説明

半導体発光素子

【課題】光取り出し効率が向上した半導体発光素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体発光素子は、半導体層と、前記半導体層の上面に配置された第1電極と、前記半導体層の下面に配置された第2電極と、を備える半導体発光素子であって、前記半導体層の上面は第1領域と、前記第1領域よりも前記半導体層の厚みが厚い第2領域とを有し、前記第1電極はパッド電極と、前記パッド電極から延伸する補助電極と、を備え、前記第1電極は前記第2領域上にあり、前記第2領域は、前記補助電極に沿ったものと、前記補助電極と異なる方向に延伸するものと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層を挟んで導電型の異なる半導体層を有する半導体発光素子において、光取り出し効率向上に関する技術が知られている。従来技術として、垂直構造の窒化ガリウム系LED素子において、発光層及びp型窒化ガリウム層の下面に形成されたp電極表面を凹凸状のプロフィールにすることにより、発光層で発光する光の一部がp電極に吸収または散乱されて消滅することを最小化することや、LED素子の最上部に形成されたn型ボンディングパッドの下面にn型反射電極を形成することにより、光取り出し効率を向上させることが開示されている。さらに、n型反射電極とn型窒化ガリウム層との界面にn型透明電極を備え、電流拡散現象を向上させることもできる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−142420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電極は、反射率の高い金属を用い、形状を凹凸状にしたとしても、金属には光吸収作用があり、反射を繰り返すたびに吸収される光があることが懸念される。
【0005】
また、発光層からの光は、電極だけでなく、半導体層自体にも吸収されることを考慮すると、半導体層は積層方向への厚みが薄いほど光取り出しに有効である。しかし、半導体層を薄くすると、横方向への電流拡散効果が低下する。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、光取り出し効率が向上した半導体発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、前記課題は次の手段により解決される。
【0008】
本発明に係る半導体発光素子は、半導体層と、前記半導体層の上面に配置された第1電極と、前記半導体層の下面に配置された第2電極と、を備える半導体発光素子であって、前記半導体層の上面は第1領域と、前記第1領域よりも前記半導体層の厚みが厚い第2領域とを有し、前記第1電極はパッド電極と、前記パッド電極から延伸する補助電極と、を備え、前記第1電極は前記第2領域上にあり、前記第2領域は、前記補助電極に沿ったものと、前記補助電極と異なる方向に延伸するものと、を有する。これにより、電流拡散効果を有し、且つ光取り出し効率が向上した半導体発光素子とすることができる。
【0009】
また、前記半導体発光素子は、前記第2領域が複数あり、互いに連結されていることが好ましい。これにより、電流拡散効果をさらに向上させることができる。
【0010】
また、前記半導体発光素子は、前記補助電極と異なる方向に延伸するものとは、前記補助電極に沿ったものに対して垂直であることが好ましい。これにより、電極部分以外へ効率良く電流拡散させることができる。
【0011】
また、前記半導体発光素子は、前記第2領域が複数あり、ストライプ状に配列していることが好ましい。これにより、第2領域以外の部分、すなわち第1領域では半導体層が薄いため、発光層からの光の吸収を抑制し、効率良く光を取り出すことができる。
【0012】
また、前記半導体発光素子は、前記半導体層の上面は、粗面であることが好ましい。これにより、光取り出し効率をさらに向上させるとともに、半導体層と電極との密着性を向上させることができる。
【0013】
また、前記半導体発光素子は、前記半導体層は、p型とn型の窒化物半導体層を有し、
前記第2領域は、前記n型窒化物半導体層上に設けられていることが好ましい。これにより、低電圧な半導体発光素子とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体発光素子によれば、光取り出し効率が向上した半導体発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。
【図2】第一の実施形態に係る半導体発光素子を示す概略断面図である。
【図3】第一の実施形態に係る半導体発光素子を示す概略断面図である。
【図4】第二の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。
【図5】第二の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略断面図である。
【図6】第三の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。
【図7】第四の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。
【図8】第五の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。
【図9】第六の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。
【図10】第七の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。
【図11】実施例1と参考例に係る半導体発光素子を、光学顕微鏡で上面から撮影した写真である。
【図12】実施例1と参考例と比較例に係る半導体発光素子の発光強度分布を示すイメージ図である。
【図13】実施例1と参考例と比較例に係る半導体発光素子を順方向電流350mAで駆動したときの光出力及び順方向電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体発光素子やその製造方法を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。
【0017】
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定されるものでは決してない。実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する様態としても良いし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
また、本明細書において、層上などでいう「上」とは、必ずしも上面に接触して形成される場合に限られず、離間して上方に形成される場合も含んでおり、部材と部材との間に介在する部材が存在する場合も包含する意味で使用する。
【0018】
<第一の実施形態>
第一の実施形態について図面を用いて詳述する。図1は、第一の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。図2、3は、第一の実施形態に係る半導体発光素子の概略断面図であり、図2は、図1のA−A’における断面図を、図3は図1のB−B’における断面図をそれぞれ示す。
【0019】
第一の実施形態に係る半導体発光素子100は、支持台103と、この支持台103の上方に位置する半導体層12と、半導体層12を上下に狭む第1電極15と第2電極16と、により主に構成される。また、支持台103は、支持基板104及び接着層105が、この順に積層されて固定される。一方、半導体層12は、発光層113と、この発光層113を挟んで積層された第1導電型半導体層111であるn型半導体層と、第2導電型半導体層112であるp型半導体層とを有する。半導体発光素子100では、第2導電型半導体層112、発光層113、第1導電型半導体層111が、この順に積層して半導体層12を構成しており、半導体層12の上方側に位置する第1導電型半導体層111側が、発光層113からの出射光の主発光面側、すなわち光取り出し側となる。
【0020】
第1電極15及び第2電極16はそれぞれ、第1導電型半導体層111及び第2導電型半導体層112に電力を供給する。具体的に、n型半導体層には、第1電極15であるn電極が形成され、電力供給可能となる。同様に、p型半導体層の主面の一部に第2電極16であるp電極が形成される。
【0021】
第1電極15及び第2電極16は、半導体層12を平面視した際に相互に重なり合わないように配置されている。すなわち、半導体層12を挟んで第1電極15と対向する領域に第2電極16の一部又は全体が配置されないように配置されている。このため第2電極16は、隣接する第2電極16との離間領域を保護膜107で積層して絶縁される。
【0022】
半導体発光素子100の光取り出し側からの平面視において、主に第1導電型半導体層111上の第1電極15の形成パターンが図示されている。第1電極15は、正方形状の半導体層12上面に形成された、一対の線状の電極の延伸部である補助電極11と、各補助電極11の一部に重なるように配置された、外部電源と接続可能なパッド電極10とで構成される。本発明の明細書において、パッド電極が形成される半導体層側を上面とする。
【0023】
半導体発光素子100の平面図には、正方形状の半導体層12上に、一対の線状の補助電極11が平行に配置され、その上に一対のパッド電極10が対角して配置される。一対のパッド電極10及び補助電極11は、半導体層12の対角線を結んだ中心を基準にして略点対称に配置されており、互いに交差することなく離間されており、離間距離は実質的に等間隔である。補助電極11の形状は枝分かれしていない線状であって、細長い一続き状に形成されている。このように、外部からの電力供給領域を対称に配置することで、半導体層12の全面への電流拡散を効率的に実現できる。また、電極の一部が離間されること、好ましくは交差、屈曲部を有さないことで、その外部電源との接続部や、交差、屈曲部の各部における電流、発熱の集中を抑制し、電流密度の均一性と放熱機能の向上が図れる。
【0024】
第一の実施形態では、一対の平行な補助電極11にそれぞれ一つのパッド電極10を設けているが、一つの補助電極11上あるいは半導体層12上に複数のパッド電極10を設ける形態でもよく、例えば、補助電極11と同様に機能するように、半導体層12上において直線状に配置できる他、ジグザグ状等に配列してもよい。
【0025】
補助電極11の延伸程度は上記の範囲に限定されず、上面視で補助電極11を半導体層12の一辺に相当する長さでもって設けてもよい。補助電極11が半導体層12の周縁に達するまで延伸した電極配置により、交差部を有さずして半導体層12に対する補助電極11の配置割合を一層増大させることができるため、電流の偏在を抑制しつつ電流注入でき、発光効率が高まる。
【0026】
第1導電型半導体層111の上面は、第1領域14と、第1領域14よりも半導体層12の厚みが厚い第2領域13と、を備える。第2領域13の厚みは一定でなくてもよく、また第2領域13上には、パッド電極10と補助電極11とを有する第1電極15が設けられる。第2領域13は上面視で補助電極11に沿ったものと、補助電極11から異なる方向に延伸することにより補助電極11から露出するものと、を有する。第2領域13が上面視で補助電極11に沿うとは、補助電極11の外縁形状とほぼ同じ形状を有し、また補助電極11の外縁から露出していてもよい。また、本発明において、補助電極11と異なる方向に延伸して補助電極11から露出する第2領域13を、「延出部」と記載することがある。本実施形態では、上面視において補助電極11に対して垂直な複数の延出部がストライプ状に形成されており、それぞれ半導体層12の周縁部に達している。
【0027】
上面視における延出部の幅は3〜20μm、好ましくは5〜10μmであるが、特に限定されないことに加え、また延出部自体又は延出部先端は四角形状、三角形状、円状、輪形状、波状等、任意の形状にすることができる。また、上面視における第1領域14の幅や形状も延出部と同様に特に限定されず、補助電極11の延伸方向に沿って長方形状になるような、一つの長い形状としてもよい。さらに、延出部が複数ある場合は、離れた位置における延出部同士が互いに連結してもよく、このとき、延出部の形状が、上面視でストライプ状、ひし形、六角形、同心円状等にすることも可能である。ストライプ形状であれば、パッド電極や補助電極に対して垂直または、垂直以外の角度を有して斜めに配置されてもよい。垂直以外の角度で斜めに配置される場合は、略点対称である2つのパッド電極10の距離が近くなるような角度の配置であると好ましい。
【0028】
第2電極16からの電流は、半導体層12の厚さが厚いほど横方向に拡散されて第1電極15へ行き届く。延出部は第1領域14よりも半導体層12が厚いため、延出部が近傍にある第1電極15で電流が密になることを抑制し、電圧が下がる。一方、第1電極15の周囲に第1領域14が形成された場合、第1領域14が延出部よりも半導体層12が薄いため、発光層113からの光が半導体層12で吸収されるのを抑制することができ、光の取り出し効率が向上する。このように、電流拡散効果を有する延出部と、発光層からの光吸収抑制効果を有する第1領域14をストライプ状などとして近接して配置することにより、半導体層12全体に効率良く電流を拡散させることができるとともに、光取り出し効率を向上させることができる。また、パッド電極10を中心とするその近傍と、補助電極11の近傍は、導電部材を介して外部電源から電流が半導体発光素子100へと供給されるため、必然的に電流密度が大きく、発光強度が特に強い。そのため、第1電極15の周囲においては、本発明の効果がより発揮される。
【0029】
半導体層12の上面において、第2領域13、第1領域14を形成する半導体層12の側面は垂直又は垂直以外の角度を有していてもよい。また、半導体層12の上面は、第2領域13、第1領域14にかかわらず表面が微細な凹凸を有する粗面であってもよい。これにより、半導体層12と電極15との密着性が向上するとともに、光取り出し効率がさらに向上する。
【0030】
また、半導体発光素子100において、半導体層12がp型窒化物半導体層とn型窒化物半導体層を有し、第1領域14及び第2領域13がn型窒化物半導体層上に形成される場合は、n型窒化物半導体層がp型窒化物半導体層よりも電気抵抗が小さく電圧上昇が抑えられるため、より低電圧な半導体発光素子とすることができる。
【0031】
<第二の実施形態>
次に、第二の実施形態に係る半導体発光素子について説明する。図4は、第二の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。図5は、第二の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略断面図であり、図4のC−C’における断面図を示す。第二の実施形態に係る半導体発光素子200は、パッド電極20と補助電極21とが第2領域23と第1領域24上に設けられる以外は、第一の実施形態と実質的に同様である。
【0032】
第二の実施形態に係る半導体発光素子200は、半導体層22上にパッド電極20と補助電極21からなる電極25を有し、電極25が第2領域23上だけでなく第1領域24上にも設けられる。これにより第2領域23側面にも電極25が形成され、電極との接触面積が大きくなりコンタクト抵抗を下げることができる。また、電極25の断面形状は、第2領域23と第1領域24と同様に上面が凹凸でもよいし、平坦であってもよい。
【0033】
<第三の実施形態>
次に、第三の実施形態に係る半導体発光素子について説明する。図6は、第三の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。第三の実施形態に係る半導体発光素子300は、電極35の構造が相違している以外は、第一の実施形態と実質的に同様である。
【0034】
第三の実施形態に係る半導体発光素子300は、半導体層32上に、パッド電極30とそのパッド電極30から延伸する補助電極31とからなる電極35を有する。
半導体発光素子300は、半導体層32上に3本の平行な補助電極31を有し、外側の2本の補助電極31に重なるようにそれぞれ一つのパッド電極30が設けられる。3本の平行な補助電極31のうち、内側の補助電極31と、外側の各々のパッド電極30との間で、これらを連結する補助電極を備えることができる。パッド電極30が延伸方向の異なる複数の補助電極31の交点に位置する場合は、複数の補助電極31の交点とパッド電極30とを離間させた際に生じ得る、交点とパッド電極30との間への電流集中を緩和し、発熱等の問題を効果的に回避することができる。このように、補助電極31は交差、分岐することにより、パッド電極30や補助電極31を連結させることができ、電極面積を増やすと共に電流分布を均一化できる。また、補助電極は十字状に交差して、交点部分に電流が集中する事態を回避することもできる。
【0035】
補助電極31は、交差、分岐、屈曲することにより半導体層32の上面視形状と相似関係に縮小された、すなわち略正方形状に連結した形状や、補助電極31の隅部が略直角に屈曲した折曲部を有する形状や、その他補助電極31によって半導体層32が包囲された領域をもつ形状とすることができる。ただし、補助電極31による上記のような包囲領域では電極近傍領域で電流が集中して発光強度が高くなり、その部分で蓄熱が多くなる。したがって、補助電極31による包囲領域がない半導体発光素子の方が、電流均一性、発光均一性を実現でき、かつ放熱性に優れており、大電流下にあっても高い耐性を有するので好ましい。
【0036】
<第四の実施形態>
次に、第四の実施形態に係る半導体発光素子について説明する。図7は、第四の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。第四の実施形態に係る半導体発光素子400は、半導体層42上面の第2領域43及び第1領域44の形状及び配置が相違している以外は、第三の実施形態と実質的に同様である。
【0037】
第四の実施形態に係る半導体発光素子400は、電極45の周囲にのみ、第2領域43からなる延出部を設ける。延出部は、電極45の全周囲に設けてもよいし、電極45の周囲の一部に設けてもよい。延出部の形状、幅、大きさ等は特に限定されず、これら全てが同一である必要もない。パッド電極40を中心とするその近傍と、補助電極41の近傍は、導電部材を介して外部電源から電流が半導体発光素子400へと供給されるため、必然的に電流密度が大きく、発光強度が特に強い。そのため、延出部と第1領域44とを電極45の周囲に配置することで、電流を半導体層42全体へ効率良く拡散させ、かつ発光層からの光の吸収を抑制するという効果がより発揮される。
【0038】
第四の実施形態において延出部は長方形状であるが、上面視において、延出部の長手方向の長さは、30〜50μmが好ましい。これにより、電流拡散のための延出部があることに加え、半導体層42の薄い第1領域44の面積は増えるので、半導体層に吸収される光が低減し、発光効率が向上する。すなわち、上面視における延出部の面積を小さくすれば、より高出力な半導体発光素子とすることができる。
【0039】
<第五の実施形態>
次に、第五の実施形態に係る半導体発光素子について説明する。図8は、第五の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。第五の実施形態に係る半導体発光素子500は、半導体層52上面の第2領域53と第1領域54の形状及び配置が相違している以外は、第三又は第四の実施形態と実質的に同様である。
【0040】
第五の実施形態に係る半導体発光素子500は、電極55の周囲にのみ、第2領域53からなる延出部を設ける。延出部は、3本の平行な補助電極51それぞれの周囲に複数設けられ、それぞれ連結されない程度の大きさを有している。補助電極51の延伸方向末端では、放射状に延出部が設けられている。このように、延出部や第1領域54は、半導体層52で電流密度が大きく発光強度の強い部分に任意の形状や大きさで設けることができ、電流拡散及び半導体層の光吸収抑制を調整することが可能である。
【0041】
第五の実施形態において延出部は長方形状であるが、上面視において、延出部の長手方向の長さは、100〜200μmが好ましい。これにより、半導体層52が薄い第1領域54をできるだけ大きな面積で確保しつつ、延出部は第1電極55から遠い位置まで形成されるので、電圧上昇を抑制し、かつ発光効率が向上する。すなわち、上面視における延出部の面積を大きくすれば、より低電圧な半導体発光素子とすることができる。
【0042】
<第六の実施形態>
次に、第六の実施形態に係る半導体発光素子について説明する。図9は、第六の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。第六の実施形態に係る半導体発光素子600は、半導体層62上面の電極65、第2領域63と第1領域64の形状及び配置が相違している以外は、第四又は第五の実施形態と実質的に同様である。
【0043】
第六の実施形態に係る半導体発光素子600は、半導体層62の周縁部に設けられた複数のパッド電極60から、半導体層62の中央領域の方向に補助電極61が延伸している。それぞれの補助電極61は、中央領域においてその先端側が隣り合う方向で対向するように配置されている。第2領域63からなる延出部は、パッド電極60と補助電極61の周囲に設けられる。略長方形である延出部は、補助電極61の周囲においては、その長方形の長手方向が補助電極61の延伸方向に対して略垂直になるように配置されている。このように、補助電極が曲がっている形状であっても、延出部は、半導体層62で電流密度が大きく発光強度の強い部分に任意の形状や大きさ、角度を持って設けることができる。
【0044】
<第七の実施形態>
次に、第七の実施形態に係る半導体発光素子について説明する。図10は、第七の実施形態に係る半導体発光素子の電極と第1領域、第2領域を示す概略平面図である。第七の実施形態に係る半導体発光素子700は、半導体層72上面の電極75、第2領域73と第1領域74の形状及び配置が相違している以外は、第四〜六の実施形態と実質的に同様である。
【0045】
第七の実施形態に係る半導体発光素子700は、半導体層72の中央領域に設けられた複数のパッド電極70から、補助電極71が四方に延伸している。第2領域73からなる延出部と第1領域74は、パッド電極70と補助電極71の周囲に設けられる。略長方形である延出部は、補助電極71の周囲においては、その長方形の長手方向が補助電極71の延伸方向に対して略垂直になるように配置されている。また、パッド電極70と、補助電極71の延伸部末端では、延出部が放射状に設けられる。このように、延出部は、複数の補助電極71がパッド電極70から放射状若しくはそれぞれが別方向に延伸していても、半導体層72で電流密度が大きく発光強度の強い部分に任意の形状や大きさ、角度を持って設けることができる。
【0046】
以下、本実施形態の製造方法及び各構成について詳述する。
【0047】
(半導体層)
発光層を有する半導体層は、当該分野で公知の方法及び構造を有して作製されるいかなる半導体構造であってもよい。成長基板上に第2導電型半導体層、発光層、第1導電型半導体層を有する半導体構造を形成する。成長基板は、半導体層である窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる基板であればよく、成長基板の大きさや厚さ等は特に限定されない。この成長基板としては、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイアやスピネル(MgAl)のような絶縁性基板、また炭化珪素(6H、4H、3C)、シリコン、ZnS、ZnO、Si、GaAsが挙げられる。また、GaNやAlN等の窒化物半導体基板を用いることもできる。
【0048】
本発明の半導体層は、上記に限らず、pn接合、p−i−n構造、MIS構造等種々の発光構造を用いることができる。窒化物半導体に限らず、GaAs系、InP系、例えばInGaAs、GaP半導体、等の他の材料、波長の発光素子にも適用できる。
【0049】
成長基板上に、半導体層として、n型窒化物半導体層、発光層、p型窒化物半導体層を順に積層する。この時、成長基板の材料によっては、半導体構造との間に、低温成長バッファ層、例えば1〜3nmのAlGa1−xN(0≦x≦1)、その他、高温成長の層、例えば0.5〜4μmのAlGa1−xN(0≦x<1)等の下地層を介していても良い。n型、p型の窒化物半導体層は、例えばAlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)の組成式で表されるものを用いることができ、その他III,IV族元素の一部をそれぞれ、B置換、P,As,Sb等で置換しても良い。例えば、n型半導体層には、GaNのコンタクト層、InGaN/GaNの多層膜構造、p型半導体層には、GaNのコンタクト層、AlGaN,InGaN,GaNの単層、多層膜構造を用いて構成することができる。このように種々の組成、ドーパント量の単層、多層構造を1つ、複数有して、各機能(コンタクト、クラッド)の層を設けることができる。各導電型の半導体層は、適宜ドーパントを用いて所望の導電型の層とし、例えばp型、n型の窒化物半導体では、それぞれMg,Si等を用いる。各導電型層の一部に、絶縁性、半絶縁性の領域、層、又は逆導電型の領域、層を有していても良い。
【0050】
また、本発明に用いる発光層は、例えば、AlInGa1−a−bN(0≦a≦1、0≦b≦1、a+b≦1)からなる井戸層と、AlInGa1−c−dN(0≦c≦1、0≦d≦1、c+d≦1)からなる障壁層とを含む量子井戸構造を有する。活性層に用いられる窒化物半導体は、ノンドープ、n型不純物ドープ、p型不純物ドープのいずれでもよいが、好ましくは、ノンドープもしくは、又はn型不純物ドープの窒化物半導体を用いることにより発光素子を高出力化することができる。井戸層にAlを含ませることで、GaNのバンドギャップエネルギーである波長365nmより短い波長を得ることができる。活性層から放出する光の波長は、発光素子の目的、用途等に応じて360nm〜650nm付近、好ましくは380nm〜560nmの波長とする。
【0051】
井戸層の組成はInGaNが、可視光・近紫外域に好適に用いられ、その時の障壁層の
組成は、GaN、InGaNが良い。井戸層の膜厚は、好ましくは1nm以上30nm以
下であり、1つの井戸層の単一量子井戸、障壁層等を介した複数の井戸層の多重量子井戸
構造とできる。
【0052】
(第2電極)
第2導電型半導体層の表面にRh、Ag、Ni、Au、Ti、Al、Pt等からなる第2電極をパターン形成する。第2電極は、光反射側であるため、反射構造を有すること、具体的には反射率の高い、反射層を有すること、特に第2導電型半導体層接触側に有することが好ましい。その他に、光透過する薄膜の密着層を介して、例えば密着層/反射層の順に積層した多層構造とすることもできる。具体的な第2電極としては、半導体層側からAg/Ni/Ti/Ptとできる。また、第2電極は、上面から見て、第1電極が形成される領域を除く窒化物半導体層のほぼ全領域に形成されると、電流注入の発光領域を大きくでき、好ましい。また平面視において、第1及び第2の電極が、発光層を挟んで重なる領域を有すれば、電極へと吸収され光損失を招くため、ずらすのがよい。
【0053】
(保護膜)
半導体発光素子の周辺部等を保護するために、保護膜を設けても良い。第2導電型半導体層上に設ける場合は、その第2電極から露出した領域に形成され、互いに隣接若しくは離間して設けられる。これに限らず、第2電極の一部を覆うように設けることもできる。この保護膜を絶縁膜として、第2導電型半導体層の表面上に選択的に設けられた第2電極から半導体層に導通されている。絶縁性の保護膜として、具体的な材料としては、SiO、Nb、Al、ZrO、TiO等の酸化膜や、AlN、SiN等の窒化膜の、単層膜または多層膜を用いることができる。さらに、保護膜にAl、Ag、Rh等の高反射率の金属膜を被覆してもよい。さらにSiO/Ti/Ptのように、第二電極の多層構造の一部を絶縁膜の接着層側に設けてもよい。
【0054】
(半導体層側接着層)
次に、第2電極上に、貼り合わせ時に合金化させるための半導体層側接着層を形成する。半導体層側接着層は、Au、Sn、Pd、Inからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する合金から形成される。半導体層側接着層は密着層、バリア層、共晶層からなる3層構造が好ましい。密着層は、Ni、Ti、RhO、W、Moからなる群から選ばれる少なくとも一を含有する。バリア層は、Pt、Ti、Pd、TiN、W、Mo、WN、Auからなる群から選ばれる少なくとも一を含有する。共晶層は、Au、Sn、Pd、Inからなる群より選ばれる少なくとも一を含有する。また、半導体層側接着層の膜厚は5μm以下とする。例えば、Ti/Pt/Au/Sn/Auを用いることができ、また保護膜に第2電極の多層構造の一部を設ける場合は、密着層を省略し、Pt/Au/Sn/Auとすることもできる。
【0055】
(支持基板)
他方、支持基板を用意する。支持基板は、主に、Si基板の他、GaAsの半導体基板、Cu、Ge、Niの金属材料、Cu−Wの複合材料等の導電性基板が挙げられる。加えて、Cu−Mo、AlSiC、AlN、SiC、Cu−ダイヤ等の金属とセラミックの複合体等も利用できる。例えば、Cu−W、Cu−Moの一般式をCu100−x(0≦x≦30)、CuMo100−x(0≦x≦50)のようにそれぞれ示すことができる。またSiを用いる利点は安価でチップ化がしやすい点である。支持基板の好ましい膜厚としては50〜500μmである。支持基板の膜厚をこの範囲に設定することで放熱性が良くなる。一方で、支持基板に導電性基板を使用すれば、基板側からの電力供給が可能になる他、高い静電耐圧及び放熱性に優れた素子とできる。また、通常は、Si、Cu(Cu−W)等の不透光性の材料で、それと半導体層との間、例えば電極、若しくは半導体層内に反射構造を設ける構造として、放熱性、発光特性に優れ好ましい。また、メッキにより、窒化物半導体層上にメッキ部材を形成して、支持基板、支持基板との間の接着部を形成することもできる。また、支持基板を設けない素子でも良く、発光装置の載置部、基台上に直接実装されても良く、メッキによる金属部材等を半導体層上に設ける形態でも良い。
【0056】
また、光取り出し側に対向する半導体層の反射側、例えば支持基板の上面或いは下面
や、上述した窒化物半導体層の表面(ここでは第2導電型半導体層の表面)に、分布型ブラッグ反射膜(distributed Bragg reflector:DBR)等、屈折率の異なる材料が周期的に交互に積層された多層薄膜を形成することもできる。多層薄膜は例えば誘電体多層膜、GaN/AlGaNの半導体から構成されて、半導体層内、その表面、例えば保護膜等に、単独若しくは反射用の電極と共に形成されて、反射構造を設けることができる。
【0057】
(貼り合わせ工程)
そして、半導体層側接着層の表面と支持基板側接着層の表面を対向させ、支持基板を加熱圧接により窒化物半導体層側の第2電極上に貼り合わせる。この加熱圧接は、プレスをしながら150℃以上の熱を加えて行われる。これにより接着層を介して半導体層側と支持基板側が接合される。
【0058】
この支持基板の表面に対しても支持基板側接着層を形成することが好ましい。また、支持基板側接着層には密着層、バリア層、共晶層からなる3層構造を用いることが好ましい。支持基板側接着層は、例えばTi−Pt−Au、Ti−Pt−Sn、Ti−Pt−Pd又はTi−Pt−AuSn、W−Pt−Sn、RhO−Pt−Sn、RhO−Pt−Au、RhO−Pt−(Au、Sn)等の金属膜から形成される。
【0059】
貼り合わせにおいて共晶させるには支持基板側と窒化物半導体側との接着面にそれぞれ密着層、バリア層、共晶層とを備えていることが好ましく、それが設けられる材料(基板、半導体)に応じて、適宜接着層、その各層の材料を形成する。貼り合わせ後には第2電極/Ti−Pt−AuSn−Pt−Ti/支持基板、その他に第2電極/RhO−Pt−AuSn−Pt−Ti/支持基板、第2電極/Ti−Pt−PdSn−Pt−Ti/支持基板や、第2電極/Ti−Pt−AuSn−Pt−RhO/支持基板や、第2電極/Ti−Pt−Au−AuSn−Pt−TiSi/支持基板や、Ti/Pt/AuSn/PdSn/Pt/TiSi/支持基板や、Pt/AuSn/PdSn/Pt/TiSi/支持基板(保護膜がSiO/Ti/Ptの場合)となる。このように、貼り合わせの表面金属は支持基板側と窒化物半導体素子側が異なると、低温で共晶が可能で、共晶後の融点が上がるため好ましい。
【0060】
(成長基板除去工程)
その後、成長基板を除去して、半導体層を露出させる。成長基板は、成長基板側からエキシマレーザやフェムト秒レーザ等を照射して剥離・除去する(Laser Lift Off:LLO)か、又は研削によって取り除かれる。成長基板を除去後、露出した窒化物半導体の表面をCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシュ)処理することで所望の膜である第1導電型半導体層を露出させる。このとき、半導体発光素子の光に対し吸収率の高い下地層、例えば高温成長したGaN層を除去、あるいは膜厚を低減することによって、例えば紫外領域の発光波長を持つLEDにおいても吸収の影響を低減することができる。この処理によりダメージ層の除去や窒化物半導体層の厚みを調整、表面の面粗さの調整ができる。
【0061】
(半導体層の分割)
さらに、チップ状に半導体層を分割する。具体的には、RIE等で外周エッチングを行い、外周の半導体層を除去して分離し、保護膜を露出させる。
【0062】
(第1領域、第2領域の形成)
そして、半導体層上面に第1領域、第2領域からなる凹凸構造を形成する。第1導電型半導体層の上面にフォトリソグラフィーにより所定のパターンを有するレジストマスクを形成する。レジストマスクにより、第1導電型半導体層を0.5〜2μm、好ましくは0.5〜1μmRIEする。このとき、RIEに限らずウェットエッチング等で第1領域、第2領域からなる凹凸構造を形成してもよく、また、電極直下に位置する第1導電型半導体層にも凹凸構造を形成してもよい。
【0063】
さらにまた、第1導電型半導体層上面の第1領域、第2領域について、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)溶液により異方性エッチングを行う。この処理により、第1領域、第2領域の表面が粗面になり、第1導電型半導体層上に形成される第1電極との密着性及び光取り出し効率が向上する。
【0064】
(第1電極)
次いで、第1導電型半導体層の上面に、上記に記した配置構成を満足するよう第1電極が形成される。すなわち、第1電極は、半導体層の上面からの平面視において、発光層を挟んで位置する第2電極の形成領域と重畳領域を持たないようにずれて配置される。この構造により、半導体層の積層方向において、その中心軸を異とする双方の電極間を、キャリアが立体的に移動するため、面内拡散が促進される結果、内部量子効率を高められる。
【0065】
第1電極は、具体的には、積層順に、Ti−Au、Ti−Al等のように、第1導電型半導体層とのオーミック用と密着用としてのTi層(第1層)とパッド用のパッド層(第2層)として金、Al、白金族の構成、また、オーミック用の第一層(例えば、W、Mo、Tiが第1導電型半導体層とのオーミック接触に好ましい)と、パッド用の第2層との間にバリア層として、高融点金属層(W、Mo、白金族)を設ける構造、例えばW−Pt−Au、Ti−Rh−Pt−Au、が用いられる。n型窒化物半導体の反射性電極として、Al、その合金を用いること、透光性電極としてITO等の導電性酸化物をもちいることもできる。実施の形態において、第1電極にn電極を構成する場合、積層順にTi−Al−Ni−Au、W−Al−W−Pt−Au、Al−Pt−Au、Ti−Pt−Au等が用いられる。また、第1電極は膜厚を0.1〜1.5μmとする。
【0066】
(チップ分割)
続いて、支持基板及び接着層からなる支持台において、半導体発光素子の境界領域におけるダイシング位置でもってダイシングすることにより、チップ化された半導体発光素子を得られる。
【0067】
(透光性導電層)
また、各電極との半導体層間に電流拡散を促す拡散層を備えることもできる。拡散層としては、各電極よりも幅広、大面積で設けられて拡散機能を有し、透光性であることで光の出射(第1電極側)、反射(第2電極側)の機能を低下させないものが良く、例えば透光性導電層が採用できる。導電層は、露出した半導体層のほぼ全面に形成されることにより、電流を半導体層全体に均一に広げることができる。透光性導電層は、具体的には、ITO、ZnO、In、SnO等、Zn、In、Snの酸化物を含む透光性導電層を形成することが望ましく、好ましくはITOを使用する。あるいはNi等のその他の金属を薄膜、酸化物、窒化物、それらの化合物、複合材料としたものでもよい。
【0068】
(配線構造)
上記の構造を有する半導体発光素子において、接着層を導電性とし、かつ支持基板をSiC等の導電性の基板とすれば、第2電極の一方の主面を第2導電型半導体層に接触させ、第2電極の他方の主面側から外部接続できる。すなわち、第2電極の一方の主面(上面)は半導体と接触させるための面であり、第2電極の他方の主面(下面)は外部接続用の面として機能できる。そして、貼り合わせる支持基板を第2電極に電気的に接続し、半導体発光素子の底面側を、第2電極のパッド部とできる。例えば支持基板の裏面に設けた電極を介して、外部回路との接続が可能となる。また、支持基板を絶縁性材料とした場合では、半導体積層構造側に形成された支持基板の電極と、その反対側の裏面に形成された電極とを、支持基板の立体配線や、配線用ビアホール等の配線電極によって接続するようにしても、支持基板の裏面側からの電極取り出しが可能となる。いずれにしても、露出されたワイヤを用いずに、第2電極と外部電極とを電気的に接続できる。さらに、支持基板に、別個の放熱部材を連結することで、一層の放熱効果を得ることもできる。
【0069】
他方で、半導体層表面側の電極である、第1電極は、外部電源接続用の露出領域に、半田等を介して導電性ワイヤと接続される。これにより外部電極との電気的な接続が可能となる。その他に、半導体層上に配線構造を有する形態、例えば、半導体層上から外部の支持基板上まで配線層が設けられる構造でも良く、その場合上述した支持基板の外部接続、配線構造等により、外部と接続される。この様なワイヤ接続を用いない発光素子、装置であると、補助電極より幅広なパッド電極が不要となり、電流集中傾向を抑えることができ、後述の蛍光体層、それを含む封止部材を好適に形成できる。
【0070】
また、半導体発光素子において、支持基板は電気伝導性の良い材料を使用しており、これにより発光層の上下を電極でもって立体的に挟み込む縦型電極構造とできるため、電流を第2導電型半導体層の全面へと拡散でき、電流の面内広がりが均一となる。すなわち電気抵抗を低減でき、キャリア注入効率が向上する。さらに、支持基板は、放熱基板としての機能も果たすことができ、発熱による素子特性の悪化を抑止できる。
【0071】
さらに、本発明の半導体発光素子は、半導体発光素子からの光の一部を異なる波長の光に変換する光変換部材を含有する樹脂で封止することもできる。光変換部材は、少なくとも、半導体発光素子からの発光波長によって励起され蛍光光を発する蛍光物質によって、あるいは蛍光物質と結着材と、任意に無機部材(ガラス、フィラー等)等とを含んで構成される。これにより、半導体発光素子の光を変換させ、半導体発光素子からの光と変換光及び蛍光光とを混色させ、例えば、白色系、電球色等の所望の光を発する発光装置を得ることができる。
【0072】
封止樹脂に含まれる光変換部材等は、製造工程において樹脂中に散在させたまま樹脂を硬化させてもよいが、樹脂を硬化させる前に、強制的な遠心力によって半導体発光素子が実装された側に沈降堆積させることもできる。これにより光変換部材は半導体層上面の第1領域、第2領域により形成された溝部分に入り込み、密に充填した光変換部材の堆積層とすることができ、光変換の効率が向上する。
【実施例】
【0073】
以下に示す半導体発光素子を作製した。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>
実施例1として、図1〜3に示すように、第一の実施形態に係る半導体発光素子を以下の仕様で作製した。
実施例1に係る半導体発光素子は、第2導電型半導体層(p型半導体層)112、発光層113、第1導電型半導体層(n型半導体層)111からなる半導体層12と、第1電極(n電極)15と、第2電極(p電極)16と、保護膜107と、支持基板104、接着層105からなる支持台103と、を少なくとも備える。
より具体的には、半導体層12として窒化ガリウム系半導体、第1電極15としてTi
(13nm)/Pt(200nm)/Au(1000nm)、第2電極16としてAg(
100nm)/Ni(100nm)/Ti(100nm)/Pt(100nm)、保護膜107としてSiO(400nm)、接合層105としてAu(500nm)/Pt(200nm)/TiSi(3nm)、支持基板104としてSi基板を用いた。
さらに、第1導電型半導体層(n型半導体層)に第1、第2領域のパターンを、第1、第2領域の厚みの差が1μmで形成し、半導体発光素子(a)とした。
半導体発光素子(a)の大きさは2mm四方であり、n型パッド電極の直径は100μm、n型補助電極の幅は20μmとした。また、第1、第2領域のストライプ幅を各々20μmとした。
【0075】
<参考例>
参考例として、図1のn電極パターンを有し、かつn電極形成部分以外の第1導電型半導体層(n型半導体層)に第1領域を形成した以外は実施例1と同様にして、半導体発光素子(b)を作製した。
【0076】
<比較例>
比較例として、図1のn電極パターンを有し、第1領域を形成しない以外は実施例と同様にして、半導体発光素子(Ref)を作製した。
【0077】
半導体発光素子(a)(b)(Ref)を用いて、その評価を行った。図11の(a)は実施例1、(b)は参考例の半導体発光素子の上面写真をそれぞれ示している。
【0078】
図12は発光強度分布であり、各半導体発光素子において入力電流を350mAとしたとき、実施例1(a)、参考例(b)、比較例(Ref)の絶対値で比較した結果を示している。図13は各半導体発光素子において入力電流を350mAとしたときの光出力(Po)と順方向電圧(Vf)を比較したグラフである。
【0079】
図12の発光強度分布で明らかなとおり、実施例1(a)の電極形成部分周辺が、参考例(b)、比較例(Ref)よりも強く発光していることが確認できた。また、図13の結果から、n型半導体層上面に第1領域を形成した半導体発光素子(a)(b)の光出力が、比較例(Ref)と比して向上した。また、第1領域のみをn電極形成部分以外のn型半導体層に形成するよりも、第1領域に加えて、n電極から露出して延伸する第2領域、すなわち延出部を有する方が、光出力向上に加えて、順方向電圧も低下した。これにより、実施例1(a)の第1、第2領域のパターンの優位性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の半導体発光素子は、照明用光源、LEDディスプレイ、バックライト光源、信
号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0081】
10,20,30,40,50,60,70 パッド電極
11,21,31,41,51,61,71 補助電極
12,22,32,42,52,62,72 半導体層
13,23,33,43,53,63,73 第2領域
14,24,34,44,54,64,74 第1領域
15,25,35,45,55,65,75 第1電極
16 第2電極
100,200,300,400,500,600,700 半導体発光素子
103 支持台
104 支持基板
105 接着層
107 保護膜
111 第1導電型半導体層
112 第2導電型半導体層
113 発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、前記半導体層の上面に配置された第1電極と、前記半導体層の下面に配置された第2電極と、を備える半導体発光素子であって、
前記半導体層の上面は第1領域と、前記第1領域よりも前記半導体層の厚みが厚い第2領域とを有し、
前記第1電極はパッド電極と、前記パッド電極から延伸する補助電極と、を備え、
前記第1電極は前記第2領域上にあり、
前記第2領域は、前記補助電極に沿ったものと、前記補助電極と異なる方向に延伸するものと、を有することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第2領域が複数あり、互いに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記補助電極と異なる方向に延伸するものとは、前記補助電極に沿ったものに対して垂直であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2領域が複数あり、ストライプ状に配列していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記半導体層の上面は、粗面であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記半導体層は、p型とn型の窒化物半導体層を有し、
前記第2領域は、前記n型窒化物半導体層上に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−227311(P2012−227311A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92711(P2011−92711)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】