンタクト電極21の材料は、AuZnに限定されず、p型クラッド層13との間でオーミック接触を形成することができる材料であれば限定されない。誘電体からなる反射絶縁層20は、半導体発光積層体10との界面において活性層12から放射された光を光取り出し面側に向けて反射する反射面を形成する。コンタクト電極21は、半導体発光積層体10に電流を供給する。なお、コンタクト電極21の詳細な構成については後述する。
【0028】
反射絶縁層20には、支持基板41側にコンタクト電極21に接するバリアメタル層(図示せず)と共晶半田層(図示せず)とからなる2層構造の第1接合層31が設けられる。また、支持体40上には、第1接合層31と接合するように第2接合層32が設けられている。なお、第1接合層31及び第2接合層32から接合膜30が構成されている。バリアメタル層は、例えばTa、Ti、Wなどの高融点金属又はこれらの窒化物を含む単層若しくは2以上の層により構成することができる。バリアメタル層は、コンタクト電極21に含まれるZnがコンタクト電極21から拡散するのを防止するとともに、第2接合層32に含まれる共晶接合材(例えばAuSn)がコンタクト電極21内に拡散するのを防止する。共晶半田層には、例えばNi及びAuが含まれており、当該Ni及びAuは第1接合層31と第2接合層32と接合時において第2接合層32に含まれる共晶接合材に対する濡れ性を向上させる機能を有する。これにより、支持体40と半導体発光積層体10との接合を良好に行うことができる。説明簡略化のため図示していないが、接合層31と32は、少なくとも一部が拡散混合されて接合膜30が形成されている。第2接合層32は、例えば、Ti、Ni、AuSnを含む金属層である。
【0029】
光取り出し面となるn型クラッド層11の表面には、表面電極を構成するショットキー電極51、及びオーミック電極52が形成されている。ショットキー電極51は、ボンディングパッドを構成しており、n型クラッド層11との間でショットキー接触を形成し得る材料、例えばTa、Ti、W又はこれらの合金から構成されている。また、ショットキー電極51は、金属材料のみならず、SiOなどの絶縁誘電体から構成されてもよい。ショットキー電極51の最表面には、ワイヤボンディング性及び導電性を向上させるためにAu層が形成されていてもよい。オーミック電極52は、n型クラッド層11との間でオーミック接触を形成し得る材料、例えばAuGeNi、AuSn、AuSnNiなどからなる。ショットキー電極51とオーミック電極52は、両電極間を繋ぐ接続配線53により電気的に接続される。接続配線53は、ショットキー電極51と同一の材料(絶縁性のものは除く)からなり、n型クラッド層11との間でショットキー接触を形成する。ショットキー電極51は、n型クラッド層11に対してショットキー接触を形成しているため、ショットキー電極51直下の半導体発光積層体10には電流が流れないようになっている。すなわち、電流は、オーミック電極52とコンタクト電極21との間を流れる。図2において、オーミック電極(n−電極)52からコンタクト電極(p−電極)21への電流経路を破線の矢印で示している。なお、ショットキー電極51及びオーミック電極52の詳細な構成については後述する。
【0030】
以下に、光取り出し面及び反射面側に設けられた各電極の構成について詳細に説明する。
【0031】
図4は、理解を容易にするために、半導体発光素子1の導体発光積層体10の上に、複数の錐状突起PTからなる粗面RSを省略した平面図である。
【0032】
半導体発光素子の平面形状は、1辺310μmの正方形をなしている。ショットキー電極51は、例えば直径100μmの円形状をなしており、半導体発光積層体10の表面中央に配置されている。オーミック電極52は、ショットキー電極51を挟んだ両側において、半導体発光素子の互いに対向する2つの辺と平行となるように配置された直線状の表面電極片52A、52Bと、ショットキー電極51の中心線上において表面電極片52A、52Bと平行となるように配置された表面電極片52C、52Dにより構成される。表面電極片52A〜52Dは接続配線53によってショットキー電極51に電気的に接続されている。各電極片の線幅は被覆率を小さくするために10μm以下、好ましくは、5μm以下で構成されている。本実施例では各電極片の線幅を5μm、ショットキー電極51は直径100μmとし、接続配線53はそこから十字(XY方向)に伸びる細線としてある。
【0033】
コンタクト電極21(すなわち上記の第1電極)は、幅5μmの線状をなしており、3つの連続した反射面電極片(すなわち上記の第1電極片)から構成されている。コンタクト電極21は、半導体発光素子の外縁部分に沿い且つX方向に伸長した第1反射面電極片21Aと、半導体発光素子の外縁部分に沿い且つY方向に伸長した第2反射面電極片21Bと、第1反射面電極片21A同士を接続するようにY方向に伸長した第3反射面電極片21Cと、から構成されている。このような構成から、第1反射面電極片21Aは、半導体発光素子のX方向に伸長している縁部と平行に形成され、第2反射面電極片21B及び第3反射面電極片21Cは半導体発光素子のY方向に伸長している縁部と平行に形成されている。また、第1反射面電極片21Aと第2反射面電極片21Bによって囲まれた領域は、2本の第3反射面電極片21Cによって3つの区画に分けられている。なお、コンタクト電極21は、各構成部である第1反射面電極片21A〜第3反射面電極片21Cが他の構成部を介して相互に接続されており、連続的な形状を有している。
【0034】
図4において、ショットキー電極51は中央の区画に配置され、表面電極片52A〜52D(すなわち第2電極片)は第2反射面電極片21B及び第3反射面電極片21Cと平行に配置されている。また、表面電極片52A〜52Dと、第2反射面電極片21B及び第3反射面電極片21Cとは、等間隔で配置されている。すなわち、第2反射面電極片21Bと表面電極片52Aとの間隔(水平電極間距離L)、第3反射面電極片21Cと表面電極片52Aとの間隔(水平電極間距離L)、第3反射面電極片21Cと表面電極片52C、52Dとの間隔(水平電極間距離L)、第3反射面電極片21Cと表面電極片52Bとの間隔(水平電極間距離L)、第2反射面電極片21Bと表面電極片52Bとの間隔(水平電極間距離L)はすべて等しい。ここで、水平電極間距離とは、オーミック電極52とコンタクト電極21を半導体発光積層体10の主面と平行な同一平面に投影した場合における距離を意味しており、半導体発光積層体10の厚みを考慮した実際の距離を意味するものではない。
【0035】
本実施例においては、コンタクト電極21の配線形状は、半導体発光素子1の中心点を回転中心としたときに2回回転対称となるようにパターニングされている。
【0036】
オーミック電極52を挟む両側にコンタクト電極21が配置される。すなわち、コンタクト電極21は、オーミック電極52を囲むように形成され、オーミック電極52の各電極片は、コンタクト電極21によって囲まれた領域の中央に配置されている。
【0037】
以上のことから、本実施例の半導体発光素子1においては、オーミック電極52と、コンタクト電極21とは、半導体発光積層体10の厚み方向において互いに重ならないように配置され、いわゆるカウンタ電極が構成されている。まず、MB構造の半導体発光素子1では、半導体発光積層体の厚みが、上面視におけるオーミック電極52とコンタクト電極21との距離と比較して極めて小さいため、面内(X−Y)の電流経路と垂直方向(Z)の電流経路を比較した場合、面内の電流経路が支配的となる(垂直方向の電流経路<<面内方向の電流経路)。カウンタ電極の配置を、表面電極片52A、52B、に対し、反射面電極片21B、21Cを平行に配置することにより、表面電極片52A、52Bと反射面電極片21B、21Cとの間を最短距離で通る電流経路であって、表面電極片52A、52Bと反射面電極片21B、21Cの伸長方向と垂直な方向の電流経路を、面内の電流経路の主として生じさせることができる。つまり、カウンタ電極における表面電極片と反射面電極片を平行に配置することで、面内方向の電流経路を該電極片に垂直な一方向を主とするように制御することができる。尚、反射面電極片21Aと表面電極片52A、52Bとの間においても、電流経路は生じ、表面電極片52A、52Bと反射面電極片21B、21Cの伸長方向と垂直な方向以外の電流経路も多少は生じている。かかる電極構成とすることで、オーミック電極52の面積を小さくしても、半導体層10内に広く電流を拡散させることが可能となる。従って、光取り出し面における電極の被覆率を低減することができ、光取り出し効率を向上させることが可能となる。また、かかるカウンタ電極構成を用いることにより、光取り出し面側電極と反射面側電極の間の距離を短くすることができるため、順方向電圧を小さくすることが可能になる。
【0038】
図5に示すように、粗面化による光取り出し粗面RSの複数の錐状突起PTは、主電流経路にほぼ垂直に配向されている。すなわち、図5において、破線の矢印で示す主電流経路の主方向をX方向、X方向に垂直な、表面電極片52A、52Bと反射面電極片21B、21Cの伸張方向をY方向として示すと、複数の錐状突起PTは、それらの軸方向が反射面側電極片21B,21C及び表面電極片52A〜52Dの長手伸長方向に垂直な方向Xに交差又は傾く方向に配向されている。よって、図2に示すように、電流経路の主方向と突起の向きが制御されているため、粗面RSにおいて電流経路(X方向)に向いている突起がなくなる。これより、突起PTの先端に電界集中が生じなくなり、素子の静電耐圧は向上する。
【0039】
ここで、錐状突起PTの軸は、突起の底面(支持基板に平行な面)の重心と突起の頂点を結ぶ軸である。錐状突起の底面や底面の重心を画定することが難しい場合には、図6に示すように、錐状突起PTの頂点を含み主電流経路を画定する電極伸長方向に沿った半導体発光積層体の断面を切り出し、突起の頂角を二等分する線分を作成し、かかる二等分線分を錐状突起PTの軸とする。
【0040】
錐状突起PTの軸と主電流経路の方向とのなす角度は、90度±26度とされる。これは、電流経路の主方向と突起の軸の方向を略垂直とすることで、電界集中の生じ易い突起先端への電界集中が生じにくくなるためである。
【0041】
支持基板の半導体発光積層体上における、錐状突起の軸は、主電流経路の方向に対して90度±26度、すなわち、相互に平行な反射面側電極片と表面電極片の伸長方向に対し±26度とされている。つまり、図7に示すように、錐状突起PTの軸のX−Y平面上で作る角度θは、カウンタ電極(反射面側電極片21B,21C及び表面電極片52A〜52Dの伸長方向)の長手伸長方向に対して±26°好ましくは±10°である。なお、図7において、X軸は電流経路の主方向であり、Y軸は電極片伸長方向であり、Z軸は半導体発光積層体厚さ方向である。錐状突起PTの軸の傾きは、錐状突起PTの軸のX−Y平面投影像(一点鎖線矢印)のY軸とのなす角度θと錐状突起PTの軸のY−Z平面投影像(二点鎖線矢印)のY軸とのなす角度Φと、で表される。
【0042】
錐状突起PTの軸と支持基板40の面とのなす角度を錐状突起PTの傾斜角Φとすると、傾斜角Φは、90°未満であれば、特に制限されない。
【0043】
本実施例の素子について、突起の傾斜角を変化させて、傾斜角Φと輝度や静電破壊電圧との関係を確認したところ、少なくとも、錐状突起PTの傾斜角Φが40°以上62°以下の範囲において、高い光取り出し効率と高い静電耐圧を得ることができた。
【0044】
錐状突起PTの傾斜角Φは、本実施例の40°≦Φ≦62°に限られず、0°≦Φ≦80°の範囲で高い静電耐圧を得ることができると考えられるが、高い光取り出し効率と高い静電耐圧の両立することができる領域を考慮して、30°≦Φ≦70°の範囲が好ましい。
【0045】
本実施例では、Si基板などの支持基板支持基板上に接合層、反射層、半導体発光積層体(第1半導体層、活性層及び第2半導体層)で構成された半導体発光素子において、半導体発光積層体の両面で反射面側電極(反射面側電極片、すなわち第1電極片)と光取り出し面側電極(表面電極片、すなわち第2電極片)が配置されており、これら電極は上面視野で対向しているMB構造で構成される。これより、半導体発光積層体の面内(XY)の電流経路を1方向に制御する。さらに、本実施例では、光取り出し面側半導体層表面の粗面化による突起の構造は、突起の先端方向がカウンタ電極の電流経路の主方向に対し直交し、1軸方向(垂直方向)に向いて配向されている形状を持つ。
【0046】
突起は、軸が電流経路の主方向に対し直交(±26度は許容)していれば良く、突起のサイズや配置は一定に制御されていても、ランダムでも良い。ただし、突起のサイズは200〜1000nm(サイズが発光波長の1/4以下になると効果が減少、また数μm以上では電流拡散に支障がでる)の範囲で、錐状の突起を持っていることが光取り出し効率向上においては好ましい。
【0047】
粗面化により作製された突起と電極との距離を短くすることは、光取り出し面側の粗面化被覆率を向上できるため、極力短くすることが望ましい。一方、半導体発光素子の製造面では電極の位置精度など工程上の公差が必要であるため、突起と電極との距離は3μm以下、または、表面電極片の電極幅の1/2程度以下とすることがより好ましい。突起端から電極端までの距離すなわち、粗面表面の突起と表面電極片までの最短の距離は、図5に示すように、表面電極片52A,52B,52C,52Dのそれぞれの周りの粗面化されていない表面(電極保護領域NRS)の幅Wとなる。電流経路の主方向と突起の向きが制御されて電流経路(X方向)に向いている突起がなくなるため、突起の向きが電流経路に対して制御されていないものと比較して、かかる電極保護領域幅Wを狭くすることができ、電極保護領域幅Wを狭くしても静電耐圧の低下が生じなくなる。
【0048】
次に、半導体発光素子の製造方法について説明する。図8(a)〜(d)、図9(a)〜(c)は、半導体発光素子の製造方法を示す断面図である。
【0049】
[半導体発光積層体形成工程]
半導体発光積層体は、有機金属気相成長法(MOCVD法)により形成される。半導体発光積層体の結晶成長に使用する成長基板として、例えば、(100)面から[011]方向に15°傾斜させた厚さ300μmのn型GaAs基板を使用する。
【0050】
先ず、図8(a)に示すように、成長基板60上に層厚3μmのn型クラッド層11を形成する。例えば、成長基板60の上に、Siがドープされた(Al0.7Ga0.30.5In0.5P(キャリア濃度:1×1018cm−3)のn型クラッド層11を積層する。続いて、n型クラッド層11上に活性層12を形成する。活性層12は、(Al0.1Ga0.90.5In0.5Pからなる厚さ10nmの井戸層と(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなる厚さ10nmの障壁層とを交互に15回繰り返して積層する。
【0051】
続いて、活性層12上に、層厚1μmのMgがドープされたAl0.5In0.5P(キャリア濃度:5×1017cm−3)のp型クラッド層13を積層する。更に、p型クラッド層13上に層厚1μmのMgがドープされたGaP(キャリア濃度:3×1018cm−3)のp型コンタクト層14を積層する。
【0052】
これらの各層により半導体発光積層体10が構成される(図8(a))。
【0053】
なお、V族原料としてホスフィン(PH)を使用し、III族原料としてトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMI)の有機金属を使用することができる。また、n型不純物であるSiの原料としてシラン(SiH)を使用し、p型不純物であるMgの原料としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を使用することができる。成長温度は750〜850℃であり、キャリアガスに水素を使用し、成長圧力は10kPaである。
【0054】
なお、本実施例では、AlGaInP系を用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、InGaN系材料など、他の材料を用いることができる。
【0055】
また、本実施例では、成長基板として15°傾斜したものを用いたが、オフ角は、AlGaInPが成長可能な範囲であればよく、4°オフ基板を用いても同様に成長可能であることを確認している。後述する光取り出し構造の形成工程において、異方性エッチングにより突起を形成することを考慮すれば、10°以上25°以下のオフ基板を用いることで、より光取り出し効率の高い傾斜角をもつ突起が作製されるため、好ましい。
【0056】
また、本実施例においては、成長基板として、(100)面から[011]方向に傾斜した基板を用いたが、(100)面に限定されず、これに等価な結晶面{100}面((100)、(−100)、(010)、(0−10)、(001)、(00−1)面を含む)から任意の方向に傾斜した基板を用いることができる。
【0057】
[反射絶縁層形成工程]
次に、図8(b)に示すように、プラズマCVD法により、p型コンタクト層14上に反射絶縁層20を構成するSiO膜をp型クラッド層13上に形成する。
【0058】
[反射面側コンタクト電極形成工程]
続いて、SiOの反射絶縁層20上に所定開口パターンを有するレジストマスクを形成した後、バッファードフッ酸(BHF)を用いたエッチングを反射絶縁層20に施すことにより、反射絶縁層20にコンタクト電極用のパターンに対応した貫通開口部を形成し、当該開口部においてp型コンタクト層14が露出させ、抵抗加熱蒸着法、スパッタ法又はEB蒸着法の公知の成膜技術により、AuZnからなるコンタクト電極21を充填し、レジストマスクを除去して、図8(c)に示すように、反射絶縁層20に形成された貫通開口においてp型コンタクト層14と接触する。主電流経路を画定するための線状の反射面側電極片が形成されるよう反射面側コンタクト電極を配置する。
【0059】
[第1接合層形成工程]
次に、スパッタ法によって反射絶縁層20上にTaN(層厚:100nm)、TiW(層厚:100nm)、TaN(層厚:100nm)を順次堆積させ、バリアメタル層を形成する。なお、バリアメタル層は、Ta、Ti、Wなどの他の高融点金属若しくはこれらの窒化物を含む単層又は2以上の層により構成されていてもよい。また、バリアメタル層の形成には、スパッタ法以外にEB蒸着法を用いることが可能である。その後、約500℃の窒素雰囲気下で熱処理を行う。これにより、コンタクト電極21とp型コンタクト層14との間で良好なオーミック接触が形成される。
【0060】
次に、抵抗加熱蒸着法、スパッタ法又はEB蒸着法の公知の成膜技術によりバリアメタル層の上にNi(層厚:300nm)、Au(層厚:30nm)を順次形成し、共晶半田層を形成する。これにより、図8(d)に示すように、バリアメタル層と共晶半田層とからなる第1接合層31が反射絶縁層20上に積層される。
【0061】
[支持基板接合工程]
次に、半導体発光積層体10を支持するための支持体40を形成する。例えば、支持基板41として、p型不純物を添加することにより導電性が付与されたSi基板を準備し、EB蒸着法により、支持基板41の両面にPtからなる厚さ200nmのオーミック金属層42及び43を形成する。これにより、支持基板41、オーミック金属層42及び43からなる支持体40が形成される。オーミック金属層42及び43は、Ptに限らずSi基板との間でオーミック接触を形成し得る他の材料、例えばAu、Ni、Tiなどを用いることができる。また、支持基板41は、導電性及び高熱伝導性を備えた他の材料、例えばGe、Al、Cuなどで構成されていてもよい。
【0062】
次に、スパッタ法により、オーミック金属層43の上にTi(層厚:150nm)、Ni(層厚:100nm)、AuSn(層厚:600nm)を順次堆積して第2接合層32を形成する。AuSn層は、共晶接合材として使用され、組成はAuが70〜80wt%、Snが20〜30wt%であることが望ましい。Ni層は、共晶接合材に対する濡れ性を向上させる機能を有する。Niの代替としてNiVやPtを使用することも可能である。Ti層は、Niとオーミック金属層43との密着性を向上させる機能を有する。
【0063】
次に、半導体発光積層体10と支持体40とを熱圧着により接合する。半導体発光積層体10側の第1接合層31と支持体40側の第2接合層32とを密着させ、1MPa(メガパスカル)、330℃の窒素雰囲気下で10分間保持する。支持体40側の第2接合層32に含まれる共晶接合材(AuSn)が溶融して、半導体発光積層体10側の共晶半田層(Ni/Au)との間でAuSnNiを形成することにより、図9(a)に示すように、支持体40と半導体発光積層体10とが接合される。すなわち、当該熱圧着により第1接合層31と第2接合層32とからなる接合膜30が形成される。
【0064】
[成長基板除去工程]
次に、半導体発光積層体10の結晶成長に使用した成長基板60をアンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いたウェットエッチングにより、図9(b)に示すように、除去する。なお、成長基板60を除去する方法として、ドライエッチング法、機械研磨法、化学機械研磨法(CMP)を用いてもよい。
【0065】
[光取り出し面側電極形成]
成長基板10を除去することにより表出したn型クラッド層11上にオーミック電極52、ショットキー電極51及び接続配線53を形成する。主電流経路を画定するため、反射面側電極片に平行となるような線状の表面電極片が形成されるようオーミック電極52を配置する。例えば、n型クラッド層11との間でオーミック接触を形成するAuGeNiをEB蒸着法によりn型クラッド層11上に堆積させた後、リフトオフ法によりパターニングを行ってオーミック電極52を形成する。続いて、EB蒸着法によりn型クラッド層11との間でショットキー接触を形成するTi(100nm)をn型クラッド層11上に堆積させ、更にTi上にAu(1.5μm)を堆積する。その後、リフトオフ法によりパターニングを行って、図9(c)に示すように、ショットキー電極51及び接続配線53をn型クラッド層11上に形成する。オーミック電極52の材料としてAuGe、AuSn、AuSnNiなどを使用することも可能である。また、ショットキー電極43としてTa、W若しくはこれらの合金又はこれらの窒化物を使用することも可能である。
【0066】
次に、n型クラッド層11とオーミック電極52との間でオーミック接触の形成を促進させるために400℃の窒素雰囲気下で熱処理を施す。
【0067】
[光取り出し構造の形成工程]
次に、n型クラッド層11の表面を微細加工することにより光取り出し効率向上のための光取り出し構造の粗面RSを形成する。例えば、光取り出し面側の電極形成領域(ショットキー電極51、オーミック電極52及び接続配線53)上にマスクを設けた後に、ウェットエッチングによりn型クラッド層11の表面を粗面化することにより、図9(d)に示すように、光取り出し構造の粗面RSを形成できる。粗面RSに複数の錐状突起を形成し、電流経路の主方向に対し突起の向きを1軸方向(電流経路の主方向にほぼ垂直方向)に配向する異方性エッチングを施すことにより、突起先端の電界集中を抑制し、素子の静電耐圧を向上させることができる。異方性エッチング(粗面化)については後述する。
【0068】
また、フォトリソグラフィ及びリフトオフ法によりn型クラッド層11上に人工的周期構造のマスクを形成した後に、ドライエッチングによりn型クラッド層11の表面に三角格子配列、周期300〜1000nm(例えば、500)nm、高さ600nm、アスペクト比0.7〜1.5(例えば、1.2)の複数の円錐状の突起を形成して光取り出し構造の粗面RSを形成することもできる。なお、マスクパターンの形成には、電子線描画(EB)リソグラフィ、ナノインプリントなどの微細加工技術を使用することも可能である。また、光取り出し構造の粗面RSを構成する突起の形状は、円錐状に限らず円柱状や角錐状であってもよい。
【0069】
以上の各工程を経て半導体発光素子1が完成する。
【実施例】
【0070】
[本実施例で作製した半導体発光素子の構成]
本実施例の半導体発光素子は、MOCVD法(有機金属気相成長法)により、結晶主軸が(100)方向から15度オフしたn型GaAs基板からなる半導体基板上で作製した。この基板上に作製されたn型(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層からなるn型クラッド層(約3μm、Siドープ、キャリア濃度 1×1018cm−3)と、AlGaInPで構成される活性層(井戸層(Al0.1Ga0.90.5In0.5P、10nm、障壁層(Al0.5Ga0.50.5In0.5P、10nmからなる多層量子井戸構造)と、Mgを添加したAl0.5In0.5Pからなるp型クラッド層(約1μm、Mgドープ、キャリア濃度5×1017cm−3)と、p型のGaPからなるp型コンタクト層(約1μm、Mgドープ、3×1018cm−3)と、で構成されている(図1乃至図5、参照)。
【0071】
GaAs基板上に作製された半導体発光素子をGaAs基板とは異なる材料からなるSi支持基板に、AuSn層を含む多層金属接合層を介した熱圧着により貼り合わせを行った。半導体発光素子と多重金属接合層の間には、反射絶縁層(SiO)が導入されており、電気的な接触を得るため、反射絶縁層は一部エッチングにより除去され、AuZnからなるコンタクト層が挿入されている。
【0072】
次に、成長に用いたGaAs基板をアンモニア、過酸化水素水系のエッチング混合液により除去することで、金属接合層、反射絶縁層及び上記MOCVD法で結晶成長させたAlGaInP半導体積層構造の半導体発光積層体がSi支持基板上に形成されることになる。
【0073】
成長基板には15度オフしたn型GaAs基板を用いたがオフ角はAlGaInPが成長できる範囲であれば構わなく、4度オフ基板を用いても同様な効果が得られることを確認している。また上記層厚み、キャリア濃度でなくても本効果を得られることは明白である。
【0074】
[本実施例で作製したカウンタ電極の構成]
半導体層に電流を注入する光取り出し面側オーミック電極と反射面側コンタクト電極は上面視野で重ならないよう対向して配置されている(図1乃至3、参照)。
【0075】
各々の電極片の線幅は被覆率を小さくするために10μm以下、好ましくは、5μm以下で構成されている。
【0076】
また、本実施例では、光取り出し面側ショットキー電極は、直径が100μmのボンディングパッド部とそこから十字に伸びる細線からなる。光取り出し面側オーミック電極の電極片は、該ショットキー電極の細線の端部に接続して、線幅5μmの直線状に形成され、相互に平行に配置されている。反射面側コンタクト電極も直線状の電極片から形成され、その一部は、上面視において光取り出し面側オーミック電極の電極片に対し平行となるよう配置されている。
これにより、半導体発光積層体の面内の電流経路の主方向を一方向に制御した。
【0077】
尚、光取り出し面上への突起形成を異方性エッチングにより形成する場合には、突起の軸の方向に、主の電流経路を画定する電極片の伸長方向が沿うものとなるように、カウンタ電極を配置する。
【0078】
[本実施例で作製した突起の構成]
AlGaInPの結晶の持つ異方性を利用して、一方向に配向された光取り出し構造の粗面を形成した。光取り出し面側の粗面化の突起はハロゲン系のエッチャント、即ちCl、Br、I、Fを含むエッチャント(例えば、HCl、HBr、HI、BCl、Cl等のHBr、HCl、HF系のエッチング液)を用いて作製できる。
【0079】
本実施例では、(100)面から[011]方向に15°傾斜させたGaAs成長基板(いわゆる15°オフ基板)を使用して、AlGaInP系半導体発光積層体を成長させている。その後、その半導体発光積層体を支持基板へ接合した後に半導体発光積層体から成長基板を剥がしているので、半導体発光積層体の表面(光取り出し面)の(−100)面から(0−1−1)面に15°傾斜した面が現れている。ここで、光取り出し面を、混合比がHBr:HO=1:3のエッチャントで異方性エッチング(粗面化)を施すと、光取り出し面の(111)B面が(111)A面より早くエッチングが進行するため、結果として(111)A面が光取り出し面に形成され、(−100)面上に(111)Aの面方位を持つ錐状突起が形成される。
【0080】
このように、異方性エッチングを利用し作製された錐状突起はカウンタ電極の電流経路の主方向に対して垂直方向に先端が配向される。
【0081】
粗面化による突起の向きは、光取り出し面の(−100)面上の[011]方位に平行(また[0−1−1]の方位とも等価)に作製されている。カウンタ電極の長軸方向が[011]と平行な場合、電流経路との関係は垂直となり、電界集中が抑制される。またカウンタ電極の長軸方向が[011]と垂直な場合、電流経路との関係は平行となり、電界が集中し静電耐圧が低下することになる。
【0082】
図10に、一方向(Y)に突起が配向された光取り出し構造の粗面を撮影した顕微鏡写真、その拡大図及び素子の断面写真を示す。図10には、作製した素子の結晶方位を附記してある。
【0083】
また、本実施例では突起のサイズ(差し渡し)を500nm程度の大きさとしたが、200〜1000nm(サイズが発光波長の1/4以下になると効果が減少、また数μm以上では電流拡散に支障がでる)程度で、錐状の突起であればこのサイズに限定されるものではない。
【0084】
尚、本実施例においては、成長基板として、(100)面から[011]方向に傾斜した基板を用いたため、成長基板を除去して露出した面であって、突起形成のための異方性エッチングを施す面が、(−100)面から(0−1−1)面方向に15°傾斜した面であったが、これに限定されず、{100}面から任意の方向に傾斜した面を用いることができる。また、当該露出面の{100}面からの傾斜角度は、10°以上25°以下の角度であることが好ましい。
【0085】
また、本実施例においては、(−100)面から(0−1−1)面方向に15°傾斜した面にエッチングを施したため、(111)A面と(111)B面とのエッチングレートの差を利用したが、上記の通り、{100}面から任意の方向に傾斜した面をエッチングすることができるため、{111}A面と{111}B面とのエッチングレートの差を利用することができる。
【0086】
[本実施例で作製した光取り出し面電極保護領域の構成]
光取り出し面の異方性エッチングによる粗面化の工程を考えると電極保護領域幅W(図5、参照)は広い方が好ましいが、光取り出し効率向上の観点からは、粗面化面積を広く取ることが好ましいため、電極保護領域幅Wは狭いほうが好ましい。本実施例では光取り出し面側の表面電極片の電極保護領域幅Wを2.00μm乃至3.25μmまでの3パターンサンプルを作製した。粗面化されていない被覆率は、それぞれ2.00μmの時10.8%、2.25μmの時11.4%、また3.25μmの時13.8%となる。
【0087】
[本実施例以外のカウンタ電極と錐状突起の関係]
本実施例では粗面化より作製される突起の軸の向きと、カウンタ電極の電流経路の主方向を画定する相互に平行な反射面側電極片と表面電極片の伸長方向とのなす角度θが略0°(平行方向)となるように作製したが、静電耐圧向上の効果は、角度θが0°±26°の範囲で得ることができ、角度θが0°±10°の範囲が好ましい。つまり、突起の軸の向きは、電流経路の主方向に対して、90°±26°の範囲とすることができ、90°±10°の範囲が好ましい。
【0088】
[比較例1:光取り出し面粗面化(ランダム)]
比較例1では、光取り出し面側の粗面化にドライエッチングを用いて突起を作製した。光取り出し面がランダムに構成され突起の形状及びサイズは制御されず、大小さまざまな突起を電流経路の主方向に対しランダムに形成した以外、他の工程は上記実施例と同一である。
【0089】
電極保護領域幅Wについては本実施例と同様に3パターン作製した。
【0090】
[比較例2:突起傾斜電流経路に垂直でない場合]
比較例2では、光取り出し面の突起の向きがカウンタ電極の電流経路の主方向に対して平行となるように異方性エッチングを利用し突起を作製した以外、他の工程は上記実施例と同一である。電極保護領域幅W(図5)については本実施例と同様に3パターン作製した。
【0091】
[実施例と比較例の静電耐圧と明るさの関係]
ダイシングなどによりチップ分離を行い、切り分けられた発光素子をステムにダイボンディングし、光取り出し面側電極にワイヤーボンディングを行い結線した。
【0092】
その後、発光素子の明るさの評価や静電耐圧試験を行い、特性評価を行った。
【0093】
また、実施例、比較例1及び比較例2の素子のそれぞれについて、電極保護領域幅Wが2μm、2.25μm、および3.25μmとした素子を作製し、各素子の輝度と静電破壊電圧を測定した。静電破壊電圧の試験は、JEDECの規格のJESD22−A114−Bに基づいて行った。測定結果について、輝度については、本発明の実施例の構成で電極保護領域幅が2μmの素子の測定結果を1.0として、静電破壊電圧については、本発明の実施例の構成で電極保護領域幅が3.25μmの素子の測定結果を1.0として、規格化した値を、表にまとめ、図11に示した。
【0094】
[静電耐圧と電極保護領域幅Wの関係]
図12に比較例1の光取り出し面の粗面化をランダムに行った場合、及び比較例2の粗面化に異方性エッチングを利用した突起の軸の方向が電流経路の主方向に対し、垂直でなく平行な場合の静電破壊電圧と電極保護領域幅W(図5)の関係を示す。突起と電極間の距離が狭くなるほど静電破壊電圧が低く、静電耐圧が低くなることが分かる。これは突起の向きが電極方向に向くと電界集中を起こし、さらに、突起と電極との距離が近くなると電流密度が高くなるため静電破壊を起こし易いためである。
【0095】
次に、図13に、本発明の実施例である、光取り出し面の粗面化に異方性エッチングを利用し、突起の軸の方向を電流経路の主方向に垂直となるよう揃えた場合の結果を示す。この場合、突起先端に電界集中が起こらないように突起の軸の向きを制御しているため、電極保護領域幅W(図5)を狭くしても静電耐圧の低下が起こらないことが分かる。これらの結果より電流経路の1軸方向への制御と電流経路に対し作製される突起の向きを1軸方向(電流経路の主方向に略垂直方向)に配向することで、電界集中を抑制し静電耐圧を向上させることができる。
【0096】
[明るさと電極保護領域幅Wの関係]
図14に比較例1の光取り出し面の粗面化をランダムに行った場合、及び比較例2の粗面化に異方性エッチングを利用し、突起先端の向き(突起の軸の向き)が電流経路の主方向に平行な場合における、素子の光束と、電極保護領域形成幅Wとの関係を示す。電極保護領域幅W(図5)が狭くなるほど粗面化の面積(突起被覆面積)が増えるため明るくなる。しかし、突起の軸がランダムの場合、電流経路の主方向に平行な場合のいずれにおいても、静電耐圧との関係は、明るさと静電耐圧の向上を同時に満たせない。
【0097】
次に、図15に、本発明の実施例である、光取り出し面の粗面化に異方性エッチングを利用し、突起先端の向き(突起の軸の向き)が電流経路の主方向に垂直となるようにそろえた場合における、素子の光束と、電極保護領域幅Wとの関係を示す。この場合も粗面化された領域と電極との間の距離(電極保護領域幅W)が狭くなるほど粗面化による粗面化被覆率(粗面化される面積)が増えるため明るくなることがわかる。また、静電耐圧との関係は、図13を参照しても、比較例1、2のようなトレードオフの関係ではなく、静電耐圧を維持したまま明るさを向上することができ、静電耐圧と明るさの向上が両立することができることがわかる。
【0098】
以上、本発明の本実施例の半導体発光素子は静電耐圧の低下を招くことなく、光出力を向上させることが可能なものである。
【0099】
[変形例1]
図16(a)は、半導体発光素子1における電極パターンを変更した変形例の半導体発光素子の平面図である。なお、変形例1は光取り出し面側と反射面側の各電極のレイアウト以外は、半導体発光素子1と同様である。変形例1では、上述した半導体発光素子1と同様に、正方形の光取り出し面側において円形のショットキー電極51、オーミック電極52(表面電極片52E(第1表面電極片部52E1〜第3表面電極片部52E3),表面電極片52F)、接続配線53が形成され、反射面側においてコンタクト電極21(第1反射面電極片21D1〜第8反射面電極片21D8)が形成されている。ショットキー電極51は光取り出し面の中央に配置されている。ショットキー電極51には、半導体発光素子1の各コーナ部に向けて伸びる4本の線状の接続配線53が接続している。4本の接続配線53の各々には、これらと交差するように線状のオーミック電極52が設けられている。ショットキー電極51及びオーミック電極52からなる表面電極は、半導体発光素子1の中心点を回転中心としたときに、4回回転対称(90°回転すると重なる)となるようにパターニングされている。よって、図16に示す半導体発光素子1の正方形の光取り出し面は対称な上下左右部分に分けて電極構造を説明する。
【0100】
例えば、図16(b)の変形例1に形成された突起を省略した半導体発光素子1の図の右上部分について説明すると、第1表面電極片部52E1に対し、第4反射面電極片21D4、及び第6反射面電極片21D6は平行に配置され、第1表面電極片部52E1と第4反射面電極片21D4との水平電極間距離Lが、第1表面電極片部52E1と第6反射面電極片21D6との水平電極間距離Lと等しくなるように第1表面電極片部52E1が配置されている。また、第2表面電極片部52E2に対し、第5反射面電極片21D5、及び第7反射面電極片21D7は平行に配置され、第2表面電極片部52E2と第5反射面電極片21D5との水平電極間距離Lが、第2表面電極片部52E2と第7反射面電極片21D7との水平電極間距離Lと等しくなるように第2表面電極片部52E2が配置されている。更に、第3表面電極片部52E3、および表面電極片52Fに対し、第1反射面電極片21D1、および第8反射面電極片21D8は、同心円上の円弧として平行に配置され、第3表面電極片部52E3と第1反射面電極片21D1との水平電極間距離Lが、第3表面電極片部52E3と第8反射面電極片21D8との水平電極間距離L、及び第8反射面電極片21D8と表面電極片52Fとの水平電極間距離Lと略等しくなるようにそれぞれが形成されている。本変形例の半導体発光素子1においては、ショットキー電極51及びオーミック電極52からなる表面電極と、コンタクト電極21とは、半導体発光素子1の中心点を回転中心としたときに4回回転対称となるようにパターニングされているため、図16に示された半導体発光素子1の他の部分(すなわち、右下、左上、左下の部分)も上述した構成と同一である。上記の各電極の配置とすることにより、上面視において、相互に平行に配置された光取り出し側の電極片と反射面電極片によって、各領域における電流経路の主方向が画定される。
【0101】
図16(a)に示すように、粗面RSにおける複数の錐状突起PTは、それらの軸方向が反射面側反射面電極片21D1〜21D8及び表面電極片52E,52F2の長手伸長方向に略平行にそれぞれ配向されている。かかる突起は異方性エッチングではなく、パターニングとドライエッチングで作製することができるため、錐状突起PTを同心円の周縁に沿うように円弧状に配向したり、部分的に平行に配向させる配置も可能となる。
【0102】
また、本例の半導体発光素子1は、反射面側電極片及び表面電極片が平行となるように配置された部分(第1表面電極片部52E1、第2反射面電極片21D2、第4反射面電極片21D4及び第6反射面電極片21D6と第2表面電極片部52E2、第3反射面電極片21D3、第5反射面電極片21D5及び第7反射面電極片21D7)を含み、さらに、同心円の円弧となるように配置された部分(、第1反射面電極片21D1、第3表面電極片部52E3、第8反射面電極片21D8及び表面電極片52F)を含むので、電流経路の制御も可能となり、光取り出し面側の電極の面積の増加や半導体発光積層体の厚さの増加を抑えつつ、局所的な電流集中を防止して均一な発光分布を得ることができる。
【0103】
また、本例では、光取り出し面側の電極と反射面側の電極を含めた全体の電極形状が、半導体発光素子1の中心点を回転中心としたときに4回回転対称となるようにパターン形成されている。これにより、本例の半導体発光素子1とレンズなどとを組み合わせて照明装置を構成した場合に、等方的な配光を得ることができる。
【0104】
[変形例2]
図17(a)は、半導体発光素子1における電極パターンを変更した他の変形例の半導体発光素子の平面図である。本例は、変形例1の反射面側電極片及び表面電極片が平行となるように配置された部分を形成せずに反射面側電極片及び表面電極片すべてが同心円となるように配置された以外、変形例1と同一である。変形例2では、正方形の光取り出し面側において、円形のショットキー電極51と、十字に伸びる接続配線53を介してショットキー電極に接続された同心の円環状のオーミック電極52が形成され、反射面側においてオーミック電極に内外で等距離(水平電極間距離L)離れた2つの円環状のコンタクト電極21(図17(b))が形成されている。
【0105】
電極が円状のカウンタ電極となり、突起の向きもドライエッチングにて制御することで電流経路も制御できるため変形例2は、光取り出し面側の電極の面積の増加や半導体発光積層体の厚さの増加を抑えつつ、局所的な電界集中を防止して光出力と静電気耐圧を向上できる。
【0106】
なお、上記の半導体発光素子においても、各層の導電型を入れ替(各層におけるn型とp型とを入れ替)えても良い。更に、上述した半導体発光素子おける各層の層厚及びキャリア濃度は例示にすぎず、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 半導体発光素子
10 半導体発光積層体
11 n型クラッド層
12 活性層
13 p型クラッド層
20 反射絶縁層
21 コンタクト電極
22 誘電体膜
30 接合膜
40 支持体
51 ショットキー電極
52 オーミック電極
53 接続配線
RS 粗面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に形成された第1半導体層、前記第1半導体層の上に形成された活性層、および、前記活性層の上に形成された第2半導体層、からなる半導体発光積層体と、を含む半導体発光素子であって、
前記第1半導体層の前記支持基板側に設けられ、前記第1半導体層とオーミック接触し、少なくとも1つの線状の第1電極片を含む第1電極と、
前記第2半導体層の上に設けられ、前記第2半導体層とオーミック接触し、少なくとも1つの線状の第2電極片を含む第2電極と、
前記第2の半導体層上に形成された複数の錐状突起と、を有し、
前記第1電極片と前記第2電極片とは、前記半導体発光積層体の積層方向に重ならずに配置され、
前記第1電極片と前記第2電極片とは、上面視において平行に配置され、
前記複数の錐状突起のうち、上面視において、相互に平行に配置された前記第1電極片と前記第2電極片との間に位置する錐状突起は、その軸が、いずれも、該第一電極片と該第2電極片の伸長方向との成す角度が、±26度の範囲内であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記複数の錐状突起の軸と、前記支持基板の表面とのなす角度は、30度以上70度以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1電極片および前記第2電極片は、支持基板の対向する二辺に平行に複数設けられ、
前記複数の錐状突起の軸は、いずれも、第一電極片と該第2電極片の伸長方向との成す角度が、±26度の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
成長基板の表面上に第1半導体層、前記第1半導体層の上に形成された活性層、及び、前記活性層の上に形成された第2半導体層、からなる半導体発光積層体を形成する工程と、
前記第2半導体層の上に、前記第2半導体層とオーミック接触する線状の第2電極片を含む第2電極を形成する工程と、
前記第2電極の形成された半導体発光積層体に、支持基板を接合する工程と、
前記半導体発光積層体から前記成長基板を除去する工程と、
前記第1半導体層の上に、前記第1半導体層とオーミック接触する線状の第1電極片を含む第1電極を形成する工程と、
前記第1半導体層の上の前記第1電極の形成されていない領域に複数の錐状突起を形成する工程と、を含み、
前記第1電極形成工程において、前記第1電極片は、前記第2電極片と、前記半導体発光積層体の積層方向に重ならずに配置され、
前記第1電極形成工程において、前記第1電極片と前記第2電極片とは、上面視において平行に配置され、
前記錐状突起を形成する工程において、前記複数の錐状突起のうち、上面視において、相互に平行に配置された前記第1電極片と前記第2電極片との間に位置する錐状突起は、軸が、前記第一電極片と前記第2電極片の伸張方向との成す角度が、±26度の範囲内で配向するように、形成されること、を特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記錐状突起を形成する工程は、前記第1半導体層の上に異方性エッチングにより形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記成長基板には、{100}面から10°以上25°以下の角度で傾斜したGaAs基板を用い、
前記半導体発光積層体は、AlGaInP系材料からなり、
前記第1半導体層は、AlGaInP系材料からなり、
前記第2半導体層は、AlGaInP系材料からなり、
前記錐状突起を形成する工程は、前記成長基板を取り除いて露出した前記第2半導体層の表面に、HBr、HCl、HF系のエッチング液を用いて、面方位{111}Aと面方位{111}Bのエッチングレートの差を用いて行われること、を特徴とする請求項5に記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−204478(P2012−204478A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66006(P2011−66006)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】